説明

微細貫通孔成形装置、微細貫通孔成形品の製造方法、およびその方法により製造されたミスト形成用フィルター

【課題】簡易かつ短時間に、合成樹脂のシートに多数の微細な貫通孔を容易に形成することが可能な微細貫通孔成形装置を提供する。
【解決手段】微細貫通孔成形装置10は、受台11と、基材シート20を支持するバックシート12と、下方部に多数の突状部31を有する超音波成形型30とを備えている。超音波成形型30は、上下方向に移動可能となり、かつ突状部31が超音波振動する。受台11表面に、超音波成形型30の突状部31に対応する位置に多数の突起18が設けられている。突状部31と突起18との間で基材シート20およびバックシート12を挟持した状態で、突状部31を超音波振動させて基材シート20を振動加熱し、突状部31により基材シート20を貫通して、基材シート20に多数の微細貫通孔41を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂からなる基材シートに多数の微細貫通孔を形成するための微細貫通孔成形装置、微細貫通孔成形装置を用いて多数の微細貫通孔を有する微細貫通孔成形品を製造する微細貫通孔成形品の製造方法、およびこのような微細貫通孔成形品の製造方法によって製造されたミスト形成用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属シートに対して多数の微細な貫通孔を形成することが行われている。この場合、まず金属シートにフォトリソグラフィ法によって所定のパターンをパターニングし、その後、これに化学エッチングまたはドライエッチングを施すことにより、多数の貫通孔を形成するのが一般的である。またレーザービーム、電子ビーム、中性子ビームで貫通孔をあける方法もある。
【0003】
しかしながら、このような方法を用いた場合、加工上の制約を受けることにより、微細な貫通孔の形状を機能用途に合わせて自在に設定することは困難である。また、対象となるシートはガラス、半導体、金属等に限られる。さらに、貫通孔を形成するための工程数が多いため、多数の製造装置を用いる必要がある(例えば、特開平5−28912号公報)。
【0004】
一方、合成樹脂製のシートに多数の微細な(例えば直径100μm以下の)貫通孔を形成しようとする場合、ナノインプリント技術(金型に形成された微細な凹凸を樹脂材料上に転写する技術)を用いることも考えられる。しかしながら、ナノインプリント技術を用いた場合、樹脂材料表面に微細な凹凸を形成することはできるが、樹脂材料を貫通する貫通孔を形成することはできない。
【0005】
また、合成樹脂製のシートに多数の微細な貫通孔を形成する場合、射出成形方法を用いることも考えられる。しかしながら、この場合、金型内で溶融樹脂がうまく流動せず、微細な貫通孔を形成することはできない。さらに、圧縮成形方法を用いたとしても、同様に微細な貫通孔を形成することはできない。このように、合成樹脂製のシートに多数の微細な貫通孔を形成することは容易でない。
【0006】
ところで、本出願人は、特開2010−137313号公報において、超音波振動する突状部を有する超音波成形型を用いて、合成樹脂からなる基材シートに多数の微細貫通孔を形成することが提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−28912号公報
【特許文献2】特開2010−137313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2010−137313号公報で提案されている微細貫通孔成形装置は、超音波振動する突状部を合成樹脂からなる基材シートに当接させて、超音波振動のエネルギーを熱エネルギーに変えて基材シートを局部的に溶融させて、突状部の形状を基材シートに賦型することにより、基材シートに多数の微細貫通孔を形成するものである。しかしながら、形成しようとする微細孔の直径が小さかったり孔数が多い場合に、貫通孔を形成するのに時間を要する場合があった。
【0009】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、簡易かつ短時間に、合成樹脂のシートに多数の微細な貫通孔を容易かつ効率的に形成することが可能な微細貫通孔成形装置、微細貫通孔成形品の製造方法、およびこのような方法を用いて作成されたミスト形成用フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置は、受台と、受台上に保持され、耐熱性を有するとともに合成樹脂製の基材シートを支持するバックシートと、バックシート上方に配置され、下方部に多数の突状部を有する超音波成形型とを備え、超音波成形型は、上下方向に移動可能となり、かつ突状部が超音波振動し、受台表面に、超音波成形型の突状部に対応する位置に多数の突起が設けられ、超音波成形型の突状部と受台の突起との間で基材シートおよびバックシートを挟持した状態で、超音波成形型の突状部を超音波振動させて基材シートを振動加熱し、突状部により基材シートを貫通して、基材シートに多数の微細貫通孔を形成することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置において、受台の突起は、断面台形状または断面長方形状を有し、突起の表面に、バックシートに当接する平坦面が形成されてもよい。
【0012】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置において、受台の突起は、断面弓形状を有し、突起の表面に、バックシートに当接する湾曲面が形成されていてもよい。
【0013】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置において、バックシートの上面に、基材シートに対して剥離性を有するバックシート剥離層が形成されていてもよい。
【0014】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置において、受台に、受台上面を所望の温度に加温して、バックシート上方に配置された基材シートを所望の温度に加熱できる温度制御装置が接続されていてもよい。
