患者固有外科的ガイダンスツールおよび使用方法
処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の際の術中使用のための、術前にデザインされたガイダンスツールが提示される。ガイダンスツールは、本体部分、患者の生体構造の対応する登録表面上にガイダンスツールを位置付けるための本体部分上に提供される係合表面を含む。ガイダンスツールは、患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で医療器具をガイドするための本体部分上に提供される少なくとも一つのガイドメカニズムをさらに含む。ずれが生じる場合、少なくとも一つのガイドメカニズムは、術中使用の間に必要であれば、一つまたは複数の術前に定義された軌道を変えるために調節可能である。ガイダンスツールをデザインするための術前プロセスも提示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる2007年5月14日に出願された米国特許仮出願第60/917,713号の恩典を主張する。
【0002】
分野
本発明は、外科的手法のための患者固有調整およびガイダンスツール、ならびにそのようなツールをデザインすることと関連するソフトウェアに関する。本発明は、患者固有調整およびガイダンスツールをデザインするためのソフトウェアを使用する術前プロセスにも関する。本発明は、患者固有調整およびガイダンスツールが外科的手法の間に使用される術中プロセスにも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
骨および関節外科的手法は、当技術分野において周知である。従来的な外科的技術を改良するために、イメージングテクノロジーおよびコンピューターが、外科医によって益々採用され、かつ実施されている。そのようなテクノロジーを開発することにおける一次的動因は、全体的な精度を維持しながら、または増加させながら、手法の全体的な侵襲性を軽減することである。
【0004】
コンピューター支援手術(CAS)は、現在、さまざまな外科的手法に対して非常に一般的である。外科医は、外科的手法前や外科的手法中のどちらでも、患者の生体構造を視覚的にマッピングするためのコンピューター追跡テクノロジーを使用することができる。また、CASは、特定の部位を標的とする際に、補正により高い精度を提供する。また、これらの技術は、人工インプラントの最適なサイズおよび位置を決定するために非常に有用である。
【0005】
CASの分野における刊行物は、術中手法にて高い正確性および/または精度を証明している;しかしながら、これらのシステムによって、手術がより高コストとなるだけでなく、手術時間の増加をも付加することとなった。従来のコンピューター支援システムに関連して必要となる技術装置は、さらなる外科医や手術室(OR)チームトレーニングを必要とする。加えて、すべての病院が、CAS技術へのアクセスを有するわけではない。さらに、外科医によって、精密な外科手術を行う技量には有意な変動が存在するため、CASの正確性の利点が、必ずしも患者の帰結に反映されるわけではない。
【0006】
外科的手法に対するテンプレートの使用も、当技術分野において公知である。テンプレートは、医療用イメージング技術を使用して準備され得、それらは手術室における手法の精度を高め得る。しかしながら、そのようなテンプレートの欠点は、提供される調整を、術中に検証または調節できないことである。
【0007】
先述の不利点を考慮して、CASの正確性の利点を外科的調整ツールと関連する精密さ、再現性、低コスト、および使いやすさの利点とを組み合わせる手法を実施することは、有益であると考えられる。
【発明の概要】
【0008】
概要
一つの局面では、骨または関節手術の際の術中使用のためのガイダンスツールが提供され、前記ガイダンスツールは、治療される患者の生体構造に固有であり、患者の生体構造に関連した一つもしくは複数の既定の軌跡で、医療器具をガイドするためのガイド部分と、患者の生体構造上に前記ガイダンスツールを位置付けるためのガイド部分に取り付けられた登録部分とを含み、前記ガイド部分が、必要であれば術中使用の際に、一つまたは複数の既定の軌跡を変更するために調節され得る。
【0009】
一つの態様において、ガイダンスツールは、患者の生体構造上の、ガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための検証部分をさらに含む。
【0010】
さらなる局面では、患者の生体構造の3-D表面モデルを作り出す段階、ピン配置に対する軌道を術前に決定するために患者の生体構造の3-D表面モデルを使用する段階、患者の生体構造に対して既定の軌道でピン配置をガイドするためのガイド部分と、患者の生体構造上にガイダンスツールを位置付けるための該ガイド部分に取り付けられる登録部分を提供する、患者の生体構造に対して登録するための仮想ガイダンスツールとをデザインする段階、患者の生体構造の3-D表面モデルを使用して患者生体構造上のガイダンスツールの適合、サイズ、および/またはデザインを術前に査定する段階、ならびに、正しい適合を達成するために必要に応じてガイダンスツールのデザインを調節する段階を含む、処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の間の術中使用のためのガイダンスツールをデザインするための術前プロセスが提供される。
【0011】
別の局面では、ピン配置に対する既定の軌道を確立するガイド部分を提供する、患者の生体構造に対してデザインされているガイダンスツールを生体構造上に直接的に置く段階、ガイダンスツールのガイド部分によって統制される既定の軌道を査定する段階、該ピンの最適な配置を達成するためにガイド部分への調節が必要かどうかを決定する段階、および必要であれば該ピンの最適な配置のための代わりの軌道を達成するために該ガイダンスツールのガイド部分を調節する段階を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールを使用して骨または関節手術を容易にする方法が提供される。
【0012】
さらなる局面では、ピン配置に対する既定の軌道を確立するガイド部分および患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための検証部分を有する、患者の生体構造に対してデザインされているガイダンスツールを術中に生体構造上に直接的に置く段階、および患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するために検証部分を使用する段階を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールの正しい配置を検証する方法が提供される。
【0013】
ある局面では、
本体部分と
患者の生体構造の対応する登録表面上にガイダンスツールを位置付けるための、該本体部分上に提供される係合表面と
術中使用の際に必要であれば、一つまたは複数の術前に定義された軌道を変えるために調節可能である、患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で少なくとも一つの医療器具をガイドするための、該本体部分上に提供される少なくとも一つのガイドメカニズム
とを含む、処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の間の術中使用のための術前にデザインされたガイダンスツールが提供される。
【0014】
いくつかの態様において、該本体部分は、ガイド部分および登録部分を含み、該少なくとも一つのガイドメカニズムおよび該係合表面の各々が、該ガイド部分および該登録部分の少なくとも一つの上に提供される。
【0015】
いくつかの態様において、該本体部分は、安定性部分をさらに含む。
【0016】
いくつかの態様において、該本体部分上の該係合表面は、患者の生体構造を考慮して不連続である。
【0017】
いくつかの態様において、該係合表面は、患者の生体構造の該登録表面上に見出された特徴的な生体構造的目印と相補的である形状を含む。
【0018】
いくつかの態様において、ガイドツールは、術前に選択された生体構造的目印を考慮して、患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための取り外し可能な検証ツールをさらに含む。
【0019】
いくつかの態様において、該検証ツールは、該ガイドメカニズムへの挿入に対して設定される。
【0020】
いくつかの態様において、該検証ツールは、該一つまたは複数の術前に定義された軌道に対するガイダンスツールのずれを決定するための少なくとも一つの目盛付きセクションを含む。
【0021】
いくつかの態様において、該検証ツールは、患者の生体構造に対するずれ値を提供するための二つの目盛付きセクションを含み、第一目盛付きセクションは、縦方向におけるずれ値を提供し、第二目盛付きセクションは、半径方向におけるずれ値を提供する。
【0022】
いくつかの態様において、該少なくとも一つの目盛付きセクションは、該ずれを測定するための目盛を提供されるスライド式ルーラーである。
【0023】
いくつかの態様において、ガイダンスツールは、あらかじめ選択された生体構造的目印との比較のために、術前に定義されたポジションにおいて該検証ツールを調整するための、該本体部分上に提供されるロッキングキーをさらに含む。
【0024】
いくつかの態様において、該ガイドメカニズムは、ガイドチャネルおよび患者の生体構造に対して該一つまたは複数の術前に定義された軌道で該医療器具をガイドするための該ガイドチャネル内の配置のための対応する機具スリーブを含む。
【0025】
いくつかの態様において、確立された軌道が調節を必要とする場合、該ガイドメカニズムは、該機具スリーブの代わりに使用され、器具の軌道の再調整を提供する再調整スリーブを含む。
【0026】
いくつかの態様において、該再調整スリーブは、スリーブの中心軸に対する並進オフセットを用いて設定される。
【0027】
いくつかの態様において、該再調整スリーブは、スリーブの中心軸に対する角度付きオフセットを用いて設定される。
【0028】
いくつかの態様において、該再調整スリーブは、スリーブの中心軸に対する組み合わせられた並進オフセットおよび角度付きオフセットを用いて設定される。
【0029】
いくつかの態様において、並進オフセットは、中心軸から約0〜約5 mmである。
【0030】
いくつかの態様において、並進オフセットは、約0.01 mm〜約1 mmの範囲のインクリメントで提供される。
【0031】
いくつかの態様において、角度付きオフセットは、中心軸に対して約0〜約5°である。
【0032】
いくつかの態様において、角度付きオフセットは、約0.05°〜約1°の範囲のインクリメントで提供される。
【0033】
別の局面では、
患者の生体構造の3-D表面モデルを作り出す段階;
骨または関節操作の間の少なくとも一つの医療器具の軌道を術前に決定するために患者の生体構造の3-D表面モデルを使用する段階;
患者の生体構造に対して術前に定義された軌道で該骨または関節操作の間に該少なくとも一つの医療器具をガイドするためのガイドメカニズムおよび患者の生体構造上に少なくとも一つのガイダンスツールのポジション登録を提供する係合表面を提供する、患者の生体構造に対して登録するための少なくとも一つのガイダンスツールをデザインする段階;および
患者の生体構造の3-D表面モデルを使用して患者生体構造上の少なくとも一つのガイダンスツールの適合、サイズ、およびデザインを術前に査定し、正しい適合を達成するために必要に応じて少なくとも一つのガイダンスツールのデザインを調節する段階
を含む、処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の際の術中使用のための少なくとも一つのガイダンスツールをデザインするための術前プロセスが提供される。
【0034】
いくつかの態様において、該患者の生体構造の3-D表面モデルは、CT、MRI、X線、および超音波の一つまたは複数によって作り出される。
【0035】
いくつかの態様において、該適合の査定は、該患者の生体構造に対する該係合表面上の特徴的目印の検査に基づく定量的性能指数決定に関与する。
【0036】
いくつかの態様において、術前プロセスは、少なくとも一つのガイダンスツールへの取り付けに対して設定され、患者の生体構造上の少なくとも一つのガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための取り外し可能な検証ツールと関連して使用される、少なくとも一つの特徴的な生体構造的目印の同定をさらに含む。
【0037】
いくつかの態様において、複数のガイダンスツールが、特定の手法のための術中使用に対してデザインされる。
【0038】
さらなる局面では、
患者の生体構造上のガイダンスツールのポジション登録を提供する係合表面および患者の生体構造に対して術前に定義された軌道で骨または関節操作の間に少なくとも一つの医療器具をガイドするためのガイドメカニズムを提供する、患者の生体構造に対してデザインされているガイダンスツールを生体構造上に直接的に置く段階;
患者の生体構造上のガイダンスツールのポジションを査定する段階;
ガイダンスツールのガイドメカニズムによって統制される術前に定義された軌道を査定する段階;
該少なくとも一つの医療器具の最適な軌道を達成するためにガイドメカニズムへの調節が必要かどうかを決定する段階;および
必要であれば、該少なくとも一つの医療器具に対する代わりの軌道を達成するために該ガイダンスツールのガイドメカニズムを調節する段階
を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールを使用して骨または関節手術を容易にする方法が提供される。
【0039】
いくつかの態様において、ガイダンスツールの該ガイドメカニズムに合わせられた検証ツールが、術前に定義された軌道を考慮してガイダンスツールのポジションおよび配向を査定するために使用される。
【0040】
いくつかの態様において、該検証ツールは、該一つまたは複数の術前に定義された軌道に対するガイダンスツールのずれを決定するための少なくとも一つの目盛付きセクションを含む。
【0041】
いくつかの態様において、該検証ツールは、患者の生体構造に対するずれ値を提供するための二つの目盛付きセクションを含み、目盛付きセクションは、縦方向におけるずれ値を提供し、第二目盛付きセクションは、半径方向におけるずれ値を提供する。
【0042】
いくつかの態様において、該少なくとも一つの目盛付きセクションは、該ずれを測定するための目盛を提供されるスライド式ルーラーである。
【0043】
いくつかの態様において、該ガイドメカニズムは、ガイドチャネルおよび機具スリーブを含み、該軌道を再調整するための補正は、補正された軌道を達成するために該機具スリーブの代わりに使用される再調整機具スリーブによって提供される。
【0044】
いくつかの態様において、該ガイダンスツールは、手によって手動で患者の生体構造上の適所に保持される。
【0045】
いくつかの態様において、該ガイダンスツールは、ピン、スクリュー、ストラップ、クランプ、ジップタイ、および弾性ファスナーからなる群より選択される適した留め具を使用して患者の生体構造上の適所に保持される。
【0046】
いくつかの態様において、該ガイダンスツールに対して回転可能である該検証ツールが、ガイドメカニズムによって統制される術前に定義された軌道を可視化し、かつ査定するためにさらに使用される。
【0047】
さらにさらなる局面では、
少なくとも一つの医療器具に対する術前に定義された軌道を確立するガイドメカニズムおよび患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための検証ツールを有する、患者の生体構造に対してデザインされているガイダンスツールを術中に生体構造上に直接的に置く段階;および
患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するために検証ツールを使用する段階
を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールにおいて軌道を再調整する方法が提供される。
【0048】
いくつかの態様において、ずれの検出に際して該検証ツールは、該検証ツール上に提供される少なくとも一つの目盛付きセクションを使用して、ずれを定量するために使用される。
【0049】
いくつかの態様において、ずれの検出に際して該検証ツールは、該検証ツール上に提供される少なくとも二つの目盛付きセクションを使用して、ずれを定量するために使用される。
【0050】
いくつかの態様において、参照チャート、表、または再調整計算機の少なくとも一つが、術前に定義された軌道に戻すために登録されたずれに基づいて正しい再調整軌道を決定するために使用される。
【0051】
いくつかの態様において、該参照チャートおよび/または表は、ガイダンスツールの形状寸法および患者の固有の生体構造を考慮して術前計画に基づいて術前に生成される。
【0052】
いくつかの態様において、該ガイドメカニズムは、計算された再調整軌道と調和するように調節される。
【0053】
さらに別の局面では、
少なくとも一つの医療器具に対する術前に定義された軌道を確立するガイドメカニズムおよび患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための検証ツールを有する、患者の生体構造に対してデザインされているガイダンスツールを術中に生体構造上に直接的に置く段階;および
患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するために検証ツールを使用する段階
を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールの正しい配置を検証する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
ここで、添付の図面を参照して、ほんの一例として、態様が記載される。
【0055】
【図1】ヒト股関節の骨格表示である。
【図2】ヒト大腿骨の骨格表示である。
【図3】近位大腿骨および寛骨臼の骨および/または軟組織を示す3-Dコンピューター等表面モデルである。
【図4】図4aおよび図4bは、中心ピンに対する掘削軌道の確立を示す。
【図5】近位大腿骨および寛骨臼の骨および/または軟組織を示す3-Dコンピューター等表面モデルであり、仮想大腿骨および寛骨臼部分が、仮想モデルに合わせられる。
【図6】近位大腿骨の骨および/または軟組織を示す3-Dコンピューター等表面モデルであり、ガイダンスツールが仮想モデルに合わせられる。
【図7】図7a〜7cは、適切なポジションにガイダンスツールを有する大腿骨の透視図であり、図7bおよび7cは、大腿骨上のガイダンスツールの正しいポジショニングを検証するために使用される検証ツールを示す。図7dは、大腿骨上のガイダンスツールの正しいポジショニングを検証するためにガイダンスツールとともに使用される検証ツールの態様の透視図である。
【図8】図8aおよび8bは、計画された軌道を検証することにおける視覚的補助として使用される検証ツールの態様の透視図である。
【図9】図9a〜9dは、近位大腿骨の骨および/または軟組織を示す3-Dコンピューター等表面モデルを示し、一連の説明図は、決定されたピン軌道、登録表面、およびこれらの機構を含むガイダンスツールを示す。
【図10】ガイダンスツールが適切なポジションにある術中に示される大腿骨の透視図である。
【図11】図11aおよび11bは、ガイダンスツールが適切なポジションにある大腿骨の透視図であり、ガイダンスツールは、大腿骨頭へ中心ピンをガイドする用意ができている。
【図12】図12aは、掘削軌道のずれを図示する。図12bおよび12cは、ガイダンスツールをともなう使用に対する代わりの掘削スリーブの透視図であり、ガイド穴が中心軸からオフセットされている。
【図13】ガイダンスツールが適切なポジションにある大腿骨の透視図であり、中心ピンが大腿骨頭へのネジ式挿入のためのドリルスリーブへ挿入されている。
【図14】ガイダンスツールが、モザイク形成術においてどのように同様に使用され得るかを示す図式表示である。
【図15】図15aおよび15bは、ガイダンスツールが、膝のモザイク形成術においてどのように使用され得るかの説明図を提供する。
【図16】ガイダンスツールが、橈骨遠位端骨切り術においてどのように同様に使用され得るかの説明図である。
【図17】ガイダンスツールが、人工膝関節置換手術においてどのように同様に使用され得るかの説明図である。
【図18】ガイダンスツールが、人工足関節置換手術においてどのように同様に使用され得るかの説明図である。
【図19】図19a〜19cは、人工足関節置換手術に対する代わりのガイダンスツールを示す。
【図20】患者固有ガイダンスツールが患者の特徴的な生体構造に基づいて作り出される術前計画ステージにおける全般的な段階を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
実例的な態様の説明
以下の議論は、患者固有ガイダンスツールならびに構築および実施に対する関連方法論/手法が主に股関節リサーフェシングのフレームワーク内で提示される態様を提示する。しかしながら、ガイダンスツールおよび関連方法論/手法が、骨および関節外科的適用の範囲で実施され得ることが理解される。例えば、以下の議論は、足首、膝、および肩手術、脊椎固定、頭蓋顎顔面手術、骨切り術、骨折処置および固定、脊柱側弯症、手首手術、ならびにモザイク形成術などであるがそれらに限定されないものにおける使用に対する適用を見出し得る。したがって、以下の説明は、実例的な態様の例示として意図されており、例証される特定の態様に説明を限定することを意図していない。
【0057】
ピン掘削ガイダンスのための術中コンピューター支援方法を組み入れる先行技術テクノロジーと異なり、以下で議論される態様は、手術の前に始まる個別の患者固有手法を提供する。方法は、概して、術前計画ステージで開始し、患者の固有の生体構造の仮想3次元(3-D)等表面モデルが作り出される。具体的には、患者の生体構造は、コンピューター断層撮影法(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、超音波、X線などの一つまたは複数による術前医療用イメージングを受ける。このデータを用いて、患者の生体構造の骨および/または軟組織を示す3-Dコンピューター等表面モデルが制作され、その際に、中心ピン、ガイドピン、またはその他の外科的道具に対する骨および/またはその他の組織の掘削、切削、拡掘、リサーフェシング、および/または修正のための位置および/または軌道が、術前に決定され得る。次いで、固有の患者生体構造および術前に決定された軌道が、術中に支援するための患者固有ガイダンスツールの製造へ組み込まれる。術前デザインフェーズは、好ましくは、適合の質の仮想査定を含み、術前に決定された軌道および患者の生体構造に対するガイダンスツールのポジション/配向を検証するための検証ツールのデザインおよび製造をさらに可能にする。
【0058】
上で述べられるように、患者固有ガイダンスツールならびに構築および実施に対する関連方法論/手法(概して、「患者固有手法」と呼ばれる)が、股関節リサーフェシングのフレームワーク内で本明細書において初めに議論される。股関節リサーフェシングは、より若くより活動的な患者にとって股関節全置換術(THR)に対する魅力的な代替として見られている比較的新しい手法である。股関節リサーフェシングにおいて、大腿骨頭は、THRにおいてなされるようには置換されず、代わりに大腿骨部分が、大腿骨頭上にインプラントされる。大腿骨部分は、大腿骨頭をカバーする関節軟骨を効果的に置換する金属半球を含み、大腿骨部分の軸受表面および股関節の関節接合表面の一つを形成する。大腿骨部分は、大腿骨頭/頸へ挿入される中心ピンも含み、大腿骨部分の正しいポジションを維持する。その後、半球が、骨盤骨の寛骨臼に位置付けられ、かつライニングを提供する寛骨臼部分と係合し、股関節のもう一方の関節接合表面を提供する。
【0059】
