説明

悪性腫瘍を治療する方法

本発明は癌性腫瘍を有する患者を治療する方法を提供する。治療プロトコールの手順には、治療用タンパク質をコードするプラスミドの有効量を癌性腫瘍へ注入すること、それに続いて前記腫瘍へエレクトロポレーション療法を施すことが含まれ、前記エレクトロポレーション療法には、前記腫瘍への少なくとも1回の高電圧、短時間パルスの処理が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
転移の効果的な治療がいずれの癌治療にとっても難題となっている。免疫療法が転移性疾患の治療において有益なものとなるためには、免疫系が体全体にわたって腫瘍細胞を認識しなければならず、それは全身の免疫応答を誘導することにより、または原発腫瘍の認識に続くメモリーT細胞の産生を通して達成することができる。
【背景技術】
【0002】
多くのサイトカインが、強力な抗癌剤として重点的に研究されてきた。評価された多くのサイトカインの中で、インターロイキン-12(IL-12)が強力な抗腫瘍活性を示すことが明らかにされている。IL-12は、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の増殖および成熟をアップレギュレートし、IFN-γの生成を誘導し、血管新生を阻害し、そしてHLAのような補助分子の発現をアップレギュレートすることができる。残念ながら、IL-12の組換えタンパク質の形態での送達では、死を含む重篤な毒性および有害な副作用が生じる。従って、ウイルスベクター、遺伝子銃、マイクロスフィア、プラスミドの直接注入およびエレクトロポレーションのようなIL-12の送達に関する遺伝子治療戦略が探究されている。
【0003】
IL-12の抗腫瘍に関する可能性が、非常に多くの免疫療法研究において報告されている。報告されているIL-12の抗腫瘍メカニズムには、IFN-γの誘導、T細胞のアップレギュレートおよびナチュラルキラー(NK)細胞の増殖のような免疫系における効果が含まれる。さらにIL-12は、血管新生、新しい血管の形成を阻害する。抗血管新生特性と同様、免疫系におけるこの幅広い効果により、強力な抗腫瘍治療の可能性が生じる。残念ながら、組換えIL-12の全身投与を用いた前臨床および臨床試験では、有害な副作用の可能性が明らかになった。組換えIL-12の局所または全身投与が、種々のマウス腫瘍モデルにおいて強力な抗腫瘍活性を誘導し、定着腫瘍(established tumors)の退縮を引き起こすことが報告されている。しかしこれらの研究においては、最大の治療活性を達成するために、毎日の組換えIL-12送達の反復が必要であり、それは通常、用量依存的な毒性も伴うものであった。IL-12の送達のために遺伝子銃による遺伝子治療を使用すると、組換えタンパク質治療の場合より生じる副作用は小さかった。ウイルス性および非ウイルス性の遺伝子送達技術を用いるいくつかの研究により、腫瘍増殖の減速および/または防止に成功したことが報告されている。しかしこれらの研究では、免疫原性の低いB16.F10メラノーマの完全な退縮およびその後の攻撃接種(challenge)への耐性に関しては限られた成功しか得られなかった。
【0004】
生体内エレクトロポレーションは、多くの異なる組織へのプラスミドDNAの効率的な送達に関して順調に使用されている遺伝子送達技術である。いくつかの研究により、プラスミドDNAをB16メラノーマおよびその他の腫瘍組織へ送達するための、生体内エレクトロポレーションの実施が報告されている。組換えIL-12の全身投与は抗腫瘍の可能性を示すが、腫瘍部位におけるIFN-ガンマの発現が腫瘍退縮の成功には重要であることが示されてきた。プラスミドにコードされる遺伝子またはcDNAの全身的および局所的発現は、生体内エレクトロポレーションを施すことにより得ることができる。生体内エレクトロポレーションの使用により、腫瘍組織におけるプラスミドDNAの取り込みが増強され、その結果として腫瘍内での発現が生じ、そしてプラスミドが筋肉組織に送達され、その結果として全身的なサイトカインの発現が生じる。
【0005】
エレクトロポレーションは、プラスミドDNAを用いた生体内での細胞のトランスフェクションに使用することができる。最近の研究では、エレクトロポレーションが抗腫瘍剤としてのプラスミドDNAの送達を増強可能であることが示されている。エレクトロポレーションは、げっ歯類のモデルにおける肝細胞癌、腺癌、乳癌、扁平上皮癌およびB16.F10メラノーマの治療のために実施されている。B16.F10メラノーママウスモデルは、組換えタンパク質としての、または遺伝子治療によるIL-12およびその他のサイトカインの送達に関する免疫療法プロトコールの可能性を試験するために広く使用されている。
【0006】
免疫系におけるその広範にわたる効果およびその抗血管新生特性により、IL-12は免疫療法剤としての使用において優れた候補となっている。その潜在的な毒性のために、IL-12の送達方法を注意深く考慮することが重要である。生体内エレクトロポレーションは安全で、非毒性の送達系であり、化学療法剤およびIL-12をコードするプラスミドを含むプラスミドDNAを効率的に送達するために使用されている。
【0007】
エレクトロポレーションが介在する、発現プラスミド中のマウスインターロイキン-12(IL-12)遺伝子の生体内送達により、抗腫瘍および抗転移活性が提供されることが示されている。癌を治療するための、生体内エレクトロポレーションを利用する、IL-12をコードするプラスミドの送達に関する種々のプロトコールが、本技術分野において公知である。本技術分野において公知であるプロトコールには、低電圧および長パルスの電流を利用し、腫瘍内および筋肉内両方の生体内エレクトロポレーションが介在するサイトカインに基づく遺伝子治療が記載されている。先行技術における方法では、これらの低電圧レベルを300V未満に、そして長パルスを50ms周辺にしている。腫瘍の治療のためのIL-12をコードするプラスミドの送達において、低電圧レベルおよび長いパルス長を使用する理由は、よく知られているエレクトロポレーションおよび電気化学療法の原理に基づいている。適度な電界強度での電気パルスにより、一時的な細胞膜の透過性上昇が生じ、それにより細菌、酵母、動物およびヒト細胞などを含む多様な細胞種において、急速な形質転換および遺伝子組換えが起こる。反対に、高い電界強度での電気パルスは、恒久的な細胞膜の破損および組織の損傷を引き起こし得る。IL-12の目標組織への送達に関するエレクトロポレーションプロトコールの実施を記載している先行技術における方法はすべて、低電圧、長いパルス長の使用に基づいている。当業者に公知であるこれらの治療プロトコールは、B16.F10メラノーマを含む腫瘍に対して許容される治癒率を示すには有効ではない。加えて、前記公知なプロトコールでは、治療を受けるもの(本明細書においてはこれを患者と言う)の長期生存率の改善を確認することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該分野において必要なのは、メラノーマのような癌性腫瘍の退縮に関して実質的に改善された結果を提供し、その一方で実質的に長期生存率も改善する、IL-12のような治療用タンパク質をコードするプラスミドを送達するためのエレクトロポレーションプロトコールである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エレクトロポレーションと組み合わせた治療用タンパク質をコードするプラスミドの投与が、原発腫瘍ならびに遠隔腫瘍(distant tumors)および転移に対して治療的効果を有する、悪性腫瘍を治療する方法を提供する。
【0010】
本発明の1つの実施態様において、癌性腫瘍を有する患者を治療する方法が提供され、前記方法には、癌性腫瘍へ治療用タンパク質をコードするプラスミドの有効量を注入すること、および前記腫瘍へエレクトロポレーション療法を施すことが含まれる。前記エレクトロポレーション療法にはさらに、短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスの処理が含まれる。
【0011】
本発明の方法は、メラノーマを含む種々の癌性腫瘍の治療において有効である。示されるデータは、マウスにおけるB16.F10メラノーマの治療に関する本発明の例示的な実施態様である。しかし、例示的な実施態様および示されるデータは、本発明の方法をB16.F10メラノーマの治療に限定するものではない。本発明の方法は、ヒトに共通の癌を含む種々の癌の治療に適用される。
【0012】
種々のサイトカインが癌の治療において有効であることが確認されている。インターロイキン12(IL-12)は、抗腫瘍剤として広く研究されているサイトカインである。本発明の特定の実施態様においては、患者に投与される治療用タンパク質をコードするプラスミドは、IL-12をコードするプラスミドである。本発明の範囲内にはその他の有効なサイトカインが含まれる。
【0013】
本発明に従って実施されるエレクトロポレーション療法は、短い継続時間の高電圧パルスを特徴とする。本発明に従う場合に、高電圧パルスは約400V/cm以上と定義される。さらに、本発明に従う場合に短時間パルスは約1ミリ秒以下と定義される。
【0014】
特定の実施態様において、患者の腫瘍に対して実施されるエレクトロポレーション療法には、約100マイクロ秒の継続時間を有し約1500V/cmである少なくとも1回の高電圧パルスが含まれる。
