説明

微結晶性関節症の治療のためのポリメタリン酸ベースの製剤

少なくとも1種の有効量の線状または環状ポリメタリン酸あるいは可溶性で医薬品として許容できるそれらの塩と、適切な希釈剤とを含む、関節病変の治療のための可溶性医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微結晶性関節症の治療のためのポリメタリン酸ベースの組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微結晶性関節症は、一群の炎症性変形性の病変であり、関節内の鉱物の沈着と結晶形態の関節周囲構造とを特徴とする。特に、軟骨石灰化症は、ピロリン酸カルシウム二水和物Ca[O(PO](2HO)(CPPD)の微結晶性沈着物を特徴とする疾患である。軟骨石灰化症の経過中に、滑膜中の組織沈着物からのCPPD結晶の放出に続いて起こる滑膜炎の発症が高い頻度で起こる。痛風様関節炎を伴う患者の滑膜液中の結晶の同定については、1962年のMcCarthyによる記載がある(McCarthy DJ Jr, Kohn NN, Faires Js. The significance of calcium phosphate crystal in the synovial fluid of arthritis patients, the pseudogout syndrome. Clinical aspects. Ann Intern Med 56: 711-737 (1962))。
【0003】
別の一般的な微結晶性関節症は、関節および関節周囲面でのヒドロキシアパタイト結晶Ca(POOH(HAP)の沈着によって引き起こされる。通常、この病変は、例えば骨関節症、石灰化関節周囲炎、腱炎、および石灰製滑液包炎などの著しく変形性の性質の他の関節症と合併して現われる。石灰性の沈着物は、特定の臨床目的の細目と関連しないことが多いが、例えば肩の石灰化関節周囲炎などの、その石灰化が関節周囲構造の炎症性変形性の病変の部分的な原因であると考えられている病状において明確な関連性を担うことがある(Dieppe PA, Crocker P, Huskisson EC, Willoughby AD. Apatite deposition disease: a new arthropathy. Lancet 1: 266-268 (1976))。
【0004】
CPPD結晶またはHAP結晶の沈殿および沈着に至るメカニズムはまだ分かっておらず、軟骨の変形性の変調が原始的なものであるのか結晶の沈着に続発するものであるのかも明らかではないと思われる。最も有望な説は、この沈着が局所性の代謝の変調に起因しているということである。軟骨石灰化症の場合、軟骨細胞により産生されたピロリン酸塩は、合成の増加または組織がアルカリホスファターゼを含む酵素ピロホスファターゼでその化合物を加水分解できないことに比例して主物質中に広がるであろう。ピロリン酸塩のわずかな沈着は、特に、酵素「ヌクレオシド三リン酸ピロホスホヒドロラーゼ(NTPPPH)」によるピロリン酸塩の合成および濃度の増加の結果として、高齢患者の軟骨内で観察されることが多い(Ryan ML, McCarthy DJ. Calcium Pyrophosphate Crystal Deposition Disease; Psedogout; Articular Chondrocalcinosis. In: Arthritis and Allied Conditions : A Textbook of Rheumatology (D. J. McCarthy & W. J. Koopman eds. ), vol. 2(12th Ed. ), Philadelphia, Pa. , Lippincott Williams & Wilkins, pp. 1835-1855 (1993))。そしてまた、ピロリン酸塩は、無機リン酸塩の重要な供給源であり、骨ミネラル化に基本的に関与する。ピロリン酸塩とリン酸塩との間には平衡が存在する。すなわち、前者が優勢な場合はそれらは結晶の形態で沈殿し、リン酸塩が優勢な場合はピロリン酸塩結晶の可溶化および低減が卓越する(Anderson HC. Mechanisms of pathologic calcification. Rheum Dis Clin Am 14: 303-319 (1988); Rosen F, McCabe G, Quach J, Solan J, Terkeltaub R, Seegmiller JE, Lotz M. Differential effects of aging on human chondrocyte responses to transforming growth factor: increased pyrophosphate production and decreased cell proliferation. Arthritis Rheum 40: 1275-1281(1997))。
【0005】
CPPD結晶は、ときには長短の棒状および小さい方形で強調表示されるが、細長いひし形の形状であるのに対し、HAP結晶は、より小さく、針状または棒状である。現在のところ、急性の偽通風発作は、タンパク質(特にIgG)で覆われ(オプソニン化され)、その後多形核好中球(PMN)により認識され貧食される、CPPD結晶の関節腔(滑膜液)への放出に起因していると考えられている。食作用およびそれに続く細胞の破壊の間中、活性酸素種(ROS)であり、炎症の化学伝達物質として働くリソソームの酵素ロイコトリエンが放出され、結果として起こる急性の関節炎または偽通風を伴う(Burt HM, Jackson JK. Enhancement of crystal induced neutrophil responses by optonisation of calcium pyrophosphate dihydrate crystals. Ann Rheum Dis 52: 599-607 (1993))。結晶の形状、大きさおよび量はPMN活性にかなり特有の影響を及ぼすと考えられている。この主題については多数の研究があるが、CPPD結晶の起炎活性が確認されている一方、とりわけ、貧食細胞をより強烈に活性化することのできる結晶性物質のディメンションについては一致がみられていない(Schwan et al, Schumacher HR, Fishbein P, Phelps R, Krauser R. Comparison of sodium urate and calcium pyrophosphate crystal size and other factors. Arthritis Rheum 18 (suppl) : 783-793 (1995))。
【0006】
現在のところ、対象療法だけが急性の偽通風発作を緩和するために用いられており、これらは持続的な効果を得るには不十分であることが多い。
【0007】
