説明

心臓血管に対して選択的にホーミングするペプチド、ならびに関連する結合体および方法

本発明により、種々の単離されたペプチドおよびペプチド模倣物が提供される。これは、例えば、本発明の結合体の構築において、またはペプチド自体が生物学的活性を有している場合には、結合していない形態で、以下に記載されるような種々の心臓血管疾患のいずれかの処置のための治療薬として、有用であり得る。したがって、本発明により、60未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)もしくはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。本発明により、さらに、60未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)もしくはそのペプチド模倣物、またはアミノ酸配列CPKRPR(配列番号6)もしくはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
アテローム性動脈硬化症およびその続発症は、西欧諸国においては疾患および死亡についての最も一般的であり重要な原因を構成しており、西欧諸国での死亡全体の50%の割合を占めている。以下にさらに記載されるように、アテローム性動脈硬化症は、紛瘤の結果としての血管壁または動脈の肥厚および弾力性がないことによって生じる障害である。
【0002】
正常な心臓においては、血管壁は結合組織の層で覆われている血管平滑筋細胞の中間層に対してきっちりと隣り合って並べられている内皮細胞の内層から構成される。内皮細胞の内層は、理想的にはシグナルを伝達するために血液と血管壁の間の界面に位置しており、内皮細胞は、血管緊張、凝固状態、細胞増殖、細胞死、および白血球の輸送のようなプロセスを調節する因子の生産を通じて、血管の恒常性のバランスを制御している。血管平滑筋細胞は、血管作用薬に反応して血管の収縮傾向を維持し、そしてサイトカインおよび他の成長因子を放出する。線維芽細胞と連動して、平滑筋細胞は、血管構造を決定する細胞外マトリックスタンパク質とプロテアーゼを生産する。閉塞性の血管疾患(その最も一般的な形態がアテローム性動脈硬化症である)は、脂質、炎症性細胞、血管平滑筋細胞、および細胞外マトリックスタンパク質の、内皮内層と中間層との間の血管内膜空間の中での異常な蓄積(プラーク形成)を特徴とする。
【0003】
アテローム性動脈硬化症の治療では、一般的には、プラーク形成のプロセスが妨げられるか、停止させられるか、または後退させられるか、あるいは新しい血管の形成が刺激される。しかし、アテローム性動脈硬化症の処置のための薬剤または他の物質が冠動脈血管だけを標的とすることは稀である。より一般的には、全身的投与によって望ましくない副作用が生じ、これは例えば、全身のいたるところにまで生じる毒性の作用が原因である。例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)(内皮細胞の増殖を刺激する血管形成の鍵となる調節因子)は、新しい血管の形成を促進し、それによって、虚血組織への血流を増大させ、血管疾患を緩和する。しかし、VEGFはまた、非特異的有糸分裂を促進する可能性があり、そして糖尿病性網膜症および特定の腫瘍のような血管形成によって駆動される疾患を増強する可能性もある。同様に、血管形成の刺激因子である線維芽細胞増殖因子の全身投与によっては、心臓組織に対するその特異性がないことが原因で、重症の副作用が生じる可能性がある。残念なことに、このような副作用(高血圧の症状の繰り返しを含む)によって、アテローム性動脈硬化症の処置についての既存のプロ血管形成治療の有用性は限られている。
【0004】
血管の内層を作り上げる細胞として、内皮細胞は、薬剤または他の物質を循環させることによって思いがけず得られた最初の細胞型である。したがって、内皮細胞によって、心臓組織に対して治療用物質を選択的に指向させるための標的が提供される。薬剤または他の治療用物質の心臓血管に対するこのような選択的標的化によって、全身的な毒性または悪性形質転換のような望ましくない副作用のリスクが低くなるか、または排除されるであろう。心臓血管に対する治療用物質の選択的標的化によってはまた、それらの物質の高い局所濃度が得られ、これによって有効な処置に必要な投与量が減少する。
【0005】
このように、インビボで心臓血管に対して選択的に結合する分子を同定する必要がある。このような分子は、心臓病および心臓血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症)の処置のために心臓に対して治療薬を選択的に標的化させるために特に有用である。本発明はこの必要性を満たし、そして関連する利点を十分に提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、種々の単離されたペプチドおよびペプチド模倣物が提供される。これらは、例えば、本発明の結合体を構築することにおいて、または、ペプチド自体が生物学的活性を有している場合には、結合していない形態で、以下に記載されるような種々の心臓血管疾患の任意のものを処置するための治療薬として有用であり得る。したがって、本発明により、60未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)もしくはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。本発明により、さらに、60未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)もしくはそのペプチド模倣物、またはアミノ酸配列CPKRPR(配列番号6)もしくはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0007】
本発明により、さらに、アミノ酸配列GRKSKTV(配列番号14)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。1つの実施形態においては、本発明により、アミノ酸配列CXGRKSKTVZC(配列番号15)またはそのペプチド模倣物(式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、Z=0から20個の別々に選択される残基である)を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0008】
本発明により、さらに、150未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0009】
50未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CPKRPR(配列番号6)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物もまた、本明細書中で提供される。
【0010】
本発明により、さらに、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0011】
本発明により、さらに、アミノ酸配列RNSWKPN(配列番号16)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。1つの実施形態においては、本発明により、アミノ酸配列CXRNSWKPNZC(配列番号17)またはそのペプチド模倣物(式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、Z=0から20個の別々に選択される残基である)を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0012】
アミノ酸配列RGSSS(配列番号9)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が、本明細書中でさらに提供される。
【0013】
本発明により、また、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列RSTRANP(配列番号18)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物も提供される。1つの実施形態においては、本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物には、アミノ酸配列CXRSTRANPZC(配列番号19)またはそのペプチド模倣物(式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、Z=0から20個の別々に選択される残基である)が含まれる。
【0014】
本発明により、さらに、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列PKTRRVP(配列番号20)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。1つの実施形態においては、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物には、アミノ酸配列CXPKTRRVPZC(配列番号21)またはそのペプチド模倣物(式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、Z=0から20個の別々に選択される残基である)が含まれる。
【0015】
さらに、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列SGMARTK(配列番号22)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が、本明細書中で提供される。1つの実施形態においては、本発明により、アミノ酸配列CXSGMARTKZC(配列番号23)またはそのペプチド模倣物(式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、Z=0から20個の別々に選択される残基である)を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0016】
以下による、心臓血管に選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法もまた、本明細書中で提供される:HLP/CRIP2またはその断片を、HLP/CRIP2に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;特異的結合をアッセイする工程;およびライブラリーから1つ以上のHLP/CRIP2結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、HLP/CRIP2に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程。
【0017】
さらに、以下による、心臓血管に選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法が本発明によって提供される:受容体クローン9またはその断片を、受容体クローン9に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;特異的結合をアッセイする工程;およびライブラリーから1つ以上のレセプタークローン9結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、受容体クローン9に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程。
【0018】
本発明により、以下による、心臓血管に選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法もまた提供される:Sigirr/TIR8またはその断片を、Sigirr/TIR8の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;特異的結合をアッセイする工程;およびライブラリーから1つ以上のSigirr/TIR8結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、Sigirr/TIR8に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程。
【0019】
さらに、以下による、心臓血管に選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法が、本明細書中で提供される:MpcII−3関連タンパク質またはその断片を、MpcII−3関連タンパク質に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;特異的結合をアッセイする工程;およびライブラリーから1つ以上のMpcII−3関連タンパク質結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、MpcII−3関連タンパク質に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程。
【0020】
本発明により、さらに、以下による、心臓血管に選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法が提供される:bc10またはその断片を、bc10に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;特異的結合をアッセイする工程;およびライブラリーから1つ以上のbc10結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、bc10に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程。
【0021】
抗体またはその抗原結合断片に連結された部分を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法もまた、本明細書中で提供される。抗体またはその抗原結合断片は、心臓血管に選択的にホーミングして、HLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合し、それによってこの部分を心臓血管に対して指向させる。
【0022】
本発明により、さらに、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供される。ここでは、結合体は被験体に投与され、結合体には、心臓血管に選択的にホーミングして、配列番号27に特異的に結合し、それによってこの部分を心臓血管に対して指向させる、抗体または抗原結合断片に連結された部分が含まれる。
【0023】
抗体またはその抗原結合断片に連結された部分を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法もまた、本明細書中で提供される。抗体またはその抗原結合断片は、心臓血管に選択的にホーミングして、Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合し、それによってこの部分を心臓血管に対して指向させる。
【0024】
さらに、抗体またはその抗原結合断片に連結された部分を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供される。抗体またはその抗原結合断片は、心臓血管に選択的にホーミングして、配列番号33に特異的に結合し、それによってこの部分を心臓血管に対して指向させる。
【0025】
本発明により、さらに、抗体またはその抗原結合断片に連結された部分を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供される。抗体またはその抗原結合断片は、心臓血管に選択的にホーミングして、bc10(配列番号35)に特異的に結合し、それによってこの部分を心臓血管に対して指向させる。
【0026】
本発明により、心臓血管に選択的にホーミングして、システインリッチタンパク質2(HLP/CRIP2;配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子に対して連結させられた治療薬を含む結合体もまた提供される。ホーミング分子に連結された部分を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法もまた、本明細書中で提供される。ホーミング分子は心臓血管に選択的にホーミングして、HLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合し、それにより、この部分を心臓血管に対して指向させる。
【0027】
本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングして、受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体が提供される。ホーミング分子に連結された部分を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法もまた、本明細書中で提供される。ホーミング分子は、心臓血管に選択的にホーミングして、受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合し、それにより、この部分を心臓血管に対して指向させる。
【0028】
さらに、心臓血管に選択的にホーミングして、1つのIg IL−2レセプター関連タンパク質(Sigirr/TIR8;配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体が本明細書中で提供される。このような結合体は、例えば、ホーミング分子に連結された部分を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させるための本発明の方法において有用であり得る。ホーミング分子は、心臓血管に選択的にホーミングして、Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合し、それにより、この部分を心臓血管に対して指向させる。
【0029】
本発明により、また、心臓血管に選択的にホーミングして、配列番号33(不可欠な膜タンパク質CII−3(MpcII−3)に対して推定上の類似性を有しているタンパク質産物)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体も提供される。本発明により、さらに、ホーミング分子に連結された部分を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供される。ホーミング分子は、心臓血管に選択的にホーミングして、配列番号33に特異的に結合し、それによってこの部分を心臓血管に対して指向させる。
【0030】
ホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体もまた、本明細書中で提供される。ホーミング分子は、心臓血管に選択的にホーミングして、マウスの膀胱ガン関連タンパク質ホモログ(bc10;配列番号35)に特異的に結合する。本発明により、さらに、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供され、これは、ホーミング分子に連結された部分を含む結合体が被験体に投与されることによる。ホーミング分子は、心臓血管に選択的にホーミングして、bc10(配列番号35)に特異的に結合し、それによってこの部分を心臓血管に対して指向させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、高い選択性で心臓血管にホーミングし、そして全身的に投与された治療薬または造影剤を心臓血管に選択的に標的化させるための結合体の形態において有用であり得る分子の同定に関する。治療薬のこのような選択的標的化によって、心臓血管に送達される薬剤の有効量が増大し、一方では、薬剤が他の臓器に対して有害な影響を生じる可能性が低下する。本発明はさらに、本発明のホーミング分子の同種受容体の同定に関する。以下にさらに開示されるように、これらの受容体は心臓の内皮細胞上で発現され、心臓血管に選択的にホーミングするペプチドまたは他の分子の特性を最適化するためのスクリーニングに有用であり得る。
【0032】
実施例1において本明細書中で開示されるように、エキソビボおよびインビボでのファージ選択と、細菌でのツーハイブリッド分析の新規の組み合わせが、心臓血管に選択的にホーミングするペプチドを同定するため、およびこれらのペプチドの受容体として作用する内皮細胞の分子を同定するために使用された。マウスの心臓懸濁液と抗CD31磁気ビーズを用いたエキソビボでのファージ選択の後、心臓へのホーミングについてのインビボ選択が行われ、これによって、心臓にホーミングするファージのプールが得られた。これは、組み換え体ではないファージと比較してほぼ200倍増加した(図1Aおよび1B)。さらに、図1Cに示されるように、エキソビボ/インビボで選択されたファージは、他の組織と比較すると心臓に優先的に局在化した;心臓での富化は、脳、腎臓、皮膚、および骨格筋の中での蓄積よりも20から50倍多かった。
【0033】
心臓にホーミングするファージのプールを用いた細菌でのツーハイブリッド分析によって同定した25個の推定される受容体クローンの大部分は、心筋で豊富に発現されるタンパク質であった。表1にまとめられるように、残りの6つのクローンは膜タンパク質または細胞表面タンパク質を提示し、これらは、ホーミングペプチドの推定される受容体であった。受容体クローン5と記載される最初のクローンは、心臓LIM−タンパク質(HLP)のカルボキシ末端にある92個のアミノ酸(117位から208位の残基)を提示し、これはシステインリッチタンパク質2(CRIP2)とも呼ばれる。全長のマウスHLP/CRIP2の核酸配列とアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号24および25として本明細書中に提供される(Genbank accession NM_024223を参照のこと)。ツーハイブリッド分析によっては、この受容体に結合したいくつかの可能性のある心臓ホーミングペプチドが得られた。個々にアッセイされた場合には、CRPPR(配列番号1)をディスプレイするファージは、組み換え体ではないファージと比較して300倍を上回る選択性で心臓にホーミングし(図2A)、そしてCGRKSKTVC(配列番号2)ファージは、組み換え体ではないファージと比較して心臓へのホーミングにおいて約50倍の選択性を示した。これらの結果は、ペプチドである配列番号1および配列番号2が心臓ホーミングペプチドであることを示しており、さらに、HLP/CRIP2がこれらのペプチドのホーミングのための受容体としての役割を担っていることを示唆している。
【0034】
本明細書中でさらに開示されるように、注釈がついていないRIKEN EST(受容体クローン9)もまた、1つ以上の心臓ホーミングペプチドに結合する、膜タンパク質または細胞表面で発現されるタンパク質として同定された。受容体クローン9によって示されるRIKEN ESTの全長のマウス核酸配列とアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号26および27として本明細書中に提供される(Genbank accession BC026536を参照のこと)。ツーハイブリッド分析によって同定された3つの異なるペプチドのうち、2つのペプチドであるCARPAR(配列番号5)とCPKRPR(配列番号6)は、ファージ上にディスプレイされると、心臓に対する選択的なホーミングを示した(図2B)。
【0035】
本明細書中で開示される結果によって、さらに、SigirrまたはTIR8(受容体クローン15)と命名された1つのIg IL−1受容体関連タンパク質が、心臓ホーミングペプチドの受容体として同定された。全長のマウスSigirr/TIR8の核酸配列とアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号28および29として本明細書中に提供される(Genbank accession BC010806を参照のこと)。表1にまとめられるように、ツーハイブリッド分析によってSigirr/TIR8への結合によって同定された3つのペプチドCKRAVR(配列番号7)、CRNSWKPNC(配列番号8)、およびRGSSS(配列番号9)は、ファージ上にディスプレイされ、そしてインビボでアッセイされた場合には、20から30倍の心臓へのホーミングの選択性を示した(表1および図2Cを参照のこと)。
【0036】
受容体クローン36もまた心臓ホーミング受容体として本明細書中に開示される。これは、コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体の一部であるミトコンドリア膜タンパク質である不可欠な膜タンパク質CII−3(MpcII−3)に対して類似性を有していると推定される、RIKEN Fantomに由来する命名されていないタンパク質産物を提示する。このMpcII−3関連タンパク質の核酸配列とアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号32および33として本明細書中に提供される(Genbank accession 26328274を参照のこと)。ツーハイブリッド分析により、ペプチドCRSTRANPC(配列番号11)がこの受容体に結合するとして同定され;配列番号11をディスプレイするファージは、インビボで個々にアッセイされた場合には、約20倍の選択性で心臓にホーミングした(表1および図2E)。本明細書中に開示されるさらなる結果は、マウスの膀胱ガン関連タンパク質ホモログ10(bc10)(膀胱の中の前ガン状態の病変からガンが生じるとダウンレギュレートされる小さい膜タンパク質)が心臓ホーミング受容体としての役割を担うことができることを示している。同定された受容体クローン46は、bc10のマウスホモログの一部を提示する。全長のマウスbc10核酸とアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号34および35として、本明細書中で提供される(Genbank accession20072483を参照のこと)。表1および図2Fに示されるように、クローン46に結合した2つのペプチドCPKTRRVPC(配列番号12)およびCSGMARTKC(配列番号13)を発現するファージは、それぞれ、心臓へのホーミングにおいて約60倍および10倍の選択性を示した。
【0037】
本明細書中にさらに開示されるように、いくつかの心臓ホーミングペプチドが、インビボで心臓の内皮細胞に結合する能力について、およびそれらの推定される受容体に対する特異的結合について分析された。心臓ホーミングペプチドである配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号11、および配列番号12をディスプレイするファージが、フルオレセインが結合させられたトマトレシチン、血管マーカーと共にマウスにそれぞれ別々に注射され、そしてファージの局在化が抗T7抗体を用いて観察された。図3AからC、E、およびFに示されるように、配列1、5、7、11、または12をディスプレイするファージは、心臓の内皮細胞中に存在しており、他の組織には存在していなかった。一方、ペプチドである配列番号10をディスプレイするネガティブ対照のファージは心臓にも、他の組織の中にも存在しなかった。これらの結果は、ファージがディスプレイするペプチドであるCRPPR(配列番号1)、CARPAR(配列番号5)、CKRAVR(配列番号7)、CRSTRANPC(配列番号11)、またはCPKTRRVPC(配列番号12)がインビボで心臓血管に局在化することを示している。加えて、実時間(RT)−PCRおよびインサイチュハイブリダイゼーション分析は、心臓ホーミングペプチドについての4種類の同種受容体であるHLP/CRIP2、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、およびbc10が心臓の内皮細胞の中で発現されることを示していた。これらの受容体はまた、アッセイした他の組織と比較して、心臓において優先的に発現されていた(図5を参照のこと)。心臓の内皮細胞の受容体HLP/CRIP2、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、およびbc10は心臓においてのみ発現されているのではないが、心臓でのそれらの優先的な発現によって、心臓の中の試験ファージを約20から300倍の選択性によって濃縮している、ホーミングペプチドが生じた。心臓へのホーミングにおけるこの20から300倍の選択性は、他の分子を用いて以前に観察された心臓へのホーミングと比較して明らかに増大している。
【0038】
本明細書中にさらに開示されるように、同種ペプチドをディスプレイするファージが、全長の同種受容体をトランスフェクトした細胞に結合する能力についてアッセイされた。図4に示されるように、心臓ホーミングペプチドを発現するファージは、対照ファージよりも300から500倍多く、対応する同種受容体でトランスフェクトされた細胞に結合した。そしてファージの結合は、100μg/mlの同種ペプチドの存在下で阻害されたが、無関係なホーミングペプチドによっては阻害されなかった。これらの結果によって、心臓ホーミングペプチドであるCRPPR(配列番号1)は受容体HLP/CRIP2に特異的に結合し;心臓ホーミングペプチドであるCKRAVR(配列番号7)は受容体Sigirr/TIR8に特異的に結合し;心臓ホーミングペプチドであるCRSTRANPC(配列番号11)はMpcII−3関連タンパク質受容体に特異的に結合し;そして心臓ホーミングペプチドであるCPKTRRVPC(配列番号12)は受容体bc10に特異的に結合することが確認された。
【0039】
本明細書中で開示されるさらなる結果は、ペプチドCRPPR(配列番号1)の、同種受容体HLP/CRIP2との共局在を明らかにしている。図6において本明細書中に示されるように、静脈内に注射されたCRPPR(配列番号1)ペプチドからの蛍光は、心臓血管と心内膜の両方の中で、血管マーカーCD31と広い範囲に一緒に局在化していた。一方、蛍光標識された対照ペプチドは心臓の中では検出されなかった。抗HLP/CRIP2抗体染色もまた、心臓血管と心内膜の中で、血管マーカー(図6)とペプチドCRPPR(配列番号1;図6Eおよび6F)と一緒に局在化していた。HLP/CRIP2を有している心臓血管に対するCRPPR(配列番号1)ファージの結合の特異性は、遊離のCRPPR(配列番号1)ペプチドを用いた競合アッセイを使用して明らかにされた。遊離のCRPPR(配列番号1)ペプチドは、用量依存性の様式で、心臓由来の細胞懸濁液に対するCRPPR(配列番号1)をディスプレイするファージの結合をブロックした(図7AおよびB)。加えて、抗HLP/CRIP2抗体は、ファージと一緒に注射された場合には、CRPPR(配列番号1)ファージのホーミングを阻害した(図7C)。これらの結果は、ペプチドCRPPR(配列番号1)が、HLP/CRIP2への特異的結合を通じて心臓血管に選択的にホーミングすることを実証している。
【0040】
上記の知見に基づいて、本発明によって、心臓血管に選択的にホーミングして、システインリッチタンパク質2(HLP/CRIP2;配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体が提供される。このような結合体においては、ホーミング分子は、例えば、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができ、そしてこれは、例えば、ペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。1つの実施形態においては、本発明の結合体には、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が含まれる。別の実施形態においては、本発明の結合体には、アミノ酸配列CGRKSKTVC(配列番号2)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が含まれる。このようなホーミングペプチドまたはペプチド模倣物は、状況によっては、立体構造によって拘束される場合がある。
【0041】
種々の治療薬が、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子が組み込まれている本発明の結合体において有用である。有用な治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定はされない。1つの実施形態においては、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた血管形成薬を含む結合体が提供される。別の実施形態においては、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた抗血栓剤を含む結合体が提供される。
【0042】
