情報処理装置、撮像装置及びプログラム
【課題】媒体上で多重に指定された位置の軌跡を表す情報を簡素化する。
【解決手段】電子ペンは、媒体上に連続して指定された位置の座標であって決められた期間毎に検出された位置の座標としてP1からP21までを取得する。電子ペンは、一の軌跡を構成する複数座標を各座標の位置の検出順と対応付けた指定位置の軌跡のうち、検出順が隣接し当該複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を抽出する。例えば、電子ペンは、座標P2よりも近い位置に座標P14がある座標P1や、座標P3よりも近い位置に座標P13,15がある座標P2など、この軌跡から多数の座標を抽出する。電子ペンは、この条件を満たす座標が閾値以上である軌跡を、筆記内容の擦れ等を原因として多重に運筆動作が行われたものと特定し、軌跡を構成する座標を間引くことによりこれを補正する。
【解決手段】電子ペンは、媒体上に連続して指定された位置の座標であって決められた期間毎に検出された位置の座標としてP1からP21までを取得する。電子ペンは、一の軌跡を構成する複数座標を各座標の位置の検出順と対応付けた指定位置の軌跡のうち、検出順が隣接し当該複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を抽出する。例えば、電子ペンは、座標P2よりも近い位置に座標P14がある座標P1や、座標P3よりも近い位置に座標P13,15がある座標P2など、この軌跡から多数の座標を抽出する。電子ペンは、この条件を満たす座標が閾値以上である軌跡を、筆記内容の擦れ等を原因として多重に運筆動作が行われたものと特定し、軌跡を構成する座標を間引くことによりこれを補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、撮像装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペンや感圧式デバイスを用いて筆記された内容を電子化するシステムにおいて、紙とペンを用いた筆記行為に似た感覚で、記入内容の削除や追加、置換、強調等の変更作業を計算機上で行うための技術が、特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−152040号公報
【特許文献2】特開2009−48655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、媒体上で多重に指定された位置の軌跡を表す情報を簡素化することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る情報処理装置は、媒体上において指定された位置であって決められた期間毎に検出された位置の座標を取得する取得手段と、前記媒体上に連続して指定された位置に対応して前記取得手段が取得した複数座標を当該各座標の位置の検出順と対応付けた当該指定された位置の軌跡のうち、前記検出順が隣接し当該複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、前記検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を閾値以上含む軌跡を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された軌跡を構成する座標を間引いて、当該軌跡を補正する補正手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る情報処理装置は、請求項1に記載の構成において、前記特定手段は、前記複数座標において、前記第1座標までの距離よりも前記第2座標までの距離が小さい座標の占める割合が閾値以上である前記軌跡を特定することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る情報処理装置は、請求項1又は2に記載の構成において、前記特定手段は、前記複数座標の各座標について、前記第1座標までの距離よりも前記第2座標までの距離が小さいか否かを判別することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る情報処理装置は、請求項1に記載の構成において、前記特定手段は、前記取得手段が取得した座標に基づいて前記軌跡を各々抽出し、抽出した複数の軌跡間の距離が決められた距離以下であり、且つ、当該複数の軌跡の相互の関係が決められた条件を満たす場合、当該複数の軌跡を特定することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る情報処理装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載の構成において、前記補正手段は、前記特定手段により特定された一の軌跡を構成する複数座標のうち、前記検出順が最先の座標と最後の座標とを結んだ線を、当該