説明

心血管または脳血管主要有害事象を検出するための方法

本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法に関する。本方法は、1セットの分析物、例えばアルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、グルタチオンS−トランスフェラーゼおよび組織因子の、ヒトの血液系サンプル中の濃度を測定することを含み得る。本方法は、前記セットの分析物についてのMACCE指数を決定すること、およびMACCE指数がゼロより大きい場合には心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度増加、またはMACCE指数がゼロ以下である場合には心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度低下を有するものとしてそのヒトを同定することも含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願)
本願は、2007年10月10日に出願された米国仮特許出願第60/998,563号および2007年10月11日に出願された米国仮特許出願第60/998,756号に対する優先権および利益を、米国特許法セクション119(e)のもとに主張する。米国仮特許出願第60/998,563号および米国仮特許出願第60/998,756号のそれぞれの全ての開示は、参考により本明細書中に援用される。
【0002】
本教示は、ヒトが心血管または脳血管主要有害事象、すなわちMACCEに罹患するかどうかを予測するための方法に関する。より具体的には、本教示は、1つ以上の分析物を使用することにより、心血管または脳血管主要有害事象を有するまたは発現するリスクがあることについて個体をスクリーニングするための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓発作は、単独首位の死因である(www.americanheart.org参照)。米国における死亡の5件に1件は心臓発作に起因する。2004年、米国では、およそ1,200,000件の新規および再発性心血管発作に起因する心臓発作による死亡が452,327件あった。
【0004】
脳卒中は、米国における第三位の死因である(www.americanheart.org参照)。およそ700,000件の新規および再発性脳血管事象に起因して2004年には150,147人が脳卒中により命を奪われた。米国において、脳卒中は、重篤な長期能力障害の主要原因である。米国では、今日、約5,700,000人の脳卒中生存者が生き続けている。2,400,000人が男性であり、3,300,000人が女性である。
【0005】
心臓発作も、一定のタイプの脳卒中も、受攻性アテローム硬化性プラークの破裂の結果として生じ得る(非特許文献1、非特許文献2)。現在、心臓発作または脳卒中を有するリスクは、一般人口において一定の臨床的および生化学的リスク因子を考慮することにより評定されている(非特許文献3;非特許文献4)が、これらの特徴は、心血管リスクを完全には説明しない(非特許文献5;非特許文献6)。
【0006】
心臓発作または脳卒中の将来の発生を予測する能力が向上すれば、そのようなリスクを有する個体を予防対策のターゲットにすることができ、また、これらの主要死因の発生全体を減少させることができよう。
【0007】
個体の血液中の多数のタンパク質および代謝産物の測定により、その個体の生化学的状態への「窓口」の見通しが得られ、ならびに彼または彼女の心血管系の状態についてのより良好な示度、およびその被験者が将来心臓発作または脳卒中を経験する尤度が得られるだろう(非特許文献7)。この理論的根拠をもって、本発明者らは、血液または血漿中の分子バイオマーカープロフィール(例えば、1セットのタンパク質、1セットの代謝産物、1セットのタンパク質および代謝産物、またはタンパク質および/もしくは代謝産物を含み得る1セットの他の分析物)および近々の心血管または脳血管主要有害事象(MACCE)を予測する関連アルゴリズムの発見を目的として研究を行った。
【0008】
このように、主要急性心臓事象を予測するための診断法が、依然として必要とされている。詳細には、心血管および脳血管主要悪性事象の診断および/または予測が可能となる、信頼でき、且つ、費用効率の高い方法および組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Naghaviら、Circulation 108:1664−72,2003
【非特許文献2】Naghaviら、Circulation 108:1772−8,2003
【非特許文献3】Wilsonら、Circulation97:1837−47,1998
【非特許文献4】ATP III,JAMA 285:2486−97,2001
【非特許文献5】Khotら、JAMA290:898−904,2003
【非特許文献6】Greenlandら、JAMA 290:891−7,2003
【非特許文献7】Vasan,Circulation113:2335−62,2006
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本教示は、個体が心血管または脳血管主要有害事象、すなわちMACCE、に罹患することを予測するための方法に関する。この方法は、その個体からの血液サンプルから採取した血漿または血清中の一定の分析物、例えばタンパク質および代謝産物、の1つ以上についてのレベルを測定すること、およびその後、決定アルゴリズムを用いて、その個体がMACCEを経験する可能性が高いかどうかを予測することを含む。
【0011】
被験者における心血管または脳血管主要有害事象の尤度の予測に有用である血液中のマーカーを同定した。これらのマーカーのレベルは、標準と異なるとき、心血管または脳血管主要有害事象の予兆となる。本教示による方法は、1つ以上の分析物を利用して心血管または脳血管主要有害事象を予測する。具体的には、これらの分析物のうちの1つ以上の使用、およびこれらの分析物のレベルが標準と異なるかどうかの判定により、心血管または脳血管主要有害事象を発現するリスクがあることについて被験者をスクリーニングすることができる。
【0012】
本教示の分析物は、心血管または脳血管主要有害事象の尤度の単なる予測以上に有用であり得る。それらの分析物を使用して、心血管または脳血管主要有害事象を予防するための候補薬をスクリーニングすることができる。それらの分析物を使用して、健康状態のモニターを必要とする被験者を同定することができる。また、それらの分析物を使用して、冠動脈疾患または脳血管疾患についての動物モデルを検証することができる。
【0013】
1つの態様において、本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法を提供する。この方法は、1セットの分析物の、ヒトの血液系サンプル中の濃度の測定を含む。セットの分析物は、アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、および組織因子を含む場合がある。前記方法は、セットの分析物についてのMACCE指数を決定すること、およびそのMACCE指数がより大きい場合には心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度増加、またはそのMACCE指数がゼロ以下である場合には心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度低下を有するものとしてそのヒトを同定することをさらに含む。
【0014】
別の態様において、本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法を提供し、ここで、この方法は、ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物の測定濃度に基づいて、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を示す値を有するMACCE指数を決定することを含む。セットの分析物は、アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、および組織因子を含む場合がある。前記方法は、MACCE指数、心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度またはそれらの等価物のうちの少なくとも1つを、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに転送すること、表示すること、保存すること、または出力することも含む。
【0015】
さらなる態様において、本教示は、ヒトを治療する方法を提供する。この方法は、ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を示す値を有するMACCEを決定することを含む。セットの分析物は、アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、および組織因子を含む場合がある。前記方法は、ヒトが、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加を有するものとして同定された場合、治療を推奨する、是認する、または施与することをさらに含む場合がある。
【0016】
様々な実施形態によると、セットの分析物は、CD40、フィブリノゲン、IL−3、IL−8、SGOT、およびフォン・ヴィルブランド因子も含む場合がある。一部の実施形態によると、セットの分析物についてのMACCE指数の決定は、それぞれの分析物の測定濃度を標準化して、標準化濃度を得ること、それぞれの分析物の標準化濃度に分析物定数をかけて分析物値を得ること、次いで、それぞれの分析物の分析物値を合計してMACCE指数を得ることを含む場合がある。一定の実施形態によると、測定濃度の標準化は、測定濃度から個体群平均値を引いて結果を得ること、およびその結果を個体群平均値の標準偏差で割ることを含む場合がある。
【0017】
一部の実施形態において、前記方法は、1セットの分析物の、ヒトの血液系サンプル中の濃度を測定することを含み、ここで、セットの分析物は、アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、CD40、フィブリノゲン、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、IL−3、IL−8、SGOT、組織因子、およびフォン・ヴィルブランド因子から成る場合がある。前記方法は、セットの分析物についてのMACCE指数を決定すること、およびMACCE指数がゼロより大きい場合には心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度増加、またはMACCE指数がゼロ以下である場合には心血管または脳血管主要有害事象の尤度低下を有するものとしてそのヒトを同定することをさらに含む。
【0018】
さらなる態様において、本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法を提供し、ここで、この方法は、ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物の測定濃度に基づいて、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を示す値を有するMACCE指数を決定することを含む。セットの分析物は、アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、CD40、フィブリノゲン、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、IL−3、IL−8、SGOT、組織因子、およびフォン・ヴィルブランド因子から成る場合がある。前記方法は、MACCE指数、心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、またはそれらの等価物のうちの少なくとも1つを、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに転送すること、表示すること、保存すること、または出力することも含む場合がある。
【0019】
本教示の追加の態様は、ヒトを治療する方法を提供し、ここで、この方法は、ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を示す値を有するMACCE指数を決定することを含む。セットの分析物は、アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、CD40、フィブリノゲン、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、IL−3、IL−8、SGOT、組織因子、およびフォン・ヴィルブランド因子から成る場合がある。前記方法は、そのヒトが、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加を有するものとして同定された場合、治療を推奨すること、是認すること、または施与することも含む場合がある。
【0020】
本教示の様々な実施形態によると、セットの分析物についてのMACCE指数の決定は、それぞれの分析物の測定濃度を標準化して標準化濃度を得ること、それぞれの分析物の標準化濃度に分析物定数をかけて分析物値を得ること、次いで、それぞれの分析物の分析物値を合計してMACCE指数を得ることを含む場合がある。一定の実施形態によると、測定濃度の標準化は、測定濃度から個体群平均値を引いて結果を得ること、およびその結果を個体群平均値の標準偏差で割ることを含む。
【0021】
他の態様において、本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法を提供し、ここで、この方法は、1セットの分析物の少なくとも1つの分析物の、ヒトの血液系サンプル中の濃度を測定することを含む。セットの分析物は、システイン、フォン・ヴィルブランド因子、IL−8、16:0/18:1ホスファチジルコリン、N−カルボキシ−アラニン、フィブリノゲン、MMP−2、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、アポリポタンパク質A1、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、アルファ−1アンチトリプシン、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18/1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、20:4リゾホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、SHBG、18:1/17:1,16:0トリアシルグリセロール、アラビノース、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールから成る群である。前記方法は、測定濃度と所定の閾値との比較に基づき、そのヒトを、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして同定することをさらに含む。
【0022】
別の態様において、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法を提供し、ここで、この方法は、ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物の少なくとも1つの分析物の測定濃度を所定の閾値と比較して、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を確認することを含む。セットの分析物は、システイン、フォン・ヴィルブランド因子、IL−8、16:0/18:1ホスファチジルコリン、N−カルボキシ−アラニン、フィブリノゲン、MMP−2、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、アポリポタンパク質A1、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、アルファ−1アンチトリプシン、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18/1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、20:4リゾホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、SHBG、18:1/17:1,16:0トリアシルグリセロール、アラビノース、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールから成る群より選択される。前記方法は、測定濃度、所定の閾値、および心血管または脳血管主要有害事象の尤度のうちの少なくとも1つを、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに転送すること、表示すること、保存すること、または出力することも含む場合がある。
【0023】
追加の態様において、本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法を提供し、ここで、この方法は、16:0/18:1ホスファチジルコリン、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、16:0/22:6 ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18:1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、20:4リゾホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、18:1/17:1/16:0トリアシルグリセロール、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールから成る群より選択される1セットの分析物の少なくとも1つの分析物の、ヒトの血液系サンプル中の濃度を測定することを含む。前記方法は、測定濃度と所定の閾値との比較に基づき、そのヒトを、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして同定することも含む場合がある。
【0024】
さらなる態様において、本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法を提供し、ここで、この方法は、ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物の少なくとも1つの分析物の測定濃度を所定の閾値と比較して、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を確認することを含む。分析物は、16:0/18:1ホスファチジルコリン、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18:1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、20:4リゾホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、18:1/17:1/16:0トリアシルグリセロール、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールから成る群より選択される。前記方法は、測定濃度、所定の閾値、および心血管または脳血管主要有害事象の尤度のうちの少なくとも1つを、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに転送すること、表示すること、保存すること、または出力することも含む場合がある。
