説明

心臓モデル

【課題】手術又は検査のトレーニングとして管状医療器具が内部に挿入される心臓モデルについて、実際の手術又は検査をシミュレーションする上で適切なものを提供する。
【解決手段】内部にカテーテルCを挿入することが可能な心臓モデルHにおいて、実際の心臓の心室中隔及び心房中隔に相当する領域を少なくとも含む心臓モデル本体HMと、心室中隔及び心房中隔を除く実際の心臓の所定部位に相当する第1領域R1と、実際の心臓のうち、カテーテルCが内側表面に当接した際の当接圧に対する応答性が上記の所定部位よりも高い部位に相当する第2領域R2と、を有する。第2領域R2は、第1領域R1とは異なる位置で心臓モデル本体HMに取り付けられおり、第2領域R2の当接圧に対する強度は、第1領域R1の強度より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術又は検査のトレーニングのために用いられる心臓モデルに係り、特に、内部にカテーテル等の管状医療器具を挿入することが可能な心臓モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル等の管状医療器具を使用した心臓の手術や検査は、既に周知である。例えば、カテーテルを用いた心臓の検査として、先端に電極を取り付けたカテーテルを心筋組織各部に当接させることにより心臓内の刺激伝達経路を診断し、不整脈の起源部位を特定することが行われている。また、カテーテルを用いた心臓の手術として、カテーテル先端の電極と患者の背中に貼った対極板との間に高周波を流し、不整脈の起源部位として特定した部位に上記電極を当接させて、当該部位の心筋組織を焼灼して不整脈を治療することが行われている。
【0003】
ところで、研修医等が上記の手術や検査を実際に人体に対して行うための訓練として、人工の心臓モデルを用いてトレーニングを行うことがある。上記の心臓モデルは、例えば、樹脂材料により成形され、特に、実際の人体の心臓に近付ける目的から、シリコンゴム等の可撓性材料が用いられる場合もある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、心筋を擬態した内部鋳造物と、心外膜に対応する外殻とから構成される心臓モデルが開示されており、この心臓モデルにおける上記2つの部分は、いずれも、シリコンゴム等の可撓性部材からなっている。これにより、実際の人体の心臓と同様に弾力性を有する心臓モデルを提供することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−508589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際の人体の心臓では、心筋組織の部位間で物理的特性が異なっており、よりリアリティ(再現性)に優れた心臓モデルを実現する上で、上記の物理的特性の違いを再現する必要がある。特に、実際の手術や検査において、カテーテル等の管状医療器具を心臓内部に挿入して内側表面に当接させる場合、当接圧に対する応答性が心臓の各部位間で異なり、当該応答性の差をトレーニングにおいてシミュレーションできるような心臓モデルの開発が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、手術又は検査のトレーニングとしてカテーテル等の管状医療器具が内部に挿入される心臓モデルについて、実際の手術又は検査をシミュレーションする上で適切な心臓モデルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の心臓モデルによれば、手術又は検査のトレーニングのために用いられ、内部に管状医療器具を挿入することが可能な心臓モデルであって、実際の心臓の心室中隔及び心房中隔に相当する領域を少なくとも含む心臓モデル本体と、該心臓モデル本体に取り付けられ、前記心室中隔及び前記心房中隔を除く前記実際の心臓の所定部位に相当する第1領域と、該第1領域とは異なる位置で前記心臓モデル本体に取り付けられ、前記実際の心臓のうち、前記管状医療器具が内側表面に当接した際の当接圧に対する応答性が前記実際の心臓の所定部位よりも高い部位、に相当する第2領域と、を有し、該第2領域の、前記当接圧に対する強度が、前記第1領域の前記強度より小さいことにより解決される。
かかる心臓モデルであれば、管状医療器具を内側表面に当接させた際の当接圧に対する挙動が異なる領域として、第1領域と第2領域が存在するため、当接部位に応じた当接圧の調整が必要となる実際の手術又は検査を良好にシミュレーション(再現)することが可能になる。特に、本発明では、実際の心臓のうち、当接圧に対する応答性がより高い部位を第2領域に設定して、当該第2領域の強度を第1領域よりも小さくすることにより、実際の心臓のうち、第2領域が対応する部位の内側表面に管状医療器具を当接させた際の応答を良好にシミュレーションすることが可能である。
つまり、本発明の心臓モデルは、心臓各部位における、カテーテル等の管状医療器具が内側表面に当接した際の当接圧に対する応答性の違いを良好に再現しており、管状医療器具を心臓内部に挿入して行う実際の手術又は検査をシミュレーションするために用いるトレーニング用モデルとして好適なものである。
【0008】
また、上記の心臓モデルにおいて、前記第1領域は、前記心臓モデル本体と一体化しており、前記第2領域は、一体化した前記心臓モデル本体及び前記第1領域に対して着脱自在に取り付けられており、新たな第2領域に交換可能であり、前記第2領域の硬さは、前記第1領域の硬さよりも小さいと、より好適である。
かかる構成であれば、第1領域と第2領域との硬さの差により、管状医療器具を当接させた際の当接圧に対する応答性の差を的確に表現することが可能になる。また、劣化した第2領域を交換することにより再利用可能な心臓モデルが実現される。
【0009】
また、上記の心臓モデルにおいて、前記第1領域及び前記第2領域は、それぞれ、前記心臓モデル本体に対して着脱自在に取り付けられており、前記第1領域は、前記心臓モデル本体に形成された第1被係合部に係合する第1係合部を備え、該第1係合部が前記第1被係合部に係合することにより、前記心臓モデル本体に取り付けられ、前記第1係合部と前記第1被係合部との係合状態が解除される大きさの前記当接圧が内側表面に作用することにより、前記心臓モデル本体から外れ、前記第2領域は、前記心臓モデル本体に形成された第2被係合部と係合する第2係合部を備え、該第2係合部が前記第2被係合部に係合することにより、前記心臓モデル本体に取り付けられ、前記第2係合部と前記第2被係合部との係合状態が解除される大きさの前記当接圧が内側表面に作用することにより、前記心臓モデル本体から外れ、前記第2係合部と前記第2被係合部との係合状態を解除させる前記当接圧の大きさは、前記第1係合部と前記第1被係合部との係合状態を解除させる前記当接圧の大きさよりも小さいと、より一層好適である。
かかる構成であれば、各係合部と被係合部との係合力(すなわち、係合部と被係合部との係合状態を解除させる当接圧の大きさ)を第1領域及び第2領域間で異ならせることにより、管状医療器具を当接させた際の当接圧に対する応答性の差を的確に表現することが可能になる。
【0010】
また、上記の心臓モデルにおいて、前記実際の心臓のうち、前記当接圧に対する応答性が前記実際の心臓の所定部位より高く、かつ、前記第2領域の対応部位よりも低い部位に相当する第3領域を更に有し、該第3領域の前記強度は、前記第1領域の前記強度よりも小さく、かつ、前記第2領域の前記強度よりも大きいこととしてもよい。