【0015】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置において、突状部が基材シートを貫通してバックシートに当接した後、受台は、温度制御装置により降温して、基材シートを、合成樹脂のガラス温度ないし軟化温度以下の温度となるまで冷却してもよい。
【0016】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置において、超音波成形型は、基材シートが冷却された後、上昇し、突状部が基材シートから抜出されてもよい。
【0017】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置において、突出部は、超音波振動しながら基材シートから抜出されてもよい。
【0018】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置において、超音波成形型は、突状部が基材シートに貫入する際に負荷重がかかるように降下し、突状部がバックシートに当接すると降下が停止してもよい。
【0019】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置において、突状部は、基材シートに当接してからバックシートに当接するまでの間、徐々に振幅が小さくなるように減衰振動し、バックシートに当接すると超音波振動が停止してもよい。
【0020】
また、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法は、上記微細貫通孔成形装置を用いて、微細貫通孔成形品を製造する方法であって、受台上に耐熱性を有するバックシートを保持する工程と、バックシート上に合成樹脂製の基材シートを支持する工程と、バックシート上方に予め配置され、下方部に多数の突状部を有する超音波成形型を下降させて、超音波振動する突状部を基材シートに当接させて、基材シートを振動加熱し、基材シートのうち突状部が当接した部分を軟化ないし溶融させる工程と、超音波成形型をさらに下降させて、超音波成形型の突状部と受台の突起との間で、軟化ないし溶融した基材シートおよびバックシートを挟持し、この状態で、超音波成形型の突状部を超音波振動させて基材シートを振動加熱し、突状部により基材シートを貫通して、基材シートに多数の微細貫通孔を形成する工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法において、超音波成形型の突状部が基材シートに当接する前に、受台を加温することにより、基材シートを合成樹脂のガラス転移温度ないし軟化温度付近まで加熱する工程を更に備えてもよい。
【0022】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法において、突状部が基材シートに貫入する際に負荷重がかかるように、超音波成形型を下降させてもよい。
【0023】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法において、微細貫通孔の形成工程において、突状部が基材シートに当接してからバックシートに当接するまでの間、徐々に振幅が小さくなるように超音波成形型を減衰振動させ、突状部がバックシートに当接すると超音波振動を停止させてもよい。
【0024】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法において、微細貫通孔の形成工程の後、超音波成形型を上昇させて突状部を基材シートから抜出する工程をさらに備えてもよい。
【0025】
本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法において、突状部の抜出工程において、突出部を超音波振動させながら、基材シートから抜出してもよい。
【0026】
また、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品は、上記微細貫通孔成形品の製造方法により得られる。
【0027】
さらに、本発明の一実施の形態によるミスト形成用フィルターは、合成樹脂製の基材シートに多数の微細貫通孔が形成されたミスト形成用フィルターであって、前記ミスト形成用フィルターは、上記微細貫通孔成形品の製造方法によって得られたものであり、貫通孔の直径が、基材シートの表裏において異なっており、一方の面の直径が1〜10μmであり、他方の面の直径が20〜80μmであることを特徴とする。
【0028】
本発明の一実施の形態によるミスト形成用フィルターにおいて、貫通孔が、200〜1000個/mmであってもよい。
【0029】
本発明の一実施の形態によるミスト形成用フィルターにおいて、貫通孔が末広がりのコニーデ形状を有していてもよい。
【0030】
また、本発明の一実施の形態によるミスト発生装置は、超音波振動子を振動させて液体をミスト化するミスト発生装置であって、超音波振動子とミスト発生口との間に、上記ミスト形成用フィルターが設けられていることを特徴とする。
【0031】
本発明の一実施の形態によるミスト発生装置において、ミスト形成用フィルターは、微細貫通孔の直径が大きい側が超音波振動子側となるように配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の微細貫通孔成形装置によれば、超音波成形型の突状部と受台の突起との間で基材シートおよびバックシートを挟持した状態で、超音波成形型の突状部を超音波振動させて基材シートを振動加熱し、突状部により基材シートを貫通して、基材シートに多数の微細貫通孔を形成する。これにより、超音波成形型により基材シートを効率的に溶融ないし軟化させることができ、基材シートに貫通孔を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置を示す概略正面図。
【図2】図1の微細貫通孔成形装置の一部を拡大した拡大概略断面図。
【図3】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置の超音波成形型を示す正面図。
