性能が改良されたゴルフクラブ
【課題】最高ボール速度の少なくとも99.7%の速度を伴う打撃フェースの部分として定義されるスイートスポットを改良させたゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】総合打撃フェース102の少なくとも約1.5%を包囲する著しく円形のスイートスポットを有するゴルフクラブヘッド100であって、このゴルフクラブヘッド100は一般的には楕円ファクタが約0.5より大きな改善されたフェース幾何形状、ゴルフクラブヘッド100の打撃フェース102の回りの傾斜付けられた遷移部分112、厚さを減少させる可変厚さ領域、または傾斜バルジおよびロールラジアスを伴い、これらはすべてゴルフクラブヘッド100の性能を改良するのに役立つ。
【解決手段】総合打撃フェース102の少なくとも約1.5%を包囲する著しく円形のスイートスポットを有するゴルフクラブヘッド100であって、このゴルフクラブヘッド100は一般的には楕円ファクタが約0.5より大きな改善されたフェース幾何形状、ゴルフクラブヘッド100の打撃フェース102の回りの傾斜付けられた遷移部分112、厚さを減少させる可変厚さ領域、または傾斜バルジおよびロールラジアスを伴い、これらはすべてゴルフクラブヘッド100の性能を改良するのに役立つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全般的には、ボール速度が少なくとも最大ボール速度の99.7%である、打撃フェースの部分として定義される、改良されたスイートスポットを実現することができるゴルフクラブヘッドに関する。より具体的には、この発明は、スイートスポットがゴルフクラブの打撃フェースの全体のうちの少なくとも1.5%をカバーするゴルフクラブヘッドに関する。さらに具体的には、この発明は、楕円ファクタを、短軸を長軸で割ったものと定義するときに、楕円ファクタが約0.50より大きくて改良したスイートスポットを実現する顕著に楕円形上の打撃フェースを具備するゴルフクラブヘッドに関する。この発明は、傾斜したバルジおよびロール径を伴ってゴルフクラブヘッドの性能をさらに改良するゴルフクラブヘッドに関しても良い。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブデザインの競争的な業界において、距離および精度は、メタルウッドタイプのゴルフクラブの要求度を図るのに役立つ最も重要な性能ファクタのうちの2つである。ある者は、ゴルフクラブの見た目、フィーリング、サウンドがゴルフクラブの評価に影響を与えるかもしれないと主張するけれども、性能ファクタがゴルフクラブの要求度の判定に大きな役割を有することを主張することがない。距離を最大化しながら精度を維持する性能ファクタはメタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドにおいてさらにより重要になってきている。任意の個々のゴルフクラブにより達成される距離の有益さよりゴルフショットの精度が明らかに優先するアイアンタイプのゴルフクラブヘッドと違って、メタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドはゴルファーができるだけ遠くに、かつできるだけ真っ直ぐゴルフボールを打撃できるように設計される。
【0003】
メタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドの距離を最大化し、それでいて精度の維持するために、メタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドは、ゴルフクラブヘッドにより当該ゴルフクラブヘッドの幾何中心の近くで打撃してゴルフボールの距離を最大化させる目的を持って設計されてきた。ゴルフクラブヘッドのこの幾何中心は、固有の物理法則に従って、一般に、ゴルフボールおよびゴルフクラブヘッドの間のエネルギー損失を小さくして距離を最大化させるゴルフショットを実現できる。この値を定量化するために、合衆国ゴルフ協会(USGA)は、ゴルフ業界と協同して、ゴルフクラブヘッドと衝突した後のゴルフボールのリバウンド特性を定量化する手法として、反発係数(COR)の計算や、特徴時間(CT)の計算の種々の方法を提供してきた。
【0004】
米国特許第6,390,933号明細書(Galloway、「’933特許」。第1特許文献)は、0.845を超える反発係数を有し、1時間あたり110マイルのゴルフボールで2000回の衝撃に耐える耐久性を有するゴルフクラブヘッドを開示して、ゴルフクラブヘッドのCORを増大させる一手法を検討しており、ここでクラブヘッドは3つの部品、フェース、ソール、およびクラウンから構成されて良い。より具体的には、’933特許は、チタン材料から構成されて良く、その容積が175立方cmから400立方cmの範囲であり、重量が165グラムから300グラムの範囲であり、打撃プレート面積が4.00平方インチから7.50平方インチの範囲であるゴルフクラブヘッドを開示する。
【0005】
距離に替えて精度を追求するものとしては、米国特許出願公開第2004/0116202号(Lin、「’202特許出願公開」。第2特許文献)が、複数の穴をクラブヘッドの周囲に具備してクラブヘッドがゴルフボールを打撃したときにほとんどの振動波、および音響波がこれら穴から消散されて打撃ゴルフボールの方向の精度を改善するようにしたゴルフクラブヘッドを開示することにより、ゴルフクラブヘッドの精度を向上させる方法を検討している。
【0006】
しかしながら、良く検証すると、メタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドの精度を維持しつつ距離を最大化させる開発は、ゴルファーがスイートスポットでゴルフボールを打撃できるということを前提にしている。スイートスポットは一般的にゴルフクラブの幾何中心に合致し、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースのそのような小さな領域であり、平均的なゴルファーはスイートスポットにゴルフボールを一貫して打撃することは困難であろう。したがって、上述の性能ファクタに加えて、スイートスポットのサイズを大きくして、平均的なゴルファーが、ゴルフボールを毎回完璧に打撃することを必要とすることなく、ゴルフクラブヘッドの距離および精度のデザイン上の利点を利用できるようにすることも望まれるであろう。
【0007】
ゴルファーは常にはゴルフボールを打撃フェースの中心で打撃できるわけではないという課題に対処するために、業界は、種々の可変フェース厚さの打撃フェースの実験を試みてきた。実際、種々のゴルフクラブヘッドは種々の厚さの複数のゾーンさえ具備して良く、スイートスポットのサイズを改善して、平均的なゴルファーが打撃フェースの中心でゴルフボールを打撃しないときでさえ、最良の結果を実現できるようにするようになっている。これらの手法はクラブヘッドのサイズを改良できるという事実はあるけれども、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースの実際の幾何形状を調整することにより実現される性能上の利点を考慮していない。
【0008】
上述から、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースの幾何形状自体を利用してゴルフクラブヘッドのスイートスポットのサイズを増大させることができるゴルフクラブヘッドに対する要請がこの分野にあることがわかる。より具体的には、平均的なゴルファーが、熟練のプロゴルファーが実現できるのと類似の性能上の便益を、ゴルフクラブヘッドの中心でゴルフボールを直接に打撃しないときでさえ、達成できるようにするゴルフクラブヘッドに対する要請がこの分野にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,390,933号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0116202号明細書
【発明の開示】
【0010】
この発明の一側面は、打撃フェース、後方本体部分、および傾斜付けられた遷移部分を有するゴルフクラブヘッドである。打撃フェースは、約3500mm2より大きな前面表面領域を具備してよい。後方本体部分は、さらに、打撃フェースの上方部分に結合されるクラウン部分と、打撃フェースの下方部分に結合されるソール部分とを有してよい。傾斜付けられた遷移部分は打撃フェースの周囲を少なくとも部分的に包囲し、打撃フェースを後方本体部分に連結する。打撃フェースは、当該ゴルフクラブヘッドにより実現できる最高ボール速度の少なくとも99.7%を伴う、前面表面領域の領域として定義されるスイートスポットを伴って良く、これは、打撃フェースの前面表面領域の約1.5%を超える部分を包含する。
【0011】
この発明の他の側面は、打撃フェース、後方本体部分、および傾斜付けられた遷移部分を有するゴルフクラブヘッドである。打撃フェースは、約3500mm2より大きな前面表面領域を具備してよい。後方本体部分は、さらに、打撃フェースの上方部分に結合されるクラウン部分と、打撃フェースの下方部分に結合されるソール部分とを有してよい。傾斜付けられた遷移部分は打撃フェースの周囲を少なくとも部分的に包囲し、打撃フェースを後方本体部分に連結し、傾斜付けられた遷移部分は、トウの傾斜付けられた遷移部分とヒールの傾斜付けられた遷移部分とを有する。トウの傾斜付けられた遷移部分は約30mmより大きな曲率半径を有し、ヒールの傾斜付けられた遷移部分は約25mmより大きな曲率半径を有する。
【0012】
この発明のさらに他の側面は、打撃フェース、および、後方本体部分を有するゴルフクラブヘッドである。打撃フェースは、約3500mm2より大きな前面表面領域を具備してよい。後方本体部分は、さらに、打撃フェースの上方部分に結合されるクラウン部分と、打撃フェースの下方部分に結合されるソール部分とを有してよい。打撃フェースの前面表面領域は、さらに、打撃フェースの前面表面領域を横切ってほぼ水平方向にヒール部分からトウ部分へと広がるバルジラジアスと、打撃フェースの前面表面領域を横切ってほぼ垂直方向にクラウン部分からソール部分へと広がるロールラジアスとを有してよく、バルジラジアスおよびロールラジアスは高トウから低ヒールの方向に傾斜している。
【0013】
この発明のこれらの、または他の特徴、側面、および利点は以下の図面、説明および特許請求の範囲を参照して理解されるであろう。
【0014】
この発明の、先の、または他の特徴および利点は、添付図面において図説される、この発明の以下の説明から明らかであろう。添付図面はここに組み入れて明細書の一部を構成し、この発明の原理を説明するのに役立ち、同業者がこの発明を実施することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの俯瞰図である。
【図2】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図3】ゴルフクラブとゴルフボールとの間の典型的な衝突パターンのグラフ表示である。
【図4】この発明の事例的な実施例に従うスイートスポットの相対的なサイズ、形状、および位置を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図5】従来のゴルフクラブヘッドに関連する従来のスイートスポットの拡大図のグラフ表示である。
【図6】この発明の事例的な実施例に従う改良したスイートスポットの拡大図のグラフ表示である。
【図7】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの平面図である。
【図8a】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの図7のA−A’断面線に沿う断面図である。
【図8b】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの正面図であり、打撃フェースの背面の幾何形状を示す。
【図9】この発明の事例的な実施例に従う改良したスイートスポットの拡大図のグラフ表示である。
【図10】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのトウから見た斜視図である。
【図11】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのヒールから見た斜視図である。
【図12】この発明の事例的な実施例に従う改良したスイートスポットの拡大図のグラフ表示である。