複数座標のうち当該線から最も遠い座標を通過する線に補正する補正処理を実行し、補正処理により得た線を補正後の軌跡とすることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る情報処理装置は、請求項5に記載の構成において、前記補正手段は、前記補正処理により得た線と、前記一の軌跡を構成する複数座標の全座標との距離が閾値以下となるまで、前記補正処理を実行することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7に係る情報処理装置は、請求項5又は6に記載の構成において、前記補正手段は、前記補正処理後の軌跡の端部と、前記特定手段により特定されなかった前記軌跡の端部との距離が決められた距離以下である場合、両軌跡の当該端部同士を連結するよう補正することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項8に係る撮像装置は、請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置と、前記媒体上の位置の座標を符号化した符号化画像が形成された当該媒体に光を照射する照射手段と、前記照射手段により照射された光の反射光を撮像する撮像手段とを備え、前記取得手段は、前記撮像手段による前記期間毎の撮像により得られた撮像画像に含まれる前記符号化画像に基づいて、前記媒体上で指定された位置の座標を取得することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項9に係るプログラムは、コンピュータを、媒体上において指定された位置であって決められた期間毎に検出された位置の座標を取得する取得手段と、前記媒体上に連続して指定された位置に対応して前記取得手段が取得した複数座標を当該各座標の位置の検出順と対応付けた当該指定された位置の軌跡のうち、前記検出順が隣接し当該複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、前記検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を閾値以上含む軌跡を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された軌跡を構成する座標を間引いて、当該軌跡を補正する補正手段として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,9に係る発明によれば、多重に指定された位置の軌跡を構成する座標を間引く補正をしない場合に比べて、媒体上で多重に指定された位置の軌跡を表す情報を簡素化することができる。
請求項2に係る発明によれば、第1座標までの距離よりも第2座標までの距離が小さい座標の占める割合に基づいて軌跡を特定しない場合に比べて、多重に指定された位置の軌跡の特定の精度が、媒体上の指定位置に依存して変動することを抑えることができる。
請求項3に係る発明によれば、軌跡を構成する複数座標の各座標について第1座標までの距離よりも第2座標までの距離が小さいか否かを判別しない場合に比べて、多重に指定された位置の軌跡を正確に特定することができる。
請求項4に係る発明によれば、軌跡間の距離を条件に含めない場合に比べて、複数の軌跡により多重に位置が指定されたときに、その軌跡を正確に特定することができる。
請求項5に係る発明によれば、別の方法で軌跡を補正する場合に比べて、媒体上で指定された位置に近い形態の軌跡に補正することができる。
請求項6に係る発明によれば、補正処理により得られた線と、軌跡を構成する複数座標のすべての座標との距離が閾値以下となる前に補正処理を終了する場合に比べて、媒体上で指定された位置に近い形態の軌跡に補正することができる。
請求項7に係る発明によれば、媒体上を移動するように指定された位置のうちの一部が多重に指定された場合であっても、全体が連続するように軌跡を補正することができる。
請求項8に係る発明によれば、符号化画像が形成された媒体の撮像画像から媒体上で指定された位置の座標を取得する構成において、軌跡を構成する座標を間引く補正をしない場合に比べて、媒体上で多重に指定された位置の軌跡を表す情報を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】システムの全体構成を示す図。
【図2】符号化画像の構成を説明する図。
【図3】電子ペンの構成を示すブロック図。
【図4】筆記内容を説明する図。
【図5】制御部が実現する機能構成を示す機能ブロック図。
【図6】電子ペンの制御部の動作手順を示すフローチャート。
【図7】筆記内容と手書き内容に応じて特定される軌跡の関係を示す図。
【図8】近接条件を説明する図。
【図9】多重運筆特定処理を実行する際の動作手順を示すフローチャート。
【図10】軌跡の補正の手順を説明する図。
【図11】補正後の軌跡を説明する図。
【図12】変形例1に係る多重運筆特定処理を説明する図。