【0015】
さらなる実施態様において、本発明の方法はさらに、治療用タンパク質をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織へ注入する段階、および患者の筋肉内に長パルス幅を有する少なくとも1回の低電圧パルスを用いてエレクトロポレーションを施す段階を含む。この段階に使用される治療用タンパク質をコードするプラスミドは、IL-12をコードするプラスミドまたはその他いずれの効果的なプラスミドでもよい。
【0016】
筋肉内へのエレクトロポレーション療法の段階における特定の実施態様において、電圧レベルは約100V/cmの電圧であり、パルス幅は約20ミリ秒である。
【0017】
本発明の治療方法が複数回実施される場合には、治療の有効性の増加が観察される。この場合には、治療用タンパク質をコードするプラスミドの第一の有効量を癌性腫瘍へ注入すること、短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスを施すことをさらに含む第一のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すこと、その後続いて治療用タンパク質をコードするプラスミドの第二の有効量を前記癌性腫瘍へ注入すること、および短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスを施すことをさらに含む第二のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍へ施すことを含む、癌性腫瘍を有する患者を治療する方法が提供される。さらに、治療用タンパク質をコードするプラスミドの第三の有効量および第三のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことができ、前記第三のエレクトロポレーション療法は短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスの処理をさらに含む。この2段階または3段階の工程は、治療用タンパク質をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織に注入し、患者の筋肉内に長パルス幅を有する少なくとも1回の低電圧パルスを用いてエレクトロポレーションを施す工程を続けることもできる。
【0018】
高電圧、短パルス幅であるエレクトロポレーション療法条件の多くが本発明の範囲内に含まれる。典型的な実施態様において、本発明の方法は、IL-12をコードするプラスミドの第一の有効量を癌性腫瘍へ注入すること、100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理を含む第一のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍へ施すこと、IL-12をコードするプラスミドの第二の有効量を癌性腫瘍へ注入すること、100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスを施すことを含む第二のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍へ施すこと、IL-12をコードするプラスミドの第三の有効量を癌性腫瘍へ注入すること、100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスを施すことを含む第三のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍へ施すことを含む。さらに前記方法は、治療用タンパク質をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織に注入すること、患者の筋肉内に20マイクロ秒の継続時間で100V/cmで送達される12回のパルスを用いてエレクトロポレーションを施すことを含むことができる。
【0019】
本発明の典型的な実施態様において、悪性腫瘍の治療方法であって、この方法が、IL-12をコードするプラスミドの第一の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第一のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第一の治療を0日目に施すことを含む前記治療方法が提供される。IL-12をコードするプラスミドの第二の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第二のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第二の治療を4日目に施す。IL-12をコードするプラスミドの第三の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第三のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第三の治療を7日目に施す。さらなる段階において、IL-12をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織へ注入すること、20マイクロ秒のパルス幅で100V/cmで送達される12回のパルスを用いて患者の筋肉内へエレクトロポレーション療法を施すことを含むことができる。
【0020】
詳細な説明において示される結果から明らかにされるように、本発明の方法は、IL-12をコードするプラスミドおよびエレクトロポレーションを利用するその他の当業者に公知の方法よりも、生存率の統計学上有意な改善が得られる癌の治療プロトコールを提供する。本発明のプロトコールは高電圧、短パルス幅を利用する。IL-12の送達および発現に関する当業者に公知のその他のプロトコールは全て、低電圧で長い継続時間のエレクトロポレーションパルスを利用している。このように本発明は、タンパク質をコードするプラスミドの送達およびエレクトロポレーションに関する新規のプロトコールに基づいて、新しくそして予想外の結果をもたらす。
【0021】
本発明の性質および目的のさらなる理解のために、添付の図に関して以下に詳細に説明する。
【0022】
図1は、完全な腫瘍の退縮をもたらす、IL-12をコードするプラスミドDNAの投与、それに続くエレクトロポレーションに関するグラフである。(A) 0日目における治療後の腫瘍容積に対する増加倍数。PはpIRES IL-12; Vはコントロールプラスミド, pND2Lux; Eはエレクトロポレーションを示す。送達の治療形態:i.t.は腫瘍内;i.m.は筋肉内を示す。プラス記号は治療が実施されたことを示し;マイナス記号は治療が実施されなかったことを示す。最初の治療日を0日目とし; 7日目にマウスに再び治療を行った。全ての群(P-E+ i.t.およびV+E+ i.t.を除く)に関する結果は、3回反復して行った実験から組み合わせたデータを表し、エラーバーは平均値の標準誤差を表す。P-E+ i.t.およびV+E+ i.t. 治療群は、我々の研究室のデータによりこれらの治療は効果がないことが示されていたので、1回の実験で検討した。これらの2つの群に関するエラーバーは標準偏差を表す。それぞれの治療群に対するサンプルの総数は以下:P-E-, n = 16;P-E+ i.t.およびV+E+ i.t., n = 8;および残りの群, n = 17のとおりである。マウスは腫瘍容積が1000 mm3を超えたときに殺処分された。データはそれぞれの日において生存しているマウスを表す。(B)(A)で表されるマウスの生存率。マウスは疾患により死亡するか、腫瘍容積が1000 mm3を超えたときに殺処分された。
【0023】
図2は、IL-12およびIFN-γの発現に関する血清および腫瘍組織の解析の結果を示したグラフである。PはpIRES IL-12; Eはエレクトロポレーションを示す。送達形態:i.t.は腫瘍内;i.m.は筋肉内を示す。(A)担癌マウスにおけるIL-12およびIFN-γの血清レベル。それぞれの群に関してそれぞれの日に試験を行った。n = 4 マウス。エラーバーは標準偏差を表す。(B)IL-12およびIFN-γの腫瘍における発現の平均値。それぞれの治療群に関してそれぞれの日に試験を行った。n = 4 マウス。エラーバーは標準偏差を表す。
【0024】
図3は、浸潤した免疫細胞に関してH&E染色により解析した、治療後5日目の腫瘍組織の典型的な切片を示す。1つの腫瘍につき3つの切片を調べた。全ての切片は倍率x 250で示す。免疫細胞を含む領域はボックスで記しを付けてある。(A) 無治療。(B) IL-12 のi.m.投与、エレクトロポレーションあり。 (C) IL-12 のi.t.投与、エレクトロポレーションあり。
【0025】
図4は、茶色に染色される免疫組織化学法により解析された、治療後5日目の腫瘍組織の典型的な切片を示す。(B)における矢印は、陽性に染色された細胞の典型を示す。(A, B)無治療の腫瘍由来の、それぞれCD4+リンパ球およびCD8+リンパ球の染色。(C, D)IL-12をコードするプラスミドDNAのi.t.注入とそれに続くエレクトロポレーションを受けた腫瘍由来の、それぞれCD4+リンパ球およびCD8+リンパ球の染色。(E, F)エレクトロポレーションを伴う、IL-12をコードするプラスミドDNAのi.m.投与後の、それぞれCD4+リンパ球およびCD8+リンパ球の染色。
