説明

患者の両眼の動力を訓練し及び/又はリハビリを施す装置

本発明は、患者の感覚刺激を通じて両眼の動力にリハビリを施し及び/又は引き起こす装置に関連する。当該装置は、長手方向の対称軸(AA’)により定められる平面スタンド(10)であって、該スタンド(10)は少なくとも1つの感覚刺激を発信する複数の手段を有し、該発信する手段は、視覚刺激(101〜136)を見る手段と前記視覚刺激を見る手段と隣接して聴覚刺激を発信する手段とを有する、平面スタンドを有する。発信する手段は、スタンド(10)に沿って配置された同種両眼転導弧(201〜204)に沿って均等に配置される。前記装置は、前記少なくとも1つの感覚刺激(101〜136)の発信を少なくとも制御するための制御システム(20)を更に有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼の動力のリハビリ及び/又は訓練装置に関し、関連する両眼の動力のリハビリ及び/又は訓練方法にも関する。また、本発明は、両眼の動力に関連する病状の治療に特に適する。
【背景技術】
【0002】
両眼の動力の訓練及び/又はリハビリテーションは、プリズム・バー、シノプトフォア等のような種々の装置により患者に運動を実行させることを含む。
【0003】
しかしながら、これらの技術は限られている。
【0004】
実際に、それらは、次の運動に進むかについて問題になっている運動に対する患者の応答により調整されるので、主観的である。例えば、二重に見える等である。これは、患者により達成された進捗が施術者と患者との間のやりとりを通じてのみ測定可能であるため、客観的な測定器が存在しないことを示唆する。
【0005】
さらに、これらの技術は、固定的であり、特に特定の病状が眼球運動と関連しているときに、眼球運動の軌跡を再教育/決定することができない。
【0006】
したがって、視能矯正訓練/リハビリテーションの結果は、偶然によるものであり、施術者及び被験者の協力に依存してしまう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の欠点を是正することが可能である。
【0008】
この目的のため、第1の態様によると、本発明は、感覚刺激を用いて患者の両眼の動力にリハビリを施し及び/又は訓練する装置に関する。当該装置は、−長手方向の対称軸により定められる平面スタンドであって、該スタンドは、少なくとも1つの感覚刺激を発信する複数の手段を有し、該発信する手段は、視覚刺激を表示する手段と該視覚刺激を表示する手段に隣接する聴覚刺激を発信する手段とを有し、該発信する手段は前記スタンドに沿って位置する同種両眼転導弧に沿って規則的に配置される、平面スタンド、−前記少なくとも1つの感覚刺激の発信を少なくとも制御するようにされた制御システム、を有する。
【0009】
本発明による装置は、水平軸及び垂直軸の並びに奥行きの両眼の動力にリハビリを施し及び/又は訓練することを可能にし、根強い臨床的需要(視能訓練、臨床的又は独立した検眼、光学、視覚的人間工学)を満たす。
【0010】
本発明による装置は、同時に起こる視覚的刺激の完全なセット、つまり両眼視差、輻輳及びレンズの適応である生理学的相乗効果の刺激を更に可能にする。 本発明による装置は、生理学的資源の組合せにより毎日刺激されているように、視覚を刺激することを可能にする。
【0011】
有利なことに、各同種両眼転導弧上で、視覚刺激を生成する手段と聴覚刺激を発信する手段とは、視覚刺激を表示する各手段が聴覚刺激を発信する手段と関連付けられるように配置される。
【0012】
視覚刺激手段と聴覚刺激手段を対にすることは、特に年齢に関係する黄斑変性低視力(ARMD低視力)のような視覚欠損症の場合に重要な、幾つかの感覚モダリティの同時刺激を可能にする。
【0013】
本発明の第1の態様による装置の他の態様を以下に示す。
【0014】
−前記装置は、2つより多くの同種両眼転導弧を有し、望ましくは4つの同種両眼転導弧を有する。
【0015】
−各同種両眼転導弧は、感覚刺激を生成する少なくとも3つの手段、望ましくは少なくとも1つの感覚刺激を生成する9個の手段を有する。
【0016】
−スタントは、台形又は三角形である。
スタンドは、折り畳みパネル、折り畳み扇であるか、又は幾つかの入れ子にできる部分を有する。
【0017】
