説明

心臓内ポンピング装置

本発明は、血液の吸引のために、末端部(13)が、吸引ヘッド(16)を装備したカニューレ(15)と接続しているポンプ(11)を備えた心臓内ポンピング装置に関する。ストレイナーは、心臓状態を悪化させることなく、心臓内におけるポンピング装置の位置を安定化し、カニューレ(15)の機械的に延長するための非吸引式延長部(20)を設けている。この延長部は、吸引ヘッド(16)が心臓壁に付着することを防止するためのスペーサの形式においても使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の自然なポンピング機能を補助するため、またはこれを連続したポンピング動作と交換するために、結合管を介して心臓内に完全に挿入するように適合された心臓内ポンピング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の身体内に皮下挿入される心臓内血液ポンプは、大幅に小型化されている。これらは円筒形駆動部と円筒形ポンプ部とを備えている。ポンプ部の吸入端部には、側方流入開口部をその末端部に備える吸引ヘッドを装備した可撓性カニューレが設けられている。このようなポンピング装置は、特許文献1に説明されている。末端方向への搬送を行う別のポンピング装置は、特許文献2に説明されている。このポンピング装置では、ポンピング部分が、心臓弁を通過するように適合された可撓性カニューレによって延長する。カテーテルはカニューレの末端部から突出し、また、このカテーテルには、ポンピング装置挿入時に身体内の血流によって伴出されるバルーンが取り付けられる。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0916359号明細書(Impella)
【特許文献2】国際公開第99/58170号パンフレット(Impella)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カニューレを介して血液を採取し、これを採取場所付近の場所に供給するポンプ装置は、大動脈弁へ通じるように配置することができ、カニューレの端部における吸引ヘッドは左心室内に配置されており、一方で、ポンプ排出口は大動脈内部に位置している。ポンプが激しい鼓動圧力の変化に晒されるように、連続供給を行うポンプの動作を心臓の鼓動動作に重ね合わせる。これに関連して、関連する近位のカテーテルと共にポンプが大きな位置変化に晒されることが起こる。カテーテルは、心臓収縮期の間に大動脈弓の外側に対して押圧されるのに対して、心臓拡張期の間には大動脈弓の内面に対して押圧される。さらに、ポンプの位置が連続的に変化することにより、大動脈弁を通るカニューレが変位する可能性、さらにはカニューレが排出され、その後心臓弁から大動脈内へと落下する可能性が生じかねない。
【0004】
このような血液ポンプに伴う別の問題は、吸引ヘッドが、吸引によって心臓内部の組織部分に付着してしまう点である。これは、心臓炎症を引き起こす可能性、さらに、流入開口部の障害によってポンピング機能が低下してしまう危険性を伴う。最後に、吸引によりカニューレが僧帽弁に付着し、血液へのさらなる損傷が吸引によって誘発される可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、吸引による付着の危険を実質的に回避する経皮挿入式の心臓内ポンピング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポンピング装置は請求項1に記載の特徴を備えている。これによれば、流入開口部のカニューレ末端部に可撓性の突起部が設けられている。突起部は、ポンピング装置の液圧性を変更することなく、隣接した壁の間に距離を維持するための機械的スペーサを形成する。
【0007】
