説明

心臓治療システム

【課題】患者の血行動態変化に応じて心腔をペーシングする心臓治療システムを提供する。
【解決手段】心臓治療システムは、リード上に配置されるとともに、心臓内の多数の位置にそれぞれ位置決め可能な複数の電極と、患者の血行動態変化を検出すべく構成された1つ以上のセンサと、検出された前記患者の血行動態変化に応じて、i)心臓内に位置決めされた前記複数の電極の各位置について、心腔の収縮機能に関連するパラメータを決定するとともに、ii)心臓内に位置決めされた前記複数の電極の各位置について、心腔の収縮機能に関連する前記パラメータの分布を決定するように構成されたプロセッサと、決定されたパラメータ分布に基づいて前記複数の電極のうちの1つ以上の電極を選択すべく構成された選択回路と、選択された1つ以上の電極を含む複数の電極を用いて心腔をペーシングすべく構成されたパルスジェネレータとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心臓ペーシング治療に関し、より詳しくは、心腔をペーシングするために使用される電極及び関連するペーシング構成パラメータを選択することに関する。
【背景技術】
【0002】
正常に機能している心臓は律動的な収縮を生じ、血液を全身にポンプ供給することが可能である。心臓は、SAノードから心筋全体へ励起インパルス(脱分極)を迅速に伝導させることを可能とする特殊な伝導経路を心房と心室の両方に有する。特殊な伝導経路は、両心房及び両心室の協調的収縮を行うべくSAノードから心房の心筋、房室結節、及び心室の心筋へ脱分極を伝導する。
【0003】
伝導経路は、各心腔の筋繊維を同期収縮させるほか、各心房又は心室と対側心房又は心室を同期収縮させる。通常に機能している特殊な伝導経路によって同期が行われない場合、心臓のポンプ効率は大幅に低減する。これらの伝導経路に病変を示す患者には、心拍出量低下が見られることがある。
【0004】
心房及び/又は心室の収縮リズム及び協調性を改善すべく1つ以上の心腔にペーシング刺激を付与する心臓律動管理装置が開発されている。心臓律動管理装置は、心臓からの信号を感知する回路と、心臓に電気的刺激を付与するパルスジェネレータとを含む。患者の心腔及び/又は心臓静脈内へ延出するリードは、心臓の電気信号を感知する電極に接続され、心律動異常治療のための各種治療に応じて心臓に刺激を付与する。
【0005】
ペースメーカーは、心臓における、心臓のポンプ効率を維持する収縮リズムの発生を支援すべくタイミングを調整された一連の低エネルギーペーシングパルスを供給する心臓律動管理装置である。ペーシングパルスは、患者の要求に応じて間欠パルス又は連続パルスとすることができる。1つ以上の心腔を感知しペーシングするための各種モードを備えた多数のカテゴリーのペースメーカー装置が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ペーシング治療はうっ血性心不全(CHF- congestive heart failure)の治療に利用されてきた。CHFにより心臓のポンプ能力が低下し、末梢組織の要求を満たす血液を供給できなくなる。CHFにより衰弱、呼吸不全、肺及び他の体内組織への液体貯留が発生することがある。CHFにより心臓の左心、右心又はその両方が影響を受けることがある。例えば、心筋の損傷により心臓肥大及び/又は収縮率低下が生じると、CHFが発生することがある。収縮率の低下により血液の心拍出量が減少し、この結果、心拍数が増大することがある。場合によっては、CHFは心房又は心室の同期不全と呼ばれる左右心室の非同期収縮から発生することがある。特に左心室又は右心室が影響を受ける場合、非同期収縮により心臓のポンプ効率が著しく低下することがある。
【0007】
心機能を向上させるべく心腔収縮の同期性を高めるペーシング治療は、一般的に心臓再同調療法(CRT- cardiac resynchronization therapy)と呼ばれている。心臓ペースメーカーの中には多数の心腔をペーシングすることでCRTを提供できるものもある。ペーシングパルスは、心腔を同期収縮させ、心臓のポンプ能力を高め、身体の末梢組織により多くの血液を供給するシーケンスで心腔に供給される。左右心室収縮に同期不全が発生した場合、二心室ペーシング治療により一方又は両方の心室をペーシングすることができる。又は、両心房ペーシング又は4つの心腔全てのペーシングを利用できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、心腔をペーシングするために使用される電極及び関連するペーシング構成パラメータを選択するためのシステム及び方法に関する。1つの実施形態は、心臓にペーシング治療を提供する心臓治療システムによって実施することが可能な方法を含む。患者の血行動態変化が検出される。検出された変化に応じて、心腔内に配置された多数の電極の位置について、心腔の収縮機能と関連する電気的、機械的、又は電気機械的なパラメータ分布が決定される。多数の電極のうちの1つ以上の電極を含むペーシング出力構成が選択され、選択されたペーシング出力構成を使用して心腔がペーシングされる。
【0009】
血行動態変化には、例えば慢性変化及び急性変化が含まれる。各種実施態様において、検出される血行動態心腔として、心拍数、活動、体位、呼吸速度、換気量、心拍出量、血液化学、心臓同期不全、血圧、血中酸素濃度、インピーダンス、心拍数のばらつき、心音、AV間隔及びQRS幅のうち少なくとも1つにおける変化が挙げられる。例えば、血行動態変化を検出することは、代謝要求の増減を検出することを含んでもよい。
