説明

恒温槽及びその製造方法

【課題】供試体が収容される試験室35と、試験室35の内外を連通させる少なくとも1の導通孔76と、を有し、試験室35内を少なくとも所定の温度に保つ恒温槽1において、所望の位置に導通孔76を形成可能にしつつも、その納期を短縮する。
【解決手段】内壁31及び外壁32と、その内外壁31,32の間の断熱材33とを含む二重壁構造によって略矩形の箱型に形成されると共に、内壁31によって試験室35が区画形成された本体2を備える。箱型の本体2において、少なくとも1の面23を構成する内壁31及び外壁32はそれぞれ、所定の一部分が導通孔76の形成可能部分として設定される開口部31a,32aと、開口部31a,32aの周縁部に対して着脱可能に取り付けられた閉塞板71,72と、を含んで構成され、導通孔76は、閉塞板71,72を貫通して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体を収容する試験室内を少なくとも所定の温度に保つための恒温槽及びそれの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば電子機器や電子・半導体部品の特性評価等のために用いられる試験装置として、供試体を収容する試験室内を所定の温度に保つための恒温槽、又は試験室内を所定の温度及び湿度に保つための恒温恒湿槽(以下、これらを総称して単に恒温槽ともいう)が知られている。
【0003】
こうした恒温槽は、例えば冷凍機や加温機といった空調機器を制御することによって、その試験室内に調和空気を供給するようにしており、試験室内は、外部雰囲気温度及び湿度に影響されないように密閉空間とされている。具体的に恒温槽は、例えば特許文献1に開示されているように、内壁及び外壁と、その内外壁の間の断熱材とを含む二重壁構造によって略矩形の箱型に形成された本体を備えており、前記の試験室は、本体の内壁によって区画形成されることになる。
【特許文献1】特開2006−29650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした特性評価試験等においては、試験室内の供試体に対しセンサ等を取り付ける場合があり、そうした場合には、前記本体の側面等に貫通形成されて、密閉空間である試験室の内外を連通させる導通孔に、前記センサ等に接続される配線等を敷設するようにしている。ここで、こうした導通孔は、供試体の形状、センサの取付位置、試験室内で供試体を載置する位置等の種々の条件に応じて、客先によって決定されるため、導通孔の形成位置は、恒温槽毎に異なる位置になる。
【0005】
その一方で、前記本体は、複数の板材を溶接等によって互いに接合することによって、密閉空間である試験室を区画形成する内槽を組み立て、それに断熱材等を巻き付けた後に、その断熱材を囲むように複数の板材等を互いに接合して矩形箱状の外装を組み立てることにより製造される。このようにして二重壁構造からなる箱型の本体を組み立てた後に、その側面等に導通孔を形成することは、例えば工具上の制約、また内壁及び外壁の貫通孔同士の位置合わせが困難である等の理由によって不可能である。
【0006】
従って、恒温槽を製造する場合には、導通孔の位置が確定した後に、前述したような本体の組み立てを開始し、その後に、空調機器を含む各種の内部部品等の取り付け等を行うことになる。つまり、導通孔の位置が確定するまでは、恒温槽の製造を開始することができず、そのことが納期を遅くする要因となっている。こうした問題は、二重壁構造を有している本体に対し、客先の要望に応じた位置に導通孔を形成しなければならないという恒温槽特有の問題である。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所望の位置に導通孔を形成可能にしつつも、恒温槽の納期を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、供試体が収容される試験室と、当該試験室の内外を連通させる少なくとも1の導通孔と、を有し、前記試験室内を少なくとも所定の温度に保つ恒温槽は、厚み方向に所定の間隔を空けて相対する内壁及び外壁と、その内外壁の間の断熱材とを含む二重壁構造によって略矩形の箱型に形成されると共に、前記内壁によって前記試験室が区画形成された本体を備えている。
