説明

恒温搬送コンテナ

【課題】装置外部からのエネルギ−供給を受けなくても、室温以上の指定する温度に検体を維持しつつ搬送できる装置を提供することを目的とする。
【解決手段】搬送コンテナ15の内部に、保温槽1と、前記保温槽1内部に収納される発熱体3と、前記保温槽1内部に設置される恒温ヒーター5と、前記恒温ヒ−タ−5に電力を供給する電源ユニット12と、前記保温槽1内部の温度を一定にする温度コントロ−ラ11を装備している。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は食品検査及び臨床検査の検査材料(以下検体という)を適した温度に保って搬送することができる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、食品検査及び臨床検査に於いて、外部機関へ検査を依頼する場合は、検体は室温又は低温下で搬送されていた。検査を委託された機関では、検体を受け取るとまず前増菌操作(検査前に菌を増殖させる操作)を行い、次いで検査を行うのが従来の工程であった。もし、搬送時間中に菌の選択・前増菌操作を行うことが出来れば、検査結果報告までの所要日数を短縮することができる。しかし、搬送中に室温以上の指定する温度に検体を維持しつつ搬送するには装置外部からのエネルギー供給が必要であり、従来このような要望に応え得る実用的な装置はなかった。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
そこで本考案は、装置外部からのエネルギ−供給を受けなくても、室温以上の指定する温度に検体を維持しつつ搬送できる装置(以下恒温搬送コンテナという)を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案の恒温搬送コンテナは、搬送コンテナ15の内部に、保温槽1と、前記保温槽1内部に収納される発熱体3と、前記保温槽1内部に設置される恒温ヒーター5と、前記恒温ヒ−タ−5に電力を供給する電源ユニット12と、前記保温槽1内部の温度を一定にする温度コントロ−ラ11を装備している。
【0005】
【考案の実施の形態】
考案の実施の形態を実施例にもとづき図を参照して説明する。
図1に示す検体容器4には微生物を選択する培地が入っており、その中へ検体が入れられる。検体容器4は図2に示すように発熱体3に包まれる。発熱体3のトリガ−13が押されると、発熱体3は発熱を開始する。その発熱体3と検体容器4は図1に示す通り保温槽1に入られる。温度コントロ−ラ11が指定温度にセットされることで恒温ヒ−タ−5が断続的に加熱され、検体は設定温度に維持される。これらが装備されている恒温ボックス14は図3に示す搬送コンテナ15に入られて運搬される。
【0006】
恒温ヒ−タ−5の電源には電池(たとえばマンガン、アルカリ、ニッカド、リチウムなど)が使用される。保温槽1は、断熱材2で覆われ、内面はアルミ箔等の反射する素材で熱の漏洩を防いでいる。恒温ヒ−タ−5はニクロム線等の発熱体の他に、電球を用いて(特にクリプトン電球は高発熱となる)熱源としても良い。
【0007】
発熱体3は使用に際し発熱を開始させ得る物であれば何でもよいが、(たとえば酸化鉄系の発熱体、容器に熱湯を入れた発熱体など)本実施例では酢酸ナトリウム系の発熱体を使用している。これは、酢酸ナトリウム3水塩をポリ袋に入れて封止し、予め約100℃の水に浸し全量融解させた上で室温まで冷却させたものである。酢酸ナトリウム3水塩の融点は59℃であるが、ゆっくり静かに冷却するとこれより温度が下がっても固化せず一種の過冷却の状態になっている。この様な状態の液体は、種晶を投入したり、電位を与える等の結晶化の「きっかけ」を作ってやると、結晶化を開始すると同時に潜熱を放出して発熱体が急速に約58℃まで温度上昇する。本実施例の発熱体はこの様な性質を有しているため、酢酸ナトリウム3水塩をポリ袋に封入する際、結晶化の「きっかけ」となるトリガ−13をも一緒に封入し使用する。
【0008】
発熱体3の使用に際しては、先ずトリガ−13を作動させ発熱を開始させる。
次に図2のように発熱体3で検体容器4を巻いて保温槽1に入れる。この実施例の発熱体3は使用後にお湯に浸し再融解させれば再使用可能であり経済的である。発熱体3を使用せず恒温ヒ−タ−5のみとすると、熱量を得るのに電源ユニット12を大きくしなしればならないが、発熱体3を併用することで電源ユニット12を小さくできる。
【0009】
設定温度を変えるときは、培地の液量を増減する。また設定温度を下げる場合は発熱体3を不織布等でくるんでから検体容器4に遠巻きにしてもよい。温度コントロ−ラ11はボリュ−ム等を変えることで指定温度を変更できる。採血管、組織片、血液標本等で室温に(たとえば25℃)温度を維持したい場合は検体容器4は口広にし、その中に検体を立てる。発熱体3は過冷却状態で25℃以下にしておき、発熱させずに検体容器4に巻き付ける。温度コントロ−ラ11は25℃にセットする。
夏季など周囲温度が高い場合は、保温槽1の外側、搬送コンテナ15の内部にドライアイス等を入れてもよい。
【0010】
温度モニタ−9は、現時点での温度を表示する。一方、記録温度計10は温度の最大値、最小値を見ることができるほか、温度履歴を記録する。温度履歴を見るのに積算サ−モテ−プを張り付けてもよい。または最高値を記録する温度計を設置しても良い。
【0011】
検体容器4はねじ込み式の密栓型とし、恒温ボックス14の蓋はフックで止められる。このようにそれぞれに密封されることで、万一の検体漏洩を防いでいる。
【0012】
【考案の効果】
本考案の恒温搬送コンテナを用いれば、検体の温度を選択及増菌操作に適した温度に保ちながら搬送できるため、従来検査の前に必要だった選択増菌操作が不要になり、検査に要する時間を短縮できる。また、コンテナ外部からの電源供給が不要である為一般貨物扱いの搬送が可能で、低コストの外部搬送業者に搬送を委託することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】恒温搬送コンテナの内部構造を説明する図である。
【図2】検体容器が発熱体に包まれることを示す図である。
【図3】恒温ボックスが搬送コンテナに収納されることを示す図である。
【符号の説明】
1 保温槽
3 発熱体
4 検体容器
5 恒温ヒーター
11 温度コントローラ
12 電源ユニット
15 搬送コンテナ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】搬送コンテナ15の内部に、保温槽1と、前記保温槽1内部に収納される発熱体3と、前記保温槽1内部に設置される恒温ヒーター5と、前記恒温ヒ−タ−5に電力を供給する電源ユニット12と、前記保温槽1内部の温度を一定にする温度コントロ−ラ11を収納したことを特徴とする恒温搬送コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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