説明

情報処理方法および情報処理システム

【課題】画像を複数の情報処理装置のユーザ間で共有して観察を行う場合の効率の向上を図る。
【解決手段】情報処理装置の制御部は、複数の情報処理装置の1つに排他的な操作権を付与した状態で、複数の情報処理装置の各々に対応する複数の表示部に互いに同期する画像を表示し、操作権を持たない情報処理装置に対してユーザより第1の要求が入力されたとき、当該情報処理装置の画像の同期状態を解除し、同期状態が解除された当該情報処理装置に対してユーザより第2の要求が入力されたとき同期状態を復旧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、複数の情報処理装置のユーザ間で同一の画像を共有して観察を行うための情報処理方法および情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のユーザ間での遠隔会議を支援するために、各ユーザの端末間で共通の画面を共有情報資源として共有するシステム例えばテレビ会議システムなどが知られている。また、病理診断の分野においても、共通の病理診断用の画像を複数の医師の端末間で共有し、端末間で意見をやりとりしてながら診断を行うことで、診断の効率化を図ることが行われている。
【0003】
また、複数の端末間で共有される画面に対して、ポインティングカーソルを表示できるようにし、複数の端末間で発言権を得た端末が、そのポインティングカーソルの操作権を得る技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
また、2機の診療端末の各表示装置に同一の診療情報(胸部X線写真)を表示することによって、2人の医師によって同一の画像を観察できる連携診療支援方法がある。この連携診療支援方法において、一方の診療端末は病巣部位の明確化のため、画像に高域強調ファイル処理を行った結果を、自端末の表示装置に表示するとともに、編集加工情報を他方の診療端末に伝送する。他方の診療端末は受信した編集加工情報をもとに画像に対して高域強調ファイル処理を行って、その結果を自端末の表示装置に表示する。これにより、2機の診療端末のそれぞれの医師の同じ編集処理結果を共有することができる。(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−298235号公報
【特許文献2】特開平08−147391号公報、図2、段落[0027−0033])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数の端末間で同一の画像を共有しつつ意見をやりとりするシステムにおいては、解決すべき様々な課題が残されている。例えば、全体の画像の解像度が画面の解像度よりも高い場合、ユーザは全体画像の中で注目すべき範囲を移動させながら観察を進めることになる。しかしその間、操作権を持たないユーザは、自分が独自に観察したい場所を発見したとしても、操作権を交換しない限り、その場所を随時観察しに行くことはできない。また、ユーザ間で操作権を気軽に交換するようにした場合、各々のユーザの視点での画像観察がいちいち中断されることになり、効率がかえって低下する可能性がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、画像を複数の情報処理装置のユーザ間で共有して観察を行う場合の効率の向上を図ることのできる情報処理方法および情報処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る情報処理方法は、複数の情報処理装置の1つに排他的な操作権を付与した状態で、前記複数の情報処理装置の各々に対応する複数の表示部に互いに同期する画像を表示し、前記操作権を持たない前記情報処理装置に対してユーザより第1の要求が入力されたとき、当該情報処理装置の前記画像の同期状態を解除し、前記同期状態が解除された当該情報処理装置に対してユーザより第2の要求が入力されたとき前記同期状態を復旧する、というものである。
【0009】
本技術の一形態に係る情報処理方法では、操作権を付与されていない情報処理装置の画像の同期状態のオン/オフを、操作権を付与されていない情報処理装置のユーザからの指示によって適宜切り替えることができる。これにより、操作権を付与されていない情報処理装置のユーザは、操作権を付与された情報処理装置のユーザによる画像の操作の結果を受動的に観察することのみならず、能動的に画像の操作を行って別の観点からの観察を行うことが可能になる。また、画像の同期状態を随時復旧させることもできるので、操作権を付与されていない情報処理装置においてユーザは、もとの状態への戻り方や、操作権を付与された情報処理装置のユーザによる画像の最新の操作結果などを意識することなく自由に画像を操作することができる。
【0010】
この情報処理方法は、前記操作権を付与されていない前記情報処理装置の前記表示部に表示された画像に対する操作のためのユーザからの入力の発生を前記第1の要求として、この第1の要求が入力されたとき、当該情報処理装置の前記画像の同期状態を解除するものであってよい。これにより、独占的な操作権を付与されていない画像に対する操作のためのユーザからの入力の発生により、その操作権を付与されていない画像を当該情報処理装置においてユーザがプライベートな画像として利用することができる。また、その操作権を付与されていない画像に対する操作の開始と同時にプライベートな画像に対する移動、ズーム倍率の変更等の操作が可能になる。すなわち、プライベートな画像に対する操作に移行するためだけのユーザ操作が不要になることから、ユーザの操作性がより一層向上する。
【0011】
この情報処理方法は、前記操作権を付与されていない前記情報処理装置に対してユーザより操作権取得要求が入力されたとき、当該情報処理装置に前記操作権を付与することを含むものであってよい。これにより、複数の情報処理装置の間で画像の操作権をそれぞれの情報処理装置のユーザからの指示に応じて自由に移動させることができる。すなわち、画像を操作する側と操作された画像をただ観察する側との切り替えを随時行うことができる。
【0012】
この情報処理方法は、前記表示部毎に複数の画像を、互いに非同期の画像として、かつそれぞれ前記複数の情報処理装置の間で同期する画像として表示し、前記複数の情報処理装置の間で同期する画像の組み合わせ毎に複数の情報処理装置の1つに前記操作権を付与することを含むものとすることができる。
【0013】
これにより、それぞれの情報処理装置は、同一または互いに異なる2つの画像について、例えば、一方の画像を操作可能な画像として、他方の画像を観察のみ可能な画像として表示することなどが可能になる。また、このことにより、複数のユーザ間で、別々のユーザに操作権が付与された2つの画像を使った双方向の意見交換などを効率的に行うことが可能になる。
【0014】
この情報処理方法は、前記表示部毎に表示される複数の画像の一方の画像の操作権が一方の前記情報処理装置に付与され、他方の画像の操作権が他方の前記情報処理装置に与えられているとき、前記一方の情報処理装置に対してユーザより第3の要求が入力された場合に、前記一方の画像を前記他方の画像で置き換えることを含むものとすることができる。