【0009】
そして、前記箱型の本体の少なくとも1の面を構成する内壁及び外壁はそれぞれ、所定の一部分が前記導通孔の形成可能部分として設定される開口部と、当該開口部を閉塞するように開口部の周縁部に対して着脱可能に取り付けられた閉塞板と、を含んで構成され、前記導通孔は、前記内壁及び外壁の閉塞板を貫通して形成されている。
【0010】
この構成によると、箱型の本体における少なくとも1の面は、導通孔の形成可能部分としての開口部と、それを閉塞するように着脱可能に取り付けられた閉塞板とを含んで構成された内壁及び外壁によって構成されている。このため、箱型の本体を組み立てた後に、内壁及び外壁の閉塞板をそれぞれ取り外すことによって、その取り外した各閉塞板における所定の位置に、貫通孔を精度良く形成することが可能になる。そうして、貫通孔を形成した各閉塞板を、開口部の周縁部に対して再度取り付け、その内壁及び外壁の貫通孔同士を互いに連通させることによって、試験室の内外を連通させる導通孔が貫通形成されることになる。
【0011】
つまり、この構成では、二重壁構造の箱型本体の組み立て途中や、組み立てた後においても、導通孔を貫通形成することが可能であるため、導通孔の位置が確定する前に、本体の組み立てを開始することが可能である。その分、恒温槽の納期は短縮されることになる。
【0012】
前記外壁の閉塞板と前記内壁の閉塞板とは、両閉塞板の間に断熱材を充填した状態で互いに連結されることにより、ユニットを構成しており、当該ユニットが、前記本体に対して着脱可能に取り付けられる、としてもよい。
【0013】
こうすることで、外壁の閉塞板と内壁の閉塞板とを一度に取り外すこと、及び、一度に取り付けることができると共に、取り外した各閉塞板のそれぞれに貫通孔を形成するときに、その相互の位置合わせを容易に行い得るという利点がある。
【0014】
本発明の他の側面によると、供試体が収容される試験室と、当該試験室の内外を連通させる少なくとも1の導通孔と、を有し、前記試験室内を少なくとも所定の温度に保つ恒温槽の製造方法は、複数の壁部材を相互に固定することで略矩形箱型の内槽を組み立てると共に、その複数の壁部材の内の少なくとも一つを、所定の一部分が前記導通孔の形成可能部分とされる開口部と、当該開口部を閉塞するように開口部の周縁部に対して着脱可能に取り付けられる閉塞板と、を含んで構成された特定壁部材とする工程、前記内槽の外周囲に断熱材を取り付ける工程、前記断熱材の外周囲を取り囲むように複数の壁部材を相互に固定することで略矩形箱型の外装を組み立てると共に、前記内漕の特定壁部材に相対して配置される壁部材を、前記開口部と閉塞板とを含んで構成された前記特定壁部材とする工程、前記内漕及び外装における相対する前記特定壁部材の閉塞板をそれぞれ取り外す工程、前記取り外した閉塞板それぞれに貫通孔を形成する工程、及び、前記貫通孔を形成した閉塞板を、前記内槽及び外装それぞれの前記開口部の周縁部に対して取り付けることにより、当該貫通孔同士が互いに連通した前記導通孔を形成する工程、を含む。
【0015】
前述したように、この製造方法によると、二重壁構造の箱型本体の組み立て途中や、組み立てた後においても、導通孔を貫通形成することが可能であるため、導通孔の位置が確定する前に、本体の組み立てを開始することで、恒温槽の納期を、その分短縮することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によると、二重壁構造の箱型本体の組み立て途中や、組み立てた後においても、その本体から閉塞板を取り外して貫通孔を形成し、それによって所望の位置に導通孔を精度良く貫通形成することが可能であるため、導通孔の位置が確定するまで製造を開始することができなかった従来構造に比べて、恒温槽の納期を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
(実施形態1)