【0010】
パラメータ分布を決定することは、脱分極の遅延、房室タイミング間隔、脱分極の振幅、脱分極と再分極の間隔、脱分極閾値及び/又は他の脱分極特性を含む脱分極特性などの、1つ以上の電気的な心臓パラメータを決定することを含んでもよい。パラメータ分布を決定することは、他の機械的なパラメータの中で、肥大、壁応力、壁歪み、ピーク変位、ピーク速度、ピーク歪み、最小変位、最小速度、最小歪み、ピーク変位又は最小変位到達に要する時間、速度及び歪みなどの1つ以上の機械的な心臓パラメータを決定することを含んでもよい。パラメータ分布を決定することは、電気的脱分極時間からピーク歪みまでの間隔、又は電気機械的性質の他の組合せなどの1つ以上の電気機械的な心臓パラメータを決定することを含んでもよい。
【0011】
電極構成を選択することは、他の位置の脱分極の遅延よりも大きい脱分極の遅延を有する位置に配置された1つ以上の電極を選択することを含んでもよい。一実施態様において、1つ以上の予め選択された電極及び1つ以上の追加の電極を選択できる。1つ以上の予め選択された電極は脱分極の最大の遅延と関連付けられ、前記1つ以上の追加の電極は2番目に大きい脱分極の遅延と関連付けられる。心腔は、パラメータ分布に基づいた時限シーケンスで、選択された電極にペーシングパルスを供給することによりペーシングすることができる。
【0012】
ある実施形態では、血行動態、パラメータ分布及びペーシング出力構成における変化と関連する情報が格納される。格納された情報に基づいてルックアップテーブルを生成することができる。ルックアップテーブルに格納された情報に基づいて後続のペーシング出力構成を選択できる。格納された情報は、例えば健康管理の専門家に対し表示され、又は将来において分析のために使用できる。
【0013】
本発明の別の実施形態は心臓治療システムに関する。治療システムは、心腔内の多数の位置でそれぞれ位置決め可能な多数の電極を含む。1つ以上のセンサ及び関連する検出回路は、患者の血行動態変化を検出すべく構成される。プロセッサは、血行動態における検出された変化に応じて、多数の電極位置について心腔の収縮機能に関連するパラメータ分布を決定すべく構成される。選択回路は、測定されたパラメータに基づいて多数の電極のうちの1つ以上の電極を選択すべく使用される。パルスジェネレータは、選択された電極を通じて心腔にペーシング治療を提供する。
【0014】
ペーシングされる心腔は心室又は心房であってよい。又は、ペーシングされる心腔毎に選択可能なペーシング出力構成を通じて、心臓治療システムによって多数の心腔をペーシングすることができる。
【0015】
血行動態変化を検出すべく構成された1つ以上のセンサ及び関連付けられた回路として、例えば、経胸壁インピーダンス、呼吸速度、換気量、心拍数、心臓同期不全、活動、体位、血液化学、酸素飽和度、心音、壁応力、壁負荷、肥大、電極間インピーダンス、電気的遅延(PR間隔、AV間隔、QRS幅など)、活動、心室血圧、心拍出量、温度、心拍数変動性、脱分極の振幅、脱分極タイミング、及び/又は他の生理的パラメータを含む血行動態と関連する生理的パラメータを感知し検出すべく構成されたセンサ及び回路が挙げられる。
【0016】
各種実施態様において、選択回路はパラメータ分布に基づいて1つ以上の電極に供給されるペーシングパルスのタイミングシーケンスを決定すべく構成される。上記実施態様において、パルスジェネレータは、タイミングシーケンスに従い1つ以上の電極にペーシングパルスを供給すべく構成される。各種実施態様において、選択回路はパラメータ分布に基づいて1つ以上の電極に供給されるペーシングパルスの振幅を選択すべく構成される。上記実施態様において、パルスジェネレータは選択された振幅で1つ以上の電極にペーシングパルスを供給すべく構成される。
【0017】
ある実施形態において、検出回路、プロセッサ及び選択回路のうち少なくとも1つは患者外部部品を含む。他の実施形態において、検出回路、プロセッサ及び選択回路は完全に植込み可能である。
【0018】
本発明の前述の概要は、本発明の各実施形態又は各実施態様の説明を意図するものではない。添付の図面に関連する以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することにより、本発明の利点及び達成点が明らかになって理解され、本発明がより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に従った刺激パルスを供給するためのペーシング出力構成の選択と関連して使用可能な患者植込み型装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に従ったパルス出力構成のプロセスを示すフローグラフである。
【図3】本発明の実施形態に従ったパルス出力構成の選択に使用される回路のブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に従った血行動態における急性変化によって開始されるペーシング出力構成を決定するためのプロセスを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に従った血行動態における慢性変化が示される場合に、ペーシング出力構成の決定において有用な方法のフローグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は種々の変更物や代わりの形態を生じうるが、本発明の詳細を図面に例として示し、以下に詳細に説明する。しかし、本発明を、記載する特定の実施形態に限定する意図はないことが理解されよう。反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内に入る変更物、同等物及び代替物を全て含むように意図される。