急性型に最も広く用いられている治療は、生理溶液での関節洗浄および/または副腎皮質ステロイド類の局所的な浸潤におそらく関連付けられる、炎症を起こした関節への関節穿刺を行うことを含んでいる(Fitzgerald RH Jr. Inrasynovial injection of steroids uses and abuses. Mayo Clin Proc 51: 655-659 (1976); Werlen D, Gabay C. , Vischer TL. Corticosteroid therapy for the treatment of acute attacks of crystal-induced arthritis: an effective alternative to nonsteroidal anti- inflammatory drugs. Rev Rhum Engl Ed 63: 248-254(1996))。
【0008】
前述の治療に変えて、または前述の治療と共に、非ステロイド系の抗炎症性薬および/またはコルヒチンが、組織面でのCPPD結晶またはHAP結晶の持続の問題にも関わらずまだ残存している(Abramson SB. Treatment of gout and crystal arthropathies and use and mechanisms of action of nonsteroidal anti- inflammatory drugs. Curr OpinRheumatol 4: 295-300 (1992))。
【0009】
現在のところ、偽通風発作の唯一の予防法は経口コルヒチンの使用である(Gonzales T, Gantes M. Prevention of acute attacks of pseudogout with oral colchicine. JRheumatol 14 : 632-633 (1987); Lange U, Schumann C, Schmidt KL. Current aspects of colchicine therapy-classical indications and new therapeutic uses. Eur J Med Res 6: 150-160 (2001))。CPPD結晶の場合、酵素的経路、すなわち、酵母ホスファターゼおよびアルカリフォスファターゼなどの、ピロリン酸塩を分解することができる酵素を使うアプローチが試みられてきた。しかし、これらの試みは、抗原の問題および高い製造コストのため恐らくタンパク質源の十分な処方を作成することが困難であることにより、有効な治療への応用を見出すに至っていない(Xu Y, Cruz T, Cheng PT, Pritzeker KP. Effects of pyrophosphatase on dissolution of calcium pyrophosphate dihydrate crystals. JRheumatol 18 : 66-71 (1991); Shinozaki T, Xu Y, Cruz TF, Pritzeker KP. Calcium pyrophosphate dihydrate (CPPD) crystal dissolution by alkaline phosphatase: interaction of alkaline phosphatase on CPPD crystals. J Rheumatol 22: 117-123 (1995))。
【0010】
決定的ではないが有望な結果が、CPPD結晶の可溶化および形成の阻害を目的として、炭酸マグネシウムの経口使用によりもたらされたようである(Patel KJ,Weidepsnul D, Palma C, Ryan LM, Walker SE. Milwaukee shoulder with massive bilateral cysts: effective therapy for hydrops of the shoulder. J Rheumatol 24 : 2479-2483 (1997))。
【0011】
この論文には、CPPDの軟骨沈着物の低減におけるポリ硫酸グリコサミノグリカンの部分的な有効性についての個々の事例の記述もある(Sarkozi AM, Nemeth-Csoka M, Bartosiewicz G. Effects of glycosaminoglycan polysulphate in the treatment of chondrocalcinosis. Clin ExpRheumatol 6: 3-8 (1988))。
【0012】
既に述べたように、HAPの結晶凝集体は関節滲出液中に存在することが多いにも関わらず、関節炎の病変の進行におけるHAP結晶の病原作用は、炎症性の性質についても変形性の性質についてもあまり明らかではなく、したがってその存在は付帯現象であると考えられている。これに反して、臨床的に急性および/または慢性の肩部痛の症状と表現される、石灰化関節周囲炎などの特定の炎症性変形性の病変の進行におけるこれらの物質の作用は周知である。現在のところ、このような微結晶沈着物の分解および/または除去を目的とする治療、例えば生理溶液での関節洗浄および体外衝撃波療法(Extracorporeal Shock Wave Therapy;ESWT)などがある(Cosentino R, De Stefano R, Selvi E, Frati E, Manca S, Frediani B, Marcolongo R. Extracorporeal Shock Wave Therapy for chronic calcific tendinitis of the shoulder: single blind study. Ann Rheum Dis 62: 248-50 (2003); Ebenbichler GR,Erdogmus CB, Resch KL, Funovics MA, Kainberger F, Barisani G, Aringer M, Nicolakis P, Wiesinger GF, Baghestanian M, Preisinger E, Fialka-Moser V. Ultrasound therapy for calcific tendinitis of the shoulder.N Engl J Med 341:1237 (1999))。
【0013】
HAP結晶の溶解に関して、この文献にはデータがほとんどなく、その著者らは予測し得る治療上の用をなさない化学物質の使用に言及している(Doroshkin SV. Surface reactions of apatite dissolution. J Colloid Interface Sci 191: 489-497(1997))。
【0014】
CPPDおよびHAPの組織沈着物の溶解を目的とした治療上の処置が不足していることが、本発明者らを、関節および関節周囲の環境に存在する結晶の溶解が可能な化学原理の研究に誘導した。
