心筋トロポニン自己抗体アッセイ
本発明は特に、心筋トロポニンアッセイと併用されておよび/または単独で心筋炎、心筋症および/または虚血性心疾患のような心臓病の指標を与える心筋トロポニン自己抗体アッセイに基づく方法およびキットを提供する。本発明のアッセイ方法は特に、自己免疫疾患のある対象または自己免疫疾患患者の血縁である対象の心臓病またはその危険性を同定するために使用できる。特定実施態様において本発明はまた、心臓病のあるまたはその危険性のある対象が免疫抑制療法または免疫吸収療法の候補になり得るかを判断する方法を提供する。本発明はまた、本発明の方法を行うために有用なキットおよびキット構成要素を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、心筋トロポニンに反応性の自己抗体用アッセイの領域に関する。より特定的には本発明は、特に心臓病またはその危険性を評価するためのこのようなアッセイの使用およびアッセイ用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
トロポニン複合体は、骨格筋および心筋の収縮の調節に重要な役割を果たすヘテロ重合タンパク質である。これは、3つのサブユニット、すなわち、トロポニンI(TnI)、トロポニンT(TnT)およびトロポニンC(TnC)から構成されている。各サブユニットはトロポニン複合体機能の一部に関与する。たとえば、TnIはアクトミオシンのATPアーゼ活性を阻害する。
【0003】
心筋中のTnTおよびTnIは骨格筋中とは異なる形態で存在する。心筋TnI(cTnI)は心筋中でのみ発現される。cTnIは心組織傷害のマーカーとして広く使用されている。cTnIは心筋梗塞の診断においてCK−MB、ミオグロブリンおよびLDHアイソザイムよりも高感度でありまた顕著に特異的であると考えられている。
【0004】
cTnIは胸痛発作の3から6時間後に患者の血液中で検出でき、16から30時間でピークレベルに到達する。cTnIはまた、発作の5から8日後にも血液中に高濃度で検出できるので、急性心筋梗塞の遅れた診断にも役立つ。
【0005】
急性心筋梗塞後の壊死筋肉内に潜伏中にcTnIは内因性プロテアーゼによって開裂される。この開裂から生じる最も安定なフラグメントは30から110のアミノ酸残基間に局在する。このためcTnIアッセイではこのフラグメントを認識する抗体が使用されている。
【0006】
心組織傷害の早期検出が重要であることを考慮すれば、単独指標として使用できるかまたは他のアッセイと併用できる心臓病またはその危険性の同定方法および同定用キットの必要性が依然として存在することは明らかである。
【0007】
この背景情報は、本発明に関連を有し得ると出願人に思われる公知情報を知らせる目的で提示した。これらの既存情報のいずれかが本発明に対する先行技術を構成すると必ずしも認めたものではなく、また、そのように解釈されるべきでもない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は特に、心筋トロポニンに反応性の自己抗体用アッセイ、このようなアッセイを行うためのキット、および、心臓病またはその危険性を評価するためのこのようなアッセイおよびキットの使用を提案する。
【0009】
1つの実施態様において本発明は、たとえばアッセイによって測定された心筋トロポニンの量が対象の体内の心筋トロポニンに反応性の自己抗体の存在によって影響を受ける場合に、心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性を判定する方法を提供する。方法は、生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性欠如を示す指標となる。この方法は場合により、(a)対象から生物サンプルを採取する段階と、(b)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(c)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルに基づいて心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性を鑑定する段階とを含む。
【0010】
別の実施態様において本発明は、心臓病の危険性を評価する方法を提供する。この方法は、生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は心臓病の高い危険性を示す指標となる。この方法は場合により、(a)対象から生物サンプルを採取する段階と、(b)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(c)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルに基づいて心臓病の危険性を鑑定する段階とを含む。
【0011】
この実施態様の1つの変形においては本発明の方法が、生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンを検定する段階、および、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含む。アッセイは1つの生物サンプルで行ってもよく、または異なる生物サンプルで行ってもよい。高レベルの心筋トロポニンおよび/または高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は心臓病の高い危険性を示す指標となる。この方法は場合により、(a)対象から1つ以上の生物サンプルを採取する段階と、(b)1つ以上の生物サンプル中の心筋トロポニンのレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニンに特異的な抗体使用)、(c)1つ以上の生物サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(d)サンプル中の高レベルの心筋トロポニンおよび/または高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在に基づいて心臓病の危険性を鑑定する段階とを含む。この方法において、段階(c)は、段階(b)の前、後、同時にまたは段階(b)を削除して、場合により同一または異なる生物サンプルに行うことができる。
【0012】
特定実施態様においては上述の方法およびこの文中に記載した他の方法を、胸痛のある対象から採取した生物サンプルに対して実行できる。いくつかの実施態様において、対象は心筋梗塞が疑われる対象である。
【0013】
心臓病の危険性評価方法は、心筋炎、心筋症および虚血性心疾患のあるまたはそれらの危険性のある対象をスクリーニングする段階を含む。この方法は、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含む。高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は心臓病の存在またはその危険性を示す指標となる。この方法は場合により、(a)対象から生物サンプルを採取する段階と、(b)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(c)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルに基づいて心臓病の危険性を鑑定する段階とを含む。
【0014】
本発明はまた、心臓病のあるまたはその危険性のある対象が免疫抑制療法および/または免疫吸収療法の候補であるかを判断する方法を提供する。方法は、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含む。高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は、対象がこのような療法の候補であることを示す指標となる。この方法は場合により、(a)対象から生物サンプルを採取する段階と、(b)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(c)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルに基づいて対象が免疫抑制療法および/または免疫吸収療法の候補であるかを鑑定する段階とを含む。
【0015】
別の実施態様において本発明は、心臓病のあるまたはその危険性のある対象の同定方法を提供する。方法は、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、この場合、対象が自己免疫疾患にかかっているかまたは対象が自己免疫疾患患者の一親等の血縁である。この方法は場合により、(a)自己免疫疾患にかかっているおよび/または自己免疫疾患患者の一親等の血縁である対象から生物サンプルを採取する段階と、(b)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(c)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルに基づいて心臓病の危険性を鑑定する段階とを含む。
【0016】
この文中に記載の方法のおのおのにおいて、生物サンプルは哺乳動物(たとえば場合によりヒト)である対象から採取される。アッセイにかける心筋トロポニンは、心筋トロポニンI、T、Cおよびそれらの複合体から成るグループから選択される。自己抗体は、心筋トロポニンI、T、Cおよびその複合体から成るグループから選択された心筋トロポニンを含む心筋トロポニンに反応性である。
【0017】
この文中に記載の方法のいずれかはイムノアッセイを使用して簡便に実行できる。適当なイムノアッセイは凝集アッセイを含む。代表的な凝集アッセイにおいては、生物サンプルを固相に固定された心筋トロポニン抗原に、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させ、次いでサンプルの凝集を測定する。凝集の程度はサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している。
【0018】
別の実施態様においては、生物サンプルを心筋トロポニン抗原に、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させ、心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む1つ以上の複合体からシグナルを検出する。このようなイムノアッセイは非競合フォーマットで行うことができ、その場合、シグナルはサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している。
【0019】
本発明に有用な代表的非競合イムノアッセイにおいては、方法がさらに生物サンプルを種特異的抗体に接触させる段階を含み、この場合の種特異的抗体は生物サンプルを提供した種に特異的であり、接触は、心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば種特異的抗体に特異的に結合できる十分な条件下で行う。シグナル検出は、標識された種特異的抗体にそれ自体が結合している心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む複合体を検出する段階を含む。生物サンプルと心筋トロポニン抗原との接触および生物サンプルと種特異的抗体との接触は同時に行ってもよくまたは任意の順序で順次に行ってもよい。
【0020】
本発明に有用な代表的な非競合イムノアッセイにおいては、心筋トロポニン抗原を固相に固定できる。サンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体に心筋トロポニンが結合すると、固相に固定された複合体が形成され、この複合体からシグナルが検出される。所望ならば、種特異的抗体を標識できる(たとえば、サンドイッチイムノアッセイの場合)。あるいは、種特異的抗体を固相に固定してもよい。この場合、サンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体に種特異的抗体が結合すると、固相に固定された複合体が形成され、この複合体からシグナルが検出される。所望ならば、心筋トロポニン抗原を標識できる(たとえば、サンドイッチイムノアッセイの場合)。
【0021】
本発明に有用なイムノアッセイはまた競合フォーマットで行うこともでき、この場合、シグナルはサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に負の相関関係を有している。特定実施態様においては、生物サンプルを心筋トロポニン抗原に、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させる。さらに生物サンプルを、標識された心筋トロポニン反応性抗体に、標識された心筋トロポニン反応性抗体が心筋トロポニン抗原に特異的に結合できる十分な条件下で接触させる。生物サンプルと心筋トロポニン抗原との接触および生物サンプルと標識された心筋トロポニン反応性抗体との接触は同時に行ってもよくまたは任意の順序で順次に行ってもよい。
【0022】
本発明に有用な代表的競合イムノアッセイにおいては、心筋トロポニン抗原を固相に固定できる。サンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体が心筋トロポニンに結合すると、固相に固定された複合体が形成され、この複合体からシグナルが検出される。
【0023】
本発明はまた、生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン反応性自己抗体を検定するための検査キットを提供する。特定実施態様において検査キットは、心筋トロポニンに反応性の抗体を含む。たとえば検査キットはヒト化モノクローナル抗体を含むことができ、この場合のヒト化モノクローナル抗体は心筋トロポニンに特異的である。代替的または付加的に、検査キットは標識された非ヒトモノクローナル抗体を含むことができ、この非ヒトモノクローナル抗体は心筋トロポニンに特異的である。
【0024】
従って本発明の検査キットは所望ならば、固相および固相に固定された捕獲剤を含むことができる。代表的な実施態様において、捕獲剤は心筋トロポニン抗原または種特異的抗体であり、この場合の種特異的抗体は生物サンプルを提供する種に特異的である。特定実施態様において種特異的抗体はヒト特異的抗体を含む。
【0025】
代替的または付加的に、本発明の検査キットは標識された検出試薬を含むことができ、この場合、(1)捕獲剤が心筋トロポニン抗原ならば、検出試薬は種特異的抗体であり、(2)捕獲剤が種特異的抗体ならば、検出試薬は心筋トロポニン抗原である。
【0026】
本発明の方法および検査キットに使用できる適当な固相はたとえば、マイクロプレート、電極または微粒子を含む。適当な微粒子は磁性または常磁性でよい。方法および検査キットに有用なラベルは直接ラベルおよび間接ラベルを含む。たとえば、アクリジニウム−9−カルボキサミドを直接ラベルとして使用できる。いくつかの実施態様において、シグナルはラベルを指示薬に接触させることによって検出される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に記載の化学発光シグナルプロフィルに対するcTnICコーティング濃度の効果を示すグラフである。図1は、0ng/mL(黒い菱形)、80ng/mL(黒い方形)、400ng/mL(黒い三角)、2000ng/mL(“x”記号)および10,000ng/mL(星印)のcTnIC濃度に対する化学発光プロフィルを示す。
【図2】実施例1に記載の化学発光シグナルに対するcTnICコーティング濃度の効果を示すグラフである。
【図3】実施例2に記載の正常ドナーにおけるcTnIC自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図4】実施例3に記載のcTnI陽性サンプルにおけるcTnIC自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図5】実施例4に記載のcTnI陽性サンプルにおけるcTnIC IgM自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図6】実施例8に記載の正常ドナーにおけるcTnI自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図7】実施例9に記載の正常ドナーにおけるcTnT自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図8】実施例10に記載の正常ドナーにおけるcTnC自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図9】実施例11に記載のcTnI陽性サンプルにおけるcTnI自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図10】実施例12に記載のcTnI陽性サンプルにおけるcTnT自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図11】実施例13に記載のcTnI陽性サンプルにおけるcTnC自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図12】実施例14に記載の抗HBV陽性サンプルにおけるcTnIC自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図13】実施例15に記載のBNP陽性サンプルにおけるcTnI自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図14】実施例16に記載のHCV疾患陽性サンプルにおけるcTnI自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図15】実施例17に記載のシャガス病陽性サンプルにおけるcTnI自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図16】実施例19に記載のcTnIペプチドライブラリーの構成員(cTnI配列残基,横座標)に対する正常ドナー集団のcTnI自己抗体応答を化学発光シグナル(RLUmax,縦座標)として表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
心筋トロポニン反応性自己抗体は、ウイルス、細菌もしくは毒素のような病原体の分子擬態、遺伝的異常、組織損傷または特発性疾患によって産生される。このような自己抗体の存在が炎症プロセスに導き、その結果として正常な心機能を冒すような損傷を心組織に与える。さらに、心筋トロポニン反応性自己抗体は心臓病の臨床徴候出現の危険性に関する早期指標を提供する。これとは別に心筋トロポニン反応性自己抗体は、たとえば慣用の中間的フラグメント(midfragment)特異的イムノアッセイを使用するcTnIの測定を妨害し得る。内因性抗体によるこの妨害は偽陰性結果を生じさせ、その結果として個体の急性心筋梗塞(AMI)を適時に診断すること妨げる。本発明は、心筋トロポニンと併用されてまた単独で心臓病の指標となる心筋トロポニン自己抗体の測定に基づく方法を含む。
【0029】
定義
以下の記載では具体的に否定の定義がない限り、この文中で使用したすべての技術用語、科学用語およびその他の用語は本発明が所属する分野の平均的な当業者が共通に理解する意味と同義である。
【0030】
以下の用語は、Genbankにおいて同定されたポリペプチド(たとえば、非限定的に、登録番号P19429、P45379、P63316、AAK92231、CAA56240およびCAA52818を含む)および科学文献において心筋トロポニンI、心筋トロポニンT、心筋トロポニンCという名称によって同定されたポリペプチド、ならびに、Genbankおよび科学文献においてこれらの名称のポリペプチドに少なくとも約70%一致すると同定されたポリペプチドを包含する。代替的実施態様において、これらの用語は、Genbankにおいてこれらの名称によって同定されたポリペプチドおよび少なくとも約80、90、95、96、97、98または99%の一致を共有するポリペプチドを包含する。一致パーセントはたとえば、選択した一致パーセントを測定するように設定した自動選定パラメーターをもつBLASTPを使用して行った配列位置合せによって決定できる。特定実施態様において、これらの用語は、全長ポリペプチドおよびそれらのフラグメントを包含する。
【0031】
この文中に使用した“心筋トロポニン抗原”という用語は、心筋トロポニンまたは心筋トロポニン複合体に特異的な抗体に結合できる心筋トロポニンまたはそのフラグメントまたはその複合体を表す。
【0032】
“心臓病”という用語は、正常な心機能を低下させるような心臓または心臓に供給する血管の構造的または機能的な異常を含む心臓の健全または正常な状態からの逸脱を表す。心臓病の例は心筋炎、心筋症および虚血性心疾患を含む。
【0033】
“心筋炎”という用語は、心筋の炎症を表す。心筋炎は、ウイルス感染、サルコイドーシス、リウマチ熱、自己免疫疾患(全身性ループスなど)および妊娠のような様々な状態が原因で生じる。
【0034】
“心筋症”という用語は、心臓筋肉の弱体化または心臓筋肉の構造変化を表す。これはしばしば不適正な心臓のポンプ作用または他の心機能異常を伴う。心筋症は、ウイルス感染、心臓発作、アルコール中毒、長期間の重篤な高血圧、栄養不足(特に、セレン、サイアミン、L−カルニチンの不足)、全身性ループス・エリテマトーデス、ツェリアカ病、末期腎臓病などが原因で生じる。心筋症のタイプには、拡張性心筋症、肥大性心筋症および拘束性心筋症などがある。
【0035】
この文中に使用した“拡張性心筋症”という用語は、左心室の顕著な拡張および不適正機能によって特徴づけられる通常は特発性の全体的な心筋障害である。拡張性心筋症は、虚血性心筋症、特発性心筋症、高血圧性心筋症、感染性心筋症、アルコール性心筋症、中毒性心筋症および周産期心筋症を含む。
【0036】
この文中に使用した“肥大性心筋症”という用語は、左右の心筋が異なる大きさに成長した結果として生じた状態を表す。
【0037】
この文中に使用した“拘束性心筋症”という用語は、収縮期と収縮期との間の心臓筋肉の弛緩能力が失われ十分な血液供給が阻害されることを特徴とする状態を表す。
【0038】
“虚血性心疾患”という用語は、血液供給の欠如または相対的不足が理由で心筋が損傷されたかまたは機能効率が低下した状態を表す。もっとも多い原因はアテローム性動脈硬化症であり、これは、狭心症、急性心筋梗塞および慢性虚血性心疾患を含む。
【0039】
“狭心症”という用語は、心筋の血管(冠状血管)の不適正な血流を原因とする胸部の不快を表す。
【0040】
“心筋梗塞”(心臓発作)は、心臓筋肉の1つの領域が、該領域に適正な酸素供給が行われないために壊死または損傷したときに生じる。
【0041】
この文中に使用した“免疫抑制療法”という用語は、たとえば自己抗体の産生のような体内の免疫応答の抑制を目的とする治療方法を意味する。
【0042】
この文中に使用した“免疫吸着療法”という用語は、標的抗体に結合させることによって血漿から抗体を除去する治療を表す。典型的には、血漿を対象から取出し、固相に固定した標的抗体の結合パートナーに、結合するために十分な条件下で接触させ、次いで血漿を対象に戻す。
【0043】
この文中に使用した“自己免疫疾患”という用語は、病的な自己免疫状態を表す。“自己免疫”という用語は、たとえば、自己抗体または宿主抗原に反応性のTリンパ球の存在によって特徴づけられる宿主抗原に指向性の1つ以上の免疫応答を表す。
【0044】
“一親等の血縁”という用語は、両親、子供または同胞の兄弟姉妹を表す。
【0045】
本発明の方法を使用してアッセイにかけることができる“生物サンプル”は、全血、血清、血漿、滑液、脳脊髄液、気管支洗浄液、腹水、骨髄吸引液、胸膜滲出液、尿、および、腫瘍組織または他の体内成分または問題の分析物を含有できる何らかの組織培養上清を含む。
【0046】
この文中に使用した“分析物”という用語は、生物サンプル中に存在し得る検出すべき物質を表す。分析物は、天然産生の特異的結合パートナーを有するかまたは特異的結合パートナーを製造できる物質であればよい。従って、分析物は1つのアッセイにおいて1つ以上の特異的結合パートナーに結合できる物質である。
【0047】
この文中に使用した“結合パートナー”という用語は、結合ペア、すなわち、一方の分子が他方の分子に結合する一対の分子の構成員を表す。特異的に結合する結合パートナーは“特異的結合パートナー”と呼ばれる。イムノアッセイに常用の抗原抗体結合パートナーの他にも、ビオチンとアビジン、糖質とレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター分子とレセプター分子、補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素などの特異的結合パートナーがある。特異的結合パートナーはさらに、原形の特異的結合パートナーの(1つ以上の)類似体である(1つ以上の)パートナー、たとえば分析物−類似体を含み得る。免疫反応性特異的結合パートナーは、組換えDNA方法によって形成されたものも含めた抗原および抗原フラグメント、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびこれらの抗体のフラグメント、それらの複合体を含む。
【0048】
この文中に使用した“特異的結合”という用語は、当業界で公知の手段によって測定したときに、特異的部位において結合パートナー同士(たとえば、2つのポリペプチド、1つのポリペプチドと核酸分子、または、2つの核酸分子)が他の分子よりも優先的に結合していることを表す。“特異的に結合する”という用語は、標的分子/配列に対する結合優先性(たとえば、親和性)が非特異的標的分子(たとえば、ランダムに生じた特異的認識部位のない分子)の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍、もっとも好ましくは少なくとも10から20倍であることを示す。
【0049】
心筋トロポニンまたは心筋トロポニン反応性自己抗体に関してこの文中に使用した“高レベル”という用語は、生物サンプル中の正常レベルまたは正常範囲よりも高いレベルを表す。心筋トロポニンおよび心筋トロポニン反応性自己抗体の正常レベルまたは正常範囲は標準実態に従って定義される。従って、特定の生物サンプル中で測定されたレベルは、正常組織の同様のサンプル中で測定されたレベルまたはレベル範囲に比較されるであろう。この文脈で、“正常組織”は、検出可能な心臓病のない個体から採取した組織であり、“正常な”(ときには“対照”と呼ばれる)患者または集団は、検出可能な心臓病を示さない患者または集団である。分析物が正常には検出されない(たとえば、正常レベルがゼロ)のに試験サンプル中では検出される場合、および、分析物が正常レベルよりも高いレベルで試験サンプル中に存在する場合に、分析物のレベルが“高い”と言う。
【0050】
この文中に使用した“固相”という用語は、不溶性であるかまたは以後の反応によって不溶性にされる材料を表す。固相は捕獲剤を引き付けて固定化する固有能力に基づいて選択できる。あるいは、捕獲剤を引き付けて固定化する能力をもつ連結剤を固相に固定してもよい。連結剤はたとえば、捕獲剤自体に対してまたは捕獲剤に共役した帯電物質に対して逆の電荷に帯電した物質を含む。一般的に連結剤は、固相に固定化され(付着し)、結合反応を介して捕獲剤を固定化する能力をもつ結合パートナー(好ましくは特異的)であればよい。連結剤は、アッセイの実行前またはアッセイの実行中に捕獲剤を固相材料に間接結合させ得る。固相はたとえば、プラスチック、誘導プラスチック、磁性または非磁性の金属、ガラスまたはシリコンでよく、たとえば、試験管、マイクロタイターウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップおよび平均的な当業者に公知の他の形状を含む。
【0051】
この文中に使用した“微粒子”という用語は、超遠心によって回収可能な小粒子を表す。微粒子は典型的には約1ミクロン以下のオーダの平均粒径を有している。
【0052】
この文中に使用した“捕獲剤”という用語は、分析物に好ましくは特異的に結合する結合パートナーを表す。捕獲剤は固相に付着できる。この文中に使用したように、固相に固定された捕獲剤が分析物に結合して、“固相に固定された複合体”が形成される。
【0053】
この文中に使用した“標識された検出試薬”という用語は、分析物に好ましくは特異的に結合し、検出可能ラベルで標識されているかまたはアッセイにおいて使用中に検出可能ラベルで標識される結合パートナーを表す。
【0054】
“検出可能ラベル”は、検出可能であるかまたは検出可能にできる部分を含む。
【0055】
標識された検出試薬に関して使用した“直接ラベル”は、何らかの手段によって検出試薬に付着させた検出可能ラベルである。
【0056】
標識された検出試薬に関して使用した“間接ラベル”は、検出試薬に特異的に結合する検出可能ラベルである。従って間接ラベルは、検出試薬の一部分の特異的結合パートナーである部分を含む。たとえば、標識されたアビジンにビオチニル化抗体を接触させることによって間接標識抗体を生成するために使用されるビオチンおよびアビジンはこのような部分の例である。
【0057】
この文中に使用した“指示薬”という用語は、ラベルに接触して検出可能シグナルを発生する何らかの物質を表す。従ってたとえば慣用の酵素標識方法では、酵素で標識した抗体を基質(指示薬)に接触させて、有色反応生成物のような検出可能シグナルを発生させる。
【0058】
この文中に使用した“抗体”という用語は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされている1つ以上のポリペプチドから構成されるタンパク質を表す。この用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および、それらのフラグメント、ならびに、免疫グロブリン遺伝子配列の操作によって得られた分子を包含する。認識された免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子ならび多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。L鎖はカッパまたはラムダとして分類されている。H鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンとして分類されており、これらは免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ決定する。