【図13】この発明の事例的な実施例に従う傾斜したバルジおよびロール径を示すゴルフクラブヘッドの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明は、この発明を実施する最良の現行企画モデルのものである。この説明は限定的な意味で受け取られるべきではなく、この発明の全体的な原理を説明する目的でのみなされている。この発明の範囲は添付の特許請求の範囲により最も良く規定されているからである。
【0017】
種々の発明の特徴が以下に説明され、その各々は他の特徴と独立に採用されてもよいし、他の特徴と組みあわされて使用されても良い。ただし、発明の任意の1つの特徴は上述した問題のいずれも、またはすべてを扱わないかもしれないし、上述した問題の1つのみを取り扱うかもしれない。さらに、上述した問題の1つまたは複数は、以下説明される特徴のいずれでも取り扱われないかもしれない。
【0018】
図1は、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド100の俯瞰図を示す。図1に示されるゴルフクラブヘッド100は、一般的には、打撃フェース102、後方本体部分104、およびホーゼル105を具備して良い。後方本体部分104は一般的にはさらにクラウン部分106、ソール部分(図示しない)、およびスカート部分110からなっていて良い。クラウン部分106は一般的には打撃フェース102の上方部分に結合され、他方、ソール部分(図示しない)は一般的には打撃フェース102の下方部分に結合されて良い。スカート部分110は、現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、クラウン部分106およびソール部分(図示しない)の間に配されて、後方本体部分104を完成させて良い。ゴルフクラブヘッド100は、図1により図示する現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、傾斜付けられた遷移部分116を具備して良く、これは打撃フェース102の周囲を少なくとも包囲する。より具体的には、図1から理解できるように、傾斜遷移部分112はさらにトウ傾斜遷移部分114およびヒール傾斜遷移部分116からなって良く、これらがそれぞれ打撃フェース102のトウおよびヒール部分の近くで打撃フェース102を包囲する。図1に示される現行の事例的な実施例はゴルフクラブヘッド100のトウおよびヒール部分をカバーする傾斜遷移部分112のみを示すけれども、傾斜遷移部分112は、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、打撃フェース102の周囲を完全に包囲しても良いことに留意されたい。
【0019】
図1において、打撃フェース102の表面面積は一般的には約3600mm2より大きく、より好ましくは3700mm2より大きく、最も好ましくは約3750mm2より大きくてよいことに留意されたい。さらに、傾斜遷移部分112の表面面積は一般的には約850mm2より小さく、より好ましくは825mm2より小さく、最も好ましくは約810mm2より小さくてよい。最後に、ゴルフクラブヘッド100の全体の表面面積は約32000mm2と約35000mm2の間である。上述の表面面積の値に関連して、打撃フェース102の表面面積のゴルフクラブヘッド100の全体の総合面積に対する比を決定することが重要である。この打撃フェース表面面積比は一般的には約9%より大きく、より好ましくは約10%より大きく、最も好ましくは約11%より大きくて良い。代替的には、上述の表面面積は傾斜遷移部分表面面積比をも決定する。この傾斜遷移部分表面面積は一般的には約3.0%より小さく、より好ましくは、約2.75%より小さく、最も好ましくは約2.5%より小さくて良い。
【0020】
図2は、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド200の正面図を示す。このゴルフクラブヘッド200の正面図は、打撃フェース202をより直接に示すことができ、これは打撃フェース202が顕著に楕円形であり、長軸220が顕著にヒールからトウの方向に走り、短軸が顕著にクラウンからソールに走ることを示す。この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202は一般的には約0.33より大きく、より好ましくは約0.41より大きく、最も好ましくは約0.50の楕円ファクタを伴って良い。上に検討した楕円ファクタは下記の式1で定義されて良い。
楕円ファクタ=短軸222の長さ/長軸220の長さ 式(1)
長軸の長さ220は一般的には打撃フェース202上に描くことができる最も長い線の距離として定義して良い。ここで図2に示す現行の事例的な実施例では、長軸220は顕著にはヒールからトウへの方向に伸びるけれど、長軸220は現行の配向から逸脱した任意の他の方向に方向づけられていても良い。ただし、それは、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、打撃フェース202上に引くことができる最長の線を表す。短軸222は、現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、長軸220と直交して走り打撃フェース202を横切る線として定義されて良いが、打撃フェース202の幾何中心201を通る。
【0021】
長軸220の長さは、現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、約120mmより短く、より好ましくは約110mmより短く、最も好ましくは約100mmより短くて良い。他方、短軸222の長さは、現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、約40mmより長く、より好ましくは約45mmより長く、最も好ましくは約50mmより長くて良い。したがって、短軸222の長さを長軸220の長さで割ったときに、その結果としての楕円ファクタは先に検討した範囲となってよい。
【0022】
図2に示すゴルフクラブヘッド200の正面図は、ゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202が、ゴルフクラブヘッド200を比較的フラットな位置に維持していても、どれくらい、より直立位置に傾いているかを示すのに役立つ。換言すれば、打撃フェース202の垂直短軸222は、一般的には、地面225に対して垂直な垂直軸223と比較したときに、角度θだけ傾斜して良い。角度θは、現行の事例的な実施例に示されるように、一般的には、約3.0度より大きく約16.0度より小さく、より好ましくは、約3.0度より大きく約12.0度より小さく、最も好ましくは、約3.0度より大きく約8.0度より小さくてよい。図2から理解できるように、ゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202の地面225に対する傾斜は、長軸220および短軸222を同一の程度だけ同一の方向に傾斜させる。他の見方をすれば、打撃フェース202の傾斜は、長軸220および短軸222を高トウから低ヒールの方向に、約3.0度より大きく約16.0度より小さく、より好ましくは、約3.0度より大きく約12.0度より小さく、最も好ましくは、約3.0度より大きく約8.0度より小さい角度だけ傾斜させることとしても定義できる。
【0023】
ゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202の傾斜の背後にある理屈を理解するために図3を見ることは有益であり、これは、打撃フェース202に対するゴルファーの典型的衝突パターンを示し、グラフ上の点はゴルファーがゴルフクラブでゴルフボールを打撃するときの典型的な打撃位置を示す。F.Werner and R.Greg、How Golf Clubs Really Work and How to Optimize Their Desins、Ch. 4、pp.17−21(2000)、において報告されているように、ドライバークラブのフェース上のゴルフボール打撃の典型的な分散は、長軸が高トウから低ヒールの方向に方向づけられた楕円パターンに従い、これは図3に示される楕円パターンに合致する。図3に示される衝突パターンをより近くで調べると、衝撃パターンの長軸320が水平軸323に対して角度αを形成することがわかる。この角度αは一般的には図2に示されるゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202の傾斜角θに合致して良い。より具体的には、αは一般的には約3.0度より大きく約16.0度より小さく、より好ましくは、約3.0度より大きく約12.0度より小さく、最も好ましくは、約3.0度より大きく約8.0度より小さい。
【0024】
図2に戻ると、図3に示される打撃パターンから、ゴルフクラブヘッド200の打撃フェースを、衝撃パターンの傾斜角αに相当する角度θだけ傾斜させることが好ましいことがわかる。ゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202を傾斜させることが、長軸220および短軸222を傾斜させることになることがより重要である。上述の軸を傾斜させることにより、打撃フェース202が図3に示す典型的な打撃パターンとより整合するようにできるからである。
【0025】
図4を参照すると、これは、この発明の実施例に従うゴルフクラブヘッドの他の正面図を示しており、ゴルフクラブヘッド400が当該ゴルフクラブヘッド400の打撃フェース402の幾何中心401の近くに配置されたスイートスポット430を具備するように示されていることがわかる。より具体的には、スイートスポット430は一般的にはゴルフクラブヘッド400の打撃フェース402の幾何中心401と同心である。この発明に従って設計されたゴルフクラブヘッド400の主たる利点の1つは、かつて実現されたものより著しく大きな改良されたスイートスポットを実現できることである。より具体的には、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド400は、好ましくは、打撃フェース402の総合表面面積の約1.5%より大きな部分を、より好ましくは打撃フェース402の総合表面面積の約1.75%より大きな部分を、最も好ましくは打撃フェース402の総合表面面積の約2.0%より大きな部分を包囲するスイートスポット430を具備して良い。この出願の内容において、スイートスポット430は、一般的には、ゴルフクラブヘッド400により実現可能な最大ボール速度の少なくとも99.7%を実現できる、すべての打撃フェース402のうちの領域として定義して良い。99.7%の値は、スイートスポット430のサイズを決定する際に用いて妥当であろう。なぜならば、最大ボール速度の99.7%を実現できるゴルフボールは、ゴルフクラブヘッド400により実現できる最大ボール速度の100%を実現する直接的な中央の打撃と比較したときに、約1/2マイル・パー・時間しか失わないからである。現行の事例的な実施例において示されるようにゴルフクラブヘッド400により実現できる最大ボール速度は、一般的には、ゴルフクラブヘッド400がどこでゴルフボールを打撃するかにかかわらず、ゴルフクラブヘッドにより実現できる最も大きなボール速度と関連する。
【0026】
ここで、図4において、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド400の打撃フェース402の面積は、一般的には、約3600mm2より大きく、より好ましくは3700mm2より大きく、最も好ましくは約3750mm2より大きくてよい。他方、スイートスポット430の面積は、一般的には、約75mm2より大きく、より好ましくは110mm2より大きく、最も好ましくは約120mm2より大きくてよい。改善された幾何プロフィールを示す、スイートスポット430のより良い図は、後に図6、9、および12に示されるであろう。ここでは、これは、スイートスポット430の拡大図を示す拡大ボール速度グリッドに焦点を置くことができる。打撃フェース402およびスイートスポット430を上のように考えて、スイートスポット430は打撃フェース402の約1.5%より大きな部分を、より好ましくは打撃フェース402の約1.75%より大きな部分を、最も好ましくは打撃フェース402の約2.0%より大きな部分を包囲する。
【0027】