突起部にはスペーシング機能以外の効果もある。液圧的長さを増加することなく、ポンピング装置の機械的長さを増加できる。機械的長さを増加することで、ポンピング装置が大動脈弁から滑落する可能性が減少する結果となる。その一方で、カニューレの液圧抵抗は増加しないので、吸引性能が低下することはない。これ以外にも、ポンピング装置が心臓鼓動によって生じる鼓動動作を作り出す傾向を、突起部が本質的に減じる効果がある。ポンプおよびカテーテルを装備したポンピング装置は心臓内に遥かに静かに配置できるため、排出の危険も低減される。排出後に新規の挿入を行えるようにする場合には、大動脈弁の新たな逆流を容易かつ再生可能に行えるように、末端突起部を構成することが好ましい。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、可撓性の突起部は中空管であり、そのルーメンはカニューレのルーメンと連通している。このようなポンピング装置は、ガイドワイヤと共に使用するように配置される。ポンピング装置の挿入時に、このガイドワイヤが強化手段として含められる。まずガイドワイヤを配置し、次に、その上でポンピング装置を滑動させることも可能である。最終的に、ガイドワイヤの角度付けされた先端部を突起部から押し出して、脈管系を通る先導機として機能させることもできる。突起部のルーメンはカニューレのルーメンと連通しているが、ポンプは突起部を介して吸引を行うことはない。これは、吸引ヘッドにおける流入開口部の断面が、突起部のルーメンの断面よりも遥かに大きいためであり、そのため、より低い流れ抵抗によって、流入開口部を介してより広い部分にかけての吸引が実施される。突起部のルーメンによって生じる特定の吸引効果は、非常に小さく取るに足りないものであり、吸引による他の部分への付着を引き起こすような大きなものではない。そのため、吸引ヘッド以外で、突起部が吸引によって付着することは起こり得ない。しかしこれは、突起部のルーメンが何らかの理由で遮断された場合には、ポンプの液圧機能に何の影響も及ぼさない。
【0009】
カテーテルおよびステントから知られているピグテール先端部を可撓性の突起部に設けることができる。この丸いピグテール先端部により、心臓壁または血管壁において、細胞の損傷を最小限に抑えるように設計された手術用器具によるサポートが得られる。さらに、この先端部は非常に柔軟で可撓性を有するため、変形することであらゆる体腔形状にも適合できる。また、ピグテール先端部は、ポンピング装置の挿入および配置を容易にする。詳細には、挿入時にピグテール先端部をガイドワイヤにより伸長させた状態で、ガイドワイヤと共に使用することができる。ガイドワイヤ無しでピグテール先端部を前進させる場合にも、大動脈弁を通る単純かつ再生可能な逆方向の通過は可能である。ポンプを動作するためにガイドワイヤが取り外され、また、この目的のためにポンプを取り外さなくては再度前進させることができないため、これは特に重要である。収縮期の心臓機能により左心からポンプが排出される際には、可撓性の突起部のピグテール形状のために、ワイヤ無しで再度位置決めを行うことが可能である。
【0010】
以下は、図面を参照した本発明の実施形態の詳細な説明である。これらの実施形態に関連して述べられる特徴は、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、大動脈AOが分岐した心臓Hを示す。大動脈は、大動脈弓10を通り、とりわけ大腿動脈内へ分岐した垂直網内へ延びている。ポンピング装置は、大腿動脈の鼠径部領域内に経皮挿入され、心臓にまで前進させられる。
【0012】
心臓内ポンピング装置は、基端部12と末端部13とを備えたポンプ11を有している。ポンプを経皮挿入し、心臓内で動作させることができるようにするために、ポンプ11は、最大で4mmの外径と、約15mmの長さとを有するハウジングを備えている。外科手術でのみ挿入可能なこれよりも大きなポンプは、周囲管直径の理由から、6mmの外径を超えてはならない。
【0013】
ポンプ11の基端部12は、ポンプ11を操作および制御するための電線を装備したカテーテル14と接続している。末端部13は、側方の流入開口部17を設けた吸引ヘッド16をその末端部に形成している細長い可撓性ホースであるカニューレ15と接続している。ポンプ11は、カニューレ15の流入開口部17から血液を引き出し、この血液を、ポンプの側部に設けられた流出開口部18を介して汲み上げる。概してポンプとカニューレとは、特許文献1に説明されている通りに設計されている。カニューレ15は、長さ約40〜70mmのホースであり、その壁部はポリウレタンコーティングしたコイル状のワイヤで形成されている。カニューレ15は特定の形状安定性を有するが、しかし可撓性も有する。
【0014】
本発明によれば、カニューレ15の吸引ヘッド16は、カニューレ15を機械的かつ非水圧的に延長させるための突起部20によって結合されている。突起部20の長さは10〜30mmである。本発明の場合では、身体組織における自動支持を可能にするためのピグテール先端部21を設けている。
【0015】