【0025】
様々な実施形態によると、分析物システイン、フォン・ヴィルブランド因子、IL−8、16:0/18:1ホスファチジルコリン、N−カルボキシ−アラニン、フィブリノゲン、MMP−2、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、アルファ−1アンチトリプシン、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18:1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、SHBG、18:1/17:1,16:0トリアシルグリセロール、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールのそれぞれについての所定の閾値は、それぞれ各々の分析物についての表4中の第4四分位数の下限であり得、この場合、第4四分位数内の測定濃度は、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を増加させる。一部の実施形態によると、分析物システイン、フォン・ヴィルブランド因子、IL−8、16:0/18:1ホスファチジルコリン、N−カルボキシ−アラニン、フィブリノゲン、MMP−2、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、アルファ−1アンチトリプシン、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18:1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、SHBG、18:1/17:1,16:0トリアシルグリセロール、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールのそれぞれについての所定の閾値は、それぞれ各々の分析物についての表4中の第3および第4四分位数の下限であり得、ここで、第3および第4四分位数内の測定濃度は、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を増加させる。
【0026】
様々な実施形態によると、分析物アポリポタンパク質A1、20:4リゾホスファチジルコリンおよびアラビノースのそれぞれについての所定の閾値は、それぞれ各々の分析物についての表4中の第1四分位数の上限であり得、ここで、第1四分位数内の測定濃度は、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を増加させる。一部の実施形態によると、分析物アポリポタンパク質A1、20:4リゾホスファチジルコリンおよびアラビノースのそれぞれについての所定の閾値は、それぞれ各々の分析物についての表4中の第1および第2四分位数の上限であり得、ここで、第1および第2四分位数内の測定濃度は、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を増加させる。
【0027】
本教示の様々な実施形態において、血液系サンプルは、血清または血漿であり得る。
【0028】
さらなる態様において、本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象を予測するための方法を提供し、ここで、この方法は、ヒトから少なくとも1つの血液系サンプルを得ること、そのヒトからのサンプル中の添付書類1において確認される1つ以上の分析物の絶対濃度を測定すること、および付属書類1において確認される1つ以上の分析物の絶対濃度に基づき、そのヒトを、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして同定することを含む場合がある。
【0029】
さらなる態様において、本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象を予測するための方法を提供し、ここで、この方法は、そのヒトからのサンプル中の付属書類1において確認される1つ以上の分析物の絶対濃度を測定すること、絶対濃度を所定の閾値と比較すること、付属書類1において確認される1つ以上の分析物の絶対濃度に基づき、そのヒトを、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして同定すること、および心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、絶対濃度、所定の閾値またはそれらの等価物のうちの少なくとも1つを、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに転送すること、表示すること、保存すること、または出力することを含む。
【0030】
一部の態様において、本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象を予測するための方法を提供し、ここで、この方法は、ヒトから少なくとも1つの血液系サンプルを得ること、そのヒトからのサンプル中の付属書類1において確認される1つ以上の分析物の相対濃度を測定すること、および付属書類1において確認される1つ以上の分析物の相対濃度に基づき、そのヒトを、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして同定することを含む。
【0031】
さらなる態様において、本教示は、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象を予測するための方法を提供し、ここで、この方法は、そのヒトからのサンプル中の付属書類1において確認される1つ以上の分析物の相対濃度を測定すること、相対濃度を所定の閾値と比較すること、付属書類1において確認される1つ以上の分析物の相対濃度に基づき、そのヒトを、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして同定すること、および心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、相対濃度、所定の閾値またはそれらの等価物のうちの少なくとも1つを、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに転送すること、表示すること、保存すること、または出力することを含む。
【0032】
前記方法の様々な実施形態によると、MACCE指数、心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、測定濃度、所定の閾値、またはそれらの等価物は、スクリーンもしくは有形媒体に表示され、またはMACCE指数は、医療業界の人、医療保険プロバイダーもしくは医師に転送される。
【0033】
別の態様において、本教示は、治療方法を提供し、ここで、この治療方法は、付属書類1において確認される1つ以上の分析物の、血液系サンプル中の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または低下を有するものとしてヒトを同定すること、およびそのヒトが心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加を有するものとして同定された場合には、治療を推奨すること、是認することまたは施与することを含む場合がある。
【0034】
さらなる態様において、本教示は、治療を受けるべきでないヒトを同定する方法を提供し、ここで、この方法は、付属書類1において確認される1つ以上の分析物の、血液系サンプル中の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または低下を有するものとしてヒトを同定すること、およびそのヒトが、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加を有するものと同定されない限り、治療の推奨、是認または施与を拒否することを含む場合がある。
【0035】
本教示の前述ならびに他の特徴および利点は、以下の図、説明、実施例および特許請求の範囲から、さらに十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
上記の本教示の前述ならびに他の目的、特徴および利点は、添付の図面と一緒に読むと、様々な例証となる実施形態の以下の説明から、さらに十分に理解されるであろう。本図面中の同様の参照記号は、異なる図を通じて同じ要素を一般に指す。下記の図面が単に例証のためのものであることは、理解されるはずである。本図面は、いかなる点においても本教示の範囲を限定するためのものではない。
【図1】本教示の例示的実施形態による血漿サンプル中の表5からの上位20の分析物のレベルを用いた2年以内のMACCEの発生についての予測を図示する受信者動作特性(ROC)曲線である。
【図2】本教示の例示的実施形態による血漿サンプル中の表6からの上位10のタンパク質分析物のレベルを用いた2年以内のMACCEの発生についての予測を図示する受信者動作特性(ROC)曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
心血管または脳血管主要有害事象の予兆となる分析物を同定した。これらの分析物の1つ以上が、標準物質中のものとは異なる量で個体からの体液サンプル中に存在する場合、それらは、その個体が心血管または脳血管主要有害事象を有するまたは発現するリスクがあることを示し得る。本出願は、2007年10月10日出願の米国特許仮出願番号60/998,563、および2007年10月11日出願の米国特許仮出願番号60/998,756のそれぞれについての全開示を参照により本明細書に組み入れる。
【0038】
本出願全体を通して、組成物を、特定の成分を有する、含む(including)、もしくは含む(comprising)と記載する場合、またはプロセスを、特定のプロセス工程を有する、含む(including)、もしくは含む(comprising)と記載する場合、本教示の該組成物が、列挙する成分から本質的に成る、または成ることも考えられ、本教示の該プロセスが、列挙するプロセス工程から本質的に成る、または成ることも考えられる。
【0039】
本出願において、要素または成分を、列挙する要素または成分のリストに含まれる、および/またはから選択されると言う場合、該要素または成分は、列挙する要素または成分のうちのいずか1つである場合もあり、列挙する要素または成分の2つ以上から成る群から選択される場合もあると解釈すべきである。さらに、本明細書に記載する組成物、装置または方法の要素および/または特徴は、本明細書中で明示的であろうと、暗示的であろうと、本教示の精神および範囲を逸脱することなく様々な方法で組み合わせることができると解釈すべきである。
【0040】
用語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」または「有する(現在分詞形)(having)」の使用は、特に別様に述べていない限り、無制限であり、非限定的であると一般に解釈すべきである。
【0041】
本明細書における単数形の使用は、特に別様に述べていない限り、複数形を含む(逆もまた同じ)。加えて、用語「約」の使用が、量的値の前にある場合、特に別様に述べていない限り、本教示は、その特定の量的値自体も含む。本明細書において用いる場合、用語「約」は、その公称値からの±10%の偏差を指す。
【0042】
工程の順序、または一定の動作を実施するための順序は、本教示が実施可能であり続ける限り、重要でないと解釈すべきである。さらに、2つ以上の工程または作用が、同時に行われることもある。
【0043】
723の分析物を同定した。本教示による一定の方法は、これらの分析物の2つ以上を利用して、心血管または脳血管主要有害事象を予測する。具体的には、これらの方法では、被験者からのサンプルをスクリーニングして、そのサンプルが、これらの723の分析物のそれぞれについて、標準サンプルとは異なる2つ以上のレベルを含有するかどうかを判定することができる。サンプルが、これらの分析物の2つ以上のそれぞれについての、標準物質中のこれらの分析物の量とは異なる量を含有する場合、スクリーニングは、「陽性スクリーニング」(すなわち、その個体は、心血管または脳血管主要有害事象に罹患するリスクがある)とみなされる。心血管または脳血管主要有害事象を分類する際、一般に、多数の分析物を使用するほど、高い感度および特異性を得ることができる。これらの分析物を含有する可能性があるサンプルは、多数の源(例えば、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液、上皮細胞、および内皮細胞)から得られる多数の生体サンプル(例えば、体液、組織、細胞)から抽出することができる。本明細書に開示する723の分析物(表5において確認されている50の分析物だけでない)の可能な組み合わせすべてを、本教示による方法において使用することができると解釈すべきである。
【0044】
実施例1においてさらに十分に説明する方法論を用いて、723の分析物を同定した。簡単に言うと、特定の分析分類プロトコルにより、723の分析物1セットを分析し、スペクトルのピークを得た。付属書類1から4は、分析した723の分析物を含む特定の分子を提供する。これらのピークは、特定の分子の特性を表す。(723の分析物すべてを含む)これらのピークを利用して、50のピーク(ならびに下記のような他の好ましいピーク)を同定した。ピークが分子の特性を表す限り、50のピークをそれよりはるかに多い数のピークの中から同定するということは、50の分析物に対応する50より多くの分子を含む一群の分子からそれらの分析物が選択されることを意味する。分析物(すなわち、分子)は、いずれのタイプの分子であってもよい。分析物(分子)としては、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、ステロイド、核酸、代謝産物および元素が挙げられるが、これらに限定されない。表5は、50のピークを含む特定の分子を提供する(すなわち、選択した分析物を確認する)。表5の第2欄は、重量によってピークをランク順に配列している。従って、最高重量ピークが番号1にランク付けされ、最低重量ピークが番号50にランク付けされる。
【0045】
分析物(すなわち、723の同定された分析物のいずれか、または好ましい50の分析物のいずれか)がわかったので、それらを使用して個体をスクリーニングして、その個体からのサンプル中のこれらの分析物のうちの2つ以上のそれぞれについての量または絶対濃度が、標準からの2つ以上の分析物のそれぞれについての量と異なるかどうかを判定することができ、標準と比較してそのサンプル中の2つ以上の分析物のそれぞれについてのその個体の相対濃度を決定することができ、および心血管または脳血管主要有害事象を発現するリスクを有するものとしてまたはリスクがあるものとして、ある一定の特異性および感度まで、その個体を分類することができる。勿論、分析物の測定量または濃度を比較前に標準化することができる。調査する分析物の数に基づき、アッセイの望ましい感度および特異性を選択することができる。標準は、実際のサンプルである場合もあり、以前に生成された実験データである場合もある。標準は、正常とわかっている人から得ることができる。正常とわかっている人は、健常人である場合もあり、サンプル採取前の所定の期間、所定の食事を摂る場合もある。さらに、サンプルを、被験者と同じ性別の、正常とわかっている人から得る場合ができる。あるいは、分析物を心血管または脳血管主要有害事象がわかっている被験者のものと比較してもよく、この場合、それら2サンプル間の類似性、または標準と比較した分析物の相対濃度を調査することとなろう。医療専門家は、被験サンプルをスクリーニングするために様々な技術および/またはキットを用いて被験サンプル中の特定の分析物のレベルおよび/または量を決定することができる。そのようなアッセイの例は、以下に記載するが、それらとしては、限定されないが、イムノアッセイ、質量分析、クロマトグラフィー、化学分析、比色アッセイ、分光分析、電気化学的分析、および核磁気共鳴が挙げられる。加えて、そのようなアッセイは、全血、血漿、血清、脳脊髄液、唾液、尿、精液、乳頭穿刺液、膵液、およびこれらの組み合わせをはじめとする任意の生体サンプルを用いて行うことができる。これらのアッセイは、特定の分析物を検出するためにどれが一番適するのか、ならびに特定の生体サンプルと共に使用するためにどれが一番適するのかに基づいて選択される。従って、多数のアッセイを用いて所望の分析物を検出することができ、1つ以上の源からのサンプルを分析することができる。
【0046】
分析物は、1つ以上の分離方法を用いることによって検出および/または定量することができる。例えば、適する分離方法をしては、質量分析法、例えば、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)、ESI−MS/MS、ESI−MS/(MS)(nは、ゼロより大きい整数である)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)、表面強化レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI−TOF−MS)、シリコン利用脱離/イオン化(DIOS)、二次イオン質量分析(SIMS)、四重極飛行時間型(Q−TOF)、大気圧化学イオン化質量分析(APCI−MS)、APCI−MS/MS、APCI−(MS)、大気圧光イオン化質量分析(APPI−MS)、APPI−MS/MS、およびAPPI−MS(MS)を挙げることができる。他の質量分析法としては、中でも、四重極、フーリエ変換質量分析(FTMS)およびイオントラップを挙げることができる。同じく使用することができる分光測定技術としては、共鳴分光法および光学分光法が挙げられる。
【0047】
他の適する分離方法としては、化学抽出分配、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性(逆相)液体クロマトグラフィー、等電点分画、一次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)、または他のクロマトグラフ技術、例えば薄層、ガスもしくは液体クロマトグラフィー、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。1つの実施形態では、アッセイすべき生体サンプルを、分離方法の適用前に分画する場合がある。
【0048】
クロマトグラフィー(例えば、液体クロマトグラフィー(「LC」))と質量分析(「MS」)とのタンデム連結は、1つ以上の分析物の検出および定量に有用であり得る。LCは、個体からのサンプル中の、分析物を含み得る分子を分離するために用いることができる。高温で保持することができるLC装置の注入口に、溶媒に溶解した少量のサンプルを注入することができる。この装置のLCカラムには、極性である場合もありまたは非極性である場合もある固体支持体が収容されている。サンプル中の分子の様々な極性のため、分子は、カラム内の固体支持体に対して様々な親和性を有し、異なる時間で溶出するであろう。支持体への分子の親和性が強いほど、カラム内での分子の保持時間が長くなる。それらの分子は、カラムを出ると、質量分析計に入る。質量分析計によって、分子はイオン化される。タンデム質量分析モードで、システムを正しく標準化することができれば、質量分析計に送られたそれぞれの化合物は、様々な質量および存在度のイオンにフラグメント化して、その物質に特有のシグネチャーパターンを形成する。それぞれのピークのタンデム質量分析図をコンピュータデータベースと比較することにより、コンピュータは、通常、それらの分子を高い確度で同定することができる。あるいは、または加えて、この比較を人的検査によって行うことができる。素性が確認されたら、コンピュータは、それぞれのピーク下面積を積分することにより混合物中のそれぞれの分子の相対量を決定する。分子のいずれかが分析物として同定されれば、分析物の量を標準からの分析物の量と比較して、差があるかどうかを判定することができる。
