応力測定方法、応力測定用センサ、及び残留応力評価用デバイス
【課題】ビアチェーンを設けた基板に応力を加えた際に可逆的な抵抗変化が見出されたことを利用して、基板やこの基板を固定した測定対象物に加わる応力をビアチェーンの抵抗変化に基づいて測定する応力測定方法を提供する。
【解決手段】所定の基板10上にビアチェーン15とこれに接続するパッド17、18を備えたものを測定対象物に固定し、パッド間の電気抵抗を測定することにより、測定対象物に加わる応力が同時に基板10にも加わる中、この応力の大きさに対応したビアチェーン15の抵抗変化を外部から検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーン15の抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーン15の抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく測定対象物に加わる応力の測定が行える。
【解決手段】所定の基板10上にビアチェーン15とこれに接続するパッド17、18を備えたものを測定対象物に固定し、パッド間の電気抵抗を測定することにより、測定対象物に加わる応力が同時に基板10にも加わる中、この応力の大きさに対応したビアチェーン15の抵抗変化を外部から検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーン15の抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーン15の抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく測定対象物に加わる応力の測定が行える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセスにより基板上に設けたビアチェーンの抵抗変化に基づいて、基板や当該基板が固定された測定対象物に加わる応力を測定する応力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIをはじめとする半導体デバイスは、小型化、高集積化と共に、さらなる高速化、省電力化を目指して、配線の微細化や多層化が進んでいる。そして、微細化に伴って配線のより一層の低抵抗化を図るためにアルミニウム配線に代えて銅配線が採用され、また、銅配線の採用と共に、層間絶縁膜として、配線間容量低減のため膜中に空孔を導入し、誘電率の低減を図った低誘電率膜(low−k膜)が用いられるようになっている。
【0003】
こうした配線の微細化や多層化等に伴う新たな技術の導入に伴い、製造工程においても、形成される回路の動作に影響を及すような問題が生じやすくなっており、デバイスの量産にあたり、製造工程中や工程後における不具合発生の有無や、設計通りの電気的特性が確保できるかどうか等を、適切に検証、評価することが求められている。
【0004】
近年、こうした半導体デバイスの製造にあたって、ウェハやパッケージの各段階において、配線の性能やプロセスの影響の評価、不具合の解析等を行うためにTEG(Test Element Group)が用いられるようになっている。このTEGにおける多層配線の評価用パターンの一つとして、複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列鎖状に連結したビアチェーンが設けられており、このビアチェーンの抵抗等を測定することで、配線やビア、絶縁膜等が当初の設計通りに機能しているかの確認が行える仕組みである。
【0005】
こうした従来のビアチェーンを用いた半導体デバイスの評価手法の例としては、特開平3−36747号公報(特許文献1)や特開2004−228510号公報(特許文献2)、特開2004−335914号公報(特許文献3)に開示されるものがある。
【0006】
一方、半導体デバイスでは、モールド等のパッケージ工程やワイヤボンディング等の配線工程、さらに製造後の温度変化や圧力付加によって、基板(チップ)に応力が加わり、これが電気的特性を変化させる場合もある。このため、基板に加わる応力を適切に評価しておく必要があり、応力を測定する仕組みが求められていた。応力の測定をデバイス外部から行うことは困難であったが、近年、半導体基板そのものに拡散抵抗素子部、すなわちピエゾ抵抗効果を利用した応力検知部を形成して基板に加わる応力を電気信号として測定可能とするものが提案されており、その例として、特開2005−209827号公報(特許文献4)や特開2009−65052号公報(特許文献5)に開示されるものがある。
【0007】
また、こうした半導体に拡散抵抗素子部を設けたものは、半導体基板自体の応力測定用にとどまらず、基板に拡散抵抗素子部のみ設けた、すなわち応力測定の機能のみ与えた半導体センサとしても一般的に利用されている。こうした従来の応力測定用センサの例としては、特開平10−132675号公報(特許文献6)や特開2006−258674号公報(特許文献7)に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−36747号公報
【特許文献2】特開2004−228510号公報
【特許文献3】特開2004−335914号公報
【特許文献4】特開2005−209827号公報
【特許文献5】特開2009−65052号公報
【特許文献6】特開平10−132675号公報
【特許文献7】特開2006−258674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の半導体デバイスの電気的特性等の評価は前記特許文献1ないし3に示される手法等で行われていたが、ビアチェーン等の配線パターンのみでは、半導体基板に加わる応力を検知して評価することはできず、前記特許文献4、5に示されるような拡散抵抗素子部を基板上に別途設けて測定する必要があった。
【0010】
しかしながら、前記特許文献4ないし7に示されるような半導体基板上に拡散抵抗素子部を形成したものによる応力の測定は、応力の変化に対応する拡散抵抗素子部の抵抗変化が、ピエゾ抵抗効果の性質上、応力0における抵抗値から最大でも数%程度の変化にとどまるなど極めて小さいものであることから、検出感度が優れず、測定に際して様々な工夫が必要となり、測定が難しいという課題を有していた。また、拡散抵抗素子部は半導体基板に拡散層として形成されるものであり、製造プロセス上の制約を受けやすく、また基板上での配置も限定されるという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、ビアチェーンを設けた基板に応力を加えた際に可逆的な抵抗変化が見出されたことを利用して、基板やこの基板を固定した測定対象物に加わる応力をビアチェーンの抵抗変化に基づいて測定する応力測定方法、及び、測定対象物に固定してビアチェーンの抵抗変化から応力の値を求められる応力測定用センサ、並びに、応力に対応して抵抗を変化させるビアチェーンが設けられて基板に加わる応力を測定、評価できる残留応力評価用デバイス、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る応力測定方法は、基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続された状態で、前記基板を測定対象物に固定し、前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を、前記測定対象物に応力の加わった状態で測定し、あらかじめ取得された前記基板における応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて、測定対象物に加わる応力の値を求めるものである。
【0013】
このように本発明においては、配線が微細化、多層化した半導体デバイスの基板上における配線の電気的特性の評価に用いられるビアチェーンについて、本発明者が、こうしたビアチェーンのある基板に応力を加えると、ビアチェーンの抵抗値が、加えられる応力の大きさに対応して大きく変化し、且つ応力の付加を解除すると当初の抵抗値に戻る現象を見出したことに基づいて、所定の基板上にビアチェーンとこれに接続するパッドを備えたものを測定対象物に固定し、パッド間の電気抵抗を測定することにより、測定対象物に加わる応力が同時に基板にも加わる中、この応力の大きさに対応したビアチェーンの抵抗変化を外部から検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーンの抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく測定対象物に加わる応力の測定が行える。
【0014】
また、本発明に係る応力測定方法は必要に応じて、前記測定対象物への固定状態で前記基板に加わる応力が、ビアチェーンに対し引張り方向となる場合は、あらかじめ取得された前記基板でのビアチェーンに対し引張り方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求め、前記測定対象物への固定状態で前記基板に加わる応力が、ビアチェーンに対し圧縮方向となる場合は、あらかじめ取得された前記基板でのビアチェーンに対し圧縮方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求めるものである。
【0015】
このように本発明においては、ビアチェーンのある基板では、基板に加わる応力の向きが、ビアチェーンに対する引張り方向の場合と圧縮方向の場合とで、それぞれ応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係が異なる性質を有することに基づいて、基板に加わる応力の向きが、前記引張り方向の場合には、あらかじめ取得された前記引張り方向における応力の変化と抵抗変化との関係を用いて応力を求め、また、基板に加わる応力の向きが、前記圧縮方向の場合には、あらかじめ取得された前記圧縮方向における応力の変化と抵抗変化との関係を用いて応力を求めることにより、応力の加わる向きによって異なるビアチェーンの抵抗変化に対応して、基板に加わる応力を適切に求められることとなり、極めて正確に測定対象物に加わる応力の測定が行える。
【0016】
また、本発明に係る応力測定方法は、基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続され、前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を、前記基板に応力の加わった状態で測定し、あらかじめ取得された前記基板における応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて、基板に加わる応力の値を求めるものである。
【0017】
このように本発明においては、所定の基板上にビアチェーンとこれに接続するパッドを設け、基板に直接応力が加わりうる状況でパッド間の電気抵抗を測定することにより、基板に加わった応力の大きさに対応したビアチェーンの抵抗変化を検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーンの抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく基板に直接加わる応力の測定が行える。なお、本発明の応力測定方法は、基板に加えられた外力により生じた応力を測るものであってもよい。この場合、外力は、ビアチェーンから離れた部分に加えてもよく、ビアチェーンの上に加えてもよい。また、外力を付加する部分に、押圧パッドを設ける構成とすることもできる。