【図4】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置の超音波成形型を示す底面図(図3のIV方向矢視図)。
【図5】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置の超音波成形型を示す垂直断面図(図4のV−V線断面図)。
【図6】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置の超音波成形型を作製する方法を示す概略斜視図。
【図7】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置の超音波成形型を作製する方法を示す概略断面図。
【図8】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法を示す概略図。
【図9】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法を示す拡大概略断面図。
【図10】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法において、超音波成形型の突状部先端の挙動を示す図。
【図11】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品を示す平面図。
【図12】本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品を示す垂直断面図(図11のXII−XII線断面図)。
【図13】本発明の一実施の形態によるミスト発生装置の一部を拡大した拡大概略断面図。
【図14】微細貫通孔成形装置の変形例を示す拡大概略断面図。
【図15】微細貫通孔成形装置の変形例を示す拡大概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1〜図13は本発明の一実施の形態を示す図である。
【0035】
<微細貫通孔成形装置>
まず、図1により微細貫通孔成形品を成形する微細貫通孔成形装置の全体構成について説明する。
【0036】
図1に示すように、微細貫通孔成形装置10は、固定された受台11と、受台11上に保持され、耐熱性を有するとともに合成樹脂からなる基材シート20を支持するバックシート12とを備えている。
【0037】
受台11は、温度制御装置16により、その上面(後記する突起18および表面19)を所望の温度に加熱できるようになっており、バックシート12を介して基材シート20を加熱できるようになっている。
【0038】
バックシート12は、耐熱性を有する(溶融温度が250℃以上である)とともに弾性変形により振動を吸収する振動吸収性及び貫入圧に抗して接触圧を発生するスプリングバック性を有することが好ましい。またバックシート12は、基材シート20に対して剥離性に優れているものであることが好ましい。例えば、本実施の形態においては、バックシート12の上面に、基材シート20に対して剥離性を有するバックシート剥離層12aが形成されている。このようなバックシート12としては、例えばポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、フッ素コーティングされた層やシリコン樹脂コーティングされた層(バックシート剥離層)12aを有する耐熱プラスチックのシート等、またはこれらを積層して組合せたもの等を用いることができる。
【0039】
一方、基材シート20は、超音波により溶融する性質を有する熱溶融性プラスチックからなっているが、ある程度の剛性および耐熱性を有することが好ましい。この場合、基材シート20の溶融温度は、バックシート12の溶融温度より50℃以上低いことが好ましい。仮に基材シート20の溶融温度とバックシート12の溶融温度とが近い場合、基材シート20の成形時に、バックシート12が熱変形してしまうからである。このような基材シート20の材料としては、例えばポリカーボネート(PC)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、結晶性ポリエチレンテレフタレート、延伸性ポリエチレンテレフタレート、メタクリル酸エステル重合体(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ABS等を用いることができる。その他、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリメチルペンテン(PMP)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性プラスチックを適用することもできる。なお、基材シート20の厚みは任意であるが、後述する超音波成形型30の振動幅および超音波成形型30の上下方向の位置精度から考えて、10μm〜1mm程度とすることが好ましい。
【0040】
また、微細貫通孔成形装置には、図1に示すように、バックシート12内を貫通する吸引部13が設けられている。この吸引部13を介して真空吸引することにより、基材シート20をバックシート12上に固定保持できるようになっている。
【0041】
さらにバックシート12の上方には、超音波ホーン型からなる超音波成形型30が配置されている。超音波成形型30は、ベース部33と、ベース部33に取り付けられ、下方部に多数の突状部31が形成されたホーンヘッド32とを有している。さらに超音波成形型30に加熱装置14が接続されており、加熱装置14により超音波成形型30の多数の突状部31を補助的に加熱できるようになっている。超音波成形型30が超音波振動することによる加熱に加え、このような加熱装置14を補助的に用いることにより、超音波成形型30の突状部31を効率よく加熱することができる。
【0042】
また、超音波成形型30に成形型制御装置15が接続されている。超音波成形型30は、この成形型制御装置15により制御され、上下方向に昇降移動するとともに、上下方向に超音波振動する。この成形型制御装置15による超音波成形型30の昇降位置精度および超音波振動の振幅精度は、いずれも1μmオーダーであることが好ましい。