【0015】
塩類の結晶化に対する拮抗薬であるポリメタリン酸類の活性は、カルシウム(例えば、炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウム)および他の金属類(例えば、鉄、マグネシウム)に基づいている。したがって、この化合物群には、硬水および工業用水の軟化剤、繊維産業の洗浄剤、および/または織物の着色工程の分散剤としての広範な用途がある。化粧品では、ポリメタリン酸類は、歯石などのカルシウム沈着物の処置に特に効果的であり、抗歯垢練り歯磨きの重要な成分である。(Draus F. M. et al. Pyrophosphate and hexametaphosphate effects in vitro calculus formation. Archs. Oral Biol. 15: 893-896 (1970); McClanahan S. F. , White D. J. , Cox E. R. Dentifrice compositions containing polyphosphate and monofluorophosphate. US Patent 6,190, 644 (2002))。
【0016】
これらの物質の大動脈の石灰化を低減する能力がラットで実証され(Fleisch H, Schibler D, Maerki J, FrossardI. Inhibition of aortic calcification by means of pyrophosphate and polyphosphate. Nature 207: 1300-1301 (1965))、さらに、皮膚の石灰化の低減能力がやはりラットで実証されている(Schibler D, Fleisch H. Inhibition of skin calcification (calciphylaxis) by polyphosphates. Experientia 22: 367-369 (1966))。その結果、異所性石灰化の可溶化を目的とした治療上の使用を考慮することが可能である(Irving JT, Schibler D, Fleish H. Bone formation in normal and vitamin D-treated rachitic rats during the administration of polyphosphates. Proc Soc Exp Biol Med 123: 332-335 (1966))。
【非特許文献1】Patel KJ,Weidepsnul D, Palma C, Ryan LM, Walker SE. J Rheumatol Vol.24 : 2479-2483 (1997)
【非特許文献2】Doroshkin SV. J Colloid Interface Sci Vol.191: 489-497(1997)
【非特許文献3】Irving JT, Schibler D, Fleish H. Proc Soc Exp Biol Med Vol.123: 332-335 (1966)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者らは、既に、いくつかのポリメタリン酸のCPPD凝集体に対するin vitroでの可溶化能力を記述した(Cini R,Chindamo D, Catenaccio M, Lorenzini S, Selvi E, Nerucci F, Picchi MP, Berti G, Marcolongo R. Dissolution of calcium pyrophosphate crystals by polyphosphates: an in vitro and ex vivo study. Ann Rheum Dis 60: 962-967(2001))。しかし、これらの物質の臨床応用への制限が、以下の事実から見込まれる。
1)同一のポリメタリン酸塩が明確な分子量により一意的に同定されない。これらの化学式は(NaPOであり、nは3から20を超えるまで変動するからである。
2)ピロリン酸塩の増大した溶解性の結果として部分的に溶解され、堆積が減少した(さらに恐らくオプソニン化された)結晶は、炎症の増加、ROSの追加的な産生、および病的症状をさらに悪化させる悪循環の開始と同時に、PMNおよびマクロファージによって貧食され、蜂窩織炎の持続を伴うこともあり得る(Oyanagui Y. Role of phosphate, pyrophosphate, adenine nucleotides and sulfate in activating production of the superoxide radical by macrophages, and in formation of rat paw edema. Agents Actions 7: 125: 132 (1977); Swan A, Heywood B, Chapman B, Seward H, Dieppe P. Evidence for a causal relationship between the structure, size, and load of calcium pyrophosphate dihydrate crystals, and attacks of pseudogout. Ann Rheum Dis 54 : 825-830 (1995); Biaglow JE, Kachur AV. The generation of hydroxyl radicals in the reaction of molecular oxygen with polyphosphate complexes of ferrous ion. Radiat Res 148: 181- 187 (1997))。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、上記の問題は、範囲を限定した構造を有するポリメタリン酸類またはこれらの塩(これらは1種以上の抗ラジカル作用を有する物質および/または酸化防止剤と結びつけることができる)を含有する製剤が得られた結果解決された。
【0019】
したがって、本発明の目的は、有効量の少なくとも1種の線状または環状ポリメタリン酸あるいは可溶性で医薬品として許容できるそれらの塩と、適切な希釈剤とを含む、可溶性の医薬溶液を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好ましくは、ポリメタリン酸の塩は、ナトリウム塩(NaPOであり、より好ましくは以下の群:ポリマー状メタリン酸(SMP、化学式a);トリポリメタリン酸(PSTP、化学式b);環状トリメタリン酸(TSMP、化学式c);および環状ヘキサメタリン酸(SEMP、化学式d)に含まれる。
【0021】
【化1】