【0018】
また、本発明に係る応力測定方法は必要に応じて、前記応力の加わった状態での測定が、基板のデバイス実装状態における残留応力の測定であると共に、前記抵抗変化の割合が、基板のデバイス実装前に取得された抵抗変化の割合であるものである。
【0019】
このように本発明においては、半導体デバイスの基板上に主電子回路とは別途にビアチェーンとこれに接続するパッドを設け、デバイス実装状態におけるパッド間の電気抵抗を測定することにより、デバイス実装状態で基板に応力が加わっている場合に、この応力の大きさに対応したビアチェーンの抵抗変化を外部から検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーンの抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく応力の測定が行え、デバイス実装状態で基板に加わっている応力の評価を正確に行える。
【0020】
また、本発明に係る応力測定方法は必要に応じて、前記基板が、絶縁膜をlow−k絶縁膜とされると共に、前記複数層にわたり配設される配線を銅配線とされて用いられるものである。
【0021】
このように本発明においては、基板における層間の絶縁膜が低誘電率膜で、且つ配線が銅配線であり、著しく微細化される配線とビアからなるビアチェーンを基板のμmオーダーの極めて小さい領域に設けられ、このビアチェーンを設けた極小の領域を測定範囲として応力を求められることにより、外部に導通可能なパッドのスペースを確保すれば、応力測定対象に関わりなく適宜測定範囲を設定して応力を測定でき、微小レベルから一般的な歪みゲージのレベルまで適切に応力測定が行える。
【0022】
また、本発明に係る応力測定方法は必要に応じて、前記基板が、前記配線を90nmノードの多層配線とされ、各ビア径を約0.13μm、各ビアのピッチを約0.33μmとされると共に、ビアチェーンにおけるビア数を2万ないし10万個とされて用いられるものである。
【0023】
このように本発明においては、90mmノードの多層配線基板では、多数のビアが配線の大きさに対応した径及び間隔で配置されてビアチェーンをなす基板に対し、応力がビアチェーンに対する引張り方向や圧縮方向にそれぞれ加わると、応力が大きくなるのに合せてビアチェーンの抵抗が小さくなる性質を有することに基づいて、ビアチェーンの抵抗変化を測定し、応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を用いて応力を求められることにより、基板に加わる応力の増加、減少とは逆の変化傾向を示すビアチェーンの抵抗値から応力の値を適切に求められ、応力以外の外部からの影響を受けることなく応力の測定が行える。
【0024】
また、本発明に係る応力測定方法は必要に応じて、前記基板が、前記配線を250nmノードの多層配線とされ、各ビア径を約0.25μm、各ビアのピッチを約1μmとされると共に、ビアチェーンにおけるビア数を2万ないし10万個とされて用いられるものである。
【0025】
このように本発明においては、250mmノードの多層配線基板では、多数のビアが配線の大きさに対応した径及び間隔で配置されてビアチェーンをなす基板に対し、応力がビアチェーンに対する引張り方向や圧縮方向にそれぞれ加わると、応力の増大、減少に合せてビアチェーンの抵抗が大きな変化率で増大、減少する性質を有することに基づいて、ビアチェーンの抵抗変化を測定し、応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を用いて応力を求められることにより、基板に加わる応力の増加、減少と同じような変化傾向を示すビアチェーンの抵抗値から応力の値を適切に求められ、応力に対する感度を高くして応力の測定を効率よく行える。
【0026】
また、本発明に係る応力測定用センサは、基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続されてなり、前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を測定可能として測定対象物に固定されるものである。
【0027】
このように本発明においては、所定の基板上にビアチェーンとこれに接続するパッドを備えたものをセンサとして測定対象物に固定し、応力の大小に応じて変化するパッド間の電気抵抗の値を得ることにより、応力が測定対象物に加わると同時に基板にも加わる中で、この応力に対応したビアチェーンの抵抗変化を測定すれば、あらかじめ把握された応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を用いて、ビアチェーンの抵抗値から応力の値を容易に求められ、測定対象物に加わる応力の測定を効率よく行える。なお、こうした測定対象物に加わる応力を測定するセンサの他、前記基板で直接外力を受け得る場合には、基板を他の物体に固定する必要はなく、基板のみ配置して、外力によって基板に生じる応力の値や外力の値を求め得るセンサとすることができる。
【0028】
また、本発明に係る残留応力評価用デバイスは、基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続されて、基板上の主電子回路部とは電気的に接続されない応力検出部とされてなり、前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を外部から測定可能として実装状態とされるものである。
【0029】
このように本発明においては、半導体デバイスの基板上に主電子回路とは別途にビアチェーンとこれに接続するパッドを設け、パッド間の電気抵抗の値を取得することにより、デバイス実装状態で基板に応力が加わっている場合に、この応力に対応したビアチェーンの抵抗変化を外部から測定すれば、あらかじめ把握された応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を用いて、ビアチェーンの抵抗値から応力の値を容易に求められ、基板に加わる応力を適切に測定でき、同様の構造の半導体デバイスにおける残留応力の評価を正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る応力測定方法で用いるセンサの平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る応力測定方法で用いるセンサの概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る応力測定方法で用いるセンサにおけるビアチェーン部分の概略平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る応力測定方法で用いるセンサにおけるビアチェーン部分の模式断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る応力測定方法で用いる評価用デバイスの一部切欠平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る応力測定方法で用いる評価用デバイスの概略断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る基板上のビアチェーンのメモリーデバイスとしての応用状態説明図である。
【図8】本発明の実施例におけるビアチェーンに対し引張り方向となる応力の基板付加状態説明図である。
【図9】本発明の実施例におけるビアチェーンに対し圧縮方向となる応力の基板付加状態説明図である。
【図10】本発明の実施例における90nmノードの場合の応力と抵抗との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例における250nmノードの場合の応力と抵抗との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る応力測定方法を前記図1ないし図4に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る応力測定方法は、基板10上にビアチェーン15のあるセンサ1を用い、このセンサ1を応力の測定対象物50に固定してこの測定対象物50に加わる応力を測定するものである。
【0032】
前記センサ1は、基板10上に絶縁膜13を介して複数層にわたり配設される多数の配線11を、ビア12を介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーン15と、外層に配設されてビアチェーン15一端部を接続される第一接続パッド17と、外層に配設されてビアチェーン15他端部を接続される第二接続パッド18と、これら各部を覆って保護する外装体16とを備える構成である。
【0033】
このセンサ1は、第一接続パッド17と第二接続パッド18をそれぞれ外部配線17a、18aに接続して外装体16の表面の端子部17b、18bと導通させており、この端子部17b、18bにより外部の測定機器と接続して、第一接続パッド17と第二接続パッド18との間の抵抗を測定可能とされており、前記端子部17b、18bを外側に向けた状態で測定対象物50に固定される。
【0034】
センサ1における基板10、配線11、ビア12及び絶縁膜13は一般的な半導体デバイス同様の構成としてかまわないが、設計上の要求により配線が微細化される場合、配線を銅配線とし、合せて絶縁膜13として低誘電率膜(low−k膜)を採用するのが好ましい。また、このセンサ1は、一般的な半導体デバイス同様に、シリコン等の半導体基板10上に絶縁膜13を介した複数層の配線層を設けて形成されるものであるが、多層配線可能なものであれば、基板10はシリコンをはじめとする半導体に限られず、ポリイミドやガラス製基板としてもかまわない。
【0035】
前記配線11は、90nmノードや250nmノードといった一般的に半導体デバイスで採用されている配線状態とされて用いられる。ビア12の大きさや配設間隔はこうした配線状態によって変化し、例えば、90nmノードの場合、各ビア径を約0.13μm、各ビアのピッチを約0.33μmとされ、また、250nmノードの場合、各ビア径を約0.25μm、各ビアのピッチを約1μmとされる。なお、ビア12の形成にあたっては、銅配線の場合、ビア部分の銅メッキが適切に行われ、また隣接する銅配線との密着性を確実としたり、low−k膜への銅の移行を抑えたりするために、公知のシード層やバリアメタルの技術を用いることもできる。
【0036】
前記ビアチェーン15は、基板10上に絶縁膜13を介して複数層にわたり配設される多数の配線11を、ビア12を介して各層間で接続して直列に連結してなる公知のものであり、本実施形態の場合、連結個数が非常に多いことから、つづら折り状パターンとして省スペース化して配置される。
【0037】
ビアチェーン15におけるビア数は2万ないし10万個とされ、ビアチェーン15の抵抗(接続パッド間の抵抗)はビア数、すなわち配線の連結数が多くなるほど大きくなり、ビアチェーン15に対し応力の加わらない状態で200kΩないし1MΩとなる。なお、この応力が加わらない状態のビアチェーン15の抵抗値は、配線長や配線の連結数(ビア数)、ビア径等により測定状況に応じて適宜調整することができる。