【0049】
分析物自体の物理的分離を必要としない方法によって分析物を検出および/または定量することもできる。例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて、分子の複雑な混合物から分析物のプロフィールを解明することができる。腫瘍を分類するためのNMRの類似の使用が、例えば、Hagberg,NMR Biomed.11:148−56(1998)に開示されている。追加の手順としては、個々の分子の物理的分離を伴わずに分析物プロフィールを決定するために用いることができる、核酸増幅技術が挙げられる。(例えば、Stordeurら,J Immunol Methods 259:55−64(2002)およびTanら,Proc Nat’l Acad Sci USA 99:11387−11392(2002)参照)。
【0050】
サンプル中の分析物は、分析物と特異的に結合することができる結合分子と分析物を化合させることによって検出および/または定量することができる。結合部分としては、例えば、リガンド−受容体ペア、すなわち、特異的結合相互作用を有することができる1対の分子のメンバーを挙げることができる。結合部分としては、例えば、特異的結合ペア、例えば、抗体−抗原、酵素−基質、核酸−核酸、タンパク質−核酸、タンパク質−タンパク質、または当該技術分野において公知の他の特異的結合ペアも挙げることができる。ターゲットに対する親和性が強化された結合タンパク質を設計することができる。場合によっては、結合部分を検出可能な標識、例えば、酵素標識、蛍光標識、放射性標識、リン光標識または着色粒子標識と連結させることができる。標識された複合体を、例えば目視でまたは分光分析計もしくは他の検出器によって検出することができ、ならびに/あるいは定量することができる。
【0051】
当該技術分野において利用可能なゲル電気泳動技術を用いて、分析物を検出および/または定量することもできる。二次元ゲル電気泳動の場合は、先ず、分子を、それらの等電点に従ってpH勾配ゲル中で分離する。次に、得られたゲルを第二ポリアクリルアミドゲル上に置き、分子量に従って分子を分離することができる(例えば、O’Farrell J Biol.Chem.250:4007−4021(1975)参照)。心血管または脳血管主要有害事象のための分析物は、先ず、心血管または脳血管主要有害事象のリスクがあることが疑われる個体から得たサンプルから分子を単離し、次に、二次元ゲル電気泳動により分子を分離して特徴的な二次元ゲル電気泳動パターンを生じさせることによって検出することができる。その後、パターンを、標準(例えば、健常または主要急性心臓事象被験者)から単離した分子を同じまたは類似の条件下で分離することによって生じさせた標準ゲルパターンと比較することができる。標準ゲルパターンを電気泳動パターンの電子データベースに保存し、そこから検索することもできる。このようにして、被験者におけるマーカーの量が、標準における量と異なるかどうかを判定することができる。正常とわかっている標準とは異なる量での二次元ゲル上の複数の、例えば2から50の、心血管または脳血管主要有害事象分析物の存在は、個体における心血管または脳血管主要有害事象についての陽性スクリーニングを示す。このようにして、アッセイにより、心血管または脳血管主要有害事象の予測および治療が可能となる。
【0052】
当該技術分野において利用可能な広範なイムノアッセイ技術のいずれかを用いて、分析物を検出および/または定量することもできる。例えば、サンドイッチイムノアッセイ形式を用いて、被験者からのサンプル中の分析物を検出および/または定量することができる。あるいは、従来の免疫組織化学手順を用いて、1つ以上の標識結合タンパク質を使用してサンプル中の分析物の存在を検出および/または定量することができる。
【0053】
サンドイッチイムノアッセイでは、分析物に結合することができる2つの抗体、例えば、固体支持体上に固定化されたもの、および、溶液中で遊離しており、検出可能な化合物で標識されているものが一般に使用される。第二の抗体のために使用することができる化学標識の例としては、放射性同位元素、蛍光化合物、および反応体または酵素基質に曝露されると有色のまたは電気化学的に活性な生成物を生じさせる酵素または他の分子が挙げられる。分析物を含有するサンプルをこの系の中に置くと、分析物は、固定化抗体と標識抗体との両方に結合して、支持体の表面に「サンドイッチ」免疫複合体を形成する。結合していないサンプル成分および過剰な標識抗体を洗浄除去し、支持体の表面で分析物と複合体化した標識抗体の量を測定することによって、複合体化した分析物を検出する。あるいは、化学部分、例えばハプテンで標識することができる、溶液中で遊離している抗体を、遊離抗体に結合する検出可能な部分で標識したまたは例えばハプテンをそれにカップリングさせた第三の抗体によって検出することができる。
【0054】
良好な検出限界を有する標識を使用すれば、サンドイッチイムノアッセイおよび組織免疫組織化学手順の両方が高特異的であり、非常に感度が高い。免疫学的アッセイの設計、理論およびプロトコルの詳細な論評は、Butt,W.R.,Practical Immunology,ed.Marcel Dekker,New York(1984)およびHarlowら Antibodies,A Laboratory Approach,ed.Cold Spring Harbor Laboratory(1988)はじめとする、当該技術分野における非常に多数のテキストにおいて見出すことができる。
【0055】
一般に、イムノアッセイ設計考慮事項としては、非特異的相互作用の生成物と確実に区別することができる複合体を形成するためにターゲットに対する十分高い結合特異性を有する抗体(例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体)の調製が挙げられる。本明細書において用いる場合、用語「抗体」は、ターゲットに対する適切な結合親和性および特異性を有する結合タンパク質、例えば、抗体、または免疫グロブリン可変領域様結合領域を含む他のタンパク質を意味すると解釈する。抗体結合特異性が高いほど、検出することができるターゲット濃度は低い。本明細書において用いる場合、用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、結合部分、例えば結合タンパク質が、約10−1より大きい、さらに好ましくは約10−1より大きいターゲットに対する結合親和性を有することを意味すると解釈する。
【0056】
個体における心血管または脳血管主要有害事象を予測するためのアッセイにおいて有用である、単離されたターゲット分析物に対する抗体は、当該技術分野において周知であり記載されている標準的な免疫学的手順を用いて産生させることができる。例えば、Practical Immunology,上記、参照。簡単に言うと、単離された分析物を使用して、マウス、ヤギまたは他の適する哺乳動物などの異種宿主において抗体を産生させることができる。宿主における抗体生産を増進することができる適切なアジュバントと分析物とを合わせ、例えば腹腔内投与によって宿主に注射することができる。宿主の免疫応答を刺激するために適する任意のアジュバントを使用することができる。一般に使用されるアジュバントは、フロイント完全アジュバント(死滅させ、乾燥させた微生物細胞を含み、例えば、サンディエゴのCalbiochem Corp.またはニューヨーク州グランドアイランドのGibcoから入手できる乳剤)である。多回抗原注射が所望される場合、後続の注射は、不完全アジュバント(例えば、無細胞乳剤)との組み合わせで抗原を含むことがある。ポリクローナル抗体は、対象となるタンパク質に対する抗体を含有する血清を抽出することによって、抗体生産宿主から単離することができる。モノクローナル抗体は、所望の抗体を生産する宿主細胞を単離すること、免疫学技術分野において公知の標準的な手順を用いてこれらの細胞を骨髄腫細胞と融合させること、およびターゲットと特異的に結合し、所望の結合親和性を有するハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)についてスクリーニングすることによって生産することができる。
【0057】
抗体結合ドメインを生合成により生産し、結合ドメインのアミノ酸配列を操作して、ターゲット上の好ましいエピトープとの結合親和性を強化することもできる。特異的抗体方法論は十分に理解されており、文献に記載されている。それらの調製についてのより詳細な説明は、例えば、Practical Immunology,(上記)において見出すことができる。
【0058】
加えて、当該技術分野においてBABSまたはsFvとしても公知である、遺伝子操作された生合成抗体結合部位を使用して、サンプルが分析物を含有するかどうかを判定することができる。(i)非共有結合的に会合しているまたはジスルフィド結合している合成VおよびV二量体、(ii)共有結合で連結されているV−V単鎖結合部位、(iii)個々のVもしくはVドメイン、または(iv)単鎖抗体結合部位を含むBABSの作製および使用方法は、例えば、米国特許第5,091,513号;同第5,132,405号;同第4,704,692号;および同第4,946,778号に開示されている。さらに、分析物に対する必要不可欠な特異性を有するBABSを、コンビナトリアル遺伝子ライブラリーからのファージ抗体クローニングによって誘導することができる(例えば、Clacksonら Nature 352:624−628(1991)参照)。簡単に言うと、ファージ(単離された分析物で予備免疫したマウスに由来する可変領域遺伝子配列、またはそれらのフラグメントによってコードされた免疫グロブリン可変領域を有するBABSを、それぞれがそれらのコート表面で発現)を、固定化分析物に対する生物活性についてスクリーニングする。固定化分析物に結合するファージを回収し、BABSをコードする遺伝子の塩基配列を決定することができる。その後、対象となるBABSをコードする、得られた核酸配列を、従来の発現系において発現させて、BABSタンパク質を生産することができる。
【0059】
組織または液体サンプル中の分析物のレベルをモニターするための診断および他の組織評価キットおよびアッセイの開発に、単離された分析物を使用することもできる。例えば、キットは、1つ以上の分析物に特異的に結合する、ならびに組織または液体サンプル中の1つ以上の分析物の存在および/または量を検出および/または定量できるようにする、抗体または他の特異的結合タンパク質を含む場合がある。
【0060】
1つ以上の分析物の検出に適するキットは、評価すべきサンプルを捕捉するレセプタクルまたは他の手段、ならびにサンプル中の、本明細書に記載する分析物の1つ以上の存在および/または量を検出するための手段を含む(しかし、これらに限定されない)と考えられる。1つの実施形態において、検出のための手段としては、これらの分析物に特異的な1つ以上の抗体、およびこれらの分析物への抗体の結合を、例えば本明細書に記載する標準的なサンドイッチイムノアッセイにより検出するための手段が挙げられるが、それらに限定されない。細胞内に位置する分析物の存在を(例えば、組織サンプルから)検出すべき場合、キットは、細胞構造を破壊して細胞内成分を露出させる手段を含むこともある。
【0061】
本教示の分析物は、特定の配列の核酸を含む場合がある。例えば実時間定量的PCR(RT−PCR)を用いて、サンプル中の分析物核酸の量または絶対濃度を決定し、測定量と標準とを比較してサンプル中の分析物核酸の相対濃度を決定することにより、分析物のうちの1つ以上を検出および/または定量することができる。RT−PCRは、PCRの結果として生ずる分析物核酸の量を有効に測定する。陽性の結果は、標準からの分析物の量と異なる分析物核酸の測定量、またはゼロより上もしくは下の値を有する相対濃度を表す。
【0062】
特定の核酸分析物の核酸配列に相補的であるプライマーを開発することができる。これらのプライマーは、特定の核酸をコピーおよび増幅するようにポリメラーゼに命令する。RT−PCRは、反応中に増幅された核酸分析物の蓄積を検出する。PCR反応の対数期の間、蓄積する核酸分析物を測定することができる。既知濃度の核酸を有する較正標準を使用して較正曲線を作成することができ、そこから試験サンプル中の核酸分析物の量を外挿法で推定することができる。
【0063】
サンプル中の核酸分析物の量または絶対濃度がわかったら、それを、標準からの分析物の量と比較して、サンプル中の核酸分析物の相対濃度を決定することができる。心血管または脳血管主要有害事象被験者の分類のための標準は、経験的手段によって決定することができる。例えば、1人以上の正常とわかっている個体の個体群からのサンプル中の核酸分析物を増幅し、個体群における核酸分析物の量を定量分析することによって量を決定することができる。
【0064】
また、サンプルについてのさらなる形態の化学分析を行うことができる。例えば、サンプル中のそれぞれの分析物の量または絶対濃度を示す定量試験を行うことができる。比色アッセイは、サンプル中のアッセイ材料の量の代用としてサンプルと反応物との反応によって生じる色強度を測定する定量化学分析である。試薬は、任意の分析物と反応したとき、アッセイサンプルに色を生じさせることを条件とし得る。その色の強度は、サンプル中の分析物の量に依存し得る。強度と較正カラーカードおよび/または標準との比較により、サンプル中の分析物の量を決定することができる。その後、この量を標準からの(例えば、正常とわかっている人からの)分析物の量と比較して、サンプル中の分析物の相対濃度を決定することができる。
【0065】
加えて、尿検査を用いて、尿サンプル中の分析物の量または絶対濃度を決定することができる。尿サンプルは、様々な異なる計器および技術で検査される。一部の検査は、特定の物質の存在下で色を変えるプラスチックの薄いストリップであるディップスティックを使用する。ディップスティックを使用して、分析物の量を測定することができる。
【0066】
少なくとも2つの分析物のそれぞれの絶対レベルまたは濃度を標準からの2つの分析物のそれぞれのレベルと比較して、それぞれの分析物の相対濃度を決定することにより、心血管または脳血管主要有害事象を有することまたは有するリスクがあることを診断できるばかりでなく、この同じ比較方法論を他の用途に適応させることができる。例えば、分析物を用いて、心血管または脳血管主要有害事象を治療するための候補薬をスクリーニングすることができる。この場合、分析物のレベルをモニターすることによって、候補薬での治療をモニターすることができる。分析物の絶対濃度が罹病レベルから標準レベルに戻し、それによって相対濃度がゼロに近づくならば、効力を判定することができる。さらに、心血管または脳血管主要有害事象を治療するために有効であることが既に判明している任意の薬物に関して、ある被験者は応答者である場合があり、またある被験者は非応答者である場合があるということもある。従って、治療の間、分析物をモニターして、分析物の絶対レベルまたは濃度が標準レベルに戻り、それによって相対濃度がゼロに近づくかどうかを判定することにより、薬物が有効であるかどうかを判定することができる。勿論、応答者および非応答者の既知個体群が一切存在しない場合もあるので、任意の心血管または脳血管主要有害事象被験者に対する薬物治療の効力を経時的にモニターしてもよい。それが意図した効果を生じない場合、その使用を継続することもあり、その代わりに別の薬物を供給することもある。
【0067】
さらに、少なくとも2つの分析物のそれぞれの絶対濃度レベルを標準からの2つの分析物のそれぞれのレベルと比較することによる相対濃度の決定は、予防的スクリーニング手段として、心血管または脳血管有害事象が観察されたまさにそのときでなく(すなわち、該疾病が進行してしまった場合がある後に)行うことができる。例えば、心血管または脳血管有害事象の証拠が無いということを前提にして、心血管または脳血管主要有害事象を有するまたは有するリスクがあるという診断をできる限り早期に得るために、一定の年齢より後に所定の間隔で被験者をモニターしてもよい。スクリーニングが陽性である場合、医療専門家は、疾病の進行についてさらなるスクリーニングを推奨する可能性があり、および/または医療専門家は、薬物もしくは他の療法での治療を開始する可能性がある。
【0068】
例えば分析物のそれぞれの量もしくは絶対濃度、分析物のそれぞれの標準に対する相対濃度、および/または心血管または脳血管主要有害事象を有するもしくは有するリスクがある尤度をはじめとする分析結果を、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに表示するまたは出力することができる。結果または診断の表示または出力は、例えば、口述、記述、視覚的表示など、コンピュータ可読媒体またはコンピュータシステムなどの任意の媒体を使用して、前述の分析のいずれかの結果をユーザーに伝達することを意味する。結果の出力が、ユーザーまたは連結された外部コンポーネント(複数可)、例えばコンピュータシステムまたはコンピュータメモリへの出力に限定されず、代替としてまたは追加として、任意のコンピュータ可読媒体などの内部コンポーネントに出力され得ることは、当業者には明らかであろう。コンピュータ可読媒体としては、ハードデバイス、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD、およびDATを挙げることができるが、これらに限定されない。コンピュータ可読媒体は、データ通信のための搬送波または他の波形を含まない。本明細書で開示し、特許請求する様々なサンプル評価および診断方法をコンピュータで実施することが、必要ではないが、できること、および例えば、表示または出力を、例えば口述でまたは書面で(例えば手書きで)人に伝達することによって行うことができることは、当業者には明らかであろう。
【0069】
さらに、分析物を使用して、心血管または脳血管主要有害事象の動物モデルを検証することができる。例えば、任意特定のモデルにおいて、サンプルを分析して、動物中の分析物のレベルが、心血管または脳血管主要有害事象がわかっている被験者における分析物のレベルと同じであるか判定することができる。これにより、例えば、上記の様式で候補薬を試験するためのモデルを検証することができる。
【実施例】
【0070】
実施例1
この実施例は、心血管または脳血管主要有害事象のための分析物を同定するために用いる方法論を説明する。簡単に言うと、136人の被験者をこの研究に組み入れた。心筋梗塞、経皮的冠動脈形成術または死亡と定義する心血管または脳血管主要有害事象を指標心カテーテル検査の2年以内に経験する被験者を同定することによって、疾病または対照カテゴリーのいずれかへの被験者の分類を果たした。
【0071】
Duke University Medical Centerで心カテーテル検査を受けた個体の長期研究(the CATHGEN Study)において得られたサンプルのコレクションから、冷凍血漿サンプルを得た。この血漿サンプルは、136人の研究被験者、68の症例および68のマッチした対照(以下で定義するとおり)からのものであった。症例および対照を彼らの冠動脈疾患(CAD)指数、年齢、性別および人種に従ってマッチングした。症例および対照群の両方における研究被験者の一部は、心カテーテル検査および血管造影で冠動脈疾患の徴候を示さなかった。他の被験者は、より高いCAD指数スコアによって示されるような、様々な重症度の冠動脈狭窄を有した。
【0072】
すべてのサンプルについて記録した臨床パラメータは、以下の表1に示すものであった。症例と対照とをマッチングしたときのものでないこれらのパラメータを、一部の統計解析(以下で論じるとおり)に追加の臨床因子として含めた。
【0073】
【表1】