【0059】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位はテトラマーを含むことが知られている。各テトラマーは等しい2対のポリペプチド鎖から構成され、各対が1つの“L”鎖(約25kD)と1つの“H”鎖(約50−70kD)とを有している。各鎖のN末端は、主として抗原認識を担当する約100から110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を限定している。“可変L鎖(VL)”および“可変H鎖(VH)”という用語はこれらのL鎖およびH鎖をそれぞれ表す。
【0060】
抗体は完全形の(intact)免疫グロブリンとして存在するかまたは様々なペプチダーゼによる消化によって産生した確定された特性をもつ複数のフラグメントとして存在する。従ってたとえばペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド連鎖下方で抗体を消化してF(ab’)2を産生させる。これはFabのダイマーであり、それ自体がジスルフィド結合によってVH−CH1に接合したL鎖である。F(ab’)2は緩やかな条件下で還元され、ヒンジ領域のジスルフィド連鎖が破断され、これによりF(ab’)2ダイマーがFab’モノマーに変換される。Fab’モノマーは本質的に、ヒンジ領域部を伴うFabである(他の抗体フラグメントのより詳細な記載に関してはFundamental Immunology,W.E.Paul,ed.,Raven Press,N.Y.(1993)を参照するとよい)。完全形の抗体の消化によって様々な抗体フラグメントが決定されるが、当業者は、このようなFab’フラグメントが化学的にまたは組換えDNA方法の使用によって新規に合成できることを理解されるであろう。
【0061】
従って、この文中に使用した“抗体”という用語はまた、完全抗体の修飾によって作製されるかまたは組換えDNA方法を使用して新規に合成された抗体フラグメントを含む。好ましい抗体は、一本鎖抗体(一本鎖ポリペプチドとして存在する抗体)、より好ましくは一本鎖Fv抗体(sFvまたはscFv)を含み、この場合の可変H鎖および可変L鎖は互いに接合して(直接的にまたはペプチドリンカーを介して)、連続ポリペプチドを形成している。一本鎖Fv抗体は共有結合的に連結したVH−VLヘテロダイマーであり、直接接合されているかまたはペプチドをコードするリンカーによって接合されたVHおよびVLのコーディング配列を含む核酸から発現され得る。Hustonら,(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879−5883。VHおよびVLは一本鎖ポリペプチドとして互いに接続されているが、VHドメインとVLドメインとは非共有結合的に会合している。scFv抗体、および、抗体のV領域に由来の天然には凝集していたが化学的に分離されたL鎖およびH鎖ポリペプチドを、抗原結合性部位の構造に実質的に同様の三次元構造に折り畳まれる分子に変換する多数の他の構造は当業者に公知である(参照:米国特許Nos.5,091,513、5,132,405および4,956,778)。
【0062】
“自己抗体”は、抗体が産生される個人の体内に天然に存在する分析物に結合する抗体である。“心筋トロポニン反応性自己抗体”は、心筋トロポニンに結合する自己抗体である。
【0063】
この文中に使用した“種特異的抗体”は、標的抗体の抗原結合特異性にかかわりなく特定種由来の標的抗体に特異的に結合する抗体を表す。
【0064】
“ヒト特異的抗体”は、ヒト抗体たとえばヒト自己抗体に特異的に結合する抗体を表す。
【0065】
この文中に使用した“心筋トロポニン反応性抗体または自己抗体”はそれぞれ、心筋トロポニンまたはそのフラグメントまたは複合体に結合する抗体または自己抗体を表す。
【0066】
“標識された心筋トロポニン反応性抗体”は、検出可能ラベルで標識されているかまたはイムノアッセイ中に標識可能ラベルで標識される心筋トロポニン反応性抗体である。
【0067】
サンプルの収集およびプロセシング
本発明のアッセイ方法は一般に、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトから採取された生物サンプルに対して行われる。
【0068】
本発明の方法は心筋トロポニン反応性自己抗体を含有するサンプルを使用して行うことができる。
【0069】
必要に応じて適当なバッファ溶液に希釈することによってサンプルを前処理してもよく、または所望ならば濃縮してもよい。リン酸塩、トリスなどのような様々なバッファのいずれかを場合により生理的pHで使用する多くの標準水性バッファ溶液のいずれかを使用できる。
【0070】
心筋トロポニンに併用される心筋トロポニン反応性自己抗体のアッセイ
特定実施態様において本発明は、心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性を評価する方法を提供する。方法は、生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性欠如を示す指標となる。
【0071】
いくつかの実施態様においては心臓病の危険性を評価する方法が、(a)生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンを検定する段階と、(b)生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階とを含む。高レベルの心筋トロポニンおよび/または心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心臓病の高い危険性を示す指標となる。
【0072】
これらの方法は、無症候性対象または1つ以上の心臓病症候のある対象から採取したサンプルに行うことができる。たとえば、対象は胸痛があったりまたは他の何らかの心筋梗塞の徴候があったりする。
【0073】
心筋トロポニン反応性自己抗体用アッセイは、心筋トロポニンアッセイの前、同時もしくは後で行ってもよくまたは心筋トロポニンアッセイを削除してもよい。心筋トロポニン反応性抗体用アッセイは同一対象から採取した同じサンプルまたは異なるサンプルで行うことができる。異なるサンプルを使用する場合、該サンプルは一般には同種類(たとえば、血液)であり、心筋トロポニンアッセイ用サンプルとほぼ同時に採取される。
【0074】
心筋トロポニン反応性自己抗体は当業者に公知の多数の方法のいずれかによって検出および定量できる。これらは、流体もしくはゲル沈降素反応、免疫拡散(シングルまたはダブル)、アフィニティクロマトグラフィー、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウェスタンブロット法などのような多数の免疫学的方法のいずれかを含み得る。本発明の方法に有用なイムノアッセイについてはより詳細に後述する。
【0075】
アッセイは標準的な実態に従ってスコア化でき、陽性および/または陰性の対照および/または既知の濃度の心筋トロポニン反応性抗体を含有する標準の使用を含み得る。心筋トロポニン反応性自己抗体のレベルを対照レベルまたは対照範囲に比較する。後者はアッセイ実施のときに決定してもよいが予め決定しておくほうが好都合である。対照レベルまたは範囲に比べて何らかの増加が試験サンプル中に存在するならば、慣用の統計的方法によって有意性を評価する。高レベルの心筋トロポニン自己抗体の存在は、該抗体が心筋トロポニン測定に否定的に干渉するかもしれないこと、したがって心筋梗塞のような心臓病の危険性の評価に関してはこの測定値の信頼性が失われたことを示す指標となる。
【0076】
特定実施態様において、対象に心筋トロポニン反応性自己抗体が高レベルで存在すると判定されたとき、対象のミオグロビン、CK−MB、BNP、CRP、トロポニン−I、トロポニン−T、血中酸素レベル、心臓造影、心電図などのような1つ以上の追加の心臓病指標を評価する。
【0077】
心筋トロポニン反応性自己抗体が高レベルで存在すると判定された対象は標準実態に従ってたとえば心筋梗塞の治療を受けてもよい。
【0078】
心臓病の診断方法
本発明はまた、心臓病の存在またはその危険性の指標として心筋トロポニン反応性抗体が測定される方法を提供する。
【0079】
心筋炎、心筋症および虚血性心疾患
特定実施態様において本発明は、心筋炎、虚血性心疾患または心筋症のあるまたはその危険性のある対象のスクリーニング方法を提供する。これらの実施態様の様々な形態においては、心筋症が拡張性心筋症でない。従ってたとえば方法は、肥大性心筋症および/または拘束性心筋症のあるまたはその危険性のある対象をスクリーニングするために使用できる。
【0080】
方法は、対象から採集した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心臓病の存在またはその危険性を示す指標となる。この方法は、心筋炎、虚血性心疾患または肥大性もしくは拘束性心筋症の鑑別診断を可能にする身体検査および/または病歴の収集を非限定的に含む1つ以上の他の検査と併用して実行できる。これらの障害の診断に使用される様々な検査およびパラメーターは当業者に公知である。
【0081】
これらの方法は、無症候性対象または心臓病に関連する1つ以上の危険要因もしくはその徴候を有している対象から採取したサンプルで行うことができる。対象はたとえば自己免疫疾患や高血圧の患者、または、肥大性心筋症のような遺伝性心臓病患者の近い(たとえば、一親等の)血縁である。
【0082】
心筋トロポニン反応性自己抗体は何らかの簡便な手段によって検出および定量できる。この目的に適した様々なイムノアッセイフォーマットの例は後述する。アッセイは標準実態に従ってスコア化される。
【0083】
特定実施態様において、対象に心筋トロポニン反応性自己抗体が高レベルで存在すると判定されたとき、対象のミオグロビン、CK−MB、BNP、CRP、トロポニン−I、トロポニン−T、血中酸素レベル、心臓造影、心電図などのような1つ以上の追加の心臓病指標を評価する。
【0084】
自己免疫疾患患者の血縁
本発明の方法は、自己免疫疾患のある対象または自己免疫疾患患者の血縁である対象の心臓病またはその危険性を同定するために行うことができる。たとえば、自己免疫疾患患者の一親等または二親等の血縁である対象は本発明の方法を使用して評価され得る。
【0085】
方法は、対象から採集した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心臓病の存在またはその危険性を示す指標となる。この方法は、1つ以上の他の検査、たとえば、心筋炎、虚血性心疾患または肥大性もしくは拘束性心筋症の鑑別診断を可能にする身体検査および/または病歴の収集と併用して実行できる。これらの障害の診断に使用される様々な検査およびパラメーターは当業者に公知である。
【0086】
これらの方法は、無症候性対象または心臓病に関連する1つ以上の危険要因もしくはその徴候を有している対象から採取したサンプルで行うことができる。
【0087】
心筋トロポニン反応性自己抗体は何らかの簡便な手段によって検出および定量できる。この目的に適した様々なイムノアッセイフォーマットの例は後述する。アッセイは標準実態に従ってスコア化される。
【0088】
特定実施態様において、対象に高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体が存在すると判定されたとき、対象のミオグロビン、CK−MB、BNP、CRP、トロポニン−I、トロポニン−T、血中酸素レベル、心臓造影、心電図などのような1つ以上の追加の心臓病指標を評価する。
【0089】
免疫抑制療法または免疫吸収療法の候補の同定方法
特定実施態様において本発明は、心臓病を有しているまたはその危険性を有している対象が免疫抑制療法または免疫吸収療法の候補であるかを判断する方法を提供する。一般的に対象は、心臓病の何らかの徴候を示したことがある者または現在心臓病であるもしくはその危険性を有していると診断された者である。
【0090】
方法は、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は、自己免疫性が対照の心臓病またはその危険性の一因であることを示す指標となる。この方法は、心臓病および/または自己免疫疾患の標準診断実態に従って1つ以上の他の検査、身体検査および/または病歴収集と併用して実行できる。
【0091】
心筋トロポニン反応性自己抗体はこの文中に記載の手段を含む何らかの簡便な手段によって検出および定量できる。アッセイは標準実態に従ってスコア化される。
【0092】
高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体が存在すると判定された対象は標準実態に従って免疫抑制療法または免疫吸収療法で治療される。
【0093】
イムノアッセイ方法
概論
本発明のイムノアッセイ方法は多様なフォーマットのいずれかで実行できる。イムノアッセイの概観に関しては、Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies in Cell Biology,Asai,ed.Academic Press,Inc.New York(1993);Basic and Clinical Immunology 7th Edition,Stites & Terr,eds.(1991)を参照するとよい。これらの記載内容全部が参照によって本発明に組込まれるものとする。
【0094】
特定実施態様において本発明のイムノアッセイ方法は、生物サンプルを心筋トロポニン抗原に、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させる段階を含む。自己抗体は、心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む(1つ以上の)複合体を検出することによって検出/定量される。このようなアッセイは均一系でもよく不均一系(すなわち固相を使用する)でもよい。不均一系アッセイでは、分析物(ここでは心筋トロポニン反応性自己抗体)に結合する捕獲剤が典型的には固相に固定されている。
【0095】
心筋トロポニン自己抗体は非競合イムノアッセイで測定でき、この場合、心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原の量はサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している。
【0096】
従ってたとえば方法は、微粒子のような固相に固定された心筋トロポニン抗原に生物サンプルを接触させる凝集アッセイとして行うことができる。サンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体が微粒子に結合し、その結果として微粒子が凝集するので、これをたとえばサンプルの目視点検によって検出できる。所望の場合、凝集の検出を容易にするために微粒子を着色するかまたは標識できる。凝集の程度はサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している。
【0097】
別の実施態様においては、生物サンプルを、心筋トロポニン抗原(固相に固定してもよいが必ずしも固定しなくてもよい)に接触させ、また種特異的抗体にも接触させる。この場合の種特異的抗体は生物サンプルを提供した種に特異的である。このような自己抗体によって生じた干渉を補正する手段は独自に米国特許出願No.60/854,569に記載されており、その記載内容全部が参照によってここに組込まれるものとする。この段階は、心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば種特異的抗体に特異的に結合できる十分な条件下で行われる。自己抗体は、種特異的抗体に結合している心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む(1つ以上の)複合体を検出することによって検出/定量される。サンプルは心筋トロポニン抗原および種特異的抗体に同時にまたは任意の順序で順次に接触させ得る。接触順序にかかわりなく、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば、心筋トロポニン抗原と種特異的抗体との間に“サンドイッチされた”抗体を含有する複合体が形成される。
【0098】
たとえば、サンドイッチイムノアッセイの1つのフォーマットを用いる本発明の実施態様においては、心筋トロポニン抗原が固相に固定されており、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば心筋トロポニン抗原に結合して、固相に固定された複合体が形成され、検出は固相に固定された複合体からのシグナルの検出を含む。このフォーマットの特定実施態様において、固相に固定された複合体は直接または間接に標識された種特異的抗体を用いて検出される。必要ならば、遊離状態の標識された種特異的抗体から結合完全体を典型的には洗浄によって分離し、結合したラベルからのシグナルを検出する。
【0099】
サンドイッチイムノアッセイの別のフォーマットを用いる本発明の実施態様においては、種特異的抗体が固相に固定されており、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば種特異的抗体に結合して、固相に固定された複合体が形成され、次にこれが検出される。いくつかの実施態様においては、固相に固定された複合体は直接または間接に標識された心筋トロポニン抗原を用いて検出される。必要ならば、遊離状態の標識された心筋トロポニン抗原から結合完全体を典型的には洗浄によって分離し、結合したラベルからのシグナルを検出する。
【0100】
心筋トロポニン自己抗体はまた、競合イムノアッセイで測定でき、この場合のシグナルはサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に負の相関関係を有している。競合フォーマットの一例においては、生物サンプルを心筋トロポニン抗原(固相に固定してもよいが必ずしも固定しなくてもよい)に接触させ、また、(直接または間接に)標識された心筋トロポニン反応性抗体に接触させる。この段階は、標識された心筋トロポニン反応性抗体が心筋トロポニン抗原に特異的に結合できる十分な条件下で行う。サンプル中の心筋トロポニン特異的自己抗体は心筋トロポニン抗原への結合に関して標識された心筋トロポニン反応性抗体と競合する。従って、心筋トロポニン反応性自己抗体のレベルが高いほど、標識された心筋トロポニン反応性抗体は心筋トロポニン抗原に少なく結合する。
【0101】
サンプルを、心筋トロポニン抗原および標識された心筋トロポニン反応性抗体に同時に接触させてもよくまたは任意の順序で順次に接触させてもよい。
【0102】
この種の競合イムノアッセイは、固相に固定された心筋トロポニン抗原を用いて簡便に行うことができる。この場合、心筋トロポニン抗原は、標識された心筋トロポニン反応性抗体に結合するかまたはサンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば該抗体に結合して、固相に固定された複合体を形成し、検出は、固相に固定された複合体からのシグナルの検出を含む。必要ならば、遊離状態の標識された心筋トロポニン反応性抗体から結合完全体を典型的には洗浄によって分離し、結合ラベルからのシグナルを検出する。
【0103】
捕獲剤
本発明のイムノアッセイ方法に有用な捕獲剤は、心筋トロポニン反応性自己抗体に結合できまた固相に固定化され得る物質を含む。好都合な捕獲剤は心筋トロポニン抗原および種特異的抗体を含み、この場合、種特異的抗体は生物サンプルを提供した種に特異的である。当業者には理解されるであろうが、心筋トロポニン抗原は心筋トロポニン反応性自己抗体に結合(捕獲)するので特異的捕獲剤を表す。これに対して、種特異的抗体は特異性にかかわりなく自己抗体に結合するので非特異的捕獲剤を表す。サンドイッチイムノアッセイにおいて、非特異的捕獲剤は典型的には、分析物に特異的に結合する標識された検出試薬と共に使用される。従ってたとえば抗−心筋トロポニン自己抗体を特異的に検出するために固相に固定された種特異的抗体は標識された心筋トロポニン抗原と併用される。
【0104】
心筋トロポニン抗原
本発明のイムノアッセイ方法に使用される心筋トロポニン抗原は心筋トロポニンI、心筋トロポニンT、心筋トロポニンC、それらのフラグメント、誘導体または複合体を含む。本発明に有用な複合体は異なる2つのトロポニン(たとえば、cTnIとcTnC)または3つ全部を含有できる。
【0105】
特定実施態様において、心筋トロポニン抗原は、いずれかの生物の何らかの心筋トロポニン様ポリペプチドに由来する心筋トロポニンアミノ酸配列である。本発明に有用な心筋トロポニンアミノ酸配列は一般に、脊椎動物、好ましくは鳥類または哺乳類、より好ましくはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマならびにサルおよび他の霊長類のような研究価値もしくは商業価値のある動物または愛玩用に価値のある動物に由来する。特定実施態様において、心筋トロポニンアミノ酸配列はヒトポリペプチドに由来する。
【0106】
本発明の方法は、全長の心筋トロポニン抗原または1つ以上の心筋トロポニンフラグメントを使用できる。フラグメントは一般に自己抗体が結合できる少なくとも1つのエピトープを有しているであろう。このようなフラグメントはたとえば、約125、100、75、50、25もしくは15アミノ酸の長さ、または、これらの値のいずれかによって限定される終点をもつ範囲(たとえば、15−125、25−100、50−75、15−100など)内に含まれる長さを有し得る。より多い数の天然エピトープを有している心筋トロポニン抗原(たとえば、全長の心筋トロポニン)の使用は一般に、より少ない数の天然エピトープを有している心筋トロポニン抗原の使用よりも様々な特異性の自己抗体をより包括的に測定できることは当業者には容易に理解される。従って一般には、実質的に先天性のコンホメーションを有しているかまたは自己抗体に反応性のトロポニンエピトープを含む1つ以上のペプチドを有している心筋トロポニン抗原の使用が好ましい。
【0107】
心筋トロポニンアミノ酸配列は野生型アミノ酸配列でもよくまたは野生型ポリペプチドの対応領域のアミノ酸配列変異体でもよい。いくつかの実施態様においては心筋トロポニン抗原が野生型心筋トロポニンアミノ酸配列または上記に定義のような保存性アミノ酸配列置換を含有する心筋トロポニンアミノ酸配列を含む。
【0108】
本発明に有用な心筋トロポニン抗原は上述のアミノ酸配列に加えて、異種タンパク質に由来の配列を含む他のアミノ酸配列を含み得る。従って本発明は、心筋トロポニンアミノ酸配列が一端または両端で1つ以上の異種タンパク質由来の(1つ以上の)アミノ酸配列に融合した融合ポリペプチドを包含する。問題のタンパク質にしばしば組込まれている追加のアミノ酸配列の例は、タンパク質の精製を容易にするシグナル配列、および、免疫学的検出またはアフィニティ精製のために使用できるエピトープタグを含む。
【0109】
本発明による心筋トロポニンポリペプチドはたとえば、排他的固相合成、部分的固相合成、フラグメント縮合および古典的な溶液合成のような当業界で公知の方法を使用して合成できる。参考文献はたとえば、Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85:2149(1963)である。固相ペプチド合成手順に関する記述については、John Morrow Stewart and Janis Dillaha Young,Solid Phase Peptide Syntheses(2nd Ed.,Pierce Chemical Company,1984)を参照するとよい。
【0110】
心筋トロポニンポリペプチドはまた、組換え技術を使用して製造できる。いくつかの実施態様においては、発現ベクターに組込める心筋トロポニンポリペプチドをコードする合成核酸分子を設計するためのガイドとして心筋トロポニンコーディング領域の配列が使用される。合成遺伝子の構築方法は当業者に公知である。参考文献はたとえば、Dennis,M.S.,Carter,P.and Lazarus,R.A.(1993)Proteins:Struct.Funct.Genet.,15:312−321である。
【0111】
発現ベクターは、作動可能に連結されたポリペプチドコーディング配列の発現を実行および/または増進できる1つ以上の調節配列を含む。たとえば原核細胞中での発現に適した調節配列はプロモーター配列、オペレーター配列およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞中で発現するための調節配列はプロモーター、エンハンサーおよび転写終結配列(すなわち、ポリアデニル化シグナル)を含む。
【0112】
本発明の発現ベクターはまた、たとえばシグナル配列または増幅可能遺伝子をコードする核酸配列のような他の配列を含み得る。シグナル配列は、シグナル配列に融合したポリペプチドをタンパク質発現細胞から分泌するように指令できる。発現ベクター中のシグナル配列をコードする核酸は、ポリペプチドコーディング配列の読み枠を保存するようにポリペプチドコーディング配列に連結されている。選択宿主中の栄養要求性欠失を相補する遺伝子をベクターに含有させると、ベクターによって形質転換された宿主細胞を選択することが可能になる。
【0113】
ベクターの増殖および/または発現のために多様な種類の宿主細胞を利用できる。その例は、原核細胞(たとえば、E.coli、Bacillus、Pseudomonasおよび他の細菌の菌株)、酵母またはその他の真菌類細胞(S.cerevesiaeおよびP.pastorisを含む)、昆虫細胞、植物細胞、ファージならびにより高等な真核細胞(たとえば、ヒトの胚性腎細胞および他の哺乳類細胞)を含む。
【0114】
心筋トロポニンを発現するベクターは簡便な方法によって宿主細胞に導入できる。方法は、使用されるベクター−宿主系次第で変り得る。一般にベクターは形質転換(“トランスフェクション”としても知られている)によってまたはベクター保有ウイルス(たとえば、ファージ)の感染によって宿主細胞に導入される。宿主細胞が原核細胞(または、細胞壁を有する他の細胞)であるとき、好都合な形質転換方法は、Cohenら,(1972)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69:2110−14によって記載されたカルシウム処理方法を含む。宿主として原核細胞が使用され、ベクターがファージミドベクターであるとき、ベクターは感染によって宿主細胞に導入できる。酵母細胞は、たとえばHinnen(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,75:1929−33によって教示されているように、ポリエチレングリコールを使用して形質転換できる。哺乳類細胞は、Grahamら,(1978)Virology,52:546およびGormanら,(1990)DNA and Prot.Eng.Tech.,2:3−10によって記載されているリン酸カルシウム沈殿法を使用して簡便に形質転換される。しかしながら、核注入、電気穿孔、プロトプラスト融合のような宿主細胞にDNAを導入するための他の公知の方法も本発明の使用に適格である。
【0115】
形質転換宿主細胞による心筋トロポニンの発現は、細胞の増殖および発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階と、発現されたポリペプチドを細胞溶解液からまたはポリペプチドが分泌される場合には培養培地から回収する段階を含む。特に、培養培地は使用される宿主細胞用の適当な栄養素と増殖因子とを含有している。栄養素および増殖因子は多くの場合、当業者に公知であるかまたは当業者が実験によって容易に決定できる。哺乳類宿主細胞の適当な培養条件は、たとえば、Mammalian Cell Culture (Mather ed.,Plenum Press 1984)およびBarnes and Sato(1980)Cell 22:649に記載されている。
【0116】
さらに培養条件は、転写、翻訳および細胞隔室間のタンパク質輸送ができる条件でなければならない。これらのプロセスに影響する要因は公知であり、たとえば、DNA/RNAコピー数、DNAを安定させる因子、培養培地中に存在する栄養素、サプリメントおよび転写インデューサーまたはリプレッサー、培養物の温度、pHおよび浸透圧、ならびに、細胞密度を含む。特定のベクター−宿主細胞系中の発現を促進するためのこれらの要因の調整は当業界の技術レベルの範囲内である。インビトロの哺乳類細胞培養物の生産性を最大にするための原理および実施技術はたとえば、Mammalian Cell Biotechnology:a Practical Approach(Butler ed.,IRL Press(1991)に見出される。
【0117】
タンパク質を大規模または小規模生産するための多数の公知技術のいずれかを本発明のポリペプチド発現に使用できる。これらは非限定的に、振盪フラスコ、流動床バイオリアクター、回転瓶培養系および撹拌タンクバイオリアクター系の使用を含む。細胞培養は、バッチ、フェッド−バッチまたは連続モードで実施できる。
【0118】
上述のように産生された組換えタンパク質の回収方法は公知であり、使用した発現系次第で変更される。シグナル配列を含むポリペプチドは培養培地からまたは細胞周辺から回収できる。ポリペプチドはまた細胞内で発現され細胞溶解液から回収されてもよい。
【0119】
発現されたポリペプチドは、宿主細胞または培養培地の1つ以上の成分からポリペプチドを分離できる何らかの方法によって培養培地または細胞溶解液から精製できる。典型的には、宿主細胞からおよび/またはポリペプチドの予定用途を妨害する培養培地成分からポリペプチドを分離する。第一段階として、培養培地または細胞溶解液を通常は遠心または濾過して細胞破片を除去する。次に上清を典型的には所望容量に濃縮もしくは希釈するかまたは適当なバッファに透析濾過して以後の精製に備えて調製物を状態調整する。
【0120】
次に公知の技術を使用してポリペプチドをさらに精製できる。選択される技術は発現されたポリペプチドの特性次第で変更される。たとえばポリペプチドがエピトープタグまたは他のアフィニティドメインを含有する融合タンパク質として発現されているならば、精製は典型的には、対応する結合パートナーを含有するアフィニティカラムの使用を含む。たとえばグリーン蛍光タンパク質、赤血球凝集素もしくはFLAGエピトープタグまたはヘキサヒスチジンもしくは同様の金属アフィニティタグに融合したポリペプチドはアフィニティカラムで分画化することによって精製できる。
【0121】
抗体