【0015】
例えば、一方の情報処理装置のユーザを生徒とし、他方の情報処理装置のユーザを教師とする場合、生徒側の情報処理装置の表示部において、生徒側に操作権がある画像を現時点で教師が操作権を持っている画像で即座に置き換えることができる。このため、生徒は生徒自身に操作権のある画像を操作して、現在教師に操作権のある画像の周辺や詳細を確認することができる。このため、生徒は現在教師が注目している画像の周辺や詳細を、生徒側に操作権がある画像を使って確認する作業に速やかに移行することができる。
【0016】
本技術の他の形態に係る情報処理システムは、複数の情報処理装置を有する。前記複数の情報処理装置はそれぞれ、画像を表示可能な表示部と、ユーザからの指示を受け付けることが可能な入力部と、前記複数の情報処理装置の1つに排他的な操作権が付与された状態で、前記複数の情報処理装置の各々に対応する複数の前記表示部に互いに同期する画像が表示されるように制御を行う制御部とを含む。制御部は、前記操作権を付与されていない前記情報処理装置に対してユーザより第1の要求が入力されたとき、当該情報処理装置の前記画像の同期状態を解除し、前記同期状態が解除された当該情報処理装置に対してユーザより第2の要求が入力されたとき前記同期状態を復旧するように制御を行う。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本技術によれば、画像を複数の情報処理装置のユーザ間で共有して観察を行う場合の効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本技術に係る第1の実施形態に係る情報処理システムの構成を示す図である。
【図2】図1の同期サーバの機能的な構成を示すブロック図である。
【図3】シングルウィンドウ表示モード時の同期管理テーブルの構成を示す図である。
【図4】マルチウィンドウ表示モード時の同期管理テーブルの構成を示す図である。
【図5】個々のビューワに表示されるウィンドウの数が3である場合のマルチウィンドウ表示モード時の同期管理テーブルの構成を示す図である。
【図6】図1のビューワの機能的な構成を示すブロック図である。
【図7】ビューワ間での同期/非同期の切り替えの動作を含む同期処理の流れを示すシーケンス図である。
【図8】ビューワ間での操作権の移動処理を含む同期処理の流れを示すシーケンス図である。
【図9】ウィンドウ間での画像のコピーを含むマルチウィンドウ表示モードでの同期処理の流れを示すシーケンス図である。
【図10】典型的なコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【図11】本技術に係る実施形態の変形例を説明するための図である。
【図12】シングルウィンドウ表示モードにおける各ビューワに表示されるウィンドウの例を示す図である。
【図13】プレゼンターである第1のウィンドウ内の画像に対して非同期ボタンが操作された状態を示す図である。
【図14】プレゼンターの第1のウィンドウに表示された画像に対して移動の操作が行われた状態を示す図である。
【図15】続けてプレゼンターの第1のウィンドウに表示された画像に対して移動の操作が行われた状態を示す図である。
【図16】オーディエンスの第2のウィンドウに表示された画像に対して移動の操作が行われた状態を示す図である。
【図17】第1のウィンドウと第2のウィンドウとの同期関係が復旧した状態を示す図である。
【図18】ビューワ間での操作権の移動処理を示すウィンドウの表示例を示す図である。
【図19】同じくビューワ間での操作権の移動処理を示すウィンドウの表示例を示す図である。
【図20】マルチウィンドウ表示モードの表示例を示す図である。
【図21】第2のビューワにおける第2の右ウィンドウ(プレゼンター)内の画像に対して移動の操作が行われた状態を示す図である。
【図22】第2のビューワにおける第2の右ウィンドウと第1のビューワの第1の右ウィンドウとの間で画像の同期処理が行われた状態を示す図である。
【図23】第1のビューワの左ウィンドウにおいてウィンドウ間コピーボタンが操作された状態を示す図である。
【図24】ウィンドウ間での画像のコピー処理の状態を示す図である。
【図25】ウィンドウ間での画像のコピー処理後の同期処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本技術に係る実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
[情報処理システム]
図1は、本技術に係る第1の実施形態に係る情報処理システムの構成を示す図である。
【0020】
この情報処理システム100は、画像サーバ10、同期サーバ20、および複数のビューワ30A、30B(情報処理装置)を有する。これらは互いにネットワーク40を通じて接続可能である。ネットワーク40は、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)でも、LAN(Local Area Network)でもよい。また、ネットワーク40を有線、無線を問わない。ここでは説明の簡単のため、2つのビューワ30A、30Bが接続されている場合を示したが、ビューワの数は3以上であってもよい。この明細書において、ビューワを個別に指定する場合には「第1のビューワ30A」、「第2のビューワ30B」と区別して表記し、ビューワを個別に指定しない場合には「ビューワ30A、30B」と表記することとする。
【0021】
画像サーバ10は、例えば、典型的なコンピュータで構成されたものでよい。画像サーバ10は、画像データを格納する画像ストレージを有し、ビューワ30A、30Bからのリクエストに対して、図像ストレージから該当する画像データを読み出して応答する。ここで、画像ストレージに格納されている画像は、例えば病理検体の顕微鏡画像などであってもよい。病理検体の顕微鏡画像は、ビューワ30A、30Bの表示部の画面よりも大きい解像度を有する。画像サーバ10は、ビューワ30A、30Bから、例えば、画像名、全体画像中の画像位置情報などを含む画像データ要求を受信し、画像ストレージから該当する画像データを読み出してビューワ30A、30Bに応答する。画像位置情報は、例えば、全体画像における画像の座標データであってもよい。あるいは全体画像が、「タイル」と呼ばれる縦横所定のピクセル数(例えば256×256(ピクセル)、236×512(ピクセル))の単位で分割されて管理されている場合には、その単位毎に予め割り当てられた番号を画像位置情報とすることができる。
【0022】
[同期サーバ20]
同期サーバ20は、ビューワ30A、30B間で互いに同一の画像を表示するための同期処理を行う。ここで、「同一の画像」とは、同じ被写体画像の同じ部位、さらには同じズーム倍率、同じ向きの画像を言う。すなわち、ビューワ30A、30B間で同じ見え方となる画像をここでは「同一の画像」と呼ぶ。
【0023】
同期サーバ20は、例えば、典型的なコンピュータシステムで構成されたものでよい。
図2は典型的なコンピュータシステムを用いて実現される同期サーバ20の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、同期サーバ20は、通信部21、同期管理テーブル格納部23、同期処理部25などを備える。