本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体が提供される。1つの実施形態においては、本発明の結合体には、アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が含まれる。別の実施形態においては、本発明の結合体には、アミノ酸配列CPKRPR(配列番号6)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が含まれる。任意の種々の治療薬が、心臓血管に選択的にホーミングし、そして受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合するホーミング分子が組み込まれている本発明の結合体において有用である。有用な治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定はされない。1つの実施形態においては、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そして受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた血管形成薬を含む結合体が提供される。別の実施形態においては、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そして受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた抗血栓剤を含む結合体が提供される。
【0043】
さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして1つのIg IL−2受容体関連タンパク質(Sigirr/TIR8;配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体が、本明細書中で提供される。限定ではない例として、このような結合体において有用なホーミング分子は、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができる。さらなる限定ではない例として、Sigirr/TIR8に特異的に結合するホーミング分子は、ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。
【0044】
Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合する種々のホーミングペプチドおよびペプチド模倣物は本発明の結合体において有用であり、これには、アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が含まれるが、これに限定はされない。本発明に有用なホーミングペプチドおよびペプチド模倣物としては、さらに、アミノ酸配列CRNSWKPNC(配列番号8)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むペプチドおよびペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定はされない;このようなペプチドおよびペプチド模倣物は、立体構造によって拘束されている場合も、また拘束されていない場合もある。本発明に有用なさらなるホーミングペプチドおよびペプチド模倣物としては、アミノ酸配列RGSSS(配列番号9)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0045】
任意の種々の治療薬が、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてSigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体において有用である。本発明に有用な治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定はされない。1つの実施形態においては、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてSigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた血管形成薬を含む結合体が提供される。別の実施形態においては、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてSigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた抗血栓剤を含む結合体が提供される。
【0046】
心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号33に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体もまた、本明細書中で提供される。1つの実施形態においては、本発明の結合体には、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングするホーミング分子が含まれる。別の実施形態においては、本発明の結合体には、ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物であるホーミング分子が含まれる。さらなる実施形態においては、本発明の結合体には、アミノ酸配列CRSTRANPC(配列番号11)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が含まれる。このようなホーミング分子は、状況によっては、立体構造によって拘束され得る。任意の種々の治療薬が本発明の結合体において有用であることが理解される。有用な治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定はされない。一例として、本発明の結合体には、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号33に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた血管形成薬が含まれ得る。別の例として、本発明の結合体には、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号33に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた抗血栓剤が含まれ得る。
【0047】
心臓血管に選択的にホーミングし、そしてマウスの膀胱ガン関連タンパク質ホモログ(bc10;配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体もまた、本明細書中で提供される。このような結合体においては、ホーミング分子は、組み換え体ではないファージと比較して、例えば、少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができる。ホーミング分子は、ペプチドまたはペプチド模倣物であり得るが、これらに限定はされない。bc10(配列番号35)に特異的に結合する任意の種々のホーミング分子が、本発明の結合体において有用であり得る。これには、アミノ酸配列CPKTRRVPC(配列番号12)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドおよびペプチド模倣物が含まれるが、これらに限定はされない。bc10(配列番号35)に特異的に結合する有用なホーミング分子としては、さらに、アミノ酸配列CSGMARTKC(配列番号13)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドおよびペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定はされない。有用なホーミング分子としては、さらに、アミノ酸配列である配列番号12または配列番号13、あるいはそれらの保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドおよびペプチド模倣物の立体構造によって拘束された形態が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0048】
当業者は、任意の種々の治療薬が本発明の結合体において有用であり得ることを理解している。治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定はされない。1つの実施形態においては、本発明の結合体には、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてbc10(配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた血管形成薬が含まれる。別の実施形態においては、本発明の結合体には、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてbc10(配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた抗血栓剤が含まれる。
【0049】
特定の実施形態においては、本発明の結合体のペプチドまたはペプチド模倣物部分は定義された長さを有する。結合体のペプチドまたはペプチド模倣物部分は、多くても10、20、30、40、50、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、または2000残基の長さを有し得るが、これらに限定はされない。他の実施形態においては、結合体のペプチドまたはペプチド模倣物部分は、少なくとも5、10、20、30、50、100、150、200、250、または300残基の長さを有する。用語「結合体のペプチドまたはペプチド模倣物部分」は、ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物と、任意の連続するタンパク質、ペプチド、またはペプチド模倣物(例えば、治療用タンパク質またはプロアポトーシス性ペプチド)の中の残基の総数を意味すると理解される。
【0050】
本明細書中で開示されるように、ペプチドである配列番号1および2は、心臓の内皮細胞上で発現され、他の組織においては同じ程度では発現されない標的「受容体」を認識する。本明細書中でHLP/CRIP2と呼ばれるこの標的受容体の内皮細胞および組織選択的発現は、ペプチドである配列番号1および2、ならびに関連ペプチドおよびペプチド模倣物、さらには、類似の結合特異性を有している他の分子の選択的ホーミング活性の根拠を構成する。これらの発見に基づくと、配列番号1および2とは構造的に無関係であるが、特異的HLP/CRIP2結合活性を有している分子もまた、心臓血管に対する選択的ホーミングの特徴を共有していることが明らかである。このような分子は、例えば、HLP/CRIP2を発現する細胞(例えば、本明細書中に開示されるHLP/CRIP2でトランスフェクトされた293T細胞)に対して特異的に結合する、あるいは、そのような細胞に対する結合について配列番号1または2と競合する能力によって同定することができる。心臓血管に対する選択的ホーミングは、例えば、実施例2において本明細書中に記載されるように、容易に確認することができる。
【0051】
したがって、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてシステインリッチタンパク質2(HLP/CRIP2;配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子が提供される。1つの実施形態においては、HLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子は、抗体またはその抗原結合断片以外の分子である。さらなる実施形態においては、HLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子は、ペプチドまたはペプチド模倣物である。本明細書中で開示されるHLP/CRIP2(配列番号25)に結合する分子であるCRPPR(配列番号1)およびCGRKSKTVC(配列番号2)に加えて、別の構造的に関係しているかまたは構造的には無関係であるホーミング分子の同定のためのスクリーニング方法もまた、本明細書において以下に提供される。
【0052】
心臓血管に選択的にホーミングする分子の別の標的受容体もまた、本明細書中で同定されている。受容体クローン9(配列番号27)は、心臓ホーミングペプチドである配列番号5および6に特異的に結合する受容体として同定されており、心臓血管に選択的にホーミングする、これらのペプチド、ならびに、別のペプチド、ペプチド模倣物、および類似の結合活性を有している他の分子の能力についての根拠を構成する。上記から、配列番号5または6とは構造的には関係がないが、特異的受容体クローン9(配列番号27)結合活性を有している分子もまた、心臓血管に対する選択的ホーミングの特徴を有していることが明らかである。このようなホーミング分子は、受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合するか、あるいは受容体クローン9(配列番号27)に対する結合について配列番号5または6と競合する能力によって同定することができる。特異的結合は、精製された配列番号27、または、例えば、配列番号27をコードする核酸分子(例えば、配列番号26)でトランスフェクトされた細胞を使用してアッセイすることができる。
【0053】
上記に基づいて、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そして受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合するホーミング分子が提供される。1つの実施形態においては、受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合するホーミング分子は、抗体またはその抗原結合断片以外の分子である。さらなる実施形態においては、受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合するホーミング分子は、ペプチドまたはペプチド模倣物である。受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合する例示的なペプチドおよびペプチド模倣物が本明細書中で開示され、そして心臓血管に選択的にホーミングして、受容体クローン9(配列番号27)に特異的に結合するさらに別のホーミング分子の同定に適しているスクリーニング方法が以下に提供される。
【0054】
本明細書中にさらに開示されるように、Sigirr/TIR8(配列番号7、8、および9に特異的に結合するポリペプチド)の内皮細胞および心臓での選択的発現により、これらのペプチドおよび別のペプチド、ペプチド模倣物、ならびに類似する結合活性を有している他の分子の、心臓血管に選択的にホーミングする能力についての根拠が構成される。上記から、配列番号7、8、または9に対して構造的には関係していないが、特異的Sigirr/TIR8結合活性を有している分子もまた、心臓血管に対する選択的ホーミングの特徴を共有していることが明らかである。このようなホーミング分子は、Sigirr/TIR8に特異的に結合するか、またはSigirr/TIR8に対する結合について配列番号7、8、もしくは9と競合する能力によって同定することができる。特異的結合は、精製されたSigirr/TIR8、または例えば、細胞(例えば、以下の実施例に開示されるSigirr/TIR8でトランスフェクトされた293T細胞)を使用してアッセイすることができる。
【0055】
心臓ホーミング受容体としてのSigirr/TIR8の同定に基づいて、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてSigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子が提供される。1つの実施形態においては、Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子は、抗体またはその抗原結合断片以外の分子である。さらなる実施形態においては、Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子は、ペプチドまたはペプチド模倣物である。Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合する例示的なペプチドおよびペプチド模倣物が本明細書中で開示される。さらに、心臓血管に選択的にホーミングして、Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するさらに別のホーミング分子の日常的に行われている同定に適しているスクリーニング方法が、本明細書中で以下に提供される。
【0056】
ペプチドCRSTRANPC(配列番号11)は、心臓の内皮細胞上で選択的に発現される別の標的「受容体」を認識する。MpcII−3関連タンパク質(配列番号33)の内皮細胞および組織選択的発現により、ペプチドである配列番号11、さらには関連ペプチド、ペプチド模倣物、および類似する結合特異性を有している他の分子が心臓血管に選択的にホーミングすることができる。このようなホーミング分子には、ペプチドである配列番号11とは構造的には無関係であるが、これもまたMpcII−3関連タンパク質である配列番号33に特異的に結合する分子が含まれる。上記を考慮すると、心臓血管に選択的にホーミングする別の分子を、MpcII−3関連タンパク質(精製されたMpcII−3関連タンパク質を含む)または細胞表面上にMpcII−3関連タンパク質を発現する細胞に特異的に結合する、またはそれらに対する結合について配列番号11と競合するそれらの能力によって同定することができることは明らかである。
【0057】
MpcII−3関連タンパク質(配列番号33)が心臓ホーミング受容体であるという知見から、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号33に特異的に結合するホーミング分子が提供される。1つの実施形態においては、配列番号33に特異的に結合するホーミング分子は、抗体またはその抗原結合断片以外の分子である。別の実施形態においては、配列番号33に特異的に結合するホーミング分子は、ペプチドまたはペプチド模倣物である。配列番号33に特異的に結合する例示的なペプチドおよびペプチド模倣物が本明細書中で開示され、心臓血管に選択的にホーミングして、配列番号33に特異的に結合するさらに別のホーミング分子の同定に適しているスクリーニング方法も本明細書中に開示される。
【0058】
別の標的受容体であるbc10が、配列番号12および13の特異的結合活性によって本明細書中でさらに同定された。この受容体の内皮細胞および心臓での選択的発現は、ペプチドである配列番号12および13、さらには関連ペプチド、ペプチド模倣物、および類似する結合特異性を有している他の分子の選択的ホーミング活性の根拠を構成する。本明細書中に開示される知見に基づいて、当業者は、配列番号12および13とは構造的には無関係である分子もまた、それらがbc10に対する特異的結合の特徴を共有している場合には、心臓血管に選択的にホーミングできることを理解する。したがって、さらに別のホーミング分子を、標的受容体bc10(これは、例えば、精製されたbc10、またはbc10を発現する細胞(例えば、bc10でトランスフェクトされた293T細胞)の形態で提供され得る)に特異的に結合する、または標的受容体bc10に対する結合について配列番号12もしくは13と競合する能力によって同定することができる。心臓血管への選択的ホーミングは、例えば、実施例2において本明細書中に記載されるように、容易に確認することができる。
【0059】
bc10がペプチドである配列番号12および13の同種受容体であることの発見に基づいて、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてbc10(配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子が提供される。1つの実施形態においては、本発明により、bc10(配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子が提供される。これは、抗体またはその抗原結合断片以外の分子である。別の実施形態においては、本発明により、bc10(配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子が提供され、これは、ペプチドまたはペプチド模倣物である。ペプチドである配列番号12および13、ならびにその保存的変異体は、bc10(配列番号35)に特異的に結合する分子として本明細書中で開示される。加えて、他のホーミング分子(ホーミングペプチドおよびペプチド模倣物を含むがこれらに限定はされない)の同定に適しているスクリーニング方法が、さらに以下に開示される。
【0060】
便宜上、本明細書中で同定された5つの標的受容体:HLP/CRIP2、受容体クローン9、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、およびbc10は、まとめて「心臓ホーミング受容体」と呼ばれる。
【0061】
上記に示されるように、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングする種々のホーミング分子が提供される。本明細書中で使用される場合は、用語「分子」は、低分子薬剤のような高分子または非高分子有機化合物;RNA、cDNA、もしくはオリゴヌクレオチドのような核酸分子;ペプチドまたはペプチド模倣物;あるいは、抗体もしくは成長因子受容体またはその断片(例えば、抗原結合ドメインを含む抗体のFv、Fd、もしくはFab断片)のようなタンパク質を意味するように広く使用される。1つの実施形態においては、分子は抗体またはその抗原結合断片以外の有機化合物である。別の実施形態においては、分子はペプチドまたはペプチド模倣物である。
【0062】
用語「ホーミング分子」は、本明細書中で使用される場合は、ほとんどの他の組織および血管よりも心臓血管に対してインビボで選択的に局在化する任意の分子を意味する。同様に、用語「ホーミングペプチド」または「ホーミングペプチド模倣物」は、ほとんどの他の組織および血管よりも心臓血管に対してインビボで選択的に局在化するペプチドまたはペプチド模倣物を意味する。
【0063】
用語「選択的にホーミングする」は、分子に関して本明細書中で使用される場合は、ホーミング分子が、インビボで、ほとんどの他の組織および血管と比較して心臓血管に対して優先的に選択的に局在化することを意味する。選択的ホーミングは、一般的には、脳、肺、腎臓、および筋肉のような他の組織と比較して、心臓血管における少なくとも2倍多い局在化を特徴とする。ホーミング分子は、多くまたはほとんどの非腫瘍組織と比較して、心臓血管に対する5倍、10倍、20倍、またはそれ以上の優先的な局在化を特徴とし得る。ホーミング分子は、心臓血管への選択的ホーミングに加えて、心臓の外にある血管もしくは組織、または心臓の外にある細胞の小さい集団にも、一部ホーミングすることができることが理解される。
【0064】
上記で議論されるように、本発明のホーミング分子は、本発明の心臓ホーミング受容体の1つに特異的に結合する。本明細書中で使用される場合は、用語「特異的に結合する」または「特異的に結合している」は、非特異的相互作用とは測定できる程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子(通常は、結合活性を有していない類似する構造の分子)の結合と比較して1つの分子の結合を決定することによって、測定することができる。特異的結合はまた、ホーミング分子が、同種受容体を発現しない細胞よりも、同種の心臓ホーミング受容体(HLP/CRIP2、受容体クローン9、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、またはbc10)でトランスフェクトされた細胞に対して測定できる程度に高い親和性を有する場合にも同定することができる。測定できる程度の高い親和性は、例えば、対照細胞と比較して、同種受容体でトランスフェクトされた細胞に対する少なくとも100倍、200倍、300倍、500倍、またはそれ以上の増大であり得る。結合特異性はまた、例えば、既知の受容体結合分子を用いた競合阻害によっても確認することができる。
【0065】
さらに、用語「特異的に結合している」には、本明細書中で使用される場合には、低い親和性の特異的結合および高い親和性の特異的結合の両方が含まれる。特異的結合は、例えば、少なくとも約10−4MのKdを有している低い親和性のホーミング分子によって示され得る。例えば、心臓ホーミング受容体が2つ以上の結合部位を有している場合には、低い親和性を有しているホーミング分子は、心臓血管を標的化するために有用であり得る。特異的結合はまた、高い親和性のホーミング分子(例えば、少なくとも約10−5MのKdを有しているホーミング分子)によって示される場合もある。このような分子は、例えば、少なくとも約10−6M、少なくとも約10−7M、少なくとも約10−8M、少なくとも約10−9M、少なくとも約10−10MのKdを有し得るか、あるいは、少なくとも約10−11Mもしくは約10−12M、あるいはそれ以上のKdを有する場合もある。低い親和性のホーミング分子と高い親和性のホーミング分子の両方が有用であり、本発明に含まれる。低い親和性のホーミング分子は、ウイルスおよび他の粒子を含む多価結合体(これに限定はされない)を標的化することにおいて有用であり得る。高い親和性のホーミング分子は、多価結合体および一価結合体(これらに限定はされない)を標的化することにおいて有用である。
【0066】
それぞれが心臓血管に選択的にホーミングする少なくとも2つのホーミング分子が組み込まれている多価結合体もまた、本明細書中で提供される。特定の実施形態においては、本発明の多価結合体には、少なくとも10種類、または少なくとも100種類のそのようなホーミング分子が含まれる。種々の治療薬が本発明の多価結合体に有用であり、これには、ファージ、および以下にさらに記載される他の治療薬が含まれるが、これらに限定はされない。1つの実施形態においては、本発明により、それぞれが心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)、受容体クローン9(配列番号27)、Sigirr/TIR8(配列番号29)、MpcII−3関連タンパク質(配列番号33)、またはbc10(配列番号35)に特異的に結合する、少なくとも2つのホーミングペプチドまたはペプチド模倣物を含む多価結合体が提供される。別の実施形態においては、このような結合体には、それぞれが心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)、受容体クローン9(配列番号27)、Sigirr/TIR8(配列番号29)、MpcII−3関連タンパク質(配列番号33)、またはbc10(配列番号35)に特異的に結合する、少なくとも10個のホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が含まれる。なお別の実施形態においては、本発明の結合体には、それぞれが心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)、受容体クローン9(配列番号27)、Sigirr/TIR8(配列番号29)、MpcII−3関連タンパク質(配列番号33)、またはbc10(配列番号35)に特異的に結合する、少なくとも100個のホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が含まれる。
【0067】
特異的な実施形態においては、本発明の多価結合体には、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)、受容体クローン9(配列番号27)、Sigirr/TIR8(配列番号29)、MpcII−3関連タンパク質(配列番号33)、またはbc10(配列番号35)に特異的に結合する、2個以上、3個以上、5個以上、10個以上、20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、100個以上、200個以上、300個以上、400個以上、500個以上、または100個以上のホーミング分子が含まれる。1つの実施形態においては、複数のホーミング分子が、同じ心臓ホーミング受容体に特異的に結合する。別の実施形態においては、複数のホーミング分子が同じアミノ酸配列を有している。さらなる実施形態においては、多価結合体には、同じではないアミノ酸配列を有している複数のホーミング分子が含まれる。複数のホーミング分子が組み込まれている本発明の多価結合体に有用な部分としては、ファージ;レトロウイルス;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;および他のウイルス;細胞;リポソーム;ポリマーマトリックス;非ポリマーマトリックス、または金粒子のような粒子;マイクロデバイス;ナノデバイス;ならびにナノスケールの半導体材料が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0068】
本発明の多価結合体には、例えば、それぞれが心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)、受容体クローン9(配列番号27)、Sigirr/TIR8(配列番号29)、MpcII−3関連タンパク質(配列番号33)、またはbc10(配列番号35)に特異的に結合する、少なくとも2つのホーミング分子に連結させられたリポソームまたは他のポリマーマトリックスが含まれ得る。所望される場合には、リポソームまたは他のポリマーマトリックスは、少なくとも10個、または少なくとも100個のこのようなホーミング分子に連結させることができる。このような多価結合体に有用であるホーミング分子には、例えば、配列番号1、2、7、8、9、11、12、もしくは13、あるいは、そのような配列の保存的変異体またはペプチド模倣物が、別々に含まれ得る。例えば、リン脂質または他の脂質から構成されるリポソームは、作成および投与することが比較的簡単である、非毒性であり、生理学的に許容される、代謝可能な担体である(Gregoriadis,Liposome Technology,Vol.1(CRC Press,Boca Raton,FL(1984)))。当業者は、本発明の多価結合体においては、リポソームまたは他のポリマーマトリックスにはさらに、所望される場合には、治療薬、抗血管形成薬、抗炎症薬、または免疫抑制剤(これらに限定はされない)のような別の成分も含まれ得ることを理解する。
【0069】
本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管疾患を処置する方法が提供される。本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に連結させられた1つの部分を含む結合体が被験体に投与され、それによってこの部分が心臓血管に対して指向させられることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供される。本発明の方法に有用な抗体としては、モノクローナル抗体および生物学的活性を有している抗体が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明の方法が心臓血管に対して1つの部分を指向させるために使用される場合は、この部分は、検出可能な部分または治療薬(例えば、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、またはウイルスベクターであるが、これらに限定はされない)であり得るが、これらに限定はされない。部分および心臓血管疾患については、本明細書中で以下にさらに記載される。
【0070】
本発明により、また、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号27に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管疾患の処置方法も提供される。本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号27に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に連結させられた1つの部分を含む結合体が被験体に投与され、それによってこの部分が心臓血管に対して指向させられることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供される。本発明のこのような方法においては、抗体は、モノクローナル抗体または生物学的活性を有している抗体であり得るが、これらに限定はされない。本発明の方法が心臓血管に対して1つの部分を指向させるために使用される場合は、この部分は、検出可能な部分または治療薬(例えば、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、またはウイルスベクターであるが、これらに限定はされない)であり得るが、これらに限定はされない。
【0071】
本発明により、また、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてSigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管疾患の処置方法も提供される。さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてSigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に連結させられた1つの部分を含む結合体が被験体に投与され、それによってこの部分が心臓血管に対して指向させられることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が、本明細書中で提供される。本発明の方法においては、抗体は、モノクローナル抗体または生物学的活性を有している抗体であり得るが、これらに限定はされない。上記で議論されるように、本発明の方法が心臓血管に対して1つの部分を指向させるために使用される場合は、この部分は、検出可能な部分または治療薬(例えば、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、またはウイルスベクターであるが、これらに限定はされない)であり得るが、これらに限定はされない。