【0043】
超音波成形型30は、成形型制御装置15により制御され、その先端に設けられた突状部31が上下方向に超音波振動しながら下降し、基材シート20に当接して基材シート20を振動加熱する。この振動加熱のみによって、基材シート20を軟化ないし溶融させて超音波成形型30により基材シート20を賦型するのには時間を要する。超音波振動のエネルギーを増加させると、振動の振幅も大きくなるため、形成しようとする貫通孔の位置精度が低下してしまう。本発明においては、上記したように、受台11が昇温して基材シート20をガラス転移温度ないし軟化温度付近まで加熱できるため、位置精度を保てるような超音波振動エネルギーを基材シート20に付与すれば、容易に基材シート20を賦型できる状態(即ち、基材シート20が軟化ないし溶融した状態)にすることができる。その結果、簡易かつ短時間に、合成樹脂の基材シート20に多数の微細な貫通孔を容易に形成することができる。
【0044】
受台11は、基材シート20の温度がガラス転移温度ないし軟化温度付近となるように温度制御されるが、好ましくは、合成樹脂の軟化温度よりも少し低い温度となるように制御される。基材シート20の温度が、合成樹脂の軟化温度以上の温度となると、基材シート20の加熱されている部分全体が軟化し始める。基材シート20の超音波成形型30の突状部31が当接する部分以外の部分が軟化すると、精度の高い貫通孔が形成できなくなる場合がある。基材シート20の温度は、軟化温度よりも1〜50℃、より好ましくは約5〜30℃低い温度が好適である。
【0045】
本実施の形態において、図1および図2に示すように、受台11の表面(上面)に、超音波成形型30の突状部31に対応する位置に多数の突起18が設けられている。すなわち、各突起18の真上には、それぞれ対応する突状部31の先端が位置しており、換言すれば、各突起18の位置は、貫通孔(例えば後述する微細貫通孔41)の位置に対応している。なお、各突起18の形状は互いに同一であり、各突起18は受台11の表面において等間隔に配列されている。
【0046】
図2に示すように、受台11の突起18は、円錐台形状からなり、断面台形状を有しており、突起18の表面には、バックシート12に当接する円形の平坦面18aが形成され、平坦面18aの周囲には傾斜面18bが形成されている。また、受台11の表面のうち、突起18を除く部分には、平坦な表面19が形成されており、表面19とバックシート12との間には空隙が形成されている。なお、突起18の形状は、円錐台形状のほか、多角錐台形状としても良い。
【0047】
この場合、各突起18の平坦面18aの幅waは、微細貫通孔成形品40の形状によって任意に定めることができるが、例えば6μm〜60μm程度とすることができる。また、隣接する突起18同士間の距離Laは、同様に微細貫通孔成形品40の配置ピッチPによって任意に定めることができるが、例えば30μm〜200μm程度とすることができる(すなわち距離La=ピッチPとなる)。各突起18の高さha(すなわち表面19とバックシート12との間の距離)も同様に任意に定めることができるが、例えば3μm〜30μm程度とすることができる。
【0048】
このような構成とすることにより、基材シート20のうち微細貫通孔41が形成される部分周辺に集中的に、超音波成形型30の突状部31からの振動エネルギーを加えることができる。また、受台11からの熱が、基材シート20のうち貫通孔が形成される部分以外の領域に伝達されにくくなる。このことにより、超音波成形型30を用いて基材シート20を効率的に溶融ないし軟化させることができ、基材シート20に貫通孔を精度良く容易に形成することができる。また、基材シート20のうち貫通孔が形成される部分を先行させて重点的に加熱することができるので、基材シート20全体を加熱するのではないため、基材シート20が熱によって変形することを最小限に抑えることができる。すなわち図11に示す微細貫通孔成形品40において、円形開口41a周縁に位置する孔周縁部40aはもっとも高温になり、もっとも変形する部分であり、肉厚部40cは、変形が少なく、加熱が遅れた低温の部分となる。
【0049】
また、図1に示すように、受台11には第1の位置決め機構71が設けられ、超音波成形型30には第2の位置決め機構72が設けられている。これら第1の位置決め機構71および第2の位置決め機構72により、受台11および超音波成形型30の水平方向の位置決めが行われる。受台11と超音波成形型30との位置精度は、±5μm以下であることが好ましく、±3μm以下であることが更に好ましい。なお、第1の位置決め機構71および第2の位置決め機構72としては、例えば超音波成形型30と受台11に各々対向する2箇所に位置合わせマークを付設して、これ等をCCD画像処理により位置合わせする方法のような光学的な位置決め機構を用いることができる。
【0050】
図1において、成形型制御装置15により超音波成形型30を下降させ、超音波振動する突状部31を基材シート20に当接させて、基材シート20を振動加熱する。これにより突状部31が当接した部分の基材シート20が軟化ないし溶融する。基材シート20が軟化ないし溶融すると、成形型制御装置15により、超音波成形型30がさらに下降して、超音波成形型30の突状部31と受台11の突起18との間で基材シート20およびバックシート12を挟持する。この状態で、超音波成形型30の突状部31を超音波振動させて基材シート20を振動加熱し、超音波成形型30の先端に設けられた突状部31が基材シート20に貫入する。突状部31の先端が、バックシート12に達すると、成形型制御装置15により、超音波成形型30の超音波振動が停止するとともに、振動エネルギーの付加による加熱も停止し、基材シート20の上面および下面からの熱伝導による冷却に移行する。基材シート20の上面では、ガラス転移点ないし軟化温度以下に温調された突状部31により基材シート20が冷却される。また一方基材シート20の下面は、温度制御装置16により、受台11を降温して基材シート20を冷却するか、あるいは、温度制御装置16により受台11の温度を合成樹脂のガラス転移温度ないし軟化温度以下の温度となるように制御し、基材シート20から受台11への熱伝導により、基材シート20を所望の温度に冷却する。