【0024】
通信部21は、ビューワ30A、30Bとの間でネットワーク40を通じて画像データ要求、操作権取得要求、非同期要求、同期復帰要求の受信とそれぞれの要求に対する応答の送信を行う。
同期管理テーブル格納部23は、ビューワ30A、30B間での画像の同期処理に必要な管理情報である同期管理テーブルを格納する。
【0025】
図3は、同期管理テーブルの構成を示す図である。
同期管理テーブルには、ウィンドウ毎のレコードがウィンドウの数だけ登録される。ウィンドウ毎のレコードは、ビューワID、ウィンドウID、操作権フラグ、非同期フラグなどの情報で構成される。以下に、それぞれの情報について説明する。
【0026】
ビューワIDは、ビューワを識別するための情報である。
ウィンドウIDは、複数のビューワ間で互いに画像の同期処理の対象となるという意味での対応関係にある複数のウィンドウの組み合わせに対してユニークに与えられるIDである。図3は2つのビューワにウィンドウが1つずつ表示される場合(シングルウィンドウ表示モード)を示しているため、ウィンドウIDの種類は1である。個々のビューワに複数のウィンドウが表示される場合(マルチウィンドウ表示モード)には、図4に示すように、複数のビューワ間で対応関係にあるウィンドウの組み合わせが複数存在することとなる。したがって、ウィンドウIDの種類も複数となる。なお、個々のビューワに表示されるウィンドウの数は3以上であってもよい。この場合の同期管理テーブルの例を図5に示す。ウィンドウIDの種類は3以上になる。
【0027】
操作権フラグは、複数のビューワ間で対応関係にある複数のウィンドウの組み合わせにおいて排他的な操作権(以下単に「操作権」と呼ぶ。)が与えられた1つのウィンドウを特定するためのフラグである。操作権フラグは、複数のビューワ間で対応関係にある複数のウィンドウの組み合わせにおいていずれか1つのウィンドウに設定される。操作権とは、ウィンドウに表示された画像に対して、ユーザからの指示の入力によって移動、ズーム倍率の変更、回転などの操作(以下「画像の操作」と表現する。)を行うことのできる権利である。したがって、操作権が与えられていないウィンドウに表示された画像に対するユーザからの指示による操作は無効である。但し、一時的な非同期状態が設定されている場合にはその制約が解除される。一時的な非同期状態については後で詳述する。
【0028】
操作権が与えられたウィンドウ内の画像の操作結果は、操作権が与えられていないウィンドウの画像にも反映される。これにより、複数のビューワ間で対応関係にある複数のウィンドウにそれぞれ表示される画像の同期状態が確保される。以後の説明において、操作権を与えられたウィンドウを「プレゼンターのウィンドウ」、操作権を与えられていないウィンドウを「オーディエンスのウィンドウ」と呼ぶ。
【0029】
非同期フラグは、複数のビューワ間で対応関係にある複数のウィンドウの同期状態を一時的に解除して非同期状態とする場合に"1"の値にセットされるフラグである。非同期フラグのセットはビューワからの非同期要求により行われる。非同期フラグのリセットはビューワからの同期復帰要求により行われる。
【0030】
同期処理部25は、上記の同期管理テーブルを参照して、複数のビューワ間で対応関係にある複数のウィンドウに表示される画像の同期処理を行う。同期処理部25は、プレゼンターであるウィンドウ内の画像を操作するためのユーザからの指示が発生する都度そのウィンドウを有するビューワから送信される画像位置情報、ビューワID、プレゼンターであるウィンドウのウィンドウIDを含む同期依頼を通信部21を用いて受信することが可能である。同期処理部25は、この同期依頼を受信した場合に、この受信した同期依頼に含まれる上記各情報を含む同期要求を通信部21を用いて他のビューワに送信する。
【0031】
同期処理部25は、オーディエンスのウィンドウ内の操作権取得ボタンが操作されたときにそのウィンドウを有するビューワから送信されるビューワID、およびそのオーディエンスのウィンドウのウィンドウIDを含む操作権取得要求を通信部21を用いて受信することが可能である。同期処理部25は、受信した操作権取得要求に含まれるビューワIDおよびウィンドウIDをもとに、同期管理テーブル上に当該オーディエンスのウィンドウに対する操作権フラグをセットするとともに、当該オーディエンスのウィンドウとウィンドウIDが一致するプレゼンターのウィンドウの操作権フラグをリセットする。これにより、対応関係にある複数のウィンドウ間で操作権が移動される。
【0032】
同期処理部25は、オーディエンスのウィンドウ内の非同期ボタンが操作されたときにそのウィンドウを有するビューワから送信されるビューワID、およびそのオーディエンスであるウィンドウのウィンドウIDを含む非同期要求を通信部21を用いて受信することが可能である。同期処理部25は、受信した非同期要求に含まれるビューワIDおよびウィンドウIDをもとに、同期管理テーブル上に当該オーディエンスのウィンドウに対する非同期フラグをセットすることにより、当該オーディエンスであるウィンドウを非同期状態に設定する。
【0033】
同期処理部25は、非同期状態に設定されたオーディエンスのウィンドウ内の同期ボタンが操作されたときにそのウィンドウを有するビューワから送信されるビューワID、およびそのオーディエンスであるウィンドウのウィンドウIDを含む同期復帰要求を通信部21を用いて受信することが可能である。同期処理部25は、受信した同期復帰要求に含まれるビューワIDおよびウィンドウIDをもとに同期管理テーブル上の当該オーディエンスのウィンドウに対する非同期フラグをリセットする。
【0034】
本実施形態の情報処理システム100は、サーバ/クライアントシステムを採用していることから、同期処理を同期サーバ20で行うように構成される。しかしながら、本技術の本質はサーバ/クライアントシステムとは無関係である。ピアツーピアシステムを想定した場合には、同期サーバ20による同期処理は、複数のビューワ30A、30Bの少なくとも1つで行うようにすることが可能である。
【0035】
[ビューワ30A、30B]
ビューワ30A、30Bは、例えば、典型的なコンピュータシステムで構成されたものでよい。
図6は典型的なコンピュータシステムを用いて実現されるビューワ30A、30Bの機能的な構成を示すブロック図である。なお、2つのビューワ30A、30Bの構成は同じであるため、第1のビューワ30Aの構成についてのみ説明する。
同図に示すように、第1のビューワ30Aは、入力部31A、通信部33A、表示部35A、ビューワ制御部37Aなどを備える。
【0036】
入力部31Aは、例えばマウス、キーボード、タッチパネル、音声入力部など、ユーザからの入力を受け付ける手段である。ユーザは入力部31Aを用いて、ウィンドウ内の画像に対する各種の操作のための指示や、操作権取得要求、非同期要求、同期復帰要求、ウィンドウ間コピー要求などの各種の要求を行うための指示を入力することができる。
【0037】
通信部33Aは、同期サーバ20との間でネットワーク40を通じて画像データ要求、同期依頼、操作権取得要求、非同期要求、同期復帰要求などの各種の要求の送信と、それぞれの要求に対する応答の受信を行う。
