説明

患者用シャワー浴装置

【課題】浴水を上方から噴出するのみで、ストレッチャーで仰臥した患者に入浴気分を味わせる患者用シャワー浴装置を得る。
【解決手段】浴水を天板部から下方に向けて噴出するシャワーノズル(11)を備えた本体部(2)と、該本体部(2)に出入り可能に収容されるストレッチャー(20)とを設け、前記ストレッチャー(20)は、台車(21)の上部に、仰臥した患者の上面部が露出する浅くて前後方向に長い浴槽(30)を設け、該浴槽(30)の底面(32a)の左右両側を左右中心に向けて下り傾斜させるとともに、該底面(32a)の左右中心部に中央排水溝(33)を設け、該中央排水溝(33)からの排水量を浴槽(30)内の水位が上部位置となるように調節する排水調節装置(38a)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者をストレッチャーに仰臥させてシャワーを浴びせる患者用シャワー浴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、天板部に浴水(温水)を下方に向けて噴出する上部シャワーノズルを、上下方向中間部の水受け棚に浴水(温水)を上方に向けて噴出する下部シャワーシャワーノズルをそれぞれ設け、左右両側にストレッチャーが出入りする開口部を設けてなる本体部と、台車の上部に、患者を前後方向に向けて寝かせる通水可能なマット(ネット)を設けてなるストレッチャーとを設け、前記ストレッチャーを前記本体部に左右方向から嵌合させてそのマットを本体部の水受け棚の上方に配置し、前記上部シャワーノズル及び下部シャワーシャワーノズルから前記マット上に寝かせた患者の上下面に浴水を浴びせるようにしたものがあった。
【0003】
前記従来のものは、水受け棚に下部シャワーノズルを設けたり、該水受け棚を前後方向に分断してストレッチャーを通過させるようにしていたため、構造が複雑になるとともに、下部シャワーノズルから噴出した浴水がマット(ネット)に阻害されて患者の背面部に効率良く当たらなくなるものであった。
【特許文献1】特開平9−238992号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、浴水を上方から噴出するのみで、ストレッチャーで仰臥した患者に入浴気分を味わせるようにした新規な患者用シャワー浴装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の如く構成したものである。即ち、請求項1に係る発明は、浴水を天板部から下方に向けて噴出するシャワーノズルを備えた本体部と、該本体部に出入り可能に収容されるストレッチャーとを設け、前記ストレッチャーは、台車の上部に、仰臥した患者の上面部が露出する浅くて前後方向に長い浴槽を設け、該浴槽の底面の左右両側を左右中心に向けて下り傾斜させるとともに、該底面の左右中心部に中央排水溝を設け、該中央排水溝からの排水量を浴槽内の水位が上部位置となるように調節する排水調節装置を設ける構成にしたものである。
請求項2に係る発明は、前記浴槽の底面に緩衝用のマットを敷き、該マットに浴槽内の水位が上部位置となる排水調節孔を設けたものである。
請求項3に係る発明は、前記浴槽の中央排水溝に、ストレッチャーと共に本体部に出入り可能な排水管を接続し、本体部に排水受けを設けるとともに、該排水受けを本体部に収容されたストレッチャーの前記排水管の排水口の直下方に配置したものである。
請求項4に係る発明は、前記本体部を前後方向に長くするとともに、その左右両側にストレッチャーを横向きにした状態で出入り可能な側面開口部を設け、該側面開口部の上部を開閉するサイドカバーを設け、該サイドカバーを閉作動させてストレッチャーに載置された患者の左右両側を包囲したものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明は、シャワーノズルから浴水(温水)を噴出させると、該浴水がストレッチャー上で仰臥した患者の上面に当たり、該上面を洗浄、あるいは加温することになる。患者の上面に当たった浴水は、該患者の側面に沿って浴槽内の外周部に流下し、該浴槽の底面に沿って中央排水溝に向かうことになる。
