説明

情報修復装置及び情報修復方法

【課題】分断された状態で書き込まれた光ディスクのファイルシステムが破損した場合、破損前の光ディスクと同様に、再生可能な状態に修復する情報修復装置及び情報修復方法を提供する。
【解決手段】光ディスク全体の情報を管理する光ディスク管理情報を含む修復対象の管理情報ファイルを光ディスクから読み出す管理情報読出部10と、マルチメディアデータを管理するストリーム情報を読み出すストリーム情報読出部20と、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報が有するデータとストリーム情報が有するデータとを比較し、予め設定した閾値以上のデータ数が一致する光ディスク管理情報とストリーム情報を検出した場合、検出された光ディスク管理情報のデータとストリーム情報のデータとを一致させて管理情報ファイル及びマルチメディアデータを修復するストリーム整合部30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録済みデータの論理的な不具合のために、正常な再生が不可能となった光ディスクを修復する情報修復装置及び情報修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録型光ディスクに関する記録再生装置は、記録型光ディスク上のファイルシステムの構造が論理的に正しいこと、及び記録された映像情報、音声情報及び字幕情報等のコンテンツ(以下、マルチメディアデータという)が消去されていないこと等を前提として録画及び再生を行っている。記録再生装置は、マルチメディアデータを動画圧縮規格であるMPEG(Moving Picture Expert Group)ストリームとして記録する際に、ファイルの管理情報も生成する。そして、MPEGストリームと共にファイルの管理情報も記録するので、再生時には、このファイルの管理情報に基づいて、MPEGストリームの再生や検索等を実行する。
【0003】
記録型光ディスクのファイルシステムは、記録中に停電などの予期せぬ事態があったとき、情報の一部を失う場合がある。これは、記録再生装置が、ファイルシステムへの書き込みの更新をする前に強制終了してしまうためである。また、記録再生装置においてDVDやBD(Blu-Ray Disc)への記録を行う場合に、長いMPEGストリームやその他大きなファイルの記録が中断されると、既に記録されているストリーミングデータが損失されてしまう可能性もある。さらに、ユーザの誤動作により、記録されたMPEGストリームを消去してしまう場合もある。
【0004】
一方、DVD−VR(DVD-Video Recording)規格に準拠した記録型光ディスクでは、MPEGストリームの任意の部分を削除することができる。すなわち、記録再生装置は、DVD−VR規格に準拠した記録型光ディスクに記録されているMPEGストリームの複数領域を部分的に削除した後、新たなMPEGストリームを追記すると、その部分的に削除した領域にも記録を行う。これら一連の操作を繰り返すと、記録型光ディスク上のMPEGストリームは非常に複雑な状態で配置されることになる。また、一般的に、記録型光ディスクの最内周のエリアには、管理情報(IFO)ファイルやファイルシステムが書き込まれる。
【0005】
通常、記録再生装置は、記録型ディスクに対して、記録処理、部分削除処理を行うたびに、ファイルシステムおよび管理情報ファイルを更新して書き込むことになる。そして、追記、編集操作が多くなるほど管理情報ファイルの更新回数が増えるため、ディスク記録面の劣化や、汚れ、傷等の影響も受けやすくなり、管理情報ファイルやファイルシステムの更新に失敗する可能性が高まる。
【0006】
MPEGストリームが複雑に配置された状態となった記録型光ディスクに対して、記録再生装置が、ファイルシステムの更新に失敗した場合、誤ってディスクフォーマットを実行した場合、あるいはディスクの傷や汚れ、経年変化等によってファイルシステムの一部分を読み出せなくなった場合には、管理情報ファイルやMPEGストリームの書かれている位置が分からなくなってしまうことがある。なお、MPEGストリームと管理情報ファイルとは、それぞれが独立した異なるファイルとして記録型光ディスク上の任意の位置に記録される。そして、記録再生装置は、管理情報ファイルやMPEGストリームの書かれている位置が分からなくなった記録型光ディスクを論理的な不整合が発生したDVD−VR規格に準拠していない不正な記録型光ディスクであるとみなしてしまう。すなわち、記録再生装置は、その記録型光ディスクを再生することができなくなったり、不正な順序でしか再生することができなくなってしまう。
【0007】