症例は、以下の特徴を有するものとして同定した。指標カテーテル検査の前に、被験者は、心臓事象または心筋梗塞(MI)のための冠動脈バイパス移植(CABG)手術、経皮的冠動脈形成術(PCI)の履歴を有さなかった。被験者は、その後のCABGを有さなかった。被験者の駆出分画は、≧40%であり(指標カテーテル検査時)、欠測はなかった。指標カテーテル検査および血液サンプル採取の2年以内にMI、PCIまたは死亡が発生した。非冠動脈疾患関連死(すなわち、肺性高血圧、癌など)を明確に有する被験者は除外した。指標カテーテル検査の7日以内にPCI関連事象を有する被験者は除外した。
【0074】
対照例は、次の特徴を有するものとして同定した。指標カテーテル検査の前に、被験者は、心臓事象または心筋梗塞(MI)のための冠動脈バイパス移植(CABG)手術、経皮的冠動脈形成術(PCI)の履歴を有さなかった。被験者は、その後のCABGを有さなかった。被験者の駆出分画は、≧40%であり(指標カテーテル検査時)、欠測はなかった。指標カテーテル検査および血液サンプル採取後少なくとも2年の期間、MI、PCIまたは死亡は発生しなかった。
【0075】
下の表2に提示し、以下で詳細に説明するプラットホームを用いて、サンプルを包括的バイオ分析に付した。
【0076】
【表2】