【0026】
図5は、ヌードマウスモデルにおいて、腫瘍の退縮を生じないIL-12の投与とそれに続くエレクトロポレーションに関するグラフである。(A)0日目における治療後の腫瘍容積に対する増加倍数。PはpIRES IL-12; Vはコントロールプラスミド, pND2Lux; Eはエレクトロポレーションを示す。送達の形態:i.t.は腫瘍内を示す。最初の治療日を0日目とし; 7日目にマウスに再び治療を行った。データはそれぞれ2回の実験を表し、それぞれの群は4匹のマウスで行われた。 エラーバーは標準偏差を表す。マウスは腫瘍容積が1000 mm3を超えたときに殺処理された。データはそれぞれの日において生存しているマウスを表す。(B)(A)で表されるマウスの生存率。マウスは疾患により死亡するか、腫瘍容積が1000 mm3を超えたときに殺処理された。
【0027】
図6は、血管の存在に関する腫瘍組織の免疫組織化学的解析を示す。それぞれの治療に関して、典型的な血管に富んでいる切片を示した。1つの腫瘍につき3つの切片を調べた。全ての切片は倍率x 400で示す。(A)における矢印は典型的な血管を示す。(A)治療前、0日目における腫瘍内には血管が存在する。(B)5日目における無治療腫瘍。(C)IL-12をコードするプラスミドDNAのi.m.注入とそれに続くエレクトロポレーションを受けたマウス由来の5日目における腫瘍。(D)IL-12をコードするプラスミドDNAのi.t.投与とそれに続くエレクトロポレーションを受けたマウス由来の5日目における血管。
【0028】
図7は、それぞれの治療群におけるC57BL/6マウス由来の血管数を示した表である。
【0029】
図8は、本発明による3回治療プロトコールを示すグラフである。3回治療プロトコールにおいて、0日目は最初の治療の日であり、4および7日目にマウスに再び治療を行う。(A)1回目の治療の日における腫瘍容積に対する腫瘍容積の増加倍数。(B)治療後のマウスの生存率。結果は、3回反復して行った実験から組み合わせたデータを表し、エラーバーは平均値の標準誤差を表す。それぞれの治療群に対するサンプルの総数は50であった。マウスは腫瘍容積が1000 mm3を超えたときに安楽死させた。(A)および(B)の両方において、データはそれぞれの日における生存マウスを表す。P=pIRES IL-12; V=コントロールプラスミド, pND2Lux; E=エレクトロポレーション。治療の位置, i.t. = 腫瘍内送達; i.m. = 筋肉内送達。
【0030】
図9は、本発明による二次性腫瘍の短期的な予防に関するグラフである。3回治療は0、4および7日目に実施され、2回治療は0および7日目に実施された。(A)右側腹部に腫瘍を形成する無治療マウスの割合。(B)治療後のマウスの生存率;5x105個のB16.F10細胞を、左側腹部において定着させた腫瘍を治療した時点である0日目に右側腹部に注入した。マウスは腫瘍容積が1000 mm3を超えたときに安楽死させた。データはそれぞれn = 5で3回反復して行った実験を表す。P=pIRES IL-12; V=コントロールプラスミド, pND2Lux; E=エレクトロポレーション。治療の位置, i.t. = 腫瘍内送達; i.m. = 筋肉内送達。
【0031】
図10は、治療の開始より前に誘導された二次性腫瘍の予防に関するグラフである。3回治療は0、4および7日目に実施され、2回治療は0および7日目に実施された。(A)右側腹部に腫瘍を形成する無治療マウスの割合。(B)治療後のマウスの生存率;5x105個のB16.F10細胞を右側腹部に注入した。3日後に左側腹部に細胞を注入した。マウスは腫瘍容積が1000 mm3を超えたときに安楽死させた。データはそれぞれn = 5で3回反復して行った実験を表す。P=pIRES IL-12; V=コントロールプラスミド, pND2Lux; E=エレクトロポレーション。治療の位置, i.t. = 腫瘍内送達; i.m. = 筋肉内送達。
【0032】
図11は、エレクトロポレーションによるIL-12の筋肉内投与を用いた治療の結果、および肺における腫瘍小結節の成長の予防方法を示した表である。
【0033】
図12は、高用量のB16細胞を静脈内に注入したマウスの生存率を示したグラフである。3回治療は0、4および7日目に実施された。21日間飼育し、その後マウスは安楽死させた。データはそれぞれn = 4で2回反復して行った実験を表す。5x105個のB16.F10細胞を、筋肉内へのプラスミド送達により治療した時点である0日目に、マウスの尾静脈に注入した。P=pIRES IL-12; V=コントロールプラスミド, pND2Lux; E=エレクトロポレーション。
【0034】
以下の好ましい実施態様の詳細な記載において、好ましい実施態様の一部分を形成する添付の図が参照され、その中で、それにより本発明を実施することができる特定の実施態様が実例として示される。その他の実施態様も利用することができ、本発明の範囲に含まれる構造的な変化を伴うことも可能である。
【実施例】
【0035】
<腫瘍細胞およびマウス>
B16.F10マウスメラノーマ細胞(CRL 6475; American Type Culture Collection製, Rockville, MD)を、10% FCSおよび0.2%ゲンタマイシンを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で維持した。注入前に細胞をトリプシン処理し、滅菌したPBSで洗浄した。C57BL/6マウス(National Cancer Institute製, Bethesda, MD)の左側腹部を剃毛し、滅菌したPBS 50 μlにおける1 x 106個の細胞を皮下に注入した。攻撃接種の場合には、マウスの右側腹部に5 x 105個のB16.F10細胞を注入した。腫瘍をデジタルカリパス(digital calipers)を用いて測定し、腫瘍が直径3〜5 mmに到達した時、注入後7〜10日までに治療を開始した。腫瘍容積(v)を、a =最小直径および b =垂直直径である式 v = a2bπ/6を用いて計算した。マウスはAALAMガイドラインに従って飼育した。
【0036】
<プラスミドDNA>
pIRES IL-12はKarin Moelling(Zurich大学, Zurich, Switzerland)より寄贈された。簡潔に言うと、pIRES IL-12は、単一のサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの後に内部リボソーム侵入部位(IRES)により結合された両方のサブユニットを含む。Robert Malone(Gene Delivery Alliance, Inc., Rockville, MD)からはレポーター遺伝子ルシフェラーゼをコードするpND2Luxを寄贈された。キアゲン社のMegaキット(Qiagen製, Valencia, CA)をプラスミド調製のために使用した。pIRES IL-12はエンドトキシンフリーのキットを用いて調製された。すべてのプラスミドDNAは滅菌した注射可能な生理食塩水(0.9%)で希釈し、-20℃で保存した。
【0037】
<腫瘍内治療>
97%酸素および3%イソフルランを用いてマウスの麻酔を行った。滅菌した生理食塩水における50μl (1 μg/ml)のプラスミドDNAを、25ゲージ針をつけたツベルクリンシリンジを用いて腫瘍に注入した。直径1 cm以下の貫通電極(penetrating electrodes)6つを含むアプリケーター(applicator)を、腫瘍に挿入した。6回のパルスを、BTX T820パルスジェネレーター(BTX製, San Diego, CA)を用いて1500 V/cm(99 μs, 1 Hz)で送達した。
【0038】
<筋肉内治療>
上述のようにマウスの麻酔を行った。腓腹筋の周りの皮膚の剃毛を行った。滅菌生理食塩水で希釈したプラスミドDNA(50 μl, 1 μg/ml)を、ツベルクリンシリンジおよび25ゲージ針を用いて腓腹筋に注入した。マウス腓腹筋のために特別に設計された矩形パターンで4つの貫通電極を含むアプリケーターを、注入部位の周りの筋肉に挿入した。合計12回のパルスが、BTX T820パルスジェネレーターを用いて100 V/cm(20 ms, 1 Hz)で分節的に送達された。
【0039】
<ELISA>
マウスをCO2により窒息死させ、その後それぞれの日に血液および腫瘍を1つの治療群あたり4匹のマウスから回収した。血清中のサイトカインを検出するために、血液を心臓穿刺により回収し、4℃で一晩保存した。血清を4℃での遠心分離(5000 rpmで3分)により血液サンプルから抽出し、解析まで-20℃で保存した。腫瘍組織内のサイトカインレベルを測定するために、腫瘍を摘出し、直ちにドライアイスで凍結して、計量した後に-80℃で保存した。解析のために、前記腫瘍を解凍してPBSおよび10%プロテアーゼ阻害剤カクテル(P8340; Sigma製, St. Louis, MO)を含む1 mlの溶液を添加した。組織を氷上を保持しながらPowerGen 700(Fisher Scientific製, Pittsburgh, PA)を用いて均質化し、4℃、5000 rpmで3分間遠心分離をして、その後上清をELISAにより分析した。血清および腫瘍サンプルは両方とも、マウスIFN-γおよびIL-12 p70 ELISAキット(R&D Systems製, Minneapolis, MN)を用いて解析した。血清レベルは、血清1 mlあたりのサイトカインのpgとして計算した。腫瘍におけるサイトカインレベルは、腫瘍1 mgあたりのサイトカインのpgとして計算した。