そこで、MPEGストリームを記録型光ディスクに記録している際に、管理情報ファイルの破損や消失が生じた場合でも、既に記録済みのMPEGストリームにアクセスできるように、管理情報ファイルを修復または生成する記録装置の発明が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−143439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載の記録再生装置は、記録型光ディスクに記録されたMPEGストリームを、その先頭の記録ブロックから順次再生していくことによって、管理情報ファイルを修正または生成する構成であるため、作業が煩雑で時間を要するという問題がある。また、MPEGストリームの配置が複雑な状態となった記録型光ディスクに対して、ファイルシステムが破壊された場合、またはディスクフォーマットが実行された場合、記録再生装置は分断された各MPEGストリームの関連性を見つけることが困難となり、記録型光ディスク上に配置されたMPEGストリームの順番でなければ修復することができないという問題が生じる。特に、タイトル及びチャプターの順番まで破損前と同様な状態に記録型光ディスクを修復することは困難となる。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、MPEGストリームが分断された状態で書き込まれた複雑な配置状態の記録型光ディスクに対して、ファイルシステムが破損した場合、またはディスクフォーマットが実行された場合、破損前の記録型光ディスクと同様に、再生可能な状態に修復する記録型光ディスクの情報修復装置及び情報修復方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述した従来の技術の課題を解決するため、光ディスク全体の情報を管理する光ディスク管理情報を含む修復対象の管理情報ファイルを光ディスクから読み出す管理情報読出部(10)と、映像情報、音声情報及び字幕情報のうち少なくとも1つを含むマルチメディアデータを管理するストリーム情報を光ディスクから読み出すストリーム情報読出部(20)と、管理情報読出部より読み出された修復対象の管理情報ファイルに含まれる光ディスク管理情報が有する複数のデータとストリーム情報読出部により読み出されたストリーム情報が有する複数のデータとを比較し、予め設定した閾値以上のデータ数が一致する光ディスク管理情報とストリーム情報を検出した場合、検出された光ディスク管理情報に含まれるデータとストリーム情報に含まれるデータとを一致させて管理情報ファイル及びマルチメディアデータを修復するストリーム整合部(30)とを有する情報修復装置(100)を提供する。
【0012】
ここで、管理情報読出部は、管理情報ファイルに含まれる光ディスク管理情報を管理情報ファイルリストとして書き出し、管理情報ファイルリストの中から、最新の日時情報を有する光ディスク管理情報に対応する管理情報ファイルを、修復対象の管理情報ファイルとして特定することが望ましい。
【0013】
また、ストリーム情報読出部は、光ディスクからマルチメディアデータを検出し、検出されたマルチメディアデータからストリーム情報を読み出し、ストリーム情報をストリーム情報リストとして書き出し、ストリーム整合部は、ストリーム情報リストに含まれるそれぞれのストリーム情報の複数のデータと、管理情報特定部により特定された修復対象の管理情報ファイルに含まれる光ディスク管理情報の複数のデータとを順次比較することが望ましい。
【0014】
本発明は、前述した従来の技術の課題を解決するため、光ディスク全体の情報を管理する光ディスク管理情報を含む修復対象の管理情報ファイルを光ディスクから読み出し、映像情報、音声情報及び字幕情報のうち少なくとも1つを含むマルチメディアデータを管理するストリーム情報を光ディスクから読み出し、管理情報ファイルに含まれる光ディスク管理情報が有する複数のデータとストリーム情報読出部により読み出されたストリーム情報が有する複数のデータとを比較し、予め設定した閾値以上のデータ数が一致する光ディスク管理情報とストリーム情報を検出した場合、検出された光ディスク管理情報に含まれるデータとストリーム情報に含まれるデータとを一致させて管理情報ファイル及びマルチメディアデータを修復する情報修復方法を提供する。
【0015】
ここで、管理情報ファイルに含まれる光ディスク管理情報を管理情報ファイルリストとして書き出し、管理情報ファイルリストの中から、最新の日時情報を有する光ディスク管理情報に対応する管理情報ファイルを、修復対象の管理情報ファイルとして特定することが望ましい。
【0016】
また、光ディスクからマルチメディアデータを検出し、検出されたマルチメディアデータからストリーム情報を読み出し、ストリーム情報をストリーム情報リストとして書き出し、ストリーム情報リストに含まれるそれぞれのストリーム情報の複数のデータと、修復対象の管理情報ファイルに含まれる光ディスク管理情報の複数のデータとを順次比較することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、MPEGストリームが分断された状態で書き込まれた複雑な配置状態の記録型光ディスクに対して、ファイルシステムが破損した場合、またはディスクフォーマットが実行された場合、破損前の記録型光ディスクと同様に、再生可能な状態に修復する記録型光ディスクの情報修復装置及び情報修復方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報修復装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る管理情報リストの一例を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るストリーム情報リストの一例を説明するためのである。