図1中の実線は、心臓Hおよび大動脈AO内におけるポンピング装置の延長部分を示している。このポンピング装置は、ポンプ11が大動脈AO内に配置される一方で、吸引ヘッド16が左心室LV内に位置するように設置される。カニューレ15は大動脈弁AKを通って延びる。このように、ポンプが、左心室LVから血液を引き出し、大動脈AO内に供給する。さらに、図1は、左心房LAおよび僧帽弁MKを示している。
【0016】
ポンプ11は、2〜3リットル/分の搬送速度で連続的にポンピングを行う。反力はポンプを心臓内へと引く傾向がある。この反力は、心臓のポンプ力によって反転される。収縮期の間、心臓は約10リットル/分の不規則な搬送速度を有する。心臓の排出段階中に、ポンプが大動脈弓10の外側における収縮位置25へ移動する一方で、充填段階中に、大動脈弓10の内側上に心臓拡張位置26が得られる。これらの動作によって、カニューレ15および吸引ヘッド16の位置も変化する。吸引ヘッド16が、心臓壁に位置する肉柱構造に接近した場合に、これらの構造が吸引で捕獲される危険、吸引ヘッドが閉塞する危険、血液損傷が増加する危険、さらに、心臓構造内に血腫が形成される危険が生じる。
【0017】
吸引による付着は、心臓壁に支持されている突起部20によってさらに起こりにくくなる。さらに、突起部20はカニューレの機械的延長部を形成して、左心室および大動脈弁からの排出を防止する。
【0018】
図2から分かるように、ポンプ11は、軸方向に向かって前後に配置されたモータ部分30とポンプ部分31とを備えている。ポンプ部分31には、ハウジングリングと、モータにより駆動され、軸方向への血液の流れを供給するインペラとが含まれ、その血液の流れは放射状外方へ逸らされ、流出開口部18を介してポンプ11のハウジングから側方へ排出される。ポンプ部分31は、ポンプ11とほぼ同一の外径(4mm)を有するカニューレ15と軸方向に結合されている。流入開口部17を装備した吸引ヘッド16の長さは約10〜15mmである。吸引ヘッドが圧迫されることがないようにするべく、流出開口部18は、少なくともカニューレルーメンの交差範囲と同一の大きさの範囲を有する。
【0019】
図2では、突起部20は、連続したルーメン32を備えた中空ホースとして設計されている。このルーメンの幅は、カニューレルーメンの幅よりも遥かに狭い。ルーメン32は、ポンピング装置の身体内への挿入を促進するべく、ガイドワイヤ33を通すべく機能する。ガイドワイヤ33に予め曲げが形成されている場合には、ガイドワイヤ33が突起部20を延長する。さらにガイドワイヤは、突起部20の末端部から突出し、脈管系を通る先導機として機能する柔軟な可撓性曲げ先端部を設けることもできる。ガイドワイヤ33はポンプ部分31を介してポンプ11内へと続き、流出開口部18から出る。次に、カテーテル14の外部に沿って案内される。ポンピング装置が配置されると、ガイドワイヤが引き出される。
【0020】
図2に示すように、カニューレ15は、より良い経路探索を行うべく機能する、予め形成された曲げ34を備えている。
【0021】
図3は、吸引ヘッド16を備えたカニューレ15の末端部を示している。吸引ヘッド16は、縦型の流入開口部17を備えている。その端部においてボール36が設けられており、ボール36の内部には中空ピン37が挿入され、溶接される。このピン37は突起部20用の接続要素として機能し、この場合では、ピグテール先端部21を備えている。突起部20のルーメン32はピン37およびボール36を通って、吸引ヘッド16内へと延びる。ここでは、突起部20の外径はカニューレ15の外径よりも小さい。
【0022】
図4は、吸引ヘッド16の拡大可能な吸引バスケット40内に流入管41を設けた実施形態を示す。吸引バスケット40は、例えば自己復元可能な材料で形成されているか、またはバルーンによって拡大される。拡大状態において、吸引バスケット40の外径はカニューレ15の外径よりも大きい。これにより、吸引バスケット40の直径は初期の4mmから約6mmへ拡大する。ここでは、流入管41は、流体損失を低減することにより、滑らかな流入を可能にし、ポンプの流体容量を増加させる可撓性ポリマースクリーンから延びている。
【0023】
図5の実施形態では、カニューレ15が2段階設計になっている。このカニューレ15は、主要流入口を形成する第1流入開口部17を設けている。この場合、流入開口部17の末端部、これに続く突起部20は、カニューレ15と同一の外径および同一のルーメン直径を有する。突起部20の末端部は、補助開口部として機能する側方の補助開口部44をさらに備えている。ここでは吸引ヘッドを設けていない。カニューレの末端部は、ガイドワイヤ33のための通路を設けた丸い端部壁45によって閉鎖されている。