図1,2は、本実施形態に係る恒温恒湿槽1の外観を示しており、この恒温恒湿槽1は、略矩形箱状でかつ、供試体が収容される試験室を有する上部本体2と、上部本体2の下側に位置して当該上部本体2を支持すると共に、その内部に冷凍機等を収容する下部本体6と、を備えて構成されている。
【0019】
上部本体2は、図1〜3に示すように、上面21、下面22、左側面23、右側面24及び後面25をそれぞれ含むと共に、その前側が開口となった略矩形箱状に形成されている。上部本体2の前側には、前記開口を開閉する開閉扉26がヒンジ26a,26aを介して取り付けられている。この開閉扉26によって上部本体2の前面が構成されている。
【0020】
上部本体2の、上下、左右、前後の各面21〜26はそれぞれ、図8,9に示すように、厚み方向に相対する内壁31及び外壁32と、その両壁31、32の間に充填された断熱材33と、によって構成されており、上部本体2の各面21〜26は、いわゆる二重壁構造となっている。そうして、各面の内壁31によって、上部本体2内に、略直方体の内部空間34が区画形成されている。内部空間34は、後述するように試験室35を含む空間であって、前記試験室35内は、外部雰囲気温度及び湿度に影響されない密閉空間とされている。
【0021】
こうした上部本体2の構成は、換言すれば、略矩形箱型の内槽と、同じく略矩形箱型の外装と、内槽及び外装の間に充填された断熱材と、によって構成されているということができる。尚、内壁31は例えばステンレス鋼板により、外壁32は例えば亜鉛メッキ鋼板により形成してもよい。また、断熱材33は、例えば硬質発泡ウレタン及びグラスウールからなるとしてもよい。
【0022】
前記開閉扉26にはまた、図1〜3に示すように、試験室35内を外部から観察可能となるように、透明性部材によって構成された観測窓27が形成されていると共に、各種情報を表示するための、例えば液晶ディスプレイからなるモニタ28が取り付けられている。尚、符号29は、鍵付きの引き手である。
【0023】
前記上部本体2の内部空間34には、その前後方向の所定位置に区画壁38が立設されており、それによって内部空間34は、区画壁38よりも前側であって、前記開閉扉26によって開閉される試験室35と、区画壁38よりも後側であって、調和空気の循環路とされる空調室36と、の2室に分けられている。
【0024】
前記試験室35内には、その左右の両側壁に、それぞれ上下に延びる一対の調節ラダー39a,39aが前後方向に所定の間隔を空けて取り付けられている(図3では一側壁の調節ラダー39aのみが図示されている)。この調節ラダー39aに棚板39が取り付けられることによって、試験室35内の所望の高さ位置に棚板39を配置して、供試体を載置することが可能になる。
【0025】
前記区画壁38の下部には、試験室35内の循環空気を吸い込む吸込口38aが形成されていると共に、その上部には、試験室35内に循環空気を吹き出す吹出口38bが形成されている。この吸込口38a及び吹出口38bを通じて、試験室35と空調室36とは互いに連通しており、試験室35内の下部から空調室36内に吸い込まれた空気は、その空調室36内を下から上へと流れて、試験室35内の上部に吹き出されることになる(図3の白抜きの矢印参照)。
【0026】
空調室36内には、その下部から上部に向かって順に、空気を加湿するための加湿ヒータ41、後述するように供給された冷媒を蒸発させ、その蒸発熱によって空気を冷却するための冷却器51、空気を加熱するための、例えばワイヤストリップヒータからなる加熱ヒータ42、及び空気を循環させるためのファン(例えばシロッコファン)43がそれぞれ配設されている。そうしてこの恒温恒湿槽1では、加湿ヒータ41、冷却器51及び加熱ヒータ42のそれぞれからなる空調機器を適宜動作させることによって、試験室35内の温度及び湿度を、設定された温度及び湿度で一定となるようにしている。
【0027】
前記加湿ヒータ41は、水が溜められるパン41aと、そのパン41aの水を加熱して蒸気を発生させるヒータ(例えばシーズヒータ)41bと、を備えている。尚、前記パン41aには、下部本体6内に配設されたタンク(図示省略)からの水が適宜供給される。
【0028】