合計723の分析物をこの研究のバイオ分析パートで測定することに成功した。バイオ分析プラットホームそれぞれからのその合計に対する寄与を上の表2に示す。バイオ分析プラットホームの結果をプラットホーム単位で分析し、また、後続の統計解析(以下で論述)のために併せて単一の統合データセットにした。
【0077】
液体クロマトグラフィー(「LC」)タンデム質量分析(「LC/MS」)メタボロミクス
この方法は、脂質分子の分解および検出のために最適化されている、液体クロマトグラフィーおよび質量分析条件を利用する。
【0078】
この方法に従って、以下の材料を使用した。水、メタノールおよびイソプロパノールならびにジクロロメタン(HPLCグレード)をはじめとする溶媒および試薬は、VWR(USA)から購入した。ギ酸(99%)、酢酸アンモニウム、ジクロロメタンおよびレセルピンは、Sigma−Aldrich(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)から購入した。HPLCガードカラム(Symmetry 300 C4 300Å 2.5μ 2.1×10mm)および分析用カラム(C4 300Å 3.5μ 2.1×150mm)は、Waters(マサチューセッツ州、ミルフォード)から購入した。オートサンプラーバイアル、300μLトータル・リカバリー・バイアル、およびねじ蓋は、Waters(マサチューセッツ州、ミルフォード)から購入した。保管用の500μLエッペンドルフ管は、VWRから購入した。脂質内部標準物質17:0 LPC、24:0 PCおよび40:0 PCは、Avanti Polar Lipids(アラバマ州、アラバスター)から購入し、30:0 PCおよび51:0 TGは、Sigma−Aldrich(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)から購入した。
【0079】
以下のプロトコルに従って、サンプルを抽出した。データ正規化のために、5つの内部標準物質を抽出溶液にスパイクした。内部標準物質の保存溶液は、個々の脂質に依存して1〜3mg/mLの範囲の最終濃度を達成するように適切に計量した量のそれぞれの内部標準化合物を1:9 DCM/IPA溶液に溶解することによって調製した。抽出溶液は、5つの保存溶液それぞれの300μLを、300mLの1:9 DCM/IPA溶液に等分することによって作製した(SOP:BG−QC27 R01参照)。この溶液は、17:0 LPC、24:0 PC、30:0 PC、40:0 PC、51:0 TGついてそれぞれ2:1:2:3:2((g/mL)の濃度比でスパイクした5つの標準物質を有する脂質抽出溶液として使用した。
【0080】
次のプロトコルに従ってLC/MS分析のためにサンプルを調製した。それぞれのバッチのサンプルを品質管理サンプルと共に冷凍器から取り出し、氷上で解凍した。10μLの血漿を含むそれぞれのサンプルバイアルに適切な量の抽出溶液を添加した。バイアルを穏やかにボルテックスにかけ、14,000RPMで24℃で10分間、スピンダウンした。上清を中間バイアルに移し、数秒間、Vortexによってさらに混合し、反復実験分としてそれぞれ60μLの2つのアリコートをLC/MS分析用の2つのバーコード付オートサンプラーバイアルにピペットで移した。残存する上清をLC/MS/MS分析での使用のために−40℃で保管した。残りの抽出物とペレットは廃棄した。
【0081】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を以下のプロトコルに従って行った。クロマトグラフ装置は、4元勾配システムを有するWaters 2795 Alliance HPLCシステムと、オートサンプラーと、45℃に設定された外部カラムヒーターと、インラインプレカラムを有する分析用HPLCカラムから成った。分析物を分離し、350μL/分の流量で質量分析計に送った。分析物分離には、95%HOおよび5%MeOHを含む溶媒Aならびに99%MeOHおよび1%HOから成る溶媒Bでの二元勾配(0分−20%B、2分−20%B、4分−80%B、20分−100%B、25分−100%B、25.1分−20%B、35分−20%B)を用いた。両方の溶媒流が、10mM酢酸アンモニウムおよび0.1%ギ酸を含有した。5μLのサンプルを20μLサンプルループに注入し、プレカラムに負荷した後、分析用カラムによって分離した。それぞれのサンプル間に、注射針、ループおよび注射器をイソプロパノール/MeOH溶液で洗浄した。
【0082】
LC/MS分析は、LockSpray ESI源を装備したWaters/Micromass四重極飛行時間型計器(Waters、Q−ToF)で行った。ESI源ブロック温度を120℃で維持し、脱溶媒温度を320℃に設定した。609.2814でのレセルピンピークを使用して、MSシグナル感度を最適化した。ポリアラニンのプロトン化ピークを用いてMSモードで質量較正を行った。3から5ppmのロックマス補正精度での5つのISピークについては、〜8500の平均計器分解能をターゲットにした。前の研究に基づき、LC溶離中、7から23分、MSデータを収集した。すべてのLC/MSデータは、0.3秒間、m/z 300−1000をスキャンすることによって、重心モードで収集した。
【0083】
分析物同定のための後続のMS/MS分析は、同一LC条件で同じLC/MSシステムを用いて行った。MMS/MS較正は、m/z 1084での先駆物質のポリアラニンピークのフラグメントを用いて行った。すべてのMS/MSデータは、1または2秒間、m/z 100−1000をスキャンすることによって重心モードで収集した。必要な場合には、LC保持時間補正をそのターゲットリストに適用した。MS/MSデータは、ターゲット分析によって収集される。
【0084】
次のプロトコルに従ってピーク検出を行った。許容されるランの生データファイルをピークピッキングし、積分した。定義閾値に達するピークのみをアラインメントプロセスに進めた。それぞれのピークをm/z値および保持時間によって特性づけし、例えば、m/z 510で検出され、7.88分で溶出されたピークは、510_0788と標識されることなる。それぞれのサンプルは、独立して処理される。
【0085】
ピークピッキングが完了した後、ピーク・ピッキング・アルゴリズムによって生成された.MLLファイルを互いに「アライン」した。プログラムは、先ず、すべての注入物からの内部標準物質ピーク用いて保持時間ウインドウを設定し、次に、参照ピークの平均保持時間に基づいてバッチ内のそれぞれの分析物を論理的に「アライン」する。ププロセス終了時、物理的保持時間を510_0785から510_0788に変えることができ、追加の閾値をそれらのピーク面積に適用することができる。
【0086】
すべてのサンプルにわたって内部標準物質の相対標準偏差パーセント(%RSD)を計算すること、内部標準物質ピークの抽出面積(強度)を時間の関数としてプロットしてあらゆる傾向を同定すること、およびアラインメント前と後、両方の保持時間変動をチェックすることを含む多くの測定によって、それぞれのバッチついての品質管理(QC)を評価した。分析中にそれぞれの注入についての目視QC検査も行った。これらの検査は、反復注入が如何によく重なったか、QCサンプルの経時的挙動、および一般的計器傾向に照準をあてた。研究中に発生し得る保持時間およびピーク面積の小変化(例えば、わずかな一時的傾向)は、データ正規化プロセスにおいて補正したが、(部分的な注入のような)より有意な変化は、再分析を必要とする場合があった。
【0087】
LC/MSの測定プロセスにおいて、対象となるそれぞれの分子種は、概して、多数の化学的エンティティとして出現する。これは、幾つかの要因に起因し得る:第一に、成分元素の多数の安定な同位体の存在、ならびに第二に、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、アンモニウム(NH4)、および多数タイプのイオンを生じさせる他の分析物との付加体形成による分析物の偽分子イオンの形成。加えて、質量分析イオン化プロセスは、多くの場合、原分子のフラグメント化によって遂行され得る。結果として、収集されるデータセットは、分析物を表すピークの数が一桁膨張する。情報内容が重複しているこれらの追加のピークは、ノイズの誘導、統計力の低下、バイオインフォマティック分析の効果遮蔽の一因となり、その多大なピーク数のため、明瞭な科学的結論を引き出すことをより難しくする場合がある。測定したエンティティをそれらの推定される起源化合物に従ってグループ分けする自動コンピュータプラットホームを、ピークピッキングおよびスペクトルアラインメントの後に、ならびにデータ正規化および統計解析の前にまたはそれらと並行して用いた。コアアルゴリズムは、狭い移動時間ウインドウで保持時間(RT)に従ってデータをスキャンする。類似した保持時間の候補ピークを、プラットホームの特定の化学的特性に依存する既知質量差パターンに従ってグループ分けする。
【0088】
ピーク検出およびアラインメント後、幾つかの追加のデータ処理工程を行った後、データは、一変量および多変量解析に利用することができる。これらの工程は、サンプル/研究ブランクに割り当てられるピークおよび他のバックグラウンドピークの除去、バッチ修正および正規化を含む。これらの段階の完了は、「ロックされたデータセット」と呼ばれる重要時点を意味する。
【0089】
質量分析プロファイリングおよびその後のデータ処理によって、後続の統計解析用の分析物のリストが得られた。主要分析物、通常はそれぞれの分析物ファミリーについての最も存在度が高いピークを、最初のプロファイリング実験と同じまたは同様のLC/MSセットアップを用いてターゲットMS/MSに付した。ターゲットLC/MS/MSスペクトルは、重心モードで収集した。分析物のターゲットMS/MS分析によって得られたMS/MSスペクトルを、保持時間、質量、窒素ルール、脂肪酸(FA)側鎖特異的フラグメントイオン、および脂質のMS/MSのライブラリーからの参照スペクトルとの比較によって解釈した。
【0090】
ガスクロマトグラフィータンデム質量スペクトル(GC/MS)メタボロミクス
GCは、高感度で選択的な(電子衝撃)質量検出と併せて高い分離効率および確固とした保持時間という利点を有する。しかし、多くの化合物は、それらを分離するために必要とされる温度で熱不安定性であるか全く揮発性でない、極性官能基を含有する。加えて、極性官能基を有する化合物のピーク形は、不可逆的吸着などの望ましくないカラム相互作用のため、不満足なものである場合がある。これらの問題に対処するために、GC分析前に化合物の誘導体化が必要となる場合がある。
【0091】
以下の材料をこの方法に従って使用した。溶媒および試薬としては、メタノール、ピリジン、塩酸エトキシアミン、およびN−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MSTFA)が挙げられた。内部標準物質としては、ロイシン−D3、フェニルアラニン−D5、グルタミン酸−D3、グルコース−D7、コール酸−D4、アラニン−D4、トリフルオロアセチルアントラセン(TFAA)、ジフルオロビフェニル(DFBP)、およびフタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)が挙げられた。
【0092】
これらのサンプルを室温で解凍し、250ng/μL 標準物質のロイシン−D3、フェニルアラニン−D5、グルタミン酸−D3およびグルコース−D7のH2O溶液10μLを添加し、その後、400μLのメタノールを(タンパク質沈殿のために)添加した。サンプルをボルテックスにかけ、10分間10000rpmで遠心分離し、上清をオートサンプラーバイアルに移した。窒素での乾燥工程の後、ピリジン中の250ng/μL 標準物質のコール酸D4およびアラニン−D4を10μL添加した。オートサンプラーバイアルに蓋をする前に、ピリジン中の塩酸エトキシアミン溶液30μLを添加し、40℃で90分間、インキュベートした。
【0093】
オキシム化後、残りの内部標準物質を添加した:250ng/μL 標準物質のジフルオロビフェニル、フタル酸ジシクロヘキシルおよびトリフルオロアセチルアントラセンのピリジン溶液(10μL)。100μL MSTFAの添加および50分間、40℃での加熱によって、サンプルをシリル化した。GCに注入する前に、それらのサンプルを10分間、3500rpmで遠心分離した。
【0094】
GC/MS分析は、PTV(温度プログラム式気化器)インジェクターおよびCTC Analytic Combi−Palオートサンプラーを装備したAglient 6890 Nガスクロマトグラフを利用した。検出には、Agilent 5973 Mass Selective Detectorを使用した。Enhanced Chemstation G1701CA Version D.01.02ソフトウェアによってシステムを制御した。
【0095】
GC/MSカラムから溶出するすべての化合物をフルスキャンモードで検出した。それぞれのピークをその保持時間およびフラグメント数(m/z値)によって特性づけした。ターゲット処理手順を適用することによって、データ量(すなわち、変数の数)を減らした。
【0096】
ターゲットアプローチは、変数の数を少なくとも20分の1に減少させる。このプロシージャーアーティファクトの大部分は、ターゲットテーブルにこれらのピークを含めないことでデータから除去することができる。研究特異的ターゲットテーブルをこの研究のためにコンパイルした。様々なヒト血漿CG/MSプロジェクトからの情報をこのプロセスに利用した。この研究において観察されたできる限り多くのピークをターゲットテーブルに含めるために、極値サンプルを含む研究サンプルから、多数の代表的クロマトグラムを選択した。プロジェクトの初期段階の間、ピークの素性は未知であり、そこでそれらに「未知1」から「未知x」まで標識し、それぞれのピークをその保持時間およびイオンを定量したものによって特性づけした。プロシージャーブランクの中で見つけられるピークは、ターゲットテーブルから除去した。ピークの起源が不確実である場合、関連分析物を損失する可能性を避けるためにピークをターゲットリストに保留した。
【0097】
研究サンプルにおいて、代表クロマトグラムで見出される、内部標準物質以外の個々の分析物/化合物を参照化合物データベース(保持時間および質量スペクトル)とマッチングした。このマッチング工程の後、参照データベースに基づき多数の化合物に仮のIDを割り当てた。
【0098】
ターゲット処理アプローチを適用するときには、ピークの保持時間アラインメントは必要ない。保持時間のシフトが観察された場合には、ターゲットテーブルを調整することができる(内部標準物質が「ランドマーク」として役立つ)。標準的な積分設定を用いて、ターゲットテーブル中に存在するすべての化合物をまず積分した。これらの設定は、すべての化合物およびサンプルに適用することはできず、一部の化合物については積分結果を補正することにつながる場合がある。積分エラーを見出すための手順を開発した。すべてのターゲットについて、(すべての研究およびQCサンプルの)平均からのピーク面積の偏差を計算することができる。結果をプロットし、問題ピーク(多数のサンプルにわたるそれらのピークについての積分誤差)および問題サンプル(1つのサンプルにおける多数のピークについての積分)を検出するために用いた。問題サンプルについては、手作業で積分を行った。問題ピークについては積分設定を調整した後に自動積分を行った)。
【0099】
サンプル調製および分析における様々な工程で、1つ以上の内部標準物質を追加して、分析後のデータの質をモニターした。それぞれのバッチ後、DCHPについて修正した後の内部標準物質の応答をすべてのサンプルにおいて評価した。それぞれの内部標準物質の修正ピーク面積が、バッチ平均から20%未満しかずれない場合、そのバッチは、許容され得る。1つ以上のサンプルについて、偏差が20%より大きい場合には、それらのサンプルを次のバッチで再分析した。最終的に、ロックされたデータセットをGC/MS分析のために生成することができる。
【0100】
第一の同定工程は、ターゲット化合物リストと参照データベースとのマッチングであり得る。参照データベースとの比較および参照標準物質の分析によって、ターゲットリストからの多数の化合物を同定および確認することができる。一変量および多変量解析後、優先順位をつけた未知物質を、生データおよびQC結果をチェックすることによって、先ず評価した。それらを2つのカテゴリーに分けた:i)非常に低い強度および/またはQC標準における高いRSDを有する化合物ならびにii)1つ以上のサンプルにおける良好なシグナルおよびQC標準における高いRSDを有する化合物。第二のカテゴリーでの同定が開始する。両方のカテゴリーについて、アーティファクト対する追加のチェックを行った。
【0101】
この分析の後、(同定すべき)個々の化合物に依存して追加の同定方法を選択した。一部の化合物については、市販のスペクトルライブラリーにおいてヒットを見出し、追加のID実験の必要がなかった。他の化合物については、化学的イオン化、正確な質量または他の誘導体化実験を行った。
【0102】
極性LC/MSメタボロミクス
以下の材料をこの方法に従って用いた:メタノール、Biosolve、LC−MSグレード、cat.#13687801、または等価物;HCl、Merck、37% cat.#1.00317、または等価物;n−ブタノール、Baker cat.#8017、または等価物;Milli−Q水、ELGA Systemで精製した水、または等価物;ジチオトレイトールDTT、Sigma 99%、cat.#D9779、または等価物;ギ酸、Merck cat.#1.00264、または等価物;アセトニトリル、Biosolve HPLC−S Gradientグレード、cat.#12000701、または等価物;フェニルアラニン−d5、CDN同位体99原子% D、cat.#D−1597、または等価物;グルタメート−d3、CDN同位体99原子% D、cat.#D−1196、または等価物;ロイシン−d3、CDN同位体 99原子% D、cat.#D−1973、または等価物;アラニン−d3、CDN同位体99原子% D、cat.#D−1462、または等価物;クレアチン−d3、CDN同位体99原子% D、cat.#D−1462、または等価物;メチオニン−d4、CDN同位体99原子% D、cat.#D−1462、または等価物;メチル−(d3)−ヒスチジン、CDN同位体99原子% D、cat.#D−1462、または等価物;チロシン−d7、CDN同位体99原子% D、cat.#D−1462、または等価物。
【0103】
以下の機器をこの方法に従って用いた:ボルテックス;遠心機;オーブン;蒸発装置;ThermoFinnigan SurveyorまたはSurveyor Plus HPLC;EIS源を装備したThermoFinnigan LTQイオントラップ質量分析計。
【0104】
小型エッペンドルフバイアル中の10μL血漿サンプルに、10μL IS−使用液を添加し、サンプルを短時間、ボルテックスにかけた。DTT溶液の添加およびサンプルの除タンパク後、上清を凍結乾燥させた。その後、サンプルを65℃のHCl−ブタノールで誘導体化した。過剰の試薬を凍結乾燥によって除去した。非誘導体化チロシンD7を内部標準物質として含有するDTTの水溶液でサンプルを再構成した。
【0105】
次の仕様に従って高速液体クロマトグラフィーを行った:
カラム: Varian/Chrompack Inertsil 5μm ODS−3 100*3mm
ガードカラム: Varian/Chrompack R2 10×2mm i.d.
移動相A: 0.1%ギ酸
1mLのギ酸を1000mLの水に添加し、混合し、5分間、超音波処理によって脱気する
移動相B: 0.1%ギ酸中の80%アセトニトリル
800mLのアセトニトリルに水1000mLおよび1mLのギ酸を添加し、混合し、5分間、超音波処理によって脱気する。
カラム温度: 25℃〜30℃
オートサンプラー温度: 10℃
注入量: 10μL
ESI源への〜75μLの流量を意図するおよそ4:1の比の分流で質量分析を行った。ESIおよびMS設定は下記である:
ESIスプレー電圧: 4kV
加熱キャピラリー: 250〜300℃
シースガス: 50〜60
補助ガス: 5
極性: 陽性
スキャン範囲: 125〜1250
マイクロスキャン数: 5〜6
最大注入時間: 200ms
ソースCID: 0〜5V
ソース距離 位置C
選択したサンプルを正確な質量について分析した。このために、それぞれの誘導体化ロットから2つのQCサンプルを選択し、多数の「極値」サンプルも選択した。上記と同じ設定を用いて、ThermoFinnigan LTQ−FT MS計器で正確な質量実験を行った。イオンの検出は、FTMSで行った。m/z 400での分解能は、〜100,000である。
【0106】
LC/MSカラムから溶出するすべての化合物をフルスキャンモードで検出した。それぞれのピークをその保持時間および多数のイオン(m/z値)によって特性づけした。それぞれの化合物を、殆どの場合、ターゲットテーブルへの1つだけの登録によって表現するターゲット処理手順を適用することにより、データの量(すなわち、変数の数)を減少させた。
【0107】
ターゲットアプローチは、変数の数を少なくとも20分の1に減少させた。プロシージャーアーティファクトの大部分は、ターゲットテーブルにこれらのピークを含めないことでデータから除去することができた。
【0108】
研究特異的ターゲットテーブルをこの研究のためにコンパイルした。これは、最初の少数のバッチからのすべてのQCYおよび研究サンプルのピークピッキングによって行った。得られたピークテーブルを強度に基づいてソートし、上位1000ピークを選択した。この部分テーブルから、同位体ピークおよび識別できる限り付加体を除去した。この段階では、ピークの素性はわからず、そこでそれらを(分での)保持時間におけるm/zとして標識した。
【0109】
ターゲット処理アプローチを適用する場合、ピークの保持時間アラインメントは必要ない。保持時間のシフトが観察された場合には、ターゲットテーブルを調整した(内部標準物質が「ランドマーク」として役立つ)。
【0110】
すべてのランについての分析が完了した後、標準的な積分設定を用いて、ターゲットテーブル中に存在するすべての化合物を先ず積分した。これらの設定は、すべての化合物およびサンプルに適用することはできず、一部の化合物については積分結果を補正することにつながる場合がある。積分エラーを見つけるための手順を開発した。すべてのターゲットについて、(すべての研究およびQCサンプルの)平均からのピーク面積の偏差を計算した。
【0111】
完全データセットの品質管理は、ブランクを除くすべてのサンプルにおけるIS応答、ならびにQCYおよびCTRLサンプル中のすべてのターゲット化合物の相対標準偏差のチェックに基づいて行った。これらの結果を、前の研究において観察されたものと比較した。これらの工程が完了した時点で、「ロックされたデータセット」を極性PC/MSプラットホームのために生成することができる。このデータセットが、すべての後続の統計解析の基礎になる。
【0112】
第一の同定工程は、ターゲット化合物と多数のアミノ酸および関連化合物を含有する参照標準のデータベースとのマッチングであった。保持時間および正確な質量を比較し、必要な場合には、MS/MSスペクトルを比較した。
【0113】
残りのターゲット化合物は、それらを優先リストに載せた後、同定した(一変量/多変量)。それらの優先順位をつけた未知物質を、先ず、生データおよびQC結果をチェックすることによって評価した。それらを2つのカテゴリーに分けた:i)非常に低い強度および/またはQC標準における高いRSDを有する化合物ならびにii)1つ以上のサンプルにおける良好なシグナルおよびQC標準における高いRSDを有する化合物。第二のカテゴリーでの同定が開始した。両方のカテゴリーについて、アーティファクト対する追加のチェックを行い、ブランク分析をこれらの化合物の存在についてチェックした。
【0114】
さらなる同定のために、保持時間、正確な質量およびMS/MSデータを用いた。正確な質量、および用いた誘導体化についての知識に基づき、KEGG、MerckおよびChemifinderデータベース内の可能性のある元素組成を検索した。可能性のあるヒットを評価し、このために、保持時間およびMS/MSスペクトルを用いた。幾つかの場合、標準物質を購入し、溶解状態で分析し、そしてその後、研究サンプルに標準物質を追加した。
【0115】
遊離脂肪酸のLC/MSプロファイリング
血漿を除タンパクし、IPAで抽出した。遊離脂肪酸を分析用カラムで分離し、エレクトロスプレーにより陰イオンモードでイオン化し、フルスキャンモードで検出した。多数の遊離脂肪酸を外部標準物質として分析し、血漿中の実際の濃度を決定する必要がある場合には較正標準を用いてこれらを計算(概算)した。
【0116】
次の材料を使用してサンプルを調製し、分析した。計器としては、エッペンドルフ管用の遠心機、Thermo Electron LTQ、オートサンプラーとカラムオーブンとを有するThermo Electron Surveyor HPLC、およびボルテックスが挙げられた。化学薬品としては、脱塩水、(ELGA System 4または任意の他の製造元、例えばMillipore);イソプロパノール p.a.、(Baker 6068または同等物)、メタノール、(HPLCグレード、Chromasolve 34966)、ジクロロメタン p.a.、(Baker 7053または同等物)、酢酸アンモニウム p.a.、(Fluka 09690または同等物)、およびギ酸 p.a.、(Merck 1.00264.1000または同等物)が挙げられた。
【0117】
材料としては、Alltech Proshere CA 300Å HPLCカラム(150×3.0mm i.d.、5μm)、partno.35548、Symmetry 300 C4ガードカラム(10×2.1mm i.d.3.5μm)、partno.186000278、オートサンプラーバイアル(Alltech partno.AV055201、32*11.6mm)、エッペンドルフ管、およびピペット(例えば、エッペンドルフ)が挙げられた。
【0118】
次の標準物質を使用した:ヘプタデカン酸 C17:0 FA(Sigma−Aldrich、H3500)、C14:0 FA ミリスチン酸(Sigma M3128)、C16:0 FA パルミチン酸(Sigma P5585)、C16:1 FA パルミトレイン酸(Sigma P9417)、C18:0 FA ステアリン酸(Sigma S4751)、C18:1 FA オレイン酸(Sigma O1008)、C18:2 FA リノール酸(Sigma L1376)、およびC20:4 FA アラキドン酸(Sigma A9673)。
【0119】
内部標準溶液は、次の方法に従って調製した。ヘプタデカン酸 C17:0 FA(1mg/mL)の保存溶液は、5mLメスフラスコに5mgを量り入れ、500μL DCMを添加し、超音波処理により溶解し、IPAで5mLにすることによって調製した。IS使用液(タンパク質沈殿および脂質抽出用)は、C17:0 FAを1μg/mLの濃度で含有するIPA中で調製した。
【0120】
サンプルは、次の方法に従って調製した。300μLのIS使用液をエッペンドルフカップ内の10μLの解凍血漿サンプルに添加し、ボルテックスにかけた。溶液を3〜5分間、10,000rpmでのエッペンドルフ遠心分離に付し、50μLのその透明な上清をインサートを有する2つのオートサンプラーバイアルに2回移し、残りの抽出物を<−18℃で保管した。
【0121】
Alltech Prosphere C4 300Å HPLCカラム(150×3.2mm i.d.、5μm)およびPhenomenex Widepore C4ガードカラム(4×3mm i.d.、5μm)を使用して、液体クロマトグラフィーおよび質量分析を行った。移動相Aは、バッファー中の5%メタノールから成り、移動相Bは、2mM NHAcを含有するメタノールから成り、針洗浄液は、MeOH中の60%IPAから成った。勾配は次のとおりであった
【0122】
【数1】