股関節リサーフェシング手法の早期の不具合の最も一般的な原因は、大腿骨頸骨折である。注意深い患者選択が頸骨折のリスクを軽減する可能性があるが、さらなる有意な寄与因子は、半球大腿骨部分の配向である。大腿骨部分の非最適配向は、大腿骨頸皮質の切痕化を引き起こす可能性があり、骨折のリスクを増加させる。また、内反の大腿骨部分の過剰な傾斜は、骨内でより大きな応力を引き起こす可能性があり、頸骨折のリスクを増大させる。部分のサイズも、早期臨床成功において重要な役割を果たす可能性がある。大腿骨部分の適当なサイズは、インピンジメントを防ぐのに十分なほど大きいが、寛骨臼の大きな骨切除を避けるのに十分なほど小さくあるべきである。
【0060】
ここで図1に関して、股関節の骨格表示が、概して符番10で示される。股関節20は、大腿骨24の丸型頭22および骨盤28のカップ様寛骨臼26からなる滑膜関節であり;この関節の主要な機能は、静的および動的姿勢の両方において体の重さを支持することである。
【0061】
大腿骨24は、図2においてより詳細に示される。示されるように、大腿骨24は、本体30および二つの端へ分けられる。上端32は、頭22、頸36、大転子38、および小転子40を含み;下端42は、主に、内側顆44および外側顆46を含む。二つの端の間は、フォームが概して円筒状である本体30(またはシャフト)である。
【0062】
ここで図3に関して、本明細書において記載される患者固有手法に従って実行される股関節リサーフェシングは、患者の固有の股関節生体構造の3-D等表面モデルが作り出される術前計画ステージで始まる。示されるように、3-D等表面モデル50は、患者の生体構造の骨および/または軟組織を高い精度で示す。近位大腿骨52および寛骨臼54の仮想表示が、図3において示される。
【0063】
仮想3-D等表面モデル50を使用して、中心ピンまたはガイドピンに対する掘削軌道が、術前に決定される。中心ピンがすべてのその後の手法に対する参照またはガイドを形成するので、精密な中心ピン軌道を確立し、かつ達成することが望ましい。軌道を決定するために、iGo Technologies Inc. (Kingston, Canada)によって開発されたVirtual Surgical System(VSS)ソフトウェアパッケージが使用される。しかしながら、その他の仮想外科的計画プログラムが適用可能であり、置き換えられてもよいことが理解される。
【0064】
図4aにおいて示されるように、VSSソフトウェアおよび近位大腿骨52の確立された3-D等表面モデル50を使用して、大腿骨52に対する頸シャフト軸56の生体構造的ポジション/配向が登録される。この調整情報を用いて、中心ピンに対する軌道58のポジションおよび配向が確立される。次いで、図4bおよび5において示されるように、関節接合または軸受表面62および中心ピンを含む大腿骨部分60が、仮想空間において大腿骨52に合わせられる。加えて、極めて有利なことに、調整情報と、確立された軌道58と、大腿骨部分の確立されたポジショニング/配向とを考慮することで、股関節は、大腿骨頭の拡掘の間の大腿骨頸皮質の切痕化などの可能性のある術中合併症に対しても査定され得る。これらの査定に基づいて、大腿骨部分のポジショニング/配向への変更が、より安全に、かつ正確に術前になされ得る。
【0065】
掘削軌道58が決定されると、次いで、大腿骨部分が大腿骨頸を侵害しないこと、および寛骨臼が過剰に切除されないことを確実にすることを目的として、大腿骨および寛骨臼部分の正確なサイジングを確立するために、3-D等表面モデル50が使用される。図5において示されるように、3-D等表面モデル50は、個々の患者固有生体構造に大腿骨部分60および寛骨臼部分64を合わせるための術前仮想空間としての役目を果たす。
【0066】
術前計画ステージを継続して、大腿骨部分の中心ピンに対する計画された掘削軌道を正確に達成するための患者固有ガイダンスツール66をデザインするために、3-D等表面モデルおよび確立された掘削軌道情報が使用される。患者固有3-D等表面モデル50に対する患者固有ガイダンスツール66の仮想表示が、図6において示される。概して、ガイダンスツールは、ドリルガイドとしての役目を果たす少なくとも一つのガイド部分、患者の生体構造に対する係合表面を提供するための少なくとも一つの登録部分、および任意で、患者の生体構造上に置かれる場合にツールに安定性を付加するための少なくとも一つの安定性部分を含む。
【0067】
本明細書において使用されるように、「係合表面」という用語は、患者の生体構造の選択された部分の3-D表面(登録表面)と相補的であり、かつ係合する3-D表面を指す。本明細書において記載されるようなガイダンスツールは、少なくとも一つの係合表面を含む。
【0068】
本明細書において使用されるように、「登録表面」という用語は、患者の生体構造の選択された部分の3-D表面を指す。
【0069】
図6において示される態様において、ガイダンスツール66は、患者の生体構造上に直接的に置かれる本体部分68を含む。ガイダンスツール66の本体部分68は、実施に応じて、多様な構造形をとり得るが、図6において示されるような本体部分68は、三つの部分で記載され得る。第一に、計画された中心ピン軌道58を確立するためのガイド部分70が提供される。ガイド部分70には、患者の生体構造上のガイダンスツールの正しく検証されたポジショニングに続く、取り外し可能な機器(例えば、ドリル)スリーブを後に受け入れるためのガイドチャネル74を含むガイドメカニズム72が提供される。第二に、患者の生体構造上の正確な登録に対する係合表面78(図7においてより明瞭に示される)を含む、大腿骨頸にわたる登録部分76が提供される。第三に、使用の間の更なる安定性のための安定性部分80が任意で提供される。ガイダンスツールの本体部分68、特にガイド部分70は、以下で議論されるように、検証ツールとの使用のための一つまたは複数のロッキングキー(rocking key)82を任意で含み得る。
【0070】
上で述べられるように、ガイダンスツール66は、実施に応じて、任意の数の構造形をとり得る。そういうものとして、代わりの構造形において、ガイダンスツール66は、上述の部分の組み合わせからなり得る。例えば、ガイド部分70は、ドリルガイドとしての役目を果たすように設定されるが、それには、患者の生体構造上の付加的な登録に対する係合表面78が提供されてもよい。さらに、登録部分76は、患者の生体構造上の登録に対する係合表面78を含むが、ドリルスリーブを受け入れるための一つまたは複数のガイドチャネル74を含んでもよい。理解されるように、患者固有ガイダンスツール66は、術中使用に対してデザインされ、それによってガイダンスツール66は、患者の生体構造に合わせられる。前に示されたように、本態様は、股関節リサーフェシングのフレームワーク内で提示されているが、構築および実施に対するガイダンスツールおよび関連方法論/手法は、足首、膝、および肩手術、脊椎固定、頭蓋顎顔面手術、骨切り術、骨折処置および固定、脊柱側弯症、手首手術、ならびにモザイク形成術などであるが、それらに限定されないさまざまな外科的手法に適切に適用され得る。加えて、任意の一つの外科的手法、特に、その間に複数の操作が必要であるものに対して、複数のガイダンスツールを作り出し、かつ使用することが好ましい場合がある。例えば、第一ガイダンスツールは、掘削軌道のセットを容易にし得、その後使用される第二ガイダンスツールは、成形を容易にし得る。複数のツールを使用することは、ツールのサイズを最小に保つことを支援し、不必要に複雑なデザインを避ける役目をも果たす。
【0071】
特定の状況では、ガイダンスツール66の登録部分70は、特にイメージングデータの一部が患者の生体構造の表面詳細をレンダリングするのに適していない場合に、不連続な係合表面78を含み得る。その他の事例において、患者の生体構造の登録表面84(図6を参照されたい)は、ガイダンスツール66の登録部分76への組み入れに適していない場合がある。そのような不連続な係合表面78を含むガイダンスツール66において、係合表面78の特定のセクションは、患者の生体構造への干渉を防ぐ様式で空洞にされる(voided)場合がある。例えば、不連続部分は、患者の生体構造を飛び越える(clear)ために十分に凹まされ得る。
【0072】
患者固有ガイダンスツール66をデザインすることにおいて、固有のカスタマイズされた製品の開発を確実にするために、多様な因子が考慮され得る。例えば、ガイダンスツールは、選ばれた、または好ましい外科的アプローチまたは技術を考慮してデザインされ得る。例えば、当業者が理解するように、股関節リサーフェシングにおいて、概して、大腿骨頭へのより良い血液供給を保持するためには、前方外側アプローチが好ましく、一方、後方アプローチは、関節包を保持することに貢献する。前方外側アプローチか後方アプローチかの選択は、ツールの最終的なデザインに対する全体的なインパクトを有すると考えられる。一つに選択された外科的アプローチに基づくガイダンスツールのカスタマイズは、複数の外科的アプローチを単一ツールへ設計する必要がないため、最終デザインを単純にするという利点を有する。そういうものとして、患者固有ガイダンスツールは、不必要に大きい必要はなく、それ故に外科的手法の侵襲性を軽減するような適当なサイズにされ得る。
【0073】
ガイダンスツール66は、患者の生体構造の固有の登録表面84、すなわち特徴的な生体構造的目印、骨構造、および/または軟組織(例えば、腱、靭帯など)を考慮してデザインされる。明確にするために、生体構造的目印、骨構造、および軟組織は、本明細書においてまとめて「特徴的目印」と呼ばれる。登録表面84の特徴的目印は、ガイダンスツール66の係合表面78をデザインするにおいて、術前計画ステージで決定された所望の掘削軌道58を実現するのに必要な固有のポジション/配向において係合表面を登録するために使用される。特定の特徴的目印が選択されたアプローチに応じて曝露され得ることから、選ばれた外科的アプローチ(例えば、前方外側対後方)も影響を与える。以下で議論されるように、特徴的目印は、生体構造に付される場合にガイダンスツール66のポジションを検証するために術中に使用される場合もある。特徴的目印(生体構造的目印、骨構造、軟組織など)の任意の組み合わせが、患者の生体構造上のツールの正しいポジショニングを登録かつ/または検証するために使用され得る。この情報は、ガイダンスツールのデザインの際に考慮される。
【0074】
患者の生体構造上のガイダンスツール66のポジション/配向を検証するために、かつ正しい術前に定義された軌道が実現されていることを検証するために、ガイダンスツール66は、図7b〜7dにおいて示されるように、取り外し可能な機械的検証ツール86を提供され得る。図7aにおいて示されるような患者の生体構造上へ置かれたガイダンスツール66を用いて、検証ツール86は、図7bにおいて示されるように、ガイド部分70のガイドチャネル74へ検証ツール86の登録ピン88を挿入することによって、ガイダンスツール66に取り外し可能なように取り付けられるように設定される。次いで、図7cにおいて示されるように、ガイダンスツールの適切なポジショニングが確立されているかどうかを決定するために、術前に同定された一つまたは複数の特徴的目印92の位置を特定するために、検証ツール86のポインター90が使用され得る。計画された中心ピン軌道58の縦軸に対する検証ツール86の正確な半径方向配置を確実にするため、および一つまたは複数の所定の配向に検証ツールをロックするために、ガイド部分70上に一つまたは複数のロッキングキー82が提供される。図7dにおいて示されるように、検証ツール86は、ガイド部分70のロッキングキー82と協働するためのステム96上の凹所94を提供され、それによって検証ツール86を固定ポジションにロックする。理解されるように、ポジション検証のために、単一の特徴的目印92が使用され得るが、手法は、複数の特徴的目印を使用してもよい。そういうものとして、ガイド部分70は、複数のロッキングキー82を用いて設定され得、各々が特定の目印に対応する。
【0075】
検証ツール86は、ガイダンスツール66が患者の生体構造上に正しく位置付けられているかどうか、およびガイダンスツールが術前に定義された軌道58を確立しているかどうかを示すために使用される。ずれが生じる場合、ユーザーは、検証ツール86上に提供される一つまたは複数の目盛付きセクションを使用して、ずれの程度を定量可能なように測ることができる。目盛付きセクションは、ガイダンスツールのポジションの測定を可能にするために、バーニアまたはリニアスケールなどのスケールを含み得る。例えば、目盛付きセクションは、スライド式ルーラーを含み得る。図7dにおいて示される態様において、計画された中心ピン軌道58の縦軸(x)に沿った測定は、第一スライド式ルーラー98によって提供され、半径方向測定(y)は、ポインター90上に提供される第二スライド式ルーラー100によって提供される。目盛102(例えば、mm)は、計画された適合ポジションからガイドがどれだけ、かつ、どの方向に間違って置かれているのかの数値表示を提供するために、各々のルーラー上に提供される。検証ツールは、ずれの性質を特徴付けるためのさらなるインジケーターを提供し得る。例えば、角度ずれ値、つまり生体構造的目印と検証ツールの術前に定義されたポジションとの間の角度を獲得することが有用である場合がある。そういうものとして、このタイプの測定を容易にするために、検証ツールおよび/またはガイダンスツール上の分度器様スケーリングが提供されると考えられる。
【0076】
ガイダンスツールのずれは、様々な理由により生じる可能性がある。例えば、それらは、術前計画ステージの間のエラーにより生じる可能性がある。ずれは、例えば登録表面上の骨棘の形成などの、患者における生理学的変化により生じる可能性もある。ガイダンスツールを再調整するためには、骨棘の除去が必要とされ得る。その他の事例において、ずれは、以下でより詳細に議論されるように、再調整スリーブの使用を必要とし得る。ガイダンスツールを再調整するための行為に必要な過程を決定することにおいての使用を支援するために、ガイダンスツール66のユーザーは、好ましくは、参照チャート、表、または再調整計算機を提供される。参照チャート、表、または再調整計算機は、術前に定義された軌道が実現され得るように、ユーザーが検証ツールから獲得されたずれの特徴に基づいて、適当な再調整軌道を決定することを可能にする。
【0077】
以下は、検証ツールの例示的な使用を実証する。選ばれた各々の生体構造的目印Iiに対して、検証ツールのポインターに対する標的位置を記載する値のペア(x,y)が術前に決定される。術中、ガイダンスツールポジションの検証の際、検証ツールがガイドチャネルへ挿入され、術前に決定された生体構造的目印Iiに対して値(x_m、y_m)が測定される。ガイダンスツールがすべての目印に対する術前定義ポジションに正しく置かれている場合、測定値(x_m、y_m)は、術前決定値(x,y)と同一であると考えられる。
【0078】
ずれが生じる場合、一つまたは複数の目印Iiに対して、術中測定値と術前決定標的値との間の寸法誤差が生じる。ずれの特徴、すなわち目印のずれの方向および量は、a)登録のポジション-エラー、b)補正可能性(再調整)の計画、を同定するために使用され得る。この情報に基づいて、ユーザーは、例えば骨棘を除去することによって、初期補正を試み得る。補正が可能ではない場合、参照チャート、表、または再調整計算機が提供され、ユーザーを適切な補正/再調整可能性へとナビゲートする。
【0079】
以下の例は、検証ツールから獲得された値を使用するそのような参照チャート、表、または再調整計算機の使用を実証する。この例示的な実施に対して、二つの生体構造的目印I1およびI2が選ばれた。これらの目印に対する術前定義(x,y)値は、表1に記載されている。
【0080】
(表1)術前に決定された目印座標
【0081】
検証ツールを用いて、ずれを同定するために、術前に決定された生体構造的目印が使用される。ずれの方向および量が決定される。
【0082】
実施例1:
両方の目印に対する例示的な術中測定(x_m、y_m)値のセットが、表2において提示される。
【0083】
(表2)術中に測定された目印座標
【0084】
この場合、術中に測定されたy_m値と術前に定義されたy値との間の寸法誤差は、前面の方向におけるずれを示す。
a=y_m-y
と定義される寸法誤差の量が、変位の量およびタイプを同定するために使用される。目印I1およびI2に関して、対応するa1およびa2値が以下のように計算される:
a1=y_m1-y1=23-21=2
a2=y_m1-y1=31-29=2。
この解析から、並進ずれが同定される。参照表(表3)を考慮して、示唆される再調整は、下位方向における2 mm並進オフセットの使用である。
【0085】
(表3)前面における補正に対する並進オフセット
表中、
a=y_m-y
x,y=術前定義値
x_m, y_m=術中測定値
である。
【0086】
実施例2:
両方の目印に対する例示的な術中測定(x_m、y_m)値の第二セットが、表4において提示される。
【0087】
(表4)術中に測定された目印座標
【0088】
この例において、目印I1とI2との間の変位の量の間の寸法誤差は、角度変位を同定する。目印I1およびI2に関して、対応するa1およびa2値は、以下のように計算される:
a1=y_m1-y1=21-21=0
a2=y_m2-y2=31-29=2
a2とa1との間の差(d)は、
d=a2- a1
として決定される。従って、差は、以下のように決定される:
d=a2- a1=2-0=2。
この角度変位は、ガイドの3°過伸展誤配置を示し、表5において提供される参照表において特定されるように、3°屈曲オフセットを有する再調整スリーブの使用を必要とする。
【0089】
(表5)前面における補正に対する角度オフセット
表中、
a=y_m-y、d= a2- a1
x,y=術前定義値
x_m, y_m=術中測定値
である。
【0090】
ガイダンスツール66の術前計画および検証ツール86をともなう使用に対する生体構造的目印92の選択に基づいて、これらのずれ値の相互参照が術前に定義された軌道58を達成するのに必要な再調整を提供するように、前述の参照チャートまたは表が術前に計算され得る。好ましい態様において、再調整決定は、例えば手術環境内でアクセス可能なコンピューター上に提供される再調整計算機によって提供される。
【0091】
再調整は、以下でより詳細に議論されるように、再調整スリーブによって提供される。ずれを補正するためのこのアプローチを用いて、ユーザーは、補正を概算する必要がなく、むしろ検証ツールでなされた固有の測定に基づいて方向付けられた計算された補正を提供される。
【0092】
第一スライド式ルーラー98は、概して、中心ピンの縦軸と平行であるように設定されるので、検証ツール86は、図8aおよび8bにおいて示されるように、選ばれた掘削軌道58および計画された軸調整を検証するための視覚照準補助として使用されもよい。ロッキングキー82から検証ツール86を離脱させ、かつガイダンスツール66の周りで検証ツール86を回転させることによって、ユーザーは、第一スライド式ルーラー98、またはルーラーの代わりに挿入されたピンもしくはガイドワイヤによって定義された面を参照して中心ピンの軌道58を可視化することができる。いくつかの態様において、検証ツール86は、同様にガイダンスツールによって定義された軌道と平行に位置付けられる別個のピンまたはガイドワイヤを受け入れるように設定され得る。軌道補正が必要であるように見える場合、以下でより詳細に記載されるように適した調節がなされ得る。
【0093】
検証ツール86は、計画された中心ピン軌道58と大腿骨頸の表面との間の半径方向距離を測定することによって、選択された大腿骨部分サイズが適当であることを確認するために術中に使用されてもよい。あるいは、加えて、このプロセスは、計画された軌道が実質的に大腿骨頸内で中心となることを確認するために使用されてもよい。
【0094】
上で提示されるような検証ツール86は、取り外し可能であり、したがって、それが再使用されることを可能にする。あるいは、検証ツール86は、ガイダンスツール66の恒久的に固定された不可欠な部分として組み入れられてもよい。その際、上で記載されるような検証ツールロッキングキーに対する必要性はないと考えられる。そのような場合、検証ツールは、上で議論されるようなスライド式ルーラーを使用するように機械加工され得、または、選ばれた特徴的目印を同定するための単一目的非調節式ポインターとして構築され得る。
【0095】
取り外し可能な検証ツール86の場合、ツールは、ガイダンスツールから外されると、さらなる適用を見出し得る。例えば、検証ツールは、特定の生体構造的目印と一致するように術前に決定されている二つ以上の参照ポイントを提供する、または適合を査定するためのゲージを提供するために使用されてもよい。検証ツールは、特にツールが調節可能である場合、例えば人工装具上の特定のポイントが術前に選択された生体構造的目印に対して術前に定義された位置に正しく位置付けられているという検証を可能にする所定のセッティングにセットされ得る。検証ツールは、測定デバイスまたはゲージが手術環境において有用であるさらなる適用を見出し得る。
【0096】
複数のガイダンスツールが特定の手法に対して使用される事例において、別個の検証ツールが、使用される各々のガイダンスツールに対して設定され得る。あるいは、検証ツールは、第一ガイダンスツールとともに使用され得、その後のガイダンスツールのポジショニングが、第一ガイダンスツールによって決定されるような共通参照ポイントに対して検証される。例えば、第一ガイダンスツールの配置に際して、骨または軟骨は、少なくとも一つの参照ポイントを使用してマークされ得る。各々のその後のガイダンスツールの配置の間に、適切な調整を確実にするために、各々のその後のガイダンスツールは、この少なくとも一つの参照ポイントに対して検証される。
【0097】
股関節リサーフェシングに対する患者固有手法の術前計画に関する全般的な段階は、図9a〜9dにおいて示される。図9aにおいて示されるように、患者の特徴的な生体構造的目印を組み入れる医療用イメージングに基づいて、第一に、患者の生体構造の仮想3-D等表面モデル50が作り出される。モデルの生体構造的配向/座標が決定され、シャフト/頸軸が登録され、かつ大腿骨部分のポジションおよび配向が決定される。図9aは、確立されたシャフト/頸軸に基づいて、中心ピンの計画された軌道58を図示する。図9bにおいて、患者の生体構造の選択された部分が、登録表面84を定義する特徴的目印ならびにツールポジショニング検証生体構造的目印を決定するために解析される。図9cにおいて示されるように、登録表面84の摘出表面イメージ104が作り出される。プロセスにおけるこのポイントで、中心ピンの軌道58および係合表面78の特徴が、各々別個に確立されている。図9dにおいて、中心ピンの軌道58および係合表面78の特徴が、単一の仮想ガイダンスツール66へ組み合わせられ、計画された軌道58が、ガイド部分70によって統制される。そういうものとして、術中に使用される場合、ツール66の係合表面78は、図10において示されるように、患者の生体構造上に位置付けられ、かつ登録され、したがって、中心ピンに対して計画された軌道58を提供する。
【0098】
術前計画ステージの際に患者固有ガイダンスツールをデザインする前述のタスクは、カスタムソフトウェアプログラムを使用してコンピューター支援される。ソフトウェアプログラムは、上で議論された様々な因子を考慮することによって、固有の、かつカスタマイズされたガイダンスツールをデザインするように設定される。特に、ソフトウェアプログラムは、ユーザーが患者の生体構造上の特徴的目印の位置を解析および同定し、かつガイダンスツールをそれが所定の配向において患者の生体構造上に位置的に登録するようにデザインすることを可能にするインターフェースを提供する。加えて、ソフトウェアプログラムは、ユーザーがガイダンスツールの登録に適していない構造を回避することを補助する。例えば、骨棘などの特定の軟骨および/または不安定骨構造は、実行可能な登録ポイントとしては却下される。
【0099】
前述のソフトウェアを使用する患者固有ガイダンスツールの作成は、概して、二段階プロセスである。第一段階において、ソフトウェアは、ユーザーが初期医療用イメージングにおいて決定されるような患者の生体構造に基づいてガイダンスツールのサイズ、形、ポジション、および配向を計画することを可能にする。第二段階において、患者の特有の生体構造に固有の様々な特徴を含むガイダンスツールの3-D表示が計算される。次いで、計算された3-D表示が、ステレオリソグラフィーフォーマット(例えば、標準テッセレーション言語(STL-フォーマット))などの3-Dモデルフォーマットで保存される。
【0100】