前記冷却器51は、冷凍機5の一部を構成する機器であり、冷凍機5はさらに、冷却器51の出口側から、冷媒の流れ方向の順に、冷媒を圧縮する圧縮機52、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器53、電磁開閉弁54、冷媒を膨張させて前記冷却器51に供給する膨張弁55、及び、それらを互いに接続する冷媒配管56を含んで構成されている。この冷凍機5を構成する各機器51〜55の内、冷却器51は、前述したように空調室36内に配設されて空気を冷却する一方、少なくとも圧縮機52及び凝縮器53を含むコンデンシングユニット57は、下部本体6内に配設されている。
【0029】
コンデンシングユニット57は、凝縮器53を冷却するための冷却ファン58を備えている。また、下部本体6の前面には、その下部本体6内に空気を導入するための導入口61が形成されており、冷却ファン58の駆動によって、この導入口61から導入された空気がコンデンシングユニット57を通過して、凝縮器53を冷却することになる。コンデンシングユニット57を通過した空気は、下部本体6及び上部本体2の背部において、上下方向に延びて形成された排気路62を通って、恒温恒湿槽1の上面に上向きに開口する排気口63から、外部に排気されるように構成されている(図3の白抜きの矢印参照)。
【0030】
そうして、この恒温恒湿槽1において最も特徴的な点として、上部本体2における左右の両側面23,24及び上面21にはそれぞれ、試験室35内に連通する開口部31a,32aが形成されていると共に、この開口部31a,32aを塞ぐように閉塞ユニット7が取り付けられている。この開口部31a,32aは、図1に示すように、導通孔76を形成することが可能な範囲として設定される部分である。尚、導通孔76は、試験室35内に置かれた供試体に接続されるセンサ等の配線を敷設するために試験室の内外を連通させる孔である。
【0031】
具体的に上部本体2における左右の両側面23,24及び上面21にはそれぞれ、例えば図8,9に示すように、内壁31及び外壁32のそれぞれに形成されることによって試験室35の内外を連通させる、略矩形状の開口部31a,32aが形成されている(尚、図8では左側面23の開口部31a,32aを示す)。内壁31及び外壁32のそれぞれの開口部31a,32aにおける縁部には、閉塞ユニット7を取り付けるためのフランジ31b,32bが形成されている。
【0032】
また特に、内壁31の開口部31aには、その高さ方向の途中位置で前後方向に延びることによって、その前後の開口縁部同士を互いに連結する中間フランジ31cが設けられており、この中間フランジ31cによって、内壁31の開口部31aは、上下に2分割されている。こうすることで、外壁32及び内壁31には比較的大きい開口部31a,32aが形成されているものの、上部本体2として、所望の強度を確保することが可能になる。
【0033】
閉塞ユニット7は、例えば図6,7に示すように、導通孔76を形成するためのユニットであり、具体的にこの閉塞ユニット7は、図4,5,8,9に示すように(但し、これらの図は左側面23用の閉塞ユニット7を示す)、内壁31の開口部31aを閉塞する内側閉塞板71と、外壁32の開口部32aを閉塞する外側閉塞板72と、内側閉塞板71の全周囲から外側閉塞板72に向かって延びて、内側及び外側閉塞板72を互いに連結させる連結部73と、内側及び外側閉塞板71,72並びに連結部73によって囲まれた内部空間34内に充填された断熱材74と、を含んで構成されている。ここで、内側閉塞板71には、前記中間フランジ31cに対応して、その高さ方向の途中位置にスリットが形成されており、このスリットによって内側閉塞板71は上下に2分割されている。
【0034】
前記内側閉塞板71には、前記フランジ31b,31cに対してビス止めされるためのビス穴71aがその周縁に沿って略等間隔を空けて形成されていると共に、外側閉塞板72にも同様に、ビス穴72aがその周縁に沿って略等間隔を空けて形成されている。
【0035】