【0022】
好ましい実施形態では、本組成物はさらに、例えばマンニトール、ビタミンE、ビタミンC、カロチノイド、トコフェロール、タウリン、硫酸グルコサミン、およびグルコサミン塩酸塩などの、有効量の酸化防止剤および/またはROSスカベンジャーを含む。N−アセチルシステイン、グルタチオンは除かれる。これらのうち、その有効性、耐容性、および調製の容易さのため、マンニトール、タウリン、および/またはグルコサミン、ならびにそれらの塩が好ましい。
【0023】
マンニトールは、オキシルラジカル(oxydryl radical)の強力なスカベンジャーである(Chaturvedi V, Wong B, Newman SL. Oxidative killing of Cryptococcus neoformans by humanneutrophils. Evidence that fungal mannitol protects by scavenging reactive oxygen intermediates.JImmunol 156 : 3836-3840 (1996))。タウリンは、次亜塩素酸陰イオン、ニトロキシドラジカル、ならびにPMNおよび/または活性化マクロファージにより産生されたあらゆるROSの強力なスカベンジャーである(Park E, Alberti J, Quinn MR, Schuller-Levis G. Taurine chloramine inhibits the production of superoxide anion, IL-6 and IL-8 in activated human polymorphonuclear leukocytes. Adv Exp Med Biol 442: 177-182 (1998))。ポリメタリン酸自体は、一部の関節症に関与するカルシウムベースの結晶(ピロリン酸カルシウム類、ヒドロキシアパタイト)を可溶化することができないが、既知の酸化防止剤と相乗効果で作用する酸化防止剤であり、結果的に炎症現象を低減する。
【0024】
好ましい実施態様では、本発明の製剤は1種以上のスカベンジャー物質とも結びつく。
【0025】
この得られた溶液は、関節石灰化に関与する微結晶の可溶化または炎症性の「病毒(noxa)」の低減を容易にするために、多様なポリまたリン酸濃度および酸化防止剤の濃度で、直接関節内に注入または前記関節の連続洗浄に使用することができる。これらの溶液は、その関節内注射による使用を考慮して等張でなければならない(270から328ミリオスモル/リットルの等張圧)。しかし、さまざまな治療段階で使われる低張/高張溶液の使用を仮定することも可能である。
【0026】
本発明の製剤は、結晶構造面でPMNおよび/またはマクロファージにより行われる食作用によって産生されるROSの、関節構造の面での存在を阻害することを可能にする。このメカニズムは、酸化ストレスに関与する。この酸化ストレスは炎症の進行の重要な要素であり、炎症の進行は偽通風の発作の基盤である。
【0027】
本製剤、特にヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する製剤を、単独でまたは抗ラジカル剤および/または酸化防止剤と結びつけて、合成のCPPD結晶(単斜晶および三斜晶いずれも)を可溶化する能力を評価するためにin vitroで試験した。前述の結晶の可溶化試験は、軟骨石灰化症を患った患者から関節鏡視下ひざ関節半月版切除術によって除去された石灰化メニスカスに対してex vitroでも行った。さらに、使用した溶液について、ヒト軟骨細胞の培養物に対する細胞毒性試験を行った。
【0028】
これと同一の製剤を、同様に、HAP結晶の可溶化能力を評価するためにin vitroで試験した。
【0029】
各製剤、特に抗ラジカル剤および酸化防止剤も含有する製剤を、適切に刺激されたPMNによって産生されたフリーラジカルの産生遮断能力を化学発光法で測定するために、PMNおよび/またはマクロファージとともにin vitroでインキュベートした。さらに、超酸化物陰イオンに対するスカベンジャー効果を同様に評価した。超酸化物陰イオンは、炎症現象に関与する主なフリーラジカルである
【0030】
本発明の別の目的は、関節内注射による方法で注入可能な医薬製剤であって、請求項1から3に記載の組成物が粉末形態で入っている第一の容器と、少なくとも1種の抗ラジカル作用を有する物質および/または酸化防止作用を有する物質が溶解した希釈剤溶液が入っている第二の容器とを含み、この場合において前記第一の容器の前記組成物は使用前に溶解される製剤、を提供することである。この製剤の容積は5mlから10mlまでさまざまである。この希釈剤溶液は、その抗ラジカル作用および酸化防止作用を十分に引き出すために、ポリメタリン酸と共にまたは別に使用することができる。
【0031】
本発明の製剤は、関節の連続洗浄のためにも使用することができる。この場合、製剤の容積は5mlから10mlまでさまざまである。
【0032】
本発明の範囲には、関節内のCPPD結晶またはHAP結晶の可溶化後に使用する封入医薬製剤であって、わずかに低張の希釈剤溶液が入っている容器を含み、前記希釈剤溶液が、関節内注射による方法で注入可能であり、酸素の抗ラジカル作用および次亜塩素酸の抗陰イオン作用を有する少なくとも1種の物質を溶解した溶液である、製剤も包含される。封入製剤の容積は5mlから50mlまでさまざまである。
【0033】
本発明を、その限定されない実施例により以下に説明する。
【0034】
[実施例1]〔PBS緩衝液中での可溶化溶液の調製〕
ポリメタリン酸(線状および環状いずれも)を含有する溶液を調製し、pHとオスモル濃度を測定した。結果を以下の表1.A.に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
[実施例2]〔CPPD結晶の可溶化活性の測定〕
〔可溶化手順および分析方法の説明〕
合成CPPD結晶5mg(三斜晶および単斜晶いずれも)(平均粒子径1〜30μm)を、Ca2+およびMg2+を含まず、異なるタイプのポリメタリン酸を5mg/mlの濃度で含有するリン酸緩衝液(PBS)5ml(表1.A.に記載した4種類の溶液)に添加した。
この懸濁液を、連続攪拌下、37℃で1時間維持し、その後0.22μmフィルターを通してろ過した。この濾液を、最終的なカルシウム濃度の測定のために原子吸光分光測定での分析に供し、このデータに基づいてCPPD結晶の溶解の百分率を算出した。
【0037】
〔可溶化の結果と結論〕
得られた結果は、以下の表2.A.にまとめることができる。
【0038】
【表2】