【図4】本発明の実施の形態に係る修復対象の管理情報ファイルにおける光ディスク管理情報の一例を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るストリーム情報リストのストリーム情報の一例を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るストリーム整合部により整合されたストリーム情報の一例を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る情報修復方法の全体の流れを示すフローチャート図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る光ディスクのデータ配置及びデータ構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以後の説明における光ディスクは、DVD−VR規格で記録された記録型光ディスクであるものとして説明するが、単に光ディスクと称する。また、DVD−VR規格とは、録画した映像を自由に分割、結合、消去及び順番の入れ替え等の編集ができる光ディスクで利用されているアプリケーションフォーマットの一種である。
【0020】
(情報修復装置の構成)
本発明の実施の形態に係る情報修復装置100は、図1に示すように、管理情報読出部10、ストリーム情報読出部20、ストリーム整合部30、情報書出部40、記憶装置50、情報書込部60を有し、それぞれ制御部70により制御される。以後の説明において、管理情報読出部10、ストリーム情報読出部20、ストリーム整合部30、情報書出部40、情報書込部60からファイルやリスト等を保存する場合は、制御部70を介して行われる。
【0021】
管理情報読出部10は、ファイルシステムの破損及びディスクフォーマット等により論理的な不具合が生じ、記録された映像情報、音声情報及び字幕情報等によって構成されるマルチメディアデータの再生が不可能となった状態の光ディスクから、光ディスク全体の情報を管理している光ディスク管理情報を読み出す。なお、光ディスクに記録されるマルチメディアデータは、映像情報、音声情報及び字幕情報等を少なくとも1つ含むものであり、また動画圧縮規格であるMPEGストリームとして記録されるものとする。
【0022】
次に、管理情報読出部10の構成について詳細に説明する。管理情報読出部10は、管理情報検出部11、管理情報判定部12、管理情報生成部13及び管理情報特定部14を有する。
【0023】
管理情報検出部11は、最内周から最外周へかけて順番に、光ディスク内の一定サイズ分のデータを読み出す。一定サイズ分とは、例えば2Kバイトである。ファイルシステムを破損、または消失した際、光ディスクに記録されたデータはファイルシステムの規格に準拠したファイルとして読み出せないため、管理情報検出部11はファイルシステムとは無関係に最内周から順次強制的に読み出す。また、管理情報検出部11は、管理情報ファイル(IFOファイル)の存在を検出するために、読み出した一定サイズ分のデータの中からDVD−VR規格に準拠した管理情報ファイルの先頭を示すVMG_IDを検索する。そして、VMG_IDが検出された場合、管理情報ファイルのサイズを取得するために、VMG_IDの次に記録されているRTR_VMG_EAを読み出す。さらに、読み出したRTR_VMG_EAのサイズ分に相当する管理情報ファイルを読み出す。管理情報ファイルは、光ディスク上の同一箇所に記録されるとは限らないため、作成日時の古いものやバックアップファイル等が複数存在する。そのため、管理情報検出部11は、光ディスク上に記録される全ての管理情報ファイルを読み出し、各管理情報ファイルを記憶装置50に格納する。
【0024】
管理情報判定部12は、管理情報検出部11より検出されたすべての管理情報ファイルが、DVD−VRの規格に準拠しているか否かを判定する。
【0025】
管理情報生成部13は、管理情報判定部12により、エラーが発見されずDVD−VRの規格に準拠していると判定された場合、例えば、管理情報ファイルの番号、位置を示すアドレス、タイトル数、更新日時情報等を含む光ディスク管理情報を管理情報ファイルリストとして書き出す。図2は、この管理情報リストの一例を示した図である。管理情報生成部13は、その管理情報ファイルリストを記憶装置50に順次保存する。図2に示す管理情報ファイルリストのIFO#1及びIFO#2は、それぞれ1つの管理情報ファイルの番号である。記憶装置50に保存される管理情報ファイルリストは、管理情報検出部11により管理情報ファイルが検出され、管理情報判定部12により、エラーが発見されずDVD−VRの規格に準拠していると判定された場合、随時追記されて更新される。