【0024】
図5のポンピング装置は、ポンプ11のインペラ部分33を通るガイドワイヤ33上を滑動し、流出開口部18から側方向に退出する。ポンピング装置が位置決めされると、ガイドワイヤ33が基端部方向へ引かれる。ポンプ11の動作により、血液が流入開口部17から引き出される。突起部20および補助開口部44のより高い流動抵抗によって流入開口部17のみが吸引効果を発する一方で、突起部20に実質的に流体効果はない。流入開口部17が吸引によって付着する、または流入開口部17が別の方法で詰まった場合にのみ、補助開口部44が有効となる。突起部20は角度付けされた部分46を備えている。そのルーメンはカニューレ15のルーメンと連通している。突起部は、好ましくはカニューレ15よりも高い可撓性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】心臓内で動作するポンピング装置を示す図である。
【図2】非使用状態のポンピング装置を示す図である。
【図3】突起部を取り付けた状態の吸引ヘッドの断面を示す図である。
【図4】吸引ヘッドが流れ成形流入管を備えている実施形態を示す図である。
【図5】カニューレが突起部の端部に第2組の流入開口部を備えている実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル(14)と基端部(12)にて接続し、自身から離れた場所に流入開口部(17)を設けたカニューレ(15)と吸引側末端部(13)にて接続したポンプ(11)を備えた経皮挿入するための心臓内ポンピング装置において、
前記流入開口部(17)のカニューレ末端部に、可撓性の突起部(20)を設けていることを特徴とする心臓内ポンピング装置。
【請求項2】
前記突起部(20)は非吸引突起部であることを特徴とする請求項1に記載のポンピング装置。
【請求項3】
前記突起部(20)は、そのルーメンが前記カニューレ(15)のルーメンと連通した中空ホースであることを特徴とする請求項1または2にポンピング装置。
【請求項4】
前記可撓性の突起部(20)はピグテール先端部(21)を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のポンピング装置。
【請求項5】
前記流入開口部(17)は、流入管(41)を含んだ拡大可能な吸引バスケット(40)を設けていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のポンピング装置。
【請求項6】
前記突起部(20)の外径は前記カニューレ(15)の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のポンピング装置。
【請求項7】
前記カニューレ(15)は、予め形成された曲げ(34)を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のポンピング装置。
【請求項8】
前記ポンプ(11)を通り、また前記カニューレ(15)から前記中空の突起部(20)内へ前進するように適合されたガイドワイヤ(33)を設けていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のポンピング装置。
【請求項9】
前記突起部(20)は側方補助開口部(44)を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のポンピング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−501644(P2007−501644A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522274(P2006−522274)
【出願日】平成16年7月24日(2004.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008321
【国際公開番号】WO2005/016416
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(506042140)インペラ カルディオシステムズ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】