【0072】
さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管疾患の処置方法が、本明細書中で提供される。心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に連結させられた1つの部分を含む結合体が被験体に投与され、それによってこの部分が心臓血管に対して指向させられることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法もまた、本明細書中によって提供される。本発明に有用な抗体としては、モノクローナル抗体および生物学的活性を有している抗体が挙げられるがこれらに限定はされない。心臓血管に対して1つの部分を指向させるための本発明の方法においては、この部分は、検出可能な部分または治療薬(例えば、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、またはウイルスベクターであるが、これらに限定はされない)であり得るが、これらに限定はされない。
【0073】
本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてbc10(配列番号35)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管疾患の処置方法が提供される。本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてbc10(配列番号35)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に連結させられた1つの部分を含む結合体が被験体に投与され、それによってこの部分が心臓血管に対して指向させられることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法もまた提供される。本発明の方法は、例えば、モノクローナル抗体または生物学的活性を有している抗体を用いて実行することができる。心臓血管に対して1つの部分を指向させるための本発明の方法においては、任意の種々の部分を、bc10(配列番号35)に特異的に結合する抗体に連結させることができる。このような部分としては、さらに、検出可能な部分または治療薬(例えば、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクター)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0074】
本明細書中で使用される場合は、用語「抗体」はその最も広い意味で使用され、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、さらには、少なくとも約1×10−1の心臓ホーミング受容体に対する結合活性を保持している抗体のポリペプチド断片が含まれる。当業者は、心臓血管に選択的にホーミングする抗体(Fab、F(ab’)、およびFv断片を含むがこれらに限定されない)が、心臓ホーミング受容体に対する結合活性を保持し得、したがって、抗体の定義に含まれることを理解する。加えて、用語「抗体」には、本明細書中で使用される場合は、心臓ホーミング受容体に特異的に結合する、少なくとも1つのVおよびVドメインが通常は含まれている自然界には存在しない抗体ならびに断片(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、および単鎖Fv断片(scFv))断片が含まれる。このような自然界には存在しない抗体は、固相ペプチド合成を使用して構築することも、組み換えによって生産することも、また、例えば、ファージディスプレイライブラリーもしくは他の組み合わせライブラリー(例えば、Borrebaeck(編)Antibody Engineering(第2版)New York:Oxford University Press(1995)に記載されているように可変重鎖と軽鎖から構成されるもの)を、例えば、本明細書中で以下に記載されるアッセイを使用してスクリーニングすることによって得ることもできる。
【0075】
心臓血管に選択的にホーミングする抗体はまた、例えば、HLP/CRIP2、受容体クローン9、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、またはbc10融合タンパク質、あるいは、HLP/CRIP2、受容体クローン9、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、またはbc10の一部をコードする合成ペプチドを免疫原として使用して調製することもできる。当業者は、精製されたヒト、マウス、または他のHLP/CRIP2、受容体クローン9、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、またはbc10(これらは、例えば、配列番号24、26、28、32、および34として本明細書中で開示される核酸配列、ならびに、HLP/CRIP2、受容体クローン9、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、またはbc10の断片およびペプチド部分を使用して、組み換えによって生産することができる)は、心臓血管に選択的にホーミングする、抗HLP/CRIP2抗体、抗Sigirr/TIR8抗体、抗MpcII−3関連タンパク質抗体、または抗bc10抗体を惹起させるための免疫原として有用であり得る。免疫原として有用なHLP/CRIP2、受容体クローン9、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、またはbc10の断片としては、抗体を生産するように作用する断片が挙げられるが、これらに限定はされないことが理解される。当業者は、さらに、心臓ホーミング受容体の非免疫原性断片または合成ペプチドを、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のような担体分子に対してハプテンを結合させることによって免疫原性とすることができることをさらに理解する。加えて、種々の他の担体分子と、担体分子にハプテンを結合させるための方法は、例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988)に記載されているように当該分野で周知である。
【0076】
心臓血管に選択的にホーミングする分子の同定と、連結させられた治療薬を心臓血管に対して標的化させるそれらの能力に基づいて、本発明により、心臓血管に対して1つの部分を指向させるための方法と、心臓血管疾患を処置する方法が提供される。本発明により、例えば、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた1つの部分を含む結合体が被験体に投与され、それによってこの部分が心臓血管に対して指向させられることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供される。本発明の方法においては、ホーミング分子は、例えば、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができ、これは例えば、ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。1つの実施形態においては、1つの部分を心臓血管に対して指向させるための本発明の方法は、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に依存する。別の実施形態においては、本発明の方法は、アミノ酸配列CGRKSKTVC(配列番号2)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に依存する。本発明に有用なホーミングペプチドまたはペプチド模倣物は、状況によっては、立体構造によって拘束される場合がある。さらに、任意の種々の部分が本発明の方法に有用であり、これには、放射性核種および蛍光分子のような検出可能な部分が含まれるが、これらに限定はされない。本発明に有用な部分にはさらに、治療薬(例えば、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクター)が含まれるが、これに限定はされない。
【0077】
本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号27に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた1つの部分を含む結合体が被験体に投与され、それによってこの部分が心臓血管に対して指向させられることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供される。本発明の方法に有用なホーミング分子は、例えば、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができ、これは、ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。配列番号27に特異的に結合する任意の種々のホーミング分子が、心臓血管に対して1つの部分を指向させるために有用であり得ることが理解される。このようなホーミング分子としては、アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドおよびペプチド模倣物;ならびに、アミノ酸配列CPKRPR(配列番号6)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドおよびペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明に有用な部分としては、放射性核種および蛍光分子のような検出可能な部分、さらには、治療薬(例えば、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクター)が挙げられるが、これに限定はされない。
【0078】
さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてSigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた1つの部分を含む結合体が被験体に投与され、それによってこの部分が心臓血管に対して指向させられることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が、本明細書中で提供される。限定ではない例として、本発明の方法に有用なホーミング分子は、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができる。限定ではないさらなる例として、本発明の方法に有用なホーミング分子は、ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。
【0079】
Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合する任意の種々のホーミング分子が本発明の方法に有用であり、これには、アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物;アミノ酸配列CRNSWKPNC(配列番号8)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むペプチドおよびペプチド模倣物;ならびに、RGSSS(配列番号9)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むペプチドおよびペプチド模倣物が含まれるが、これらに限定はされない。このようなホーミングペプチドおよびペプチド模倣物は、直鎖状である場合も、環状である場合も、また、他の立体構造によって拘束されている場合もあるが、これらに限定はされない。さらに、任意の種々の部分が、Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に依存する本発明の方法に有用であり得る。このような部分としては、放射性核種および蛍光分子のような検出可能な部分、さらには、治療薬(例えば、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクター)が挙げられるが、これに限定はされない。
【0080】
本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号33に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた1つの部分を含む結合体が被験体に投与され、それによってこの部分が心臓血管に対して指向させられることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供される。限定ではない例として、本発明の方法は、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングするホーミング分子を用いて、または、ペプチドもしくはペプチド模倣物であるホーミング分子を用いて行うことができる。1つの実施形態においては、本発明の方法は、アミノ酸配列CRSTRANPC(配列番号11)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物を含む結合体を用いて行うことができる。このような方法においては、アミノ酸配列CRSTRANPC(配列番号11)を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物は、状況によっては、立体構造によって拘束される場合がある。任意の種々の部分が本発明の方法に有用であり得、これには、放射性核種および蛍光分子のような検出可能な部分、さらには、治療薬(例えば、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクター)が含まれるが、これに限定はされない。
【0081】
さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてbc10(配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた1つの部分を含む結合体が被験体に投与され、それによってこの部分が心臓血管に対して指向させられることによる、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法が提供される。本発明に有用なホーミング分子は、例えば、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができ、そしてこれは、ペプチドもしくはペプチド模倣物であり得る。bc10(配列番号35)に特異的に結合する任意の種々のホーミング分子が本発明の方法に有用であり得る。このようなホーミング分子としては、アミノ酸配列CPKTRRVPC(配列番号12)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物、ならびに、アミノ酸配列CSGMARTKC(配列番号13)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定はされない。このようなホーミングペプチドおよびペプチド模倣物は、直鎖状として、環状として、または、他の場合には立体構造によって拘束された構造として有用であり得る。bc10(配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子が組み込まれている結合体に依存する本発明の方法は、任意の種々の部分を用いて行うことができる。有用な部分としては、放射性核種および蛍光分子のような検出可能な部分、さらには、治療薬(例えば、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクター)が挙げられるが、これに限定はされない。
【0082】
本発明により、また、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管疾患を処置する方法が提供される。本発明のこのような方法においては、ホーミング分子は、例えば、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができ、そしてこれは、例えば、ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。HLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合する任意の種々のホーミング分子が本発明の方法に有用であり得る。このようなホーミング分子としては、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物、ならびに、アミノ酸配列CGRKSKTVC(配列番号2)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明に有用なホーミングペプチドまたはペプチド模倣物は、状況に応じて、立体構造によって拘束される場合がある。任意の種々の治療薬が、本発明の方法にしたがって心臓血管疾患を処置するために有用であり得る。治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、これに限定はされない。
【0083】
さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号27に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管疾患を処置する方法が、本明細書中で提供される。心臓血管疾患を処置するために有用なホーミング分子は、例えば、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができる。配列番号27に特異的に結合する任意の種々のホーミング分子が本発明の方法に有用であり得る。このようなホーミング分子としては、アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物、ならびに、アミノ酸配列CPKRPR(配列番号6)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が挙げられる。任意の種々の治療薬が、本発明の方法にしたがって心臓血管疾患を処置するために有用であり得る。このような治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、これに限定はされない。
【0084】
心臓血管に選択的にホーミングし、そしてSigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管疾患を処置する方法もまた、本明細書中で提供される。本発明の方法においては、ホーミング分子は、例えば、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができる。Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合する任意の種々のホーミング分子が本発明の方法に有用であり、これには、ホーミングペプチドおよびペプチド模倣物が含まれるが、これらに限定はされない。このようなホーミング分子は、例えば、アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を有しているホーミングペプチドまたはペプチド模倣物;アミノ酸配列CRNSWKPNC(配列番号8)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を有しているホーミングペプチドまたはペプチド模倣物;ならびに、アミノ酸配列RGSSS(配列番号9)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を有しているペプチドおよびペプチド模倣物を有しているホーミングペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。心臓血管疾患の処置のための本発明の方法に有用なホーミングペプチドおよびペプチド模倣物は、例えば、直鎖状である場合も、環状である場合も、または別の方法で立体構造によって拘束される場合もある。任意の種々の治療薬を、本発明の方法においてSigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結させることができる。このような治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、これに限定はされない。
【0085】
本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号33に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管疾患を処置する方法が提供される。限定ではない例として、このような方法は、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性でインビボで心臓にホーミングするホーミング分子を用いて、または、ペプチドもしくはペプチド模倣物であるホーミング分子を用いて、行うことができる。特定の実施形態においては、心臓血管疾患を処置するための本発明の方法は、アミノ酸配列CRSTRANPC(配列番号11)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物を使用して行われる。本発明の方法に有用であり得る治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、これに限定はされない。
【0086】
本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてマウスの膀胱ガン関連タンパク質ホモログ(bc10;配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む結合体が被験体に投与されることによる、被験体の心臓血管疾患を処置する方法が提供される。本発明に有用なホーミング分子としては、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができるホーミング分子(例えば、ホーミングペプチドおよびペプチド模倣物であるが、これらに限定はされない)が挙げられるが、これらに限定はされない。bc10(配列番号35)に特異的に結合する任意の種々のホーミング分子が本発明の方法に従って心臓血管疾患を処置するために有用であり得る。このようなホーミング分子としては、アミノ酸配列CPKTRRVPC(配列番号12)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドおよびペプチド模倣物、ならびに、アミノ酸配列CSGMARTKC(配列番号13)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドおよびペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定はされない。上記で議論されるように、このようなホーミングペプチドおよびペプチド模倣物は、状況に応じて、立体構造によって拘束される場合がある。本発明の方法での使用に適している治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、これに限定はされない。
【0087】
以下でさらに議論されるように、本発明の結合体および方法は、任意の種々の心臓病および心臓血管疾患の処置に有用であり得る。このような心臓病および心臓血管疾患としては、冠動脈疾患(CAD);アテローム性動脈硬化症;血栓症;再狭窄;結節性多発性動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、高安動脈炎、川崎病、およびリケッチア症のような自己免疫性およびウイルス性脈管炎を含む脈管炎;アテローム硬化性動脈瘤;心筋肥大;先天性心疾患(CHD);虚血性心疾患、および狭心症;後天性心臓弁膜症/心内膜疾患;心筋炎を含む原発性心筋症;不整脈;ならびに移植拒絶が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明の方法にしたがって処置される心臓病および心臓血管疾患としては、さらに、代謝性の心筋症および心筋疾患(myocardiomyopathies)(例えば、うっ血性心筋症、肥大型心筋症、および拘束型心筋症)、ならびに心臓移植が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明のホーミング分子に連結させられた治療薬は、心臓血管の中に高濃度で存在することができ、そしてさらに、心筋に蓄積することができる。したがって、本発明の結合体および方法は、これらの障害、および心臓血管または心筋の他の障害を処置するために有用である。
【0088】
新しい心臓血管の形成(血管形成)を刺激する治療薬を使用する血管形成をベースとする治療は、本発明の方法にしたがう心臓血管疾患の治療に有用であり得る。血管形成剤は、慢性心筋虚血および急性心筋梗塞を含む虚血性心疾患(これらに限定はされない)の処置に有用であり得る(Ware and Simons,Nature Med.3:158−164(1997))。機械による血管再開通術の候補とはならない重症の血管系の疾患を有している多くの患者には、血管形成をベースとする治療が有効であり得、これには、バイパスするには小さすぎる血管の閉塞を有している患者、管路がない患者、および合併症が原因で外科手術の候補とはならない患者が含まれる。米国およびEUの3億1400万の症例について、血管形成をベースとする治療が有効であり得ると計算されている(Miller and Abrams,Gen.Engin.News 18:1(1988))。したがって、心臓血管に選択的にホーミングする分子を血管形成剤に連結させることができ、これは患者に投与され、それによって血管形成が刺激され、心臓血管疾患が緩和される。
【0089】
本発明に有用な血管形成剤はまた、自然界に存在している血管由来増殖因子またはサイトカイン(これは、内皮細胞の増殖または移動を刺激することにより血管形成を誘導または促進する)でもあり得る。本発明に有用な血管形成剤には、血管内皮増殖因子(VEGF)のイソ型、例えば、VEGF−A(これには、VEGF121およびVEGF165が含まれる)および複数の形態の線維芽細胞増殖因子(FGF−1およびFGF−2の形態が含まれるが、これらに限定はされない)が含まれるが、これらに限定はされない(Ruel and Sellke,Sem.Thor.Cardiovasc.Surg.15:222−235(2003)。以下でさらに議論されるように、本発明の血管形成剤および他の治療薬は、タンパク質治療薬として、または遺伝子治療用ベクターを介する核酸治療薬として送達することができる。
【0090】
VEGF−A(これは、血管透過因子(VPF)としてもさらに知られている)もまた、本発明に有用であり得る(Dvorak et al.,Am.J.Pathol.146:1029−1039(1995);Thomas et al.,J.Biol.Chem.271:603−606(1996);Olofsson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:2576−2581(1996);Joukov et al.,EMBO J.15:290−298(1996);およびHarada et al.,Am.J.Physiol.270:H1791−1802(1996))。他のVEGF(B、C、およびD)は、内皮細胞の透過性に影響を及ぼすことのない血管形成活性を有している。VEGFをコードするプラスミドDNAの投与により、ステント移植後の血栓形成と内膜肥厚の有意な減少が生じることが示されている(J.Am.Coll.Cardiol.29:1371−1379(1997))。本発明に有用な血管形成剤としては、Genentechによって開発された、rhVEGFと命名されているVEGFの組み換え体である165kDAのイソ型;VEGFの121アミノ酸のイソ型をコードする核酸分子(BioBypass(登録商標);GenVec/Parke Davis);ならびに、VEGF−B、VEGF−C、およびVEGF−Dをコードする核酸が挙げられるが、これらに限定はされない。例えば、Miller and Abrams,前出、1998を参照のこと。
【0091】
本発明に有用な血管形成剤はまた、FCF−1(酸性)、FGF−2(塩基性)、FGF−4、またはFGF−5のような、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーのメンバーでもあり得る(Slavin et al.,Cell Biol.Int.19:431−444(1995);Folkman and Shing,J.Biol.Chem.267:10931−10934(1992))。本発明の結合体または方法において心臓血管に選択的のホーミングする分子に連結させられるFGFは、例えば、FIBLAST(商標)(トラフェルミン)(Scios,Inc.(Mountain View,CA)およびWyeth Ayerest Laboratories(Radnor,PA)よって開発されたFGF−2の組み換え体形態)、またはGENERX(登録商標)、またはFGF−4をコードするアデノウイルス遺伝子治療ベクター(Collateral Therapeutics(San Diego,CA)およびSchering AG(Miller and Abrams,前出,1998)によって開発された)であり得る。
【0092】
本発明に有用な血管形成剤はまた、アンギオポエチン−1(内皮細胞特異的Tie2レセプターチロシンキナーゼを通じてシグナルを伝達する血管形成因子(Davis et al.,Cell 87:1161−1169(1996))でもあり得る。VEGFと同様に、アンギオポエチン−1は正常な血管の発達に不可欠であり、その過剰発現によって血管形成の促進を導く(Suri et al.,Cell 87:1171−1180(1996))。
【0093】
本発明の結合体または方法に有用な治療薬はまた、血液因子(主に、細胞性の成分を取り込んだ血小板および繊維素)の凝集である血栓の形成を妨げる抗血栓剤でもあり得る。血栓の形成は、粥状斑の存在によって刺激され、急性の虚血性心疾患の症状の発現の主な原因である。本発明に有用な抗血栓剤は、IIb/IIIaインテグリンの阻害因子(Coller,Circulation 92:2373(1995));組織因子阻害因子;プラスミノーゲン活性化因子または抗血栓剤であり得るが、これに限定はされない。
【0094】
免疫抑制剤もまた、例えば、心臓移植のレシピエントを処置するための、本発明の結合体および方法に有用であり得る。免疫抑制剤は長期にわたる予防的処置に有用であり得ると理解される。これは、臓器移植のレシピエントについて、通常、彼らの寿命を全うするために、または移植拒絶と一致する1つ以上の症状を示す患者を処置するために、または重篤な拒絶から救うための薬剤としての使用に必要である。本発明の結合体および方法に有用な免疫抑制剤としては、ステロイド(コルチコステロイドおよびプレドニソロンが含まれる);カルシニューリン阻害因子(例えば、Prograf、Neoral(商標)、ラパミューン(Rapamune)、シクロスポリンA、および他のシクロスポリン);抗増殖因子(Cellcept、Imuran(アザチオプリン)、およびCertican(登録商標)(エベロリムス)が含まれる);ならびに治療用モノクローナル抗体(例えば、OKT3、ATGAM、サイモグロブリン、および抗胸腺細胞グロブリン、ジクルジマブ(dicluzimab)、およびバシリキシマブ(basiliximab)が含まれる)が挙げられるが、これらに限定はされない。これらおよび他の免疫抑制剤は本発明の結合体および方法においては、単独で、あるいは、別の免疫抑制剤または他の治療薬と組み合わせて有用であり得る。
【0095】
抗炎症薬(これは炎症の症状の1つ以上を軽減する分子である)もまた、本発明の結合体および方法に有用である。このような抗炎症薬としては、ステロイド(コルチコステロイドおよび免疫グロブリンが含まれる)、ならびにシクロオキシゲナーゼ阻害因子および他の非ステロイド系抗炎症薬が挙げられるが、これらに限定はされない。1つの実施形態においては、抗炎症薬は、AGI−1067、コレステロールを低下させる抗炎症薬(AtheroGenics;Atlanta,AL)である。
【0096】