【0040】
<組織学>
マウスを人道的にCO2により窒息死させた。腫瘍を摘出し、10 mlの10% ホルマリンを含む50-mlのコニカルチューブに入れた。組織を、10%中性緩衝ホルマリンで6時間固定した後、それぞれの組織サンプルをMiles VIP組織プロセッサー(Miles Inc.製, Mishawaka, IN)を用いてパラフィンブロックに加工するといったような固定の後にH&Eで染色した。簡潔に言うと、組織を上昇系列(ascending grades)のエタノールで脱水し、キシレンで洗浄し、そしてパラフィンを浸透させる(Tissue Prep 2; Fisher Scientific製)。包埋後、組織を標準的な回転式ミクロトームで薄切し、4-_mの切片を水槽から回収してスライドガラスに乗せた。1つの腫瘍あたり3つの切片を調べた。切片は標準的な組織学的技術を用いて、熱乾燥およびH&E(Richard-Allan Scientific製, Kalamazoo, MI)での染色を行った。合成封入剤を用いて、その後カバースリップを置いた。
【0041】
<免疫組織化学>
腫瘍におけるCD4+リンパ球、CD8+リンパ球および血管の存在を調べるために、それぞれ以下の抗体:ラット抗マウスCD4、ラット抗マウスCD8a(Ly2)およびラット抗マウスCD31(PECAM-1)(PharMingen製, Cambridge, MA)を用いて免疫組織化学的染色を行った。
【0042】
マウスを人道的にCO2で窒息死させた。腫瘍をはさみで摘出し、皮膚を除去して、その後直ちにドライアイスおよびエタノールの混合物中で凍結させ-80℃で保存した。5 _mの凍結切片を得た。免疫組織化学的解析のために、ラット抗マウスCD4、ラット抗マウス CD8a(Ly2)、またはラット抗マウス CD31(PECAM-1)を組織切片に1:50の希釈でアプライし、30分間インキュベートして、引き続き2_ 濃度のVector Elite Rat IgG-Peroxidaseキットで検出した(ビオチン化した抗ラットIgGおよびABCの複合体においてそれぞれ15分)。免疫染色は、Dako製の全自動染色装置で行った。切片は_400倍率で解析した。
【0043】
<ヌードマウスの治療>
BALB/c 無胸腺ヌードマウスを米国癌研究所から入手し、7週齢で使用した。B16.F10細胞を上述のように調製した。50 mlの無菌PBS中における1 x 106個のB16.F10細胞をマウス左側腹部の皮下に注入した。腫瘍が直径で3〜5 mmに達した時に治療を開始した。マウスに上述のような腫瘍内治療を施した。
【0044】
<統計学的方法>
統計解析はANOVAまたはStudentの両側t検定により行った。
【0045】
図1〜7は本発明による2回治療プロトコールの結果を示す。このプロトコールにより、IL-12が生体内エレクトロポレーションにより送達された。C57BL/6マウスを、定着させた皮下B16.F10メラノーマとともに、50 μg (1 μg/ml)の無菌生理食塩水におけるIL-12をコードするプラスミドDNA(pIRES IL-12)の腫瘍または腓腹筋への注入、それに続くエレクトロポレーションにより治療した。6個の貫通電極を含むアプリケーターを、腫瘍内に1500-V/cm、100-μsのパルスを送達するために使用した。筋肉内への送達に関して、マウス腓腹筋のために特別に設計した4つの貫通電極を含むアプリケーターを、全身における高いIL-12およびIFN-γの発現が得られるプロトコールである、100-V/cm、20-msパルスを施すために使用した。単独の治療では、長期的な動物の生存は得られなかった。従って以下の実験では、最初の治療(0日目)の7日後(7日目)に2回目の治療を実施した。実験の全体にわたって腫瘍サイズを評価し、その結果を図1Aに示すように、それぞれの治療群における0日目の腫瘍容積に対する増加倍率として表した。pIRES IL-12の腫瘍内注入とそれに続くエレクトロポレーションでの治療により、腫瘍の増殖が遅延し、ほぼ半数、17匹のうち8匹のマウスで腫瘍の完全な退縮が見られた。IL-12をコードするプラスミドの筋肉内注入とそれに続くエレクトロポレーションを受けたマウスでは、進行性の腫瘍の増殖が観察された。電気的パルスを受けなかったマウス(P+E-)では、全てのマウスが殺処理されるかまたは全身腫瘍組織量(tumor burden)により死亡するまで継続して腫瘍の増殖が見られた。エレクトロポレーション単独(P-E+)の処理でもエレクトロポレーションを伴うコントロールベクター(pND2Lux)の腫瘍内(i.t.)送達(V+E+)のどちらでも、腫瘍の増殖は減少しなかった。これらの結果より、単独の電気的パルスも、プラスミドDNAのどちらも腫瘍退縮には関与しないことが明らかである。P+E-i.t.は14日間を通して、P-E- より遅い腫瘍増殖を示したが(P < 0.05)、P+E+ i.t. 群を除く治療群ではいずれも腫瘍退縮を示さなかった。
【0046】
最初の治療後100日目のマウスの評価により、エレクトロポレーションを伴うIL-12の腫瘍内送達を受けたマウスの47%、17匹中8匹が、図1Bに示すように腫瘍のない状態であった。これらのマウスを治癒とみなした。IL-12およびエレクトロポレーションでのi.t. 治療を受けた全てのマウスは、その他の治療群における動物と比較して長期間生存した。コントロール群におけるマウスはいずれも35日以上生存しなかった。特に無治療またはパルス単独での治療の場合は、マウスは21日以上生存しなかった。
【0047】
完全な退縮を示し50日以上疾患のない状態を維持する7匹の動物の右側腹部に、B16.F10 腫瘍細胞を攻撃接種した。さらなる治療は実施しなかった。ネイティブなマウス(naive mice)の100%において腫瘍が増殖したが、攻撃接種を行った7匹のうち、5匹は右側腹部における腫瘍増殖に対して耐性であった。この結果より、左側腹部に定着させた最初の皮下腫瘍の治療に続く、免疫記憶応答の発現が示唆される。
【0048】
上述のように、IL-12は免疫系におけるいくつかの作用を誘導する。筋肉内または腫瘍内のどちらかの治療によって誘導されるサイトカインの発現を評価するために、IL-12およびIFN-γの血清および腫瘍レベルを解析した。両サイトカインの血清レベルは図2Aに示すように、筋肉内注入とそれに続くエレクトロポレーションの後に最も高かった。血清IL-12は治療後10日目に320 pg/mlでピークに達し、一方IL-12の発現により誘導される血清IFN-γは14日目に177 pg/mlでピークに達した。5、10および14日目における両サイトカインの血清レベルは、その他の治療と比較して、筋肉内にエレクトロポレーションを伴って治療されたマウスにおいて有意に高かった(P < 0.05)。腫瘍内注入とそれに続くエレクトロポレーションで治療したマウスにおけるこれらのサイトカインの血清レベルは、治療を受けないマウスにおける発現よりも有意に高くはならなかった(P > 0.05)。
【0049】
腫瘍内におけるIL-12およびIFN-γの発現解析から、エレクトロポレーションを伴う腫瘍内治療により腫瘍部位にこれらのサイトカインが存在するようになることが明らかにされた(図2B)。腫瘍内IL-12は5日目に3 pg/腫瘍組織1mgに達し、そのレベルは10日目まで維持されるが、IFN-γレベルは5日目に8.16 pg/腫瘍1mgでピークに達する。pIRES IL-12の腫瘍内注入とそれに続くエレクトロポレーションでの治療により、5および10日目におけるIFN-γレベルはその他の治療群より有意に高くなる(P < 0.05)。IL-12の腫瘍での発現は腫瘍内治療により、筋肉内治療での0.64 pg/腫瘍1mgとは対照的に3 pg/腫瘍1mgに達するが、腫瘍内治療後のこれらの腫瘍において広い範囲の発現レベル(0.5〜6.9 pg/腫瘍組織1mg)を有する結果のとおりに、これらのレベルは有意に高くはない(P > 0.05)。
【0050】
図2Bに示すように、筋肉内注入とそれに続くエレクトロポレーションでの治療では、腫瘍内での有意な(P > 0.05)サイトカインの発現は生じなかった。筋肉内治療後に測定された最も高いIFN-γの発現は、17日目における1 pg/腫瘍1mgであった。従って、腫瘍の退縮を生じない治療プロトコールでは腫瘍内のIL-12またはIFN-γの発現も生じない。これらの結果は、腫瘍内のサイトカインの発現が決定的に必要だというこれまでの報告を支持するものである。
【0051】
腫瘍退縮の成功後の攻撃接種に対する耐性からは、免疫記憶応答の発現が示唆される。腫瘍への免疫細胞の流入を評価するために、最初の治療から5日後に腫瘍の組織学的な解析を行った。浸潤した免疫細胞を腫瘍細胞から区別するために、腫瘍切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。図3Cにおいて示されるように、H&Eで染色された切片により、pIRES IL-12の腫瘍内への注入とそれに続くエレクトロポレーションを受けた後5日目のマウスの腫瘍へのリンパ球の浸潤が見られた。対照的に、治療を受けていないかまたはエレクトロポレーションを伴う筋肉内での治療を受けたマウスでは、図3Aおよび3Bで示されるようにリンパ球の大きな流入は見られなかった。生体内エレクトロポレーションを含まない治療プロトコール(P+E-腫瘍内または筋肉内のいずれか)の結果も、リンパ球の流入を生じなかった(データは示さず)。