−前記装置は、前記患者から20cmの距離にある第1の同種両眼転導弧、前記患者から40cmの距離にある第2の同種両眼転導弧、前記患者から70cmの距離にある第3の同種両眼転導弧、前記患者から150cmの距離にある第4の同種両眼転導弧、を有する。
【0018】
−表示手段は、発光ダイオードを有する。
【0019】
−聴覚刺激を発信する手段は、スピーカを有する。
【0020】
−聴覚刺激を発信する手段は、特定の場合に、同種両眼転導弧間で異なる周波数を有する聴覚刺激を発信するようにされる。
【0021】
−前記装置は、患者の眼球運動を取得する装置と結合するための手段を有する。
【0022】
第2の態様によると、本発明は、本発明の第1の態様によるリハビリテーション装置を用いて両眼の動力にリハビリを施し及び/又は訓練する方法に関する。
【0023】
リハビリテーション/訓練方法は、水平軸及び垂直軸、並びに奥行きの両眼の動力のリハビリテーション/訓練を可能にする。
【0024】
前記方法により達成されるリハビリテーション/訓練は、3次元空間の視覚の質だけでなく、注意及び認識能力の展開も向上させる。
【0025】
本発明の方法は、特に、眼球運動の両眼転導欠損、目眩、頭痛、斜視、神経眼科の疾患、神経変性疾病、加齢、過敏及び失読症の疾患、並びに難治性手術後のリハビリテーション、低視力のリハビリテーション、両眼転導に関連する耳鳴り及び開散に適し、代替感覚神経刺激ツール(左、右)として精神病理学及び精神医学の分野の心理療法家のための異なる深度においても機能する。
【0026】
有利なことに、本発明の装置を眼球運動を記録する装置と結合することにより、リハビリを施されている/訓練されている患者により達成された進捗、特に眼球運動の軌跡における生理学的変化、感覚刺激に対する眼球運動の振幅及び精度を客観的に測定することが可能である。
【0027】
本発明の装置は、種々の訓練プロトコルの提示のためのユーザ冊子、及び本願の主たる発明者と種々の特定の病状を議論するためのサービスを有するだろう。
【0028】
本発明の更なる特徴及び利点は、単に説明のためであり限定的でない以下の説明から明らかになるだろう。以下の説明は、添付の図面を参照して読まれなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による両眼の動力にリハビリを施す及び/又は訓練する装置を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態による、患者の両眼の動力のためのリハビリテーション及び/又は訓練装置のスタンド(視覚刺激のための表示手段)の下面図を示す。
【図3】本発明の第2の実施形態による、患者の両眼の動力のためのリハビリテーション及び/又は訓練装置のスタンド(視覚刺激のための表示手段及び聴覚刺激を生成する手段)の下面図を示す。
【図4A】幾つかの動作の構成における本発明によるスタンドの下面図を示す。
【図4B】幾つかの動作の構成における本発明によるスタンドの下面図を示す。
【図4C】幾つかの動作の構成における本発明によるスタンドの下面図を示す。
【図5A】いわゆる「ギャップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図5B】いわゆる「ギャップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図5C】いわゆる「ギャップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図6】図5A、5B、5Cの状態による感覚刺激の連続する活性化期間を示す。
【図7A】単一ホップ型のいわゆる「オーバーラップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図7B】単一ホップ型のいわゆる「オーバーラップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図7C】単一ホップ型のいわゆる「オーバーラップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図8】図7A、7B、7Cの状態による感覚刺激の連続する活性化期間を示す。