【0051】
上記のようにして冷却された基材シート20の、超音波成形型30が接している部分(突状部31が貫入している部分)の合成樹脂が固化した後、成形型制御装置15により、超音波成形型30を上方に移動させて、突状部31を抜出する。この時、突状部31が基材シート20に形成された貫通孔から剥離しない場合もあり、超音波成形型30が上方に移動するのに伴って、超音波成形型30のホーンヘッド32下端にある突状部31とともに基材シート20も上方に持ち上がり、微細な貫通孔を変形させてしまうことがある。本発明においては、超音波成形型30を再度、超音波振動させることにより、突状部31の抜出が容易にすることができる。その結果、基材シートに、より精度の高い貫通孔を形成することができる。
【0052】
<超音波成形型>
次に、図3〜図5により、上述した超音波成形型30の構成について更に説明する。
【0053】
図3に示すように、超音波成形型30は、上方から下方に向けて先細となる形状を有するベース部33と、ねじ部32bによりこのベース部33下端に螺着されたホーンヘッド32とを有している。このうちホーンヘッド32下端には、円筒形の先端凸部32aが形成されている。さらにこの先端凸部32aから下方に向けて多数の突状部31が突設されている。なおホーンヘッド32は、例えばチタン、アルミニウム、鋼鉄、ステンレス鋼等の金属からなっている。また、突状部31をこれらの金属上に設けたNiメッキ層、Crメッキ層により構成することもできる。ベース部33は、上方から下方に向けて徐々に直径が小さくなる円形の水平断面を有している。
【0054】
次に。図4および図5により、超音波成形型30の突状部31の構成について更に説明する。図4および図5に示すように、ホーンヘッド32の先端凸部32a上に、互いに同一形状を有する多数の突状部31が形成されている。各突状部31は、それぞれ山形形状を有している。すなわち各突状部31は、平面円形状の頂部31aと、頂部31aから周囲に延びる裾部31bとを有している。このうち裾部31bは、頂部31a側からホーンヘッド32の先端凸部32a側に向けて徐々に直径が大きくなる円形の水平断面を有している。なお、超音波成形型30の振幅を小さく設定したい場合には、超音波振動子に合わせて、逆に上方から下方に向けて徐々に直径が小さくなるようにしても良く、あるいは、同径としても良い。さらに、隣接する頂部31aの間には谷部31cが形成されている。なお各突状部31は、抜きテーパーを有する任意の形状であれば良いが、とりわけ各突状部31先端を鋭角的に形成することが好ましい。各突状部31先端を鋭角にすることにより、成形の際、基材シート20に最初に接触する部分の面積を小さくすることができる。このことにより、振動エネルギーを基材シート20に伝えやすくし、基材シート20の溶融を開始させやすくすることができる。
【0055】
図5において、各突状部31の頂部31aの直径d1は、微細貫通孔成形品40の形状によって任意に定めることができるが、例えば1μm〜10μm程度とすることが好ましい。隣接する頂部31a同士間の距離L1は、同様に微細貫通孔成形品40の形状によって任意に定めることができるが、例えば20μm〜100μm程度とすることが好ましい。各突状部31の高さh1も同様に任意に定めることができるが、例えば10μm〜100μm程度とすることが好ましい。
【0056】
次に、図6および図7により、このような超音波成形型30を作製する方法、とりわけ超音波成形型30の複数の突状部31を形成する方法について説明する。
【0057】
まず、例えばチタン等からなる未加工のホーンヘッド32を準備する。次に、この未加工のホーンヘッド32を超精密切削加工機36に装着する。ここで超精密切削加工機36は、図5および図6に示すように、先端にダイヤモンド刃先38が設けられた切削工具37を有している。このような超精密切削加工機36としては、1nm程度の制御精度を有し、かつ加工後の金型の表面粗さRaが数nmとすることができるものが好ましい。具体的には、超精密切削加工機36として、例えばファナック株式会社製の超精密ナノ加工機(ROBONANO)等を挙げることができる。
【0058】
次に、超精密切削加工機36の切削工具37は、軸A1を中心に時計回りに回転(自転)しながらホーンヘッド32の先端凸部32aに当接する。続いて切削工具37は、ホーンヘッド32の先端凸部32aのうち、各突状部31の頂部31aとなる部分を中心に時計回りに回転(公転)しながら、ホーンヘッド32の先端凸部32aを切削加工する。この結果、ホーンヘッド32の先端凸部32aに、頂部31aと裾部31bとを有する山形形状の突状部31が形成される。その後、このような作業を突状部31の個数分繰り返すことにより、ホーンヘッド32の先端凸部32a上に多数の突状部31が形成される。
【0059】
<微細貫通孔成形品の製造方法>
次に、図8(a)〜(f)、図9(a)〜(d)および図10を参照しながら、上記した微細貫通孔成形装置10を用いて微細貫通孔成形品40を製造する方法について説明する。
【0060】
まず、製造しようとする微細貫通孔成形品40の3次元形状データに基づき、超精密切削加工機36を用いてホーンヘッド32を切削加工し、上記したような方法によって超音波成形型30を作製する。
【0061】
続いて、超音波成形型30を微細貫通孔成形装置10に装着するとともに、加熱装置14により超音波成形型30を、通常の室温(20℃)から基材シート20を構成する合成樹脂のガラス転移点温度ないし軟化温度の付近の温度でかつ基材シート20が成形後に硬化して変形しない温度となるように加熱する。
【0062】
次いで、受台11上にバックシート12を保持し、このバックシート12上に基材シート20を載置する。また、吸引部13により真空吸引することにより、基材シート20をバックシート12上で動かないように固定支持する(図8(a))。
【0063】