【0038】
各接続パッド17、18は、それぞれ外層に配設される金属製の公知のパッドであり、内層側に形成されるビアチェーン15の両端部を接続され、また外部配線に接続されて、ビアチェーン15の抵抗を測定可能とするものである。
【0039】
一般的なビアチェーンは、配線が微細化、多層化した半導体デバイスの基板上における配線の電気的特性評価に用いられているが、こうしたビアチェーンについて、本発明者は、ビアチェーンのある基板に応力を加えると、ビアチェーンの抵抗値が、加えられる応力の大きさに対応して当初値から数十から数百%の変化率で大きく変化し、且つ応力の付加を解除すると当初の抵抗値に戻る現象を、後述する実験により見出した。
【0040】
この現象を利用して、測定対象物50に固定した基板10における第一接続パッド17と第二接続パッド18との間の抵抗を、測定対象物50に応力の加わった状態で測定すれば、あらかじめ取得された基板10における応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて、測定対象物50に加わる応力の値を求められることとなる。
【0041】
なお、この基板10に加わる応力の向きが、ビアチェーン15に対する引張り方向の場合と圧縮方向の場合とで、それぞれ応力の変化とビアチェーン15の抵抗変化との関係が異なることも、後述する実験により見出されたが、こうした性質に対応して、測定対象物50への固定状態で基板10に加わる応力が、ビアチェーン15に対し引張り方向となる場合は、あらかじめ取得された基板10でのビアチェーン15に対し引張り方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求める。一方、測定対象物50への固定状態で基板10に加わる応力が、ビアチェーン15に対し圧縮方向となる場合は、あらかじめ取得された基板10でのビアチェーン15に対し圧縮方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求める。
【0042】
ただし、前記引張り方向の応力とは、所定の厚みを有する基板10に対し、例えばビアチェーン15のある基板表面側が山側、基板の反対面側が谷側となる向きに基板10を曲げようとする外力が加わる場合の、ビアチェーン15のある基板10表面でこの基板表面をビアチェーンと共に引き伸そうとする向きに生じる応力と同じものを指し、また、前記圧縮方向の応力とは、例えばビアチェーン15のある基板表面側が谷側、基板の反対面側が山側となる向きに基板10を曲げようとする外力が加わる場合の、ビアチェーン15のある基板10表面でこの基板表面をビアチェーンと共に押し縮めようとする向きに生じる応力と同じものを指している。
【0043】
次に、本実施形態に係る応力測定方法による測定の実施状態について説明する。あらかじめ、センサ1をなす基板10については、試験装置等でビアチェーン15に対する引張り方向と圧縮方向の各応力を変化させ、この変化に対応した抵抗変化状態を取得し、各方向の応力と抵抗との関係を把握しておく。
【0044】
そして、測定に先立ち、センサ1を測定対象物50の測定対象箇所に、この測定対象物50に応力が加わらない状態で、且つセンサ1自体にも応力が生じないようにしつつ、センサ1を固定する。センサ1の各接続パッド17、18には、このパッド間の抵抗を測定可能な機器が所定の外部配線を介して接続されている。
【0045】
測定対象物50が外力を受けて変形したり、測定対象物50自体が内部変化(発熱等)により変形して、応力が生じると、センサ1をなす基板10にも応力が加わることとなる。こうしてビアチェーン15のある基板10に応力が加わると、測定している接続パッド間の電気抵抗、すなわちビアチェーン15の抵抗値が、基板10に加わる応力の大きさに対応して大きく変化し、応力の加わらない状態と異なる値を示す。
【0046】
測定対象物50の変形状態や、センサ1と測定対象物50との位置関係から、基板10に加わる応力が、ビアチェーン15に対し引張り方向となるか圧縮方向となるかは判断可能であるため、得られた抵抗値と、応力の方向に応じた応力と抵抗との既知の関係から、測定対象物50における応力を求めることができる。
【0047】
このように、本実施形態に係る応力測定方法においては、基板10上にビアチェーン15とこれに接続するパッド17、18を備えたセンサ1を測定対象物50に固定し、各パッド17、18間の電気抵抗、すなわちビアチェーン15の抵抗を測定することにより、測定対象物50に加わる応力が同時に基板10にも加わる中、この応力の大きさに対応したビアチェーン15の抵抗変化を外部から検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーン15の抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーン15の抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく測定対象物50に加わる応力の測定が行える。
【0048】
また、応力の変化に伴う抵抗変化をビアチェーン15によるものとし、ピエゾ抵抗効果を利用しておらず、抵抗検出部分が半導体基板に拡散層を設ける構造でないため、デバイスの製造プロセスの制約を受けず、製造環境の自由度を高められることに加え、基板10は半導体である必要がなく、半導体以外の多層配線が可能な基板材料も使用でき、測定環境に対応した最適な材料を選択できる。
【0049】
なお、前記実施形態に係る応力測定方法において、用いるセンサ1は基板10を外装体16で覆って保護する構成としているが、これに限らず、半導体製造プロセスの中で基板や配線を適切に保護可能な最外層の保護膜を設けることができれば、プラスチックやセラミック等の外装体16がない状態で用いるようにすることもできる。
【0050】
また、前記実施形態に係る応力測定方法において、センサ1は測定対象物50となる他の物体に固定されて、この測定対象物50に加わる応力を測定するものとしているが、この他、基板に直接外力が加えられる場合には、基板を測定対象物に固定する必要はないため、基板のみで、外力によって生ずる応力の値及び外力の値を求め得るセンサを構成することもできる。
【0051】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を前記図5及び図6に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る応力測定方法は、半導体デバイス内部の基板20に、主電子回路24と別途にビアチェーン25が設けられて構成された評価用デバイス2を用い、この評価用デバイス2の基板20を測定対象物として、この基板20に加わる応力を測定するものである。
【0052】
本実施形態に係る応力測定方法では、前記第1の実施形態のように、基板上にビアチェーンを設けたセンサを所定の測定対象物に取付けて測定を行うのではなく、評価用デバイス2の基板20にビアチェーン25を設けて、その抵抗値から基板20に加わる応力を求めることで、外部からの測定が難しい実装後の基板20についての応力測定を可能とし、同様の構成を備える半導体デバイスについての、基板のデバイス実装状態における残留応力評価を適切に行えるようにするものである。
【0053】
前記評価用デバイス2は、半導体の基板20と、この基板20上に形成される主電子回路24と、基板20上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線をビアで接続して直列に連結してなるビアチェーン25と、外層に配設されてビアチェーン25一端部を接続される第一接続パッド27と、外層に配設されてビアチェーン25他端部を接続される第二接続パッド28と、これら各部を覆って保護する外装体26と、主電子回路24や各接続パッド27、28を外部と導通可能とする端子部29とを備える構成である。
【0054】
この評価用デバイス2は、第一接続パッド27と第二接続パッド28をそれぞれ外部配線27a、28aに接続して端子部29と導通させており、この端子部29により外部の測定機器と接続して、第一接続パッド27と第二接続パッド28との間の抵抗を測定可能とされる。
【0055】
評価用デバイス2は、ビアチェーン25を備える他は、一般的な半導体デバイス同様の構造としてかまわないが、設計上の要求により配線が微細化される場合、配線を銅配線とし、合せて絶縁膜として低誘電率膜(low−k膜)を採用するのが好ましい。なお、ビアの大きさや配設間隔については前記第1の実施形態の場合と同様である。
【0056】
前記ビアチェーン25及び各接続パッド27、28の各構成や、第一接続パッド27と第二接続パッド28との間の抵抗、すなわちビアチェーン25の抵抗から応力を求める仕組みについては、前記第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0057】
次に、本実施形態に係る応力測定方法による測定の実施状態について説明する。あらかじめ、デバイスとして実装される前の基板20について、前記第1の実施形態同様、試験装置等で基板20に加わる応力を変化させ、この変化に対応した抵抗変化状態を取得し、応力と抵抗との関係を把握しておく。
【0058】
そして、一般的な半導体デバイス同様に、基板20の主電子回路24や接続パッド27、28をそれぞれ端子部29と接続しつつ、樹脂やセラミック等の外装体26で基板20を覆い、評価用デバイス2としての完成状態とする。
【0059】
評価用デバイス2に対する測定は、評価用デバイス2を外力が加わらないように支持した状態で、各接続パッド27、28に導通する端子部29に測定用機器を接続して、パッド間の抵抗を測定する。
【0060】
基板20において、製造プロセスを経て何らかの応力が加わっていると、測定しているパッド間の電気抵抗、すなわち基板20上のビアチェーン25の抵抗値が、実装前の応力が加わらない状態から、基板20に加わっている応力の大きさに対応して大きく変化した値を示す。得られた抵抗値と、応力と抵抗との既知の関係から、基板20における応力を求めることができる。
【0061】
この評価用デバイス2は、同じ主電子回路を有する製品タイプの半導体デバイスと同じ構造であり、同様の製造プロセスを経てデバイス実装状態とされていることから、評価用デバイス2で生じている応力はその半導体デバイスでも同様に生じると考えることができ、評価用デバイス2についての応力評価を適切に行えば、半導体デバイスについても同様に応力評価を行ったと見なせ、デバイス設計や製造プロセス等の改善に繋げられることとなる。
【0062】
このように、本実施形態に係る応力測定方法においては、半導体の基板20上に主電子回路24とは別途にビアチェーン25とこれに接続するパッド27、28を設け、デバイス実装状態におけるパッド間の電気抵抗を測定することにより、デバイス実装状態で基板20に応力が加わっている場合に、この応力の大きさに対応したビアチェーン25の抵抗変化を外部から検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーン25の抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーン25の抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく応力の測定が行え、デバイス実装状態で基板20に加わっている応力の評価を正確に行える。