かかる構成であれば、管状医療器具を内側表面に当接させた際の当接圧に対する応答性の違いを反映して、前述の第1領域及び第2領域に加え、第3領域が追加される結果、当接部位に応じた当接圧の調整をより細やかに行う必要があり、実際の手術又は検査をより良好にシミュレーションすることが可能になる。
【0011】
なお、上記の心臓モデルにおいて、前記第1領域は、前記実際の心臓のうち、左心室及び右心室に相当する領域であり、前記第2領域は、前記実際の心臓のうち、右心房に相当する領域であり、前記第3領域は、前記実際の心臓のうち、左心房に相当する領域であることとしてもよい。
あるいは、上記の心臓モデルにおいて、前記心臓モデル本体は、前記実際の心臓のうち、心室中隔と心房中隔と左心室と右心室とに相当する領域であり、前記第2領域は、前記実際の心臓のうち、左心房における肺静脈との接合部位及び後側の心筋壁に相当する領域であり、前記第1領域は、前記実際の心臓のうち、左心房中、前記肺静脈との接合部位及び前記後側の心筋壁以外の部位に相当する領域であることとしてもよい。
あるいは、上記の心臓モデルにおいて、前記心臓モデル本体は、前記実際の心臓のうち、心室中隔と左心室と右心室とに相当する領域であり、前記第2領域は、前記実際の心臓のうち、心房中隔における卵円窩に相当する領域であり、前記第1領域は、前記実際の心臓のうち、心房中隔中、前記卵円窩以外の部位に相当する領域であることとしてもよい。
以上のように、心臓のうち、手術や検査において特に重要視される部位、特に、内側表面に管状医療器具を当接させる際に細心の注意を要する部位を第2領域として設定することにより、手術又は検査のトレーニング用の心臓モデルとして、より好適なものが実現されることになる。
【0012】
また、上記の心臓モデルにおいて、前記心臓モデルは、該心臓モデルに接続された、大腿静脈に相当する管状部材を有する人体モデル本体内に据え付けられて、該人体モデル本体と共に人体モデルをなし、前記管状医療器具は、不整脈の起源部位を特定又は焼灼するための電極を有するカテーテルであり、該カテーテルが前記管状部材を通じて前記心臓モデルの内部に挿入されると、更に好適である。
かかる構成であれば、不整脈の検査や治療のためにカテーテルを使用する実際の手術や検査と同様に、大腿静脈に相当する管状部材を通じて上記のカテーテルを心臓モデル内部に挿入するので、心臓モデルを用いた手術又は検査のトレーニングのリアリティ性が向上することになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の心臓モデルであれば、カテーテル等の管状医療器具を内側表面に当接させた際の当接圧に対する挙動が異なる領域として、第1領域と第2領域が存在するため、当接部位に応じた当接圧の調整が必要となる実際の手術又は検査を良好にシミュレーション(再現)することが可能になる。特に、本発明では、実際の心臓のうち、当接圧に対する応答性がより高い部位を第2領域に設定して、当該第2領域の強度を第1領域よりも小さくすることにより、実際の心臓のうち、第2領域が対応する部位の内側表面に管状医療器具を当接させた際の応答を良好にシミュレーションすることが可能である。
つまり、本発明の心臓モデルは、心臓各部位における、カテーテル等の管状医療器具が内側表面に当接した際の当接圧に対する応答性の違いを良好に再現しており、管状医療器具を心臓内部に挿入して行う実際の手術又は検査をシミュレーションするために用いるトレーニング用モデルとして好適な心臓モデルである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】手術又は検査におけるカテーテルCの挿入ルートを示す図である。
【図2】図2A及び図2Bは、人体モデルJの模式外観図である。
【図3】心臓モデルHの外観図である(その1)。
【図4】心臓モデルHの外観図である(その2)。
【図5】心臓モデルHの外観図である(その3)。
【図6】心臓モデルHの外観図である(その4)。
【図7】心臓モデルHの外観図である(その5)。
【図8】心臓モデルHの外観図である(その6)。
【図9】心臓モデルHの模式断面図である。
【図10】第2領域R2又は第3領域R3が心臓モデル本体HM及び第1領域R1に対して着脱自在とする構成についての説明図である。
【図11】心臓モデルH各部を製造するプロセスの流れを示す図である。
【図12】心臓モデルH各部を製造するプロセスについての説明図である(その1)。
【図13】心臓モデルH各部を製造するプロセスについての説明図である(その2)。
【図14】第2変形例に係る心臓モデルHを示す図である。
【図15】第3変形例に係る心臓モデルHの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る心臓モデルHについて図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0016】
図1は、手術又は検査におけるカテーテルCの挿入ルートを示す図である。図2A及び図2Bは、人体モデルJの模式外観図であり、具体的には、人体モデルJを腹側部(図2A)と背側部(図2B)に分割した際の図である。図3〜図8は、心臓モデルHの外観図であり、それぞれ、正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面図、底面図を示している。図9は、心臓モデルHの模式断面図である。図10は、第2領域R2又は第3領域R3が心臓モデル本体HM及び第1領域R1に対して着脱自在とする構成についての説明図である。図11は、心臓モデルH各部を製造するプロセスの流れを示す図である。図12及び図13は、心臓モデルH各部を製造するプロセスについての説明図である。具体的に説明すると、図12は、後述する第1領域R1及び心臓モデル本体HMの製造プロセスを示す図であり、図13は、後述する第2領域R2又は第3領域R3の製造プロセスを示す図である。図14は、第2変形例に係る心臓モデルHを示す図であり、図7に対応する図である。図15は、第3変形例に係る心臓モデルHの模式断面図であり、図9に対応する図である。
なお、図12及び図13に図示された部材については、図示の都合上、簡略化されており、実際のものとは形状や寸法が幾分異なっている。
【0017】
心臓モデルHは、実際の人間の心臓を擬態した模型であり、手術又は検査のトレーニングのために用いられ、内部に管状医療器具としてのカテーテルCを挿入することが可能である。トレーニングとは、実際の手術又は検査を行う前段階として行う訓練や練習、実技試験等の総称である。
【0018】
特に、本実施形態に係る心臓モデルHは、電極を先端に有するカテーテルCを用いる手術又は検査のトレーニングとして用いられるものである。つまり、本実施形態に係る心臓モデルHの内部には、実際の手術又は検査と同様に、電極が先端部に取り付けられたカテーテルCが挿入される。
【0019】
ここで、電極が取り付けられたカテーテルCを用いる手術とは、カテーテル先端の電極と患者の背中に貼った対極板との間に高周波を流し、不整脈の起源部位に上記電極を当接させて、当該部位の心筋組織を焼灼して不整脈を治療する手術(いわゆるカテーテル・アブレーション)である。また、電極が取り付けられたカテーテルCを用いる検査とは、先端に電極を取り付けたカテーテルCを心筋組織各部に当接させることにより心臓内の刺激伝達経路を診断し、不整脈の起源部位を特定する検査(電気生理学的カテーテル検査)である。以上のように、本実施形態に係る心臓モデルHの内部には、不整脈の起源部位を特定又は焼灼するための電極が先端部に取り付けられたカテーテルCが挿入される。