【0021】
例示する実施形態の下記の説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照する。これらの図面には、本発明を実施することのできる各種実施形態が例示されている。なお、他の実施形態を用いてもよく、構造上及び機能上の変更が本発明の趣旨を逸脱しない範囲で可能であることが理解されよう。
【0022】
本発明に従ったシステム、装置又は方法は、以下に記載される特徴、構造、方法、又はこれらの組合せの1つ以上を含むことができる。例えば、装置又はシステムは以下に記載される有利な特徴及び/又はプロセスの1つ以上を含めて実施することができる。上記装置又はシステムは、本明細書中に記載される全ての特徴を含む必要はなく、有用な構造及び/又は機能を提供する選択された特徴を含めて実施できることが意図されている。上記装置又はシステムは各種治療機能又は診断機能を提供すべく実施できる。
【0023】
心臓治療装置は、心腔内に配置された、及び/又は他の方法で心筋に電気的に接続された1つ以上の電極に電気刺激パルスを供給し、心腔の収縮を開始できる。本発明の実施形態は、ペーシングパルスを付与するために心腔内に配置された1つ以上の電極を選択するためのシステム及び方法に関する。ペーシングパルスは、心腔の収縮機能の向上を提供するタイミング及び/又は振幅/脈動波形出力構成に従い、選択された電極を通じて供給することができる。
【0024】
図1に示す治療装置100は、刺激パルスを供給するための電極、タイミングシーケンス及び/又は振幅/パルス幅(本明細書ではこれらを総称してペーシング出力構成と呼ぶ)の選択に関連して使用可能な、患者の植込み型装置の一実施形態である。治療装置100は、植込み型ハウジング101で囲まれた心臓律動管理(CRM)回路を含む。CRM回路は心臓内リードシステム110に電気的に接続される。
【0025】
心臓内リードシステム110の一部は患者の心臓へ挿入される。リードシステム110は、患者の心臓からの電気信号を感知し、及び/又は心臓にペーシングパルスを供給するために、1つ以上の心腔内に、心腔と接して、又は心腔の周囲に配置される心臓ペース/感知電極151〜156を含む。図1に示されるような心臓内感知/ペース電極151〜156は、左心室、右心室、左心房、及び/又は右心房を含む心臓の1つ以上の心腔を感知し及び/又はペースすべく使用できる。リードシステム110は、心臓に細動除去/電気除細動ショックを付与するための1つ以上の細動除去電極141及び142を含む。
【0026】
左心室リード105には、左心室内に、左心室と接して、又は左心室の周囲の種々の位置に配置される多数の電極154a〜154dが組み込まれている。多数の位置、又は1つの選択された位置において心室を刺激することにより、CHF患者の心拍出量増加を図ることができる。本明細書中に記載された各種実施形態に従って、電極154a〜154dのうちの1つ以上が左心室のペーシングのために選択される。他の実施形態では、図1に左心室リード105として示されているような、心腔内の多数の位置に配置される多数のペーシング電極を有するリードは、一部又は全ての心腔に植え込むことができる。1つ以上の心腔内に配置された1組の電極を選択することができる。電気刺激パルスは、心機能を高めるタイミングシーケンス及び出力構成に従って選択された電極を通じて心腔に供給することができる。
【0027】
植込み型装置100のハウジング101の一部は、必要に応じて1つ又は多数のカン電極又は不関電極として機能することができる。ハウジング101は、1つ以上のリードとハウジング101との着脱可能な取り付けを容易とすべく構成可能なヘッダ189を組み込んで示されている。治療装置100のハウジング101は、1つ以上のカン電極181b、181cを含むことができる。治療装置100のヘッダ189は1つ以上の不関電極181aを含むことができる。ハウジング101及び/又はヘッダ189は、ハウジング101及び/又はヘッダ189の中若しくはこれらと接触する任意の場所に配置される任意数の電極を含んでもよい。
【0028】
治療装置100のハウジング101又はリードシステム110内、若しくはこれらと接触して配置された心臓の電極及び/又は他のセンサは、経胸壁インピーダンス、呼吸速度、換気量、心拍数、心臓の同期不全、活動、体位、血液化学、酸素飽和度、心音、壁応力、壁歪み、肥大、電極間インピーダンス、電気的遅延(PR間隔、AV間隔、QRS幅など)、活動、心室圧力、心拍出量、温度、心拍数変動性、脱分極の振幅、脱分極タイミング、及び/又は他の生理的パラメータなどの各種生理的パラメータの検出及び/又は測定に使用される信号を発生することができる。
【0029】
例えば、ある構成では、患者の呼吸波形を取得し、及び/又は呼吸に関連する他の情報を取得するために使用可能な1つ以上の経胸壁インピーダンスセンサを植込み型装置100に組み込むことができる。経胸壁インピーダンスセンサは、例えば、心臓の1つ以上の心腔に配置された1つ以上の心臓内電極141、142、151〜156を含むことができる。心臓内電極141、142、151〜156は、治療装置100のハウジング101内に配置されるインピーダンス駆動/検知回路と接続されてもよい。経胸壁インピーダンスセンサからの情報は、患者の活動又は代謝要求に対応すべくペーシングレートを適応させるために使用できる。
