説明

微細藻類培養回収装置及び火力発電プラント

【課題】非光合成の微細藻類に酸素を供給して効率よく培養回収する微細藻類培養回収装置を提供する。
【解決手段】有機物を吸収して生育する非光合成の微細藻類を培養して回収する微細藻類培養回収装置10が、有機物を含む所定量の液体を満たした培養液中で微細藻類を培養して成長させる藻類培養プール11と、培養液中に配設されたエアレーションノズル30に加圧空気を供給して微細気泡を発生させるエアレーションを行って循環対流を発生させる微細気泡発生装置20と、培養液の液面に配設されたスカム回収装置40と、培養液中に配設されて加圧空気から放熱させる熱交換器50と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来のオイル生産プラントに係り、特に、有機物を吸収して生育する非光合成の微細藻類に適用される微細藻類培養回収装置に関する。
また、本発明は、微細藻類培養回収装置からボイラ燃料の供給を受けて運転される火力発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「石油を作る藻類」として、「オーランチオキトリウム」と呼ばれる油分を含んだ微細藻類が注目されている。このオーランチオキトリウムは、水中の有機物上に小さな細胞集団を作る微生物であり、しかも、葉緑体を持たず光合成をしない従属栄養生物であり、周囲の有機物を吸収して成長する。なお、オーランチオキトリウムは、たとえば光合成で成長する藻類の「ボトリオコッカス」と比較して、10倍程度の成長力があると言われている。
【0003】
下記の特許文献1には、増殖のスピードが早く、光合成能力の高い浮遊性微細藻類について、均一に分散してしまう浮遊性微細藻類を容易に回収できるようにした培養方法が開示されている。
また、下記の特許文献2及び3には、光合成により微細藻類を成長させる微細藻類の培養方法や培養装置が開示されている。
また、下記の特許文献4には、地球温暖化の原因とされる燃焼ガス中の二酸化炭素について、微細藻類の培養及び増殖に利用して固定化する方法において、微細藻類培養液に適当な強光を照射することにより、藻体の沈降性を向上させ、藻体(固形分)と培地(液体部分)とを効率よく簡便に分離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−62123号公報
【特許文献2】特開平7−246086号公報
【特許文献3】特開平7−250669号公報
【特許文献4】特開平7−289240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オーランチオキトリウムのような非光合成の微細藻類は、その成長に酸素の供給が必要となる。しかし、非光合成の微細藻類を培養回収するのに適した効率のよい微細藻類培養回収装置、すなわち、非光合成の微細藻類に酸素を供給して効率よく培養回収する微細藻類培養回収装置は見当たらない。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、非光合成の微細藻類に酸素を供給して効率よく培養回収する微細藻類培養回収装置を提供することにある。また、この微細藻類培養回収装置により培養回収した微細藻類を用い、この微細藻類または微細藻類から製造されるバイオ燃料(油)をボイラ蒸気発生器の燃料として発電を行う火力発電プラントに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の微細藻類培養回収装置は、有機物を吸収して生育する非光合成の微細藻類を培養して回収する微細藻類培養回収装置であって、有機物を含む所定量の液体を満たした培養液中で前記微細藻類を培養して成長させる藻類培養プールと、前記培養液中に配設されたエアレーションノズルに加圧空気を供給して微細気泡を発生させるエアレーションを行って循環対流を発生させる微細気泡発生装置と、前記培養液中に酸素を供給するとともに循環流を形成する循環装置と、前記培養液面に配設されたスカム回収装置と、前記培養液中に配設されて前記加圧空気から放熱させる熱交換器と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
このような微細藻類培養回収装置によれば、有機物を含む所定量の液体を満たした培養液中で微細藻類を培養して成長させる藻類培養プールと、培養液中に配設されたエアレーションノズルに加圧空気を供給して微細気泡を発生させるエアレーションを行って循環対流を発生させる微細気泡発生装置と、培養液面に配設されたスカム回収装置と、培養液中に配設されて加圧空気から放熱させる熱交換器とを備えているので、培養液中で培養される微細藻類は、エアレーションによって成長に必要な酸素の供給を受け、さらに、エアレーションにより形成される循環対流でプール内を撹拌して、微細藻類を効率よく培養して成長を促進することができる。従って、微細気泡発生装置は、培養液中に酸素を供給するとともに循環対流を形成する装置となる。
