説明

心肺蘇生補助シート

【課題】 一次救命処置をするには専門の知識や経験が必要であり、知識や経験の無い人が確実に救命処置を実施するのは困難であった。また屋外などで風が強い状況下では、患者の呼吸の有無を正確に確認するには不確実であった。
本発明は、心肺蘇生法について充分な知識や経験が無い人でも心肺蘇生法を的確に行うための方法を図示したシート状の医療器具を提供する。
【解決手段】 人体上部に適合する大きさの柔軟なる素材でできたシートに、心肺蘇生法を実施するのに必要な人工呼吸法を示す図と乳児・幼児・成人の胸部圧迫法を示す図を、処置を行う場所に配置している。本体シート上部には、患者の呼吸の有無を視覚的に確認できるCO2検知呼気ガスディテクタと、人工呼吸時に患者へ息を吹き込むためのマウスピースを装備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒れている患者が呼吸をしているか確認するための呼気ガスディテクタを設けた心肺蘇生を補助するシートに関するものである。心肺蘇生法について充分な知識や経験が無い人でも緊急時に必要最小限の処置を行うために、患者の呼吸の有無を視覚的に確認でき、心肺蘇生法を的確に行うための方法を表示したシート状の医療器具を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、倒れている患者がいた場合に呼吸を確認する方法は、一次救命処置法の知識のある人が患者の口元に耳を近づけて、患者からの吐息を耳で感じることで呼吸をしているか確認し、その後の処置も行っていた。
なお、一次救命処置法の知識や経験のない人でも心肺蘇生法を確実に行うための道具として、心肺蘇生等の救急措置を施す部位及び、手順を表示した救急医療布(特許文献1参照)、ティーシャツに救命措置の方法を示す絵図を見ながら救命措置を行える医療情報表示付衣服(特許文献2参照)、心肺蘇生を実施する箇所である肋骨縁と胸骨の圧迫位置と圧迫するための手の位置を図示した心肺蘇生を的確に行うための図解シート(特許文献3参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特許公開 2002−186641号
【特許文献2】 特許公開 2002−180310号
【特許文献3】 特許公開 2002−17806号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
倒れている患者に一次救命処置をするには専門の知識や経験が必要であり、知識や経験の無い人は確実に救命処置を実施するのは困難であった。
呼吸の有無を確認する方法として、患者の口元へ耳を近づけ呼気を感じるか否かで患者が呼吸をしているかどうかを判断しており、周囲にいる第3者などからは分からない場合が多い。また屋外などで風が強い状況下では、呼気を正確に確認するには不確実であった。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
人体上部に適合する大きさの柔軟なる素材でできたシートに、心肺蘇生法を実施するのに必要な人工呼吸法、乳児・幼児・成人の胸部圧迫法の図を、それぞれ処置を行う場所に表示している。本体シート上部には、患者が呼吸をしているかどうかを視覚的に確認できるCO2検知呼気ガスディテクタと、人工呼吸を実施するためのマウスピースを装備している。
【発明の効果】
【0006】
心肺蘇生法の知識や経験が無い人が心肺蘇生を実施しなければならない緊急な場面に遭遇した場合でも、倒れている患者が呼吸をしているのかどうかを視覚的に確認する事ができるCO2検知呼気ガスディテクタと人工呼吸用マウスピースを装備した本体シートを使用し、シートに表示された手順に従うことで、安全に迅速に的確に心肺蘇生法を実施することが可能である。
また、本体シートは柔軟なる素材からなり、折りたたむことが可能であり、携帯性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】 本発明の正面図
【図2】 本発明の断面図
【図3】 本発明の上部断面拡大図
【図4】 本発明の使用状態を示した要部拡大図
【図5】 本発明を使用し、処置を実施している斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(イ) 本体(1)は柔軟性なるビニールや合成繊維または布生地からなる扁平状のシートを呈し、人体上部に適合するような縦長の形状を呈している。本体(1)の上部には、人工呼吸時に患者へ息を吹き込むためのマウスピース(2)と、患者の呼吸の有無を視覚的に確認できるCO2感知カラーインジケーター(10)を内蔵した呼気ガスディテクタ(3)が本体を貫通している形で装備されている。
(ロ) マウスピース(2)と呼気ガスディテクタ(3)は一体となっており、患者の口に差し込むことで、患者の呼気CO2の検知と人工呼吸を行うことが可能になっている。マウスピース(2)は空気流通穴(12)が貫通し、空気流通穴(12)の中途に逆流防止弁(11)が設けられ、救助者の吹き込む息のみ患者へ流入し、患者からの呼気が逆流してこない構造になっている。