【0052】
免疫組織化学的なフェノタイピングにより、図4Cおよび4Dで示されるように、IL-12およびエレクトロポレーションでの腫瘍内治療後の腫瘍において観察されるリンパ球が、CD4+およびCD8+ T細胞であることが示された。それに対して、無治療の腫瘍においては図4Aおよび4Bに示されるように、限られた数のリンパ球が観察された。筋肉内注入とそれに続くエレクトロポレーションでマウスを治療すると、図4Eおよび4Fの無治療のコントロール群において特徴付けられるのと同様に、限られたリンパ球の浸潤が見られた。さらに、IL-12をコードするプラスミド(P+E- 腫瘍内または筋肉内)またはエレクトロポレーションを伴ってコントロールプラスミド(V+E+ 腫瘍内)の注入を受けたマウスは、リンパ球の浸潤を示さなかった(データは示さず)。
【0053】
腫瘍退縮におけるTリンパ球の必要性をさらに調べるために、T細胞を欠損している無胸腺ヌードマウスをC57BL/6マウスの代わりにマウスモデルとして使用した。これらのマウスの皮下にB16.F10腫瘍細胞を注入し、腫瘍が直径3〜5 mmに達した時点で治療を開始した。マウスに上述の説明のように、エレクトロポレーションを伴わないIL-12をコードするプラスミドの腫瘍内注入、コントロールプラスミドの腫瘍内注入とそれに続くエレクトロポレーション、またはIL-12をコードするプラスミドの腫瘍内注入とそれに続くエレクトロポレーションでの腫瘍内治療を行った。筋肉内注入後のC57BL/6マウスにおいては良好な応答が見られなかったので、腫瘍内治療のみを実施した。図5Aに示すように、ヌードマウスモデルにおいてはいずれの治療によっても腫瘍退縮は見られなかった。さらに、いずれの治療群においても30日より長く生存したマウスはいなかった。この観察よりさらに、B16.F10メラノーマ腫瘍の良好な退縮のためにはT-細胞の応答が必要であることが示唆される。
【0054】
腫瘍退縮におけるIL-12のもう1つの潜在的な役割は、血管新生におけるその作用である。C57BL/6マウスにおけるB16.F10腫瘍での、IL-12の血管新生に対する役割を評価するために、それぞれの治療群からの3つの腫瘍の典型的な切片を、内皮細胞を明らかにする抗CD31抗体で染色した。図6に示すように、それぞれの群に関して最も高い血管増生を示す5つの異なる領域をx400の倍率で調べた。無治療腫瘍における0日目の血管の典型的な切片を図6Aに示す。図6Bおよび6Cは5日目における、無治療の腫瘍または筋肉内注入とそれに続くエレクトロポレーションを受けたマウス由来の腫瘍内に存在する多数の血管を示す。対照的に図6Dは、腫瘍内注入およびエレクトロポレーション後5日目における血管の減少を示す。エレクトロポレーションを伴わないIL-12をコードするプラスミドの注入(P+E- 腫瘍内または筋肉内)またはエレクトロポレーションを伴うコントロールプラスミドの注入(V+E+)を受けたマウス由来の腫瘍は、血管系の減少を示さなかった(データは示さず)。
【0055】
さらに無治療のマウス、筋肉内にIL-12およびエレクトロポレーションを受けたマウス、および腫瘍内にIL-12およびエレクトロポレーションを受けたマウスから摘出した3つの腫瘍のそれぞれにおける血管の数を計測した。図7における表1は、3つの摘出された腫瘍のそれぞれに対して最も高い血管増生の領域において、x400の倍率で計測された血管の数を示す。腫瘍内注入とそれに続くエレクトロポレーション(P+E+ 腫瘍内)のみが、無治療の動物と比較して有意な血管の減少(P < 0.05)を生じる。抗血管新生効果がエレクトロポレーションを伴う腫瘍内治療後に観察されるが、ヌードマウスモデルにおいて応答が見られないことから、T細胞がB16.F10メラノーマの退縮を獲得するための決定的な因子であることが示唆される。しかし、免疫応答が上昇する一方で、抗血管新生応答は腫瘍サイズの安定化に寄与するかもしれない。
【0056】
エレクトロポレーションの助けを伴ってプラスミドDNAの形態でIL-12が送達される結果として、B16.F10腫瘍の良好な退縮を得ることができる。前記動物は、疾患のない状態を維持し、遠隔部位での攻撃接種に対して耐性である。2回治療プロトコールの結果、定着させた皮下B16.F10メラノーマの遺伝子治療後にほぼ47%の生存率が示された。
【0057】
要約すると本発明は、定着させたB16.F10メラノーマ腫瘍を根絶することができ、攻撃接種後の再発腫瘍の増殖に対する耐性を生じさせる治療モダリティーを提供する。2回治療プロトコールを利用することにより、生体内エレクトロポレーションによるIL-12をコードするプラスミドDNAのi.t.送達後、47%のマウスが腫瘍の完全な退縮を示し疾患がない状態を維持した。これらのマウスにB16.F10腫瘍細胞を攻撃接種すると、7匹のうち5匹はさらに100日間腫瘍のない状態を維持し、その後これらのマウスは人道的に殺処理された。また、IL-12をコードするプラスミドDNAのi.t.注入およびエレクトロポレーションは、腫瘍退縮の促進および動物の生存延長に関して、i.m.送達よりも効果的であることが示される。この腫瘍モデルにおけるこの治療の成功は、IL-12およびIFN-γの局所的な発現、リンパ球の浸潤、および治療した腫瘍内での血管新生の阻害に由来するものである。
【0058】
図8〜12により、本発明による3回-治療プロトコールを例証する。遠隔部位での皮下腫瘍の短期的な予防に関して、C57B1/6の両腹部を剃毛した。マウスの左側腹部に、50 μlの無菌PBSにおける1x106個のB16.F10細胞を皮下注入した。直径が3〜5 mmに達する腫瘍が定着し次第、治療を開始した。2つのタイプの実験を行った。第一の実験では、第一の治療の日に、50 μl の無菌PBS中の5x105個のB16.F10細胞をマウスの右側腹部に注入した。第二の実験では、左側腹部への注入の3日後に、50 μl の無菌PBS中の5x105個のB16.F10細胞をマウスの右側腹部に注入した。両方の実験において、腫瘍内の、または腫瘍内および筋肉内併用の治療を上述のようにマウスの左側腹部における最初の腫瘍に行った。パルスのプロトコールは、結果の欄にさらに記載する。左側腹部において定着させた腫瘍は、上述のように継続的に測定され、マウスの右側腹部は腫瘍成長に関して観察される。
【0059】
肺コロニー形成(lung colonization)の解析に関連して、皮下注入のためのB16.F10細胞を上述のように調製した。50ml の無菌PBS中の1x105個または5x105個いずれかのB16.F10細胞を、30ゲージ針を付けた1 ccシリンジを用いて尾静脈に注入した。上述のように、接種の日および4日後に筋肉内治療をマウスに施した。接種後21日目にマウスを安楽死させ、胸腔を露出させた。肺表面において黒色の腫瘍小結節として見られる肺コロニーの数を計測した。
【0060】
2回-治療プロトコールで示されたように、定着させた皮下B16.F10腫瘍を有するマウスの、100日以上疾患がない状態での生存率である47%を、IL-12をコードするプラスミドのi.t.注入およびエレクトロポレーションで2回治療した。7匹の疾患がない状態のマウスのうち5匹は、反対側の腹部における腫瘍細胞の追加接種後の攻撃に対して耐性であった。我々は、第一の治療に対する応答の低さが、完全に退縮しなかった腫瘍においてしばしば観察されることに言及した。7日後の第二の治療により、これらの腫瘍は広範囲な増殖を示し、追加の治療によって良好に退縮させるには大きすぎる可能性がある。2つの方法により疾患がない状態での生存率の増加が得られた。第1に、2回治療の替わりに、これらのマウスに0、4および7日目に3回の治療を施す。第2に、筋肉内治療を追加する。上述のように、IL-12プラスミドの筋肉内送達の結果としてIL-12およびIFN-γが全身で生成されることが示されている(41)。これらのマウスもまた3回治療を受けたものである。
【0061】
3回-治療、i.t.単独かi.m.との併用の実施により、図8に示すように、2回治療の場合を超える完全な腫瘍退縮および疾患がない状態での生存率の増加が得られた。両方の3回-治療プロトコール(i.t.単独、またはi.t.およびi.m.)の結果、疾患がない状態での生存率は80%であり、2回-治療プロトコールから得られる疾患がない状態での生存率60%を統計学的に有意(p<0.05)に超えていた(図1b)。2回-治療プロトコールでの、これまでの2回治療での結果を超える、疾患がない状態での生存率のわずかな増加(60%対47%)は、統計学的に有意ではなかった。3つすべてのエレクトロポレーションによりIL-12プラスミドを送達する治療プロトコールの結果、腫瘍は完全に退縮し、疾患のない状態が100日間維持された。B16.F10細胞で攻撃接種した場合には、3回治療群においては12匹全て(100%)の疾患がない状態のマウスが耐性であり、2回-治療群においては9匹中8匹(88.9%)が耐性であることから、免疫記憶応答の発現が示唆される。これらの治療プロトコールはさらに、多発性腫瘍および転移モデルにおいて調べられた。
【0062】