【図13】変形例2に係る補正後の軌跡を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るシステムの全体構成を示す図である。
本実施形態に係るシステムの構成は、電子ペン10と、媒体20と、PC(Personal computer)30とに大別される。電子ペン10は、本発明の撮像装置の一例であり、媒体20にインクを供給して筆記する機能と、媒体20上に形成された符号化画像に基づいて媒体20上の位置を決められた期間毎に検出する機能とを実現する。媒体20上に形成される符号化画像は、決められた符号化方式に従って情報を符号化し画像化したものである。媒体20は、紙やOHPシート等のプラスチック、その他の材質のものでもよいし、表示内容が電気的に書き換えられる電子ペーパでもよい。PC30は、電子ペン10によって指定された位置の符号化画像から復号された情報に基づいて、処理を実行する。PC30は、例えば、電子ペン10を用いた筆記内容を電子化して電子文書を生成し、電子文書に含まれる文字をテキストデータに変換する文字認識処理を実行する。
【0017】
図2は、符号化画像の構成を説明する図である。
符号化画像は、図2に示す複数の点状画像からなるパターンの集合で構成される。図2において、黒で示した矩形の領域A1,A2が点状画像が配置された領域に対応し、斜線の領域A3からA9が点状画像が配置されていない領域に対応する。符号化画像は、媒体20を識別する識別情報や媒体20上の位置の座標を、点状画像の配置パターンにより表すものである。以上の符号化画像は、特開2008−9833号公報等に開示されたものと同じである。
【0018】
図3は、電子ペン10の構成を示すブロック図である。
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)やメモリを含むマイクロコンピュータを有し、電子ペン10の各部を制御する。制御部101は、例えば、媒体20を撮像した撮像画像を解析して、符号化画像から情報を復号して、媒体20を識別する識別情報や媒体20上の位置の座標を取得する。圧力センサ102は、ペン軸109に作用する圧力(つまり、筆圧)によって検出するものであり、運筆動作の有無を制御部101が特定する際にこの検出結果が参照される。撮像ユニット110は、照射部103と撮像部104とを備える。照射部103は、本発明の照射手段の一例であり、例えばLED(Light Emitting Diode)である。照射部103は、ここでは媒体20上に赤外光を照射する。照射部103は、ユーザによって電子ペン10を用いた運筆動作がなされる際に、媒体20上の撮像範囲Rに光を照射する。撮像部104は、本発明の撮像手段の一例であり、照射部103から照射された赤外光に応じた媒体20からの反射光を撮像する。電子ペン10では、決められた期間毎(例えば、60フレーム毎秒)に撮像ユニット110により撮像し、媒体20の撮像画像を表す撮像データを生成する。情報メモリ105は、制御部101で符号化画像から抽出された情報を記憶する。通信部106は、電子ペン10とPC30との無線通信に関する制御を行う。バッテリ107は、例えば充電池であり、電子ペン10を駆動するための電力を電子ペン10の各部に供給する。ペンIDメモリ108は、電子ペン10の識別情報を記憶する。ペン軸109は、先端部にペン先109aを有している。ペン先109aは、電子ペン10を用いた運筆動作がなされる際に、ペン軸109内に納められたインクを媒体20に供給し、媒体20への筆記を実現させる。スイッチ111は、電子ペン10の各種設定の切り替え等に用いられるものである。
【0019】
ところで、用紙等の媒体にインクを供給する筆記具(例えば、ボールペンや万年筆)を用いて、ユーザが媒体上に筆記する場合、インクの減少や運筆動作の仕方等を原因として、筆記内容が擦(かす)れることがある。例えば、ユーザが図4(a)に示す平仮名の「か」という文字を筆記しようとした場合であっても、図4(b)に示す筆記内容となることがある。この例では、I部で文字が擦れている。この場合、ユーザは、「か」という文字がしっかりと記されるように、この擦れた部分を複数回にわたってなぞるように筆記することがある。このような多重に行われる運筆動作のことを、以下では「多重運筆動作」という。多重運筆動作が行われた結果、媒体には「か」という文字が記されるが、電子ペン10でこの多重運筆動作が行われた場合、媒体20上の位置の座標の取得結果は、以下に説明するものとなる。
【0020】
電子ペン10では、運筆動作中に決められた期間毎(ここでは、フレームレートの周期)に電子ペン10で指定された位置を検出し、その検出結果たる座標を取得する。よって、多重運筆動作に対応して電子ペン10で取得される座標によれば、図4(c)に示すような筆記内容が特定され、電子文書上の筆記内容はこの内容となる。この例では、多重運筆動作が行われた部分であるII部に、狭い範囲で何往復もする線が含まれており、本来の「か」という文字とはやや異なった筆記内容となっている。これでは、PC30が電子文書文字認識処理を行った場合、多重運筆動作が行われなかったときに比べて、「か」という文字が正しく認識される可能性が低くなる。