抗不整脈薬もまた、例えば、心臓の不整脈(これは心臓の正常な周期的であり整然とした電気機械的な活動が破壊される障害である)を処置するための、本発明の結合体および方法に有用であり得る。したがって、本発明の結合体または方法においては、治療薬は、例えば、Vukmir,Am.J.Emer.Med.13:459−470(1995);Grant,PACE 20:432−444(1997);Mann.Curr.Med.Res.Opin.13:325−343(1995);またはLipka et al.,Am.Heart J.130:632−640(1995)に記載されている局所麻酔薬(クラスI剤(class I agent)、交感神経アンタゴニスト(クラスII剤)、抗細動薬(クラスIII剤)、カルシウムチャンネル薬(クラスIV剤)、または陰イオンアンタゴニスト(クラスV剤)のような抗不整脈薬であり得る。速いナトリウムチャンネルアンタゴニストとして作用する局所麻酔剤(例えば、抗不整脈薬)である抗不整脈薬は、プロカインアミド、キニジン、またはジソピラミド;リドカイン、フェニトイン、トカイニド(tocainide)、またはメキシレチン(mexiletine);あるいは、エンカイニド(encainide);フレカイニド(flecainide);ロルカイニド(lorcainide);プロパフェノン(propafenon)(III)、またはモリシジン(moricizine)(Vukmir,前出、1995)であり得るが、これらに限定はされない。抗不整脈薬はまた、交感神経アンタゴニスト(β−アドレナリン作用性アンタゴニスト)(例えば、プロプラノロール、エソモロール、メトプロロール、アテネラール、アセブトロールであるが、限定はされない)、または長い作用電位期間(APD)によって作用する抗細動薬(例えば、ブレチリウム、アミオダロン、ソタロール(II)、またはN−アセチルプロカインアミド)でもあり得る(Vukmir,前出,1995)。本発明の結合体または方法において治療薬として有用であり得るさらなる抗不整脈薬としては、カルシウムチャンネル薬(例えば、ベラパミル、ジルチアゼム、およびベプリジル)および陰イオンアンタゴニスト(例えば、アリニジン(Vukmir,前出,1995)が挙げられるが、これらに限定はされない。当業者は、当該分野で公知であるこれらおよび他の抗不整脈薬が、本発明の結合体または方法において心臓の不整脈を処置するために有用な治療薬であり得ることを理解する。
【0097】
カルシウムチャンネルブロッカー(CBB)としても知られているカルシウムアンタゴニストは、多くの心臓血管疾患に有用な作用を有しており、平滑筋細胞の増殖および移動の強力な阻害因子として作用する。これらの治療薬をアテローム性動脈硬化症および他の心臓血管疾患の処置に有用にするさらなる特性としては、血管壁へのカルシウムの流入を阻害するそれらの能力;細胞外マトリックスの合成を減少させるそれらの能力;低密度リポタンパク質の取り込みおよび崩壊を促進するそれらの能力;酸化による修飾からリポタンパク質を保護するそれらの能力;内皮細胞機能を維持するそれらの能力;ならびに、血小板の活性化を阻害するそれらの能力が挙げられる。カルシウムアンタゴニストのうち、アムロジピン(amlodipine)は、血管選択性を有している治療薬である(Marche et al.,Int.J.Cardiol.62(補遣):S17−S22(1997);Schachter,Int.J.Cardiol.62(補遣):S85−S90(1997))。本発明において有用な治療薬として作用することができる別のカルシウムアンタゴニストとしては、ニカルジピン、ニフェジピン、プロパノロール、二硝酸イソソルバイド、ジルチアゼム、およびイスラジピン(Nayler(編)Calcium Antagonists、157−260頁 London:Academic Press(1988);Schachter,Int.J.Cardiol.62(補遣):S9−S15(1997))が挙げられるが、これらに限定はされない。cAMPまたはcGMP濃度を上昇させる治療薬は、血管平滑筋細胞の応答性または増殖を低下させ、そして心臓血管に選択的にホーミングする分子に連結させられた場合に有用であり得る。このような治療薬としては、cAMPホスホジエステラーゼ阻害因子シロスタソール(cilostasol)および内皮細胞由来酸化窒素(NO)またはNOを生じる血管拡張剤が挙げられるが、なおもこれらに限定はされない。例えば、Takahashi et al.,J.Cardiovas.Pharm.20:900−906(1992);およびCornwell et al.,Am.J.Physiol.267:C1405−1413(1994)を参照のこと。
【0098】
本発明に有用な治療薬はまた、抗ウイルス剤または抗生物質である場合もある。多数の実験によって、心内膜炎、アテローム性動脈硬化症、および再狭窄の、特定の細菌感染およびウイルス感染(特に、サイトメガロウイルス、および肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae))との関係が報告されている(Cheng and Rivera,Annals of Pharmacotherapy 32:1310−1316(1998))。心臓移植患者またはアテローム性動脈硬化症を発症するリスクが高い他の患者における予防的使用のためには、患者には、ガンシクロビルのような抗ウイルス剤に連結させられた、心臓血管に選択的にホーミングする分子を含む結合体が投与され得る。本発明の結合体または方法に含めることができるさらなる抗ウイルス剤としては、リバビリン(ビラゾール、1−β−D−リボフラノシル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシミド)および組み換え体であるヒト白血球IFN−α A/D(Matsumori et al.,Circulation 71:834−839(1985);Matsumori et al.,J.Am.Coll.Cardiol.9:1320−1325(1987))が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0099】
これらの結合体および方法は、アテローム性動脈硬化症(これは、その結果と組み合わせて、西欧諸国において疾患および死亡の最も一般的であり重要な原因を構成している)を処置するためにも有用であり得る。他の閉塞性の血管疾患と同様に、アテローム性動脈硬化症は、脂質、炎症性細胞、血管平滑筋細胞、および細胞外マトリックスタンパク質の、内皮内層と中間層との間の血管内膜空間の中での異常な蓄積(プラーク形成)を特徴とする。特に、内皮細胞の損傷によっては、低密度リポタンパク質(LDL)の内膜への侵入が可能となる。脂質は内膜中にあるマクロファージによって取り込まれ、酸化型LDを取り込む受容体非依存性の経路によって、内膜マクロファージの中に脂質が過剰に蓄積する。マクロファージは内膜の中に脂質を放出し、そして増殖を刺激するサイトカインを分泌する。筋繊維芽細胞の特徴を有している内膜細胞は、コラーゲンを分泌し、これによって、場合によってはプラークの繊維化が生じる。病変が発達するにともなって、中膜の圧迫萎縮が生じ、弾性板が壊れる。さらなるコラーゲンの蓄積によっては、プラークに対して密度の高い繊維性被膜が形成され(繊維性脂質プラーク)、これには、遊離の脂質、さらには、マクロファージ中の脂質が含まれる。プラークの壊れやすい内皮細胞は多くの場合には潰瘍を生じ、これにより、血小板の凝集、および血栓症が生じる。血小板由来増殖因子のような増殖因子はさらに、細胞増殖を刺激することによってプラークを生じさせる。
【0100】
血管内膜の平滑筋細胞の増殖促進により、筋内膜の過形成(myointimal hyperplasia)および血管狭窄が生じる。内膜新生において役割を担っている異常な細胞増殖は、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子−β1(TGF−β1)、またはアンギオテンシンIIのような特異的な増殖因子によって生じ得る(Ross,Annu.Rev.Physiol.57:791(1995);Schwartz et al.,Circ.Res.77:445(1995);およびGibbons and Dzau,New Eng.J.Med.330:1431(1994))。
【0101】
心臓血管疾患(例えば、血管形成後の内膜過形成)を処置するための本発明の結合体および方法に有用な治療薬は、新内膜平滑筋細胞の増殖を制限することによって血管疾患を軽減または予防する、増殖阻害因子であり得る。例えば、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)遺伝子および全身性ガンシクロビルを、増殖中の細胞を死滅させ、内膜新生を制限するために使用することができる。1つの研究においては、ブタの大腿動脈が、tkをコードするアデノウイルスベクターに感染させられ、そして、ガンシクロビルに暴露された後には、バルーン損傷後に見られる新内膜の肥厚が、50〜87%減少した(Ohno et al.,Science 265:781−784(1994);Guzman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:10732−10736(1994);Chang et al.,Mol.Med.1:172−181(1995);およびSimari et al.,Circulation 92:1−501(1995)もまた参照のこと)。したがって、本発明に有用な治療薬は細胞増殖抑制剤であり得、例えば、ガンシクロビルと組み合わせたチミジンキナーゼであり得るが、これに限定はされない。
【0102】
内膜新生を制限するためのさらなる治療薬もまた当該分野で公知であり、これには、細胞周期タンパク質およびガン原遺伝子を阻害する遺伝子が含まれる(Simari and Nabel,Semin.Intervent.Cardiol.1:77−83(1996))。このような治療薬としては、腫瘍抑制遺伝子(例えば、p53および網膜芽細胞腫)、ならびに、bcl−xをコードする遺伝子、rasおよび一酸化窒素合成酵素の変異体形態が挙げられるが、これらに限定はされない。限定ではない例として、網膜芽細胞腫遺伝子産物(Rb)は、多くの哺乳動物細胞型において細胞増殖を阻害し、そして活性のあるRbをコードする組み換え体アデノウイルスの損傷を受けたラットの頚動脈およびブタの腸骨動脈への導入によっては、内膜新生が減少する(Chang et al.,Science 267:518−522(1994))。p53の遺伝子導入も、同様に、血管平滑筋細胞の増殖を阻害することが示されている(Yonemitsu et al.,Circ.Res.82:147−156(1998);Muller,Prog.Cardiovas.Dis.40:117−128(1997)もまた参照のこと)。ドミナントネガティブであるras変異体の直接の遺伝子導入によってもまた、ラットの頚動脈およびブタの腸骨動脈モデルにおいては、バルーン損傷後の内膜形成が阻害された(Chang et al.,J.Clin.Invest.96:2260−2268(1995))。ラットの頚動脈損傷モデルにおいては、一酸化窒素合成酵素の遺伝子導入によってもまた、内膜形成が制限された(von der Leyen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:1137−1141(1995))。当業者は、細胞増殖抑制物質もまた、本発明の結合体または方法において治療薬として有用であり得ることを理解する。
【0103】
おとりオリゴヌクレオチド、または細胞性の標的(例えば、E2Fもしくは種々のサイクリンの1つ)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドもまた、本発明の方法において新内膜の増殖を制限するために有用な治療薬であり得る(Morishita et al.,Circ.Res.82:1023−1028(1998);およびMann et al.,Circulation 96:1−4(1997))。増殖停止ホメオボックス遺伝子であるgax(これは、インビボでの血管の損傷の後に血管平滑筋細胞において迅速にダウンレギュレートされる)もまた、内膜過形成を阻害するために有用な治療薬であり得る(Smith et al.,Genes Dev.11:1674−1689(1997);およびSkopicki et al.,Circ.Res.80:452−462(1997))。本発明の結合体または方法において内膜過形成を制限することに有用であり得るさらなる治療薬もまた、当該分野で公知である(例えば、Laitinen and Yla−Herttuala,Current Opin.Lipid.9:465−469(1998)を参照のこと)。
【0104】
本発明の結合体または方法はまた、その後に血管形成術(バルーンが閉塞した血管に挿入され、その後、狭窄の領域を拡張させるために膨らませられる手順)が続けられ得る、内腔の直径の再度の狭窄である再狭窄を処置するためにも有用であり得る。再狭窄は、3ヶ月から6ヶ月の時間的経過で約30から50%の症例において生じ、これには、新内膜内の細胞性過形成、血管壁の中の血栓の組織、および血管の直径全体の収縮が含まれる。血管形成術によっては、通常は血管平滑筋の移動および増殖のパラクリン阻害因子を生じる、内皮細胞の血管が露出させられる。
【0105】
一酸化窒素の欠乏は、十分に機能しない血管緊張低下および接着性の増大に関係しており、そのことによって血管組織においてアテローム性動脈硬化症の病変が形成されやすくなる(Gibbons and Dzau,Science 272:689−693(1996))。本発明の結合体および方法に有用な治療薬としては、内皮細胞型の一酸化窒素(NO)合成酵素剤(これは、一酸化窒素合成酵素活性を高める物質である)が挙げられるが、これに限定はされない。一酸化窒素(NO)活性を高めるこのような治療薬としては、一酸化窒素合成酵素遺伝子、および一酸化窒素ドナー薬が挙げられるが、これらに限定はされない。内膜新生のラットモデルにおけるバルーン損傷後の血管への一酸化窒素合成酵素遺伝子のトランスフェクションによっては、一酸化窒素の生成と、細胞増殖、移動、内膜新生に必要なマトリックスの生産の実質的な阻害が生じた(von der Leyen et al.,前出,1995)。臨床試験もまた、一酸化窒素ドナー薬を、一酸化窒素活性を増強するため、および再狭窄を処置するために使用できることを示している(Ferguson,Circulation 90:4(1994))。
【0106】
本発明の結合体および方法はまた、鬱血性心不全(CHF)を処置するために使用することもでき、これは、米国だけでもおよそ500万人が罹患している障害である。鬱血性心不全は、心臓がアテローム性動脈硬化症または他の症状(例えば、高血圧、心筋梗塞、または心臓弁膜症)によって損傷した場合に生じる。心不全の心臓は十分な機能を果たすことができず、体液貯留、息切れ、および疲労が生じる。したがって、鬱血性心不全の処置については、心臓血管に選択的にホーミングする分子を、治療薬(例えば、組み換え体である可溶性TNFおとり受容体、Embrel(登録商標)(Immunex Corp.;Seattle,WA)のようなTNF阻害因子であるがこれに限定はされない)に連結させることができる。
【0107】
エンドセリンは血管を収縮させるポリペプチドであり、また、鬱血性心不全において増加するポリペプチドでもある。したがって、心臓血管選択的にホーミングする本発明の分子を、エンドセリン阻害因子(例えば、低分子薬剤、TBC11251)である治療薬に連結させることができる。この薬剤(これは、Texas Biotechnology Corp.,によって開発された)は、エンドセリンA受容体の結合を阻害し、そして平滑筋細胞の弛緩を促進する。TBC11251は、中度から重症の鬱血性心不全を有している患者において有意な改善をもたらす(Potera,Gen.Engin.News 18:12(1998))。
【0108】
本発明の結合体または方法において使用される治療薬はまた、遺伝性の心疾患のための置換遺伝子治療ベクターでもあり得る。このような遺伝性疾患は、例えば、心筋の遺伝性疾患であり得、例えば、X染色体に連鎖した拡張型心筋症、肥大型心筋症、QT延長症候群、または、それについての疾患を引き起こす変異が同定されている別の疾患であり得る(Bowles et al.,Cardiovas.Res.35:422−430(1997))。1つの実施形態においては、本発明の結合体または方法は、所望される置換遺伝子産物をコードする核酸分子を含むアデノウイルス遺伝子治療用ベクターに連結させられた、心臓血管に選択的にホーミングする分子を用いて行われる。
【0109】
治療薬は、例えば、Harada et al.,J.Clin.Invest.94:623−630(1994)に記載されているタンパク質として送達され得る。マイクロスフェア(例えば、それに対してbFGFのような血管新生因子がSO残基を介して可逆的に吸着させられている7μmの直径のマイクロスフェア)もまた、心臓血管疾患の処置のためのマイクロスフェアを選択的に送達するために、心臓血管に選択的にホーミングする分子に連結させることができる。このようなマイクロスフェアは末梢の微小循環に留まり、全体的な流れを妨害することはなく、そして1週間かけてゆっくりと放出される(Arras et al.,Nature Biotech.16:159−162(1998);Tice and Staas,Nature Biotech.16:134(1998)もまた参照のこと)。生分解性マイクロスフェアの単回注射は、血管形成因子または他の治療薬を送達するために使用することができる。これらは、注射後1ヶ月または数ヶ月かけて放出され、薬剤の放出速度および期間は、ポリマーのタイプおよびマイクロスフェアの大きさのような要因によって制御される(Maulding,Controlled Release 6:167−176(1987);Tice and Tabibi,315−339頁 Kydonieus(編),Treatise on Controlled Drug Delivery,Marcel Dekker,New York(1992))。遺伝子治療用ベクターはまた、血管形成因子または他の治療薬をコードする核酸分子を送達するために、心臓血管に選択的にホーミングするホーミング分子に連結させることができる(例えば、Isner et al.,Lancet 348:370−374(1996);Giordano et al.,Nature Med.2:534−539(1996)を参照のこと)。
【0110】
本発明の方法において心臓病または心臓血管疾患を処置するための種々の適切な遺伝子治療方法は、当該分野で公知である(例えば、Li et al.,Cardiol.41:39−46(1997)を参照のこと)。限定ではない例として、ウイルスベクター(レトロウイルスベクターおよびアデノウイルスベクターが含まれる)は、心臓血管に選択的にホーミングする分子に連結させられた場合に、遺伝子の送達に有用であり得る。このような遺伝子治療用ベクターには、治療薬(例えば、VEGFまたはFGFのような血管形成因子であるが、これらに限定はされない)をコードする核酸分子が含まれ得る。VEGF、FGF、および他の血管形成因子の形態を用いる遺伝子治療は、例えば、Sylven,Drug of Today 38:819−827(2002);Symes,J.Card.Surg.15:283−290(2000);およびGrines et al.,Am.J.Cardiol.92(補遣):24N−31N(2003)に記載されているように、当該分野では周知である。Ad5FGF−4と記載される、複製不能である血清型5アデノウイルス(ここでは、E1AおよびE1B遺伝子が、サイトメガロウイルスプロモーターの制御下にあるヒト線維芽細胞増殖因子−4(FGF−4)遺伝子によって置き換えられている)を用いる血管形成遺伝子治療は、慢性安定狭心症のヒトにおいて、プラセボを対照とした試験において有用な効果を有していた(Grines et al.,前出,2003)。Simari and Nabel,前出,1996;およびIndolfi and Chiariello,Cardiologia 43:365−373(1998)もまた参照のこと。したがって、1つの実施形態においては、本発明の方法は、治療用遺伝子産物を発現する複製欠損である組み換え体アデノウイルスベクターを利用する。
【0111】
上記を考慮すると、種々の治療薬が本発明の方法にしたがう心臓血管疾患の処置に有用であることが理解される。有用な治療薬としては、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターが挙げられるが、なおもこれらに限定はされない。当業者は、これら、さらには別の公知の、もしくは他の治療薬が、本発明の結合体または方法に組み入れられた場合に、心臓血管に対して選択的に指向させられ得ることを理解する。さらに、医薬心臓病学(medicinal cardiology)の分野の当業者は、これら、および他の治療薬を、本発明の結合体および方法において別々に使用することができ、また、一緒に使用することもできることを理解する。さらに、本発明の結合体には、1つ以上のこのような治療薬が含まれ得、そしてさらに別の成分も、状況に応じて、本発明の結合体に含まれ得ることが理解される。一例として、いくつかの場合には、ホーミング分子と治療薬の間にオリゴペプチドスペーサーを利用することが所望され得る。例えば、Fitzpatrick and Garnett,Anticancer Drug Design 10:1−9(1995)を参照のこと。
【0112】
種々の投与経路が本発明の方法に有用であることがさらに理解される。このような経路には、全身投与と局所投与が含まれ、経口投与、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉注射、皮下注射、経皮拡散または電気泳動法、局所注射、および徐放送達デバイス(これには、生体内分解性またはレザーバーをベースとするインプラントのような局所埋め込み型徐放デバイスが含まれる)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0113】
本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてHLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた検出可能な部分を含む結合体が被験体に投与され、そして結合体が検出されることによる、被験体の心臓血管を画像化する方法が提供される。心臓血管を画像化するための本発明の方法においては、ホーミング分子は、例えば、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができ、そしてこれは、例えば、ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。HLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合する種々のホーミング分子が、本発明の方法にしたがって心臓血管を画像化するために有用であり得る。このようなホーミング分子としては、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物、ならびに、アミノ酸配列CGRKSKTVC(配列番号2)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定はされない。様々な検出可能な部分が、本発明の上記の方法に有用であり、これには例えば、放射性核種および常磁性イオンが含まれる。
【0114】
さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号27に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた検出可能な部分を含む結合体が被験体に投与され、そして結合体が検出されることによる、被験体の心臓血管を画像化する方法が、本明細書中で提供される。心臓血管を画像化するための本発明の方法においては、ホーミング分子は、例えば、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができる。配列番号27に特異的に結合する種々のホーミング分子が、本発明の方法にしたがって心臓血管を画像化するために有用であり得る。このようなホーミング分子としては、アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物、あるいは、アミノ酸配列CPKRPR(配列番号6)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物のような、ホーミングペプチドあるいはペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定はされない。様々な検出可能な部分が、心臓血管の画像化に有用であり、これには例えば、放射性核種および常磁性イオンが含まれる。
【0115】
本発明により、さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてSigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた検出可能な部分を含む結合体が被験体に投与され、そして結合体が検出されることによる、被験体の心臓血管を画像化する方法が提供される。本発明のこのような画像化方法においては、ホーミング分子は、例えば、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができる。さらに、Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合する任意の種々のホーミング分子が、本発明の方法にしたがって心臓血管を画像化するために有用であり得る。このようなホーミング分子としては、アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を有しているホーミングペプチドまたはペプチド模倣物;アミノ酸配列CRNSWKPNC(配列番号8)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を有しているペプチドおよびペプチド模倣物;ならびに、アミノ酸配列RGSSS(配列番号9)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を有しているホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明の画像化方法に有用なホーミングペプチドおよびペプチド模倣物は、例えば、直鎖状である場合も、環状である場合も、また、別の方法で立体構造によって拘束されている場合もあることが認識される。画像化に有用な検出可能な部分としては、放射性核種および常磁性イオンが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0116】
さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして配列番号33に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた検出可能な部分を含む結合体が被験体に投与され、そして結合体が検出されることによる、被験体の心臓血管を画像化する方法が、本明細書中で提供される。限定ではない例として、本発明の画像化方法は、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングするホーミング分子を用いて、または、ペプチドもしくはペプチド模倣物であるホーミング分子を用いて行うことができる。本発明の画像化方法に有用なホーミング分子としては、アミノ酸配列CRSTRANPC(配列番号11)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を有しているもののようなホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定はされない。心臓血管の画像化のための本発明の方法は、任意の種々の検出可能な部分を用いて行うことができ、これには例えば、放射性核種および常磁性イオンが含まれる。
【0117】
また、心臓血管に選択的にホーミングし、そしてマウスの膀胱ガン関連タンパク質ホモログ(bc10;配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた検出可能な部分を含む結合体が被験体に投与され、そして結合体が検出されることによる、被験体の心臓血管を画像化する方法もまた、本明細書中で提供される。本発明の方法にしたがう画像化に有用なホーミング分子としては、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性で、インビボで心臓にホーミングすることができるものが挙げられるが、これに限定はされない。bc10(配列番号35)に特異的に結合する任意の種々のホーミング分子が、本発明の方法にしたがって心臓血管を画像化するために有用であり得、これには、アミノ酸配列CPKTRRVPC(配列番号12)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物、あるいは、アミノ酸配列CSGMARTKC(配列番号13)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が含まれる。本発明に有用なホーミングペプチドおよびペプチド模倣物は、直鎖状である場合も、環状である場合も、また、別の方法で立体構造によって拘束された形態である場合もある。上記のように、画像化に有用な検出可能な部分としては、放射性核種および常磁性イオンが挙げられるが、なおもこれらに限定はされない。
【0118】
本発明の画像化方法は検出可能な部分を利用する。本明細書中で使用される場合は、用語「検出可能な部分」は、インビボで投与することができ、その後、検出することができる任意の分子を意味する。本発明の結合体および画像化方法に有用な例示的な検出可能な部分としては、常磁性ビーズ、放射性核種、および蛍光分子が挙げられる。例示的な放射性核種としては、インジウム−111、テクネチウム−99、炭素−11、および炭素−13が挙げられる。蛍光分子としては、フルオレセイン、アロフィコシアニン、フィコエリスリン、ローダミン、およびテキサスレッドが挙げられるが、これらに限定はされない。検出可能な部分がγ線を放射する放射性核種(例えば、インジウム−113、インジウム−115、またはテクネチウム−99)である場合は、結合体は、被験体への投与後に固体シンチレーション検出器を使用して視覚化することができる。
【0119】
以下による、心臓血管に対して選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法もまた、本明細書中で提供される:HLP/CRIP2またはその断片を、HLP/CRIP2に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;特異的結合をアッセイする工程;およびライブラリーから1つ以上のHLP/CRIP2結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、HLP/CRIP2に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程。細胞表面上にHLP/CRIP2を発現する細胞、さらには、精製されたHLP/CRIP2またはその断片は、本発明のスクリーニング方法に有用であり得る。限定ではない例として、自然界に存在している、組み換え体である、ヒト、マウス(配列番号25)、および他の、HLP/CRIP2の変異体およびホモログ、ならびにそれらの断片(例えば、HLP/CRIP2のCRPPR(配列番号1)またはCGRKSKTVC(配列番号2)結合断片であるが、これらに限定はされない)が、それらが精製されているか、または細胞表面上に発現されるかにはかかわらず、本発明のスクリーニング方法に有用であり得る。本発明の方法にしたがってスクリーニングされ得るライブラリーとしては、ペプチドおよびペプチド模倣物のライブラリー、低分子のライブラリー、ならびに、抗体およびその抗原結合断片のライブラリー(これには、合成抗体、単鎖抗体、または他の抗体ライブラリーが含まれる)が挙げられるが、これらに限定はされない。1つの実施形態においては、本発明の方法には、静脈内注射後に、ライブラリーの1つ以上の分離された分子の局在化をアッセイする工程がさらに含まれる。HLP/CRIP2の断片が全長のHLP/CRIP2の代わりに利用される場合は、このような断片は、配列番号1または配列番号2に特異的に結合する断片であり得るが、これらに限定はされないことが理解される。
【0120】
任意の種々のHLP/CRIP2ポリペプチドが、心臓血管に選択的にホーミングする分子を単離するための本発明の方法に有用であり得る。本明細書中で使用される場合は、用語「HLP/CRIP2」は、心臓血管において選択的に発現され、そして配列番号25と少なくとも60%のアミノ酸同一性を有しているポリペプチドを意味する。特定の実施形態においては、HLP/CRIP2は、配列番号25と、少なくとも70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する。
【0121】
本発明により、さらに、以下による、心臓血管に対して選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法が提供される:受容体クローン9またはその断片を、受容体クローン9に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;特異的結合をアッセイする工程;およびライブラリーから1つ以上の受容体クローン9結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、受容体クローン9に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程。本発明の方法は、細胞表面上に受容体クローン9を発現する細胞、さらには、精製された受容体クローン9またはその断片を用いて行われ得る。限定ではない例として、自然界に存在している、組み換え体である、ヒト、マウス(配列番号27)、および他の、マウスの受容体クローン9(配列番号27)の変異体およびホモログおよびそれらの断片(例えば、受容体クローン9の配列番号5および配列番号6結合断片であるが、これらに限定はされない)が、それらが精製されているか、または細胞表面上に発現されるかにはかかわらず、本発明のスクリーニング方法に有用であり得る。任意の種々のライブラリーが本発明の方法にしたがってスクリーニングされ得、これには、上記のライブラリーが含まれるが、これらに限定はされない。