本発明のイムノアッセイ方法に有用な抗体はポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む。このようなポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、当業界で公知のいずれかの手段によって調製できる。ポリクローナル抗体は、ヒト以外の適当な哺乳動物(たとえば、マウスまたはウサギ)に免疫原を注入(たとえば、皮下または筋肉内注射)することによって増産できる。一般に免疫原は標的抗原に比較的高い親和性をもつ高力価抗体の産生を誘発するはずである。
【0122】
所望の場合、当業界で公知の共役技術によって抗原をキャリアータンパク質に共役させてもよい。常用のキャリアーは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)および破傷風トキソイドを含む。次に共役体を使用して動物を免疫感作する。
【0123】
次に動物から採集した血液サンプルから抗体が得られる。ポリクローナル抗体を製造するために使用される技術は、文献に広く記載されている(参照:たとえば、Methods of Enzymology,“Production of Antisera With Small Doses of Immunogen:Multiple Intradermal Injections,”Langoneら,eds.(Acad.Press,1981))。動物によって産生されたポリクローナル抗体はたとえば、標的抗原が結合されたマトリックスに結合させ該マトリックスから溶出させることによってさらに精製できる。当業者はポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を精製および/または濃縮するために免疫学分野で常用の様々な技術を知っているはずである。参考文献はたとえばColiganら(1991) Unit 9,Current Protocols in Immunology,Wiley Interscienceである。
【0124】
多くの用途にはモノクローナル抗体(mAb)のほうが好ましい。ハイブリドーマ分泌性mAbの産生に使用される一般方法は公知である(Kohler and Milstein(1975)Nature,256:495)。KohlerおよびMilsteinの記述を要約すると、この技術は、黒色腫、奇形種、子宮頸癌、神経膠腫または肺癌のある別々の5名の癌患者の排液性局所リンパ節からリンパ球を単離し(この場合のサンプルは手術標本から得られた)、細胞をプールし、細胞をSHFP−1に融合させる段階を含んでいた。癌細胞系に結合した抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングした。mAbの特異性の確認は、常套のスクリーニング技術(たとえば酵素結合免疫吸着剤アッセイすなわち“ELISA”)を使用して問題のmAbの要素反応パターンを判定することによって遂行できる。
【0125】
この文中に使用した“抗体”という用語は、ファージ提示技術を使用して産生/選択できる抗原結合性抗体フラグメント、たとえば一本鎖抗体(scFvなど)を包含する。細菌に感染するウイルス(バクテリオファージまたはファージ)の表面に抗体フラグメントを発現させることができれば、たとえば1010を上回る非結合性クローンのライブラリーから単一の結合性抗体フラグメントを単離することが可能になる。ファージの表面に抗体フラグメントを発現させるためには(ファージ提示)、ファージ表面タンパク質(たとえばpIII)をコードしている遺伝子に抗体フラグメント遺伝子を挿入し、抗体フラグメント−pIII融合タンパク質をファージ表面に提示させる(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554;Hoogenboomら(1991)Nucleic Acids Res.19:4133−4137)。
【0126】
ファージ表面の抗体フラグメントは機能性なので、ファージに保有された抗原結合性抗体フラグメントは抗原アフィニティクロマトグラフィーによって非結合性ファージから分離できる(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554)。抗体フラグメントの親和性次第では、1回の親和性選択で20倍から1,000,000倍の富化倍率が得られる。しかしながら、溶出したファージを細菌に感染させることによってもっと多くのファージを増殖させ、もう1回の選択を行うことができる。このようにすると、1回で1000倍の富化は2回の選択で1,000,000倍になる(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554)。従って富化倍率が低い場合にも(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597)、多数回のアフィニティ選択を行うことによって、希少ファージを単離できる。抗原によるファージ抗体ライブラリーの選択の結果として富化が生じるので、大多数のクローンは3から4回の選択後に抗原に結合する。従って、抗原結合性の分析が必要なのは比較的少数のクローン(数百)だけである。
【0127】
ヒト抗体はファージ上に極めて多くの多様なV遺伝子の目録を提示させることによって予め免疫感作することなく産生され得る(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597)。1つの実施態様においては、ヒト末梢血リンパ球に存在する天然目録中のVHおよびVLをPCRによって非免疫ドナーから単離する。PCRを使用して目録中のV遺伝子をランダムにスプライスすると、ファージベクターにクローニングして3千万のファージ抗体のライブラリーを作製できるscFv遺伝子の目録が作成される(同書参照)。単一の“実験未使用”ファージ抗体ライブラリーから、ハプテン、多糖およびタンパク質を含む17を上回る種類の異なる抗原に対する結合性抗体フラグメントが単離された(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;Marksら(1993)Bio/Technology.10:779−783;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734;Clacksonら(1991)Nature.352:624−628)。ヒトチログリブリン、免疫グロブリン、腫瘍壊死因子およびCEAを含む自己タンパク質に対する抗体は産生されている(Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734)。抗体フラグメントは選択に使用された抗原に極めて特異的であり、1nMから100nMの範囲の親和性を有している(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734)。ファージ抗体ライブラリーが大きいほど、より大きい抗原集団に対してより高い結合親和性を有しているより多くの抗体が単離される。
【0128】
当業者には容易に理解されるであろうが、抗体は多くの事業施設のいずれかによって調製できる(たとえば、Berkeley Antibody Laboratories、Bethyl Laboratories、Anawa、Eurogenetecなど)。
【0129】
固相
捕獲剤の支持体として固相を使用する本発明の実施態様の場合、固相は捕獲剤に結合できる十分な表面親和性を有しているいかなる適当な材料でもよい。有用な固体支持体は、天然の高分子糖質および合成的に修飾、架橋または置換されたそれらの誘導体、たとえば、寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換および架橋されたグアーガム、セルロースエステル特に硝酸およびカルボン酸とのエステル、混合セルロースエステル、セルロースエーテル;タンパク質および誘導体のような窒素含有天然高分子、たとえば、架橋または修飾されたゼラチン;ラテックスおよびゴムのような天然炭化水素ポリマー;ビニルポリマーのような合成ポリマーたとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルおよびその部分加水分解誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリアミドのような上記ポリ縮合物のコポリマーおよびターポリマー、および、ポリウレタンまたはポリエポキシドのような他のポリマー;アルカリ土類金属およびマグネシウムの硫酸塩または炭酸塩のような無機材料、たとえば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムおよびマグネシウムのケイ酸塩;アルミニウムまたはケイ素の酸化物または水和物、たとえば、クレー、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲルまたはガラス(これらの材料は上記高分子材料と共にフィルターとして使用され得る);既存の天然ポリマーに合成ポリマーの重合を開始させることによって得られたグラフトコポリマーのような上記クラスの混合物またはコポリマーを含む。これらの材料のすべてが、フィルム、シート、チューブ、粒状物またはプレートのような適当な形状で使用されるか、または、紙、ガラス、プラスチックフィルム、布などのような適当な不活性担体に塗布、接着または積層される。
【0130】
ニトロセルロースはモノクローナル抗体を含む多様な試薬に対して優れた吸収および吸着品質を有している。ナイロンも同様の特性を有しており、やはり適当である。
【0131】
フロースルーアッセイデバイスに好ましい固相材料は、多孔質繊維ガラス材料または他の繊維マトリックス材料のような濾紙を含む。このような材料の厚みは厳密ではなく、主としてアッセイにかけるサンプルまたは分析物の特性たとえば生物サンプルの流動性に基づく選択事項である。
【0132】
あるいは、固相が微粒子を構成できる。本発明に有用な微粒子は、適当な種類の粒状材料から当業者が選択でき、ポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリプロピレン、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネートまたは同様の材料から成る微粒子を含む。さらに、磁場内部で微粒子を操作し易いように微粒子は磁性または常磁性微粒子でよい。
【0133】
微粒子は可溶性試薬と生物サンプルとの混合物に懸濁させてもよく、または、支持材料によって保持されて固定化されてもよい。後者の場合、支持材料上または支持材料中の微粒子は支持材料内部の他の場所に実質的に移動できない。可溶性試薬と生物サンプルとの混合物に懸濁している微粒子は沈降または遠心によって分離できる。微粒子が磁性または常磁性のとき、可溶性試薬と生物サンプルとの混合物に懸濁している微粒子は磁場によって分離できる。
【0134】
本発明の方法は、固相が微粒子を含む全自動および半自動のシステムを含む微粒子技術を利用するシステムにおける使用に適応できる。このようなシステムは、公開されたEPO出願Nos.EP0 425 633およびEP0 424 634にそれぞれ対応する係属中の米国出願No.425,651および米国特許No.5,089,424と米国特許No.5,006,309に記載されている。
【0135】
特定実施態様において、固相は1つ以上の電極を含む。(1種以上の)捕獲剤は(1つ以上の)電極に直接または間接に固定されている。たとえば1つの実施態様においては捕獲剤が磁性または常磁性微粒子に固定され、次に磁石を使用して電極表面の近傍に配置される。1つ以上の電極が固相として機能するシステムは電気化学的相互作用に基づく検出を行う場合に有用である。この種の代表的なシステムはたとえば米国特許No.6,887,714(2005年5月3日発行)に記載されている。電気化学的検出に関する基本的方法はより詳細に後述する。
【0136】
捕獲剤は吸着によって固相に付着し、疎水性力によって固相に保持される。あるいは、固相の表面を化学的処理によって活性化して捕獲剤を支持体に共有結合的に連結させる。
【0137】
固相の固有電荷を変更または強化するために、帯電物質を固相に直接コーティングできる。負電荷をもつポリマーによって固定化可能な反応複合体を固定化するために、欧州公開No.0326100に対応する米国出願No.150,278および米国出願No.375,029(欧州公開No.0406473)に記載されたイオン捕獲手順を本発明に従って使用し、高速溶液相免疫化学反応を左右できる。これらの手順では、負電荷をもつポリアニオン/免疫複合体と前処理した正電荷をもつマトリックスとの間のイオン相互作用によって固定化可能な免疫複合体を反応混合物の残りの部分から分離し、たとえば欧州公開No.0273,115に対応する米国出願No.921,979に記載された化学発光システムを含む多くのシグナル発生システムのいずれかを使用して検出する。
【0138】
固相がシリコンまたはガラスの場合、一般には特異的結合パートナーに付着させる前に表面を活性化しなければならない。アミノ、ビニルおよびチオールのような反応性基を導入するためにそれぞれトリエトキシアミノプロピルシラン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.から入手可能)、トリエトキシビニルシラン(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wis.)および(3−メルカプト−プロピル)−トリメトキシシラン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)のような活性化シラン化合物を使用できる。このような活性化表面が捕獲剤を直接的に連結するために使用されてもよく(アミノまたはチオールの場合)、または、捕獲剤を表面から分離するために活性化表面がグルタルアルデヒド、ビス(スクシニミジル)スベレート、SPPD 9スクシニミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート)、SMCC(スクシニミジル−4−[Nマレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、SIAB(スクシニミジル[4ヨードアセチル]アミノベンゾエート)およびSMPB(スクシニミジル4−[1マレイミドフェニル]ブチレート)のようなリンカーとさらに反応してもよい。ビニル基は酸化して共有結合的付着手段を提供できる。ビニル基はポリアクリル酸のような様々なポリマーの重合アンカーとしても使用でき、特異的捕獲剤に多数の付着点を提供する。アミノ基は様々な分子量の酸化デキストランと反応して様々なサイズおよび容量の親水性リンカーを提供できる。酸化性デキストランの例は、Dextran T−40(分子量40,000ドルトン)、Dextran T−110(分子量110,000ドルトン)、Dextran T−500(分子量500,000ドルトン)、Dextran T−2M(分子量2,000,000ドルトン)(全部がPharmacia,Piscataway,N.J.から入手可能)またはフィコール(分子量70,000ドルトン;Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.から入手可能)を含む。加えて、1988年1月29日出願の米国出願No.150,278および1989年7月7日出願の米国出願No.375,029に記載された技術および化学を使用して特異的捕獲剤を固相に固定化するためにポリ電解質相互作用を使用できる。上記特許出願のおのおのは参照によってここに組込まれるものとする。
【0139】
固相の選択を左右する他の考察要件は、標識された完全体の非特異的結合を最小にする能力、および、使用した標識系との適合性を含む。たとえば、蛍光ラベルと共に使用される固相はシグナル検出ができるように十分に低いバックグラウンド蛍光を有していなければならない。
【0140】
特異的捕獲剤の付着後、血清、タンパク質または他のブロッキング剤のような非特異的結合を最小にする材料で固体支持体の表面をさらに処理してもよい。
【0141】
標識系
上記に論議したように、本発明による多くのイムノアッセイは、標識された種特異的抗体および標識された心筋トロポニン抗原のような標識された検出試薬を使用する。
【0142】
本発明の検出試薬として使用するための適当な検出可能ラベルは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能ないかなる組成物をも含む。本発明に有用なラベルは、磁気ビーズ(たとえばDynabeadsTM)、蛍光色素(たとえば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、グリーン蛍光タンパク質など、参照:たとえばMolecular Probes,Eugene,Oregon,USA)、アクリジニウムのような化学発光化合物(たとえばアクリジニウム−9−カルボキサミド)、フェナントリジニウム、ジオキセタン、ルミノールなど)、放射性ラベル(たとえば、3H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素のような触媒(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼおよびELISAで常用の他の酵素、および、コロイド金(たとえば、粒度範囲40から80nmの金粒子は緑色光を高い効率で散乱させる)または着色したガラスもしくはプラスチック(たとえば、ポリスチレン、ホリプロピレン、ラテックスなど)のビーズのような比色ラベルを含む。このようなラベルの使用を教示する特許は、米国特許Nos.3,817,837;3,850,752;3,939,350;3,996,345;4,277,437;4,275,149;および4,366,241を含む。
【0143】
ラベルは生物サンプルに接触させる前、接触中または接触後に検出試薬に付着させ得る。いわゆる“直接ラベル”はアッセイに使用する前に検出試薬に直接的に付着させるかまたは組込ませた検出可能ラベルである。直接ラベルは当業者に公知の多数の手段のいずれかによって検出試薬に付着または組込まれる。
【0144】
これに対して、いわゆる“間接ラベル”は典型的にはアッセイ中のある時点に検出試薬に結合する。間接ラベルはしばしば、使用前に検出試薬に付着させたかまたは組込ませた部分に結合する。従ってたとえば、検出試薬として使用される抗体(“検出用抗体”)はアッセイに使用する前にビオチニル化できる。アッセイ中に、アビジン共役フルオロホアがビオチン保有検出試薬に結合して、検出容易なラベルを提供できる。
【0145】
間接標識の別の例においては、ポリペプチドAまたはポリペプチドGのような免疫グロブリン定常領域に特異的に結合できるポリペプチドもまた検出用抗体のラベルとして使用できる。これらのポリペプチドは連鎖球菌の細胞壁の正常な構成成分である。それらは様々な種に由来の免疫グロブリン定常領域に強い非免疫原性反応性を示す(一般論についてはKronvalら(1973) J.Immunol.,111:1401−1406およびAkerstrom(1985)J.Immunol,135:2589−2542参照)。従って、このようなポリペプチドを標識してアッセイ混合物に加えると、これらが検出用抗体および種特異的抗体に結合して両者を標識し、サンプル中に存在する分析物および自己抗体に帰属する複合シグナルを提供できる。
【0146】
本発明に有用ないくつかのラベルは検出可能シグナルを発生するための指示薬の使用を要する。たとえばELISAにおいて酵素ラベル(たとえばベータ−ガラクトシダーゼ)は検出可能シグナルを発生するために基質(たとえばX−gal)の添加を要するであろう。
【0147】
代表的フォーマット
蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)
代表的実施態様においては、本発明による蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)に蛍光ラベルが使用される。一般的に、蛍光偏光技術は、蛍光ラベルが特性波長の平面偏光によって励起されたときに、入射光に対して所与の媒体中のラベルの回転速度に反比例する偏光度を有する別の特性波長に光(すなわち蛍光)を放出するという原理に基づく。この特性の結果として、回転が拘束されたラベルたとえば相対的に低い回転速度の別の溶液成分に結合したラベルは溶液中で遊離状態であるときよりも相対的に大きい偏光度を有する光を放出するであろう。
【0148】
この技術を本発明によるイムノアッセイに使用できる。そのためにはたとえば、蛍光標識された完全体が結合すると十分に異なるサイズの複合体が形成され、所与の平面に放出された光の強度変化を検出可能できるような試薬を選択すればよい。たとえば、標識された心筋トロポニン抗原が1つ以上の自己抗体に結合したとき、得られる複合体は遊離状態の標識された心筋トロポニン抗原に比べて十分に大きいのでその回転が十分に拘束され、結合が容易に検出される。
【0149】
FPIAに有用なフルオロホアは、フルオレセイン、アミノフルオレセイン、カルボキシフルオレセインなど、好ましくは5および6−アミノメチルフルオレセイン、5および6−アミノフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、チオウレアフルオレセイン、および、メトキシトリアジノリル−アミノフルオレセインおよび同様の蛍光誘導体を含む。蛍光偏光アッセイを行うことができる市販の全自動器具の例は、IMxシステム、TDxシステムおよびTDxFLxシステム(すべてAbbott Laboratories,Abbott Park,Ill.から入手可能)を含む。
【0150】
走査型プローブ顕微鏡検査(SPM)
イムノアッセイ用の走査型プローブ顕微鏡検査の使用も本発明のイムノアッセイ方法が容易に適応できる技術である。SPM、特に原子力顕微鏡検査においては、走査に適した表面を有している固相に捕獲剤を付着させる。たとえばプラスチックまたは金属表面に捕獲剤を吸着させる。あるいは、平均的な当業者に公知の方法に従ってたとえば誘導体化したプラスチック、金属、シリコンまたはガラスに捕獲剤を共有結合的に付着させる。捕獲剤の付着後、生物サンプルを固相に接触させ、固相に固定された複合体を走査型プローブ顕微鏡で検出し定量する。SPMを使用すると、イムノアッセイシステムでは典型的に使用されるラベルの必要性を削除できる。このようなシステムは、米国出願No.662,147に記載されている。該特許は参照によってここに組込まれるものとする。
【0151】
マイクロ電気機械的システム(MEMS)
本発明のイムノアッセイはマイクロ電気機械的システム(MEMS)を使用して行うこともできる。MEMSは機械素子、光学素子および流体素子を電子素子に組合せてシリコンに集積した顕微鏡構造であり、問題の分析物を簡便に検出できる。本発明に使用するための適当な代表的MEMSデバイスは、Protiverisのマルチカンチレバーアレイである。このアレイは、特別設計のシリコン製マイクロカンチレバーの化学機械的起動およびその後のマイクロカンチレバーの撓みの光学的検出に基づく。片面に結合パートナーをコーティングすると、マイクロカンチレバーは相補性分子を含有する溶液に接触したときに屈曲するであろう。この屈曲は結合イベントに起因する表面エネルギーの変化によって生じる。屈曲(撓み)の程度を光学的に検出すると、マイクロカンチレバーに結合した相補性分子の量の測定値が得られる。
【0152】
電気化学的検出システム
他の実施態様において、本発明のイムノアッセイは電気化学的検出を用いて行うことができる。電気化学的検出の基本的手順はHeinemanおよび彼の共同研究者らによって記載されている。これは、一次抗体(Ab、ラット−抗マウスIgG)を固定化し、次いで抗原(Ag、マウスIgG)、酵素ラベルに共役した二次抗体(AP−Ab、ラット抗マウスIgGとアルカリホスファターゼ)およびp−アミノフェニルホスフェート(PAPP)を含有する一連の溶液に接触させる段階を含む。APはPAPPを、APが最適活性を示すpH9.0で酸素と水の還元を妨害しない電位で電気化学的に可逆性のp−アミノフェノール(PAPR、この“R”は酸化形PAPOキノンイミンから還元形を識別するための記号である)に変換する。PAPRはフェノールと違って電極付着を生じない。フェノールの場合はしばしば前駆体フェニルホスフェートが酵素基質として使用される。PAPRは空気および光で酸化されるが、小規模および短時間枠ではこれを容易に防止できる。20μLから360μLの範囲の量のPAPPを使用するマイクロ電気化学的イムノアッセイでPAPRに関してピコモルの検出限度およびIgGに関してフェムトグラムの検出限度が得られたことがこれまでに報告されている。電気化学的検出を伴う毛管イムノアッセイにおいてこれまでに報告された最小検出限度は、70μL容量および30分または25分のアッセイ時間を用いて3000分子のマウスIgGである。
【0153】
電気化学的検出を使用する代表的な実施態様においては本発明による捕獲剤を電極の表面に固定化する(“固相”)。次に電極をたとえばヒト由来の生物サンプルに接触させる。サンプル中に抗−心筋トロポニン抗体が存在するならば捕獲剤に結合し、固相に固定された複合体が形成される。たとえばAP標識された抗−ヒト抗体は複合体中の自己抗体に結合し、これにより電極の表面に固定化される。PAPPを添加するとAPによってPAPRに変換され、次いで検出される。
【0154】
様々な電気化学的検出システムが米国特許Nos.7,045,364(2006年5月16日発行;参照によってここに組込まれる)、7,045,310(2006年5月16日発行;参照によってここに組込まれる)、6,887,714(2005年5月3日発行;参照によってここに組込まれる)、6,682,648(2004年1月27日発行;参照によってここに組込まれる);6,670,115(2003年12月30日発行;参照によってここに組込まれる)に記載されている。
【0155】
本発明はたとえば、TnI、CKMBおよびBNPを含む複数の心臓マーカーに対してサンドイッチイムノアッセイを行うAbbott Laboratoriesから市販のPoint of Care(i−STATTM)電気化学的イムノアッセイシステムを含むポイントオブケアアッセイシステムに応用できる。イムノセンサおよびそれらの製造方法と使い捨て試験デバイスにおけるそれらの使用方法は、たとえば、米国特許No.5,063,081および公開された米国特許出願Nos.US 20030170881、US 20040018577、US 20050054078およびUS 20060160164に記載されている。これらの出願のおのおのの該当デバイスに関する教示は参照によってここに組込まれるものとする。
【0156】
加えて、ここに紹介した代表的フォーマットのいずれかおよび本発明によるアッセイまたはキットのいずれかが、たとえば米国特許Nos.5,089,424および5,006,309に記載されているような、また、たとえば非限定的にAbbottのARCHITECT(R)、AxSYM、IMX、PRISMおよびQuantum IIプラットホームならびに他のプラットホームを含むAbbott Laboratories(Abbott Park,IL)によって市販されているような全自動および半自動のシステム(微粒子から成る固相が存在するシステムを含む)における使用に適応できるまたは最適化できることは言うまでもない。
【0157】
マルチプレックスフォーマット
たとえば1つの生物サンプル中の多数の分析物を同時に検定するために有用な特定実施態様においては固相がトロポニン反応性自己抗体を捕獲する捕獲剤を含めた複数の異なる捕獲剤を含有できる。従ってたとえば、おのおのがサンプル中の異なる自己抗体の存在を試験する予定の複数の抗原を固相に固定できる。代表的な実施態様においては固相が表面上の複数の異なる領域から構成され、各領域内部に特定の抗原が固定されている。
【0158】
マルチプレックスフォーマットは、複数のラベルを使用し、特定抗原に反応性の自己抗体を各ラベルに検出させることができるが、必ずしも複数のラベルを使用しなくてもよい。たとえば、抗原のような複数の捕獲剤が既知の種々の位置で固相に固定されている場合には複数のラベルを使用することなく特異性に基づいて多数の異なる自己抗体を検出できる。各位置の捕獲剤の特異性が既知なので、特定位置のシグナルの検出が該位置に結合した自己抗体の存在に関連する。このフォーマットの例は、それぞれチャンネルまたは毛管に沿った種々の位置に種々の捕獲剤を含有するマイクロ流体デバイスおよび毛管アレイ、および、典型的には固体支持体の表面に点行列(“標的素子”)として配列された種々の捕獲剤を含有するマイクロアレイを含む。特定実施態様においては種々の捕獲剤のおのおのがたとえば固体支持体の表面、マイクロ流体デバイスのチャンネルまたは毛管に形成された異なる電極に固定される。
【0159】
検査キット
本発明はまた、生物サンプル中の心筋トロポニン自己抗体を検定する検査キットを提供する。本発明による検査キットは、1つ以上の本発明のイムノアッセイを行うために有用な1種以上の試薬を含む。検査キットは一般に、試薬を1種以上の個別組成物として収容するかまたは場合により試薬の適合性が許容するならば混合物として収容する1つ以上の容器を伴うパッケージを含む。検査キットはまた、(1種または複数の)バッファ、(1種または複数の)希釈剤、(1種または複数の)標準のような使用者の見地から望ましい(1種または複数の)他の材料および/またはサンプルの処理、洗浄または他の何らかのアッセイ段階を行うために有用な他の何らかの材料を含み得る。
【0160】
いくつかの実施態様において、検査キットはヒト化モノクローナル抗体を含み、該ヒト化モノクローナル抗体は心筋トロポニンに特異的である。この成分は本発明によるイムノアッセイで陽性対照として使用できる。所望の場合、試験サンプル中で検出されたシグナルを比較できる標準曲線の作成を容易にするためにこの成分を複数の濃度で検査キットに含ませる。あるいは、キットに備えられた単一のヒト化モノクローナル抗体溶液の希釈液を調製することによって標準曲線を作成できる。
【0161】
本発明によるキットは、固相および固相に固定された捕獲剤を含むことができ、捕獲剤は心筋トロポニン抗原および種特異的抗体から成るグループから選択され、種特異的抗体は生物サンプルを提供する種に特異的である。このようなキットをサンドイッチイムノアッセイに使用する場合、キットはさらに、標識された検出試薬を含む。このような実施態様において捕獲剤が心筋トロポニン抗原であるとき、検出試薬は種特異的抗体でよい。捕獲剤が種特異的抗体であるときは、心筋トロポニン抗原を検出試薬として使用できる。特定実施態様においては種特異的抗体がヒト特異的抗体である。
【0162】
本発明の検査キットはまた、心筋トロポニンに特異的な標識された非ヒトモノクローナル抗体を含み得る。この成分は、使用された心筋トロポニン抗原が抗体に結合できることを確認するための対照として有用である。
【0163】
いくつかの実施態様においては検査キットがアクリジニウム−9−カルボキサミドのような少なくとも1つの直接ラベルを含む。本発明による検査キットはまた少なくとも1つの間接ラベルを含むことができる。使用されるラベルが一般に、検出可能シグナルを発生する指示薬を必要とするならば、検査キットが1種以上の適当な指示薬を含むのが好ましい。