以上の多重運筆動作に関する問題点に対し、電子ペン10は、多重運筆動作が行われた軌跡を特定し、更に、この軌跡を補正する機能を有している。
【0021】
図5は、制御部101が実現する機能構成を示す機能ブロック図である。
制御部101は、取得部1011と、特定部1012と、補正部1013とに相当する各機能を実現する。
取得部1011は、本発明の取得手段の一例であり、媒体20上で指定された位置であって決められた期間毎に検出された位置の座標を取得する。取得部1011は、撮像ユニット110での撮像により得られた撮像画像に含まれる符号化画像に基づいてフレームレートの周期で位置が検出されると、検出された位置の座標を取得する。
【0022】
特定部1012は、本発明の特定手段の一例であり、媒体20上に連続して指定された位置(すなわち、電子ペン10で運筆動作が行われた位置)に対応して取得部1011が取得した複数座標を各座標の位置の検出順と対応付けた軌跡のうち、多重運筆動作が行われた軌跡を特定する。軌跡は、電子ペン10で指定された位置の軌跡である。一の軌跡は、電子ペン10で一回の運筆動作で指定された媒体20上の位置を表し、要するに、一筆書きされた筆記内容に対応している。運筆動作の始点は、電子ペン10の圧力センサ102で筆圧の検知が開始されたタイミングで判断され、運筆動作の終点は、電子ペン10の圧力センサ102で筆圧の検知がされなくなったタイミングで判断される。多重運筆動作が行われた軌跡を特定するべく、特定部1012は、検出順が隣接しこの軌跡を構成する複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標が閾値以上である軌跡を特定する。すなわち、近接する2つの座標があった場合、これら2つの座標に対応する位置の検出順は隣り合う(連続する)ことが多いと考えられるが、これら以外の座標が近接し、さらに、このような座標が多い場合には、狭い範囲内で運筆動作が繰り返し行われたと推測される。特定部1012は、この観点から定められた条件を満たす軌跡を、多重運筆動作が行われた軌跡として特定する。
【0023】
補正部1013は、本発明の補正手段の一例であり、特定部1012により特定された軌跡を構成する座標を間引いて、軌跡を補正する。すなわち、補正部1013は、多重運筆動作が行われたと特定された軌跡を、多重運筆動作が行われなかった場合の軌跡の形態に近づけるための補正処理を実行する。
次に、電子ペン10の動作を説明する。
【0024】
図6は、電子ペン10の制御部101の動作手順を示すフローチャートである。図7は、ユーザにより手書きされた筆記内容と(図7(a))、電子ペン10でこの手書き時の運筆動作により特定される軌跡の一例を示す図である(図7(b))。
制御部101は、撮像部104により生成された撮像データが示す複数フレームの撮影画像に基づいて、媒体20上で指定された位置であってフレームレートの周期で検出された位置の座標を取得する(ステップS1)。ここでは、ユーザが、図7(a)に示す運筆方向に運筆動作をした場合を想定する。
次に、制御部101は、ステップS1で取得した座標に基づいて軌跡を抽出する(ステップS2)。ここでは、制御部101は、図7(b)に示すように、この運筆動作に対応する軌跡を構成する座標として、座標P1から座標P21までの計21個の座標を取得する。以下の説明でも、一の軌跡を構成する座標において検出順がi番目である座標の座標を、「Pi」と表す。
【0025】
次に、制御部101は、軌跡ごとに多重運筆特定処理を実行する。多重運筆特定処理は、多重運筆動作が行われた軌跡を特定する処理である。制御部101は、一の軌跡を構成する計21個の各座標について、検出順が隣接しこの軌跡を構成する座標に含まれる第1座標までの距離よりも、検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さいことを示す条件(以下、「近接条件」という。)を満たすか否かを判別する。
なお、第2座標は、本発明では、同一軌跡を構成する座標に限らず、他の軌跡を構成する座標であってもよく、媒体20上の指定位置の座標であればよい。
【0026】
ここで、多重運筆特定処理の詳細な内容を説明する。図8は、近接条件を説明する図である。図8(a)は、座標P1周辺を拡大した様子を表し、図8(b)は、座標P2周辺を拡大した様子を表す。図9は、多重運筆特定処理の手順を示すフローチャートである。
まず、制御部101は、最初に変数i=1にセットし、注目座標Piを設定する(ステップS31)。ステップS31では、制御部101は、軌跡を構成する座標であって近接条件を満たすか否かが未判別の座標のうち、検出順が最先の座標に注目する。ここでは、制御部101は、座標P1に注目し、これを注目座標P1とする。
【0027】