【0122】
本明細書中で使用される場合は、用語「受容体クローン9」は、心臓血管において選択的に発現され、そして配列番号27と少なくとも60%のアミノ酸同一性を有しているポリペプチドを意味する。特定の実施形態においては、受容体クローン9は、配列番号27と、少なくとも70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する。
【0123】
本発明により、また、以下による、心臓血管に対して選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法が提供される:Sigirr/TIR8またはその断片を、Sigirr/TIR8に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;特異的結合をアッセイする工程;およびライブラリーから1つ以上のSigirr/TIR8結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、Sigirr/TIR8に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程。細胞表面上にSigirr/TIR8を発現する細胞、さらには、精製されたSigirr/TIR8またはその断片が、本発明のスクリーニング方法に有用であり得る。限定ではない例として、自然界に存在している、組み換え体である、ヒト、マウス(配列番号29)、および他の、Sigirr/TIR8の変異体および種ホモログ、ならびに、配列番号7または配列番号8結合断片(これらに限定はされない)のようなその断片が、それらが精製されているか、または細胞表面上に発現されるかにはかかわらず、本発明のスクリーニング方法に有用であり得る。さらに、上記に示されるように、任意の種々のライブラリーが本発明のスクリーニング方法に有用であり得ることが理解される。
【0124】
本明細書中で使用される場合は、用語「Sigirr/TIR8」は、心臓血管において選択的に発現され、そして配列番号29と少なくとも60%のアミノ酸同一性を有しているポリペプチドを意味する。特定の実施形態においては、Sigirr/TIR8は、配列番号29と、少なくとも70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する。
【0125】
さらに、以下による、心臓血管に対して選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法が、本明細書中で提供される:MpcII−3関連タンパク質またはその断片を、MpcII−3関連タンパク質に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;特異的結合をアッセイする工程;およびライブラリーから1つ以上のMpcII−3関連タンパク質結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、MpcII−3関連タンパク質に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程。本発明のスクリーニング方法は、例えば、細胞表面上にMpcII−3関連タンパク質を発現する細胞を用いて、さらには、精製されたMpcII−3関連タンパク質またはその断片を用いて行われ得る。限定ではない例として、自然界に存在している、組み換え体である、ヒト、マウス(配列番号33)、および他の、MpcII−3関連タンパク質の変異体および種ホモログ、ならびに、配列番号33の断片、またはヒトもしくは他のMpcII−3関連タンパク質(CRSTRANPC(配列番号11)結合断片が含まれるが、これに限定はされない)が、それらが精製されているか、または細胞表面上に発現されるかにはかかわらず、本発明のスクリーニング方法に有用であり得る。本発明の方法は、任意の種々のライブラリーをスクリーニングするために使用することができ、これは、例えば、ペプチドおよびペプチド模倣物のライブラリー、低分子のライブラリー、ならびに、抗体およびその抗原結合断片のライブラリー(これには、合成抗体、単鎖抗体、または他の抗体ライブラリーが含まれる)であるが、これらに限定はされない。
【0126】
本明細書中で使用される場合は、用語「MpcII−3関連タンパク質」は、心臓血管において選択的に発現され、そして配列番号33と少なくとも60%のアミノ酸同一性を有しているポリペプチドを意味する。特定の実施形態においては、MpcII−3関連タンパク質は、配列番号33と、少なくとも70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する。
【0127】
本発明により、さらに、以下による、心臓血管に対して選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法が提供される:bc10またはその断片を、bc10に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;特異的結合をアッセイする工程;およびライブラリーから1つ以上のbc10結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、bc10に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程。細胞表面上にbc10を発現する細胞、さらには、精製されたbc10またはbc10の断片が、本発明のスクリーニング方法に有用である。限定ではない例として、自然界に存在している、組み換え体である、ヒト、マウス(配列番号35)、さらには、bc10の変異体および他の種ホモログ、ならびに、それらの断片(配列番号12結合断片または配列番号13結合断片が含まれるが、これらに限定はされない)が、それらが精製されているか、または細胞表面上に発現されるかにはかかわらず、本発明のスクリーニング方法に有用であり得る。本発明の方法は、上記で議論されたように、任意の種々のライブラリーをスクリーニングするために有用である。
【0128】
本明細書中で使用される場合は、用語「bc10」は、心臓血管において選択的に発現され、そして配列番号35と少なくとも60%のアミノ酸同一性を有しているポリペプチドを意味する。特定の実施形態においては、bc10は、配列番号35と、少なくとも70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する。
【0129】
本発明により、さらに、種々の単離されたペプチドおよびペプチド模倣物が提供される。これらは、例えば、本発明の結合体を構築することにおいて、またはペプチド自体が生物学的活性を有している場合には、結合していない形態で、上記に記載されるような任意の心臓血管疾患または心筋症の処置のための治療薬として、有用であり得る。生物学的活性を有している他のホーミングペプチドは、例えば、Ruoslahti,Nat.Rev.Cancer 2:83−90(2002)およびLaakkonen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,101:9381−9386(2004)に記載されているように、当該分野で公知である。一例として、本発明により、60未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)もしくはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。1つの実施形態においては、本発明により、60未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)を含む単離されたペプチドが提供される。アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)を含む本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、40未満の残基の長さを有している場合があり、また、20未満の残基の長さを有している場合もある。
【0130】
本発明により、さらに、アミノ酸配列GRKSKTV(配列番号14)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。1つの実施形態においては、本発明により、アミノ酸配列GRKSKTV(配列番号14)を含む単離されたペプチドが提供される。本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、立体構造によって拘束される場合も、また、CGRKSKTVC(配列番号2)を含む場合もある。さらなる実施形態においては、アミノ酸配列GRKSKTV(配列番号14)もしくはそのペプチド模倣物を含む単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、100未満の残基の長さ、60未満の残基の長さ、または20未満の残基の長さを有する。なおさらなる実施形態においては、本発明により、アミノ酸配列CXGRKSKTVZC(配列番号15)またはそのペプチド模倣物(式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、Z=0から20個の別々に選択される残基である)を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0131】
本発明により、さらに、150未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)、またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。1つの実施形態においては、本発明により、150未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)を含む単離されたペプチドが提供される。アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)を含む本発明の単離されたペプチドおよびペプチド模倣物は、限定はされないが、100未満の残基の長さ、60未満の残基の長さ、または20未満の残基の長さを有し得る。
【0132】
また、50未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CPKRPR(配列番号6)、またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が本明細書中で提供される。1つの実施形態においては、本発明により、50未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CPKRPR(配列番号6)を含む単離されたペプチドが提供される。配列番号6のアミノ酸配列を含む本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、種々の長さを有し得、これには、40未満の残基の長さ、または20未満の残基の長さが含まれるが、これらに限定はされない。
【0133】
本発明により、さらに、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)、またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。1つの実施形態においては、本発明により、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)を含む単離されたペプチドが提供される。アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)を含む本発明のペプチドまたはペプチド模倣物は、100未満の残基の長さ、60未満の残基の長さ、または20未満の残基の長さを有し得るが、これらに限定はされない。
【0134】
さらに、アミノ酸配列RNSWKPN(配列番号16)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が、本発明によって提供される。1つの実施形態においては、本発明により、アミノ酸配列RNSWKPN(配列番号16)を含む単離されたペプチドが提供される。限定ではない例として、本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、立体構造によって拘束される場合も、また、100未満の残基の長さ、60未満の残基の長さ、または20未満の残基の長さを有し得る場合もある。1つの実施形態においては、本発明により、アミノ酸配列CXRNSWKPNZC(配列番号17)またはそのペプチド模倣物(式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、Z=0から20個の別々に選択される残基である)を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0135】
さらに、アミノ酸配列RGSSS(配列番号9)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が、本明細書中で提供される。1つの実施形態においては、本発明により、アミノ酸配列RGSSS(配列番号9)を含む単離されたペプチドが提供される。さらなる実施形態においては、配列番号9のアミノ酸配列を含む本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、100未満の残基の長さ、60未満の残基の長さ、または20未満の残基の長さを有する。
【0136】
本発明により、また、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列RSTRANP(配列番号18)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物も提供される。本発明により、例えば、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列RSTRANP(配列番号18)を含む単離されたペプチドが提供される。限定ではない例として、本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、立体構造によって拘束され得る。さらなる限定ではない例として、本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物には、アミノ酸配列CRSTRANPC(配列番号11)が含まれ得る。本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、さらに、任意の種々の長さを有し得る。限定ではない例として、本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、100未満の残基の長さ、60未満の残基の長さ、または20未満の残基の長さを有し得る。1つの実施形態においては、本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物には、アミノ酸配列CXRSTRANPZC(配列番号19)またはそのペプチド模倣物(式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、Z=0から20個の別々に選択される残基である)が含まれる。
【0137】
本発明によってさらに、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列PKTRRVP(配列番号20)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。1つの実施形態においては、本発明により、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列PKTRRVP(配列番号20)を含むペプチドが提供される。本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、立体構造によって拘束され得る場合も、また、アミノ酸配列CPKTRRVPC(配列番号12)が含まれる場合もある。特定の実施形態においては、配列番号20のアミノ酸配列を含む本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、100未満の残基の長さ、60未満の残基の長さ、または20未満の残基の長さを有する。さらなる実施形態においては、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物には、アミノ酸配列CXPKTRRVPZC(配列番号21)またはそのペプチド模倣物(式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、Z=0から20個の別々に選択される残基である)が含まれる。
【0138】
さらに、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列SGMARTK(配列番号22)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が本明細書中で提供される。1つの実施形態においては、本発明により、400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列SGMARTK(配列番号22)を含むペプチドが提供される。別の実施形態においては、本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、立体構造によって拘束される。さらなる実施形態においては、本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物には、アミノ酸配列CSGMARTKC(配列番号13)が含まれる。本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、さらに、任意の種々の長さを有し得る。限定ではない例として、配列番号22のアミノ酸配列を有している本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、100未満の残基の長さ、60未満の残基の長さ、または20未満の残基の長さを有し得る。1つの実施形態においては、本発明により、アミノ酸配列CXSGMARTKZC(配列番号23)またはそのペプチド模倣物(式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、Z=0から20個の別々に選択される残基である)を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0139】
本発明のペプチドおよびペプチド模倣物は、単離された形態で提供される。本発明のペプチドまたはペプチド模倣物についての言及において本明細書中で使用される場合には、用語「単離された」は、細胞の中でペプチドまたはペプチド模倣物と通常会合しているか、または、ライブラリーもしくは粗調製物の中でペプチドまたはペプチド模倣物と会合している、ポリペプチド、脂質、核酸、および他の細胞性の物質のような物質の混入が比較的少ない形態の、ペプチドまたはペプチド模倣物を意味する。
【0140】
したがって、本発明によりペプチドおよびペプチド模倣物が提供され、これには、以下で議論されるように、立体構造により拘束されたペプチドおよびペプチド模倣物、二官能性のペプチドおよびペプチド模倣物、ならびに多価ペプチドおよびペプチド模倣物が含まれる。本明細書中で使用される場合は、用語「ペプチド」は、ペプチド、タンパク質、タンパク質の断片などを意味するように広い意味で使用される。用語「ペプチド模倣物」は、本明細書中で使用される場合は、構造に基づくペプチドの活性を有しているペプチド様分子を意味する。このようなペプチド模倣物としては、化学修飾されたペプチド、自然界には存在しないアミノ酸を含むペプチド様分子、およびペプトイドが挙げられ、これらは、ペプチド模倣物が由来するペプチドの選択的ホーミング活性のような活性を有している(例えば、Goodman and Ro,Peptidomimetics for Drug Design,「Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery」Vol.1(M.E.Wolff編;John Wiley & Sons 1995)803−861頁を参照のこと)。
【0141】
種々のペプチド模倣物が当該分野で公知であり、例えば、拘束されたアミノ酸、ペプチドの二次構造を模倣する非ペプチド成分、またはアミド結合等量式を含むペプチド様分子を含むペプチド模倣物が、本発明に含まれる。拘束された自然界には存在しないアミノ酸を含むペプチド模倣物としては、例えば、α−メチル化アミノ酸;α,α−ジアルキルグリシン、またはα−アミノシクロアルカンカルボン酸;Nα−Cα環状アミノ酸;Nα−メチル化アミノ酸;β−またはγ−アミノシクロアルカンカルボン酸;α,β−不飽和アミノ酸;β,β−ジメチルまたはβ−メチルアミノ酸;β−置換−2,3−メタノアミノ酸;N−CδまたはCα−Cδ環状アミノ酸;置換されたプロリンまたは別のアミノ酸模倣物が挙げられ得る。ペプチドの二次構造を模倣するペプチド模倣物には、例えば、非ペプチドβ−ターン模倣物;γ−ターン模倣物;βシート構造の模倣物;またはヘリックス構造の模倣物(それぞれが当該分野で公知である)が含まれ得る。ペプチド模倣物はまた、例えば、アミド結合等量式(例えば、retro−inverso型の修飾);アミド結合の還元;メチレンチオエーテルまたはメチレンスルフォキシド結合;メチレンエーテル結合;エチレン結合;チオアミド結合;トランス−オレフィンまたはフルオロオレフィン結合;1,5−2置換テトラゾール環;ケトメチレンまたはフルオロケトメチレン結合、あるいは別のアミド等量式を含む、ペプチド様分子でもあり得る。当業者は、これらおよび他のペプチド模倣物が、本明細書中で使用される用語「ペプチド模倣物」の意味に含まれることを理解する。
【0142】
ペプチド模倣物を同定するための方法は当該分野で周知であり、例えば、可能性のあるペプチド模倣物のライブラリーを含むデータベースのスクリーニングが挙げられる。例えば、Cambridge Structural Databaseには、既知の結晶構造を有している300,000を超える化合物のコレクションが含まれる(Allen et al.,Acta Crystallogr.Section B,35:2331(1979))。この構造の寄託は、新しい結晶構造が決定されるたびにアップデートされ続け、適切な形状(例えば、本発明のペプチドと同じ形状)、ならびに、同族受容体と幾何学的相補性および化学的相補性の可能性を有している化合物についてスクリーニングすることができる。本発明のペプチドの結晶構造が入手できない場合には、構造を、例えば、プログラムCONCORD(Rusinko et al.,J.Chem.Inf.Comput.Sci.29:251(1989))を使用して作成することができる。別のデータベースであるAvailable Chemicals Directory(Molecular Design Limited,Informations Systems;San Leandro CA)には、約100,000の化合物が含まれており、これらは市販されており、本発明のペプチドの可能性のあるペプチド模倣物を同定するために、例えば、心臓血管に選択的にホーミングする活性を用いて検索することができる。
【0143】
以下に議論される、立体構造によって拘束されるペプチドおよびペプチド模倣物、二官能性ペプチドおよびペプチド模倣物、ならびに多価ペプチドおよびペプチド模倣物を含む本発明のペプチドおよびペプチド模倣物は、様々な長さを有し得る。本発明のペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、6残基未満、7残基未満、8残基未満、9残基未満、10残基未満、12残基未満、15残基未満、20残基未満、25残基未満、30残基未満、35残基未満、40残基未満、45残基未満、50残基未満、60残基未満、70残基未満、または80残基未満の比較的短い長さを有し得る。本発明のペプチドまたはペプチド模倣物もまた、以下にさらに記載されるように、はるかに長い配列の状況においても有用であり得る。本明細書中で議論される場合は、用語「残基」は、アミノ酸またはそのアナログを意味する。例えば、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドには、他のアミノ酸によって分断されていない連続している配列として特定のアミノ酸が含まれることが理解される。
【0144】
本発明の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物は、環状である場合も、または別の方法で立体構造によって拘束される場合もあるが、これらに限定はされない。分子についての言及において本明細書中で使用される場合は、用語「立体構造によって拘束される」は、三次元構造が長時間の間1つの空間的配置で実質的に維持される、ペプチドまたはペプチド模倣物のような分子を意味する。立体構造によって拘束される分子は、高い親和性、代謝安定性、膜透過性、または可溶性のような改善された特性を有し得る。立体構造による拘束の方法は当該分野で周知であり、これには、環化が含まれるが限定はされない。
【0145】
ペプチドまたはペプチド模倣物についての言及において本明細書中で使用される場合は、用語「環状」は、2つの隣接していないアミノ酸またはアミノ酸アナログの間での分子内結合を含む構造を意味する。環化は、共有結合によって、または非共有結合によって行われ得る。分子内結合としては、骨格対骨格、側鎖対骨格、および側鎖対側鎖の結合が含まれるが、これらに限定はされない。環化の方法としては、隣接していないアミノ酸またはアミノ酸アナログの側鎖の間でのジスルフィド結合の形成;(例えば、1つのアミノ酸またはそのアナログの側鎖基とアミノ酸末端残基のN末端アミンとの間での)ラクタム結合の形成;および、リジノノルロイシンおよびジチロシン結合の形成が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0146】
本発明により、また、例えば、配列CRPPR(配列番号1)、CGRKSKTVC(配列番号2)、CARPAR(配列番号5)、CPKRPR(配列番号6)、CKRAVR(配列番号7)、CRNSWKPNC(配列番号8)、RGSSS(配列番号9)、CRSTRANPC(配列番号11)、CPKTRRVPC(配列番号12)、またはCSGMARTKC(配列番号13)の保存的変異体であるアミノ酸配列を含む単離されたペプチドまたはペプチド模倣物も提供される。特定の実施形態においては、本発明により、厳密に1つのアミノ酸が保存的置換されている配列番号1、2、5、6、7、8、9、11、12、または13の保存的変異体であるアミノ酸配列を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。さらなる実施形態においては、本発明により、厳密に2つのアミノ酸が保存的置換されている配列番号1、2、5、6、7、8、9、11、12、または13の保存的変異体であるアミノ酸配列を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。さらなる実施形態においては、本発明により、厳密に3個、4個、または5個のアミノ酸が保存的置換されている配列番号1、2、5、6、7、8、9、11、12、または13の保存的変異体であるアミノ酸配列を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0147】
本明細書中で使用される場合は、「保存的変異体」は、第1のアミノ酸が、少なくとも1つの類似の生化学的特性(これは、例えば、類似する大きさ、電荷、疎水性、または水素結合能力であり得る)を有している第2のアミノ酸またはアミノ酸アナログによって置き換えられているアミノ酸配列である。例えば、第1の疎水性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシンのような第2の(同じではない)疎水性アミノ酸、あるいはそれらのアナログで保存的置換され得る。同様に、第1の塩基性アミノ酸は、アルギニンまたはリジンのような第2の塩基性アミノ酸、あるいはそのアナログで保存的置換され得る。同じように、第1の酸性アミノ酸は、アスパラギン酸またはグルタミン酸のような第2の酸性アミノ酸、あるいはそのアナログで保存的置換され得る。また、フェニルアラニンのような芳香族アミノ酸は、第2の芳香族アミノ酸またはアミノ酸アナログ(例えば、チロシン)で保存的置換され得る。
【0148】
本明細書中に開示されるように、心臓血管に選択的にホーミングするペプチドまたはペプチド模倣物は、明らかに長い配列の状況においてホーミング活性を維持することができる。例えば、5マーのCRPPR(配列番号1)は、ファージコートタンパク質に融合させられた場合にもホーミングする能力を維持し、これによって、本発明のペプチドがより大きなタンパク質に組み込まれている場合にも選択的ホーミング活性を有し得ることが確認される。したがって、本発明により、異種タンパク質に融合させられた本発明のペプチドまたはペプチド模倣物を含むキメラタンパク質が提供される。特定の実施形態においては、本発明により、心臓血管に選択的にホーミングし、そして異種タンパク質に融合させられたHLP/CRIP2、受容体クローン9、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、またはbc10に特異的に結合するホーミングペプチドまたはペプチド模倣物を含むキメラタンパク質が提供される。本発明に有用な異種タンパク質としては、抗体またはその抗原結合断片と同様に、治療活性を有しているタンパク質が挙げられるが、これに限定はされない。さらなる実施形態においては、本発明により、配列番号1、2、5、6、7、8、9、11、12、または13のアミノ酸配列、またはこれらの配列の1つの保存的変異体もしくはペプチド模倣物を含むペプチドまたはペプチド模倣物が異種タンパク質に融合させられているキメラタンパク質が提供される。用語「異種」は、本発明のペプチドまたはペプチド模倣物に融合させられたタンパク質についての言及において本明細書中で使用される場合は、融合させられたペプチドをコードする遺伝子以外の供給源に由来するタンパク質、または、融合させられたペプチド模倣物が由来する供給源に由来するタンパク質を意味する。本発明のキメラタンパク質は、種々の長さを有することができ、これには、100残基まで、200残基まで、300残基まで、400残基まで、500残基まで、800残基まで、1000残基まで、または2000残基までの長さが含まれ得るが、これらに限定はされない。
【0149】
さらに、心臓血管に選択的にホーミングし、そして異なる機能を有している第2のペプチドに融合させられたHLP/CRIP2(配列番号25)、受容体クローン9(配列番号27)、Sigirr/TIR8(配列番号29)、MpcII−3関連タンパク質(配列番号33)、またはbc10(配列番号35)に特異的に結合する、ホーミングペプチドを含む二官能性ペプチドが本明細書中で提供される。このような二官能性ペプチドは、ペプチドの異なる部分によって与えられた少なくとも2つの機能を有し、例えば、選択的ホーミング活性に加えて、プロアポトーシス活性を示し得る。
【0150】
本発明により、さらに、それぞれがHLP/CRIP2(配列番号25)に別々に結合する少なくとも2つのモチーフを含む、単離された多価ペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。このような多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、それぞれが配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列またはそれらの保存的変異体もしくはペプチド模倣物を別々に含む、少なくとも2つのモチーフを有し得る。多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、それぞれが配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列またはそれらの保存的変異体もしくはペプチド模倣物を別々に含む、例えば、少なくとも3個、少なくとも5個、または少なくとも10個のこのようなモチーフを有し得る。特定の実施形態においては、多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列、またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、または20個の同じモチーフまたは同じではないモチーフを有する。別の実施形態においては、多価ペプチドまたはペプチド模倣物には、配列番号1のアミノ酸配列またはこの配列の保存的変異体もしくはペプチド模倣物からなる、同じモチーフが含まれる。なお別の実施形態においては、多価ペプチドまたはペプチド模倣物には、配列番号2のアミノ酸配列またはこの配列の保存的変異体もしくはペプチド模倣物からなる、同じモチーフが含まれる。なおさらなる実施形態においては、多価ペプチドまたはペプチド模倣物には、連続する複数のHLP/CRIP2結合モチーフが含まれ、これらは同じであっても、また同じではなくてもよい。