【0164】
代表的な実施態様においては固相が1つ以上の微粒子または電極を含む。マルチプレックスアッセイ用に設計された検査キットは複数の異なる自己抗体に特異的な複数の抗原を含む1つ以上の固相を含有するのが便利である。従ってたとえば、マルチプレックス電気化学的イムノアッセイ用に設計された検査キットは複数の電極を含む固相を含有でき、各電極が異なる抗原を担持している。
【0165】
本発明による検査キットは好ましくは、1つ以上の本発明のイムノアッセイを実行するための使用説明書を含む。本発明のキットに含まれる使用説明書は包装材料に添付されてもよくまたは包装インサートとして含まれてもよい。使用説明書は典型的には書面または印刷文書であるが、このような形態に限定はされない。このような使用説明書を記憶して最終使用者に伝達できる何らかの媒体が本発明によって考察されている。このような媒体は非限定的に、電子記憶媒体(たとえば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(たとえば、CD ROM)などを含む。この文中に使用した“使用説明書”という用語は、使用説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得る。
【0166】
(実施例)
本発明はその使用および効力を示す実施例によってより十分に理解されよう。以下の実施例は、特許請求の範囲に記載の発明を例証するために与えられたものであり、発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0167】
心筋トロポニンI−C複合体マイクロプレート調製および試験
マイクロプレートコーティング手順
マイクロプレートコーティング溶液は、ヒト心筋トロポニンI−C複合体(cTnIC,販売業者)をリン酸塩バッファ(0.2M、pH8)に溶解して、80、400、2000または10000ng/mLの濃度の溶液とすることによって調製した。コーティング溶液(100μL)を白色高結合性平底96ウェルポリスチレンマイクロプレートのウェルに加えた。次にマイクロプレートを密封し、28rpmの回転シェーカーに載せ、38℃で1時間インキュベートした。次にコーティング溶液を、2%wt/vのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)から成るブロッキング溶液(300μL)で置換し、プレートを密封する前に新しいブロッキング溶液で置換し、28rpmの回転シェーカーに載せ、38℃で1時間インキュベートした。次にコーティング溶液を2%wt/vのショ糖を含むリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)から成るオーバーコーティング溶液(300μL)で置換し、プレートを密封する前に新しいオーバーコーティング溶液で2回置換し、28rpmの回転シェーカーに載せ、38℃で20分間インキュベートした。次にオーバーコーティング溶液を除去し、マイクロプレートを周囲温度、乾燥窒素流下で乾燥した後、周囲温度で乾燥保存した。
【0168】
cTnICをコートしたマイクロプレートの活性
cTnICをコートしたマイクロプレートの免疫反応応答は、ARCHITECT(R) STAT−トロポニンIキット(Abbott Laboratories,Abbott Park,IL)の試薬を用いて試験した。cTnICをコートしたマイクロプレートのウェルに、ARCHITECT(R) STAT−トロポニンIコンジュゲート[タンパク質(ウシ)安定剤を含むMESバッファ中の抗心筋トロポニンI(マウス、モノクローナル)アクリジニウム標識コンジュゲート。保存料:ProClin(R)300](100μL)を加えた。次にマイクロプレートを密封し、28rpmの回転シェーカーに載せ、38℃で1時間インキュベートした。次にコンジュゲート溶液を除去し、マイクロプレートのウェルをARCHITECT(R) Line希釈剤(3×300μL)で洗浄した。
【0169】
抗心筋トロポニンIアクリジニウム標識マウスモノクローナル抗体−cTnIC免疫複合体の形成をBerthold Mithrasマイクロプレートリーダー(Berthold Technologies Inc,Oak Ridge,TN)で測定した。37℃で平衡させておいた計器にマイクロプレートを充填した。ARCHITECT(R) プレトリガ溶液(100μL)を各ウェルに分配した。プレトリガ溶液の添加後、プレートを72秒間振盪した。次にARCHITECT(R) トリガ溶液(100μL)を各ウェルに分配し、化学発光シグナルを2秒間記録した。cTnICの各コーティング濃度について化学発光シグナル(RLU,相対的光単位)を時間(秒)に対してプロットした。結果を図1、図2および表1に示す。2000ng/mLのコーティング濃度で最大の光出力(RLUmax)およびシグナル対ノイズ(S/N)が観察された。
【0170】
【表1】
【実施例2】
【0171】
正常ドナーヒト血漿中のcTnIC反応性自己抗体の分析
試験サンプル(10μL)とARCHITECT(R) STAT−トロポニンIキットのプレインキュベーション希釈剤(90μL)とを混合し、濃度2000ng/mLのcTnICをコートしたマイクロプレート(実施例1)のウェルに加えた。全部の試験サンプルの充填後、次にマイクロプレートを密封し、28rpmの回転シェーカーに載せ、37℃で2時間インキュベートした。次に試験サンプルの希釈溶液を除去し、マイクロプレートのウェルをARCHITECT(R) Line希釈剤(3×300μL)で洗浄した。マウス抗−ヒトIgGアクリジニウム標識コンジュゲート溶液(100μL)を各ウェルに加えた。全部の試験サンプルにコンジュゲートを加えた後、次にマイクロプレートを密封し、28rpmの回転シェーカーに載せ、37℃で1時間インキュベートした。次にコンジュゲート溶液を除去し、マイクロプレートのウェルをARCHITECT(R) Line希釈剤(3×300μL)で洗浄した。マイクロプレートを計器に入れ、37℃で平衡させた。ARCHITECT(R) プレトリガ溶液(100μL)を各ウェルに分配した。プレトリガ溶液の添加後、プレートを72秒間振盪した。次にARCHITECT(R) トリガ溶液(100μL)を各ウェルに分配し、化学発光シグナルを2秒間記録した。cTnICに対する自己抗体応答の分布を図3に示し、統計量の要約を表2に記載する。図3(およびこの文中の残りの図)の箱ひげ表示プロットにおいて、ボックス(箱)の中央の横線は中央値を表す。ボックスの上端および下端は四分位数間領域を示す。ホイスカ(ひげ)は各グループの最小値および最大値を表す。全正常集団の96サンプル中の16サンプル(17%)が第75パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与え(95%信頼レベル)、96サンプル中の4サンプル(4%)が第90パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与えた(95%信頼レベル)。
【0172】
【表2】
【実施例3】
【0173】
cTnI陽性ヒト血漿中のcTnIC反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnI陽性(0.2−7ng/mL)と鑑定されたヒト血漿サンプルのcTnIC反応性自己抗体を分析した。cTnICに対する自己抗体応答の分布を図4に示し、統計量の要約を表3に記載する。全cTnI陽性集団の80サンプル中の12サンプル(15%)が、第75パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与え(95%信頼レベル)、80サンプル中の3サンプル(4%)が第90パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与えた(95%信頼レベル)。
【0174】
【表3】
【実施例4】
【0175】
cTnI陽性ヒト血漿中のcTnIC反応性IgM自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnI陽性(0.2−7ng/mL)と鑑定されたヒト血漿サンプルのcTnIC反応性IgM自己抗体を分析した。実施例2に使用した抗−ヒトIgGアクリジニウム標識コンジュゲート溶液の代わりに抗−ヒトIgMアクリジニウム標識コンジュゲート溶液(100μL)を使用した。cTnICに対する自己抗体応答の分布を図5に示し、統計量の要約を表4に記載する。全cTnI陽性集団の80サンプル中の11サンプル(14%)が、第75パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与え(95%信頼レベル)、80サンプル中の2サンプル(3%)が第90パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与えた(95%信頼レベル)。
【0176】
【表4】
【実施例5】
【0177】
心筋トロポニンIマイクロプレート調製
4000ng/mLのコーティング濃度を使用し実施例1に従ってヒト心筋トロポニンI(cTnI)マイクロプレートを調製した。
【実施例6】
【0178】
心筋トロポニンTマイクロプレート調製
4000ng/mLのコーティング濃度を使用し実施例1に従ってヒト心筋トロポニンT(cTnT)マイクロプレートを調製した。
【実施例7】
【0179】
心筋トロポニンCマイクロプレート調製
4000ng/mLのコーティング濃度を使用し実施例1に従ってヒト心筋トロポニンC(cTnC)マイクロプレートを調製した。
【実施例8】
【0180】
正常ドナーのヒト血漿中のcTnI反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnIコートした実施例5のマイクロプレートを使用し、正常ドナーのヒト血漿サンプル中のcTnI反応性自己抗体を分析した。cTnIに対する自己抗体応答の分布を図6に示し、統計量の要約を表5に記載する。
【0181】
【表5】
【実施例9】
【0182】
正常ドナーのヒト血漿中のcTnT反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnTコートした実施例6のマイクロプレートを使用し、正常ドナーのヒト血漿サンプル中のcTnT反応性自己抗体を分析した。cTnTに対する自己抗体応答の分布を図7に示し、統計量の要約を表6に記載する。
【0183】
【表6】
【実施例10】
【0184】
正常ドナーのヒト血漿中のcTnC反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnCコートした実施例7のマイクロプレートを使用し、正常ドナーのヒト血漿サンプル中のcTnC反応性自己抗体を分析した。cTnCに対する自己抗体応答の分布を図8に示し、統計量の要約を表7に記載する。
【0185】
【表7】
【実施例11】
【0186】
cTnI陽性ヒト血漿中のcTnI反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnI陽性(0.2−7ng/mL)と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnI反応性自己抗体をcTnIコートした実施例5のマイクロプレートを使用して分析した。cTnIに対する自己抗体応答の分布を図9に示し、統計量の要約を表8に記載する。
【0187】
【表8】
【実施例12】
【0188】
cTnI陽性ヒト血漿中のcTnT反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnI陽性(0.2−7ng/mL)と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnT反応性自己抗体をcTnTコートした実施例6のマイクロプレートを使用して分析した。cTnTに対する自己抗体応答の分布を図10に示し、統計量の要約を表9に記載する。
【0189】
【表9】
【実施例13】
【0190】
cTnI陽性ヒト血漿中のcTnC反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnI陽性(0.2−7ng/mL)と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnC反応性自己抗体をcTnCコートした実施例7のマイクロプレートを使用して分析した。cTnCに対する自己抗体応答の分布を図11に示し、統計量の要約を表10に記載する。
【0191】
【表10】
【実施例14】
【0192】
抗HBV陽性ヒト血漿中のcTnIC反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、自然感染によるB型肝炎ウイルス抗体陽性と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnIC反応性自己抗体をcTnICコートした実施例1のマイクロプレートを使用して分析した。cTnICに対する自己抗体応答の分布を図12に示し、統計量の要約を表11に記載する。
【0193】
【表11】
【実施例15】
【0194】
BNP陽性ヒト血漿中のcTnI反応性自己抗体の分析
実施例8に従って、B型ナトリウム利尿ペプチド陽性と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnI反応性自己抗体をcTnIコートした実施例5のマイクロプレートを使用して分析した。cTnIに対する自己抗体応答の分布を図13に示し、統計量の要約を表12に記載する。
【0195】
【表12】
【実施例16】
【0196】
HCV陽性ヒト血漿中のcTnI反応性自己抗体の分析
実施例8に従って、HCV陽性と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnI反応性自己抗体をcTnIコートした実施例5のマイクロプレートを使用して分析した。cTnIに対する自己抗体応答の分布を図14に示し、統計量の要約を表13に記載する。
【0197】
【表13】
【実施例17】
【0198】
シャガス陽性ヒト血漿中のcTnI反応性自己抗体の分析
実施例8に従って、シャガス陽性と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnI反応性自己抗体をcTnIコートした実施例5のマイクロプレートを使用して分析した。cTnIに対する自己抗体応答の分布を図15に示し、統計量の要約を表14に記載する。
【0199】
【表14】
【実施例18】
【0200】
cTnI反応性自己抗体とcTnI抗原との反応特異性アッセイ
高反応性抗−cTnIサンプル(25μL)をcTnI抗原(123μg/mL、25μL)と共に18時間インキュベートした。その後、各サンプル混合物(10μL)をマイクロプレートウェル中でAxSYM(R)トロポニン−I ADVプレインキュベーション希釈剤(90μL)によって希釈し、次いで実施例8の正規アッセイプロトコルによって処理した。阻害%中央値は62%(範囲は29から78%)であった。
【実施例19】
【0201】
cTnI抗原ペプチドライブラリーを使用するcTnI反応性自己抗体の検出
ストレプトアビジンをコートしたマイクロプレート(Reacti−BindTM,NeutrAvidinTM HBC;Pierce,Rockford,IL)上で、完全cTnI配列(ペプチド長は15アミノ酸;オーバーラップは12アミノ酸;PEPscreen(R),Sigma−Genosys,The Woodlands,TX)を包含するビオチニル化ペプチドライブラリー(表15)に対してサンプルをスクリーニングした。すなわち、ペプチド(100μL、1200pmol/mL)をマイクロプレート上に配列し、次にマイクロプレートを密封し、周囲温度で1時間インキュベート/混合した。次にマイクロプレートをARCHITECT(R)洗浄バッファで洗浄し、吸引乾固した。サンプル(500μL)を9.5mLのAxSYM(R)トロポニンプレインキュベーション希釈剤で希釈し、次いでペプチドライブラリーと共にマイクロプレートに配列した(100μL/ウェル)。プレートを密封し、28rpmでかき混ぜながら37℃で2時間インキュベートした。その後、プレートをARCHITECT(R)洗浄バッファで洗浄し、各ペプチドに対する応答を実施例2に記載の化学発光検出を用いて測定した。
【0202】
完全cTnI抗原に対してスクリーニングした高応答性サンプル全部が、cTnIペプチドライブラリーに存在した1つ以上のエピトープに結合したIgGを含有していた。合せて考察すべきは、正常ドナー集団中の抗−cTnI IgG応答がcTnIペプチド配列の75%を含んでいたことである。図16は正常ドナー集団中のペプチドライブラリーに対する応答を示す。
【0203】
【表15】
【0204】
本発明が、その目的の実行、また、上記の目的および利点ならびに本発明に固有の目的および利点の獲得に適応可能であることを当業者は容易に理解されるであろう。この文中に記載した分子複合体、方法、手順、処理、分子、具体的化合物は、好ましい実施態様の現在の代表であり、好適例であり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲および要旨を逸脱することなくこの文中に開示した本発明に対する様々な置換および変更が可能であることは当業者に容易に理解されよう。
【0205】
明細書において言及したすべての特許および刊行物は、本発明が所属する分野の当業者のレベルを示す。個々の刊行物のおのおのが具体的かつ個別的に参照によって組込まれるとする指示と同様に、すべての特許および刊行物は参照によってこの文中に組込まれるものとする。
【0206】
この文中に例示的に記載した本発明は、この文中に具体的に開示しなかった1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定が存在しない場合にも適切に実施されるであろう。従って、たとえばこの文中ではどの場合にも“含む”、“本質的にから構成されている”および“から構成されている”という用語は他の2つの用語のいずれかで置換できる。使用した用語および表現は、記述目的で使用したものであって限定目的で使用したものではなく、このような用語および表現を使用することによって図示および記載の特徴に等価の特徴またはその部分を排除する意図はなく、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲内で多様な修正が可能であると理解される。従って、本発明は好ましい実施態様および選択自在な特徴によって具体的に開示されたが、当業者がこの文中に開示された概念の修正および変更を援用できること、および、このような修正および変更は特許請求の範囲に定義された本発明の範囲内に存在すると考えるべきであることを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、心筋トロポニンに反応性の自己抗体用アッセイの領域に関する。より特定的には本発明は、特に心臓病またはその危険性を評価するためのこのようなアッセイの使用およびアッセイ用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
トロポニン複合体は、骨格筋および心筋の収縮の調節に重要な役割を果たすヘテロ重合タンパク質である。これは、3つのサブユニット、すなわち、トロポニンI(TnI)、トロポニンT(TnT)およびトロポニンC(TnC)から構成されている。各サブユニットはトロポニン複合体機能の一部に関与する。たとえば、TnIはアクトミオシンのATPアーゼ活性を阻害する。
【0003】
心筋中のTnTおよびTnIは骨格筋中とは異なる形態で存在する。心筋TnI(cTnI)は心筋中でのみ発現される。cTnIは心組織傷害のマーカーとして広く使用されている。cTnIは心筋梗塞の診断においてCK−MB、ミオグロブリンおよびLDHアイソザイムよりも高感度でありまた顕著に特異的であると考えられている。
【0004】
cTnIは胸痛発作の3から6時間後に患者の血液中で検出でき、16から30時間でピークレベルに到達する。cTnIはまた、発作の5から8日後にも血液中に高濃度で検出できるので、急性心筋梗塞の遅れた診断にも役立つ。
【0005】
急性心筋梗塞後の壊死筋肉内に潜伏中にcTnIは内因性プロテアーゼによって開裂される。この開裂から生じる最も安定なフラグメントは30から110のアミノ酸残基間に局在する。このためcTnIアッセイではこのフラグメントを認識する抗体が使用されている。
【0006】
心組織傷害の早期検出が重要であることを考慮すれば、単独指標として使用できるかまたは他のアッセイと併用できる心臓病またはその危険性の同定方法および同定用キットの必要性が依然として存在することは明らかである。
【0007】
この背景情報は、本発明に関連を有し得ると出願人に思われる公知情報を知らせる目的で提示した。これらの既存情報のいずれかが本発明に対する先行技術を構成すると必ずしも認めたものではなく、また、そのように解釈されるべきでもない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は特に、心筋トロポニンに反応性の自己抗体用アッセイ、このようなアッセイを行うためのキット、および、心臓病またはその危険性を評価するためのこのようなアッセイおよびキットの使用を提案する。
【0009】
1つの実施態様において本発明は、たとえばアッセイによって測定された心筋トロポニンの量が対象の体内の心筋トロポニンに反応性の自己抗体の存在によって影響を受ける場合に、心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性を判定する方法を提供する。方法は、生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性欠如を示す指標となる。この方法は場合により、(a)対象から生物サンプルを採取する段階と、(b)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(c)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルに基づいて心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性を鑑定する段階とを含む。
【0010】
別の実施態様において本発明は、心臓病の危険性を評価する方法を提供する。この方法は、生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は心臓病の高い危険性を示す指標となる。この方法は場合により、(a)対象から生物サンプルを採取する段階と、(b)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(c)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルに基づいて心臓病の危険性を鑑定する段階とを含む。
【0011】
この実施態様の1つの変形においては本発明の方法が、生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンを検定する段階、および、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含む。アッセイは1つの生物サンプルで行ってもよく、または異なる生物サンプルで行ってもよい。高レベルの心筋トロポニンおよび/または高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は心臓病の高い危険性を示す指標となる。この方法は場合により、(a)対象から1つ以上の生物サンプルを採取する段階と、(b)1つ以上の生物サンプル中の心筋トロポニンのレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニンに特異的な抗体使用)、(c)1つ以上の生物サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(d)サンプル中の高レベルの心筋トロポニンおよび/または高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在に基づいて心臓病の危険性を鑑定する段階とを含む。この方法において、段階(c)は、段階(b)の前、後、同時にまたは段階(b)を削除して、場合により同一または異なる生物サンプルに行うことができる。
【0012】
特定実施態様においては上述の方法およびこの文中に記載した他の方法を、胸痛のある対象から採取した生物サンプルに対して実行できる。いくつかの実施態様において、対象は心筋梗塞が疑われる対象である。
【0013】
心臓病の危険性評価方法は、心筋炎、心筋症および虚血性心疾患のあるまたはそれらの危険性のある対象をスクリーニングする段階を含む。この方法は、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含む。高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は心臓病の存在またはその危険性を示す指標となる。この方法は場合により、(a)対象から生物サンプルを採取する段階と、(b)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(c)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルに基づいて心臓病の危険性を鑑定する段階とを含む。
【0014】
本発明はまた、心臓病のあるまたはその危険性のある対象が免疫抑制療法および/または免疫吸収療法の候補であるかを判断する方法を提供する。方法は、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含む。高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は、対象がこのような療法の候補であることを示す指標となる。この方法は場合により、(a)対象から生物サンプルを採取する段階と、(b)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(c)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルに基づいて対象が免疫抑制療法および/または免疫吸収療法の候補であるかを鑑定する段階とを含む。
【0015】
別の実施態様において本発明は、心臓病のあるまたはその危険性のある対象の同定方法を提供する。方法は、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、この場合、対象が自己免疫疾患にかかっているかまたは対象が自己免疫疾患患者の一親等の血縁である。この方法は場合により、(a)自己免疫疾患にかかっているおよび/または自己免疫疾患患者の一親等の血縁である対象から生物サンプルを採取する段階と、(b)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルを測定する段階と(たとえば、心筋トロポニン抗原を使用する)、(c)サンプル中の心筋トロポニンに反応性の自己抗体のレベルに基づいて心臓病の危険性を鑑定する段階とを含む。
【0016】
この文中に記載の方法のおのおのにおいて、生物サンプルは哺乳動物(たとえば場合によりヒト)である対象から採取される。アッセイにかける心筋トロポニンは、心筋トロポニンI、T、Cおよびそれらの複合体から成るグループから選択される。自己抗体は、心筋トロポニンI、T、Cおよびその複合体から成るグループから選択された心筋トロポニンを含む心筋トロポニンに反応性である。
【0017】
この文中に記載の方法のいずれかはイムノアッセイを使用して簡便に実行できる。適当なイムノアッセイは凝集アッセイを含む。代表的な凝集アッセイにおいては、生物サンプルを固相に固定された心筋トロポニン抗原に、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させ、次いでサンプルの凝集を測定する。凝集の程度はサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している。
【0018】
別の実施態様においては、生物サンプルを心筋トロポニン抗原に、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させ、心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む1つ以上の複合体からシグナルを検出する。このようなイムノアッセイは非競合フォーマットで行うことができ、その場合、シグナルはサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している。
【0019】
本発明に有用な代表的非競合イムノアッセイにおいては、方法がさらに生物サンプルを種特異的抗体に接触させる段階を含み、この場合の種特異的抗体は生物サンプルを提供した種に特異的であり、接触は、心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば種特異的抗体に特異的に結合できる十分な条件下で行う。シグナル検出は、標識された種特異的抗体にそれ自体が結合している心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む複合体を検出する段階を含む。生物サンプルと心筋トロポニン抗原との接触および生物サンプルと種特異的抗体との接触は同時に行ってもよくまたは任意の順序で順次に行ってもよい。
【0020】
本発明に有用な代表的な非競合イムノアッセイにおいては、心筋トロポニン抗原を固相に固定できる。サンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体に心筋トロポニンが結合すると、固相に固定された複合体が形成され、この複合体からシグナルが検出される。所望ならば、種特異的抗体を標識できる(たとえば、サンドイッチイムノアッセイの場合)。あるいは、種特異的抗体を固相に固定してもよい。この場合、サンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体に種特異的抗体が結合すると、固相に固定された複合体が形成され、この複合体からシグナルが検出される。所望ならば、心筋トロポニン抗原を標識できる(たとえば、サンドイッチイムノアッセイの場合)。
【0021】
