説明

心臓不整脈を治療するためのD−リボースの用途

1日あたりに5から15グラムの服用量で投与されるD-リボースは、心房細動を経験した人の心房細動の発生を軽減もしくは防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本願は、2007年1月23日出願の米国仮出願第60/881,940号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
心臓は、他の筋肉と同じように、神経線維による電気刺激によって収縮する。正常な電気伝導系は、心臓の洞房結節により生成される神経インパルスを心筋へ伝導させて刺激を与え、規則正しく収縮を行わせて、効果的な心拍をもたらす。神経インパルスが機能的に正常に継続する場合、心臓は律動的(eurythmic)であると言われる。神経インパルスが低下するか、もしくは不均一である場合、心臓は不整脈であると言われる。不整脈は発作性(即ち、急性で短期間)、または、慢性の可能性がある。
【0003】
期外収縮もしくは結滞は、一般に再発性の急性事象である。これは心臓病、弁欠損が原因となって引き起こされる可能性があり、または、カフェイン、ニコチンもしくはアルコールなどの要因によって誘導される可能性がある。期外収縮は「動悸」として感じられ得、心臓を乱しはするが、期外収縮自体は危険ではない。治療には、原因となる心臓の異常の治療と、要因の回避とが含まれる。
【0004】
頻脈は心拍数が増加することであり、ストレス、運動、強い情動、カフェインあるいはアンフェタミンのようなアドレナリン・レベルを上昇させるあらゆる要因によって引き起こされ得る。心拍数は、症状が治まるとともに正常値に戻る。不整脈の重症型は発作性頻脈である。発作性頻脈では、頻脈の要因が無くなった時にかまたは要因が沈静化した後で、心室が急速に長時間収縮する。この状態は治療が困難であり、また、心室は、血圧がゼロまで降下し血液の循環が停止する細動に陥る可能性があるため、死ぬこともある。生命を維持するためには除細動器を用いて直ちに治療介入する必要がある。
【0005】
心房細動はそれほど重篤事象ではない。細動において心房が痙攣すると、血液は心室に効率良く移動しない。細動の期間が短い場合には血液の循環は大抵は損なわれない。しかしながら、血液の流れが滞り鬱血した所では凝血する可能性があり、そして、この凝血塊が肺循環床、冠状動脈、脳、もしくは他の組織へと移動する可能性がある。約220万のアメリカ人が心房細動を患い、脳卒中の約15%がこの心房細動の症状と関係があると見積もられている。発作性心房細動は、発作時に漠然とした不快な症状を示すこともあれば、患者が全く症状に気づかないこともある。診断はEKGに心房の脱分極を表すP波が無いことからつけられる。
【0006】
心房細動は、心拍数を下げる薬剤、患者の血液凝固を防止するアスピリンやワルファリンを用いた血液の“抗凝固剤(thinning)”、βブロッカーを用いた心拍数の制御、カルシウム・チャネルブロッカー、もしくは、強心配糖体を用いて治療され得る。電気的除細動は、持続的な正常化の効果を与え得る。
【0007】
不整脈を抑えるのに有効な、副作用の無い簡便な治療の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
D-リボースは少量で心房細動を治療し、心房細動の発生をある程度、もしくは完全に抑えることが、本願の出願人により明らかとされている。1日あたり5グラムのD-リボースを、1回の服用で、もしくは2回の服用に分けて投与すると、心房細動の抑制に効果がある。より好ましくは、1日あたり10グラムのD-リボースを2回から4回の服用に分けて投与すると、心房細動の抑制に効果がある。より好ましくは、患者は1日あたり15グラムのD-リボースを、少なくとも3回の服用に分けて、経口摂取する。1回の服用では5グラム以下のD-リボースが、経口摂取される。
【0009】
D-リボースは、少量の水で摂取してもよいし、食品に振りかけてもよいし、もしくは、パウダーとして嚥下してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
骨格筋および心筋の機能を改善するためのD-リボースの用法が報告されている。米国特許第6,159943号は、D-リボースが、運動に起因する骨格筋の痙攣および苦痛を軽減し得ることを教示する。係属中の米国特許出願第10/692,388号は、少量のD-リボースが、鬱血性心不全を患う患者の心臓機能を改善し得ることを教示する。骨格筋および心筋の機能を改善のためのD-リボースの用法は、今では良く知られているが、本発明より以前に、神経機能へのD-リボースの効果については何も知られていなかった。理論に束縛されることを望むわけではないが、出願人は、以下の研究で発見したD-リボースの有益な効果が、神経インパルスの伝導の改善に起因する可能性があると推測する。
【0011】
心房細動と診断された8人の患者に、D-リボースが投与された。その結果を以下に表にした。
【0012】
【表1】

【0013】
上記のデータから、全ての患者から心房細動が直ちに完全に取り除かれるわけでは無いこと分かるだろう。患者5と患者6(2人とも、より好ましいおよび最も好ましい服用量でD-リボースを経口摂取した)では、直ちに完全に取り除かれた。患者3と患者4では、一部のみが軽減されたか(3)、もしくは、軽減が遅れた(4)。従って、患者が1日あたり10〜15グラムのD-リボースを経口摂取することが推奨される。
【0014】
この軽減は1年間以上の間持続した。従って、少量のD-リボース投与による副作用が無いので、長期間にわたりもしくは恒常的に使用し続けるべきであることが示唆される。1日あたりに15グラムがもっとも効果的であることが分かっているが、1回の服用量が8グラム(好ましくは5グラム)を超えなければ、1日に最大30グラムまで経口投与され得る。
他の研究(前述の出願’388(the ’388 application))でより詳細に論じられるように)で、約8グラムを超える服用では、多くの人が鼓腸と下痢を経験することが分かっている。大抵の人が、本願で教示された用法に有効である5グラムの服用には耐性を持ち、この服用量ではこれらの消化器症状を経験することが無い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心房細動を経験した人の心房細動を治療するためのD-リボースの使用。
【請求項2】
D-リボースが1日あたり5から30グラムの服用量で投与される、請求項1の方法。
【請求項3】
D-リボースが1日あたり10から15グラムの服用量で投与される、請求項1の方法。
【請求項4】
D-リボースが、1回の服用量が8グラム以下で投与される、請求項1の方法。
【請求項5】
D-リボースが長期間にわたりもしくは恒常的に投与される請求項1の方法。

【公表番号】特表2010−526884(P2010−526884A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517230(P2010−517230)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/000845
【国際公開番号】WO2008/091618
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(500579545)バイオエナジー インコーポレイティド (8)
【Fターム(参考)】