【0063】
なお、前記第1及び第2の各実施形態に係る応力測定方法において、基板10、20上にはビアチェーン15、25を一箇所設けて応力測定に用いる構成としているが、これに限らず、基板(チップ)の大きさに対して形成されるビアチェーンは著しく小さくなることから、基板上にビアチェーンと接続する接続パッドを配置できる範囲で、ビアチェーンを複数設けて、基板に加わる応力を複数点で測定できるようにすることもできる。
【0064】
また、前記第1及び第2の各実施形態に係る応力測定方法において用いた、基板10、20上のビアチェーン15、25で応力変化に対応した抵抗変化を検出する仕組みについては、応力測定に用いる他、外力・気圧等を測定する圧力センサ、あるいは、基板に対する押圧等の操作入力に伴う応力変化に対応するビアチェーンの抵抗の所定の閾値を跨いだ変化を検出し、外部装置のON、OFFを制御するスイッチとして用いることもできる。さらに、図7に示すように、こうしたスイッチの役目を果すビアチェーン35を基板30上に線状あるいはマトリクス状に接続しつつ多数配置し、いずれのビアチェーンに応力による抵抗変化が生じているか判別できるようにすると共に、所定の入力情報に基づいて各ビアチェーンの箇所に応力を付加する機構を設ければ、入力情報に対応した一又は複数のビアチェーンが抵抗を変化させた状態を維持する、一種のメモリーデバイスとして利用することもできる。
【実施例】
【0065】
本発明の応力測定方法において、応力変化に対応する抵抗変化の検出部分として用いる、ビアチェーンを設けた基板が、加えられた応力によりビアチェーンの抵抗を変化させる性質について、これを実際に確認した実験について説明する。
【0066】
本発明でセンサとして、又は半導体デバイス内で用いられることとなる基板の実施例としては、一般的な半導体デバイス同様の構造として、半導体と同じ製造プロセスで製造したものを用いた。この実施例の基板は、シリコン基板とされ、配線を銅配線とし、合せて絶縁膜を低誘電率膜(low−k膜)として、90nmノードのもの(第1実施例)と、250nmノードのもの(第2実施例)をそれぞれ製造して実験に供した。
【0067】
90nmノードとした第1実施例の場合、基板上のビアチェーンにおけるビア数が10万個となるよう配線を連結すると共に、各ビア径を約0.13μm、各ビアのピッチを約0.33μmとしている。この場合ビアチェーンの抵抗(接続パッド間の抵抗)は応力の加わらない状態で1MΩとなる。
【0068】
一方、250nmノードとした第2実施例の場合、基板上のビアチェーンにおけるビア数が10万個となるよう配線を連結すると共に、各ビア径を約0.25μm、各ビアのピッチを約1μmとしている。この場合もビアチェーンの抵抗(接続パッド間の抵抗)は応力の加わらない状態で1MΩとなる。
【0069】
いずれの実施例の場合もLow−K膜部分の厚さは0.5ないし0.8μmとなっており、ビアチェーンは、つづら折り状パターンとして複数をそれぞれ独立させた状態で配置されている。
【0070】
基板への応力付加には、試料に対し、並んだ四つの支点のうち、装置のロードセルに連結する中間の二つの支点を当接させる面と、その反対側となる両端の支点を当接させる面をそれぞれ入替えることで、基板へビアチェーンに対する引張り方向と圧縮方向の応力を切替えて加えられる四点曲げ装置を用いた。四点曲げ装置における基板を支持する支点位置は、両端の支点間距離が24mm、各支点間の距離がいずれも8mmとなっている。
【0071】
実験では、四点曲げ装置で基板の四箇所に支点を当接させ、基板に対し、ビアチェーンのある基板表面側が山側、基板の反対面側が谷側となる向きに基板を曲げようとする荷重を加えて、中間の二つの支点に挟まれた基板表面の中間部分に、この基板表面をビアチェーンと共に伸そうとする向き、すなわちビアチェーンに対する引張り方向への応力を加える操作(図8参照)と、逆に、基板に対し、ビアチェーンのある基板表面側が谷側、基板の反対面側が山側となる向きに基板を曲げようとする荷重を加えて、前記中間部分に、基板表面をビアチェーンと共に押し縮めようとする向き、すなわちビアチェーンに対する圧縮方向への応力を加える操作(図9参照)をそれぞれ実行した。これら引張り方向と圧縮方向に既知の応力をそれぞれ加えた各場合で応力変化に伴うパッド間の抵抗変化を測定した。
【0072】
測定は各実施例の場合ごとに引張り方向と圧縮方向の応力についてそれぞれ行い、荷重を調整して各応力を変化させながら、四点曲げ装置における中間の二つの支点に挟まれた基板上の領域に配設されたビアチェーンについて、その両端と接続したパッドに測定装置の電極を当てて抵抗を計測した。なお、基板上でのビアチェーンの位置の違いによる影響を避けるため、基板上で少し離れた位置にある二つのビアチェーンについて同時に抵抗を計測して、その合計値を測定結果として採用する。そして、ビアチェーンを二つとも変えて同様の測定を三回行う。ただし、90nmノードの基板と250nmノードの基板とで、測定対象となるビアチェーンの位置と組合わせは同じにしている。
【0073】
90nmノードの基板の場合と、250nmノードの基板の場合のそれぞれについて引張り方向と圧縮方向の各応力に対する抵抗の変化をビアチェーンの組を変えて三回測定した各結果(A、B、C)、並びに抵抗の測定結果三回分の平均値の応力に対する変化を、横軸を応力、縦軸を抵抗の変化率としてそれぞれ記した各グラフを、図10、11に示す。なお、応力は正の値が引張り方向、負の値が圧縮方向をそれぞれ示している。
【0074】
図10から、90nmノードの配線の場合、応力の向きが引張り方向、圧縮方向のいずれも、応力が増大するほど抵抗値が減少しており、その減少の度合は、応力が引張り方向に加わる場合の方が、圧縮方向の場合より大きい結果となっている。そして、応力が加わらない状態からの抵抗変化割合は、数十%に達している。
【0075】
また、図11から、250nmノードの配線の場合、90nmノードの配線の場合とは逆に、応力の向きが引張り方向、圧縮方向のいずれも、応力が増大するほど抵抗値が増加しており、その増加の度合は、応力が引張り方向に加わる場合の方が、圧縮方向の場合より大きい結果となっている。いずれの方向についても、90nmノードの配線の場合に比べて応力変化に対する抵抗変化の割合が大きくなっており、応力が加わらない状態からの抵抗変化割合は、数百%に達している。
【0076】
このように、ビアチェーンを設けた基板に応力を加えた場合の、ビアチェーンの抵抗値の変化の態様は基板の設計によりさまざまであるが、いずれの場合も、加えられる応力の大きさに対応して抵抗値が大きく変化し、且つ応力の付加を解除すると当初の抵抗値に戻る現象が確認されると共に、同一の設計で製造した基板については、応力に対応した抵抗変化に再現性があることも確認されたことから、これを応力測定に利用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0077】
1 センサ
10、20、30 基板
11、21 配線
12、22 ビア
13、23 絶縁膜
15、25、35 ビアチェーン
16、26 外装体
17、27 第一接続パッド
18、28 第二接続パッド
2 評価用デバイス
24 主電子回路
29 端子部
50 測定対象物
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセスにより基板上に設けたビアチェーンの抵抗変化に基づいて、基板や当該基板が固定された測定対象物に加わる応力を測定する応力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIをはじめとする半導体デバイスは、小型化、高集積化と共に、さらなる高速化、省電力化を目指して、配線の微細化や多層化が進んでいる。そして、微細化に伴って配線のより一層の低抵抗化を図るためにアルミニウム配線に代えて銅配線が採用され、また、銅配線の採用と共に、層間絶縁膜として、配線間容量低減のため膜中に空孔を導入し、誘電率の低減を図った低誘電率膜(low−k膜)が用いられるようになっている。
【0003】
こうした配線の微細化や多層化等に伴う新たな技術の導入に伴い、製造工程においても、形成される回路の動作に影響を及すような問題が生じやすくなっており、デバイスの量産にあたり、製造工程中や工程後における不具合発生の有無や、設計通りの電気的特性が確保できるかどうか等を、適切に検証、評価することが求められている。
【0004】
近年、こうした半導体デバイスの製造にあたって、ウェハやパッケージの各段階において、配線の性能やプロセスの影響の評価、不具合の解析等を行うためにTEG(Test Element Group)が用いられるようになっている。このTEGにおける多層配線の評価用パターンの一つとして、複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列鎖状に連結したビアチェーンが設けられており、このビアチェーンの抵抗等を測定することで、配線やビア、絶縁膜等が当初の設計通りに機能しているかの確認が行える仕組みである。
【0005】
こうした従来のビアチェーンを用いた半導体デバイスの評価手法の例としては、特開平3−36747号公報(特許文献1)や特開2004−228510号公報(特許文献2)、特開2004−335914号公報(特許文献3)に開示されるものがある。
【0006】
一方、半導体デバイスでは、モールド等のパッケージ工程やワイヤボンディング等の配線工程、さらに製造後の温度変化や圧力付加によって、基板(チップ)に応力が加わり、これが電気的特性を変化させる場合もある。このため、基板に加わる応力を適切に評価しておく必要があり、応力を測定する仕組みが求められていた。応力の測定をデバイス外部から行うことは困難であったが、近年、半導体基板そのものに拡散抵抗素子部、すなわちピエゾ抵抗効果を利用した応力検知部を形成して基板に加わる応力を電気信号として測定可能とするものが提案されており、その例として、特開2005−209827号公報(特許文献4)や特開2009−65052号公報(特許文献5)に開示されるものがある。
【0007】
また、こうした半導体に拡散抵抗素子部を設けたものは、半導体基板自体の応力測定用にとどまらず、基板に拡散抵抗素子部のみ設けた、すなわち応力測定の機能のみ与えた半導体センサとしても一般的に利用されている。こうした従来の応力測定用センサの例としては、特開平10−132675号公報(特許文献6)や特開2006−258674号公報(特許文献7)に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−36747号公報
【特許文献2】特開2004−228510号公報
【特許文献3】特開2004−335914号公報
【特許文献4】特開2005−209827号公報
【特許文献5】特開2009−65052号公報
【特許文献6】特開平10−132675号公報
【特許文献7】特開2006−258674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の半導体デバイスの電気的特性等の評価は前記特許文献1ないし3に示される手法等で行われていたが、ビアチェーン等の配線パターンのみでは、半導体基板に加わる応力を検知して評価することはできず、前記特許文献4、5に示されるような拡散抵抗素子部を基板上に別途設けて測定する必要があった。