【図9A】2ホップ型のいわゆる「ギャップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図9B】2ホップ型のいわゆる「ギャップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図9C】2ホップ型のいわゆる「ギャップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図9D】2ホップ型のいわゆる「ギャップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図10】図9A、9B、9C、9Dの状態による感覚刺激の連続する活性化期間を示す。
【図11A】2ホップ型のいわゆる「オーバーラップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図11B】2ホップ型のいわゆる「オーバーラップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図11C】2ホップ型のいわゆる「オーバーラップ」シーケンスによる感覚刺激を活性化する構成の幾つかの連続する状態による本発明のスタンドを示す。
【図12】図11A、11B、11Cの状態による感覚刺激の連続する活性化期間を示す。
【図13A】本発明による両眼の動力のリハビリテーション及び/又は訓練のための装置により伝達された訓練シーケンスに対する患者の応答の展開を示す。
【図13B】本発明による両眼の動力のリハビリテーション及び/又は訓練のための装置により伝達された訓練シーケンスに対する患者の応答の展開を示す。
【図13C】本発明による両眼の動力のリハビリテーション及び/又は訓練のための装置により伝達された訓練シーケンスに対する患者の応答の展開を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<装置の説明>
図1は、本発明に従った、患者の両眼の動力にリハビリを施す及び/又は訓練する装置を示す。
【0031】
装置1は、少なくとも1つの感覚刺激を発信する手段であるスタンド10、少なくとも1つの感覚刺激の少なくとも1つの発信を制御するよう設計された制御システム20を有する。制御システム20は、例えば、電子コンピュータ・インタフェース(示されない)を介してスタンド(特に感覚刺激発信手段)に接続されたPC型のコンピュータである。
【0032】
用語「感覚刺激」により意味されるのは、本発明の範囲内で、視覚刺激若しくは聴覚刺激又は視覚刺激と聴覚刺激との組合せのいずれかである。
【0033】
用語「少なくとも1つの感覚刺激の発信」により意味されるのは、視覚刺激の表示若しくは聴覚刺激の発信又は視覚刺激の表示と聴覚刺激の発信とを一緒に行うことである。
【0034】
スタンド10は、テーブル(示されない)の上に置かれるか又は土台40に取り付けることができる。スタンドの土台40は、高さ及び/又は傾きが調整可能である。
【0035】
図2は、本発明に従う第1の実施形態によるスタンド10の上面図を示す。
【0036】
スタンド10は、長手方向の対称軸AA’により定められる平面スタンドであり、スタンドに沿って配置された同種両眼転導弧(isovergence arc)201〜204に沿って規則的に配置された視覚刺激を表示するための手段101〜136を有する。スタンド10は、図2に水平型に示されるが、これに限定されない。
【0037】
同種両眼転導弧(isovergence arc)により意味されるのは、両目を所与の弧にある各感覚刺激に固定させるために必要な両眼のよせ運動(vergence)角が同一であるような弧である。この角度は、スタンド10の端における患者Pの位置に対して定められる。
【0038】
スタンド10は、望ましくは、2つより多くの同種両眼転導弧を有し、より望ましくは、4つの同種両眼転導弧201、202、203、204を有する。この場合、第1の同種両眼転導弧201は患者Pから20cmの距離d1にあるよう設計され、第2の同種両眼転導弧202は患者Pから40cmの距離d2にあるよう設計され、第3の同種両眼転導弧203は患者Pから70cmの距離d3にあるよう設計され、第4の同種両眼転導弧204は患者Pから150cmの距離d4にあるよう設計される。
【0039】
スタンド10は、三角形(示されない)又は台形であってもよい。
【0040】
台形スタンドの場合には、短辺は20cm乃至30cmの間の長さであり、望ましくは24cmであり、長辺は110cm乃至130cmの間の長さであり、望ましくは120cmである。さらに、患者Pは、スタンドの短辺に向かって位置付けられる。
【0041】