【0030】
通信回路は、CRM回路と、外部プログラマ又は高度な患者管理(APM)システムなどの患者外部装置との間の通信を促進すべくハウジング101内に配置される。通信回路は、植込み型センサ、外部センサ、皮膚センサ、皮下センサ、生理学的センサ又は非生理学的センサ、患者入力装置、及び/又は情報システムのうちの1つ以上との間で一方向又は双方向通信を促進することができる。
【0031】
ある実施形態では、治療装置100は、細動除去治療及び/又は不整頻拍治療ペーシング(ATP-anti-tachyarrhythmia pacing)によって心臓の不整頻拍を検出し治療するための回路を含むことができる。細動除去能力を提供する構成は、不整頻拍を終止又は緩和すべく心臓に高エネルギーショックを付与するための細動除去コイル141、142を使用できる。
【0032】
ある実施形態では、植込み型治療装置100は、1つ又は多数の心腔内で1つ又は多数の電極に適用されるペーシング電極、タイミングシーケンス、及び/又は振幅又は脈動波形出力構成(本明細書ではこれらを総称してペーシング出力構成と呼ぶ)を選択するための回路を含むことができる。他の実施形態では、治療装置100はペーシング出力構成に関連する感知された情報又は派生した情報を患者外部装置へ転送することができる。植込み可能に感知された情報又は派生した情報をダウンロードした後、ペーシング出力構成が患者外部装置によって選択されてもよく、又は患者外部装置によって提供される情報を使用して臨床医によって選択されてもよい。
【0033】
ペーシング出力構成は、心腔内における1つ又は複数のペーシング部位及び/又は多数の部位に供給されるペーシングパルスの時間的シーケンスを選択することを含む。更に、ペーシング出力構成は、必要に応じてペーシングパルスに使用される特定のパルス特性(例えば振幅、持続時間、陽極/陰極の極性及び波形)を選択することを含むことができる。ペーシング出力構成を選択することは、心臓再同調療法の最適な適用には特に望ましい。うっ血性心不全、長期ペーシング、虚血、心筋梗塞及び/又は他の要素により、心筋の電気的、機械的、又は電気機械的特性に非一貫性が生じることがある。この非一貫性の故に非協調的な心腔収縮が発生し、結果的にポンプ作用が非能率的となる場合がある。1つ又は複数のペーシング部位の位置、及び/又はペーシング出力構成の他の特性は、心腔が収縮される方法を部分的に決定する脱分極励起の伝播に影響する。心腔内の多数のペーシング部位に各々配置された多数のペーシング電極を備えるペースメーカーでは、ペーシングを供給するための1つ以上の電極、時間的シーケンス及び/又は脈動波形特性を選択する能力は、心腔の収縮機能を向上させるべく利用できる。
【0034】
本明細書中に図示されるようなマルチ部位ペースメーカーは、心周期中に心房及び/又は心室の多数の部位にペーシングパルスを供給することができる。患者によっては、心室の異なる領域にポンプ負荷及び/又は脱分極シーケンスを分配すべく異なるタイミングで心室などの心腔の一部を活性化することで利益を得ることができる。マルチ部位ペースメーカーは、異なる心周期において選択された電極間、又は心腔内の電極グループ間でペーシングパルスの出力を切り替える能力を有する。例えば、収縮の同期性を高めるため、ペーシングパルスは指定された位置、及び心周期における規定の時間において心腔に供給されてもよい。更にペーシングパルスの振幅、脈拍時間、陽極/陰極の極性及び/又は波形は、ポンプ機能を高めるべく変更できる。
【0035】
図2は、1つのアプローチに従ったパルス出力構成のためのアプローチを図示するフローグラフである。この例において、パルス出力構成の最適化は患者の血行動態変化に基づいて開始される。1つのアプローチによれば、センサ又は他の装置は患者の血行動態変化を示す変化を検出する(210)ために使用される。血行動態変化は急性変化又は慢性変化に基づいて示されてもよい。例えば、血行動態における急性変化又は慢性変化は、心拍数、呼吸速度、換気量、一回換気量、体位、酸素飽和度、心臓の同期不全、薬剤、CHFの進行度、体液貯留、呼吸困難、呼吸障害、体重増加、活動レベルの低下、体位、睡眠時に関連する体位、ペーシング治療期間、疾病状態、虚血、心筋梗塞及び/又は、患者の血行動態変化を示す他の変化によって示されてもよい。
【0036】
患者の血行動態における検出された変化は、患者の変更された状態に最適なペーシング治療を達成するためにパルス出力構成を調整する必要性を示すことがある。検出された血行動態変化に応じて、少なくとも1つの心腔の収縮機能は、心腔内に配置された多数の電極の位置について心腔の収縮機能と関連する電気的、機械的、又は電気機械的パラメータ分布を決定することにより評価される(220)。1つ以上の電極を選択すること(230)を含むペーシング出力構成はパラメータ分布に基づいて決定される。選択された電極を使用して心腔がペーシングされる(240)。
【0037】