【0010】
しかしながら、前記特許文献4ないし7に示されるような半導体基板上に拡散抵抗素子部を形成したものによる応力の測定は、応力の変化に対応する拡散抵抗素子部の抵抗変化が、ピエゾ抵抗効果の性質上、応力0における抵抗値から最大でも数%程度の変化にとどまるなど極めて小さいものであることから、検出感度が優れず、測定に際して様々な工夫が必要となり、測定が難しいという課題を有していた。また、拡散抵抗素子部は半導体基板に拡散層として形成されるものであり、製造プロセス上の制約を受けやすく、また基板上での配置も限定されるという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、ビアチェーンを設けた基板に応力を加えた際に可逆的な抵抗変化が見出されたことを利用して、基板やこの基板を固定した測定対象物に加わる応力をビアチェーンの抵抗変化に基づいて測定する応力測定方法、及び、測定対象物に固定してビアチェーンの抵抗変化から応力の値を求められる応力測定用センサ、並びに、応力に対応して抵抗を変化させるビアチェーンが設けられて基板に加わる応力を測定、評価できる残留応力評価用デバイス、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る応力測定方法は、基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続された状態で、前記基板を測定対象物に固定し、前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を、前記測定対象物に応力の加わった状態で測定し、あらかじめ取得された前記基板における応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて、測定対象物に加わる応力の値を求めるものである。
【0013】
このように本発明においては、配線が微細化、多層化した半導体デバイスの基板上における配線の電気的特性の評価に用いられるビアチェーンについて、本発明者が、こうしたビアチェーンのある基板に応力を加えると、ビアチェーンの抵抗値が、加えられる応力の大きさに対応して大きく変化し、且つ応力の付加を解除すると当初の抵抗値に戻る現象を見出したことに基づいて、所定の基板上にビアチェーンとこれに接続するパッドを備えたものを測定対象物に固定し、パッド間の電気抵抗を測定することにより、測定対象物に加わる応力が同時に基板にも加わる中、この応力の大きさに対応したビアチェーンの抵抗変化を外部から検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーンの抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく測定対象物に加わる応力の測定が行える。
【0014】
また、本発明に係る応力測定方法は必要に応じて、前記測定対象物への固定状態で前記基板に加わる応力が、ビアチェーンに対し引張り方向となる場合は、あらかじめ取得された前記基板でのビアチェーンに対し引張り方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求め、前記測定対象物への固定状態で前記基板に加わる応力が、ビアチェーンに対し圧縮方向となる場合は、あらかじめ取得された前記基板でのビアチェーンに対し圧縮方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求めるものである。
【0015】
このように本発明においては、ビアチェーンのある基板では、基板に加わる応力の向きが、ビアチェーンに対する引張り方向の場合と圧縮方向の場合とで、それぞれ応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係が異なる性質を有することに基づいて、基板に加わる応力の向きが、前記引張り方向の場合には、あらかじめ取得された前記引張り方向における応力の変化と抵抗変化との関係を用いて応力を求め、また、基板に加わる応力の向きが、前記圧縮方向の場合には、あらかじめ取得された前記圧縮方向における応力の変化と抵抗変化との関係を用いて応力を求めることにより、応力の加わる向きによって異なるビアチェーンの抵抗変化に対応して、基板に加わる応力を適切に求められることとなり、極めて正確に測定対象物に加わる応力の測定が行える。
【0016】
また、本発明に係る応力測定方法は、基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続され、前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を、前記基板に応力の加わった状態で測定し、あらかじめ取得された前記基板における応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて、基板に加わる応力の値を求めるものである。
【0017】
このように本発明においては、所定の基板上にビアチェーンとこれに接続するパッドを設け、基板に直接応力が加わりうる状況でパッド間の電気抵抗を測定することにより、基板に加わった応力の大きさに対応したビアチェーンの抵抗変化を検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーンの抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく基板に直接加わる応力の測定が行える。なお、本発明の応力測定方法は、基板に加えられた外力により生じた応力を測るものであってもよい。この場合、外力は、ビアチェーンから離れた部分に加えてもよく、ビアチェーンの上に加えてもよい。また、外力を付加する部分に、押圧パッドを設ける構成とすることもできる。
【0018】
また、本発明に係る応力測定方法は必要に応じて、前記応力の加わった状態での測定が、基板のデバイス実装状態における残留応力の測定であると共に、前記抵抗変化の割合が、基板のデバイス実装前に取得された抵抗変化の割合であるものである。
【0019】
このように本発明においては、半導体デバイスの基板上に主電子回路とは別途にビアチェーンとこれに接続するパッドを設け、デバイス実装状態におけるパッド間の電気抵抗を測定することにより、デバイス実装状態で基板に応力が加わっている場合に、この応力の大きさに対応したビアチェーンの抵抗変化を外部から検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーンの抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく応力の測定が行え、デバイス実装状態で基板に加わっている応力の評価を正確に行える。
【0020】
また、本発明に係る応力測定方法は必要に応じて、前記基板が、絶縁膜をlow−k絶縁膜とされると共に、前記複数層にわたり配設される配線を銅配線とされて用いられるものである。
【0021】
このように本発明においては、基板における層間の絶縁膜が低誘電率膜で、且つ配線が銅配線であり、著しく微細化される配線とビアからなるビアチェーンを基板のμmオーダーの極めて小さい領域に設けられ、このビアチェーンを設けた極小の領域を測定範囲として応力を求められることにより、外部に導通可能なパッドのスペースを確保すれば、応力測定対象に関わりなく適宜測定範囲を設定して応力を測定でき、微小レベルから一般的な歪みゲージのレベルまで適切に応力測定が行える。
【0022】
また、本発明に係る応力測定方法は必要に応じて、前記基板が、前記配線を90nmノードの多層配線とされ、各ビア径を約0.13μm、各ビアのピッチを約0.33μmとされると共に、ビアチェーンにおけるビア数を2万ないし10万個とされて用いられるものである。
【0023】
このように本発明においては、90mmノードの多層配線基板では、多数のビアが配線の大きさに対応した径及び間隔で配置されてビアチェーンをなす基板に対し、応力がビアチェーンに対する引張り方向や圧縮方向にそれぞれ加わると、応力が大きくなるのに合せてビアチェーンの抵抗が小さくなる性質を有することに基づいて、ビアチェーンの抵抗変化を測定し、応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を用いて応力を求められることにより、基板に加わる応力の増加、減少とは逆の変化傾向を示すビアチェーンの抵抗値から応力の値を適切に求められ、応力以外の外部からの影響を受けることなく応力の測定が行える。
【0024】
また、本発明に係る応力測定方法は必要に応じて、前記基板が、前記配線を250nmノードの多層配線とされ、各ビア径を約0.25μm、各ビアのピッチを約1μmとされると共に、ビアチェーンにおけるビア数を2万ないし10万個とされて用いられるものである。
【0025】
このように本発明においては、250mmノードの多層配線基板では、多数のビアが配線の大きさに対応した径及び間隔で配置されてビアチェーンをなす基板に対し、応力がビアチェーンに対する引張り方向や圧縮方向にそれぞれ加わると、応力の増大、減少に合せてビアチェーンの抵抗が大きな変化率で増大、減少する性質を有することに基づいて、ビアチェーンの抵抗変化を測定し、応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を用いて応力を求められることにより、基板に加わる応力の増加、減少と同じような変化傾向を示すビアチェーンの抵抗値から応力の値を適切に求められ、応力に対する感度を高くして応力の測定を効率よく行える。
【0026】
また、本発明に係る応力測定用センサは、基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続されてなり、前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を測定可能として測定対象物に固定されるものである。
【0027】
このように本発明においては、所定の基板上にビアチェーンとこれに接続するパッドを備えたものをセンサとして測定対象物に固定し、応力の大小に応じて変化するパッド間の電気抵抗の値を得ることにより、応力が測定対象物に加わると同時に基板にも加わる中で、この応力に対応したビアチェーンの抵抗変化を測定すれば、あらかじめ把握された応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を用いて、ビアチェーンの抵抗値から応力の値を容易に求められ、測定対象物に加わる応力の測定を効率よく行える。なお、こうした測定対象物に加わる応力を測定するセンサの他、前記基板で直接外力を受け得る場合には、基板を他の物体に固定する必要はなく、基板のみ配置して、外力によって基板に生じる応力の値や外力の値を求め得るセンサとすることができる。
【0028】
また、本発明に係る残留応力評価用デバイスは、基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続されて、基板上の主電子回路部とは電気的に接続されない応力検出部とされてなり、前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を外部から測定可能として実装状態とされるものである。
【0029】