本発明に有用なイムノアッセイはまた競合フォーマットで行うこともでき、この場合、シグナルはサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に負の相関関係を有している。特定実施態様においては、生物サンプルを心筋トロポニン抗原に、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させる。さらに生物サンプルを、標識された心筋トロポニン反応性抗体に、標識された心筋トロポニン反応性抗体が心筋トロポニン抗原に特異的に結合できる十分な条件下で接触させる。生物サンプルと心筋トロポニン抗原との接触および生物サンプルと標識された心筋トロポニン反応性抗体との接触は同時に行ってもよくまたは任意の順序で順次に行ってもよい。
【0022】
本発明に有用な代表的競合イムノアッセイにおいては、心筋トロポニン抗原を固相に固定できる。サンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体が心筋トロポニンに結合すると、固相に固定された複合体が形成され、この複合体からシグナルが検出される。
【0023】
本発明はまた、生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン反応性自己抗体を検定するための検査キットを提供する。特定実施態様において検査キットは、心筋トロポニンに反応性の抗体を含む。たとえば検査キットはヒト化モノクローナル抗体を含むことができ、この場合のヒト化モノクローナル抗体は心筋トロポニンに特異的である。代替的または付加的に、検査キットは標識された非ヒトモノクローナル抗体を含むことができ、この非ヒトモノクローナル抗体は心筋トロポニンに特異的である。
【0024】
従って本発明の検査キットは所望ならば、固相および固相に固定された捕獲剤を含むことができる。代表的な実施態様において、捕獲剤は心筋トロポニン抗原または種特異的抗体であり、この場合の種特異的抗体は生物サンプルを提供する種に特異的である。特定実施態様において種特異的抗体はヒト特異的抗体を含む。
【0025】
代替的または付加的に、本発明の検査キットは標識された検出試薬を含むことができ、この場合、(1)捕獲剤が心筋トロポニン抗原ならば、検出試薬は種特異的抗体であり、(2)捕獲剤が種特異的抗体ならば、検出試薬は心筋トロポニン抗原である。
【0026】
本発明の方法および検査キットに使用できる適当な固相はたとえば、マイクロプレート、電極または微粒子を含む。適当な微粒子は磁性または常磁性でよい。方法および検査キットに有用なラベルは直接ラベルおよび間接ラベルを含む。たとえば、アクリジニウム−9−カルボキサミドを直接ラベルとして使用できる。いくつかの実施態様において、シグナルはラベルを指示薬に接触させることによって検出される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に記載の化学発光シグナルプロフィルに対するcTnICコーティング濃度の効果を示すグラフである。図1は、0ng/mL(黒い菱形)、80ng/mL(黒い方形)、400ng/mL(黒い三角)、2000ng/mL(“x”記号)および10,000ng/mL(星印)のcTnIC濃度に対する化学発光プロフィルを示す。
【図2】実施例1に記載の化学発光シグナルに対するcTnICコーティング濃度の効果を示すグラフである。
【図3】実施例2に記載の正常ドナーにおけるcTnIC自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図4】実施例3に記載のcTnI陽性サンプルにおけるcTnIC自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図5】実施例4に記載のcTnI陽性サンプルにおけるcTnIC IgM自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図6】実施例8に記載の正常ドナーにおけるcTnI自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図7】実施例9に記載の正常ドナーにおけるcTnT自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図8】実施例10に記載の正常ドナーにおけるcTnC自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図9】実施例11に記載のcTnI陽性サンプルにおけるcTnI自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図10】実施例12に記載のcTnI陽性サンプルにおけるcTnT自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図11】実施例13に記載のcTnI陽性サンプルにおけるcTnC自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図12】実施例14に記載の抗HBV陽性サンプルにおけるcTnIC自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図13】実施例15に記載のBNP陽性サンプルにおけるcTnI自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図14】実施例16に記載のHCV疾患陽性サンプルにおけるcTnI自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図15】実施例17に記載のシャガス病陽性サンプルにおけるcTnI自己抗体応答を示す箱ひげ表示プロットである。
【図16】実施例19に記載のcTnIペプチドライブラリーの構成員(cTnI配列残基,横座標)に対する正常ドナー集団のcTnI自己抗体応答を化学発光シグナル(RLUmax,縦座標)として表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
心筋トロポニン反応性自己抗体は、ウイルス、細菌もしくは毒素のような病原体の分子擬態、遺伝的異常、組織損傷または特発性疾患によって産生される。このような自己抗体の存在が炎症プロセスに導き、その結果として正常な心機能を冒すような損傷を心組織に与える。さらに、心筋トロポニン反応性自己抗体は心臓病の臨床徴候出現の危険性に関する早期指標を提供する。これとは別に心筋トロポニン反応性自己抗体は、たとえば慣用の中間的フラグメント(midfragment)特異的イムノアッセイを使用するcTnIの測定を妨害し得る。内因性抗体によるこの妨害は偽陰性結果を生じさせ、その結果として個体の急性心筋梗塞(AMI)を適時に診断すること妨げる。本発明は、心筋トロポニンと併用されてまた単独で心臓病の指標となる心筋トロポニン自己抗体の測定に基づく方法を含む。
【0029】
定義
以下の記載では具体的に否定の定義がない限り、この文中で使用したすべての技術用語、科学用語およびその他の用語は本発明が所属する分野の平均的な当業者が共通に理解する意味と同義である。
【0030】
以下の用語は、Genbankにおいて同定されたポリペプチド(たとえば、非限定的に、登録番号P19429、P45379、P63316、AAK92231、CAA56240およびCAA52818を含む)および科学文献において心筋トロポニンI、心筋トロポニンT、心筋トロポニンCという名称によって同定されたポリペプチド、ならびに、Genbankおよび科学文献においてこれらの名称のポリペプチドに少なくとも約70%一致すると同定されたポリペプチドを包含する。代替的実施態様において、これらの用語は、Genbankにおいてこれらの名称によって同定されたポリペプチドおよび少なくとも約80、90、95、96、97、98または99%の一致を共有するポリペプチドを包含する。一致パーセントはたとえば、選択した一致パーセントを測定するように設定した自動選定パラメーターをもつBLASTPを使用して行った配列位置合せによって決定できる。特定実施態様において、これらの用語は、全長ポリペプチドおよびそれらのフラグメントを包含する。
【0031】
この文中に使用した“心筋トロポニン抗原”という用語は、心筋トロポニンまたは心筋トロポニン複合体に特異的な抗体に結合できる心筋トロポニンまたはそのフラグメントまたはその複合体を表す。
【0032】
“心臓病”という用語は、正常な心機能を低下させるような心臓または心臓に供給する血管の構造的または機能的な異常を含む心臓の健全または正常な状態からの逸脱を表す。心臓病の例は心筋炎、心筋症および虚血性心疾患を含む。
【0033】
“心筋炎”という用語は、心筋の炎症を表す。心筋炎は、ウイルス感染、サルコイドーシス、リウマチ熱、自己免疫疾患(全身性ループスなど)および妊娠のような様々な状態が原因で生じる。
【0034】
“心筋症”という用語は、心臓筋肉の弱体化または心臓筋肉の構造変化を表す。これはしばしば不適正な心臓のポンプ作用または他の心機能異常を伴う。心筋症は、ウイルス感染、心臓発作、アルコール中毒、長期間の重篤な高血圧、栄養不足(特に、セレン、サイアミン、L−カルニチンの不足)、全身性ループス・エリテマトーデス、ツェリアカ病、末期腎臓病などが原因で生じる。心筋症のタイプには、拡張性心筋症、肥大性心筋症および拘束性心筋症などがある。
【0035】
この文中に使用した“拡張性心筋症”という用語は、左心室の顕著な拡張および不適正機能によって特徴づけられる通常は特発性の全体的な心筋障害である。拡張性心筋症は、虚血性心筋症、特発性心筋症、高血圧性心筋症、感染性心筋症、アルコール性心筋症、中毒性心筋症および周産期心筋症を含む。
【0036】
この文中に使用した“肥大性心筋症”という用語は、左右の心筋が異なる大きさに成長した結果として生じた状態を表す。
【0037】
この文中に使用した“拘束性心筋症”という用語は、収縮期と収縮期との間の心臓筋肉の弛緩能力が失われ十分な血液供給が阻害されることを特徴とする状態を表す。
【0038】
“虚血性心疾患”という用語は、血液供給の欠如または相対的不足が理由で心筋が損傷されたかまたは機能効率が低下した状態を表す。もっとも多い原因はアテローム性動脈硬化症であり、これは、狭心症、急性心筋梗塞および慢性虚血性心疾患を含む。
【0039】
“狭心症”という用語は、心筋の血管(冠状血管)の不適正な血流を原因とする胸部の不快を表す。
【0040】
“心筋梗塞”(心臓発作)は、心臓筋肉の1つの領域が、該領域に適正な酸素供給が行われないために壊死または損傷したときに生じる。
【0041】
この文中に使用した“免疫抑制療法”という用語は、たとえば自己抗体の産生のような体内の免疫応答の抑制を目的とする治療方法を意味する。
【0042】
この文中に使用した“免疫吸着療法”という用語は、標的抗体に結合させることによって血漿から抗体を除去する治療を表す。典型的には、血漿を対象から取出し、固相に固定した標的抗体の結合パートナーに、結合するために十分な条件下で接触させ、次いで血漿を対象に戻す。
【0043】
この文中に使用した“自己免疫疾患”という用語は、病的な自己免疫状態を表す。“自己免疫”という用語は、たとえば、自己抗体または宿主抗原に反応性のTリンパ球の存在によって特徴づけられる宿主抗原に指向性の1つ以上の免疫応答を表す。
【0044】
“一親等の血縁”という用語は、両親、子供または同胞の兄弟姉妹を表す。
【0045】
本発明の方法を使用してアッセイにかけることができる“生物サンプル”は、全血、血清、血漿、滑液、脳脊髄液、気管支洗浄液、腹水、骨髄吸引液、胸膜滲出液、尿、および、腫瘍組織または他の体内成分または問題の分析物を含有できる何らかの組織培養上清を含む。
【0046】
この文中に使用した“分析物”という用語は、生物サンプル中に存在し得る検出すべき物質を表す。分析物は、天然産生の特異的結合パートナーを有するかまたは特異的結合パートナーを製造できる物質であればよい。従って、分析物は1つのアッセイにおいて1つ以上の特異的結合パートナーに結合できる物質である。
【0047】
この文中に使用した“結合パートナー”という用語は、結合ペア、すなわち、一方の分子が他方の分子に結合する一対の分子の構成員を表す。特異的に結合する結合パートナーは“特異的結合パートナー”と呼ばれる。イムノアッセイに常用の抗原抗体結合パートナーの他にも、ビオチンとアビジン、糖質とレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター分子とレセプター分子、補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素などの特異的結合パートナーがある。特異的結合パートナーはさらに、原形の特異的結合パートナーの(1つ以上の)類似体である(1つ以上の)パートナー、たとえば分析物−類似体を含み得る。免疫反応性特異的結合パートナーは、組換えDNA方法によって形成されたものも含めた抗原および抗原フラグメント、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびこれらの抗体のフラグメント、それらの複合体を含む。
【0048】
この文中に使用した“特異的結合”という用語は、当業界で公知の手段によって測定したときに、特異的部位において結合パートナー同士(たとえば、2つのポリペプチド、1つのポリペプチドと核酸分子、または、2つの核酸分子)が他の分子よりも優先的に結合していることを表す。“特異的に結合する”という用語は、標的分子/配列に対する結合優先性(たとえば、親和性)が非特異的標的分子(たとえば、ランダムに生じた特異的認識部位のない分子)の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍、もっとも好ましくは少なくとも10から20倍であることを示す。
【0049】
心筋トロポニンまたは心筋トロポニン反応性自己抗体に関してこの文中に使用した“高レベル”という用語は、生物サンプル中の正常レベルまたは正常範囲よりも高いレベルを表す。心筋トロポニンおよび心筋トロポニン反応性自己抗体の正常レベルまたは正常範囲は標準実態に従って定義される。従って、特定の生物サンプル中で測定されたレベルは、正常組織の同様のサンプル中で測定されたレベルまたはレベル範囲に比較されるであろう。この文脈で、“正常組織”は、検出可能な心臓病のない個体から採取した組織であり、“正常な”(ときには“対照”と呼ばれる)患者または集団は、検出可能な心臓病を示さない患者または集団である。分析物が正常には検出されない(たとえば、正常レベルがゼロ)のに試験サンプル中では検出される場合、および、分析物が正常レベルよりも高いレベルで試験サンプル中に存在する場合に、分析物のレベルが“高い”と言う。
【0050】
この文中に使用した“固相”という用語は、不溶性であるかまたは以後の反応によって不溶性にされる材料を表す。固相は捕獲剤を引き付けて固定化する固有能力に基づいて選択できる。あるいは、捕獲剤を引き付けて固定化する能力をもつ連結剤を固相に固定してもよい。連結剤はたとえば、捕獲剤自体に対してまたは捕獲剤に共役した帯電物質に対して逆の電荷に帯電した物質を含む。一般的に連結剤は、固相に固定化され(付着し)、結合反応を介して捕獲剤を固定化する能力をもつ結合パートナー(好ましくは特異的)であればよい。連結剤は、アッセイの実行前またはアッセイの実行中に捕獲剤を固相材料に間接結合させ得る。固相はたとえば、プラスチック、誘導プラスチック、磁性または非磁性の金属、ガラスまたはシリコンでよく、たとえば、試験管、マイクロタイターウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップおよび平均的な当業者に公知の他の形状を含む。
【0051】
この文中に使用した“微粒子”という用語は、超遠心によって回収可能な小粒子を表す。微粒子は典型的には約1ミクロン以下のオーダの平均粒径を有している。
【0052】
この文中に使用した“捕獲剤”という用語は、分析物に好ましくは特異的に結合する結合パートナーを表す。捕獲剤は固相に付着できる。この文中に使用したように、固相に固定された捕獲剤が分析物に結合して、“固相に固定された複合体”が形成される。
【0053】
この文中に使用した“標識された検出試薬”という用語は、分析物に好ましくは特異的に結合し、検出可能ラベルで標識されているかまたはアッセイにおいて使用中に検出可能ラベルで標識される結合パートナーを表す。
【0054】
“検出可能ラベル”は、検出可能であるかまたは検出可能にできる部分を含む。
【0055】
標識された検出試薬に関して使用した“直接ラベル”は、何らかの手段によって検出試薬に付着させた検出可能ラベルである。
【0056】
標識された検出試薬に関して使用した“間接ラベル”は、検出試薬に特異的に結合する検出可能ラベルである。従って間接ラベルは、検出試薬の一部分の特異的結合パートナーである部分を含む。たとえば、標識されたアビジンにビオチニル化抗体を接触させることによって間接標識抗体を生成するために使用されるビオチンおよびアビジンはこのような部分の例である。
【0057】
この文中に使用した“指示薬”という用語は、ラベルに接触して検出可能シグナルを発生する何らかの物質を表す。従ってたとえば慣用の酵素標識方法では、酵素で標識した抗体を基質(指示薬)に接触させて、有色反応生成物のような検出可能シグナルを発生させる。
【0058】
この文中に使用した“抗体”という用語は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされている1つ以上のポリペプチドから構成されるタンパク質を表す。この用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および、それらのフラグメント、ならびに、免疫グロブリン遺伝子配列の操作によって得られた分子を包含する。認識された免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子ならび多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。L鎖はカッパまたはラムダとして分類されている。H鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンとして分類されており、これらは免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ決定する。
【0059】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位はテトラマーを含むことが知られている。各テトラマーは等しい2対のポリペプチド鎖から構成され、各対が1つの“L”鎖(約25kD)と1つの“H”鎖(約50−70kD)とを有している。各鎖のN末端は、主として抗原認識を担当する約100から110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を限定している。“可変L鎖(VL)”および“可変H鎖(VH)”という用語はこれらのL鎖およびH鎖をそれぞれ表す。
【0060】
抗体は完全形の(intact)免疫グロブリンとして存在するかまたは様々なペプチダーゼによる消化によって産生した確定された特性をもつ複数のフラグメントとして存在する。従ってたとえばペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド連鎖下方で抗体を消化してF(ab’)2を産生させる。これはFabのダイマーであり、それ自体がジスルフィド結合によってVH−CH1に接合したL鎖である。F(ab’)2は緩やかな条件下で還元され、ヒンジ領域のジスルフィド連鎖が破断され、これによりF(ab’)2ダイマーがFab’モノマーに変換される。Fab’モノマーは本質的に、ヒンジ領域部を伴うFabである(他の抗体フラグメントのより詳細な記載に関してはFundamental Immunology,W.E.Paul,ed.,Raven Press,N.Y.(1993)を参照するとよい)。完全形の抗体の消化によって様々な抗体フラグメントが決定されるが、当業者は、このようなFab’フラグメントが化学的にまたは組換えDNA方法の使用によって新規に合成できることを理解されるであろう。
【0061】
従って、この文中に使用した“抗体”という用語はまた、完全抗体の修飾によって作製されるかまたは組換えDNA方法を使用して新規に合成された抗体フラグメントを含む。好ましい抗体は、一本鎖抗体(一本鎖ポリペプチドとして存在する抗体)、より好ましくは一本鎖Fv抗体(sFvまたはscFv)を含み、この場合の可変H鎖および可変L鎖は互いに接合して(直接的にまたはペプチドリンカーを介して)、連続ポリペプチドを形成している。一本鎖Fv抗体は共有結合的に連結したVH−VLヘテロダイマーであり、直接接合されているかまたはペプチドをコードするリンカーによって接合されたVHおよびVLのコーディング配列を含む核酸から発現され得る。Hustonら,(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879−5883。VHおよびVLは一本鎖ポリペプチドとして互いに接続されているが、VHドメインとVLドメインとは非共有結合的に会合している。scFv抗体、および、抗体のV領域に由来の天然には凝集していたが化学的に分離されたL鎖およびH鎖ポリペプチドを、抗原結合性部位の構造に実質的に同様の三次元構造に折り畳まれる分子に変換する多数の他の構造は当業者に公知である(参照:米国特許Nos.5,091,513、5,132,405および4,956,778)。
【0062】
“自己抗体”は、抗体が産生される個人の体内に天然に存在する分析物に結合する抗体である。“心筋トロポニン反応性自己抗体”は、心筋トロポニンに結合する自己抗体である。
【0063】
この文中に使用した“種特異的抗体”は、標的抗体の抗原結合特異性にかかわりなく特定種由来の標的抗体に特異的に結合する抗体を表す。
【0064】
“ヒト特異的抗体”は、ヒト抗体たとえばヒト自己抗体に特異的に結合する抗体を表す。
【0065】
この文中に使用した“心筋トロポニン反応性抗体または自己抗体”はそれぞれ、心筋トロポニンまたはそのフラグメントまたは複合体に結合する抗体または自己抗体を表す。
【0066】
“標識された心筋トロポニン反応性抗体”は、検出可能ラベルで標識されているかまたはイムノアッセイ中に標識可能ラベルで標識される心筋トロポニン反応性抗体である。
【0067】
サンプルの収集およびプロセシング
本発明のアッセイ方法は一般に、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトから採取された生物サンプルに対して行われる。
【0068】
本発明の方法は心筋トロポニン反応性自己抗体を含有するサンプルを使用して行うことができる。
【0069】
必要に応じて適当なバッファ溶液に希釈することによってサンプルを前処理してもよく、または所望ならば濃縮してもよい。リン酸塩、トリスなどのような様々なバッファのいずれかを場合により生理的pHで使用する多くの標準水性バッファ溶液のいずれかを使用できる。
【0070】
心筋トロポニンに併用される心筋トロポニン反応性自己抗体のアッセイ
特定実施態様において本発明は、心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性を評価する方法を提供する。方法は、生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性欠如を示す指標となる。
【0071】
いくつかの実施態様においては心臓病の危険性を評価する方法が、(a)生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンを検定する段階と、(b)生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階とを含む。高レベルの心筋トロポニンおよび/または心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心臓病の高い危険性を示す指標となる。
【0072】
これらの方法は、無症候性対象または1つ以上の心臓病症候のある対象から採取したサンプルに行うことができる。たとえば、対象は胸痛があったりまたは他の何らかの心筋梗塞の徴候があったりする。
【0073】
心筋トロポニン反応性自己抗体用アッセイは、心筋トロポニンアッセイの前、同時もしくは後で行ってもよくまたは心筋トロポニンアッセイを削除してもよい。心筋トロポニン反応性抗体用アッセイは同一対象から採取した同じサンプルまたは異なるサンプルで行うことができる。異なるサンプルを使用する場合、該サンプルは一般には同種類(たとえば、血液)であり、心筋トロポニンアッセイ用サンプルとほぼ同時に採取される。
【0074】
心筋トロポニン反応性自己抗体は当業者に公知の多数の方法のいずれかによって検出および定量できる。これらは、流体もしくはゲル沈降素反応、免疫拡散(シングルまたはダブル)、アフィニティクロマトグラフィー、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウェスタンブロット法などのような多数の免疫学的方法のいずれかを含み得る。本発明の方法に有用なイムノアッセイについてはより詳細に後述する。
【0075】
アッセイは標準的な実態に従ってスコア化でき、陽性および/または陰性の対照および/または既知の濃度の心筋トロポニン反応性抗体を含有する標準の使用を含み得る。心筋トロポニン反応性自己抗体のレベルを対照レベルまたは対照範囲に比較する。後者はアッセイ実施のときに決定してもよいが予め決定しておくほうが好都合である。対照レベルまたは範囲に比べて何らかの増加が試験サンプル中に存在するならば、慣用の統計的方法によって有意性を評価する。高レベルの心筋トロポニン自己抗体の存在は、該抗体が心筋トロポニン測定に否定的に干渉するかもしれないこと、したがって心筋梗塞のような心臓病の危険性の評価に関してはこの測定値の信頼性が失われたことを示す指標となる。
【0076】
特定実施態様において、対象に心筋トロポニン反応性自己抗体が高レベルで存在すると判定されたとき、対象のミオグロビン、CK−MB、BNP、CRP、トロポニン−I、トロポニン−T、血中酸素レベル、心臓造影、心電図などのような1つ以上の追加の心臓病指標を評価する。
【0077】
心筋トロポニン反応性自己抗体が高レベルで存在すると判定された対象は標準実態に従ってたとえば心筋梗塞の治療を受けてもよい。
【0078】
心臓病の診断方法
本発明はまた、心臓病の存在またはその危険性の指標として心筋トロポニン反応性抗体が測定される方法を提供する。
【0079】
心筋炎、心筋症および虚血性心疾患
特定実施態様において本発明は、心筋炎、虚血性心疾患または心筋症のあるまたはその危険性のある対象のスクリーニング方法を提供する。これらの実施態様の様々な形態においては、心筋症が拡張性心筋症でない。従ってたとえば方法は、肥大性心筋症および/または拘束性心筋症のあるまたはその危険性のある対象をスクリーニングするために使用できる。
【0080】
方法は、対象から採集した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心臓病の存在またはその危険性を示す指標となる。この方法は、心筋炎、虚血性心疾患または肥大性もしくは拘束性心筋症の鑑別診断を可能にする身体検査および/または病歴の収集を非限定的に含む1つ以上の他の検査と併用して実行できる。これらの障害の診断に使用される様々な検査およびパラメーターは当業者に公知である。
【0081】
これらの方法は、無症候性対象または心臓病に関連する1つ以上の危険要因もしくはその徴候を有している対象から採取したサンプルで行うことができる。対象はたとえば自己免疫疾患や高血圧の患者、または、肥大性心筋症のような遺伝性心臓病患者の近い(たとえば、一親等の)血縁である。
【0082】
心筋トロポニン反応性自己抗体は何らかの簡便な手段によって検出および定量できる。この目的に適した様々なイムノアッセイフォーマットの例は後述する。アッセイは標準実態に従ってスコア化される。
【0083】
特定実施態様において、対象に心筋トロポニン反応性自己抗体が高レベルで存在すると判定されたとき、対象のミオグロビン、CK−MB、BNP、CRP、トロポニン−I、トロポニン−T、血中酸素レベル、心臓造影、心電図などのような1つ以上の追加の心臓病指標を評価する。
【0084】
自己免疫疾患患者の血縁
本発明の方法は、自己免疫疾患のある対象または自己免疫疾患患者の血縁である対象の心臓病またはその危険性を同定するために行うことができる。たとえば、自己免疫疾患患者の一親等または二親等の血縁である対象は本発明の方法を使用して評価され得る。
【0085】
方法は、対象から採集した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心臓病の存在またはその危険性を示す指標となる。この方法は、1つ以上の他の検査、たとえば、心筋炎、虚血性心疾患または肥大性もしくは拘束性心筋症の鑑別診断を可能にする身体検査および/または病歴の収集と併用して実行できる。これらの障害の診断に使用される様々な検査およびパラメーターは当業者に公知である。
【0086】
これらの方法は、無症候性対象または心臓病に関連する1つ以上の危険要因もしくはその徴候を有している対象から採取したサンプルで行うことができる。
【0087】
心筋トロポニン反応性自己抗体は何らかの簡便な手段によって検出および定量できる。この目的に適した様々なイムノアッセイフォーマットの例は後述する。アッセイは標準実態に従ってスコア化される。
【0088】
特定実施態様において、対象に高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体が存在すると判定されたとき、対象のミオグロビン、CK−MB、BNP、CRP、トロポニン−I、トロポニン−T、血中酸素レベル、心臓造影、心電図などのような1つ以上の追加の心臓病指標を評価する。
【0089】
免疫抑制療法または免疫吸収療法の候補の同定方法
特定実施態様において本発明は、心臓病を有しているまたはその危険性を有している対象が免疫抑制療法または免疫吸収療法の候補であるかを判断する方法を提供する。一般的に対象は、心臓病の何らかの徴候を示したことがある者または現在心臓病であるもしくはその危険性を有していると診断された者である。
【0090】
方法は、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は、自己免疫性が対照の心臓病またはその危険性の一因であることを示す指標となる。この方法は、心臓病および/または自己免疫疾患の標準診断実態に従って1つ以上の他の検査、身体検査および/または病歴収集と併用して実行できる。
【0091】
心筋トロポニン反応性自己抗体はこの文中に記載の手段を含む何らかの簡便な手段によって検出および定量できる。アッセイは標準実態に従ってスコア化される。
【0092】
高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体が存在すると判定された対象は標準実態に従って免疫抑制療法または免疫吸収療法で治療される。