【0008】
このような微細藻類の培養中には、培養液中に設置された熱交換器を介して加圧空気から培養液に放熱されるため、培養液の温度を適温まで上昇させるように温度調整して成長を促進することができる。また、熱交換器による放熱を行うことにより、エアレーションに供給される空気温度が低下するので、エアレーションを行う空気の相対湿度が上昇して微細気泡発生装置のファウリング(fouling)を防止できる。
そして、培養が完了した微細藻類は、スカム回収装置を作動させることにより、エアレーションにより形成される循環対流に流されてスカム回収装置へ回収される。
【0009】
上記の発明において、前記循環装置は、前記培養液中に配設されたエアレーションノズルに加圧空気を供給して微細気泡を発生させるエアレーションで循環対流を発生させる微細気泡発生装置とされ、前記微細気泡発生装置は、空気を昇圧させて前記加圧空気とする吐出手段と、前記加圧空気を前記エアレーションノズルに供給する加圧空気供給配管と、前記加圧空気供給配管に水分を供給する水分供給手段とを具備し、スリットを有する散気膜を備えた前記エアレーションノズルに水分を含んだ空気を供給することが好ましく、これにより、水分を含んだ空気は、上述した相対湿度をより一層上昇させるため、微細な気泡を放出するスリットに海水塩等の析出物が詰まるファウリングを確実に防止できる。
【0010】
上記の微細藻類培養回収装置において、前記スカム回収装置に回収されて溜まった前記微細藻類は、前記吐出手段の出口から前記加圧空気の一部を分岐させて導入するエジェクタにより前記藻類培養プールの外部へ吸引回収されることが好ましく、これにより、微細気泡発生装置の吐出手段を有効利用して、培養の完了した微細藻類をスカム回収装置に回収することができる。
【0011】
本発明の火力発電プラントは、請求項1から3のいずれか1項に記載の微細藻類培養回収装置と、前記微細藻類培養回収装置で回収した前記微細藻類を直接、あるいは、前記微細藻類から製造されるバイオ燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラ蒸気発生器と、前記ボイラ蒸気発生器から供給される蒸気により運転される蒸気タービンを駆動源にして発電を行う蒸気タービン発電機と、を具備して構成されることを特徴とするものである。
【0012】
このような火力発電プラントによれば、請求項1から3のいずれか1項に記載の微細藻類培養回収装置を備えているので、この微細藻類培養回収装置で効率よく培養して回収した微細藻類を直接燃焼させるボイラ蒸気発生器にて、あるいは、この微細藻類から製造されるバイオ燃料を燃焼させるボイラ蒸気発生器にて蒸気を生成し、この蒸気で蒸気タービン及び蒸気タービン発電機を駆動して発電を行うことができる。
【0013】
上記の火力発電プラントにおいては、前記ボイラ蒸気発生器の下流に設けた排熱回収装置から前記培養液中に配設され排熱熱交換器に排熱を導入して放熱することが好ましく、これにより、培養液の温度を適温まで上昇させるように温度調整して微細藻類の成長を促進することができる。
【0014】
上記の火力発電プラントにおいて、前記吐出手段は、前記空気または前記ボイラ蒸気発生器から排出される燃焼排ガスのいずれか一方を選択して昇圧可能に構成されることにより、微細藻類培養回収装置を構成するひとつの藻類培養プールで培養回収する微細藻類について、非光合成の微細藻類または光合成の微細藻類のいずれか一方を適宜選択して切り替えることが可能になる。
【0015】
本発明の火力発電プラントは、有機物を含む所定量の液体を満たした培養液中で有機物を吸収して生育する非光合成の微細藻類を培養して成長させる藻類培養プールと、前記培養液中に酸素を供給するとともに循環流を形成するエアリフトポンプと、前記培養液面に配設されたスカム回収装置と、前記培養液中に配設されて排熱回収装置から排熱を導入して放熱させる排熱熱交換器とを備えている微細藻類培養回収装置と、前記微細藻類培養回収装置で回収した前記微細藻類を直接、あるいは、前記微細藻類から製造されるバイオ燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラ蒸気発生器と、前記ボイラ蒸気発生器から供給される蒸気で運転される蒸気タービンを駆動源にして発電を行う蒸気タービン発電機と、を具備して構成されることを特徴とするものである。
