心臓律動管理システム及び方法
【課題】ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するとともに逆行心臓伝導を回避するための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】医療システムは、患者に対してペーシングパルスを送出するように構成されたペーシング回路と、ペーシングパルスに関連する心臓信号を検出するように構成された検知回路と、検知回路に接続されるとともに、ペーシングパルスの送出に先立ってある期間において得られたデータを用いて心臓の信号のベースライン振幅を設定し、ベースライン振幅を用いてペーシングパルスに対する心臓応答を判断するように構成されている心臓応答プロセッサとを備える。
【解決手段】医療システムは、患者に対してペーシングパルスを送出するように構成されたペーシング回路と、ペーシングパルスに関連する心臓信号を検出するように構成された検知回路と、検知回路に接続されるとともに、ペーシングパルスの送出に先立ってある期間において得られたデータを用いて心臓の信号のベースライン振幅を設定し、ベースライン振幅を用いてペーシングパルスに対する心臓応答を判断するように構成されている心臓応答プロセッサとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に植込み型医療デバイスに係り、より詳細には、心臓捕捉検証および逆行信号の管理を提供する心臓律動管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常に機能する時、心臓は、律動的収縮を生じ、身体全体に効率的に血液を送り出すことが可能である。しかしながら、疾患や損傷によっては、心臓の律動が不規則になり、結果的に、ポンプ効率が低下することもある。不整脈は、さまざまな体調および疾患プロセスに起因する心臓律動の不規則性を表現するために使用される一般的な用語である。植込み型心臓ペースメーカおよび除細動器などの心臓律動管理システムが深刻な不整脈をもつ患者の有効な治療法として使われてきた。一般に、これらのシステムは、心臓からの電気的信号を検出するための回路を含み、心臓へ電気的な刺激パルスを送るためのパルスジェネレータを含む。患者の心臓内部に延びるリード線は、心臓の電気的信号を検出するために心筋に接続されるとともに、さまざまな療法に応じて、心臓へ刺激パルスを送るための電極に接続されている。
【0003】
心臓律動管理システムは、心臓組織の収縮を生じさせるために、電極に隣接している心臓組織を刺激するように作用し得る。ペースメーカは、心臓が心臓律動ポンプ効率を維持する収縮可能な律動を生成する際に、心臓を補助するように計時された一連の低エネルギペーシングパルスを送る心臓律動管理システムである。患者のニーズに応じて、ペーシングパルスは、断続的であっても連続的でもよい。一つ以上の心腔(heart chambers)を検知し、心拍数を回復する(ペーシング)するための種々のモードを含むペースメーカデバイスには多数のカテゴリが存在する。
【0004】
ペーシングパルスが心臓組織において収縮を生成する時、収縮の後の電気的な心臓信号は、捕捉された応答として示される。捕捉された応答は、誘発された応答信号として示され、心臓収縮と協働し、電極と組織の界面の残留後ペース分極(post pace polarization)に関連する重畳された信号を伴う、電気的信号を含む。残留後ペース分極信号またはペーシングアーチファクトの大きさは、例えば、リード分極、ペーシングパルスからの後電位、リードインピーダンス、患者インピーダンス、ペーシングパルス幅、およびペーシングパルス振幅を含むさまざまな要素によって影響され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6408210号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ペーシングパルスは、収縮を生成するために、最小のエネルギ値や捕捉閾値を超過する必要がある。ペーシングパルスにとっては、捕捉値を超過せずに、心臓の捕捉に足るエネルギを有することが望ましい。従って、捕捉閾値の正確な決定が効率的なペーシングエネルギの管理に必要とされる。ペーシングパルスエネルギが低すぎると、ペーシングパルスは心臓の収縮応答を確実にもたらすことができず、結果的に、無効ペーシングを生じ得る。ペーシングパルスエネルギが高すぎると、患者は不快感を覚え、またデバイスのバッテリ寿命が短くなる。
【0007】
捕捉検出によって、収縮を確実に生成する最適エネルギ消費量に対応するように、心臓律動管理システムが、ペーシングパルスのエネルギレベルを調整できるようにする。また、ペーシングパルスが収縮を生じないときは常時、捕捉検出によって、心臓律動管理システムが、より高いエネルギレベルにおいてバックアップパルスを開始させるようにする。
【0008】
いくつかの状況において、心臓に送られるペーシングパルスは、捕捉を阻害したり、捕捉検出プロセスを混乱させたりする、さまざまな望ましくない現象を生じ得る。一つの例として、有効ペーシングは、ペーシングパルスによって開始される逆行信号によって、弱体化され得る。例えば、デバイスが心房検知を実行するとき、ペーシングパルスまたは内因性の活動によって心室において生成される減極波(depolarization)が心房へ戻る時、逆行性P波が検出される。逆行性P波は心房ペーシングを妨害する。逆行性P波によって心房組織が不応である場合、心房に送られるペーシングパルスは、結果的に捕捉されない。また、いくつかの場面において、心房への逆行伝導によって、ペースメーカ媒介頻拍が生じ得る。
【0009】
時には、ペーシングパルスは内因性拍動と合併して、融合収縮(fusion beat)を生成することもある。融合収縮は、個々の開始部位からの特定チャンバの二つの心臓減極が組み合わされる時に生じる心臓の収縮である。心臓がペーシングされるとき、特定チャンバの内因性心臓減極が該チャンバ内でペースメーカ出力パルスと併合された場合、融合収縮が生じ得る。融合収縮は、電子心臓グラフィック記録に見られるように、さまざまな形態を呈している。融合収縮の併合減極が、減極全体に均一に貢献するわけではない。
【0010】
ペースメーカ出力パルスが心房ペーシング期間において自発性P波または心室ペーシング期間において自発性QRS錯体に重畳される時、擬似融合(pseudofusion)が生じる。擬似融合では、電極周辺の組織がすでに自発的に減極させており、その不応期にあるので、ペーシングの刺激は有効ではない。融合または擬似融合収縮によって、捕捉の擬似検出が発生し、結果として誤った捕捉閾値に導かれる。
【0011】
本発明は、ペーシングに対する心臓応答を分類し逆行信号を管理するための方法およびシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの実施は、逆行性分析を用いて、ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するように構成された心臓医療システムに関する。該システムは、心臓信号を検知したり、患者へ心臓のペーシングパルスを送ったりするために使用され得る複数の植込み型電極を含む。該電極に接続されたコントローラ回路は、植込み型ハウジング内に配置される。コントローラは、心周期において、患者の心臓の心房にペーシングパルスを送るように構成されている。コントローラは、心周期において心室に内因性の活動があるか否かを検知し、内因性の活動が検知されない場合、該心室へペーシングパルスを送る。コントローラは、心房において、心室ペーシングパルスまたは内因性活動に応答する逆行性P波を検知する。逆行性P波が検出された場合、コントローラは、心房ペーシングパルスに対する心臓応答を非捕捉応答として分類する。
【0013】
一実施によれば、コントローラが逆行性P波を検出しない場合、心房ペーシングパルスに対する心臓応答を可能性のある捕捉応答として分類する。コントローラは、心房ペーシングパルスに関連する心房の誘発応答を検知するように更に構成され得る。一実施によれば、心房の誘発応答が検出された場合、コントローラは、心臓応答を捕捉応答として分類する。他の実施においては、心房の誘発応答が検出されず、逆行性P波が検出された場合、コントローラは、ペーシングパルスに対する心臓応答を非捕捉応答として分類する。また更なる実施においては、心房の誘発応答が検出され、逆行性P波が検出されなかった場合、コントローラは、ペーシングパルスに対する心臓応答を捕捉応答として分類する。
【0014】
内因性の心室の活動を検知した後、または、心室ペーシングパルスを送出した後の間隔期間、例えば、心室後心房不応期において、コントローラが逆行性P波を検知し得る。
次の心周期において、コントローラによって更なる心房ペーシングパルスが送られ得るとともに、これらの更なる周期においては、更なる心室ペーシングパルスが送られたり、内因性の心室の活動が検知されたりする。コントローラは、心房において、更なる心室ペーシングパルスまたは心室の内因性の活動に応答する逆行性P波を検知し、逆行性P波が検出された場合、更なる心房ペーシングパルスに対する心臓応答を非捕捉応答として分類する。コントローラは、例えば、患者に施されるペーシング治療期間において、または、捕捉閾値試験期間において、心房ペーシングパルスに対する心臓応答を、拍動ごと(beat by beat)に、分類するように構成されてもよい。
【0015】
本発明の他の実施は、患者の心臓に電気的に接続されるように構成された複数の植込み型電極を含む心臓医療システムに関する。電極は、心臓信号を検出したり、心臓のペーシングパルスを送ったりするために使用される。植込み型ハウジング内に配置されたコントローラは、電極に接続されている。コントローラは、1つの心周期においてペーシングパルスを患者の心臓の心房に送り、心房ペーシングパルスが心房を捕捉したかを判断するように構成されている。コントローラは、この心周期において心室の内因性活動を検知し、内因性の心室の活動が検出されない場合、心室にペーシングパルスへ送る。心房ペーシングパルスが心房を捕捉しない場合、コントローラは心房の逆行伝導を低減するために計時された他のペーシングパルスを送る。ここで、心房の逆行伝導は、心室ペーシングパルスまたは内因性の心室活動に応答性を有する。
【0016】
一実施においては、コントローラは心房の誘発応答を検知し、心房の誘発応答が検出されなかった場合、心臓ペーシング応答を非捕捉応答として分類する。心房の逆行伝導を低減するために計時されるペーシングパルスは、心房に送り出されるバックアップペースを含んでいてもよい。
【0017】
他の実施においては、コントローラは、逆行性P波を検知し、逆行性P波が検出された場合、心臓ペーシング応答を非捕捉応答として分類する。
また他の実施において、心房の逆行伝導を低減するために計時されたペーシングパルスは、次の心周期の遅延した心房ペーシングパルスを含む。コントローラは、逆行性P波が検出された場合、および、心房の有効不応期終了前に予定されている心房ペーシングパルスを発生させるように予定されている場合、次の心周期の逆行伝導を低減するように、次の心周期において予定されている心房ペーシングパルスを遅延させるように構成されている。遅延した心房ペーシングパルスは、前もって予定されているエネルギよりも高いエネルギによって送り出されてもよい。心房の有効不応期が終了する前に発生するように予定されていない場合、予定された心房ペーシングパルスが予定通りに送られてもよい。遅延した心房ペーシングパルスが捕捉を生成しない場合、コントローラによって心房の有効不応期が変更され得る。
【0018】
本発明の他の実施形態は、心腔にペーシングパルス送り出すように構成されたペーシング回路と、ペーシングパルスに関連する心臓信号を検知するように構成された検知回路と、を含む医療システムを含む。また、医療システムは、検知回路に接続されるプロセッサを含む。プロセッサは、ある種の心臓ペーシング応答に関連する心臓信号の特徴のタイミングの変動性に基づいて心臓応答分類期間を決定するように構成されている。心臓応答分類期間は、ペーシングパルスに対する応答を判断するために心臓信号が検知されるペーシングパルスの後の期間を決定する。例えば、ある種の心臓ペーシング応答に関連する特徴は、ピークの振幅を含んでもよいし、ペーシングパルスへの応答は、捕捉応答を含んでいてもよい。
【0019】
いくつかの構成によれば、プロセッサは、特徴となるタイミングの標準偏差を決定する。一つの方法を用いて、プロセッサは、平均的特徴タイミングおよび標準偏差に基づいて心臓応答分類期間を形成する。プロセッサは、心臓信号の各々に対する特徴のタイミングについて値を決定し、特徴タイミング値の平均を取ってもよい。安定基準を達成するまで、心臓応答分類期間に適合するようにプロセッサが構成され得る。例えば、プロセッサは、所定の安定基準が達成されるまで、心臓応答分類期間の上限および下限のいずれかまたは両方に適合され得る。
【0020】
一つの態様によれば、心臓応答分類プロセッサは、心臓応答分類期間を使用して、捕捉、非捕捉および融合のうちの少なくとも2つを識別するなどのペーシングパルスに対する心臓応答を判断したりするために心臓応答分類期間を使用するように構成されている。
【0021】
他の実施形態によれば、医療システムは、ペーシングパルスを心腔に送り出すように構成されたペーシング回路と、ペーシングパルスに関連する心臓信号を検出するように構成された検知回路を含む。また、医療システムは、検知回路に接続されるテンプレートプロセッサを含む。テンプレートプロセッサは、各検知された心臓信号のために心臓信号特徴に関連する値を求め、心臓信号属性値のメジアン値を求め、得られたメジアン値に基づいて心臓応答テンプレートを生成する。
【0022】
例えば、プロセッサは、検知された各心臓信号のピーク振幅を決定し得るし、検知された心臓信号のピーク振幅のメジアン値を決定し得る。ピーク振幅のメジアン値は、心臓応答テンプレートを生成するために用いてもよい。他の例においては、この値は、検出された各心臓信号のピーク振幅のタイミングを含む。プロセッサは、ペーシングに対する捕捉または他の心臓応答を検出するために心臓応答テンプレートを使用し得る。
【0023】
一つの態様によれば、ペーシング回路は、捕捉閾値より高いペーシングパルスを送り出す。検知回路は、捕捉閾値より高く送りだされたペーシングパルスに関連する心臓信号を検知する。テンプレートプロセッサは、捕捉された応答テンプレートを生成する。他の態様によれば、ペーシング回路は、捕捉閾値より低いペーシングパルスを送り出す。検知回路は、捕捉閾値より低く送り出されたペーシングパルスに関連する心臓信号を検知する。テンプレートプロセッサは、非捕捉応答テンプレートを生成する。
【0024】
いくつかの構成において、ペーシングパルスのペーシング率は、ジッタされたり(jittered)、心腔の内因性率を上回る割合で送られたりする。ペーシング回路は、各ペーシングパルスに続くバックアップペースを送り出すように構成され得る。
【0025】
いくつかの構成において、検知回路は、ペーシングパルスの送出に先立って時間間隔を置いて各心臓の信号を検知するように更に構成される。テンプレートプロセッサは、ペーシングパルスの送出に先立って時間間隔において検知される心臓信号を用いたベースラインを形成する。ベースラインは、心臓信号特徴に関連する値を求めるために使用される。
【0026】
本発明の他の実施形態は、心臓のペーシングパルスを患者に送るために構成されたペーシング回路と、ペーシングパルスに関連する検知心臓を検知するように構成された検知回路と、を含む医療システムに関する。心臓応答プロセッサは、検知回路に接続されている。心臓応答プロセッサは、ペーシングパルスの送出に先立って時間間隔を置いて得られたデータを使用する心臓信号のベースラインの振幅を設定して、心臓信号のベースライン振幅を用いてペーシングパルスに対する心臓応答を判断する。ペーシングパルスは、心房または心室ペーシングパルスであってよい。
【0027】
心臓信号は、ベースライン振幅を設定する前にフィルタリングされ得る。一つの実施例において、心臓信号データは、時間間隔ごとに平均を取る。
いくつかの態様によれば、時間間隔は、約3ミリ秒〜約10ミリ秒の範囲の移動時間間隔であってもよい。
【0028】
いくつかの態様によれば、心臓応答プロセッサは、ペーシングされた拍動ごとにベースライン振幅を設定するように構成されている。
心臓応答プロセッサが、前記ベースライン振幅を基準にした心臓信号のピーク振幅を測定し、前記ベースライン振幅を基準とした前記ピーク振幅を使用して、前記ペーシングパルスに対する心臓応答を判断するように構成されている。
【0029】
本発明の他の実施の態様は、ペーシングに対する心臓応答を判断するために使用される医療システムを含む。該システムは、ペーシングパルスを心腔に送り出すように構成されたペーシング回路を含む。検知回路は、ペーシングパルスに関連する心臓信号を検知するように構成される。検知回路に接続されるプロセッサは、心臓信号の特徴を検出するとともに、一つ以上の前もって検出された心臓の信号特徴に対する特徴の変動性を判断するように構成されている。プロセッサは、特徴の変動性に基づいて、心臓応答を分類する。
【0030】
本発明の上記の発明の開示は、本発明の各実施の形態または実施をすべて網羅することを意図するものではない。添付図面と共に、以下の詳細な説明と請求の範囲を参照することによって、より完全な解釈によって、本発明の利点および効果が、より明確に理解されよう。
【0031】
本発明は、種々の変更および代替可能な形態に応じて修正が可能であるが、その具体性が図面において例示されるとともに以下に詳細に説明される。しかしながら、本発明は記載されている特定の実施の形態に制限されるものではない。むしろ、添付の請求の範囲によって定義されているように、本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明を変更したもの、本発明と等価のもの、および本発明を代替するもの全てを網羅するように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】本発明の実施の形態による、捕捉の心房の損失を確認する方法を示すグラフである。
【図1B】本発明の実施の形態による、心房の捕捉検証の方法を示すフローチャートである。
【図1C】本発明の実施の形態による、心房の誘発応答と逆行性P波検出の両方を用いてペーシングパルスに対する心臓応答を判定する方法を示すフローチャートである。
【図1D】本発明の実施の形態による、逆行管理方法を示すフローチャートである。
【図1E】本発明の実施の形態による、逆行伝導管理方法をより詳細に示すフローチャートである。
【図1F】本発明の実施の形態による、逆行管理方法の動作を示す図である。
【図1G】本発明の実施の形態による、逆行管理方法の動作を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態による、心房の捕捉検証方法に関連して使用され得る植込み型心臓律動管理システムを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態による、心房の捕捉を確認し心房の逆行伝導を管理するために使用され得る植込み型医療デバイスを示すブロック図である。
【図4A】本発明による、逆行伝導に基づく捕捉検出方法を示すフローチャートである。
【図4B】本発明による、逆行管理方法を示すフローチャートである。
【図4C】本発明による、捕捉検出および逆行管理方法を示すフローチャートである。
【図5A】本発明の実施の形態による、心臓応答分類期間を形成する方法を示すフローチャートである。
【図5B】本発明の実施の形態による、捕捉された応答信号の特徴志向の分類応答間隔を示すグラフである。
【図6A】本発明の実施の形態による、初期化された心臓応答分類期間を示す図である。
【図6B】本発明の実施の形態による、適合の前と後のそれぞれの心臓応答分類期間を示す図である。
【図6C】本発明の実施の形態による、適合の前と後のそれぞれにおける心臓応答分類期間を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態による、適合可能な分類期間を用いてペーシングに対する心臓応答を分類する方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態による、心臓応答分類期間を安定させる方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態による、心臓信号特徴の変動性に基づいて捕捉と融合を識別する方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態による、任意の融合管理またはヒステリシス探索による捕捉閾値試験を実行する方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態による、任意の融合管理またはヒステリシス検索による拍動対拍動の自動捕捉検証方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態による、捕捉と融合を識別するために利用され得る心臓の信号特徴を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態による、心臓応答分類期間を初期化し、適合させ、ペーシングに対する心臓応答を分類するために使用され得る植込み型医療デバイスを示すブロック図である。
【図14】捕捉応答と非捕捉応答を含む二つの連続的な心拍動を示すグラフである。
【図15】本発明の実施の形態による、捕捉テンプレートを初期化する方法を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態による、非捕捉テンプレートを初期化する方法を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態による、ベースラインを適合させる方法を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態による、心臓ペーシング応答検出を初期化させたり、該心臓ペーシング応答検出にベースラインを適合させたりするために使用され得る植込み型医療デバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図示されている実施の形態の以下の説明において、実施の形態を構成する添付図面が参照され、図面において、本発明が実施され得る種々の実施の形態が示されている。他の実施の形態が利用され得て、本発明の範囲を逸脱しない限り、構造上および機能上の変更が成されてもよいことが理解されよう。
【0034】
心腔に対してペーシングパルスを送った後、ペーシングパルスに対するさまざまな心臓応答が可能である。一つのシナリオでは、ペーシングパルスは、減極の伝搬波面を生成することによって、結果的に、心室の収縮が生じ得る。このシナリオにおいて、ペーシングパルスが心室を捕捉したとされる。ペーシングパルスが充分なエネルギを有して、該パルスが非不応期間において送り出された場合、心室の捕捉が発生し得る。ペーシングパルスが心室の収縮を生じない場合、心臓応答は非捕捉または捕捉損失と呼ばれる。ペーシングパルスエネルギが低すぎる場合、あるいは、心臓組織の不応期間にペーシングパルスが送り出される場合、例えば、非捕捉が発生し得る。
【0035】
例えば、本発明のプロセスが、ペーシングのために使用されるエネルギを決定するための捕捉閾値試験において使用され得る。捕捉を生成する最小のペーシングエネルギは捕捉閾値と呼ばれる。ペーシングパルスは、捕捉閾値以外の余剰エネルギを消費せずに、心臓を捕捉するに足るエネルギを有することが望ましい。このように、捕捉閾値の正確な判定が効率的なペーシングを行うために望まれる。
【0036】
捕捉閾値試験手順を参照することによって、左心房、右心房、左心室および右心室の一つ以上の捕捉閾値を求める方法が示されることは当業者に理解されよう。このような手順において、ペースメーカは、自動的に、または、指令を受けて、選択された心室の捕捉閾値の検索を開始する。捕捉閾値は、心臓を一貫して捕捉する最も低いペーシングエネルギとして定義付けられる。
【0037】
自動捕捉閾値手順の一つの例において、ペースメーカは、一連のペーシングパルスを心臓に送り出し、ペーシングパルスに対する心臓応答を検出する。ペーシングパルスのエネルギは、所定数の捕捉損失応答が発生するまで、離散的な段階で減少し得る。ペースメーカは、捕捉閾値を確認するために所定数の捕捉応答が発生するまで、離散的な段階で刺激エネルギを増加させてもよい。捕捉閾値試験は、本発明の心臓応答分類方法を使用して実行され得る。
【0038】
捕捉閾値試験を実施するために、他の手順が利用されてもよい。一つの実施例では捕捉が検出されるまで、離散的な段階でペーシングエネルギが増加され続ける。他の実施例では、ペーシングエネルギは、二項サーチパターンによって、調整され得る。
【0039】
捕捉閾値の決定は、自動捕捉検出、即ち、一般にペーシング期間に拍動ごとに発生する手順から識別可能である。自動捕捉検出は、送出されたペーシングパルスが結果的に捕捉された応答を生じることを検証する。ペーシングパルスに続いて捕捉応答が検出されなかった場合、ペースメーカは、一貫したペーシングを確実にするためにバックアップセーフティペースが送ってもよい。バックアップペースは、例えば、初期のペーシングパルスの約70〜80ミリ秒後に送出され得る。通常のペーシング期間に所定数のペーシングパルスを送っても捕捉応答が得られない場合、ペースメーカは、捕捉閾値を求めるために、捕捉閾値試験を開始し得る。あるいは、所定数のペーシングパルスが捕捉応答を生成しない場合、ペースメーカは、次のペーシングパルスに備えて、ペーシングエネルギを調整し得る。心房捕捉検証および心房逆行管理は、本発明のプロセスを用いて実施され得る。
【0040】
本発明の実施の形態は、心房ペーシングパルスが心房を捕捉するか、または、心房を捕捉できなかったかを判断するための方法およびシステムに関する。捕捉損失の判断は、逆行伝導として示される心房へ逆行する心室の減極波の検出に基づいて行われてもよい。この逆行減極波が検出され、本発明の捕捉検証プロセスにおいて使用される。
【0041】
内因的に、または、心室のペースの結果のいずれかにおいて、心室の減極が発生する時、心房の組織がその不応期(refractory period)にない場合、減極の波面は、心房へ向かって移動し得る。心房の心筋組識が不応でない場合(即ち、内因性P波が存在していなかった場合、または、心房が心室減極の前に心房ペーシングパルスによって捕捉されなかった場合)、心室の減極によって開始される波面は、逆行伝導され、逆行性P波として心房内で検知される可能性が高くなる。このように、逆行性P波を検出することは、心房ペーシングパルスが心房を捕捉しなかったことを示す。
【0042】
本発明の更なる実施の形態は、心房ペーシングパルスが心房を捕捉しない時の心房への逆行伝導を回避または管理するための方法を含む。いくつかの実施の形態によれば、バックアップペースは、捕捉損失の事象に続いて心房に送られ得る。バックアップペーシングは、比較的高いエネルギレベルで送出され、捕捉を確実とすることにより、心房の逆行伝導を防止する。
【0043】
本明細書中に記載されている他の逆行管理方法は、逆行性P波が検出された場合、次に予定されているペースを遅延させることを含む。逆行性P波が検出された後、次に予定される心房のペースは、有効な心房の不応期が終わるまで遅延され得る。次に予定されるペースを遅延させることによって、次のペーシングパルスが送られる前に逆行伝導により生じた不応期から心筋を蘇らせる。
【0044】
図1Aは、本発明の実施の形態による、捕捉の心房の損失を確認する方法を示すグラフである。この方法は、例えば、デュアルチャンバ(二部構成)デバイスにおいて使用され得る。心房の捕捉が失われると、房室(AV)同期性が崩壊し得る。そして、房室遅延が終了する欠陥心房パルス発生後に心室パルスが発生し得る。心室が心房の前に起動されるので、励起が、上方移動して、心房を逆行伝導として活動させる。
【0045】
図1Aのグラフにおいて、心房を捕捉する心房ペーシングパルス110には、誘発心房応答(AER)114とQRS錯体である内因性心室応答112が伴う。心室後心房不応期(PVARP)140が、内因性心室応答112に続いて示されている。これは、内因性心室応答を有する心房のペーシングされた心拍動である。
【0046】
次の心拍動は、心房を捕捉する心房ペーシングパルス120から開始される。心房ペーシングパルス120の後には心房の誘発応答124が続く。心室誘発応答122を生成する心室を捕捉する心室ペーシングパルス125が送り出される。心室誘発応答は、内因性の心室応答112に関連する拡大性のQRS錯体を示す。心室ペーシングパルス125に続いて、PVARP140が示されている。
【0047】
図1Aの最後の心拍動は、心房の逆行伝導を示す。心房ペーシングパルス130は、心房を捕捉しない。このため、心房の誘発応答は検知されない。房室遅延の後、心房ペーシングパルス130の後に、心室ペーシングパルス135、そして心室誘発応答132が続き、心室の内因性の応答112に相対して広がったQRS錯体が示される。心室パルス135に続いてPVARP140が示される。心室のパルス135に続いてPVARP140内には心房の逆行性P波134が示される。該逆行性P波134は、心室のパルス135によって開始された減極波面によって生成され、心房へ伝導される。逆行伝導が予定されている心房ペーシングパルスの極めて近傍で発生する場合、パルスエネルギが捕捉閾値より大きい場合であっても心房の捕捉は発生しない。
【0048】
心周期において発生している心房の誘発応答、逆行性P波、またはその両方が、心房捕捉検証および心房の逆行管理の両方に対して利用可能である。図1B〜図1Cは、本発明の実施の形態による心房捕捉検証を示すフローチャートである。
【0049】
図1Bのフローチャートは、検知された逆行性P波に基づいた捕捉検証を例示する。
心周期において心房へペーシングパルスが送られる(101)。システムは、心周期において内因性の心室活動を検知する(102)。内因性の活動が検出されない場合(103)、ペーシングパルスが心室へ送られる(104)。
【0050】
システムは、内因性の心室活動または心室ペースに応答する逆行性P波を検知する(105)。逆行性P波が検出された場合(106)、心房の非捕捉可能性が高まる(107)。逆行性P波が検出されない場合(106)、心房の捕捉可能性が高まり、システムは心房ペースに対する心臓応答を捕捉された心房応答として分類する(108)。
【0051】
図1Cのフローチャートは、心房の誘発応答および逆行性P波検出を用いてペーシングパルスに対する心臓応答を判断する方法を示す。心房の誘発応答および逆行性P波検出を用いることによって捕捉検証プロセスの精度が高められる。心房ペーシングパルスが送られる(150)。システムが心房のペーシングに伴う心房の誘発応答を検知する(151)。システムは、内因性の心室の減極を検知する(152)。心室の内因性活動が検出されない(153)場合、ペーシングパルスが心室へ送られる(154)。
【0052】
心室のペースの送出または内因性の心室の減極に続いて、システムは心房において逆行性P波を検知する(155)。逆行性P波が検出され、心房の誘発応答が検出されない場合、心房ペーシングパルスに対する心臓応答は、非捕捉応答として分類される(156)。
【0053】
前述したように、心房の非捕捉によって、結果的に有効ペーシングとしては望ましくない一連の逆行性P波を生じ得る。種々の実施の形態は、心房非捕捉が検出された場合、逆行管理を提供する。図1Dのフローチャートは、本発明の実施の形態による逆行管理方法を示す。心周期においてペーシングパルスが心房へ送られる(161)。心周期において心室の内因性活動が検知されない場合(162)、ペーシングパルスが心室へ送られる(163)。心房ペーシングパルスが心房を捕捉しなかった場合、内因性の心室活動または心室ペーシングパルスによって開始される減極波面によって心房に逆行伝導が生じ得る。
システムは、心房ペーシングパルスが心房を捕捉したかを判断する(164)。システムが、心房ペーシングパルスによって心房が捕捉されなかったと判断した場合、心房の逆行管理が提供される(165)。
【0054】