表示部35Aは、例えば、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(electroluminescence)ディスプレイなど、画像を視覚的に出力するデバイスである。
【0038】
ビューワ制御部37A(制御部)は、プレゼンターのウィンドウ内の画像を更新するためにユーザが入力部31Aを用いて入力した操作情報をもとに、ウィンドウ内の画像を更新するために必要な画像位置情報を計算する。ビューワ制御部37Aは、この画像位置情報、ビューワID、およびプレゼンターのウィンドウのウィンドウIDを含む画像データ要求を通信部33Aを用いて画像サーバ10に送信する。また、ビューワ制御部37Aは、画像位置情報、ビューワID、およびプレゼンターのウィンドウのウィンドウIDを含む同期依頼を通信部33Aを用いて同期サーバ20に送信する。
【0039】
ビューワ制御部37Aは、オーディエンスのウィンドウにおいて非同期状態が設定されている場合を除き、オーディエンスのウィンドウ内の画像を更新するためにユーザが入力部31Aを用いて入力した操作情報を無効化する。これにより、プレゼンターとオーディエンスとの同期関係の破綻を回避できる。
【0040】
ビューワ制御部37Aは、送信された画像データ要求に対して画像サーバ10より応答された画像データをもとにウィンドウ内の画像を更新する。また、ビューワ制御部37Aは、同期サーバ20より画像位置情報を含む同期要求を受信した場合には、この同期要求に含まれる画像位置情報を含む画像データ要求を通信部33Aを用いて画像サーバ10に送信し、画像サーバ10より応答された画像データでウィンドウ内の画像を更新する。
【0041】
第2のビューワ30Bも第1のビューワ30Aと同様に、入力部31B、通信部33B、表示部35B、ビューワ制御部37Bなどを備える。これについての説明は、重複となるため省略する。
【0042】
[ウィンドウに関連するGUIについて]
次に、ウィンドウに関連するGUI(Graphical User Interface)について説明する。
図12は、2つのビューワ30A、30B間で互いに同期状態にある2つのウィンドウの例を図である。図中の左側は第1のビューワ30Aにおいてプレゼンターとして設定された第1のウィンドウ51A、右側は第2のビューワ30Bにおいてオーディエンスとして設定された第2のウィンドウ51Bである。
【0043】
第1のウィンドウ51Aおよび第2のウィンドウ51Bには、その中の画像を操作するためのユーザからの指示を受け付ける画像操作GUI52A、52Bが設けられる。画像操作GUI52A、52Bは、サムネイルマップ53A、53Bとサムネイルマップ操作GUI54A、54Bとを有する。サムネイルマップ53A、53Bは、被写体全体の縮小画像55A、55Bと、第1のウィンドウ51Aおよび第2のウィンドウ51Bに表示されている画像の範囲を縮小画像55A、55Bの上で等価的に示す枠56A、56Bとを有する。枠56A、56Bは縮小画像55A、55Bの上で、ユーザからの指示によって任意の方向へ任意の量だけ移動させることが可能である。この枠56A、56Bの移動の操作情報をもとに、ビューワ制御部37Aが画像位置情報の計算を行う。一方、サムネイルマップ操作GUI54A、54Bは、画像の移動、ズーム倍率の変更、回転など、画像を操作するためのユーザからの指示を受け付ける複数のボタンなどのGUI要素で構成される。なお、サムネイルマップ53A、53Bにおいて、枠56A、56Bの移動の操作はマウスなどのドラッグ操作などにより行うことも可能である。以上が画像を操作するための画像操作GUI52A、52Bの説明である。
【0044】
また、オーディエンスのウィンドウ、例えば、第2のウィンドウ51Bには、操作権取得ボタン57Bと非同期/同期切替ボタン58Bが表示される。
【0045】
操作権取得ボタン57Bは、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bにおいて操作権を取得したい場合に用いられるボタンである。操作権取得ボタン57Bの操作によって操作権が与えられると、操作権取得ボタン57Bは第2のウィンドウ51Bから消滅する。この操作権取得ボタン57Bの第2のウィンドウ51Bからの消滅をもってユーザは自分のウィンドウに操作権が与えられ、プレゼンターになったことを認識して、画像の操作に移行することができる。
【0046】
非同期/同期切替ボタン58Bは、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bをプレゼンターの第1のウィンドウ51Aに対して一時的に非同期状態にしてプライベートに利用したい場合に用いられるボタンである。この非同期/同期切替ボタン58Bが操作されて一時的に非同期状態になると、非同期/同期切替ボタン58Bの表記は「非同期」から「同期」に変化し、画像操作GUI52Bへの入力による第2のウィンドウ51Bの画像に対する操作が可能な状態になる。表記が「同期」になっているとき非同期/同期切替ボタン58Bは、非同期状態から同期状態に復帰させるためのボタンとして機能する。
【0047】
また、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bがプレゼンターの第1のウィンドウ51Aに対して同期状態にあるとき、第2のウィンドウ51Bの画像操作GUI52Bに対する何らかの入力操作が入力部31Bを使ってユーザによって開始された場合も、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bは同期状態から離脱して非同期状態となる。この場合も非同期/同期切替ボタン58Bの表記は「同期」から「非同期」に切り替わる。さらに、この画像操作GUI52Bへの入力操作の開始による切り替え方法によれば、画像操作GUI52Bへの最初の入力操作から第2のウィンドウ51Bの画像に対する実際の操作が行われる。これにより、非同期/同期切替ボタン58Bを操作する方法に比較して、より速やかに画像のプライベートな操作に移行できる。
なお、本技術は、画像を操作するためのユーザからの指示を入力するための手段が画像操作GUI52Bであることに限定されない。例えば、第2のウィンドウ51Bの画像の上に直接ポインタカーソルを表示させ、このポインタカーソルを用いた入力操作(クリック、ダブルクリック、右クリック、左クリック、ドラッグ等)によって画像を操作するようにしてもよい。この場合も、同様に、最初の入力操作から第2のウィンドウ51Bの画像に対する実際の操作が行われるようにしてもよい。
【0048】
[情報処理システム100の動作]
次に、本実施形態の情報処理システム100の動作を説明する。
動作の説明は、
1.シングルウィンドウ表示モードでの同期処理と同期/非同期の切り替え処理
2.シングルウィンドウ表示モードでの操作権の移動処理
3.マルチウィンドウ表示モードでの同期処理
の順で行う。
【0049】
[1.シングルウィンドウ表示モードでの同期処理と同期/非同期の切り替え処理]