上述の実験により、完全な応答を有し、長期にわたり疾患がない状態で生存するマウスの高い割合において、新しい腫瘍の形成(反対側の腹部)が予防できることが示された。この治療アプローチの可能性をさらに調べるためには、原発腫瘍の退縮より前に新しい腫瘍の形成を阻止する能力の評価を行うことが重要であった。マウスに、左側腹部に定着させたB16.F10腫瘍に対する第一の治療を行うのと同じ日に、B16.F10細胞の第二の注入を右側腹部に実施した。マウスはその後、第一の腫瘍の退縮ならびに二次性腫瘍の形成の防止に関して評価された。
【0063】
i.t.またはi.t./i.m.注入およびエレクトロポレーションを含む治療プロトコールの結果、二次性腫瘍の形成の阻止と同様に原発腫瘍の退縮が生じた(図9a, b)。2回治療を受けた27%のマウスおよび3回治療プロトコールのいずれかを受けた33%のマウスにおいて二次性腫瘍が成長した(図9a)。コントロールプラスミドのi.t. 注入とそれに続くエレクトロポレーションを受けたマウスのうち、77%のマウスにおいて二次性腫瘍が成長した。無治療群においては、55%のマウスにおいて二次性腫瘍が成長し、i.t. 注入のみを受けた群においては58%のマウスにおいて二次性腫瘍が成長した(図9a)。この腫瘍モデルの攻撃性のために、コントロール治療群におけるいくつかのマウスは、二次性腫瘍が成長する前に原発腫瘍のために死亡した。従って二次性腫瘍の成長を示すマウスの割合は、マウスが長期間生存するこれらの群で高くなり得る。生存(図9b)は、無治療、プラスミド注入のみ、およびコントロールプラスミド注入とそれに続くエレクトロポレーションと比較して、IL-12プラスミドおよびエレクトロポレーションの両方を受けた3つ全ての群において有意に改善した(p < 0.01)。それぞれの群の平均生存は、以下のとおりである:無治療 = 17.9 +/- 6.7 日; プラスミド注入単独 = 30.1 +/- 28.9 日; コントロールプラスミドとそれに続くエレクトロポレーション= 20.6 +/- 6.0 日; i.t. およびi.m.プラスミド注入、およびエレクトロポレーション(3回治療) = 59.5 +/- 27.7 日; i.t.プラスミド注入およびエレクトロポレーション(2回治療)= 65.2 +/- 24.0 日; i.t. プラスミド注入およびエレクトロポレーション(3回治療)= 68.6 +/- 31.8 日。i.t. プラスミド注入およびエレクトロポレーション(3回治療)で治療した15匹のマウスのうち7匹(47%)が治療後100日疾患の徴候なしとして「治癒」と考えられた。i.t./i.m.での3回治療およびi.t.での2回治療群においては、15匹のうち4匹(26%)が「治癒」であった。
【0064】
腫瘍細胞を治療の前に注入した場合に、このアプローチにより遠隔での皮下腫瘍の形成を防ぐことができるかどうかを検討するために、第二の一連の実験を行った。マウスの左側腹部にB16細胞を注入した3日後(マウスが左側腹部に定着したB16.F10腫瘍に対する治療を受けるおよそ4日前)に、右側腹部へB16.F10細胞の第二の注入を施した。前の実験においてと同様に、最初の腫瘍の退縮、ならびに二次性腫瘍形成の予防に関して評価を行った(図10 a、b)。2回または3回のi.t. 治療を受けたマウスの50%、および3回のi.t.およびi.m. 治療を受けたマウスの25%において二次性腫瘍が成長した(図10a)。コントロール群においては、エレクトロポレーションなしにIL-12プラスミドのi.t.注入を受けたマウスの100%、無治療群の87.5%、およびコントロールプラスミドのi.t.注入とそれに続くエレクトロポレーションを受けたマウスの75%が、二次性腫瘍の成長を示した(図10a)。3つのコントロール群と比較した生存の有意な増加(p < 0.05)は、3回のi.t.またはi.t./i.m. 治療を受けたマウス(図10 b)でのみ見られた。i.t.での2回治療群におけるマウスの生存は、その他のいずれの群とも有意には相違しなかった。それぞれの群に関する平均生存は以下のとおりである:無治療 = 21.8 +/-4.8 日; プラスミド注入単独 = 26.0 +/-8.8 日; コントロールプラスミドとそれに続くエレクトロポレーション = 23.5 +/-6.6 日; i.t. およびi.m.プラスミド注入、およびエレクトロポレーション(3回治療) = 37.9 +/-11.2 日; i.t.プラスミド注入およびエレクトロポレーション(2回治療)= 38.1 +/-24.5 日; およびi.t. プラスミド注入およびエレクトロポレーション(3回治療)= 47.8 +/-26.1 日。2匹のマウス、i.t./i.m. 群における1匹と2回治療群におけるもう1匹のみが、100日間腫瘍が見られず、「治癒」と考えられた。
【0065】
B16.F10メラノーマ細胞は、静脈内注入後に肺において腫瘍小結節を形成する。このモデルの治療には、原発または皮下腫瘍に関するものでないプロトコールが必要である。従って提案される治療では、肺における腫瘍量に応答することができる全身免疫応答が誘導されなければならない。我々は、IL-12プラスミドのi.m.注入とそれに続くエレクトロポレーションにより、IL-12およびIFN-γの高い血清レベルが生じることを示した。さらにこれらの血清レベルは、最初の治療の4日後に2回目の治療を加えることにより長期間維持することができる。
【0066】
このモデルにおいて、1x105 B16.F10細胞を静脈注入されたC57Bl/6マウスは、IL-12をコードする50mgのプラスミドでのi.m. 治療およびエレクトロポレーションを実施される。注入および最初の治療後4日目に、第二の治療を実施した。マウスは21日後に安楽死させ、腫瘍小結節に関して肺を調べた。図11の表では、IL-12およびエレクトロポレーションでの治療を受けたマウスの37.5%で肺コロニーの発現が見られることが示されている。それらの3匹のうち2匹のマウスにおいては、小結節が1つだけ存在した。対照的に無治療マウスの87.5%が肺コロニーを発現し、エレクトロポレーションを伴わないIL-12をコードするプラスミドのi.m.注入を受けたマウスまたはエレクトロポレーションを伴うコントロールプラスミドのi.m.注入を受けたマウスの75%は、腫瘍小結節を発現した。
【0067】
多量の腫瘍接種におけるこの治療の有効性を評価するために、5x105個のB16.F10細胞を静脈内に注入し、その後上述のような治療を実施した。コントロール群のマウスは21日目以前に死亡し始めたため、データは生存として示した(図11)。エレクトロポレーションを伴ってIL-12をコードするプラスミドのi.m.注入を受けた群においては、100%のマウスが実験の最初から終わりまで生存した。コントロール群のうち、無治療群においては62.5%が生存し、注入のみの群においては、75%のマウスが生存し、そしてコントロールプラスミドとそれに続くエレクトロポレーションを受けた群においては50%のマウスが生存した。従ってIL-12をコードするプラスミドのi.m.注入とそれに続くエレクトロポレーションの結果、肺コロニーはほとんど形成されず、多量の腫瘍接種を受けたマウスの生存は増加した。
【0068】
本発明により、IL-12をコードするプラスミドのエレクトロポレーションによる送達によって、肺転移ならびに皮下腫瘍の治療成功という結果が得られることが示された。また、このアプローチが定着した腫瘍の治療に効果的なだけでなく、新しい腫瘍形成の予防にも効果的であることも示された。またこの結果は、このアプローチが多発性皮下腫瘍の治療にも有用であり得ることを示している。原発腫瘍のみが治療された場合に、遠隔の二次性腫瘍形成の減少が見られた。この効果は、治療と同日かまたは治療の4日前に腫瘍細胞注入が行われた場合に見られる。プラスミドIL-12を用いるその他のエレクトロポレーションの実施により、いくらかの腫瘍増殖の退縮または遅延が見られるが、本発明の治療プロトコールがマウスB16.F10メラノーマに対して最も高い成功率を示した。
【0069】
電気的パルスの実施自体には有害な副作用がないことが、その使用に関して魅力的な要素である。化学療法剤の送達のために電気的パルスを施すヒトの第I相および第II相臨床試験では、局所腫瘍に対する成功が示された。全身麻酔が不要であり、患者からはいずれの有害事象の報告もされなかった。パルスを施す間、患者は個々のパルスを感じていることを認識するが、いずれの残存感覚(residual sensation)も報告されなかった。従って、電気的パルスの使用はヒトへの使用に確実に適用することができる。
【0070】
さらに、遺伝子治療研究においてエレクトロポレーションは裸のDNAの送達を効果的に促進することができる。プラスミドDNAは細胞分裂を必要とせず、組換えタンパク質の送達またはウイルスベクターの使用と比較して重篤な毒性または免疫応答の発現が見られない。上述のように、Lohr等はエレクトロポレーションによるIL-12の送達をアデノウイルスによるものと比較し、エレクトロポレーションを用いる治療プロトコール後のマウスにおいて有意に副作用が少ないことを見出した。プラスミドDNAの送達のための生体内エレクトロポレーションの使用は開発の比較的初期段階にあるが、いくつかの前臨床試験においては、このアプローチがいくつかのタイプの癌に対して有用であることが示されている。本発明は、原発腫瘍、ならびに遠隔腫瘍および転移に治療効果を有する、エレクトロポレーションを伴ってIL-12をコードするプラスミドを投与する方法を提供する。