【0020】
ところで、上記の手術や検査では、図1に示すように、カテーテルCが経皮的に人体の大腿静脈に挿入され、大腿静脈を通じて心臓内に向けて押し入れられる。一方、本実施形態に係る心臓モデルHを用いた手術又は検査のトレーニングにおいても、上記と同様の手順にてカテーテルCが心臓モデルH内部に挿入される。
【0021】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る心臓モデルHは、図2A及び図2Bに示す中空の人体モデル本体JH内に据え付けられて、人体モデル本体JHと共に人体モデルJをなす。ここで、人体モデル本体JHとは、電極を先端に有するカテーテルCを用いたトレーニングの際に利用する人体モデルJにおいて、心臓モデルHを除いた部分であり、図2A及び図2Bに示すように、人体の大腿部から首に至る部分を擬態した透明材料の中空部材である。さらに、本実施形態に係る人体モデル本体JHは、腹側部と背側部に分解可能であり、その内部には血管を模した管状部材としてのゴムチューブTがセットされている。
【0022】
人体モデル本体JH内にセットされたゴムチューブTの中には、図2Bに示す通り、大腿静脈に相当するゴムチューブTが存在する。上述の手術又は検査のトレーニングの際、人体モデル本体JHの外表面のうち、大腿静脈に相当するゴムチューブTの上部に位置する箇所に孔を穿ち、カテーテルCは、この孔を通じて大腿静脈に相当するゴムチューブT内部に挿入され、当該ゴムチューブTを通じて最終的に心臓モデルH内部に挿入されることになる。以上のように、不整脈の検査や治療のためにカテーテルCを使用する実際の手術や検査と同様に、大腿静脈に相当するゴムチューブTを通じてカテーテルCを心臓モデルH内部に挿入するので、心臓モデルHを用いた手術又は検査のトレーニングのリアリティ性が向上することになる。
【0023】
カテーテルCが心臓モデルH内部に至ると、カテーテルCの操作者(すなわち、トレーニング実施者)は、カテーテルCの先端を心臓モデルHの内側表面に当接させるようにカテーテルCを操作する。これにより、操作者は、心臓の心筋組織各部にカテーテルCの先端を当接させたときの手元の感触や、所定の部位にカテーテルCの先端を当接させる際の微妙な力の掛け具合の調整等をシミュレーションすることができる。
【0024】
上記のシミュレーションでは、とりわけ、カテーテルCの先端を心臓の心筋組織に当接させる際に心筋組織に掛かる負荷(当接圧)について、精度よく再現できることが望ましい。これは、カテーテルCの先端を当接させた際の当接圧に対する応答性が、心筋組織(心臓の各部位)によって異なり、比較的小さな当接圧で穴が開いたり、破れたりする部位も存在するからである。このため、心臓モデルHについては、カテーテルCの先端を当接させた際の当接圧に対する挙動が各部で異なったものになっていることが望まれる。
【0025】
本実施形態に係る心臓モデルHは、上記の要望を充足するものであり、カテーテルCを心臓内部に挿入して行う実際の手術(カテーテル・アブレーション)又は検査(電気生理学的カテーテル検査)をシミュレーションするために用いるトレーニング用モデルとして好適なものとなっている。
【0026】
具体的に説明すると、本実施形態に係る心臓モデルHは、図3〜図8に示す外形形状を有し、心臓モデルHには、実際の心臓の左心室に相当する領域3、右心室に相当する領域4、左心房に相当する領域5、右心房に相当する領域6が備えられている。さらに、心臓モデルHには、心臓に接続された血管に相当する部位として、下大静脈に相当する部位21、上大静脈に相当する部位22、大動脈に相当する部位23、肺動脈に相当する部位24、肺静脈に相当する部位25が備わっている。
【0027】
また、本実施形態に係る心臓モデルHは、後述する製造方法によって成形される樹脂成形品である。なお、本実施形態に係る心臓モデルHは、半透明の中空体をなしているが、例えば、心臓モデルH内に挿入されたカテーテルCの先端位置を外部から視認することが可能である。実際の手術や検査では、カテーテルCの先端位置を外部から確認することはできないが、手術や検査のトレーニングにおいては、本実施形態のように外部からカテーテルCの先端位置を視認でき、カテーテルCの操作に伴ってカテーテルCの先端がどのように移動するのかを把握できることが好適である。
【0028】
そして、本実施形態に係る心臓モデルHは、図9に示すように、心臓モデル本体HMと、心臓モデル本体HMに取り付けられた複数の領域と、から構成されており、更に、複数の領域の中には、カテーテルCが内側表面に当接した際の当接圧に対する強度が互いに異なる領域が存在する。具体的に説明すると、本実施形態に係る心臓モデルHは、互いに異なる位置で心臓モデル本体HMに取り付けられる第1領域R1、第2領域R2、及び、第3領域R3を備えている。
【0029】
ここで、心臓モデル本体HMとは、実際の心臓の心室中隔及び心房中隔に相当する領域を少なくとも含み、心臓モデルHにおいて、後述する第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3を取り付けるための基部をなす部分である。換言すると、心臓モデル本体HMは、心臓モデルHを構成する部分のうち、第1領域R1、第2領域R2、及び、第3領域R3を除く部分である。
【0030】
また、本実施形態において、心臓モデル本体HMと第1領域R1は、後述するように、一体成形され、一体成形された心臓モデル本体HMと第1領域R1は、心臓モデルHにおいてフレームとして機能する。そして、残りの領域(すなわち、第2領域R2及び第3領域R3)がフレームとしての心臓モデル本体HMと第1領域R1に対して組み付けられることにより、心臓モデルHが完成する。
【0031】
上記の3つの領域R1、R2、R3については、互いに、カテーテルCが内側表面に当接した際の当接圧に対する強度が異なっている。具体的に説明すると、第1領域R1は、心室中隔及び心房中隔を除く実際の心臓の所定部位に相当する領域となっている一方、第2領域R2は、実際の心臓のうち、上記当接圧に対する応答性が第1領域R1の対応部位(すなわち、実際の心臓の所定部位)よりも高い部位、に相当する領域となっている。そして、第2領域R2の、上記当接圧に対する強度は、第1領域R1の強度より小さくなっている。
【0032】
また、第3領域R3は、実際の心臓のうち、上記当接圧に対する応答性が第1領域R1の対応部位(すなわち、実際の心臓の所定部位)より高く、かつ、第2領域R2の対応部位より低い部位に相当する領域である。そして、第3領域R3の強度は、第1領域R1の強度よりも小さく、かつ、第2領域R2の強度よりも大きくなっている。
【0033】
ここで、当接圧に対する応答性とは、当接圧を受けた際の反応度合いを示す概念であり、応答性が高いほど、同一の当接圧に対して、より大きな反応を示すことを意味し、換言すると、当接圧を受けた際に起きる物理学的又は生理学的変化の度合いが大きいことを意味する。
一方、強度とは、機械的強度を意味し、より詳しくは、カテーテルCが内側表面に当接して当接圧が作用した際の変形挙動を示す指標である。本実施形態では強度の一例として、当接圧に対する変形し難さ、換言すると、硬さを用いている。したがって、本実施形態に係る心臓モデルHでは、第2領域R2の硬さが、第1領域R1の硬さよりも小さくなっている。すなわち、第2領域R2は、第1領域R1よりも伸縮性に富む領域である。また、第3領域R3の硬さは、第1領域R1の硬さよりも小さく、かつ、第2領域R2の硬さよりも大きくなっている。
【0034】