患者固有ガイダンスツール計画の第一段階は、Qt(Trolltech ASA, Oslo, Norway; www.trolltech.com)およびCoin3D(Systems in Motion AS, Oslo, Norway; www.coin3d.org)などの利用可能なソフトウェアパッケージを使用して遂行される。Qtは、高性能クロスプラットフォームGUI(グラフィックユーザーインターフェース)開発を可能にするが、Coin3Dは、クロスプラットフォームリアルタイム3D可視化ソフトウェアを開発するための高レベル3Dグラフィックツールキットである。しかしながら、当業者は、上で述べられたものの代わりにその他の適したソフトウェアプログラムを実施し得ることが理解される。
【0101】
患者固有ガイダンスツール計画の第一段階に適したソフトウェアは、好ましくは、以下の機能を提供する:a)患者の生体構造の3-D表面モデルの確立およびローディング;b)外科的計画の確立およびローディング;c)ロッキングキーの計画;およびd)患者固有ガイダンスツールのデザイン。
【0102】
以下のパラグラフは、股関節リサーフェシングに適用されるような患者固有ガイダンスツール計画の例を記載する。この手法のバリエーションは、当業者にとって明白であると考えられる。
【0103】
術前医療用イメージングに基づいて、患者の生体構造の3-D表面モデルが、ロードされ、かつユーザーに表示される。次に、中心ピンの決定された軌道が、ロードされ、かつ円筒として表示される。次いで、ガイダンスツールが、この場合三つの異なるパーツとしてデザインされる。第一に、登録部分が大腿骨頸に沿って配向され、患者の生体構造の登録表面と係合する係合表面を含む。第二に、安定性部分が外側大腿骨頸の周りに配向され、前方外側または後方外側頸の少なくとも一部を用いて登録する係合表面を含む。第三に、ガイド部分がドリルスリーブに対するガイドチャネルを提供する。
【0104】
患者固有ガイダンスツール計画の間、ユーザーは、登録部分のサイズ、ポジション、および配向を選択する。デザインプロセスを容易にするために、登録部分を示す長方形プリズムまたはキューブが表示され、適切なサイジングおよび適合を達成するのに必要であるとして、ユーザーが幅、高さ、および長さを修正することを可能にする。ユーザーは、中心ピン軸の周りで長方形プリズムまたはキューブのポジションおよび回転を変えることによって、最終ポジションをさらに定義し得る。
【0105】
安定性部分の計画に対して、登録部分の外側上に取り付けられる仮想リングセグメントが表示される。ユーザーは、適切なサイジングおよび適合を達成するために、このリングセグメントの半径、角度、幅、および高さを修正し得、そのポジションおよび配向を変化させ得る。
【0106】
ガイド部分の計画に対して、登録部分の内側上に取り付けられる仮想キューブが表示される。以前の二つの部分と同様に、ユーザーは、サイジングおよび適合を最適化するために、このキューブの幅、深さ、および高さを修正し得る。
【0107】
このステージで、計画は、検証ツールおよび関連ロッキングキーも考慮しなければならない。ユーザーが、検証ツールと整合する大腿骨モデル上の一つまたは複数の生体構造的目印を選択するのは、この計画中である。上で記載されるように、検証ツールの調整は、ロッキングキーによって統制される。そういうものとして、生体構造的目印の位置および検証ツールの構造形/サイズに基づいて、ガイド部分上のロッキングキーのポジショニングが確立される。
【0108】
ガイダンスツールの3-D表示が計算される第二段階において、ガイダンスツールの登録部分および安定性部分に対する係合表面が計算される。一つの例示的な方法論において、登録部分および安定性部分は、各々境界ボックスによって定義される6面のセットとして示される。患者の生体構造の登録表面を決定するために、骨の表面表示が、すべての6面と交差する。すべての結果として生じる三角形に対して、法線ベクトルが反転され、係合表面が三角形フォーマットで保存される。
【0109】
登録および安定性部分の最終計算に対して、両方の仮想表示(キューブおよびリングセグメント)が、容積物体(4面体のセット)として保存される。次いで、計算された係合表面に沿って各々の容積物体を交差させるためにアルゴリズムが使用される。この計算の間、係合表面に対する各々の4面体の距離が決定される。表面と交差する4面体は、表面の下および上のものに対応する4面体の二つのセットに分けられる。最終的に、表面の上のすべての4面体が、一つの容積物体へ組み合わせられ、この物体が、表面モデルへ変換される。結果は、ガイダンスツールの登録および安定性部分の表面表示であり、患者の固有の生体構造の登録表面と相補的な係合表面を含む。
【0110】
ガイド部分、特にガイドチャネルの決定に対して、決定されたピン軌道に沿って配向する円筒の表面がモデル化される。ガイド部分の外殻およびロッキングキーは、長方形プリズムまたはキューブとしてモデル化される。ガイダンスツールは、これらのモデルを組み合わせることによって決定される。
【0111】
ガイダンスツールへ統合される係合表面は、患者の登録表面の特徴的目印へのツールの術中登録を可能にする。生体構造的登録表面は、生体構造へのツールの精密な適合を可能にするのに十分な機構を提供しなければならない。係合表面の位置およびサイズは、ガイダンスツールの形、サイズ、ポジション、および配向によって定義される。生体構造へのガイダンスツールの適合の間の術中問題を避けるために、係合表面は、ガイダンスツールの術前計画の間にそれらの適合の質に対して評価され得る。
【0112】
適合の質は、登録表面および/または係合表面の登録機構(すなわち、特徴的目印)を検査することによって査定され得る。コンピューター支援手術の間の登録の分野における様々な刊行物が、登録機構を評価するための方法を提供する(Ma, B., Ellis, R. E.「A point selection algorithm based on spatial-stiffness analysis of rigid registration」, Computer-Aided Surgery, 2005 Jul; 10(4): 209-223; Simon, DA.「Fast and accurate shape-based registration」, PhD thesis, Carnegie Mellon University, Pittsburgh, Pennsylvania, Dec. 1996)。明確にするために、かつほんの一例として、係合表面の適合の質は、以下の方式で決定され得る。係合表面の仮想コピーが作り出される。これらのコピーの各々に、異なるエラー転換が適用され、表面に基づく登録アルゴリズムが、この修正係合表面と生体構造の対応する登録表面との間の転換を決定するために使用される(Besl, P., McKay, N.「A method for registration of 3-D shapes.」, IEEE Trans. Pattern Anal. 1992, 14(2): 239-256)。計算された転換が修正係合表面コピーに適用された後、この係合表面と元の係合表面との間の距離が計算され、エラー値として保存される。選ばれた係合表面は、係合表面のすべてのコピーに対するエラー値が所定の閾値以下の場合、十分な登録機構を有する。エラー値は、患者の生体構造に対するガイダンスツールの適合の質を示す性能指数を決定するために使用される。
【0113】
性能指数は、手法の侵襲性のレベルを代表するものでもあり得る。例えば、性能指数は、ツール適合および侵襲性のレベルを含む因子の最適化を示し得る。例えば、ツールサイズを軽減することは、より低侵襲性の手法をもたらすが、より小さなツールサイズは、適合の質を低下させる可能性もある。理解されるように、性能指数は、ソフトウェアによって提供されるが、サイズ、配向などの操作は、デザイナーがツールをデザインすることにおいて達成しようとしているものに基づくデザイナーの選択である。
【0114】
任意の骨および関節外科的手法に適用され得る患者固有手法および結果として得られるガイダンスツールの利点は、ユーザーが、例えばユーザー能力および/または患者のニーズに最も良く合う望ましい外科的アプローチ(例えば、前方外側アプローチ対後方アプローチ)を選択することによって、ツールをカスタマイズし得ることである。
【0115】
デザインが完了すると、コンピューターモデルデータは、その後のガイダンスツール製造に適したステレオリソグラフィーフォーマット(例えば、STL)で保存される。あるいは当業者にとって明白であるように、その他のフォーマットが使用されてもよい。
【0116】
本態様において、個々の患者固有ガイダンスツールのその後の製造は、Stratasys, Inc(Eden Prairie, Minnesota)によって提供されるDimension SST 3-Dプリンターなどの高速プロトタイピングマシンを実施する。しかしながら、個々の患者固有ガイダンスツールを製造するために、その他の適した高速プロトタイピングマシンが使用されてもよいことが理解される。そのようなプロセスにおいて、高速プロトタイピングは、患者固有ガイダンスツールのデザインをとり、それを仮想横断面へ転換し、物理的空間における各々の横断面の作成が続く。プロセスは、物理的モデルが仕上がるまで、様々な横断面を介して継続する。様々な金属および非金属(例えば、ポリマー)材料が、ガイダンスツールを作るための高速プロトタイピング方法において使用され得るが、本態様は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)から加工される。製造に続いて、ガイダンスツールは、使用の用意ができ、概して、公知の方法論を使用する滅菌およびパッケージングを含む。
【0117】
別の態様において、患者固有ガイダンスツールは、コンピューター支援ツール生成を使用してリアルタイムで術中に製造され得る。
【0118】
当技術分野において公知の従来的な外科的手法に続く股関節リサーフェシングの際の使用において、大腿骨が寛骨臼から脱臼させられる。次いで、患者固有ガイダンスツール66が、患者の生体構造の対応する登録表面に対するガイダンスツールの係合表面のポジショニングおよび適合を考慮して、図11aにおいて示されるように患者の生体構造の望ましい部分上へ置かれる。ガイダンスツール66は、適した留め具(例えば、ピン、スクリューなど)を使用して大腿骨に留められ得るが、あるいはガイダンスツールは、手によって手動で、または適したストラップ、クランプ、ジップタイ、もしくは弾性ファスナー(例えば、弾性バンド)を用いて適所に保持され得る。骨に登録されると、ガイダンスツールの正しいポジショニングを検証するために、検証ツール86が使用される。図11bにおいて示されるように、正しいポジショニングが検証されると、ドリルスリーブ106がガイドチャネル74へ挿入される。スリーブ106は、計画された中心ピン軌道58での中心ピン110の掘削および/または挿入に対するガイド穴108を提供する。スリーブ106は、好ましくは、外科的グレードステンレススチールおよびチタンを含むがそれらに限定されない外科的グレード金属である。
【0119】
上で議論されるように、術中使用中に、検証ツールによって同定されたガイダンスツールのずれ、または手術室においてなされた決断により、中心ピンの軌道58を変える必要が生じる場合がある。術前に定義された軌道58からの2°の例示的なずれ112が、図12aにおいて示される。中心ピンの軌道の再調整または変更が必要であれば、公知の量だけオフセットされている、または異なる配向にある穴を開けるために、図12bおよび12cにおいて示されるような再調整スリーブが使用され得る。例えば、図12bにおいて示される再調整スリーブ114は、スリーブの中心軸116から並進方向にオフセットされたガイド穴108を有するが、図12cにおいて示される再調整スリーブ114は、角度付きガイド穴108を有する。ガイド穴108並進オフセットは、中心軸116から概して0〜5 mmであり得る。例えば、オフセットは、1 mmインクリメントで提供される(例えば、1 mm、2 mm、3 mm、4 mm、5 mm)。あるいは、オフセットは、0.5 mmインクリメントで提供される(例えば、0.5 mm、1.0 mm、1.5 mm、2.0 mm、2.5 mm、3.0 mm、3.5 mm、4.0 mm、4.5 mm、5.0 mm)。0.1 mmインクリメントまたは0.05 mmインクリメントなどのより小さなインクリメントを用いるさらにさらなる代替が提供されてもよい。中心軸116からの角度付きオフセットは、概して0〜5°であり得る、例えば、角度付きオフセットは、1°インクリメントで提供される(例えば、1°、2°、3°、4°、5°)。あるいは、角度付きオフセットは、0.5°インクリメントで提供される(例えば、0.5°、1.0°、1.5°、2.0°、2.5°、3.0°、3.5°、4.0°、4.5°、5.0°)。0.1°インクリメントまたは0.05°インクリメントなどのより小さなインクリメントを用いるさらなる代替が提供されてもよい。組み合わせられた並進オフセットおよび角度付きオフセットをともなう再調整スリーブ114が提供されてもよく、前述の寸法特徴が適用可能であると考えられる。さらに、ドリルスリーブ106(および再調整スリーブ114)は、ピン配置の深さを精密に制御するためのストップまたはその他の適したメカニズムを用いて設定され得る。ドリルスリーブ106(および再調整スリーブ114)が固定ポジションにあることを確実にするために、スリーブは、ガイダンスツールに対するインデックスを付けられ得る。例えば、ドリルスリーブ106(および再調整スリーブ114)は、ガイダンスツール66上の受け入れチャネル(示されない)と協働するキー表面118を提供され得る。キー表面118は、望ましい方向(すなわち、内反/外反、前方/後方など)に補正が行われることを確実にするために、大腿骨の術前に定義された生体構造的方向におけるドリルスリーブ106、特に再調整スリーブ114の配置を確実にする。
【0120】
上述の補正を容易にするために、検証ツールを参照して、上で議論されるように、参照チャート、表、または再調整計算機が提供され得、術前に定義された軌道を達成するために、適切な再調整スリーブを選ぶことを支援する。正しい再調整スリーブの選択は、検証ツールのスライド式ルーラーを使用して決定されるような定量されたずれに基づく。ずれ値は、参照チャートもしくは表と相互参照され、または再調整計算機へ入力され、適当な再調整スリーブ114が同定される。
【0121】
上記の使用をさらに容易にするために、手術室スタッフに患者の生体構造のモデルを提供することは有利であり得る。例えば、モデルは、紙プリントアウト、手術室におけるモニター上のスクリーンイメージ、または、好ましくは物理的モデルとして提供され得る。特定の状況において、術中使用中、ユーザーは、ガイダンスツールが患者の生体構造に正しく合っていないことを見出し得る。例えば、初期医療用イメージングと術中手法との間で時間が経過する場合、患者の生体構造はガイダンスツールの全体的な適合に影響を及ぼす骨棘を発生する可能性がある。患者の生体構造のモデル、特に物理的モデルを提供することは、必要な場合、ガイダンスツールのずれの事象におけるトラブルシューティングプロセスを容易にし得る。
【0122】
ガイダンスツール66の調節可能性をさらに高めるために、ガイド部分70は、登録部分76に対して調節可能であり得る。例えば、いくつかの態様において、ガイド部分70は、着脱可能であり得、または登録部分から緩められるように設定され得、それによってガイド部分70は、わずかに再調整されたポジションでその後再び締められ得る。再調整される性能は、例えば、適した留め具が使用される長穴または特大穴によって提供され得る。
【0123】
ガイダンスツール66を適切なポジション/配向にセットし、正しいドリルスリーブ106または再調整スリーブ114を適所にセットすることで、中心ピン110は、概して図13において示されるように、当技術分野において公知の掘削方法論を使用して大腿骨頭22へ掘り込まれ得る。
【0124】
ピン110が大腿骨24に置かれると、ドリルスリーブ106(または再調整スリーブ114)は、ピンを越えて取り外され、ツール66は骨から取り外される。次いで、インプラント製造業者によって提供される説明書および/またはトレーニングに従って股関節リサーフェシング手法が続く。
【0125】
以前に示されるように、議論の目的に対して、上で記載される患者固有手法および結果としてもたらされるガイダンスツールは、股関節リサーフェシングを考慮して例示される。当業者は、上述の患者固有手法および結果としてもたらされるガイダンスツールが、例えば膝、足首、および肩手術、脊椎固定、頭蓋顎顔面手術、骨切り術、骨折処置および固定、脊柱側弯症、ならびに手首手術などの、その他の外科的手法における適用を見出し得ることを理解する。
【0126】
図14は、術前手法/方法論および結果としてもたらされるガイダンスツールが、外傷または関節炎によってダメージを受けている関節の高負荷表面の関節軟骨を置換するようにデザインされた治療のフォームであるモザイク形成術において使用される態様を示す。例えば膝などの体重負荷エリアにおけるダメージを受けた関節軟骨は、患者にとって痛いだけでなく、可動域(ROM)を限定し、それ故に患者の生活の質に対して大きな影響を有する。関節軟骨の自然治癒潜在力はかなり限定されるので、外科的処置は、しばしば、唯一の処置オプションである。
【0127】
一つの処置技術は、ドナー領域からダメージを受けた領域への複数の自家骨軟骨プラグの移植である。この手法の長期成功のために、移植プラグは、関節表面の曲率を再構築するべきである。そういうものとして、プラグのサイズ、高さ、ポジション、配向、および回転、ならびにプラグの数およびパターンを含む多くのパラメータが考慮されなければならない。
【0128】
図14において概して示されるように、モザイク形成術は、従来より二つのガイダンスツール200、202を伴い、第一ツール200は、軟骨材料を摘出するためにドナー部位204上で使用され、第二ツール202は、摘出された軟骨の正しいポジショニングを確実にするために受け入れ(ダメージを受けた)部位206上で使用される。
【0129】
膝のモザイク形成術の以下の例示的な態様において、股関節リサーフェシングに対して上で記載されるように、患者は、膝の骨生体構造、軟骨厚さ、および軟骨欠陥のアウトラインを再構築するために、CT、MRI、超音波、X線などの一つまたは複数によって術前医療用イメージングを受ける。図15aにおいて示されるように、骨モデル210および軟骨212の透明層を含む膝の仮想3-D等表面モデル208が算出される。次に、ダメージを受けた軟骨領域214が、軟骨欠陥を修正することによって仮想的に復元される。次いで、前述のソフトウェアを使用して、モザイク形成術の術前計画に対するテンプレートとして修正モデルが使用される。各々のプラグに対して、ユーザーは、ドナーおよび受け入れ(ダメージを受けた)エリアにおける半径、高さ、ポジション、および配向を修正し得る。グラフィックユーザーインターフェースは、ユーザーが最終仮想ガイダンスツールの適合の質を計画し、かつ評価することを可能にする。
【0130】
最終計画を術中使用へ移すために、高速プロトタイプテクノロジーを使用して、患者固有滅菌可能プラスチックガイダンスツール216が形成される。図15bにおいて示されるように、ガイダンスツール216は、膝の関節登録表面220と相補的な係合表面218を含み、膝上でのツール216の正しいポジショニングを可能にし、それによって術中手術野への術前計画の精密な転換を確実にする。各々のプラグに対して、二つの機器ガイドが、ガイダンスツールに組み入れられ得る。例えば、術前計画に関してプラグ切削機器を配向させるために、ガイダンスツールのドナー側上に、ドナーガイド222が位置付けられる。プラグの計画された高さを確実にするために、ガイドの上縁との調整に対して切削機器上の所定の高さマークを使用することが好ましい。同様の方式で、ガイダンスツール216の受け入れ(ダメージを受けた)側上のガイド224は、ダメージを受けたエリアへのプラグの準備および移植に対するツールのナビゲーションを容易にするために提供される。両方のガイド222、224は、好ましくは、プラグの回転が関節表面の計画された曲率に従うことを確実にするために、機器調整マークを用いてデザインされる。
【0131】
いくつかの状況において、ダメージを受けた生体構造は、かなり大きなエリアにわたる場合がある。例えば、膝の内側部位上に2×3cmの軟骨欠陥を有することは珍しくない。そのような欠陥を修復するために、概して、複数の自家骨軟骨プラグが必要とされ、その直径は、4 mm〜8 mmの範囲である。
【0132】
そのような手法に対して、術中ナビゲーションを容易にするために、三つの別個に形成された患者固有ガイダンスツールを使用することが有利である場合がある。ガイダンスツールの各々は、2〜4プラグのハーベスティング(harvesting)および挿入をガイドする役目を果たす。以前に述べられたように、複数のガイダンスツールが使用される事例において、各々のガイダンスツールに対して別個の検証ツールが使用され得る。あるいは、第一ガイダンスツールが、検証ツールをともなう使用に対して設定され得、その後のガイダンスツールのポジショニングは、ガイダンスツールの各々に共通の参照ポイントのセットを使用して検証される。例えば、図15bにおいて示されるように、ガイダンスツール216は、第一ガイダンスツールの配置に際して軟骨のマーキングを可能にする二つの参照ポイント226を提供する。その後の段階の間、これらの参照マーク226への第二ガイダンスツール(示されない)の調整は、第二ガイダンスツールが第一ガイダンスツールに調整されることを確実にする;第二ガイダンスツールのポジショニングが検証される。各々のツールが生体構造上に置かれる時、参照ポイントを用いる調整が、ガイダンスツールの正しいポジショニングを確実にする。ガイダンスツールがナビゲーションを容易にすることで、手法そのものが、例えばCOR軟骨修復システム(Depuy Mitek Inc., a Johnson and Johnson company, Warsaw, USA)などの従来的な軟骨修復システムを使用して実施され得る。
【0133】
術前計画およびガイダンスツールは、特に複数の自家骨軟骨プラグに関する事例において、時間効率が良く、正確で費用効果的であり、使用するのが簡単な関節軟骨再構築方法を提供する。
【0134】
図16a〜16dは、術前手法/方法論および結果としてもたらされるガイダンスツールが、橈骨遠位端骨切り術(distal radius osteotomy)において使用される態様を提供する。骨切り術は、関節のバイオメカニクスを変化させるために、特に関節を介する力伝達を変化させるために、骨を再調整するための外科的手法である。橈骨遠位端骨切り術に対して、橈骨302の3-D等表面モデル300が(CT-データおよび/またはその他の適した医療用イメージングから)作り出され、骨切り術が仮想的に行われる(図16a)。プレート304のモデルが、仮想的に補正された橈骨302の近位および遠位端上に仮想的に置かれる。プレートのスクリューポジションおよび配向が保存され、元の(骨折していない)橈骨上へ転換される。上で記載される手法/方法論に従って患者固有ガイダンスツール306が作り出され(図16bを参照されたい)、遠位および近位スクリュー穴のガイド掘削に対するガイドメカニズム308を提供する。手術の間、図16cにおいて示されるように、橈骨の遠位端が外科的に曝露され、ガイダンスツール306が位置付けられる。検証ツールを使用する検証に続いて、ガイダンスツール306へ挿入されるドリルスリーブ(または再調整スリーブ)を使用して、ユーザーは、図16dにおいて示される術前に計画された軌道310で橈骨302へスクリュー穴を開ける。手法は、Forstnerドリルビットまたはその他の適したツールを使用して遠位表面の成形を容易にするために第二ガイダンスツール(示されない)をさらに使用してもよい。ガイダンスツール306は、骨切り術の成形段階におけるフライス加工のポジション/位置および深さの両方を容易にするように設定され得る。成形が完了した後、ガイダンスツール306が取り外され、外科医が従来的な方式で骨切り術を行う。プレート、例えばSynthes 3.5 mmロッキング圧縮プレート304は、術前に計画されたスクリュー穴を使用して固定される。
【0135】