心房の誘発応答が検出されなかった場合、システムは、非捕捉を検出し得る。この実施において、心房の逆行管理の提供には、主要な心房ペーシングパルスの直後に送られた心房のバックアップペースを送ることが含まれてもよい。システムは、検出された逆行性P波に基づいて、心房ペーシングパルスが心房を捕捉しなかったと判断し得る。この実施において、本明細書においてより詳細に記載されているように、逆行管理を提供することは、心房の有効な不応期の終了後までに、次に予定されている心房ペーシングパルスを遅延させることが含まれてもよい。
【0055】
図1Eは、本発明の実施の形態による逆行管理方法をより詳細に示すフローチャートである。この例において、システムは逆行性P波を検知し、逆行性P波が検知された場合、システムは、心房ペーシングパルスが心房の捕捉を生成しなかったと判断する。
心房の組織が不応である間は、逆行性P波は次に予定されている心房ペースが送られるようにする。心房の組織が、予定されている心房ペースに反応不可能であるので、予定されている心房のペースは有効でなくなる。心房の有効不応期(AERP)の終了までに次に予定されている心房ペースの供給を遅延させることによって心房の組織が不応である間、システムは心房ペーシングを送らないようにする。
【0056】
図1Eのフローチャートにおいて、システムは、次に予定されている心房ペーシングパルスを送り(139)、AV(房室)の期間において、心室の内因性の減極が検知されない場合、心室ペースを送る(141)。PVARP期間において、例えば、心室ペースまたは内因性の心室減極に続いて、システムは、逆行性P波を検知する。逆行性P波が検出されない場合(142)、次のサイクルのための逆行管理は必要とされなくなり、システムは、A−A間隔が終了した後(167)で、次に予定される心房パルスを送る(139)。
【0057】
逆行性P波が検出された場合(142)、逆行性P波から次に予定される心房ペースまでの時間が心房の有効不応期(AERP)より長いかを判断するためのチェックが行われる。例えば、好適なAERPは患者次第で変化するが、約200〜約300ミリ秒である。時間間隔がAERPより短い場合、AERPが終了した後に、次の心房ペーシングパルスを発生させるために、該次の心房ペーシングパルスを遅延させて、予定変更される(149)。時間間隔がAERPより長いことが判定された場合(145)、次の心房ペーシングパルスのタイミングは変更されず、システムは、ステップ139および167において予定された通りに、次の心房ペーシングパルスを送り出す。
【0058】
次の心房ペーシングパルスが遅延し(149)、その時間以前に心房が検知されない場合(144)、遅延された心房ペーシングパルスのエネルギは、捕捉を確実にするために前もって送出されたペーシングパルスより増加される(146)。遅延された心房ペーシングパルスのエネルギは、例えば、電圧を大きくしたり、ペーシングパルスのパルス幅を広げたりすることによって、増加され得る。次に、高エネルギの心房ペーシングパルス147が送出された後、心房の誘発応答が検出されたかが判定される(148)。このステップは、現在AERPが十分に長いかどうか判断する。高エネルギの心房ペース(147)に対する誘発応答が検出された場合(148)、AERPは十分に長く、そして、現在AERPが維持され得る。高エネルギ心房ペースに対して誘発応答がない場合(148)AERPの長さは不十分であり、調整される(165)。システムは、心室をペーシングあるいは検知し(166)、次のA−A間隔を待機する(167)。
【0059】
図1Eのフローチャートに関連して記載されている逆行管理方法の動作は、図1Fおよび図1Gのグラフに示されている。図1Fは、バックアップペーシングを送らず、また逆行管理されない場合のペースメーカのペーシング応答グラフを示す。図1Fのグラフにおいて、心房ペース152がもたらされるが、捕捉は生じない。心室ペーシングパルス158は、房室(AV)遅延の後に送られる。心室ペーシングパルス158の後にPVARP 140が続く。逆行伝導が生じ、これによってPVARP 140期間において検知される逆行性P波153が生じる。PVARPは、逆行性P波がAV間隔を開始しないようにする。しかしながら、逆行管理がされないため、次に予定される心房ペース154は心房不応期170に送られる。心房ペーシングパルス154は無効であり、他の心室ペーシングパルス160が設定され、その後に、PVARP140、そして、再び逆行性P波155が続く。このプロセスは、無効心房ペーシングパルス156と、次の心室ペーシングパルス162に対して連続的に行われ、結果的に反復される無効心房ペースとAV同期性の損失が生じる。
【0060】
図1Gは、本発明の実施の形態による、バックアップペーシングは送らないが、逆行管理方法を有する、ペースメーカのペーシング応答グラフを示す。図1Gのグラフにおいて、心房パルス172がもたらされるが、捕捉は発生しない。心室ペーシングパルス178が房室遅延後にもたらされる。心室ペーシングパルス178の後に、PVARP 140が続く。逆行伝導が発生し、これによって、PVARP 140期間において検知される逆行性P波173が生じる。ペースメーカは、検出された逆行性P波173に対してAERP 170を開始する。検知された逆行性P波173によって、ペースメーカは、AERP 170の終了まで、次の心周期において対して心房ペース174を遅延させる。AERP 170の終了後、次に予定される心房ペース174を遅延させることによって、心房の組織が逆行性P波173のために不応である間に次に予定される心房ペース174が送られないようにする。誘発応答信号126は、心房ペースの後で検知され得る。AV同期性および有効心房ペーシングは、次に来る心周期期間も心房176と心室180、182のペーシングパルスに対して維持される。
【0061】
本明細書中に記載されている捕捉検証および逆行管理プロセスは、左心房や右心房に関して利用され得る。本発明の種々の実施の形態においては、ペーシングおよび検知に対して同じ電極の組合せが使用される。他の実施の形態においては、捕捉検証のためのペーシングに続く心臓信号を検知するために使用される電極組合せとは異なるペーシングのための電極の組合せが使用される。ペーシングおよび検出のための異なる電極組合せを使用することによって、心臓応答判断が改善され得る。更に、同一または異なる電極組合せによって、誘発応答の検知および逆行性P波の検知の際に利用され得る。
【0062】
本明細書において例示されている本発明のシステムの実施の形態は、一般に、従来の技術において公知の多数のペーシング・モードで動作し得る植込み型心臓ペースメーカ/除細動器(PD)において実施され得るものとして記載されている。様々なタイプの単一または複数のチャンバ植込み型心臓ペースメーカ/除細動器が、従来の技術において公知であり、本発明の心房捕捉検証方法についても使用され得る。本発明の方法は、例えば、デュアルチャンバ(二部構造)ペースメーカ、除細動器、電気除細動器、双心室ペースメーカ、心臓再同期調整器、を含む種々の植込み型または患者外装式心臓律動管理デバイスにおいて実施され得る。
【0063】
本発明によるシステムが、マイクロプロセッサベースのアーキテクチャを有する植込み型心臓ペースメーカ/除細動器と関連して記載されているが、所望ならば、再同期調整再同期調整/除細動器(または他のデバイス)が任意の論理ベースの集積回路アーキテクチャにおいても実施され得ることが理解されよう。
【0064】
次に、図面の図2を参照すると、本発明の捕捉検証および逆行管理方法を実施するために使用され得る心臓律動管理システムが示されている。図2の心臓律動管理(CRM)システムは、リードシステム202に電気的におよび物理的に接続されたPD200を含む。PD200のハウジングやヘッダは、心臓電気的活動を検知するために心臓へ電気刺激エネルギを付与するために使用される一つ以上の電極208、209を組み込むことができる。PD200は、缶電極209としてPDハウジング全てまたは一部を利用することができる。PD200は、例えば、PD200のヘッダまたはハウジング上に位置決めされる中性電極208を含むことができる。PD200が缶電極209および中立電極208の両方を含む場合、一般に、電極208、209は、互いに電気的に絶縁される。
【0065】
リードシステム202は、心臓201によって生成される電気的な心臓信号を検出して、いくつかの所定の条件の下で心臓201へ電気的エネルギを付与して、心臓不整脈を治療するために使用される。リードシステム202は、ペーシングや検知あるいは除細動のために使用される一つ以上の電極を含んでもよい。図2に示されている実施の形態において、リードシステム202は、心臓内右心室(RV)リードシステム204、心臓内右心房(RA)リードシステム205、心臓内左心室(LV)リードシステム206および心臓外左心房(LA)リードシステム210を含む。図2のリードシステム202は、本明細書中に記載されている方法ともに使用され得る一実施の形態を示す。他のリードや電極が付加的または代替的に使用され得る。
【0066】
リードシステム202は、心臓201に挿入される心臓内のリード204、205、および206の部分によって人体に植込まれる心臓内リード204、205、および206を含むことができる。心臓内リード204、205、および206は、電気的活動を検知するとともに、心臓のさまざまな不整脈を治療するために、例えば、ペーシングパルスや電気的除細動ショック等の電気刺激エネルギを心臓へ送るための心臓内部に位置決め可能な電極を含む。
【0067】
図2に示されているように、リードシステム202は、電極(例えば、心外膜電極)を有し、一つ以上の心臓のチャンバを検出したり、ペーシングしたりするために心臓の外側の場所に位置決めされた、一つ以上の心臓外リード210を含み得る。
【0068】
図2に示された右心室リードシステム204は、SVC−コイル216、RV−コイル214、RV−リング電極211およびRV−先端電極212を含む。右心室リードシステム204は、右心房220を介して右心室219へ延出する。具体的には、RV−先端電極212、RV−リング電極211およびRV−コイル電極214は、電気的刺激パルスを検知し、該電気的刺激パルスを心臓に送るために右心室219の内の適所に位置決めされる。SVC−コイル216は、右心房チャンバ220内の適当な位置または右心房220につながる主要静脈に位置決めされる。
【0069】
一つの構成において、缶電極209に基準化されたRV−先端電極212は、右心室において単極ペーシング、検知、またはその両方を実施するために使用され得る。右心室における双極ペーシングや検知は、RV−先端212およびRV−リング211の電極を用いて実施され得る。さらに他の構成において、RV−リング211の電極は、任意に省略されてもよく、双極ペーシング、検知、またはその両方は、例えば、RV−先端電極212およびRV−コイル214を用いて達成され得る。右心室リードシステム204は、統合双極ペーシング/ショックリードとして構成され得る。RV−コイル214およびSVC−コイル216は、除細動電極である。
【0070】
左心室リード206は、ペーシング、検知、またはその両方のために左心室224内またはその周辺の適切な位置に配置されたLV遠位電極213およびLV近位電極217を含む。左心室リード206は、上大静脈を通って心臓の右心房220に案内され得る。右心房220から、左心室リード206は、冠状静脈洞小孔(冠状静脈洞の開口)内へ配置され得る。リード206は、冠状静脈洞を介して左心室224の冠状静脈へ案内され得る。
この静脈は、心臓の右側から直接アクセスできない左心室の表面に達するようにリード用のアクセス経路として使用される。左心室リード206のためのリード配置は、鎖骨下静脈アクセスと、左心室に隣接するLV電極213、217を挿入するための予め形成された案内カテーテルと、を介して達成され得る。
【0071】
左心室224における単極ペーシング、検知、またはその両方は、例えば、缶電極209に基準化されたLV遠位電極213を用いて実施され得る。LV遠位電極213とLV近位電極217は、左心室のための双極性検知、ペース電極、またはその両方として一緒に使用され得る。左心室リード206および右心室リード204は、PD200と共に、心臓の心室がほぼ同時にペーシングされるように心臓再同期化治療を施すために、または、位相されたシーケンスにおいて、心不全患者のために改良された心臓のポンプ効率を提供するために使用され得る。
【0072】
右心房リード205は、右心房220を検知すると共にペーシングするために右心房220内の適切な場所に位置決めされたRA-先端電極256およびRA−リング電極254を含む。一つの構成において、缶電極209に基準化されたRA−先端電極256は、例えば、右心房220内で単極のペーシング、検知、またはその両方を提供するために使用され得る。他の構成では、RA−先端電極256およびRA−リング電極254は、双極式ペーシング、検知、またはその両方を実行するために使用され得る。
【0073】
図2は、左心房リードシステム210の一つの実施の形態を示す。この例において、左心房リード210は、左心房222を検知およびペーシングするために心臓201の外側の適切な場所に配置されたLA遠位電極218およびLA近位電極215を有する心臓外リードとして実施される。左心房の単極ペーシング、検知、またはその両方は、例えば、缶電極209ペーシングベクトルのLA遠位電極218を用いて達成され得る。左心房の双極ペーシング、検知、またはその両方は、LA遠位電極218およびLA近位電極215の使用によって達成され得る。
【0074】
ここで、図3を参照すると、本発明の心房捕捉検証および逆行管理方法を実施するために適切な心臓のペースメーカ、除細動器300またはその両方の実施の形態が示されている。図3は、機能ブロックに分割される心臓ペースメーカ/除細動器を示す。これらの機能ブロックが配列され得る可能性のある多くの構成が存在することが当業者によって理解されよう。図3に示される例は、一つの実行可能な機能配列である。他の配列も適用可能である。例えば、いくつかの又は様々な機能ブロックが、本発明の方法を実施する為に好適な心臓の心臓ペースメーカ/除細動器を説明するために使用され得る。更に、図3に記述された心臓ペースメーカ/除細動器300は、プログラム可能なマイクロプロセッサベースの論理回路の使用を考慮に入れているが、他の回路実施も利用可能である。
【0075】
図3に記述された心臓ペースメーカ/除細動器300は、心臓から心臓信号を受け取り、ペーシングパルスまたは除細動ショックの形態の電気的刺激エネルギを心臓へ付与するための回路を含む。一つの実施の形態において、心臓ペースメーカ/除細動器300の回路は、人体への植込みに適したハウジング301に収容され気密密閉される。心臓ペースメーカ/除細動器300への電力は、バッテリ380によって供給される。コネクタブロック(図示せず)は、心臓ペースメーカ/除細動器300のハウジング301に装着され、これにより、心臓ペースメーカ/除細動器300の回路へのリードシステム導電体の物理的および電気的装着が可能となる。
【0076】
心臓ペースメーカ/除細動器300は、コントロールシステム320およびメモリ370を含む、プログラム可能なマイクロプロセッサベースのシステムであってもよい。メモリ370は、他のパラメータとともに、さまざまなペーシング、除細動および検知モードのためのパラメータを格納することができる。更に、メモリ370は、心臓ペースメーカ/除細動器300の他の部品によって受け取られる心臓信号を表すデータを格納し得る。メモリ370は、例えば、ヒストリカルなエレクトログラム(EGM)および治療データを格納するために使用され得る。ヒストリカルなデータの格納には、例えば、傾向変動や他の診断目的のために使用される長期間にわたる患者のモニタリングによって得られるデータを含み得る。ヒストリカルデータは、他の情報と共に、必要に応じて、あるいは、所望通りに、外部のプログラマユニット390へ送信され得る。
【0077】
コントロールシステム320は、心臓ペースメーカ/除細動器300の動作をコントロールするために、心臓ペースメーカ/除細動器300の他の構成要素と協動し得る。一つの例において、心臓ペースメーカ/除細動器300は、患者の血行力学的ニーズを判断するためのセンサを組み込むことができる。センサ出力は、患者の活動レベルに適合された速度で、ペーシングを送るために、コントロールシステム320によって使用され得る。いくつかの実施において、心臓ペースメーカ/除細動器300は、血行力学的なニーズを決定するために患者の活動レベル、呼吸数、またはその両方を決定するための加速度計や経胸腔的インピーダンスセンサの構成要素を含み得る。
【0078】
図3において記述されたコントロールシステム320は、本発明の種々の実施の形態によるペーシング刺激に対する心臓応答を判定するために心臓応答分類プロセッサ325を含む。コントロールシステム320は、ペースメーカ制御回路322、不整脈検知器321、テンプレート・プロセッサ324、および心臓ペースメーカ/除細動器300の動作をコントロールするための他の構成要素を含む更なる機能構成要素を含むことができる。
【0079】
遠隔測定回路360は、心臓ペースメーカ/除細動器300と外部プログラマユニット390間で通信するために実施され得る。一つの実施の形態において、遠隔測定法回路360とプログラマユニット390は、プログラマユニット390と遠隔測定法回路360の間で信号およびデータを送受信するために、従来の技術において知られているように、ワイヤループアンテナおよび無線周波数遠隔測定リンクを用いて通信する。このように、プログラミングコマンドと他の情報は、植込み最中と植込み後に、プログラマユニット390から心臓ペースメーカ/除細動器300のコントロールシステム320まで転送され得る。更に、例えば、捕捉閾値、捕捉検出や心臓応答分類、関連する格納された心臓データは、他のデータとともに、心臓ペースメーカ/除細動器300から、プログラマユニット390へ転送され得る。
【0080】
図3に示されている心臓ペースメーカ/除細動器300の実施の形態において、RA−先端電極256、RA−リング電極254、RV−先端電極212、RV-リング電極211、RV−コイル電極214、SVC−コイル216、LV遠位電極213、LV近位電極217、LA遠位電極218、LA近位電極215、中間電極208、および缶電極209が、切換マトリクス310を介して、検知回路331〜337に接続されている。
【0081】
右心房検知回路331は、心臓の右心房から電気信号を検出して、該電気的信号を増幅させるように作用する。例えば、単極検知は、RA−先端電極256と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。右心房検知回路からの出力は、コントロールシステム320に接続される。
【0082】
右心室検知回路332は、心臓の右心室からの電気信号を検出し、増幅するように作用する。RV−先端電極212の使用によって検知された右心室心臓信号は、右心室近距離信号であり、RV率チャネル信号として示される。双極RV率チャネル信号は、RV−先端212およびRV−リング211の間で発達した電圧として検知され得る。あるいは、右心室の双極検知は、RV−先端電極212およびRV−コイル214を使用して実施され得る。右心室における単極率チャネル検知は、例えば、電圧がRV−先端電極と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。
【0083】
除細動電極の使用によって検出される右心室心臓信号は、RV形態またはRVショックチャネル信号とも呼ばれる遠距離信号であってもよい。より具体的には、右心室ショックチャネル信号は、RV−コイル214とSVC−コイル216の間で発達した電圧として検出され得る。右心室ショックチャネル信号も、RV-コイル214と缶電極209の間で発達した電圧として検出され得る。他の構成において、缶電極209とSVC−コイル電極216が電気的に短絡されてもよく、RVショックチャネル信号がRV−コイル214と缶電極209/SVC−コイル電極216の組合せ電極との間で発達した電圧として検出され得る。
【0084】
左心房心臓信号は、心外膜電極として構成され得る一つ以上の左心房電極215、218を使用することによって検知され得る。左心房検知回路335は、心臓の左心房から電気信号を検出し、増幅するように作用する。左心房における双極検知、ペーシング、またはその両方は、例えば、LA遠位電極218およびLA近位電極215を使用して実施され得る。左心房における単極検知、ペーシング、またはその両方は、例えば、LA遠位電極218から缶電極209まで、または、LA近位電極215から缶電極209までのベクトルを使用することによって達成され得る。
【0085】
左心室検知回路336は、心臓の左心室からの電気信号を検出して、増幅するように作用する。左心室における双極検知は、例えば、電圧がLV遠位電極213およびLV近位電極217の間で発達された電圧を検知することによって、実施され得る。単極検知は、例えば、LV遠位電極213またはLV近位電極217から缶電極209までの間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。
【0086】
任意であるが、LVコイル電極(図示せず)は、左心室に隣接する、患者の心臓脈管構造、例えば冠状静脈洞に挿入され得る。LV電極213および217、LVコイル電極(図示せず)や缶電極209の組合せを用いて検出された信号は、左心室検知回路336によって検知され増幅され得る。左心室検知回路236の出力は、コントロールシステム320と接続される。
【0087】
切換マトリックス310の出力は、電極211、212、213、214、216、217、218、254および256の選択された組合せを誘発応答検知回路337と接続するために作動されることができる。誘発応答検知回路337は、本発明の実施例による心臓応答分類のためのさまざまな組合せの電極を使用して発達した電圧を検出し増幅させるように作用する。
【0088】
本明細書中に記載されている実施の形態において、ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するために、ペーシングパルスに続く心臓信号のペーシングおよび検知に関連して、ペーシング電極と検知電極の種々の組合せが使用され得る。例えば、いくつかの実施の形態において、第1の電極の組合せが心腔をペーシングするために使用され、第2の電極の組合せはペーシングに続いて心臓信号を検知するために使用される。他の実施の形態において、同じ電極の組合せが、ペーシングおよび検知のために使用される。更に、逆行性P波を検知するために使用される電極は、心房の誘発応答を検知するために使用される電極とは異なってもよいし、または、同じであってもよい。
【0089】
ペースメーカコントロール回路322は、左心房、右心房、左心室および右心室のためのペーシング回路と組み合わされて、種々の電極の組合せを用いて、ペーシングパルスを選択的に生成し、該ペーシングパルスを心臓へ送るように実施され得る。本明細書中に記載されているように、ペーシング電極の組合せは、心臓のチャンバの双極または単極のペーシングを実行するために使用され得る。
【0090】
ここで述べるように、双極または単極のペーシングパルスは、上述のペーシングベクトルの一つを用いて、心腔へ送られてもよい。ペーシングパルスの送出後の電気的信号は、切換マトリクス310を経て心臓応答分類プロセッサ325に接続された種々の検知ベクトルを介して検知され、ペーシングに対する心臓応答を分類するために使用され得る。
【0091】
切換マトリックス310は、ペーシングおよび除細動電極のさまざまな構成に対して接続性をもたらすように配列され得る。切換マトリクス310の出力は、選択された組合せの電極間で検出された心臓信号を検知すると共に増幅するように作用する誘発応答(ER)検知回路337と接続され得る。検出信号は、ER増幅器337を介して、心臓応答分類プロセッサ325に接続される。心臓応答分類プロセッサ325は、ペーシング刺激に対する心臓応答を判断するように構成された回路を含む。誘発応答の有無は、本発明の実施例よる、ペーシングパルスに続いて検知される心臓信号の振幅、ピーク値、ピークタイミングや他の形態学的な特徴に基づいて判断され得る。
【0092】
一つの実施において、心臓ペースメーカ/除細動器300は、本明細書中に記載されているように、心房の誘発応答(AER)を検知するために誘発応答チャネル337を利用できる。心臓ペースメーカ/除細動器300は、右心房において逆行性P波を検知するのに右心房検知チャネル331を利用できる。心臓ペースメーカ/除細動器300は、左心房において逆行性P波を検知するために左心房検知チャネル335を利用できる。
【0093】
図4Aは、本発明による逆行伝導に基づいた捕捉検出の方法400を更に説明するフローチャートである。心房ペーシングパルス402が送られ、内因性の心室減極が検出されたかが判断される(404)。内因性の心室減極が検出されなかった場合(404)、心室ペーシングパルスが送られる(406)。PVARPは、心室ペーシングパルスまたは内因性の心室減極の後に、開始される(408)。PVARP を始めた後(408)に、システムは、逆行性P波を検知する(410)。PVARPの期間において(413)、逆行性P波が検出された場合(412)、心房非捕捉が確認される(413)。PVARPの期間において(413)、逆行性P波が検出されなかった場合(412)、心房非捕捉が確認されない(414)。
【0094】
図4Bは、本発明による逆行管理の方法430を示すフローチャートである。心房ペーシングパルス432が送られ、心房の誘発応答が検出されたかが判断される(434)。心房の誘発応答を検出されず(434)、バックアップペーシングが利用できない場合(440)、逆行性P波が検知される(ステッ442)。逆行性P波が検出された場合(444)、AERPの後に次の心房パルスが予定された場合(448)、次の心房パルスが予定通り送り出される(446)。AERPの後に次の心房ペースが予定されていない場合(448)、ペーシングエネルギが増加され(450)、AERPの後に高エネルギペーシングパルスが送られる(452)。心房の誘発応答のチェックの際(434)、誘発応答が検出された場合、捕捉が確認される(436)。心房の誘発応答のチェックの際(434)、誘発応答が検出されないが、バックアップペーシングが使用可能である場合(440)、バックアップペーシングは心房へ送られる(438)。逆行性P波が検出されない場合(444)、次の心房ペースが予定通りに送り出され得る(446)。
【0095】
図4Cは、本発明によれば捕捉検証および逆行管理の方法(460)を示すフローチャートである。心房ペーシングパルス462が送られ、心房の誘発応答が検出されたかがチェックされる(464)。検出された心房の誘発応答があった場合(464)、捕捉が確認され(492)、逆行管理は用いられない(494)。検出された心房の誘発応答がなかった場合(464)、非捕捉が確認され(492)、非捕捉が推測され(466)、内因性の心室減極がチェックされる(468)。心室の減極を発見されなかった場合(468)、心室ペーシングパルスが送られる(470)。心室の減極が発見された場合(468)、心室ペーシングパルスを送らずに(470)、PVARP (472)が開始される。PVARPを開始した後(472)、逆行性P波が検知される(474)。逆行性P波が検出された場合(476)、心房非捕捉が確認され(482)、AERPの後で次の心房ペースが予定されているかを見るためにチェックされる(484)。チェックの際、AERPの後で次の心房ペースが予定されていると判断された場合(484)、次の心房パルスは予定通りに送られる(486)。チェックの際、AERPの後で次の心房ペースが予定されないと判断された場合(484)、ペーシングエネルギは増加され(488)、AERPの後でより高いエネルギパルスが送られる(490)。逆行性P波が検出されない場合(476)、心房非捕捉は確認されず(478)、逆行管理も使用されない(480)ので、次の心房パルスは予定通りに送られる。
【0096】
本発明の実施の形態は、捕捉検出のために使用される方法を含む。本明細書中に記載されている方法および装置は、捕捉および融合収縮を識別するために、捕捉応答信号の安定形態を有利に利用する。捕捉応答信号の特定の特徴のタイミングにおける変動性は、ある程度の信頼度によって判断され得る。本明細書中に記載されている実施の形態において例示されているように、捕捉応答信号特徴のタイミングの変動性が捕捉検証と関連して使用され得る。
【0097】
心腔の捕捉は、ペーシングパルスに続く心腔の心臓信号を分析することによって検出され得る。心臓信号は、ペーシングパルスに続く空白期間の後に開始される分類期間において検知される。分類期間中に検知された心臓信号は、ペーシングパルスに対する信号応答を判断するために使用され得る。例えば、当該分類期間内で検知される心臓信号の一つ以上の特徴、サンプル、または形態特性は、ペーシングに対する特定のタイプの心臓応答を特徴付けるテンプレートや他の基準と比較され得る。例えば、テンプレートは、捕捉応答、非補足応答、または融合収縮を特徴づけることができる。分類期間において検知される心臓信号がテンプレートと整合している場合、当該ペーシングパルスに対する心臓応答は、テンプレートによって表される特定のタイプのペーシング応答として分類される。
【0098】
心臓信号の特徴、サンプルまたは形態特性が、対応するテンプレートの特徴、サンプル、または形態特性と十分に類似していると判断された場合、心臓信号はテンプレートと整合していると考えられ得る。ある心臓信号が、特定のタイプの心臓応答を示すテンプレートと十分に類似している場合、当該心臓信号は、特定のタイプの心臓応答として分類され得る。いくつかの実施の形態は、ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するために有用で適合可能な(adaptable)心臓応答分類期間を実施するための方法およびシステムに関する。分類期間は、例えば、心臓応答信号の一つ以上の特徴に関連する統計パラメータを使用して適合され得る。適合可能な分類期間は捕捉を検出したり、捕捉応答、非捕捉応答および融合収縮の二つ以上を識別したりするために使用され得る。
【0099】
適合可能な分類期間は、特定のタイプの心臓ペーシング応答(例えば、捕捉)を表示する心臓信号特徴が検出される可能性が最も高いペーシングパルスに続く期間を示す。適合可能な間隔において検知された心臓信号は、心臓ペーシング応答を判断するために使用される。適合可能な分類期間は、患者それぞれに対して個別化され、これによって、患者交差分散(cross patient variance)が低減される。心房の融合管理は、心室の融合管理におけるようなペーシングを強化し、融合を回避するために、AV遅延を短期化することに依存できないので、適合可能な分類期間は、心房ペーシングのための融合と捕捉を識別する際に特に有用である。
【0100】
心臓応答分類期間を初期化、適合させる方法は、図5Aのフローチャートにおいて示されている。分類期間は、心臓信号の特定の特徴が特定のタイプの心臓ペーシングパルスに対して検出される可能性が最も高い期間を含む。分類期間は、捕捉応答に関連する心臓信号特徴などの心臓信号特徴のタイミングに基づいて初期化され得る(1110)。心臓信号特徴は、例えば、心臓信号の正ピーク値、負ピーク値、または他の形態特徴を含んでもよい。
【0101】
最初の分類期間の継続時間は、所定の長さを有し得る。いくつかの実施形態において、心臓信号特徴のタイミングは、分類期間の中心点を定めるために使用され得る。そうではない他の実施の形態において、分類期間は、心臓信号特徴に関して一時的に調整される。ある概要において、最初の分類期間に使用される特徴のタイミングは、テンプレート初期化手順において生成される心臓応答テンプレートに基づいて決定される。テンプレート初期化手順は、捕捉応答を特徴づける一つ以上の特徴を含むテンプレートを得るために実行され得る。
【0102】
分類期間の初期化に続いて、心臓応答(例えば、捕捉応答)のタイプに関連する一つ以上の引き続く心臓信号が検知される(1120)。該一つ以上の次の心臓信号は、例えば、患者の処方されたペーシング療法に関連して、または、心臓ペーシングおよび捕捉検出を含む他のプロセスの期間に送られるペーシングパルスに続いて、検知され得る。心臓信号特徴のタイミング変動性は、過去、次の心臓信号、またはその両方を用いて判断される(1130)。分類期間の期間は、タイミング変動性に基づいて適合される(1140)。