そうして閉塞ユニット7は、上部本体2の開口部31a,32aに嵌め込まれた状態で、ビス止めされることによって、上部本体2における左右の両側面23,24及び上面21に対して、着脱可能に取付固定されるようになっている。
【0036】
次に、前記構成の恒温恒湿槽1を製造する手順について説明する。ここで、恒温恒湿槽1の製造を開始する時点においては、前記導通孔76の位置は確定していないものとする。
【0037】
先ず、複数の板材を例えば溶接などによって互いに接合することにより、矩形箱状の内漕を組み立てる。このときに、左右の側面に対応する板材(内壁31)及び上面に対応する板材(内壁31)にはそれぞれ、開口部31aを設けておく。
【0038】
次に、前記内槽の外周囲に断熱材33を取り付ける。断熱材を取り付けた後に、その外周囲を取り囲むように、板材を配置し、それらを互いに接合することによって、矩形箱状の外装を組み立てる。このときに、左右の側面に対応する板材(外壁32)及び上面に対応する板材(外壁32)にはそれぞれ、開口部32aを設けておく。
【0039】
そうして、別途の工程により製造された閉塞ユニット7を用意して、それを、開口部31a,32aに対して嵌め込み、その閉塞ユニット7をビスによって固定する。尚、閉塞ユニット7が取り付けられる開口部31a,32aに対応する部分には、予め断熱材33を取り付けないようにしてもよいし、断熱材33を取り付けた後に、これを取り除くようにしてもよい。
【0040】
そのようにして、上部本体2が形作られれば、その上部本体2の前側に開閉扉26を取り付ける工程や、空調室36内に加湿ヒータ41等の内部部品を取り付ける工程等、必要な各工程を、適宜の順番で行う。
【0041】
そうして、恒温恒湿槽1が完成に至るまでにおいて、導通孔76の位置が確定したときには、任意のタイミングで導通孔76を貫通形成する工程を行う。
【0042】
この工程ではまず、導通孔76を形成する面(左側面23、右側面24及び/又は上面21)に対応する前記閉塞ユニット7を、ビスを外すことによって上部本体2から取り外す。そうして、その取り外した閉塞ユニット7の内側閉塞板71及び外側閉塞板72における所定の位置(導通孔76の位置)に貫通孔を形成する。形成した貫通孔に対し、図9に示すように、筒体75を嵌め込んで固定することによって、閉塞ユニット7を厚み方向に貫通する導通孔76を形成する(図6,7参照)。尚、図例では、閉塞ユニット7における左右方向の略中央位置における上部位置と、略中央位置との2箇所それぞれに、導通孔76を形成している。
【0043】
閉塞ユニット7に導通孔76を形成すれば、その閉塞ユニット7を開口部31a,32aに嵌め込むと共に、閉塞ユニット7を、ビスによって再び、上部本体2に取り付け固定する。
【0044】
その後、図9に示すように、試験室35内から、全ての閉塞ユニット7に対して、内側閉塞板71と開口部31aとの隙間をシーリング剤77によって埋めることによって、試験室35内を密封可能にする。
【0045】
以上のようにして、所望の位置に導通孔76が形成された恒温恒湿槽1が完成することになる。
【0046】
前記構成の恒温恒湿槽1においては、上部本体2における左右の両側面23,24及び上面21を、それぞれ、開口部31a,32aと閉塞ユニット7とを含む特定壁部材によって構成することにより、導通孔76の位置を予め確定させる必要がなくなる。
【0047】
つまり、こうした特定壁部材を有しない従来の恒温恒湿槽においては、矩形箱状に上部本体2を組み立てた後に導通孔76を形成することは、例えば工具の制約の点又は貫通孔の位置精度の点から困難であった。このため、導通孔76の位置が確定してから、前記内槽の組み立てを開始しなければならなかった。
【0048】
これに対し特定壁部材を有する前記の構成では、前述したように、上部本体2の組み立て途中は勿論のこと、その組み立て完了後においても、上部本体2から閉塞ユニット7を取り外すことによって、その取り外した閉塞ユニット7の所望の位置に、導通孔76を精度よく形成することが可能である。従って、導通孔76の位置が確定する前に、恒温恒湿槽1の製造を開始するすることが可能になり、その分、恒温恒湿槽1の納期を短縮することができる。
【0049】
