説明

患者識別システムおよび患者位置決め方法

本発明は、患者識別システム(Z)、およびそれによって患者が識別可能かつ局在可能である適切な方法に関し、前記システムは、a)患者(4)を識別するための手段と、b)少なくとも1つのマーカー(3)の形で空間に患者を局在するための手段とを有し、ここで前記手段はデジタル式に把握可能であり、前記システムは少なくとも1つの担体(2)に配置されており、かつ前記担体は直接的/または間接的に患者に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者がデジタルに識別可能および局在可能である患者識別システムに関し、さらにデジタルの識別および局在によって患者を所望位置に配置する患者位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空間における特定の所定の位置で繰返される患者の位置決めは、医学的治療および/または診断処置に際して重要な意味がある。例えば、放射線療法が挙げられる。放射線療法は、良性および悪性腫瘍における予備、付随、または関連治療として使用される。患者の照射に際しては、放射線源に対するその位置および姿勢がきわめて重要である。放射線は、できる限り正確に治療すべき箇所、いわゆるアイソセンターに方向づけられるべきである。一方では腫瘍はできる限り完全に放射線によって当てられるべきであるが、他方では隣接した健常な組織はできる限り放射線によって当てられるべきではない。したがって、アイソセンターはできる限り正確に放射線源に配置されなければならない。通常、一回限りの照射では不十分であるので、規則的な時間間隔で患者をつねに新たに放射線源に配置する必要がある。この患者の(再)位置決めは、現在までは通常、適切に訓練を受けた人員によって行われる。
【0003】
人員による位置決めの欠点は、一方では、位置決めの質、すなわち正確度が、人員によって左右され、それに応じて変動にさらされることである。さらに、位置決めは、人員内に存在する位置決めに対する変動を制限するために、かつさまざまな人員が位置決めをさまざま時点で行うことによる不正確さをさらに挿入しないために、つねに同じ人員によって行われなければならない。最後に、患者位置決めの変動する正確度だけではなく、時間的制約も問題である。前提として、人員は通常、機械と比べ高い時間的制約を示すことになる。しかし、自動の位置決めは現在まで大幅に制限されることによってのみ可能である。その条件は、患者がつねに完全に等しく位置決め前に患者用ソファーへ配置され、それによってのみ自動調節可能なソファーがつねに同じ位置へ移動することができる。こうして、ソファーは、例えば自動生産において使用される、せり上がり舞台のやり方で使用可能であろう。しかし、患者が正確に等しく配置されないと直ちに自動の位置決めは不可能となる。したがって、健常組織が治療され、罹患組織が触れずにおかれる高い危険性がある。
【0004】
自動の位置決めには、どの患者が問題であるかを位置決めシステムが識別しうることも重要である。自動の位置決めに際しては「目視検査」が放射線技術的助手によって行われないので、適切な患者が、位置決めシステムによって移動される適切な位置と関連づけられ、すなわち「間違った」患者において治療が行われないことが確保されなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、以下の本発明の課題は、患者が識別可能であり、かつ空間に局在可能である患者識別システムを提供することである。さらに、適切な患者位置決め方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の患者識別システムおよび請求項8に記載の患者位置決め方法によって解決される。好ましい実施形態は従属請求項ムの主題である。
【0007】
本発明による患者識別システムは、一方では患者を識別するための手段を有し、他方では少なくとも1つのマーカー、好ましくは3つのマーカーの形で患者を空間に局在する手段を有する。これらの手段はデジタル式に把握可能である。本発明によるシステムは、少なくとも1つの担体に配置されており、この担体は直接的および/または間接的に患者に固定されている。言い換えれば、患者を識別するための手段および患者を空間に局在するための手段が配置されている担体が備えられており、担体に配置されたシステムによって、どの患者が問題であり、かつ、患者の位置が空間において正確に知られているという点で、いかに患者が治療室で局在されるか、患者がデジタル式に識別可能である。より正確に言えば、直接的または間接的に患者において固定された担体または担体に配置されたマーカーが空間のどこに存在するか既知である。患者における固定に基づき、それぞれの患者のアイソセンターが3次元空間のどこに存在するか推論されうる。
【0008】
識別手段は、好ましくは、バーコードまたはパターン再帰反射性マーキングもしくは無線ラベル(RFID−タグ)である。この手段が、例えばCCDカメラまたは赤外線カメラを用いてデジタル式に把握可能であることが重要である。さらに、担体が、例えば名前および患者番号が担体に取付けられていることによって、人員のためにも患者に関する間接的に読取り可能な情報を含むことが意図されている。担体は、好ましくは、既知のバンクカードのようなカードの形を有する。このカードは患者を固定するための構造物に、または直接患者に固定されうる。かかる構造物は、例えばヘッドホルダー、マウスホルダー、定位固定フレーム、または身体固定手段である。あるいは、本発明による担体は、患者自身を固定するための構造物でもありうる。これは、両方の手段が間接的にこの構造物に備えられていることを意味する。
【0009】