(ハ) 呼気ガスディテクタ(3)の内部にはCO2を検知すると変色する試薬を含むCO2カラーインジケーター(10)を内蔵しており、CO2検知時の色の変化を視覚的に確認する事が可能になっている。
(ニ) 呼気ガスディテクタ(3)の下端には、人工呼吸法表示部(4)を配置し、その両側には人工呼吸回数表示部(7)が表示されている。
本体(1)の中央部には、乳児・幼児・成人それぞれの心臓の位置に近い場所にそれぞれ心肺蘇生法に則った胸部圧迫表示部(5a、5b、5c)、その両側に胸部圧迫回数表示部(8)を配置し、知識や経験が無い人でも安全に的確に心肺蘇生を行うことが出来るようにしている。
人工呼吸法表示部(4)と胸部圧迫部位表示部(5c)を矢印で繋ぐ心肺蘇生繰り返し表示部(6)は、人工呼吸と胸部圧迫を繰り返し行う事を示唆する。
(ホ) 安静時体位表示(9)は、患者の呼吸が確認された場合の体位を示している。安静時体位表示(9)の色は、CO2カラーインジケーター(10)がCO2を検知した際の色と同色にしてあり、処置を色で視覚的に把握することができる。
また、人工呼吸法表示部(4)と胸部圧迫部位表示部(5a〜5c)の色は、CO2カラーインジケーター(10)がCO2を検知しなかった時の色と同色にしてあり、処置を色で視覚的に把握することができる。
(ヘ) 胸部圧迫表示部(5a〜5c)は、呼気ガスディテクタ(2)の位置から、乳児・幼児・成人それぞれの心臓までの距離に近い場所に、各々の胸部圧迫法を示した図を配置している。
本発明は以上のような構造である。
本発明は次のように使用する。
(イ)本体(1)を広げ、倒れている患者の口へマウスピース(2)と一体になっている呼気ガスディテクタ(3)を差込み、上半身に本体(1)を被覆する。
(ロ)呼気ガスディテクタ(3)に内蔵されているCO2カラーインジケーター(10)の色の変化を確認する。CO2カラーインジケーター(10)がCO2を検知しなかった時の色を呈している場合には、倒れている人が呼吸をしていない事を示している。呼吸をしていないという事は、心臓が停止していることを示し、早急に心肺蘇生を行う必要があるので、人工呼吸法表示部(4)と胸部圧迫部位表示部(5a〜5c)の色は、CO2カラーインジケーター(10)がCO2を検知しなかった時の色と同色にしてあり、視覚的にすぐ確認することができるようになっている。
(ハ)まず人工呼吸表示部(4)の図に従い、アゴを挙げて、人工呼吸回数表示部(7)に示す回数だけマウスピース(2)から息を吹き込む。心肺蘇生繰り返し矢印表示部(6)に従い、胸部圧迫部位表示部(5a〜5c)の位置で図示されている圧迫法の通りに胸部圧迫を行う。胸部圧迫回数表示部(8)の回数だけ胸部圧迫を実施する。そしてまた心肺蘇生繰り返し矢印表示部(6)に従い、人工呼吸を行う。その処置を患者の呼吸が回復するまで、何回も繰り返す。
(ニ)もし(イ)の時点で、CO2カラーインジケーター(10)の色の変化がCO2を検知し色が変化した場合には、倒れている患者が呼吸をしている事を示し、回復体位にさせる必要がある。回復体位は安静時体位表示(9)に図で示されており、安静時体位表示部(9)の色は、CO2カラーインジケーター(10)がCO2を検知した際の色と同色にしてあるので、視覚的にすぐ確認することができる。患者を回復体位にして、回復を待つ。
【符号の説明】
【0009】
(1)本体、(2)マウスピース、(3)呼気ガスディテクタ、(4)人工呼吸表示部、(5a)胸部圧迫部位表示部(乳児用)、(5b)胸部圧迫部位表示部(幼児用)、(5c)胸部圧迫部位表示部(成人用)、(6)心肺蘇生繰り返し矢印表示部、(7)人工呼吸回数表示部、(8)胸部圧迫回数表示部、(9)安静時体位表示部、(10)CO2感知カラーインジケーター、(11)逆流防止弁、(12)空気流通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体上部に適合する大きさを有する軟質樹脂又は布生地のシートの表面に、心肺蘇生法を実施するのに必要な人工呼吸法、乳児・幼児・成人の胸部圧迫法を表示し、本体シート上部には、患者の呼吸の有無を視覚的に確認できるCO2感知カラーインジケーターを内蔵した呼気ガスディテクタと、人工呼吸時の際に患者の息の逆流を防ぐ逆流防止弁を有するマウスピースを設けた心肺蘇生補助シート。
【請求項2】
人工呼吸法を示す図と乳児・幼児・成人の心臓の位置に近い場所に胸部圧迫法を示す図を表示した請求項1の心肺蘇生補助シート。
【請求項3】
シートに配置された人工呼吸法、胸部圧迫法、安静時体位の図の色が、CO2で変化するCO2カラーインジケーターの色に対応している請求項1又は請求項2の心肺蘇生補助シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−104310(P2011−104310A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276961(P2009−276961)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(509335498)
【Fターム(参考)】