また、内側閉塞板71と外側閉塞板72とを互いに連結して閉塞ユニット7を構成していることで、この閉塞ユニット7を取り外し及び取り付けることだけで、開口部31a,32aを開放及び閉塞することが可能になると共に、内側閉塞板71と外側閉塞板72と位置がずれないため、内側閉塞板71に形成する貫通孔と、外側閉塞板72に形成する貫通孔との位置合わせが容易になるという利点がある。
【0050】
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係る恒温恒湿槽1(上部本体2)の断面図を示している。この実施形態2においては、内壁31の開口部31aを閉塞する内側閉塞板71と、外壁32の開口部32aを閉塞する外側閉塞板72と、を連結部によって互いに連結して閉塞ユニットを構成するのではなく、内側閉塞板71と外側閉塞板72とが互いに別体にされている。
【0051】
実施形態2に係る恒温恒湿槽1を製造する場合は、次のような手順を踏むことになる。つまり先ず、複数の板材を、例えば溶接などによって互いに接合することにより、矩形箱状の内漕を組み立てる。このときに、左右の側面に対応する板材(内壁31)及び上面に対応する板材(内壁31)にはそれぞれ、開口部31aを設けておく。この開口部31aに対しては、内側閉塞板71をビスによって固定しておく。
【0052】
そうして、前記内槽の外周囲に断熱材33を取り付け、その後、その断熱材33の外周囲を取り囲むように板材を配置し、それらを互いに接合することによって、矩形箱状の外装を組み立てる。このときに、左右の側面に対応する板材(外壁32)及び上面に対応する板材(外壁32)にはそれぞれ、開口部32aを設けておく。この開口部32aに対しては、外側閉塞板72をビスによって固定しておく。こうして、上部本体2がほぼ形作られることになる。
【0053】
上部本体2に対して導通孔76を形成するときには、ビスを外すことによって、外側閉塞板72、及び、内側閉塞板71をそれぞれ、上部本体2から取り外す。そして、その取り外した内側及び外側閉塞板71,72のそれぞれに対して、所定の位置に貫通孔を形成する。
【0054】
そのようにして内側及び外側閉塞板71,72に貫通孔を形成した後に、上部本体2における内壁31の開口部31a及び外壁32の開口部32aに、内側及び外側閉塞板71,72をそれぞれ取り付けて、ビスにより固定する。そうして、各貫通孔を互いに連通するように、内側及び外側閉塞板71,72に筒体75を取り付け、それによって導通孔76を貫通形成する。その後、試験室35内から、全ての内側閉塞板71について、開口部31aとの隙間をシーリング剤77によって埋める。このようにして、所望の位置に導通孔76が形成された恒温恒湿槽1が完成することになる。
【0055】
実施形態2に係る恒温恒湿槽1でも、上部本体2の組み立ての途中や組み立ての完了後に、導通孔76を貫通形成することが可能である。従って、恒温恒湿槽1の納期を短縮することができる。
【0056】
(他の実施形態)
尚、前記の各実施形態では、試験室35内の温度及び湿度を一定に保つ恒温恒湿槽1を例に本発明を説明したが、例えば試験室35内の温度を一定に保つ恒温槽に本発明を適用してもよい。
【0057】
また、前記の各実施形態では、上部本体2の左右の両側面23,24及び上面21に導通孔76を形成可能にしているが、これらすべての面に導通孔76を形成可能に構成する必要はない。例えば左右の両側面のみ、左右いずれかの側面のみ、上面のみ、上面と左右いずれかの側面のみに導通孔76を形成可能にしてもよい。
【0058】
尚、恒温恒湿槽1の冷凍機5を含む内部の構成は一例であり、前記の実施形態に限定されるものではない。恒温恒湿槽1の内部の構成は、適宜の構成を採用することが可能である。
【0059】