【0103】
図5Bは、選択された心臓信号特徴に対する分類期間の調整をグラフに示し、この例において、心臓信号の正ピークを含む。本実施の形態において、図5Bのグラフによって示されるように、継続時間2×Aの分類期間1121は、ペーシングパルス1111に続く捕捉応答信号1112のピーク1115のタイミング1118に基づいて初期化される。ピークのタイミング1118は、分類期間1121の中心をマークする。
【0104】
初期化に続いて、ペース1111に次に一つ以上のペースが送られ、システムは、該次のペースの送出に続く心臓信号を検知する。次の信号が捕捉を示した場合、次の捕捉応答信号の各々のピーク振幅タイミングが検出される。当該捕捉応答信号のピーク振幅タイミングの変動性が判断される。ピーク振幅タイミング変動性は、最初の分類期間1121の上限1122および下限1123を更新するかまたは適合させるように使用される。
【0105】
適合可能な分類期間を含む本発明の実施の形態が、図6A〜図6Cに示されている。ピーク振幅およびピーク振幅タイミング(T0)を含む捕捉応答テンプレートが初期化処理において得られる。分類期間1200は、ペーシングパルス1205に続く時間の間隔として初期化される。初期の心臓応答分類期間1200は、T0を分類期間1200の初期中心点1210(M0)として使用する。所定範囲(R0)は、初期の分類期間のための初期範囲として選択され使用される。このように、初期の心臓応答分類期間は、初期中間点1210、M0、M0+R0の上限範囲1212およびM0−R0の下限範囲1211を有する。
【0106】
図6Bおよび6Cは、分類期間の適合を示す。図6Bは、適合の前の分類期間を示す。
分類の中心点1220は、Mi-1で示されている。分類期間の上限範囲1222は、Mi-1+Ri-1で示され、下限範囲1221は、Mi-1−Ri-1で示される。図6Cは、i番目の拍動と称される、次のペーシングされた拍動の後の心臓応答分類期間を示す。i番目の拍動のピーク振幅時間(Ti)が決定される。Tiが[Mi-1−Ri-1,Mi-1+Ri-1]の範囲内にある場合、i番目の拍動が融合ではなく、捕捉拍動であると考えられ、Tiは分類期間を適合するために使用される。そうでない場合、i番目の拍動は融合と考えられ、この範囲はその拍動からの情報を用いて更新されない。
【0107】
一つの実施の形態において、図6Cに示されるように、Tiは、適合分類期間の新しい中心点1230、Mi、新しい下限範囲1231、Mi−Ri、および新しい上限範囲1232、Mi+Riを生成するために使用される。Miに対する新しい値は、例えば、前の捕捉拍動に関連するピークタイミングの統計関数に基づいて決定され得る。一つの例において、Miに対する新しい値は、全ての先行される捕捉拍動、Tk(ここで、k=1,2,3,...,i)のピーク振幅タイミング値の平均を含む。あるいは、他の統計関数(重み付けされた平均値、メジアン値)は、Miを計算する為に使用され得る。Riに対する新しい値は、例えば、f*SDとして計算される(ここで、fは定数であり、SDは全ての先行する捕捉の拍動、Tkのピーク振幅タイミングの標準偏差である)。
【0108】
図7は、本発明の実施例に従って構成される分類期間を用いたペーシングパルスに対する心臓応答を分類する方法を例示しているフローチャートである。分類期間は、最初の中心点および範囲に対して初期化される(1310)。初期の分類期間は安定性のために調整される(1312)。安定化プロセスの間、例えば、分類期間の中間点、上限、下限またはその両方を含む心臓応答分類期間が一つ以上の捕捉拍動に基づいて変更される。一つの実施において、分類期間は、所定数の拍動を用いて調整され得る。
他の実施において、分類期間は、所定の安定基準が達成されるまで調整され得る。
【0109】
心腔へペーシングパルスを送リ出した後(1315)、心腔において検知された心臓信号のピーク振幅とピーク時間が決定される(1320)。ピーク時間が分類期間を超えた場合(1322)、心臓のペーシング応答は融合として分類される(1340)。ピークの時間が分類期間の範囲内にある場合、心臓信号振幅がチェックされる(1325)。
【0110】
ピーク振幅が閾値に等しいかまたはそれ以上である場合(1325)、心臓ペーシング応答は捕捉として分類される(1345)。ピーク振幅が閾値より下である場合(1325)、心臓ペーシング応答は非捕捉として分類される。
【0111】
融合が検出された場合(1340)、システムは、融合管理またはヒステリシス検索、即ち、(拍動対拍動の捕捉検証のアプリケーションにおいて)次のペーシングの前に内因性活動が発生するのを助長するためにペーシング間隔を延長したり、あるいは、(閾値試験のアプリケーションにおいて)次のペーシングを助長するためにペーシング間隔を短縮したりすることを含むプロセスを任意に開始し得る(1350)。例えば、AAIまたはVVIペーシングにおいて、例えば、融合が検出された後に、次の心周期に対するペーシング逃れ間隔(A−A間隔またはV−V間隔)が延長され、内因性の活動が発生し得る。DDDペーシングにおいて、融合が検出された後に、房室遅延が延長され、内因性の活動が促進され得る。
【0112】
融合が検出された場合(1340)、システムは溶融管理プロセスを任意に開始する(1350)。検出された振幅が検知レベル閾値を上回る場合、融合管理は、例えば、ペーシングパルスの送出前の検知およびペーシングの遅延を含んでもよい。心臓信号の振幅における上昇が、内因性の活動の存在を示すこともある。内因性の活動が検出されない場合、捕捉を確信させるに足るエネルギを有するバックアップペースが送られる。態様が本明細書中に記載されている実施の形態に組み込まれてもよい融合管理技術を含む方法および装置は、本明細書中に参照することによって組み込まれ、共通に所有されている米国特許第6,038,474号に説明されている。
【0113】
図8は、例えば、図7のブロック1312において使用され得る心臓応答分類期間を安定させる方法を示すフローチャートである。このプロセスでは、安定性が達成されるまで、心臓応答間隔は適合される。ペーシングパルスは心臓のチャンバへ送られる(1415)。ペーシングパルスを送った後で(1415)、心臓のチャンバにおいて検出された心臓信号のピーク振幅およびピークのタイミングが決定される(1420)。ピークの時間が分類期間を超えた場合(1422)、心臓のペーシング応答は融合として分類される(1440)。ピークの時間が分類期間内に収まる場合(1422)、心臓信号振幅がチェックされる(1425)。
【0114】
ピーク振幅が閾値以上である場合(1425)、心臓ペーシング応答は捕捉として分類される(1445)。ピーク振幅が閾値未満である場合(1425)、心臓ペーシング応答は非捕捉として分類される(1430)。
【0115】
ペーシングに対する心臓応答が捕捉として分類された場合(1445)、心臓信号のピークタイミングが分類期間を適合させるために用いられる。ステップ1450およびステップ1455において、捕捉拍動のピークタイミングの平均および標準偏差が求められる。分類期間の中心点は、平均的ピークタイミングを用いて変更される(1460)。分類期間の範囲は、ピークタイミングの標準偏差を用いて変更される(1465)。所定の安定基準が達成されれば、安定化が終了する(1475)。そうでない場合、安定基準が満たされるまで、あるいは、該プロセスが中断されるまで、プロセスは続けられる。一つの実施において、安定基準は、例えば、分類期間を適合させるために、所定の拍動数の使用を含み得る。他の実施において、中心点の変動や所定値未満の範囲など、例えば、メジアン値によって除算された標準偏差が約0.5を下回った場合、所定の安定基準に達するまで、分類期間の適合が続けられる。
【0116】
例えば、本発明のプロセスは、ペーシングのための最適エネルギを決定するために閾値試験に関連する心臓応答を判断するために使用され得る。最適ペーシングエネルギの決定は、例えば、捕捉閾値試験手順(procedure)によって実施され得る。更に、心臓応答分類期間は、拍動ごとにペーシング応答をモニタするために用いられる自動捕捉検証プロセスと関連して使用され得る。心臓に送られるペーシングパルスが捕捉応答を誘発できなかった場合、自動捕捉検証は、バックアップペーシングをコントロールするために使用され得る。以上のアプリケーションは、本発明のシステム及び方法の使用によって改良され得る。
【0117】
捕捉閾値試験手順を参照すれば、当業者が、左心房、右心房、左心室および右心室の一つにおける捕捉閾値を求める方法を理解するであろう。この種の手順において、ペースメーカは、自動的にまたはコマンドによって、選択された心臓のチャンバの捕捉閾値の検索を開始する。捕捉閾値は、一貫して心臓を捕捉する最も低いペーシングエネルギとして定義される。
【0118】
自動捕捉閾値手順の一つの例において、ペースメーカは、心臓に一連のペーシングパルスを送り、ペーシングパルスに対する心臓応答を検出する。所定数の捕捉損失応答が発生するまで、ペーシングパルスのエネルギは、離散的な段階を経て減少され得る。捕捉閾値を確認するために所定の捕捉応答数が発生するまで、ペースメーカは離散的な段階を経てステップの刺激エネルギを増加させることができる。捕捉閾値試験は、本発明の心臓応答分類方法を用いて実行され得る。
【0119】
捕捉閾値試験を実施するために他の手順が利用され得る。一つの実施例において、捕捉が検出されるまで、ペーシングエネルギは離散的な段階において増加し得る。他の例では、ペーシングエネルギは、2項式検索パターンに応じて調整され得る。
【0120】
捕捉閾値決定は、自動捕捉検出、即ち、ペーシング期間において拍動ごとに発生する手順と識別され得る。自動捕捉検出は、送られたペーシングパルスが結果的に捕捉応答を生じることを検証する。捕捉応答がペーシングパルスに続いて検出されない場合、ペースメーカは一貫したペーシングを確実にするためにバックアップ安全ペースを送ってもよい。バックアップペースは、例えば、最初のペーシングパルスの約70〜80ミリ秒後に送られてもよい。通常のペーシング期間に送られる所定数のペーシングパルスが捕捉応答を生成しない場合、ペースメーカは、捕捉閾値を決定するために捕捉閾値試験を開始し得る。あるいは、所定数のペーシングパルスが捕捉応答をもたらさない場合、ペースメーカは、次のペーシングパルスのためのペーシングエネルギ量を調整し得る。自動捕捉検出およびバックアップペーシングは、本発明の適合可能な分類期間や心臓応答分類プロセスを用いて実施され得る。
【0121】
ペーシングパルスはいかなる心腔にも送られてもよいし、ペーシングに対する心腔の心臓応答は、ペーシングパルスに続いて、チャンバ内で検出される心臓信号を評価することによって判断され得る。例えば、ペーシング刺激は、右心室、左心室、右心房および左心房の一つに送られ得る。本発明の種々の実施の形態は、ペーシングと検出に対して同じ電極の組合せを使用することを含む。他の実施の形態は、ペーシングに続く心臓信号を検出するために使用される電極の組合せとは異なるペーシングのための電極の組合せを使用することを含む。ペーシングと検出に対して異なる電極組合せを用いることによって、心臓応答分類を改良することができる。例えば、ペーシングと検出に対して異なる電極組合せを用いて、捕捉の検出を容易にしたり、捕捉拍動と融合収縮の識別を改良したりすることができる。
【0122】
本明細書中に記載されている実施の形態は、初期化を含み、適合可能な分類期間の使用、あるいは、所定期間の分類期間を利用が可能となり得る。心臓ペーシング応答の分類が、分類期間内で検出される心臓信号の一つ以上の特徴の変動性に基づいていてもよい。心臓信号の選択された特徴は、拍動間で追跡され得る。選択された特徴の変動性は、例えば、捕捉および融合収縮を識別するために使用され得る。
【0123】
図9、図10、および図11は、本発明の実施の形態による、心臓信号の選択された特徴の変動性に基づいた心臓検出方法を示す。ピーク振幅またはピークタイミングなどの選択された特徴の変動性は、変動性閾値を超えるように決定され、次に、心臓拍動が融合として分類される。選択された特徴の変動性が変動性閾値の範囲内にある場合、システムは、捕捉拍動または非捕捉拍動などの心臓応答を更に分類し得る。変動性閾値は、例えば、ある特定のタイプの心臓応答を表す先行の心臓信号の選択された特徴に関連する標準偏差または他の統計的関数に基づいて決定され得る。図9、図10、および図11に示される心臓応答分類方法は、心房または心室のチャンバのいずれかにおける捕捉と融合収縮を識別する際に特に有用である。
【0124】
本発明の方法は、ペーシングまたは捕捉閾値試験に関連して、拍動間の自動捕捉検証によって使用され得る。図9は、本発明の実施例による捕捉および融合収縮を識別するプロセスを示すフローチャートである。ペーシングパルスが送られ(1501)、該ペーシングパルスの後の心臓信号が検知される(1512)。心臓信号の一つ以上の特徴が検出される。先行する心臓拍動の対応する特徴と比較した該心臓信号の一つ以上の特徴の変動性が判断される(1513)。システムは、心臓信号特徴の変動性に基づいて、捕捉および融合収縮を識別する(1534)。
【0125】
図10のフローチャートは、心臓応答判断プロセスを更に示す。初期化位相期間(1605)において、システムは、一連のペーシングパルスを送り、心臓信号特徴の変動性を追跡する。各追跡された特徴に対する変動性閾値は、初期化位相期間中に検出された信号に基づいて決定される。
【0126】
ペーシングパルスは心腔に送られる(1610)、パルスペーシングに続いて心臓信号が検知される(1615)。心臓信号の心臓信号特徴が検出される(1620)。例えば、図12のグラフによれば、心臓信号が非捕捉信号である場合(1822)、心臓信号の検出された特徴は、最大ピーク振幅(1822):Vnc−max、最大のピーク振幅タイミング(1828):Tnc−max、最小のピーク振幅(1823):Vnc−minや最小のピーク振幅タイミング(1821):Tnc−minの一つ以上を含み得る。
【0127】
心臓信号が捕捉応答である場合(1812)、心臓信号の検出された特徴は、最大のピーク振幅(1815):Vc−max、最大のピーク振幅タイミング(1818):Tc−max、最小のピーク振幅(1813):Vc−minや最小のピーク振幅タイミング(1811):Tc−minの一つ以上を含むことができる。
【0128】
図10に戻ると、システムは、検出された心臓信号の特徴の変動性を決定する(1625)。特徴タイミング変動性が変動性閾値を超過する場合(1630)、融合が検出される(1635)。この概要において、図7に関して記載されているように、ヒステリシス検索または融合管理プロセスが実施され得る(1640)。
【0129】
特徴タイミング変動性が変動性閾値を超過しない場合(1630)、システムは、ペーシングパルスが捕捉を生じたか否かを判定する。非捕捉と判断された場合(1645)、心臓信号が、それぞれ非捕捉応答の特徴に関連している一つ以上の変動性閾値を更新するために使用され得る(1646)。例えば、非捕捉のピークタイミングは、非補足のピークタイミングの変動性閾値を更新するために使用され得る。他の実施例において、非捕捉ピーク振幅は、非捕捉振幅変動性閾値を更新するために使用され得る。
【0130】
捕捉の損失が確認された場合(1665)、捕捉閾値が決定され、試験は完了して終わらせる(1660)。y個の拍動のうちx個が非捕捉拍動であると判断された場合、捕捉の損失が確認される。一つの実施例においては、約4つの拍動のうち約2つが非捕捉拍動である場合、捕捉の損失が確認される。
【0131】
拍動が捕捉拍動であると判断された場合(1645)、心臓信号は、捕捉検出間隔やそれぞれが捕捉応答の特徴と関連付けられた一つ以上の変動性閾値を更新するために使用される(1655)。例えば、捕捉応答ピークタイミングは、分類期間の範囲、中間点またはその両方を更新するために使用され得る。捕捉応答信号のピークのタイミングは、捕捉された応答ピークタイミングの変動性閾値を更新するために使用され得る。捕捉された応答信号のピーク振幅は、捕捉された振幅変動性閾値を更新するために使用され得る。
【0132】
図11のフローチャートは、本発明の実施の形態による、拍動間の自動捕捉検証(1705)のために使用される捕捉検出方法を示す。ペーシングパルスが心臓のチャンバに送られ(1710)、ペーシングパルスに続く心臓信号が検出される(1715)。心臓信号の心臓信号特徴が検出される(1720)。例えば、図12のグラフを参照して、心臓信号が非捕捉信号である場合(1822)、心臓信号の検出された特徴は、最大ピーク振幅(1825):Vnc−max、最大ピーク振幅タイミング(1828):Tnc−max、最小ピーク振幅(1823):Vnc−minや最小のピーク振幅タイミング(1821):Tnc−minの一つ以上を含み得る。
【0133】
心臓信号が捕捉応答である場合(1812)、心臓信号の検出された特徴は、最大ピーク振幅(1815):Vc−max、最大ピーク振幅タイミング(1818):Tc−max、最小のピーク振幅(1813):Vc−minや最小のピーク振幅タイミング(1811):Tc−minの一つ以上を含むことができる。
【0134】
システムは、検出された心臓信号特徴の変動性を判断する(1725)。特徴のタイミング変動性が変動性閾値を超過する場合(1730)、融合が検出される(1735)。この概要において、図7に関して上記に説明されているように、ヒステリシス検索または融合管理プロセスが実施され得る(1740)。
【0135】
特徴のタイミング変動性が変動性閾値を超えない場合(1730)、システムは、ペーシングパルスが捕捉を生じたか否かを判定する。非捕捉であると判断された場合(1745)、バックアップペースは、一般に、捕捉が確信できるエネルギレベルで送られる(1746)。非捕捉心臓信号は、それぞれが非捕捉応答の特徴に関連している一つ以上の変動性閾値を更新するために使用され得る(1760)。例えば、非捕捉ピークのタイミングは、非捕捉のピークタイミングの変動性閾値を更新するために使用され得る。他の実施例において、非捕捉のピーク振幅は、非補足の振幅変動性閾値を更新するために使用され得る。捕捉の損失が確認された場合、任意ではあるが、捕捉閾値試験が予定される(1765)。
【0136】
拍動が捕捉拍動であると判断された場合(1750)、心臓信号は、捕捉されたた応答信号を示すとともに、それぞれが捕捉された応答の特徴と関連している捕捉検出間隔、一つ以上の変動性閾値、またはその両方を更新するために使用される(1755)。例えば、捕捉応答ピークタイミングは、分類期間の範囲、中間点、またはその両方を更新するために使用され得る。捕捉された応答信号のピークタイミングは、捕捉された応答ピークタイミング変動性閾値を更新するために使用され得る。捕捉された応答信号のピーク振幅は、捕捉された振幅変動性閾値を更新するために使用され得る。
【0137】
次に、図13を参照すると、本発明の心房捕捉検証および逆行性管理方法を実施するために好適なペースメーカ/除細動器2000の実施の形態が示されている。図13は、機能ブロックに分割されるペースメーカ/除細動器を示す。これらの機能ブロックが配列される多くの可能性のある構成が存在することは、当業者によって理解されよう。図13において記述されている例は、一つの可能性のある機能的配列である。他の配列も適用可能である。例えば、いくつかの又は様々な機能ブロックが、本発明の方法を実施する為に好適な心臓のペースメーカ/除細動器を説明するために使用され得る。更に、図13に記述された心臓ペースメーカ/除細動器2000がプログラム可能なマイクロプロセッサベースの論理回路の使用を考慮に入れているが、他の回路実施も利用可能である。
【0138】
図13に記述された心臓ペースメーカ/除細動器2000は、心臓から心臓信号を受け取り、ペーシングパルスまたは除細動ショックの形態の電気的刺激エネルギを心臓に付与するための回路を含む。一つの実施の形態において、心臓ペースメーカ/除細動器2000の回路は、人体への植込みに適したハウジング2001に収容され気密密閉される。心臓ペースメーカ/除細動器2000への電力は、バッテリ2080によって供給される。コネクタブロック(図示せず)は、心臓ペースメーカ/除細動器2000のハウジング2001に装着され、これにより、心臓ペースメーカ/除細動器2000の回路へのリードシステム導電体の物理的および電気的装着が可能となる。
【0139】
心臓ペースメーカ/除細動器2000は、コントロールシステム2020およびメモリ2070を含む、プログラム可能なマイクロプロセッサベース・システムであってもよい。メモリ2070は、さまざまなペーシング、除細動および検知モードのためのパラメータを格納することができる。更に、メモリ2070は、心臓ペースメーカ/除細動器2000の他の部品によって受け取られる心臓信号を表すデータを格納し得る。メモリ2070は、例えば、ヒストリカルなエレクトログラム(EGM)および治療データを格納するために使用され得る。ヒストリカルなデータの格納には、例えば、傾向変動や他の診断目的のために使用される長期間にわたる患者のモニタリングによって得られるデータを含み得る。ヒストリカルデータは、他の情報と共に、必要に応じて、あるいは、所望通りに、外部のプログラマユニット2090へ送信され得る。
【0140】
コントロールシステム2020は、心臓ペースメーカ/除細動器2000の動作をコントロールするために、心臓ペースメーカ/除細動器2000の他の構成要素と協動し得る。一つの実施例において、心臓ペースメーカ/除細動器1000は、血液力学的な(hemodynamic)ニーズを決定するためのセンサを組み込むことができる。センサ出力は、患者の活動レベルに適合された速度で、ペーシングを送るために、コントロールシステム2020によって使用され得る。いくつかの実施において、心臓ペースメーカ/除細動器1000は、患者の活動レベルや呼吸数を決定するための加速度計や経胸腔的インピーダンスセンサの構成要素を含み得る。図13において記述されたコントロールシステム2020は、本発明の種々の実施の形態によるペーシング刺激に対する心臓応答を判定するために心臓応答分類プロセッサ2025を含む。コントロールシステム2020は、ペースメーカ制御回路2022、不整脈検知器2021、テンプレートプロセッサ2024、および心臓ペースメーカ/除細動器2000の動作をコントロールするための他の構成要素を含む更なる機能構成要素を含むことができる。
【0141】
遠隔測定回路2060は、心臓ペースメーカ/除細動器2000と外部プログラマユニット2090間で通信するために実施され得る。一つの実施の形態において、遠隔測定法回路1060とプログラマユニット1090は、プログラマユニット2090と遠隔測定法回路2060の間で信号およびデータを送受信するために、従来の技術において知られているように、ワイヤループアンテナおよび無線周波数遠隔測定リンクを用いて通信する。このように、プログラミングコマンドと他の情報は、植込み最中と植込み後に、プログラマユニット2090から心臓ペースメーカ/除細動器2000のコントロールシステム2020まで転送され得る。更に、例えば、捕捉閾値、捕捉検出や心臓応答分類、関連する格納された心臓データは、他のデータとともに、心臓ペースメーカ/除細動器2000から、プログラマーユニット2090へ転送され得る。
【0142】
図13に示されている心臓ペースメーカ/除細動器1000の実施の形態において、RA−先端電極256、RA−リング電極254、RV−先端電極212、RV−リング電極211、RV−コイル電極214、SVC−コイル216、LV遠位電極213、LV近位電極217、LA遠位電極218、LV近位電極215、中間電極208、および缶電極209は、図2に示されているように、切換マトリクス2010を介して、検知回路2031〜2037に接続されている。
【0143】
右心房検知回路2031は、心臓の右心房から電気信号を検出して、該電気的信号を増幅させるように作用する。例えば、単極検知は、RA−先端電極256と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。右心房検知回路からの出力は、コントロールシステム2020に接続される。
【0144】
右心室検知回路2032は、心臓の右心室からの電気信号を検出し、増幅するように作用する。RV−先端電極212の使用によって検知された右心室心臓信号は、右心室近距離信号であり、RV率チャネル信号として示される。双極RV率チャネル信号は、RV−先端212およびRV−リング211の間で発達した電圧として検知され得る。あるいは、右心室の双極検知は、RV−先端電極212およびRV−コイル214を使用して実施され得る。右心室における単極率チャネル検知は、例えば、電圧がRV−先端電極212と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって、実施され得る。
【0145】
除細動電極の使用によって検出される右心室心臓信号は、RVモフォロジまたはRVショックチャネル信号とも呼ばれる遠距離信号であってもよい。より具体的には、右心室ショックチャネル信号は、RV−コイル214およびSVC−コイル216との間で発達した電圧として検出され得る。右心室ショックチャネル信号も、RV−コイル214と缶電極209の間で発達した電圧として検出され得る。他の構成においては、缶電極209とSVC−コイル電極216が電気的に短絡されてもよく、RVショックチャネル信号は、RV−コイル214と、缶電極209/SVC−コイル電極216の組合せと、の間で発達した電圧として検出され得る。
【0146】
左心房心臓信号は、心外膜電極として構成され得る一つ以上の左心房電極215、918を使用することによって検知され得る。左心房検知回路2035は、心臓の左心房から電気信号を検出し増幅するように作用する。左心房における双極検知、ペーシング、またはその両方は、例えば、LA遠位電極218およびLA近位電極215を使用して実施され得る。左心房における単極検知、ペーシングまたはその両方は、例えば、LA遠位電極218から缶電極209まで、または、LA近位電極215から缶電極209までのベクトルを使用することによって達成され得る。
【0147】
左心室検知回路2036は、心臓の左心室からの電気信号を検出して増幅するように作用する。左心室における双極検知は、例えば、電圧がLV遠位電極213およびLV近位電極217の間で発達された電圧を検知することによって実施され得る。単極検知は、例えば、LV遠位電極213またはLV近位電極217から缶電極209までの間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。
【0148】
任意であるが、LVコイル電極(図示せず)は、左心に隣接する、患者の心臓脈管構造、例えば、冠状静脈洞に挿入され得る。LV電極213および217、LVコイル電極(図示せず)や缶電極209の組合せを用いて検出された信号は、左心室検知回路2036によって検知され増幅され得る。左心室検知回路236の出力は、コントロールシステム2020に接続される。
【0149】
切換マトリクス2010の出力は、電極211、212、213、214、216、217、918、254および256の選択された組合せを、誘発応答検知回路2037に接続するために作動され得る。誘発応答検知回路2037は、本発明の実施例による心臓応答分類のためのさまざまな組合せの電極を使用して発達した電圧を検出し増幅させるように作用する。本明細書中に記載されている実施の形態において、ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するために、ペーシングパルスに続く心臓信号のペーシングおよび検知に関連して、ペーシング電極と検知電極の種々の組合せが使用され得る。例えば、いくつかの実施の形態において、第1の電極の組合せは、心腔をペーシングするために使用され、第2の電極の組合せは、ペーシングに続く心臓信号を検知するために使用される。他の実施の形態においては、同じ電極の組合せは、ペーシングと検知のために使用される。更に、逆行性P波を検知するために使用される電極は、心房の誘発応答を検知するために使用される電極とは異なってもよいし、または、同じであってもよい。
【0150】
ペースメーカコントロール回路2022は、左心房、右心房、左心室および右心室のためのペーシング回路と組み合わされて、種々の電極の組合せを用いて、ペーシングパルスを選択的に生成し、当該ペーシングパルスを心臓へ送るように実施され得る。本明細書中に記載されているように、ペーシング電極の組合せは、心腔の双極または単極のペーシングを実行するために使用され得る。
【0151】
双極または単極のペーシングパルスは、本明細書中に記載されているペーシングベクトルの一つを用いて、心腔へ送られ得る。ペーシングパルスの送出後の電気的信号は、切換マトリクス2010を介して心臓応答分類プロセッサ2025に接続された種々の検知ベクトルを介して検知され、ペーシングに対する心臓応答を分類するために使用され得る。
【0152】
切換マトリックス2010は、ペーシングおよび除細動電極のさまざまな構成に対して接続性をもたらすように配列され得る。切換マトリクス2010の出力は、選択された組合せの電極間で検出された心臓信号を検知すると共に増幅するように作用する誘発応答(ER)検知回路2037と接続され得る。検出信号は、ER増幅器2037を介して、心臓応答分類プロセッサ2025に接続される。心臓応答分類プロセッサ2025は、ペーシング刺激に対する心臓応答を判断するように構成された回路を含む。誘発応答の有無は、本発明の実施例によるペーシングパルスに続いて検知される心臓信号の振幅、ピーク値、ピークタイミングや他の形態学的な特徴に基づいて判断され得る。
【0153】
本明細書中に記載されている心臓応答分類方法は、融合収縮から捕捉応答を識別する際に特に有用である適合可能な分類期間を含む。融合管理は自動捕捉検証の重要な態様であってもよい。また、捕捉閾値試験におけるペーシングに対する心臓応答の間違った分類は捕捉閾値の過小評価または過大評価を生じ得る。ペーシングに対する心臓応答分類を間違うと、ペーシングエネルギの設定量が過多または過少によって結果的にペーシングエネルギの最適量が不正確に決定され得る。固定された間隔よりも適合可能な分類期間を使用することによって個別に適合される分類期間が提供され、これによって、より有効な融合管理がもたらされる。
【0154】
本発明の種々の態様によれば、ペーシングパルスに続いて心臓信号が検知される。検出された心臓信号は、ペーシングパルスに対する心臓応答を判断するために使用され得る。捕捉は、ペーシングに続く心臓信号の一つ以上の特性的特徴またはサンプルが捕捉応答を表す基準値やテンプレートと比較することによって検出される。該一つ以上の信号特徴またはサンプルが、テンプレートや基準値と一致している場合、捕捉が検出される。例えば、捕捉は、ペーシングパルスを送った後に検知された信号のピーク値、例えば、正または負のピーク値を、捕捉応答を表すピーク閾値と比較することによって検出され得る。信号のピークの絶対値が捕捉されたピーク閾値と一致するかまたはそれを超過する場合、捕捉が検出される。同様に、非捕捉は、ペーシングパルスを送った後に検知された信号のピーク値、例えば、正または負のピーク値を、非捕捉応答を表すピーク閾値と比較することによって検出され得る。信号のピークの絶対値が非捕捉のピーク閾値未満のままであれば、非捕捉が検出される。
【0155】
いくつかの状況においては、心臓応答の判断のために、心臓信号の複数の特徴またはサンプルがテンプレートと比較されてもよい。心臓信号は、該心臓信号の特徴、サンプル、または形態学的特性が、特徴、サンプル、または形態学的特性と十分に類似していると判断された場合、テンプレートと一致していると考えられる。心臓信号が特定のタイプの心臓応答を表すテンプレートと十分に類似している場合、心臓信号は当該特定のタイプの心臓応答として分類される。図14のグラフは、ペーシングに対する捕捉応答および非捕捉応答を表す信号を示す。ペーシングパルス2110、2112は心房または心室の心腔へ送られる。第1のペーシングパルス2110に続いて心臓のチャンバにおいて検知された心臓信号2112は、ピーク振幅2115およびピークタイミング2118を有する捕捉応答である。検知されたペーシングパルス2120に続いて検知された心臓信号2122は、ピーク振幅2125およびピークタイミング2128を有する非捕捉応答である。捕捉された応答2112は、非捕捉応答のピーク振幅2125より相対的に大きなピーク振幅2115を展開する。捕捉された応答信号の相対的に大きなピーク振幅は、捕捉と非捕捉を識別するために使用され得る。捕捉応答または非捕捉応答のピーク振幅のタイミング2118および2128は、捕捉、非捕捉またはその両方を検出するためにピーク振幅情報と共に使用され得る。