続いて、温度制御装置16により受台11を加温して、基材シート20を合成樹脂のガラス転移温度ないし軟化温度付近まで加熱する。
【0064】
次に、成形型制御装置15により、バックシート12上方に予め配置された超音波成形型30を上下方向に超音波振動させ、さらにこのように超音波振動させた状態で超音波成形型30を基材シート20に向けて下降させる(図9(a))。なお、この場合、超音波成形型30の振動数は任意に設定することができるが、20kHz〜40kHz程度に設定することが好ましい。
【0065】
超音波成形型30の下降により、各突状部31が基材シート20に当接する。この際、基材シート20のうち各突状部31が接触した箇所が超音波振動の振動エネルギーにより振動加熱される。この振動エネルギーによる振動加熱と、受台11から加えられる熱エネルギーにより、基材シート20を構成する合成樹脂が軟化ないし溶融温度まで達し、その結果、基材シート20のうち突状部31が当接している部分のみが先行して局所的に軟化ないし溶融する(図8(b)、図9(b))。
【0066】
続いて、超音波成形型30を更に下降させる。この間、超音波成形型30の各突状部31は、超音波振動により基材シート20を加熱しながら、基材シート20中を貫入していく(図9(c))。このとき、超音波成形型30の各突状部31と、受台11の各突起18との間で、軟化ないし溶融した基材シート20と、バックシート12が挟持されている。また、超音波成形型30が下降している間、突状部31が基材シート20に貫入する際に負荷重がかかるようにしておく。この状態で、超音波成形型30の突状部31は超音波振動されて、基材シート20が振動加熱され、突状部31により基材シート20が貫通する。このようにして、超音波成形型30の各突状部31先端がバックシート12(バックシート剥離層12a)に当接する。(図8(c)、図9(d))。
【0067】
各突状部31の先端がバックシート12に当接したとき、超音波成形型30の下降を停止させる。この時、負荷重をモニターしておくことにより、バックシート12に突状部31が当接したことがわかるため、負荷重のモニタリングにより、超音波成形型30の下降移動を制御してもよい。その後、各突状部31先端の振動下端がバックシート12の表面上に位置するように維持したまま、超音波成形型30の超音波振動の振幅を徐々に減衰させていき、最終的に停止させる。
【0068】
このように超音波成形型30が下降する間、超音波成形型30は、成形型制御装置15により制御され、成形時の前段において大きな振幅をもち、成形時の後段において小さな振幅をもつように振動することが好ましい。
【0069】
具体的には、図10に示すように、超音波成形型30は、突状部31先端がバックシート12に当接するまで相対的に大きな振幅で振動しながら下降する(図10の時間T1)。これに対して、突状部31先端がバックシート12に当接した後、超音波成形型30は、徐々に振幅が小さくなるように減衰振動し、その後停止する(図10の時間T2)。なお、超音波成形型30が減衰振動している間、突状部31先端の振動下端は、バックシート12の表面上にくるように維持される(図10参照)。このように超音波成形型30の振動を制御することにより、微細貫通孔成形品40の微細貫通孔41を高精度で賦形することが可能となる。また、突状部31の貫入時に超音波成形型30の振幅を変動させることなく、同一の低振幅(2μm〜5μm)で基材シート20に貫入し、そのまま先端位置(バックシート12表面)に到達させ、負荷重をかけ押圧した状態で停止する方法もある。
【0070】
次に、振動が停止するのと同時に、予め設定温調した超音波成形型30および受台11の温度で基材シート20が冷却され、硬化される。更に硬化を確実にするためには加熱装置14が停止し、超音波成形型30を冷却すると同時に、温度制御装置16により受台11を降温して基材シート20が合成樹脂のガラス温度ないし軟化温度以下の温度となるまで冷却する。これにより、局部的に軟化ないし溶融していた基材シート20が固化し、基材シート20に多数の微細貫通孔41が形成され、基材シート20から多数の微細貫通孔41を有する微細貫通孔成形品40が成形される。この場合、図示しない冷却装置を用いることにより、超音波成形型30および基材シート20を積極的に冷却しても良い。
【0071】
次に、成形型制御装置15により超音波成形型30を上昇させる。この場合、超音波成形型30および微細貫通孔成形品40(基材シート20)は冷却されて寸法がわずかに縮んでいる。この状態で、微細貫通孔成形品40を超音波成形型30から離型することができる(図8(d))。また、微細貫通孔成形品40(基材シート20)が超音波成形型30に付着する場合には、まず超音波成形型30をわずかに上昇させ、そこで再度極短時間超音波成形型30を振動させることで、微細貫通孔成形品40を超音波成形型30から容易に離型することができる。
【0072】
続いて、吸引部13による真空吸引を停止し、受台11からバックシート12および微細貫通孔成形品40を取外す(図8(e))。最後に、バックシート12から微細貫通孔成形品40を剥離することにより、微細貫通孔成形品40が得られる(図8(f))。なお、受台11上に保持された状態のバックシート12から直接微細貫通孔成形品40を剥離しても良い。
【0073】
<微細貫通孔成形品>
次に、図11および図12により、上記した微細貫通孔成形装置10により成形された微細貫通孔成形品40の構成について説明する。図11は、微細貫通孔成形品を示す平面図であり、図12は、図11のXII−XII線断面図である。
【0074】
図11および図12に示す微細貫通孔成形品40は、微細貫通孔成形装置10を用いて基材シート20を成形することにより製造されたものである。このような微細貫通孔成形品40は、例えばフィルター部材、通気性部材、ネブライザーで使用される微粒液滴生成用のメッシュ等、様々な機能を発揮する部材として用いられる。このような微細貫通孔成形品40を構成する材料としては、上述したような各種の熱溶融性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、結晶性ポリエチレンテレフタレート、延伸性ポリエチレンテレフタレート、メタクリル酸エステル重合体(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ABS等が挙げられる。その他、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリメチルペンテン(PMP)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性プラスチックを適用することもできる。