この発明の事例的な実施例に従うスイートスポット430のサイズを適切に説明するために、従来のゴルフクラブヘッドの打撃フェース部分が一般的にスイートスポットとなるかを調べることは有益であろう。図5は、従来のゴルフクラブヘッドの打撃フェース上に位置づけられるボール速度グリッド531内において最大ボール速度の少なくとも99.7%を有する従来のゴルフクラブヘッドのスイートスポット530を示す。ボール速度グリッド531は、この文脈で定義されるように、一般的にはゴルフクラブヘッドの打撃フェース上の位置付けられる幅40mmで高さ20mmの寸法の矩形領域であってよい。普通の従来のゴルフクラブヘッドのスイートスポット530は一般的には約45mm2の面積であり、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド400により実現できるスイートスポット430より著しく小さい。
【0028】
図5に示される従来技術のスイートスポット530は、サイズが著しく小さいということに加えて、著しく楕円形上であることを理解することは有意義である。ここで、長軸532は顕著に水平方向に延び、短軸は顕著に垂直方向に伸びる。従来のゴルフクラブヘッド内の従来のスイートスポット530をより近くで調べると、スイートスポットの長軸が短軸に較べて顕著に長く、ここでは、長軸に沿うスイートスポットの周囲の水平方向端部が垂直端部のスイートスポットの周囲から著しく離れている。このような楕円形のスイートスポット530は好ましくないであろう。なぜならば、これは図3に示すような典型的な衝撃パターンの先端の把握に失敗するからである。とくに、ミスが高トウまたは低ヒールの位置であるときに顕著である。
【0029】
図6はこの発明の事例の実施例に従うゴルフクラブヘッドのスイートスポット630を同一サイズのボール速度グリッド631内で示す。最初に、かつ最も重要なことに、図6から理解できるように、スイートスポット639のサイズが図5に示す従来のスイートスポット530のサイズより著しく大きい。より具体的には、現行の事例的な実施例において示されるスイートスポット630の面積は一般的には約75mm2であり、これは図2において先に示し改善されたフェース形状に由来するであろう。大きなスイートスポット630に加えて、改善されたスイートスポット630は改善されたより円形の形状を具備し、これにより、スイートスポット630は図3に示される衝撃領域のより多くの部分をカバーする。より具体的には、スイートスポット630は、図6の現行の事例的な実施例に示すように、一般的により円形形状で良く、長軸632および短軸634がほぼ同じ長さである。換言すれば、スイートスポット630の面積を約75mm2に維持しつつ、スイートスポット630の周囲のいずれの点もスイートスポット630の幾何中心から約5.0mmより遠く離れることはない。
【0030】
図2に示された改善されたフェース幾何形状は、図6に示すスイートスポット630の寸法および形状を改善するけれども、図7および図8に示されるゴルフクラブヘッドのさらなる事例的な実施例は、図2に示されるゴルフクラブヘッド200の性能をさらに改善するであろう付加的な特徴および利点を実現する。今、図7を参照すると、これは、この発明の他の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド700の平面図を示し、これは可変厚さの打撃フェース702を具備する。可変厚さは図7からは理解できないけれども、図7はゴルフクラブヘッド700の中心を通る断面線A−A’を与え、これにより、ゴルフクラブヘッド700の断面プロフィールが図8aにおいて可変厚さプロフィールを伴って示される。
【0031】
図8aは、図7に示される断面線A−A’に沿うゴルフクラブヘッド700の断面を示す。ゴルフクラブヘッド800は、図8aの現行の事例的な実施例において示されるように、打撃フェース802を具備し、これはその後方に可変フェース厚さプロフィール840を伴う。より具体的には、可変フェース厚さプロフィール840は、現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、厚さ中央部分842からなり、これは遷移部分843に包囲され、これは薄い周囲部分844に包囲される。ゴルフクラブヘッド800の打撃フェース802は、ゴルフボールと衝突したとき、トランポリンのように変形し、可変フェース厚さプロフィール840により、打撃フェース802の周囲部分844がトランポリン効果を実現するにたるほど薄くなり、それでいて、可変フェース厚さプロフィール840の厚い中央部分842がゴルフボールに関連する応力に耐えるに十分な厚さを実現する。傾斜遷移部分112(図1に示す)がゴルフクラブヘッド800の打撃フェース802に付加的な構造剛性を実現できるので、ゴルフクラブヘッドの打撃フェース802をより薄くしてさらに大きなスイートスポットを実現できる。より具体的には、構造的な剛性が増大するので、薄い周囲部分844の厚さを約3.0mm未満、より好ましくは約2.9mm未満、最も好ましくは約2.8mm未満にできる。可変フェース厚さを用いてゴルフクラブヘッドの性能を改良することについては米国特許第7,029,403号(Rice等)に詳細な説明を見出すことができるであろう。これらの詳細は参照してここに組み入れる。
【0032】
図8bは、可変フェース厚さプロフィール840を伴うゴルフクラブヘッド800の内部幾何形状の正面図を示す。より具体的には、図8bは中央部分842、遷移部分843、および薄い周囲部分844のサイズおよび位置を示す。図8bには具体的にラベル付けされていないけれども、ゴルフクラブヘッド800の打撃フェース802は高ヒールから低トウの方向に傾斜しているので、可変フェース厚さプロフィール840は高トウから低ヒールの方向へ角度θだけ傾斜されてよい。角度θは、図2に先に検討したように、一般的には、約3.0度より大きく約16.0度より小さく、より好ましくは、約3.0度より大きく約12.0度より小さく、最も好ましくは、約3.0度より大きく約8.0度より小さくてよい。
【0033】
図8bにおいて、中央部分842が、一般的に、実質的にヒールからトウへ走る長軸820および実質的にクラウンからソールに走る短軸822を伴う楕円プロフィール形状を具備することに留意することも重要である。中央部分842の形状および突出は、長軸820および短軸822の相対的な長さにより定義され、一般的には、図2において検討された楕円ファクタに関連して良い。この発明の事例的な実施例に従う打撃フェース902の中央部分842は一般的には約0.33より大きな、より好ましくは約0.41より大きな、最も好ましくは約0.50より大きな楕円ファクタを伴って良く、これは先の式(1)に基づいて計算される。
【0034】
可変フェース厚さプロフィール840の拡大図も遷移部分843の種々の厚さの中央部分842に対する興味深い関係をも示す。より具体的には、図8bから理解できるように、遷移部分843は測定位置に応じて変化する可変遷移幅C1、C2、C3、またはC4を伴って良い。遷移幅C1、C2、C3、およびC4は異なる値を採ってよく、この結果、中央部分842は、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、遷移部分843内で位置ずれすることになる。「遷移幅」は、ここで採用されるように、一般的には距離C1、C2、C3、およびC4を指し、中央部分842の周囲を横切る点で採られた接線と直角な点から測定された中央部分842の周囲と遷移部分843の周囲との間の距離を表す。
【0035】
換言すると、図8bに示される中央部分842の幾何中心は、図8bに示される二次元平面内で遷移部分843の幾何中心からずれていて良い。この発明の事例的な1実施例において、遷移部分843の頂部に近い遷移幅C1は一般的には遷移部分843の底部に近い遷移幅C2より大きくて良い。より具体的には、遷移幅C2は、一般的には遷移幅C1の約80%と等しくて可変フェース厚さプロフィール840の性能を改善させて良い。幅広い遷移幅C1の狭い遷移幅C2に対するこのような比は、打撃フェース802の底またはソールの近くに位置する中央部分842を実現でき、位置がソールバイアスされる。この発明の現行の事例的な実施例において、遷移幅C1は一般的には約8.0mmより大きくて良く、他方、幅C2は一般的に約7.0mmより小さくて良い。より具体的には、遷移幅C1は一般的には約8.5mmであってよく、他方、遷移幅C2は一般的には約6.8mmであって良い。ただし、この発明の他の代替的な実施例において、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、遷移幅C2が遷移幅C1より大きく、打撃フェース802の頂部またはクラウンの近くに位置する中央部分842を実現して良い。
【0036】
短軸822に沿う遷移部分843の遷移幅C1およびC2を変更することなく、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、長軸820に沿う遷移幅C3およびC4を調整して遷移部分843の内部で中央部分842のサイズや位置を可変して良いことに留意されたい。実際、この発明は、この発明の範囲および内容から逸脱することなしに、遷移幅C1、C2、C3、およびC4を同時にすべて調整することを含んで良い。この発明の1つの事例的な実施例において、遷移幅C3およびC4は遷移幅C1とほぼ同一の幅であり、中央部分842が遷移部分843内でより中央位置にされて良い。この発明の代替的な実施例において、遷移幅C3またはC4は遷移幅C1より大きくても良く、これにより、この発明の範囲および内容から逸脱することなしに、中央部分842のサイズまたは位置をさらに調整してよい。この発明の他の代替的な実施例において、遷移幅C3およびC4は一般的には約8.0mmより大きく、より好ましくは約8.2mmより大きく、最も好ましくは約8.3mmより大きくて良い。
【0037】
図9は、この発明の他の事例的な実施例に従うスイートスポット930を示し、これは図2に示される改善されたフェース幾何形状および図8に示される可変フェース厚さプロフィールの双方を採用している。先に示したものと同一サイズのボール速度グリッド931を用いた図9から理解できるように、スイートスポット930は先のプロットのいずれよりも著しく大きい。より具体的には、スイートスポット930のサイズは、改善されたフェース幾何形状に加えて可変フェース厚さプロフィールを組み込んだゴルフクラブヘッド900に相応して、一般的には、約110mm2の面積を伴う。スイートスポット930がより大きいことに加えて、スイートスポット930はより円形状の形状を伴っても良く、これによりスイートスポット930は図3に示される衝撃領域のより多くの部分を包囲できる。図6においてすでに説明してことと同じように、スイートスポット930は一般的にはより円形状であり、この形状では、スイートスポット930の面積を約110mm2に維持しつつ、スイートスポット930の周囲のいずれの点もスイートスポット930の幾何中心から約6.0mmより遠く離れることはない。
【0038】
図10、11、および12はこの発明の他の代替的な実施例を示しており、ここでは、少なくとも部分的に打撃フェースを包囲する傾斜遷移部分がスイートスポットを大きくすることによりゴルフクラブの性能を改善する。より具体的には、傾斜遷移部分が少なくとも部分的に打撃フェースを包囲するので、傾斜遷移部分が付加的な構造的剛性を実現して、これにより、打撃フェースをより薄くできる。薄い打撃フェースのゴルフクラブヘッドは、性能特性上、有益であろう。なぜならば、これによれば、種々の位置の厚さを調整することにより、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースの回りに分散させて大きなスイートスポットを形成するのに利用できる重量をより大きくできるからである。
【0039】
上述の点に加えて、傾斜遷移部分は、ゴルファーがゴルフクラブヘッドを用いてゴルフボールを打撃する際のゴルファーの信頼ファクタも改善できるであろう。ゴルファーは具体的な形状や幾何のゴルフクラブになれているので、ゴルフクラブの形状や幾何が、伝統的な形状やサイズから逸脱すると通常でない形状や幾何ゆえにゴルファーは気が散ってしまい、自信をなくしてしまう。ゴルフクラブヘッドの性能を改善する上述の楕円ファクタでは、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースが通常の形状やサイズから逸脱するので、いくらかの人は、そのような形状、サイズ、および幾何のゴルフクラブヘッドは慣用的でないと考える。傾斜遷移部分は、打撃フェースの周囲から無用の材料を取り去ることにより、この課題に対処するのに役立ち、ゴルフクラブヘッドをより伝統的な形状に戻す。より具体的には、傾斜遷移部分はトウおよびヒール部分の回りにより大きな曲率半径を有してよく、ゴルフクラブヘッドの伝統的な形状や幾何を再構築してゴルファーに自信を吹き込む。
【0040】