【0039】
この結果は、CPPD微結晶に対して試験したポリメタリン酸類の可溶化力が、次の順番:SEMP>SMP>PSTP>TSMPであることを示している。
ヘキサメタリン酸ナトリウムはピロリン酸カルシウムに対して最も高い可溶化活性を有するのに対し、環状トリメタリン酸ナトリウムは実質的に可溶化活性を有さなかった。
ヘキサメタリン酸(SEMP)の可溶化能力は、その後、37℃で15分、30分、および60分でのCPPDの溶解の百分率を観察することにより、時間の関数としても測定した。この結果を表2.B.に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
既に15分で適切に溶解しており、したがってヘキサメタリン酸ナトリウムの効果は急速であるように見える。この結果は、CPPD可溶化のためのこの溶液の関節内への使用の可能性を示唆している(得られた結果の第四点)。
【0042】
[実施例3]〔HAP結晶の可溶化効果〕
〔可溶化手順および分析方法の説明〕
前述の実施例と同様の方法(HAP結晶8mgを使用)で、表1.A.に記載の製剤のHAP合成微結晶(10〜20μm)の可溶化能力についても調べた。
【0043】
〔可溶化の結果と結論〕
得られた結果は、以下の表3.A.にまとめることができる。
【0044】
【表4】

【0045】
この結果は、HAP結晶の可溶化能力はSMPの方がSEMPより高いことを示す。この場合も同様に、値が相対的に高く、例えば、HAPの石灰化物を含む関節の連続洗浄手順プログラムを組むことが考えられる。
その後、ポリマー状メタリン酸ナトリウム(SMP)の可溶化能力を、時間の関数として(前述の実施例と同様に)測定し、以下の表3.B.にまとめた。
【0046】
【表5】

【0047】
この結果は、より長い時間の後に達成された最大の溶解と比較すると、適切な溶解が短時間(15分)後でも達成されていることを示している。
【0048】
[実施例4]〔軟骨細胞での細胞毒性の観察〕
〔細胞毒性試験の説明〕
関節軟骨の試料は、腰部の義肢手術をしなければならない変形性関節炎患者の大腿骨頭から得た。切除後直ちに、正常な軟骨部分を無菌的に除去し、2mmの断片を抗生物質を含む生理溶液中で洗浄した後、抗生物質を含む1mg/mlのクロストリジウムコラーゲナーゼのPBS溶液で、緩やかな攪拌下、37℃で14〜18時間温浸した。この溶液を、その後濾過し、生理溶液で洗浄し、遠心分離機にかけた。軟骨細胞の約90〜95%の軟骨細胞は、トリパンブルー生体染色色素法で生きていることが検出された。その後、前洗浄し、適切な培地のプレート中に37℃、CO5%で静置した。このようにして得た細胞を、PBS(pH7.4)中で次第に高くした濃度のポリメタリン酸類と共に24時間(試験した各濃度ごとに6ウェル)インキュベートした。対照培地は、細胞をPBSのみで24時間インキュベートして得た。
【0049】
細胞毒性は、ポリマー状メタリン酸ナトリウム(SMP)および環状ヘキサメタリン酸ナトリウム(SEMP)のいずれでも、1日曝露した後、テトラゾリウム塩(MTT)法で判定した。同時に、SMPおよびSMEPのいずれでも、24時間インキュベートしたヒト軟骨細胞をウェルから取り出し、PBS中で洗浄(遠心分離した後、Kamovskyの固定剤を用いて4℃で2時間固定)し、カコジル緩衝液で洗浄し、1%の緩衝化酸化オスミウムを用いて4℃で1時間後固定し、乾燥した後、超ミクロトームを用いた薄切に供するために樹脂包埋した。各患者ごとに約30個の軟骨細胞を電子顕微鏡で観察した。
【0050】
〔細胞毒性試験の結果と結論〕
結果を以下の表4.A.にまとめた。
【0051】
【表6】