次に、図7、および図12から図17を参照してシングルウィンドウ表示モードでの同期処理の動作を説明する。図7は同期/非同期の切り替えの動作を含む同期処理の流れを示すシーケンス図である。図12から図17はシングルウィンドウ表示モードにおいて互いに対応関係にある2つのウィンドウの表示例を示す図である。
【0050】
図12において、図中の左側は第1のビューワ30Aにおいてプレゼンターの第1のウィンドウ51A、右側は第2のビューワ30Bにおいてオーディエンスの第2のウィンドウ51Bである。第1のウィンドウ51Aと第2のウィンドウ51Bは互いに同期状態にある。このため第1のウィンドウ51Aおよび第2のウィンドウ51Bには同一の画像が表示されている。また、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bには操作権取得ボタン57Bと非同期/同期切替ボタン58Bが表示されている。非同期/同期切替ボタン58Bの表記は「非同期」である。
【0051】
第1のビューワ30Aにおいて、プレゼンターの第1のウィンドウ51Aに表示された画像に対してユーザからの入力によって任意の操作が行われる(図7のA1)。第1のビューワ30Aのビューワ制御部37Aは、入力部31Aを通じてユーザより入力された操作情報をもとに画像位置情報を計算する。ビューワ制御部37Aは、この画像位置情報をもとに第1のウィンドウ51Aの画像を更新するための制御を行うとともに、この画像位置情報を含む同期依頼を通信部33Aを用いて同期サーバ20に送信するように制御を行う(図7のA2)。
【0052】
同期サーバ20は、同期依頼を受信すると、この同期依頼から画像位置情報を抽出し、この画像位置情報を含む同期要求を生成して第2のビューワ30Bに送信する(図7のA3)。
【0053】
第2のビューワ30Bのビューワ制御部37Bは同期依頼を通信部33Aを用いて受信すると、この同期依頼から画像位置情報を抽出し、この画像位置情報をもとに第2のウィンドウ51Bの画像を更新するための制御を行う(図7のA4)。
【0054】
以上の動作は、第1のビューワ30Aに操作権がある限り、第1のビューワ30Aにおいて第1のウィンドウ51A内の画像の操作が行われる毎に繰り返される。
【0055】
例えば、図13に示すように、プレゼンターである第1のウィンドウ51A内の画像に対して移動の操作が行われると、この操作はオーディエンスである第2のウィンドウ51Bの画像に反映される。
【0056】
図12、図13に示したように、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bには操作権取得ボタン57Bと非同期/同期切替ボタン58Bが表示されている。ここでオーディエンスの第2のウィンドウ51Bにおいてユーザにより非同期/同期切替ボタン58Bが操作された場合または画像操作GUI52Bが操作された場合の動作を説明する。
【0057】
オーディエンスの第2のウィンドウ51Bにおいてユーザにより非同期/同期切替ボタン58Bまたは画像操作GUI52Bが操作されると(図7のB1)、第2のビューワ30Bのビューワ制御部37Bは同期サーバ20にビューワIDおよびウィンドウIDを含む非同期要求を送信する(図7のB2)。
【0058】
同期サーバ20の同期処理部25は非同期要求を受信すると、同期管理テーブルの第2のウィンドウ51Bの同期フラグをリセットする(図7のB3)。これにより、第1のウィンドウ51Aと第2のウィンドウ51Bとの同期状態が解除される。この後、同期処理部25は、非同期応答を第2のビューワ30Bに返信する(図7のB4)。第2のビューワ30Bのビューワ制御部37Bは、非同期応答を受信すると、第2のウィンドウ51Bの非同期/同期切替ボタン58Bの表記を「同期」に変化させるとともに、画像操作GUI52Bへの入力による第2のウィンドウ51Bの画像に対する操作が可能な非同期状態に設定する(図7のB5)。
【0059】
以降、同期サーバ20の同期処理部25は、第2のビューワ30Bから同期復帰要求を受けるまでは、第1のビューワ30Aから第2のビューワ30Bへの画像位置情報の伝達を禁止する。これにより、第2のビューワ30Bの第2のウィンドウ51Bの画像は第2のビューワ30Bにとってプライベートな操作が可能な画像となり、ユーザは任意の操作を行うことができるようになる。
【0060】
例えば、図13において、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bにおいて非同期/同期切替ボタン58Bまたは画像操作GUI52Bが操作されたものとする。これにより、第2のウィンドウ51Bはプレゼンターの第1のウィンドウ51Aに対して非同期状態となり、非同期/同期切替ボタン58Bの表記が「非同期」から「同期」に変化する。この後、図14、図15に示すように、プレゼンターの第1のウィンドウ51Aに表示された画像に対する操作が行われても(図7のC1)、第2のビューワ30Bにはその操作情報にもとづく画像位置情報を含む同期要求は与えられないため、第2のウィンドウ51Bの画像にその操作は反映されない。なお、図14、図15は、プレゼンターの第1のウィンドウ51Aに表示された画像に対する操作が繰り返される一方で、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bの画像に対してはユーザによる操作が行われなかった場合を示している。
【0061】
そして図16に示すように、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bに表示された画像に対して入力部31Aを用いてユーザより操作情報が入力されると、その操作情報をもとにオーディエンスの第2のウィンドウ51B内の画像の更新が行われる(図7のB6)。
以上のように、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bの画像をプレゼンターの第1のウィンドウ51Aの画像に対して非同期状態にすることができるので、オーディエンスの第2のウィンドウ51B内の画像に対して自由に操作を行うことが可能になる。
なお、画像操作GUI52Bの操作によってオーディエンスの第2のウィンドウ51Bが非同期状態に切り替わった場合には、その画像操作GUI52Bの最初の操作によって第2のウィンドウ51Bに表示された画像に対して実際の操作が実行されることになる。
【0062】
次に、図16において、「同期」と表記された非同期/同期切替ボタン58Bが操作された場合(図7のE1)を説明する。この場合、第2のビューワ30Bのビューワ制御部37Bは、ビューワID、およびオーディエンスの第2のウィンドウ51BのウィンドウIDを含む同期復帰要求を通信部33Aを用いて同期サーバ20に送信する(図7のE2)。
【0063】
同期サーバ20の同期処理部25は、同期復帰要求を受信すると、同期復帰要求に含まれるビューワIDおよびウィンドウIDをもとに、同期管理テーブルにおける第2のウィンドウ51Bの同期フラグをセットする(図7のE3)。また、同期処理部25は、プレゼンターである第2のウィンドウ51Bの画像に対する最新の操作(図7のD1)によって算出された最新の画像位置情報を含む同期要求を同期復帰要求元の第2のビューワ30Bに送信する(図7のE4)。
【0064】