以上のような各領域間の強度の違いは、各領域を成形するのに使用される樹脂材料の種類の違いに起因する。例えば、第1領域R1は、柔軟性を有する熱可塑性樹脂、具体的には硬さの高いシリコンゴムにより成形される。第2領域R2は、ゲル材料により成形され、具体的には、伸縮性が高く破れ難い材料により成形される。第3領域R3は、柔軟性を有する熱可塑性樹脂、具体的には、硬さの低いシリコンゴムにより成形される。
【0035】
ここで、上述の各領域及び心臓モデル本体HMと実際の心臓との対応関係について説明すると、図9に示すように、本実施形態において、心臓モデル本体HMは、実際の心臓の心室中隔に相当する領域1と、心房中隔に相当する領域2と、により構成されている。第1領域R1は、実際の心臓のうち、左心室に相当する領域3、及び、右心室に相当する領域4である。また、第2領域R2は、実際の心臓のうち、右心房に相当する領域6であり、第3領域R3は、実際の心臓のうち、左心房に相当する領域5である。
【0036】
次に、各領域R1、R2、R3の硬さに関して具体的に説明する。なお、以下では、硬さを示す一指標として、カテーテルCの先端を当接させたことにより孔が開く時点での当接圧、すなわち、パーフォレーション・フォース(以下、PF)を例に挙げて説明する。
【0037】
第1領域R1に該当する領域、すなわち、実際の心臓のうち、左心室に相当する領域3、及び、右心室に相当する領域4については、PFが14268g/cm(カテーテルC先端の直径を2.5mmとした場合の負荷に換算すると約700g)である。上記の値は、健常な心臓を摘出して測定した心室壁(左心室壁)のPFの上限値に相当する。
【0038】
一方、第2領域R2に該当する領域、すなわち、実際の心臓のうち、右心房に相当する領域6のPFは、8153g/cm(カテーテルC先端の直径を2.5mmとした場合の負荷に換算すると約400g)である。上記の値は、健常な心臓を摘出して測定した心房壁(左心房壁と右心房壁)の平均値に相当する。また、第3領域R3に該当する領域、すなわち、実際の心臓のうち、左心房に相当する領域5のPFは、12229g/cm(カテーテルC先端の直径を2.5mmとした場合の負荷に換算すると約600g)であり、かかる値は、健常な心臓を摘出して測定した心房壁(左心房壁)のPFの上限値に相当する。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る心臓モデルHは、互いに硬さの異なる3つの領域R1、R2、R3を備える。これにより、心臓モデルH内部に挿入されたカテーテルCの先端を内側表面に当接させた際の当接圧に対する挙動が、各領域間で異なっており、カテーテルCを心臓内部に挿入して行う実際の手術又は検査を良好にシミュレーションすることが可能になる。特に、本実施形態では、実際の心臓のうち、当接圧に対する応答性がより高い部位を第2領域R2に設定して、第2領域R2の強度を第1領域よりも小さくすることにより、実際の心臓のうち、第2領域R2が対応する部位の内側表面にカテーテルCを当接させた際の応答を良好にシミュレーションすることが可能である。
【0040】
つまり、第1領域R1と第2領域R2との強度(本実施形態では、硬さ)の差により、カテーテルCを当接させた際の当接圧に対する応答性の差を的確に表現することが可能になる。この結果、心臓各部位における、カテーテルCが内側表面に当接した際の当接圧に対する応答性の違いを良好に再現しており、カテーテルCを心臓内部に挿入して行う実際の手術又は検査を良好にシミュレーションすることが可能になり、カテーテルCの操作時における力の入れ具合に対する応答性を体感することが可能になる。
【0041】
より分かり易く説明すると、心臓モデルH内部に挿入されたカテーテルCの先端を、第1領域R1に該当する領域、すなわち、左心室に相当する領域3や右心室に相当する領域4の内側表面を当接させた場合、比較的大きな当接圧が作用しても(詳しくは、上述したPFを下廻る限りにおいて)、当該領域は変形せず、かつ、破れない(孔が開かない)。これは、実際の心臓において、心室壁のPFが比較的大きいことを反映している。
【0042】
一方、第2領域R2に相当する領域、すなわち、右心房に相当する領域6の内側表面にカテーテルCの先端を当接させた場合、当該領域は、弾性変形し、具体的には破れずに伸張する。これは、実際の心臓において、心室壁のPFに比して、心房壁のPF、特に右心房壁のPFが小さいことを反映している。
上記の如く心臓モデルHが構成されていることにより、カテーテルCの操作者は、手術又は検査のトレーニングにおいて、例えば、右心房に相当する領域6が異常に変形していることを視認した場合、当該右心房に相当する領域6の内側表面に過大な当接圧が作用していると気付くことができ、かかる体験を通じて、適切なカテーテル操作を習得できるようになる。
【0043】
さらに、カテーテルCを内側表面に当接させた際の当接圧に対する応答性の違いを反映して、第1領域R1及び第2領域R2に加え、第3領域R3が追加され、前述したように、第3領域の強度は、第1領域の強度よりも小さく、かつ、第2領域の強度よりも大きくなっている。具体的に説明すると、第3領域R3として設定された領域、すなわち、左心房に相当する領域5については、その内側表面にカテーテルCの先端を当接させた際に過度に大きな当接圧が作用すると(詳しくは、上述したPF以上の当接圧が作用すると)、当該領域が破れる(孔が開く)ようになっている。かかる第3領域R3が備わっていることにより、手術又は検査のトレーニングにおいて、カテーテルCの当接部位に応じた当接圧の調整をより細やかに行う必要が生じる。すなわち、トレーニングの場面にて、実際の手術又は検査をより良好にシミュレーションすることが可能になる。
【0044】
なお、上述した各領域R1、R2、R3の硬さ(具体的には、PF)は、あくまでも一例に過ぎず、上記の値に限定されるものではなく、第1領域R1、第3領域R3、第2領域R2の順で小さくなっている限り、他の値であってもよい。例えば、上記の値は、健常な心臓を摘出して測定した時の値であるが、拍動状態にある健常な心臓について測定したPFの平均値や最小値、あるいは、カテーテル・アブレーション施術後の心臓について測定したPFを採用することとしてもよい。参考値として、健常な拍動状態の心臓の心房壁については、PFの平均値が4693g/cm(カテーテルC先端の直径を2.33mmとした場合の負荷に換算すると約200g)となり、PFの最小値が2346g/cm(カテーテルC先端の直径を2.33mmとした場合の負荷に換算すると約100g)となる。カテーテル・アブレーション施術後のPFは、健常時の値よりも23%ほど減少するため、1877g/cm(カテーテルC先端の直径を2.33mmとした場合の負荷に換算すると約80g)となる。
【0045】
次に、本実施形態に係る心臓モデルHの組立てに関して説明する。本実施形態に係る心臓モデルHでは、第2領域R2及び第3領域R3が、一体成形された心臓モデル本体HM及び第1領域R1によって構成されるフレーム(以下、単にフレームともいう)に対して着脱自在に取り付けられている。第2領域R2及び第3領域R3の各々が、一体化した心臓モデル本体HM及び第1領域R1に対して着脱自在とする構成について、図10を参照しながら説明する。
【0046】