図17aおよび17bは、術前手法/方法論および結果としてもたらされるガイダンスツールが、人工膝関節置換手術において使用される、さらなる態様を提供する。人工膝関節置換手術において、大腿骨402および脛骨404の3-D等表面モデル400が作り出され、大腿骨遠位部および脛骨切除が計画される。二つのガイダンスピン408のガイド配置に対するガイドメカニズムを含む、大腿骨402に対する患者固有ガイダンスツール406が作り出される(図17a)。手術の間、ガイダンスツール406が、患者の生体構造上に置かれ、検証ツールを使用して位置的に検証され、次いでピン408が、大腿骨402へ置かれる。ガイダンスツール406を取り外した後、切除面の術前計画に対する切除ブロックをガイドするために、ピン408が使用される。ピン412のガイド配置に対するガイドメカニズムを含む同様のガイダンスツール410が、脛骨404に対して作り出される(図17b)。手術の間、これらのガイダンスピン412は、計画された脛骨切除面に対する切除ブロックの配置を可能にする。必要に応じて、ガイドメカニズムは、検証ツールを使用して示されるように必要とされる任意の補正に従って調節される。
【0136】
図18は、術前手法/方法論および結果としてもたらされるガイダンスツールが人工足関節置換手術において使用される、さらなる態様を提供する。人工足関節置換手術は、過去数年に、末期足関節炎の処置において認められた方法になった。人工足関節置換手術の長期帰結を解析する研究により、初期インプラント調整が術中および術後合併症を避けることにおいて、非常に重要な因子であることが示された。人工足関節置換手術に関する文献により、この手法の採用するにあたって習得が困難であることを示した。特に、外科的曝露が距骨の小さな部分しか可視化できないので、距骨部分の正しい調整を獲得することが問題である。その他の問題の中でも、この限定された視野は、初期外科的治具の正しいポジションを術中に決定することを困難にする。下肢関節形成術における適切な部分調整に対する必要性を強調することが調査の主要部分であり、不適切な調整および不安定性が、人工足関節置換手術における早期(すなわち、5年未満)の不具合の2大原因であることを示している。
【0137】
股関節リサーフェシングに対して上で記載される術前手法/方法論に従って、患者は、第一に術前計画を受け、CTスキャン(またはその他の適した医療用イメージング)が、生体構造患部上で行われる。図18aにおいて示されるように、医療用イメージングから3-D仮想モデル500が制作される。
【0138】
術前計画の際、図18bにおいて示されるように、人工装具部分502a、502bのポジション、サイズ、および配向が決定される。次いで、仮想骨モデル500がロードされ、生体構造的軸が定義され、仮想人工装具部分502a、502bが脛骨および距骨仮想モデルに重ね合わされる。このステージで、ユーザーは、各々の仮想人工装具モデルのポジションおよび配向を修正することができる。次いで、最終部分の特徴が保存される。
【0139】
術前計画に基づいて、次いで、高速プロトタイプ技術を使用して、選ばれた外科的アプローチを介してアクセス可能である脛骨遠位部および距骨508と相補的な係合表面506を提供するガイダンスツール504が作り出され得る。
【0140】
術中に、人工足関節置換手術は、従来的な外科的アプローチで始まる。脛骨遠位部および距骨508が曝露された後、図18cにおいて示されるように、ガイダンスツール506が、患者の生体構造の対応する登録表面に合わせられ、ドリルスリーブが挿入され、または必要な場合、再調整スリーブで調節され、かつガイドピン510が、適切なポジションへ掘り込まれる。ガイダンスツールが取り外されると、図18dにおいて示されるように、従来的な平面脛骨切除ブロック512が、脛骨508に合わせられ得る。次いで、切除が行われ得る。切削ガイドのポジションは、骨を切る前にX線透視で確認され得る。
【0141】
主に掘削およびピン配置のフレームワーク内で例示されるが、上で記載される術前プロセスは、その他の医療器具をともなう使用に適したその他のガイダンスツールの開発における適用を見出し得る。切削、拡掘、およびリサーフェシングに対して意図される機器をガイドするのに適しているガイダンスツールが、術前に計画され、かつ製造され得る。ガイドメカニズムが、図18cにおいて示されるようにガイドピンをセットする代わりに、鋸刃をガイドするために使用されるガイダンスブロック602を含む、人工足関節置換手術に対する代わりの手法およびガイダンスツール600が、図19a〜19cにおいて示される。そのような手法において、ガイダンスツール600の術前計画は、術前に定義された軌道が、鋸が方向付けられるべき面として同定されること以外は、上で議論されるものと同様である。術中に使用される場合、ガイダンスツール600は、患者の生体構造に合わせられ、正確な配置に対して検証される。位置的に検証されると、ガイドメカニズムは、鋸刃606を合わせるためのスロット604を含む適当なガイドブロック602を装着される。スロット604は、刃を合わせるような寸法にされ、刃を術前に決定された軌道面に沿って方向付ける。検証ツールによってとられた測定に基づいて調節が必要ならば、図19b(並進オフセット)および19c(角度オフセット)において示されるように、代わりの再調整ガイドブロック608が使用され得る。
【0142】
ガイドブロックにおいてスロットとして示されるが、ガイダンスツールは、鋸刃または同様の道具(例えば、のみ)をガイドするために一つまたは複数の縁上に軸受表面を提供し得る。ガイダンスツールは、さまざまな医療器具をガイドするために、ガイドメカニズムの任意の組み合わせを含んでもよい。例えば、ガイダンスツールは、複数のピンをセットするためのガイドメカニズムを含み得るが、鋸刃をガイドするような寸法にされたガイドブロックの受け入れに適したガイドメカニズムも提供する。
【0143】
上で記載される手法の態様により、個別の患者固有テンプレートまたはガイダンスツールの術中使用が骨および関節手術の際の全体的な精度を向上させ、成功率を高めることを可能にする。記載されるように、患者固有ガイダンスツールは、患者の生体構造の術前サーベイから作り出される。生体構造をサーベイし、かつモデリングする術前段階は、術中ナビゲーションの間に使用される精度値に基づいて中心ピン調整に対する計画を提供する。さらに、術前計画は、個々の患者固有ガイダンスツールを使用して、登録(性能指数)に対する数学的質値(mathematical quality value)を提供する。値は、ガイダンスツールを処置される患者に固有の一つのポジションに厳密に合わせる能力を反映する。加えて、ずれが術中に同定される事象において、術前に定義されたピン軌道を達成するために、オフセットドリルスリーブが、指摘されたずれを補正するために使用され得る。実際に、前方外側アプローチを使用する25股関節リサーフェシング手法に対する3-D軌道解析は、高度な軌道精度を示した。計画された角度と比較されるナビゲートされた外反角度の平均偏差は、3.57°の標準偏差をともなう1.46°内反であると決定された。大腿骨頸骨折、敗血症、または感染症などの合併症は、観測されていない。
【0144】
要約すれば、患者の生体構造の術前サーベイおよびモデリングならびに患者固有ガイダンスツールのその後の計画および制作は、組織内に「コンピューター支援エンジニアリングチーム」がいないクリニックが、コンピューター支援手術の精度を達成することを可能にする。図20において概説されるように、全体的な手法における全般的な段階は、以下のように示される:
a. 患者の患部の生体構造の適した医療用イメージ(例えば、CTスキャン)が獲得され、3-Dモデルが生成される(700);
b. 患者の生体構造の3-Dモデルに基づいて、生体構造への任意の操作(例えば、ピン配置、成形など)の正しい配置/軌道を決定するために、術前計画が実施される(710);
c. 術前計画の結果に基づいて、患者の生体構造の固有の登録表面などであるがそれらに限定されない因子を考慮して、ガイダンスツールのデザインが計算される(720);
d. ガイダンスツールのデザインが、要求しているユーザーによる点検、検証、および承認を受ける(730);
e. デザインが、高速プロトタイプ製造によって使用可能な物理的フォームへ変換され、かつ要求しているユーザーに送られる(740);
f. ガイダンスツールが、(ユーザーによる受け入れの前にまたはその際に)使用のために滅菌され、かつ準備される(750);
g. ガイダンスツールが術中に使用される(760)。
【0145】
上で記載される手法は、先行技術を越える多くの顕著な利点を有する。第一に、手法は、CASの正確性の利点を外科的調整ツールに関する精密さ、再現性、低コスト、および使いやすさ便益と組み合わせる。処置される固有の患者に対してガイダンスツールを最適化し、かつカスタマイズすることによって、ツールは、より小さく作られ得、それによって手術の間の切開のサイズを軽減する。手法は、実施しやすく、概して術中コンピューター支援手術方法論と関連する高額なディスポを必要としない。手法は、光電子工学コンピューター支援手術と関連する「視線」問題を軽減する。つまり、従来的なコンピューター支援手術に対して設定される手術室において、参加しているスタッフと適所にある装置との間に概して特定の量の干渉がある。例えば、外科医は、コンピューター支援装置の「視線」を邪魔し、またはコンピューター支援装置は、外科医の「視線」に干渉する。上述の手法は、手術室における厄介な装置の数量が軽減されるので、そのような「視線」問題を軽減する。さらに、追加的な外科的曝露を必要としない。ガイダンスツールはカスタマイズされ、それによって精密さを向上させ、かつ合併症および手術時間を減少させる。ガイダンスツールはディスポであり、在庫管理が最適化される。また、ガイダンスツールは、ピン配置に対する制御された並進および角度術中調節を可能にする。
【0146】
理解されるように、様々な代わりの適用可能な手法に対して、当業者にとって明らかであると考えられるように、特殊な留め具が必要である場合がある。技術、ツール、および方法論は、決して、股関節リサーフェシングまたは例示的な態様のいずれかに限定されることを意味しない。
【0147】
態様が詳細に記載され、かつ例証されているが、様々な改変および変化がなされ得ることが理解される。いくつかの態様が上で記載されているが、上で記載される機構のいくつかは、改変され得る、置換され得る、または省略さえされ得る。例えば、患者の生体構造上でガイダンスツールを登録するための係合表面は、任意の数の特徴的目印、一つから複数のそのような機構を組み入れ得る。掘削スリーブは、外科的グレード金属(例えば、外科的グレードステンレススチール、チタンなど)であるとして記載されるが、外科的に適合性のあるポリマーなどのその他の適した材料が使用されてもよい。ガイダンスツールは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)から製造されるが、その他の適したポリマー材料および金属が使用されてもよい。ガイダンスツールを作り出すために、高速プロトタイピングが使用されるが、必要なツールを形成するために、CNCフライス加工または鋳造テクノロジーなどのその他の方法が使用されてもよい。ガイダンスツールを使用して大腿骨頭へ挿入される中心ピンは、自己タッピングネジ式構造形が提供されるが、当業者にとって明らかであると考えられるように、その他の適したピンアンカリング代替が使われてもよい。検証ツールは、スライド式ルーラーとともに示されるが、検証ツールは、ギア付きキャリパー様またはその他のメカニズムを用いて設定される場合もあると考えられる。ガイダンスツールは、概して、ユニタリー構造体として示されるが、ガイドブロックおよび本体セクションは、別個に製造され制作後に取り付けられてもよい。加えて、ディスポ部分を係合表面を含むカスタマイズされた本体セクションに制限しながら、ガイドブロック部分またはツールを再使用することは実現可能であり得る。ガイドブロックは、各々の目印に対するロッキングキーを有するように記載されるが、ロッキングキーのポジションによって定義される同じ面上にある複数の目印位置が、単一のロッキングキーに対応してもよい。一つまたは複数のロッキングキーは、術中に調節されてもよく、調節の量は、検証ツールおよび/またはガイダンスツール上の分度器様スケールなどの適したマーキングまたはスケールによって決定され得る。あるいは、検証ツールは、一つまたは複数のロッキングキーから離され、かつそのポジションが調節されてもよく、調節の量は、検証ツールおよび/またはガイダンスツール上の分度器様スケールなどの適したマーキングまたはスケールによって決定され得る。検証ツールおよび掘削スリーブは、記載されるプロセスの間に同じチャネルを各々別個に使用するが、ガイダンスツール、特にガイドブロックは、これらの部分の各々を受け入れるための別個のチャネルまたはレセプタクルを用いて設定されてもよい。当業者にとって、さらなる代替および改変が生じ得る。すべてのそのような代替および改変は、本発明の範囲内であると信じられており、本明細書に添付される特許請求の範囲によってカバーされる。
【0148】
すべての引用される刊行物の内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる2007年5月14日に出願された米国特許仮出願第60/917,713号の恩典を主張する。
【0002】
分野
本発明は、外科的手法のための患者固有調整およびガイダンスツール、ならびにそのようなツールをデザインすることと関連するソフトウェアに関する。本発明は、患者固有調整およびガイダンスツールをデザインするためのソフトウェアを使用する術前プロセスにも関する。本発明は、患者固有調整およびガイダンスツールが外科的手法の間に使用される術中プロセスにも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
骨および関節外科的手法は、当技術分野において周知である。従来的な外科的技術を改良するために、イメージングテクノロジーおよびコンピューターが、外科医によって益々採用され、かつ実施されている。そのようなテクノロジーを開発することにおける一次的動因は、全体的な精度を維持しながら、または増加させながら、手法の全体的な侵襲性を軽減することである。
【0004】
コンピューター支援手術(CAS)は、現在、さまざまな外科的手法に対して非常に一般的である。外科医は、外科的手法前や外科的手法中のどちらでも、患者の生体構造を視覚的にマッピングするためのコンピューター追跡テクノロジーを使用することができる。また、CASは、特定の部位を標的とする際に、補正により高い精度を提供する。また、これらの技術は、人工インプラントの最適なサイズおよび位置を決定するために非常に有用である。
【0005】
CASの分野における刊行物は、術中手法にて高い正確性および/または精度を証明している;しかしながら、これらのシステムによって、手術がより高コストとなるだけでなく、手術時間の増加をも付加することとなった。従来のコンピューター支援システムに関連して必要となる技術装置は、さらなる外科医や手術室(OR)チームトレーニングを必要とする。加えて、すべての病院が、CAS技術へのアクセスを有するわけではない。さらに、外科医によって、精密な外科手術を行う技量には有意な変動が存在するため、CASの正確性の利点が、必ずしも患者の帰結に反映されるわけではない。
【0006】
外科的手法に対するテンプレートの使用も、当技術分野において公知である。テンプレートは、医療用イメージング技術を使用して準備され得、それらは手術室における手法の精度を高め得る。しかしながら、そのようなテンプレートの欠点は、提供される調整を、術中に検証または調節できないことである。
【0007】
先述の不利点を考慮して、CASの正確性の利点を外科的調整ツールと関連する精密さ、再現性、低コスト、および使いやすさの利点とを組み合わせる手法を実施することは、有益であると考えられる。
【発明の概要】
【0008】
概要
一つの局面では、骨または関節手術の際の術中使用のためのガイダンスツールが提供され、前記ガイダンスツールは、治療される患者の生体構造に固有であり、患者の生体構造に関連した一つもしくは複数の既定の軌跡で、医療器具をガイドするためのガイド部分と、患者の生体構造上に前記ガイダンスツールを位置付けるためのガイド部分に取り付けられた登録部分とを含み、前記ガイド部分が、必要であれば術中使用の際に、一つまたは複数の既定の軌跡を変更するために調節され得る。
【0009】
一つの態様において、ガイダンスツールは、患者の生体構造上の、ガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための検証部分をさらに含む。
【0010】
さらなる局面では、患者の生体構造の3-D表面モデルを作り出す段階、ピン配置に対する軌道を術前に決定するために患者の生体構造の3-D表面モデルを使用する段階、患者の生体構造に対して既定の軌道でピン配置をガイドするためのガイド部分と、患者の生体構造上にガイダンスツールを位置付けるための該ガイド部分に取り付けられる登録部分を提供する、患者の生体構造に対して登録するための仮想ガイダンスツールとをデザインする段階、患者の生体構造の3-D表面モデルを使用して患者生体構造上のガイダンスツールの適合、サイズ、および/またはデザインを術前に査定する段階、ならびに、正しい適合を達成するために必要に応じてガイダンスツールのデザインを調節する段階を含む、処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の間の術中使用のためのガイダンスツールをデザインするための術前プロセスが提供される。
【0011】
別の局面では、ピン配置に対する既定の軌道を確立するガイド部分を提供する、患者の生体構造に対してデザインされているガイダンスツールを生体構造上に直接的に置く段階、ガイダンスツールのガイド部分によって統制される既定の軌道を査定する段階、該ピンの最適な配置を達成するためにガイド部分への調節が必要かどうかを決定する段階、および必要であれば該ピンの最適な配置のための代わりの軌道を達成するために該ガイダンスツールのガイド部分を調節する段階を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールを使用して骨または関節手術を容易にする方法が提供される。
【0012】
さらなる局面では、ピン配置に対する既定の軌道を確立するガイド部分および患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための検証部分を有する、患者の生体構造に対してデザインされているガイダンスツールを術中に生体構造上に直接的に置く段階、および患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するために検証部分を使用する段階を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールの正しい配置を検証する方法が提供される。
【0013】
ある局面では、
本体部分と
患者の生体構造の対応する登録表面上にガイダンスツールを位置付けるための、該本体部分上に提供される係合表面と
術中使用の際に必要であれば、一つまたは複数の術前に定義された軌道を変えるために調節可能である、患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で少なくとも一つの医療器具をガイドするための、該本体部分上に提供される少なくとも一つのガイドメカニズム
とを含む、処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の間の術中使用のための術前にデザインされたガイダンスツールが提供される。
【0014】
いくつかの態様において、該本体部分は、ガイド部分および登録部分を含み、該少なくとも一つのガイドメカニズムおよび該係合表面の各々が、該ガイド部分および該登録部分の少なくとも一つの上に提供される。
【0015】
いくつかの態様において、該本体部分は、安定性部分をさらに含む。
【0016】
いくつかの態様において、該本体部分上の該係合表面は、患者の生体構造を考慮して不連続である。
【0017】
いくつかの態様において、該係合表面は、患者の生体構造の該登録表面上に見出された特徴的な生体構造的目印と相補的である形状を含む。
【0018】
いくつかの態様において、ガイドツールは、術前に選択された生体構造的目印を考慮して、患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための取り外し可能な検証ツールをさらに含む。
【0019】
いくつかの態様において、該検証ツールは、該ガイドメカニズムへの挿入に対して設定される。
【0020】
いくつかの態様において、該検証ツールは、該一つまたは複数の術前に定義された軌道に対するガイダンスツールのずれを決定するための少なくとも一つの目盛付きセクションを含む。
【0021】
いくつかの態様において、該検証ツールは、患者の生体構造に対するずれ値を提供するための二つの目盛付きセクションを含み、第一目盛付きセクションは、縦方向におけるずれ値を提供し、第二目盛付きセクションは、半径方向におけるずれ値を提供する。
【0022】
いくつかの態様において、該少なくとも一つの目盛付きセクションは、該ずれを測定するための目盛を提供されるスライド式ルーラーである。
【0023】
いくつかの態様において、ガイダンスツールは、あらかじめ選択された生体構造的目印との比較のために、術前に定義されたポジションにおいて該検証ツールを調整するための、該本体部分上に提供されるロッキングキーをさらに含む。
【0024】
いくつかの態様において、該ガイドメカニズムは、ガイドチャネルおよび患者の生体構造に対して該一つまたは複数の術前に定義された軌道で該医療器具をガイドするための該ガイドチャネル内の配置のための対応する機具スリーブを含む。
【0025】
いくつかの態様において、確立された軌道が調節を必要とする場合、該ガイドメカニズムは、該機具スリーブの代わりに使用され、器具の軌道の再調整を提供する再調整スリーブを含む。
【0026】
いくつかの態様において、該再調整スリーブは、スリーブの中心軸に対する並進オフセットを用いて設定される。
【0027】
いくつかの態様において、該再調整スリーブは、スリーブの中心軸に対する角度付きオフセットを用いて設定される。
【0028】
いくつかの態様において、該再調整スリーブは、スリーブの中心軸に対する組み合わせられた並進オフセットおよび角度付きオフセットを用いて設定される。
【0029】
いくつかの態様において、並進オフセットは、中心軸から約0〜約5 mmである。
【0030】
いくつかの態様において、並進オフセットは、約0.01 mm〜約1 mmの範囲のインクリメントで提供される。
【0031】
いくつかの態様において、角度付きオフセットは、中心軸に対して約0〜約5°である。
【0032】
いくつかの態様において、角度付きオフセットは、約0.05°〜約1°の範囲のインクリメントで提供される。
【0033】
別の局面では、
患者の生体構造の3-D表面モデルを作り出す段階;
骨または関節操作の間の少なくとも一つの医療器具の軌道を術前に決定するために患者の生体構造の3-D表面モデルを使用する段階;
患者の生体構造に対して術前に定義された軌道で該骨または関節操作の間に該少なくとも一つの医療器具をガイドするためのガイドメカニズムおよび患者の生体構造上に少なくとも一つのガイダンスツールのポジション登録を提供する係合表面を提供する、患者の生体構造に対して登録するための少なくとも一つのガイダンスツールをデザインする段階;および
患者の生体構造の3-D表面モデルを使用して患者生体構造上の少なくとも一つのガイダンスツールの適合、サイズ、およびデザインを術前に査定し、正しい適合を達成するために必要に応じて少なくとも一つのガイダンスツールのデザインを調節する段階
を含む、処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の際の術中使用のための少なくとも一つのガイダンスツールをデザインするための術前プロセスが提供される。
【0034】
いくつかの態様において、該患者の生体構造の3-D表面モデルは、CT、MRI、X線、および超音波の一つまたは複数によって作り出される。
【0035】
いくつかの態様において、該適合の査定は、該患者の生体構造に対する該係合表面上の特徴的目印の検査に基づく定量的性能指数決定に関与する。
【0036】