【0151】
また、それぞれが受容体クローン9(配列番号27)に別々に結合する少なくとも2つのモチーフを含む単離された多価ペプチドまたはペプチド模倣物も、本明細書中で提供される。本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、それぞれが配列番号5もしくは配列番号6のアミノ酸配列またはこれらの配列の保存的変異体もしくはペプチド模倣物を別々に含む、少なくとも2つのモチーフを有し得る。本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、それぞれが配列番号5もしくは配列番号6のアミノ酸配列またはそれらの保存的変異体もしくはペプチド模倣物を別々に含む、少なくとも3個、少なくとも5個、または少なくとも10個のこのようなモチーフを含み得ることが理解される。特定の実施形態においては、多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、配列番号5もしくは配列番号6のアミノ酸配列、またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、または20個の同じモチーフまたは同じではないモチーフを有する。本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物には、例えば、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列またはこのような配列の保存的変異体もしくはペプチド模倣物からなる、同じモチーフが含まれ得る。さらなる実施形態においては、多価ペプチドまたはペプチド模倣物には、連続する複数の受容体クローン9(配列番号27)結合モチーフが含まれ、これらは同じであっても、また同じではなくてもよい。
【0152】
本発明により、さらに、それぞれがSigirr/TIR8(配列番号29)に別々に結合する少なくとも2つのモチーフを含む単離された多価ペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、それぞれが配列番号7、8、もしくは9のアミノ酸配列またはこれらの配列の保存的変異体もしくはペプチド模倣物を別々に含む、少なくとも2つのモチーフを有し得る。本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、それぞれが配列番号7、8、もしくは9のアミノ酸配列またはそれらの保存的変異体もしくはペプチド模倣物を別々に含む、少なくとも3個、少なくとも5個、または少なくとも10個のこのようなモチーフを含み得ることが理解される。特定の実施形態においては、多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、配列番号7、8、もしくは9のアミノ酸配列、またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、または20個の同じモチーフまたは同じではないモチーフを有する。本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物には、例えば、配列番号7、8、もしくは9のアミノ酸配列またはこのような配列の保存的変異体もしくはペプチド模倣物からなる、同じモチーフが含まれ得る。さらなる実施形態においては、多価ペプチドまたはペプチド模倣物には、連続する複数のSigirr/TIR8(配列番号29)結合モチーフが含まれ、これらは同じであっても、また同じではなくてもよい。
【0153】
さらに、それぞれが配列番号33に別々に結合する少なくとも2つのモチーフを含む単離された多価ペプチドまたはペプチド模倣物が、本明細書中で提供される。本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、それぞれがCRSTRANPC(配列番号11)のアミノ酸配列、またはこれらの保存的変異体もしくはペプチド模倣物を別々に含む、少なくとも2つのモチーフを有し得る。限定ではない例として、本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、それぞれがCRSTRANPC(配列番号11)のアミノ酸配列、またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を別々に含む、少なくとも3個、少なくとも5個、または少なくとも10個のこのようなモチーフを含み得る。さらなる限定ではない例として、多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、CRSTRANPC(配列番号11)のアミノ酸配列、またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、または20個の同じモチーフまたは同じではないモチーフを有し得る。本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物にはまた、例えば、配列番号11のアミノ酸配列、またはこのような配列の保存的変異体もしくはペプチド模倣物からなる、同じモチーフが含まれ得る。多価ペプチドまたはペプチド模倣物には、連続するか、または連続しない複数の配列番号33結合モチーフが含まれる場合があり、これらは同じであっても、また同じではなくてもよいと理解される。
【0154】
それぞれがbc10(配列番号35)に別々に結合する少なくとも2つのモチーフを含む単離された多価ペプチドまたはペプチド模倣物もまた、本発明によって提供される。(配列番号35)結合モチーフは、連続している場合も、また、連続していない場合もあり、さらにこれらは同じである場合も、また、同じではない場合もある。本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、例えば、それぞれが配列番号12もしくは配列番号13のアミノ酸配列、またはこれらの配列の保存的変異体もしくはペプチド模倣物を別々に含む、少なくとも2つのモチーフを有し得る。限定ではない例として、本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、それぞれが配列番号12もしくは配列番号13のアミノ酸配列、またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物を別々に含む、少なくとも3個、少なくとも5個、または少なくとも10個のこのようなモチーフを含み得る。さらなる限定ではない例として、多価ペプチドまたはペプチド模倣物は、配列番号12もしくは配列番号13のアミノ酸配列、またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、または20個の同じモチーフまたは同じではないモチーフを有し得る。1つの実施形態においては、本発明により、配列番号12もしくは配列番号13のアミノ酸配列、または配列番号12もしくは配列番号13の保存的変異体もしくはペプチド模倣物からなる同じモチーフを含む、本発明の多価ペプチドまたはペプチド模倣物が提供される。
【0155】
以下の実施例は、本発明を説明するように意図され、限定するようには意図されない。
【実施例】
【0156】
(実施例1)
心臓血管に選択的にホーミングするペプチドおよびホーミングペプチドの同種受容体の同定
本実施例では、ホーミングペプチドの同種受容体の同定のための細菌によるツーハイブリッドアッセイと組み合わせた、心臓血管に選択的にホーミングするペプチドの同定のための、エキソビボおよびインビボでのファージ選択の使用を記載する。
【0157】
心臓内皮細胞の富化のためのエキソビボでのファージ選択を、マウスの心臓組織から得た細胞懸濁物について、血管内皮細胞の単離のために抗CD31磁気ビーズを使用して行った。組み換え体ではないファージと比較して、心臓細胞へのエキソビボでの結合において230倍の富化が、3回のエキソビボ選択後に観察された(図1B)。心臓へのホーミングについてのその後のインビボ選択によっては、インビボで心臓にホーミングするファージのプールが生じ、組み換え体ではないファージのホーミングと比較すると、およそ200倍増加した。さらに、エキソビボ/インビボで選択したファージは、他の組織と比較して心臓に優先的に局在化した。図1Cに示すように、心臓での富化は、脳、腎臓、皮膚、および骨格筋の中でのファージの蓄積と比較して、20から50倍であった。
【0158】
心臓ホーミングペプチドの推定される受容体の単離を、以下のように行った。心臓ホーミングファージのペプチドをコードするDNA挿入断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し;細菌のツーハイブリッドシステムの「おとりベクター」に導入した;そして、心臓cDNAライブラリーをコードする標的ベクターとともに細菌に同時形質転換した。高いストリンジェンシーでのスクリーニングによって、おとり−標的相互作用の指標となるコロニーが、ポジティブ対照と匹敵する頻度で明らかになったが、コロニーの増殖は、2つのベクターのいずれかが存在しない場合には観察されなかった(図1D)。さらに、システムの漏れについての対照から、100個のコロニーのうちの75個がおそらくは擬陽性であるとして除外された(図1E)。
【0159】
25個の残りの候補の受容体cDNAに由来するインフレーム配列を、NCBIの重複のないデータベースを使用して分析した。これらの25個のクローンのうち、19個は心筋において豊富に発現されるタンパク質(例えば、ミオシン、ミオグロブリン、フェリチン、およびオキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ)であった。残りの6つのクローン(これらは、表1にまとめるように、膜または細胞表面タンパク質を提示する)は、心臓ホーミング分子の推定の受容体である。これらの結果は、エキソビボ/インビオでのファージディスプレイと、細菌によるツーハイブリッド分析の併用によって、心臓ホーミングペプチドおよびそれらの同種受容体を迅速に同定できることを示している。
【0160】
エキソビボおよびインビボでのファージ選択を以下のように行った。T7Select415−1ファージ(Novagen;San Diego,CA)上に提示されるNNKをコードするCXライブラリーを、Laakkonen et al.,Nat.Med.8:751−755(2002)に記載されているように作成した。ファージ選択および検証は、Hoffman et al.,「In vivo and ex vivo selections using phage−displayed libraries,」Clarkson and Lowman(編)Phage Display:A Practical Approach Oxford,U.K.:Oxford University Press(2004)に記載されているように行った。心臓細胞上での3回のエキソビボ選択の後、3回の選択をインビボで行った。エキソビボでの選択のために、細胞懸濁物液を、組織を分散させるために1mg/mlのコラゲナーゼIA(Sigma;St.Louis,MO)を使用してマウスの心臓組織から調製した。細胞懸濁液を、5×1010プラーク形成単位(pfu)のCXCライブラリーとともに4℃で一晩インキュベートし、その後、結合していないファージを除去するために洗浄した。磁気ビーズ(M450;Dynal;Oslo,Norway)および抗マウスCD31(PharMingen;San Diego,California)を使用して、製造業者の説明書にしたがって血管内皮細胞を単離した。Hoffman et al.,(前出),2004に記載されているように、CD31ポジティブ細胞の集団に結合したファージをレスキューし、大腸菌(E.coli)の中で増幅させた。
【0161】
インビボでのパンニングは以下のように行った。エキソビボで選択したファージのプール(5×10p.f.u.)を、尾静脈からマウスに静脈内注射し、10分間循環させ、その後、マウスに、結合していない静脈内のファージを除去するためにDMEMを左心室から慎重に潅流させた。心臓組織と対照組織(脳、腎臓、皮膚、および筋肉)を取り出し、Hoffman et al.,(前出),2004に記載されているようにファージを回収した。心臓から回収したファージをマウスに再度注射し、このサイクルを全部で3回繰り返した。組み換え体ではないファージを、それぞれの実験において対照として別のマウスに注射した。
【0162】
細菌でのツーハイブリッド実験のために、おとりプラスミドのライブラリーを、プライマー5’−TCAGGTGTGATGCTCGG−3’(配列番号36;正方向プライマー)および5’−GAGTAACTAGTTAACC−3’(配列番号31;逆方向プライマー)を使用する心臓ホーミングファージからのペプチドをコードするDNA挿入断片のPCR増幅によって構築した。PCR産物をEcoRIとXhoIで消化し、おとりpBTプラスミド(Stratagene;La Jolla,CA)にサブクローニングして、「pBT−hp」と命名したおとりの組み換え体ライブラリーを作成した。pBT−hpプラスミドをXL1−Blue MRF’Kanコンピテント細胞に形質転換し、2μlまたは5μlの細胞を100mmのLB−クロラムフェニコールプレートにプレートして、一次形質転換体の総数を決定した。残りの形質転換体をプールし、そして150mmのLB−クロラムフェニコールプレートにプレートした。配列決定を20個のクローンについて行い、これらは適切なペプチドをコードする挿入断片を有していることを明らかにした。その後、プレートを擦り取って、細菌を回収した。増幅したライブラリーの大きさを決定するために2μlおよび5μlの回収したライブラリーをプレートした後、pBT−hpプラスミドのプールを、市販されているmaxiprep DNAカラムを使用してプールした細菌から精製した。精製したDNAを使用して、製造業者の説明書(Stratagene;La Jolla,CA)にしたがってBacterioMatch(商標)Two−Hybrid Systemレポーター株コンピテント細胞を形質転換した。
【0163】
心臓cDNAライブラリープラスミドを、マウスの心臓プラスミドcDNAライブラリーを含む2μlの細胞(Stratagene;#982303)を25mlのSCO培地中に希釈し、その後、25cm×25cmのLB−テトラサイクリンプレート25枚の上で細胞を分離することによって精製した。プレートを、30℃で24時間インキュベートし、その後、およそ5×10個の個々のクローンを回収し、続いてプラスミド精製した。
【0164】
細菌によるツーハイブリッド実験を、製造業者の説明書にしたがってBacterioMatch(商標)Two−Hybrid System(Stratagene)を用いて行った。簡単に説明すると、pBT−hpと心臓cDNAライブラリープラスミドを、それぞれ50ngのプラスミドを使用して同時形質転換した。同時形質転換体のアリコート(100μl)を選択用LBプレート(500μg/mlのカルベニシリン)上にプレートし、37℃で20時間インキュベートし、その後、増殖についてプレートをスコアした。ハイブリッドタンパク質の対の間での相互作用が、ポジティブ対照であるGal4およびGal11Pハイブリッドタンパク質について観察されたものと同じように、選択用プレート上での増殖によって示された。カルベニシリンプレートからの個々のポジティブクローンを、続いて、2回目のスクリーニングのためにX−galプレート上に縞模様で接種した。12時間から14時間の細胞のインキュベーションの後、X−galプレート上で暗青色を呈した細胞を選択した。これらを、LB−クロラムフェニコールまたはKB−テトラサイクリン(標的およびおとりプラスミドのマーカー)の存在下で30℃で一晩増殖させた。プラスミドDNAを精製し、レポーター株を、推定のおとりプラスミドおよび標的プラスミドで再度形質転換した。選択プレート上で増殖を再現できたクローンをポジティブと確認した。おとりおよび標的の挿入断片をPCRによって増幅し、その後、配列分析した。標的ベクターに由来する配列を重複のないマウスのゲノムのBLASTN検索において検索配列として使用した。
【0165】
(実施例2)
受容体−ペプチド対とペプチドの心臓ホーミング活性
本実施例では、心臓ホーミングペプチドを提示するペプチドのプールを用いた細菌でのツーハイブリッド分析により心臓ホーミングペプチドの推定の受容体として同定した、膜または細胞表面発現タンパク質を記載する。
【0166】
受容体クローン5
表1にまとめるように、受容体クローン5は、心臓LIM−タンパク質(HLP)のカルボキシ末端の92個のアミノ酸を提示し、これは、システインリッチタンパク質2(CRIP2)およびESP1とも呼ばれる。HLPは心臓血管の中で発現され(Yu et al.,Mech.Dev.116:187−192(2002))、Crp−1に対して相同性を有しているLIMドメインを含むタンパク質である(Karim et al.,Genomics 31:167−176(1996);およびvan Ham et al.,Genes Cells 8:631−644(2003))。HLPクローンを用いたツーハイブリッド分析による5個のポジティブクローンのうち3個の同種ペプチドを同定した:CRPPR(配列番号1)が2回示され、CGRKSKTVC(配列番号2)は1回、そしてCGNQVDSRC(配列番号3)が2回示された。T7Select415−1ディスプレイベクターへのこれらのペプチドのクローニングの後、これらを、静脈内注射後に心臓血管にホーミングするそれらの能力についてアッセイした。組み換え体ではないファージと比較すると、CRPPR(配列番号1)をディスプレイするファージは、心臓に対して300倍高い選択性でホーミングした(図2A)。表1にまとめるように、CGRKSKTVC(配列番号2)をディスプレイするファージは、心臓へのホーミングにおいて約50倍高い選択性を示したが、一方、CGNQVDSRC(配列番号3)をディスプレイするファージについては有意な選択的ホーミングは観察されなかった。
【0167】
受容体クローン9
受容体クローン9もまた、1つ以上の心臓ホーミングペプチドに結合する膜タンパク質として同定された。表1に示すように、レセプタークローン9は、注釈がついていないRIKEN ESTである。受容体クローン9を用いたツーハイブリッド分析によって同定した5個のクローンのうち、3個のペプチドCPSELLLP(配列番号4)、CARPAR(配列番号5)、およびCPKRPR(配列番号6)を同定した。後者の2つのペプチドは、心臓に対する選択的ホーミングを示したが、最初の1つは示さなかった(表1および図2B)。
【0168】
受容体クローン15
受容体クローン15は、SigirrまたはTIR8と命名されている1つのIg IL−1受容体関連タンパク質である(Thomassen et al.,Cytokine 11:389−399(1999))。クローン15に示されるタンパク質の一部には、Sigirrの膜貫通ドメインと、さらには、約190個のアミノ酸のアミノ末端細胞外部分が含まれる。Sigirrは、腎臓、肺、胃、および他の組織の上皮細胞で発現されることが知られている(Thomassen et al.,前出,1999;およびPolentarutti et al.,Eur.Cytokine Netw.14:211−218(2003))が、心臓または内皮細胞での発現は報告されていない。表1にまとめるように、3つのペプチドを、ツーハイブリッド分析によってSigirrに結合するとして同定した。これらのペプチドCKRAVR(配列番号7)、CRNSWKPNC(配列番号8)、およびRGSSS(配列番号9)は、20から30倍の心臓へのホーミングの選択性を示した(表1および図2Cを参照のこと)。
【0169】
受容体クローン27
受容体クローン27は、嗅球cDNAライブラリーから同定された、グルタミンリッチ領域を含むタンパク質との注釈が付けられる仮想タンパク質である。分析した5個のおとりクローンは全て、同じペプチドCLIDLHVMC(配列番号10)をコードしており、これは、心臓に対する特異的なホーミングは示さなかった(表1および図2D)。
【0170】
受容体クローン36
受容体クローン36は、RIKEN Fantomセットに由来する命名されていないタンパク質産物のコード配列全体を含む。この受容体は、コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体の一部であるミトコンドリア膜タンパク質である、完全な膜タンパク質CII−3(MpcII−3)に対して類似であると推定される。クローン36に対する結合活性によって同定した5個の配列決定したクローンのそれぞれは、同じペプチドCRSTRANPC(配列番号5)をコードしており、これは、約20倍の心臓ホーミング選択性を示した(表1および図2E)。
【0171】
受容体クローン46
受容体クローン46は、小さい膜タンパク質であるヒトの膀胱ガン関連タンパク質10(bc10)のマウスホモログの一部である。これは、ガンが膀胱の中の前悪性の病変から生じるとダウンレギュレートされる(Gromova et al.,Int.J.Cancer 98:539−546(2002))。受容体クローン46として単離された断片には、bc10の推定される細胞外ドメインのカルボキシ末端の32個のアミノ酸が含まれる。ツーハイブリッド分析により、受容体クローン46に結合した2つのペプチド、CPKTRRVPC(配列番号12)およびCSGMARTKC(配列番号13)が同定された。これらは、それぞれ、約60倍および10倍の心臓ホーミング選択性を示した(表1および図2F)。
【0172】
まとめると、これらの結果は、インビボでのパンニングと組み合わせた細菌のツーハイブリッド分析が、臓器ホーミングペプチドとそれらの同種受容体の両方を同定するために有用であり得ることを示している。
【0173】
個々のファージクローンを、以下のように再構築した。選択されたおとりプラスミドに由来するペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを合成し、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK;NEB)で、37℃で1時間リン酸化し、0.08pmol/μlの濃度でアニーリングさせた。アニーリングした挿入断片を0.04pmol/μlに希釈し、T7Select 415−1アーム(Novagen)にT4リガーゼで16℃で一晩かけて連結させた。翌日、完全な組み換え体ファージを、製造業者によって記載されているように、連結反応物をパッケージング抽出物と混合することによって調製した。挿入断片を、配列決定によって確認し、個々のクローンを、上記の実施例1に記載したように、エキソビボおよびインビボでの試験のために増幅させた。
【0174】
(実施例3)
ファージによってディスプレイされた心臓ホーミングペプチドは心臓血管に局在化する
本実施例は、心臓血管に選択的にホーミングする開示するペプチドが、心臓血管によってインビボで発現される受容体に特異的に結合することを示す。
【0175】
A.ファージによってディスプレイされた心臓ホーミングペプチドは血管マーカーと一緒に局在化する
さらなる特性決定を、表1にまとめた倍数の選択性によって示された5つの最も有効なホーミングペプチドと、それらの推定の受容体について行った。これらのホーミングペプチドを、インビボで心臓内皮細胞に選択的に結合する能力について、そしてそれらの推定の受容体に対する特異的結合について分析した。それらの推定の受容体については、心臓内皮細胞での発現についても分析した。個々のファージがディスプレイする特定のホーミングペプチドを、血管マーカーであるフルオレセイン結合トマトレクチンと共に、マウスに個々に静脈内注射した。抗T7抗体を伴うファージの局在化は、ファージがディスプレイするペプチドCRPPR(配列番号1)、CARPAR(配列番号5)、CKRAVR(配列番号7)、CRSTRANPC(配列番号11)、またはCPKTRRVPC(配列番号12)が心臓内皮細胞中に存在することを示した(図3AからC、E、およびF)。CLIDLHVMC(配列番号10)をディスプレイするファージをネガティブ対照とし(図3D)、そしてこれは、ファージ免疫染色によっても心臓には存在しなかった(図3D)。6つのファージはいずれも、同じ条件下では心臓以外の組織においては検出されなかった。
【0176】
これらの結果は、ファージがディスプレイするペプチドCRPPR(配列番号1)、CARPAR(配列番号5)、CKRAVR(配列番号7)、CRSTRANPC(配列番号11)、またはCPKTRRVPC(配列番号12)がインビボで心臓血管に局在化することを示している。
【0177】
免疫組織化学を以下のように行った。ラットのモノクローナル抗マウスCD31(1:100)は、BD Pharmingen(San Jose,CA)から入手し、ウサギポリクローナル抗T7ファージ(1:500)およびニワトリ抗マウスCRIP2 IgY(1:100)はGenWay(San Diego,CA)から入手した。二次抗体であるAlexaFluor−488ヤギ抗ラットIgG(1:1000)、およびAlexaFluor−594ヤギ抗ラットまたはウサギIgG(1:1000)をMolecular Probes(Eugene,OR)から入手した;二次抗体GAYFC−AlexaFluor 594ヤギ抗IgY Fc(1:250)はGenWayから入手した。凍結切片を、ブロッキング緩衝液(1×PBS中の5%の正常なヤギ血清および0.5%のBSA)とともに1時間プレインキュベートし、PBSで3回洗浄し、そして4℃で一晩、目的の一次抗体とともにインキュベートした。一晩のインキュベーションの後、二次抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。スライドをPBSで3回洗浄し、DAPIを備えたVectashield Mounting Medium(Vector Laboratories;Burlingame,California)に取り付けた。血管を、Vector Laboratoriesから購入したフルオレセイン(200μlのPBS中に100μg)に結合させられたトマト(Lycopersicon esculentum)レクチンの静脈内注射によってさらに視覚化した。
【0178】
B.ホーミングペプチドはそれらの推定の同種受容体でトランスフェクトした細胞に結合する
4つの推定の心臓ホーミング受容体(HLP/CRIP2、Sigirr/TIR8、およびMpcII−3関連タンパク質、およびbc10)について全長のcDNAを構築し、293T細胞の中で発現させた。図4に示すように、4個の同種ペプチドをそれぞれディスプレイするファージは、対照ファージよりも300倍から500倍多く、その対応する推定受容体でトランスフェクトした細胞に結合した(小さな点をつけた棒)。加えて、ファージの結合は、100μg/mlの同種ペプチド(黒色の棒)の存在下で阻害されたが、無関係なホーミングペプチド(白色の棒)によっては阻害されなかった。これらの結果によって、ホーミングペプチドCRPPR(配列番号1)は受容体HLP/CRIP2に特異的に結合し;ホーミングペプチドCKRAVR(配列番号7)は受容体Sigirr/TIR8に特異的に結合し;ホーミングペプチドCRSTRANPC(配列番号11)はMpcII−3関連タンパク質受容体に特異的に結合し;そしてホーミングペプチドCPKTRRVPC(配列番号12)は受容体bc10に特異的に結合することを確認した。
【0179】
受容体でのトランスフェクションおよびファージ結合アッセイは以下のように行った。293T細胞を、HLP/CRIP2、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、およびbc10をコードする、pMH6由来のプラスミド(Roche Diagnostics;Indianapolis,IN)で、Fugeneトランスフェクション試薬(Roche Diagnostics)を使用してトランスフェクトした。簡単に説明すると、10μgのプラスミドを、700μlの血清を含まないDMEMと30μlのFugeneトランスフェクション試薬と混合し、室温で15分間インキュベートした。その後、混合物を細胞に添加した。48時間後、細胞を、EDTAを使用して培養皿から引き離し、PBSで1回洗浄した。ファージによってディスプレイされるCRPPR(配列番号1)、CKRAVR(配列番号7)、CRSTRANPC(配列番号11)、またはCPKTRRVPC(配列番号12)と、組み換え体ではない対照ファージ(1×10p.f.u.)を、トランスフェクトした細胞とともに4℃で2時間インキュベートした。結合していないファージを、PBS中の1%のBSAでの5回の洗浄によって除去した。結合したファージを、細菌の添加によってレスキューし;結合効率を、上記のプラークアッセイによって決定した。
【0180】
競合アッセイ用のペプチドを、The Burnham Institute peptide facilityで、固相合成装置の中でFmoc化学を使用して合成し、その後、HPLCによって精製し、そして質量分析法によってそれらの実体を確認した。フルオレセイン結合ペプチドを、Wender et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:13003−13008(2000)に記載されているように合成した。競合アッセイを、細胞およびファージへの100μgのペプチドの添加によって行い、その後、4℃で2時間インキュベーションした。1%のPBSでの5回の洗浄後、結合したファージをレスキューし、プラークアッセイによって定量した。
【0181】
C.受容体mRNAは心臓内皮細胞中に存在する
心臓ホーミングペプチドの発現を、実時間PCRおよびインサイチュハイブリダイゼーションを使用して組織の中で実験した。実時間−PCR分析(図5A)は、配列番号1のペプチドの受容体である、HLP/CRIP2が心臓で強く発現され、肺および脳では低いレベルで発現されることを示した。骨格筋を含むいくつかの他の組織は、HLP/CRIP2 mRNAについてはネガティブであった。他の心臓ホーミング受容体Sigirr/Tir8、MpcII−3関連タンパク質、およびbc10もまた、心臓で最も高く発現されており、他の組織では低いレベルで発現されていた(図5A)。RT−PCR分析の特異性を、融解曲線およびDNA配列分析と組み合わせたゲル電気泳動によって確認した(図5B)。
【0182】
インサイチュハイブリダイゼーションを使用して、RT−PCR分析を確認し、そして目的の受容体が心臓および他の組織の内皮細胞上で発現されているかどうかを決定した。図5Cの第1列目に示すように、HLP/CRIP2シグナルは、心臓全体に豊富に存在しており、血管発現パターンを示した(図5C、第1列目)。痕跡程度の発現がまた、肺と脳で観察されたが、腎臓では観察されなかった。インサイチュハイブリダイゼーションでは、肺でのHLP/CRIP2 mRNAの発現が検出されたが、CRPPR(配列番号1)ファージのホーミングは、この組織ではごくわずかしか検出されなかった(上記を参照のこと)。
【0183】
Sigirr/TIR8のインサイチュハイブリダイゼーション分析によってもまた、RT−PCRの結果を確認した。シグナルは、心臓血管においては強く(図5、第2列目)、肺および腎臓では弱く、そして脳には存在しなかった。MpcII−3関連タンパク質mRNAは、心臓全体に存在しており、心臓血管で最も顕著であった(図5、第3列目)。MpcII−3関連タンパク質mRNAはまた、いくつかの肺血管にも存在していたが、脳と腎臓には存在しなかった。図5Cの最後の列にさらに示すように、bc10 mRNAは心臓血管に存在しており、さらに、一部の肺、腎臓、および筋肉の血管にも存在していたが、脳の血管には存在しなかった。まとめると、インサイチュハイブリダイゼーションの結果によって、RT−PCRの結果の多くが確認された:4つの心臓ホーミング受容体は心臓で最も多く発現される。さらに、4つの心臓ホーミング受容体のmRNAは、心臓内皮細胞に局在化しており、これは、肺血管に選択的にホーミングする開示したペプチドの局在化と一致する。
【0184】
非放射性インサイチュハイブリダイゼーションは、本質的には、St Croix et al.,Science 289:1197−1202(2000)に記載されているように行った。簡単に説明すると、ジゴキシゲニン(DIG)で標識したアンチセンスRNAプローブを、アンチセンスプライマーの中に組み込んだSP6プロモーターと、センスプライマーの中に組み込んだT7プロモーターを使用してPCR増幅によって作成した。インビトロでの転写を、DIG RNA標識試薬とT7 RNAポリメラーゼ(Roche Diagnostics)を用いて行った。凍結した組織切片を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、ペプシンで透過化し、RNAプローブ(200ng/ml)とともに55℃で一晩インキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)ウサギ抗DIG抗体(DAKO;Carpinteria,CA)を使用して、シグナルの増幅のためのGenPointキット(DAKO)を使用するBiotin−Tyramideの沈着を触媒した。さらなる増幅を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)ウサギ抗ビオチン(DAKO)、ビオチン−チラミド(tyramide)、およびアルカリホスファターゼ(AP)ウサギ抗ビオチン(DAKO)を添加することによって行った。シグナルを、ヘマトキシリンで対比染色した組織切片中のAP基質であるFast Red TR/Napthol AS−MX(Sigma)を用いて検出した。
【0185】