【0052】
この結果は、50%阻害用量が試験した最高濃度(15mg/ml)に達していることを示す。電子顕微鏡での形態学的な評価により細胞構造の変化が明らかとなった事例はなかった。
【0053】
[実施例5]〔抗ラジカルおよび/または酸化防止活性を有する成分と結びつけた、SEMおよびSEMPベースの製剤〕
〔抗ROSを有するSEMPの医薬製剤〕
ROSおよび次亜塩素酸陰イオンのスカベンジャー能力を有する種々の化合物と共に環状ヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する種々の医薬製剤を調製した。
【0054】
酸化防止剤および/または抗ラジカル剤物質の存在がポリリン酸塩の可溶化を阻害するかどうか実証するために、選択した各製剤のCPPD結晶可溶化能力を観察した。
医薬製剤を以下に提示する。
【0055】
【表7】




【0056】
〔抗ROSを有するSMPの医薬製剤〕
【表8】




【0057】
〔CPPD結晶の可溶化能力の観察〕
前述の製剤O、F、L、N(抗ラジカルおよび酸化防止活性を有する種々の化合物と共にSEMPを含有)のCPPD結晶に対する可溶化能力を評価した。
以下の表5.A.に提示した結果が示すとおり、医薬製剤OおよびF(それぞれマンニトール+タウリンおよびマンニトール+硫酸グルコサミンと共にSEMPを含有)は、CPPD結晶の可溶化において活性であることがわかった。
【0058】
【表9】

【0059】
医薬製剤LおよびN(それぞれマンニトール+タウリン+N−アセチルシステインおよびマンニトール+N−アセチルシステインと共にSEMPを含有)は、CPPD結晶の可溶化において不活性であることが、溶解媒体がCPPD結晶に対する潜在力をほとんど完全に失い、濾液中のカルシウム濃度が採用した手法の信頼の限界を下回る限りでわかった。
前述の製剤O1、F1、L1、N1(抗ラジカルおよび/または酸化防止活性を有する種々の化合物と共にSMPを含有)のCPPD結晶の可溶化能力を評価した。
以下の表5.B.に提示した結果が示すとおり、医薬製剤O1およびF1(それぞれマンニトール+タウリンおよびマンニトール+硫酸グルコサミンと共にSMPを含有)は、CPPD結晶の可溶化において活性であることがわかった。
【0060】
【表10】

【0061】
上記の結果は驚くべきものであり、酸化防止剤および抗ラジカル剤の選択は注意深くする必要があることを示す。例えば、N−アセチルシステインなどの強力な酸化防止剤は、ポリリン酸類の可溶化効果を大幅に低減し得る。
【0062】
〔HAP結晶の可溶化能力の観察〕
前述の製剤O、F、L、N(抗ラジカルおよび/または酸化防止活性を有する種々の化合物と共にSEMPを含有)のHAP結晶の可溶化能力を評価した。
以下の表5.C.に提示した結果が示すとおり、医薬製剤OおよびF(それぞれマンニトール+タウリンおよびマンニトール+硫酸グルコサミンと共にSEMPを含有)は、HAP結晶の可溶化において活性であることがわかった。
【0063】
【表11】

【0064】
医薬製剤LおよびN(それぞれマンニトール+タウリン+N−アセチルシステインおよびマンニトール+N−アセチルシステインと共にSEMPを含有)は、HAP結晶の可溶化において不活性であることが、溶解媒体がHAP結晶に対する潜在力をほとんど完全に失い、濾液中のカルシウム濃度が採用した手法の信頼の限界を下回る限りでわかった。
前述の製剤O1、F1、L1、N1(抗ラジカルおよび/または酸化防止活性を有する種々の化合物と共にSMPを含有)のHAP結晶の可溶化能力を評価した。
以下の表5.D.に提示した結果が示すとおり、医薬製剤O1およびF1(それぞれマンニトール+タウリンおよびマンニトール+硫酸グルコサミンと共にSMPを含有)は、HAP結晶の可溶化において活性であることがわかった。
【0065】
【表12】

【0066】
HAP結晶の可溶化の場合も、酸化防止剤および抗ラジカル剤の選択は注意深くする必要がある。例えば、N−アセチルシステインなどの強力な酸化防止剤は、ポリリン酸類の可溶化効果を実質的に解消することがある。
【0067】
[実施例6]〔抗ラジカル性および/または酸化防止性の測定〕
〔抗ROSを有する、試験したSEMPの医薬製剤〕
【表13】