【0071】
上述の目的および上述の記載から明らかな目的が効果的に達成されることは明らかであり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で前記構成において一定の変更が可能であるので、前記記載に含まれるかまたは付属の図に示される全ての事項は、実例であってそれに限定されることを意図するものではない。
【0072】
また、請求項は本明細書に記載される発明の一般的および特定の特徴の全て、および言語の問題としてこれらの間に含まれる本発明の範囲にある全ての記載をカバーするものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、完全な腫瘍の退縮をもたらす、IL-12をコードするプラスミドDNAの投与、それに続くエレクトロポレーションに関するグラフを示す。
【図2】図2は、IL-12およびIFN-γの発現に関する血清および腫瘍組織の解析の結果を示したグラフを示す。
【図3】図3は、浸潤した免疫細胞に関してH&E染色により解析した、治療後5日目の腫瘍組織の典型的な切片を示す。
【図4】図4は、茶色に染色される免疫組織化学法により解析された、治療後5日目の腫瘍組織の典型的な切片を示す。
【図5】図5は、ヌードマウスモデルにおいて、腫瘍の退縮を生じないIL-12の投与とそれに続くエレクトロポレーションに関するグラフを示す。
【図6】図6は、血管の存在に関する腫瘍組織の免疫組織化学的解析を示す。
【図7】図7は、それぞれの治療群におけるC57BL/6マウス由来の血管数を示す。
【図8】図8は、本発明による3回治療プロトコールのグラフを示す。
【図9】図9は、本発明による二次性腫瘍の短期的な予防に関するグラフを示す。
【図10】図10は、治療の開始より前に誘導された二次性腫瘍の予防に関するグラフを示す。
【図11】図11は、エレクトロポレーションによるIL-12の筋肉内投与を用いた治療の結果、および肺における腫瘍小結節の成長の予防方法を示す。
【図12】図12は、高用量のB16細胞を静脈内に注入したマウスの生存率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌性腫瘍を有する患者の治療方法であって、この方法が、治療用タンパク質をコードするプラスミドの有効量を前記癌性腫瘍に注入し;そして前記腫瘍にエレクトロポレーション療法を施すことを含んで、前記エレクトロポレーション療法が短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスの処理をさらに含むことを特徴とする、前記治療方法。
【請求項2】
前記癌性腫瘍がメラノーマである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記癌性腫瘍がB16.F10メラノーマである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記治療用タンパク質をコードするプラスミドがIL-12をコードするプラスミドである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍へ送達される少なくとも1回の高電圧パルスが約400V/cm以上である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1回のパルスの短い継続時間が約1ミリ秒以下である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍へ送達される少なくとも1回の高電圧パルスが約1500V/cmである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1回のパルスの短い継続時間が約100マイクロ秒である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
治療用タンパク質をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織に注入し;そして長パルス幅を有する少なくとも1回の低電圧パルスを用いて、患者の筋肉内にエレクトロポレーションを施すことをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記治療用タンパク質をコードするプラスミドがIL-12をコードするプラスミドである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記低電圧パルスが約100V/cmの電圧である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記長パルス幅が約20ミリ秒のパルス幅である、請求項9記載の方法。
【請求項13】
癌性腫瘍を有する患者の治療方法であって、この方法が、IL-12をコードするプラスミドの有効量を前記癌性腫瘍に注入し;各パルスの継続時間が100マイクロ秒である6回の1500V/cmのパルスを用いて前記腫瘍にエレクトロポレーションを施し;IL-12をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織に注入し;そして各パルスの継続時間が20ミリ秒である12回の100V/cmのパルスを用いて前記患者の筋肉内にエレクトロポレーションを施すことを特徴とする、前記治療方法。
【請求項14】
前記癌性腫瘍がメラノーマである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記癌性腫瘍がB16.F10メラノーマである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
癌性腫瘍を有する患者の治療方法であって、この方法が、治療用タンパク質をコードするプラスミドの第一の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスの処理をさらに含む第一のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことをさらに含む第一の治療を時間T1において施し;そして治療用タンパク質をコードするプラスミドの第二の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスの処理をさらに含む第二のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことをさらに含む第二の治療を、時間T1よりも後の時間である時間T2において施すことを特徴とする、前記治療方法。
【請求項17】
前記癌性腫瘍がメラノーマである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記癌性腫瘍がB16.F10メラノーマである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記治療用タンパク質をコードするプラスミドがIL-12をコードするプラスミドである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍に送達される少なくとも1回の高電圧パルスが約400V/cm以上である、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1回のパルスの短い継続時間が約1ミリ秒以下である、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記腫瘍に送達される少なくとも1回の高電圧パルスが約1500V/cmである、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1回のパルスの短い継続時間が約100マイクロ秒である、請求項16記載の方法。
【請求項24】
時間T1とT2との間の期間が7日である、請求項16記載の方法。
【請求項25】
治療用タンパク質をコードするプラスミドの第三の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスの処理をさらに含む第三のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことをさらに含む第三の治療を、時間T2よりも後の時間である時間T3において施すことをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項26】
時間T1とT2との間の期間が4日である、請求項16記載の方法。
【請求項27】
時間T2とT3との間の期間が3日である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
治療用タンパク質をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織に注入し;そして長パルス幅を有する少なくとも1回の低電圧パルスを用いて患者の筋肉内にエレクトロポレーションを施すことをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項29】