第2のビューワ30Bのビューワ制御部37Bは同期要求を受信すると、この受信した同期要求に含まれる画像位置情報をもとに第2のウィンドウ51Bの画像を更新するように制御を行うとともに、非同期/同期切替ボタン58Bの表記を「同期」から「非同期」に変化させる(図7のE5)。これにより、図17に示すように、第1のウィンドウ51Aと第2のウィンドウ51Bとの同期状態が復旧する。
【0065】
[2.シングルウィンドウ表示モードでの操作権の移動処理]
次に、図8、および図18、図19を参照してシングルウィンドウ表示モードでの操作権の移動処理を説明する。図8はビューワ間での操作権の移動処理を含む同期処理の流れを示すシーケンス図である。図18、図19は操作権の移動処理を示すウィンドウの表示例を示す図である。
【0066】
図8において、プレゼンターの第1のウィンドウ51Aに表示された画像に対してユーザにより行われた操作が、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bに表示された画像に反映されるまでの動作(図8のA1からA4)は、図7のA1からA4までの動作と同じである。
【0067】
図18に示すように、オーディエンスの第2のウィンドウ51Bにおいて操作権取得ボタン57Bがユーザによって操作されると(図8のF1)、第2のビューワ30Bのビューワ制御部37Bは、ビューワIDおよびオーディエンスの第2のウィンドウ51BのウィンドウIDを含む操作権取得要求を同期サーバ20に送信する(図8のF2)。
【0068】
同期サーバ20の同期処理部25は、操作権取得要求を受信すると、この操作権取得要求から抽出したビューワIDおよびウィンドウIDを含む操作権放棄要求を生成して第1のビューワ30Aに送信する(図8のF3)。
【0069】
第1のビューワ30Aのビューワ制御部37Aは、操作権放棄要求を受信すると、図19に示すように、第1のウィンドウ51Aに操作権取得ボタン57Aおよび非同期/同期切替ボタン58Aを表示するように制御を行い(図8のF4)、同期サーバ20に操作権放棄応答を返信する(図8のF5)。
【0070】
同期サーバ20は、第1のビューワ30Aから操作権放棄応答を受信すると、同期管理テーブルにおける第1のウィンドウ51Aの操作権フラグをリセットするとともに、第2のウィンドウ51Bの操作権フラグをセットする(図8のF6)。この後、同期サーバ20の同期処理部25は、第2のビューワ30Bに、少なくとも第2のウィンドウ51BのウィンドウIDを含む操作権取得応答を送信する(図8のF7)。
【0071】
第2のビューワ30Bは操作権取得応答を受信すると、図19に示すように、第2のウィンドウ51Bから操作権取得ボタン57B、非同期/同期切替ボタン58Bを消去する(図8のF8)。
【0072】
これにより操作権の第1のウィンドウ51Aから第2のウィンドウ51Bへの移動が完了となる。以後は、新たにプレゼンターとなった第1のウィンドウ51Aに表示された画像に対してユーザにより行われた操作が、新たにオーディエンスとなった第2のウィンドウ51Bに表示された画像に反映される(図8のG1からG4)。
【0073】
[3.マルチウィンドウ表示モードでの同期処理]
次に、マルチウィンドウ表示モードでの同期処理について説明する。
個々のビューワに複数のウィンドウを表示させる場合(マルチウィンドウ表示モード)では、互いに対応関係にあるウィンドウの組み合わせが複数存在することになるので、操作権は互いに対応関係にあるウィンドウの組み合わせ毎に1つのウィンドウに対して与えられる。
【0074】
図20は図4の同期管理テーブルに対応するマルチウィンドウの表示例を示す図である。この例では、ビューワIDが"0001"の第1のビューワ30AとビューワIDが"0002"の第2のビューワ30Bが存在する。第1のビューワ30Aには、ウィンドウID="01"の第1の左ウィンドウ61AとウィンドウID="02"の第1の右ウィンドウ62Aが存在する。第2のビューワ30Bには、ウィンドウID="01"の第2の左ウィンドウ61BとウィンドウID="02"の第2の右ウィンドウ62Bが存在する。そして、ウィンドウID=01のウィンドウの組み合わせにおいて操作権は第1の左ウィンドウ61Aにあり、ウィンドウID=02のウィンドウの組み合わせにおいて操作権は第2の右ウィンドウ62Bにある。
【0075】
マルチウィンドウ表示モードでの同期処理、同期/非同期の切り替え処理、さらには操作権の移動処理は、互いに対応関係にあるウィンドウの組み合わせの単位で、シングルウィンドウ表示モード時の同様の動作が独立して行われるだけで特に異なる点はない。したがって、これらの説明は省略する。
【0076】
マルチウィンドウ表示モードの有効な用途としては教育システムなどが考えられる。教育システムでは、互いに対応関係にある2つのウィンドウの組み合わせのうち、1つの組み合わせの操作権が教師側のビューワに与えられ、他の1つの組み合わせの操作権が生徒側のビューワに与えられる。教師側のビューワに操作権が与えられたウィンドウに表示された画像は教師によって操作され、生徒は生徒側のビューワを通して教師によって操作される画像を参照することができる。一方、生徒側のビューワに操作権が与えられたウィンドウは、教師側のビューワに操作権があるウィンドウに表示されている画像に関連して、生徒がその周辺や詳細を移動やズーム倍率の変更を通して確認することなどに利用される。ところが、その場合、まずは生徒側のビューワに操作権が与えられたウィンドウ内の画像の位置を、教師側のビューワに操作権があるウィンドウに表示される画像の位置に生徒自身がマニュアルで合わせ込む必要がある。このような合わせ込みの操作はユーザにとって大きな負担となり得る。
【0077】
これに対し、本実施形態の情報処理システム100では、マルチウィンドウ表示モードで表示される2つのウィンドウにおいて、ユーザからの指示により、プレゼンターのウィンドウの画像をオーディエンスのウィンドウの画像のコピーでそのまま置き換えることができるようになっている。これにより、生徒側のビューワに操作権が与えられたウィンドウ内の画像の位置を、教師側のビューワに操作権があるウィンドウに表示される画像の位置にマニュアルで合わせ込む作業が不要になり、教師側のビューワに操作権があるウィンドウに表示されている画像の周辺や詳細を確認するための操作に速やかに移行できる。
【0078】
次に、図9、および図20から図25を参照して、上記のウィンドウ間での画像のコピーを含むマルチウィンドウ表示モードでの同期処理について説明する。
【0079】
図20において、第1のビューワ30A(ID=0001)を生徒用のビューワ、第2のビューワ30B(ID=0002)を教師用のビューワとする。ウィンドウID=01のウィンドウの組み合わせにおいて操作権は第1の左ウィンドウ61Aつまり生徒側にあり、ウィンドウID=02のウィンドウの組み合わせにおいて操作権は第2の右ウィンドウ62Bつまり教師側にあるものとする。
【0080】
操作権が与えられたプレゼンターのウィンドウ(第1の左ウィンドウ61A、第2の右ウィンドウ62B)には、上記のウィンドウ間での画像のコピーのためのユーザからの指示を受け付けるウィンドウ間コピーボタン63A、63Bが表示される。
【0081】
図9は、ウィンドウ間での画像のコピーを含むマルチウィンドウ表示モードでの同期処理の流れを示すシーケンス図である。