図10は、この発明の事例的な実施例に従うこの発明のゴルフクラブヘッド1000をゴルフクラブヘッド1000のトウ部分から見た斜視図を示す。ゴルフクラブヘッド1000のトウに重点付けられた斜視図は、ゴルフクラブヘッド1000のトウ部分のまわりの傾斜遷移部分1012を示す。より具体的には、図10は、傾斜遷移部分1012を形成するために用いられる、打撃フェース1002の回りの種々の曲率半径を図説する。ゴルフクラブヘッド1000のクラウン遷移部分1015の曲率半径は、打撃フェース1002およびクラウン1006の間において、一般的には約5mmより小さく、より好ましくは約3mmより小さく、最も好ましくは約2mmより小さくて良い。これに対して、トウ傾斜遷移部分1014の曲率半径は、クラウン遷移部分1015およびソール遷移部分1017の間の適切な遷移を実現するために、一般的には、可変であって良い。より具体的には、トウ傾斜遷移部分1014のための曲率半径は、最も平坦な点で約25mmより大きく、より好ましくは最も平坦な点で約30mmより大きく、最も好ましくは最も平坦な点で約35mmより大きくて良い。したがって、図10から理解できるように、クラウン遷移部分1015は一般的には一定の曲率半径を伴うけれども、トウ傾斜遷移部分1014は約2mmから約35mmの可変曲率半径を伴い、2つの遷移部分の間で平滑な遷移を確実にしてよい。トウ遷移部分1014は一般的に打撃フェース1002の周囲のトウ部分を指すけれども、これはクラウン遷移部分1015へと延長され、またはソール遷移部分1017へも延長され、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、可変曲率半径の間で平滑化を行えるようにして良いことに留意されたい。
【0041】
図11はこの発明の事例的な実施例に従う、この発明のゴルフクラブヘッド1100をゴルフクラブヘッド1100のヒール部分から見た斜視図を示す。図10と同様に、ゴルフクラブヘッド1100は先に図10、図11において検討したものと同一な曲率半径のクラウン遷移部分を有するけれども、これは、最も平坦な点で約20mmより大きく、より好ましくは最も平坦な点で約25mmより大きく、最も好ましくは最も平坦な点で約27.5mmより大きな曲率半径のヒール傾斜遷移部分1116を示す。トウ傾斜遷移部分1014(図10に示す)と同様に、ヒール傾斜遷移部分1116は約2mmから約2.75mmの可変曲率半径を伴い、2つの遷移部分の間で平滑な遷移を確実にしてよい。ヒール遷移部分1116は、クラウン遷移部分1115へと延長され、またはソール遷移部分1117へも延長され、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、可変曲率半径の間で平滑化を行えるようにして良い。
【0042】
図12は、この発明の他の事例的な実施例に従うスイートスポット1230を示し、これは図2に示される改善されたフェース幾何形状、図8に示される可変フェース厚さプロフィール、および図10および11に示される傾斜遷移部分を採用している。先に示したものと同一サイズのボール速度グリッド1231を用いた図12から理解できるように、スイートスポット1231は先のプロットのいずれよりも著しく大きい。より具体的には、スイートスポット1230のサイズは、上述の特徴すべてを組み込んだゴルフクラブヘッド1200に相応して、一般的には、約120mm2の面積を伴う。スイートスポット1230がより大きいことに加えて、スイートスポット1230もより円形状であっても良く、この形状では、スイートスポット1230の面積を約120mm2に維持しつつ、スイートスポット1230の周囲のいずれの点もスイートスポット1230の幾何中心から約7.0mmより遠く離れることはない。
【0043】
図13は、この発明の他の代替的な実施例を示し、ここにおいて、打撃フェース1302は傾いたバルジラジアス1350並びに傾いたロールラジアスを具備してゴルフクラブヘッドの性能を改善するのに役立つようにしてよい。バルジラジアス1350は打撃フェース1302をヒール部分からトウ部分へ横切ってほぼ水平方向に伸びる打撃フェース1302の湾曲を指して良い。他方、ロールラジアス1352は、一般的には、打撃フェース1302をクラウン部分からソール部分へ横切ってほぼ垂直方向に伸びる打撃フェース1302の湾曲を指して良い。傾斜バルジラジアス1350および傾斜ロールラジアス1352はゴルフクラブヘッドのスイートスポットのサイズをさらに大きくすることはないであろうけれども、ゴルフボールに修正用のスピンを付与することによりミスショットを修正するのに役立つであろう。バルジラジアス1350およびロールラジアス1252を伴う打撃フェース1302の効果については米国特許第6,595,869号(McCabe等)に詳細な検討を見いだすことができ、その内容は参照してここに組み入れる。
【0044】
図13に示される現行の事例的な実施例においてゴルフクラブヘッド1300の打撃フェース1302は図2に既に示したように、角度θだけより直立して傾斜されていることに留意することは重要である。先に説明したように、角度θにより、打撃フェース1302の多くの部分を図3に示す通常のゴルファーの衝突パターンに合致させることができる。しかしながら、バルジラジアス1350およびロールラジアス1352に対して何ら調整を行わないと、バルジおよびロールによる補償が、ゴルフボールを中央位置にスピンさせる点で、もはや、正しく適合しなくなるであろう。したがって、バルジラジアス1350およびロールラジアス1352を角度Φだけ直立して傾斜されることが好ましいであろう。角度Φは約1度より大きく約16度より小さく、より好ましくは約1度より大きく約12度より小さく、最も好ましくは約1度より大きく約8度より小さい。換言すると、バルジラジアス1350およびロールラジアス1352は高トウから低ヒールの方向に、約1度より大きく約16度より小さく、より好ましくは約1度より大きく約12度より小さく、最も好ましくは約1度より大きく約8度より小さい角度だけ傾斜させてよい。現行の傾斜角Φは一般的にはゴルフクラブヘッド1300の傾斜角θと合致して良いけれども、バルジラジアス1350およびロールラジアス1352の傾斜角Φは、それぞれ、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、ゴルフクラブヘッド1300の傾斜角θと独立して決定できることに留意されたい。
【0045】
実施例の外に、または、とくにことわらない限りは、すべての数の範囲、量、値およびパーセンテージ例えば明細書中の材料の量、慣性モーメント、重心位置、ロフト、後方角度(drposterior)、種々の性能比、その他に関するそのようなものは、値、量、または範囲とともに明瞭に「約」の用語が表示されていなくてもそのような用語「約」があるものとして認識することができる。したがって、そうでないと示されない限り、明細書および特許請求の範囲の数字のパラメータは近似であり、これはこの発明により実現されることがのぞまれる所望の特性に応じて変化する。特許請求の範囲の均等理論の適応を排除する意図はないが、少なくとも、各数量のパラメータは報告された実行桁数の下で理解され、通常の丸め手法により把握すべきである。
【0046】
この発明の広い範囲を示す数量の範囲およびパラメータは近似であるけれども、明細書の例に示された数量の値はできる限り正確に報告されている。ただし、いずれの数量の値も、各実験の測定に見いだされる標準偏差に起因する必然的な誤差を内在する。さらに、種々のことがらについて数量の範囲が示される場合には、指摘した値の範囲で、それらを組み合わせたものが利用できることを理解されたい。
【0047】
以上は、この発明の例示の実施例に関するものであり、以下の特許請求の範囲で示される発明の範囲および程度を逸脱することなく修正を行えることはもちろんであることに留意されたい。
【符号の説明】
【0048】
100 ゴルフクラブヘッド
102 打撃フェース
104 後方本体部分
105 ホーゼル
106 クラウン部分
110 スカート部分
112 傾斜遷移部分
【技術分野】
【0001】
この発明は、全般的には、ボール速度が少なくとも最大ボール速度の99.7%である、打撃フェースの部分として定義される、改良されたスイートスポットを実現することができるゴルフクラブヘッドに関する。より具体的には、この発明は、スイートスポットがゴルフクラブの打撃フェースの全体のうちの少なくとも1.5%をカバーするゴルフクラブヘッドに関する。さらに具体的には、この発明は、楕円ファクタを、短軸を長軸で割ったものと定義するときに、楕円ファクタが約0.50より大きくて改良したスイートスポットを実現する顕著に楕円形上の打撃フェースを具備するゴルフクラブヘッドに関する。この発明は、傾斜したバルジおよびロール径を伴ってゴルフクラブヘッドの性能をさらに改良するゴルフクラブヘッドに関しても良い。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブデザインの競争的な業界において、距離および精度は、メタルウッドタイプのゴルフクラブの要求度を図るのに役立つ最も重要な性能ファクタのうちの2つである。ある者は、ゴルフクラブの見た目、フィーリング、サウンドがゴルフクラブの評価に影響を与えるかもしれないと主張するけれども、性能ファクタがゴルフクラブの要求度の判定に大きな役割を有することを主張することがない。距離を最大化しながら精度を維持する性能ファクタはメタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドにおいてさらにより重要になってきている。任意の個々のゴルフクラブにより達成される距離の有益さよりゴルフショットの精度が明らかに優先するアイアンタイプのゴルフクラブヘッドと違って、メタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドはゴルファーができるだけ遠くに、かつできるだけ真っ直ぐゴルフボールを打撃できるように設計される。
【0003】
メタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドの距離を最大化し、それでいて精度の維持するために、メタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドは、ゴルフクラブヘッドにより当該ゴルフクラブヘッドの幾何中心の近くで打撃してゴルフボールの距離を最大化させる目的を持って設計されてきた。ゴルフクラブヘッドのこの幾何中心は、固有の物理法則に従って、一般に、ゴルフボールおよびゴルフクラブヘッドの間のエネルギー損失を小さくして距離を最大化させるゴルフショットを実現できる。この値を定量化するために、合衆国ゴルフ協会(USGA)は、ゴルフ業界と協同して、ゴルフクラブヘッドと衝突した後のゴルフボールのリバウンド特性を定量化する手法として、反発係数(COR)の計算や、特徴時間(CT)の計算の種々の方法を提供してきた。
【0004】
米国特許第6,390,933号明細書(Galloway、「’933特許」。第1特許文献)は、0.845を超える反発係数を有し、1時間あたり110マイルのゴルフボールで2000回の衝撃に耐える耐久性を有するゴルフクラブヘッドを開示して、ゴルフクラブヘッドのCORを増大させる一手法を検討しており、ここでクラブヘッドは3つの部品、フェース、ソール、およびクラウンから構成されて良い。より具体的には、’933特許は、チタン材料から構成されて良く、その容積が175立方cmから400立方cmの範囲であり、重量が165グラムから300グラムの範囲であり、打撃プレート面積が4.00平方インチから7.50平方インチの範囲であるゴルフクラブヘッドを開示する。
【0005】
距離に替えて精度を追求するものとしては、米国特許出願公開第2004/0116202号(Lin、「’202特許出願公開」。第2特許文献)が、複数の穴をクラブヘッドの周囲に具備してクラブヘッドがゴルフボールを打撃したときにほとんどの振動波、および音響波がこれら穴から消散されて打撃ゴルフボールの方向の精度を改善するようにしたゴルフクラブヘッドを開示することにより、ゴルフクラブヘッドの精度を向上させる方法を検討している。
【0006】
しかしながら、良く検証すると、メタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドの精度を維持しつつ距離を最大化させる開発は、ゴルファーがスイートスポットでゴルフボールを打撃できるということを前提にしている。スイートスポットは一般的にゴルフクラブの幾何中心に合致し、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースのそのような小さな領域であり、平均的なゴルファーはスイートスポットにゴルフボールを一貫して打撃することは困難であろう。したがって、上述の性能ファクタに加えて、スイートスポットのサイズを大きくして、平均的なゴルファーが、ゴルフボールを毎回完璧に打撃することを必要とすることなく、ゴルフクラブヘッドの距離および精度のデザイン上の利点を利用できるようにすることも望まれるであろう。