前記低電圧パルスが約100V/cmの電圧である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記長パルス幅が約20ミリ秒のパルス幅である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
癌性腫瘍を有する患者の治療方法であって、この方法が、治療用タンパク質をコードするプラスミドの第一の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスの処理をさらに含む第一のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことをさらに含む第一の治療を時間T1において施し;治療用タンパク質をコードするプラスミドの第二の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスの処理をさらに含む第二のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことをさらに含む第二の治療を、時間T1よりも後の時間である時間T2において施し;そして治療用タンパク質をコードするプラスミドの第三の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして短い継続時間を有する少なくとも1回の高電圧パルスの処理をさらに含む第三のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことをさらに含む第三の治療を、時間T2よりも後の時間である時間T3において施すことを特徴とする、前記治療方法。
【請求項32】
前記癌性腫瘍がメラノーマである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記癌性腫瘍がB16.F10メラノーマである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記治療用タンパク質をコードするプラスミドがIL-12をコードするプラスミドである、請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記腫瘍に送達される少なくとも1回の高電圧パルスが約400V/cm以上である、請求項31記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1回のパルスの短い継続時間が約1ミリ秒以下である、請求項31記載の方法。
【請求項37】
前記腫瘍に送達される少なくとも1回の高電圧パルスが約1500V/cmである、請求項31記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1回のパルスの短い継続時間が約100マイクロ秒である、請求項31記載の方法。
【請求項39】
治療用タンパク質をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織に注入し;そして長パルス幅を有する少なくとも1回の低電圧パルスを用いて患者の筋肉内にエレクトロポレーションを施すことをさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項40】
前記低電圧パルスが約100V/cmの電圧である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記長パルス幅が約20ミリ秒のパルス幅である、請求項39記載の方法。
【請求項42】
時間T1と時間T2との間の期間が4日であり、そして時間T2と時間T3との間の期間が3日である、請求項39記載の方法。
【請求項43】
癌性腫瘍を有する患者の治療方法であって、この方法が、IL-12をコードするプラスミドの第一の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第一のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第一の治療を0日目に施し;そしてIL-12をコードするプラスミドの第二の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第二のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第二の治療を7日目に施すことを特徴とする、前記治療方法。
【請求項44】
IL-12をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織に注入し;そして20ミリ秒の継続時間で、100V/cmで送達される12回のパルスを用いて患者の筋肉内にエレクトロポレーション療法を施すことをさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
癌性腫瘍を有する患者の治療方法であって、この方法が、IL-12をコードするプラスミドの第一の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第一のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第一の治療を0日目に施し;そしてIL-12をコードするプラスミドの第二の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第二のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第二の治療を7日目に施し;IL-12をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織に注入し;そして20ミリ秒の継続時間で100V/cmで送達される12回のパルスを用いて患者の筋肉内にエレクトロポレーション療法を施すことを特徴とする、前記治療方法。
【請求項46】
癌性腫瘍を有する患者の治療方法であって、この方法が、IL-12をコードするプラスミドの第一の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第一のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第一の治療を0日目に施し;IL-12をコードするプラスミドの第二の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第二のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第二の治療を4日目に施し;そしてIL-12をコードするプラスミドの第三の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第三のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第三の治療を7日目に施すことを特徴とする、前記治療方法。
【請求項47】
IL-12をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織に注入し;そして20ミリ秒の継続時間で、100V/cmで送達される12回のパルスを用いて患者の筋肉内にエレクトロポレーション療法を施すことをさらに含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
癌性腫瘍を有する患者の治療方法であって、この方法が、IL-12をコードするプラスミドの第一の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第一のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第一の治療を0日目に施し;IL-12をコードするプラスミドの第二の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第二のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第二の治療を4日目に施し; IL-12をコードするプラスミドの第三の有効量を前記癌性腫瘍に注入し、そして100マイクロ秒のパルス幅で1500V/cmで送達される6回のパルスの処理をさらに含む第三のエレクトロポレーション療法を前記腫瘍に施すことを含む第三の治療を7日目に施し;IL-12をコードするプラスミドの有効量を患者の筋肉組織に注入し;そして20ミリ秒の継続時間で、100V/cmで送達される12回のパルスを用いて患者の筋肉内にエレクトロポレーション療法を施すことを特徴とする、前記治療方法。
【請求項49】
前記癌性腫瘍がメラノーマである、請求項48記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−501283(P2007−501283A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533526(P2006−533526)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/017153
【国際公開番号】WO2004/110371
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(398014333)ユニバーシティ オブ サウス フロリダ (17)
【Fターム(参考)】