【0156】
患者間の変動性、デバイスの植込み構造の変動性、および患者の容態の変化は、心臓のペーシング応答を判断するために使用されるテンプレートやベースライン基準の生成および維持に対して重大な問題を生じる。また、捕捉検出に使用されるテンプレートや閾値は、例えば、ノイズ、捕捉された応答テンプレートの内因性活動によって生じる非捕捉拍動を含むことによって汚染され得る。本発明の実施の形態では、捕捉応答テンプレートにおける不正確性につながるような擬似心臓信号を低減するために、メジアンフィルタリング方法が採用される。
【0157】
図15は、本発明の実施の形態による、テンプレートを初期化する方法2200を示すフローチャートである。例示的な実施の形態において、心腔は、内因率より高い率で、および、捕捉閾値より高いレベルで、ペーシングされる(2220)。拍動ごとにペーシング率をわずかにあるいはランダムに変えることによってペーシング率のジッタリング(jittering)が融合を回避するために付加的にあるいは代替的に使用され、各ペーシング後(2220)に誘発応答が測定され得る(2230)。奇数のペーシングパルスが使われ(2240)、各ペース後(2220)に誘発応答が測定される(2230)。例えば、捕捉応答ピーク振幅およびピーク振幅タイミングは、捕捉応答ごとに測定され得る(2230)。次にメジアン値がテンプレート作成(2250)のために選択される(2245)。このプロセスは繰り返され(2260)、反復ごとにメジアン値の平均を取り(2260)、これによって、テンプレートに影響を与えるノイズを減らす。代替的にまたは付加的に、メジアン値の周囲のいくつかの値が、より多数の奇数のペーシングパルスに対して選択され(2245)、平均を取るために使用され得る。
【0158】
融合収縮がテンプレート生成(2250)において回避される類似度を増やすために、奇数(例えば、33)が、反復計算(2240)のために選ばれる。ペーシング(2220)および応答測定(2230)が33回繰り返され、毎回、応答間隔範囲内のピーク応答振幅およびピークタイミングの値がCRMデバイスによって記録される。次に、全てのピーク応答振幅およびピークのタイミング値が昇順または降順にそれぞれ格付けされる。メジアンランク値、この場合、17のランキング(階数)を有する値が、誘発応答のためのテンプレート値として選択される。他の実施例において、17のランキングを有するメジアンランク値および、このメジアン値を包囲する四つの値、この場合、誘発応答テンプレート値を提供するために、13〜16および18〜21のランキングを有する値の平均値を取る。
【0159】
また更なる実施の形態においては、ペーシング(2220)および応答測定(2230)は9回繰り返され、毎回、応答間隔範囲内のピーク応答振幅およびピークタイミングの値がCRMデバイスによって記録される。全てのピーク応答振幅およびピークタイミング値は、それぞれ昇順または降順で格付けされる。メジアンランク値、この場合、5位に格付けされた値が、誘発応答テンプレート統計的解析のための第1候補のテンプレート値として選択される。ペーシング(2220)および応答測定(2230)は、更に9回反復されて値は格付けされ、5位に格付けされた値が今度は第2の候補テンプレート値として再選択される。このプロセスは、捕捉された応答候補値が真の誘発応答を表していると判断されるまで、捕捉応答分析のどのような反復に対しても反復され得る(2260)。この判定は、十分な数の候補値の平均を取った後、収束が確認された後、あるいは、他の適切な統計的原則を用いて行われる。
【0160】
図15は、本発明の実施の形態による、捕捉応答テンプレートを初期化する方法2200のフローチャートである。本発明のメジアンフィルタリング方法を使用して、他のタイプの心臓応答テンプレートも、作成されたり、更新されたり、改良されたりする。
例えば、図16に示されるように、非捕捉応答テンプレートは、本発明の方法を使用して形成され得る。図16に示されるように、心臓は、内因率より高い率で、捕捉閾値より低いエネルギレベルでペーシングされ得る(2310)。拍動ごとにペーシング率をわずかにあるいはランダムに変えることによってペーシング率のジッタリング(jittering)が融合を回避するために付加的にあるいは代替的に使用される。
【0161】
ペーシングパルスの後に続くと共に関連している心臓信号の特徴が測定される(2320)。例えば、低レベルのペースに続く信号のピーク振幅、ピークタイミングまたはその両方が測定される(2320)。捕捉閾値未満で送られたペーシングパルスは捕捉を生成しないので、患者への連続ペーシング治療施術を確信するためにも各主要ペース2310の後にバックアップペースを送ってもよい(2330)。バックアップペースは、主要ペーシングパルスの送出の80ミリ秒〜100ミリ秒後に送るのがよい(2330)。
【0162】
奇数のペーシングパルスが送られ(2340)、システムは、測定された振幅、ピークタイミングのメジアン値を決定し、あるいは、低レベルのペースに続く心臓の信号の他の測定された特徴値を求める(2310)。ピーク振幅やピークタイミング測定のメジアン値が選択され(2345)、非捕捉応答テンプレートを作成する(2350)。該テンプレートを作成するために使用される低レベルのペース数は好ましくは奇数である(2340)。低レベルのペース数が大きいほど(2340)、融合収縮を回避できる確率が高くなる。
【0163】
ペーシングパルスを送り、特徴値を測定し、測定された特徴値のメジアン値を決定するプロセスが反復され(2360)、反復毎のメジアン値の平均を取ることによって、テンプレートに影響を与えるノイズを減らす。代替的にまたは付加的に、メジアン値の周囲のいくつかの値が平均を取るために使用され得る(2345)。
【0164】
本発明は、図15〜図16に例示されている方法を組み合わせることによっても使用され得る。例えば、ペーシングに対する心臓応答は、心臓ペーシング応答を判断するために、非捕捉応答テンプレートおよび捕捉応答テンプレートのいずれかまたは両方の利用を含み得る。本発明によるメジアンテンプレート生成方法は、また、融合検出や管理に有用であり得る。例えば、ペーシングに続いて検知された心臓信号は、非捕捉応答テンプレートおよび捕捉応答テンプレートと矛盾している場合、心臓ペーシング応答は、融合/ノイズ管理プロセスを引き起こす融合またはおよび未知の(ノイズ)応答として分類され得る。本明細書中により詳細に記載されているように、本発明による心臓応答テンプレート生成のためのメジアンフィルタリング方法も閾値測定に適応可能な適合ベースラインを利用し得る。
【0165】
本明細書中における目的のため、メジアン値を求めるための奇数ペーシングパルスの使用は、メジアンを定義するように、偶数パルスを提供し、一つ以上のパルスを無視あるいは排除して、奇数番号に到達しようとすることに等しい。更に、本発明によれば、メジアン値の決定は、奇数または偶数の応答を格付けまたは順序付けし、ランクの最上位、最下位またはその両方の応答数を無視または排除して、メジアン値の近似化に効果的に到達させ、あるいは、メジアン値の周囲値をグループ分けすることに等しい。
【0166】
本発明によるメジアンテンプレートの生成方法は、心房および心室捕捉検証のために使用され得る。本発明の実施の形態は、いずれの心腔に送られるペーシングパルスに対しても有用である。例えば、ペーシング刺激は、右心室、左心室、右心房および左心房の一つ以上に送られ得る。本発明の種々の実施の形態は、ペーシングと検知に対して同じ電極の組合せを使用することを含む。他の実施の形態は、ペーシングに続く心臓信号を検知するために使用される電極の組合せとは異なるペーシングに対する電極の組合せを使用することを含む。
【0167】
患者間の変動性、デバイス移植構成の変動性、および患者の容態の変化は、テンプレートの生成と維持の両方に対して、および捕捉検証に対して、重大な問題を生成する。捕捉応答を確実に検出するために、広帯域増幅器が、心臓応答検出回路のために使用され得る。ペーシング率が高い時は特に、このような広帯域増幅器に対するベースラインは、拍動間でしばしば変動する。高ペーシング率での変動は、相対的に低ペーシング率の変動より大きなT−波によって少なくとも部分的に発生する。広帯域増幅器は、T−波のスペクトルのいくつかを保持し、変動の発生の原因となる。この変動性は、捕捉の擬似検出や捕捉損失につながる。
【0168】
心臓信号のベースラインの変動は、ピーク振幅の測定の際のエラーに繋がる場合もある。ベースラインの変動は、ペーシング率が高い場合に、心房や心室の誘発応答検出の際に問題となり得る。ベースラインの変動は、心室がペーシングされ、V−先端電極構成に対するA−リングが検知のために使用される場合、例えば、いくつかの誘発応答検知構成において問題となり得る。本発明の実施の形態によれば、適合ベースラインを使用することは捕捉応答検出の改良をもたらす。これらの変動による捕捉応答検出におけるエラーを減らすために、適合ベースラインは、拍動ごとに使用され得る。更に、適応ベースラインは、本明細書中に記載されているテンプレート初期化に対するメジアンフィルタリング方法と組み合わされ得る。
【0169】
図17は、本発明の実施の形態によるベースラインを適合させる方法2400のフローチャートである。方法2400は、ペーシングパルスに先立って移動評価間隔2410において心臓信号を測定する2420。移動間隔において測定された心臓信号2420は、その平均値が取られ2430、該平均値がペーシングパルスに続いて検知される心臓信号に対するベースラインとして使用される。例えば、3〜5ミリ秒の間隔(および、おそらく10ミリ秒以上まで)が移動間隔として使用され得る。例えば、心臓信号は、移動評価間隔以内の平均信号レベルに対して連続的に評価され得る。例えば、平均信号レベル2430は、低域フィルタおよび電圧保持回路を用いて、ディジタル化信号の数値平均を取ることによって、および、他のフィルタリング方法を用いて決定され得る。適合ベースラインは、ペーシングパルスの送出に続いて検知されると共に捕捉の検出のために使用される心臓信号のピークを測定するための基準点として作用する。
【0170】
広帯域の増幅器が心臓応答分類のために使用される心臓信号を検知するために使われる場合、適応ベースラインは特に有用である。この概要において、誘発応答検出のための基準点の変動は、拍動間で大いに変化するため、所望される拍動ごとに適合ベースラインを生成する。例えば、心房ペーシングにおいて、例えば、A−リング電極〜V−先端電極を使用することによって、信号(T−波)が公称値に戻る前に、心房ペーシングが開始される。T−波からの残留信号は、誘発応答検出に影響し得る。適合ベースラインは、例えば、心房ペーシングにおいてより高いペーシング率を可能とする。
【0171】
ここで、図18を参照すると、本発明の実施の形態による、誘発応答検出に適合可能なベースラインおよび誘発応答検出のためのテンプレートの初期化を実施するために適切な心臓ペースメーカ/除細動器2600が示されている。図18は、機能ブロックへ分割されるペースメーカ/除細動器として例示される心臓律動管理デバイスを示す。これらの機能ブロックが配列される多くの可能性の高い構成が存在することが当業者によって理解されよう。図18に記述された実施例は、一つの使用可能な機能的配列である。他の構成も適用可能である。例えば、多少なりとも、様々な機能ブロックが、本発明の方法を実施する為に好適な心臓の心臓ペースメーカ/除細動器を説明するために使用され得る。更に、図18に記述された心臓ペースメーカ/除細動器2600は、プログラム可能なマイクロプロセッサベースの論理回路の使用を考慮に入れているが、他の回路実施も利用可能である。
【0172】
図18に記述される心臓ペースメーカ/除細動器2600は、心臓から心臓信号を受け取り、ペーシングパルスまたは除細動ショックの形態における電気的刺激エネルギを心臓に付与するための回路を含む。一つの実施の形態において、心臓ペースメーカ/除細動器1800の回路は、人体への植込みに適したハウジング2601に収容され、気密密閉される。心臓ペースメーカ/除細動器2600への電力は、バッテリ2680によって供給される。コネクタブロック(図示せず)は、心臓ペースメーカ/除細動器1800のハウジング2601に装着され、これにより、心臓ペースメーカ/除細動器1800の回路へのリードシステム導電体の物理的および電気的装着が可能となる。心臓ペースメーカ/除細動器2600は、コントロールシステム2620およびメモリ2670を含む、プログラム可能なマイクロプロセッサベースのシステムであってもよい。メモリ2670は、他のパラメータとともに、さまざまなペーシング、除細動および検知モードのためのパラメータを格納することができる。更に、メモリ2670は、心臓ペースメーカ/除細動器2600の他の部品によって受け取られる心臓信号を表すデータを格納し得る。メモリ2670は、例えば、ヒストリカルなエレクトログラム(EGM)および治療データを格納するために使用され得る。ヒストリカルなデータの格納には、例えば、傾向変動または他の診断目的のために使用される患者の長期間にわたるモニタリングによって得られたデータを含み得る。ヒストリカルデータは、他の情報と共に、必要に応じて、あるいは、所望通りに、外部のプログラマユニット2690へ送信され得る。
【0173】
コントロールシステム2620およびメモリ2670は、心臓ペースメーカ/除細動器2600の動作をコントロールするために、心臓ペースメーカ/除細動器2600の他の構成要素と協動し得る。本発明の種々の実施の形態によれば、図18に記述されているコントロールシステム2620は、ペーシング刺激に対する心臓の応答を分類するための心臓応答分類プロセッサ2625を含む。コントロールシステム2620は、心臓ペースメーカ/除細動器2600の動作をコントロールするための他の構成要素と共に、ペースメーカ制御回路2622、不整脈検知器2621、およびテンプレートプロセッサ2624を含む更なる機能的構成要素を含んでいてもよい。 遠隔測定回路2660は、心臓ペースメーカ/除細動器2600と外部プログラマユニット2690間で通信するために実施され得る。一つの実施の形態において、遠隔測定法回路2660とプログラマユニット2690は、プログラマユニット2690と遠隔測定法回路2660の間で信号およびデータを送受信するために、従来の技術において知られているように、ワイヤループアンテナおよび無線周波数遠隔測定リンクを用いて通信する。このように、プログラミングコマンドと他の情報は、植込み最中と植込み後に、プログラマユニット2690から心臓ペースメーカ/除細動器2600のコントロールシステム2620まで転送され得る。更に、例えば、捕捉閾値、捕捉検出や心臓応答分類、関連する格納された心臓データは、他のデータとともに、心臓ペースメーカ/除細動器2600から、プログラマユニット2690へ転送され得る。
【0174】
図18に示されている心臓ペースメーカ/除細動器2600の実施の形態において、図2に関連して前述されているように、RA−先端電極256、RA−リング電極254、RV−先端電極212、RV−リング電極211、RV−コイル電極214、SVC−コイル216、LV遠位電極213、LV近位電極217、LA遠位電極218、LA近位電極215、中間電極208、および缶電極209が、切換マトリクス2610を介して、検知回路2631〜2637に接続されている。
【0175】
右心房検知回路2631は、心臓の右心房から電気信号を検出して、該電気的信号を増幅させるように作用する。例えば、単極検知は、RA−先端電極256と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。右心房検知回路からの出力は、コントロールシステム2620に接続される。
【0176】
右心室検知回路2632は、心臓の右心室からの電気信号を検出し、該電気的信号を増幅させるように作用する。右心室検知回路2632は、例えば、右心室率チャネル2633及び右心室ショックチャネル2634を含む。RV−先端電極212の使用によって検知された右心室心臓信号は、右心室近距離信号であり、RV率チャネル信号として示される。双極RV率チャネル信号は、RV−先端212およびRV−リング211の間で発達した電圧として検知され得る。あるいは、右心室の双極検知は、RV−先端電極212およびRV−コイル214を使用して実施され得る。右心室における単極率チャネル検知は、例えば、電圧がRV−先端電極と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって、実施され得る。
【0177】
RV−コイル電極214を使用することによって検知された右心室心臓信号は、RV形態またはRVショックチャネル信号とも呼ばれる遠距離信号であってもよい。より具体的には、右心室ショックチャネル信号は、RV−コイル214とSVC−コイル216の間で発達した電圧として検出され得る。右心室ショックチャネル信号も、RV-コイル214と缶電極209の間で発達した電圧として検出され得る。他の構成において、缶電極509とSVC−コイル電極216が電気的に短絡されてもよく、RVショックチャネル信号がRV−コイル214と缶電極209/SVC−コイル電極216の組合せ電極との間で発達した電圧として検出され得る。
【0178】
右心室検知回路2632からの出力は、コントロールシステム2620に接続されている。本発明の一実施の形態において、速度チャネル信号およびショックチャネル信号が、心臓の信号を解析するための形態テンプレートを発達させるために使用され得る。この実施の形態において、速度チャネル信号とショックチャネル信号は、右心室検知回路2632からコントロールシステム2620へ、そして、心臓信号の形態学的特性が解析されるテンプレートプロセッサ2624へ、転送され得る。テンプレートプロセッサ2624は、例えば、本明細書中により詳細に記載されているように、不整脈の識別とともに心臓応答分類のために使用されるテンプレートを含む種々のタイプのテンプレートを生成し維持するためにコントロールシステム2620とメモリ2670に組み合わされて作動する。
【0179】
左心房心臓信号は、心外膜電極として構成され得る一つ以上の左心房電極215、218を使用することによって検知され得る。左心房検知回路335は、心臓の左心房から電気信号を検出し増幅するように作用する。左心房における双極検知、ペーシングまたはその両方は、例えば、LA遠位電極218およびLA近位電極215を使用して、実施され得る。左心房における単極検知、ペーシングまたはその両方は、例えば、LA遠位電極218から缶電極209まで、または、LA近位電極215から缶電極209までのベクトルを使用することによって達成され得る。
【0180】
左心室検知回路2636は、心臓の左心室からの電気信号を検出して、増幅するように作用する。左心室における双極検知は、例えば、電圧がLV遠位電極213およびLV近位電極217の間で発達された電圧を検知することによって実施され得る。単極検知は、例えば、LV遠位電極213またはLV近位電極217から缶電極209までの間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。
【0181】
任意であるが、LVコイル電極(図示せず)は、左心に隣接する患者の心臓脈管構造、例えば、冠状静脈洞に挿入され得る。LV電極213および217、LVコイル電極(図示せず)や缶電極209の組合せを用いて検出された信号は、左心室検知回路2636によって検知され、増幅され得る。左心室検知回路2636の出力は、コントロールシステム2620と接続される。
【0182】
切換マトリクス610の出力は、電極211、212、213、214、216、217、215、218、254および256の選択された組合せを、誘発応答検知回路2637に接続するために動作され得る。本発明の実施の形態によれば、誘発応答検知回路2637は、心臓応答分類のための種々に組合わされた電極を使用して、発達した電圧を検出し増幅させるように作用する。
【0183】
本明細書中に記載されている実施の形態において、ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するために、ペーシングパルスに続く心臓信号のペーシングおよび検知に関連して、ペーシング電極と検知電極の種々の組合せが使用され得る。例えば、いくつかの実施の形態において、第1の電極の組合せが心腔をペーシングするために使用され、第2の電極の組合せがペーシングに続く心臓信号を検知するために使用される。他の実施の形態において、同じ電極組合せがペーシングおよび検知のために使用される。
【0184】
ペーシングと検知の両方に対して同じ電極の組合せを使用してペーシングパルスに続く心臓信号を検知することによって、電極と組織の界面における残留後ペース分極に関連するペーシングアーチファクト成分を含む検知された心臓信号を生成し得る。ペーシングのアーチファクト成分はペーシングパルスに対する心臓応答、即ち、誘発応答を表すより小さな信号に重畳され得る。ペーシング出力回路は、心臓からのDC(直流)成分を遮断するための結合コンデンサを含み得る。相対的に大きな結合コンデンサは、相対的に長い期間にわたって指数的に減衰するより大きなペーシングアーチファクトを生じる。
【0185】
ペースメーカコントロール回路2622は、左心房、右心房、左心室および右心室のためのペーシング回路と組み合わされて、種々の電極の組合せを用いて、ペーシングパルスを選択的に生成し、該ペーシングパルスを心臓へ送るように実施され得る。本明細書中に記載されているように、ペーシング電極の組合せは、心臓のチャンバの双極または単極のペーシングを実行するために使用され得る。
【0186】
双極または単極のペーシングパルスは、本明細書中に記載されているペーシングベクトルの一つを用いて、心腔へ送られてもよい。ペーシングパルスの送出後の電気的信号は、切換マトリクス2610を介して誘発応答検知回路2637に接続された種々の検知ベクトルを介して検知され、ペーシングに対する心臓応答を分類するために使用され得る。
【0187】
一つの実施例において、ペーシングパルスに続く心臓の信号は、ペーシングパルスの送出に対して使用されたベクトルと同じベクトルを用いて検知され得る。適合可能な心臓の応答分類期間は、ペーシングに対する応答を、例えば、捕捉応答、非捕捉応答、および融合収縮の一つとして分類するために使用され得る。
【0188】
心臓の応答分類に対して使用可能である更なる検知ベクトルを提供し得る。一つの実施において、心臓律動管理システムは、心臓をペーシングするように構成された心臓内リードシステムに接続されたペースメーカなどの第1のデバイスと、ペーシング以外の機能を実行するために構成されている、皮下リードシステムに接続されたペースメーカや心臓ペースメーカ/除細動器などの第2のデバイスと、を含むハイブリッドシステムを含んでいる。第2のデバイスは、皮下電極アレイを使用して検知された信号に基づいたペーシングに対する心臓応答を検出し分類するために用いられ得る。第1と第2のデバイスは、例えば、ワイヤレスリンクに対して生じるデバイス間の通信と協働して動作し得る。皮下電極システムおよびデバイスの例は、参照することによってその全体が本明細書中に組み込まれ、2003年6月13日に出願されるとともに共通に所有されている米国特許出願第10/462001号、および2003年6月19日に出願された米国特許出願第10/462520号に記載されている。
【0189】
RV先端電極212およびRVリング電極211を用いて総局ペーシングが送られてもよい。単極ペーシングはRV先端電極212から缶電極209のベクトルを用いて送られてもよい。RVペーシングに続く心臓応答分類のための検知電極の組合せは、缶電極209、およびRVコイル電極〜缶電極209、そして、システムが左心室リードを含む場合、LV遠位電極213〜LV近位電極217に繋がれたRVコイル電極214〜SVCコイル216を含む。
【0190】
左心室ペーシングの実施例において、双極ペーシングパルスは、LV遠位電極213とLV近位電極217の間の左心室へ送られてもよい。他の実施例においては、単極ペーシングパルスは、例えば、LV遠位電極213と缶電極209の間の左心室へ送られてもよい。ペーシングパルスの送出に続く心臓信号は、LV近位電極217と缶電極209を用いて検知され得る。
【0191】
右心房ペーシングの実施例において、双極ペーシングパルスは、RA−先端電極256とRA−リング電極254の間の右心房へ送られてもよい。他の実施例において、単極ペーシングパルスは、例えば、RA−先端電極256と缶電極209との間の右心房へ送られてもよい。単極性の右心房ペーシングとしては、心臓応答分類のためのペーシングに続く心臓信号を検知するために有用な電極組合せは、中間電極へ送られるRA−リング電極254を含む。左心房近位電極215は他の例において、双極ペーシングパルスは、LA遠位電極218とLA近位電極215の間の左心房へ送られてもよい。他の実施例において、単極ペーシングパルスは、例えば、LA遠位電極218と缶電極209の間の左心房へ送られてもよい。ペーシングパルスの送出に続くとともに心房捕捉検証に使用される心臓信号は、RA−先端電極256からRA−リング電極254までのベクトルを使用して検知され得る。
【0192】
本発明の一実施の形態において、切換マトリクス2610は、RA−先端電極256、RA−リング電極254、RV−先端電極212、RV−コイル電極214、LV遠位電極213、LV近位電極217、SVCコイル216、LA遠位電極218、LA近位電極215、中間電極208、および缶電極209と接続される。切換マトリクス2610は、ペーシングおよび除細動電極の種々の構成に接続性をもたらすように、配列され得る。交換マトリクス2610の出力は、選択された組合せの電極間で検出された心臓信号を検知し増幅させるように作用する誘発応答(ER)検知回路2637に接続される。検出された信号は、ER増幅器2637を介して、心臓応答分類プロセッサ2625に接続される。本発明の実施の形態によれば、心臓応答分類プロセッサ2625は、心臓応答分類期間を適合させ、例えば、捕捉応答、非捕捉応答、および融合応答を分類することを含むペーシング刺激に対する心臓応答を分類するように構成された回路を含む。
【0193】
本発明の実施の形態によれば、本明細書に提示された多数の実施例は、調整されたモニタリング、診断、あるいは、治療的機能に対して使用される機能的ブロックを示すブロック図を含む。これらの機能ブロックが配列されて実施される可能性がある多数の構成があることが当業者によって理解されよう。本明細書に記述されている実施例は、本発明の方法を実施するために使用される可能性がある機能的配列の例を示す。
【0194】
図面に記述され、明細書中に記載されている構成要素および機能性は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組合せにおいて実施され得ることが理解されよう。図中、一般に、分離したまたは離散したブロック/要素として記述されている構成要素および機能性は、他の構成要素および機能性と組み合わされて実施され得ること、そして、個別または統合された形態におけるこのような構成要素および機能性の記述は、説明をより明確化するためになされるもので本発明を限定するものではないことが更に理解されよう。
【0195】
以上に説明された好ましい実施の形態に対して、本発明の範囲を逸脱することがない限り、種々の変更および追加がなされてもよい。
本発明の範囲は、以上に記載された特定の実施の形態によって限定されるべきではないが、以下に記載される請求項およびそれと等価のものによってのみ定義される。
【符号の説明】
【0196】
110,120,130,147,154,402,432,462…心房ペーシングパルス、112…心室応答、125,135,158,160,162,178…心室ペーシングパルス、201…心臓、331−337,2031−2037,2631−2637…検知回路、400,430,2200,2400…方法、1111,1205,2110,2120…ペーシングパルス、2112,2122,2420…心臓信号、2115,2125…ピーク振幅。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に植込み型医療デバイスに係り、より詳細には、心臓捕捉検証および逆行信号の管理を提供する心臓律動管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常に機能する時、心臓は、律動的収縮を生じ、身体全体に効率的に血液を送り出すことが可能である。しかしながら、疾患や損傷によっては、心臓の律動が不規則になり、結果的に、ポンプ効率が低下することもある。不整脈は、さまざまな体調および疾患プロセスに起因する心臓律動の不規則性を表現するために使用される一般的な用語である。植込み型心臓ペースメーカおよび除細動器などの心臓律動管理システムが深刻な不整脈をもつ患者の有効な治療法として使われてきた。一般に、これらのシステムは、心臓からの電気的信号を検出するための回路を含み、心臓へ電気的な刺激パルスを送るためのパルスジェネレータを含む。患者の心臓内部に延びるリード線は、心臓の電気的信号を検出するために心筋に接続されるとともに、さまざまな療法に応じて、心臓へ刺激パルスを送るための電極に接続されている。
【0003】
心臓律動管理システムは、心臓組織の収縮を生じさせるために、電極に隣接している心臓組織を刺激するように作用し得る。ペースメーカは、心臓が心臓律動ポンプ効率を維持する収縮可能な律動を生成する際に、心臓を補助するように計時された一連の低エネルギペーシングパルスを送る心臓律動管理システムである。患者のニーズに応じて、ペーシングパルスは、断続的であっても連続的でもよい。一つ以上の心腔(heart chambers)を検知し、心拍数を回復する(ペーシング)するための種々のモードを含むペースメーカデバイスには多数のカテゴリが存在する。
【0004】
ペーシングパルスが心臓組織において収縮を生成する時、収縮の後の電気的な心臓信号は、捕捉された応答として示される。捕捉された応答は、誘発された応答信号として示され、心臓収縮と協働し、電極と組織の界面の残留後ペース分極(post pace polarization)に関連する重畳された信号を伴う、電気的信号を含む。残留後ペース分極信号またはペーシングアーチファクトの大きさは、例えば、リード分極、ペーシングパルスからの後電位、リードインピーダンス、患者インピーダンス、ペーシングパルス幅、およびペーシングパルス振幅を含むさまざまな要素によって影響され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6408210号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ペーシングパルスは、収縮を生成するために、最小のエネルギ値や捕捉閾値を超過する必要がある。ペーシングパルスにとっては、捕捉値を超過せずに、心臓の捕捉に足るエネルギを有することが望ましい。従って、捕捉閾値の正確な決定が効率的なペーシングエネルギの管理に必要とされる。ペーシングパルスエネルギが低すぎると、ペーシングパルスは心臓の収縮応答を確実にもたらすことができず、結果的に、無効ペーシングを生じ得る。ペーシングパルスエネルギが高すぎると、患者は不快感を覚え、またデバイスのバッテリ寿命が短くなる。
【0007】
捕捉検出によって、収縮を確実に生成する最適エネルギ消費量に対応するように、心臓律動管理システムが、ペーシングパルスのエネルギレベルを調整できるようにする。また、ペーシングパルスが収縮を生じないときは常時、捕捉検出によって、心臓律動管理システムが、より高いエネルギレベルにおいてバックアップパルスを開始させるようにする。
【0008】