【0075】
図11および図12に示すように、微細貫通孔成形品40は、成形品本体部42と、成形品本体部42の全体にわたって形成された複数の微細貫通孔41を有している。各微細貫通孔41は、それぞれ超音波成形型30の各突状部31によって賦形されたものであり、したがって、各突状部31の形状に対応する形状を有している。各微細貫通孔41は、成形品本体部42の一面42aに設けられた円形開口41aと、円形開口41aから成形品本体部42の他面の円形開口42b側に向けて延びる斜面部41bとを有している。斜面部41bは、直線や曲線としてよいが、特に、後記するようなミスト形成用フィルターとして微細貫通孔成形品40を使用する場合には、斜面部41bが放物線となるようなコニーデ形状の貫通孔とすることが好ましい。また、符号40aは、円形開口41a周縁に形成された孔周縁部であり、符号40bは、互いに隣接する微細貫通孔41同士の間に形成された接続部であり、符号40cは、微細貫通孔41の周囲に形成された肉厚部である。
【0076】
斜面部41bが放物線となるようなコニーデ形状の貫通孔では、図12に示すように、微細貫通孔成形品40の表裏において貫通孔の直径が異なる。例えば、各微細貫通孔41の円形開口41aの直径d2は、例えば1μm〜10μm程度とすることが好ましい。また、円形開口42bの直径d3は、例えば20μm〜80μm程度とすることが好ましい。貫通孔41の数は、微細貫通孔成形品40の単位面積あたり、200〜1000個/mm程度であることが好ましく、各貫通孔41が上記のような数となるには、隣接する円形開口41a同士間の距離L2は、例えば32μm〜70μm程度とすることが好ましい。さらに微細貫通孔成形品40の厚さt2は、例えば10μm〜100μm程度とすることが好ましい。
【0077】
上記したような微細貫通孔成形品40は、ネブライザー等のミスト発生装置のミスト形成用フィルターとして好適に使用できる。例えば、図13に示すように、ミスト発生装置50の超音波振動子51とミスト発生口52との間に、微細貫通孔成形品40(ミスト形成用フィルター54)を配置する。超音波振動子51上に供給された液体53は、超音波振動子51からの振動エネルギーにより粒状の液滴53aが形成されるが、ミスト形成用フィルター54の貫通孔を液滴が通過してミスト発生口52へ放出されることにより、所望の粒径を有する液滴53aを形成することができる。上記のような表裏で直径の異なる貫通孔が設けられた微細貫通孔成形品40の貫通孔の直径の大きい側が超音波振動子51側となるように微細貫通孔成形品40を配置することにより、液滴53aの粒径が1〜10μm程度のミストを形成することができる。
【0078】
<変形例>
上記した実施の形態において、受台11の突起18が円錐台形状からなり、断面台形状を有している例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図14に示すように、受台11の突起65は、直方体形状からなり、断面長方形状を有していてもよい。この場合、突起65の表面には、バックシート12に当接する平坦面65aが形成され、平坦面65aの周囲には垂直な側面65bが形成されている。また、受台11の表面のうち、突起65を除く部分には、平坦な表面19が形成されており、表面19とバックシート12との間には空隙が形成されている。なお、突起18の形状は、直方体形状のほか、円柱形状または多角柱形状としても良い。
【0079】
あるいは、図15に示すように、受台11の突起68は、断面弓形状を有していてもよい。この場合、突起68の表面には、バックシート12に当接する円弧状の湾曲面68aが形成されている。また、隣接する突起68同士の間には、谷部69が形成されており、谷部69とバックシート12との間には空隙が形成されている。このように突起68の表面に湾曲面68aを形成することにより、突状部31の先端と当接する突起68がほぼ孔近傍のみで当接することにより、振動エネルギーを円形開口41aにより集中することができ、加熱軟化ないし溶融する部位を局所化することができる。
【0080】
なお、図14および図15において、図1および図2に示す実施の形態と同一部分は同一符号を符して詳細な説明は省略している。
【符号の説明】
【0081】
10 微細貫通孔成形装置
11 受台
12 バックシート
12a バックシート剥離層
13 吸引部
14 加熱装置
15 成形型制御装置
16 温度制御装置
18 突起
18a 平坦面
18b 傾斜面
19 表面
20 基材シート
30 超音波成形型
31 突状部
32 ホーンヘッド
33 ベース部
40 微細貫通孔成形品
41 微細貫通孔
50 ミスト発生装置
51 超音波振動子
52 ミスト発生口
53 液体
54 ミスト形成用フィルター
71 第1の位置決め機構
72 第2の位置決め機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受台と、
受台上に保持され、耐熱性を有するとともに合成樹脂製の基材シートを支持するバックシートと、
バックシート上方に配置され、下方部に多数の突状部を有する超音波成形型とを備え、
超音波成形型は、上下方向に移動可能となり、かつ突状部が超音波振動し、
受台表面に、超音波成形型の突状部に対応する位置に多数の突起が設けられ、
超音波成形型の突状部と受台の突起との間で基材シートおよびバックシートを挟持した状態で、超音波成形型の突状部を超音波振動させて基材シートを振動加熱し、突状部により基材シートを貫通して、基材シートに多数の微細貫通孔を形成することを特徴とする、微細貫通孔成形装置。
【請求項2】