いくつかの態様において、術前プロセスは、少なくとも一つのガイダンスツールへの取り付けに対して設定され、患者の生体構造上の少なくとも一つのガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための取り外し可能な検証ツールと関連して使用される、少なくとも一つの特徴的な生体構造的目印の同定をさらに含む。
【0037】
いくつかの態様において、複数のガイダンスツールが、特定の手法のための術中使用に対してデザインされる。
【0038】
さらなる局面では、
患者の生体構造上のガイダンスツールのポジション登録を提供する係合表面および患者の生体構造に対して術前に定義された軌道で骨または関節操作の間に少なくとも一つの医療器具をガイドするためのガイドメカニズムを提供する、患者の生体構造に対してデザインされているガイダンスツールを生体構造上に直接的に置く段階;
患者の生体構造上のガイダンスツールのポジションを査定する段階;
ガイダンスツールのガイドメカニズムによって統制される術前に定義された軌道を査定する段階;
該少なくとも一つの医療器具の最適な軌道を達成するためにガイドメカニズムへの調節が必要かどうかを決定する段階;および
必要であれば、該少なくとも一つの医療器具に対する代わりの軌道を達成するために該ガイダンスツールのガイドメカニズムを調節する段階
を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールを使用して骨または関節手術を容易にする方法が提供される。
【0039】
いくつかの態様において、ガイダンスツールの該ガイドメカニズムに合わせられた検証ツールが、術前に定義された軌道を考慮してガイダンスツールのポジションおよび配向を査定するために使用される。
【0040】
いくつかの態様において、該検証ツールは、該一つまたは複数の術前に定義された軌道に対するガイダンスツールのずれを決定するための少なくとも一つの目盛付きセクションを含む。
【0041】
いくつかの態様において、該検証ツールは、患者の生体構造に対するずれ値を提供するための二つの目盛付きセクションを含み、目盛付きセクションは、縦方向におけるずれ値を提供し、第二目盛付きセクションは、半径方向におけるずれ値を提供する。
【0042】
いくつかの態様において、該少なくとも一つの目盛付きセクションは、該ずれを測定するための目盛を提供されるスライド式ルーラーである。
【0043】
いくつかの態様において、該ガイドメカニズムは、ガイドチャネルおよび機具スリーブを含み、該軌道を再調整するための補正は、補正された軌道を達成するために該機具スリーブの代わりに使用される再調整機具スリーブによって提供される。
【0044】
いくつかの態様において、該ガイダンスツールは、手によって手動で患者の生体構造上の適所に保持される。
【0045】
いくつかの態様において、該ガイダンスツールは、ピン、スクリュー、ストラップ、クランプ、ジップタイ、および弾性ファスナーからなる群より選択される適した留め具を使用して患者の生体構造上の適所に保持される。
【0046】
いくつかの態様において、該ガイダンスツールに対して回転可能である該検証ツールが、ガイドメカニズムによって統制される術前に定義された軌道を可視化し、かつ査定するためにさらに使用される。
【0047】
さらにさらなる局面では、
少なくとも一つの医療器具に対する術前に定義された軌道を確立するガイドメカニズムおよび患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための検証ツールを有する、患者の生体構造に対してデザインされているガイダンスツールを術中に生体構造上に直接的に置く段階;および
患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するために検証ツールを使用する段階
を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールにおいて軌道を再調整する方法が提供される。
【0048】
いくつかの態様において、ずれの検出に際して該検証ツールは、該検証ツール上に提供される少なくとも一つの目盛付きセクションを使用して、ずれを定量するために使用される。
【0049】
いくつかの態様において、ずれの検出に際して該検証ツールは、該検証ツール上に提供される少なくとも二つの目盛付きセクションを使用して、ずれを定量するために使用される。
【0050】
いくつかの態様において、参照チャート、表、または再調整計算機の少なくとも一つが、術前に定義された軌道に戻すために登録されたずれに基づいて正しい再調整軌道を決定するために使用される。
【0051】
いくつかの態様において、該参照チャートおよび/または表は、ガイダンスツールの形状寸法および患者の固有の生体構造を考慮して術前計画に基づいて術前に生成される。
【0052】
いくつかの態様において、該ガイドメカニズムは、計算された再調整軌道と調和するように調節される。
【0053】
さらに別の局面では、
少なくとも一つの医療器具に対する術前に定義された軌道を確立するガイドメカニズムおよび患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための検証ツールを有する、患者の生体構造に対してデザインされているガイダンスツールを術中に生体構造上に直接的に置く段階;および
患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するために検証ツールを使用する段階
を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールの正しい配置を検証する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
ここで、添付の図面を参照して、ほんの一例として、態様が記載される。
【0055】
【図1】ヒト股関節の骨格表示である。
【図2】ヒト大腿骨の骨格表示である。
【図3】近位大腿骨および寛骨臼の骨および/または軟組織を示す3-Dコンピューター等表面モデルである。
【図4】図4aおよび図4bは、中心ピンに対する掘削軌道の確立を示す。
【図5】近位大腿骨および寛骨臼の骨および/または軟組織を示す3-Dコンピューター等表面モデルであり、仮想大腿骨および寛骨臼部分が、仮想モデルに合わせられる。
【図6】近位大腿骨の骨および/または軟組織を示す3-Dコンピューター等表面モデルであり、ガイダンスツールが仮想モデルに合わせられる。
【図7】図7a〜7cは、適切なポジションにガイダンスツールを有する大腿骨の透視図であり、図7bおよび7cは、大腿骨上のガイダンスツールの正しいポジショニングを検証するために使用される検証ツールを示す。図7dは、大腿骨上のガイダンスツールの正しいポジショニングを検証するためにガイダンスツールとともに使用される検証ツールの態様の透視図である。
【図8】図8aおよび8bは、計画された軌道を検証することにおける視覚的補助として使用される検証ツールの態様の透視図である。
【図9】図9a〜9dは、近位大腿骨の骨および/または軟組織を示す3-Dコンピューター等表面モデルを示し、一連の説明図は、決定されたピン軌道、登録表面、およびこれらの機構を含むガイダンスツールを示す。
【図10】ガイダンスツールが適切なポジションにある術中に示される大腿骨の透視図である。
【図11】図11aおよび11bは、ガイダンスツールが適切なポジションにある大腿骨の透視図であり、ガイダンスツールは、大腿骨頭へ中心ピンをガイドする用意ができている。
【図12】図12aは、掘削軌道のずれを図示する。図12bおよび12cは、ガイダンスツールをともなう使用に対する代わりの掘削スリーブの透視図であり、ガイド穴が中心軸からオフセットされている。
【図13】ガイダンスツールが適切なポジションにある大腿骨の透視図であり、中心ピンが大腿骨頭へのネジ式挿入のためのドリルスリーブへ挿入されている。
【図14】ガイダンスツールが、モザイク形成術においてどのように同様に使用され得るかを示す図式表示である。
【図15】図15aおよび15bは、ガイダンスツールが、膝のモザイク形成術においてどのように使用され得るかの説明図を提供する。
【図16】ガイダンスツールが、橈骨遠位端骨切り術においてどのように同様に使用され得るかの説明図である。
【図17】ガイダンスツールが、人工膝関節置換手術においてどのように同様に使用され得るかの説明図である。
【図18】ガイダンスツールが、人工足関節置換手術においてどのように同様に使用され得るかの説明図である。
【図19】図19a〜19cは、人工足関節置換手術に対する代わりのガイダンスツールを示す。
【図20】患者固有ガイダンスツールが患者の特徴的な生体構造に基づいて作り出される術前計画ステージにおける全般的な段階を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
実例的な態様の説明
以下の議論は、患者固有ガイダンスツールならびに構築および実施に対する関連方法論/手法が主に股関節リサーフェシングのフレームワーク内で提示される態様を提示する。しかしながら、ガイダンスツールおよび関連方法論/手法が、骨および関節外科的適用の範囲で実施され得ることが理解される。例えば、以下の議論は、足首、膝、および肩手術、脊椎固定、頭蓋顎顔面手術、骨切り術、骨折処置および固定、脊柱側弯症、手首手術、ならびにモザイク形成術などであるがそれらに限定されないものにおける使用に対する適用を見出し得る。したがって、以下の説明は、実例的な態様の例示として意図されており、例証される特定の態様に説明を限定することを意図していない。
【0057】
ピン掘削ガイダンスのための術中コンピューター支援方法を組み入れる先行技術テクノロジーと異なり、以下で議論される態様は、手術の前に始まる個別の患者固有手法を提供する。方法は、概して、術前計画ステージで開始し、患者の固有の生体構造の仮想3次元(3-D)等表面モデルが作り出される。具体的には、患者の生体構造は、コンピューター断層撮影法(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、超音波、X線などの一つまたは複数による術前医療用イメージングを受ける。このデータを用いて、患者の生体構造の骨および/または軟組織を示す3-Dコンピューター等表面モデルが制作され、その際に、中心ピン、ガイドピン、またはその他の外科的道具に対する骨および/またはその他の組織の掘削、切削、拡掘、リサーフェシング、および/または修正のための位置および/または軌道が、術前に決定され得る。次いで、固有の患者生体構造および術前に決定された軌道が、術中に支援するための患者固有ガイダンスツールの製造へ組み込まれる。術前デザインフェーズは、好ましくは、適合の質の仮想査定を含み、術前に決定された軌道および患者の生体構造に対するガイダンスツールのポジション/配向を検証するための検証ツールのデザインおよび製造をさらに可能にする。
【0058】
上で述べられるように、患者固有ガイダンスツールならびに構築および実施に対する関連方法論/手法(概して、「患者固有手法」と呼ばれる)が、股関節リサーフェシングのフレームワーク内で本明細書において初めに議論される。股関節リサーフェシングは、より若くより活動的な患者にとって股関節全置換術(THR)に対する魅力的な代替として見られている比較的新しい手法である。股関節リサーフェシングにおいて、大腿骨頭は、THRにおいてなされるようには置換されず、代わりに大腿骨部分が、大腿骨頭上にインプラントされる。大腿骨部分は、大腿骨頭をカバーする関節軟骨を効果的に置換する金属半球を含み、大腿骨部分の軸受表面および股関節の関節接合表面の一つを形成する。大腿骨部分は、大腿骨頭/頸へ挿入される中心ピンも含み、大腿骨部分の正しいポジションを維持する。その後、半球が、骨盤骨の寛骨臼に位置付けられ、かつライニングを提供する寛骨臼部分と係合し、股関節のもう一方の関節接合表面を提供する。
【0059】
股関節リサーフェシング手法の早期の不具合の最も一般的な原因は、大腿骨頸骨折である。注意深い患者選択が頸骨折のリスクを軽減する可能性があるが、さらなる有意な寄与因子は、半球大腿骨部分の配向である。大腿骨部分の非最適配向は、大腿骨頸皮質の切痕化を引き起こす可能性があり、骨折のリスクを増加させる。また、内反の大腿骨部分の過剰な傾斜は、骨内でより大きな応力を引き起こす可能性があり、頸骨折のリスクを増大させる。部分のサイズも、早期臨床成功において重要な役割を果たす可能性がある。大腿骨部分の適当なサイズは、インピンジメントを防ぐのに十分なほど大きいが、寛骨臼の大きな骨切除を避けるのに十分なほど小さくあるべきである。
【0060】
ここで図1に関して、股関節の骨格表示が、概して符番10で示される。股関節20は、大腿骨24の丸型頭22および骨盤28のカップ様寛骨臼26からなる滑膜関節であり;この関節の主要な機能は、静的および動的姿勢の両方において体の重さを支持することである。
【0061】
大腿骨24は、図2においてより詳細に示される。示されるように、大腿骨24は、本体30および二つの端へ分けられる。上端32は、頭22、頸36、大転子38、および小転子40を含み;下端42は、主に、内側顆44および外側顆46を含む。二つの端の間は、フォームが概して円筒状である本体30(またはシャフト)である。
【0062】
ここで図3に関して、本明細書において記載される患者固有手法に従って実行される股関節リサーフェシングは、患者の固有の股関節生体構造の3-D等表面モデルが作り出される術前計画ステージで始まる。示されるように、3-D等表面モデル50は、患者の生体構造の骨および/または軟組織を高い精度で示す。近位大腿骨52および寛骨臼54の仮想表示が、図3において示される。
【0063】
仮想3-D等表面モデル50を使用して、中心ピンまたはガイドピンに対する掘削軌道が、術前に決定される。中心ピンがすべてのその後の手法に対する参照またはガイドを形成するので、精密な中心ピン軌道を確立し、かつ達成することが望ましい。軌道を決定するために、iGo Technologies Inc. (Kingston, Canada)によって開発されたVirtual Surgical System(VSS)ソフトウェアパッケージが使用される。しかしながら、その他の仮想外科的計画プログラムが適用可能であり、置き換えられてもよいことが理解される。
【0064】
図4aにおいて示されるように、VSSソフトウェアおよび近位大腿骨52の確立された3-D等表面モデル50を使用して、大腿骨52に対する頸シャフト軸56の生体構造的ポジション/配向が登録される。この調整情報を用いて、中心ピンに対する軌道58のポジションおよび配向が確立される。次いで、図4bおよび5において示されるように、関節接合または軸受表面62および中心ピンを含む大腿骨部分60が、仮想空間において大腿骨52に合わせられる。加えて、極めて有利なことに、調整情報と、確立された軌道58と、大腿骨部分の確立されたポジショニング/配向とを考慮することで、股関節は、大腿骨頭の拡掘の間の大腿骨頸皮質の切痕化などの可能性のある術中合併症に対しても査定され得る。これらの査定に基づいて、大腿骨部分のポジショニング/配向への変更が、より安全に、かつ正確に術前になされ得る。
【0065】
掘削軌道58が決定されると、次いで、大腿骨部分が大腿骨頸を侵害しないこと、および寛骨臼が過剰に切除されないことを確実にすることを目的として、大腿骨および寛骨臼部分の正確なサイジングを確立するために、3-D等表面モデル50が使用される。図5において示されるように、3-D等表面モデル50は、個々の患者固有生体構造に大腿骨部分60および寛骨臼部分64を合わせるための術前仮想空間としての役目を果たす。
【0066】
術前計画ステージを継続して、大腿骨部分の中心ピンに対する計画された掘削軌道を正確に達成するための患者固有ガイダンスツール66をデザインするために、3-D等表面モデルおよび確立された掘削軌道情報が使用される。患者固有3-D等表面モデル50に対する患者固有ガイダンスツール66の仮想表示が、図6において示される。概して、ガイダンスツールは、ドリルガイドとしての役目を果たす少なくとも一つのガイド部分、患者の生体構造に対する係合表面を提供するための少なくとも一つの登録部分、および任意で、患者の生体構造上に置かれる場合にツールに安定性を付加するための少なくとも一つの安定性部分を含む。
【0067】
本明細書において使用されるように、「係合表面」という用語は、患者の生体構造の選択された部分の3-D表面(登録表面)と相補的であり、かつ係合する3-D表面を指す。本明細書において記載されるようなガイダンスツールは、少なくとも一つの係合表面を含む。
【0068】
本明細書において使用されるように、「登録表面」という用語は、患者の生体構造の選択された部分の3-D表面を指す。
【0069】
図6において示される態様において、ガイダンスツール66は、患者の生体構造上に直接的に置かれる本体部分68を含む。ガイダンスツール66の本体部分68は、実施に応じて、多様な構造形をとり得るが、図6において示されるような本体部分68は、三つの部分で記載され得る。第一に、計画された中心ピン軌道58を確立するためのガイド部分70が提供される。ガイド部分70には、患者の生体構造上のガイダンスツールの正しく検証されたポジショニングに続く、取り外し可能な機器(例えば、ドリル)スリーブを後に受け入れるためのガイドチャネル74を含むガイドメカニズム72が提供される。第二に、患者の生体構造上の正確な登録に対する係合表面78(図7においてより明瞭に示される)を含む、大腿骨頸にわたる登録部分76が提供される。第三に、使用の間の更なる安定性のための安定性部分80が任意で提供される。ガイダンスツールの本体部分68、特にガイド部分70は、以下で議論されるように、検証ツールとの使用のための一つまたは複数のロッキングキー(rocking key)82を任意で含み得る。
【0070】
上で述べられるように、ガイダンスツール66は、実施に応じて、任意の数の構造形をとり得る。そういうものとして、代わりの構造形において、ガイダンスツール66は、上述の部分の組み合わせからなり得る。例えば、ガイド部分70は、ドリルガイドとしての役目を果たすように設定されるが、それには、患者の生体構造上の付加的な登録に対する係合表面78が提供されてもよい。さらに、登録部分76は、患者の生体構造上の登録に対する係合表面78を含むが、ドリルスリーブを受け入れるための一つまたは複数のガイドチャネル74を含んでもよい。理解されるように、患者固有ガイダンスツール66は、術中使用に対してデザインされ、それによってガイダンスツール66は、患者の生体構造に合わせられる。前に示されたように、本態様は、股関節リサーフェシングのフレームワーク内で提示されているが、構築および実施に対するガイダンスツールおよび関連方法論/手法は、足首、膝、および肩手術、脊椎固定、頭蓋顎顔面手術、骨切り術、骨折処置および固定、脊柱側弯症、手首手術、ならびにモザイク形成術などであるが、それらに限定されないさまざまな外科的手法に適切に適用され得る。加えて、任意の一つの外科的手法、特に、その間に複数の操作が必要であるものに対して、複数のガイダンスツールを作り出し、かつ使用することが好ましい場合がある。例えば、第一ガイダンスツールは、掘削軌道のセットを容易にし得、その後使用される第二ガイダンスツールは、成形を容易にし得る。複数のツールを使用することは、ツールのサイズを最小に保つことを支援し、不必要に複雑なデザインを避ける役目をも果たす。
【0071】
特定の状況では、ガイダンスツール66の登録部分70は、特にイメージングデータの一部が患者の生体構造の表面詳細をレンダリングするのに適していない場合に、不連続な係合表面78を含み得る。その他の事例において、患者の生体構造の登録表面84(図6を参照されたい)は、ガイダンスツール66の登録部分76への組み入れに適していない場合がある。そのような不連続な係合表面78を含むガイダンスツール66において、係合表面78の特定のセクションは、患者の生体構造への干渉を防ぐ様式で空洞にされる(voided)場合がある。例えば、不連続部分は、患者の生体構造を飛び越える(clear)ために十分に凹まされ得る。
【0072】
患者固有ガイダンスツール66をデザインすることにおいて、固有のカスタマイズされた製品の開発を確実にするために、多様な因子が考慮され得る。例えば、ガイダンスツールは、選ばれた、または好ましい外科的アプローチまたは技術を考慮してデザインされ得る。例えば、当業者が理解するように、股関節リサーフェシングにおいて、概して、大腿骨頭へのより良い血液供給を保持するためには、前方外側アプローチが好ましく、一方、後方アプローチは、関節包を保持することに貢献する。前方外側アプローチか後方アプローチかの選択は、ツールの最終的なデザインに対する全体的なインパクトを有すると考えられる。一つに選択された外科的アプローチに基づくガイダンスツールのカスタマイズは、複数の外科的アプローチを単一ツールへ設計する必要がないため、最終デザインを単純にするという利点を有する。そういうものとして、患者固有ガイダンスツールは、不必要に大きい必要はなく、それ故に外科的手法の侵襲性を軽減するような適当なサイズにされ得る。
【0073】
ガイダンスツール66は、患者の生体構造の固有の登録表面84、すなわち特徴的な生体構造的目印、骨構造、および/または軟組織(例えば、腱、靭帯など)を考慮してデザインされる。明確にするために、生体構造的目印、骨構造、および軟組織は、本明細書においてまとめて「特徴的目印」と呼ばれる。登録表面84の特徴的目印は、ガイダンスツール66の係合表面78をデザインするにおいて、術前計画ステージで決定された所望の掘削軌道58を実現するのに必要な固有のポジション/配向において係合表面を登録するために使用される。特定の特徴的目印が選択されたアプローチに応じて曝露され得ることから、選ばれた外科的アプローチ(例えば、前方外側対後方)も影響を与える。以下で議論されるように、特徴的目印は、生体構造に付される場合にガイダンスツール66のポジションを検証するために術中に使用される場合もある。特徴的目印(生体構造的目印、骨構造、軟組織など)の任意の組み合わせが、患者の生体構造上のツールの正しいポジショニングを登録かつ/または検証するために使用され得る。この情報は、ガイダンスツールのデザインの際に考慮される。
【0074】
患者の生体構造上のガイダンスツール66のポジション/配向を検証するために、かつ正しい術前に定義された軌道が実現されていることを検証するために、ガイダンスツール66は、図7b〜7dにおいて示されるように、取り外し可能な機械的検証ツール86を提供され得る。図7aにおいて示されるような患者の生体構造上へ置かれたガイダンスツール66を用いて、検証ツール86は、図7bにおいて示されるように、ガイド部分70のガイドチャネル74へ検証ツール86の登録ピン88を挿入することによって、ガイダンスツール66に取り外し可能なように取り付けられるように設定される。次いで、図7cにおいて示されるように、ガイダンスツールの適切なポジショニングが確立されているかどうかを決定するために、術前に同定された一つまたは複数の特徴的目印92の位置を特定するために、検証ツール86のポインター90が使用され得る。計画された中心ピン軌道58の縦軸に対する検証ツール86の正確な半径方向配置を確実にするため、および一つまたは複数の所定の配向に検証ツールをロックするために、ガイド部分70上に一つまたは複数のロッキングキー82が提供される。図7dにおいて示されるように、検証ツール86は、ガイド部分70のロッキングキー82と協働するためのステム96上の凹所94を提供され、それによって検証ツール86を固定ポジションにロックする。理解されるように、ポジション検証のために、単一の特徴的目印92が使用され得るが、手法は、複数の特徴的目印を使用してもよい。そういうものとして、ガイド部分70は、複数のロッキングキー82を用いて設定され得、各々が特定の目印に対応する。
【0075】