【0007】
ゴルファーは常にはゴルフボールを打撃フェースの中心で打撃できるわけではないという課題に対処するために、業界は、種々の可変フェース厚さの打撃フェースの実験を試みてきた。実際、種々のゴルフクラブヘッドは種々の厚さの複数のゾーンさえ具備して良く、スイートスポットのサイズを改善して、平均的なゴルファーが打撃フェースの中心でゴルフボールを打撃しないときでさえ、最良の結果を実現できるようにするようになっている。これらの手法はクラブヘッドのサイズを改良できるという事実はあるけれども、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースの実際の幾何形状を調整することにより実現される性能上の利点を考慮していない。
【0008】
上述から、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースの幾何形状自体を利用してゴルフクラブヘッドのスイートスポットのサイズを増大させることができるゴルフクラブヘッドに対する要請がこの分野にあることがわかる。より具体的には、平均的なゴルファーが、熟練のプロゴルファーが実現できるのと類似の性能上の便益を、ゴルフクラブヘッドの中心でゴルフボールを直接に打撃しないときでさえ、達成できるようにするゴルフクラブヘッドに対する要請がこの分野にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,390,933号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0116202号明細書
【発明の開示】
【0010】
この発明の一側面は、打撃フェース、後方本体部分、および傾斜付けられた遷移部分を有するゴルフクラブヘッドである。打撃フェースは、約3500mm2より大きな前面表面領域を具備してよい。後方本体部分は、さらに、打撃フェースの上方部分に結合されるクラウン部分と、打撃フェースの下方部分に結合されるソール部分とを有してよい。傾斜付けられた遷移部分は打撃フェースの周囲を少なくとも部分的に包囲し、打撃フェースを後方本体部分に連結する。打撃フェースは、当該ゴルフクラブヘッドにより実現できる最高ボール速度の少なくとも99.7%を伴う、前面表面領域の領域として定義されるスイートスポットを伴って良く、これは、打撃フェースの前面表面領域の約1.5%を超える部分を包含する。
【0011】
この発明の他の側面は、打撃フェース、後方本体部分、および傾斜付けられた遷移部分を有するゴルフクラブヘッドである。打撃フェースは、約3500mm2より大きな前面表面領域を具備してよい。後方本体部分は、さらに、打撃フェースの上方部分に結合されるクラウン部分と、打撃フェースの下方部分に結合されるソール部分とを有してよい。傾斜付けられた遷移部分は打撃フェースの周囲を少なくとも部分的に包囲し、打撃フェースを後方本体部分に連結し、傾斜付けられた遷移部分は、トウの傾斜付けられた遷移部分とヒールの傾斜付けられた遷移部分とを有する。トウの傾斜付けられた遷移部分は約30mmより大きな曲率半径を有し、ヒールの傾斜付けられた遷移部分は約25mmより大きな曲率半径を有する。
【0012】
この発明のさらに他の側面は、打撃フェース、および、後方本体部分を有するゴルフクラブヘッドである。打撃フェースは、約3500mm2より大きな前面表面領域を具備してよい。後方本体部分は、さらに、打撃フェースの上方部分に結合されるクラウン部分と、打撃フェースの下方部分に結合されるソール部分とを有してよい。打撃フェースの前面表面領域は、さらに、打撃フェースの前面表面領域を横切ってほぼ水平方向にヒール部分からトウ部分へと広がるバルジラジアスと、打撃フェースの前面表面領域を横切ってほぼ垂直方向にクラウン部分からソール部分へと広がるロールラジアスとを有してよく、バルジラジアスおよびロールラジアスは高トウから低ヒールの方向に傾斜している。
【0013】
この発明のこれらの、または他の特徴、側面、および利点は以下の図面、説明および特許請求の範囲を参照して理解されるであろう。
【0014】
この発明の、先の、または他の特徴および利点は、添付図面において図説される、この発明の以下の説明から明らかであろう。添付図面はここに組み入れて明細書の一部を構成し、この発明の原理を説明するのに役立ち、同業者がこの発明を実施することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの俯瞰図である。
【図2】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図3】ゴルフクラブとゴルフボールとの間の典型的な衝突パターンのグラフ表示である。
【図4】この発明の事例的な実施例に従うスイートスポットの相対的なサイズ、形状、および位置を説明するゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図5】従来のゴルフクラブヘッドに関連する従来のスイートスポットの拡大図のグラフ表示である。
【図6】この発明の事例的な実施例に従う改良したスイートスポットの拡大図のグラフ表示である。
【図7】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの平面図である。
【図8a】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの図7のA−A’断面線に沿う断面図である。
【図8b】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの正面図であり、打撃フェースの背面の幾何形状を示す。
【図9】この発明の事例的な実施例に従う改良したスイートスポットの拡大図のグラフ表示である。
【図10】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのトウから見た斜視図である。
【図11】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのヒールから見た斜視図である。
【図12】この発明の事例的な実施例に従う改良したスイートスポットの拡大図のグラフ表示である。
【図13】この発明の事例的な実施例に従う傾斜したバルジおよびロール径を示すゴルフクラブヘッドの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明は、この発明を実施する最良の現行企画モデルのものである。この説明は限定的な意味で受け取られるべきではなく、この発明の全体的な原理を説明する目的でのみなされている。この発明の範囲は添付の特許請求の範囲により最も良く規定されているからである。
【0017】
種々の発明の特徴が以下に説明され、その各々は他の特徴と独立に採用されてもよいし、他の特徴と組みあわされて使用されても良い。ただし、発明の任意の1つの特徴は上述した問題のいずれも、またはすべてを扱わないかもしれないし、上述した問題の1つのみを取り扱うかもしれない。さらに、上述した問題の1つまたは複数は、以下説明される特徴のいずれでも取り扱われないかもしれない。
【0018】
図1は、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド100の俯瞰図を示す。図1に示されるゴルフクラブヘッド100は、一般的には、打撃フェース102、後方本体部分104、およびホーゼル105を具備して良い。後方本体部分104は一般的にはさらにクラウン部分106、ソール部分(図示しない)、およびスカート部分110からなっていて良い。クラウン部分106は一般的には打撃フェース102の上方部分に結合され、他方、ソール部分(図示しない)は一般的には打撃フェース102の下方部分に結合されて良い。スカート部分110は、現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、クラウン部分106およびソール部分(図示しない)の間に配されて、後方本体部分104を完成させて良い。ゴルフクラブヘッド100は、図1により図示する現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、傾斜付けられた遷移部分116を具備して良く、これは打撃フェース102の周囲を少なくとも包囲する。より具体的には、図1から理解できるように、傾斜遷移部分112はさらにトウ傾斜遷移部分114およびヒール傾斜遷移部分116からなって良く、これらがそれぞれ打撃フェース102のトウおよびヒール部分の近くで打撃フェース102を包囲する。図1に示される現行の事例的な実施例はゴルフクラブヘッド100のトウおよびヒール部分をカバーする傾斜遷移部分112のみを示すけれども、傾斜遷移部分112は、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、打撃フェース102の周囲を完全に包囲しても良いことに留意されたい。
【0019】
図1において、打撃フェース102の表面面積は一般的には約3600mm2より大きく、より好ましくは3700mm2より大きく、最も好ましくは約3750mm2より大きくてよいことに留意されたい。さらに、傾斜遷移部分112の表面面積は一般的には約850mm2より小さく、より好ましくは825mm2より小さく、最も好ましくは約810mm2より小さくてよい。最後に、ゴルフクラブヘッド100の全体の表面面積は約32000mm2と約35000mm2の間である。上述の表面面積の値に関連して、打撃フェース102の表面面積のゴルフクラブヘッド100の全体の総合面積に対する比を決定することが重要である。この打撃フェース表面面積比は一般的には約9%より大きく、より好ましくは約10%より大きく、最も好ましくは約11%より大きくて良い。代替的には、上述の表面面積は傾斜遷移部分表面面積比をも決定する。この傾斜遷移部分表面面積は一般的には約3.0%より小さく、より好ましくは、約2.75%より小さく、最も好ましくは約2.5%より小さくて良い。
【0020】
図2は、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド200の正面図を示す。このゴルフクラブヘッド200の正面図は、打撃フェース202をより直接に示すことができ、これは打撃フェース202が顕著に楕円形であり、長軸220が顕著にヒールからトウの方向に走り、短軸が顕著にクラウンからソールに走ることを示す。この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202は一般的には約0.33より大きく、より好ましくは約0.41より大きく、最も好ましくは約0.50の楕円ファクタを伴って良い。上に検討した楕円ファクタは下記の式1で定義されて良い。
楕円ファクタ=短軸222の長さ/長軸220の長さ 式(1)
長軸の長さ220は一般的には打撃フェース202上に描くことができる最も長い線の距離として定義して良い。ここで図2に示す現行の事例的な実施例では、長軸220は顕著にはヒールからトウへの方向に伸びるけれど、長軸220は現行の配向から逸脱した任意の他の方向に方向づけられていても良い。ただし、それは、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、打撃フェース202上に引くことができる最長の線を表す。短軸222は、現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、長軸220と直交して走り打撃フェース202を横切る線として定義されて良いが、打撃フェース202の幾何中心201を通る。
【0021】
長軸220の長さは、現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、約120mmより短く、より好ましくは約110mmより短く、最も好ましくは約100mmより短くて良い。他方、短軸222の長さは、現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、約40mmより長く、より好ましくは約45mmより長く、最も好ましくは約50mmより長くて良い。したがって、短軸222の長さを長軸220の長さで割ったときに、その結果としての楕円ファクタは先に検討した範囲となってよい。
【0022】