ここで、第2のビューワ30Bにおける第2の右ウィンドウ62B(プレゼンター)内の画像に対して教師により行われた操作が、第1のビューワ30Aの第1の右ウィンドウ62A(オーディエンス)内の画像に反映されるまでの動作(図9のA1からA4)は、図7のA1からA4までの動作と同じである。
【0082】
図21は、第2のビューワ30Bにおける第2の右ウィンドウ62B(プレゼンター)内の画像に対する教師による移動の操作の結果を示している。この第2の右ウィンドウ62B(プレゼンター)内の画像に対する移動の操作によって、図22に示すように、第1のビューワ30Aの第1の右ウィンドウ62A(オーディエンス)内の画像が同期処理により更新される。
【0083】
ここで、生徒が第1のビューワ30Aの第1の左ウィンドウ61A(プレゼンター)を用いて、第1の右ウィンドウ62Aに表示された画像の周辺や詳細を確認したい場合、図23に示すように、生徒は入力部31Aを使って第1の左ウィンドウ61A内のウィンドウ間コピーボタン63Aを操作する(図9のH1)。
【0084】
第1のビューワ30Aのビューワ制御部37Aは、ウィンドウ間コピーボタン63Aが操作されたことを判定すると、第1の右ウィンドウ62Aに表示中の画像データのコピーを取得し(図9のH2)、図24に示すように、この画像データで第1の左ウィンドウ61A内の画像を置き換える(図9のH3)。
【0085】
このようにして、現時点で教師が操作権を持っているウィンドウ内の画像すなわち現時点で教師が説明をしている画像の部位を、生徒側に操作権があるウィンドウに即座に表示させることができる。このため、生徒は現在教師が注目している画像の周辺や詳細を、生徒側に操作権があるウィンドウを使って確認する作業に速やかに移行することができる。
なお、第1の右ウィンドウ62Aに表示中の画像データの取得は、第1のビューワ30Aのメモリ内での画像データのコピーにより行うことが可能である。あるいは、画像サーバ10にアクセスして画像データを取得するようにしてもよい。
【0086】
また、第1のビューワ30Aのビューワ制御部37Aは、第1の左ウィンドウ61A内の画像を更新した後、更新後の画像の画像位置情報を計算し、この画像位置情報、ビューワID、および第1の左ウィンドウ61AのウィンドウIDを含む同期依頼を同期サーバ20に送信する(図9のH4)。
【0087】
同期サーバ20は、受信した同期依頼から画像位置情報、ビューワID、およびウィンドウIDを抽出し、これらの情報を含む同期要求を第2のビューワ30Bに送信する(図9のH5)。
【0088】
第2のビューワ30Bのビューワ制御部37Bは、受信した同期要求に含まれる位置情報およびウィンドウIDをもとに、図25に示すように、第2の左ウィンドウ61Bの画像を更新する(図9のH6)。
【0089】
[典型的なコンピュータについて]
次に、画像サーバ10、同期サーバ20、ビューワ30A、30Bに用いることのできる典型的なコンピュータの構成を説明する。
【0090】
図10は、典型的なコンピュータ200のハードウェア構成を示す図である。
同図に示すように、コンピュータ200は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203とを備える。また、コンピュータ200は、入力装置204と、出力装置205と、ストレージ装置206と、メディアインタフェース装置207と、ネットワーク接続装置208と、これらを接続するバス209とを備える。
【0091】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従ってコンピュータ200の動作全般を制御する。ROM202は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM203は、CPU201により実行されるプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。
【0092】
同期サーバ20の同期処理部25、ビューワ30A、30Bのビューワ制御部37A、37Bなどは、例えば、当該コンピュータ200のハードウェア構成において、CPU201と、ROM202に格納されたプログラムと、RAM203のワーキング領域などによって実現されるものである。
【0093】
入力装置204は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイク、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。コンピュータ200のユーザは、該入力装置204を操作することにより、CPU201に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0094】
出力装置205は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置などの表示装置を含む。さらに、出力装置205は、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置を含む。
【0095】
ストレージ装置206は、プログラムやユーザデータ格納用の装置である。ストレージ装置206は、記憶媒体と、記憶媒体にデータを書き込んだり読み出したりする読み書き装置などで構成される。ストレージ装置106は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などで構成される。
【0096】
メディアインタフェース装置207は、記憶媒体用リーダライタである。メディアインタフェース装置207は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体2Aに対してデータの読み書きを行う。
【0097】
ネットワーク接続装置208は、例えば、ネットワーク40に接続するためのインタフェースである。ネットワーク接続装置208は、無線LAN(Local Area Network)対応の装置であっても、ワイヤレスUSB対応の装置であっても、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。
【0098】
<変形例1>
ここまで2つのビューワ間での画像の同期処理について述べてきたが、本技術は、3以上のビューワが接続されている場合にも適用できるものであることは言うまでもない。すなわち、3以上のビューワ間で互いに対応関係にある3つ以上のウィンドウの組み合わせの中の1つのウィンドウに操作権を与えてプレゼンターとし、プレゼンターのウィンドウの画像に対する操作を他の全てのオーディエンスのウィンドウに反映させればよい。
【0099】
<変形例2>
また、3以上のビューワが接続されている場合、各ビューワに必ずしも全てのビューワのウィンドウを表示させる必要はない。例えば、教師側のビューワと複数の生徒側のビューワが接続されている場合、図11に示すように、教師側のビューワに教師に操作権のあるウィンドウと、オーディエンスのウィンドウとして生徒全員の複数のウィンドウを表示し、生徒側のビューワに、その生徒自身に操作権のあるウィンドウと、オーディエンスのウィンドウとして教師のウィンドウを表示するようにしてもよい。このようなビューワ毎のウィンドウ表示の選択的な制御は、例えば、ビューワ毎に、オーディエンスとして表示させるウィンドウを選択する情報(例えばビューワIDとウィンドウIDとの組み合わせなど)を管理するテーブルを用いることなどによって実現できる。