【0093】
イムノアッセイ方法
概論
本発明のイムノアッセイ方法は多様なフォーマットのいずれかで実行できる。イムノアッセイの概観に関しては、Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies in Cell Biology,Asai,ed.Academic Press,Inc.New York(1993);Basic and Clinical Immunology 7th Edition,Stites & Terr,eds.(1991)を参照するとよい。これらの記載内容全部が参照によって本発明に組込まれるものとする。
【0094】
特定実施態様において本発明のイムノアッセイ方法は、生物サンプルを心筋トロポニン抗原に、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させる段階を含む。自己抗体は、心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む(1つ以上の)複合体を検出することによって検出/定量される。このようなアッセイは均一系でもよく不均一系(すなわち固相を使用する)でもよい。不均一系アッセイでは、分析物(ここでは心筋トロポニン反応性自己抗体)に結合する捕獲剤が典型的には固相に固定されている。
【0095】
心筋トロポニン自己抗体は非競合イムノアッセイで測定でき、この場合、心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原の量はサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している。
【0096】
従ってたとえば方法は、微粒子のような固相に固定された心筋トロポニン抗原に生物サンプルを接触させる凝集アッセイとして行うことができる。サンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体が微粒子に結合し、その結果として微粒子が凝集するので、これをたとえばサンプルの目視点検によって検出できる。所望の場合、凝集の検出を容易にするために微粒子を着色するかまたは標識できる。凝集の程度はサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している。
【0097】
別の実施態様においては、生物サンプルを、心筋トロポニン抗原(固相に固定してもよいが必ずしも固定しなくてもよい)に接触させ、また種特異的抗体にも接触させる。この場合の種特異的抗体は生物サンプルを提供した種に特異的である。このような自己抗体によって生じた干渉を補正する手段は独自に米国特許出願No.60/854,569に記載されており、その記載内容全部が参照によってここに組込まれるものとする。この段階は、心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば種特異的抗体に特異的に結合できる十分な条件下で行われる。自己抗体は、種特異的抗体に結合している心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む(1つ以上の)複合体を検出することによって検出/定量される。サンプルは心筋トロポニン抗原および種特異的抗体に同時にまたは任意の順序で順次に接触させ得る。接触順序にかかわりなく、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば、心筋トロポニン抗原と種特異的抗体との間に“サンドイッチされた”抗体を含有する複合体が形成される。
【0098】
たとえば、サンドイッチイムノアッセイの1つのフォーマットを用いる本発明の実施態様においては、心筋トロポニン抗原が固相に固定されており、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば心筋トロポニン抗原に結合して、固相に固定された複合体が形成され、検出は固相に固定された複合体からのシグナルの検出を含む。このフォーマットの特定実施態様において、固相に固定された複合体は直接または間接に標識された種特異的抗体を用いて検出される。必要ならば、遊離状態の標識された種特異的抗体から結合完全体を典型的には洗浄によって分離し、結合したラベルからのシグナルを検出する。
【0099】
サンドイッチイムノアッセイの別のフォーマットを用いる本発明の実施態様においては、種特異的抗体が固相に固定されており、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば種特異的抗体に結合して、固相に固定された複合体が形成され、次にこれが検出される。いくつかの実施態様においては、固相に固定された複合体は直接または間接に標識された心筋トロポニン抗原を用いて検出される。必要ならば、遊離状態の標識された心筋トロポニン抗原から結合完全体を典型的には洗浄によって分離し、結合したラベルからのシグナルを検出する。
【0100】
心筋トロポニン自己抗体はまた、競合イムノアッセイで測定でき、この場合のシグナルはサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に負の相関関係を有している。競合フォーマットの一例においては、生物サンプルを心筋トロポニン抗原(固相に固定してもよいが必ずしも固定しなくてもよい)に接触させ、また、(直接または間接に)標識された心筋トロポニン反応性抗体に接触させる。この段階は、標識された心筋トロポニン反応性抗体が心筋トロポニン抗原に特異的に結合できる十分な条件下で行う。サンプル中の心筋トロポニン特異的自己抗体は心筋トロポニン抗原への結合に関して標識された心筋トロポニン反応性抗体と競合する。従って、心筋トロポニン反応性自己抗体のレベルが高いほど、標識された心筋トロポニン反応性抗体は心筋トロポニン抗原に少なく結合する。
【0101】
サンプルを、心筋トロポニン抗原および標識された心筋トロポニン反応性抗体に同時に接触させてもよくまたは任意の順序で順次に接触させてもよい。
【0102】
この種の競合イムノアッセイは、固相に固定された心筋トロポニン抗原を用いて簡便に行うことができる。この場合、心筋トロポニン抗原は、標識された心筋トロポニン反応性抗体に結合するかまたはサンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば該抗体に結合して、固相に固定された複合体を形成し、検出は、固相に固定された複合体からのシグナルの検出を含む。必要ならば、遊離状態の標識された心筋トロポニン反応性抗体から結合完全体を典型的には洗浄によって分離し、結合ラベルからのシグナルを検出する。
【0103】
捕獲剤
本発明のイムノアッセイ方法に有用な捕獲剤は、心筋トロポニン反応性自己抗体に結合できまた固相に固定化され得る物質を含む。好都合な捕獲剤は心筋トロポニン抗原および種特異的抗体を含み、この場合、種特異的抗体は生物サンプルを提供した種に特異的である。当業者には理解されるであろうが、心筋トロポニン抗原は心筋トロポニン反応性自己抗体に結合(捕獲)するので特異的捕獲剤を表す。これに対して、種特異的抗体は特異性にかかわりなく自己抗体に結合するので非特異的捕獲剤を表す。サンドイッチイムノアッセイにおいて、非特異的捕獲剤は典型的には、分析物に特異的に結合する標識された検出試薬と共に使用される。従ってたとえば抗−心筋トロポニン自己抗体を特異的に検出するために固相に固定された種特異的抗体は標識された心筋トロポニン抗原と併用される。
【0104】
心筋トロポニン抗原
本発明のイムノアッセイ方法に使用される心筋トロポニン抗原は心筋トロポニンI、心筋トロポニンT、心筋トロポニンC、それらのフラグメント、誘導体または複合体を含む。本発明に有用な複合体は異なる2つのトロポニン(たとえば、cTnIとcTnC)または3つ全部を含有できる。
【0105】
特定実施態様において、心筋トロポニン抗原は、いずれかの生物の何らかの心筋トロポニン様ポリペプチドに由来する心筋トロポニンアミノ酸配列である。本発明に有用な心筋トロポニンアミノ酸配列は一般に、脊椎動物、好ましくは鳥類または哺乳類、より好ましくはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマならびにサルおよび他の霊長類のような研究価値もしくは商業価値のある動物または愛玩用に価値のある動物に由来する。特定実施態様において、心筋トロポニンアミノ酸配列はヒトポリペプチドに由来する。
【0106】
本発明の方法は、全長の心筋トロポニン抗原または1つ以上の心筋トロポニンフラグメントを使用できる。フラグメントは一般に自己抗体が結合できる少なくとも1つのエピトープを有しているであろう。このようなフラグメントはたとえば、約125、100、75、50、25もしくは15アミノ酸の長さ、または、これらの値のいずれかによって限定される終点をもつ範囲(たとえば、15−125、25−100、50−75、15−100など)内に含まれる長さを有し得る。より多い数の天然エピトープを有している心筋トロポニン抗原(たとえば、全長の心筋トロポニン)の使用は一般に、より少ない数の天然エピトープを有している心筋トロポニン抗原の使用よりも様々な特異性の自己抗体をより包括的に測定できることは当業者には容易に理解される。従って一般には、実質的に先天性のコンホメーションを有しているかまたは自己抗体に反応性のトロポニンエピトープを含む1つ以上のペプチドを有している心筋トロポニン抗原の使用が好ましい。
【0107】
心筋トロポニンアミノ酸配列は野生型アミノ酸配列でもよくまたは野生型ポリペプチドの対応領域のアミノ酸配列変異体でもよい。いくつかの実施態様においては心筋トロポニン抗原が野生型心筋トロポニンアミノ酸配列または上記に定義のような保存性アミノ酸配列置換を含有する心筋トロポニンアミノ酸配列を含む。
【0108】
本発明に有用な心筋トロポニン抗原は上述のアミノ酸配列に加えて、異種タンパク質に由来の配列を含む他のアミノ酸配列を含み得る。従って本発明は、心筋トロポニンアミノ酸配列が一端または両端で1つ以上の異種タンパク質由来の(1つ以上の)アミノ酸配列に融合した融合ポリペプチドを包含する。問題のタンパク質にしばしば組込まれている追加のアミノ酸配列の例は、タンパク質の精製を容易にするシグナル配列、および、免疫学的検出またはアフィニティ精製のために使用できるエピトープタグを含む。
【0109】
本発明による心筋トロポニンポリペプチドはたとえば、排他的固相合成、部分的固相合成、フラグメント縮合および古典的な溶液合成のような当業界で公知の方法を使用して合成できる。参考文献はたとえば、Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85:2149(1963)である。固相ペプチド合成手順に関する記述については、John Morrow Stewart and Janis Dillaha Young,Solid Phase Peptide Syntheses(2nd Ed.,Pierce Chemical Company,1984)を参照するとよい。
【0110】
心筋トロポニンポリペプチドはまた、組換え技術を使用して製造できる。いくつかの実施態様においては、発現ベクターに組込める心筋トロポニンポリペプチドをコードする合成核酸分子を設計するためのガイドとして心筋トロポニンコーディング領域の配列が使用される。合成遺伝子の構築方法は当業者に公知である。参考文献はたとえば、Dennis,M.S.,Carter,P.and Lazarus,R.A.(1993)Proteins:Struct.Funct.Genet.,15:312−321である。
【0111】
発現ベクターは、作動可能に連結されたポリペプチドコーディング配列の発現を実行および/または増進できる1つ以上の調節配列を含む。たとえば原核細胞中での発現に適した調節配列はプロモーター配列、オペレーター配列およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞中で発現するための調節配列はプロモーター、エンハンサーおよび転写終結配列(すなわち、ポリアデニル化シグナル)を含む。
【0112】
本発明の発現ベクターはまた、たとえばシグナル配列または増幅可能遺伝子をコードする核酸配列のような他の配列を含み得る。シグナル配列は、シグナル配列に融合したポリペプチドをタンパク質発現細胞から分泌するように指令できる。発現ベクター中のシグナル配列をコードする核酸は、ポリペプチドコーディング配列の読み枠を保存するようにポリペプチドコーディング配列に連結されている。選択宿主中の栄養要求性欠失を相補する遺伝子をベクターに含有させると、ベクターによって形質転換された宿主細胞を選択することが可能になる。
【0113】
ベクターの増殖および/または発現のために多様な種類の宿主細胞を利用できる。その例は、原核細胞(たとえば、E.coli、Bacillus、Pseudomonasおよび他の細菌の菌株)、酵母またはその他の真菌類細胞(S.cerevesiaeおよびP.pastorisを含む)、昆虫細胞、植物細胞、ファージならびにより高等な真核細胞(たとえば、ヒトの胚性腎細胞および他の哺乳類細胞)を含む。
【0114】
心筋トロポニンを発現するベクターは簡便な方法によって宿主細胞に導入できる。方法は、使用されるベクター−宿主系次第で変り得る。一般にベクターは形質転換(“トランスフェクション”としても知られている)によってまたはベクター保有ウイルス(たとえば、ファージ)の感染によって宿主細胞に導入される。宿主細胞が原核細胞(または、細胞壁を有する他の細胞)であるとき、好都合な形質転換方法は、Cohenら,(1972)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69:2110−14によって記載されたカルシウム処理方法を含む。宿主として原核細胞が使用され、ベクターがファージミドベクターであるとき、ベクターは感染によって宿主細胞に導入できる。酵母細胞は、たとえばHinnen(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,75:1929−33によって教示されているように、ポリエチレングリコールを使用して形質転換できる。哺乳類細胞は、Grahamら,(1978)Virology,52:546およびGormanら,(1990)DNA and Prot.Eng.Tech.,2:3−10によって記載されているリン酸カルシウム沈殿法を使用して簡便に形質転換される。しかしながら、核注入、電気穿孔、プロトプラスト融合のような宿主細胞にDNAを導入するための他の公知の方法も本発明の使用に適格である。
【0115】
形質転換宿主細胞による心筋トロポニンの発現は、細胞の増殖および発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階と、発現されたポリペプチドを細胞溶解液からまたはポリペプチドが分泌される場合には培養培地から回収する段階を含む。特に、培養培地は使用される宿主細胞用の適当な栄養素と増殖因子とを含有している。栄養素および増殖因子は多くの場合、当業者に公知であるかまたは当業者が実験によって容易に決定できる。哺乳類宿主細胞の適当な培養条件は、たとえば、Mammalian Cell Culture (Mather ed.,Plenum Press 1984)およびBarnes and Sato(1980)Cell 22:649に記載されている。
【0116】
さらに培養条件は、転写、翻訳および細胞隔室間のタンパク質輸送ができる条件でなければならない。これらのプロセスに影響する要因は公知であり、たとえば、DNA/RNAコピー数、DNAを安定させる因子、培養培地中に存在する栄養素、サプリメントおよび転写インデューサーまたはリプレッサー、培養物の温度、pHおよび浸透圧、ならびに、細胞密度を含む。特定のベクター−宿主細胞系中の発現を促進するためのこれらの要因の調整は当業界の技術レベルの範囲内である。インビトロの哺乳類細胞培養物の生産性を最大にするための原理および実施技術はたとえば、Mammalian Cell Biotechnology:a Practical Approach(Butler ed.,IRL Press(1991)に見出される。
【0117】
タンパク質を大規模または小規模生産するための多数の公知技術のいずれかを本発明のポリペプチド発現に使用できる。これらは非限定的に、振盪フラスコ、流動床バイオリアクター、回転瓶培養系および撹拌タンクバイオリアクター系の使用を含む。細胞培養は、バッチ、フェッド−バッチまたは連続モードで実施できる。
【0118】
上述のように産生された組換えタンパク質の回収方法は公知であり、使用した発現系次第で変更される。シグナル配列を含むポリペプチドは培養培地からまたは細胞周辺から回収できる。ポリペプチドはまた細胞内で発現され細胞溶解液から回収されてもよい。
【0119】
発現されたポリペプチドは、宿主細胞または培養培地の1つ以上の成分からポリペプチドを分離できる何らかの方法によって培養培地または細胞溶解液から精製できる。典型的には、宿主細胞からおよび/またはポリペプチドの予定用途を妨害する培養培地成分からポリペプチドを分離する。第一段階として、培養培地または細胞溶解液を通常は遠心または濾過して細胞破片を除去する。次に上清を典型的には所望容量に濃縮もしくは希釈するかまたは適当なバッファに透析濾過して以後の精製に備えて調製物を状態調整する。
【0120】
次に公知の技術を使用してポリペプチドをさらに精製できる。選択される技術は発現されたポリペプチドの特性次第で変更される。たとえばポリペプチドがエピトープタグまたは他のアフィニティドメインを含有する融合タンパク質として発現されているならば、精製は典型的には、対応する結合パートナーを含有するアフィニティカラムの使用を含む。たとえばグリーン蛍光タンパク質、赤血球凝集素もしくはFLAGエピトープタグまたはヘキサヒスチジンもしくは同様の金属アフィニティタグに融合したポリペプチドはアフィニティカラムで分画化することによって精製できる。
【0121】
抗体
本発明のイムノアッセイ方法に有用な抗体はポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む。このようなポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、当業界で公知のいずれかの手段によって調製できる。ポリクローナル抗体は、ヒト以外の適当な哺乳動物(たとえば、マウスまたはウサギ)に免疫原を注入(たとえば、皮下または筋肉内注射)することによって増産できる。一般に免疫原は標的抗原に比較的高い親和性をもつ高力価抗体の産生を誘発するはずである。
【0122】
所望の場合、当業界で公知の共役技術によって抗原をキャリアータンパク質に共役させてもよい。常用のキャリアーは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)および破傷風トキソイドを含む。次に共役体を使用して動物を免疫感作する。
【0123】
次に動物から採集した血液サンプルから抗体が得られる。ポリクローナル抗体を製造するために使用される技術は、文献に広く記載されている(参照:たとえば、Methods of Enzymology,“Production of Antisera With Small Doses of Immunogen:Multiple Intradermal Injections,”Langoneら,eds.(Acad.Press,1981))。動物によって産生されたポリクローナル抗体はたとえば、標的抗原が結合されたマトリックスに結合させ該マトリックスから溶出させることによってさらに精製できる。当業者はポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を精製および/または濃縮するために免疫学分野で常用の様々な技術を知っているはずである。参考文献はたとえばColiganら(1991) Unit 9,Current Protocols in Immunology,Wiley Interscienceである。
【0124】
多くの用途にはモノクローナル抗体(mAb)のほうが好ましい。ハイブリドーマ分泌性mAbの産生に使用される一般方法は公知である(Kohler and Milstein(1975)Nature,256:495)。KohlerおよびMilsteinの記述を要約すると、この技術は、黒色腫、奇形種、子宮頸癌、神経膠腫または肺癌のある別々の5名の癌患者の排液性局所リンパ節からリンパ球を単離し(この場合のサンプルは手術標本から得られた)、細胞をプールし、細胞をSHFP−1に融合させる段階を含んでいた。癌細胞系に結合した抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングした。mAbの特異性の確認は、常套のスクリーニング技術(たとえば酵素結合免疫吸着剤アッセイすなわち“ELISA”)を使用して問題のmAbの要素反応パターンを判定することによって遂行できる。
【0125】
この文中に使用した“抗体”という用語は、ファージ提示技術を使用して産生/選択できる抗原結合性抗体フラグメント、たとえば一本鎖抗体(scFvなど)を包含する。細菌に感染するウイルス(バクテリオファージまたはファージ)の表面に抗体フラグメントを発現させることができれば、たとえば1010を上回る非結合性クローンのライブラリーから単一の結合性抗体フラグメントを単離することが可能になる。ファージの表面に抗体フラグメントを発現させるためには(ファージ提示)、ファージ表面タンパク質(たとえばpIII)をコードしている遺伝子に抗体フラグメント遺伝子を挿入し、抗体フラグメント−pIII融合タンパク質をファージ表面に提示させる(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554;Hoogenboomら(1991)Nucleic Acids Res.19:4133−4137)。
【0126】
ファージ表面の抗体フラグメントは機能性なので、ファージに保有された抗原結合性抗体フラグメントは抗原アフィニティクロマトグラフィーによって非結合性ファージから分離できる(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554)。抗体フラグメントの親和性次第では、1回の親和性選択で20倍から1,000,000倍の富化倍率が得られる。しかしながら、溶出したファージを細菌に感染させることによってもっと多くのファージを増殖させ、もう1回の選択を行うことができる。このようにすると、1回で1000倍の富化は2回の選択で1,000,000倍になる(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554)。従って富化倍率が低い場合にも(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597)、多数回のアフィニティ選択を行うことによって、希少ファージを単離できる。抗原によるファージ抗体ライブラリーの選択の結果として富化が生じるので、大多数のクローンは3から4回の選択後に抗原に結合する。従って、抗原結合性の分析が必要なのは比較的少数のクローン(数百)だけである。
【0127】
ヒト抗体はファージ上に極めて多くの多様なV遺伝子の目録を提示させることによって予め免疫感作することなく産生され得る(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597)。1つの実施態様においては、ヒト末梢血リンパ球に存在する天然目録中のVHおよびVLをPCRによって非免疫ドナーから単離する。PCRを使用して目録中のV遺伝子をランダムにスプライスすると、ファージベクターにクローニングして3千万のファージ抗体のライブラリーを作製できるscFv遺伝子の目録が作成される(同書参照)。単一の“実験未使用”ファージ抗体ライブラリーから、ハプテン、多糖およびタンパク質を含む17を上回る種類の異なる抗原に対する結合性抗体フラグメントが単離された(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;Marksら(1993)Bio/Technology.10:779−783;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734;Clacksonら(1991)Nature.352:624−628)。ヒトチログリブリン、免疫グロブリン、腫瘍壊死因子およびCEAを含む自己タンパク質に対する抗体は産生されている(Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734)。抗体フラグメントは選択に使用された抗原に極めて特異的であり、1nMから100nMの範囲の親和性を有している(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734)。ファージ抗体ライブラリーが大きいほど、より大きい抗原集団に対してより高い結合親和性を有しているより多くの抗体が単離される。
【0128】
当業者には容易に理解されるであろうが、抗体は多くの事業施設のいずれかによって調製できる(たとえば、Berkeley Antibody Laboratories、Bethyl Laboratories、Anawa、Eurogenetecなど)。
【0129】
固相
捕獲剤の支持体として固相を使用する本発明の実施態様の場合、固相は捕獲剤に結合できる十分な表面親和性を有しているいかなる適当な材料でもよい。有用な固体支持体は、天然の高分子糖質および合成的に修飾、架橋または置換されたそれらの誘導体、たとえば、寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換および架橋されたグアーガム、セルロースエステル特に硝酸およびカルボン酸とのエステル、混合セルロースエステル、セルロースエーテル;タンパク質および誘導体のような窒素含有天然高分子、たとえば、架橋または修飾されたゼラチン;ラテックスおよびゴムのような天然炭化水素ポリマー;ビニルポリマーのような合成ポリマーたとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルおよびその部分加水分解誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリアミドのような上記ポリ縮合物のコポリマーおよびターポリマー、および、ポリウレタンまたはポリエポキシドのような他のポリマー;アルカリ土類金属およびマグネシウムの硫酸塩または炭酸塩のような無機材料、たとえば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムおよびマグネシウムのケイ酸塩;アルミニウムまたはケイ素の酸化物または水和物、たとえば、クレー、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲルまたはガラス(これらの材料は上記高分子材料と共にフィルターとして使用され得る);既存の天然ポリマーに合成ポリマーの重合を開始させることによって得られたグラフトコポリマーのような上記クラスの混合物またはコポリマーを含む。これらの材料のすべてが、フィルム、シート、チューブ、粒状物またはプレートのような適当な形状で使用されるか、または、紙、ガラス、プラスチックフィルム、布などのような適当な不活性担体に塗布、接着または積層される。
【0130】
ニトロセルロースはモノクローナル抗体を含む多様な試薬に対して優れた吸収および吸着品質を有している。ナイロンも同様の特性を有しており、やはり適当である。
【0131】
フロースルーアッセイデバイスに好ましい固相材料は、多孔質繊維ガラス材料または他の繊維マトリックス材料のような濾紙を含む。このような材料の厚みは厳密ではなく、主としてアッセイにかけるサンプルまたは分析物の特性たとえば生物サンプルの流動性に基づく選択事項である。
【0132】
あるいは、固相が微粒子を構成できる。本発明に有用な微粒子は、適当な種類の粒状材料から当業者が選択でき、ポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリプロピレン、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネートまたは同様の材料から成る微粒子を含む。さらに、磁場内部で微粒子を操作し易いように微粒子は磁性または常磁性微粒子でよい。
【0133】
微粒子は可溶性試薬と生物サンプルとの混合物に懸濁させてもよく、または、支持材料によって保持されて固定化されてもよい。後者の場合、支持材料上または支持材料中の微粒子は支持材料内部の他の場所に実質的に移動できない。可溶性試薬と生物サンプルとの混合物に懸濁している微粒子は沈降または遠心によって分離できる。微粒子が磁性または常磁性のとき、可溶性試薬と生物サンプルとの混合物に懸濁している微粒子は磁場によって分離できる。
【0134】
本発明の方法は、固相が微粒子を含む全自動および半自動のシステムを含む微粒子技術を利用するシステムにおける使用に適応できる。このようなシステムは、公開されたEPO出願Nos.EP0 425 633およびEP0 424 634にそれぞれ対応する係属中の米国出願No.425,651および米国特許No.5,089,424と米国特許No.5,006,309に記載されている。
【0135】
特定実施態様において、固相は1つ以上の電極を含む。(1種以上の)捕獲剤は(1つ以上の)電極に直接または間接に固定されている。たとえば1つの実施態様においては捕獲剤が磁性または常磁性微粒子に固定され、次に磁石を使用して電極表面の近傍に配置される。1つ以上の電極が固相として機能するシステムは電気化学的相互作用に基づく検出を行う場合に有用である。この種の代表的なシステムはたとえば米国特許No.6,887,714(2005年5月3日発行)に記載されている。電気化学的検出に関する基本的方法はより詳細に後述する。
【0136】
捕獲剤は吸着によって固相に付着し、疎水性力によって固相に保持される。あるいは、固相の表面を化学的処理によって活性化して捕獲剤を支持体に共有結合的に連結させる。
【0137】
固相の固有電荷を変更または強化するために、帯電物質を固相に直接コーティングできる。負電荷をもつポリマーによって固定化可能な反応複合体を固定化するために、欧州公開No.0326100に対応する米国出願No.150,278および米国出願No.375,029(欧州公開No.0406473)に記載されたイオン捕獲手順を本発明に従って使用し、高速溶液相免疫化学反応を左右できる。これらの手順では、負電荷をもつポリアニオン/免疫複合体と前処理した正電荷をもつマトリックスとの間のイオン相互作用によって固定化可能な免疫複合体を反応混合物の残りの部分から分離し、たとえば欧州公開No.0273,115に対応する米国出願No.921,979に記載された化学発光システムを含む多くのシグナル発生システムのいずれかを使用して検出する。
【0138】