三角形スタンドの場合には、患者Pは、三角形の1つの頂点に位置付けられ、その頂点から延びる2つの辺は、50°乃至60°の間の角度、望ましくは54°にある。患者Pが位置付けられている頂点から延びる2つの辺は、同一の長さであり、160cm乃至190cmの間の長さを有し、通常は170cmである。
【0042】
軽量且つ折り畳めるスタンド10をもたらすために、スタンド10は扇形の形式に設計される。このようなスタンドは、折り目により分離された幾つかのサブストリップに分けられる。このスタンドは、折り目に平行なリブも有する。
【0043】
スタンドが扇形の形式である場合、視覚刺激のための表示手段は、扇のリブ上に配置される。したがって、理解されるように、この特定の形式では、スタンド10は嵩張らず容易に運搬できる。
【0044】
有利なことに、スタンドは、幾つかの要素の組立品の様式であり、各要素は同種両眼転導弧に対応する。要素は、入れ子にされてもよい。これは、使用されていないときに極めて小さい空間を占め容易に持ち運べるスタンドをもたらすことに貢献する。
【0045】
視覚刺激を表示する手段101〜136は、望ましくは発光ダイオード(LED)である。この場合、LEDは、目に無害でなければならない(例えば、赤色LED、波長620〜625nm、2Vで20mA、100〜200mcd)。
【0046】
勿論、視覚刺激を表示する手段は、可視帯で発光する光源を有するものとする。
【0047】
上述のように、表示手段は、同種両眼転導弧上に規則的に配置される。各同種両眼転導弧は、幾つかの視覚刺激表示手段、通常は少なくとも3つの視覚刺激表示手段、及び有利なことに9個の視覚刺激表示手段101〜109、110〜118、119〜127、128〜135を有する。
各表示手段間のピッチは、2°乃至8°の間の視角であり、通常は5°である。
【0048】
同種両眼転導弧は、スタンド10の長手方向の対称軸AA’に関して対称に配置され、凹面が患者に向けられるように(又はスタンドが三角形のときに患者が位置付けられる三角形の頂点に向けられるように、又はスタンドが台形のときに患者が位置付けられる短辺に向けられるように)配置される。
【0049】
視覚刺激表示手段に加えて、聴覚刺激を発信する手段も設けることができる。
【0050】
図3は、本発明に従う第2の実施形態によるスタンドの上面図を示す。
【0051】
図3のスタンドは、上述のスタンドに加えて、聴覚刺激を発信する手段301〜336を有する。
【0052】
このような聴覚刺激を発信する手段301〜336は、例えば、スピーカであり、視覚刺激の近くに位置付けられる。したがって、聴覚刺激の数は、視覚刺激の数に等しい(例えば、各同種両眼転導弧につき9個)。
【0053】
聴覚刺激の発信は、制御システム20により実行される。
【0054】
さらに、リハビリ/訓練装置は、患者Pの眼球運動、つまり理性的眼球運動、衝動性眼球運動又は両眼転導運動を独立して又は組み合わせて取得する手段30を有しうる。このような取得手段は、例えば電気眼球運動記録法又はビデオ眼球運動記録法を有する。
【0055】
このような手段30は、患者の両目の動きを記録するために用いられ、(以下に議論されるように)リハビリテーションを最適化するのに貢献する。
眼球運動記録装置は、知られている「EOG blue gain, Cambridge Instrument」型であってもよい。眼球運動記録装置は、知られている種類の任意の他の種類のビデオ眼球運動記録法システム(例えば、TobiiTM, ChronosTM, EyelinkTM, SMITM, UniversityofMunichHospitalのSee Eye Cam)を有してもよい。
【0056】
上述の装置は、家庭での使用を可能にするために小型化された形式で(3個の同種両眼転導弧のみを有し)提供されてもよい。
【0057】
<患者の両眼の動力のリハビリテーション及び/又は訓練への適用>
制御システム20により制御される上述の第1及び第2の実施形態で提示されたスタンド10は、スタンド10の端に位置付けられる患者Pに向けられる幾つかの視角運動訓練の実例(視覚及び場合によっては聴覚刺激)の生成を可能にする。これらの実例は、スタンドが三角形の場合には患者が位置付けられた三角形の頂点に向けられ、スタンドが台形の場合には患者が位置付けられた短辺に向けられる。
【0058】