このように本発明においては、半導体デバイスの基板上に主電子回路とは別途にビアチェーンとこれに接続するパッドを設け、パッド間の電気抵抗の値を取得することにより、デバイス実装状態で基板に応力が加わっている場合に、この応力に対応したビアチェーンの抵抗変化を外部から測定すれば、あらかじめ把握された応力の変化とビアチェーンの抵抗変化との関係を用いて、ビアチェーンの抵抗値から応力の値を容易に求められ、基板に加わる応力を適切に測定でき、同様の構造の半導体デバイスにおける残留応力の評価を正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る応力測定方法で用いるセンサの平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る応力測定方法で用いるセンサの概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る応力測定方法で用いるセンサにおけるビアチェーン部分の概略平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る応力測定方法で用いるセンサにおけるビアチェーン部分の模式断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る応力測定方法で用いる評価用デバイスの一部切欠平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る応力測定方法で用いる評価用デバイスの概略断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る基板上のビアチェーンのメモリーデバイスとしての応用状態説明図である。
【図8】本発明の実施例におけるビアチェーンに対し引張り方向となる応力の基板付加状態説明図である。
【図9】本発明の実施例におけるビアチェーンに対し圧縮方向となる応力の基板付加状態説明図である。
【図10】本発明の実施例における90nmノードの場合の応力と抵抗との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例における250nmノードの場合の応力と抵抗との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る応力測定方法を前記図1ないし図4に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る応力測定方法は、基板10上にビアチェーン15のあるセンサ1を用い、このセンサ1を応力の測定対象物50に固定してこの測定対象物50に加わる応力を測定するものである。
【0032】
前記センサ1は、基板10上に絶縁膜13を介して複数層にわたり配設される多数の配線11を、ビア12を介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーン15と、外層に配設されてビアチェーン15一端部を接続される第一接続パッド17と、外層に配設されてビアチェーン15他端部を接続される第二接続パッド18と、これら各部を覆って保護する外装体16とを備える構成である。
【0033】
このセンサ1は、第一接続パッド17と第二接続パッド18をそれぞれ外部配線17a、18aに接続して外装体16の表面の端子部17b、18bと導通させており、この端子部17b、18bにより外部の測定機器と接続して、第一接続パッド17と第二接続パッド18との間の抵抗を測定可能とされており、前記端子部17b、18bを外側に向けた状態で測定対象物50に固定される。
【0034】
センサ1における基板10、配線11、ビア12及び絶縁膜13は一般的な半導体デバイス同様の構成としてかまわないが、設計上の要求により配線が微細化される場合、配線を銅配線とし、合せて絶縁膜13として低誘電率膜(low−k膜)を採用するのが好ましい。また、このセンサ1は、一般的な半導体デバイス同様に、シリコン等の半導体基板10上に絶縁膜13を介した複数層の配線層を設けて形成されるものであるが、多層配線可能なものであれば、基板10はシリコンをはじめとする半導体に限られず、ポリイミドやガラス製基板としてもかまわない。
【0035】
前記配線11は、90nmノードや250nmノードといった一般的に半導体デバイスで採用されている配線状態とされて用いられる。ビア12の大きさや配設間隔はこうした配線状態によって変化し、例えば、90nmノードの場合、各ビア径を約0.13μm、各ビアのピッチを約0.33μmとされ、また、250nmノードの場合、各ビア径を約0.25μm、各ビアのピッチを約1μmとされる。なお、ビア12の形成にあたっては、銅配線の場合、ビア部分の銅メッキが適切に行われ、また隣接する銅配線との密着性を確実としたり、low−k膜への銅の移行を抑えたりするために、公知のシード層やバリアメタルの技術を用いることもできる。
【0036】
前記ビアチェーン15は、基板10上に絶縁膜13を介して複数層にわたり配設される多数の配線11を、ビア12を介して各層間で接続して直列に連結してなる公知のものであり、本実施形態の場合、連結個数が非常に多いことから、つづら折り状パターンとして省スペース化して配置される。
【0037】
ビアチェーン15におけるビア数は2万ないし10万個とされ、ビアチェーン15の抵抗(接続パッド間の抵抗)はビア数、すなわち配線の連結数が多くなるほど大きくなり、ビアチェーン15に対し応力の加わらない状態で200kΩないし1MΩとなる。なお、この応力が加わらない状態のビアチェーン15の抵抗値は、配線長や配線の連結数(ビア数)、ビア径等により測定状況に応じて適宜調整することができる。
【0038】
各接続パッド17、18は、それぞれ外層に配設される金属製の公知のパッドであり、内層側に形成されるビアチェーン15の両端部を接続され、また外部配線に接続されて、ビアチェーン15の抵抗を測定可能とするものである。
【0039】
一般的なビアチェーンは、配線が微細化、多層化した半導体デバイスの基板上における配線の電気的特性評価に用いられているが、こうしたビアチェーンについて、本発明者は、ビアチェーンのある基板に応力を加えると、ビアチェーンの抵抗値が、加えられる応力の大きさに対応して当初値から数十から数百%の変化率で大きく変化し、且つ応力の付加を解除すると当初の抵抗値に戻る現象を、後述する実験により見出した。
【0040】
この現象を利用して、測定対象物50に固定した基板10における第一接続パッド17と第二接続パッド18との間の抵抗を、測定対象物50に応力の加わった状態で測定すれば、あらかじめ取得された基板10における応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて、測定対象物50に加わる応力の値を求められることとなる。
【0041】
なお、この基板10に加わる応力の向きが、ビアチェーン15に対する引張り方向の場合と圧縮方向の場合とで、それぞれ応力の変化とビアチェーン15の抵抗変化との関係が異なることも、後述する実験により見出されたが、こうした性質に対応して、測定対象物50への固定状態で基板10に加わる応力が、ビアチェーン15に対し引張り方向となる場合は、あらかじめ取得された基板10でのビアチェーン15に対し引張り方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求める。一方、測定対象物50への固定状態で基板10に加わる応力が、ビアチェーン15に対し圧縮方向となる場合は、あらかじめ取得された基板10でのビアチェーン15に対し圧縮方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求める。
【0042】
ただし、前記引張り方向の応力とは、所定の厚みを有する基板10に対し、例えばビアチェーン15のある基板表面側が山側、基板の反対面側が谷側となる向きに基板10を曲げようとする外力が加わる場合の、ビアチェーン15のある基板10表面でこの基板表面をビアチェーンと共に引き伸そうとする向きに生じる応力と同じものを指し、また、前記圧縮方向の応力とは、例えばビアチェーン15のある基板表面側が谷側、基板の反対面側が山側となる向きに基板10を曲げようとする外力が加わる場合の、ビアチェーン15のある基板10表面でこの基板表面をビアチェーンと共に押し縮めようとする向きに生じる応力と同じものを指している。
【0043】
次に、本実施形態に係る応力測定方法による測定の実施状態について説明する。あらかじめ、センサ1をなす基板10については、試験装置等でビアチェーン15に対する引張り方向と圧縮方向の各応力を変化させ、この変化に対応した抵抗変化状態を取得し、各方向の応力と抵抗との関係を把握しておく。
【0044】
そして、測定に先立ち、センサ1を測定対象物50の測定対象箇所に、この測定対象物50に応力が加わらない状態で、且つセンサ1自体にも応力が生じないようにしつつ、センサ1を固定する。センサ1の各接続パッド17、18には、このパッド間の抵抗を測定可能な機器が所定の外部配線を介して接続されている。
【0045】
測定対象物50が外力を受けて変形したり、測定対象物50自体が内部変化(発熱等)により変形して、応力が生じると、センサ1をなす基板10にも応力が加わることとなる。こうしてビアチェーン15のある基板10に応力が加わると、測定している接続パッド間の電気抵抗、すなわちビアチェーン15の抵抗値が、基板10に加わる応力の大きさに対応して大きく変化し、応力の加わらない状態と異なる値を示す。
【0046】
測定対象物50の変形状態や、センサ1と測定対象物50との位置関係から、基板10に加わる応力が、ビアチェーン15に対し引張り方向となるか圧縮方向となるかは判断可能であるため、得られた抵抗値と、応力の方向に応じた応力と抵抗との既知の関係から、測定対象物50における応力を求めることができる。
【0047】
このように、本実施形態に係る応力測定方法においては、基板10上にビアチェーン15とこれに接続するパッド17、18を備えたセンサ1を測定対象物50に固定し、各パッド17、18間の電気抵抗、すなわちビアチェーン15の抵抗を測定することにより、測定対象物50に加わる応力が同時に基板10にも加わる中、この応力の大きさに対応したビアチェーン15の抵抗変化を外部から検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーン15の抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーン15の抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく測定対象物50に加わる応力の測定が行える。
【0048】
また、応力の変化に伴う抵抗変化をビアチェーン15によるものとし、ピエゾ抵抗効果を利用しておらず、抵抗検出部分が半導体基板に拡散層を設ける構造でないため、デバイスの製造プロセスの制約を受けず、製造環境の自由度を高められることに加え、基板10は半導体である必要がなく、半導体以外の多層配線が可能な基板材料も使用でき、測定環境に対応した最適な材料を選択できる。
【0049】
なお、前記実施形態に係る応力測定方法において、用いるセンサ1は基板10を外装体16で覆って保護する構成としているが、これに限らず、半導体製造プロセスの中で基板や配線を適切に保護可能な最外層の保護膜を設けることができれば、プラスチックやセラミック等の外装体16がない状態で用いるようにすることもできる。
【0050】