【0068】
〔抗ROSを有する、試験したSMPの医薬製剤〕
【表14】




【0069】
〔ヒトPMNにより産生された化学発光法の手順〕
化学発光法(De Luca MA, McElroy WD. Bioluminescence and chemiluminescence. Methods in Enzymol 133 : 449-493 (1986))は、ザイモサン(zymosan)(Ca2+およびMg2+を含まない10mg/mlのリン酸緩衝液(PBS):Sigma)で刺激し、English法(English D, Roloff JS, Lukens JN. Regulation of human polymorphonuclear leucocyte superoxide release by cellular response to chemotactic peptides. J Immun 126: 165-171 (1981))に従ってオプソニン化された、多形核球(polymorphonucleartes:PMN)により産生されたROSの貯留に対するスカベンジャー作用を評価する方法である。このPMNは、密度勾配法での遠心分離、すなわち遠心分離するとその上に血液細胞が分離された密度勾配を形成するpolymorphoprep (Nycomed)により、健康な被験者の静脈血試料から得た。
【0070】
この細胞集団の純度(>90%)および生存率(>95%)を、細長い一片を試験し、トリパンブルー排除試験を行うことにより試験した。その後、PMN10個ml−1含有PBS懸濁液の一定量(100μl)に、ルミノール(0.01MNaOH10mlに2mg溶解し、PBSで希釈して最終的に1:10とする)100μlおよび刺激液10μlを添加した。
この調製物を、化学発光メーター(Berthold Multi-biolumat LB 9505C)に37℃で導入し、反応速度を40分間読み込んだ。表に示したcpm値は全て、2つの値の平均値から推定した(二重分析)。
各実験に対して、異なった試験を実施した。
【0071】
〔他の酸化防止物質の存在下または非存在下でのSEMP含有溶液と関係づけた、ヒトPMNにより産生された化学発光の阻害試験〕
結果を以下の表6.A.に集めた。
【0072】
【表15】

【0073】
この代わりに、酸化防止剤を含まないスカラー量のヘキサメタリン酸ナトリウムに起因する化学発光の阻害結果を、以下の表6.B.に示す。
【0074】
【表16】

【0075】
試験した製剤はいずれも、上述の手順でヒトPMNにより産生された化学発光に対して強力な阻害効果を示した。最も驚くべき、予想外なことは、単純なヘキサメタリン酸ナトリウムのPBS溶液が、化学発光に対して強力な阻害効果を示したことである。既知の酸化防止剤および/または抗ラジカル剤の添加は、化学発光に対する阻害効果を維持することを可能にした。さらに、製剤C、E、G(SEMPを含まない)は、封入のため、またはむしろヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する溶液での介入後の関節の洗浄のための製剤と考えるべきである。これらの溶液は、軟骨石灰化症の治療、したがって偽通風症状の予防法のための道具とみなすべきである。
【0076】
〔他の酸化防止物質の存在下または非存在下でのSMP含有溶液と関係づけた、ヒトPMNにより産生された化学発光の阻害試験〕
【表17】

【0077】
この代わりに、酸化防止剤を含まないスカラー量のポリマー状ヘキサメタリン酸ナトリウムに起因する化学発光の阻害結果を、以下の表6.D.に示す。
【0078】
【表18】

【0079】
SMPを含有する製剤も、上述の手順でヒトPMNにより産生された化学発光に対して強力な阻害効果を示し、ヘキサメタリン酸で既に観察された結果と重ね合わせることができる結果を伴った。
【0080】
[実施例7]〔ヒト多形核球(PMN)の生存に対する影響〕
〔PMN生存の測定方法〕
溶液は、ヘキサメタリン酸ナトリウムをPBSに溶解し、健康な志願者の静脈血から得たPMN(1×10個/ml)を添加して調製した。インキュベーションは、37℃で5分間行った。その後、トリパンを添加し、細胞を顕微鏡で観察して生細胞数を算出した。
【0081】
〔SEMPを用いた実験〕
スカラー量のヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する溶液と接触したPMNの生存を、化学発光の阻害試験のための酸化防止物質および/または抗ラジカル剤の存在下または非存在下で測定した。各濃度ごとに、pHおよびオスモル濃度をさらに測定した(溶液のpHをいずれも7.5に戻した)。結果を以下の表7.A.に示す。
【0082】
【表19】

【0083】
試験した最大濃度(15mg/ml)を除き、試験した濃度はいずれもPMN生存率の著しい低下をもたらさなかった。
この実験を、ヘキサメタリン酸および種々の酸化防止剤(実施例6参照)を含有する製剤を使って繰り返したが、PMNの生存に悪影響を及ぼすことは無かった。結果を以下の表7.B.に示す。
【0084】
【表20】

【0085】
〔SMPを用いた実験〕
スカラー量のメタリン酸ナトリウムを含有する溶液と接触したPMNの生存を、化学発光の阻害試験のための酸化防止物質および/または抗ラジカル剤の存在下または非存在下で測定した。各濃度ごとに、pHおよびオスモル濃度をさらに測定した(溶液のpHをいずれも7.5に戻した)。結果を以下の表7.C.に示す。
【0086】
【表21】