検証ツール86は、ガイダンスツール66が患者の生体構造上に正しく位置付けられているかどうか、およびガイダンスツールが術前に定義された軌道58を確立しているかどうかを示すために使用される。ずれが生じる場合、ユーザーは、検証ツール86上に提供される一つまたは複数の目盛付きセクションを使用して、ずれの程度を定量可能なように測ることができる。目盛付きセクションは、ガイダンスツールのポジションの測定を可能にするために、バーニアまたはリニアスケールなどのスケールを含み得る。例えば、目盛付きセクションは、スライド式ルーラーを含み得る。図7dにおいて示される態様において、計画された中心ピン軌道58の縦軸(x)に沿った測定は、第一スライド式ルーラー98によって提供され、半径方向測定(y)は、ポインター90上に提供される第二スライド式ルーラー100によって提供される。目盛102(例えば、mm)は、計画された適合ポジションからガイドがどれだけ、かつ、どの方向に間違って置かれているのかの数値表示を提供するために、各々のルーラー上に提供される。検証ツールは、ずれの性質を特徴付けるためのさらなるインジケーターを提供し得る。例えば、角度ずれ値、つまり生体構造的目印と検証ツールの術前に定義されたポジションとの間の角度を獲得することが有用である場合がある。そういうものとして、このタイプの測定を容易にするために、検証ツールおよび/またはガイダンスツール上の分度器様スケーリングが提供されると考えられる。
【0076】
ガイダンスツールのずれは、様々な理由により生じる可能性がある。例えば、それらは、術前計画ステージの間のエラーにより生じる可能性がある。ずれは、例えば登録表面上の骨棘の形成などの、患者における生理学的変化により生じる可能性もある。ガイダンスツールを再調整するためには、骨棘の除去が必要とされ得る。その他の事例において、ずれは、以下でより詳細に議論されるように、再調整スリーブの使用を必要とし得る。ガイダンスツールを再調整するための行為に必要な過程を決定することにおいての使用を支援するために、ガイダンスツール66のユーザーは、好ましくは、参照チャート、表、または再調整計算機を提供される。参照チャート、表、または再調整計算機は、術前に定義された軌道が実現され得るように、ユーザーが検証ツールから獲得されたずれの特徴に基づいて、適当な再調整軌道を決定することを可能にする。
【0077】
以下は、検証ツールの例示的な使用を実証する。選ばれた各々の生体構造的目印Iiに対して、検証ツールのポインターに対する標的位置を記載する値のペア(x,y)が術前に決定される。術中、ガイダンスツールポジションの検証の際、検証ツールがガイドチャネルへ挿入され、術前に決定された生体構造的目印Iiに対して値(x_m、y_m)が測定される。ガイダンスツールがすべての目印に対する術前定義ポジションに正しく置かれている場合、測定値(x_m、y_m)は、術前決定値(x,y)と同一であると考えられる。
【0078】
ずれが生じる場合、一つまたは複数の目印Iiに対して、術中測定値と術前決定標的値との間の寸法誤差が生じる。ずれの特徴、すなわち目印のずれの方向および量は、a)登録のポジション-エラー、b)補正可能性(再調整)の計画、を同定するために使用され得る。この情報に基づいて、ユーザーは、例えば骨棘を除去することによって、初期補正を試み得る。補正が可能ではない場合、参照チャート、表、または再調整計算機が提供され、ユーザーを適切な補正/再調整可能性へとナビゲートする。
【0079】
以下の例は、検証ツールから獲得された値を使用するそのような参照チャート、表、または再調整計算機の使用を実証する。この例示的な実施に対して、二つの生体構造的目印I1およびI2が選ばれた。これらの目印に対する術前定義(x,y)値は、表1に記載されている。
【0080】
(表1)術前に決定された目印座標
【0081】
検証ツールを用いて、ずれを同定するために、術前に決定された生体構造的目印が使用される。ずれの方向および量が決定される。
【0082】
実施例1:
両方の目印に対する例示的な術中測定(x_m、y_m)値のセットが、表2において提示される。
【0083】
(表2)術中に測定された目印座標
【0084】
この場合、術中に測定されたy_m値と術前に定義されたy値との間の寸法誤差は、前面の方向におけるずれを示す。
a=y_m-y
と定義される寸法誤差の量が、変位の量およびタイプを同定するために使用される。目印I1およびI2に関して、対応するa1およびa2値が以下のように計算される:
a1=y_m1-y1=23-21=2
a2=y_m1-y1=31-29=2。
この解析から、並進ずれが同定される。参照表(表3)を考慮して、示唆される再調整は、下位方向における2 mm並進オフセットの使用である。
【0085】
(表3)前面における補正に対する並進オフセット
表中、
a=y_m-y
x,y=術前定義値
x_m, y_m=術中測定値
である。
【0086】
実施例2:
両方の目印に対する例示的な術中測定(x_m、y_m)値の第二セットが、表4において提示される。
【0087】
(表4)術中に測定された目印座標
【0088】
この例において、目印I1とI2との間の変位の量の間の寸法誤差は、角度変位を同定する。目印I1およびI2に関して、対応するa1およびa2値は、以下のように計算される:
a1=y_m1-y1=21-21=0
a2=y_m2-y2=31-29=2
a2とa1との間の差(d)は、
d=a2- a1
として決定される。従って、差は、以下のように決定される:
d=a2- a1=2-0=2。
この角度変位は、ガイドの3°過伸展誤配置を示し、表5において提供される参照表において特定されるように、3°屈曲オフセットを有する再調整スリーブの使用を必要とする。
【0089】
(表5)前面における補正に対する角度オフセット
表中、
a=y_m-y、d= a2- a1
x,y=術前定義値
x_m, y_m=術中測定値
である。
【0090】
ガイダンスツール66の術前計画および検証ツール86をともなう使用に対する生体構造的目印92の選択に基づいて、これらのずれ値の相互参照が術前に定義された軌道58を達成するのに必要な再調整を提供するように、前述の参照チャートまたは表が術前に計算され得る。好ましい態様において、再調整決定は、例えば手術環境内でアクセス可能なコンピューター上に提供される再調整計算機によって提供される。
【0091】
再調整は、以下でより詳細に議論されるように、再調整スリーブによって提供される。ずれを補正するためのこのアプローチを用いて、ユーザーは、補正を概算する必要がなく、むしろ検証ツールでなされた固有の測定に基づいて方向付けられた計算された補正を提供される。
【0092】
第一スライド式ルーラー98は、概して、中心ピンの縦軸と平行であるように設定されるので、検証ツール86は、図8aおよび8bにおいて示されるように、選ばれた掘削軌道58および計画された軸調整を検証するための視覚照準補助として使用されもよい。ロッキングキー82から検証ツール86を離脱させ、かつガイダンスツール66の周りで検証ツール86を回転させることによって、ユーザーは、第一スライド式ルーラー98、またはルーラーの代わりに挿入されたピンもしくはガイドワイヤによって定義された面を参照して中心ピンの軌道58を可視化することができる。いくつかの態様において、検証ツール86は、同様にガイダンスツールによって定義された軌道と平行に位置付けられる別個のピンまたはガイドワイヤを受け入れるように設定され得る。軌道補正が必要であるように見える場合、以下でより詳細に記載されるように適した調節がなされ得る。
【0093】
検証ツール86は、計画された中心ピン軌道58と大腿骨頸の表面との間の半径方向距離を測定することによって、選択された大腿骨部分サイズが適当であることを確認するために術中に使用されてもよい。あるいは、加えて、このプロセスは、計画された軌道が実質的に大腿骨頸内で中心となることを確認するために使用されてもよい。
【0094】
上で提示されるような検証ツール86は、取り外し可能であり、したがって、それが再使用されることを可能にする。あるいは、検証ツール86は、ガイダンスツール66の恒久的に固定された不可欠な部分として組み入れられてもよい。その際、上で記載されるような検証ツールロッキングキーに対する必要性はないと考えられる。そのような場合、検証ツールは、上で議論されるようなスライド式ルーラーを使用するように機械加工され得、または、選ばれた特徴的目印を同定するための単一目的非調節式ポインターとして構築され得る。
【0095】
取り外し可能な検証ツール86の場合、ツールは、ガイダンスツールから外されると、さらなる適用を見出し得る。例えば、検証ツールは、特定の生体構造的目印と一致するように術前に決定されている二つ以上の参照ポイントを提供する、または適合を査定するためのゲージを提供するために使用されてもよい。検証ツールは、特にツールが調節可能である場合、例えば人工装具上の特定のポイントが術前に選択された生体構造的目印に対して術前に定義された位置に正しく位置付けられているという検証を可能にする所定のセッティングにセットされ得る。検証ツールは、測定デバイスまたはゲージが手術環境において有用であるさらなる適用を見出し得る。
【0096】
複数のガイダンスツールが特定の手法に対して使用される事例において、別個の検証ツールが、使用される各々のガイダンスツールに対して設定され得る。あるいは、検証ツールは、第一ガイダンスツールとともに使用され得、その後のガイダンスツールのポジショニングが、第一ガイダンスツールによって決定されるような共通参照ポイントに対して検証される。例えば、第一ガイダンスツールの配置に際して、骨または軟骨は、少なくとも一つの参照ポイントを使用してマークされ得る。各々のその後のガイダンスツールの配置の間に、適切な調整を確実にするために、各々のその後のガイダンスツールは、この少なくとも一つの参照ポイントに対して検証される。
【0097】
股関節リサーフェシングに対する患者固有手法の術前計画に関する全般的な段階は、図9a〜9dにおいて示される。図9aにおいて示されるように、患者の特徴的な生体構造的目印を組み入れる医療用イメージングに基づいて、第一に、患者の生体構造の仮想3-D等表面モデル50が作り出される。モデルの生体構造的配向/座標が決定され、シャフト/頸軸が登録され、かつ大腿骨部分のポジションおよび配向が決定される。図9aは、確立されたシャフト/頸軸に基づいて、中心ピンの計画された軌道58を図示する。図9bにおいて、患者の生体構造の選択された部分が、登録表面84を定義する特徴的目印ならびにツールポジショニング検証生体構造的目印を決定するために解析される。図9cにおいて示されるように、登録表面84の摘出表面イメージ104が作り出される。プロセスにおけるこのポイントで、中心ピンの軌道58および係合表面78の特徴が、各々別個に確立されている。図9dにおいて、中心ピンの軌道58および係合表面78の特徴が、単一の仮想ガイダンスツール66へ組み合わせられ、計画された軌道58が、ガイド部分70によって統制される。そういうものとして、術中に使用される場合、ツール66の係合表面78は、図10において示されるように、患者の生体構造上に位置付けられ、かつ登録され、したがって、中心ピンに対して計画された軌道58を提供する。
【0098】
術前計画ステージの際に患者固有ガイダンスツールをデザインする前述のタスクは、カスタムソフトウェアプログラムを使用してコンピューター支援される。ソフトウェアプログラムは、上で議論された様々な因子を考慮することによって、固有の、かつカスタマイズされたガイダンスツールをデザインするように設定される。特に、ソフトウェアプログラムは、ユーザーが患者の生体構造上の特徴的目印の位置を解析および同定し、かつガイダンスツールをそれが所定の配向において患者の生体構造上に位置的に登録するようにデザインすることを可能にするインターフェースを提供する。加えて、ソフトウェアプログラムは、ユーザーがガイダンスツールの登録に適していない構造を回避することを補助する。例えば、骨棘などの特定の軟骨および/または不安定骨構造は、実行可能な登録ポイントとしては却下される。
【0099】
前述のソフトウェアを使用する患者固有ガイダンスツールの作成は、概して、二段階プロセスである。第一段階において、ソフトウェアは、ユーザーが初期医療用イメージングにおいて決定されるような患者の生体構造に基づいてガイダンスツールのサイズ、形、ポジション、および配向を計画することを可能にする。第二段階において、患者の特有の生体構造に固有の様々な特徴を含むガイダンスツールの3-D表示が計算される。次いで、計算された3-D表示が、ステレオリソグラフィーフォーマット(例えば、標準テッセレーション言語(STL-フォーマット))などの3-Dモデルフォーマットで保存される。
【0100】
患者固有ガイダンスツール計画の第一段階は、Qt(Trolltech ASA, Oslo, Norway; www.trolltech.com)およびCoin3D(Systems in Motion AS, Oslo, Norway; www.coin3d.org)などの利用可能なソフトウェアパッケージを使用して遂行される。Qtは、高性能クロスプラットフォームGUI(グラフィックユーザーインターフェース)開発を可能にするが、Coin3Dは、クロスプラットフォームリアルタイム3D可視化ソフトウェアを開発するための高レベル3Dグラフィックツールキットである。しかしながら、当業者は、上で述べられたものの代わりにその他の適したソフトウェアプログラムを実施し得ることが理解される。
【0101】
患者固有ガイダンスツール計画の第一段階に適したソフトウェアは、好ましくは、以下の機能を提供する:a)患者の生体構造の3-D表面モデルの確立およびローディング;b)外科的計画の確立およびローディング;c)ロッキングキーの計画;およびd)患者固有ガイダンスツールのデザイン。
【0102】
以下のパラグラフは、股関節リサーフェシングに適用されるような患者固有ガイダンスツール計画の例を記載する。この手法のバリエーションは、当業者にとって明白であると考えられる。
【0103】
術前医療用イメージングに基づいて、患者の生体構造の3-D表面モデルが、ロードされ、かつユーザーに表示される。次に、中心ピンの決定された軌道が、ロードされ、かつ円筒として表示される。次いで、ガイダンスツールが、この場合三つの異なるパーツとしてデザインされる。第一に、登録部分が大腿骨頸に沿って配向され、患者の生体構造の登録表面と係合する係合表面を含む。第二に、安定性部分が外側大腿骨頸の周りに配向され、前方外側または後方外側頸の少なくとも一部を用いて登録する係合表面を含む。第三に、ガイド部分がドリルスリーブに対するガイドチャネルを提供する。
【0104】
患者固有ガイダンスツール計画の間、ユーザーは、登録部分のサイズ、ポジション、および配向を選択する。デザインプロセスを容易にするために、登録部分を示す長方形プリズムまたはキューブが表示され、適切なサイジングおよび適合を達成するのに必要であるとして、ユーザーが幅、高さ、および長さを修正することを可能にする。ユーザーは、中心ピン軸の周りで長方形プリズムまたはキューブのポジションおよび回転を変えることによって、最終ポジションをさらに定義し得る。
【0105】
安定性部分の計画に対して、登録部分の外側上に取り付けられる仮想リングセグメントが表示される。ユーザーは、適切なサイジングおよび適合を達成するために、このリングセグメントの半径、角度、幅、および高さを修正し得、そのポジションおよび配向を変化させ得る。
【0106】
ガイド部分の計画に対して、登録部分の内側上に取り付けられる仮想キューブが表示される。以前の二つの部分と同様に、ユーザーは、サイジングおよび適合を最適化するために、このキューブの幅、深さ、および高さを修正し得る。
【0107】
このステージで、計画は、検証ツールおよび関連ロッキングキーも考慮しなければならない。ユーザーが、検証ツールと整合する大腿骨モデル上の一つまたは複数の生体構造的目印を選択するのは、この計画中である。上で記載されるように、検証ツールの調整は、ロッキングキーによって統制される。そういうものとして、生体構造的目印の位置および検証ツールの構造形/サイズに基づいて、ガイド部分上のロッキングキーのポジショニングが確立される。
【0108】
ガイダンスツールの3-D表示が計算される第二段階において、ガイダンスツールの登録部分および安定性部分に対する係合表面が計算される。一つの例示的な方法論において、登録部分および安定性部分は、各々境界ボックスによって定義される6面のセットとして示される。患者の生体構造の登録表面を決定するために、骨の表面表示が、すべての6面と交差する。すべての結果として生じる三角形に対して、法線ベクトルが反転され、係合表面が三角形フォーマットで保存される。
【0109】
登録および安定性部分の最終計算に対して、両方の仮想表示(キューブおよびリングセグメント)が、容積物体(4面体のセット)として保存される。次いで、計算された係合表面に沿って各々の容積物体を交差させるためにアルゴリズムが使用される。この計算の間、係合表面に対する各々の4面体の距離が決定される。表面と交差する4面体は、表面の下および上のものに対応する4面体の二つのセットに分けられる。最終的に、表面の上のすべての4面体が、一つの容積物体へ組み合わせられ、この物体が、表面モデルへ変換される。結果は、ガイダンスツールの登録および安定性部分の表面表示であり、患者の固有の生体構造の登録表面と相補的な係合表面を含む。
【0110】
ガイド部分、特にガイドチャネルの決定に対して、決定されたピン軌道に沿って配向する円筒の表面がモデル化される。ガイド部分の外殻およびロッキングキーは、長方形プリズムまたはキューブとしてモデル化される。ガイダンスツールは、これらのモデルを組み合わせることによって決定される。
【0111】
ガイダンスツールへ統合される係合表面は、患者の登録表面の特徴的目印へのツールの術中登録を可能にする。生体構造的登録表面は、生体構造へのツールの精密な適合を可能にするのに十分な機構を提供しなければならない。係合表面の位置およびサイズは、ガイダンスツールの形、サイズ、ポジション、および配向によって定義される。生体構造へのガイダンスツールの適合の間の術中問題を避けるために、係合表面は、ガイダンスツールの術前計画の間にそれらの適合の質に対して評価され得る。
【0112】
適合の質は、登録表面および/または係合表面の登録機構(すなわち、特徴的目印)を検査することによって査定され得る。コンピューター支援手術の間の登録の分野における様々な刊行物が、登録機構を評価するための方法を提供する(Ma, B., Ellis, R. E.「A point selection algorithm based on spatial-stiffness analysis of rigid registration」, Computer-Aided Surgery, 2005 Jul; 10(4): 209-223; Simon, DA.「Fast and accurate shape-based registration」, PhD thesis, Carnegie Mellon University, Pittsburgh, Pennsylvania, Dec. 1996)。明確にするために、かつほんの一例として、係合表面の適合の質は、以下の方式で決定され得る。係合表面の仮想コピーが作り出される。これらのコピーの各々に、異なるエラー転換が適用され、表面に基づく登録アルゴリズムが、この修正係合表面と生体構造の対応する登録表面との間の転換を決定するために使用される(Besl, P., McKay, N.「A method for registration of 3-D shapes.」, IEEE Trans. Pattern Anal. 1992, 14(2): 239-256)。計算された転換が修正係合表面コピーに適用された後、この係合表面と元の係合表面との間の距離が計算され、エラー値として保存される。選ばれた係合表面は、係合表面のすべてのコピーに対するエラー値が所定の閾値以下の場合、十分な登録機構を有する。エラー値は、患者の生体構造に対するガイダンスツールの適合の質を示す性能指数を決定するために使用される。
【0113】
性能指数は、手法の侵襲性のレベルを代表するものでもあり得る。例えば、性能指数は、ツール適合および侵襲性のレベルを含む因子の最適化を示し得る。例えば、ツールサイズを軽減することは、より低侵襲性の手法をもたらすが、より小さなツールサイズは、適合の質を低下させる可能性もある。理解されるように、性能指数は、ソフトウェアによって提供されるが、サイズ、配向などの操作は、デザイナーがツールをデザインすることにおいて達成しようとしているものに基づくデザイナーの選択である。
【0114】
任意の骨および関節外科的手法に適用され得る患者固有手法および結果として得られるガイダンスツールの利点は、ユーザーが、例えばユーザー能力および/または患者のニーズに最も良く合う望ましい外科的アプローチ(例えば、前方外側アプローチ対後方アプローチ)を選択することによって、ツールをカスタマイズし得ることである。
【0115】
デザインが完了すると、コンピューターモデルデータは、その後のガイダンスツール製造に適したステレオリソグラフィーフォーマット(例えば、STL)で保存される。あるいは当業者にとって明白であるように、その他のフォーマットが使用されてもよい。
【0116】
本態様において、個々の患者固有ガイダンスツールのその後の製造は、Stratasys, Inc(Eden Prairie, Minnesota)によって提供されるDimension SST 3-Dプリンターなどの高速プロトタイピングマシンを実施する。しかしながら、個々の患者固有ガイダンスツールを製造するために、その他の適した高速プロトタイピングマシンが使用されてもよいことが理解される。そのようなプロセスにおいて、高速プロトタイピングは、患者固有ガイダンスツールのデザインをとり、それを仮想横断面へ転換し、物理的空間における各々の横断面の作成が続く。プロセスは、物理的モデルが仕上がるまで、様々な横断面を介して継続する。様々な金属および非金属(例えば、ポリマー)材料が、ガイダンスツールを作るための高速プロトタイピング方法において使用され得るが、本態様は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)から加工される。製造に続いて、ガイダンスツールは、使用の用意ができ、概して、公知の方法論を使用する滅菌およびパッケージングを含む。
【0117】
別の態様において、患者固有ガイダンスツールは、コンピューター支援ツール生成を使用してリアルタイムで術中に製造され得る。
【0118】
当技術分野において公知の従来的な外科的手法に続く股関節リサーフェシングの際の使用において、大腿骨が寛骨臼から脱臼させられる。次いで、患者固有ガイダンスツール66が、患者の生体構造の対応する登録表面に対するガイダンスツールの係合表面のポジショニングおよび適合を考慮して、図11aにおいて示されるように患者の生体構造の望ましい部分上へ置かれる。ガイダンスツール66は、適した留め具(例えば、ピン、スクリューなど)を使用して大腿骨に留められ得るが、あるいはガイダンスツールは、手によって手動で、または適したストラップ、クランプ、ジップタイ、もしくは弾性ファスナー(例えば、弾性バンド)を用いて適所に保持され得る。骨に登録されると、ガイダンスツールの正しいポジショニングを検証するために、検証ツール86が使用される。図11bにおいて示されるように、正しいポジショニングが検証されると、ドリルスリーブ106がガイドチャネル74へ挿入される。スリーブ106は、計画された中心ピン軌道58での中心ピン110の掘削および/または挿入に対するガイド穴108を提供する。スリーブ106は、好ましくは、外科的グレードステンレススチールおよびチタンを含むがそれらに限定されない外科的グレード金属である。
【0119】