第2領域R2及び第3領域R3の各々は、図10に図示したような、本体部7(具体的には、右心房や左心房をなす部分)の外縁から突出したピン8を有している。このピン8は、係合部に相当し、心臓モデル本体HMに対する第2領域R2及び第3領域R3の着脱方向(図10中、矢印にて示す方向)に沿って延出し、図10に示すように、先端側に位置する大径部8aと、大径部8aの後側で大径部8aと隣接し、大径部8aよりも僅かに外径が小さい小径部8bとを有する。なお、本実施形態において、第2領域R2及び第3領域R3の各々には、ピン8が、本体部7の外縁に沿って適宜な間隔を空けながら複数設けられている。
【0047】
一方、フレーム側には、ピン8を嵌合させる嵌合孔9が形成されている。この嵌合孔9は、被係合部に相当し、開口9aと、底部9bと、開口9a及び底部9bの間に存する連絡部9cとを有する。底部9bについては、その内径がピン8の大径部8aの外径に対応しており、連絡部9cについては、その内径がピン8の小径部8bの外径に対応している。
【0048】
上記の形状を有する嵌合孔9は、フレームのうち、第2領域R2及び第3領域R3の各々が取り付けられる取付面(すなわち、心臓モデル本体HM及び第1領域R1の、第2領域R2及び第3領域R3の各々との接合面)に形成されている。なお、本実施形態において、上記の取付面には、第2領域R2及び第3領域R3の各々に形成されたピン8と同数の嵌合孔9が、それぞれ、各ピン8と対応する位置に形成されている。
【0049】
以上までに説明してきた構成において、第2領域R2及び第3領域R3の各々は、着脱方向に沿ってフレームに近付けて、各ピン8を対応する嵌合孔9に嵌合させることにより、上記のフレーム、すなわち、一体化した心臓モデル本体HM及び第1領域R1に対して取り付けられることになる。ここで、各ピン8が対応する嵌合孔9に嵌合することは、各ピン8が対応する嵌合孔9に係合していることを意味する。かかる係合状態は、第2領域R2及び第3領域R3の各々についてフレームから取り外す向きに所定の大きさ以上の力が作用しない限り、維持される。
【0050】
より具体的に説明すると、第2領域R2及び第3領域R3の各々についてフレームから取り外す向きに多少の力が作用したとしても、ピン8の大径部8aが、嵌合孔9の底部9bと連絡部9cとの境界位置に形成された段差に係止されるので、ピン8と嵌合孔9との係合状態が維持される(つまり、第2領域R2及び第3領域R3の各々がフレームから取り外れることはない)。一方、第2領域R2及び第3領域R3の各々に対して、フレームから取り外す向きに、ピン8の大径部8aに対する係止力を上回る力が作用した場合、ピン8と嵌合孔9との係合状態が解除されて、第2領域R2及び第3領域R3の各々がフレームから取り外れるようになる。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る心臓モデルHでは、第2領域R2及び第3領域R3の各々が、一体化した心臓モデル本体HM及び第1領域R1に対して着脱自在になっているので、例えば、心臓モデルHの使用により第2領域R2が経年劣化したり損傷した場合、第2領域R2は、新たな第2領域R2に交換可能となっている。また、第3領域R3についても、第3領域R3に孔が開いたり損傷した場合、第3領域R3は、新たな第3領域R3に交換可能となっている。このように、劣化した第2領域R2を新たな第2領域R2に交換し、あるいは、損傷した第3領域R3を新たな第3領域R3に交換することにより、再利用可能な心臓モデルHが実現されるようになる。
【0052】
また、第2領域R2及び第3領域R3の各々が、一体化した心臓モデル本体HM及び第1領域R1に対して着脱自在になっている構成を利用して、例えば、トレーニングとして想定するケースに応じて、第2領域R2及び第3領域R3の特性を切り替えることができる。より分かりやすく説明すると、健常な心臓を手術するためのトレーニングと、疾患を持つ心臓を手術するためのトレーニングとで、強度の異なる第2領域R2及び第3領域R3を付け替えることが可能になる。その他、子供の心臓と大人の心臓、男性の心臓と女性の心臓、研修生が手術のトレーニングのために使用する場合と医師試験のために使用する場合など、心臓モデルHを利用するシチュエーションに応じて、強度の異なる第2領域R2及び第3領域R3を付け替えてもよい。
【0053】
次に、本実施形態に係る心臓モデルHの製造方法について、図11〜図13を参照しながら説明する。
図11に示すように、心臓モデルHを製造するプロセスは、人体に対してCTスキャン等の断層撮影を行うことによって、心臓の二次元断層像データ(以下、CTデータ)を取得するステップから開始される(S001)。CTデータを画像処理によって2次元データから3次元のデータへと再構築することにより、心臓の外側表面と内側表面を特定することが可能となる。ここで、心臓の内側表面よりも内側に位置する空間は、心臓各部(心室、心房、大動脈、大静脈、肺動脈、肺静脈等)を規定する内部空間となり、内側表面と外側表面との間は、心筋が占める空間であり、心臓の形状を特定する部分に相当する。
【0054】
CTデータの取得後、当該CTデータに基づき、図12に図示された心臓モデル本体HM及び第1領域R1の外形体11及び内形体12を製造する(S002)。ここで、前述したように、心臓モデル本体HMは、心室中隔及び心房中隔に相当し、第1領域R1は、左心室及び右心室に相当する。なお、外形体11とは、心臓の外表面によって外形が規定された中実体であり、内形体12は、心臓の内表面によって外形が規定された中実体である。この外形体11、及び、内形体12は、別々に製造され、具体的には、取得したCTデータに基づいて、公知の光造形法を用いて製造される。
【0055】
外形体11及び内形体12の取得後には、外形体11を用いて基本型13を作成する(S003)。基本型13は、心臓モデル本体HM及び第1領域R1を成形する際の外枠(割型)をなすものであり、型枠Fの内部に外形体11を入れた状態で型枠F内にゴムを充填することによって作成される。つまり、基本型13は、外形体11の外形と同一形状の空洞13aを有する枠状体である。
【0056】
なお、後述するように、上記の空洞13a内には、中子15を所定の位置に正確に位置決めして当該位置にセットすることから、外形体11には、予め、中子15をセットする際に利用される位置決め用の突起が形成されている方が望ましい。かかる突起の形成により、外形体11から作成される基本型13には、その突起に対応する位置に、中子15を位置決めする位置決め部(不図示)が形成されて、かかる位置決め部を利用して、中子15を正確に空洞13a内にセットすることが可能となる。上述した外形体11に予め形成される突起としては、心臓の内側表面の一部が突出した部位に対応して形成された部位、例えば、外形体11のうち、動脈や静脈との接続部に相当する部位を利用することが望ましい。
【0057】
次に、内形体12を用いて中子型14を作成する(S004)。中子型14は、内形体12と同一の外形形状を有する中子15を成形する際の外枠(割型)をなすものであり、型枠F内に内形体12を入れた状態でゴムを充填することによって作成される。つまり、中子型14は、内形体12の外形と同一形状の空洞14aを有する枠状体である。
【0058】
中子型14の作成後には、中子型14の空洞14a内に低融点金属を注入することで中子15を作成する(S005)。その後、作成した中子15を基本型13の空洞13a内の所定位置にセットする(S006)。この際、上述したように、基本型13の空洞13a内には、予め、中子15を位置決めする位置決め部が形成されており、かかる位置決め部を利用して、中子15を正確に位置決めすることが可能である。
【0059】