【0026】
管理情報特定部14は、記憶装置50に保存される管理情報ファイルリストから、最新の日時情報を有し、かつタイトル数が1以上である管理情報ファイルを修復対象の管理情報ファイルとして特定する。また、管理情報特定部14は、最新の日時に関する情報を有するファイルとして特定した管理情報ファイルを記憶装置50から読み出す。なお、日時情報は、例えばDVD−VR規格の日時記述フォーマットにより記述されプレイリストが作成されたときの時間を示すPL_CREATE_TM、DVD−VR規格の日時記述フォーマットにより記述されVOBU(Video Object Unit)を構成するVOB(Video Object)の先頭の記録時間を示すVOB_REC_TM、DVD−VR規格の日時記述フォーマットにより記述され記録機器等による記録時間を示すMNFI_REC_TM等から取得される。
【0027】
ストリーム情報読出部20は、光ディスク上に記録されているMPEGストリームを格納し、MPEGストリームの再生が不可能となった状態の光ディスクに無作為に記録されているMPEGストリーム(マルチメディアデータ)を管理する情報(以下、ストリーム情報という)を読み出す。また、ストリーム情報読出部20は、ストリーム情報検出部21とストリーム情報生成部22を有する。
【0028】
ストリーム情報検出部21は、光ディスクの最内周から最外周へかけて、順次、MPEGストリームを構成するVOBUの検索を行う。ここで、DVD−VRの規格に準拠したVOBUは、pack化される。そのため、ストリーム情報検出部21は、packの先頭を検出するためにpack_start_codeを検索する。さらに、ストリーム情報検出部21は、検出したpack内で先頭のVOBUを検出するためにsystem_headerを検索する。
【0029】
ストリーム情報生成部22は、ストリーム情報検出部21によりsystem_headerが検出されると、VOBUの連続性が分かるように、ストリーム情報をストリーム情報リストとして書き出し、そのストリーム情報リストを記憶装置50に保存する。VOBUの連続性は、packヘッダに書かれているSCR及びPES(Packetized Elementary Stream)ヘッダに書かれているPTSの値等を監視することで判定することができる。
【0030】
図3は、ストリーム情報リストの一例を示す図である。図3に示すストリーム情報に含まれるVOBUの詳細情報は、M_VOBIという形式で連続している一連の領域に含まれる複数のVOBUをまとめたものである。そして、VOBUの詳細情報は、それぞれ光ディスクでのVOBUの位置を示すアドレス、最初の参照画像であるiピクチャのサイズ(以下、基準リファレンスサイズという)、VOBUの再生時間(以下、映像再生時間という)、VOBUのサイズ(以下、マルチメディアデータサイズという)、映像及び音声の再生開始における同期を合わせるための時間(以下、音声映像再生同期時間という)、音声の圧縮方式(以下、音声圧縮方式という)及び圧縮された音声データが単位時間当たりに表現できる情報量(以下、音声ビットレートという)等、VOBUの再生に必要な情報を含んでいる。
【0031】
なお、基準リファレンスサイズは、1STREF_SZの情報フィールドに格納され、映像再生時間は、図3に示すVOBU_PB_TMに格納される。また、マルチメディアデータサイズは、図3に示すVOBU_SZに格納され、音声映像再生同期時間は、図3に示すStartPTSに格納される。さらに、音声圧縮方式は、図3に示すAudio Coding Modeに格納され、音声ビットレートは、図3に示すAudio Bitrateに格納される。
【0032】
ここで、ストリーム情報は、少なくとも基準リファレンスサイズ、映像再生時間、マルチメディアデータサイズ、音声映像再生同期時間、音声圧縮方式及び音声ビットレートに関するデータを含む。また、管理情報ファイル内に含まれる光ディスク管理情報にも、少なくとも基準リファレンスサイズ、映像再生時間、マルチメディアデータサイズ、音声映像再生同期時間、音声圧縮方式及び音声ビットレートに関するデータが含まれている。
【0033】
ストリーム整合部30は、記憶装置50に保存されているストリーム情報リストのそれぞれのストリーム情報の複数のデータと、記憶装置50に保存されている修復対象の管理情報ファイルの複数のデータとを順次比較し、光ディスクを再生可能な状態に修復する。ストリーム情報リストには、複数のストリーム情報が記録されている可能性が高いので、ストリーム整合部30は、後述する方法により比較の結果、一致しないと判定される場合には次のストリーム情報内のデータと比較をする。
【0034】