上で議論されるように、術中使用中に、検証ツールによって同定されたガイダンスツールのずれ、または手術室においてなされた決断により、中心ピンの軌道58を変える必要が生じる場合がある。術前に定義された軌道58からの2°の例示的なずれ112が、図12aにおいて示される。中心ピンの軌道の再調整または変更が必要であれば、公知の量だけオフセットされている、または異なる配向にある穴を開けるために、図12bおよび12cにおいて示されるような再調整スリーブが使用され得る。例えば、図12bにおいて示される再調整スリーブ114は、スリーブの中心軸116から並進方向にオフセットされたガイド穴108を有するが、図12cにおいて示される再調整スリーブ114は、角度付きガイド穴108を有する。ガイド穴108並進オフセットは、中心軸116から概して0〜5 mmであり得る。例えば、オフセットは、1 mmインクリメントで提供される(例えば、1 mm、2 mm、3 mm、4 mm、5 mm)。あるいは、オフセットは、0.5 mmインクリメントで提供される(例えば、0.5 mm、1.0 mm、1.5 mm、2.0 mm、2.5 mm、3.0 mm、3.5 mm、4.0 mm、4.5 mm、5.0 mm)。0.1 mmインクリメントまたは0.05 mmインクリメントなどのより小さなインクリメントを用いるさらにさらなる代替が提供されてもよい。中心軸116からの角度付きオフセットは、概して0〜5°であり得る、例えば、角度付きオフセットは、1°インクリメントで提供される(例えば、1°、2°、3°、4°、5°)。あるいは、角度付きオフセットは、0.5°インクリメントで提供される(例えば、0.5°、1.0°、1.5°、2.0°、2.5°、3.0°、3.5°、4.0°、4.5°、5.0°)。0.1°インクリメントまたは0.05°インクリメントなどのより小さなインクリメントを用いるさらなる代替が提供されてもよい。組み合わせられた並進オフセットおよび角度付きオフセットをともなう再調整スリーブ114が提供されてもよく、前述の寸法特徴が適用可能であると考えられる。さらに、ドリルスリーブ106(および再調整スリーブ114)は、ピン配置の深さを精密に制御するためのストップまたはその他の適したメカニズムを用いて設定され得る。ドリルスリーブ106(および再調整スリーブ114)が固定ポジションにあることを確実にするために、スリーブは、ガイダンスツールに対するインデックスを付けられ得る。例えば、ドリルスリーブ106(および再調整スリーブ114)は、ガイダンスツール66上の受け入れチャネル(示されない)と協働するキー表面118を提供され得る。キー表面118は、望ましい方向(すなわち、内反/外反、前方/後方など)に補正が行われることを確実にするために、大腿骨の術前に定義された生体構造的方向におけるドリルスリーブ106、特に再調整スリーブ114の配置を確実にする。
【0120】
上述の補正を容易にするために、検証ツールを参照して、上で議論されるように、参照チャート、表、または再調整計算機が提供され得、術前に定義された軌道を達成するために、適切な再調整スリーブを選ぶことを支援する。正しい再調整スリーブの選択は、検証ツールのスライド式ルーラーを使用して決定されるような定量されたずれに基づく。ずれ値は、参照チャートもしくは表と相互参照され、または再調整計算機へ入力され、適当な再調整スリーブ114が同定される。
【0121】
上記の使用をさらに容易にするために、手術室スタッフに患者の生体構造のモデルを提供することは有利であり得る。例えば、モデルは、紙プリントアウト、手術室におけるモニター上のスクリーンイメージ、または、好ましくは物理的モデルとして提供され得る。特定の状況において、術中使用中、ユーザーは、ガイダンスツールが患者の生体構造に正しく合っていないことを見出し得る。例えば、初期医療用イメージングと術中手法との間で時間が経過する場合、患者の生体構造はガイダンスツールの全体的な適合に影響を及ぼす骨棘を発生する可能性がある。患者の生体構造のモデル、特に物理的モデルを提供することは、必要な場合、ガイダンスツールのずれの事象におけるトラブルシューティングプロセスを容易にし得る。
【0122】
ガイダンスツール66の調節可能性をさらに高めるために、ガイド部分70は、登録部分76に対して調節可能であり得る。例えば、いくつかの態様において、ガイド部分70は、着脱可能であり得、または登録部分から緩められるように設定され得、それによってガイド部分70は、わずかに再調整されたポジションでその後再び締められ得る。再調整される性能は、例えば、適した留め具が使用される長穴または特大穴によって提供され得る。
【0123】
ガイダンスツール66を適切なポジション/配向にセットし、正しいドリルスリーブ106または再調整スリーブ114を適所にセットすることで、中心ピン110は、概して図13において示されるように、当技術分野において公知の掘削方法論を使用して大腿骨頭22へ掘り込まれ得る。
【0124】
ピン110が大腿骨24に置かれると、ドリルスリーブ106(または再調整スリーブ114)は、ピンを越えて取り外され、ツール66は骨から取り外される。次いで、インプラント製造業者によって提供される説明書および/またはトレーニングに従って股関節リサーフェシング手法が続く。
【0125】
以前に示されるように、議論の目的に対して、上で記載される患者固有手法および結果としてもたらされるガイダンスツールは、股関節リサーフェシングを考慮して例示される。当業者は、上述の患者固有手法および結果としてもたらされるガイダンスツールが、例えば膝、足首、および肩手術、脊椎固定、頭蓋顎顔面手術、骨切り術、骨折処置および固定、脊柱側弯症、ならびに手首手術などの、その他の外科的手法における適用を見出し得ることを理解する。
【0126】
図14は、術前手法/方法論および結果としてもたらされるガイダンスツールが、外傷または関節炎によってダメージを受けている関節の高負荷表面の関節軟骨を置換するようにデザインされた治療のフォームであるモザイク形成術において使用される態様を示す。例えば膝などの体重負荷エリアにおけるダメージを受けた関節軟骨は、患者にとって痛いだけでなく、可動域(ROM)を限定し、それ故に患者の生活の質に対して大きな影響を有する。関節軟骨の自然治癒潜在力はかなり限定されるので、外科的処置は、しばしば、唯一の処置オプションである。
【0127】
一つの処置技術は、ドナー領域からダメージを受けた領域への複数の自家骨軟骨プラグの移植である。この手法の長期成功のために、移植プラグは、関節表面の曲率を再構築するべきである。そういうものとして、プラグのサイズ、高さ、ポジション、配向、および回転、ならびにプラグの数およびパターンを含む多くのパラメータが考慮されなければならない。
【0128】
図14において概して示されるように、モザイク形成術は、従来より二つのガイダンスツール200、202を伴い、第一ツール200は、軟骨材料を摘出するためにドナー部位204上で使用され、第二ツール202は、摘出された軟骨の正しいポジショニングを確実にするために受け入れ(ダメージを受けた)部位206上で使用される。
【0129】
膝のモザイク形成術の以下の例示的な態様において、股関節リサーフェシングに対して上で記載されるように、患者は、膝の骨生体構造、軟骨厚さ、および軟骨欠陥のアウトラインを再構築するために、CT、MRI、超音波、X線などの一つまたは複数によって術前医療用イメージングを受ける。図15aにおいて示されるように、骨モデル210および軟骨212の透明層を含む膝の仮想3-D等表面モデル208が算出される。次に、ダメージを受けた軟骨領域214が、軟骨欠陥を修正することによって仮想的に復元される。次いで、前述のソフトウェアを使用して、モザイク形成術の術前計画に対するテンプレートとして修正モデルが使用される。各々のプラグに対して、ユーザーは、ドナーおよび受け入れ(ダメージを受けた)エリアにおける半径、高さ、ポジション、および配向を修正し得る。グラフィックユーザーインターフェースは、ユーザーが最終仮想ガイダンスツールの適合の質を計画し、かつ評価することを可能にする。
【0130】
最終計画を術中使用へ移すために、高速プロトタイプテクノロジーを使用して、患者固有滅菌可能プラスチックガイダンスツール216が形成される。図15bにおいて示されるように、ガイダンスツール216は、膝の関節登録表面220と相補的な係合表面218を含み、膝上でのツール216の正しいポジショニングを可能にし、それによって術中手術野への術前計画の精密な転換を確実にする。各々のプラグに対して、二つの機器ガイドが、ガイダンスツールに組み入れられ得る。例えば、術前計画に関してプラグ切削機器を配向させるために、ガイダンスツールのドナー側上に、ドナーガイド222が位置付けられる。プラグの計画された高さを確実にするために、ガイドの上縁との調整に対して切削機器上の所定の高さマークを使用することが好ましい。同様の方式で、ガイダンスツール216の受け入れ(ダメージを受けた)側上のガイド224は、ダメージを受けたエリアへのプラグの準備および移植に対するツールのナビゲーションを容易にするために提供される。両方のガイド222、224は、好ましくは、プラグの回転が関節表面の計画された曲率に従うことを確実にするために、機器調整マークを用いてデザインされる。
【0131】
いくつかの状況において、ダメージを受けた生体構造は、かなり大きなエリアにわたる場合がある。例えば、膝の内側部位上に2×3cmの軟骨欠陥を有することは珍しくない。そのような欠陥を修復するために、概して、複数の自家骨軟骨プラグが必要とされ、その直径は、4 mm〜8 mmの範囲である。
【0132】
そのような手法に対して、術中ナビゲーションを容易にするために、三つの別個に形成された患者固有ガイダンスツールを使用することが有利である場合がある。ガイダンスツールの各々は、2〜4プラグのハーベスティング(harvesting)および挿入をガイドする役目を果たす。以前に述べられたように、複数のガイダンスツールが使用される事例において、各々のガイダンスツールに対して別個の検証ツールが使用され得る。あるいは、第一ガイダンスツールが、検証ツールをともなう使用に対して設定され得、その後のガイダンスツールのポジショニングは、ガイダンスツールの各々に共通の参照ポイントのセットを使用して検証される。例えば、図15bにおいて示されるように、ガイダンスツール216は、第一ガイダンスツールの配置に際して軟骨のマーキングを可能にする二つの参照ポイント226を提供する。その後の段階の間、これらの参照マーク226への第二ガイダンスツール(示されない)の調整は、第二ガイダンスツールが第一ガイダンスツールに調整されることを確実にする;第二ガイダンスツールのポジショニングが検証される。各々のツールが生体構造上に置かれる時、参照ポイントを用いる調整が、ガイダンスツールの正しいポジショニングを確実にする。ガイダンスツールがナビゲーションを容易にすることで、手法そのものが、例えばCOR軟骨修復システム(Depuy Mitek Inc., a Johnson and Johnson company, Warsaw, USA)などの従来的な軟骨修復システムを使用して実施され得る。
【0133】
術前計画およびガイダンスツールは、特に複数の自家骨軟骨プラグに関する事例において、時間効率が良く、正確で費用効果的であり、使用するのが簡単な関節軟骨再構築方法を提供する。
【0134】
図16a〜16dは、術前手法/方法論および結果としてもたらされるガイダンスツールが、橈骨遠位端骨切り術(distal radius osteotomy)において使用される態様を提供する。骨切り術は、関節のバイオメカニクスを変化させるために、特に関節を介する力伝達を変化させるために、骨を再調整するための外科的手法である。橈骨遠位端骨切り術に対して、橈骨302の3-D等表面モデル300が(CT-データおよび/またはその他の適した医療用イメージングから)作り出され、骨切り術が仮想的に行われる(図16a)。プレート304のモデルが、仮想的に補正された橈骨302の近位および遠位端上に仮想的に置かれる。プレートのスクリューポジションおよび配向が保存され、元の(骨折していない)橈骨上へ転換される。上で記載される手法/方法論に従って患者固有ガイダンスツール306が作り出され(図16bを参照されたい)、遠位および近位スクリュー穴のガイド掘削に対するガイドメカニズム308を提供する。手術の間、図16cにおいて示されるように、橈骨の遠位端が外科的に曝露され、ガイダンスツール306が位置付けられる。検証ツールを使用する検証に続いて、ガイダンスツール306へ挿入されるドリルスリーブ(または再調整スリーブ)を使用して、ユーザーは、図16dにおいて示される術前に計画された軌道310で橈骨302へスクリュー穴を開ける。手法は、Forstnerドリルビットまたはその他の適したツールを使用して遠位表面の成形を容易にするために第二ガイダンスツール(示されない)をさらに使用してもよい。ガイダンスツール306は、骨切り術の成形段階におけるフライス加工のポジション/位置および深さの両方を容易にするように設定され得る。成形が完了した後、ガイダンスツール306が取り外され、外科医が従来的な方式で骨切り術を行う。プレート、例えばSynthes 3.5 mmロッキング圧縮プレート304は、術前に計画されたスクリュー穴を使用して固定される。
【0135】
図17aおよび17bは、術前手法/方法論および結果としてもたらされるガイダンスツールが、人工膝関節置換手術において使用される、さらなる態様を提供する。人工膝関節置換手術において、大腿骨402および脛骨404の3-D等表面モデル400が作り出され、大腿骨遠位部および脛骨切除が計画される。二つのガイダンスピン408のガイド配置に対するガイドメカニズムを含む、大腿骨402に対する患者固有ガイダンスツール406が作り出される(図17a)。手術の間、ガイダンスツール406が、患者の生体構造上に置かれ、検証ツールを使用して位置的に検証され、次いでピン408が、大腿骨402へ置かれる。ガイダンスツール406を取り外した後、切除面の術前計画に対する切除ブロックをガイドするために、ピン408が使用される。ピン412のガイド配置に対するガイドメカニズムを含む同様のガイダンスツール410が、脛骨404に対して作り出される(図17b)。手術の間、これらのガイダンスピン412は、計画された脛骨切除面に対する切除ブロックの配置を可能にする。必要に応じて、ガイドメカニズムは、検証ツールを使用して示されるように必要とされる任意の補正に従って調節される。
【0136】
図18は、術前手法/方法論および結果としてもたらされるガイダンスツールが人工足関節置換手術において使用される、さらなる態様を提供する。人工足関節置換手術は、過去数年に、末期足関節炎の処置において認められた方法になった。人工足関節置換手術の長期帰結を解析する研究により、初期インプラント調整が術中および術後合併症を避けることにおいて、非常に重要な因子であることが示された。人工足関節置換手術に関する文献により、この手法の採用するにあたって習得が困難であることを示した。特に、外科的曝露が距骨の小さな部分しか可視化できないので、距骨部分の正しい調整を獲得することが問題である。その他の問題の中でも、この限定された視野は、初期外科的治具の正しいポジションを術中に決定することを困難にする。下肢関節形成術における適切な部分調整に対する必要性を強調することが調査の主要部分であり、不適切な調整および不安定性が、人工足関節置換手術における早期(すなわち、5年未満)の不具合の2大原因であることを示している。
【0137】
股関節リサーフェシングに対して上で記載される術前手法/方法論に従って、患者は、第一に術前計画を受け、CTスキャン(またはその他の適した医療用イメージング)が、生体構造患部上で行われる。図18aにおいて示されるように、医療用イメージングから3-D仮想モデル500が制作される。
【0138】
術前計画の際、図18bにおいて示されるように、人工装具部分502a、502bのポジション、サイズ、および配向が決定される。次いで、仮想骨モデル500がロードされ、生体構造的軸が定義され、仮想人工装具部分502a、502bが脛骨および距骨仮想モデルに重ね合わされる。このステージで、ユーザーは、各々の仮想人工装具モデルのポジションおよび配向を修正することができる。次いで、最終部分の特徴が保存される。
【0139】
術前計画に基づいて、次いで、高速プロトタイプ技術を使用して、選ばれた外科的アプローチを介してアクセス可能である脛骨遠位部および距骨508と相補的な係合表面506を提供するガイダンスツール504が作り出され得る。
【0140】
術中に、人工足関節置換手術は、従来的な外科的アプローチで始まる。脛骨遠位部および距骨508が曝露された後、図18cにおいて示されるように、ガイダンスツール506が、患者の生体構造の対応する登録表面に合わせられ、ドリルスリーブが挿入され、または必要な場合、再調整スリーブで調節され、かつガイドピン510が、適切なポジションへ掘り込まれる。ガイダンスツールが取り外されると、図18dにおいて示されるように、従来的な平面脛骨切除ブロック512が、脛骨508に合わせられ得る。次いで、切除が行われ得る。切削ガイドのポジションは、骨を切る前にX線透視で確認され得る。
【0141】
主に掘削およびピン配置のフレームワーク内で例示されるが、上で記載される術前プロセスは、その他の医療器具をともなう使用に適したその他のガイダンスツールの開発における適用を見出し得る。切削、拡掘、およびリサーフェシングに対して意図される機器をガイドするのに適しているガイダンスツールが、術前に計画され、かつ製造され得る。ガイドメカニズムが、図18cにおいて示されるようにガイドピンをセットする代わりに、鋸刃をガイドするために使用されるガイダンスブロック602を含む、人工足関節置換手術に対する代わりの手法およびガイダンスツール600が、図19a〜19cにおいて示される。そのような手法において、ガイダンスツール600の術前計画は、術前に定義された軌道が、鋸が方向付けられるべき面として同定されること以外は、上で議論されるものと同様である。術中に使用される場合、ガイダンスツール600は、患者の生体構造に合わせられ、正確な配置に対して検証される。位置的に検証されると、ガイドメカニズムは、鋸刃606を合わせるためのスロット604を含む適当なガイドブロック602を装着される。スロット604は、刃を合わせるような寸法にされ、刃を術前に決定された軌道面に沿って方向付ける。検証ツールによってとられた測定に基づいて調節が必要ならば、図19b(並進オフセット)および19c(角度オフセット)において示されるように、代わりの再調整ガイドブロック608が使用され得る。
【0142】
ガイドブロックにおいてスロットとして示されるが、ガイダンスツールは、鋸刃または同様の道具(例えば、のみ)をガイドするために一つまたは複数の縁上に軸受表面を提供し得る。ガイダンスツールは、さまざまな医療器具をガイドするために、ガイドメカニズムの任意の組み合わせを含んでもよい。例えば、ガイダンスツールは、複数のピンをセットするためのガイドメカニズムを含み得るが、鋸刃をガイドするような寸法にされたガイドブロックの受け入れに適したガイドメカニズムも提供する。
【0143】
上で記載される手法の態様により、個別の患者固有テンプレートまたはガイダンスツールの術中使用が骨および関節手術の際の全体的な精度を向上させ、成功率を高めることを可能にする。記載されるように、患者固有ガイダンスツールは、患者の生体構造の術前サーベイから作り出される。生体構造をサーベイし、かつモデリングする術前段階は、術中ナビゲーションの間に使用される精度値に基づいて中心ピン調整に対する計画を提供する。さらに、術前計画は、個々の患者固有ガイダンスツールを使用して、登録(性能指数)に対する数学的質値(mathematical quality value)を提供する。値は、ガイダンスツールを処置される患者に固有の一つのポジションに厳密に合わせる能力を反映する。加えて、ずれが術中に同定される事象において、術前に定義されたピン軌道を達成するために、オフセットドリルスリーブが、指摘されたずれを補正するために使用され得る。実際に、前方外側アプローチを使用する25股関節リサーフェシング手法に対する3-D軌道解析は、高度な軌道精度を示した。計画された角度と比較されるナビゲートされた外反角度の平均偏差は、3.57°の標準偏差をともなう1.46°内反であると決定された。大腿骨頸骨折、敗血症、または感染症などの合併症は、観測されていない。
【0144】
要約すれば、患者の生体構造の術前サーベイおよびモデリングならびに患者固有ガイダンスツールのその後の計画および制作は、組織内に「コンピューター支援エンジニアリングチーム」がいないクリニックが、コンピューター支援手術の精度を達成することを可能にする。図20において概説されるように、全体的な手法における全般的な段階は、以下のように示される:
a. 患者の患部の生体構造の適した医療用イメージ(例えば、CTスキャン)が獲得され、3-Dモデルが生成される(700);
b. 患者の生体構造の3-Dモデルに基づいて、生体構造への任意の操作(例えば、ピン配置、成形など)の正しい配置/軌道を決定するために、術前計画が実施される(710);
c. 術前計画の結果に基づいて、患者の生体構造の固有の登録表面などであるがそれらに限定されない因子を考慮して、ガイダンスツールのデザインが計算される(720);
d. ガイダンスツールのデザインが、要求しているユーザーによる点検、検証、および承認を受ける(730);
e. デザインが、高速プロトタイプ製造によって使用可能な物理的フォームへ変換され、かつ要求しているユーザーに送られる(740);
f. ガイダンスツールが、(ユーザーによる受け入れの前にまたはその際に)使用のために滅菌され、かつ準備される(750);
g. ガイダンスツールが術中に使用される(760)。
【0145】
上で記載される手法は、先行技術を越える多くの顕著な利点を有する。第一に、手法は、CASの正確性の利点を外科的調整ツールに関する精密さ、再現性、低コスト、および使いやすさ便益と組み合わせる。処置される固有の患者に対してガイダンスツールを最適化し、かつカスタマイズすることによって、ツールは、より小さく作られ得、それによって手術の間の切開のサイズを軽減する。手法は、実施しやすく、概して術中コンピューター支援手術方法論と関連する高額なディスポを必要としない。手法は、光電子工学コンピューター支援手術と関連する「視線」問題を軽減する。つまり、従来的なコンピューター支援手術に対して設定される手術室において、参加しているスタッフと適所にある装置との間に概して特定の量の干渉がある。例えば、外科医は、コンピューター支援装置の「視線」を邪魔し、またはコンピューター支援装置は、外科医の「視線」に干渉する。上述の手法は、手術室における厄介な装置の数量が軽減されるので、そのような「視線」問題を軽減する。さらに、追加的な外科的曝露を必要としない。ガイダンスツールはカスタマイズされ、それによって精密さを向上させ、かつ合併症および手術時間を減少させる。ガイダンスツールはディスポであり、在庫管理が最適化される。また、ガイダンスツールは、ピン配置に対する制御された並進および角度術中調節を可能にする。
【0146】
理解されるように、様々な代わりの適用可能な手法に対して、当業者にとって明らかであると考えられるように、特殊な留め具が必要である場合がある。技術、ツール、および方法論は、決して、股関節リサーフェシングまたは例示的な態様のいずれかに限定されることを意味しない。
【0147】
態様が詳細に記載され、かつ例証されているが、様々な改変および変化がなされ得ることが理解される。いくつかの態様が上で記載されているが、上で記載される機構のいくつかは、改変され得る、置換され得る、または省略さえされ得る。例えば、患者の生体構造上でガイダンスツールを登録するための係合表面は、任意の数の特徴的目印、一つから複数のそのような機構を組み入れ得る。掘削スリーブは、外科的グレード金属(例えば、外科的グレードステンレススチール、チタンなど)であるとして記載されるが、外科的に適合性のあるポリマーなどのその他の適した材料が使用されてもよい。ガイダンスツールは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)から製造されるが、その他の適したポリマー材料および金属が使用されてもよい。ガイダンスツールを作り出すために、高速プロトタイピングが使用されるが、必要なツールを形成するために、CNCフライス加工または鋳造テクノロジーなどのその他の方法が使用されてもよい。ガイダンスツールを使用して大腿骨頭へ挿入される中心ピンは、自己タッピングネジ式構造形が提供されるが、当業者にとって明らかであると考えられるように、その他の適したピンアンカリング代替が使われてもよい。検証ツールは、スライド式ルーラーとともに示されるが、検証ツールは、ギア付きキャリパー様またはその他のメカニズムを用いて設定される場合もあると考えられる。ガイダンスツールは、概して、ユニタリー構造体として示されるが、ガイドブロックおよび本体セクションは、別個に製造され制作後に取り付けられてもよい。加えて、ディスポ部分を係合表面を含むカスタマイズされた本体セクションに制限しながら、ガイドブロック部分またはツールを再使用することは実現可能であり得る。ガイドブロックは、各々の目印に対するロッキングキーを有するように記載されるが、ロッキングキーのポジションによって定義される同じ面上にある複数の目印位置が、単一のロッキングキーに対応してもよい。一つまたは複数のロッキングキーは、術中に調節されてもよく、調節の量は、検証ツールおよび/またはガイダンスツール上の分度器様スケールなどの適したマーキングまたはスケールによって決定され得る。あるいは、検証ツールは、一つまたは複数のロッキングキーから離され、かつそのポジションが調節されてもよく、調節の量は、検証ツールおよび/またはガイダンスツール上の分度器様スケールなどの適したマーキングまたはスケールによって決定され得る。検証ツールおよび掘削スリーブは、記載されるプロセスの間に同じチャネルを各々別個に使用するが、ガイダンスツール、特にガイドブロックは、これらの部分の各々を受け入れるための別個のチャネルまたはレセプタクルを用いて設定されてもよい。当業者にとって、さらなる代替および改変が生じ得る。すべてのそのような代替および改変は、本発明の範囲内であると信じられており、本明細書に添付される特許請求の範囲によってカバーされる。