本発明による患者識別システムの利点は、それによって患者がデジタル式に把握可能であり、すなわち、その空間における位置がデジタル式に把握可能であるよりも識別可能であることである。それによって、自動の位置決め方法の基本条件が提供され、特に確実なドキュメンテーションも達成される。したがって、このために使用されるロボットまたは別のシステムが患者の身元および位置を把握し、それによって得られた情報を用いて患者を自動に位置決めすることができる。その識別情報によって、自動システムは、どの患者が問題であるかを識別し、その患者に対して存在するデータを呼び出すことができる。このデータには、好ましくは、患者の治療すべきアイソセンターがどこにあるかに関する情報も含まれる。これらのデータが一致しない場合は、治療器具、例えば、線型加速器が遮断され、もしくはその作動は解除されない。さらに、この患者識別システムは、患者がいかに、かつ空間のどこに存在するかに関する情報を提供する。患者をつねに一定に治療ソファーに配置することが試みられるが、これはつねに正確に一定であることが可能であるわけではない。長手方向軸の周りで患者のわずかな回転によって生じる直接の偏向は、標準的な配置可能性を用いて把握することは比較的困難である。しかし、本発明による患者識別システムの患者を局在する手段を用いて、正確にこれらのデータが既知となる。空間における患者の実際の位置はそれによって既知であり、位置決めシステムがそれにより得られたデータを処理し、アイソセンターの既知の基準データと関連づけるとともに、適切に患者の位置決めを行うことができる。それによって、患者がつねに正確に治療器具に配置されることが保証される。上述したように、患者の正確な位置決めはこの場合、特に放射線治療および手術ロボットによって行われる外科手術において不可欠である。
【0010】
本発明による患者位置決め方法は以下のステップ、すなわち、
a)患者をソファーに固定するステップと、
b)患者識別システムを患者に取付けるステップと、
c)患者を所望位置へもたらすステップと、
d)患者を識別するステップと、
e)好ましくは所望位置のデジタル式の受入れを患者識別システムの助けを借りて行うステップと、
f)患者の新たな位置決めに際して、ステップa〜cを繰返すステップと、
g)好ましくは患者の実位置のデジタル式の受入れを患者識別システムを用いて行うステップと、
h)実位置の受入れを比較するステップと、
i)実位置と所望位置の偏差の確認に際して、実位置が実質的に所望位置と一致するまでソファーを調節するステップとを含む。
【0011】
上記のように、患者識別システムを用いて患者は自動に識別され、その空間における位置は自動に決定される。それによって患者の自動の位置決めが行われうる。あるいは、得られたデータは、例えば、スクリーン上にデータを表示するためにも使用され、人員、例えば放射線技術助手が、患者の位置決めを得られたデータの助けを借りて手動で行うことができる。
【0012】
好ましくは、患者の自動の位置決めに際して、患者用ソファーの調節は少なくとも1つの六脚によって行われる。六脚によるソファーの調節に際しての利点は、それによって最適に全部で6つの自由度が達成されうることである。したがって、患者の位置は、X、Y、およびZ軸を用いて調節可能であるだけではなく、3つの回転軸を介しても調節可能である。デジタル式の受入れは、少なくとも1つのCCDカメラまたは赤外線カメラもしくは位置データを局在するための受信機で行われうる。さらに、受入れは能動的三角測量、光切断法、および/またはコード化光アプローチ法を用いて行われうる。それによって特に正確な受入れが可能であり、これは患者データを可能な限り正確に把握するために重要である。さらに、患者識別システムのマーカーが把握され、患者の位置に関する情報が得られるだけではなく、患者自身の特色、例えば、骨の特徴、または顔立ちの目立った点、例えば鼻、顎、もしくは眼窩も使用されうる。それによって、本発明による患者識別システムによって提供されるデータは拡大され、最適化される。こうして患者の正確な位置決めが改善され、例えばマウスピースの正確な位置決めが検査される。
【0013】
以下、図面を用いて本発明を詳しく述べ、説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1および2は、本発明による患者識別システムの実施形態を示す。図1の患者識別システム1は、カードの形を有する担体2を有する。担体2には3つのマーカー3、例えば印刷された黒色の輪が配置されている。担体2における輪の幾何学的配置は、この場合、一実施形態のみを示す。この場合に重要なのは、それらが好ましくは担体2の角に配置されるために、個々のマーカー3間の距離a、b、cができる限り大きいことである。さらに重要なのは、3つの距離a、b、cが同じ大きさではなく、位置決めシステムのコンピュータが計算に際して方向付けられうるできる限り正確な3D調整システムを保持することである。3つのマーカー3はデジタル式に把握される。動画カメラの空間における位置および既知の位置から、空間における患者の位置は算出されうる。
【0015】
担体2にはさらに患者を識別するための手段、正確にはバーコードが配置されている。線コードとしても周知のバーコードは、情報をデジタル式に把握可能にするための慣用の手段である。線の太さおよび互いに対する個々の線の距離により伝達すべき情報が生じる。最後に、担体2においては、例えば印刷された名前または他の情報、例えば画像または患者ID番号を用いて、読取り可能に患者の身元も示されうる。患者識別システム1において選択された患者を識別するための手段および患者を局在するための手段の再現形態は、CCDカメラを用いて把握可能である。他方、図2に示されている患者識別システム100は、赤外線カメラでデジタル式に把握可能である。マーカー103も識別のための手段104と同様に再帰反射性であり、カメラまたは照明手段によって送出される光は反射され、それによって赤外線カメラのために把握可能になる。マーカー103は、例えば再帰反射点である。マーカー3、103の正確な幾何学的形態および構造はこの場合、重要ではない。この場合、それぞれ適切な構造、例えば、点、輪、または多角形でありうる。患者を識別する手段104は、図2の実施形態においては、再帰反射性マーキング、例えば点によるパターンである。再帰反射性の点の数によって幾何学的パターンが配置され、それに基づき患者の身元が推定されうる。パターンはデジタル式に把握可能である。