【0016】
このような火力発電プラントによれば、微細気泡発生装置は、培養液中に酸素を供給するとともに循環対流を形成する装置として、微細気泡発生装置に代えてメンテナンスが容易になるエアリフトポンプを採用し、さらに、培養液の加熱に排熱回収装置から排熱を導入して放熱させる排熱熱交換器を採用しており、このような構成としても、微細藻類培養回収装置で効率よく培養して回収した微細藻類を直接燃焼させるボイラ蒸気発生器にて、あるいは、この微細藻類から製造されるバイオ燃料を燃焼させるボイラ蒸気発生器にて蒸気を生成し、この蒸気で蒸気タービン及び蒸気タービン発電機を駆動して発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明によれば、非光合成の微細藻類に酸素を供給して効率よく培養回収する微細藻類培養回収装置を提供することが可能になる。また、この微細藻類培養回収装置により培養回収した微細藻類を用い、この微細藻類または微細藻類から製造されるバイオ燃料(油)をボイラ燃料として発電を行う火力発電プラントの運転が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る微細藻類培養回収装置について、一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】循環装置の一例として、培養液中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置のエアレーションノズル配置例を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】エアレーションノズルの内部構成例を示す断面図である。
【図4】火力発電プラントのボイラ燃料として、微細藻類を使用する場合の概要を示す構成図である。
【図5】図1に示した微細も類培養回収装置を火力発電プラントに適用した構成例を示す概略構成図である。
【図6】火力発電プラントにおける微細藻類培養回収装置の藻類培養プール配置について、第1の配置例を示す平面図である。
【図7】火力発電プラントに適用される微細藻類培養回収装置の藻類培養プールに適用される循環装置について、エアリフトポンプを採用した他の構成例を示す斜視図である。
【図8】火力発電プラントにおける微細藻類培養回収装置の藻類培養プール配置について、第2の配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る微細藻類培養回収装置及び火力発電プラントの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図4に示す火力発電プラント1は、後述する微細藻類培養回収装置10と、微細藻類乾燥粉砕装置2と、ボイラ蒸気発生器3と、蒸気タービン発電機4と、排煙処理装置5と、排熱回収装置6と、煙突7とにより概略構成されている。このうち、ボイラ蒸気発生器3は、粉砕した微細藻類を燃料として直接燃焼させて蒸気を発生させるものであり、ここで発生した蒸気は蒸気タービン発電機4に供給される。
【0020】
蒸気タービン発電機4は、蒸気の供給を受けて運転される蒸気タービンと、この蒸気タービンと互いの主軸が連結された発電機とを備えており、蒸気タービンの駆動力で発電機を駆動して発電を行うように構成されている。
ボイラ蒸気発生器3で燃料が燃焼して発生する燃焼排ガスは、通常環境に悪影響を及ぼす物質を含む高温ガスであり、排煙処理装置5を通過して脱硫や脱硝等を除去する排煙処理が施される。この後、高温の燃焼排ガスは排熱回収装置6に送られ、燃焼排ガスが保有する排熱の回収が行われた後に煙突7から大気へ放出される。
なお、図中に破線で示す枠内に存在するボイラ蒸気発生器3、蒸気タービン発電機4、排煙処理装置5、排熱回収装置6及び煙突7は、ボイラ蒸気発生器3の使用燃料が異なる従来型火力プラントを構成するものである。
【0021】
上述した火力プラント1の微細藻類培養回収装置10は、有機物を吸収して生育する非光合成の微細藻類として、たとえば「オーランチオキトリウム」を培養して回収する装置である。
図1に示す微細藻類培養回収装置10は、有機物を含む所定量の液体を満たした培養液中で微細藻類を培養して成長させる藻類培養プール11と、培養液中に配設されたエアレーションノズルに加圧空気を供給して微細気泡を発生させるエアレーションで循環対流を発生させる微細気泡発生装置(循環装置)20と、培養液面に配設されたスカム回収装置40と、培養液中に配設されて加圧空気から放熱させる熱交換器50とを備えている。
【0022】