最初に、ストリーム整合部30は、管理情報特定部14により特定された修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータである各M_VOBIのAudio Coding Mode及びAudio Bitrateの値と、ストリーム情報リストに含まれる比較対象のストリーム情報のデータであるAudio Coding Mode及びAudio Bitrateの値とがそれぞれ一致しているか否かを判定する。
【0035】
Audio Coding Mode及びAudio Bitrateの値が一致する場合、ストリーム整合部30は、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータであるM_VOBIのPTSの範囲内に、ストリーム情報リストに含まれる比較対象のストリーム情報のデータである各M_VOBIのStartPTSの値が含まれるか否かを判定する。
【0036】
光ディスク管理情報のデータであるM_VOBIのPTSの範囲内に、ストリーム情報のデータである各M_VOBIのStartPTSの値が含まれる場合、ストリーム整合部30は、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータである各M_VOBI内のVOBUの1STREF_SZ、VOBU_TM及びVOBU_SZの値と、ストリーム情報リストに含まれるストリーム情報のデータであるVOBUの1STREF_SZ、VOBU_TM及びVOBU_SZの値とがそれぞれ一致するか否かを判定する。
【0037】
VOBUの1STREF_SZ、VOBU_TM及びVOBU_SZの値が一致する場合、ストリーム整合部30は、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータであるM_VOBIのVOBUに含まれる「情報1」〜「情報n」と、ストリーム情報リストに含まれる比較対象のストリーム情報のデータであるM_VOBIのVOBUに含まれる「情報1」〜「情報n」をそれぞれ比較する。図4は修復対象の管理情報ファイルにおける光ディスク管理情報のデータの一例を示したものである。また、図5はストリーム情報リストに含まれるストリーム情報のデータの一例を示したものである。
【0038】
「情報1」〜「情報n」のうち、予め設定した閾値以上のデータ数でデータが一致した場合、一致したとみなして、修正対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータであるM_VOBIの識別番号を、ストリーム情報リストに含まれる比較対象のストリーム情報のデータであるM_VOBIに付与し、一対一で対応させる。
【0039】
修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータであるすべてのM_VOBIに対して、ストリーム情報リストの比較対象のストリーム情報のデータであるM_VOBIと比較し、一致とみなしたストリーム情報リストの比較対象のストリーム情報のデータであるM_VOBIに、該当する識別番号を付与する。
【0040】
以上のように、ストリーム整合部30は、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク情報のデータであるすべてのM_VOBIについて、同様の処理を実行する。図6は、ストリーム整合部により整合された後のストリーム情報リストにおけるストリーム情報の一例を示すものである。
【0041】
図4に示す修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報の三段目のデータであるM_VOBIと、図5に示すストリーム情報リストの比較対象のストリーム情報の一段目のデータであるM_VOBIが一致する。また、図4に示す修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報の一段目のデータであるM_VOBIと、図5に示すストリーム情報リストの比較対象のストリーム情報の二段目のデータであるM_VOBIが一致する。さらに、図4に示す修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報の二段目のデータであるM_VOBIと、図5に示すストリーム情報リストの比較対象のストリーム情報の三段目のデータであるM_VOBIが一致する。
【0042】
最後に、ストリーム整合部30は、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータであるM_VOBIの数とストリーム情報リストの比較対象のストリーム情報のデータであるM_VOBIの数を一致させる。すなわち、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータであるM_VOBIの数が、ストリーム情報リストの比較対象のストリーム情報のデータであるM_VOBIの数よりも多い場合、記憶装置50内の修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータであるM_VOBIからストリーム情報リストの比較対象のストリーム情報のデータとして存在しないM_VOBIを削除する。