カラム温度は、40℃であり、オートサンプラー温度は、20℃であり、注入量は、20μLであった。
【0123】
質量分析手順のために、次の較正標準を使用してLC/MS計器をチューニングした:
【0124】
【数2】

選択されたターゲット分析物の積分にはThermo XCalibur LCQuan V 2.0を使用した。(前の研究に基づき)少なくとも次の脂肪酸を含むターゲットテーブルを用いて、データを処理した:C12:0 FA、C12:1 FA、C14:0 FA、C14:1 FA、C16:0 FA、C16:1 FA、C16:2 FA、C18:0 FA、C18:1 FA、C18:2 FA、C18:3 FA、C20:0 FA、C20:1 FA、C20:2 FA、C20:3 FA、C20:4 FA、C20:5.FA、C22:5 FA、C22:6 FA、およびC22:7 FA。
【0125】
ターゲットテーブルからのすべての化合物についての積分データを得た。結果は、それぞれのターゲット化合物についての積分値を含むExcelテーブルであった。
【0126】
LC−MALDI−MS/MSディスカバリープロテオミクス
プロテオミクスワークフローは、血漿サンプルから生成されたペプチドの多次元液体クロマトグラフィー−MS/MS分析に基づくものであった。このアプローチの利点としては、2Dゲルに基づくアプローチにおける困難の原因となる血漿タンパク質の多数の異成分に対する鈍感性、液体クロマトグラフィー技術の容易な自動化、およびペプチドの安定な同位体標識の利用の可能性が挙げられる。
【0127】
最近紹介されたiTRAQ(商標)方法論(iTRAQは、Applied Biosystemsの商標である)は、標識反応を完了まで遂行することが容易であり、一般的な、ほぼすべてのペプチドがiTRAQで標識され、1実験につき4サンプルまでの複合定量が可能であったので、本研究に特に好適であった。後者は、サンプル間の一致した定量(および同定)が重要要件である本研究において重要である。安定な同位体標識の別の有意な利点は、(差別的に標識されたプールを併用すると)サンプル間でのペプチドの液体クロマトグラフ挙動の変動に対してプロセスが頑強であることであった。
【0128】
iTRAQ法では、タンパク質サンプルからの酵素的消化物を、ペプチドの遊離第一級アミノ基:N−末端(ブロックされていない場合)およびリシン残基を誘導体化する試薬(N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル)で処理する。試薬の4つの異なる変種は、同じ質量、しかし安定な同位体標識の異なる位置を特徴とする。従って、イオンシグナルがペプチドの分子量を反映するMSモードでは、4つの別様に標識されたペプチドのすべてが単一の成分のように見える。MS/MSモードでは、標識の構造の微妙な違いが見えるようになり、また、ペプチド骨格フラグメント(いわゆるa、b、およびy)は、依然として等重であるが、m/z 114、115、116および117にそれぞれ対応する4つの異なるレポーターフラグメントが生成される。これらのレポーターイオンの相対強度の判定によって、4つの異なるサンプルからのペプチドの相対定量を遂行することができる。
【0129】
この研究では、サンプルが自動画分回収手順によってMALDIプレートに堆積されるMALDI TOF/TOF質量分析計(ABI4800)を使用した。MALDI LC−MS/MSの特別な利点は、LC−MS連結のオフライン性にある。先ず、MSモードで全2D LC分離を分析し、その後、MS/MSモードでペプチド同定および定量的データを生成することができた。この特徴は、ペプチドの一定のセットを多数のサンプルにわたって測定しなければならないとき、非常に便利であり得る。
【0130】
血漿サンプルの分析に関する1つの特有の態様は、存在度が高い血漿タンパク質(アルブミン、免疫グロブリンなど)によって表される膨大なバックグラウンドである。この難題に対処するために、多数の枯渇技術を用いた。この研究では、ニワトリIgY抗体カラムを使用して、12の存在度が高いタンパク質のサンプルを枯渇させた。抗体カラムに保持されなかったタンパク質プールを、逆相カラムで回収した。回収したタンパク質プールを還元し、アルキル化し、トリプシンによって消化した。得られたペプチド混合物をiTRAQ試薬で標識し、同じiTRAQミックス用に指定された3つの他のサンプルと併せた。併せた4プレックス(four−plex)ミックスを、先ず、強カチオン交換クロマトグラフィーで分画した。SCX溶離から画分を回収した。これらの画分を、−それらの画分の一部をプールした後−さらにHPLC MS/MSによって分析した。
【0131】
iTRAQ分析によって、1回の2D LC−MS/MS実験(4プレックス)で4つの異なるサンプルの相対定量が可能となる。しかし、iTRAQ 4プレックスミックスに4つの一次サンプルを割り当てることにより、異なるiTRAQに指定された2つの一次サンプルを比較することはできない。そのプロジェクトのために分析するiTRAQミックスの数に従ってアリコートされた参照プール、それぞれのiTRAQミックスの定常成分、を作り、この参照アリコートのためのサンプル調製を同じiTRAQミックスの3つの他のメンバーと共に行い、117の試薬で標識することによって、これに対処した。
【0132】
参照プールは、この研究において分析したおよそ25%の各一次研究サンプルの組み合わせから作った。その参照プールからのアリコートをQCRサンプルと呼んだ。
【0133】
MS/MS収集は、組み入れおよび除外の両方のためのMS先駆物質のリストによって誘導され得る。原組み入れリストは、研究のカタログ期の間に行った分析から得た。この期において、サンプルのQCプールからの少数のサンプルを完全プロテオミクスワークフローによって処理した。ペプチドを同定し、これらのミックスからのタンパク質をマッチングした後、組み入れおよび除外リストをコンパイルした。
【0134】
組み入れリストの内容としては、完全にアルキル化され、iTRAQ標識されたトリプシンペプチド;キモトリプシン活性(F、YおよびWでの開裂)に起因するものを除外して、完全にアルキル化され、iTRAQ標識された半トリプシンペプチド;ならびに翻訳後修飾を有するとき、Mascotによるルーチンサーチでなく手作業で同定されたペプチドが挙げられる。
【0135】
除外リストの内容としては、不完全なiTRAQ標識またはアルキル化を伴うペプチド;多数のトリプシン誤開裂部位を含有する3,000Daを超える分子量のペプチド;トリプシンのキモトリプシン側活性によって生成されたペプチド;M+H形態で組み入れリストにある電位M+K形態の存在度が高いペプチド;およびトリプシンからの自己分解ペプチドをはじめとする、2,000の最も存在度が高い未同定成分を含む。
【0136】
カスタム・ソフトウェア・アプリケーションを用いて、組み入れ/除外基準を考え、そして組み入れまたは除外のいずれかに選択された先駆物質を箇条書きにする別のテキストファイルに基づくAB4800でMS/MS収集物を大量にもたらした。HPLC保持時間の潜在的シフトの自動調節にもそのソフトウェアは適応した。組み入れ先駆物質を先ず分析した後、収集時間が許せば、日和見的に追加のMS/MSスペクトルを収集した。
【0137】
9つの一次サンプルおよび3つの参照プールサンプルから成る12の1日分バッチのサンプルを氷上で解凍し、3つの一次サンプルに続いて1つの参照プールサンプル(すなわち、サンプル1、2、3、その後、R、4、5、6、Rなど)で逐次的に処理した。サンプルを完全に解凍したら、それらを脱脂した。サンプルをPBSで希釈し、トリクロロトリフルオロエタン(Freon 13)で抽出し、その後、遠心分離段階に付した。上部水性層を新たな試験管に移し、氷上で短時間保管した後、存在度が高いタンパク質を除去するためにLCシステムの冷却したオートサンプラーの中に入れた。
【0138】
存在度が高いタンパク質の除去(APR)を用いて、12の最も存在度が高い血漿タンパク質を脱脂サンプルから枯渇させた。この手順は、2カラム法(2DLC)を用い、この場合、アルブミン、IgG、IgA、トランスフェリン、α−1アンチトリプシン、ハプトグロビンファミリー、フィブリノゲン、α−1酸性糖タンパク質、IgM、α−2マクログロブリンおよびHDL(アポリポタンパク質A−IおよびAII)を含む12のタンパク質は親和性IgYカラムのターゲットになるが、枯渇材料は流れて通り過ぎて逆相(RP)カラムで補足された。RPカラムを独立して洗浄し、段階溶離した。洗浄され、枯渇された材料から成る溶離ピークを分画カラムで回収し、その後、ワークフローにおける後続の処理のためにスピード真空によって乾燥させた。その後、次のランへの持ち越しをなくすストリップ溶液でそのRPカラムを洗浄した。その後、独立してIgYカラムを溶離し、次のランの前に中和した。12の枯渇サンプル(単一バッチ)を24時間の間処理し、その後、回収画分を一晩、スピード真空に付した。
【0139】
枯渇血清サンプルを還元し、アルキル化し、消化し、iTRAQ標識した。乾燥させた枯渇サンプルを1M TEAB Buffer pH8.5に再び懸濁させた。TCEPおよびSDSを添加して変性させ、サンプルを還元した。71℃での1時間のインキュベーション後、サンプルを暗所にて30分間、室温でヨードアセトアミドによってアルキル化した。N−アセチル−L−システインに懸濁させたトリプシンを添加し、サンプルを放置して一晩、48℃で消化させた。翌日、iTRAQ試薬を解凍し、100%エタノールに再懸濁させた。サンプルをiTRAQ試薬で標識した。標識するために室温で1時間インキュベートした後、アセチル化反応を4マイクロリットルの1M重炭酸アンモニウムの添加で停止させた。同じミックスのiTRAQ標識サンプルを併せ、Speedvacで乾燥させ、その後、カチオン交換クロマトグラフィーのために再び懸濁させた。
【0140】
4.6×50mmポリスルホエチル強カチオン交換カラムを使用するVision Chromatography Station(Applied Biosystems)を用いて、併せたiTRAQミックスの強カチオン交換分画を行った。分離は、ペプチドプールを先ずPoros R2逆相カラムに負荷して大量のiTRAQ加水分解産物を除去する、2カラム法を用いた。
【0141】
35%ACN含量のSCXローディングバッファーを使用してそれらのペプチドをSCXカラムへと溶出させた。RPカラムに付着したより疎水性の材料(すなわち、残留トリプシン)を高有機洗浄液によって除去した。SCXカラムに結合したペプチドを勾配で溶離した。注入前、1N HClを使用してサンプルのpHを3.5に調整する。SCX分離から、0.8mLの10の画分(A1からA10)を回収した。これらの画分をSpeedvacで乾燥させ、HPLCローディングバッファーに再び懸濁させた。
【0142】
LC−MALDI−MS/MSディスカバリープロテオミクス
HPLCとMALDIとの連結は、MALDIターゲットへの画分回収によってオフラインで行った。装置は、Dionex−LC Packings(カリフォルニア州、ハーキュリーズ)からのProbot MALDIスポッティングデバイスを装備したUltiMate Chromatography Systemであった。画分回収器の内蔵シリンジポンプによって、MALDIプレートへの堆積前にHPLC溶離物とMALDIマトリックスとを共混合することができた。MALDI MSスペクトルの良好な質量補正を確保するために、内部標準物質−ACTH(18−39)ぺプチド、MH=2465.199−をマトリックス溶液に添加した。
【0143】
3回のHPLCランが単一の4800 MALDIプレートに堆積されるように、MALDIプレートへのスポッティングを設定した。それぞれのHPLCランが6×35アレイの画分を含有した(210画分/HPLC)。iTRAQミックスを代表する6回のHPLCランを2つのMALDIプレートにスポッティングした。
【0144】
HPLC−MALDI動作パラメータを以下に列挙する。HPLCグレードの水および分析グレードのアセトニトリルは、Burdick & Jackson製であり、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、TFAおよびα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸は、Sigma製であった。
【0145】
【数3】

HPLC勾配は、次のようにプログラムした
0〜5%B 8分間
5〜10%B 2分間
10〜37.5%B 30分間
37.5〜100%B 2分間
45−nLフローセルを使用して280nmの波長をモニターすることによってUVトレースを記録した。
【0146】
それぞれのSCX画分の注入量は、HPLCカラムへの過負荷を避けながらサンプル負荷量を最大にするように決定した。これらの量は、予備カタログ実験で決定した。
【0147】
iTRAQミックスからのMALDIサンプルを代表する6の注入の各セットの前に、(Michromからの)ペプチドの標準混合物を注入してHPLC保持時間の一致性をモニターした。直前のSCX画分のLC−MSランを自動的にアラインすることによる先駆物質選択プログラムによって、HPLC溶離時間の穏やかな変化を継続的に処理したことに留意すること。標準QCミックスの後、6つのSCX画分を注入し、2つのMALDIプレートを作製した。
【0148】
2つのMALDIプレートのセットをAB4800計器のオートローダーに載せた。それぞれのプレートを次の順序によりMSモードでランした:
●4800標準ミックス(Applied Biosystems)を使用してプレートモデルおよびアップデートデフォルト検量線を作製してプレートの8つの「Cal」位置にスポッティングする
●m/z 2465.199(ペプチド標準物質)およびm/z 568.136(マトリックス三量体)ピークを用いる内部質量較正でのMSモードでLC画分をランする
先駆物質選択の主目的は、収集時間を最小にすること(余剰先駆物質を排除する)、MSスペクトルにおける隣接ピークからの干渉を排除すること、およびすべてのiTRAQミックスについて同じ先駆物質を一貫して選択することであった。MS/MS収集および処理パラメータを、m/z 114、115、116、117でのiTRAQレポーターピークの最善の測定を生じさせるように最適化した。iTRAQシグナルが、わずか1,050ショットの後にシグナル対ノイズ基準を超えない限り、2,100レーザーショットを累積するようにMS/MS収集を設定したことに留意すること。このようにして、iTRAQピーク面積測定の質を危うくすることなく収集時間を減少させることができた。
【0149】
AB4800 MS/MSスペクトルは、収集制御コンピュータで、パイプライン制御ソフトウェアによって駆動されるカスタムPerlスクリプトを使用してOracleデータベースから得た。MS/MSピークを2つの異なるファイルへと処理して、定量iTRAQピークデータとペプチド分画ピークとを別々に記録した。それぞれの個々のMS/MSスペクトルを、一意的データベースピークテーブルIDおよびデータを収集するMALDIプレートの一意的データベースIDによって同定した。これら2つの値によって、収集データおよび内部実験情報管理システム(LIMS)の両方に記録された追加の情報とのさらなる関連づけが可能となった。iTRAQ定量情報を第一ファイルからPeptidedBと呼ばれるデータベースに移した。二次出力は、MGF(Mascot Generic Format)ファイルであり、これは、ペプチド分画ピーク、およびMascot結果とインプットMS/MSスペクトルとの間の追跡を可能にする追加の関連コメントラインを含んでいた。
【0150】
MGFファイルに含まれているピークを濾過して、高質量ピーク(64Da以内または先駆物質MH)を除去し、低質量ピーク(<146Da)を除去し、ピークの「密度」を200Daウインドウあたり15フラグメント質量に限定した。
【0151】
AB4800を用いてMS/MSジョブごとに別個のMGFファイルを作った(MS/MSジョブは、同じMALDIプレートから収集される1と数千との間の別個のMS/MS収集から成り得る)。同じiTRAQミックスに対応する個々のMGFファイルを連結させた後、Macotサーチを開始した。
【0152】
それぞれのMS/MSスペクトルをPeptideDBにおけるm/z 114、115、116および117イオンシグナルのイオン強度に関連づけた。上記のように、m/z 117強度に相対してiTRAQ比を決定した(参照プールのためにこの標識を使用したからである)。比は、4800データについてのピーク面積の比(Applied BioSystemsソフトウェアによって用いられるようなクラスター面積ではない)およびQToFデータについてのピークカウントの比として計算した。
【0153】
データベース検索後、MS/MSスペクトルに割り当てられた定量数を「受け継いでいる」MS/MSスペクトルとペプチド配列をマッチングした。タンパク質比は、タンパク質に割り当てられたペプチドの比から平均比(またはApplied Biosystemsソフトウェアにおける平均比)として誘導した。しかし、BGMワークフローにおける最終的なペプチド−タンパク質アラインメントは、それぞれのiTRAQミックスからのペプチド同定が完了するまで行わなかった。この時点で、タンパク質の割り当てを統合するばかりでなく、全研究の定量情報に基づき個々のタンパク質を多数のノードに解体することができる(すなわち、タンパク質アイソフォーム、多形部位を収容しているペプチド配列、対立変異体などが分解される)。その後、タンパク質ノード−最終的に統計および相関ネットワーク解析に用いるもの−を、それらにマッチするペプチド比の平均として表した。
【0154】
ペプチド比をタンパク質またはタンパク質ノード比に広めるとき、(a)予想される程度まで完全に修飾された、すなわち、完全にiTRAQ標識され、およびそれらがシステイン(複数可)を含有する場合には完全にアルキル化された、または(b)APRがターゲットにするタンパク質に、もしくはチロシンに、ヘモグロビンに(これらのタンパク質は、不純物とみなされる)マッチングしないペプチドのみを考慮した。
【0155】
ペプチド/タンパク質同定は、市販のMascotデータベースサーチプログラム(英国のMatrixScience Ltd.)の三方向からのアプローチ、科学者によるエキスパートバリデーション、およびMS/MSスペクトルマッチング手順を用いて行った。
【0156】
研究の全プロテオミクス成分についてのデータ収集が完了し、Mascotサーチ結果をPeptideDBにロードしたら、スペクトルマッチング手順をランした。目的は、プロテオミクスプロジェクトにおいて分析した任意のiTRAQに関する自動バリデーションの基準に対してペプチド配列にマッチするMS/MSスペクトルを見出すことであった。ペプチドの素性は、ぴったりとマッチした先駆物質質量、SCX画分数およびHPLC保持時間、および最も存在度が高いフラグメントイオンの質量に基づいて確立した。このように、Mascotによる自動バリデーション基準を満たさないが、他のiTRAQミックス(複数可)での自動またはエキスパートバリデーション例を有する、多数のMS/MSスペクトルを救うことができた。そのような手順の重要性は、プロテオミクス研究においてできる限り多くのタンパク質にわたって測定されるペプチドおよびタンパク質の表現を増やすことである。
【0157】
(可能な最も完全なペプチドセットを有する)全研究についてのペプチド同定が完了した後、タンパク質バリデーションツールをランして、バリデーションされたすべてのペプチド配列を説明するタンパク質の最小セットを同定した。タンパク質バリデーションツールぺプチドの専門用語で、配列を(a)ゲノム内の一意的遺伝子を表すタンパク質クラスまたは(b)(スプライス変異体、多形などの中の)タンパク質クラス内の好ましい(通常、最も多くの注釈情報を有するもの)配列例を表すタンパク質典型に割り当てた。
【0158】
多数のデータ処理工程は完全データセットに適用され、この研究について報告されているタンパク質/ペプチドおよび定量マトリックスの数に影響を及ぼした。これらのデータ処理工程としては、下記が挙げられる:
ペプチド測定の統合:同じiTRAQミックス中の同じペプチド(同じ配列および同じ修飾)の多数のMS/MS測定からのiTRAQシグナルを合計し、その時点から単一比測定を用いた。
【0159】
外れ値排除:5%の外れ値のペプチド測定値を除去する標準的な統計手順。ペプチド測定値は、それが、同じタンパク質にマッチするすべてのペプチド測定値の分布から十分に外れている場合(2より大きい標準偏差)、外れ値とみなした。
【0160】
最終タンパク質/ノード割り当て:タンパク質バリデーションツール分析が完了したら、全プロジェクトについての定量結果を用いて、一変量および多変量統計解析のためのタンパク質リストを仕上げた。最終タンパク質によって相関ネットワーク分析のためのノードを定義した。このプロセスは、タンパク質の処理形態(すなわち、補体C3からのC3aおよびC3b、フィブリノゲンアルファ鎖からのフィブリノペプチドA、AMBP_HUMANからのアルファ−ミクログロブリンおよびビクニンなど)およびタンパク質の多形変異体の処理形態の正しい追跡に必要であった。
【0161】
同じタンパク質にマッチするペプチドの比の一致性によって、定量性能を評価した。これらのペプチド測定値の相対標準偏差は、タンパク質測定値が(マッチするペプチド測定値の平均として)如何に正確であるかを示した。これらの手順は、ペプチド相対標準偏差を数パーセント点低下させた。
【0162】
ターゲットプロテオミクス:多重化イムノアッセイ
以下の表3に示す89のターゲットタンパク質の濃度を多重化イムノアッセイシステム(米国、テキサス州、オースチンのRules Based Medicine)[McDade & Fulton、Device Diagn Ind 19:75−82,1997;Fultonら,Clin Chem 43:1749−56,1997]で測定した。このシステムは、フローサイトメーターおよびデジタル・シグナル・プロセッサーを用いて多数のマイクロスフェアベースのアッセイの実時間分析を行うことにより、非常に多数の併発反応を遂行する。このシステムの3つの重要な構成要素は、ベンチトップフローサイトメーター、マイクロスフェア、ならびにコンピュータハードウェアおよびソフトウェアである。これらの測定において用いた血漿の量は、50マイクロリットルであった。ターゲットタンパク質それぞれについての、フローサイトメーターによって記録された蛍光シグナルを、それらのターゲットタンパク質それぞれの濃度の計算のために、標準曲線と比較することができる。品質管理サンプルをこの分析に含めた。
【0163】
【表3】