また、前記の各実施形態では、閉塞板(閉塞ユニット7)の取り付け手法としてビス止めを採用しているが、これに限定されるものではない。閉塞板(閉塞ユニット7)が取り外し可能に固定することができるのであれば、種々の公知の手法を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明は、導通孔の位置を予め設定しておかなくても、その製造を開始することができ、それに伴い納期を短縮することができるから、二重壁構造の恒温槽や恒温恒湿槽について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態に係る恒温恒湿槽の全体を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る恒温恒湿槽の全体を示す斜視図である。
【図3】恒温恒湿槽の内部構成を示す概略図である。
【図4】閉塞ユニットの外壁側を示す斜視図である。
【図5】閉塞ユニットの内壁側を示す斜視図である。
【図6】導通孔を形成した閉塞ユニットの外壁側を示す斜視図である。
【図7】導通孔を形成した閉塞ユニットの内壁側を示す斜視図である。
【図8】恒温恒湿槽の斜視断面図である。
【図9】図1のIX−IX断面図である。
【図10】実施形態2に係る恒温恒湿槽における断面図(図9対応図)である。
【符号の説明】
【0062】
1 恒温恒湿槽
2 上部本体
21 上面
23 左側面
24 右側面
31 内壁
31a 開口部
32 外壁
32a 開口部
33 断熱材
35 試験室
71 内側閉塞板
72 外側閉塞板
76 導通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体が収容される試験室と、当該試験室の内外を連通させる少なくとも1の導通孔と、を有し、前記試験室内を少なくとも所定の温度に保つ恒温槽であって、
厚み方向に所定の間隔を空けて相対する内壁及び外壁と、その内外壁の間の断熱材とを含む二重壁構造によって略矩形の箱型に形成されると共に、前記内壁によって前記試験室が区画形成された本体を備え、
前記箱型の本体の少なくとも1の面を構成する内壁及び外壁はそれぞれ、所定の一部分が前記導通孔の形成可能部分として設定される開口部と、当該開口部を閉塞するように開口部の周縁部に対して着脱可能に取り付けられた閉塞板と、を含んで構成され、
前記導通孔は、前記内壁及び外壁の閉塞板を貫通して形成されている恒温槽。
【請求項2】
請求項1に記載の恒温槽において、
前記外壁の閉塞板と前記内壁の閉塞板とは、両閉塞板の間に断熱材を充填した状態で互いに連結されることにより、ユニットを構成しており、当該ユニットが、前記本体に対して着脱可能に取り付けられる恒温槽。
【請求項3】
供試体が収容される試験室と、当該試験室の内外を連通させる少なくとも1の導通孔と、を有し、前記試験室内を少なくとも所定の温度に保つ恒温槽の製造方法であって、
複数の壁部材を相互に固定することで略矩形箱型の内槽を組み立てると共に、その複数の壁部材の内の少なくとも一つを、所定の一部分が前記導通孔の形成可能部分とされる開口部と、当該開口部を閉塞するように開口部の周縁部に対して着脱可能に取り付けられる閉塞板と、を含んで構成された特定壁部材とする工程、
前記内槽の外周囲に断熱材を取り付ける工程、
前記断熱材の外周囲を取り囲むように複数の壁部材を相互に固定することで略矩形箱型の外装を組み立てると共に、前記内漕の特定壁部材に相対して配置される壁部材を、前記開口部と閉塞板とを含んで構成された前記特定壁部材とする工程、
前記内漕及び外装における相対する前記特定壁部材の閉塞板をそれぞれ取り外す工程、
前記取り外した閉塞板それぞれに貫通孔を形成する工程、及び、
前記貫通孔を形成した閉塞板を、前記内槽及び外装それぞれの前記開口部の周縁部に対して取り付けることにより、当該貫通孔同士が互いに連通した前記導通孔を形成する工程、を含む恒温槽の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−214080(P2009−214080A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63208(P2008−63208)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000134730)ナガノサイエンス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】