【0043】
また、ストリーム情報リストの比較対象のストリーム情報のデータであるM_VOBIの数が、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータであるM_VOBIの数よりも多い場合、記憶装置50内のストリーム情報リストの比較対象のストリーム情報のデータであるM_VOBIから修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータとして存在しないM_VOBIをストリーム情報リストから削除する。
【0044】
情報書出部40は、上述の方法で修復された管理情報ファイルをDVD−VRの規格に準拠したVR_MANGR.IFOとして書き出し、記憶装置50に保存する。また、情報書出部40は、上述の方法で修復されたストリーム情報リストから、VOBUの実体であるMPEGストリームをDVD−VRの規格に準拠したVR_MOVIE.VROとして書き出し、記憶装置50に保存する。
【0045】
情報書込部60は、情報書出部40により書き出されたVR_MANGR.IFO及びVR_MOVIE.VROをDVD−VRの規格に準拠したファイルシステムの形式であるUDF2.0で、光ディスクに書き込む。
【0046】
なお、管理情報読出部10、ストリーム情報読出部20、ストリーム整合部30、情報書出部40及び情報書込部60等はそれぞれ専用のハードウェアで構成しても良く、オープンプラットフォーム上で動作する通常のコンピュータシステムのCPUを用いて、ソフトウェアで実質的に等価な機能を有していても構わない。
【0047】
ここで、「オープンプラットフォーム」とは、情報処理機器及び通信ネットワーク等の接続において、機器間の相互接続性、OS等のソフトウェアの再利用性、サービスの相互運用性及びユーザインタフェースの統一性等を保証するために必要な部分の設計仕様が公開されているハードウェア及びソフトウェア基盤を指す。「オープンプラットフォーム」上で稼働するシステム、すなわちオープンプラットフォームシステムが構築されると、接続された各機器間における既存の情報資源を利用することが可能となる。
【0048】
記憶装置50は、半導体記憶装置や磁気ディスク装置であって、制御部70で実行されるプログラムやデータも記憶されているものである。
【0049】
(情報修復装置による光ディスクの修復方法)
次に、本発明の実施の形態に係る情報修復装置100が、DVD−VRの規格に準拠した光ディスクを修復する方法について、図1に示すブロック図及び図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0050】
管理情報検出部11は、光ディスクからデータを最内周から最外周にかけて読み出す際に、最外周に到達しているか否かを判定する(ステップS01)。最外周に到達していない場合(ステップS01,NO)、光ディスクの一定サイズ分のデータを読み出す(ステップS02)。続いて、管理情報検出部11は、管理情報ファイルであるIFOファイルの検索を行う(ステップS03)。
【0051】
そして、管理情報検出部11は、管理情報ファイルを検出したか否かを判定する(ステップS04)。管理情報ファイルを検出した場合(ステップS04,YES)、管理情報判定部12は、検出した管理情報ファイルのデータ全体を読み出して、管理情報ファイルが光ディスク(DVD−VR)の規格に適合するか否かを判定する(ステップS05)。管理情報ファイルが光ディスクの規格に適合する場合、すなわちエラーがない場合(ステップS05,YES)、管理情報生成部13は、記憶装置50内の管理情報ファイルリストに、検出した管理情報ファイルの光ディスク管理情報を記録する(ステップS06)。
【0052】
管理情報ファイルを検出しなかった場合(ステップS04,NO)、管理情報ファイルが光ディスクの規格に適合しない場合(ステップS05,NO)、管理情報ファイルの光ディスク管理情報を記録した場合(ステップS06)、ステップS01に戻る。以上のように、ステップS01〜ステップS06において、管理情報読出部10は、光ディスク上に存在するエラーのない管理情報ファイルをすべて検出し、検出された全ての管理情報ファイルの光ディスク管理情報を管理情報ファイルリストに記録する。
【0053】
最外周に到達しているか否かを判定する最外周に到達している場合(ステップS01,YES)は、S11に進む。ストリーム情報検出部21は、光ディスクからMPEGストリームを最内周から最外周にかけて読み出す際に、最外周に到達しているか否かを判定する(ステップS11)。最外周に到達していない場合(ステップS11,NO)、ストリーム情報検出部21は、MPEGストリームを検出したか否かを判定する(ステップS12)。MPEGストリームを検出した場合(ステップS12,YES)、検出したMPEGストリームからストリーム情報を読み出して、記憶装置50内のストリーム情報リストにストリーム情報を記録し(ステップS13)、ステップS11に戻る。以上のように、ステップS11〜ステップS13において、ストリーム情報検出部21は、光ディスク上に存在するMPEGファイルをすべて検出し、検出された全てのMPEGファイルより読み出されるストリーム情報をストリーム情報リストに記録する。