次に、制御部101は、設定した注目座標Piに検出順が隣接する座標(本実施形態では、検出順が後続するもの。)である、後続座標Pi+1(第1座標)を特定する(ステップS32)。ここでは、制御部101は、後続座標P2を特定することになる。
次に、制御部101は、注目座標Piと後続座標Pi+1との距離D(i,i+1)を算出する(ステップS33)。ここでは、制御部101は、注目座標P1と後続座標P2との距離D(1,2)を算出する。距離D(i,i+1)は、例えば、媒体20上の位置の座標を表す座標平面における直線距離である。
【0028】
次に、制御部101は、注目座標Piから距離D(i,i+1)の範囲内に、注目座標Piとは検出順が隣接しない座標(第2座標)があるか否かを判断する(ステップS34)。ここでは、制御部101は、注目座標P1から距離D(1,2)の距離範囲内に後続座標P2以外の座標があるか否かを判断する。図8(a)に示すように、ここでは、制御部101は、注目座標P1から距離D(1,2)よりも近い距離範囲に、注目座標P1とは検出順が隣接しない座標P14があると判断する(つまり、ステップS34の処理で「YES」)。
【0029】
制御部101は、ステップS34で「YES」と判断すると、注目座標Piが近接条件を満たすと判別する(ステップS35)。よって、制御部101は、注目座標P1が近接条件を満たすと判別して、その判別結果をメモリに記憶する。
そして、制御部101は、軌跡を構成する全座標について近接条件の判別をしたか否かを判断する(ステップS36)。ここでは、制御部101は、未だ座標P1について判別しただけであるから、ステップS31の処理に戻る。そして、制御部101は、変数iを「1」だけインクリメントして、注目座標Piを設定する。ここでは、制御部101は、近接条件について未判別である軌跡を構成する座標のうち、検出順が最先の座標である注目座標P2を設定する。
【0030】
次に、制御部101は、注目座標P2に検出順が隣接する後続座標P3(第1座標)を特定する(ステップS32)。次に、制御部101は、注目座標P2と後続座標P3との距離D(2,3)を算出する(ステップS33)。次に、制御部101は、注目座標P2から距離D(2,3)の範囲内に、注目座標P2とは検出順が隣接しない座標(第2座標)があるか否かを判断する(ステップS34)。ここでは、制御部101は、注目座標P2からの距離D(2,3)の距離範囲内に、注目座標P2と検出順が隣接する座標として、後続座標P3、及び検出順が1つ前である座標P1以外の座標があるか否かを判断する。図8(b)に示すように、ここでは、制御部101は、注目座標P2から距離D(2,3)よりも近い距離に、注目座標P2とは検出順が隣接しない座標P13及びP15があるとして、ステップS34で「YES」と判断する。
【0031】
次に、制御部101は、ステップS34で「YES」と判断すると、注目座標P2が近接条件を満たすと判別し、その判別結果をメモリに記憶する(ステップS35)。そして、制御部101は、軌跡を構成する全座標について近接条件についての判別をしたか否かを判断する(ステップS36)。ここでは、制御部101は、座標P2について判別した段階であるから、ステップS31の処理に戻る。
制御部101は、以上の処理ステップを、変数iを1ずつインクリメントしながら繰り返し実行する。そして、制御部101は、注目座標P21について近接条件について判別し終えると、ステップS36で「YES」と判断し、ステップS37の処理に進む。
【0032】
次に、制御部101は、軌跡を構成する複数座標において、近接条件を満たす座標が閾値以上(ここでは、7割以上)の割合で含まれているか否かを判断する(ステップS37)。ここでは、制御部101は、メモリに記憶しておいた判別結果に基づいて、21個の7割以上である15個以上の近接条件を満たす座標があるか否かを判断する。ここで割合を採用しているのは、以下の理由に基づく。ユーザの運筆動作には様々な態様が考えられ、筆記される文字の大きさや線の長さも様々であるが、これに応じて軌跡を構成する座標の数も大きく変化する。よって、軌跡を構成する座標に占める近接条件を満たす座標が相対的に多いことの指標として、全座標に占める近接条件を満たす座標の割合を採用すれば、多重運筆動作の特定の精度が筆記内容に依存して変動することが抑制される。
【0033】
制御部101は、近接条件を満たす座標が閾値以上の割合で軌跡に含まれると判断すると(ステップS37;YES)、この軌跡を多重運筆動作が行われた軌跡として特定する(ステップS38)。一方、近接条件を満たす座標が閾値以上の割合で軌跡に含まれていないと判断すると(ステップS37;NO)、この軌跡を多重運筆動作が行われた軌跡でない特定する(ステップS39)。
【0034】