一例において、血行動態変化は、心拍数の変化によって示される代謝要求の増減を含む。この例において、収縮機能と関連するパラメータは、心腔内における脱分極波面の伝播のタイミングを含む。心腔内の部位間における脱分極の遅延は心拍数の関数として変化することがある。従って、ベースライン心拍数でペーシングを行うために予め選択された1つ又は複数の電極は、心拍数が上昇すると、心腔全体の脱分極の遅延が変化することから、高い心拍数において心腔の最適な心腔収縮を生じないことがある。多数の電極部位における脱分極の遅延の分布が決定される。パルス出力構成は、例えばペーシング電極として脱分極の最大の遅延と関連付けられた1つ以上の電極を選択することにより、ペーシングのために選択された1つ又は複数の電極を変更することで、高い心拍数について再最適化される。
【0038】
ペーシング出力構成の最適化は、虚血又は心筋梗塞(MI)による望ましくないリモデリングの影響を防止し又は逆転するために使用できる。心虚血又はMIの状態の変化は、心腔内の壁応力の分布の変化と関連付けられる。一例において、心虚血又はMIの状態の変化の検出は血行動態変化を示す。この変化に応じて、影響された領域に最小量の応力が配置されるように、ペーシング用の電極を選択することができる。他の構成では、電極は、均等な応力分布を発生し、又は他の領域に対して心筋の応力領域を予め励起すべく選択することができる。
【0039】
図3は、本発明の実施形態に従ったパルス出力構成の選択に使用される回路のブロック図である。多数の心臓電極345は心腔内の多数の位置に配置される。1つ以上のセンサ310は、患者の血行動態を示す生理的要素を感知すべく構成される。検出された血行動態変化に応じて、心臓の収縮機能と関連する1つ以上のパラメータ分布の決定が開始される。パラメータ分布は、ペーシング出力構成の変化が有益であることを示すことがある。各種実施態様において、ペーシング出力構成の決定を開始すべく使用される血行動態の指標は、治療装置によって選択可能であってもよく、また臨床医によりプログラム可能であってもよい。
【0040】
パラメータ分布プロセッサ330は、心腔の収縮機能と関連する電気的、機械的、又は電気機械的パラメータ分布を評価する。例えば、パラメータ分布プロセッサ330は、心臓の電極345に関連して、各電極位置における電気的な心臓パラメータ分布を評価してもよい。例えば、電気的な心臓パラメータは、脱分極の遅延、房室タイミング間隔、脱分極の振幅、脱分極と再分極間隔、脱分極閾値及び/又は他の脱分極特性などの脱分極特性を含むことができる。パラメータ分布プロセッサ330は、他の機械的なパラメータのうち、肥大、壁応力、壁歪み、ピーク変位、ピーク速度、ピーク負荷、最小変位、最小速度、最小歪み、ピーク変位又は最小変位到達までの時間、速度、応力などの機械的な心臓のパラメータの分布を評価してもよい。パラメータ分布プロセッサ330は、電気的脱分極時間からピーク歪みまでの間隔などの電気機械的心臓パラメータ分布、又は電気的及び機械的性質の他の組合せを評価してもよい。
【0041】
一実施形態において、脱分極の遅延は内在的収縮における収縮時に各電極部位で測定されてもよい。脱分極の遅延の分布は、収縮時に心臓の各電極で感知された心臓の電位図によって検出されたR波ピークのタイミングを測定することにより決定できる。
【0042】
ある実施形態によれば、心臓感知回路340は心室内の電極毎に感知増幅器及びピーク検出器を含むことができる。他の実施形態では、脱分極の遅延分布を検出するために必要とされる感知増幅器数及び/又は信号処理回路の数を減少させるために双極感知技術を利用することができる。心腔中の脱分極の遅延の分布の測定は、同一所有者による米国特許公開第2004/0098056号又は第2004/0102812号に記載された技術を利用して行うことができる。上記特許文献を参照することによって本明細書中に援用する。
【0043】
収縮機能と関連するパラメータ分布が測定された後、選択回路325は適切なペーシング出力構成を選択する。一態様によれば、選択回路325は脱分極の最大の遅延を有するペーシング部位に対応する電極を選択してもよく、又はそれぞれの伝導遅延に基づいたパターン又はシーケンスでペーシングを行うべく多数の電極を選択してもよい。ある構成では、最大の遅延と関連付けられた電極が最初にペーシングされ、次いで2番目に大きい遅延と関連付けられた電極がペーシングされてもよい。
【0044】
上に記載されるように、再同期性治療のためにペーシング部位を選択する1つの方法は、潜在的なペーシング部位の脱分極の遅延を測定する方法である。次いで、収縮シーケンスで後に励起されることが明示された1つ以上の部位をペーシング部位として選択できる。最も新しく活性化された部位をペーシングし、又はそれぞれの伝導遅延に対応するシーケンスで多数の部位をペーシングすることにより、更に協調的な収縮を提供することができる。
【0045】
虚血、瘢痕組織又は梗塞形成の領域の有無に変化があると、心室内の壁応力に変化が生じることがある。例えば、当該領域が受ける前負荷及び後負荷を軽減することにより高応力領域における応力が低下するように、心筋の応力領域に再同期性ペーシングを適用してもよい。
【0046】
例えば各種実施形態では、ペーシング出力構成の再最適化を、心拍数の増加、虚血又はMIの検出によって開始されてもよい。パラメータ分布プロセッサ330は、心腔中の壁応力の分布を評価する。例えば、壁応力の分布の評価を、心収縮時に各電極における活動電位持続時間を測定することにより達成してもよい。活動電位持続時間の測定は、心周期に各電極において電位図を感知し各電極で脱分極と再分極の間の時間を測定することにより実行できる。
【0047】