いくつかの状況において、心臓に送られるペーシングパルスは、捕捉を阻害したり、捕捉検出プロセスを混乱させたりする、さまざまな望ましくない現象を生じ得る。一つの例として、有効ペーシングは、ペーシングパルスによって開始される逆行信号によって、弱体化され得る。例えば、デバイスが心房検知を実行するとき、ペーシングパルスまたは内因性の活動によって心室において生成される減極波(depolarization)が心房へ戻る時、逆行性P波が検出される。逆行性P波は心房ペーシングを妨害する。逆行性P波によって心房組織が不応である場合、心房に送られるペーシングパルスは、結果的に捕捉されない。また、いくつかの場面において、心房への逆行伝導によって、ペースメーカ媒介頻拍が生じ得る。
【0009】
時には、ペーシングパルスは内因性拍動と合併して、融合収縮(fusion beat)を生成することもある。融合収縮は、個々の開始部位からの特定チャンバの二つの心臓減極が組み合わされる時に生じる心臓の収縮である。心臓がペーシングされるとき、特定チャンバの内因性心臓減極が該チャンバ内でペースメーカ出力パルスと併合された場合、融合収縮が生じ得る。融合収縮は、電子心臓グラフィック記録に見られるように、さまざまな形態を呈している。融合収縮の併合減極が、減極全体に均一に貢献するわけではない。
【0010】
ペースメーカ出力パルスが心房ペーシング期間において自発性P波または心室ペーシング期間において自発性QRS錯体に重畳される時、擬似融合(pseudofusion)が生じる。擬似融合では、電極周辺の組織がすでに自発的に減極させており、その不応期にあるので、ペーシングの刺激は有効ではない。融合または擬似融合収縮によって、捕捉の擬似検出が発生し、結果として誤った捕捉閾値に導かれる。
【0011】
本発明は、ペーシングに対する心臓応答を分類し逆行信号を管理するための方法およびシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの実施は、逆行性分析を用いて、ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するように構成された心臓医療システムに関する。該システムは、心臓信号を検知したり、患者へ心臓のペーシングパルスを送ったりするために使用され得る複数の植込み型電極を含む。該電極に接続されたコントローラ回路は、植込み型ハウジング内に配置される。コントローラは、心周期において、患者の心臓の心房にペーシングパルスを送るように構成されている。コントローラは、心周期において心室に内因性の活動があるか否かを検知し、内因性の活動が検知されない場合、該心室へペーシングパルスを送る。コントローラは、心房において、心室ペーシングパルスまたは内因性活動に応答する逆行性P波を検知する。逆行性P波が検出された場合、コントローラは、心房ペーシングパルスに対する心臓応答を非捕捉応答として分類する。
【0013】
一実施によれば、コントローラが逆行性P波を検出しない場合、心房ペーシングパルスに対する心臓応答を可能性のある捕捉応答として分類する。コントローラは、心房ペーシングパルスに関連する心房の誘発応答を検知するように更に構成され得る。一実施によれば、心房の誘発応答が検出された場合、コントローラは、心臓応答を捕捉応答として分類する。他の実施においては、心房の誘発応答が検出されず、逆行性P波が検出された場合、コントローラは、ペーシングパルスに対する心臓応答を非捕捉応答として分類する。また更なる実施においては、心房の誘発応答が検出され、逆行性P波が検出されなかった場合、コントローラは、ペーシングパルスに対する心臓応答を捕捉応答として分類する。
【0014】
内因性の心室の活動を検知した後、または、心室ペーシングパルスを送出した後の間隔期間、例えば、心室後心房不応期において、コントローラが逆行性P波を検知し得る。
次の心周期において、コントローラによって更なる心房ペーシングパルスが送られ得るとともに、これらの更なる周期においては、更なる心室ペーシングパルスが送られたり、内因性の心室の活動が検知されたりする。コントローラは、心房において、更なる心室ペーシングパルスまたは心室の内因性の活動に応答する逆行性P波を検知し、逆行性P波が検出された場合、更なる心房ペーシングパルスに対する心臓応答を非捕捉応答として分類する。コントローラは、例えば、患者に施されるペーシング治療期間において、または、捕捉閾値試験期間において、心房ペーシングパルスに対する心臓応答を、拍動ごと(beat by beat)に、分類するように構成されてもよい。
【0015】
本発明の他の実施は、患者の心臓に電気的に接続されるように構成された複数の植込み型電極を含む心臓医療システムに関する。電極は、心臓信号を検出したり、心臓のペーシングパルスを送ったりするために使用される。植込み型ハウジング内に配置されたコントローラは、電極に接続されている。コントローラは、1つの心周期においてペーシングパルスを患者の心臓の心房に送り、心房ペーシングパルスが心房を捕捉したかを判断するように構成されている。コントローラは、この心周期において心室の内因性活動を検知し、内因性の心室の活動が検出されない場合、心室にペーシングパルスへ送る。心房ペーシングパルスが心房を捕捉しない場合、コントローラは心房の逆行伝導を低減するために計時された他のペーシングパルスを送る。ここで、心房の逆行伝導は、心室ペーシングパルスまたは内因性の心室活動に応答性を有する。
【0016】
一実施においては、コントローラは心房の誘発応答を検知し、心房の誘発応答が検出されなかった場合、心臓ペーシング応答を非捕捉応答として分類する。心房の逆行伝導を低減するために計時されるペーシングパルスは、心房に送り出されるバックアップペースを含んでいてもよい。
【0017】
他の実施においては、コントローラは、逆行性P波を検知し、逆行性P波が検出された場合、心臓ペーシング応答を非捕捉応答として分類する。
また他の実施において、心房の逆行伝導を低減するために計時されたペーシングパルスは、次の心周期の遅延した心房ペーシングパルスを含む。コントローラは、逆行性P波が検出された場合、および、心房の有効不応期終了前に予定されている心房ペーシングパルスを発生させるように予定されている場合、次の心周期の逆行伝導を低減するように、次の心周期において予定されている心房ペーシングパルスを遅延させるように構成されている。遅延した心房ペーシングパルスは、前もって予定されているエネルギよりも高いエネルギによって送り出されてもよい。心房の有効不応期が終了する前に発生するように予定されていない場合、予定された心房ペーシングパルスが予定通りに送られてもよい。遅延した心房ペーシングパルスが捕捉を生成しない場合、コントローラによって心房の有効不応期が変更され得る。
【0018】
本発明の他の実施形態は、心腔にペーシングパルス送り出すように構成されたペーシング回路と、ペーシングパルスに関連する心臓信号を検知するように構成された検知回路と、を含む医療システムを含む。また、医療システムは、検知回路に接続されるプロセッサを含む。プロセッサは、ある種の心臓ペーシング応答に関連する心臓信号の特徴のタイミングの変動性に基づいて心臓応答分類期間を決定するように構成されている。心臓応答分類期間は、ペーシングパルスに対する応答を判断するために心臓信号が検知されるペーシングパルスの後の期間を決定する。例えば、ある種の心臓ペーシング応答に関連する特徴は、ピークの振幅を含んでもよいし、ペーシングパルスへの応答は、捕捉応答を含んでいてもよい。
【0019】
いくつかの構成によれば、プロセッサは、特徴となるタイミングの標準偏差を決定する。一つの方法を用いて、プロセッサは、平均的特徴タイミングおよび標準偏差に基づいて心臓応答分類期間を形成する。プロセッサは、心臓信号の各々に対する特徴のタイミングについて値を決定し、特徴タイミング値の平均を取ってもよい。安定基準を達成するまで、心臓応答分類期間に適合するようにプロセッサが構成され得る。例えば、プロセッサは、所定の安定基準が達成されるまで、心臓応答分類期間の上限および下限のいずれかまたは両方に適合され得る。
【0020】
一つの態様によれば、心臓応答分類プロセッサは、心臓応答分類期間を使用して、捕捉、非捕捉および融合のうちの少なくとも2つを識別するなどのペーシングパルスに対する心臓応答を判断したりするために心臓応答分類期間を使用するように構成されている。
【0021】
他の実施形態によれば、医療システムは、ペーシングパルスを心腔に送り出すように構成されたペーシング回路と、ペーシングパルスに関連する心臓信号を検出するように構成された検知回路を含む。また、医療システムは、検知回路に接続されるテンプレートプロセッサを含む。テンプレートプロセッサは、各検知された心臓信号のために心臓信号特徴に関連する値を求め、心臓信号属性値のメジアン値を求め、得られたメジアン値に基づいて心臓応答テンプレートを生成する。
【0022】
例えば、プロセッサは、検知された各心臓信号のピーク振幅を決定し得るし、検知された心臓信号のピーク振幅のメジアン値を決定し得る。ピーク振幅のメジアン値は、心臓応答テンプレートを生成するために用いてもよい。他の例においては、この値は、検出された各心臓信号のピーク振幅のタイミングを含む。プロセッサは、ペーシングに対する捕捉または他の心臓応答を検出するために心臓応答テンプレートを使用し得る。
【0023】
一つの態様によれば、ペーシング回路は、捕捉閾値より高いペーシングパルスを送り出す。検知回路は、捕捉閾値より高く送りだされたペーシングパルスに関連する心臓信号を検知する。テンプレートプロセッサは、捕捉された応答テンプレートを生成する。他の態様によれば、ペーシング回路は、捕捉閾値より低いペーシングパルスを送り出す。検知回路は、捕捉閾値より低く送り出されたペーシングパルスに関連する心臓信号を検知する。テンプレートプロセッサは、非捕捉応答テンプレートを生成する。
【0024】
いくつかの構成において、ペーシングパルスのペーシング率は、ジッタされたり(jittered)、心腔の内因性率を上回る割合で送られたりする。ペーシング回路は、各ペーシングパルスに続くバックアップペースを送り出すように構成され得る。
【0025】
いくつかの構成において、検知回路は、ペーシングパルスの送出に先立って時間間隔を置いて各心臓の信号を検知するように更に構成される。テンプレートプロセッサは、ペーシングパルスの送出に先立って時間間隔において検知される心臓信号を用いたベースラインを形成する。ベースラインは、心臓信号特徴に関連する値を求めるために使用される。
【0026】
本発明の他の実施形態は、心臓のペーシングパルスを患者に送るために構成されたペーシング回路と、ペーシングパルスに関連する検知心臓を検知するように構成された検知回路と、を含む医療システムに関する。心臓応答プロセッサは、検知回路に接続されている。心臓応答プロセッサは、ペーシングパルスの送出に先立って時間間隔を置いて得られたデータを使用する心臓信号のベースラインの振幅を設定して、心臓信号のベースライン振幅を用いてペーシングパルスに対する心臓応答を判断する。ペーシングパルスは、心房または心室ペーシングパルスであってよい。
【0027】
心臓信号は、ベースライン振幅を設定する前にフィルタリングされ得る。一つの実施例において、心臓信号データは、時間間隔ごとに平均を取る。
いくつかの態様によれば、時間間隔は、約3ミリ秒〜約10ミリ秒の範囲の移動時間間隔であってもよい。
【0028】
いくつかの態様によれば、心臓応答プロセッサは、ペーシングされた拍動ごとにベースライン振幅を設定するように構成されている。
心臓応答プロセッサが、前記ベースライン振幅を基準にした心臓信号のピーク振幅を測定し、前記ベースライン振幅を基準とした前記ピーク振幅を使用して、前記ペーシングパルスに対する心臓応答を判断するように構成されている。
【0029】
本発明の他の実施の態様は、ペーシングに対する心臓応答を判断するために使用される医療システムを含む。該システムは、ペーシングパルスを心腔に送り出すように構成されたペーシング回路を含む。検知回路は、ペーシングパルスに関連する心臓信号を検知するように構成される。検知回路に接続されるプロセッサは、心臓信号の特徴を検出するとともに、一つ以上の前もって検出された心臓の信号特徴に対する特徴の変動性を判断するように構成されている。プロセッサは、特徴の変動性に基づいて、心臓応答を分類する。
【0030】
本発明の上記の発明の開示は、本発明の各実施の形態または実施をすべて網羅することを意図するものではない。添付図面と共に、以下の詳細な説明と請求の範囲を参照することによって、より完全な解釈によって、本発明の利点および効果が、より明確に理解されよう。
【0031】
本発明は、種々の変更および代替可能な形態に応じて修正が可能であるが、その具体性が図面において例示されるとともに以下に詳細に説明される。しかしながら、本発明は記載されている特定の実施の形態に制限されるものではない。むしろ、添付の請求の範囲によって定義されているように、本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明を変更したもの、本発明と等価のもの、および本発明を代替するもの全てを網羅するように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】本発明の実施の形態による、捕捉の心房の損失を確認する方法を示すグラフである。
【図1B】本発明の実施の形態による、心房の捕捉検証の方法を示すフローチャートである。
【図1C】本発明の実施の形態による、心房の誘発応答と逆行性P波検出の両方を用いてペーシングパルスに対する心臓応答を判定する方法を示すフローチャートである。
【図1D】本発明の実施の形態による、逆行管理方法を示すフローチャートである。
【図1E】本発明の実施の形態による、逆行伝導管理方法をより詳細に示すフローチャートである。
【図1F】本発明の実施の形態による、逆行管理方法の動作を示す図である。
【図1G】本発明の実施の形態による、逆行管理方法の動作を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態による、心房の捕捉検証方法に関連して使用され得る植込み型心臓律動管理システムを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態による、心房の捕捉を確認し心房の逆行伝導を管理するために使用され得る植込み型医療デバイスを示すブロック図である。
【図4A】本発明による、逆行伝導に基づく捕捉検出方法を示すフローチャートである。
【図4B】本発明による、逆行管理方法を示すフローチャートである。
【図4C】本発明による、捕捉検出および逆行管理方法を示すフローチャートである。
【図5A】本発明の実施の形態による、心臓応答分類期間を形成する方法を示すフローチャートである。
【図5B】本発明の実施の形態による、捕捉された応答信号の特徴志向の分類応答間隔を示すグラフである。
【図6A】本発明の実施の形態による、初期化された心臓応答分類期間を示す図である。
【図6B】本発明の実施の形態による、適合の前と後のそれぞれの心臓応答分類期間を示す図である。
【図6C】本発明の実施の形態による、適合の前と後のそれぞれにおける心臓応答分類期間を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態による、適合可能な分類期間を用いてペーシングに対する心臓応答を分類する方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態による、心臓応答分類期間を安定させる方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態による、心臓信号特徴の変動性に基づいて捕捉と融合を識別する方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態による、任意の融合管理またはヒステリシス探索による捕捉閾値試験を実行する方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態による、任意の融合管理またはヒステリシス検索による拍動対拍動の自動捕捉検証方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態による、捕捉と融合を識別するために利用され得る心臓の信号特徴を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態による、心臓応答分類期間を初期化し、適合させ、ペーシングに対する心臓応答を分類するために使用され得る植込み型医療デバイスを示すブロック図である。
【図14】捕捉応答と非捕捉応答を含む二つの連続的な心拍動を示すグラフである。
【図15】本発明の実施の形態による、捕捉テンプレートを初期化する方法を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態による、非捕捉テンプレートを初期化する方法を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態による、ベースラインを適合させる方法を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態による、心臓ペーシング応答検出を初期化させたり、該心臓ペーシング応答検出にベースラインを適合させたりするために使用され得る植込み型医療デバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図示されている実施の形態の以下の説明において、実施の形態を構成する添付図面が参照され、図面において、本発明が実施され得る種々の実施の形態が示されている。他の実施の形態が利用され得て、本発明の範囲を逸脱しない限り、構造上および機能上の変更が成されてもよいことが理解されよう。
【0034】
心腔に対してペーシングパルスを送った後、ペーシングパルスに対するさまざまな心臓応答が可能である。一つのシナリオでは、ペーシングパルスは、減極の伝搬波面を生成することによって、結果的に、心室の収縮が生じ得る。このシナリオにおいて、ペーシングパルスが心室を捕捉したとされる。ペーシングパルスが充分なエネルギを有して、該パルスが非不応期間において送り出された場合、心室の捕捉が発生し得る。ペーシングパルスが心室の収縮を生じない場合、心臓応答は非捕捉または捕捉損失と呼ばれる。ペーシングパルスエネルギが低すぎる場合、あるいは、心臓組織の不応期間にペーシングパルスが送り出される場合、例えば、非捕捉が発生し得る。
【0035】
例えば、本発明のプロセスが、ペーシングのために使用されるエネルギを決定するための捕捉閾値試験において使用され得る。捕捉を生成する最小のペーシングエネルギは捕捉閾値と呼ばれる。ペーシングパルスは、捕捉閾値以外の余剰エネルギを消費せずに、心臓を捕捉するに足るエネルギを有することが望ましい。このように、捕捉閾値の正確な判定が効率的なペーシングを行うために望まれる。
【0036】
捕捉閾値試験手順を参照することによって、左心房、右心房、左心室および右心室の一つ以上の捕捉閾値を求める方法が示されることは当業者に理解されよう。このような手順において、ペースメーカは、自動的に、または、指令を受けて、選択された心室の捕捉閾値の検索を開始する。捕捉閾値は、心臓を一貫して捕捉する最も低いペーシングエネルギとして定義付けられる。
【0037】
自動捕捉閾値手順の一つの例において、ペースメーカは、一連のペーシングパルスを心臓に送り出し、ペーシングパルスに対する心臓応答を検出する。ペーシングパルスのエネルギは、所定数の捕捉損失応答が発生するまで、離散的な段階で減少し得る。ペースメーカは、捕捉閾値を確認するために所定数の捕捉応答が発生するまで、離散的な段階で刺激エネルギを増加させてもよい。捕捉閾値試験は、本発明の心臓応答分類方法を使用して実行され得る。
【0038】
捕捉閾値試験を実施するために、他の手順が利用されてもよい。一つの実施例では捕捉が検出されるまで、離散的な段階でペーシングエネルギが増加され続ける。他の実施例では、ペーシングエネルギは、二項サーチパターンによって、調整され得る。
【0039】
捕捉閾値の決定は、自動捕捉検出、即ち、一般にペーシング期間に拍動ごとに発生する手順から識別可能である。自動捕捉検出は、送出されたペーシングパルスが結果的に捕捉された応答を生じることを検証する。ペーシングパルスに続いて捕捉応答が検出されなかった場合、ペースメーカは、一貫したペーシングを確実にするためにバックアップセーフティペースが送ってもよい。バックアップペースは、例えば、初期のペーシングパルスの約70〜80ミリ秒後に送出され得る。通常のペーシング期間に所定数のペーシングパルスを送っても捕捉応答が得られない場合、ペースメーカは、捕捉閾値を求めるために、捕捉閾値試験を開始し得る。あるいは、所定数のペーシングパルスが捕捉応答を生成しない場合、ペースメーカは、次のペーシングパルスに備えて、ペーシングエネルギを調整し得る。心房捕捉検証および心房逆行管理は、本発明のプロセスを用いて実施され得る。
【0040】
本発明の実施の形態は、心房ペーシングパルスが心房を捕捉するか、または、心房を捕捉できなかったかを判断するための方法およびシステムに関する。捕捉損失の判断は、逆行伝導として示される心房へ逆行する心室の減極波の検出に基づいて行われてもよい。この逆行減極波が検出され、本発明の捕捉検証プロセスにおいて使用される。
【0041】
内因的に、または、心室のペースの結果のいずれかにおいて、心室の減極が発生する時、心房の組織がその不応期(refractory period)にない場合、減極の波面は、心房へ向かって移動し得る。心房の心筋組識が不応でない場合(即ち、内因性P波が存在していなかった場合、または、心房が心室減極の前に心房ペーシングパルスによって捕捉されなかった場合)、心室の減極によって開始される波面は、逆行伝導され、逆行性P波として心房内で検知される可能性が高くなる。このように、逆行性P波を検出することは、心房ペーシングパルスが心房を捕捉しなかったことを示す。
【0042】
本発明の更なる実施の形態は、心房ペーシングパルスが心房を捕捉しない時の心房への逆行伝導を回避または管理するための方法を含む。いくつかの実施の形態によれば、バックアップペースは、捕捉損失の事象に続いて心房に送られ得る。バックアップペーシングは、比較的高いエネルギレベルで送出され、捕捉を確実とすることにより、心房の逆行伝導を防止する。
【0043】
本明細書中に記載されている他の逆行管理方法は、逆行性P波が検出された場合、次に予定されているペースを遅延させることを含む。逆行性P波が検出された後、次に予定される心房のペースは、有効な心房の不応期が終わるまで遅延され得る。次に予定されるペースを遅延させることによって、次のペーシングパルスが送られる前に逆行伝導により生じた不応期から心筋を蘇らせる。
【0044】
図1Aは、本発明の実施の形態による、捕捉の心房の損失を確認する方法を示すグラフである。この方法は、例えば、デュアルチャンバ(二部構成)デバイスにおいて使用され得る。心房の捕捉が失われると、房室(AV)同期性が崩壊し得る。そして、房室遅延が終了する欠陥心房パルス発生後に心室パルスが発生し得る。心室が心房の前に起動されるので、励起が、上方移動して、心房を逆行伝導として活動させる。
【0045】
図1Aのグラフにおいて、心房を捕捉する心房ペーシングパルス110には、誘発心房応答(AER)114とQRS錯体である内因性心室応答112が伴う。心室後心房不応期(PVARP)140が、内因性心室応答112に続いて示されている。これは、内因性心室応答を有する心房のペーシングされた心拍動である。
【0046】
次の心拍動は、心房を捕捉する心房ペーシングパルス120から開始される。心房ペーシングパルス120の後には心房の誘発応答124が続く。心室誘発応答122を生成する心室を捕捉する心室ペーシングパルス125が送り出される。心室誘発応答は、内因性の心室応答112に関連する拡大性のQRS錯体を示す。心室ペーシングパルス125に続いて、PVARP140が示されている。
【0047】
図1Aの最後の心拍動は、心房の逆行伝導を示す。心房ペーシングパルス130は、心房を捕捉しない。このため、心房の誘発応答は検知されない。房室遅延の後、心房ペーシングパルス130の後に、心室ペーシングパルス135、そして心室誘発応答132が続き、心室の内因性の応答112に相対して広がったQRS錯体が示される。心室パルス135に続いてPVARP140が示される。心室のパルス135に続いてPVARP140内には心房の逆行性P波134が示される。該逆行性P波134は、心室のパルス135によって開始された減極波面によって生成され、心房へ伝導される。逆行伝導が予定されている心房ペーシングパルスの極めて近傍で発生する場合、パルスエネルギが捕捉閾値より大きい場合であっても心房の捕捉は発生しない。
【0048】
心周期において発生している心房の誘発応答、逆行性P波、またはその両方が、心房捕捉検証および心房の逆行管理の両方に対して利用可能である。図1B〜図1Cは、本発明の実施の形態による心房捕捉検証を示すフローチャートである。
【0049】
図1Bのフローチャートは、検知された逆行性P波に基づいた捕捉検証を例示する。
心周期において心房へペーシングパルスが送られる(101)。システムは、心周期において内因性の心室活動を検知する(102)。内因性の活動が検出されない場合(103)、ペーシングパルスが心室へ送られる(104)。
【0050】
システムは、内因性の心室活動または心室ペースに応答する逆行性P波を検知する(105)。逆行性P波が検出された場合(106)、心房の非捕捉可能性が高まる(107)。逆行性P波が検出されない場合(106)、心房の捕捉可能性が高まり、システムは心房ペースに対する心臓応答を捕捉された心房応答として分類する(108)。
【0051】
図1Cのフローチャートは、心房の誘発応答および逆行性P波検出を用いてペーシングパルスに対する心臓応答を判断する方法を示す。心房の誘発応答および逆行性P波検出を用いることによって捕捉検証プロセスの精度が高められる。心房ペーシングパルスが送られる(150)。システムが心房のペーシングに伴う心房の誘発応答を検知する(151)。システムは、内因性の心室の減極を検知する(152)。心室の内因性活動が検出されない(153)場合、ペーシングパルスが心室へ送られる(154)。
【0052】
心室のペースの送出または内因性の心室の減極に続いて、システムは心房において逆行性P波を検知する(155)。逆行性P波が検出され、心房の誘発応答が検出されない場合、心房ペーシングパルスに対する心臓応答は、非捕捉応答として分類される(156)。
【0053】
前述したように、心房の非捕捉によって、結果的に有効ペーシングとしては望ましくない一連の逆行性P波を生じ得る。種々の実施の形態は、心房非捕捉が検出された場合、逆行管理を提供する。図1Dのフローチャートは、本発明の実施の形態による逆行管理方法を示す。心周期においてペーシングパルスが心房へ送られる(161)。心周期において心室の内因性活動が検知されない場合(162)、ペーシングパルスが心室へ送られる(163)。心房ペーシングパルスが心房を捕捉しなかった場合、内因性の心室活動または心室ペーシングパルスによって開始される減極波面によって心房に逆行伝導が生じ得る。
システムは、心房ペーシングパルスが心房を捕捉したかを判断する(164)。システムが、心房ペーシングパルスによって心房が捕捉されなかったと判断した場合、心房の逆行管理が提供される(165)。
【0054】
心房の誘発応答が検出されなかった場合、システムは、非捕捉を検出し得る。この実施において、心房の逆行管理の提供には、主要な心房ペーシングパルスの直後に送られた心房のバックアップペースを送ることが含まれてもよい。システムは、検出された逆行性P波に基づいて、心房ペーシングパルスが心房を捕捉しなかったと判断し得る。この実施において、本明細書においてより詳細に記載されているように、逆行管理を提供することは、心房の有効な不応期の終了後までに、次に予定されている心房ペーシングパルスを遅延させることが含まれてもよい。
【0055】
図1Eは、本発明の実施の形態による逆行管理方法をより詳細に示すフローチャートである。この例において、システムは逆行性P波を検知し、逆行性P波が検知された場合、システムは、心房ペーシングパルスが心房の捕捉を生成しなかったと判断する。
心房の組織が不応である間は、逆行性P波は次に予定されている心房ペースが送られるようにする。心房の組織が、予定されている心房ペースに反応不可能であるので、予定されている心房のペースは有効でなくなる。心房の有効不応期(AERP)の終了までに次に予定されている心房ペースの供給を遅延させることによって心房の組織が不応である間、システムは心房ペーシングを送らないようにする。
【0056】
図1Eのフローチャートにおいて、システムは、次に予定されている心房ペーシングパルスを送り(139)、AV(房室)の期間において、心室の内因性の減極が検知されない場合、心室ペースを送る(141)。PVARP期間において、例えば、心室ペースまたは内因性の心室減極に続いて、システムは、逆行性P波を検知する。逆行性P波が検出されない場合(142)、次のサイクルのための逆行管理は必要とされなくなり、システムは、A−A間隔が終了した後(167)で、次に予定される心房パルスを送る(139)。
【0057】
逆行性P波が検出された場合(142)、逆行性P波から次に予定される心房ペースまでの時間が心房の有効不応期(AERP)より長いかを判断するためのチェックが行われる。例えば、好適なAERPは患者次第で変化するが、約200〜約300ミリ秒である。時間間隔がAERPより短い場合、AERPが終了した後に、次の心房ペーシングパルスを発生させるために、該次の心房ペーシングパルスを遅延させて、予定変更される(149)。時間間隔がAERPより長いことが判定された場合(145)、次の心房ペーシングパルスのタイミングは変更されず、システムは、ステップ139および167において予定された通りに、次の心房ペーシングパルスを送り出す。
【0058】
次の心房ペーシングパルスが遅延し(149)、その時間以前に心房が検知されない場合(144)、遅延された心房ペーシングパルスのエネルギは、捕捉を確実にするために前もって送出されたペーシングパルスより増加される(146)。遅延された心房ペーシングパルスのエネルギは、例えば、電圧を大きくしたり、ペーシングパルスのパルス幅を広げたりすることによって、増加され得る。次に、高エネルギの心房ペーシングパルス147が送出された後、心房の誘発応答が検出されたかが判定される(148)。このステップは、現在AERPが十分に長いかどうか判断する。高エネルギの心房ペース(147)に対する誘発応答が検出された場合(148)、AERPは十分に長く、そして、現在AERPが維持され得る。高エネルギ心房ペースに対して誘発応答がない場合(148)AERPの長さは不十分であり、調整される(165)。システムは、心室をペーシングあるいは検知し(166)、次のA−A間隔を待機する(167)。
【0059】
図1Eのフローチャートに関連して記載されている逆行管理方法の動作は、図1Fおよび図1Gのグラフに示されている。図1Fは、バックアップペーシングを送らず、また逆行管理されない場合のペースメーカのペーシング応答グラフを示す。図1Fのグラフにおいて、心房ペース152がもたらされるが、捕捉は生じない。心室ペーシングパルス158は、房室(AV)遅延の後に送られる。心室ペーシングパルス158の後にPVARP 140が続く。逆行伝導が生じ、これによってPVARP 140期間において検知される逆行性P波153が生じる。PVARPは、逆行性P波がAV間隔を開始しないようにする。しかしながら、逆行管理がされないため、次に予定される心房ペース154は心房不応期170に送られる。心房ペーシングパルス154は無効であり、他の心室ペーシングパルス160が設定され、その後に、PVARP140、そして、再び逆行性P波155が続く。このプロセスは、無効心房ペーシングパルス156と、次の心室ペーシングパルス162に対して連続的に行われ、結果的に反復される無効心房ペースとAV同期性の損失が生じる。
【0060】