実時間ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイは、原則としてGalang et al.,J.Biol.Chem.279:11281−11292(2004)に記載されているように行った。簡単に説明すると、全RNAを、RNeasyキット(Qiagen;Valencia,CA)を用いて目的の臓器から抽出し、cDNAを、50ngの全RNAから、SuperScript II First−Strand Synthesis Systemキット(Invitrogen;Carlsbad,CA)を使用して調製した。実時間PCRを、製造業者の説明書にしたがって、LightCycler SYBRグリーンDNAマスターミックス(Roche Diagnostics)を使用して行った。相対的な発現の分析のために、対照遺伝子であるグリセロアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のレベルを、受容体の発現を正規化するために使用した。GAPDHによって正規化した心臓での発現を、それぞれの受容体について100%と定義し、比較のための基準として使用した。実時間PCRの特異性を、各PCR産物の融解曲線、ならびに、アガロースゲル電気泳動およびDNA配列分析によって確認した。
【0186】
(実施例4)
静脈内注射したCRPPR(配列番号1)ペプチドは心臓血管の中にHLP/CRIP2タンパク質と一緒に局在化する。
【0187】
本実施例は、そのペプチドCRPPR(配列番号1)の、その同種受容体であるHLP/CRIP2との共局在を明らかにする
CRPPR(配列番号1)ペプチドの局在化を、抗HLP/CRIP2抗体を使用して、心臓でのHLP/CRIP2レセプターの発現と比較した。図6Aおよび6Bに示すように、静脈内注射したCRPPR(配列番号1)ペプチドに由来する蛍光は、心臓血管および心内膜の両方において、血管マーカーであるCD31と広い範囲に一緒に局在化した。さらに、フルオレセインで標識された対照ペプチドは、心臓では検出されなかった(図6C)。抗HLP−CRIP2染色もまた、心臓血管および心内膜において、CD31およびペプチドCRPPR(配列番号1)と一緒に局在化していた(図6Dから6F)。
【0188】
心臓血管に対するCRPPR(配列番号1)ファージの結合の特異性を、競合アッセイを使用してアッセイした。図7Aおよび7Bに示すように、CRPPR(配列番号1)ペプチドと抗HLP/CRIP2抗体の両方が、用量依存性の様式で、心臓に由来する細胞懸濁液に対するCRPPR(配列1)をディスプレイするファージの結合をブロックした。ネガティブ対照としての、2つの他の心臓ホーミングペプチドは、CRPPR(配列番号1)ファージの結合に影響を及ぼさなかった。さらに、一緒に注射した抗HLP/CRIP2抗体は、CRPPR(配列番号1)−ファージ(図7C)のインビボでのホーミングを阻害した(図7C)。まとめると、これらの結果は、ペプチドCRPPR(配列番号1)が、HLP/CRIP2に対する特異的結合を通じて、心臓血管に選択的にホーミングすることを示している。
【0189】
括弧書きまたは他の方法で上記に提供された全ての学術論文、参考文献、および特許の引用は、既発表であるかそうではないかにはかかわらず、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0190】
本発明は、上記に提供される実施例を引用して記載されているが、種々の変更が、本発明の精神を逸脱することなく行われ得ることが理解されるはずである。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0191】
提出された特許および特許出願には、カラーで描かれた少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面を含むこの特許または特許出願刊行物のコピーは、要請と必要な手数料の支払いによって、局から提供されるであろう。
【図1】図1は、細菌でのツーハイブリッド分析と組み合わせたエキソビボおよびインビボでのファージディスプレイによる、ホーミングペプチド/受容体対の同定を示す。(A)同時に行われるホーミングペプチドの単離および受容体の同定の原理。ファージディスプレイペプチドライブラリーをマウスに注射し、循環させた;組織を回収し、その後、結合したファージを含む単細胞になるようにバラバラにした。結合していないファージを洗い流し、結合したファージを回収し、細菌の中で増殖させた。そしてこのプロセスを繰り返したか、またはペプチドをコードする挿入断片をPCRによって増幅させ、細菌のツーハイブリッドシステムのおとりベクター成分の中につないだかのいずれかを行った。一旦、細菌の中に入ると、選択された組織にホーミングする能力について富化させたプールは、可能性のあるレセプターと相互作用することができ、その結果、カルベニシリン耐性が生じた。耐性クローンを2回目のスクリーニングのためのX−galを含む寒天上にプレートした。標的挿入断片とおとりの挿入断片を増幅させ、カルベニシリン耐性であるLacZを発現する細胞から配列決定した。(B)抗CD31磁気ビーズでの3回目のエキソビボ選択により、選択したプールはエキソビボで心臓細胞に対して、組み換え体ではないT7ファージよりも約230倍多く結合した。(C)インビボでの心臓へのホーミングについてさらに選択した場合には、エキソビボ/インビボで選択したプールは、心臓血管の中に、組み換え体ではない対照ファージよりも約190倍多く蓄積した。(D)最後のプールに由来するペプチドをコードする挿入断片をおとりベクターにサブクローニングし、細菌を、ペプチド−おとりベクターと標的ベクターの中の心臓のcDNAライブラリーの両方で形質転換した。形質転換した細菌を、500μg/mlのカルベニシリン上での増殖について選択した。(E)いくつかのクローンはまた、第2のマーカーであるLacZについてもポジティブであり、これは、X−galを含むプレート上での青色の生産によって明らかであった。
【図2】図2は、個々のファージディスプレイペプチドが心臓に選択的にホーミングすることを示している。心臓内皮へのホーミングについての組み合わせスクリーニングによって同定した示したペプチドを、T7ファージの中に再構築し、静脈内注射によってマウスに別々に投与した。配列番号10を除いて、心臓にホーミングするペプチドをディスプレイするファージは、組み換え体ではないファージと比較して、有意に心臓にホーミングした。さらに、ホーミングは、試験した主要な臓器の中でも心臓に特異的であった。最も高い特異性(300倍を上回る)は、CRPPR(配列番号1)をディスプレイするファージについて記録された。(A)CRPPR(配列番号1)ファージは、心臓、腎臓、脳、筋肉、および肺にホーミングする。(B)CARPAR(配列番号5)ファージは、心臓、腎臓、脳、筋肉、および肺にホーミングする。(C)CKRAVR(配列番号7)ファージは、心臓、腎臓、脳、筋肉、および肺にホーミングする。(D)CLIDLHVMC(配列番号10)ファージは、心臓、腎臓、脳、筋肉、および肺にホーミングする。(E)CRSTRANPC(配列番号11)ファージは、心臓、腎臓、脳、筋肉、および肺にホーミングする。(F)CPKTRRVPC(配列番号12)ファージは、心臓、腎臓、脳、筋肉、および肺にホーミングする。
【図3】図3は、ファージがディスプレイする心臓ホーミングペプチドが心臓の中の血管内皮細胞のマーカーと一緒に局在化することを示している。ファージを、フルオレセインが結合させられたトマトレシチン(緑色)と共にマウスに静脈内注射し、そして心臓組織の切片を、ウサギ抗T7抗体と抗ウサギAlexa594(赤)で染色した。(A)CRPPR(配列番号1)ファージの染色。(B)CARPAR(配列番号5)ファージの染色。(C)CKRAVR(配列番号7)ファージの染色。(D)CLIDLHVMC(配列番号10)ファージの染色。(E)CRSTRANPC(配列番号11)ファージの染色。(F)CPKTRRVPC(配列番号12)ファージの染色。矢印は、いくつかの代表的な二重ポジティブ血管(黄色)を示す。倍率は200倍。
【図4】図4は、ファージがディスプレイする心臓ホーミングペプチドが同種受容体でトランスフェクトした細胞に特異的に結合することを示している。ツーハイブリッドスクリーニングで同定した心臓ホーミングペプチドについての推定の受容体(表1)を、トランスフェクトしたcDNAから293T細胞の中で発現させた。トランスフェクトした細胞を使用して、緩衝液中で、または対応するペプチド(100mg/ml)をそれぞれ提示する合成ペプチドの存在下のいずれかで、関連する心臓ホーミングペプチドをディスプレイする同種ファージの結合を試験した。それぞれのファージは、空ベクターである対照(灰色の柱)でトランスフェクトした細胞よりも300から500倍多く、その推定の同種受容体(縞模様の入った柱)を発現する細胞に結合した。いずれの場合にも、トランスフェクトした細胞に対するファージの結合は、過剰の同種ペプチドとの競合によって阻害されたが(黒色の柱)、無関係な心臓ホーミングペプチドとの競合によっては阻害されなかった(白色の柱)。4種類のトランスフェクトした細胞株のそれぞれを、遊離のペプチドCRPPR(配列番号1)、CKRAVR(配列番号7)、CRSTRANPC(配列番号11)およびCPKTRRVPC(配列番号12)を用いてアッセイした。(A)CRIP−2をトランスフェクトした細胞に対する同種ペプチドCRPPR(配列番号1)を発現するファージの結合;(B)Sigirrをトランスフェクトした細胞に対する同種ペプチドCKRAVR(配列番号7)を発現するファージの結合;(C)MpcII−3関連タンパク質(配列番号33)をトランスフェクトした細胞に対する同種ペプチドCRSTRANPC(配列番号11)を発現するファージの結合;(D)bc10をトランスフェクトした細胞に対する同種ペプチドCPKTRRVPC(配列番号12)を発現するファージの結合。
【図5−1】図5は、心臓ホーミングペプチドの受容体が、mRNAレベルで心臓の中で強く発現され、内皮細胞に局在化することを示している。(A)心臓の中の同じmRNAのレベルの割合として表した、種々のマウスの心臓、肺、脾臓、腎臓、脳、および筋肉の中の4種類の受容体mRNAについての実時間PCRの結果(2回の独立した実験による平均)。(B)分析の終わりに回収し、アガロースゲル電気泳動によって分析した実時間PCRの産物。ST=100bpのDNAラダー。(C)インサイチュハイブリダイゼーションによる受容体の局在化(赤色)。HLP/CRIP2、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、およびbc10は全て、心臓の内皮細胞の中で強く発現されていた。HLP/CRIP2、MpcII−3関連タンパク質、およびbc10 mRNAもまた、心臓実質の中で強く発現されていた。肺の毛細血管は、Sigirr/TIR8およびMpcII−3関連タンパク質についてさらに明確にポジティブであり、HLP/CRIP2およびbc10については、いくつかのシグナルが観察された。ポジティブ染色の証拠が、他の組織の中で時折見られた。倍率は200倍。
【図5−2】図5は、心臓ホーミングペプチドの受容体が、mRNAレベルで心臓の中で強く発現され、内皮細胞に局在化することを示している。(A)心臓の中の同じmRNAのレベルの割合として表した、種々のマウスの心臓、肺、脾臓、腎臓、脳、および筋肉の中の4種類の受容体mRNAについての実時間PCRの結果(2回の独立した実験による平均)。(B)分析の終わりに回収し、アガロースゲル電気泳動によって分析した実時間PCRの産物。ST=100bpのDNAラダー。(C)インサイチュハイブリダイゼーションによる受容体の局在化(赤色)。HLP/CRIP2、Sigirr/TIR8、MpcII−3関連タンパク質、およびbc10は全て、心臓の内皮細胞の中で強く発現されていた。HLP/CRIP2、MpcII−3関連タンパク質、およびbc10 mRNAもまた、心臓実質の中で強く発現されていた。肺の毛細血管は、Sigirr/TIR8およびMpcII−3関連タンパク質についてさらに明確にポジティブであり、HLP/CRIP2およびbc10については、いくつかのシグナルが観察された。ポジティブ染色の証拠が、他の組織の中で時折見られた。倍率は200倍。
【図6】図6は、CRPPR(配列番号1)ペプチドと同種受容体CRIP2が、心臓血管の内皮細胞の中でCD31と一緒に局在化していることを示している。フルオレセイン結合CRPPR(配列番号1)ペプチドをマウスに静脈内注射し、そして内皮細胞マーカーCD31に対する抗体での染色のために、2時間後に組織を回収した。蛍光ペプチドは緑色で示され、一方、CD31マーカーは赤色で示されている。(A)心臓血管の中での配列番号1とCD31の共局在。(B)心内膜での配列番号1とCD31の共局在。(C)対照ペプチドは心臓では観察されない。(D)抗CRIP2抗体は心臓の内皮細胞を染色し(赤色)、これはCD31と一緒に局在化している。(E)抗CRIP2抗体は、心臓血管に注入されたCRPPR(配列番号1)ペプチドと一緒に局在化している。(F)抗CRIP2抗体は心内膜に注入されたCRPPR(配列番号1)ペプチドと一緒に局在化している。
【図7】図7は、CRPPR(配列番号1)をディスプレイするファージが心臓細胞に結合すること、そして配列番号1をディスプレイするファージのホーミングが抗CRIP2抗体によってブロックされることを示している。CRPPR(配列番号1)をディスプレイするファージを心臓から調製した細胞懸濁液とともにインキュベートした;ファージの結合を、種々の濃度の示した抗体またはペプチドの存在下で、またはそれらが存在しない条件で測定した。(A)ニワトリ抗CRIP2抗体は、心臓細胞への配列番号1をディスプレイするファージの結合をブロックした;正常なIgYをネガティブ対照として使用した。(B)遊離のCRPPR(配列番号1)ペプチドによる配列番号1をディスプレイするファージの結合の用量依存性の阻害と、2種類の無関係な心臓ホーミングペプチドによる阻害がないことにより、エキソビボでのファージ結合システムの特異性を確認した。(C)心臓へのCRPPR(配列番号1)をディスプレイするファージのインビボでのホーミングは、抗CRIP2抗体の同時注射によって阻害された。3回の独立した実験による平均と標準偏差を示す。
【図8】図8は、マウスのシステインリッチタンパク質2(HLP/CRIP2)の(A)ヌクレオチド配列(配列番号24)と(B)アミノ酸配列(配列番号25)を示している。Genbank accession NM_024223。
【図9】図9は、受容体クローン9として同定されたマウスのRIKEN ESTの(A)ヌクレオチド配列(配列番号26)と(B)アミノ酸配列(配列番号27)を示している。Genbank accession BC026536。
【図10】図10は、マウスの1つのIg IL−2受容体関連タンパク質(Sigirr/TIR8)の(A)ヌクレオチド配列(配列番号28)と(B)アミノ酸配列(配列番号29)を示している。Genbank accession BC010806。
【図11】図11は、マウスの嗅神経cDNAのヌクレオチド配列(配列番号30)を示している。これは、受容体クローン27として同定されたタンパク質を含むグルタミンリッチ領域である。Genbank accession AK032239。
【図12】図12は、不可欠な膜タンパク質CII−3に対して類似性を有していると推定されるマウスのポリペプチド(MpcII−3)の(A)ヌクレオチド配列(配列番号32)と(B)アミノ酸配列(配列番号33)を示している。Genbank accession AK032458。
【図13】図13は、マウス膀胱ガン関連タンパク質ホモログ(bc10)の(A)ヌクレオチド配列(配列番号34)と(B)アミノ酸配列(配列番号35)を示している。Genbank accession BC026935。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項2】
ペプチドである、請求項1に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項3】
40未満の残基の長さを有している、請求項1に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項4】
20未満の残基の長さを有している、請求項1に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項5】
アミノ酸配列GRKSKTV(配列番号14)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項6】
ペプチドである、請求項5に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項7】
立体構造によって拘束されている、請求項5に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項8】
アミノ酸配列CGRKSKTVC(配列番号2)を含む、請求項5に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項9】
100未満の残基の長さを有している、請求項5に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項10】
60未満の残基の長さを有している、請求項5に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項11】
20未満の残基の長さを有している、請求項5に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項12】
アミノ酸配列CXGRKSKTVZC(配列番号15)またはそのペプチド模倣物を含み、
式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、そして
式中、Z=0から20個の別々に選択される残基である、
単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項13】
150未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CARPAR(配列番号5)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項14】
ペプチドである、請求項13に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項15】
100残基未満の長さを有している、請求項13に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項16】
60残基未満の長さを有している、請求項13に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項17】
20残基未満の長さを有している、請求項13に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項18】
50未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CPKRPR(配列番号6)もしくはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項19】
ペプチドである、請求項18に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項20】
40残基未満の長さを有している、請求項18に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項21】
20残基未満の長さを有している、請求項18に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項22】
400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項23】
ペプチドである、請求項22に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項24】
100未満の残基の長さを有している、請求項22に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項25】
60未満の残基の長さを有している、請求項22に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項26】
20未満の残基の長さを有している、請求項22に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項27】
アミノ酸配列RNSWKPN(配列番号16)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項28】
ペプチドである、請求項27に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項29】
立体構造によって拘束されている、請求項27に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項30】
アミノ酸配列CRNSWKPNC(配列番号8)を含む、請求項27に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項31】
100未満の残基の長さを有している、請求項27に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項32】
60未満の残基の長さを有している、請求項27に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項33】
20未満の残基の長さを有している、請求項27に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項34】
アミノ酸配列CXRNSWKPNZC(配列番号17)またはそのペプチド模倣物を含み、
式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、そして
式中、Z=0から20個の別々に選択される残基である、
単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項35】
アミノ酸配列RGSSS(配列番号9)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項36】
ペプチドである、請求項35に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項37】
100未満の残基の長さを有している、請求項35に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項38】
60未満の残基の長さを有している、請求項35に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項39】
20未満の残基の長さを有している、請求項35に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項40】
400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列RSTRANP(配列番号18)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項41】
ペプチドである、請求項40に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項42】
立体構造によって拘束されている、請求項40に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項43】
アミノ酸配列CRSTRANPC(配列番号11)を含む、請求項40に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項44】
100未満の残基の長さを有している、請求項40に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項45】
60未満の残基の長さを有している、請求項40に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項46】
20未満の残基の長さを有している、請求項40に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項47】
アミノ酸配列CXRSTRANPZC(配列番号19)またはそのペプチド模倣物を含み、
式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、そして
式中、Z=0から20個の別々に選択される残基である、
単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項48】
400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列PKTRRVP(配列番号20)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項49】
ペプチドである、請求項48に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項50】
立体構造によって拘束されている、請求項48に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項51】
アミノ酸配列CPKTRRVPC(配列番号12)を含む、請求項48に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項52】
100未満の残基の長さを有している、請求項48に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項53】
60未満の残基の長さを有している、請求項48に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項54】
20未満の残基の長さを有している、請求項48に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項55】
アミノ酸配列CXPKTRRVPZC(配列番号21)またはそのペプチド模倣物を含み、
式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、そして
式中、Z=0から20個の別々に選択される残基である、
単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項56】
400未満の残基の長さを有しており、アミノ酸配列SGMARTK(配列番号22)またはそのペプチド模倣物を含む、単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項57】
ペプチドである、請求項56に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項58】
立体構造によって拘束されている、請求項56に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項59】
アミノ酸配列CSGMARTKC(配列番号13)を含む、請求項56に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項60】
100未満の残基の長さを有している、請求項56に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項61】
60未満の残基の長さを有している、請求項56に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項62】
20未満の残基の長さを有している、請求項56に記載の単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項63】
CXSGMARTKZC(配列番号23)またはそのペプチド模倣物を含み、
式中、X=0から20個の別々に選択される残基であり、そして
式中、Z=0から20個の別々に選択される残基である、
単離されたペプチドまたはペプチド模倣物。
【請求項64】
心臓血管に選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法であって:
(a)HLP/CRIP2またはその断片を、HLP/CRIP2に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;
(b)HLP/CRIP2に対する分子の特異的結合をアッセイする工程;および
(c)ライブラリーから1つ以上のHLP/CRIP2結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、HLP/CRIP2に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程
を含む、方法。
【請求項65】
工程(a)に、精製されたHLP/CRIPまたはその断片を、前記分子のライブラリーと接触させることが含まれる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
工程(a)に、細胞表面HLP/CRIP2またはその断片を発現する細胞を、前記分子のライブラリーと接触させることが含まれる、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記HLP/CRIP2がヒトまたはマウスのHLP/CRIP2である、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
HLP/CRIP2のCRPPR(配列番号1)結合断片またはCGRKSKTVC(配列番号2)結合断片を、前記分子のライブラリーと接触させる工程を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記分子のライブラリーが、低分子、ペプチド、およびペプチド模倣物、または抗体およびその抗原結合断片のライブラリーである、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
心臓血管に選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法であって:
(a)受容体クローン9またはその断片を、受容体クローン9に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;
(b)受容体クローン9に対する分子の特異的結合をアッセイする工程;および
(c)ライブラリーから1つ以上の受容体クローン9結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、受容体クローン9に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程
を含む、方法。
【請求項71】
工程(a)に、精製された受容体クローン9またはその断片を、前記分子のライブラリーと接触させることが含まれる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
工程(a)に、細胞表面受容体クローン9またはその断片を発現する細胞を、前記分子のライブラリーと接触させることが含まれる、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記受容体クローン9がヒトまたはマウスの受容体クローン9である、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
受容体クローン9の配列番号5結合断片または配列番号6結合断片を、前記分子のライブラリーと接触させる工程を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
前記分子のライブラリーが、低分子、ペプチド、およびペプチド模倣物、または抗体およびその抗原結合断片のライブラリーである、請求項70に記載の方法。
【請求項76】
心臓血管に選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法であって:
(a)Sigirr/TIR8またはその断片を、Sigirr/TIR8に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;
(b)Sigirr/TIR8に対する分子の特異的結合をアッセイする工程;および
(c)ライブラリーから1つ以上のSigirr/TIR8結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、Sigirr/TIR8に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程
を含む、方法。
【請求項77】
工程(a)に、精製されたSigirr/TIR8またはその断片を、前記分子のライブラリーと接触させることが含まれる、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
工程(a)に、細胞表面Sigirr/TIR8またはその断片を発現する細胞を、前記分子のライブラリーと接触させることが含まれる、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記Sigirr/TIR8がヒトまたはマウスのSigirr/TIR8である、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記マウスSigirr/TIR8に配列番号29が含まれている、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