また、前記実施形態に係る応力測定方法において、センサ1は測定対象物50となる他の物体に固定されて、この測定対象物50に加わる応力を測定するものとしているが、この他、基板に直接外力が加えられる場合には、基板を測定対象物に固定する必要はないため、基板のみで、外力によって生ずる応力の値及び外力の値を求め得るセンサを構成することもできる。
【0051】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を前記図5及び図6に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る応力測定方法は、半導体デバイス内部の基板20に、主電子回路24と別途にビアチェーン25が設けられて構成された評価用デバイス2を用い、この評価用デバイス2の基板20を測定対象物として、この基板20に加わる応力を測定するものである。
【0052】
本実施形態に係る応力測定方法では、前記第1の実施形態のように、基板上にビアチェーンを設けたセンサを所定の測定対象物に取付けて測定を行うのではなく、評価用デバイス2の基板20にビアチェーン25を設けて、その抵抗値から基板20に加わる応力を求めることで、外部からの測定が難しい実装後の基板20についての応力測定を可能とし、同様の構成を備える半導体デバイスについての、基板のデバイス実装状態における残留応力評価を適切に行えるようにするものである。
【0053】
前記評価用デバイス2は、半導体の基板20と、この基板20上に形成される主電子回路24と、基板20上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線をビアで接続して直列に連結してなるビアチェーン25と、外層に配設されてビアチェーン25一端部を接続される第一接続パッド27と、外層に配設されてビアチェーン25他端部を接続される第二接続パッド28と、これら各部を覆って保護する外装体26と、主電子回路24や各接続パッド27、28を外部と導通可能とする端子部29とを備える構成である。
【0054】
この評価用デバイス2は、第一接続パッド27と第二接続パッド28をそれぞれ外部配線27a、28aに接続して端子部29と導通させており、この端子部29により外部の測定機器と接続して、第一接続パッド27と第二接続パッド28との間の抵抗を測定可能とされる。
【0055】
評価用デバイス2は、ビアチェーン25を備える他は、一般的な半導体デバイス同様の構造としてかまわないが、設計上の要求により配線が微細化される場合、配線を銅配線とし、合せて絶縁膜として低誘電率膜(low−k膜)を採用するのが好ましい。なお、ビアの大きさや配設間隔については前記第1の実施形態の場合と同様である。
【0056】
前記ビアチェーン25及び各接続パッド27、28の各構成や、第一接続パッド27と第二接続パッド28との間の抵抗、すなわちビアチェーン25の抵抗から応力を求める仕組みについては、前記第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0057】
次に、本実施形態に係る応力測定方法による測定の実施状態について説明する。あらかじめ、デバイスとして実装される前の基板20について、前記第1の実施形態同様、試験装置等で基板20に加わる応力を変化させ、この変化に対応した抵抗変化状態を取得し、応力と抵抗との関係を把握しておく。
【0058】
そして、一般的な半導体デバイス同様に、基板20の主電子回路24や接続パッド27、28をそれぞれ端子部29と接続しつつ、樹脂やセラミック等の外装体26で基板20を覆い、評価用デバイス2としての完成状態とする。
【0059】
評価用デバイス2に対する測定は、評価用デバイス2を外力が加わらないように支持した状態で、各接続パッド27、28に導通する端子部29に測定用機器を接続して、パッド間の抵抗を測定する。
【0060】
基板20において、製造プロセスを経て何らかの応力が加わっていると、測定しているパッド間の電気抵抗、すなわち基板20上のビアチェーン25の抵抗値が、実装前の応力が加わらない状態から、基板20に加わっている応力の大きさに対応して大きく変化した値を示す。得られた抵抗値と、応力と抵抗との既知の関係から、基板20における応力を求めることができる。
【0061】
この評価用デバイス2は、同じ主電子回路を有する製品タイプの半導体デバイスと同じ構造であり、同様の製造プロセスを経てデバイス実装状態とされていることから、評価用デバイス2で生じている応力はその半導体デバイスでも同様に生じると考えることができ、評価用デバイス2についての応力評価を適切に行えば、半導体デバイスについても同様に応力評価を行ったと見なせ、デバイス設計や製造プロセス等の改善に繋げられることとなる。
【0062】
このように、本実施形態に係る応力測定方法においては、半導体の基板20上に主電子回路24とは別途にビアチェーン25とこれに接続するパッド27、28を設け、デバイス実装状態におけるパッド間の電気抵抗を測定することにより、デバイス実装状態で基板20に応力が加わっている場合に、この応力の大きさに対応したビアチェーン25の抵抗変化を外部から検知できることとなり、あらかじめ応力の変化とビアチェーン25の抵抗変化との関係を把握しておくことでビアチェーン25の抵抗値から応力の値を取得でき、同じ応力に対しピエゾ抵抗効果の場合に比べ大きく抵抗が変化する性質に基づいて、感度よく応力の測定が行え、デバイス実装状態で基板20に加わっている応力の評価を正確に行える。
【0063】
なお、前記第1及び第2の各実施形態に係る応力測定方法において、基板10、20上にはビアチェーン15、25を一箇所設けて応力測定に用いる構成としているが、これに限らず、基板(チップ)の大きさに対して形成されるビアチェーンは著しく小さくなることから、基板上にビアチェーンと接続する接続パッドを配置できる範囲で、ビアチェーンを複数設けて、基板に加わる応力を複数点で測定できるようにすることもできる。
【0064】
また、前記第1及び第2の各実施形態に係る応力測定方法において用いた、基板10、20上のビアチェーン15、25で応力変化に対応した抵抗変化を検出する仕組みについては、応力測定に用いる他、外力・気圧等を測定する圧力センサ、あるいは、基板に対する押圧等の操作入力に伴う応力変化に対応するビアチェーンの抵抗の所定の閾値を跨いだ変化を検出し、外部装置のON、OFFを制御するスイッチとして用いることもできる。さらに、図7に示すように、こうしたスイッチの役目を果すビアチェーン35を基板30上に線状あるいはマトリクス状に接続しつつ多数配置し、いずれのビアチェーンに応力による抵抗変化が生じているか判別できるようにすると共に、所定の入力情報に基づいて各ビアチェーンの箇所に応力を付加する機構を設ければ、入力情報に対応した一又は複数のビアチェーンが抵抗を変化させた状態を維持する、一種のメモリーデバイスとして利用することもできる。
【実施例】
【0065】
本発明の応力測定方法において、応力変化に対応する抵抗変化の検出部分として用いる、ビアチェーンを設けた基板が、加えられた応力によりビアチェーンの抵抗を変化させる性質について、これを実際に確認した実験について説明する。
【0066】
本発明でセンサとして、又は半導体デバイス内で用いられることとなる基板の実施例としては、一般的な半導体デバイス同様の構造として、半導体と同じ製造プロセスで製造したものを用いた。この実施例の基板は、シリコン基板とされ、配線を銅配線とし、合せて絶縁膜を低誘電率膜(low−k膜)として、90nmノードのもの(第1実施例)と、250nmノードのもの(第2実施例)をそれぞれ製造して実験に供した。
【0067】
90nmノードとした第1実施例の場合、基板上のビアチェーンにおけるビア数が10万個となるよう配線を連結すると共に、各ビア径を約0.13μm、各ビアのピッチを約0.33μmとしている。この場合ビアチェーンの抵抗(接続パッド間の抵抗)は応力の加わらない状態で1MΩとなる。
【0068】
一方、250nmノードとした第2実施例の場合、基板上のビアチェーンにおけるビア数が10万個となるよう配線を連結すると共に、各ビア径を約0.25μm、各ビアのピッチを約1μmとしている。この場合もビアチェーンの抵抗(接続パッド間の抵抗)は応力の加わらない状態で1MΩとなる。
【0069】
いずれの実施例の場合もLow−K膜部分の厚さは0.5ないし0.8μmとなっており、ビアチェーンは、つづら折り状パターンとして複数をそれぞれ独立させた状態で配置されている。
【0070】
基板への応力付加には、試料に対し、並んだ四つの支点のうち、装置のロードセルに連結する中間の二つの支点を当接させる面と、その反対側となる両端の支点を当接させる面をそれぞれ入替えることで、基板へビアチェーンに対する引張り方向と圧縮方向の応力を切替えて加えられる四点曲げ装置を用いた。四点曲げ装置における基板を支持する支点位置は、両端の支点間距離が24mm、各支点間の距離がいずれも8mmとなっている。
【0071】
実験では、四点曲げ装置で基板の四箇所に支点を当接させ、基板に対し、ビアチェーンのある基板表面側が山側、基板の反対面側が谷側となる向きに基板を曲げようとする荷重を加えて、中間の二つの支点に挟まれた基板表面の中間部分に、この基板表面をビアチェーンと共に伸そうとする向き、すなわちビアチェーンに対する引張り方向への応力を加える操作(図8参照)と、逆に、基板に対し、ビアチェーンのある基板表面側が谷側、基板の反対面側が山側となる向きに基板を曲げようとする荷重を加えて、前記中間部分に、基板表面をビアチェーンと共に押し縮めようとする向き、すなわちビアチェーンに対する圧縮方向への応力を加える操作(図9参照)をそれぞれ実行した。これら引張り方向と圧縮方向に既知の応力をそれぞれ加えた各場合で応力変化に伴うパッド間の抵抗変化を測定した。
【0072】
測定は各実施例の場合ごとに引張り方向と圧縮方向の応力についてそれぞれ行い、荷重を調整して各応力を変化させながら、四点曲げ装置における中間の二つの支点に挟まれた基板上の領域に配設されたビアチェーンについて、その両端と接続したパッドに測定装置の電極を当てて抵抗を計測した。なお、基板上でのビアチェーンの位置の違いによる影響を避けるため、基板上で少し離れた位置にある二つのビアチェーンについて同時に抵抗を計測して、その合計値を測定結果として採用する。そして、ビアチェーンを二つとも変えて同様の測定を三回行う。ただし、90nmノードの基板と250nmノードの基板とで、測定対象となるビアチェーンの位置と組合わせは同じにしている。
【0073】
90nmノードの基板の場合と、250nmノードの基板の場合のそれぞれについて引張り方向と圧縮方向の各応力に対する抵抗の変化をビアチェーンの組を変えて三回測定した各結果(A、B、C)、並びに抵抗の測定結果三回分の平均値の応力に対する変化を、横軸を応力、縦軸を抵抗の変化率としてそれぞれ記した各グラフを、図10、11に示す。なお、応力は正の値が引張り方向、負の値が圧縮方向をそれぞれ示している。
【0074】
図10から、90nmノードの配線の場合、応力の向きが引張り方向、圧縮方向のいずれも、応力が増大するほど抵抗値が減少しており、その減少の度合は、応力が引張り方向に加わる場合の方が、圧縮方向の場合より大きい結果となっている。そして、応力が加わらない状態からの抵抗変化割合は、数十%に達している。
【0075】