図1Gは、本発明の実施の形態による、バックアップペーシングは送らないが、逆行管理方法を有する、ペースメーカのペーシング応答グラフを示す。図1Gのグラフにおいて、心房パルス172がもたらされるが、捕捉は発生しない。心室ペーシングパルス178が房室遅延後にもたらされる。心室ペーシングパルス178の後に、PVARP 140が続く。逆行伝導が発生し、これによって、PVARP 140期間において検知される逆行性P波173が生じる。ペースメーカは、検出された逆行性P波173に対してAERP 170を開始する。検知された逆行性P波173によって、ペースメーカは、AERP 170の終了まで、次の心周期において対して心房ペース174を遅延させる。AERP 170の終了後、次に予定される心房ペース174を遅延させることによって、心房の組織が逆行性P波173のために不応である間に次に予定される心房ペース174が送られないようにする。誘発応答信号126は、心房ペースの後で検知され得る。AV同期性および有効心房ペーシングは、次に来る心周期期間も心房176と心室180、182のペーシングパルスに対して維持される。
【0061】
本明細書中に記載されている捕捉検証および逆行管理プロセスは、左心房や右心房に関して利用され得る。本発明の種々の実施の形態においては、ペーシングおよび検知に対して同じ電極の組合せが使用される。他の実施の形態においては、捕捉検証のためのペーシングに続く心臓信号を検知するために使用される電極組合せとは異なるペーシングのための電極の組合せが使用される。ペーシングおよび検出のための異なる電極組合せを使用することによって、心臓応答判断が改善され得る。更に、同一または異なる電極組合せによって、誘発応答の検知および逆行性P波の検知の際に利用され得る。
【0062】
本明細書において例示されている本発明のシステムの実施の形態は、一般に、従来の技術において公知の多数のペーシング・モードで動作し得る植込み型心臓ペースメーカ/除細動器(PD)において実施され得るものとして記載されている。様々なタイプの単一または複数のチャンバ植込み型心臓ペースメーカ/除細動器が、従来の技術において公知であり、本発明の心房捕捉検証方法についても使用され得る。本発明の方法は、例えば、デュアルチャンバ(二部構造)ペースメーカ、除細動器、電気除細動器、双心室ペースメーカ、心臓再同期調整器、を含む種々の植込み型または患者外装式心臓律動管理デバイスにおいて実施され得る。
【0063】
本発明によるシステムが、マイクロプロセッサベースのアーキテクチャを有する植込み型心臓ペースメーカ/除細動器と関連して記載されているが、所望ならば、再同期調整再同期調整/除細動器(または他のデバイス)が任意の論理ベースの集積回路アーキテクチャにおいても実施され得ることが理解されよう。
【0064】
次に、図面の図2を参照すると、本発明の捕捉検証および逆行管理方法を実施するために使用され得る心臓律動管理システムが示されている。図2の心臓律動管理(CRM)システムは、リードシステム202に電気的におよび物理的に接続されたPD200を含む。PD200のハウジングやヘッダは、心臓電気的活動を検知するために心臓へ電気刺激エネルギを付与するために使用される一つ以上の電極208、209を組み込むことができる。PD200は、缶電極209としてPDハウジング全てまたは一部を利用することができる。PD200は、例えば、PD200のヘッダまたはハウジング上に位置決めされる中性電極208を含むことができる。PD200が缶電極209および中立電極208の両方を含む場合、一般に、電極208、209は、互いに電気的に絶縁される。
【0065】
リードシステム202は、心臓201によって生成される電気的な心臓信号を検出して、いくつかの所定の条件の下で心臓201へ電気的エネルギを付与して、心臓不整脈を治療するために使用される。リードシステム202は、ペーシングや検知あるいは除細動のために使用される一つ以上の電極を含んでもよい。図2に示されている実施の形態において、リードシステム202は、心臓内右心室(RV)リードシステム204、心臓内右心房(RA)リードシステム205、心臓内左心室(LV)リードシステム206および心臓外左心房(LA)リードシステム210を含む。図2のリードシステム202は、本明細書中に記載されている方法ともに使用され得る一実施の形態を示す。他のリードや電極が付加的または代替的に使用され得る。
【0066】
リードシステム202は、心臓201に挿入される心臓内のリード204、205、および206の部分によって人体に植込まれる心臓内リード204、205、および206を含むことができる。心臓内リード204、205、および206は、電気的活動を検知するとともに、心臓のさまざまな不整脈を治療するために、例えば、ペーシングパルスや電気的除細動ショック等の電気刺激エネルギを心臓へ送るための心臓内部に位置決め可能な電極を含む。
【0067】
図2に示されているように、リードシステム202は、電極(例えば、心外膜電極)を有し、一つ以上の心臓のチャンバを検出したり、ペーシングしたりするために心臓の外側の場所に位置決めされた、一つ以上の心臓外リード210を含み得る。
【0068】
図2に示された右心室リードシステム204は、SVC−コイル216、RV−コイル214、RV−リング電極211およびRV−先端電極212を含む。右心室リードシステム204は、右心房220を介して右心室219へ延出する。具体的には、RV−先端電極212、RV−リング電極211およびRV−コイル電極214は、電気的刺激パルスを検知し、該電気的刺激パルスを心臓に送るために右心室219の内の適所に位置決めされる。SVC−コイル216は、右心房チャンバ220内の適当な位置または右心房220につながる主要静脈に位置決めされる。
【0069】
一つの構成において、缶電極209に基準化されたRV−先端電極212は、右心室において単極ペーシング、検知、またはその両方を実施するために使用され得る。右心室における双極ペーシングや検知は、RV−先端212およびRV−リング211の電極を用いて実施され得る。さらに他の構成において、RV−リング211の電極は、任意に省略されてもよく、双極ペーシング、検知、またはその両方は、例えば、RV−先端電極212およびRV−コイル214を用いて達成され得る。右心室リードシステム204は、統合双極ペーシング/ショックリードとして構成され得る。RV−コイル214およびSVC−コイル216は、除細動電極である。
【0070】
左心室リード206は、ペーシング、検知、またはその両方のために左心室224内またはその周辺の適切な位置に配置されたLV遠位電極213およびLV近位電極217を含む。左心室リード206は、上大静脈を通って心臓の右心房220に案内され得る。右心房220から、左心室リード206は、冠状静脈洞小孔(冠状静脈洞の開口)内へ配置され得る。リード206は、冠状静脈洞を介して左心室224の冠状静脈へ案内され得る。
この静脈は、心臓の右側から直接アクセスできない左心室の表面に達するようにリード用のアクセス経路として使用される。左心室リード206のためのリード配置は、鎖骨下静脈アクセスと、左心室に隣接するLV電極213、217を挿入するための予め形成された案内カテーテルと、を介して達成され得る。
【0071】
左心室224における単極ペーシング、検知、またはその両方は、例えば、缶電極209に基準化されたLV遠位電極213を用いて実施され得る。LV遠位電極213とLV近位電極217は、左心室のための双極性検知、ペース電極、またはその両方として一緒に使用され得る。左心室リード206および右心室リード204は、PD200と共に、心臓の心室がほぼ同時にペーシングされるように心臓再同期化治療を施すために、または、位相されたシーケンスにおいて、心不全患者のために改良された心臓のポンプ効率を提供するために使用され得る。
【0072】
右心房リード205は、右心房220を検知すると共にペーシングするために右心房220内の適切な場所に位置決めされたRA-先端電極256およびRA−リング電極254を含む。一つの構成において、缶電極209に基準化されたRA−先端電極256は、例えば、右心房220内で単極のペーシング、検知、またはその両方を提供するために使用され得る。他の構成では、RA−先端電極256およびRA−リング電極254は、双極式ペーシング、検知、またはその両方を実行するために使用され得る。
【0073】
図2は、左心房リードシステム210の一つの実施の形態を示す。この例において、左心房リード210は、左心房222を検知およびペーシングするために心臓201の外側の適切な場所に配置されたLA遠位電極218およびLA近位電極215を有する心臓外リードとして実施される。左心房の単極ペーシング、検知、またはその両方は、例えば、缶電極209ペーシングベクトルのLA遠位電極218を用いて達成され得る。左心房の双極ペーシング、検知、またはその両方は、LA遠位電極218およびLA近位電極215の使用によって達成され得る。
【0074】
ここで、図3を参照すると、本発明の心房捕捉検証および逆行管理方法を実施するために適切な心臓のペースメーカ、除細動器300またはその両方の実施の形態が示されている。図3は、機能ブロックに分割される心臓ペースメーカ/除細動器を示す。これらの機能ブロックが配列され得る可能性のある多くの構成が存在することが当業者によって理解されよう。図3に示される例は、一つの実行可能な機能配列である。他の配列も適用可能である。例えば、いくつかの又は様々な機能ブロックが、本発明の方法を実施する為に好適な心臓の心臓ペースメーカ/除細動器を説明するために使用され得る。更に、図3に記述された心臓ペースメーカ/除細動器300は、プログラム可能なマイクロプロセッサベースの論理回路の使用を考慮に入れているが、他の回路実施も利用可能である。
【0075】
図3に記述された心臓ペースメーカ/除細動器300は、心臓から心臓信号を受け取り、ペーシングパルスまたは除細動ショックの形態の電気的刺激エネルギを心臓へ付与するための回路を含む。一つの実施の形態において、心臓ペースメーカ/除細動器300の回路は、人体への植込みに適したハウジング301に収容され気密密閉される。心臓ペースメーカ/除細動器300への電力は、バッテリ380によって供給される。コネクタブロック(図示せず)は、心臓ペースメーカ/除細動器300のハウジング301に装着され、これにより、心臓ペースメーカ/除細動器300の回路へのリードシステム導電体の物理的および電気的装着が可能となる。
【0076】
心臓ペースメーカ/除細動器300は、コントロールシステム320およびメモリ370を含む、プログラム可能なマイクロプロセッサベースのシステムであってもよい。メモリ370は、他のパラメータとともに、さまざまなペーシング、除細動および検知モードのためのパラメータを格納することができる。更に、メモリ370は、心臓ペースメーカ/除細動器300の他の部品によって受け取られる心臓信号を表すデータを格納し得る。メモリ370は、例えば、ヒストリカルなエレクトログラム(EGM)および治療データを格納するために使用され得る。ヒストリカルなデータの格納には、例えば、傾向変動や他の診断目的のために使用される長期間にわたる患者のモニタリングによって得られるデータを含み得る。ヒストリカルデータは、他の情報と共に、必要に応じて、あるいは、所望通りに、外部のプログラマユニット390へ送信され得る。
【0077】
コントロールシステム320は、心臓ペースメーカ/除細動器300の動作をコントロールするために、心臓ペースメーカ/除細動器300の他の構成要素と協動し得る。一つの例において、心臓ペースメーカ/除細動器300は、患者の血行力学的ニーズを判断するためのセンサを組み込むことができる。センサ出力は、患者の活動レベルに適合された速度で、ペーシングを送るために、コントロールシステム320によって使用され得る。いくつかの実施において、心臓ペースメーカ/除細動器300は、血行力学的なニーズを決定するために患者の活動レベル、呼吸数、またはその両方を決定するための加速度計や経胸腔的インピーダンスセンサの構成要素を含み得る。
【0078】
図3において記述されたコントロールシステム320は、本発明の種々の実施の形態によるペーシング刺激に対する心臓応答を判定するために心臓応答分類プロセッサ325を含む。コントロールシステム320は、ペースメーカ制御回路322、不整脈検知器321、テンプレート・プロセッサ324、および心臓ペースメーカ/除細動器300の動作をコントロールするための他の構成要素を含む更なる機能構成要素を含むことができる。
【0079】
遠隔測定回路360は、心臓ペースメーカ/除細動器300と外部プログラマユニット390間で通信するために実施され得る。一つの実施の形態において、遠隔測定法回路360とプログラマユニット390は、プログラマユニット390と遠隔測定法回路360の間で信号およびデータを送受信するために、従来の技術において知られているように、ワイヤループアンテナおよび無線周波数遠隔測定リンクを用いて通信する。このように、プログラミングコマンドと他の情報は、植込み最中と植込み後に、プログラマユニット390から心臓ペースメーカ/除細動器300のコントロールシステム320まで転送され得る。更に、例えば、捕捉閾値、捕捉検出や心臓応答分類、関連する格納された心臓データは、他のデータとともに、心臓ペースメーカ/除細動器300から、プログラマユニット390へ転送され得る。
【0080】
図3に示されている心臓ペースメーカ/除細動器300の実施の形態において、RA−先端電極256、RA−リング電極254、RV−先端電極212、RV-リング電極211、RV−コイル電極214、SVC−コイル216、LV遠位電極213、LV近位電極217、LA遠位電極218、LA近位電極215、中間電極208、および缶電極209が、切換マトリクス310を介して、検知回路331〜337に接続されている。
【0081】
右心房検知回路331は、心臓の右心房から電気信号を検出して、該電気的信号を増幅させるように作用する。例えば、単極検知は、RA−先端電極256と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。右心房検知回路からの出力は、コントロールシステム320に接続される。
【0082】
右心室検知回路332は、心臓の右心室からの電気信号を検出し、増幅するように作用する。RV−先端電極212の使用によって検知された右心室心臓信号は、右心室近距離信号であり、RV率チャネル信号として示される。双極RV率チャネル信号は、RV−先端212およびRV−リング211の間で発達した電圧として検知され得る。あるいは、右心室の双極検知は、RV−先端電極212およびRV−コイル214を使用して実施され得る。右心室における単極率チャネル検知は、例えば、電圧がRV−先端電極と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。
【0083】
除細動電極の使用によって検出される右心室心臓信号は、RV形態またはRVショックチャネル信号とも呼ばれる遠距離信号であってもよい。より具体的には、右心室ショックチャネル信号は、RV−コイル214とSVC−コイル216の間で発達した電圧として検出され得る。右心室ショックチャネル信号も、RV-コイル214と缶電極209の間で発達した電圧として検出され得る。他の構成において、缶電極209とSVC−コイル電極216が電気的に短絡されてもよく、RVショックチャネル信号がRV−コイル214と缶電極209/SVC−コイル電極216の組合せ電極との間で発達した電圧として検出され得る。
【0084】
左心房心臓信号は、心外膜電極として構成され得る一つ以上の左心房電極215、218を使用することによって検知され得る。左心房検知回路335は、心臓の左心房から電気信号を検出し、増幅するように作用する。左心房における双極検知、ペーシング、またはその両方は、例えば、LA遠位電極218およびLA近位電極215を使用して実施され得る。左心房における単極検知、ペーシング、またはその両方は、例えば、LA遠位電極218から缶電極209まで、または、LA近位電極215から缶電極209までのベクトルを使用することによって達成され得る。
【0085】
左心室検知回路336は、心臓の左心室からの電気信号を検出して、増幅するように作用する。左心室における双極検知は、例えば、電圧がLV遠位電極213およびLV近位電極217の間で発達された電圧を検知することによって、実施され得る。単極検知は、例えば、LV遠位電極213またはLV近位電極217から缶電極209までの間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。
【0086】
任意であるが、LVコイル電極(図示せず)は、左心室に隣接する、患者の心臓脈管構造、例えば冠状静脈洞に挿入され得る。LV電極213および217、LVコイル電極(図示せず)や缶電極209の組合せを用いて検出された信号は、左心室検知回路336によって検知され増幅され得る。左心室検知回路236の出力は、コントロールシステム320と接続される。
【0087】
切換マトリックス310の出力は、電極211、212、213、214、216、217、218、254および256の選択された組合せを誘発応答検知回路337と接続するために作動されることができる。誘発応答検知回路337は、本発明の実施例による心臓応答分類のためのさまざまな組合せの電極を使用して発達した電圧を検出し増幅させるように作用する。
【0088】
本明細書中に記載されている実施の形態において、ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するために、ペーシングパルスに続く心臓信号のペーシングおよび検知に関連して、ペーシング電極と検知電極の種々の組合せが使用され得る。例えば、いくつかの実施の形態において、第1の電極の組合せが心腔をペーシングするために使用され、第2の電極の組合せはペーシングに続いて心臓信号を検知するために使用される。他の実施の形態において、同じ電極の組合せが、ペーシングおよび検知のために使用される。更に、逆行性P波を検知するために使用される電極は、心房の誘発応答を検知するために使用される電極とは異なってもよいし、または、同じであってもよい。
【0089】
ペースメーカコントロール回路322は、左心房、右心房、左心室および右心室のためのペーシング回路と組み合わされて、種々の電極の組合せを用いて、ペーシングパルスを選択的に生成し、該ペーシングパルスを心臓へ送るように実施され得る。本明細書中に記載されているように、ペーシング電極の組合せは、心臓のチャンバの双極または単極のペーシングを実行するために使用され得る。
【0090】
ここで述べるように、双極または単極のペーシングパルスは、上述のペーシングベクトルの一つを用いて、心腔へ送られてもよい。ペーシングパルスの送出後の電気的信号は、切換マトリクス310を経て心臓応答分類プロセッサ325に接続された種々の検知ベクトルを介して検知され、ペーシングに対する心臓応答を分類するために使用され得る。
【0091】
切換マトリックス310は、ペーシングおよび除細動電極のさまざまな構成に対して接続性をもたらすように配列され得る。切換マトリクス310の出力は、選択された組合せの電極間で検出された心臓信号を検知すると共に増幅するように作用する誘発応答(ER)検知回路337と接続され得る。検出信号は、ER増幅器337を介して、心臓応答分類プロセッサ325に接続される。心臓応答分類プロセッサ325は、ペーシング刺激に対する心臓応答を判断するように構成された回路を含む。誘発応答の有無は、本発明の実施例よる、ペーシングパルスに続いて検知される心臓信号の振幅、ピーク値、ピークタイミングや他の形態学的な特徴に基づいて判断され得る。
【0092】
一つの実施において、心臓ペースメーカ/除細動器300は、本明細書中に記載されているように、心房の誘発応答(AER)を検知するために誘発応答チャネル337を利用できる。心臓ペースメーカ/除細動器300は、右心房において逆行性P波を検知するのに右心房検知チャネル331を利用できる。心臓ペースメーカ/除細動器300は、左心房において逆行性P波を検知するために左心房検知チャネル335を利用できる。
【0093】
図4Aは、本発明による逆行伝導に基づいた捕捉検出の方法400を更に説明するフローチャートである。心房ペーシングパルス402が送られ、内因性の心室減極が検出されたかが判断される(404)。内因性の心室減極が検出されなかった場合(404)、心室ペーシングパルスが送られる(406)。PVARPは、心室ペーシングパルスまたは内因性の心室減極の後に、開始される(408)。PVARP を始めた後(408)に、システムは、逆行性P波を検知する(410)。PVARPの期間において(413)、逆行性P波が検出された場合(412)、心房非捕捉が確認される(413)。PVARPの期間において(413)、逆行性P波が検出されなかった場合(412)、心房非捕捉が確認されない(414)。
【0094】
図4Bは、本発明による逆行管理の方法430を示すフローチャートである。心房ペーシングパルス432が送られ、心房の誘発応答が検出されたかが判断される(434)。心房の誘発応答を検出されず(434)、バックアップペーシングが利用できない場合(440)、逆行性P波が検知される(ステッ442)。逆行性P波が検出された場合(444)、AERPの後に次の心房パルスが予定された場合(448)、次の心房パルスが予定通り送り出される(446)。AERPの後に次の心房ペースが予定されていない場合(448)、ペーシングエネルギが増加され(450)、AERPの後に高エネルギペーシングパルスが送られる(452)。心房の誘発応答のチェックの際(434)、誘発応答が検出された場合、捕捉が確認される(436)。心房の誘発応答のチェックの際(434)、誘発応答が検出されないが、バックアップペーシングが使用可能である場合(440)、バックアップペーシングは心房へ送られる(438)。逆行性P波が検出されない場合(444)、次の心房ペースが予定通りに送り出され得る(446)。
【0095】
図4Cは、本発明によれば捕捉検証および逆行管理の方法(460)を示すフローチャートである。心房ペーシングパルス462が送られ、心房の誘発応答が検出されたかがチェックされる(464)。検出された心房の誘発応答があった場合(464)、捕捉が確認され(492)、逆行管理は用いられない(494)。検出された心房の誘発応答がなかった場合(464)、非捕捉が確認され(492)、非捕捉が推測され(466)、内因性の心室減極がチェックされる(468)。心室の減極を発見されなかった場合(468)、心室ペーシングパルスが送られる(470)。心室の減極が発見された場合(468)、心室ペーシングパルスを送らずに(470)、PVARP (472)が開始される。PVARPを開始した後(472)、逆行性P波が検知される(474)。逆行性P波が検出された場合(476)、心房非捕捉が確認され(482)、AERPの後で次の心房ペースが予定されているかを見るためにチェックされる(484)。チェックの際、AERPの後で次の心房ペースが予定されていると判断された場合(484)、次の心房パルスは予定通りに送られる(486)。チェックの際、AERPの後で次の心房ペースが予定されないと判断された場合(484)、ペーシングエネルギは増加され(488)、AERPの後でより高いエネルギパルスが送られる(490)。逆行性P波が検出されない場合(476)、心房非捕捉は確認されず(478)、逆行管理も使用されない(480)ので、次の心房パルスは予定通りに送られる。
【0096】
本発明の実施の形態は、捕捉検出のために使用される方法を含む。本明細書中に記載されている方法および装置は、捕捉および融合収縮を識別するために、捕捉応答信号の安定形態を有利に利用する。捕捉応答信号の特定の特徴のタイミングにおける変動性は、ある程度の信頼度によって判断され得る。本明細書中に記載されている実施の形態において例示されているように、捕捉応答信号特徴のタイミングの変動性が捕捉検証と関連して使用され得る。
【0097】
心腔の捕捉は、ペーシングパルスに続く心腔の心臓信号を分析することによって検出され得る。心臓信号は、ペーシングパルスに続く空白期間の後に開始される分類期間において検知される。分類期間中に検知された心臓信号は、ペーシングパルスに対する信号応答を判断するために使用され得る。例えば、当該分類期間内で検知される心臓信号の一つ以上の特徴、サンプル、または形態特性は、ペーシングに対する特定のタイプの心臓応答を特徴付けるテンプレートや他の基準と比較され得る。例えば、テンプレートは、捕捉応答、非補足応答、または融合収縮を特徴づけることができる。分類期間において検知される心臓信号がテンプレートと整合している場合、当該ペーシングパルスに対する心臓応答は、テンプレートによって表される特定のタイプのペーシング応答として分類される。
【0098】
心臓信号の特徴、サンプルまたは形態特性が、対応するテンプレートの特徴、サンプル、または形態特性と十分に類似していると判断された場合、心臓信号はテンプレートと整合していると考えられ得る。ある心臓信号が、特定のタイプの心臓応答を示すテンプレートと十分に類似している場合、当該心臓信号は、特定のタイプの心臓応答として分類され得る。いくつかの実施の形態は、ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するために有用で適合可能な(adaptable)心臓応答分類期間を実施するための方法およびシステムに関する。分類期間は、例えば、心臓応答信号の一つ以上の特徴に関連する統計パラメータを使用して適合され得る。適合可能な分類期間は捕捉を検出したり、捕捉応答、非捕捉応答および融合収縮の二つ以上を識別したりするために使用され得る。
【0099】
適合可能な分類期間は、特定のタイプの心臓ペーシング応答(例えば、捕捉)を表示する心臓信号特徴が検出される可能性が最も高いペーシングパルスに続く期間を示す。適合可能な間隔において検知された心臓信号は、心臓ペーシング応答を判断するために使用される。適合可能な分類期間は、患者それぞれに対して個別化され、これによって、患者交差分散(cross patient variance)が低減される。心房の融合管理は、心室の融合管理におけるようなペーシングを強化し、融合を回避するために、AV遅延を短期化することに依存できないので、適合可能な分類期間は、心房ペーシングのための融合と捕捉を識別する際に特に有用である。
【0100】
心臓応答分類期間を初期化、適合させる方法は、図5Aのフローチャートにおいて示されている。分類期間は、心臓信号の特定の特徴が特定のタイプの心臓ペーシングパルスに対して検出される可能性が最も高い期間を含む。分類期間は、捕捉応答に関連する心臓信号特徴などの心臓信号特徴のタイミングに基づいて初期化され得る(1110)。心臓信号特徴は、例えば、心臓信号の正ピーク値、負ピーク値、または他の形態特徴を含んでもよい。
【0101】
最初の分類期間の継続時間は、所定の長さを有し得る。いくつかの実施形態において、心臓信号特徴のタイミングは、分類期間の中心点を定めるために使用され得る。そうではない他の実施の形態において、分類期間は、心臓信号特徴に関して一時的に調整される。ある概要において、最初の分類期間に使用される特徴のタイミングは、テンプレート初期化手順において生成される心臓応答テンプレートに基づいて決定される。テンプレート初期化手順は、捕捉応答を特徴づける一つ以上の特徴を含むテンプレートを得るために実行され得る。
【0102】
分類期間の初期化に続いて、心臓応答(例えば、捕捉応答)のタイプに関連する一つ以上の引き続く心臓信号が検知される(1120)。該一つ以上の次の心臓信号は、例えば、患者の処方されたペーシング療法に関連して、または、心臓ペーシングおよび捕捉検出を含む他のプロセスの期間に送られるペーシングパルスに続いて、検知され得る。心臓信号特徴のタイミング変動性は、過去、次の心臓信号、またはその両方を用いて判断される(1130)。分類期間の期間は、タイミング変動性に基づいて適合される(1140)。
【0103】
図5Bは、選択された心臓信号特徴に対する分類期間の調整をグラフに示し、この例において、心臓信号の正ピークを含む。本実施の形態において、図5Bのグラフによって示されるように、継続時間2×Aの分類期間1121は、ペーシングパルス1111に続く捕捉応答信号1112のピーク1115のタイミング1118に基づいて初期化される。ピークのタイミング1118は、分類期間1121の中心をマークする。
【0104】
初期化に続いて、ペース1111に次に一つ以上のペースが送られ、システムは、該次のペースの送出に続く心臓信号を検知する。次の信号が捕捉を示した場合、次の捕捉応答信号の各々のピーク振幅タイミングが検出される。当該捕捉応答信号のピーク振幅タイミングの変動性が判断される。ピーク振幅タイミング変動性は、最初の分類期間1121の上限1122および下限1123を更新するかまたは適合させるように使用される。
【0105】
適合可能な分類期間を含む本発明の実施の形態が、図6A〜図6Cに示されている。ピーク振幅およびピーク振幅タイミング(T0)を含む捕捉応答テンプレートが初期化処理において得られる。分類期間1200は、ペーシングパルス1205に続く時間の間隔として初期化される。初期の心臓応答分類期間1200は、T0を分類期間1200の初期中心点1210(M0)として使用する。所定範囲(R0)は、初期の分類期間のための初期範囲として選択され使用される。このように、初期の心臓応答分類期間は、初期中間点1210、M0、M0+R0の上限範囲1212およびM0−R0の下限範囲1211を有する。
【0106】
図6Bおよび6Cは、分類期間の適合を示す。図6Bは、適合の前の分類期間を示す。
分類の中心点1220は、Mi-1で示されている。分類期間の上限範囲1222は、Mi-1+Ri-1で示され、下限範囲1221は、Mi-1−Ri-1で示される。図6Cは、i番目の拍動と称される、次のペーシングされた拍動の後の心臓応答分類期間を示す。i番目の拍動のピーク振幅時間(Ti)が決定される。Tiが[Mi-1−Ri-1,Mi-1+Ri-1]の範囲内にある場合、i番目の拍動が融合ではなく、捕捉拍動であると考えられ、Tiは分類期間を適合するために使用される。そうでない場合、i番目の拍動は融合と考えられ、この範囲はその拍動からの情報を用いて更新されない。
【0107】
一つの実施の形態において、図6Cに示されるように、Tiは、適合分類期間の新しい中心点1230、Mi、新しい下限範囲1231、Mi−Ri、および新しい上限範囲1232、Mi+Riを生成するために使用される。Miに対する新しい値は、例えば、前の捕捉拍動に関連するピークタイミングの統計関数に基づいて決定され得る。一つの例において、Miに対する新しい値は、全ての先行される捕捉拍動、Tk(ここで、k=1,2,3,...,i)のピーク振幅タイミング値の平均を含む。あるいは、他の統計関数(重み付けされた平均値、メジアン値)は、Miを計算する為に使用され得る。Riに対する新しい値は、例えば、f*SDとして計算される(ここで、fは定数であり、SDは全ての先行する捕捉の拍動、Tkのピーク振幅タイミングの標準偏差である)。
【0108】
図7は、本発明の実施例に従って構成される分類期間を用いたペーシングパルスに対する心臓応答を分類する方法を例示しているフローチャートである。分類期間は、最初の中心点および範囲に対して初期化される(1310)。初期の分類期間は安定性のために調整される(1312)。安定化プロセスの間、例えば、分類期間の中間点、上限、下限またはその両方を含む心臓応答分類期間が一つ以上の捕捉拍動に基づいて変更される。一つの実施において、分類期間は、所定数の拍動を用いて調整され得る。
他の実施において、分類期間は、所定の安定基準が達成されるまで調整され得る。
【0109】
心腔へペーシングパルスを送リ出した後(1315)、心腔において検知された心臓信号のピーク振幅とピーク時間が決定される(1320)。ピーク時間が分類期間を超えた場合(1322)、心臓のペーシング応答は融合として分類される(1340)。ピークの時間が分類期間の範囲内にある場合、心臓信号振幅がチェックされる(1325)。
【0110】
ピーク振幅が閾値に等しいかまたはそれ以上である場合(1325)、心臓ペーシング応答は捕捉として分類される(1345)。ピーク振幅が閾値より下である場合(1325)、心臓ペーシング応答は非捕捉として分類される。
【0111】