藻類培養プール11の内部には、有機物を含む海水等の培養液が所定の水深まで満たされ、培養液内に微細気泡を発生させるエアレーションにより循環対流を形成して撹拌されている。藻類培養プール11内の培養液は、微細藻類の培養に適した所望の水質及び水深等を維持する必要があるため、微細藻類の食料となる有機物の追加供給を行う有機物供給ライン12や、培養液の補給を行う培養液補給ライン13を備えている。
この場合、藻類培養プール11内の培養液に大きな循環対流(図中の矢印F)を形成するため、プール内端部近傍の底面付近からエアレーションの微細気泡を発生させることが望ましい。このため、スカム回収装置40は、微細気泡の発生位置から略対角線上となる培養液面に配置されることが望ましい。
【0023】
また、藻類培養プール11内に微細藻類の成長に必要な酸素を供給するため、培養液内に微細気泡を発生させるとともに、エアレーションによる循環対流を形成できる微細気泡発生装置20が設けられている。
この微細気泡発生装置20は、大気から導入した空気を昇圧させて加圧空気とするブロワ(吐出手段)21と、加圧空気をエアレーションノズル30に供給する加圧空気供給配管22と、加圧空気供給配管22に水分を供給する加湿装置(水分供給手段)23とを具備して構成される。
【0024】
すなわち、本実施形態の微細気泡発生装置20は、エアレーションノズル30がスリット32を有する散気膜31を備えたものであり、加湿装置23を設けてエアレーションノズル30に水分を含んだ加圧空気が供給されるようになっている。このような加圧空気の加湿は、エアレーションノズル30において析出物によるファウリングが生じることの防止に有効である。
【0025】
ブロワ21から圧送された加圧空気は、加圧空気供給配管22を通ってエアレーションノズル30に供給されるが、エアレーションノズル30にいたる加圧空気供給配管22には、ブロワ21の吐出側から順に、分岐弁24、熱交換器50及び加湿装置23が配設されている。
分岐弁24は、加圧空気の流れ方向を選択切換する開閉弁であり、三方弁または2個の開閉弁を組み合わせた構成とすればよい。分岐弁24で選択切換される加圧空気の供給先は、微細気泡発生装置20のエアレーションノズル30または後述するスカム回収装置40のエジェクタ43となる。
【0026】
ここで、エアレーションノズル30の構成例として、散気膜31がゴムの場合について図2及び図3を参照して説明する。
エアレーションノズル30は、基材33の周囲を覆うゴム製の散気膜31に小さなスリット32が多数設けられたものであり、一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズル30は、加圧空気供給配管22から供給される加圧空気の圧力により散気膜31が膨張すると、スリット32が開いて略均等な大きさの微細気泡を多数放出させることができる。
【0027】
エアレーションノズル30は、加圧空気供給管22から分岐する複数の枝管に設けたヘッダ管22aに対し、フランジ34を介して取り付けられている。なお、加圧空気供給管22からヘッダ配管22aにいたる配管は、たとえば培養液に海水を使用する場合など、耐食性を考慮して樹脂製パイプ等が使用される。
【0028】
エアレーションノズル30は、たとえば図3に示すように、海水等に対する耐食性を考慮して樹脂製とした略円筒形状の支持体33を用い、この支持体33の外周を覆うようにして多数のスリット32が形成されたゴム製の散気膜31を被せた後、左右両端部をワイヤやバンド等の締結材34により固定した構成とされる。
また、上述したスリット32は、圧力を受けない通常の状態においては閉じた状態となっている。なお、微細気泡発生装置20において、加圧空気を供給している状態では、常にスリット32が開放状態となる。
【0029】
上述した支持体33の一端33aは、ヘッダ配管22aに取り付けた状態で加圧空気の導入を可能とし、かつ、その他端33bは、培養液が導入可能に開口されている。
このため、一端33a側は、ヘッダ配管22a及びフランジ34を貫通する空気導入口33cを介して、ヘッダ配管22aの内部と連通している。また、支持体33の内部は、支持体33の軸方向の途中に設けた仕切板33dにより分割され、この仕切板33dにより加圧空気の流通が阻止されている。
【0030】
さらに、この仕切板33dよりヘッダ配管22a側となる支持体33の側面には、散気膜31の内周面と支持体外周面との間に、すなわち、散気膜31を加圧して膨張させる空間31aへ加圧空気を流出させるための空気出口33e,33fが開口している。
従って、ヘッダ配管22aからエアレーションノズル30に流入する加圧空気は、図中に矢印で示すように、空気導入口33cから支持体33の内部へ流入した後、側面の空気出口33e,33fから加圧空間31aへ流出することとなる。