ターゲットタンパク質分析は、症例および対照からのサンプルのセット全体にわたって66のタンパク質の濃度に関する有用な情報をもたらした。これら66タンパク質についてのデータセットをこの個々のバイオ分析プラットホームのための一変量および多変量分析物において使用し、また、他のバイオ分析プラットホームと併用して、723の分析物を含む統合データセットを生成した。
【0164】
統計学的方法
この研究の主目的に取り組むために、すなわち、血液または血漿中の分子分析物(セット)を発見し、近々のMACCを予測する関連アルゴリズムを発見するために、統計解析を行った。2年の経過観察中にMACCEの発生を有した被験者を症例として、および経過観察中にMACCの発生がなかった者を対照として示す。
【0165】
統計解析は、次の成分を含んだ:
1.研究被験者のベースライン特性。
2.すべてのプラットホームによってプロファイルされたデータからの症例および対照の間の隔たりを(もしあれば)視覚化するための主成分分析(PCA)。
3.従来のリスク因子を調整した後、近々のMACCEの確率と統計学的に有意に関連づけられる個々の分析物を検出するための一変量モード。
4.多変量モード:従来のリスク因子を伴うおよび伴わない、近々のMACCEの確率と統計学的に有意に関連づけられる分析物の最適なサブセットを得るための分類。従来の臨床因子を伴う分類器からの結果に基づく受信者動作特性(ROC)曲線と従来の臨床因子を伴わない分類器からの結果に基づく受信者動作特性(ROC)曲線とを比較した。
【0166】
ベースライン特性:ベースライン特性についての平均および割合を症例および対照について計算した。症例と対照の間のベースライン測定の差の統計学的優位性は、ウィルコクソンの順位和検定(連続変数)およびカイ二乗検定(割合およびRxCテーブルについて)に基づいた。
【0167】
主成分分析:本研究におけるメタボロミクスおよびプロテオミクスプラットホームそれぞれから得られたデータについてのPCAスコアプロットを生成した。これらの分析の動機としては、症例と対照との間の隔たりの視覚化、および品質のために外れ値サンプルの同定およびデータセットの評価が挙げられた。
【0168】
一変量モード:一次一変量分析は、症例対対照の1対1マッチングを考慮に入れて条件付ロジスティック回帰に基づく。一変量分析は、関連臨床共変量を調整した後、個別に各血漿分析物と転帰との関連性(症例対対照状態)の統計学的有意性を評価する回帰モデルから成った。症例を対照と年齢、人種、性別およびCAD指数とに関してマッチングさせたので、これらの変数は、回帰モデルには現れない。条件付ロジスティック回帰モデルは、マッチング戦略に含まれない交絡因子に適応した。モデルへの組み入れのための従来のリスク因子の選択は、心血管の転帰に対する分析物の影響を調査する研究からの結果に関して報告している医学文献中の最近の論文の再考に基づいた。それぞれの血漿分析物を、対照被験者における分析物の分布に基づき、四分位数としてモデル化した。尤度比検定を用いて、転帰を予測する際のそれぞれの分析物の統計学的優位性を評価した。多重比較についての調整は、Storey(J.R.Statist Soc B 64:479−498,2002)による方法に基づいた。症例または対照のいずれかにおける50%より大きい欠測値は、この一変量分析から除外した。
【0169】
分析物値を二値変数に変換する第二セットの一変量分析を行った(ここで、0は、欠測値を示し、1はそうでないものを示す)。前の一変量分析のように、尤度比検定を用いて、転帰を予測する際のそれぞれの分析物の統計学的有意性を評価した。多重比較についての調整は、Storey(J.R.Statist Soc B 64:479−498,2002)による方法に基づいた。
【0170】
症例および対照を別々に図示する、統計学的に有意な分析物それぞれについての箱ひげ図も生成した。
【0171】
生p値と比較したFDR調整p値のプロットを生成した。プロットに見られるp値の分布を、それぞれのプラットホームにおける推定分析物の選択のためのp値閾値を選択するために基礎として用いた。すべてのプラットホームからのデータを入手できたら、すべてのプラットホームからのデータを積分することによってFDR調整p値を生成した。最終一変量分析物リストを積分解析から生成した。選択した結果を下の表4に列挙する。
【0172】
【表4】

【0173】
【表4B】

上の表4において、PCは、ホスファチジルコリンを意味し、PEは、ホスファチジルエタノールアミンを意味し、TGは、トリアシルグリセロールを意味し、SMは、スフィンゴミエリンを意味し、LPCは、リゾ−ホスファチジルコリンを意味し、ILは、インターロイキンを意味し、およびx:yは、x個の炭素原子とy個の二重結合とを含有する脂肪酸鎖を示す。「オッズ比」を示す縦列の記載事項は、本研究におけるすべての被験者にわたる分析物についての濃度の全分布の第1四分位数内の分析物濃度を有する被験者に対する第4四分位数内の分析物濃度を有する被験者の比較に対応するオッズ比である。質量分析によって測定した分析物について、測定単位を「任意単位」または「AU」として示す。質量分析計から得た濃度測定値は、質量分析計装置の検出器によって検出されるような処理済イオンカウントを表す。質量分析によって測定した分析物について、絶対定量は行わなかった。
【0174】
次の脂肪酸分析物は、MACCEについてのリスクに関連がある(ここで、それぞれ、同定分析物のリスト中の最初の分析物は、MACCEについてのリスクと最も強い関連性を有し、最後の分析物は、MACCEについてのリスクと最も弱い関連性を有する):18:2/18:1/17:0TG、18:0/20:4PE、16:0/18:1PC、16:0/22:6PE、20:4LPC、20:1/18:1/18:1TG、18:1/17:1/16:0TG、18:1/18:0/18:0TG、18:1/18:1/17:0TG、16:0SM、および16:0/16:0PC。
【0175】
20:4LPCを除き、表4中において確認される脂肪酸分析物それぞれについて、脂肪酸の濃度が高いほど、MACCEについてのリスクと強い関係があり得る(例えば、18:0/20:4PEの個体群分布の第4四分位数内の被験者は、最も低い、すなわち第1、四分位数内のものよりMACCEに罹患する可能性が高い)。20:4LPCについては、その反対であり得る:20:4LPCの個体群分布の最も低い、すなわち第1四分位数内の被験者は、最も高い、すなわち第4、四分位数内の者よりMACCEに罹患する可能性が高い。
【0176】
一部の実施形態によると、臨床家は、上の表4の第4四分位数内の分析物測定値を有する被験者を、潜在的に2年以内のMACCEについての高いリスクがある個体として同定することができる(第1四分位数内の値を有する被験者の方がより高いリスクがあることを意味する、1未満のオッズ比を有する、アポリポタンパク質A1、20:4LPC、またはアラビノースを除く)。別の実施形態によると、臨床家は、上の表4の第3または第4四分位数範囲内の分析物測定値を有する被験者を、潜在的に2年以内のMACCEについての高いリスクがある個体として同定することができる。さらなる実施形態によると、臨床家は、上の表4の第2、第3または第4四分位数範囲内の分析物測定値を有する被験者を、潜在的に2年以内のMACCEについての高いリスクがある個体として同定することができる。
【0177】
多変量分類法
監視多変量予測モデル:予測される転帰が指標特性づけの2年以内のMACCEの発生である、多変量予測モデルを構築した。モデルにインプットした変量は、(i)バイオ分析プラットホーム特異的血漿分析物、および(ii)すべてのバイオ分析プラットホームによって一緒にプロファイルされるような血漿分析物であった。従来の臨床因子について調整を伴うおよび伴わない、それぞれの多変量モデルも構築した。
【0178】
多変量分類手順Ranom Forest(Breiman,Machine Learning 45:5−32,2001)をデータに適用して、MACCEの予兆となる多変量フィンガープリントを得た。外部クロスバリデーションおよびラベル順列検定を実行して、得られたモデルの統計学的有意性を評価した(Ambroise & McLachlan,Proc Natl Acad Sci 99:6562−2,2002)。以下の出力をそれぞれの分類器からから得ることができた:1.「症例」および「対照」群におけるMACE予測のための予測多変量血漿分析物候補が、分類精度における重要性によってランクづけされた分析物と共に報告された。
2.それぞれの分類器についての特異性に対する感度のROC曲線(例えば、図1および2を参照)
症例または対照のいずれかにおける50%より大きい欠測値を有する特徴は、多変量分析から除外した。症例および対照における50%未満の欠測値を有する特徴は、Tryoyanskayaらによって記載された方法(Bioinformatics 17(6)520−525,2001)を用いて一定の価値があると評価された欠測値を有した。
【0179】
方法に従って同定した分析物
723の分析物の総合バイオ分析データセットと共に多変量統計学的分類器分析法(Random Forests−Breiman,Machine Learning 45:5−32,2001)を用いることにより、本発明者らは、血液サンプルを得た時点から2年以内の個体における心血管または脳血管主要有害事象の発生を予測するために用いることができる分析物およびアルゴリズムのセットを発見した。下の表5は、1つの出発シードに基づくRandom Forests分類器における合計723の分析物のリスト中のそれらの重要性順での50の最も重要な分析物を表す(分析#1)。Random Forests分析および分析#1と同じ出発シードを用いるちょうど50の分析物成分を有する分類器の獲得への再帰的特徴排除アプローチからの部分的分析物重要性リストを、縦列マーカー「分析#2からの重要性の順番」に示す。3つの追加のRandom Forests分析および異なる出発シードから誘導されたちょうど50の分析物成分を有する分類器の獲得への再帰的特徴排除アプローチからの部分分析物重要性リストを、分析#3、#4および#5についての縦列に示す。Random Forests分析のための出発シードまたは50固定の分析物成分の分類器を得るための再帰的特徴排除の使用に関係なく、最も重要な20の分析物は、ほぼ常に、分析#1からの重要性によってランク付けして上位50位以内である。
【0180】
【表5−1】

【0181】
【表5−2】

4つの出発シードを用いるRandom Forests分析からの分析物の完全リストを、添付の付属書類5−8における同じ4つの出発シードについてのRandom Forestプラス回帰的特徴排除アプローチからの上位50の分析物と共に、添付の付属書類1−4に示す。
【0182】
アルゴリズムと共に個体からの血漿サンプル中の分析#1からの上位20の分析物のレベルを用いることにより、2年以内のMACCEの発生についてのその個体に関する予測を、感度87%および特異性87%で行うことができた。これを図1に示す受信者動作特性(ROC)曲線によって例証する。
【0183】
66の個々の分析物のターゲットプロテオミクスバイオ分析データセットと共に多変量統計学的分類器分析法(Rondom Forests−Breiman,Machine Learning 45:5−32,2001)を用いることにより、本発明者らは、血液サンプルを得た時点から2年以内の個体における心臓発作の発生を予測するために用いることができる分析物およびアルゴリズムのセットを発見した。下の表6は、1つのそのような分析物セットにおける最も重要な10の分析物、および多変量分析から得た分類器におけるそれらの重要性の順番を表す。
【0184】
【表6】

アルゴリズムと共に個体からの血漿サンプル中のこれら上位10の分析物のレベルを用いることにより、2年以内のMACCEの発生についてのその個体に関する予測を、感度82%および特異性87%で行うことができた。これを図2に示す受信者動作特性(ROC)曲線によって例証する。
【0185】
一部の実施形態によると、上位10の分析を用いて次の一次方程式によりMACCE指数を定義することができる:
y=c+c+c+c+c+c+c+c+c+c1010
[方程式1]
(式中、cからc10の値は、下の表9に列挙する値であり、変数xからx10は、下の表7に列挙する分析物の測定値を表す)。分析物を、上のターゲットプロテオミクス:多重化イムノアッセイのセクションにおいて説明したように測定する。それぞれの分析物についての測定単位を下の表に列挙する。方程式1に測定値を入れる前に、それらの値を標準化しなければならない。すなわち、それぞれの測定値から、全研究個体群(すなわち、すべての症例および対照被験者)から得たすべての値の平均を引き、その後、結果を、全研究個体群(すなわち、すべての症例および対照被験者)から得た分析物測定値の標準偏差で割った。方程式1の10の分析物についての対応する値、すなわち、個体群平均および標準偏差を表8に列挙する。
【0186】
方程式1のような方程式を用いると、上記方程式において得られる値y(MACCE指数)がゼロより大きいこれら10の分析物についての測定値(それぞれ、表8からの適切な値を用いて上記したように標準化した測定値)を有する被験者は、2年以内のMACCEのリスクがあると分類されることとなり、そうでない者は、2年以内のMACCEについてのリスクがないと分類されることとなる。
【0187】
【表7】