融合が検出された場合(1340)、システムは、融合管理またはヒステリシス検索、即ち、(拍動対拍動の捕捉検証のアプリケーションにおいて)次のペーシングの前に内因性活動が発生するのを助長するためにペーシング間隔を延長したり、あるいは、(閾値試験のアプリケーションにおいて)次のペーシングを助長するためにペーシング間隔を短縮したりすることを含むプロセスを任意に開始し得る(1350)。例えば、AAIまたはVVIペーシングにおいて、例えば、融合が検出された後に、次の心周期に対するペーシング逃れ間隔(A−A間隔またはV−V間隔)が延長され、内因性の活動が発生し得る。DDDペーシングにおいて、融合が検出された後に、房室遅延が延長され、内因性の活動が促進され得る。
【0112】
融合が検出された場合(1340)、システムは溶融管理プロセスを任意に開始する(1350)。検出された振幅が検知レベル閾値を上回る場合、融合管理は、例えば、ペーシングパルスの送出前の検知およびペーシングの遅延を含んでもよい。心臓信号の振幅における上昇が、内因性の活動の存在を示すこともある。内因性の活動が検出されない場合、捕捉を確信させるに足るエネルギを有するバックアップペースが送られる。態様が本明細書中に記載されている実施の形態に組み込まれてもよい融合管理技術を含む方法および装置は、本明細書中に参照することによって組み込まれ、共通に所有されている米国特許第6,038,474号に説明されている。
【0113】
図8は、例えば、図7のブロック1312において使用され得る心臓応答分類期間を安定させる方法を示すフローチャートである。このプロセスでは、安定性が達成されるまで、心臓応答間隔は適合される。ペーシングパルスは心臓のチャンバへ送られる(1415)。ペーシングパルスを送った後で(1415)、心臓のチャンバにおいて検出された心臓信号のピーク振幅およびピークのタイミングが決定される(1420)。ピークの時間が分類期間を超えた場合(1422)、心臓のペーシング応答は融合として分類される(1440)。ピークの時間が分類期間内に収まる場合(1422)、心臓信号振幅がチェックされる(1425)。
【0114】
ピーク振幅が閾値以上である場合(1425)、心臓ペーシング応答は捕捉として分類される(1445)。ピーク振幅が閾値未満である場合(1425)、心臓ペーシング応答は非捕捉として分類される(1430)。
【0115】
ペーシングに対する心臓応答が捕捉として分類された場合(1445)、心臓信号のピークタイミングが分類期間を適合させるために用いられる。ステップ1450およびステップ1455において、捕捉拍動のピークタイミングの平均および標準偏差が求められる。分類期間の中心点は、平均的ピークタイミングを用いて変更される(1460)。分類期間の範囲は、ピークタイミングの標準偏差を用いて変更される(1465)。所定の安定基準が達成されれば、安定化が終了する(1475)。そうでない場合、安定基準が満たされるまで、あるいは、該プロセスが中断されるまで、プロセスは続けられる。一つの実施において、安定基準は、例えば、分類期間を適合させるために、所定の拍動数の使用を含み得る。他の実施において、中心点の変動や所定値未満の範囲など、例えば、メジアン値によって除算された標準偏差が約0.5を下回った場合、所定の安定基準に達するまで、分類期間の適合が続けられる。
【0116】
例えば、本発明のプロセスは、ペーシングのための最適エネルギを決定するために閾値試験に関連する心臓応答を判断するために使用され得る。最適ペーシングエネルギの決定は、例えば、捕捉閾値試験手順(procedure)によって実施され得る。更に、心臓応答分類期間は、拍動ごとにペーシング応答をモニタするために用いられる自動捕捉検証プロセスと関連して使用され得る。心臓に送られるペーシングパルスが捕捉応答を誘発できなかった場合、自動捕捉検証は、バックアップペーシングをコントロールするために使用され得る。以上のアプリケーションは、本発明のシステム及び方法の使用によって改良され得る。
【0117】
捕捉閾値試験手順を参照すれば、当業者が、左心房、右心房、左心室および右心室の一つにおける捕捉閾値を求める方法を理解するであろう。この種の手順において、ペースメーカは、自動的にまたはコマンドによって、選択された心臓のチャンバの捕捉閾値の検索を開始する。捕捉閾値は、一貫して心臓を捕捉する最も低いペーシングエネルギとして定義される。
【0118】
自動捕捉閾値手順の一つの例において、ペースメーカは、心臓に一連のペーシングパルスを送り、ペーシングパルスに対する心臓応答を検出する。所定数の捕捉損失応答が発生するまで、ペーシングパルスのエネルギは、離散的な段階を経て減少され得る。捕捉閾値を確認するために所定の捕捉応答数が発生するまで、ペースメーカは離散的な段階を経てステップの刺激エネルギを増加させることができる。捕捉閾値試験は、本発明の心臓応答分類方法を用いて実行され得る。
【0119】
捕捉閾値試験を実施するために他の手順が利用され得る。一つの実施例において、捕捉が検出されるまで、ペーシングエネルギは離散的な段階において増加し得る。他の例では、ペーシングエネルギは、2項式検索パターンに応じて調整され得る。
【0120】
捕捉閾値決定は、自動捕捉検出、即ち、ペーシング期間において拍動ごとに発生する手順と識別され得る。自動捕捉検出は、送られたペーシングパルスが結果的に捕捉応答を生じることを検証する。捕捉応答がペーシングパルスに続いて検出されない場合、ペースメーカは一貫したペーシングを確実にするためにバックアップ安全ペースを送ってもよい。バックアップペースは、例えば、最初のペーシングパルスの約70〜80ミリ秒後に送られてもよい。通常のペーシング期間に送られる所定数のペーシングパルスが捕捉応答を生成しない場合、ペースメーカは、捕捉閾値を決定するために捕捉閾値試験を開始し得る。あるいは、所定数のペーシングパルスが捕捉応答をもたらさない場合、ペースメーカは、次のペーシングパルスのためのペーシングエネルギ量を調整し得る。自動捕捉検出およびバックアップペーシングは、本発明の適合可能な分類期間や心臓応答分類プロセスを用いて実施され得る。
【0121】
ペーシングパルスはいかなる心腔にも送られてもよいし、ペーシングに対する心腔の心臓応答は、ペーシングパルスに続いて、チャンバ内で検出される心臓信号を評価することによって判断され得る。例えば、ペーシング刺激は、右心室、左心室、右心房および左心房の一つに送られ得る。本発明の種々の実施の形態は、ペーシングと検出に対して同じ電極の組合せを使用することを含む。他の実施の形態は、ペーシングに続く心臓信号を検出するために使用される電極の組合せとは異なるペーシングのための電極の組合せを使用することを含む。ペーシングと検出に対して異なる電極組合せを用いることによって、心臓応答分類を改良することができる。例えば、ペーシングと検出に対して異なる電極組合せを用いて、捕捉の検出を容易にしたり、捕捉拍動と融合収縮の識別を改良したりすることができる。
【0122】
本明細書中に記載されている実施の形態は、初期化を含み、適合可能な分類期間の使用、あるいは、所定期間の分類期間を利用が可能となり得る。心臓ペーシング応答の分類が、分類期間内で検出される心臓信号の一つ以上の特徴の変動性に基づいていてもよい。心臓信号の選択された特徴は、拍動間で追跡され得る。選択された特徴の変動性は、例えば、捕捉および融合収縮を識別するために使用され得る。
【0123】
図9、図10、および図11は、本発明の実施の形態による、心臓信号の選択された特徴の変動性に基づいた心臓検出方法を示す。ピーク振幅またはピークタイミングなどの選択された特徴の変動性は、変動性閾値を超えるように決定され、次に、心臓拍動が融合として分類される。選択された特徴の変動性が変動性閾値の範囲内にある場合、システムは、捕捉拍動または非捕捉拍動などの心臓応答を更に分類し得る。変動性閾値は、例えば、ある特定のタイプの心臓応答を表す先行の心臓信号の選択された特徴に関連する標準偏差または他の統計的関数に基づいて決定され得る。図9、図10、および図11に示される心臓応答分類方法は、心房または心室のチャンバのいずれかにおける捕捉と融合収縮を識別する際に特に有用である。
【0124】
本発明の方法は、ペーシングまたは捕捉閾値試験に関連して、拍動間の自動捕捉検証によって使用され得る。図9は、本発明の実施例による捕捉および融合収縮を識別するプロセスを示すフローチャートである。ペーシングパルスが送られ(1501)、該ペーシングパルスの後の心臓信号が検知される(1512)。心臓信号の一つ以上の特徴が検出される。先行する心臓拍動の対応する特徴と比較した該心臓信号の一つ以上の特徴の変動性が判断される(1513)。システムは、心臓信号特徴の変動性に基づいて、捕捉および融合収縮を識別する(1534)。
【0125】
図10のフローチャートは、心臓応答判断プロセスを更に示す。初期化位相期間(1605)において、システムは、一連のペーシングパルスを送り、心臓信号特徴の変動性を追跡する。各追跡された特徴に対する変動性閾値は、初期化位相期間中に検出された信号に基づいて決定される。
【0126】
ペーシングパルスは心腔に送られる(1610)、パルスペーシングに続いて心臓信号が検知される(1615)。心臓信号の心臓信号特徴が検出される(1620)。例えば、図12のグラフによれば、心臓信号が非捕捉信号である場合(1822)、心臓信号の検出された特徴は、最大ピーク振幅(1822):Vnc−max、最大のピーク振幅タイミング(1828):Tnc−max、最小のピーク振幅(1823):Vnc−minや最小のピーク振幅タイミング(1821):Tnc−minの一つ以上を含み得る。
【0127】
心臓信号が捕捉応答である場合(1812)、心臓信号の検出された特徴は、最大のピーク振幅(1815):Vc−max、最大のピーク振幅タイミング(1818):Tc−max、最小のピーク振幅(1813):Vc−minや最小のピーク振幅タイミング(1811):Tc−minの一つ以上を含むことができる。
【0128】
図10に戻ると、システムは、検出された心臓信号の特徴の変動性を決定する(1625)。特徴タイミング変動性が変動性閾値を超過する場合(1630)、融合が検出される(1635)。この概要において、図7に関して記載されているように、ヒステリシス検索または融合管理プロセスが実施され得る(1640)。
【0129】
特徴タイミング変動性が変動性閾値を超過しない場合(1630)、システムは、ペーシングパルスが捕捉を生じたか否かを判定する。非捕捉と判断された場合(1645)、心臓信号が、それぞれ非捕捉応答の特徴に関連している一つ以上の変動性閾値を更新するために使用され得る(1646)。例えば、非捕捉のピークタイミングは、非補足のピークタイミングの変動性閾値を更新するために使用され得る。他の実施例において、非捕捉ピーク振幅は、非捕捉振幅変動性閾値を更新するために使用され得る。
【0130】
捕捉の損失が確認された場合(1665)、捕捉閾値が決定され、試験は完了して終わらせる(1660)。y個の拍動のうちx個が非捕捉拍動であると判断された場合、捕捉の損失が確認される。一つの実施例においては、約4つの拍動のうち約2つが非捕捉拍動である場合、捕捉の損失が確認される。
【0131】
拍動が捕捉拍動であると判断された場合(1645)、心臓信号は、捕捉検出間隔やそれぞれが捕捉応答の特徴と関連付けられた一つ以上の変動性閾値を更新するために使用される(1655)。例えば、捕捉応答ピークタイミングは、分類期間の範囲、中間点またはその両方を更新するために使用され得る。捕捉応答信号のピークのタイミングは、捕捉された応答ピークタイミングの変動性閾値を更新するために使用され得る。捕捉された応答信号のピーク振幅は、捕捉された振幅変動性閾値を更新するために使用され得る。
【0132】
図11のフローチャートは、本発明の実施の形態による、拍動間の自動捕捉検証(1705)のために使用される捕捉検出方法を示す。ペーシングパルスが心臓のチャンバに送られ(1710)、ペーシングパルスに続く心臓信号が検出される(1715)。心臓信号の心臓信号特徴が検出される(1720)。例えば、図12のグラフを参照して、心臓信号が非捕捉信号である場合(1822)、心臓信号の検出された特徴は、最大ピーク振幅(1825):Vnc−max、最大ピーク振幅タイミング(1828):Tnc−max、最小ピーク振幅(1823):Vnc−minや最小のピーク振幅タイミング(1821):Tnc−minの一つ以上を含み得る。
【0133】
心臓信号が捕捉応答である場合(1812)、心臓信号の検出された特徴は、最大ピーク振幅(1815):Vc−max、最大ピーク振幅タイミング(1818):Tc−max、最小のピーク振幅(1813):Vc−minや最小のピーク振幅タイミング(1811):Tc−minの一つ以上を含むことができる。
【0134】
システムは、検出された心臓信号特徴の変動性を判断する(1725)。特徴のタイミング変動性が変動性閾値を超過する場合(1730)、融合が検出される(1735)。この概要において、図7に関して上記に説明されているように、ヒステリシス検索または融合管理プロセスが実施され得る(1740)。
【0135】
特徴のタイミング変動性が変動性閾値を超えない場合(1730)、システムは、ペーシングパルスが捕捉を生じたか否かを判定する。非捕捉であると判断された場合(1745)、バックアップペースは、一般に、捕捉が確信できるエネルギレベルで送られる(1746)。非捕捉心臓信号は、それぞれが非捕捉応答の特徴に関連している一つ以上の変動性閾値を更新するために使用され得る(1760)。例えば、非捕捉ピークのタイミングは、非捕捉のピークタイミングの変動性閾値を更新するために使用され得る。他の実施例において、非捕捉のピーク振幅は、非補足の振幅変動性閾値を更新するために使用され得る。捕捉の損失が確認された場合、任意ではあるが、捕捉閾値試験が予定される(1765)。
【0136】
拍動が捕捉拍動であると判断された場合(1750)、心臓信号は、捕捉されたた応答信号を示すとともに、それぞれが捕捉された応答の特徴と関連している捕捉検出間隔、一つ以上の変動性閾値、またはその両方を更新するために使用される(1755)。例えば、捕捉応答ピークタイミングは、分類期間の範囲、中間点、またはその両方を更新するために使用され得る。捕捉された応答信号のピークタイミングは、捕捉された応答ピークタイミング変動性閾値を更新するために使用され得る。捕捉された応答信号のピーク振幅は、捕捉された振幅変動性閾値を更新するために使用され得る。
【0137】
次に、図13を参照すると、本発明の心房捕捉検証および逆行性管理方法を実施するために好適なペースメーカ/除細動器2000の実施の形態が示されている。図13は、機能ブロックに分割されるペースメーカ/除細動器を示す。これらの機能ブロックが配列される多くの可能性のある構成が存在することは、当業者によって理解されよう。図13において記述されている例は、一つの可能性のある機能的配列である。他の配列も適用可能である。例えば、いくつかの又は様々な機能ブロックが、本発明の方法を実施する為に好適な心臓のペースメーカ/除細動器を説明するために使用され得る。更に、図13に記述された心臓ペースメーカ/除細動器2000がプログラム可能なマイクロプロセッサベースの論理回路の使用を考慮に入れているが、他の回路実施も利用可能である。
【0138】
図13に記述された心臓ペースメーカ/除細動器2000は、心臓から心臓信号を受け取り、ペーシングパルスまたは除細動ショックの形態の電気的刺激エネルギを心臓に付与するための回路を含む。一つの実施の形態において、心臓ペースメーカ/除細動器2000の回路は、人体への植込みに適したハウジング2001に収容され気密密閉される。心臓ペースメーカ/除細動器2000への電力は、バッテリ2080によって供給される。コネクタブロック(図示せず)は、心臓ペースメーカ/除細動器2000のハウジング2001に装着され、これにより、心臓ペースメーカ/除細動器2000の回路へのリードシステム導電体の物理的および電気的装着が可能となる。
【0139】
心臓ペースメーカ/除細動器2000は、コントロールシステム2020およびメモリ2070を含む、プログラム可能なマイクロプロセッサベース・システムであってもよい。メモリ2070は、さまざまなペーシング、除細動および検知モードのためのパラメータを格納することができる。更に、メモリ2070は、心臓ペースメーカ/除細動器2000の他の部品によって受け取られる心臓信号を表すデータを格納し得る。メモリ2070は、例えば、ヒストリカルなエレクトログラム(EGM)および治療データを格納するために使用され得る。ヒストリカルなデータの格納には、例えば、傾向変動や他の診断目的のために使用される長期間にわたる患者のモニタリングによって得られるデータを含み得る。ヒストリカルデータは、他の情報と共に、必要に応じて、あるいは、所望通りに、外部のプログラマユニット2090へ送信され得る。
【0140】
コントロールシステム2020は、心臓ペースメーカ/除細動器2000の動作をコントロールするために、心臓ペースメーカ/除細動器2000の他の構成要素と協動し得る。一つの実施例において、心臓ペースメーカ/除細動器1000は、血液力学的な(hemodynamic)ニーズを決定するためのセンサを組み込むことができる。センサ出力は、患者の活動レベルに適合された速度で、ペーシングを送るために、コントロールシステム2020によって使用され得る。いくつかの実施において、心臓ペースメーカ/除細動器1000は、患者の活動レベルや呼吸数を決定するための加速度計や経胸腔的インピーダンスセンサの構成要素を含み得る。図13において記述されたコントロールシステム2020は、本発明の種々の実施の形態によるペーシング刺激に対する心臓応答を判定するために心臓応答分類プロセッサ2025を含む。コントロールシステム2020は、ペースメーカ制御回路2022、不整脈検知器2021、テンプレートプロセッサ2024、および心臓ペースメーカ/除細動器2000の動作をコントロールするための他の構成要素を含む更なる機能構成要素を含むことができる。
【0141】
遠隔測定回路2060は、心臓ペースメーカ/除細動器2000と外部プログラマユニット2090間で通信するために実施され得る。一つの実施の形態において、遠隔測定法回路1060とプログラマユニット1090は、プログラマユニット2090と遠隔測定法回路2060の間で信号およびデータを送受信するために、従来の技術において知られているように、ワイヤループアンテナおよび無線周波数遠隔測定リンクを用いて通信する。このように、プログラミングコマンドと他の情報は、植込み最中と植込み後に、プログラマユニット2090から心臓ペースメーカ/除細動器2000のコントロールシステム2020まで転送され得る。更に、例えば、捕捉閾値、捕捉検出や心臓応答分類、関連する格納された心臓データは、他のデータとともに、心臓ペースメーカ/除細動器2000から、プログラマーユニット2090へ転送され得る。
【0142】
図13に示されている心臓ペースメーカ/除細動器1000の実施の形態において、RA−先端電極256、RA−リング電極254、RV−先端電極212、RV−リング電極211、RV−コイル電極214、SVC−コイル216、LV遠位電極213、LV近位電極217、LA遠位電極218、LV近位電極215、中間電極208、および缶電極209は、図2に示されているように、切換マトリクス2010を介して、検知回路2031〜2037に接続されている。
【0143】
右心房検知回路2031は、心臓の右心房から電気信号を検出して、該電気的信号を増幅させるように作用する。例えば、単極検知は、RA−先端電極256と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。右心房検知回路からの出力は、コントロールシステム2020に接続される。
【0144】
右心室検知回路2032は、心臓の右心室からの電気信号を検出し、増幅するように作用する。RV−先端電極212の使用によって検知された右心室心臓信号は、右心室近距離信号であり、RV率チャネル信号として示される。双極RV率チャネル信号は、RV−先端212およびRV−リング211の間で発達した電圧として検知され得る。あるいは、右心室の双極検知は、RV−先端電極212およびRV−コイル214を使用して実施され得る。右心室における単極率チャネル検知は、例えば、電圧がRV−先端電極212と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって、実施され得る。
【0145】
除細動電極の使用によって検出される右心室心臓信号は、RVモフォロジまたはRVショックチャネル信号とも呼ばれる遠距離信号であってもよい。より具体的には、右心室ショックチャネル信号は、RV−コイル214およびSVC−コイル216との間で発達した電圧として検出され得る。右心室ショックチャネル信号も、RV−コイル214と缶電極209の間で発達した電圧として検出され得る。他の構成においては、缶電極209とSVC−コイル電極216が電気的に短絡されてもよく、RVショックチャネル信号は、RV−コイル214と、缶電極209/SVC−コイル電極216の組合せと、の間で発達した電圧として検出され得る。
【0146】
左心房心臓信号は、心外膜電極として構成され得る一つ以上の左心房電極215、918を使用することによって検知され得る。左心房検知回路2035は、心臓の左心房から電気信号を検出し増幅するように作用する。左心房における双極検知、ペーシング、またはその両方は、例えば、LA遠位電極218およびLA近位電極215を使用して実施され得る。左心房における単極検知、ペーシングまたはその両方は、例えば、LA遠位電極218から缶電極209まで、または、LA近位電極215から缶電極209までのベクトルを使用することによって達成され得る。
【0147】
左心室検知回路2036は、心臓の左心室からの電気信号を検出して増幅するように作用する。左心室における双極検知は、例えば、電圧がLV遠位電極213およびLV近位電極217の間で発達された電圧を検知することによって実施され得る。単極検知は、例えば、LV遠位電極213またはLV近位電極217から缶電極209までの間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。
【0148】
任意であるが、LVコイル電極(図示せず)は、左心に隣接する、患者の心臓脈管構造、例えば、冠状静脈洞に挿入され得る。LV電極213および217、LVコイル電極(図示せず)や缶電極209の組合せを用いて検出された信号は、左心室検知回路2036によって検知され増幅され得る。左心室検知回路236の出力は、コントロールシステム2020に接続される。
【0149】
切換マトリクス2010の出力は、電極211、212、213、214、216、217、918、254および256の選択された組合せを、誘発応答検知回路2037に接続するために作動され得る。誘発応答検知回路2037は、本発明の実施例による心臓応答分類のためのさまざまな組合せの電極を使用して発達した電圧を検出し増幅させるように作用する。本明細書中に記載されている実施の形態において、ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するために、ペーシングパルスに続く心臓信号のペーシングおよび検知に関連して、ペーシング電極と検知電極の種々の組合せが使用され得る。例えば、いくつかの実施の形態において、第1の電極の組合せは、心腔をペーシングするために使用され、第2の電極の組合せは、ペーシングに続く心臓信号を検知するために使用される。他の実施の形態においては、同じ電極の組合せは、ペーシングと検知のために使用される。更に、逆行性P波を検知するために使用される電極は、心房の誘発応答を検知するために使用される電極とは異なってもよいし、または、同じであってもよい。
【0150】
ペースメーカコントロール回路2022は、左心房、右心房、左心室および右心室のためのペーシング回路と組み合わされて、種々の電極の組合せを用いて、ペーシングパルスを選択的に生成し、当該ペーシングパルスを心臓へ送るように実施され得る。本明細書中に記載されているように、ペーシング電極の組合せは、心腔の双極または単極のペーシングを実行するために使用され得る。
【0151】
双極または単極のペーシングパルスは、本明細書中に記載されているペーシングベクトルの一つを用いて、心腔へ送られ得る。ペーシングパルスの送出後の電気的信号は、切換マトリクス2010を介して心臓応答分類プロセッサ2025に接続された種々の検知ベクトルを介して検知され、ペーシングに対する心臓応答を分類するために使用され得る。
【0152】
切換マトリックス2010は、ペーシングおよび除細動電極のさまざまな構成に対して接続性をもたらすように配列され得る。切換マトリクス2010の出力は、選択された組合せの電極間で検出された心臓信号を検知すると共に増幅するように作用する誘発応答(ER)検知回路2037と接続され得る。検出信号は、ER増幅器2037を介して、心臓応答分類プロセッサ2025に接続される。心臓応答分類プロセッサ2025は、ペーシング刺激に対する心臓応答を判断するように構成された回路を含む。誘発応答の有無は、本発明の実施例によるペーシングパルスに続いて検知される心臓信号の振幅、ピーク値、ピークタイミングや他の形態学的な特徴に基づいて判断され得る。
【0153】
本明細書中に記載されている心臓応答分類方法は、融合収縮から捕捉応答を識別する際に特に有用である適合可能な分類期間を含む。融合管理は自動捕捉検証の重要な態様であってもよい。また、捕捉閾値試験におけるペーシングに対する心臓応答の間違った分類は捕捉閾値の過小評価または過大評価を生じ得る。ペーシングに対する心臓応答分類を間違うと、ペーシングエネルギの設定量が過多または過少によって結果的にペーシングエネルギの最適量が不正確に決定され得る。固定された間隔よりも適合可能な分類期間を使用することによって個別に適合される分類期間が提供され、これによって、より有効な融合管理がもたらされる。
【0154】
本発明の種々の態様によれば、ペーシングパルスに続いて心臓信号が検知される。検出された心臓信号は、ペーシングパルスに対する心臓応答を判断するために使用され得る。捕捉は、ペーシングに続く心臓信号の一つ以上の特性的特徴またはサンプルが捕捉応答を表す基準値やテンプレートと比較することによって検出される。該一つ以上の信号特徴またはサンプルが、テンプレートや基準値と一致している場合、捕捉が検出される。例えば、捕捉は、ペーシングパルスを送った後に検知された信号のピーク値、例えば、正または負のピーク値を、捕捉応答を表すピーク閾値と比較することによって検出され得る。信号のピークの絶対値が捕捉されたピーク閾値と一致するかまたはそれを超過する場合、捕捉が検出される。同様に、非捕捉は、ペーシングパルスを送った後に検知された信号のピーク値、例えば、正または負のピーク値を、非捕捉応答を表すピーク閾値と比較することによって検出され得る。信号のピークの絶対値が非捕捉のピーク閾値未満のままであれば、非捕捉が検出される。
【0155】
いくつかの状況においては、心臓応答の判断のために、心臓信号の複数の特徴またはサンプルがテンプレートと比較されてもよい。心臓信号は、該心臓信号の特徴、サンプル、または形態学的特性が、特徴、サンプル、または形態学的特性と十分に類似していると判断された場合、テンプレートと一致していると考えられる。心臓信号が特定のタイプの心臓応答を表すテンプレートと十分に類似している場合、心臓信号は当該特定のタイプの心臓応答として分類される。図14のグラフは、ペーシングに対する捕捉応答および非捕捉応答を表す信号を示す。ペーシングパルス2110、2112は心房または心室の心腔へ送られる。第1のペーシングパルス2110に続いて心臓のチャンバにおいて検知された心臓信号2112は、ピーク振幅2115およびピークタイミング2118を有する捕捉応答である。検知されたペーシングパルス2120に続いて検知された心臓信号2122は、ピーク振幅2125およびピークタイミング2128を有する非捕捉応答である。捕捉された応答2112は、非捕捉応答のピーク振幅2125より相対的に大きなピーク振幅2115を展開する。捕捉された応答信号の相対的に大きなピーク振幅は、捕捉と非捕捉を識別するために使用され得る。捕捉応答または非捕捉応答のピーク振幅のタイミング2118および2128は、捕捉、非捕捉またはその両方を検出するためにピーク振幅情報と共に使用され得る。
【0156】
患者間の変動性、デバイスの植込み構造の変動性、および患者の容態の変化は、心臓のペーシング応答を判断するために使用されるテンプレートやベースライン基準の生成および維持に対して重大な問題を生じる。また、捕捉検出に使用されるテンプレートや閾値は、例えば、ノイズ、捕捉された応答テンプレートの内因性活動によって生じる非捕捉拍動を含むことによって汚染され得る。本発明の実施の形態では、捕捉応答テンプレートにおける不正確性につながるような擬似心臓信号を低減するために、メジアンフィルタリング方法が採用される。
【0157】
図15は、本発明の実施の形態による、テンプレートを初期化する方法2200を示すフローチャートである。例示的な実施の形態において、心腔は、内因率より高い率で、および、捕捉閾値より高いレベルで、ペーシングされる(2220)。拍動ごとにペーシング率をわずかにあるいはランダムに変えることによってペーシング率のジッタリング(jittering)が融合を回避するために付加的にあるいは代替的に使用され、各ペーシング後(2220)に誘発応答が測定され得る(2230)。奇数のペーシングパルスが使われ(2240)、各ペース後(2220)に誘発応答が測定される(2230)。例えば、捕捉応答ピーク振幅およびピーク振幅タイミングは、捕捉応答ごとに測定され得る(2230)。次にメジアン値がテンプレート作成(2250)のために選択される(2245)。このプロセスは繰り返され(2260)、反復ごとにメジアン値の平均を取り(2260)、これによって、テンプレートに影響を与えるノイズを減らす。代替的にまたは付加的に、メジアン値の周囲のいくつかの値が、より多数の奇数のペーシングパルスに対して選択され(2245)、平均を取るために使用され得る。
【0158】
融合収縮がテンプレート生成(2250)において回避される類似度を増やすために、奇数(例えば、33)が、反復計算(2240)のために選ばれる。ペーシング(2220)および応答測定(2230)が33回繰り返され、毎回、応答間隔範囲内のピーク応答振幅およびピークタイミングの値がCRMデバイスによって記録される。次に、全てのピーク応答振幅およびピークのタイミング値が昇順または降順にそれぞれ格付けされる。メジアンランク値、この場合、17のランキング(階数)を有する値が、誘発応答のためのテンプレート値として選択される。他の実施例において、17のランキングを有するメジアンランク値および、このメジアン値を包囲する四つの値、この場合、誘発応答テンプレート値を提供するために、13〜16および18〜21のランキングを有する値の平均値を取る。
【0159】
また更なる実施の形態においては、ペーシング(2220)および応答測定(2230)は9回繰り返され、毎回、応答間隔範囲内のピーク応答振幅およびピークタイミングの値がCRMデバイスによって記録される。全てのピーク応答振幅およびピークタイミング値は、それぞれ昇順または降順で格付けされる。メジアンランク値、この場合、5位に格付けされた値が、誘発応答テンプレート統計的解析のための第1候補のテンプレート値として選択される。ペーシング(2220)および応答測定(2230)は、更に9回反復されて値は格付けされ、5位に格付けされた値が今度は第2の候補テンプレート値として再選択される。このプロセスは、捕捉された応答候補値が真の誘発応答を表していると判断されるまで、捕捉応答分析のどのような反復に対しても反復され得る(2260)。この判定は、十分な数の候補値の平均を取った後、収束が確認された後、あるいは、他の適切な統計的原則を用いて行われる。
【0160】
図15は、本発明の実施の形態による、捕捉応答テンプレートを初期化する方法2200のフローチャートである。本発明のメジアンフィルタリング方法を使用して、他のタイプの心臓応答テンプレートも、作成されたり、更新されたり、改良されたりする。
例えば、図16に示されるように、非捕捉応答テンプレートは、本発明の方法を使用して形成され得る。図16に示されるように、心臓は、内因率より高い率で、捕捉閾値より低いエネルギレベルでペーシングされ得る(2310)。拍動ごとにペーシング率をわずかにあるいはランダムに変えることによってペーシング率のジッタリング(jittering)が融合を回避するために付加的にあるいは代替的に使用される。
【0161】