前記浴槽内に流下した浴水は、排水調節装置によって排水が調節され、浴槽内で浴水(温水)が所定量滞留された状態で順次中央排水溝から外部に排出されることになる。これにより、患者の背面部が浴槽内に滞留した浴水に浸り、該背面部を洗浄、あるいは加温するとともに、前記浴槽内に滞留する浴水は、汚れることなく常時清浄な状態に維持されることになる。
請求項2に係る発明は、緩衝用のマットに排水調節孔を設けるようにしたので、該排水孔の形成、位置の変更等が容易に行えることになる。
請求項3に係る発明は、ストレッチャーを本体部に出し入れする際に、浴槽の排水管と外部の排水ホースとの接続、離脱作業が不要となり、介護者の負担が軽減することになる。
請求項4に係る発明は、本体部が前後方向に長い門形となるので、小型かつ簡素な構造となる。また、ストレッチャーを横向きにして本体部の左右側部から収容できるようにするとともに、患者の左右両側をサイドカバーにより包囲するようにしたので、狭いスペースで患者のシャワー浴が行なえるとともに、患者の身体部を略密閉状態にしてシャワー浴させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施例を図面に基いて説明する。図面において、図1は本発明による患者のシャワー浴状態を示す一部断面側面図、図2は図1のII-II断面図、図3はストレッチャーの断面側面図、図4はマットを除去したストレッチャーの平面図、図5は図4のV-V相当の一部断面正面図である。
【0008】
図1、図2において、1は患者用シャワー浴装置であり、浴水の噴出シャワーノズルを備えた本体部2、及び本体部2に出入り可能に収容されるストレッチャー20を有してなる。前記本体部2は、枠体3をFRP(繊維強化プラスチック)、及び金属等により門形に形成する。即ち、前後方向に間隔をおいて起立配置した前壁4と後壁5との上部に細長い天板6を前後方向に配置し、該天板6の後端(図1において右端)は後壁5に突き合わせて一体的に連結し、天板6の前端は前壁4よりも後方に位置させ、サイドブラケット7を介して前壁4の上部に一体的に連結する。
【0009】
これにより、図2に示すように、ストレッチャー20を横向きにした状態で左右方向から本体部2に出入りできる大きな側面開口部(ア)を有し、また、図1に示すように、前部の上面に、ストレッチャー20に仰臥された患者Mの視野が確保できる天窓(イ)を有する門形の枠体3を形成する。
【0010】
前記天板6は断面円弧状とし、その内面の左右に一対の吐出ホース(又はパイプ)10を前後方向に延長させて固定し、各吐出ホース10にそれぞれ複数(本例では5個づつ)のシャワーノズル11を前後方向に間隔をおいて取り付ける。前記吐出ホース10は温水器に接続され、該温水器で生成された温水(浴水)がポンプにより昇圧、または水道圧で供給されるようになっている。なお、前記吐出ホース10に供給する温水に洗浄液(シャンプー)あるいは消毒液等を混入してもよい。
【0011】
前記天板6の左右両側に、側面開口部(ア)の上部を開閉するサイドカバー12を取り付け(図2)、前記天板6の前端に前部遮蔽板13を取り付ける(図1)。前記サイドカバー12は、図2に示すように、天板6の左右両側に蝶番14を介して上下回動可能に連結され、上方に回動(図2の仮想線)させた際には、ストレッチャー20が患者Mを載置した状態で左右方向から本体部2に出入りできるようにする。また、下方に回動させた際には、図2の実線で示すように、下端がストレッチャー20の浴槽30の外側に接近し、浴槽30内に仰臥された患者Mの左右両側を包囲する。これにより、前記サイドカバー12、浴槽30、本体部2の天板6及び後壁5により本体部2の上部を略密閉し、患者Mが効率よく加温できるようにする。
【0012】