【0148】
すべての引用される刊行物の内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の際の術中使用のための術前にデザインされたガイダンスツール:
本体部分;
患者の生体構造の対応する登録表面上に該ガイダンスツールを位置付けるための、該本体部分上に提供される係合表面;および
患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で少なくとも一つの医療器具をガイドするための該本体部分上に提供される少なくとも一つのガイドメカニズムであって、術中使用の間に必要であれば、一つまたは複数の術前に定義された軌道を変えるために調節可能である、ガイドメカニズム。
【請求項2】
本体部分が、ガイド部分および登録部分を含み、少なくとも一つのガイドメカニズムおよび係合表面の各々が、該ガイド部分および該登録部分の少なくとも一つの上に提供される、請求項1記載のガイダンスツール。
【請求項3】
本体部分が、安定性部分をさらに含む、請求項2記載のガイダンスツール。
【請求項4】
本体部分上の係合表面が、患者の生体構造を考慮して不連続である、請求項1記載のガイダンスツール。
【請求項5】
係合表面が、患者の生体構造の登録表面上に見出された特徴的な生体構造的目印と相補的である形状を含む、請求項1記載のガイダンスツール。
【請求項6】
術前に選択された生体構造的目印を考慮して、患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための取り外し可能な検証ツールをさらに含む、請求項1記載のガイダンスツール。
【請求項7】
検証ツールが、ガイドメカニズムへの挿入に対して設定される、請求項6記載のガイダンスツール。
【請求項8】
検証ツールが、一つまたは複数の術前に定義された軌道に対するガイダンスツールのずれを決定するための少なくとも一つの目盛付きセクションを含む、請求項6記載のガイダンスツール。
【請求項9】
検証ツールが、患者の生体構造に対するずれ値を提供するための二つの目盛付きセクションを含み、第一目盛付きセクションが、縦方向におけるずれ値を提供し、第二目盛付きセクションが、半径方向におけるずれ値を提供する、請求項8記載のガイダンスツール。
【請求項10】
少なくとも一つの目盛付きセクションが、ずれを測定するための目盛を提供されるスライド式ルーラーである、請求項8記載のガイダンスツール。
【請求項11】
あらかじめ選択された生体構造的目印との比較のために、術前に定義されたポジションにおいて検証ツールを調整するための、本体部分上に提供されるロッキングキーをさらに含む、請求項6記載のガイダンスツール。
【請求項12】
ガイドメカニズムが、ガイドチャネルおよび患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で医療器具をガイドするための該ガイドチャネル内の配置のための対応する機具スリーブを含む、請求項1記載のガイダンスツール。
【請求項13】
確立された軌道に調節を必要とする場合、ガイドメカニズムが、器具スリーブの代わりに使用され、器具の軌道の再調整を提供する再調整スリーブを含む、請求項12記載のガイダンスツール。
【請求項14】
再調整スリーブが、スリーブの中心軸に対する並進オフセットを用いて設定される、請求項13記載のガイダンスツール。
【請求項15】
再調整スリーブが、スリーブの中心軸に対する角度付きオフセットを用いて設定される、請求項13記載のガイダンスツール。
【請求項16】
再調整スリーブが、スリーブの中心軸に対する組み合わせられた並進オフセットおよび角度付きオフセットを用いて設定される、請求項13記載のガイダンスツール。
【請求項17】
並進オフセットが、中心軸から約0〜約5 mmである、請求項14記載のガイダンスツール。
【請求項18】
並進オフセットが、約0.01 mm〜約1 mmの範囲のインクリメントで提供される、請求項14記載のガイダンスツール。
【請求項19】
角度付きオフセットが、中心軸に対して約0〜約5°である、請求項15記載のガイダンスツール。
【請求項20】
角度付きオフセットが、約0.05°〜約1°の範囲のインクリメントで提供される、請求項15記載のガイダンスツール。
【請求項21】
以下の段階を含む、処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の際の術中使用のための少なくとも一つのガイダンスツールをデザインするための術前プロセス:
患者の生体構造の3-D表面モデルを作り出す段階;
骨または関節操作の間の少なくとも一つの医療器具の軌道を術前に決定するために患者の生体構造の3-D表面モデルを使用する段階;
患者の生体構造に対して登録するための少なくとも一つのガイダンスツールをデザインする段階であり、該少なくとも一つのガイダンスツールが、患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で骨または関節操作の間に該少なくとも一つの医療器具をガイドするためのガイドメカニズムと、患者の生体構造上に該少なくとも一つのガイダンスツールのポジション登録を提供する係合表面とを提供する、段階;および
患者の生体構造の3-D表面モデルを使用して患者生体構造上の少なくとも一つのガイダンスツールの適合、サイズ、およびデザインを術前に査定し、正しい適合を達成するために必要に応じて少なくとも一つのガイダンスツールのデザインを調節する段階。
【請求項22】
患者の生体構造の3-D表面モデルが、CT、MRI、X線、および超音波の一つまたは複数によって作り出される、請求項21記載の術前プロセス。
【請求項23】
適合の査定が、患者の生体構造に対する係合表面上の特徴的目印の検査に基づく定量的性能指数決定に関与する、請求項21記載の術前プロセス。
【請求項24】
少なくとも一つのガイダンスツールへの取り付けに対して設定され、患者の生体構造上の少なくとも一つのガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための取り外し可能な検証ツールと関連して使用される、少なくとも一つの特徴的な生体構造的目印の同定をさらに含む、請求項21記載の術前プロセス。
【請求項25】
複数のガイダンスツールが、特定の手法のための術中使用に対してデザインされる、請求項21記載の術前プロセス。
【請求項26】
以下の段階を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールを使用して骨または関節手術を容易にする方法:
患者の生体構造上の該ガイダンスツールのポジション登録を提供する係合表面と、患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で骨または関節操作の間に少なくとも一つの医療器具をガイドするためのガイドメカニズムとを提供する、患者の生体構造に対してデザインされている該ガイダンスツールを患者の生体構造上に直接置く段階;
患者の生体構造上のガイダンスツールのポジションを査定する段階;
ガイダンスツールのガイドメカニズムによって統制される術前に定義された一つまたは複数の軌道を査定する段階;
該少なくとも一つの医療器具の最適な軌道を達成するためにガイドメカニズムへの調節が必要かどうかを決定する段階;および
必要であれば、該少なくとも一つの医療器具に対する一つまたは複数の代わりの軌道を達成するために、該ガイダンスツールのガイドメカニズムを調節する段階。
【請求項27】
ガイダンスツールのガイドメカニズムに合わせられた検証ツールが、術前に定義された軌道を考慮してガイダンスツールのポジションおよび配向を査定するために使用される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
検証ツールが、一つまたは複数の術前に定義された軌道に対するガイダンスツールのずれを決定するための少なくとも一つの目盛付きセクションを含む、請求項27記載のガイダンスツール。
【請求項29】
検証ツールが、患者の生体構造に対するずれ値を提供するための二つの目盛付きセクションを含み、第一目盛付きセクションが、縦方向におけるずれ値を提供し、第二目盛付きセクションが、半径方向におけるずれ値を提供する、請求項28記載のガイダンスツール。
【請求項30】
少なくとも一つの目盛付きセクションが、ずれを測定するための目盛を提供されるスライド式ルーラーである、請求項28記載のガイダンスツール。
【請求項31】
ガイドメカニズムが、ガイドチャネルおよび機具スリーブを含み、軌道を再調整するための補正が、補正された軌道を達成するために該機具スリーブの代わりに使用される再調整スリーブによって提供される、請求項27記載の方法。
【請求項32】
ガイダンスツールが、手によって手動で患者の生体構造上の適所に保持される、請求項26記載の方法。
【請求項33】
ガイダンスツールが、ピン、スクリュー、ストラップ、クランプ、ジップタイ、および弾性ファスナーからなる群より選択される適した留め具を使用して患者の生体構造上の適所に保持される、請求項26記載の方法。
【請求項34】
ガイダンスツールに対して回転可能である検証ツールが、ガイドメカニズムによって統制される術前に定義された一つまたは複数の軌道を可視化し、かつ査定するためにさらに使用される、請求項27記載の方法。
【請求項35】
以下の段階を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールにおいて軌道を再調整する方法:
少なくとも一つの医療器具に対する少なくとも一つの術前に定義された軌道を確立するガイドメカニズムと、患者の生体構造上の該ガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための検証ツールとを有する、患者の生体構造に対してデザインされている該ガイダンスツールを術中に直接的に患者の生体構造上に置く段階;および
患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するために検証ツールを使用する段階。
【請求項36】
ずれの検出に際して、検証ツールが、該検証ツール上に提供される少なくとも一つの目盛付きセクションを使用して、ずれを定量するために使用される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
ずれの検出に際して、検証ツールが、該検証ツール上に提供される少なくとも二つの目盛付きセクションを使用して、ずれを定量するために使用される、請求項35記載の方法。
【請求項38】
参照チャート、表、または再調整計算機の少なくとも一つが、術前に定義された軌道に戻すために、登録されたずれに基づいて正しい再調整軌道を決定するために使用される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
参照チャートおよび/または表が、ガイダンスツールの形状寸法および患者の固有の生体構造を考慮して術前計画に基づいて術前に生成される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
ガイドメカニズムが、計算された再調整軌道と調和するように調節される、請求項38記載の方法。
【請求項1】
以下を含む、処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の際の術中使用のための術前にデザインされたガイダンスツール:
本体部分;
患者の生体構造の対応する登録表面上に該ガイダンスツールを位置付けるための、該本体部分上に提供される係合表面;および
患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で少なくとも一つの医療器具をガイドするための該本体部分上に提供される少なくとも一つのガイドメカニズムであって、術中使用の間に必要であれば、一つまたは複数の術前に定義された軌道を変えるために調節可能である、ガイドメカニズム。
【請求項2】
本体部分が、ガイド部分および登録部分を含み、少なくとも一つのガイドメカニズムおよび係合表面の各々が、該ガイド部分および該登録部分の少なくとも一つの上に提供される、請求項1記載のガイダンスツール。
【請求項3】
本体部分が、安定性部分をさらに含む、請求項2記載のガイダンスツール。
【請求項4】
本体部分上の係合表面が、患者の生体構造を考慮して不連続である、請求項1記載のガイダンスツール。
【請求項5】
係合表面が、患者の生体構造の登録表面上に見出された特徴的な生体構造的目印と相補的である形状を含む、請求項1記載のガイダンスツール。
【請求項6】
術前に選択された生体構造的目印を考慮して、患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための取り外し可能な検証ツールをさらに含む、請求項1記載のガイダンスツール。
【請求項7】
検証ツールが、ガイドメカニズムへの挿入に対して設定される、請求項6記載のガイダンスツール。
【請求項8】
検証ツールが、一つまたは複数の術前に定義された軌道に対するガイダンスツールのずれを決定するための少なくとも一つの目盛付きセクションを含む、請求項6記載のガイダンスツール。
【請求項9】
検証ツールが、患者の生体構造に対するずれ値を提供するための二つの目盛付きセクションを含み、第一目盛付きセクションが、縦方向におけるずれ値を提供し、第二目盛付きセクションが、半径方向におけるずれ値を提供する、請求項8記載のガイダンスツール。
【請求項10】
少なくとも一つの目盛付きセクションが、ずれを測定するための目盛を提供されるスライド式ルーラーである、請求項8記載のガイダンスツール。
【請求項11】
あらかじめ選択された生体構造的目印との比較のために、術前に定義されたポジションにおいて検証ツールを調整するための、本体部分上に提供されるロッキングキーをさらに含む、請求項6記載のガイダンスツール。
【請求項12】
ガイドメカニズムが、ガイドチャネルおよび患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で医療器具をガイドするための該ガイドチャネル内の配置のための対応する機具スリーブを含む、請求項1記載のガイダンスツール。
【請求項13】
確立された軌道に調節を必要とする場合、ガイドメカニズムが、器具スリーブの代わりに使用され、器具の軌道の再調整を提供する再調整スリーブを含む、請求項12記載のガイダンスツール。
【請求項14】
再調整スリーブが、スリーブの中心軸に対する並進オフセットを用いて設定される、請求項13記載のガイダンスツール。
【請求項15】
再調整スリーブが、スリーブの中心軸に対する角度付きオフセットを用いて設定される、請求項13記載のガイダンスツール。
【請求項16】
再調整スリーブが、スリーブの中心軸に対する組み合わせられた並進オフセットおよび角度付きオフセットを用いて設定される、請求項13記載のガイダンスツール。
【請求項17】
並進オフセットが、中心軸から約0〜約5 mmである、請求項14記載のガイダンスツール。
【請求項18】
並進オフセットが、約0.01 mm〜約1 mmの範囲のインクリメントで提供される、請求項14記載のガイダンスツール。
【請求項19】
角度付きオフセットが、中心軸に対して約0〜約5°である、請求項15記載のガイダンスツール。
【請求項20】
角度付きオフセットが、約0.05°〜約1°の範囲のインクリメントで提供される、請求項15記載のガイダンスツール。
【請求項21】
以下の段階を含む、処置される患者の生体構造に固有である、骨または関節手術の際の術中使用のための少なくとも一つのガイダンスツールをデザインするための術前プロセス:
患者の生体構造の3-D表面モデルを作り出す段階;
骨または関節操作の間の少なくとも一つの医療器具の軌道を術前に決定するために患者の生体構造の3-D表面モデルを使用する段階;
患者の生体構造に対して登録するための少なくとも一つのガイダンスツールをデザインする段階であり、該少なくとも一つのガイダンスツールが、患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で骨または関節操作の間に該少なくとも一つの医療器具をガイドするためのガイドメカニズムと、患者の生体構造上に該少なくとも一つのガイダンスツールのポジション登録を提供する係合表面とを提供する、段階;および
患者の生体構造の3-D表面モデルを使用して患者生体構造上の少なくとも一つのガイダンスツールの適合、サイズ、およびデザインを術前に査定し、正しい適合を達成するために必要に応じて少なくとも一つのガイダンスツールのデザインを調節する段階。
【請求項22】
患者の生体構造の3-D表面モデルが、CT、MRI、X線、および超音波の一つまたは複数によって作り出される、請求項21記載の術前プロセス。
【請求項23】
適合の査定が、患者の生体構造に対する係合表面上の特徴的目印の検査に基づく定量的性能指数決定に関与する、請求項21記載の術前プロセス。
【請求項24】
少なくとも一つのガイダンスツールへの取り付けに対して設定され、患者の生体構造上の少なくとも一つのガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための取り外し可能な検証ツールと関連して使用される、少なくとも一つの特徴的な生体構造的目印の同定をさらに含む、請求項21記載の術前プロセス。
【請求項25】
複数のガイダンスツールが、特定の手法のための術中使用に対してデザインされる、請求項21記載の術前プロセス。
【請求項26】
以下の段階を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールを使用して骨または関節手術を容易にする方法:
患者の生体構造上の該ガイダンスツールのポジション登録を提供する係合表面と、患者の生体構造に対して一つまたは複数の術前に定義された軌道で骨または関節操作の間に少なくとも一つの医療器具をガイドするためのガイドメカニズムとを提供する、患者の生体構造に対してデザインされている該ガイダンスツールを患者の生体構造上に直接置く段階;
患者の生体構造上のガイダンスツールのポジションを査定する段階;
ガイダンスツールのガイドメカニズムによって統制される術前に定義された一つまたは複数の軌道を査定する段階;
該少なくとも一つの医療器具の最適な軌道を達成するためにガイドメカニズムへの調節が必要かどうかを決定する段階;および
必要であれば、該少なくとも一つの医療器具に対する一つまたは複数の代わりの軌道を達成するために、該ガイダンスツールのガイドメカニズムを調節する段階。
【請求項27】
ガイダンスツールのガイドメカニズムに合わせられた検証ツールが、術前に定義された軌道を考慮してガイダンスツールのポジションおよび配向を査定するために使用される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
検証ツールが、一つまたは複数の術前に定義された軌道に対するガイダンスツールのずれを決定するための少なくとも一つの目盛付きセクションを含む、請求項27記載のガイダンスツール。
【請求項29】
検証ツールが、患者の生体構造に対するずれ値を提供するための二つの目盛付きセクションを含み、第一目盛付きセクションが、縦方向におけるずれ値を提供し、第二目盛付きセクションが、半径方向におけるずれ値を提供する、請求項28記載のガイダンスツール。
【請求項30】
少なくとも一つの目盛付きセクションが、ずれを測定するための目盛を提供されるスライド式ルーラーである、請求項28記載のガイダンスツール。
【請求項31】
ガイドメカニズムが、ガイドチャネルおよび機具スリーブを含み、軌道を再調整するための補正が、補正された軌道を達成するために該機具スリーブの代わりに使用される再調整スリーブによって提供される、請求項27記載の方法。
【請求項32】
ガイダンスツールが、手によって手動で患者の生体構造上の適所に保持される、請求項26記載の方法。
【請求項33】
ガイダンスツールが、ピン、スクリュー、ストラップ、クランプ、ジップタイ、および弾性ファスナーからなる群より選択される適した留め具を使用して患者の生体構造上の適所に保持される、請求項26記載の方法。
【請求項34】
ガイダンスツールに対して回転可能である検証ツールが、ガイドメカニズムによって統制される術前に定義された一つまたは複数の軌道を可視化し、かつ査定するためにさらに使用される、請求項27記載の方法。
【請求項35】
以下の段階を含む、術前にデザインされた患者固有ガイダンスツールにおいて軌道を再調整する方法:
少なくとも一つの医療器具に対する少なくとも一つの術前に定義された軌道を確立するガイドメカニズムと、患者の生体構造上の該ガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するための検証ツールとを有する、患者の生体構造に対してデザインされている該ガイダンスツールを術中に直接的に患者の生体構造上に置く段階;および
患者の生体構造上のガイダンスツールの正しいポジションを機械的に検証するために検証ツールを使用する段階。
【請求項36】
ずれの検出に際して、検証ツールが、該検証ツール上に提供される少なくとも一つの目盛付きセクションを使用して、ずれを定量するために使用される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
ずれの検出に際して、検証ツールが、該検証ツール上に提供される少なくとも二つの目盛付きセクションを使用して、ずれを定量するために使用される、請求項35記載の方法。
【請求項38】
参照チャート、表、または再調整計算機の少なくとも一つが、術前に定義された軌道に戻すために、登録されたずれに基づいて正しい再調整軌道を決定するために使用される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
参照チャートおよび/または表が、ガイダンスツールの形状寸法および患者の固有の生体構造を考慮して術前計画に基づいて術前に生成される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
ガイドメカニズムが、計算された再調整軌道と調和するように調節される、請求項38記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18a】
【図18b】
【図18c】
【図18d】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18a】
【図18b】
【図18c】
【図18d】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2010−526605(P2010−526605A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507771(P2010−507771)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000930
【国際公開番号】WO2008/138137
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(505458245)クィーンズ ユニバーシティー アット キングストン (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000930
【国際公開番号】WO2008/138137
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(505458245)クィーンズ ユニバーシティー アット キングストン (11)
【Fターム(参考)】
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