一実施形態において、壁応力分布の決定及びペーシング出力構成の最適化は、機械的交互脈の現象に基づいて行われてもよい。患者にパルス交互脈と呼ばれる脈圧のばらつきが検出される場合、この現象は一般的に左室機能不全の兆候として解釈される。同様に、活動電位持続時間の交替が示す局部的壁応力における局部的な交替は、当該部位が増大した応力を受けていることを示すことがある。電極部位における応力分布は、電極部位で測定された活動電位持続時間のばらつきの度合いを検出することにより識別可能である。
【0048】
最大応力部位は、最短の活動電位持続時間をもつ部位及び/又は活動電位持続時間の最大量のばらつきがある部位として識別されうる。選択回路325は、ペーシング電極部位として他の部位における応力よりも高い応力を示す部位を選択することにより、ペーシング出力構成を決定することができる。別のアプローチでは、選択回路325は、ペーシングの多数の部位を選択する。多数の部位は、各部位で検出された壁応力の相対量に基づいたシーケンスでペーシングされる。比較的高いレベルの壁応力を示す部位は、比較的低いレベルの壁応力を示す部位に対して予め励起するようにしてもよい。壁応力を評価するための技術は、同一所有者による米国特許第6,965,797号に記載されている。この特許文献を参照することによって本明細書中に援用する。
【0049】
ある実施形態では、血行動態変化が検出されることで、心室が示す肥大分布評価を開始することができる。肥大とは、心筋組織が厚くなる現象をいう。うっ血性心不全は、心室前負荷(すなわち心室が心臓拡張期の最後に心室中の血液容量によって膨張される度合い)を増大させる、心室の拡張期充満圧の増大を引き起こすことがある。CHFはこのメカニズムによって少なくとも部分的に補償可能である。しかし、増大した前負荷によって一定期間にわたり心室が引き伸ばされる場合、心室が膨張する。心室の容積が増大すると、所与の収縮期圧において増大した心室壁応力が生じる。この現象は心室における心筋の肥大を促進する。肥大を生じさせる度合いで応力が継続的にかけられると、心筋細胞の壊死、壁の薄肉化及び心機能の更なる低下が生じることがある。従って、肥大領域を識別し、応力領域の負荷が軽減されるようにペーシングを適用することが望ましい。
【0050】
肥大心筋領域を通じて脱分極波面が伝播されることにより、肥大領域の筋肉量が増大し、感知電極によって測定される電位が大きくなる。脱分極の際に、比較的肥大した領域の近傍に配置された電極において測定される電位図信号は、肥大していない領域近傍の電極から測定された信号と比べて振幅が大きい。一実施形態では、心腔中の肥大心筋組織の分布が決定される。各電極部位における肥大は、各電極で測定された電位図信号の振幅に基づいてパラメータ分布プロセッサ330により判定できる。
【0051】
ペーシング出力構成は、各電極部位において検出された電位図信号の相対的な振幅に基づいて決定することができる。ペーシング出力構成は、ペーシング中における肥大領域への負荷が機械的に軽減されるように選択回路325によって選択される。
【0052】
ある実施形態では、肥大における変化は、電極間の電気的インピーダンスの測定又はソノミクロメータ測定により決定できる。例えば、心室の肥大における変化は、心腔内に配置された植込み型圧電ソノミクロメータ変換器のアレイにより測定できる。
【0053】
上に記載された方法のいずれかによりペーシング出力構成が選択された後、選択された電極を通じてペーシング治療回路335によってペーシングが供給される。
ある実施形態では、パラメータ分布プロセッサ330及びペーシング出力選択回路325は、複数の血行動態の指標に基づいてペーシング出力構成の決定を開始する機能を含むことができる。患者の血行動態と関連付けられた信号を多数のセンサが発生するようにしてもよい。信号の1つ以上の値が閾値レベルを超えて変化する場合に、ペーシング出力構成の決定を開始するようにしてもよい。ある実施態様では、ペーシング出力構成の決定は、2つ以上のセンサ信号の値の関係に基づく。例えば、活動の同時低下を伴う呼吸障害の増大は、CHFの悪化を示すことがある。所定閾値を上回る呼吸障害の増大が所定閾値を下回る活動の低下と同時に検出される場合、ペーシング出力構成を再最適化することができる。
【0054】
ある構成では、パラメータ分布プロセッサ330が2つ以上の電気機械的パラメータ分布を決定することが可能である。ペーシング出力構成を構成すべく使用される1つ以上の分布は、装置によって選択されるか、又は臨床医によってプログラムされるようにしてもよい。1つの構成では、ペーシング出力を構成すべく使用される1つ以上の電気機械的パラメータ分布を、血行動態の指標と関連させてもよい。例えば、壁応力の可能性とより密接に関連する特定の血行動態の指標によって、ペーシング出力構成プロセスを開始する場合、出力構成のペーシングのために使用される電気機械的パラメータ分布として壁応力を選択してもよい。
【0055】
別の構成では、ペーシング出力を構成すべく使用される1つ以上の電気機械的パラメータ分布はペーシング出力構成の目的に基づいて選択できる。ペーシング出力構成の目的は、装置が決定するか、又は臨床医がプログラムしてもよい。例えば、ペーシング出力構成の目的が心室同期不全の低減である場合、脱分極の遅延の分布に基づいてペーシング出力を構成してもよい。ペーシング出力構成の目的が壁応力によるリモデリングの低減である場合、壁応力の分布に基づいてペーシング出力を構成してもよい。瘢痕組織又は梗塞形成領域の存在により、収縮時に最大レベルの機械的応力を受ける心筋領域が、伝導遅延が最大となる部位に必ずしも相当するとは限らないことから、リモデリングを低減するためにペーシング出力構成を選択すべく壁応力分布を使用することは、脱分極の遅延分布を使用するよりも効果的でありうる。