また、図11から、250nmノードの配線の場合、90nmノードの配線の場合とは逆に、応力の向きが引張り方向、圧縮方向のいずれも、応力が増大するほど抵抗値が増加しており、その増加の度合は、応力が引張り方向に加わる場合の方が、圧縮方向の場合より大きい結果となっている。いずれの方向についても、90nmノードの配線の場合に比べて応力変化に対する抵抗変化の割合が大きくなっており、応力が加わらない状態からの抵抗変化割合は、数百%に達している。
【0076】
このように、ビアチェーンを設けた基板に応力を加えた場合の、ビアチェーンの抵抗値の変化の態様は基板の設計によりさまざまであるが、いずれの場合も、加えられる応力の大きさに対応して抵抗値が大きく変化し、且つ応力の付加を解除すると当初の抵抗値に戻る現象が確認されると共に、同一の設計で製造した基板については、応力に対応した抵抗変化に再現性があることも確認されたことから、これを応力測定に利用できることは明らかである。
【符号の説明】
【0077】
1 センサ
10、20、30 基板
11、21 配線
12、22 ビア
13、23 絶縁膜
15、25、35 ビアチェーン
16、26 外装体
17、27 第一接続パッド
18、28 第二接続パッド
2 評価用デバイス
24 主電子回路
29 端子部
50 測定対象物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続された状態で、前記基板を測定対象物に固定し、
前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を、前記測定対象物に応力の加わった状態で測定し、あらかじめ取得された前記基板における応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて、測定対象物に加わる応力の値を求めることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の応力測定方法において、
前記測定対象物への固定状態で前記基板に加わる応力が、ビアチェーンに対し引張り方向となる場合は、あらかじめ取得された前記基板でのビアチェーンに対し引張り方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求め、
前記測定対象物への固定状態で前記基板に加わる応力が、ビアチェーンに対し圧縮方向となる場合は、あらかじめ取得された前記基板でのビアチェーンに対し圧縮方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求めることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項3】
基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続され、
前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を、前記基板に応力の加わった状態で測定し、あらかじめ取得された前記基板における応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて、基板に加わる応力の値を求めることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項4】
前記請求項3に記載の応力測定方法において、
前記応力の加わった状態での測定が、基板のデバイス実装状態における残留応力の測定であると共に、前記抵抗変化の割合が、基板のデバイス実装前に取得された抵抗変化の割合であることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の応力測定方法において、
前記基板が、絶縁膜をlow−k絶縁膜とされると共に、前記複数層にわたり配設される配線を銅配線とされて用いられることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項6】
前記請求項5に記載の応力測定方法において、
前記基板が、前記配線を90nmノードの多層配線とされ、各ビア径を約0.13μm、各ビアのピッチを約0.33μmとされると共に、ビアチェーンにおけるビア数を2万ないし10万個とされて用いられることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項7】
前記請求項5に記載の応力測定方法において、
前記基板が、前記配線を250nmノードの多層配線とされ、各ビア径を約0.25μm、各ビアのピッチを約1μmとされると共に、ビアチェーンにおけるビア数を2万ないし10万個とされて用いられることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項8】
基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続されてなり、
前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を測定可能として測定対象物に固定されることを
特徴とする応力測定用センサ。
【請求項9】
基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続されて、基板上の主電子回路部とは電気的に接続されない応力検出部とされてなり、
前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を外部から測定可能として実装状態とされることを
特徴とする残留応力評価用デバイス。
【請求項1】
基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続された状態で、前記基板を測定対象物に固定し、
前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を、前記測定対象物に応力の加わった状態で測定し、あらかじめ取得された前記基板における応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて、測定対象物に加わる応力の値を求めることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の応力測定方法において、
前記測定対象物への固定状態で前記基板に加わる応力が、ビアチェーンに対し引張り方向となる場合は、あらかじめ取得された前記基板でのビアチェーンに対し引張り方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求め、
前記測定対象物への固定状態で前記基板に加わる応力が、ビアチェーンに対し圧縮方向となる場合は、あらかじめ取得された前記基板でのビアチェーンに対し圧縮方向となる応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて応力値を求めることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項3】
基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続され、
前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を、前記基板に応力の加わった状態で測定し、あらかじめ取得された前記基板における応力変化に対応する抵抗変化の割合に基づいて、基板に加わる応力の値を求めることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項4】
前記請求項3に記載の応力測定方法において、
前記応力の加わった状態での測定が、基板のデバイス実装状態における残留応力の測定であると共に、前記抵抗変化の割合が、基板のデバイス実装前に取得された抵抗変化の割合であることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の応力測定方法において、
前記基板が、絶縁膜をlow−k絶縁膜とされると共に、前記複数層にわたり配設される配線を銅配線とされて用いられることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項6】
前記請求項5に記載の応力測定方法において、
前記基板が、前記配線を90nmノードの多層配線とされ、各ビア径を約0.13μm、各ビアのピッチを約0.33μmとされると共に、ビアチェーンにおけるビア数を2万ないし10万個とされて用いられることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項7】
前記請求項5に記載の応力測定方法において、
前記基板が、前記配線を250nmノードの多層配線とされ、各ビア径を約0.25μm、各ビアのピッチを約1μmとされると共に、ビアチェーンにおけるビア数を2万ないし10万個とされて用いられることを
特徴とする応力測定方法。
【請求項8】
基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続されてなり、
前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を測定可能として測定対象物に固定されることを
特徴とする応力測定用センサ。
【請求項9】
基板上に絶縁膜を介して複数層にわたり配設される多数の配線を、ビアを介して各層間で接続して直列に連結してなるビアチェーンが、外層に配設されて外部配線に接続する一の接続パッドとチェーン一端部を接続されると共に、外層に配設されて外部配線に接続する他の接続パッドとチェーン他端部を接続されて、基板上の主電子回路部とは電気的に接続されない応力検出部とされてなり、
前記一の接続パッドと他の接続パッドとの間の抵抗を外部から測定可能として実装状態とされることを
特徴とする残留応力評価用デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−2259(P2011−2259A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143537(P2009−143537)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、地域科学技術振興施策「知的クラスター創成事業(第II期)」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【出願人】(391043332)財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 (53)
【出願人】(508262836)株式会社ウォルツ (4)
【出願人】(504371594)次世代半導体材料技術研究組合 (82)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、地域科学技術振興施策「知的クラスター創成事業(第II期)」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【出願人】(391043332)財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 (53)
【出願人】(508262836)株式会社ウォルツ (4)
【出願人】(504371594)次世代半導体材料技術研究組合 (82)
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