なお、上述した締結部材34は、散気膜31を支持体33に固定するとともに、空気出口33e,33fから流入する空気が両端部から漏出することを防止するものである。
【0031】
このように構成されたエアレーションノズル30において、ヘッダ配管22aから空気導入口33cを通って流入する加圧空気は、空気出口33e,33fを通って加圧空間31aへ流出することにより、最初はスリット32が閉じているため、加圧空間31a内に溜まって内圧を上昇させる。加圧空間31a内の内圧が上昇した結果、散気膜31は加圧空間31a内の圧力上昇を受けて膨張し、散気膜31に形成されているスリット32が開くことによって加圧空気の微細気泡を培養液中に流出させる。
このような微細気泡の発生は、ブロワ21から加圧空気供給配管22を通り、枝官及びヘッダ配管22aを介して空気供給を受ける全てのエアレーションノズル30で実施される。
【0032】
スカム回収装置40は、藻類培養プール11内の培養液面に配設され、微細藻類の培養が完了した時点において、培養液面に浮遊する微細藻類を培養液から分離して回収する装置である。このスカム回収装置40は、図中に破線で示す微細藻類を成長させる工程の位置と、実線で示す微細藻類を回収する工程の位置との間で移動可能であり、藻類成長時には回収装置入口の喫水線が液面より高い位置となり、微細藻類の回収が行われないようになっている。
なお、微細藻類の培養完了は、たとえば微細藻類が所定量の有機物を吸収して成長したと判断される場合であり、このような有機物吸収量は、有機物供給ライン12から追加された有機物量や、プール内に残存する有機物量から算出できる。
【0033】
図示のスカム回収装置40は、藻類培養プール11の縦壁周辺に配置したフロート式とされ、微細藻類回収工程では、上述した循環対流により培養液面を浮遊して流れる微細藻類Mからなるスカムをフロート部の回収容器41内に導入し、微細藻類Mを培養液から分離させて回収する。
この場合、スカム回収装置40の回収容器41は、微細藻類Mの成長工程において、浮力調整やリフト装置等の手段により入口高さが喫水線より高く設定され、微細藻類Mを回収しない状態とされるが、微細藻類の回収時には入口高さが喫水線まで下げられる。
また、スカム回収時にはエアレーションノズル30の空気流を増加させ、成長した微細藻類Mの回収率を向上させる。
【0034】
回収容器41内に分離回収した微細藻類Mは、藻類回収配管42の途中に設けたエジェクタ43により吸引されて次工程に導かれる。具体的には、回収された微細藻類Mは、微細藻類乾燥粉砕装置2を経てボイラ蒸気発生器3で直接燃焼させるか、あるいは、バイオ燃料の製造装置(不図示)へ供給される。
エジェクタ43は、分岐弁24を操作してブロワ21から圧送される加圧空気の流路を加圧空気供給管22から分岐配管44に変更することにより、エジェクタ43を通過して大気へ排出される加圧空気の流れが形成する負圧により、回収容器41から微細藻類Mを吸引する。
【0035】
熱交換器50は、培養液中に配設されて加圧空気から放熱し、培養液の温度を上昇させる加熱器となる。すなわち、ブロワ21で加圧された空気は温度上昇するので、ブロワ21から圧送される加圧空気を熱交換器50に導入すれば、加熱空気により培養液を加熱することができる。
【0036】
一方、熱交換器50を通過した加熱空気は、培養液に放熱して温度低下するので、加熱空気の湿度は相対的に上昇する。このため、たとえば培養液に海水を使用するような場合には、エアレーションノズル30のスリット32に海水中の海水中の塩分等が海水塩として析出しにくくなる。
すなわち、スリット32付着した析出物は、スリットの間隙を狭めたり、あるいは、スリットを塞いだりする結果、散気膜の圧力損失を増大させることになるが、加熱空気の湿度を高くすることで析出物によるファウリングの問題を解消することができる。このようなファウリングの解消は、上述した加湿装置23による加圧空気の加湿も同様に有効である。
【0037】
このように構成された微細藻類培養回収装置10は、培養液中で培養される微細藻類がエアレーションによって成長に必要な酸素の供給を受け、さらに、エアレーションにより形成される循環対流でプール内が撹拌されるため、微細藻類を効率よく培養して成長を促進することができる。こうして培養が完了した微細藻類は、スカム回収装置40を作動させることにより、エアレーションにより形成される循環対流に流され、回収容器41に流入してスカム回収装置40に回収される。
【0038】
そして、微細藻類の培養中には、培養液中に設置された熱交換器50を介して加圧空気から培養液に放熱されるため、培養液の温度を適温まで上昇させるように温度調整して成長を促進することができる。