【0054】
最外周に到達しているか否かを判定する最外周に到達している場合(ステップS01,YES)は、S21に進む。
【0055】
管理情報特定部14は、記憶装置50内の管理情報ファイルリストから、最新の日付をもつ管理情報ファイルを修復対象の管理情報ファイルとして特定する(ステップS21)。続いて、ストリーム整合部30は、記憶装置50内のストリーム情報リストから順次ストリーム情報を読み出す際に、ストリーム情報があるか否かを判定する(ステップS22)。ストリーム情報がある場合(ステップS22,YES)、ストリーム整合部30は、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報に含まれる複数のデータと、ステップS22で存在すると判定されたストリーム情報の複数のデータが予め定めた閾値以上のデータ数分のデータが一致するか否かを判定する(ステップS23)。
【0056】
予め定めた閾値以上のデータ数分のデータが一致する場合(ステップS23,YES)、ストリーム整合部30は、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報に関連付けられる識別番号をステップS23で比較対象となっているストリーム情報リストのストリーム情報に付与する(ステップS24)。
【0057】
ストリーム整合部30は、修復対象の管理情報ファイルの光ディスク管理情報のデータ数と、ステップS23で比較対象となっているストリーム情報リストのデータ数を一致させ、修復対象の管理情報ファイルとストリーム情報リストを修復する(ステップS25)。情報書出部40は、修復された管理情報ファイル及び修復されたストリーム情報リストから、VOBUの実体であるMPEGストリームを、DVD−VRの規格に準拠した形式で記憶装置50に書き出し、情報書込部60は、情報書出部40により書き出されて記憶装置50に保存され、修復された管理情報ファイル及びMPEGストリームを、DVD−VRの規格に準拠した形式で光ディスクに書き込む(ステップS26)。
【0058】
なお、予め定めた閾値以上のデータ数分のデータが一致しない場合(ステップS23,N)、ステップS22に戻る。また、ストリーム情報がない場合(ステップS22,NO)は終了する。
【0059】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る情報修復装置100は、ファイルシステムが論理的に破損光ディスク、及び論理的に初期化された光ディスクから、修復に最も適した管理情報ファイル、映像情報、音声情報及び字幕情報等を含むマルチメディアデータ(MPEGストリーム)を修復することができる。また、情報修復装置100は、修復した管理情報ファイルに基づいて、修復したマルチメディアデータを適切な順序及び形式で、修復した管理情報ファイルと共に、光ディスクへ書き込むことで、光ディスクを破損した時点と同様、または破損した時点に近い状態の光ディスクへ修復することができる。さらに、破損した光ディスクが有する管理情報ファイルを使用してマルチメディアデータを修復することで、記録したタイトル及びチャプター等の規則にしたがって、映像情報、音声情報及び字幕情報等のマルチメディアコンテンツも分類されるため、視聴者は修復後の光ディスクを従来通りに視聴することが可能となる。
【0060】
図8は、修復後の光ディスクのデータ構成及びデータ配置を示している。本発明の実施の形態に係る情報修復装置100は、適切に修復された管理情報ファイルに基づいて、マルチメディアデータを修復することで、図8(a)に示すように、チャプター同士の関連性、マルチメディアデータ同士の関連性が明確になった状態で光ディスクを修復することが可能となる。すなわち、図8(a)に示すように、M_VOBI(Y)、M_VOBI(C)が順にチャプターIに属し、M_VOBI(B)、M_VOBI(O)及びM_VOBI(J)が順にチャプターIIに属し、M_VOBI(A)がチャプターIIIに属することが明確となる。そして、図8(a)の情報を有する管理情報ファイル及びマルチメディアデータを破損した光ディスクに書き込むことが可能となる。
【0061】
また、図8(b)に示すように、光ディスクに対して、編集作業を繰り返すと、同じチャプターのコンテンツでも光ディスク上には分断して記録される。これを内周からあるいは外周から単純にコンテンツを抽出しただけでは、コンテンツ同士の関連性が不明となり、視聴者が再度視聴する際には、正しい順序で視聴が出来ず、理解不能な状態になってしまう。すなわち、編集が繰り返された光ディスクでは、チャプターI〜IIIに属するストリームデータ、M_VOBI(Y)、M_VOBI(C)、M_VOBI(B)、M_VOBI(O)、M_VOBI(J)及びM_VOBI(A)は、図8(b)に示すように、無作為に分断されて記録される。しかし、適切に修復された管理情報ファイルに基づいて、マルチメディアデータを修復することで、図8(b)に示す状態であっても、適切な順序で読み出すことが可能である。