また、前記前部遮蔽板13は非通水性の布、あるいは発泡性のプラスチックにより形成されて前記患者Mの首部に垂下され、シャワーノズル11から噴射された温水が患者Mの顔面に向かうのを防止するとともに、患者が収容される本体部2の上部をより高い密閉状態にする。図2において、15はサイドカバー12を開閉するための把手、16はサイドカバー12の下端に取り付けたスペーサプレートであり、下方に回動させたサイドカバー12の下部と浴槽30との間隙を閉塞するとともに、サイドカバー12の内面に沿って流下した水滴を浴槽30の側部排水溝34に案内するためのものである。
【0013】
ストレッチャー20は、台車21の上部に浴槽30を搭載してなり、横向きにした状態で前記本体部2に左右方向から出し入れ可能となっている。前記台車21はパイプ材を組み合わせて前後方向に長い立体状に形成し、左右両側にコ字状のハンドル22を取り付け、前後脚の下部にキャスター23を取り付け、左右両側の前後方向中間部に伸縮可能な補助脚24を取り付けてなる。前記台車21の前後にガイドローラ25を取り付ける。該ガイドローラ25は、図1に示すように、本体部2にストレッチャー20を嵌合させる際に本体部2の前後壁4,5に接触してストレッチャー20をガイドする。また、図5に示すように、前記台車21の左右にガード26を上下動可能に取り付ける。該ガード26は、上方に移動させた際に浴槽30の上面から上方に突出し、患者Mが浴槽30の左右から落下するのを防止するためのものである。
【0014】
浴槽30はFRPにより形成され、図3〜図5に示すようになっている。即ち、台車21の上部に前後方向に長い保持容器31を取り付け、該保持容器31の上部に浴槽主体32を固定する。該浴槽主体32は、仰臥した患者Mの上面部が露出するように、浅くて前後方向に長い容器状に形成するとともに、底面32aを横断面円弧状とし(図5)、底面32aの左右中心部に前後方向に延びる中央排水溝33を、該底面32aの左右両側端部に前後方向に延びるオーバーフロー用の側部排水溝34を(図4)、底面32aの後部寄りに側部排水溝34を中央排水溝33に連通させる横排水溝35をそれぞれ形成し、該横排水溝35と中央排水溝33との交差部に排水口36(図3)を形成する。37は前記底面32aの前部に形成した枕である。
【0015】
前記浴槽主体32の底面32aの略全面に軟質プラスチック性のマット38を敷き、前記中央排水溝33及び横排水溝35を閉塞するとともに、該マット38の左右中心部に排水調節孔(排水調節装置)38aを前後方向に所定の間隔をおいて形成する。該排水調節孔38aは、シャワーノズル11から浴槽主体32に流入した温水の排出量を調節するもので、浴槽主体32内の温水の水位が該浴槽主体32の上部に位置するように、孔の大きさ、及び個数を設定する。これにより、浴槽主体32内の温水で患者Mの背面部を浴槽主体32内の温水で加温するとともに、シャワーノズル11から供給される浴槽主体32内の温水を上部側から下部の中央排水溝33に向けて流動、排出させ、浴槽主体32内の温水が常に清浄な状態となるようにする。図5において、39は側部排水溝34の上面に被せた多孔製のガイド板であり、患者Mを浴槽主体32に出し入れする際に該患者Mが側部排水溝34に引っ掛かるのを防止するためのものである。
【0016】
前記排水口36に短い排水管40(図3)を接続し、該排水管40の下流端を台車21の後部脚部に位置させ、この部にバルブ41(排水調節装置)を取り付け、該バルブ41のレバー41aを操作することによって排水管40を開閉する。なお、前記バルブ41の開度を調節することによって浴槽主体32内の温水の水位が該浴槽主体32の上部に位置するようにようにしてもよい。前記排水管40下流端に可撓性の端部管42を取り付け、該端部管42の後端を、図1に示すように、本体部2の後壁5に取り付けた排水受け17の直上方に位置させる。該排水受け17は大径の容器状とし、底部に小径の排水ホース18を接続し、該排水ホース18を外部(屋内)の排水管に接続する。
【0017】