ちなみに、微細藻類がオーランチオキトリウムの場合、培養による藻類の倍加時間は、すなわち、培養する藻類が成長して2倍に増えるまでの時間は、培養液の温度が10℃で12時間程度、20℃で4.2時間程度、30℃で2.1時間程度といわれている。従って、熱交換器50による加圧空気の放熱を利用して培養液を加熱することは、上述したファウリングの防止に加えて、微細藻類を低エネルギで効率よく成長させるためにも有効となる。
【0039】
ところで、上述した微細藻類培養回収装置10を火力発電プラント1に適用すると、たとえば排熱回収装置6等から排熱の供給を受けることができる。
そこで、たとえば図5に示す微細藻類培養回収装置10Aのように、ボイラ蒸気発生器3の下流に設けた排熱回収装置6から培養液中に配設され排熱熱交換器60に排熱を導入して放熱させることが可能になる。
【0040】
このような排熱利用により、培養液の温度を適温まで上昇させるように温度調整して微細藻類の成長を促進することができる。すなわち、上述した熱交換器50による加熱昇温に加えて、排熱熱交換器60による加熱昇温も可能になるので、培養液の加熱能力を増すことで温度調整が容易になる。
特に、微細藻類の成長速度が増すように、培養液を高温に温度調整することが容易になるので、排熱の有効利用によって微細藻類を低エネルギで効率よく成長させることができる。なお、図中の符号61は、排熱供給配管である。
【0041】
また、図5に示す微細藻類培養回収装置10Aでは、微細気泡発生装置20のブロワ21が、開閉弁の開閉操作により、空気またはボイラ蒸気発生器3から排出される燃焼排ガスのいずれか一方を選択して昇圧可能に構成されている。
このような構成にすれば、微細藻類培養回収装置10Aを構成するひとつの藻類培養プール11で培養回収する微細藻類について、非光合成の微細藻類または光合成の微細藻類のいずれか一方を適宜選択して切り替えることが可能になる。
【0042】
すなわち、大気から吸入した空気をブロワ21で昇圧すれば、藻類培養プール11内に放出される空気の微細気泡によってエアレーションが行われるので、酸素を必要とする非光合成の微細藻類を培養できる培養装置となる。しかし、排煙処理を施した燃焼排ガスをブロワ21で昇圧すれば、藻類培養プール11内に放出される主として二酸化炭素の微細気泡によってエアレーションが行われるので、二酸化炭素を必要とする光合成の微細藻類を培養できる培養装置となる。
図6は、上述した微細藻類培養回収装置10Aを大規模な火力発電プラントに適用する場合において、微細藻類培養回収装置10Aの配置例が示されている。
【0043】
また、図7に示す微細藻類培養回収装置10Bは、藻類培養プール11内の培養液中に酸素を供給するとともに培養液の循環流を形成する循環装置として、上述した微細気泡発生装置20に代えてエアリフトポンプ70が採用されている。
このエアリフトポンプ70は、一端に培養液入口71を備えて他端に培養液出口72を備えた管状のポンプ本体73に空気を供給し、ポンプ本体73内を空気が上昇する際に内部の培養液を引き上げることによって流れを形成するものである。なお、図7に示す微細藻類培養回収装置10Bにおいては、排熱供給系統や有機物供給系統等に関する図示が省略されている。
【0044】
ポンプ本体73の培養液入口71は、プール底面近傍の側壁面に開口し、培養液出口72は、引き上げた培養液をプール内の培養液面上に設けた受け面15に向けて流下させるように開口している。
受け面15に落下した培養液は、プール内を分割する仕切壁16により形成されたU字状の流路を矢印f1〜f3のように流れ、培養液入口71から再度エアリフトポンプ70に吸引されて循環するので、プール内には培養液の循環流が形成される。このとき、エアリフトポンプ70に供給される空気が気泡となり、微細藻類の成長に必要な酸素が供給される。
なお、図8は、上述した微細藻類培養回収装置10Bを大規模な火力発電プラントに適用する場合において、微細藻類培養回収装置10Bの配置例が示されている。
【0045】
このような微細藻類培養回収装置10Bを採用した火力発電プラントは、循環装置にエアリフトポンプ70を採用したので、培養液中にエアレーションノズル30が多数存在するものと比較して、培養液中のメンテナンス対象部品がほとんどない。
従って、メンテナンスが容易な装置となり、しかも、火力発電プラント1の排熱を排熱熱交換器60で利用することも可能であるから、プール内の培養液を加熱して温度調整することもできる。
【0046】