図2に示すゴルフクラブヘッド200の正面図は、ゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202が、ゴルフクラブヘッド200を比較的フラットな位置に維持していても、どれくらい、より直立位置に傾いているかを示すのに役立つ。換言すれば、打撃フェース202の垂直短軸222は、一般的には、地面225に対して垂直な垂直軸223と比較したときに、角度θだけ傾斜して良い。角度θは、現行の事例的な実施例に示されるように、一般的には、約3.0度より大きく約16.0度より小さく、より好ましくは、約3.0度より大きく約12.0度より小さく、最も好ましくは、約3.0度より大きく約8.0度より小さくてよい。図2から理解できるように、ゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202の地面225に対する傾斜は、長軸220および短軸222を同一の程度だけ同一の方向に傾斜させる。他の見方をすれば、打撃フェース202の傾斜は、長軸220および短軸222を高トウから低ヒールの方向に、約3.0度より大きく約16.0度より小さく、より好ましくは、約3.0度より大きく約12.0度より小さく、最も好ましくは、約3.0度より大きく約8.0度より小さい角度だけ傾斜させることとしても定義できる。
【0023】
ゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202の傾斜の背後にある理屈を理解するために図3を見ることは有益であり、これは、打撃フェース202に対するゴルファーの典型的衝突パターンを示し、グラフ上の点はゴルファーがゴルフクラブでゴルフボールを打撃するときの典型的な打撃位置を示す。F.Werner and R.Greg、How Golf Clubs Really Work and How to Optimize Their Desins、Ch. 4、pp.17−21(2000)、において報告されているように、ドライバークラブのフェース上のゴルフボール打撃の典型的な分散は、長軸が高トウから低ヒールの方向に方向づけられた楕円パターンに従い、これは図3に示される楕円パターンに合致する。図3に示される衝突パターンをより近くで調べると、衝撃パターンの長軸320が水平軸323に対して角度αを形成することがわかる。この角度αは一般的には図2に示されるゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202の傾斜角θに合致して良い。より具体的には、αは一般的には約3.0度より大きく約16.0度より小さく、より好ましくは、約3.0度より大きく約12.0度より小さく、最も好ましくは、約3.0度より大きく約8.0度より小さい。
【0024】
図2に戻ると、図3に示される打撃パターンから、ゴルフクラブヘッド200の打撃フェースを、衝撃パターンの傾斜角αに相当する角度θだけ傾斜させることが好ましいことがわかる。ゴルフクラブヘッド200の打撃フェース202を傾斜させることが、長軸220および短軸222を傾斜させることになることがより重要である。上述の軸を傾斜させることにより、打撃フェース202が図3に示す典型的な打撃パターンとより整合するようにできるからである。
【0025】
図4を参照すると、これは、この発明の実施例に従うゴルフクラブヘッドの他の正面図を示しており、ゴルフクラブヘッド400が当該ゴルフクラブヘッド400の打撃フェース402の幾何中心401の近くに配置されたスイートスポット430を具備するように示されていることがわかる。より具体的には、スイートスポット430は一般的にはゴルフクラブヘッド400の打撃フェース402の幾何中心401と同心である。この発明に従って設計されたゴルフクラブヘッド400の主たる利点の1つは、かつて実現されたものより著しく大きな改良されたスイートスポットを実現できることである。より具体的には、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド400は、好ましくは、打撃フェース402の総合表面面積の約1.5%より大きな部分を、より好ましくは打撃フェース402の総合表面面積の約1.75%より大きな部分を、最も好ましくは打撃フェース402の総合表面面積の約2.0%より大きな部分を包囲するスイートスポット430を具備して良い。この出願の内容において、スイートスポット430は、一般的には、ゴルフクラブヘッド400により実現可能な最大ボール速度の少なくとも99.7%を実現できる、すべての打撃フェース402のうちの領域として定義して良い。99.7%の値は、スイートスポット430のサイズを決定する際に用いて妥当であろう。なぜならば、最大ボール速度の99.7%を実現できるゴルフボールは、ゴルフクラブヘッド400により実現できる最大ボール速度の100%を実現する直接的な中央の打撃と比較したときに、約1/2マイル・パー・時間しか失わないからである。現行の事例的な実施例において示されるようにゴルフクラブヘッド400により実現できる最大ボール速度は、一般的には、ゴルフクラブヘッド400がどこでゴルフボールを打撃するかにかかわらず、ゴルフクラブヘッドにより実現できる最も大きなボール速度と関連する。
【0026】
ここで、図4において、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド400の打撃フェース402の面積は、一般的には、約3600mm2より大きく、より好ましくは3700mm2より大きく、最も好ましくは約3750mm2より大きくてよい。他方、スイートスポット430の面積は、一般的には、約75mm2より大きく、より好ましくは110mm2より大きく、最も好ましくは約120mm2より大きくてよい。改善された幾何プロフィールを示す、スイートスポット430のより良い図は、後に図6、9、および12に示されるであろう。ここでは、これは、スイートスポット430の拡大図を示す拡大ボール速度グリッドに焦点を置くことができる。打撃フェース402およびスイートスポット430を上のように考えて、スイートスポット430は打撃フェース402の約1.5%より大きな部分を、より好ましくは打撃フェース402の約1.75%より大きな部分を、最も好ましくは打撃フェース402の約2.0%より大きな部分を包囲する。
【0027】
この発明の事例的な実施例に従うスイートスポット430のサイズを適切に説明するために、従来のゴルフクラブヘッドの打撃フェース部分が一般的にスイートスポットとなるかを調べることは有益であろう。図5は、従来のゴルフクラブヘッドの打撃フェース上に位置づけられるボール速度グリッド531内において最大ボール速度の少なくとも99.7%を有する従来のゴルフクラブヘッドのスイートスポット530を示す。ボール速度グリッド531は、この文脈で定義されるように、一般的にはゴルフクラブヘッドの打撃フェース上の位置付けられる幅40mmで高さ20mmの寸法の矩形領域であってよい。普通の従来のゴルフクラブヘッドのスイートスポット530は一般的には約45mm2の面積であり、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド400により実現できるスイートスポット430より著しく小さい。
【0028】
図5に示される従来技術のスイートスポット530は、サイズが著しく小さいということに加えて、著しく楕円形上であることを理解することは有意義である。ここで、長軸532は顕著に水平方向に延び、短軸は顕著に垂直方向に伸びる。従来のゴルフクラブヘッド内の従来のスイートスポット530をより近くで調べると、スイートスポットの長軸が短軸に較べて顕著に長く、ここでは、長軸に沿うスイートスポットの周囲の水平方向端部が垂直端部のスイートスポットの周囲から著しく離れている。このような楕円形のスイートスポット530は好ましくないであろう。なぜならば、これは図3に示すような典型的な衝撃パターンの先端の把握に失敗するからである。とくに、ミスが高トウまたは低ヒールの位置であるときに顕著である。
【0029】
図6はこの発明の事例の実施例に従うゴルフクラブヘッドのスイートスポット630を同一サイズのボール速度グリッド631内で示す。最初に、かつ最も重要なことに、図6から理解できるように、スイートスポット639のサイズが図5に示す従来のスイートスポット530のサイズより著しく大きい。より具体的には、現行の事例的な実施例において示されるスイートスポット630の面積は一般的には約75mm2であり、これは図2において先に示し改善されたフェース形状に由来するであろう。大きなスイートスポット630に加えて、改善されたスイートスポット630は改善されたより円形の形状を具備し、これにより、スイートスポット630は図3に示される衝撃領域のより多くの部分をカバーする。より具体的には、スイートスポット630は、図6の現行の事例的な実施例に示すように、一般的により円形形状で良く、長軸632および短軸634がほぼ同じ長さである。換言すれば、スイートスポット630の面積を約75mm2に維持しつつ、スイートスポット630の周囲のいずれの点もスイートスポット630の幾何中心から約5.0mmより遠く離れることはない。
【0030】
図2に示された改善されたフェース幾何形状は、図6に示すスイートスポット630の寸法および形状を改善するけれども、図7および図8に示されるゴルフクラブヘッドのさらなる事例的な実施例は、図2に示されるゴルフクラブヘッド200の性能をさらに改善するであろう付加的な特徴および利点を実現する。今、図7を参照すると、これは、この発明の他の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド700の平面図を示し、これは可変厚さの打撃フェース702を具備する。可変厚さは図7からは理解できないけれども、図7はゴルフクラブヘッド700の中心を通る断面線A−A’を与え、これにより、ゴルフクラブヘッド700の断面プロフィールが図8aにおいて可変厚さプロフィールを伴って示される。
【0031】
図8aは、図7に示される断面線A−A’に沿うゴルフクラブヘッド700の断面を示す。ゴルフクラブヘッド800は、図8aの現行の事例的な実施例において示されるように、打撃フェース802を具備し、これはその後方に可変フェース厚さプロフィール840を伴う。より具体的には、可変フェース厚さプロフィール840は、現行の事例的な実施例において示されるように、一般的には、厚さ中央部分842からなり、これは遷移部分843に包囲され、これは薄い周囲部分844に包囲される。ゴルフクラブヘッド800の打撃フェース802は、ゴルフボールと衝突したとき、トランポリンのように変形し、可変フェース厚さプロフィール840により、打撃フェース802の周囲部分844がトランポリン効果を実現するにたるほど薄くなり、それでいて、可変フェース厚さプロフィール840の厚い中央部分842がゴルフボールに関連する応力に耐えるに十分な厚さを実現する。傾斜遷移部分112(図1に示す)がゴルフクラブヘッド800の打撃フェース802に付加的な構造剛性を実現できるので、ゴルフクラブヘッドの打撃フェース802をより薄くしてさらに大きなスイートスポットを実現できる。より具体的には、構造的な剛性が増大するので、薄い周囲部分844の厚さを約3.0mm未満、より好ましくは約2.9mm未満、最も好ましくは約2.8mm未満にできる。可変フェース厚さを用いてゴルフクラブヘッドの性能を改良することについては米国特許第7,029,403号(Rice等)に詳細な説明を見出すことができるであろう。これらの詳細は参照してここに組み入れる。
【0032】
図8bは、可変フェース厚さプロフィール840を伴うゴルフクラブヘッド800の内部幾何形状の正面図を示す。より具体的には、図8bは中央部分842、遷移部分843、および薄い周囲部分844のサイズおよび位置を示す。図8bには具体的にラベル付けされていないけれども、ゴルフクラブヘッド800の打撃フェース802は高ヒールから低トウの方向に傾斜しているので、可変フェース厚さプロフィール840は高トウから低ヒールの方向へ角度θだけ傾斜されてよい。角度θは、図2に先に検討したように、一般的には、約3.0度より大きく約16.0度より小さく、より好ましくは、約3.0度より大きく約12.0度より小さく、最も好ましくは、約3.0度より大きく約8.0度より小さくてよい。
【0033】
図8bにおいて、中央部分842が、一般的に、実質的にヒールからトウへ走る長軸820および実質的にクラウンからソールに走る短軸822を伴う楕円プロフィール形状を具備することに留意することも重要である。中央部分842の形状および突出は、長軸820および短軸822の相対的な長さにより定義され、一般的には、図2において検討された楕円ファクタに関連して良い。この発明の事例的な実施例に従う打撃フェース902の中央部分842は一般的には約0.33より大きな、より好ましくは約0.41より大きな、最も好ましくは約0.50より大きな楕円ファクタを伴って良く、これは先の式(1)に基づいて計算される。
【0034】