ペーシングパルスの後に続くと共に関連している心臓信号の特徴が測定される(2320)。例えば、低レベルのペースに続く信号のピーク振幅、ピークタイミングまたはその両方が測定される(2320)。捕捉閾値未満で送られたペーシングパルスは捕捉を生成しないので、患者への連続ペーシング治療施術を確信するためにも各主要ペース2310の後にバックアップペースを送ってもよい(2330)。バックアップペースは、主要ペーシングパルスの送出の80ミリ秒〜100ミリ秒後に送るのがよい(2330)。
【0162】
奇数のペーシングパルスが送られ(2340)、システムは、測定された振幅、ピークタイミングのメジアン値を決定し、あるいは、低レベルのペースに続く心臓の信号の他の測定された特徴値を求める(2310)。ピーク振幅やピークタイミング測定のメジアン値が選択され(2345)、非捕捉応答テンプレートを作成する(2350)。該テンプレートを作成するために使用される低レベルのペース数は好ましくは奇数である(2340)。低レベルのペース数が大きいほど(2340)、融合収縮を回避できる確率が高くなる。
【0163】
ペーシングパルスを送り、特徴値を測定し、測定された特徴値のメジアン値を決定するプロセスが反復され(2360)、反復毎のメジアン値の平均を取ることによって、テンプレートに影響を与えるノイズを減らす。代替的にまたは付加的に、メジアン値の周囲のいくつかの値が平均を取るために使用され得る(2345)。
【0164】
本発明は、図15〜図16に例示されている方法を組み合わせることによっても使用され得る。例えば、ペーシングに対する心臓応答は、心臓ペーシング応答を判断するために、非捕捉応答テンプレートおよび捕捉応答テンプレートのいずれかまたは両方の利用を含み得る。本発明によるメジアンテンプレート生成方法は、また、融合検出や管理に有用であり得る。例えば、ペーシングに続いて検知された心臓信号は、非捕捉応答テンプレートおよび捕捉応答テンプレートと矛盾している場合、心臓ペーシング応答は、融合/ノイズ管理プロセスを引き起こす融合またはおよび未知の(ノイズ)応答として分類され得る。本明細書中により詳細に記載されているように、本発明による心臓応答テンプレート生成のためのメジアンフィルタリング方法も閾値測定に適応可能な適合ベースラインを利用し得る。
【0165】
本明細書中における目的のため、メジアン値を求めるための奇数ペーシングパルスの使用は、メジアンを定義するように、偶数パルスを提供し、一つ以上のパルスを無視あるいは排除して、奇数番号に到達しようとすることに等しい。更に、本発明によれば、メジアン値の決定は、奇数または偶数の応答を格付けまたは順序付けし、ランクの最上位、最下位またはその両方の応答数を無視または排除して、メジアン値の近似化に効果的に到達させ、あるいは、メジアン値の周囲値をグループ分けすることに等しい。
【0166】
本発明によるメジアンテンプレートの生成方法は、心房および心室捕捉検証のために使用され得る。本発明の実施の形態は、いずれの心腔に送られるペーシングパルスに対しても有用である。例えば、ペーシング刺激は、右心室、左心室、右心房および左心房の一つ以上に送られ得る。本発明の種々の実施の形態は、ペーシングと検知に対して同じ電極の組合せを使用することを含む。他の実施の形態は、ペーシングに続く心臓信号を検知するために使用される電極の組合せとは異なるペーシングに対する電極の組合せを使用することを含む。
【0167】
患者間の変動性、デバイス移植構成の変動性、および患者の容態の変化は、テンプレートの生成と維持の両方に対して、および捕捉検証に対して、重大な問題を生成する。捕捉応答を確実に検出するために、広帯域増幅器が、心臓応答検出回路のために使用され得る。ペーシング率が高い時は特に、このような広帯域増幅器に対するベースラインは、拍動間でしばしば変動する。高ペーシング率での変動は、相対的に低ペーシング率の変動より大きなT−波によって少なくとも部分的に発生する。広帯域増幅器は、T−波のスペクトルのいくつかを保持し、変動の発生の原因となる。この変動性は、捕捉の擬似検出や捕捉損失につながる。
【0168】
心臓信号のベースラインの変動は、ピーク振幅の測定の際のエラーに繋がる場合もある。ベースラインの変動は、ペーシング率が高い場合に、心房や心室の誘発応答検出の際に問題となり得る。ベースラインの変動は、心室がペーシングされ、V−先端電極構成に対するA−リングが検知のために使用される場合、例えば、いくつかの誘発応答検知構成において問題となり得る。本発明の実施の形態によれば、適合ベースラインを使用することは捕捉応答検出の改良をもたらす。これらの変動による捕捉応答検出におけるエラーを減らすために、適合ベースラインは、拍動ごとに使用され得る。更に、適応ベースラインは、本明細書中に記載されているテンプレート初期化に対するメジアンフィルタリング方法と組み合わされ得る。
【0169】
図17は、本発明の実施の形態によるベースラインを適合させる方法2400のフローチャートである。方法2400は、ペーシングパルスに先立って移動評価間隔2410において心臓信号を測定する2420。移動間隔において測定された心臓信号2420は、その平均値が取られ2430、該平均値がペーシングパルスに続いて検知される心臓信号に対するベースラインとして使用される。例えば、3〜5ミリ秒の間隔(および、おそらく10ミリ秒以上まで)が移動間隔として使用され得る。例えば、心臓信号は、移動評価間隔以内の平均信号レベルに対して連続的に評価され得る。例えば、平均信号レベル2430は、低域フィルタおよび電圧保持回路を用いて、ディジタル化信号の数値平均を取ることによって、および、他のフィルタリング方法を用いて決定され得る。適合ベースラインは、ペーシングパルスの送出に続いて検知されると共に捕捉の検出のために使用される心臓信号のピークを測定するための基準点として作用する。
【0170】
広帯域の増幅器が心臓応答分類のために使用される心臓信号を検知するために使われる場合、適応ベースラインは特に有用である。この概要において、誘発応答検出のための基準点の変動は、拍動間で大いに変化するため、所望される拍動ごとに適合ベースラインを生成する。例えば、心房ペーシングにおいて、例えば、A−リング電極〜V−先端電極を使用することによって、信号(T−波)が公称値に戻る前に、心房ペーシングが開始される。T−波からの残留信号は、誘発応答検出に影響し得る。適合ベースラインは、例えば、心房ペーシングにおいてより高いペーシング率を可能とする。
【0171】
ここで、図18を参照すると、本発明の実施の形態による、誘発応答検出に適合可能なベースラインおよび誘発応答検出のためのテンプレートの初期化を実施するために適切な心臓ペースメーカ/除細動器2600が示されている。図18は、機能ブロックへ分割されるペースメーカ/除細動器として例示される心臓律動管理デバイスを示す。これらの機能ブロックが配列される多くの可能性の高い構成が存在することが当業者によって理解されよう。図18に記述された実施例は、一つの使用可能な機能的配列である。他の構成も適用可能である。例えば、多少なりとも、様々な機能ブロックが、本発明の方法を実施する為に好適な心臓の心臓ペースメーカ/除細動器を説明するために使用され得る。更に、図18に記述された心臓ペースメーカ/除細動器2600は、プログラム可能なマイクロプロセッサベースの論理回路の使用を考慮に入れているが、他の回路実施も利用可能である。
【0172】
図18に記述される心臓ペースメーカ/除細動器2600は、心臓から心臓信号を受け取り、ペーシングパルスまたは除細動ショックの形態における電気的刺激エネルギを心臓に付与するための回路を含む。一つの実施の形態において、心臓ペースメーカ/除細動器1800の回路は、人体への植込みに適したハウジング2601に収容され、気密密閉される。心臓ペースメーカ/除細動器2600への電力は、バッテリ2680によって供給される。コネクタブロック(図示せず)は、心臓ペースメーカ/除細動器1800のハウジング2601に装着され、これにより、心臓ペースメーカ/除細動器1800の回路へのリードシステム導電体の物理的および電気的装着が可能となる。心臓ペースメーカ/除細動器2600は、コントロールシステム2620およびメモリ2670を含む、プログラム可能なマイクロプロセッサベースのシステムであってもよい。メモリ2670は、他のパラメータとともに、さまざまなペーシング、除細動および検知モードのためのパラメータを格納することができる。更に、メモリ2670は、心臓ペースメーカ/除細動器2600の他の部品によって受け取られる心臓信号を表すデータを格納し得る。メモリ2670は、例えば、ヒストリカルなエレクトログラム(EGM)および治療データを格納するために使用され得る。ヒストリカルなデータの格納には、例えば、傾向変動または他の診断目的のために使用される患者の長期間にわたるモニタリングによって得られたデータを含み得る。ヒストリカルデータは、他の情報と共に、必要に応じて、あるいは、所望通りに、外部のプログラマユニット2690へ送信され得る。
【0173】
コントロールシステム2620およびメモリ2670は、心臓ペースメーカ/除細動器2600の動作をコントロールするために、心臓ペースメーカ/除細動器2600の他の構成要素と協動し得る。本発明の種々の実施の形態によれば、図18に記述されているコントロールシステム2620は、ペーシング刺激に対する心臓の応答を分類するための心臓応答分類プロセッサ2625を含む。コントロールシステム2620は、心臓ペースメーカ/除細動器2600の動作をコントロールするための他の構成要素と共に、ペースメーカ制御回路2622、不整脈検知器2621、およびテンプレートプロセッサ2624を含む更なる機能的構成要素を含んでいてもよい。 遠隔測定回路2660は、心臓ペースメーカ/除細動器2600と外部プログラマユニット2690間で通信するために実施され得る。一つの実施の形態において、遠隔測定法回路2660とプログラマユニット2690は、プログラマユニット2690と遠隔測定法回路2660の間で信号およびデータを送受信するために、従来の技術において知られているように、ワイヤループアンテナおよび無線周波数遠隔測定リンクを用いて通信する。このように、プログラミングコマンドと他の情報は、植込み最中と植込み後に、プログラマユニット2690から心臓ペースメーカ/除細動器2600のコントロールシステム2620まで転送され得る。更に、例えば、捕捉閾値、捕捉検出や心臓応答分類、関連する格納された心臓データは、他のデータとともに、心臓ペースメーカ/除細動器2600から、プログラマユニット2690へ転送され得る。
【0174】
図18に示されている心臓ペースメーカ/除細動器2600の実施の形態において、図2に関連して前述されているように、RA−先端電極256、RA−リング電極254、RV−先端電極212、RV−リング電極211、RV−コイル電極214、SVC−コイル216、LV遠位電極213、LV近位電極217、LA遠位電極218、LA近位電極215、中間電極208、および缶電極209が、切換マトリクス2610を介して、検知回路2631〜2637に接続されている。
【0175】
右心房検知回路2631は、心臓の右心房から電気信号を検出して、該電気的信号を増幅させるように作用する。例えば、単極検知は、RA−先端電極256と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。右心房検知回路からの出力は、コントロールシステム2620に接続される。
【0176】
右心室検知回路2632は、心臓の右心室からの電気信号を検出し、該電気的信号を増幅させるように作用する。右心室検知回路2632は、例えば、右心室率チャネル2633及び右心室ショックチャネル2634を含む。RV−先端電極212の使用によって検知された右心室心臓信号は、右心室近距離信号であり、RV率チャネル信号として示される。双極RV率チャネル信号は、RV−先端212およびRV−リング211の間で発達した電圧として検知され得る。あるいは、右心室の双極検知は、RV−先端電極212およびRV−コイル214を使用して実施され得る。右心室における単極率チャネル検知は、例えば、電圧がRV−先端電極と缶電極209の間で発達した電圧を検知することによって、実施され得る。
【0177】
RV−コイル電極214を使用することによって検知された右心室心臓信号は、RV形態またはRVショックチャネル信号とも呼ばれる遠距離信号であってもよい。より具体的には、右心室ショックチャネル信号は、RV−コイル214とSVC−コイル216の間で発達した電圧として検出され得る。右心室ショックチャネル信号も、RV-コイル214と缶電極209の間で発達した電圧として検出され得る。他の構成において、缶電極509とSVC−コイル電極216が電気的に短絡されてもよく、RVショックチャネル信号がRV−コイル214と缶電極209/SVC−コイル電極216の組合せ電極との間で発達した電圧として検出され得る。
【0178】
右心室検知回路2632からの出力は、コントロールシステム2620に接続されている。本発明の一実施の形態において、速度チャネル信号およびショックチャネル信号が、心臓の信号を解析するための形態テンプレートを発達させるために使用され得る。この実施の形態において、速度チャネル信号とショックチャネル信号は、右心室検知回路2632からコントロールシステム2620へ、そして、心臓信号の形態学的特性が解析されるテンプレートプロセッサ2624へ、転送され得る。テンプレートプロセッサ2624は、例えば、本明細書中により詳細に記載されているように、不整脈の識別とともに心臓応答分類のために使用されるテンプレートを含む種々のタイプのテンプレートを生成し維持するためにコントロールシステム2620とメモリ2670に組み合わされて作動する。
【0179】
左心房心臓信号は、心外膜電極として構成され得る一つ以上の左心房電極215、218を使用することによって検知され得る。左心房検知回路335は、心臓の左心房から電気信号を検出し増幅するように作用する。左心房における双極検知、ペーシングまたはその両方は、例えば、LA遠位電極218およびLA近位電極215を使用して、実施され得る。左心房における単極検知、ペーシングまたはその両方は、例えば、LA遠位電極218から缶電極209まで、または、LA近位電極215から缶電極209までのベクトルを使用することによって達成され得る。
【0180】
左心室検知回路2636は、心臓の左心室からの電気信号を検出して、増幅するように作用する。左心室における双極検知は、例えば、電圧がLV遠位電極213およびLV近位電極217の間で発達された電圧を検知することによって実施され得る。単極検知は、例えば、LV遠位電極213またはLV近位電極217から缶電極209までの間で発達した電圧を検知することによって実施され得る。
【0181】
任意であるが、LVコイル電極(図示せず)は、左心に隣接する患者の心臓脈管構造、例えば、冠状静脈洞に挿入され得る。LV電極213および217、LVコイル電極(図示せず)や缶電極209の組合せを用いて検出された信号は、左心室検知回路2636によって検知され、増幅され得る。左心室検知回路2636の出力は、コントロールシステム2620と接続される。
【0182】
切換マトリクス610の出力は、電極211、212、213、214、216、217、215、218、254および256の選択された組合せを、誘発応答検知回路2637に接続するために動作され得る。本発明の実施の形態によれば、誘発応答検知回路2637は、心臓応答分類のための種々に組合わされた電極を使用して、発達した電圧を検出し増幅させるように作用する。
【0183】
本明細書中に記載されている実施の形態において、ペーシングパルスに対する心臓応答を分類するために、ペーシングパルスに続く心臓信号のペーシングおよび検知に関連して、ペーシング電極と検知電極の種々の組合せが使用され得る。例えば、いくつかの実施の形態において、第1の電極の組合せが心腔をペーシングするために使用され、第2の電極の組合せがペーシングに続く心臓信号を検知するために使用される。他の実施の形態において、同じ電極組合せがペーシングおよび検知のために使用される。
【0184】
ペーシングと検知の両方に対して同じ電極の組合せを使用してペーシングパルスに続く心臓信号を検知することによって、電極と組織の界面における残留後ペース分極に関連するペーシングアーチファクト成分を含む検知された心臓信号を生成し得る。ペーシングのアーチファクト成分はペーシングパルスに対する心臓応答、即ち、誘発応答を表すより小さな信号に重畳され得る。ペーシング出力回路は、心臓からのDC(直流)成分を遮断するための結合コンデンサを含み得る。相対的に大きな結合コンデンサは、相対的に長い期間にわたって指数的に減衰するより大きなペーシングアーチファクトを生じる。
【0185】
ペースメーカコントロール回路2622は、左心房、右心房、左心室および右心室のためのペーシング回路と組み合わされて、種々の電極の組合せを用いて、ペーシングパルスを選択的に生成し、該ペーシングパルスを心臓へ送るように実施され得る。本明細書中に記載されているように、ペーシング電極の組合せは、心臓のチャンバの双極または単極のペーシングを実行するために使用され得る。
【0186】
双極または単極のペーシングパルスは、本明細書中に記載されているペーシングベクトルの一つを用いて、心腔へ送られてもよい。ペーシングパルスの送出後の電気的信号は、切換マトリクス2610を介して誘発応答検知回路2637に接続された種々の検知ベクトルを介して検知され、ペーシングに対する心臓応答を分類するために使用され得る。
【0187】
一つの実施例において、ペーシングパルスに続く心臓の信号は、ペーシングパルスの送出に対して使用されたベクトルと同じベクトルを用いて検知され得る。適合可能な心臓の応答分類期間は、ペーシングに対する応答を、例えば、捕捉応答、非捕捉応答、および融合収縮の一つとして分類するために使用され得る。
【0188】
心臓の応答分類に対して使用可能である更なる検知ベクトルを提供し得る。一つの実施において、心臓律動管理システムは、心臓をペーシングするように構成された心臓内リードシステムに接続されたペースメーカなどの第1のデバイスと、ペーシング以外の機能を実行するために構成されている、皮下リードシステムに接続されたペースメーカや心臓ペースメーカ/除細動器などの第2のデバイスと、を含むハイブリッドシステムを含んでいる。第2のデバイスは、皮下電極アレイを使用して検知された信号に基づいたペーシングに対する心臓応答を検出し分類するために用いられ得る。第1と第2のデバイスは、例えば、ワイヤレスリンクに対して生じるデバイス間の通信と協働して動作し得る。皮下電極システムおよびデバイスの例は、参照することによってその全体が本明細書中に組み込まれ、2003年6月13日に出願されるとともに共通に所有されている米国特許出願第10/462001号、および2003年6月19日に出願された米国特許出願第10/462520号に記載されている。
【0189】
RV先端電極212およびRVリング電極211を用いて総局ペーシングが送られてもよい。単極ペーシングはRV先端電極212から缶電極209のベクトルを用いて送られてもよい。RVペーシングに続く心臓応答分類のための検知電極の組合せは、缶電極209、およびRVコイル電極〜缶電極209、そして、システムが左心室リードを含む場合、LV遠位電極213〜LV近位電極217に繋がれたRVコイル電極214〜SVCコイル216を含む。
【0190】
左心室ペーシングの実施例において、双極ペーシングパルスは、LV遠位電極213とLV近位電極217の間の左心室へ送られてもよい。他の実施例においては、単極ペーシングパルスは、例えば、LV遠位電極213と缶電極209の間の左心室へ送られてもよい。ペーシングパルスの送出に続く心臓信号は、LV近位電極217と缶電極209を用いて検知され得る。
【0191】
右心房ペーシングの実施例において、双極ペーシングパルスは、RA−先端電極256とRA−リング電極254の間の右心房へ送られてもよい。他の実施例において、単極ペーシングパルスは、例えば、RA−先端電極256と缶電極209との間の右心房へ送られてもよい。単極性の右心房ペーシングとしては、心臓応答分類のためのペーシングに続く心臓信号を検知するために有用な電極組合せは、中間電極へ送られるRA−リング電極254を含む。左心房近位電極215は他の例において、双極ペーシングパルスは、LA遠位電極218とLA近位電極215の間の左心房へ送られてもよい。他の実施例において、単極ペーシングパルスは、例えば、LA遠位電極218と缶電極209の間の左心房へ送られてもよい。ペーシングパルスの送出に続くとともに心房捕捉検証に使用される心臓信号は、RA−先端電極256からRA−リング電極254までのベクトルを使用して検知され得る。
【0192】
本発明の一実施の形態において、切換マトリクス2610は、RA−先端電極256、RA−リング電極254、RV−先端電極212、RV−コイル電極214、LV遠位電極213、LV近位電極217、SVCコイル216、LA遠位電極218、LA近位電極215、中間電極208、および缶電極209と接続される。切換マトリクス2610は、ペーシングおよび除細動電極の種々の構成に接続性をもたらすように、配列され得る。交換マトリクス2610の出力は、選択された組合せの電極間で検出された心臓信号を検知し増幅させるように作用する誘発応答(ER)検知回路2637に接続される。検出された信号は、ER増幅器2637を介して、心臓応答分類プロセッサ2625に接続される。本発明の実施の形態によれば、心臓応答分類プロセッサ2625は、心臓応答分類期間を適合させ、例えば、捕捉応答、非捕捉応答、および融合応答を分類することを含むペーシング刺激に対する心臓応答を分類するように構成された回路を含む。
【0193】
本発明の実施の形態によれば、本明細書に提示された多数の実施例は、調整されたモニタリング、診断、あるいは、治療的機能に対して使用される機能的ブロックを示すブロック図を含む。これらの機能ブロックが配列されて実施される可能性がある多数の構成があることが当業者によって理解されよう。本明細書に記述されている実施例は、本発明の方法を実施するために使用される可能性がある機能的配列の例を示す。
【0194】
図面に記述され、明細書中に記載されている構成要素および機能性は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組合せにおいて実施され得ることが理解されよう。図中、一般に、分離したまたは離散したブロック/要素として記述されている構成要素および機能性は、他の構成要素および機能性と組み合わされて実施され得ること、そして、個別または統合された形態におけるこのような構成要素および機能性の記述は、説明をより明確化するためになされるもので本発明を限定するものではないことが更に理解されよう。
【0195】
以上に説明された好ましい実施の形態に対して、本発明の範囲を逸脱することがない限り、種々の変更および追加がなされてもよい。
本発明の範囲は、以上に記載された特定の実施の形態によって限定されるべきではないが、以下に記載される請求項およびそれと等価のものによってのみ定義される。
【符号の説明】
【0196】
110,120,130,147,154,402,432,462…心房ペーシングパルス、112…心室応答、125,135,158,160,162,178…心室ペーシングパルス、201…心臓、331−337,2031−2037,2631−2637…検知回路、400,430,2200,2400…方法、1111,1205,2110,2120…ペーシングパルス、2112,2122,2420…心臓信号、2115,2125…ピーク振幅。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療システムであって、
患者に対してペーシングパルスを送出するように構成されたペーシング回路と、
前記ペーシングパルスに関連する心臓信号を検出するように構成された検知回路と、
前記検知回路に接続されるとともに、前記ペーシングパルスの送出に先立ってある期間において得られたデータを用いて前記心臓の信号のベースライン振幅を設定し、前記ベースライン振幅を用いて前記ペーシングパルスに対する心臓応答を判断するように構成されている心臓応答プロセッサと
を備える医療システム。
【請求項2】
前記心臓応答プロセッサが、前記期間において心臓信号データの平均を取るように構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記心臓応答プロセッサが、前記ベースライン振幅を設定する前に、前記心臓信号をフィルタリングするように構成されたフィルタを含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項4】
前記心臓応答プロセッサが、前記ベースライン振幅を維持するように構成された電圧ホルダを含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項5】
前記ペーシングパルスの送出より前の前記期間が移動期間を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項6】
前記移動期間が約3ミリ秒〜約10ミリ秒の範囲を有する、請求項5に記載の医療システム。
【請求項7】
前記心臓応答プロセッサが、ペーシングされた拍動ごとに前記ベースライン振幅を設定するように構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項8】
前記心臓応答プロセッサが、前記ベースライン振幅を基準にした心臓信号のピーク振幅を測定し、前記ベースライン振幅を基準とした前記ピーク振幅を使用して、前記ペーシングパルスに対する心臓応答を判断するように構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項9】
前記ペーシングパルスが心房ペーシングパルスを含み、前記ペーシングパルスに対する前記心臓応答が心房応答を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項10】
前記ペーシングパルスが心室ペーシングパルスを含み、前記ペーシングパルスに対する前記心臓応答が心室応答を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項11】
適応可能なベースラインが拍動ごとに判断される、請求項1に記載の医療システム。
【請求項12】
前記検知回路が広帯域増幅器を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項13】
ペーシングに対する心臓応答を特徴付けるためのベースラインを適応させる方法であって、
心腔に対してペーシングパルスを送出する工程と、
前記ペーシングパルスに関連する心臓信号を検知する工程と、
前記ペーシングパルスの送出する前の移動期間において得られたデータを用いて前記心臓信号のベースライン振幅を設定する工程と、
前記ベースライン振幅を基準にした前記心臓信号のピーク振幅を測定する工程と、
前記ペーシングパルスに対する前記心臓応答を判断するために、前記ベースライン振幅を基準にした前記ピーク振幅を用いる工程と
を備える方法。
【請求項14】
前記ベースライン振幅を設定する工程が、前記期間中に得られたデータの平均を取る工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記心臓応答に関して前記ベースライン振幅を設定する工程が、心拍ごとに前記ベースライン振幅を設定する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項1】
医療システムであって、
患者に対してペーシングパルスを送出するように構成されたペーシング回路と、
前記ペーシングパルスに関連する心臓信号を検出するように構成された検知回路と、
前記検知回路に接続されるとともに、前記ペーシングパルスの送出に先立ってある期間において得られたデータを用いて前記心臓の信号のベースライン振幅を設定し、前記ベースライン振幅を用いて前記ペーシングパルスに対する心臓応答を判断するように構成されている心臓応答プロセッサと
を備える医療システム。
【請求項2】
前記心臓応答プロセッサが、前記期間において心臓信号データの平均を取るように構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記心臓応答プロセッサが、前記ベースライン振幅を設定する前に、前記心臓信号をフィルタリングするように構成されたフィルタを含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項4】
前記心臓応答プロセッサが、前記ベースライン振幅を維持するように構成された電圧ホルダを含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項5】
前記ペーシングパルスの送出より前の前記期間が移動期間を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項6】
前記移動期間が約3ミリ秒〜約10ミリ秒の範囲を有する、請求項5に記載の医療システム。
【請求項7】
前記心臓応答プロセッサが、ペーシングされた拍動ごとに前記ベースライン振幅を設定するように構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項8】
前記心臓応答プロセッサが、前記ベースライン振幅を基準にした心臓信号のピーク振幅を測定し、前記ベースライン振幅を基準とした前記ピーク振幅を使用して、前記ペーシングパルスに対する心臓応答を判断するように構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項9】
前記ペーシングパルスが心房ペーシングパルスを含み、前記ペーシングパルスに対する前記心臓応答が心房応答を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項10】
前記ペーシングパルスが心室ペーシングパルスを含み、前記ペーシングパルスに対する前記心臓応答が心室応答を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項11】
適応可能なベースラインが拍動ごとに判断される、請求項1に記載の医療システム。
【請求項12】
前記検知回路が広帯域増幅器を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項13】
ペーシングに対する心臓応答を特徴付けるためのベースラインを適応させる方法であって、
心腔に対してペーシングパルスを送出する工程と、
前記ペーシングパルスに関連する心臓信号を検知する工程と、
前記ペーシングパルスの送出する前の移動期間において得られたデータを用いて前記心臓信号のベースライン振幅を設定する工程と、
前記ベースライン振幅を基準にした前記心臓信号のピーク振幅を測定する工程と、
前記ペーシングパルスに対する前記心臓応答を判断するために、前記ベースライン振幅を基準にした前記ピーク振幅を用いる工程と
を備える方法。
【請求項14】
前記ベースライン振幅を設定する工程が、前記期間中に得られたデータの平均を取る工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記心臓応答に関して前記ベースライン振幅を設定する工程が、心拍ごとに前記ベースライン振幅を設定する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−245403(P2012−245403A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−206330(P2012−206330)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【分割の表示】特願2007−546797(P2007−546797)の分割
【原出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【分割の表示】特願2007−546797(P2007−546797)の分割
【原出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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