すなわち、本実施形態の微細藻類培養回収装置10Bを備えた火力発電プラント1においても、上述した微細藻類培養回収装置10を備えたプラントと同様に、微細藻類を効率よく培養して回収し、この微細藻類を直接燃焼させるボイラ蒸気発生器3で、あるいは、この微細藻類から製造されるバイオ燃料を燃焼させるボイラ蒸気発生器3で蒸気を生成して、この蒸気で蒸気タービン及び蒸気タービン発電機4を駆動して発電を行うことができる。
【0047】
このように、上述した本実施形態によれば、高効率かつ低エネルギで非光合成の微細藻類を生成することができ、火力発電プラント向けの燃料として、微細藻類由来燃料を低コストで大量生産することが可能となる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 火力発電プラント
2 微細藻類乾燥粉砕装置
3 ボイラ蒸気発生器
4 蒸気タービン発電機
10、10A、10B 微細藻類培養回収装置
11 藻類培養プール
20 微細気泡発生装置(循環装置)
21 ブロワ
22 加圧空気供給配管
22a ヘッダ配管
23 加湿装置(水分供給手段)
24 分岐弁
30 エアレーションノズル
31 散気膜
32 スリット
40 スカム回収装置
41 回収容器
43 エジェクタ
50 熱交換器
60 排熱熱交換器
70 エアリフトポンプ(循環装置)
M 微細藻類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を吸収して生育する非光合成の微細藻類を培養して回収する微細藻類培養回収装置であって、
有機物を含む所定量の液体を満たした培養液中で前記微細藻類を培養して成長させる藻類培養プールと、
前記培養液中に配設されたエアレーションノズルに加圧空気を供給して微細気泡を発生させるエアレーションを行って循環対流を発生させる微細気泡発生装置と、
前記培養液面に配設されたスカム回収装置と、
前記培養液中に配設されて前記加圧空気から放熱させる熱交換器と、
を備えていることを特徴とする微細藻類培養回収装置。
【請求項2】
前記微細気泡発生装置は、空気を昇圧させて前記加圧空気とする吐出手段と、前記加圧空気を前記エアレーションノズルに供給する加圧空気供給配管と、前記加圧空気供給配管に水分を供給する水分供給手段とを具備し、スリットを有する散気膜を備えた前記エアレーションノズルに水分を含んだ空気が供給されることを特徴とする請求項1に記載の微細藻類培養回収装置。
【請求項3】
前記スカム回収装置に回収されて溜まった前記微細藻類は、前記吐出手段の出口から前記加圧空気の一部を分岐させて導入するエジェクタにより前記藻類培養プールの外部へ吸引回収されることを特徴とする請求項2に記載の微細藻類培養回収装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の微細藻類培養回収装置と、前記微細藻類培養回収装置で回収した前記微細藻類を直接、あるいは、前記微細藻類から製造されるバイオ燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラ蒸気発生器と、前記ボイラ蒸気発生器から供給される蒸気で運転される蒸気タービンを駆動源にして発電を行う蒸気タービン発電機と、を具備して構成されることを特徴とする火力発電プラント。
【請求項5】
前記ボイラ蒸気発生器の下流に設けた排熱回収装置から、前記培養液中に配設され排熱熱交換器に排熱を導入して放熱させることを特徴とする請求項4に記載の火力発電プラント。
【請求項6】
前記吐出手段が、前記空気または前記ボイラ蒸気発生器から排出される燃焼排ガスのいずれか一方を選択して昇圧可能に構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の火力発電プラント。
【請求項7】
有機物を含む所定量の液体を満たした培養液中で有機物を吸収して生育する非光合成の微細藻類を培養して成長させる藻類培養プールと、前記培養液中に酸素を供給するとともに循環流を形成するエアリフトポンプと、前記培養液面に配設されたスカム回収装置と、前記培養液中に配設されて排熱回収装置から排熱を導入して放熱させる排熱熱交換器とを備えている微細藻類培養回収装置と、
前記微細藻類培養回収装置で回収した前記微細藻類を直接、あるいは、前記微細藻類から製造されるバイオ燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラ蒸気発生器と、
前記ボイラ蒸気発生器から供給される蒸気で運転される蒸気タービンを駆動源にして発電を行う蒸気タービン発電機と、
を具備して構成されることを特徴とする火力発電プラント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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