固相がシリコンまたはガラスの場合、一般には特異的結合パートナーに付着させる前に表面を活性化しなければならない。アミノ、ビニルおよびチオールのような反応性基を導入するためにそれぞれトリエトキシアミノプロピルシラン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.から入手可能)、トリエトキシビニルシラン(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wis.)および(3−メルカプト−プロピル)−トリメトキシシラン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)のような活性化シラン化合物を使用できる。このような活性化表面が捕獲剤を直接的に連結するために使用されてもよく(アミノまたはチオールの場合)、または、捕獲剤を表面から分離するために活性化表面がグルタルアルデヒド、ビス(スクシニミジル)スベレート、SPPD 9スクシニミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート)、SMCC(スクシニミジル−4−[Nマレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、SIAB(スクシニミジル[4ヨードアセチル]アミノベンゾエート)およびSMPB(スクシニミジル4−[1マレイミドフェニル]ブチレート)のようなリンカーとさらに反応してもよい。ビニル基は酸化して共有結合的付着手段を提供できる。ビニル基はポリアクリル酸のような様々なポリマーの重合アンカーとしても使用でき、特異的捕獲剤に多数の付着点を提供する。アミノ基は様々な分子量の酸化デキストランと反応して様々なサイズおよび容量の親水性リンカーを提供できる。酸化性デキストランの例は、Dextran T−40(分子量40,000ドルトン)、Dextran T−110(分子量110,000ドルトン)、Dextran T−500(分子量500,000ドルトン)、Dextran T−2M(分子量2,000,000ドルトン)(全部がPharmacia,Piscataway,N.J.から入手可能)またはフィコール(分子量70,000ドルトン;Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.から入手可能)を含む。加えて、1988年1月29日出願の米国出願No.150,278および1989年7月7日出願の米国出願No.375,029に記載された技術および化学を使用して特異的捕獲剤を固相に固定化するためにポリ電解質相互作用を使用できる。上記特許出願のおのおのは参照によってここに組込まれるものとする。
【0139】
固相の選択を左右する他の考察要件は、標識された完全体の非特異的結合を最小にする能力、および、使用した標識系との適合性を含む。たとえば、蛍光ラベルと共に使用される固相はシグナル検出ができるように十分に低いバックグラウンド蛍光を有していなければならない。
【0140】
特異的捕獲剤の付着後、血清、タンパク質または他のブロッキング剤のような非特異的結合を最小にする材料で固体支持体の表面をさらに処理してもよい。
【0141】
標識系
上記に論議したように、本発明による多くのイムノアッセイは、標識された種特異的抗体および標識された心筋トロポニン抗原のような標識された検出試薬を使用する。
【0142】
本発明の検出試薬として使用するための適当な検出可能ラベルは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能ないかなる組成物をも含む。本発明に有用なラベルは、磁気ビーズ(たとえばDynabeadsTM)、蛍光色素(たとえば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、グリーン蛍光タンパク質など、参照:たとえばMolecular Probes,Eugene,Oregon,USA)、アクリジニウムのような化学発光化合物(たとえばアクリジニウム−9−カルボキサミド)、フェナントリジニウム、ジオキセタン、ルミノールなど)、放射性ラベル(たとえば、3H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素のような触媒(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼおよびELISAで常用の他の酵素、および、コロイド金(たとえば、粒度範囲40から80nmの金粒子は緑色光を高い効率で散乱させる)または着色したガラスもしくはプラスチック(たとえば、ポリスチレン、ホリプロピレン、ラテックスなど)のビーズのような比色ラベルを含む。このようなラベルの使用を教示する特許は、米国特許Nos.3,817,837;3,850,752;3,939,350;3,996,345;4,277,437;4,275,149;および4,366,241を含む。
【0143】
ラベルは生物サンプルに接触させる前、接触中または接触後に検出試薬に付着させ得る。いわゆる“直接ラベル”はアッセイに使用する前に検出試薬に直接的に付着させるかまたは組込ませた検出可能ラベルである。直接ラベルは当業者に公知の多数の手段のいずれかによって検出試薬に付着または組込まれる。
【0144】
これに対して、いわゆる“間接ラベル”は典型的にはアッセイ中のある時点に検出試薬に結合する。間接ラベルはしばしば、使用前に検出試薬に付着させたかまたは組込ませた部分に結合する。従ってたとえば、検出試薬として使用される抗体(“検出用抗体”)はアッセイに使用する前にビオチニル化できる。アッセイ中に、アビジン共役フルオロホアがビオチン保有検出試薬に結合して、検出容易なラベルを提供できる。
【0145】
間接標識の別の例においては、ポリペプチドAまたはポリペプチドGのような免疫グロブリン定常領域に特異的に結合できるポリペプチドもまた検出用抗体のラベルとして使用できる。これらのポリペプチドは連鎖球菌の細胞壁の正常な構成成分である。それらは様々な種に由来の免疫グロブリン定常領域に強い非免疫原性反応性を示す(一般論についてはKronvalら(1973) J.Immunol.,111:1401−1406およびAkerstrom(1985)J.Immunol,135:2589−2542参照)。従って、このようなポリペプチドを標識してアッセイ混合物に加えると、これらが検出用抗体および種特異的抗体に結合して両者を標識し、サンプル中に存在する分析物および自己抗体に帰属する複合シグナルを提供できる。
【0146】
本発明に有用ないくつかのラベルは検出可能シグナルを発生するための指示薬の使用を要する。たとえばELISAにおいて酵素ラベル(たとえばベータ−ガラクトシダーゼ)は検出可能シグナルを発生するために基質(たとえばX−gal)の添加を要するであろう。
【0147】
代表的フォーマット
蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)
代表的実施態様においては、本発明による蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)に蛍光ラベルが使用される。一般的に、蛍光偏光技術は、蛍光ラベルが特性波長の平面偏光によって励起されたときに、入射光に対して所与の媒体中のラベルの回転速度に反比例する偏光度を有する別の特性波長に光(すなわち蛍光)を放出するという原理に基づく。この特性の結果として、回転が拘束されたラベルたとえば相対的に低い回転速度の別の溶液成分に結合したラベルは溶液中で遊離状態であるときよりも相対的に大きい偏光度を有する光を放出するであろう。
【0148】
この技術を本発明によるイムノアッセイに使用できる。そのためにはたとえば、蛍光標識された完全体が結合すると十分に異なるサイズの複合体が形成され、所与の平面に放出された光の強度変化を検出可能できるような試薬を選択すればよい。たとえば、標識された心筋トロポニン抗原が1つ以上の自己抗体に結合したとき、得られる複合体は遊離状態の標識された心筋トロポニン抗原に比べて十分に大きいのでその回転が十分に拘束され、結合が容易に検出される。
【0149】
FPIAに有用なフルオロホアは、フルオレセイン、アミノフルオレセイン、カルボキシフルオレセインなど、好ましくは5および6−アミノメチルフルオレセイン、5および6−アミノフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、チオウレアフルオレセイン、および、メトキシトリアジノリル−アミノフルオレセインおよび同様の蛍光誘導体を含む。蛍光偏光アッセイを行うことができる市販の全自動器具の例は、IMxシステム、TDxシステムおよびTDxFLxシステム(すべてAbbott Laboratories,Abbott Park,Ill.から入手可能)を含む。
【0150】
走査型プローブ顕微鏡検査(SPM)
イムノアッセイ用の走査型プローブ顕微鏡検査の使用も本発明のイムノアッセイ方法が容易に適応できる技術である。SPM、特に原子力顕微鏡検査においては、走査に適した表面を有している固相に捕獲剤を付着させる。たとえばプラスチックまたは金属表面に捕獲剤を吸着させる。あるいは、平均的な当業者に公知の方法に従ってたとえば誘導体化したプラスチック、金属、シリコンまたはガラスに捕獲剤を共有結合的に付着させる。捕獲剤の付着後、生物サンプルを固相に接触させ、固相に固定された複合体を走査型プローブ顕微鏡で検出し定量する。SPMを使用すると、イムノアッセイシステムでは典型的に使用されるラベルの必要性を削除できる。このようなシステムは、米国出願No.662,147に記載されている。該特許は参照によってここに組込まれるものとする。
【0151】
マイクロ電気機械的システム(MEMS)
本発明のイムノアッセイはマイクロ電気機械的システム(MEMS)を使用して行うこともできる。MEMSは機械素子、光学素子および流体素子を電子素子に組合せてシリコンに集積した顕微鏡構造であり、問題の分析物を簡便に検出できる。本発明に使用するための適当な代表的MEMSデバイスは、Protiverisのマルチカンチレバーアレイである。このアレイは、特別設計のシリコン製マイクロカンチレバーの化学機械的起動およびその後のマイクロカンチレバーの撓みの光学的検出に基づく。片面に結合パートナーをコーティングすると、マイクロカンチレバーは相補性分子を含有する溶液に接触したときに屈曲するであろう。この屈曲は結合イベントに起因する表面エネルギーの変化によって生じる。屈曲(撓み)の程度を光学的に検出すると、マイクロカンチレバーに結合した相補性分子の量の測定値が得られる。
【0152】
電気化学的検出システム
他の実施態様において、本発明のイムノアッセイは電気化学的検出を用いて行うことができる。電気化学的検出の基本的手順はHeinemanおよび彼の共同研究者らによって記載されている。これは、一次抗体(Ab、ラット−抗マウスIgG)を固定化し、次いで抗原(Ag、マウスIgG)、酵素ラベルに共役した二次抗体(AP−Ab、ラット抗マウスIgGとアルカリホスファターゼ)およびp−アミノフェニルホスフェート(PAPP)を含有する一連の溶液に接触させる段階を含む。APはPAPPを、APが最適活性を示すpH9.0で酸素と水の還元を妨害しない電位で電気化学的に可逆性のp−アミノフェノール(PAPR、この“R”は酸化形PAPOキノンイミンから還元形を識別するための記号である)に変換する。PAPRはフェノールと違って電極付着を生じない。フェノールの場合はしばしば前駆体フェニルホスフェートが酵素基質として使用される。PAPRは空気および光で酸化されるが、小規模および短時間枠ではこれを容易に防止できる。20μLから360μLの範囲の量のPAPPを使用するマイクロ電気化学的イムノアッセイでPAPRに関してピコモルの検出限度およびIgGに関してフェムトグラムの検出限度が得られたことがこれまでに報告されている。電気化学的検出を伴う毛管イムノアッセイにおいてこれまでに報告された最小検出限度は、70μL容量および30分または25分のアッセイ時間を用いて3000分子のマウスIgGである。
【0153】
電気化学的検出を使用する代表的な実施態様においては本発明による捕獲剤を電極の表面に固定化する(“固相”)。次に電極をたとえばヒト由来の生物サンプルに接触させる。サンプル中に抗−心筋トロポニン抗体が存在するならば捕獲剤に結合し、固相に固定された複合体が形成される。たとえばAP標識された抗−ヒト抗体は複合体中の自己抗体に結合し、これにより電極の表面に固定化される。PAPPを添加するとAPによってPAPRに変換され、次いで検出される。
【0154】
様々な電気化学的検出システムが米国特許Nos.7,045,364(2006年5月16日発行;参照によってここに組込まれる)、7,045,310(2006年5月16日発行;参照によってここに組込まれる)、6,887,714(2005年5月3日発行;参照によってここに組込まれる)、6,682,648(2004年1月27日発行;参照によってここに組込まれる);6,670,115(2003年12月30日発行;参照によってここに組込まれる)に記載されている。
【0155】
本発明はたとえば、TnI、CKMBおよびBNPを含む複数の心臓マーカーに対してサンドイッチイムノアッセイを行うAbbott Laboratoriesから市販のPoint of Care(i−STATTM)電気化学的イムノアッセイシステムを含むポイントオブケアアッセイシステムに応用できる。イムノセンサおよびそれらの製造方法と使い捨て試験デバイスにおけるそれらの使用方法は、たとえば、米国特許No.5,063,081および公開された米国特許出願Nos.US 20030170881、US 20040018577、US 20050054078およびUS 20060160164に記載されている。これらの出願のおのおのの該当デバイスに関する教示は参照によってここに組込まれるものとする。
【0156】
加えて、ここに紹介した代表的フォーマットのいずれかおよび本発明によるアッセイまたはキットのいずれかが、たとえば米国特許Nos.5,089,424および5,006,309に記載されているような、また、たとえば非限定的にAbbottのARCHITECT(R)、AxSYM、IMX、PRISMおよびQuantum IIプラットホームならびに他のプラットホームを含むAbbott Laboratories(Abbott Park,IL)によって市販されているような全自動および半自動のシステム(微粒子から成る固相が存在するシステムを含む)における使用に適応できるまたは最適化できることは言うまでもない。
【0157】
マルチプレックスフォーマット
たとえば1つの生物サンプル中の多数の分析物を同時に検定するために有用な特定実施態様においては固相がトロポニン反応性自己抗体を捕獲する捕獲剤を含めた複数の異なる捕獲剤を含有できる。従ってたとえば、おのおのがサンプル中の異なる自己抗体の存在を試験する予定の複数の抗原を固相に固定できる。代表的な実施態様においては固相が表面上の複数の異なる領域から構成され、各領域内部に特定の抗原が固定されている。
【0158】
マルチプレックスフォーマットは、複数のラベルを使用し、特定抗原に反応性の自己抗体を各ラベルに検出させることができるが、必ずしも複数のラベルを使用しなくてもよい。たとえば、抗原のような複数の捕獲剤が既知の種々の位置で固相に固定されている場合には複数のラベルを使用することなく特異性に基づいて多数の異なる自己抗体を検出できる。各位置の捕獲剤の特異性が既知なので、特定位置のシグナルの検出が該位置に結合した自己抗体の存在に関連する。このフォーマットの例は、それぞれチャンネルまたは毛管に沿った種々の位置に種々の捕獲剤を含有するマイクロ流体デバイスおよび毛管アレイ、および、典型的には固体支持体の表面に点行列(“標的素子”)として配列された種々の捕獲剤を含有するマイクロアレイを含む。特定実施態様においては種々の捕獲剤のおのおのがたとえば固体支持体の表面、マイクロ流体デバイスのチャンネルまたは毛管に形成された異なる電極に固定される。
【0159】
検査キット
本発明はまた、生物サンプル中の心筋トロポニン自己抗体を検定する検査キットを提供する。本発明による検査キットは、1つ以上の本発明のイムノアッセイを行うために有用な1種以上の試薬を含む。検査キットは一般に、試薬を1種以上の個別組成物として収容するかまたは場合により試薬の適合性が許容するならば混合物として収容する1つ以上の容器を伴うパッケージを含む。検査キットはまた、(1種または複数の)バッファ、(1種または複数の)希釈剤、(1種または複数の)標準のような使用者の見地から望ましい(1種または複数の)他の材料および/またはサンプルの処理、洗浄または他の何らかのアッセイ段階を行うために有用な他の何らかの材料を含み得る。
【0160】
いくつかの実施態様において、検査キットはヒト化モノクローナル抗体を含み、該ヒト化モノクローナル抗体は心筋トロポニンに特異的である。この成分は本発明によるイムノアッセイで陽性対照として使用できる。所望の場合、試験サンプル中で検出されたシグナルを比較できる標準曲線の作成を容易にするためにこの成分を複数の濃度で検査キットに含ませる。あるいは、キットに備えられた単一のヒト化モノクローナル抗体溶液の希釈液を調製することによって標準曲線を作成できる。
【0161】
本発明によるキットは、固相および固相に固定された捕獲剤を含むことができ、捕獲剤は心筋トロポニン抗原および種特異的抗体から成るグループから選択され、種特異的抗体は生物サンプルを提供する種に特異的である。このようなキットをサンドイッチイムノアッセイに使用する場合、キットはさらに、標識された検出試薬を含む。このような実施態様において捕獲剤が心筋トロポニン抗原であるとき、検出試薬は種特異的抗体でよい。捕獲剤が種特異的抗体であるときは、心筋トロポニン抗原を検出試薬として使用できる。特定実施態様においては種特異的抗体がヒト特異的抗体である。
【0162】
本発明の検査キットはまた、心筋トロポニンに特異的な標識された非ヒトモノクローナル抗体を含み得る。この成分は、使用された心筋トロポニン抗原が抗体に結合できることを確認するための対照として有用である。
【0163】
いくつかの実施態様においては検査キットがアクリジニウム−9−カルボキサミドのような少なくとも1つの直接ラベルを含む。本発明による検査キットはまた少なくとも1つの間接ラベルを含むことができる。使用されるラベルが一般に、検出可能シグナルを発生する指示薬を必要とするならば、検査キットが1種以上の適当な指示薬を含むのが好ましい。
【0164】
代表的な実施態様においては固相が1つ以上の微粒子または電極を含む。マルチプレックスアッセイ用に設計された検査キットは複数の異なる自己抗体に特異的な複数の抗原を含む1つ以上の固相を含有するのが便利である。従ってたとえば、マルチプレックス電気化学的イムノアッセイ用に設計された検査キットは複数の電極を含む固相を含有でき、各電極が異なる抗原を担持している。
【0165】
本発明による検査キットは好ましくは、1つ以上の本発明のイムノアッセイを実行するための使用説明書を含む。本発明のキットに含まれる使用説明書は包装材料に添付されてもよくまたは包装インサートとして含まれてもよい。使用説明書は典型的には書面または印刷文書であるが、このような形態に限定はされない。このような使用説明書を記憶して最終使用者に伝達できる何らかの媒体が本発明によって考察されている。このような媒体は非限定的に、電子記憶媒体(たとえば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(たとえば、CD ROM)などを含む。この文中に使用した“使用説明書”という用語は、使用説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得る。
【0166】
(実施例)
本発明はその使用および効力を示す実施例によってより十分に理解されよう。以下の実施例は、特許請求の範囲に記載の発明を例証するために与えられたものであり、発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0167】
心筋トロポニンI−C複合体マイクロプレート調製および試験
マイクロプレートコーティング手順
マイクロプレートコーティング溶液は、ヒト心筋トロポニンI−C複合体(cTnIC,販売業者)をリン酸塩バッファ(0.2M、pH8)に溶解して、80、400、2000または10000ng/mLの濃度の溶液とすることによって調製した。コーティング溶液(100μL)を白色高結合性平底96ウェルポリスチレンマイクロプレートのウェルに加えた。次にマイクロプレートを密封し、28rpmの回転シェーカーに載せ、38℃で1時間インキュベートした。次にコーティング溶液を、2%wt/vのウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)から成るブロッキング溶液(300μL)で置換し、プレートを密封する前に新しいブロッキング溶液で置換し、28rpmの回転シェーカーに載せ、38℃で1時間インキュベートした。次にコーティング溶液を2%wt/vのショ糖を含むリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)から成るオーバーコーティング溶液(300μL)で置換し、プレートを密封する前に新しいオーバーコーティング溶液で2回置換し、28rpmの回転シェーカーに載せ、38℃で20分間インキュベートした。次にオーバーコーティング溶液を除去し、マイクロプレートを周囲温度、乾燥窒素流下で乾燥した後、周囲温度で乾燥保存した。
【0168】
cTnICをコートしたマイクロプレートの活性
cTnICをコートしたマイクロプレートの免疫反応応答は、ARCHITECT(R) STAT−トロポニンIキット(Abbott Laboratories,Abbott Park,IL)の試薬を用いて試験した。cTnICをコートしたマイクロプレートのウェルに、ARCHITECT(R) STAT−トロポニンIコンジュゲート[タンパク質(ウシ)安定剤を含むMESバッファ中の抗心筋トロポニンI(マウス、モノクローナル)アクリジニウム標識コンジュゲート。保存料:ProClin(R)300](100μL)を加えた。次にマイクロプレートを密封し、28rpmの回転シェーカーに載せ、38℃で1時間インキュベートした。次にコンジュゲート溶液を除去し、マイクロプレートのウェルをARCHITECT(R) Line希釈剤(3×300μL)で洗浄した。
【0169】
抗心筋トロポニンIアクリジニウム標識マウスモノクローナル抗体−cTnIC免疫複合体の形成をBerthold Mithrasマイクロプレートリーダー(Berthold Technologies Inc,Oak Ridge,TN)で測定した。37℃で平衡させておいた計器にマイクロプレートを充填した。ARCHITECT(R) プレトリガ溶液(100μL)を各ウェルに分配した。プレトリガ溶液の添加後、プレートを72秒間振盪した。次にARCHITECT(R) トリガ溶液(100μL)を各ウェルに分配し、化学発光シグナルを2秒間記録した。cTnICの各コーティング濃度について化学発光シグナル(RLU,相対的光単位)を時間(秒)に対してプロットした。結果を図1、図2および表1に示す。2000ng/mLのコーティング濃度で最大の光出力(RLUmax)およびシグナル対ノイズ(S/N)が観察された。
【0170】
【表1】
【実施例2】
【0171】
正常ドナーヒト血漿中のcTnIC反応性自己抗体の分析
試験サンプル(10μL)とARCHITECT(R) STAT−トロポニンIキットのプレインキュベーション希釈剤(90μL)とを混合し、濃度2000ng/mLのcTnICをコートしたマイクロプレート(実施例1)のウェルに加えた。全部の試験サンプルの充填後、次にマイクロプレートを密封し、28rpmの回転シェーカーに載せ、37℃で2時間インキュベートした。次に試験サンプルの希釈溶液を除去し、マイクロプレートのウェルをARCHITECT(R) Line希釈剤(3×300μL)で洗浄した。マウス抗−ヒトIgGアクリジニウム標識コンジュゲート溶液(100μL)を各ウェルに加えた。全部の試験サンプルにコンジュゲートを加えた後、次にマイクロプレートを密封し、28rpmの回転シェーカーに載せ、37℃で1時間インキュベートした。次にコンジュゲート溶液を除去し、マイクロプレートのウェルをARCHITECT(R) Line希釈剤(3×300μL)で洗浄した。マイクロプレートを計器に入れ、37℃で平衡させた。ARCHITECT(R) プレトリガ溶液(100μL)を各ウェルに分配した。プレトリガ溶液の添加後、プレートを72秒間振盪した。次にARCHITECT(R) トリガ溶液(100μL)を各ウェルに分配し、化学発光シグナルを2秒間記録した。cTnICに対する自己抗体応答の分布を図3に示し、統計量の要約を表2に記載する。図3(およびこの文中の残りの図)の箱ひげ表示プロットにおいて、ボックス(箱)の中央の横線は中央値を表す。ボックスの上端および下端は四分位数間領域を示す。ホイスカ(ひげ)は各グループの最小値および最大値を表す。全正常集団の96サンプル中の16サンプル(17%)が第75パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与え(95%信頼レベル)、96サンプル中の4サンプル(4%)が第90パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与えた(95%信頼レベル)。
【0172】
【表2】
【実施例3】
【0173】
cTnI陽性ヒト血漿中のcTnIC反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnI陽性(0.2−7ng/mL)と鑑定されたヒト血漿サンプルのcTnIC反応性自己抗体を分析した。cTnICに対する自己抗体応答の分布を図4に示し、統計量の要約を表3に記載する。全cTnI陽性集団の80サンプル中の12サンプル(15%)が、第75パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与え(95%信頼レベル)、80サンプル中の3サンプル(4%)が第90パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与えた(95%信頼レベル)。
【0174】
【表3】
【実施例4】
【0175】
cTnI陽性ヒト血漿中のcTnIC反応性IgM自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnI陽性(0.2−7ng/mL)と鑑定されたヒト血漿サンプルのcTnIC反応性IgM自己抗体を分析した。実施例2に使用した抗−ヒトIgGアクリジニウム標識コンジュゲート溶液の代わりに抗−ヒトIgMアクリジニウム標識コンジュゲート溶液(100μL)を使用した。cTnICに対する自己抗体応答の分布を図5に示し、統計量の要約を表4に記載する。全cTnI陽性集団の80サンプル中の11サンプル(14%)が、第75パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与え(95%信頼レベル)、80サンプル中の2サンプル(3%)が第90パーセンタイル値応答よりも大きい応答を与えた(95%信頼レベル)。
【0176】
【表4】
【実施例5】
【0177】
心筋トロポニンIマイクロプレート調製
4000ng/mLのコーティング濃度を使用し実施例1に従ってヒト心筋トロポニンI(cTnI)マイクロプレートを調製した。
【実施例6】
【0178】
心筋トロポニンTマイクロプレート調製
4000ng/mLのコーティング濃度を使用し実施例1に従ってヒト心筋トロポニンT(cTnT)マイクロプレートを調製した。
【実施例7】
【0179】
心筋トロポニンCマイクロプレート調製
4000ng/mLのコーティング濃度を使用し実施例1に従ってヒト心筋トロポニンC(cTnC)マイクロプレートを調製した。
【実施例8】
【0180】
正常ドナーのヒト血漿中のcTnI反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnIコートした実施例5のマイクロプレートを使用し、正常ドナーのヒト血漿サンプル中のcTnI反応性自己抗体を分析した。cTnIに対する自己抗体応答の分布を図6に示し、統計量の要約を表5に記載する。
【0181】
【表5】
【実施例9】
【0182】
正常ドナーのヒト血漿中のcTnT反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnTコートした実施例6のマイクロプレートを使用し、正常ドナーのヒト血漿サンプル中のcTnT反応性自己抗体を分析した。cTnTに対する自己抗体応答の分布を図7に示し、統計量の要約を表6に記載する。
【0183】
【表6】
【実施例10】
【0184】
正常ドナーのヒト血漿中のcTnC反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnCコートした実施例7のマイクロプレートを使用し、正常ドナーのヒト血漿サンプル中のcTnC反応性自己抗体を分析した。cTnCに対する自己抗体応答の分布を図8に示し、統計量の要約を表7に記載する。
【0185】
【表7】
【実施例11】
【0186】
cTnI陽性ヒト血漿中のcTnI反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnI陽性(0.2−7ng/mL)と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnI反応性自己抗体をcTnIコートした実施例5のマイクロプレートを使用して分析した。cTnIに対する自己抗体応答の分布を図9に示し、統計量の要約を表8に記載する。
【0187】
【表8】
【実施例12】
【0188】
cTnI陽性ヒト血漿中のcTnT反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnI陽性(0.2−7ng/mL)と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnT反応性自己抗体をcTnTコートした実施例6のマイクロプレートを使用して分析した。cTnTに対する自己抗体応答の分布を図10に示し、統計量の要約を表9に記載する。
【0189】
【表9】
【実施例13】
【0190】
cTnI陽性ヒト血漿中のcTnC反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、cTnI陽性(0.2−7ng/mL)と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnC反応性自己抗体をcTnCコートした実施例7のマイクロプレートを使用して分析した。cTnCに対する自己抗体応答の分布を図11に示し、統計量の要約を表10に記載する。
【0191】
【表10】
【実施例14】
【0192】
抗HBV陽性ヒト血漿中のcTnIC反応性自己抗体の分析