前記本体部2の後壁5には、図1に示すように、外部の温水器に接続される流入管44及び三方弁45を取り付け、温水器から供給される湯を三方弁45を操作することによって前述した吐出ホース10とハンドシャワーホース46とに切り換えて供給する。ハンドシャワーホース46は、先端部にハンドシャワー47を取り付け、該ハンドシャワー47で水槽30内に仰臥させた患者Wを手揉みしながら洗浄できるようにする。この場合は、サイドカバー12を開けて行う。なお、図1において48は本体部2の後壁5に取り付けた手洗い器である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による患者のシャワー浴状態を示す一部断面側面図である。
【図2】図1のII-II断面図である。
【図3】ストレッチャーの断面側面図である。
【図4】マットを除去したストレッチャーの平面図である。
【図5】図4のV-V相当の一部断面正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 シャワー浴装置
2 本体部
3 枠体
4 前壁
5 後壁
6 天板
7 サイドプレート
(ア) 側面開口部
(イ) 天窓
M 患者
10 吐出ホース
11 シャワーノズル
12 サイドカバー
13 前部遮蔽板
14 蝶番
15 把手
16 スペーサプレート
17 排水受け
18 排水ホース
20 ストレッチャー
21 台車
22 ハンドル
23 キャスター
24 補助脚
25 ガイドローラ
26 ガード
30 浴槽
31 保持容器
32 浴槽主体
32a 底面
33 中央排水溝
34 側部排水溝
35 横排水溝
36 排水口
37 枕
38 マット
38a 排水調節孔(排水調節装置)
39 ガイド板
40 排水管
41 バルブ(排水調節装置)
41a レバー
42 端部管
44 流入管
45 三方弁
46 ハンドシャワーホース
47 ハンドシャワー
48 手洗い器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴水を天板部から下方に向けて噴出するシャワーノズル(11)を備えた本体部(2)と、該本体部(2)に出入り可能に収容されるストレッチャー(20)とを設け、前記ストレッチャー(20)は、台車(21)の上部に、仰臥した患者の上面部が露出する浅くて前後方向に長い浴槽(30)を設け、該浴槽(30)の底面(32a)の左右両側を左右中心に向けて下り傾斜させるとともに、該底面(32a)の左右中心部に中央排水溝(33)を設け、該中央排水溝(33)からの排水量を浴槽(30)内の水位が上部位置となるように調節する排水調節装置(38a)を設けたことを特徴とする患者用シャワー浴装置。
【請求項2】
浴槽(30)の底面(32a)に緩衝用のマット(38)を敷き、該マット(38)に浴槽(30)内の水位が上部位置となる排水調節孔(38a)を設けたことを特徴とする請求項1記載の患者用シャワー浴装置。
【請求項3】
浴槽(30)の中央排水溝(33)に、ストレッチャー(20)と共に本体部(2)に出入り可能な排水管(40)を接続し、本体部(2)に排水受け(17)を設けるとともに、該排水受け(17)を本体部(2)に収容されたストレッチャー(20)の前記排水管(40)の排水口の直下方に配置したことを特徴する請求項1又は2記載の患者用シャワー浴装置。
【請求項4】
本体部(2)は、前後方向に長くするとともに、その左右両側にストレッチャー(20)を横向きにした状態で出入り可能な側面開口部(ア)を設け、該側面開口部(ア)の上部を開閉するサイドカバー(12)を設け、該サイドカバー(12)を閉作動させてストレッチャー(20)に載置された患者の左右両側を包囲したことを特徴する請求項1,2又は3記載の患者用シャワー浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−291299(P2009−291299A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145742(P2008−145742)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(393029011)株式会社アルボ (2)
【Fターム(参考)】