基本型13の空洞13a内に中子15をセットしてから、当該空洞13aの内表面と中子15の外表面との間の隙間(ゲート)に、所定の樹脂材料を注入する(S007)。なお、心臓モデル本体HM及び第1領域R1を成形する場合には、前述したように、硬さの高い熱可塑性樹脂(シリコンゴム)を注入する。これにより、中子15を内包し、基本型13の空洞13aと同様の外形形状を有する樹脂成形品16が形成される。
【0060】
その後、上記の樹脂成形品16を基本型13から取り出し、当該樹脂成形品16に内包された中子15を構成する低融点金属を溶かす(S008)。これにより、樹脂成形品16は、所定の肉厚を有する中空体、すなわち、心臓モデル本体HM及び第1領域R1が形成されることになる。以上までの一連の工程により、心臓モデル本体HM及び第1領域R1が一体成形される。
【0061】
なお、心臓モデル本体HM及び第1領域R1を成形する場合、前述したように、心臓モデル本体HM及び第1領域R1のうち、第2領域R2や第3領域R3の接合面に、ピン8を嵌合させるための嵌合孔9を形成する必要がある。このため、基本型13の空洞13a内に熱可塑性樹脂を注入するにあたり、中子15のほか、上記の嵌合孔9を形成するための孔形成体17(図12参照)を低融点金属で作成しておき、基本型13の空洞13aの所定位置(嵌合孔9の形成位置に対応する位置)にセットしておく。その後、樹脂成形品16を基本型13から取り出して、樹脂成形品16に内包された中子15を構成する低融点金属、及び、孔形成体17を構成する低融点金属を溶かすことにより、嵌合孔9を所定位置に備えた心臓モデル本体HM及び第1領域R1が成形されるようになる。
【0062】
一方、第2領域R2及び第3領域R3についても、図13に示すように、以上までに説明してきた手順S001〜S008と略同様の手順によって成形される。ここで、第2領域R2及び第3領域R3を成形する場合、本体部7から突出する上述のピン8を形成する必要がある。このため、基本型13を作成する際には、外形体11とともに、上記のピン8と同一の外形形状を有する円柱部材18(図13参照)を型枠F内に入れた状態で型枠F内にゴムを充填する。つまり、第2領域R2及び第3領域R3の各々を成形する場合において、基本型13は、外形体11の外形と同一形状の空洞13aと、ピン8の外形と同一形状のピン形成孔13bと、を有するようになる。かかる基本型13に樹脂材料を注入することにより、ピン8を所定位置に備えた第2領域R2及び第3領域R3が成形されるようになる。
【0063】
以上のような手順により、一体化された心臓モデル本体HM及び第1領域R1(すなわち、フレーム)と、断片部材として形成された第2領域R2及び第3領域R3とが、それぞれ成形される。そして、第2領域R2及び第3領域R3に備えられたピン8の各々を、フレームに形成された嵌合孔9に嵌合させることにより、フレームに対して、第2領域R2及び第3領域R3が組み付けられる。かかる組付けが完了した時点で、本実施形態に係る心臓モデルHが完成する。
【0064】
なお、交換用の第2領域R2や第3領域R3(すなわち、新たな第2領域R2及び第3領域R3)についても、上述した手順S001〜S008と同様の手順によって形成されるものである。
【0065】
<<第1変形例に係る心臓モデルHについて>>
以上までに説明してきた実施形態(以下、本件例)では、心臓モデル本体HMと第1領域R1とが一体化しており、一体化した心臓モデル本体HM及び第1領域R1に対して、第2領域R2及び第3領域R3が着脱自在に取り付けられていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、第1領域R1についても、心臓モデル本体HMに対して着脱自在に取り付けられている構成も考えられる。
さらに、本件例では、各領域R1、R2、R3の強度を硬さ(破れ易さ、伸び易さ)で規定することとしたが、これに限定されるものではなく、硬さ以外の他の指標で規定することも考えられる。
【0066】
以下では、心臓モデルHの第1変形例として、第1領域R1が心臓モデル本体HMに対して着脱自在に取り付けられている構成について説明する。また、以下では、第1領域R1及び第2領域R2のみを備える心臓モデルHを具体例に挙げて説明するが、本件例と共通する構成については説明を省略することとする。
【0067】
第1変形例に係る心臓モデルHにおいて、第1領域R1及び第2領域R2は、それぞれ、心臓モデル本体HMに対して着脱自在に取り付けられている。すなわち、第1変形例では、本件例と異なり、第1領域R1は、心臓モデル本体HMとは別体をなしており、心臓モデル本体HMと第1領域R1とは、それぞれ、個別の成形処理にて成形される。なお、第1変形例に係る心臓モデルHにおいて、第1領域R1は、実際の心臓のうち、左心室に相当する領域3、及び、右心室に相当する領域4である。また、第2領域R2は、実際の心臓のうち、左心房に相当する領域5、及び、右心房に相当する領域6である。
【0068】
そして、心臓モデル本体HMに対して第1領域R1及び第2領域R2を着脱自在に取り付けられるように、第1領域R1及び第2領域R2側には、前述のピン8が形成されており、心臓モデル本体HM側には、前述の嵌合孔9が形成されている。
【0069】
ここで、第1領域R1に備えられたピン8は、第1係合部に相当し、心臓モデル本体HMに設けられた複数の嵌合孔9のうち、第1領域R1に備えられたピン8が嵌合する嵌合孔9(すなわち、第1係合部に相当するピン8に対応した嵌合孔9)は、第1被係合部に相当する。そして、第1領域R1は、第1領域R1に備えられたピン8が、当該ピン8に対応する嵌合孔9に嵌合して係合することにより、心臓モデル本体HMに取り付けられる。
【0070】
同様に、第2領域R2に備えられたピン8は、第2係合部に相当し、心臓モデル本体HMに設けられた複数の嵌合孔9のうち、第2領域R2に備えられたピン8が嵌合する嵌合孔9(すなわち、第2係合部に相当するピン8に対応した嵌合孔9)は、第2被係合部に相当する。そして、第2領域R2は、第2領域R2に備えられたピン8が、当該ピン8に対応する嵌合孔9に嵌合して係合することにより、心臓モデル本体HMに取り付けられる。
【0071】
一方、カテーテルCを用いた手術又は検査のトレーニングにおいて、カテーテルC先端を心臓モデルHの内側表面に当接させる際に、その当接箇所が第1領域R1の内側表面である場合、第1領域R1に備えられたピン8と嵌合孔9との係合状態が解除される大きさの当接圧(換言すると、第1領域R1に備えられたピン8を、当該ピン8が嵌合している嵌合孔9から抜出する大きさの当接圧)が作用すると、第1領域R1が心臓モデル本体HMから外れるようになる。
【0072】
同様に、カテーテルC先端の当接箇所が第2領域R2の内側表面である場合、第2領域R2に備えられたピン8と嵌合孔9との係合状態が解除される大きさの当接圧が作用すると、第2領域R2が心臓モデル本体HMから外れるようになる。
【0073】
そして、第1変形例では、第2領域R2に備えられたピン8と嵌合孔9との係合状態を解除させる当接圧の大きさが、第1領域R1に備えられたピン8と嵌合孔9との係合状態を解除させる当接圧の大きさよりも小さくなっている。すなわち、第1変形例においても、第1領域R1及び第2領域R2については、互いに、カテーテルCが内側表面に当接した際の当接圧に対する強度が異なっており、第2領域R2の強度が、第1領域R1の強度よりも小さくなっている。
【0074】