受台の突起は、断面台形状または断面長方形状を有し、突起の表面に、バックシートに当接する平坦面が形成されている、請求項1に記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項3】
受台の突起は、断面弓形状を有し、突起の表面に、バックシートに当接する湾曲面が形成されている、請求項1に記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項4】
バックシートの上面に、基材シートに対して剥離性を有するバックシート剥離層が形成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項5】
受台に、受台上面を所望の温度に加温して、バックシート上方に配置された基材シートを所望の温度に加熱できる温度制御装置が接続されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項6】
突状部が基材シートを貫通してバックシートに当接した後、受台は、温度制御装置により降温して、基材シートを、合成樹脂のガラス温度ないし軟化温度以下の温度となるまで冷却する、請求項5に記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項7】
超音波成形型は、基材シートが冷却された後、上昇し、突状部が基材シートから抜出される、請求項6に記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項8】
突出部は、超音波振動しながら基材シートから抜出される、請求項7に記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項9】
超音波成形型は、突状部が基材シートに貫入する際に負荷重がかかるように降下し、突状部がバックシートに当接すると降下が停止する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項10】
突状部は、基材シートに当接してからバックシートに当接するまでの間、徐々に振幅が小さくなるように減衰振動し、バックシートに当接すると超音波振動が停止する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の微細貫通孔成形装置を用いて、微細貫通孔成形品を製造する方法であって、
受台上に耐熱性を有するバックシートを保持する工程と、
バックシート上に合成樹脂製の基材シートを支持する工程と、
バックシート上方に予め配置され、下方部に多数の突状部を有する超音波成形型を下降させて、超音波振動する突状部を基材シートに当接させて、基材シートを振動加熱し、基材シートのうち突状部が当接した部分を軟化ないし溶融させる工程と、
超音波成形型をさらに下降させて、超音波成形型の突状部と受台の突起との間で、軟化ないし溶融した基材シートおよびバックシートを挟持し、この状態で、超音波成形型の突状部を超音波振動させて基材シートを振動加熱し、突状部により基材シートを貫通して、基材シートに多数の微細貫通孔を形成する工程とを備えたことを特徴とする、方法。
【請求項12】
超音波成形型の突状部が基材シートに当接する前に、受台を加温することにより、基材シートを合成樹脂のガラス転移温度ないし軟化温度付近まで加熱する工程を更に備えた、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
突状部が基材シートに貫入する際に負荷重がかかるように、超音波成形型を下降させる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
微細貫通孔の形成工程において、突状部が基材シートに当接してからバックシートに当接するまでの間、徐々に振幅が小さくなるように超音波成形型を減衰振動させ、突状部がバックシートに当接すると超音波振動を停止させる、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
微細貫通孔の形成工程の後、超音波成形型を上昇させて突状部を基材シートから抜出する工程をさらに備える、請求項11乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
突状部の抜出工程において、突出部を超音波振動させながら、基材シートから抜出する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項11乃至16のいずれか一項に記載の方法によって得られる微細貫通孔成形品。
【請求項18】
合成樹脂製の基材シートに多数の微細貫通孔が形成されたミスト形成用フィルターであって、前記ミスト形成用フィルターは、請求項11乃至16のいずれか一項に記載の方法によって得られたものであり、貫通孔の直径が、基材シートの表裏において異なっており、一方の面の直径が1〜10μmであり、他方の面の直径が20〜80μmであることを特徴とする、ミスト形成用フィルター。
【請求項19】
貫通孔が、200〜1000個/mmである、請求項18に記載のミスト形成用フィルター。
【請求項20】
貫通孔が末広がりのコニーデ形状を有している、請求項18または19に記載のミスト形成用フィルター。
【請求項21】
超音波振動子を振動させて液体をミスト化するミスト発生装置であって、超音波振動子とミスト発生口との間に、請求項18乃至20のいずれか一項に記載のミスト形成用フィルターが設けられていることを特徴とする、ミスト発生装置。
【請求項22】
ミスト形成用フィルターは、微細貫通孔の直径が大きい側が超音波振動子側となるように配置されている、請求項21に記載のミスト発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−94885(P2013−94885A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239101(P2011−239101)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】