訓練シーケンスは、制御システム20により実施されるアプリケーションにより生成される。このようなアプリケーションは、リハビリを施される/訓練されるべき患者の病状又は機能障害に依存した異なる種類の訓練のための幾つかのメニューを有する。
【0059】
これらのシーケンスは、方向(スタンドの長手方向の対称軸AA’を横断する方向)と奥行き(スタンドの長手方向の対称軸AA’により定められる方向)を組み合わせた運動、又は奥行きのみの運動若しくは方向のみの運動の訓練を可能にする。
【0060】
図4A、4B、4Cは、1又は複数の視覚刺激表示手段の制御、及び場合によっては対応する聴覚刺激の発信の結果を示す。
【0061】
これらの図では、1つの点が視覚刺激若しくは聴覚刺激の又は視覚刺激と対応する聴覚刺激との活性化に対応する。
【0062】
図4A、4B、4Cは、衝動性及び両眼転導運動の組み合わせを用いた、両眼転導運動のみによる及び衝動性眼球運動のみによる、リハビリテーション及び/又は訓練シーケンスが生成されたときのスタンドの状態を示す。
【0063】
シーケンスは、同種両眼転導弧の中心で「初期」刺激(視覚のみ又は視覚と聴覚)を活性化することで開始する。次に、数秒後、通常2.5秒後に、「目標」刺激が活性化される。
【0064】
代替として又は補完的に、視覚目標刺激及び聴覚刺激の活性化が望ましい場合に、シーケンス毎に、活性化を同時に又は遅延して提供することが可能である。遅延された活性化の場合には、50乃至150msの間の間隔が適用される(聴覚、次に視覚である)。
【0065】
「目標」刺激は、スタンドの長手方向の対称軸AA’に対して横にオフセットされ、「初期」刺激と異なる同種両眼転導弧上にある(例えば、刺激42の活性化の後に、横に向かう刺激41又は43を活性化する、又は刺激42の活性化の後に、横に向かう刺激44又は46を活性化する)。このような刺激は、患者に衝動性運動と両眼転導運動の組合せを引き起こす(図4Aを参照)。
【0066】
「目標」刺激は、別の同種両眼転導弧の中心にあってもよい(中央の刺激42の活性化の後に中央の刺激45を活性化する、又は刺激42の活性化の後に刺激47を活性化する)。このような刺激は、患者に両眼転導運動を引き起こす(図4Bを参照)。
【0067】
「目標」刺激は、「初期」刺激と同じ同種両眼転導弧上で、スタンドの長手方向の対称軸AA’に対して横にオフセットされる(つまり、中央の刺激47の活性化の後に、横に向かう刺激41又は43を活性化する、又は刺激45の活性化の後に、横に向かう刺激44又は46を活性化する)。このような刺激は、患者に衝動性眼球運動を引き起こす(図4Cを参照)。
【0068】
患者のリハビリテーションのために用いられるシーケンスを以下に説明する。
【0069】
図5A、5B、5C及び6は、単一ホップ型のいわゆる「ギャップ」シーケンス(間隔を有するシーケンス)を示す。
【0070】
図7A、7B、7C及び8は、単一ホップ型のいわゆる「オーバーラップ」シーケンス(重複を有するシーケンス)を示す。
【0071】
図9A、9B、9C及び10は、2ホップ型のいわゆる「ギャップ」シーケンスを示す。
【0072】
図11A、11B、11C及び12は、2ホップ型のいわゆる「オーバーラップ」シーケンスを示す。
【0073】
図5A、5B、5C及び6に示されたいわゆる「ギャップ」シーケンスは、患者に(スタンドの長手方向の対称軸AA’と平行な方向に沿って)両眼転導運動のみを引き起こすことができる。
【0074】
図6は、単一ホップ型の「ギャップ」シーケンス中の感覚刺激(視覚のみ、聴覚のみ、又は聴覚と視覚)の活性化期間を示す。
【0075】
同種両眼転導弧の中心に位置する「初期」刺激は、1000乃至2000msの間、望ましくは1500msの期間T1の間活性化され、次に期間Δtの間は刺激が活性化されない。100乃至400msの間、望ましくは200msの期間Δtの終了時、第1の期間T1の間に活性化された以外の同種両眼転導弧の中央の「目標」刺激は、1000乃至2000msの間、望ましくは1500msの期間T2の間活性化される。
【0076】
図7A、7B、7C及び8に示された「オーバーラップ」シーケンスは、患者に、「ギャップ」シーケンスの代わりに、重複する刺激により両眼転導運動のみを引き起こすことができる。
【0077】