【0062】
なお、光ディスク管理情報とストリーム情報のデータの一致を判定する方法など、説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
10…管理情報読出部
11…管理情報検出部
12…管理情報判定部
13…管理情報生成部
14…管理情報特定部
20…ストリーム情報読出部
21…ストリーム情報検出部
22…ストリーム情報生成部
30…ストリーム整合部
40…情報書出部
50…記憶装置
60…情報書込部
70…制御部
100…情報修復装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク全体の情報を管理する光ディスク管理情報を含む修復対象の管理情報ファイルを前記光ディスクから読み出す管理情報読出部と、
映像情報、音声情報及び字幕情報のうち少なくとも1つを含むマルチメディアデータを管理するストリーム情報を前記光ディスクから読み出すストリーム情報読出部と、
前記管理情報読出部より読み出された前記修復対象の管理情報ファイルに含まれる光ディスク管理情報が有する複数のデータと前記ストリーム情報読出部により読み出された前記ストリーム情報が有する複数のデータとを比較し、予め設定した閾値以上のデータ数が一致する前記光ディスク管理情報と前記ストリーム情報を検出した場合、前記検出された光ディスク管理情報に含まれるデータと前記ストリーム情報に含まれるデータとを一致させて前記管理情報ファイル及び前記マルチメディアデータを修復するストリーム整合部
とを有することを特徴とする情報修復装置。
【請求項2】
前記管理情報読出部は、前記管理情報ファイルに含まれる光ディスク管理情報を管理情報ファイルリストとして書き出し、前記管理情報ファイルリストの中から、最新の日時情報を有する光ディスク管理情報に対応する前記管理情報ファイルを、修復対象の管理情報ファイルとして特定する管理情報特定部を有することを特徴とする請求項1記載の情報修復装置。
【請求項3】
前記ストリーム情報読出部は、前記光ディスクから前記マルチメディアデータを検出し、前記検出されたマルチメディアデータから前記ストリーム情報を読み出し、前記ストリーム情報をストリーム情報リストとして書き出し、
前記ストリーム整合部は、前記ストリーム情報リストに含まれるそれぞれの前記ストリーム情報の複数のデータと、前記管理情報特定部により特定された前記修復対象の管理情報ファイルに含まれる前記光ディスク管理情報の複数のデータとを順次比較することを特徴とする請求項2記載の情報修復装置。
【請求項4】
管理情報読出部は、光ディスク全体の情報を管理する光ディスク管理情報を含む修復対象の管理情報ファイルを前記光ディスクから読み出し、
ストリーム情報読出部は、映像情報、音声情報及び字幕情報のうち少なくとも1つを含むマルチメディアデータを管理するストリーム情報を前記光ディスクから読み出し、
ストリーム整合部は、前記管理情報読出部より読み出された前記修復対象の管理情報ファイルに含まれる光ディスク管理情報が有する複数のデータと前記ストリーム情報読出部により読み出された前記ストリーム情報が有する複数のデータとを比較し、予め設定した閾値以上のデータ数が一致する前記光ディスク管理情報と前記ストリーム情報を検出した場合、前記検出された光ディスク管理情報に含まれるデータと前記ストリーム情報に含まれるデータとを一致させて前記管理情報ファイル及び前記マルチメディアデータを修復することを特徴とする情報修復方法。
【請求項5】
前記管理情報ファイルに含まれる光ディスク管理情報を管理情報ファイルリストとして書き出し、前記管理情報ファイルリストの中から、最新の日時情報を有する光ディスク管理情報に対応する前記管理情報ファイルを、修復対象の管理情報ファイルとして特定することを有することを特徴とする請求項4記載の情報修復方法。
【請求項6】
前記光ディスクから前記マルチメディアデータを検出し、前記検出されたマルチメディアデータから前記ストリーム情報を読み出し、前記ストリーム情報をストリーム情報リストとして書き出し、前記ストリーム情報リストに含まれるそれぞれの前記ストリーム情報の複数のデータと、前記修復対象の管理情報ファイルに含まれる前記光ディスク管理情報の複数のデータとを順次比較することを特徴とする請求項5記載の情報修復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−244612(P2010−244612A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91994(P2009−91994)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】