【0056】
収縮機能に関連付けられた電気機械的パラメータ分布を決定し、ペーシング出力構成の選択をするための回路を治療装置に組み込んでもよい。一実施形態において、図3の破線301で囲まれたプロセスは、図1に示された植込み型装置などの植込み型治療装置によって提供できる。上記装置は、電源(図示せず)、プログラム指示、及び/又はデータを格納するためのメモリ320を含んでもよい。各種構成において、メモリは血行動態の変化、パラメータ分布の評価、及び/又はペーシング出力構成に関する情報を含む情報を格納すべく使用できる。メモリに格納された情報は、血行動態において後続の同様の変化が観察される場合に、ペーシング出力構成の選択にあたり使用可能な将来的に参照されるルックアップテーブルを作成すべく使用できる。更に、格納された情報は、将来的な表示又は分析のためにイベントのログを提供すべく使用されてもよい。装置は、更にプログラマ又は高度な患者管理システムなどの患者外部装置305と通信するための通信回路315を含む。
【0057】
ある構成では、植込み型装置がペーシング出力構成の選択のための機能の一部を提供してもよく、患者外部装置が機能の一部を提供してもよい。例えば、一実施形態において、患者外部装置は遠隔測定リンクを介して植込み型装置と通信し、未加工データ、特定の感知されたイベントに対応するマーカ、タイミング間隔の測定、及び/又は植込み型装置によって決定される他の信号特性を受け取る。次いで、外部装置は、電気機械的パラメータ分布を決定し、再プログラミングを迅速に行うために植込み型装置に送信されるか又は外部装置を操作する臨床医に推奨として提示される、ペーシング出力構成の最適な設定を計算することができる。又は、外部装置は未加工データ、マーカ、及び/又は測定を臨床医に提示し、臨床医がアルゴリズムに従って植込み型装置をプログラムすることができる。
【0058】
ある実施態様では、高度な患者管理(Advanced Patient Management - APM)システムが患者の血行動態を遠隔監視する。血行動態変化が検出された場合、APMシステムは植込み型装置に電気機械的パラメータ分布の決定を開始するよう合図する。あるシナリオでは、ペーシング出力構成の選択は植込み型装置によって実行される。他のシナリオでは、APMシステムにより選択を行うことができる。APMシステムに接続された治療用及び/又は診断用の各種医療器具は、マルチセンサアプローチを通じて患者の血行動態を検出する際に使用される感知能力を提供できる。APMシステムは、各種患者外部装置及び患者植込み型装置に接続されることができる。各装置にはAPMシステムに遠隔アクセス可能な1組のセンサが組み込まれる。
【0059】
ユーザインタフェースはAPMに接続され、医師による心機能及び他の患者状態の遠隔監視を可能とすることができる。APMを介して利用可能な情報にアクセスするために、ユーザインタフェースは臨床医によって使用されてもよい。臨床医は、更にペーシング出力構成の機能を設定するためユーザインタフェースを通じて情報を入力できる。例えば、臨床医は特定のセンサ、血行動態の指標、指標のレベル又は感度、及び/又は電気機械的パラメータを選択することができる。本明細書中に記載された方法、構造、及び/又は技術は、各種APMに関連する各種方法を組み込んでいてもよい。これらの方法は、米国特許第6,221,011号、6,270,457号、6,277,072号、6,280,380号、6,312,378号、6,336,903号、6,358,203号、6,368,284号、6,398,728号、及び6,440,066号のうち1つ以上の文献に記載される特徴を含む。上記文献は参照することによって本明細書中に援用される。
【0060】
図4は、本発明の実施形態に従ってペーシング出力構成を決定するプロセスを図示するフローチャートである。この実施形態では、システムは血行動態における急性変化の兆しを感知する(410)。血行動態における急性変化には、例えば体位、酸素レベル、活動、心拍数、呼吸速度、換気量、及び/又は他の要素の変化に基づいて検出される変化が含まれる。ある特定の例において、血行動態の増大は、代謝要求における変化を含む。例えばベースラインレベルを越える血行動態上の要求の指標に変化が生じるなど要求の増大が検出された場合(420)、システムは多数の電極部位における脱分極の遅延の分布を決定する(430)。以前の(ベースラインの)パルス出力構成で使用された部位以外の1つ以上の電極部位が脱分極の最大の遅延を有する(440)場合、システムは最大の遅延を有する1つ以上の部位を含めるようにペーシング出力構成を切り替える(490)。
【0061】
前のパルス出力構成が脱分極の最大の遅延を有する1つ以上の電極部位を含む(440)場合、システムは2番目に大きい脱分極の遅延を有する1つ以上の電極などの1つ以上の追加の電極を採用するようにペーシング出力構成を切り替える(450)。
【0062】
ベースラインレベルへの後退など、血行動態上の要求が低減したことをシステムが検出した場合(460)、2つのオプションプロセスのうち1つを実施することができる。第一のオプションプロセス(オプションA)によれば、システムはペーシング出力構成を以前に使用されたベースライン構成に切り替える(470)。第二のオプションプロセス(オプションB)によれば、システムは低減した要求状態について多数の部位における脱分極の遅延の分布を決定する(480)。パルス出力構成は脱分極の最大の遅延を有する1つ以上の電極部位を含めるように選択される(490)。ペーシング構成変化を刺激した血行動態変化、パラメータ分布の測定、及び/又はペーシングに使用される最終的な電極構成は、植込み型装置又は患者外部装置のいずれかに格納できる(451、471)。格納された情報は、ルックアップテーブルとして後続のペーシング構成の選択に使用できる。これに加えて、又はこれとは別に、格納された情報は、将来的な調査及び/又は分析が可能なイベントのログを提供すべく使用できる。