また、第1変形例における強度とは、ピン8と嵌合孔9との係合状態を解除させるのに要する当接圧の大きさであり、上述したように、第2領域R2に備えられたピン8と嵌合孔9との係合状態を解除させる当接圧の大きさが、第1領域R1に備えられたピン8と嵌合孔9との係合状態を解除させる当接圧の大きさよりも小さくなっている。この結果、各係合部と被係合部との係合力(すなわち、係合部と被係合部との係合状態を解除させる当接圧の大きさ)を第1領域R1及び第2領域R2の間で異ならせることにより、カテーテルCを内側表面に当接させた際の当接圧に対する応答性の差が的確に表現された心臓モデルHとなる。
【0075】
なお、ピン8と嵌合孔9との係合状態を解除させるのに要する当接圧の大きさについては、ピン8や嵌合孔9の形状等を変更することにより調整することができ、例えば、本件例にて述べた硬さ(具体的には、PF)と同じ値にて設定することとしてもよい。また、第1変形例では、係合部及び被係合部の一例としてピン8及び嵌合孔9を挙げたが、これに限定されるものではなく、第1領域R1又は第2領域R2を心臓モデル本体HMに組み付けるために互いに係合し合うものである限り、係合部及び被係合部として制限なく利用可能である。
【0076】
<<第2変形例に係る心臓モデルHについて>>
本件例や前述の第1変形例では、心臓モデル本体HMに取り付けられる複数の領域(すなわち、第1領域R1〜第3領域R3)が、実際の心臓のうち、心室や心房に相当する領域であることとした。すなわち、以上までに説明してきた実施形態では、実際の心臓において心筋や中隔にて区画された心房・心室に相当する領域が、心臓モデル本体HMに取り付けられることとした。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、心臓モデル本体HMに取り付けられる第1領域R1及び第2領域R2が、それぞれ、心房や心室中の所定部位(関心部位)に相当する領域であることとしてもよい。
【0077】
上記の内容の具体例(以下、第2変形例)として、図14に示す心臓モデルHについて説明する。
【0078】
第2変形例に係る心臓モデルHにおいて、心臓モデル本体HMは、実際の心臓のうち、心室中隔と心房中隔と左心室と右心室とに相当する領域である。一方、第2領域は、実際の心臓のうち、左心房における肺静脈との接合部位に相当する領域5b、及び、左心房の後側の心筋壁に相当する領域5cであり、第1領域は、実際の心臓のうち、左心房中、肺静脈との接合部位及び後側の心筋壁以外の部位(以下、左心房本体)に相当する領域5aである。そして、左心房における肺静脈との接合部位に相当する領域5b、及び、左心房の後側の心筋壁に相当する領域5cは、左心房本体に相当する領域5aに対して着脱自在に取り付けられている。
【0079】
ここで、左心房のうち、肺静脈との接合部位や後側の心筋壁は、上述の関心部位に該当し、具体的には、実際の手術において焼灼される部位に相当し、カテーテルC先端を当接させる操作において一段の慎重さを要する部位である。このため、上記の構成において、上記の関心部位に相当する領域、すなわち、左心房における肺静脈との接合部位に相当する領域5b、及び、左心房の後側の心筋壁に相当する領域5cについては、カテーテルCの先端を当接させた際の当接圧に対する応答性を高めるべく、当該関心部位に相当する領域を、当接圧に対する強度がより小さい第2領域R2とすることが考えられる。以上のように、心臓のうち、手術や検査において特に重要視される部位、特に、内側表面にカテーテルCを当接させる際に細心の注意を要する部位(関心部位)を第2領域R2として設定することにより、手術又は検査のトレーニング用の心臓モデルとして、より好適な心臓モデルHが実現されることになる。
【0080】
そして、関心部位に相当する領域を第2領域R2として設定した場合には、当該第2領域R2の強度としてのPFが、例えば、1408g/cm(カテーテルC先端の直径を2.33mmとした場合の負荷に換算すると約60g)であると好適である。かかる値は、不整脈治療としてカテーテル・アブレーションを行う場合の一般的な当接圧に相当する。また、上記のPFについては、235〜704g/cm(カテーテルC先端の直径を2.33mmとした場合の負荷に換算すると約10〜30g)であると、より一層好適である。かかる値は、カテーテル・アブレーションを行う際にポップ(カテーテルC先端から散水して先端の電極を冷却している間に心筋深部の温度が突然上昇して起こる水蒸気爆発現象)を回避して安全にカテーテル・アブレーションを行うことが可能な当接圧に相当する。
【0081】
<<第3変形例に係る心臓モデルHについて>>
上述の第2変形例では、左心房のうち、肺静脈との接合部位や後側の心筋壁を関心部位としたが、これに限定されるものではなく、他の部位を関心部位とすることとしてもよい。例えば、図15に示すように、右心房と左心房の中隔(図15中、ハッチングが掛かった部分であり、以下、心房中隔とも言う)に形成される卵円窩に相当する領域26を関心部位とする構成(以下、第3変形例)も考えられる。
【0082】
卵円窩は、実際の手術においてブロッケンブロー手法(カテーテルC先端に装着した針により孔を穿つ手法)で孔が形成される部位である。このような事情を考慮し、第3変形例に係る心臓モデルHでは、卵円窩に相当する領域26を、当接圧に対する強度がより小さい第2領域R2とし、心房中隔中、卵円窩以外の部位に相当する領域を第1領域R1とし、それ以外の領域を心臓モデル本体HMとしている。なお、第3変形例において、卵円窩に相当する領域26は、所定の穿刺力(ブロッケンブロー用の針を用いて孔を開ける際に要する力)にて孔が開く材質からなり、具体的には当該穿刺力が約2〜3Nとなるように設定されているとよい。
【0083】
心臓モデルHを用いた手術トレーニングにおいて、卵円窩に相当する領域26には実際の手術と同様に孔が形成される。このため、卵円窩に相当する領域26については、交換可能とし、孔を開けて破れた場合には剥がして新品に張り替える等して容易に交換できるものが好適である。
【0084】
<<第4変形例に係る心臓モデルHについて>>
以上までに説明してきた実施形態では、カテーテルCの先端を内側表面に当接した際の当接圧に対する強度として、当接圧に対する変形し難さ(硬さ)や、係合部と被係合部との係合状態(上記の実施形態ではピン8と嵌合孔9との係合状態)を解除させる当接圧の大きさとした。ただし、これに限定されるものではなく、当接圧に対する強度として、他の指標、例えば、降伏点や弾性率、塑性、破壊エネルギー、引張強さを用いることとしてもよい。
【0085】
当接圧に対する強度として硬さや係合状態以外の指標を用いる一例(以下、第4変形例)としては、左心房に相当する領域5が高弾性率の材質にて形成されている心臓モデルHが挙げられる。第4変形例に係る心臓モデルHでは、左心房に相当する領域5に当接圧が作用すると、破断せずに伸長する。すなわち、第4変形例では、当接圧に対する強度として弾性率、換言すると、引張破断強度を用いており、左心房に相当する領域5が他の領域よりも高弾性となるように心臓モデルHを構成している。つまり、第4変形例では、左心房に相当する領域5が第2領域R2に該当し、それ以外の領域(右心房、左心室及び右心室に相当する領域)が第1領域R1に該当する。
【0086】
以上の構成を有する心臓モデルHを用いてトレーニングを実践すると、例えば、左心房に相当する領域5の内側表面にカテーテルCの先端を当接させた際に、その当接圧が大きいと、左心房に相当する領域5が外側に向かって膨出するようになる。当該変形を看視することで、カテーテルCの操作者は、手術又は検査のトレーニングにおいて、左心房に相当する領域5の内側表面に過大な当接圧が作用していると気付くことができ、かかる体験を通じて、適切なカテーテル操作を習得できるようになる。
【0087】