【0188】
【表8】

【0189】
【表9】

上位四(4)の分析物を用いて、次の一次方程式により、さらに別のMACCE指数を定義することができる:
y=c+c+c+c [方程式2]
(式中、cからcの値は、下の表11に列挙する値をとり、変数xからx10は、下の表10に列挙する分析物の測定値を表す)。分析物を、上のターゲットプロテオミクス:多重化イムノアッセイのセクションにおいて説明したように測定する。それぞれの分析物についての測定単位は、下の表に列挙する。方程式2に測定値を入れる前に、それらの値を標準化しなければならない。すなわち、それぞれの測定値から、全研究個体群(すなわち、すべての症例および対照被験者)から得たすべての値の平均を引き、その後、結果を、全研究個体群(すなわち、すべての症例および対照被験者)から得た分析物測定値の標準偏差で割った。方程式2の4つの分析物についての対応する値、すなわち、個体群平均および標準偏差を上の表8に列挙する。
【0190】
【表10】

【0191】
【表11】

方程式2のような方程式を用いて、上記方程式において得られる値y(MACCE指数)がゼロより大きい、これら4つの分析物についての測定値(それぞれ、表8からの適切な値を用いて上記したように標準化した測定値)を有する被験者は、2年以内のMACCEのリスクがあると分類されることとなり、そうでない者は、2年以内のMACCEについてのリスクがないと分類されることとなる。
【0192】
追加の多変量分類分析法、Prediction Analysis of Microarrays(PAM,Tibshiraniら,PNAS 99:6567−6572,2002)、を723の分析物の総合プラットホームデータセットに適用した。この分析によって、症例または対照の分類に最適な最小分析セットが得られた。上のRandom Forestsケースにおける、分析物#2、#3、#4および#5についてのものと同じ4つのシードを用いる4つのPAM分析物のための分析セットを次の表に示す:
【0193】
【表12】

【0194】
【表13】

【0195】
【表14】

【0196】
【表15】

PAMによるこの代替多変量分類器分析により、異なる出発シードに対して本質的に同じ分析物、およびRandom Forests分析の結果と、同一ではないが、一致する重要性の順番で上位にランク付けされる分析物が得られた。
【0197】
本教示は、個体からの血液サンプルにおいて測定することができる、ならびにMACCE指数を計算するためのアルゴリズムおよびその個体についての血液サンプル採取時から2年以内のMACCEの発生を予測するためのアルゴリズムと併用することができる、分析物セットの素性を含む。
【0198】
本教示は、分析物セットの血液、血漿または血清レベルに関する情報と共に用いて、MACCEを計算することができる、およびBreimanが分析物セット、例えばこれ、について記載した(Machine Learning 45:5−32,2001)ような個体についての血液サンプル採取時から2年以内のMACCEの発生を予測することができる、アルゴリズムも含む。
【0199】
本教示は、MACCE指数を計算するためのおよびその個体についての血液サンプル採取時から2年以内のMACCEの発生を予測するためのアルゴリズムと併用することができる、分析物セットのレベルを個体の血液、血漿または血清サンプルから測定することができる計器も含む。
【0200】
本教示は、MACCE指数を計算するためのおよび個体についての血液サンプル採取時から2年以内のMACCEの発生を予測するためのアルゴリズムと併用することができる、分析物セットの血液、血漿または血清レベルを測定するアッセイに利用することができる試薬(抗体および他のタイプの親和性試薬)も含む。
【0201】
本教示は、その本質的な精神または特徴から逸脱することのない他の特定の形での実施形態を包含する。従って、上述の実施形態は、すべての点で、本明細書に記載する本教示に対する限定ではなく例証であると考えなければならない。本発明の範囲は、上述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の等価の意味および範囲内に入るすべての変更が意図されており、特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、グルタチオンS−トランスフェラーゼおよび組織因子を含む1セットの分析物の、ヒトの血液系サンプル中の濃度を測定すること;前記セットの分析物についてのMACCE指数を決定すること;および前記MACCE指数がゼロより大きい場合には心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度増加、または前記MACCE指数がゼロ以下である場合には心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度低下を有するものとしてそのヒトを同定することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法。
【請求項2】
ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を示す値を有するMACCE指数を決定することであって、ここで、前記セットの分析物は、アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、および組織因子を含むこと;および前記MACCE指数、前記心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、またはそれらの等価物のうちの少なくとも1つを、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに転送すること、表示すること、保存すること、または出力することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法。
【請求項3】
ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を示す値を有するMACCE指数を決定することであって、ここで、前記セットの分析物は、アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、および組織因子を含むこと;および前記ヒトが、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加を有するものとして同定された場合、治療を推奨すること、是認すること、または施与することを含む、ヒトを治療する方法。
【請求項4】
前記セットの分析物が、CD40、フィブリノゲン、IL−3、IL−8、SGOT、およびフォン・ヴィルブランド因子をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記セットの分析物についてのMACCE指数の決定が:それぞれの分析物の測定濃度を標準化して標準濃度を得ること;前記それぞれの分析物の標準濃度に分析物定数をかけて分析物値を得ること;および前記それぞれの分析物の分析物値を合計してMACCE指数を得ることを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記測定濃度の標準化が、前記測定濃度から個体群平均値を引いて結果を得、その後、該結果を前記個体群平均値の標準偏差で割ることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、CD40、フィブリノゲン、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、IL−3、IL−8、SGOT、組織因子およびフォン・ヴィルブランド因子から成る1セットの分析物の、ヒトの血液系サンプル中の濃度を測定すること;前記セットの分析物についてのMACCE指数を決定すること;および前記MACCE指数がゼロより大きい場合には心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度増加、または前記MACCE指数がゼロ以下である場合には心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度低下を有するものとして前記ヒトを同定することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法。
【請求項8】
ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を示す値を有するMACCE指数を決定することであって、ここで、前記セットの分析物は、アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、CD40、フィブリノゲン、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、IL−3、IL−8、SGOT、組織因子、およびフォン・ヴィルブランド因子から成ること;および前記MACCE指数、前記心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、またはそれらの等価物のうちの少なくとも1つを、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに転送すること、表示すること、保存すること、または出力することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法。
【請求項9】
ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を示す値を有するMACCE指数を決定することであって、ここで、前記セットの分析物は、アルファ−フェトプロテイン、癌抗原125、CD40、フィブリノゲン、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、IL−3、IL−8、SGOT、組織因子、およびフォン・ヴィルブランド因子から成ること;および前記ヒトが、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加を有するものとして同定された場合、治療を推奨すること、是認することまたは施与することを含む、ヒトを治療する方法。
【請求項10】
前記セットの分析物についてのMACCE指数の決定が:それぞれの分析物の測定濃度を標準化して標準濃度を得ること;前記それぞれの分析物の標準濃度に分析物定数をかけて分析物値を得ること;および前記それぞれの分析物の分析物値を合計してMACCE指数を得ることを含む、請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記測定濃度の標準化が、前記測定濃度から個体群平均値を引いて結果を得、その後、該結果を前記個体群平均値の標準偏差で割ることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
システイン、フォン・ヴィルブランド因子、IL−8、16:0/18:1ホスファチジルコリン、N−カルボキシ−アラニン、フィブリノゲン、MMP−2、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、アポリポタンパク質A1、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、アルファ−1アンチトリプシン、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18:1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、20:4リゾホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、SHBG、18:1/17:1,16:0トリアシルグリセロール、アラビノース、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールから成る群より選択される1セットの分析物のうちの少なくとも1つ分析物の、ヒトの血液系サンプル中の濃度を測定すること;および前記測定濃度と所定の閾値との比較に基づき心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するとして前記ヒトを同定することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法。
【請求項13】
ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物のうちの少なくとも1つの分析物の測定濃度を所定の閾値と比較して、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を確認することであって、ここで、前記セットの分析物は、システイン、フォン・ヴィルブランド因子、IL−8、16:0/18:1ホスファチジルコリン、N−カルボキシ−アラニン、フィブリノゲン、MMP−2、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、アポリポタンパク質A1、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、アルファ−1アンチトリプシン、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18:1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、20:4リゾホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、SHBG、18:1/17:1,16:0トリアシルグリセロール、アラビノース、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールから成る群より選択されること;および、前記測定濃度、前記所定の閾値、および前記心血管または脳血管主要有害事象の尤度のうちの少なくとも1つをユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに転送すること、表示すること、保存すること、または出力することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法。
【請求項14】
16:0/18:1ホスファチジルコリン、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18:1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、20:4リゾホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、18:1/17:1/16:0トリアシルグリセロール、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールから成る群より選択される1セットの分析物のうちの少なくとも1つの分析物の、ヒトの血液系サンプル中の濃度を測定すること;およびその測定濃度と所定の閾値との比較に基づき心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして前記ヒトを同定することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法。
【請求項15】
ヒトの血液系サンプル中の1セットの分析物のうちの少なくとも1つの分析物の測定濃度を所定の閾値と比較して、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を確認することであって、ここで、前記分析物は、16:0/18:1ホスファチジルコリン、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18:1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、20:4リゾホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、18:1/17:1/16:0トリアシルグリセロール、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールから成る群より選択されること;および、前記測定濃度、前記所定の閾値、および前記心血管または脳血管主要有害事象の尤度のうちの少なくとも1つをユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに転送すること、表示すること、保存すること、または出力することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象の確率を評定する方法。
【請求項16】
分析物:システイン、フォン・ヴィルブランド因子、IL−8、16:0/18:1ホスファチジルコリン、N−カルボキシ−アラニン、フィブリノゲン、MMP−2、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、アルファ−1アンチトリプシン、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18:1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、SHBG、18:1/17:1,16:0トリアシルグリセロール、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールのそれぞれについての所定の閾値が、それぞれ各々の分析物についての表4中の第4四分位数の下限であり、ここで、第4四分位数内の測定濃度は、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を増加させる、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
分析物:システイン、フォン・ヴィルブランド因子、IL−8、16:0/18:1ホスファチジルコリン、N−カルボキシ−アラニン、フィブリノゲン、MMP−2、18:0/20:4ホスファチジルエタノールアミン、16:0/22:6ホスファチジルエタノールアミン、18:1/18:0/18:0トリアシルグリセロール、アルファ−1アンチトリプシン、18:2/18:1/17:0トリアシルグリセロール、20:1/18:1/18:1トリアシルグリセロール、16:0/16:0ホスファチジルコリン、16:0スフィンゴミエリン、SHBG、18:1/17:1,16:0トリアシルグリセロール、および18:1/18:1/17:0トリアシルグリセロールのそれぞれについての所定の閾値が、それぞれ各々の分析物についての表4中の第3および第4四分位数の下限であり、ここで、第3および第4四分位数内の測定濃度は、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を増加させる、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
分析物アポリポタンパク質A1、20:4リゾホスファチジルコリンおよびアラビノースのそれぞれについての所定の閾値が、それぞれ各々の分析物についての表4中の第1四分位数の上限であり、ここで、第1四分位数内の測定濃度は、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を増加させる、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
分析物アポリポタンパク質A1、20:4リゾホスファチジルコリンおよびアラビノースのそれぞれについての所定の閾値は、それぞれ各々の分析物についての表4中の第1および第2四分位数の上限であり、ここで、第1および第2四分位数内の測定濃度は、心血管または脳血管主要有害事象の尤度を増加させる、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記血液系サンプルが、血清または血漿を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ヒトから少なくとも1つの血液系サンプルを得ること;前記ヒトからのサンプル中の付属書類1において確認される1つ以上の分析物の絶対濃度を測定すること;および付録書類1において確認される1つ以上の分析物の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして前記ヒトを同定することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象を予測するための方法。
【請求項22】
ヒトからのサンプル中の付属書類1において確認される1つ以上の分析物の絶対濃度を測定すること;前記絶対濃度を所定の閾値と比較すること;前記付属書類1において確認される1つ以上の分析物の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして前記ヒトを同定すること;および前記心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、前記絶対濃度、前記所定の閾値またはそれらの等価物のうちの少なくとも1つを、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに、転送すること、表示すること、保存すること、または出力することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象を予測するための方法。
【請求項23】
ヒトから少なくとも1つの血液系サンプルを得ること;前記ヒトからのサンプル中の付属書類1において確認される1つ以上の分析物の相対濃度を決定すること;および付録書類1において確認される1つ以上の分析物の相対濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして前記ヒトを同定することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象を予測するための方法。
【請求項24】
ヒトからのサンプル中の付属書類1において確認される1つ以上の分析物の相対濃度を決定すること;前記相対濃度を所定の閾値と比較すること;前記付属書類1において確認される1つ以上の分析物の相対濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または減少を有するものとして前記ヒトを同定すること;および前記心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、前記絶対濃度、前記所定の閾値またはそれらの等価物のうちの少なくとも1つを、ユーザー・インターフェース・デバイス、コンピュータ可読記憶媒体、またはローカルもしくはリモート・コンピュータ・システムに、転送すること、表示すること、保存すること、または出力することを含む、ヒトにおける心血管または脳血管主要有害事象を予測するための方法。
【請求項25】
前記MACCE指数、前記心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、前記測定濃度、前記所定の閾値、またはそれらの等価物が、スクリーンまたは有形媒体に表示される、請求項2、8、13または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記MACCE指数、前記心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、前記測定濃度、前記所定の閾値、またはそれらの等価物が、医療業界の人に転送される、請求項2、8、13または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記MACCE指数、前記心血管もしくは脳血管主要有害事象の尤度、前記測定濃度、前記所定の閾値、またはそれらの等価物が、医療保険のプロバイダーまたは医師に転送される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
付属書類1において確認される1つ以上の分析物の、ヒトの血液系サンプル中の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または低下を有するものとしてヒトを同定すること;および前記ヒトが、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加を有するものとして同定された場合には治療を推奨すること、是認すること、または施与することを含む、治療方法。
【請求項29】
付属書類1において確認される1つ以上の分析物の、ヒトの血液系サンプル中の測定濃度に基づき、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加または低下を有するものとしてヒトを同定すること、およびそのヒトが、心血管または脳血管主要有害事象の尤度増加を有するものとして同定されない限り、治療の推奨、是認または施与を拒否することを含む、治療を受けるべきでないヒトを同定する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−501133(P2011−501133A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529096(P2010−529096)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/079553
【国際公開番号】WO2009/049189
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(506057638)ビージー メディシン, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】