【0063】
図5は、血行動態において慢性変化が検出された場合に、ペーシング出力構成を決定する際に有用な方法を示すフローグラフである。血行動態における慢性変化は、呼吸障害の増大、睡眠時の挙上した体位、左室圧の変化、心筋梗塞の検出、及び/又は血行動態における他の長期変化などのCHF症状の進行によって示されうる。慢性変化が検出された場合(510)、システムは、増強されたポンプ機能を提供すべくペーシング出力構成を再最適化する。システムは多数の電極部位における脱分極の遅延の分布(又は他の電気機械的パラメータ)を決定する(520)。1つ以上の新たな部位における遅延が以前に使用された部位における遅延よりも大きい場合(530)、新たな部位がパルス出力構成で使用されるべく選択される(550)。以前に使用された部位は、パルス出力構成から除外されてもよいし、除外されなくてもよい。以前に使用された部位が依然として最大の遅延を有する場合(530)、以前に使用された部位は、2番目に大きい遅延を有する1つ以上の追加の部位と共に選択される(540)。ペーシング構成変化を刺激した状態、パラメータ分布の測定、及び/又はペーシングに使用された最終的な電極構成が格納されてもよい(541)。
【0064】
上記に議論された好適な実施形態には、本発明の範囲から逸脱することなく各種変更及び追加を行うことができる。従って、本発明の範囲は上記の特定の実施形態に制限されず、下記の特許請求の範囲及びその同等物によってのみ定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓治療システムであって、
リード上に配置されるとともに、心臓内の多数の位置にそれぞれ位置決め可能な複数の電極と、
患者の血行動態変化を検出すべく構成された1つ以上のセンサと、
検出された前記患者の血行動態変化に応じて、
i)心臓内に位置決めされた前記複数の電極の各位置について、心腔の収縮機能に関連するパラメータを決定するとともに、
ii)心臓内に位置決めされた前記複数の電極の各位置について、心腔の収縮機能に関連する前記パラメータの分布を決定するように構成されたプロセッサと、
決定されたパラメータ分布に基づいて前記複数の電極のうちの1つ以上の電極を選択すべく構成された選択回路と、
選択された1つ以上の電極を含む複数の電極を用いて心腔をペーシングすべく構成されたパルスジェネレータと
を含む心臓治療システム。
【請求項2】
前記パラメータ分布は、前記複数の電極における少なくとも1つの電気的な心臓特性の検出タイミングの分布を含む請求項1に記載の心臓治療システム。
【請求項3】
前記1つ以上のセンサは化学的センサを含み、前記分布の決定は、血行動態変化の指標である血液化学における変化を検出することにより開始される請求項1に記載の心臓治療システム。
【請求項4】
前記1つ以上のセンサは患者活動センサを含み、前記分布の決定は、患者の活動における変化を検出することにより開始される請求項1に記載の心臓治療システム。
【請求項5】
前記1つ以上のセンサは呼吸センサを含み、前記分布の決定は、呼吸における変化を検出することにより開始される請求項1に記載の心臓治療システム。
【請求項6】
前記1つ以上のセンサは心臓電位図センサを含む請求項1に記載の心臓治療システム。
【請求項7】
前記選択回路は、前記パラメータ分布に基づいて前記1つ以上の電極に供給されるペーシングパルスのタイミングシーケンスを決定すべく構成され、
前記パルスジェネレータは、前記タイミングシーケンスに従い前記1つ以上の電極に前記ペーシングパルスを供給すべく構成される請求項1に記載の心臓治療システム。
【請求項8】
前記選択回路は、前記パラメータ分布に基づいて前記1つ以上の電極に供給されるペーシングパルスの振幅を選択すべく構成され、
前記パルスジェネレータは、選択された振幅で前記1つ以上の電極にペーシングパルスを供給すべく構成される請求項1に記載の心臓治療システム。
【請求項9】
前記プロセッサ及び選択回路のうち少なくとも1つは患者外部部品を含む請求項1に記載の心臓治療システム。
【請求項10】
患者の血行動態変化、パラメータ分布、及びペーシング出力構成のうちの少なくとも1つに関する情報を含むルックアップテーブルを格納すべく構成されたメモリを更に含み、
前記プロセッサは、前記ルックアップテーブルの情報を整理し、後続のペーシング出力構成を選択するために前記ルックアップテーブルを使用すべく構成される請求項1に記載の心臓治療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−99601(P2013−99601A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−27928(P2013−27928)
【出願日】平成25年2月15日(2013.2.15)
【分割の表示】特願2009−518249(P2009−518249)の分割
【原出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】