実施例2に従って、自然感染によるB型肝炎ウイルス抗体陽性と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnIC反応性自己抗体をcTnICコートした実施例1のマイクロプレートを使用して分析した。cTnICに対する自己抗体応答の分布を図12に示し、統計量の要約を表11に記載する。
【0193】
【表11】
【実施例15】
【0194】
BNP陽性ヒト血漿中のcTnI反応性自己抗体の分析
実施例8に従って、B型ナトリウム利尿ペプチド陽性と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnI反応性自己抗体をcTnIコートした実施例5のマイクロプレートを使用して分析した。cTnIに対する自己抗体応答の分布を図13に示し、統計量の要約を表12に記載する。
【0195】
【表12】
【実施例16】
【0196】
HCV陽性ヒト血漿中のcTnI反応性自己抗体の分析
実施例8に従って、HCV陽性と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnI反応性自己抗体をcTnIコートした実施例5のマイクロプレートを使用して分析した。cTnIに対する自己抗体応答の分布を図14に示し、統計量の要約を表13に記載する。
【0197】
【表13】
【実施例17】
【0198】
シャガス陽性ヒト血漿中のcTnI反応性自己抗体の分析
実施例8に従って、シャガス陽性と鑑定されたヒト血漿サンプル中のcTnI反応性自己抗体をcTnIコートした実施例5のマイクロプレートを使用して分析した。cTnIに対する自己抗体応答の分布を図15に示し、統計量の要約を表14に記載する。
【0199】
【表14】
【実施例18】
【0200】
cTnI反応性自己抗体とcTnI抗原との反応特異性アッセイ
高反応性抗−cTnIサンプル(25μL)をcTnI抗原(123μg/mL、25μL)と共に18時間インキュベートした。その後、各サンプル混合物(10μL)をマイクロプレートウェル中でAxSYM(R)トロポニン−I ADVプレインキュベーション希釈剤(90μL)によって希釈し、次いで実施例8の正規アッセイプロトコルによって処理した。阻害%中央値は62%(範囲は29から78%)であった。
【実施例19】
【0201】
cTnI抗原ペプチドライブラリーを使用するcTnI反応性自己抗体の検出
ストレプトアビジンをコートしたマイクロプレート(Reacti−BindTM,NeutrAvidinTM HBC;Pierce,Rockford,IL)上で、完全cTnI配列(ペプチド長は15アミノ酸;オーバーラップは12アミノ酸;PEPscreen(R),Sigma−Genosys,The Woodlands,TX)を包含するビオチニル化ペプチドライブラリー(表15)に対してサンプルをスクリーニングした。すなわち、ペプチド(100μL、1200pmol/mL)をマイクロプレート上に配列し、次にマイクロプレートを密封し、周囲温度で1時間インキュベート/混合した。次にマイクロプレートをARCHITECT(R)洗浄バッファで洗浄し、吸引乾固した。サンプル(500μL)を9.5mLのAxSYM(R)トロポニンプレインキュベーション希釈剤で希釈し、次いでペプチドライブラリーと共にマイクロプレートに配列した(100μL/ウェル)。プレートを密封し、28rpmでかき混ぜながら37℃で2時間インキュベートした。その後、プレートをARCHITECT(R)洗浄バッファで洗浄し、各ペプチドに対する応答を実施例2に記載の化学発光検出を用いて測定した。
【0202】
完全cTnI抗原に対してスクリーニングした高応答性サンプル全部が、cTnIペプチドライブラリーに存在した1つ以上のエピトープに結合したIgGを含有していた。合せて考察すべきは、正常ドナー集団中の抗−cTnI IgG応答がcTnIペプチド配列の75%を含んでいたことである。図16は正常ドナー集団中のペプチドライブラリーに対する応答を示す。
【0203】
【表15】
【0204】
本発明が、その目的の実行、また、上記の目的および利点ならびに本発明に固有の目的および利点の獲得に適応可能であることを当業者は容易に理解されるであろう。この文中に記載した分子複合体、方法、手順、処理、分子、具体的化合物は、好ましい実施態様の現在の代表であり、好適例であり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲および要旨を逸脱することなくこの文中に開示した本発明に対する様々な置換および変更が可能であることは当業者に容易に理解されよう。
【0205】
明細書において言及したすべての特許および刊行物は、本発明が所属する分野の当業者のレベルを示す。個々の刊行物のおのおのが具体的かつ個別的に参照によって組込まれるとする指示と同様に、すべての特許および刊行物は参照によってこの文中に組込まれるものとする。
【0206】
この文中に例示的に記載した本発明は、この文中に具体的に開示しなかった1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定が存在しない場合にも適切に実施されるであろう。従って、たとえばこの文中ではどの場合にも“含む”、“本質的にから構成されている”および“から構成されている”という用語は他の2つの用語のいずれかで置換できる。使用した用語および表現は、記述目的で使用したものであって限定目的で使用したものではなく、このような用語および表現を使用することによって図示および記載の特徴に等価の特徴またはその部分を排除する意図はなく、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲内で多様な修正が可能であると理解される。従って、本発明は好ましい実施態様および選択自在な特徴によって具体的に開示されたが、当業者がこの文中に開示された概念の修正および変更を援用できること、および、このような修正および変更は特許請求の範囲に定義された本発明の範囲内に存在すると考えるべきであることを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性欠如を示す指標となる心筋トロポニンアッセイ結果の判定方法。
【請求項2】
(a)生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンを検定する段階と、
(b)同じ対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階と、
を含み、高レベルの心筋トロポニンおよび/または高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心臓病の高い危険性を示す指標となる心臓病の危険性の評価方法。
【請求項3】
生物サンプルが胸痛のある対象から採取される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生物サンプルが心筋梗塞の疑いのある対象から採取される請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
心筋炎、心筋症および虚血性心疾患から成るグループから選択された心臓病のあるまたはそれらの危険性のある対象のスクリーニング方法であって、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が前記心臓病の存在またはその危険性を示す指標となる方法。
【請求項6】
心臓病のあるまたはその危険性のある対象が免疫抑制療法および/または免疫吸収療法から成るグループから選択された治療方法の候補であるかを判断する方法であって、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は対象が前記療法の候補であることを示す指標となる方法。
【請求項7】
対象が自己免疫疾患に罹っているかまたは自己免疫疾患患者の一親等の血縁である場合に、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が前記心臓病の存在またはその危険性を示す指標となる、心臓病のあるまたはその危険性のある対象の同定方法。
【請求項8】
生物サンプルがヒトから採取される請求項1、2、5、6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アッセイにかける心筋トロポニンが、心筋トロポニンI、T、Cおよびそれらの複合体から成るグループから選択された心筋トロポニンを含む請求項1、2、5、6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
自己抗体が、心筋トロポニンI、T、Cおよびそれらの複合体から成るグループから選択された心筋トロポニンを含む心筋トロポニンに反応性である請求項1、2、5、6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、
(a)固相に固定された心筋トロポニン抗原に生物サンプルを、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば、心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させる段階と、
(b)サンプルの凝集を測定する段階と、
を含み、凝集の程度がサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、
(a)心筋トロポニン抗原に生物サンプルを、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば、心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させる段階と、
(b)心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む1つ以上の複合体からのシグナルを検出する段階と、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
シグナルがサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法がさらに、
(c)生物サンプルを提供した種に特異的な種特異的抗体に生物サンプルを、心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば、種特異的抗体に特異的結合できる十分な条件下で接触させる段階を含み、前記検出が、標識された種特異的抗体に結合している心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む複合体の検出を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(a)の接触と(c)の接触とを同時に行う請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)の接触と(c)の接触とを任意の順序で順次に行う請求項14に記載の方法。
【請求項17】
心筋トロポニン抗原が固相に固定されている請求項14に記載の方法。
【請求項18】
固相がマイクロプレートを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
固相が微粒子を含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
微粒子が磁性または常磁性である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
固相が電極を含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
種特異的抗体が標識されている請求項14から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ラベルが直接ラベルを含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
直接ラベルがアクリジニウム−9−カルボキサミドを含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ラベルが間接ラベルを含む請求項22に記載の方法。
【請求項26】
(c)の検出がラベルを指示薬に接触させる段階を含む請求項22に記載の方法。
【請求項27】
種特異的抗体が固相に固定されており、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば、種特異的抗体に結合して、固相に固定された複合体が形成され、前記検出が、固相に固定された複合体からのシグナルの検出を含む請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
固相がマイクロプレートを含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
固相が微粒子を含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
微粒子が磁性または常磁性である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
固相が電極を含む請求項27に記載の方法。
【請求項32】
心筋トロポニン抗原が標識されている請求項27から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ラベルが直接ラベルを含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
直接ラベルがアクリジニウム−9−カルボキサミドを含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ラベルが間接ラベルを含む請求項32に記載の方法。
【請求項36】
(c)の検出がラベルを指示薬に接触させる段階を含む請求項32に記載の方法。
【請求項37】
シグナルがサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に負の相関関係を有している請求項12に記載の方法。
【請求項38】
前記方法がさらに、
(c)標識された心筋トロポニン反応性抗体が心筋トロポニン抗原に特異的に結合するために十分な条件下で標識された心筋トロポニン反応性抗体に生物サンプルを、接触させる段階を含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
(a)の接触と(c)の接触とを同時に行う請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(a)の接触と(c)の接触とを任意の順序で順次に行う請求項38に記載の方法。
【請求項41】
心筋トロポニン抗原が固相に固定されており、標識された心筋トロポニン反応性抗体またはサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体に心筋トロポニン抗原が結合すると固相に固定された複合体が形成され、前記検出が、固相に固定された複合体からのシグナルの検出を含む請求項38に記載の方法。
【請求項42】
固相が微粒子を含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
固相が電極を含む請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ラベルが直接ラベルを含む請求項38に記載の方法。
【請求項45】
直接ラベルがアクリジニウム−9−カルボキサミドを含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ラベルが間接ラベルを含む請求項38に記載の方法。
【請求項47】
(c)の検出がラベルを指示薬に接触させる段階を含む請求項38に記載の方法。
【請求項48】
ヒト化モノクローナル抗体を含み、ヒト化モノクローナル抗体が心筋トロポニンに特異的である、生物サンプル中の心筋トロポニン反応性自己抗体を検定するための検査キット。
【請求項49】
検査キットがさらに、固相と固相に固定された捕獲剤とを含み、捕獲剤が心筋トロポニン抗原と種特異的抗体とから成るグループから選択され、種特異的抗体は生物サンプルを提供する種に特異的である請求項48に記載の検査キット。
【請求項50】
検査キットがさらに、標識された検出試薬を含み、
捕獲剤が心筋トロポニン抗原を含むならば検出試薬は種特異的抗体を含み、
捕獲剤が種特異的抗体を含むならば検出試薬は心筋トロポニン抗原を含む請求項49に記載の検査キット。
【請求項51】
検査キットがさらに、標識された非ヒトモノクローナル抗体を含み、非ヒトモノクローナル抗体が心筋トロポニンに特異的である請求項48から50のいずれか一項に記載の検査キット。
【請求項52】
種特異的抗体がヒト特異的抗体を含む請求項50に記載の検査キット。
【請求項53】
ラベルが直接ラベルを含む請求項50に記載の検査キット。
【請求項54】
直接ラベルがアクリジニウム−9−カルボキサミドを含む請求項53に記載の検査キット。
【請求項55】
ラベルが間接ラベルを含む請求項50に記載の検査キット。
【請求項56】
少なくとも1つのラベルと相互作用して検出可能シグナルを発生する指示薬をさらに含む請求項50に記載の検査キット。
【請求項57】
固相がマイクロプレートを含む請求項49または50に記載の検査キット。
【請求項58】
固相が微粒子を含む請求項49または50に記載の検査キット。
【請求項59】
固相が電極を含む請求項49または50に記載の検査キット。
【請求項60】
生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心臓病の高い危険性を示す指標となる心臓病の危険性の評価方法。
【請求項61】
心筋トロポニンに反応性の抗体を含む、生物サンプル中の心筋トロポニン反応性自己抗体を検定するため検査キット。
【請求項1】
生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心筋トロポニンアッセイ結果の信頼性欠如を示す指標となる心筋トロポニンアッセイ結果の判定方法。
【請求項2】
(a)生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンを検定する段階と、
(b)同じ対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階と、
を含み、高レベルの心筋トロポニンおよび/または高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心臓病の高い危険性を示す指標となる心臓病の危険性の評価方法。
【請求項3】
生物サンプルが胸痛のある対象から採取される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生物サンプルが心筋梗塞の疑いのある対象から採取される請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
心筋炎、心筋症および虚血性心疾患から成るグループから選択された心臓病のあるまたはそれらの危険性のある対象のスクリーニング方法であって、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が前記心臓病の存在またはその危険性を示す指標となる方法。
【請求項6】
心臓病のあるまたはその危険性のある対象が免疫抑制療法および/または免疫吸収療法から成るグループから選択された治療方法の候補であるかを判断する方法であって、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在は対象が前記療法の候補であることを示す指標となる方法。
【請求項7】
対象が自己免疫疾患に罹っているかまたは自己免疫疾患患者の一親等の血縁である場合に、対象から採取した生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が前記心臓病の存在またはその危険性を示す指標となる、心臓病のあるまたはその危険性のある対象の同定方法。
【請求項8】
生物サンプルがヒトから採取される請求項1、2、5、6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アッセイにかける心筋トロポニンが、心筋トロポニンI、T、Cおよびそれらの複合体から成るグループから選択された心筋トロポニンを含む請求項1、2、5、6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
自己抗体が、心筋トロポニンI、T、Cおよびそれらの複合体から成るグループから選択された心筋トロポニンを含む心筋トロポニンに反応性である請求項1、2、5、6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、
(a)固相に固定された心筋トロポニン抗原に生物サンプルを、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば、心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させる段階と、
(b)サンプルの凝集を測定する段階と、
を含み、凝集の程度がサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、
(a)心筋トロポニン抗原に生物サンプルを、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば、心筋トロポニン抗原に結合できる十分な条件下で接触させる段階と、
(b)心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む1つ以上の複合体からのシグナルを検出する段階と、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
シグナルがサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に正の相関関係を有している請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法がさらに、
(c)生物サンプルを提供した種に特異的な種特異的抗体に生物サンプルを、心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば、種特異的抗体に特異的結合できる十分な条件下で接触させる段階を含み、前記検出が、標識された種特異的抗体に結合している心筋トロポニン反応性自己抗体に結合した心筋トロポニン抗原を含む複合体の検出を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(a)の接触と(c)の接触とを同時に行う請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)の接触と(c)の接触とを任意の順序で順次に行う請求項14に記載の方法。
【請求項17】
心筋トロポニン抗原が固相に固定されている請求項14に記載の方法。
【請求項18】
固相がマイクロプレートを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
固相が微粒子を含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
微粒子が磁性または常磁性である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
固相が電極を含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
種特異的抗体が標識されている請求項14から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ラベルが直接ラベルを含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
直接ラベルがアクリジニウム−9−カルボキサミドを含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ラベルが間接ラベルを含む請求項22に記載の方法。
【請求項26】
(c)の検出がラベルを指示薬に接触させる段階を含む請求項22に記載の方法。
【請求項27】
種特異的抗体が固相に固定されており、サンプル中に心筋トロポニン反応性自己抗体が存在するならば、種特異的抗体に結合して、固相に固定された複合体が形成され、前記検出が、固相に固定された複合体からのシグナルの検出を含む請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
固相がマイクロプレートを含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
固相が微粒子を含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
微粒子が磁性または常磁性である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
固相が電極を含む請求項27に記載の方法。
【請求項32】
心筋トロポニン抗原が標識されている請求項27から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ラベルが直接ラベルを含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
直接ラベルがアクリジニウム−9−カルボキサミドを含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ラベルが間接ラベルを含む請求項32に記載の方法。
【請求項36】
(c)の検出がラベルを指示薬に接触させる段階を含む請求項32に記載の方法。
【請求項37】
シグナルがサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体の濃度に負の相関関係を有している請求項12に記載の方法。
【請求項38】
前記方法がさらに、
(c)標識された心筋トロポニン反応性抗体が心筋トロポニン抗原に特異的に結合するために十分な条件下で標識された心筋トロポニン反応性抗体に生物サンプルを、接触させる段階を含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
(a)の接触と(c)の接触とを同時に行う請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(a)の接触と(c)の接触とを任意の順序で順次に行う請求項38に記載の方法。
【請求項41】
心筋トロポニン抗原が固相に固定されており、標識された心筋トロポニン反応性抗体またはサンプル中に存在する心筋トロポニン反応性自己抗体に心筋トロポニン抗原が結合すると固相に固定された複合体が形成され、前記検出が、固相に固定された複合体からのシグナルの検出を含む請求項38に記載の方法。
【請求項42】
固相が微粒子を含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
固相が電極を含む請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ラベルが直接ラベルを含む請求項38に記載の方法。
【請求項45】
直接ラベルがアクリジニウム−9−カルボキサミドを含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ラベルが間接ラベルを含む請求項38に記載の方法。
【請求項47】
(c)の検出がラベルを指示薬に接触させる段階を含む請求項38に記載の方法。
【請求項48】
ヒト化モノクローナル抗体を含み、ヒト化モノクローナル抗体が心筋トロポニンに特異的である、生物サンプル中の心筋トロポニン反応性自己抗体を検定するための検査キット。
【請求項49】
検査キットがさらに、固相と固相に固定された捕獲剤とを含み、捕獲剤が心筋トロポニン抗原と種特異的抗体とから成るグループから選択され、種特異的抗体は生物サンプルを提供する種に特異的である請求項48に記載の検査キット。
【請求項50】
検査キットがさらに、標識された検出試薬を含み、
捕獲剤が心筋トロポニン抗原を含むならば検出試薬は種特異的抗体を含み、
捕獲剤が種特異的抗体を含むならば検出試薬は心筋トロポニン抗原を含む請求項49に記載の検査キット。
【請求項51】
検査キットがさらに、標識された非ヒトモノクローナル抗体を含み、非ヒトモノクローナル抗体が心筋トロポニンに特異的である請求項48から50のいずれか一項に記載の検査キット。
【請求項52】
種特異的抗体がヒト特異的抗体を含む請求項50に記載の検査キット。
【請求項53】
ラベルが直接ラベルを含む請求項50に記載の検査キット。
【請求項54】
直接ラベルがアクリジニウム−9−カルボキサミドを含む請求項53に記載の検査キット。
【請求項55】
ラベルが間接ラベルを含む請求項50に記載の検査キット。
【請求項56】
少なくとも1つのラベルと相互作用して検出可能シグナルを発生する指示薬をさらに含む請求項50に記載の検査キット。
【請求項57】
固相がマイクロプレートを含む請求項49または50に記載の検査キット。
【請求項58】
固相が微粒子を含む請求項49または50に記載の検査キット。
【請求項59】
固相が電極を含む請求項49または50に記載の検査キット。
【請求項60】
生物サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンに反応性の自己抗体を検定する段階を含み、高レベルの心筋トロポニン反応性自己抗体の存在が心臓病の高い危険性を示す指標となる心臓病の危険性の評価方法。
【請求項61】
心筋トロポニンに反応性の抗体を含む、生物サンプル中の心筋トロポニン反応性自己抗体を検定するため検査キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−508515(P2010−508515A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534772(P2009−534772)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/081606
【国際公開番号】WO2008/051761
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/081606
【国際公開番号】WO2008/051761
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
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