可変フェース厚さプロフィール840の拡大図も遷移部分843の種々の厚さの中央部分842に対する興味深い関係をも示す。より具体的には、図8bから理解できるように、遷移部分843は測定位置に応じて変化する可変遷移幅C1、C2、C3、またはC4を伴って良い。遷移幅C1、C2、C3、およびC4は異なる値を採ってよく、この結果、中央部分842は、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、遷移部分843内で位置ずれすることになる。「遷移幅」は、ここで採用されるように、一般的には距離C1、C2、C3、およびC4を指し、中央部分842の周囲を横切る点で採られた接線と直角な点から測定された中央部分842の周囲と遷移部分843の周囲との間の距離を表す。
【0035】
換言すると、図8bに示される中央部分842の幾何中心は、図8bに示される二次元平面内で遷移部分843の幾何中心からずれていて良い。この発明の事例的な1実施例において、遷移部分843の頂部に近い遷移幅C1は一般的には遷移部分843の底部に近い遷移幅C2より大きくて良い。より具体的には、遷移幅C2は、一般的には遷移幅C1の約80%と等しくて可変フェース厚さプロフィール840の性能を改善させて良い。幅広い遷移幅C1の狭い遷移幅C2に対するこのような比は、打撃フェース802の底またはソールの近くに位置する中央部分842を実現でき、位置がソールバイアスされる。この発明の現行の事例的な実施例において、遷移幅C1は一般的には約8.0mmより大きくて良く、他方、幅C2は一般的に約7.0mmより小さくて良い。より具体的には、遷移幅C1は一般的には約8.5mmであってよく、他方、遷移幅C2は一般的には約6.8mmであって良い。ただし、この発明の他の代替的な実施例において、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、遷移幅C2が遷移幅C1より大きく、打撃フェース802の頂部またはクラウンの近くに位置する中央部分842を実現して良い。
【0036】
短軸822に沿う遷移部分843の遷移幅C1およびC2を変更することなく、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、長軸820に沿う遷移幅C3およびC4を調整して遷移部分843の内部で中央部分842のサイズや位置を可変して良いことに留意されたい。実際、この発明は、この発明の範囲および内容から逸脱することなしに、遷移幅C1、C2、C3、およびC4を同時にすべて調整することを含んで良い。この発明の1つの事例的な実施例において、遷移幅C3およびC4は遷移幅C1とほぼ同一の幅であり、中央部分842が遷移部分843内でより中央位置にされて良い。この発明の代替的な実施例において、遷移幅C3またはC4は遷移幅C1より大きくても良く、これにより、この発明の範囲および内容から逸脱することなしに、中央部分842のサイズまたは位置をさらに調整してよい。この発明の他の代替的な実施例において、遷移幅C3およびC4は一般的には約8.0mmより大きく、より好ましくは約8.2mmより大きく、最も好ましくは約8.3mmより大きくて良い。
【0037】
図9は、この発明の他の事例的な実施例に従うスイートスポット930を示し、これは図2に示される改善されたフェース幾何形状および図8に示される可変フェース厚さプロフィールの双方を採用している。先に示したものと同一サイズのボール速度グリッド931を用いた図9から理解できるように、スイートスポット930は先のプロットのいずれよりも著しく大きい。より具体的には、スイートスポット930のサイズは、改善されたフェース幾何形状に加えて可変フェース厚さプロフィールを組み込んだゴルフクラブヘッド900に相応して、一般的には、約110mm2の面積を伴う。スイートスポット930がより大きいことに加えて、スイートスポット930はより円形状の形状を伴っても良く、これによりスイートスポット930は図3に示される衝撃領域のより多くの部分を包囲できる。図6においてすでに説明してことと同じように、スイートスポット930は一般的にはより円形状であり、この形状では、スイートスポット930の面積を約110mm2に維持しつつ、スイートスポット930の周囲のいずれの点もスイートスポット930の幾何中心から約6.0mmより遠く離れることはない。
【0038】
図10、11、および12はこの発明の他の代替的な実施例を示しており、ここでは、少なくとも部分的に打撃フェースを包囲する傾斜遷移部分がスイートスポットを大きくすることによりゴルフクラブの性能を改善する。より具体的には、傾斜遷移部分が少なくとも部分的に打撃フェースを包囲するので、傾斜遷移部分が付加的な構造的剛性を実現して、これにより、打撃フェースをより薄くできる。薄い打撃フェースのゴルフクラブヘッドは、性能特性上、有益であろう。なぜならば、これによれば、種々の位置の厚さを調整することにより、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースの回りに分散させて大きなスイートスポットを形成するのに利用できる重量をより大きくできるからである。
【0039】
上述の点に加えて、傾斜遷移部分は、ゴルファーがゴルフクラブヘッドを用いてゴルフボールを打撃する際のゴルファーの信頼ファクタも改善できるであろう。ゴルファーは具体的な形状や幾何のゴルフクラブになれているので、ゴルフクラブの形状や幾何が、伝統的な形状やサイズから逸脱すると通常でない形状や幾何ゆえにゴルファーは気が散ってしまい、自信をなくしてしまう。ゴルフクラブヘッドの性能を改善する上述の楕円ファクタでは、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースが通常の形状やサイズから逸脱するので、いくらかの人は、そのような形状、サイズ、および幾何のゴルフクラブヘッドは慣用的でないと考える。傾斜遷移部分は、打撃フェースの周囲から無用の材料を取り去ることにより、この課題に対処するのに役立ち、ゴルフクラブヘッドをより伝統的な形状に戻す。より具体的には、傾斜遷移部分はトウおよびヒール部分の回りにより大きな曲率半径を有してよく、ゴルフクラブヘッドの伝統的な形状や幾何を再構築してゴルファーに自信を吹き込む。
【0040】
図10は、この発明の事例的な実施例に従うこの発明のゴルフクラブヘッド1000をゴルフクラブヘッド1000のトウ部分から見た斜視図を示す。ゴルフクラブヘッド1000のトウに重点付けられた斜視図は、ゴルフクラブヘッド1000のトウ部分のまわりの傾斜遷移部分1012を示す。より具体的には、図10は、傾斜遷移部分1012を形成するために用いられる、打撃フェース1002の回りの種々の曲率半径を図説する。ゴルフクラブヘッド1000のクラウン遷移部分1015の曲率半径は、打撃フェース1002およびクラウン1006の間において、一般的には約5mmより小さく、より好ましくは約3mmより小さく、最も好ましくは約2mmより小さくて良い。これに対して、トウ傾斜遷移部分1014の曲率半径は、クラウン遷移部分1015およびソール遷移部分1017の間の適切な遷移を実現するために、一般的には、可変であって良い。より具体的には、トウ傾斜遷移部分1014のための曲率半径は、最も平坦な点で約25mmより大きく、より好ましくは最も平坦な点で約30mmより大きく、最も好ましくは最も平坦な点で約35mmより大きくて良い。したがって、図10から理解できるように、クラウン遷移部分1015は一般的には一定の曲率半径を伴うけれども、トウ傾斜遷移部分1014は約2mmから約35mmの可変曲率半径を伴い、2つの遷移部分の間で平滑な遷移を確実にしてよい。トウ遷移部分1014は一般的に打撃フェース1002の周囲のトウ部分を指すけれども、これはクラウン遷移部分1015へと延長され、またはソール遷移部分1017へも延長され、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、可変曲率半径の間で平滑化を行えるようにして良いことに留意されたい。
【0041】
図11はこの発明の事例的な実施例に従う、この発明のゴルフクラブヘッド1100をゴルフクラブヘッド1100のヒール部分から見た斜視図を示す。図10と同様に、ゴルフクラブヘッド1100は先に図10、図11において検討したものと同一な曲率半径のクラウン遷移部分を有するけれども、これは、最も平坦な点で約20mmより大きく、より好ましくは最も平坦な点で約25mmより大きく、最も好ましくは最も平坦な点で約27.5mmより大きな曲率半径のヒール傾斜遷移部分1116を示す。トウ傾斜遷移部分1014(図10に示す)と同様に、ヒール傾斜遷移部分1116は約2mmから約2.75mmの可変曲率半径を伴い、2つの遷移部分の間で平滑な遷移を確実にしてよい。ヒール遷移部分1116は、クラウン遷移部分1115へと延長され、またはソール遷移部分1117へも延長され、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、可変曲率半径の間で平滑化を行えるようにして良い。
【0042】
図12は、この発明の他の事例的な実施例に従うスイートスポット1230を示し、これは図2に示される改善されたフェース幾何形状、図8に示される可変フェース厚さプロフィール、および図10および11に示される傾斜遷移部分を採用している。先に示したものと同一サイズのボール速度グリッド1231を用いた図12から理解できるように、スイートスポット1231は先のプロットのいずれよりも著しく大きい。より具体的には、スイートスポット1230のサイズは、上述の特徴すべてを組み込んだゴルフクラブヘッド1200に相応して、一般的には、約120mm2の面積を伴う。スイートスポット1230がより大きいことに加えて、スイートスポット1230もより円形状であっても良く、この形状では、スイートスポット1230の面積を約120mm2に維持しつつ、スイートスポット1230の周囲のいずれの点もスイートスポット1230の幾何中心から約7.0mmより遠く離れることはない。
【0043】
図13は、この発明の他の代替的な実施例を示し、ここにおいて、打撃フェース1302は傾いたバルジラジアス1350並びに傾いたロールラジアスを具備してゴルフクラブヘッドの性能を改善するのに役立つようにしてよい。バルジラジアス1350は打撃フェース1302をヒール部分からトウ部分へ横切ってほぼ水平方向に伸びる打撃フェース1302の湾曲を指して良い。他方、ロールラジアス1352は、一般的には、打撃フェース1302をクラウン部分からソール部分へ横切ってほぼ垂直方向に伸びる打撃フェース1302の湾曲を指して良い。傾斜バルジラジアス1350および傾斜ロールラジアス1352はゴルフクラブヘッドのスイートスポットのサイズをさらに大きくすることはないであろうけれども、ゴルフボールに修正用のスピンを付与することによりミスショットを修正するのに役立つであろう。バルジラジアス1350およびロールラジアス1252を伴う打撃フェース1302の効果については米国特許第6,595,869号(McCabe等)に詳細な検討を見いだすことができ、その内容は参照してここに組み入れる。
【0044】
図13に示される現行の事例的な実施例においてゴルフクラブヘッド1300の打撃フェース1302は図2に既に示したように、角度θだけより直立して傾斜されていることに留意することは重要である。先に説明したように、角度θにより、打撃フェース1302の多くの部分を図3に示す通常のゴルファーの衝突パターンに合致させることができる。しかしながら、バルジラジアス1350およびロールラジアス1352に対して何ら調整を行わないと、バルジおよびロールによる補償が、ゴルフボールを中央位置にスピンさせる点で、もはや、正しく適合しなくなるであろう。したがって、バルジラジアス1350およびロールラジアス1352を角度Φだけ直立して傾斜されることが好ましいであろう。角度Φは約1度より大きく約16度より小さく、より好ましくは約1度より大きく約12度より小さく、最も好ましくは約1度より大きく約8度より小さい。換言すると、バルジラジアス1350およびロールラジアス1352は高トウから低ヒールの方向に、約1度より大きく約16度より小さく、より好ましくは約1度より大きく約12度より小さく、最も好ましくは約1度より大きく約8度より小さい角度だけ傾斜させてよい。現行の傾斜角Φは一般的にはゴルフクラブヘッド1300の傾斜角θと合致して良いけれども、バルジラジアス1350およびロールラジアス1352の傾斜角Φは、それぞれ、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、ゴルフクラブヘッド1300の傾斜角θと独立して決定できることに留意されたい。
【0045】