【0087】
試験した最大濃度(15mg/ml)を除き、試験した濃度はいずれもPMN生存率の著しい低下をもたらさなかった。
この実験を、メタリン酸および酸化防止剤(実施例6参照)を含有する製剤を使って繰り返したが、PMNの生存に悪影響を及ぼすことは無かった。結果を以下の表7.B.に示す。
【0088】
【表22】

【0089】
[実施例8]〔超酸化物陰イオンの阻害の測定〕
〔超酸化物陰イオンの測定方法〕
刺激されたPMNによるO2の産生(この場合、刺激はホルボール12-ミリスチン酸13-酢酸(Phorbol 12-myristate 13-acetate:PMA)で行った)を、English法(English D, Roloff JS, Lukens JN. Regulation of human polymorphonuclear leucocyte superoxide release by cellular response to chemotattic peptides.JImmun 126: 165-171 (1981))の記載に従ってシトクロムcの還元を介して評価した。この目的のため、750μlのPBSに、シトクロムc(30mg/ml)100μl、刺激液100μl、および細胞懸濁液100μlを左記記載の順番で添加した。この調製液を37℃で25分間インキュベートし、その後、反応を停止させるためにスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)1mg/ml、75000単位(Sigma)を添加し、最後に4℃で10分間遠心分離機にかけ、その上清の分光光度を550nmおよび468nmで記録した(Beckman DU6)。「白(white)」は、他の反応物質全ての前にSODを試料に導入することにより調製した。PMNは先に記載した通りに調製し、刺激液(PMA)はEnglish法の記載に従って調製した。結果は、ナノモル/PMN10個(nMoles/106 PMNs)単位で示した。
超酸化物陰イオンのスカベンジャー効果がPBS中のヘキサメタリン酸だけの濃度に比例し、5mg/mlの濃度で見た目に容易に明らかであることは興味深い。マンニトールおよびタウリンのような酸化防止剤の添加(SEMP0.5mg/mlと共に用いた製剤O)は、同濃度のヘキサメタリン酸だけの酸化防止活性を大幅に修正した。
【0090】
〔SEMPを用いた実験〕
結果を以下の表8.A.にまとめた。
【0091】
【表23】

【0092】
予想外に、ヘキサメタリン酸は超酸化物陰イオンの産生に対し、その濃度に正比例した阻害力を示した。他の酸化防止物質または抗ラジカル物質の存在は、前記阻害効果を高める。
超酸化物陰イオンの実験結果は、既に化学発光実験により実証された結果以上に、ポリメタリン酸類の酸化防止物質および/または抗ラジカル物質との結びつきの、治療の観点からの高い重要性および特許の観点からの高い革新性を示した。
さらに、製剤C、E、およびGも、封入のため、またはむしろヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する溶液での介入後の関節の洗浄のための製剤と考えることができる。これは、封入溶液に手を伸ばすための核心であると考えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の有効量の線状または環状のポリメタリン酸あるいは可溶性で医薬品として許容できるそれらの塩と、適切な希釈剤とを含む、関節病変の治療のための可溶性医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリメタリン酸の前記塩が化学式(NaPOのナトリウム塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリメタリン酸が以下の群:ポリマー状メタリン酸(SMP);トリポリメタリン酸(PSTP);環状トリメタリン酸(TSMP);および環状ヘキサメタリン酸(SEMP)に含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
有効量の酸化防止剤、ならびに/または酸素および次亜塩素酸陰イオンの抗ラジカル剤をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記酸化防止剤が以下の群:マンニトール、ビタミンE、ビタミンC、カロチノイド、トコフェロール、タウリン、硫酸グルコサミン、およびグルコサミン塩酸塩に含まれる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の抗ラジカル作用を有するスカベンジャー物質をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
関節内注射による方法で注入可能な医薬製剤であって、請求項1から3に記載の組成物が粉末形態で入っている第一の容器と、少なくとも1種の抗ラジカル作用を有する物質および/または酸化防止作用を有する物質が溶解した希釈剤溶液が入っている第二の容器とを含み、この場合において前記第一の容器の前記組成物は使用前に溶解される、製剤。
【請求項8】
関節の連続洗浄に使用する注入可能な医薬製剤であって、請求項1から3に記載の組成物が粉末形態で入っている第一の容器と、少なくとも1種の抗ラジカル作用を有する物質および/または酸化防止作用を有する物質が溶解した希釈剤溶液が入っている第二の容器とを含み、この場合において前記第一の容器の前記組成物は使用前に溶解される、製剤。
【請求項9】
関節内のCPPD結晶またはHAP結晶の可溶化後に使用する封入医薬製剤であって、希釈剤溶液が入っている容器を含み、前記希釈溶液が、関節内注射による方法で注入可能であり、わずかに低張であり、酸素の抗ラジカル作用および次亜塩素酸の抗陰イオン作用を有する少なくとも1種の物質を溶解した溶液である、製剤。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物が溶解した水性低張液。

【公表番号】特表2007−534655(P2007−534655A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546486(P2006−546486)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/IT2004/000713
【国際公開番号】WO2005/060978
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504414721)ユニバーシタ・デグリ・スタディ・ディ・シエナ (4)
【Fターム(参考)】