【0100】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)複数の情報処理装置の1つに排他的な操作権を付与した状態で、前記複数の情報処理装置の各々に対応する複数の表示部に互いに同期する画像を表示し、
前記操作権を付与されていない前記情報処理装置に対してユーザより第1の要求が入力されたとき、当該情報処理装置の前記画像の同期状態を解除し、
前記同期状態が解除された当該情報処理装置に対してユーザより第2の要求が入力されたとき前記同期状態を復旧する
情報処理方法。
(2)前記(1)に記載の情報処理方法であって、
前記操作権を付与されていない前記情報処理装置の前記表示部に表示された画像に対する操作のためのユーザからの入力の発生を前記第1の要求として、この第1の要求が入力されたとき、当該情報処理装置の前記画像の同期状態を解除する
情報処理方法。
(3)前記(1)または(2)に記載の情報処理方法であって、
前記操作権を付与されていない前記情報処理装置に対してユーザより操作権取得要求が入力されたとき、当該情報処理装置に前記操作権を付与する
情報処理方法。
(4)前記(1)から(3)のいずれかに記載の情報処理方法であって
前記表示部毎に複数の画像を、互いに非同期の画像として、かつそれぞれ前記複数の情報処理装置の間で同期する画像として表示し、前記複数の情報処理装置の間で同期する画像の組み合わせ毎に複数の情報処理装置の1つに前記操作権を付与する
情報処理方法。
(5)前記(4)に記載の情報処理方法であって、
前記表示部毎に表示される複数の画像の一方の画像の操作権が一方の前記情報処理装置に付与され、他方の画像の操作権が他方の前記情報処理装置に与えられているとき、前記一方の情報処理装置に対してユーザより第3の要求が入力された場合に、前記一方の画像を前記他方の画像で置き換える
情報処理方法。
【符号の説明】
【0101】
10…画像サーバ
20…同期サーバ
23…同期管理テーブル格納部
25…同期処理部
30A…第1のビューワ
30B…第2のビューワ
31A…入力部
31B…入力部
35A…表示部
35B…表示部
37A…ビューワ制御部
37B…ビューワ制御部
40…ネットワーク
100…情報処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の情報処理装置の1つに排他的な操作権を付与した状態で、前記複数の情報処理装置の各々に対応する複数の表示部に互いに同期する画像を表示し、
前記操作権を付与されていない前記情報処理装置に対してユーザより第1の要求が入力されたとき、当該情報処理装置の前記画像の同期状態を解除し、
前記同期状態が解除された当該情報処理装置に対してユーザより第2の要求が入力されたとき前記同期状態を復旧する
情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記操作権を付与されていない前記情報処理装置の前記表示部に表示された画像に対する操作のためのユーザからの入力の発生を前記第1の要求として、この第1の要求が入力されたとき、当該情報処理装置の前記画像の同期状態を解除する
情報処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記操作権を付与されていない前記情報処理装置に対してユーザより操作権取得要求が入力されたとき、当該情報処理装置に前記操作権を付与する
情報処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記表示部毎に複数の画像を、互いに非同期の画像として、かつそれぞれ前記複数の情報処理装置の間で同期する画像として表示し、前記複数の情報処理装置の間で同期する画像の組み合わせ毎に複数の情報処理装置の1つに前記操作権を付与する
情報処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理方法であって、
前記表示部毎に表示される複数の画像の一方の画像の操作権が一方の前記情報処理装置に付与され、他方の画像の操作権が他方の前記情報処理装置に与えられているとき、前記一方の情報処理装置に対してユーザより第3の要求が入力された場合に、前記一方の画像を前記他方の画像で置き換える
情報処理方法。
【請求項6】
複数の情報処理装置を有し、前記複数の情報処理装置がそれぞれ、
画像を表示可能な表示部と、
ユーザからの指示を受け付けることが可能な入力部と、
前記複数の情報処理装置の1つに排他的な操作権が付与された状態で、前記複数の情報処理装置の各々に対応する複数の前記表示部に互いに同期する画像が表示されるように制御を行う制御部であって、前記操作権を付与されていない前記情報処理装置に対してユーザより前記入力部を通じて第1の要求が入力されたとき、当該情報処理装置の前記画像の同期状態を解除し、前記同期状態が解除された当該情報処理装置に対してユーザより第2の要求が入力されたとき前記同期状態を復旧するように制御を行う制御部と
を具備する情報処理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、前記操作権を付与されていない前記情報処理装置の前記表示部に表示された画像に対する操作のためのユーザからの入力の発生を前記第1の要求として、この第1の要求が入力されたとき、当該情報処理装置の前記画像の同期状態を解除する
情報処理システム。
【請求項8】
請求項6に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、前記操作権を付与されていない前記情報処理装置に対してユーザより操作権取得要求が入力されたとき、当該情報処理装置に前記操作権が付与されるように制御を行う
情報処理システム。
【請求項9】
請求項8に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、前記表示部毎に複数の画像を、互いに非同期の画像として、かつそれぞれ前記複数の情報処理装置の間で同期する画像として表示し、前記複数の情報処理装置の間で同期する画像の組み合わせ毎に複数の情報処理装置の1つに前記操作権が付与されるように制御を行う
情報処理システム。
【請求項10】
請求項9に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、前記表示部毎に表示される複数の画像の一方の画像の操作権が一方の前記情報処理装置に付与され、他方の画像の操作権が他方の前記情報処理装置に与えられているとき、前記一方の情報処理装置に対してユーザより第3の要求が入力された場合に、前記一方の画像を前記他方の画像で置き換える
情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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