実施例の外に、または、とくにことわらない限りは、すべての数の範囲、量、値およびパーセンテージ例えば明細書中の材料の量、慣性モーメント、重心位置、ロフト、後方角度(drposterior)、種々の性能比、その他に関するそのようなものは、値、量、または範囲とともに明瞭に「約」の用語が表示されていなくてもそのような用語「約」があるものとして認識することができる。したがって、そうでないと示されない限り、明細書および特許請求の範囲の数字のパラメータは近似であり、これはこの発明により実現されることがのぞまれる所望の特性に応じて変化する。特許請求の範囲の均等理論の適応を排除する意図はないが、少なくとも、各数量のパラメータは報告された実行桁数の下で理解され、通常の丸め手法により把握すべきである。
【0046】
この発明の広い範囲を示す数量の範囲およびパラメータは近似であるけれども、明細書の例に示された数量の値はできる限り正確に報告されている。ただし、いずれの数量の値も、各実験の測定に見いだされる標準偏差に起因する必然的な誤差を内在する。さらに、種々のことがらについて数量の範囲が示される場合には、指摘した値の範囲で、それらを組み合わせたものが利用できることを理解されたい。
【0047】
以上は、この発明の例示の実施例に関するものであり、以下の特許請求の範囲で示される発明の範囲および程度を逸脱することなく修正を行えることはもちろんであることに留意されたい。
【符号の説明】
【0048】
100 ゴルフクラブヘッド
102 打撃フェース
104 後方本体部分
105 ホーゼル
106 クラウン部分
110 スカート部分
112 傾斜遷移部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約3500mm2より大きな前面表面領域を具備する打撃フェースと、
クラウン部分およびソール部分を有する後方本体部分であって、上記クラウン部分は上記打撃フェースの上方部分に結合され、上記ソール部分は上記打撃フェースの下方部分に結合される、上記後方本体部分と、
上記打撃フェースの周囲を少なくとも部分的に包囲し、上記打撃フェースを上記後方本体部分に結合する、傾斜付けられた遷移部分とを有し、
上記打撃フェースは、当該ゴルフクラブヘッドにより実現できる最高ボール速度の少なくとも99.7%を伴う上記前面表面領域の領域として定義されるスイートスポットであって、上記打撃フェースの上記前面表面領域の約1.5%を超える部分を包含する、上記スイートスポットを有する、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
上記スイートスポットは上記打撃フェースの幾何中心と同心である請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
上記スイートスポットの面積は約75.00mm2より大きい請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
上記打撃フェースは、楕円ファクタが約0.50より大きい楕円形状であり、
上記楕円ファクタは、上記打撃フェースの短軸を上記打撃フェースの長軸で割ったものとして定義される請求項3記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
上記長軸および上記短軸は高トウから低ヒールへの方向に傾く請求項4記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
約3500mm2より大きな前面表面領域を具備する打撃フェースと、
クラウン部分およびソール部分を有する後方本体部分とを有し、
上記クラウン部分は上記打撃フェースの上方部分に結合され、上記ソール部分は上記打撃フェースの下方部分に結合され、かつ、
上記打撃フェースの上記前面表面領域は、さらに、
上記打撃フェースの上記前面表面領域を横切ってほぼ水平方向にヒール部分からトウ部分へと広がるバルジラジアスと、
上記打撃フェースの上記前面表面領域を横切ってほぼ垂直方向にクラウン部分からソール部分へと広がるロールラジアスとを有し、
上記バルジラジアスは高トウから低ヒールの方向に傾斜し、かつ、
上記ロールラジアスは高トウから低ヒールの方向に傾斜するゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
上記バルジラジアスおよび上記ロールラジアスの傾斜角度は約1度から約16度の間である請求項6記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
上記バルジラジアスおよび上記ロールラジアスの傾斜角度は約1度から約8度の間である請求項6記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
上記打撃フェースの周囲を少なくとも部分的に包囲し、上記打撃フェースを上記後方本体部分に結合する、傾斜付けられた遷移部分をさらに有し、上記傾斜付けられた遷移部分は、上記ゴルフクラブヘッドの全表面面積のうちの高々3.0%を構成する請求項7記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
上記傾斜付けられた遷移部分は約850mm2より小さい請求項9記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
約3500mm2より大きな前面表面領域を具備する打撃フェースと、
クラウン部分およびソール部分を有する後方本体部分であって、上記クラウン部分は上記打撃フェースの上方部分に結合され、上記ソール部分は上記打撃フェースの下方部分に結合される、上記後方本体部分と、
上記打撃フェースの周囲を少なくとも部分的に包囲し、上記打撃フェースを上記後方本体部分に結合する、傾斜付けられた遷移部分とを有し、
上記打撃フェースは、楕円ファクタが約0.50より大きい楕円形状であり、
上記楕円ファクタは、上記打撃フェースの短軸を上記打撃フェースの長軸で割ったものとして定義される、ゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
上記長軸および上記短軸は高トウから低ヒールへの方向に傾く請求項11記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
上記長軸および上記短軸の傾斜は、約3度より大きく、約16度より小さい請求項12記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
上記打撃フェースは可変厚さを伴い、上記可変厚さは、さらに、
厚い中央部分と、
遷移部分と、
薄い周囲部分とを有し、
上記遷移部分は上記厚い中央部分を包囲し、
上記薄い周囲部分は上記遷移部分を包囲し、
上記厚い中央部分の上記遷移部分の内部への配置は、上記ゴルフクラブヘッドのソール方向にバイアスされている請求項11記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項1】
約3500mm2より大きな前面表面領域を具備する打撃フェースと、
クラウン部分およびソール部分を有する後方本体部分であって、上記クラウン部分は上記打撃フェースの上方部分に結合され、上記ソール部分は上記打撃フェースの下方部分に結合される、上記後方本体部分と、
上記打撃フェースの周囲を少なくとも部分的に包囲し、上記打撃フェースを上記後方本体部分に結合する、傾斜付けられた遷移部分とを有し、
上記打撃フェースは、当該ゴルフクラブヘッドにより実現できる最高ボール速度の少なくとも99.7%を伴う上記前面表面領域の領域として定義されるスイートスポットであって、上記打撃フェースの上記前面表面領域の約1.5%を超える部分を包含する、上記スイートスポットを有する、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
上記スイートスポットは上記打撃フェースの幾何中心と同心である請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
上記スイートスポットの面積は約75.00mm2より大きい請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
上記打撃フェースは、楕円ファクタが約0.50より大きい楕円形状であり、
上記楕円ファクタは、上記打撃フェースの短軸を上記打撃フェースの長軸で割ったものとして定義される請求項3記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
上記長軸および上記短軸は高トウから低ヒールへの方向に傾く請求項4記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
約3500mm2より大きな前面表面領域を具備する打撃フェースと、
クラウン部分およびソール部分を有する後方本体部分とを有し、
上記クラウン部分は上記打撃フェースの上方部分に結合され、上記ソール部分は上記打撃フェースの下方部分に結合され、かつ、
上記打撃フェースの上記前面表面領域は、さらに、
上記打撃フェースの上記前面表面領域を横切ってほぼ水平方向にヒール部分からトウ部分へと広がるバルジラジアスと、
上記打撃フェースの上記前面表面領域を横切ってほぼ垂直方向にクラウン部分からソール部分へと広がるロールラジアスとを有し、
上記バルジラジアスは高トウから低ヒールの方向に傾斜し、かつ、
上記ロールラジアスは高トウから低ヒールの方向に傾斜するゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
上記バルジラジアスおよび上記ロールラジアスの傾斜角度は約1度から約16度の間である請求項6記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
上記バルジラジアスおよび上記ロールラジアスの傾斜角度は約1度から約8度の間である請求項6記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
上記打撃フェースの周囲を少なくとも部分的に包囲し、上記打撃フェースを上記後方本体部分に結合する、傾斜付けられた遷移部分をさらに有し、上記傾斜付けられた遷移部分は、上記ゴルフクラブヘッドの全表面面積のうちの高々3.0%を構成する請求項7記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
上記傾斜付けられた遷移部分は約850mm2より小さい請求項9記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
約3500mm2より大きな前面表面領域を具備する打撃フェースと、
クラウン部分およびソール部分を有する後方本体部分であって、上記クラウン部分は上記打撃フェースの上方部分に結合され、上記ソール部分は上記打撃フェースの下方部分に結合される、上記後方本体部分と、
上記打撃フェースの周囲を少なくとも部分的に包囲し、上記打撃フェースを上記後方本体部分に結合する、傾斜付けられた遷移部分とを有し、
上記打撃フェースは、楕円ファクタが約0.50より大きい楕円形状であり、
上記楕円ファクタは、上記打撃フェースの短軸を上記打撃フェースの長軸で割ったものとして定義される、ゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
上記長軸および上記短軸は高トウから低ヒールへの方向に傾く請求項11記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
上記長軸および上記短軸の傾斜は、約3度より大きく、約16度より小さい請求項12記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
上記打撃フェースは可変厚さを伴い、上記可変厚さは、さらに、
厚い中央部分と、
遷移部分と、
薄い周囲部分とを有し、
上記遷移部分は上記厚い中央部分を包囲し、
上記薄い周囲部分は上記遷移部分を包囲し、
上記厚い中央部分の上記遷移部分の内部への配置は、上記ゴルフクラブヘッドのソール方向にバイアスされている請求項11記載のゴルフクラブヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−125723(P2011−125723A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−283911(P2010−283911)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283911(P2010−283911)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
【Fターム(参考)】
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