同種両眼転導弧の中心に位置する「初期」刺激は、1000乃至2000msの間、望ましくは1500msの期間T1の間活性化され、次に期間Δtの間は、「初期」刺激は活性化されたままであり、同時に別の同種両眼転導弧上に位置する「目標」刺激が活性化される。100乃至400msの間、望ましくは200msの期間Δtの終了時、「目標」刺激のみが、1000乃至2000msの間、望ましくは1500msの期間T3の間活性化される。
【0078】
「ギャップ」シーケンス及び「オーバーラップ」シーケンスは、2ホップ型であってもよい。
【0079】
図9A、9B、9C及び9Dに示されたシーケンスは、2ホップ型の「ギャップ」シーケンスである。図10は、2ホップ型の「ギャップ」シーケンス中の感覚刺激(視覚のみ、聴覚のみ、又は聴覚と視覚)の活性化期間を示す。
【0080】
シーケンスの期間Δtに続き、目標刺激が短い期間T’(150乃至200msの間)の間だけ活性化され、次に、800乃至1800ms、望ましくは1300msの期間T’’の間、別の目標刺激の活性化が続く。したがって、第2の刺激の位置は、第1の刺激により引き起こされた初動の延長を必要とする。
【0081】
図11A、11B及び11Cに示されたシーケンスは、2ホップ型の「オーバーラップ」シーケンスである。図12は、2ホップ型の「オーバーラップ」シーケンス中の感覚刺激(視覚のみ、聴覚のみ、又は聴覚と視覚)の活性化期間を示す。
【0082】
この「オーバーラップ」シーケンスの構成では、第1の目標刺激が短い期間T2(150乃至200msの間)の間だけ活性化され、この期間Δtに続き、800乃至1800ms、望ましくは1300msの期間T’’の間、別の目標刺激の活性化が続く。2ホップ型の「ギャップ」シーケンスでは、第2の目標刺激の位置は、初動の延長を必要とする。
【0083】
2ホップの「ギャップ」又は「オーバーラップ」型の他の訓練プロトコルは、初動の短縮を必要とする(示されない)。
【0084】
2ホップ型のシーケンスに基づく訓練プロトコルは、新しい適応制御の中枢神経系による実施を引き起こすので(運動指令の生成が、最後の刺激に応答して行われ、初期の一時的な刺激に対して行われるのではない)、より劇的であり非常に効果的である。技術は、特に、神経眼科の病変(動眼神経麻痺)の場合及び低視力の患者、ARMDに有用でありうる。
【0085】
リハビリテーション中、眼球運動を取得する手段30のおかげで、リハビリテーション中の眼球運動をモニタすること及び必要に応じてシーケンスを調整することが可能である。特に、リハビリテーション中、リアルタイム分析により、各患者の訓練のために最適な視覚及び/又は音響刺激(時間的及び空間的)パラメータを決定することが可能である。例えば、上述の2ホップ型プロトコルでは、第1の刺激の提示期間の値は、前の生理学研究に基づき、デフォルト設定により概算及び選択される。これは、単一ホップ型の幾つかのシーケンスを実行することにより前もって患者の両眼転導の待ち時間を測定することにより、患者自身に調整することが可能である。このように、訓練プロトコルは、個人に合わせることができる。
【0086】
図13A、13B及び13Cは、上述の方法(ギャップ・シーケンスを有する単一ホップ型)に従ってリハビリを施された患者について得られた結果を示す。これは、特に1日の遅い時間に平衡障害、目眩及び頭痛のある若者である。試験は、Robert Debre HospitalのORLサービスにより実施され、正常な前庭機能を示した。これは、目眩に起因する問題を提起する。臨床的視能矯正試験は、この若者の両眼転導運動(輻輳と開散)を正しく生成する能力の異常について疑いを抱かせた。しかしながら、この試験は、定量化される運動には異常を認めなかった。
【0087】
この若者は、68cm離れた中央の目標をじっと眺め、次にこの目標は消失し、目標がランダムに近く(25cm)又は遠くに離れて(150cm)現れ、それぞれ輻輳及び開散運動を引き起こした。この若者は、3回の連続するテスト・ブロック(それぞれ約4分間)を実行され、ブロック間は約1分間の小休止により分けられた。
【0088】
図13A、13B及び13Cは、3つのブロックの各々について、68cm(5°の両眼転導角に対応する)から25cm(13.68°の両眼転導角に対応する)までの動きに対する眼球の輻輳の軌跡を示す。これらの記録は、「Chronos 2D/3D Eye TrackerTM」ビデオ眼球運動記録機械で実行された。
【0089】