上記の効果を得る上で、左心房に相当する領域5の引張破断強度については、実際の心臓における心筋の引張破断強度に基づいて設計するとよい。具体的に説明すると、20歳代のヒトの心臓の場合、心筋の引張破断強度は、心筋繊維に沿う方向では14.1g/mm、心筋繊維と直交する方向では上記値の1/3に相当する大きさとなり、最大伸び率は69.2%となる。かかるデータに基づき、左心房に相当する領域5については、先端の直径が2.33mmとなったカテーテルCの先端を20〜60gの負荷で内側表面に押し当てたときに膨出(変形)したことが視認できる程度の引張破断強度に設定すると好適である。
【0088】
また、ヒトの心臓における心筋の引張破断強度については、年齢に応じて変化し、20歳代のヒトの値を基準(1.0)としたときに、50歳代のヒトでは約0.72、60〜70歳代のヒトでは約0.67となる。このような年齢と心筋の引張破断強度との相関関係を考慮し、手術又は検査のトレーニングにおいて、当該手術又は検査を受ける患者の年齢を想定して、その年齢に応じて、左心房に相当する領域5の引張破断強度を設計すればさらに好適である。
【0089】
なお、強度を表現する方法としては、上述した方法以外に、当接圧が所定値まで上昇した際に特性が急激に変化する材質(例えば、当接圧に依存して伸縮性が変化する場合に、ある値の当接圧からは異常に伸びる材質)を用いることとしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 心室中隔に相当する領域、2 心房中隔に相当する領域、
3 左心室に相当する領域、4 右心室に相当する領域、
5 左心房に相当する領域、5a 左心房本体に相当する領域、
5b 肺静脈との接合部位に相当する領域、
5c 後側の心筋壁に相当する領域、6 右心房に相当する領域、
7 本体部、8 ピン、8a 大径部、8b 小径部、
9 嵌合孔、9a 開口、9b 底部、9c 連絡部、
11 外形体、12 内形体、13 基本型、13a 空洞、
13b ピン形成孔、14 中子型、14a 空洞、
15 中子、16 樹脂成形品、17 孔形成体、18 円柱部材、
21 下大静脈に相当する部位、22 上大静脈に相当する部位、
23 大動脈に相当する部位、24 肺動脈に相当する部位、
25 肺静脈に相当する部位、26 卵円窩に相当する領域、
C カテーテル、F 型枠、
H 心臓モデル、HM 心臓モデル本体、
J 人体モデル、JH 人体モデル本体、
R1 第1領域、R2 第2領域、R3 第3領域、T ゴムチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術又は検査のトレーニングのために用いられ、内部に管状医療器具を挿入することが可能な心臓モデルであって、
実際の心臓の心室中隔及び心房中隔に相当する領域を少なくとも含む心臓モデル本体と、
該心臓モデル本体に取り付けられ、前記心室中隔及び前記心房中隔を除く前記実際の心臓の所定部位に相当する第1領域と、
該第1領域とは異なる位置で前記心臓モデル本体に取り付けられ、前記実際の心臓のうち、前記管状医療器具が内側表面に当接した際の当接圧に対する応答性が前記実際の心臓の所定部位よりも高い部位、に相当する第2領域と、を有し、
該第2領域の、前記当接圧に対する強度が、前記第1領域の前記強度より小さいことを特徴とする心臓モデル。
【請求項2】
前記第1領域は、前記心臓モデル本体と一体化しており、
前記第2領域は、一体化した前記心臓モデル本体及び前記第1領域に対して着脱自在に取り付けられており、新たな第2領域に交換可能であり、
前記第2領域の硬さは、前記第1領域の硬さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の心臓モデル。
【請求項3】
前記第1領域及び前記第2領域は、それぞれ、前記心臓モデル本体に対して着脱自在に取り付けられており、
前記第1領域は、前記心臓モデル本体に形成された第1被係合部に係合する第1係合部を備え、該第1係合部が前記第1被係合部に係合することにより、前記心臓モデル本体に取り付けられ、前記第1係合部と前記第1被係合部との係合状態が解除される大きさの前記当接圧が内側表面に作用することにより、前記心臓モデル本体から外れ、
前記第2領域は、前記心臓モデル本体に形成された第2被係合部と係合する第2係合部を備え、該第2係合部が前記第2被係合部に係合することにより、前記心臓モデル本体に取り付けられ、前記第2係合部と前記第2被係合部との係合状態が解除される大きさの前記当接圧が内側表面に作用することにより、前記心臓モデル本体から外れ、
前記第2係合部と前記第2被係合部との係合状態を解除させる前記当接圧の大きさは、前記第1係合部と前記第1被係合部との係合状態を解除させる前記当接圧の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の心臓モデル。
【請求項4】
前記実際の心臓のうち、前記当接圧に対する応答性が前記実際の心臓の所定部位より高く、かつ、前記第2領域の対応部位よりも低い部位に相当する第3領域を更に有し、
該第3領域の前記強度は、前記第1領域の前記強度よりも小さく、かつ、前記第2領域の前記強度よりも大きいことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の心臓モデル。
【請求項5】
前記第1領域は、前記実際の心臓のうち、左心室及び右心室に相当する領域であり、
前記第2領域は、前記実際の心臓のうち、右心房に相当する領域であり、
前記第3領域は、前記実際の心臓のうち、左心房に相当する領域であることを特徴とする請求項4に記載の心臓モデル。
【請求項6】
前記心臓モデル本体は、前記実際の心臓のうち、心室中隔と心房中隔と左心室と右心室とに相当する領域であり、
前記第2領域は、前記実際の心臓のうち、左心房における肺静脈との接合部位及び後側の心筋壁に相当する領域であり、
前記第1領域は、前記実際の心臓のうち、左心房中、前記肺静脈との接合部位及び前記後側の心筋壁以外の部位に相当する領域であることを特徴とする請求項2又は3に記載の心臓モデル。
【請求項7】
前記心臓モデル本体は、前記実際の心臓のうち、心室中隔と左心室と右心室とに相当する領域であり、
前記第2領域は、前記実際の心臓のうち、心房中隔における卵円窩に相当する領域であり、
前記第1領域は、前記実際の心臓のうち、心房中隔中、前記卵円窩以外の部位に相当する領域であることを特徴とする請求項2又は3に記載の心臓モデル。
【請求項8】
前記心臓モデルは、該心臓モデルに接続された、大腿静脈に相当する管状部材を有する人体モデル本体内に据え付けられて、該人体モデル本体と共に人体モデルをなし、
前記管状医療器具は、不整脈の起源部位を特定又は焼灼するための電極を有するカテーテルであり、
該カテーテルが前記管状部材を通じて前記心臓モデルの内部に挿入されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の心臓モデル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−29820(P2013−29820A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−131230(P2012−131230)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(511150193)株式会社アライ・メッドフォトン研究所 (1)
【出願人】(502359183)株式会社ジェイ・エム・シー (3)
【Fターム(参考)】