Sigirr/TIR8の配列番号7結合断片、配列番号8結合断片、または配列番号9結合断片を、前記分子のライブラリーと接触させる工程を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項82】
前記分子のライブラリーが、低分子、ペプチド、およびペプチド模倣物、または抗体およびその抗原結合断片のライブラリーである、請求項76に記載の方法。
【請求項83】
心臓血管に選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法であって:
(a)MpcII−3関連タンパク質またはその断片を、MpcII−3関連タンパク質に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;
(b)MpcII−3関連タンパク質に対する分子の特異的結合をアッセイする工程;および
(c)ライブラリーから1つ以上のMpcII−3関連タンパク質結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、MpcII−3関連タンパク質に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程
を含む、方法。
【請求項84】
工程(a)に、精製されたMpcII−3関連タンパク質またはその断片を、前記分子のライブラリーと接触させることが含まれる、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
工程(a)に、細胞表面MpcII−3関連タンパク質またはその断片を発現する細胞を、前記分子のライブラリーと接触させることが含まれる、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記MpcII−3関連タンパク質がヒトまたはマウスのMpcII−3関連タンパク質である、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
前記マウスMpcII−3関連タンパク質に配列番号33が含まれている、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
MpcII−3関連タンパク質の、CRSTRANPC(配列番号11)結合断片を、前記分子のライブラリーと接触させる工程を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項89】
前記分子のライブラリーが、低分子、ペプチド、およびペプチド模倣物、または抗体およびその抗原結合断片のライブラリーである、請求項83に記載の方法。
【請求項90】
心臓血管に選択的にホーミングする1つ以上のホーミング分子を単離する方法であって:
(a)bc10またはその断片を、bc10に対する分子の特異的結合に適している条件下で分子のライブラリーと接触させる工程;
(b)bc10に対する分子の特異的結合をアッセイする工程;および
(c)ライブラリーから1つ以上のbc10結合分子を分離し、それによって心臓血管に選択的にホーミングし、bc10に特異的に結合する1つ以上のホーミング分子を単離する工程
を含む、方法。
【請求項91】
工程(a)に、精製されたbc10またはその断片を、前記分子のライブラリーと接触させることが含まれる、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
工程(a)に、細胞表面bc10またはその断片を発現する細胞を、前記分子のライブラリーと接触させることが含まれる、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
前記bc10がヒトまたはマウスのbc10である、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
前記マウスbc10に配列番号35が含まれている、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
bc10の配列番号12結合断片または配列番号13結合断片を、前記分子のライブラリーと接触させる工程を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項96】
前記分子のライブラリーが、低分子、ペプチド、およびペプチド模倣物、または抗体およびその抗原結合断片のライブラリーである、請求項90に記載の方法。
【請求項97】
心臓血管に選択的にホーミングして、HLP/CRIP2(配列番号25)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に連結された部分を含む結合体を被験体に投与し、それによって前記部分を心臓血管に対して指向させる工程を含む、1つの部分を被験体の心臓血管に対して指向させる方法。
【請求項98】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記抗体が生物学的活性を有している、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
前記部分が検出可能な部分である、請求項97に記載の方法。
【請求項101】
前記部分が治療薬である、請求項97に記載の方法。
【請求項102】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
心臓血管に選択的にホーミングして、配列番号27に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に連結された部分を含む結合体を被験体に投与し、それによって前記部分を心臓血管に対して指向させる工程を含む、1つの部分を被験体の心臓血管に対して指向させる方法。
【請求項104】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記抗体が生物学的活性を有している、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記部分が検出可能な物質である、請求項103に記載の方法。
【請求項107】
前記部分が治療薬である、請求項103に記載の方法。
【請求項108】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
心臓血管に選択的にホーミングして、Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に連結された部分を含む結合体を被験体に投与し、それによって前記部分を心臓血管に対して指向させる工程を含む、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法。
【請求項110】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記抗体が生物学的活性を有している、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
前記部分が検出可能な物質である、請求項109に記載の方法。
【請求項113】
前記部分が治療薬である、請求項109に記載の方法。
【請求項114】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
心臓血管に選択的にホーミングして、配列番号33に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に連結された部分を含む結合体を被験体に投与し、それによって前記部分を心臓血管に対して指向させる工程を含む、1つの部分を被験体の心臓血管に対して指向させる方法。
【請求項116】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記抗体が生物学的活性を有している、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
前記部分が検出可能な物質である、請求項115に記載の方法。
【請求項119】
前記部分が治療薬である、請求項115に記載の方法。
【請求項120】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
心臓血管に選択的にホーミングして、bc10(配列番号35)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に連結された部分を含む結合体を被験体に投与し、それによって前記部分を心臓血管に対して指向させる工程を含む、1つの部分を被験体の心臓血管に対して指向させる方法。
【請求項122】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記抗体が生物学的活性を有している、請求項121に記載の方法。
【請求項124】
前記部分が検出可能な物質である、請求項121に記載の方法。
【請求項125】
前記部分が治療薬である、請求項121に記載の方法。
【請求項126】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
心臓血管に選択的にホーミングし、システインリッチタンパク質2(HLP/CRIP2;配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む、結合体。
【請求項128】
前記ホーミング分子が、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性でインビボで心臓にホーミングする、請求項127に記載の結合体。
【請求項129】
前記ホーミング分子がペプチドまたはペプチド模倣物である、請求項127に記載の結合体。
【請求項130】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項129に記載の結合体。
【請求項131】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号1のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項130に記載の結合体。
【請求項132】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号1のアミノ酸配列が含まれている、請求項131に記載の結合体。
【請求項133】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CGRKSKTVC(配列番号2)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項129に記載の結合体。
【請求項134】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号2のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項133に記載の結合体。
【請求項135】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に配列番号2のアミノ酸配列が含まれている、請求項134に記載の結合体。
【請求項136】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が立体構造によって拘束されている、請求項133に記載の結合体。
【請求項137】
前記ホーミング分子が抗体またはその抗原結合断片である、請求項127に記載の結合体。
【請求項138】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項127、130、または133に記載の結合体。
【請求項139】
前記治療薬が血管形成薬である、請求項138に記載の結合体。
【請求項140】
前記治療薬が抗血栓剤である、請求項138に記載の結合体。
【請求項141】
心臓血管に選択的にホーミングして、システインリッチタンパク質2(HLP/CRIP2;配列番号25)に特異的に結合するホーミング分子に連結された部分を含む結合体を被験体に投与し、それによって前記部分を心臓血管に対して指向させる工程を含む、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法。
【請求項142】
前記ホーミング分子が、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性でインビボで心臓にホーミングする、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記ホーミング分子がペプチドまたはペプチド模倣物である、請求項141に記載の方法。
【請求項144】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CRPPR(配列番号1)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号1のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号1のアミノ酸配列が含まれている、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CGRKSKTVC(配列番号2)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項143に記載の方法。
【請求項148】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号2のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に配列番号2のアミノ酸配列が含まれている、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が立体構造によって拘束されている、請求項147に記載の方法。
【請求項151】
前記ホーミング分子が抗体またはその抗原結合断片である、請求項141に記載の方法。
【請求項152】
前記部分が検出可能な部分である、請求項141に記載の方法。
【請求項153】
前記検出可能な部分が放射性核種または常磁性イオンである、請求項152に記載の方法。
【請求項154】
前記部分が治療薬である、請求項141に記載の方法。
【請求項155】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
心臓血管に選択的にホーミングし、1つのIL−2受容体関連タンパク質(Sigirr/TIR8;配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む、結合体。
【請求項157】
前記ホーミング分子が、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性でインビボで心臓にホーミングする、請求項156に記載の結合体。
【請求項158】
前記ホーミング分子がペプチドまたはペプチド模倣物である、請求項156に記載の結合体。
【請求項159】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項158に記載の結合体。
【請求項160】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号7のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項159に記載の結合体。
【請求項161】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号7のアミノ酸配列が含まれている、請求項160に記載の結合体。
【請求項162】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CRNSWKPNC(配列番号8)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項158に記載の結合体。
【請求項163】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号8のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項162に記載の結合体。
【請求項164】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号8のアミノ酸配列が含まれている、請求項163に記載の結合体。
【請求項165】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が立体構造によって拘束されている、請求項162に記載の結合体。
【請求項166】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物にアミノ酸配列RGSSS(配列番号9)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項158に記載の結合体。
【請求項167】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号9のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項166に記載の結合体。
【請求項168】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号9のアミノ酸配列が含まれている、請求項167に記載の結合体。
【請求項169】
前記ホーミング分子が抗体またはその抗原結合断片である、請求項156に記載の結合体。
【請求項170】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項156、159、162、または166に記載の結合体。
【請求項171】
前記治療薬が血管形成薬である、請求項170に記載の結合体。
【請求項172】
前記治療薬が抗血栓剤である、請求項170に記載の結合体。
【請求項173】
心臓血管に選択的にホーミングして、Sigirr/TIR8(配列番号29)に特異的に結合するホーミング分子に連結された部分を含む結合体を被験体に投与し、それによって前記部分を心臓血管に対して指向させる工程を含む、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法。
【請求項174】
前記ホーミング分子が、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性でインビボで心臓にホーミングする、請求項173に記載の方法。
【請求項175】
前記ホーミング分子がペプチドまたはペプチド模倣物である、請求項173に記載の方法。
【請求項176】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CKRAVR(配列番号7)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項175に記載の方法。
【請求項177】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号7のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項176に記載の方法。
【請求項178】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号7のアミノ酸配列が含まれている、請求項177に記載の方法。
【請求項179】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CRNSWKPNC(配列番号8)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項175に記載の方法。
【請求項180】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号8のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項179に記載の方法。
【請求項181】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に配列番号8のアミノ酸配列が含まれている、請求項180に記載の方法。
【請求項182】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が立体構造によって拘束されている、請求項179に記載の方法。
【請求項183】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列RGSSS(配列番号9)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項175に記載の方法。
【請求項184】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号9のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項183に記載の方法。
【請求項185】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に配列番号9のアミノ酸配列が含まれている、請求項184に記載の方法。
【請求項186】
前記ホーミング分子が抗体またはその抗原結合断片である、請求項173に記載の方法。
【請求項187】
前記部分が検出可能な部分である、請求項173に記載の方法。
【請求項188】
前記検出可能な部分が放射性核種または常磁性イオンである、請求項187に記載の方法。
【請求項189】
前記部分が治療薬である、請求項173に記載の方法。
【請求項190】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項189に記載の方法。
【請求項191】
心臓血管に選択的にホーミングし、配列番号33に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む、結合体。
【請求項192】
前記ホーミング分子が、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性でインビボで心臓にホーミングする、請求項191に記載の結合体。
【請求項193】
前記ホーミング分子がペプチドまたはペプチド模倣物である、請求項191に記載の結合体。
【請求項194】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CRSTRANPC(配列番号11)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項193に記載の結合体。
【請求項195】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号11のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項194に記載の結合体。
【請求項196】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号11のアミノ酸配列が含まれている、請求項195に記載の結合体
【請求項197】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が立体構造によって拘束されている、請求項194に記載の結合体。
【請求項198】
前記ホーミング分子が抗体またはその抗原結合断片である、請求項191に記載の結合体。
【請求項199】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項191または194に記載の結合体。
【請求項200】
前記治療薬が血管形成薬である、請求項199に記載の結合体。
【請求項201】
前記治療薬が抗血栓剤である、請求項199に記載の結合体。
【請求項202】
心臓血管に選択的にホーミングして、配列番号33に特異的に結合するホーミング分子に連結された部分を含む結合体を被験体に投与し、それによって前記部分を心臓血管に対して指向させる工程を含む、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法。
【請求項203】
前記ホーミング分子が、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性でインビボで心臓にホーミングする、請求項202に記載の方法。
【請求項204】
前記ホーミング分子がペプチドまたはペプチド模倣物である、請求項202に記載の方法。
【請求項205】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CRSTRANPC(配列番号11)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項204に記載の方法。
【請求項206】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号11のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項205に記載の方法。
【請求項207】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号11のアミノ酸配列が含まれている、請求項206に記載の方法。
【請求項208】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が立体構造によって拘束されている、請求項205に記載の方法。
【請求項209】
前記ホーミング分子が抗体またはその抗原結合断片である、請求項202に記載の方法。
【請求項210】
前記部分が検出可能な部分である、請求項202に記載の方法。
【請求項211】
前記検出可能な部分が放射性核種または常磁性イオンである、請求項210に記載の方法。
【請求項212】
前記部分が治療薬である、請求項202に記載の方法。
【請求項213】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項212に記載の方法。
【請求項214】
心臓血管に選択的にホーミングし、マウスの膀胱ガン関連タンパク質ホモログ(bc10;配列番号35)に特異的に結合するホーミング分子に連結させられた治療薬を含む、結合体。
【請求項215】
前記ホーミング分子が、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性でインビボで心臓にホーミングする、請求項214に記載の結合体。
【請求項216】
前記ホーミング分子がペプチドまたはペプチド模倣物である、請求項214に記載の結合体。
【請求項217】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CPKTRRVPC(配列番号12)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項216に記載の結合体。
【請求項218】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号12のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項217に記載の結合体。
【請求項219】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号12のアミノ酸配列が含まれている、請求項218に記載の結合体。
【請求項220】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が立体構造によって拘束されている、請求項217に記載の結合体。
【請求項221】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CSGMARTKC(配列番号13)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項216に記載の結合体。
【請求項222】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号13のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項221に記載の結合体。
【請求項223】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号13のアミノ酸配列が含まれている、請求項222に記載の結合体。
【請求項224】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が立体構造によって拘束されている、請求項221に記載の結合体。
【請求項225】
前記ホーミング分子が抗体またはその抗原結合断片である、請求項214に記載の結合体。
【請求項226】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項214、217、または221に記載の結合体。
【請求項227】
前記治療薬が血管形成薬である、請求項226に記載の結合体。
【請求項228】
前記治療薬が抗血栓剤である、請求項226に記載の結合体。
【請求項229】
心臓血管に選択的にホーミングして、マウスの膀胱ガン関連タンパク質ホモログ(bc10;配列35)に特異的に結合するホーミング分子に連結された部分を含む結合体を被験体に投与し、それによって前記部分を心臓血管に対して指向させる工程を含む、被験体の心臓血管に対して1つの部分を指向させる方法。
【請求項230】
前記ホーミング分子が、組み換え体ではないファージと比較して少なくとも5倍の選択性でインビボで心臓にホーミングする、請求項229に記載の方法。
【請求項231】
前記ホーミング分子がペプチドまたはペプチド模倣物である、請求項229に記載の方法。
【請求項232】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CPKTRRVPC(配列番号12)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項231に記載の方法。
【請求項233】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号12のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項232に記載の方法。
【請求項234】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号12のアミノ酸配列が含まれている、請求項233に記載の方法。
【請求項235】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が立体構造によって拘束されている、請求項232に記載の方法。
【請求項236】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、アミノ酸配列CSGMARTKC(配列番号13)またはその保存的変異体もしくはペプチド模倣物が含まれている、請求項231に記載の方法。
【請求項237】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号13のアミノ酸配列またはそのペプチド模倣物が含まれている、請求項236に記載の方法。
【請求項238】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物に、配列番号13のアミノ酸配列が含まれている、請求項237に記載の方法。
【請求項239】
前記ホーミングペプチドまたはペプチド模倣物が立体構造によって拘束されている、請求項236に記載の方法。
【請求項240】
前記ホーミング分子が抗体またはその抗原結合断片である、請求項229に記載の方法。
【請求項241】
前記部分が検出可能な部分である、請求項229に記載の方法。
【請求項242】
前記検出可能な部分が放射性核種または常磁性イオンである、請求項241に記載の方法。
【請求項243】
前記部分が治療薬である、請求項229に記載の方法。
【請求項244】
前記治療薬が、血管形成薬、抗血栓剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、抗不整脈薬、腫瘍壊死因子阻害剤、エンドセリン阻害剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス剤、およびウイルスベクターからなる群より選択される、請求項243に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−512391(P2008−512391A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530506(P2007−530506)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/032205
【国際公開番号】WO2006/029343
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(591180152)ザ バーナム インスティテュート (8)
【Fターム(参考)】