動きの開始の遅延は、最初のブロックで(図13Aを参照)(平均時間200−250ms)、小さい動きの振幅(約5°、しかし必要な振幅は8.68°である)と共に観察された。2番目のブロックでは(図13Bを参照)、開始は加速され(平均時間180−200ms)、動きの振幅は増大している(必要な8.68°に達している)。最後に、2番目のブロックで示された条件は、3番目のブロック(図13Cを参照)でも維持されていることが分かる。
【0090】
したがって、我々の装置のパラメータと同様の時空間パラメータを有するこれらの動きの繰り返しは、開始において及び両眼転導運動の軌跡において客観的な向上を示している。この訓練プロトコル(単一ホップ型ギャップ・シーケンス)は、両眼転導が弱く、前庭病変、眼球病変又は神経病変を有しないこの若者にとっては十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感覚刺激により患者の両眼の動力にリハビリを施し及び/又は訓練する装置であって、
−長手方向の対称軸により定められる平面スタンドであって、該スタンドは、少なくとも1つの感覚刺激を発信する複数の手段を有し、該発信する手段は、視覚刺激を表示する手段と該視覚刺激を表示する手段に隣接する聴覚刺激を発信する手段とを有し、該発信する手段は前記スタンドに沿って位置する同種両眼転導弧に沿って規則的に配置される、平面スタンド、
−前記少なくとも1つの感覚刺激の発信を少なくとも制御するようにされた制御システム、
を有する装置。
【請求項2】
2つより多くの同種両眼転導弧を有し、望ましくは4つの同種両眼転導弧を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各同種両眼転導弧は、感覚刺激を生成する少なくとも3つの手段、望ましくは少なくとも1つの感覚刺激を生成する9個の手段を有する、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記スタンドは、台形又は三角形である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記スタンドは、折り畳み可能な扇である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記患者から20cmの距離にある第1の同種両眼転導弧、前記患者から40cmの距離にある第2の同種両眼転導弧、前記患者から70cmの距離にある第3の同種両眼転導弧、前記患者から150cmの距離にある第4の同種両眼転導弧、を有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記表示する手段は、可視帯で発光する光源、通常は発光ダイオードを有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記患者の眼球運動を取得する手段、を更に有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の両眼の動力のリハビリテーション装置を用いて両眼の動力にリハビリを施す方法であって、
少なくとも1つの感覚刺激の生成を制御するようにされたシーケンスを生成するステップ、
を有する方法。
【請求項10】
前記生成されたシーケンスは、異なる同種両眼転導弧に位置するが前記患者に対して同一の角度方向を有する少なくとも2つの視覚刺激を連続的に制御し、前記患者に両眼転導運動を生成させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生成されたシーケンスは、前記患者に対して異なる角度方向に位置する少なくとも2つの視覚刺激を連続的に制御し、前記患者に開散眼球運動を生成させる、請求項9又は10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【公表番号】特表2013−513447(P2013−513447A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543735(P2012−543735)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069830
【国際公開番号】WO2011/073288
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(510073202)セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス) (4)