【0016】
図3の実施形態においては、本発明による患者識別システムの変形実施形態が示されている。システムが配置されている担体は、患者を固定するための構造物である。図3Aにおいては、これはマウスホルダー11であり、図3Bにおいてはヘッドホルダー12である。これらの構造物はそれぞれ患者10に固定されている。それらを介して患者はさらにソファーに固定される。マウスホルダー11もしくはヘッドホルダー12には、それぞれ3つのマーカー30が空間的に配置されており、3つのマーカー30の幾何学的配置により、この場合にも患者の正確な位置決めが算定されうる。これは、例えばマウスホルダー11に張付けられている無線ラベル(一体化フラットアンテナを有するRFID−タグ)でも行われうる。図示されていない受信機によって(例えば、WLAN送受信プロトコールによって)患者の位置データおよび方向付けは3次元的に把握されるが、その個々の身元データも把握される。かかる無線ラベルは患者にも直接固定され、例えば治療すべき箇所の近くに張付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による患者識別システムの実施形態を示す図である。
【図2】本発明による患者識別システムの別の実施形態を示す図である。
【図3】使用時の本発明による患者識別システムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が識別可能かつ局在可能である患者識別システム(1、100)であって、前記システムが、
a)患者を識別するための手段(4、104)と、
b)少なくとも1つのマーカー(3、30、103)の形で空間に患者を局在するための手段とを有し、ここで前記手段がデジタル式に把握可能であり、前記システムが少なくとも1つの担体(2、11、12、102)に配置されており、かつ前記担体は直接的/または間接的に患者(10)に固定されている患者識別システム(1、100)。
【請求項2】
前記患者を識別するための手段が、バーコード(4)、無線ラベル、またはパターンを再帰反射性マーキング(104)であることを特徴とする、請求項1に記載の患者識別システム。
【請求項3】
前記マーカー(3、30、103)が再帰反射性または色付きの幾何構造、特に点、輪、または多角形であることを特徴とする、請求項1または2に記載の患者識別システム。
【請求項4】
前記手段が、受信機またはCCDカメラおよび/または赤外線カメラでデジタル式に把握可能であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の患者識別システム。
【請求項5】
前記担体がカードであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の患者識別システム。
【請求項6】
前記カードが、患者の固定のための構造物、特にヘッドホルダー(12)、身体固定手段、マウスホルダー(11)、または定位固定フレームにおいて固定されていることを特徴とする、請求項5に記載の患者識別システム。
【請求項7】
前記患者を固定するための構造物の担体が、特にヘッドホルダー(12)、身体固定手段、マウスホルダー(11)、または定位固定フレームであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の患者識別システム。
【請求項8】
患者位置決め方法であって、以下のステップ、すなわち
a)患者(10)をソファーに固定するステップと、
b)請求項1に記載の患者識別システム(1、100)を前記患者に取付けるステップと、
c)前記患者を識別するステップと、
d)前記患者を所望位置へもたらすステップと、
e)前記所望位置の受入れを前記患者識別システムの助けを借りて行うステップと、
f)前記患者の再位置決めに際して、前記ステップa〜cを繰返すステップと、
g)前記患者の実位置の受入れを前記患者識別システムを用いて行うステップと、
h)前記実位置と前記所望位置の受入れを比較するステップと、
i)前記実位置の前記所望位置からの偏差の確認に際して、前記実位置が実質的に前記所望位置と一致するまで前記ソファーを調節するステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記ステップdおよびiが自動および/または手動で行われることを特徴とする、請求項8に記載の患者位置決め方法。
【請求項10】
前記ステップcおよび/またはiが六脚(Hexapode)によって行われることを特徴とする、請求項8または9に記載の患者位置決め方法。
【請求項11】
前記受入れを行うステップが少なくとも1つの受信機またはCCDカメラおよび/または赤外線カメラで行われることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の患者位置決め方法。
【請求項12】
前記受入れを行うステップが、能動的三角測量、光切断法、および/またはコード化光アプローチ法を用いて行われることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の患者位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−510484(P2007−510484A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538763(P2006−538763)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012625
【国際公開番号】WO2005/044378
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(506155185)メディカル インテリジェンス メディツィン テヒニーク ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL INTELLIGENCE MEDIZINTECHNIK GMBH
【Fターム(参考)】