図7(b)を参照して分かるように、多重運筆動作が行われた部分では、同じような運筆動作が狭い範囲内で何度も行われる。よって、一の軌跡において、検出順が隣り合う2つの座標間の距離よりも、検出順が隣り合わない2つの座標間の距離が小さい箇所が多くなり、近接条件を満たす座標の割合が相対的に大きくなる。図7(b)の例においても、軌跡を構成するほとんどの座標が近接条件を満たしている。このように、多重運筆動作が行われた軌跡では、近接する座標の組の中に、検出順が隣り合わない座標の組が多数存在する。このような発明者らの知見に基づいて、多重運筆特定処理の上記手順が定められている。また、運筆動作の速度やフレームレートに応じて検出順が隣り合う2座標の距離は変化するが、通常の運筆速度や電子ペンで通常採り得るフレームレートであれば、この近接条件を満たす座標の量に基づいて多重運筆動作が行われた軌跡が特定される。例えば、フレームレートが大きいほど、検出順が隣り合う2つの座標間の距離は小さくなるが、この場合には、例えば閾値が小さく設定されればよいと考えられる。多重運筆動作が行われた軌跡は狭い範囲内で多重に指定された位置に対応しているので、フレームレートに関わらず、一の軌跡において、検出順が隣り合う2つの座標間の距離よりも、検出順が隣り合わない2つの座標間の距離が小さい箇所が高確率で含まれるからである。
多重運筆特定処理の説明は以上である。
【0035】
図6に戻って説明する。
制御部101は、多重運筆特定処理の結果に応じて、多重運筆動作が行われた軌跡であるか否かを判断する(ステップS4)。ここで、制御部101は、多重運筆動作が行われた軌跡であると判断すると(ステップS4;YES)、この軌跡を補正する(ステップS5)。具体的には、制御部101は、多重運筆動作が行われた軌跡を構成する座標を間引くとことにより、当該軌跡を補正する。一方で、制御部101は、多重運筆動作が行われた軌跡でないと判断すると(ステップS4;NO)、軌跡を補正しないで処理を終了する。
【0036】
図10は、制御部101がステップS5で実行する軌跡の補正の内容を説明する図である。図10(a)は、図7(b)と同じ内容であり、図7(a)の運筆動作に対応した軌跡を表している。
制御部101は、図10(a)に示す多重運筆動作が行われた軌跡を特定すると、これら複数座標のうち、検出順が最初のものと最後のものとをそれぞれ特定する。ここでは、制御部101は、検出順が最初の座標P1と、検出順が最後の座標P21とをそれぞれ特定する。そして、制御部101は、検出順が最初の座標P1からの距離が近い順となるように、座標P1からP21までの配列順を設定する。ここでは、図10(b)に矢印順で示す配列順に設定される。具体的には、制御部101は、座標P1→P14→P2→P15→P13→P3→P16→P4→P12→P5→P17→P11→P6→P18→P10→P7→P19→P9→P20→P8→P21という配列順を設定する。
【0037】
次に、制御部101は、図10(c)に示すように、検出順が最初の座標P1と、検出順が最後の座標P21とを結ぶ線分L1を引く。そして、制御部101は、線分L1から最も遠い座標を通過する線となるように、線分L1を補正する補正処理を実行する。ここでは、線分L1から最も遠い座標はP16である。よって、制御部101は、図10(d)に示すように、座標P1と座標P21とを結ぶ線分L1を、座標P16を通過する線L2に補正する。線L2は、座標P1と座標P16を結ぶ線分L21と、座標P16と座標P21とを結ぶ線分L22とにより構成される。
【0038】
次に、制御部101は、補正処理により得た線L2と、多重運筆動作が行われた軌跡を構成する複数の座標の全座標との距離が閾値以下であるか否かを判断する。ここでは、制御部101は、図10(b)に示すように設定した配列順に従って、比較対象の座標と線分との関係を決定する。具体的には、制御部101は、座標P1と座標P16との間の配列順の座標については、線分L21との距離に基づいて判断をするし、座標P16と座標P21との間の配列順の座標については、線分L22との距離に基づいて判断をする。なお、座標と線分との距離は、座標から線分に下ろした垂線の長さにより特定される。
ここでは、座標P5,P6,P7が線分L22から遠いので、制御部101が多重運筆動作が行われた軌跡の全座標が線L2からの距離が閾値以下である、という条件を満たさないと判断する。
【0039】
次に、制御部101は、線L2に基づいて上記手順で補正処理を実行することで、図11に示す線L3を得る。具体的には、制御部101は、線L2のうち、座標P1と座標P16を結ぶ線分L21を、L21からの距離が最も遠い座標を通過する線に補正する。よって、制御部101は、線分L21を、座標P1と座標P3とを結ぶ線分L31と、座標P3と座標P16とを結ぶ線分L32とに補正する。また、制御部101は、線L2のうち、座標P16とP21とを結ぶ線分L22を、L22からの距離が最も遠い座標を通過する線に補正する。よって、制御部101は、線分L22を、座標P16と座標P6とを結ぶ線分L33と、座標P6と座標P21とを結ぶ線分L34とに補正する。
以上の補正処理により、電子ペン10は、線分L31,L32,L33,L34からなる線L3を得る。
【0040】
次に、制御部101は、補正処理で補正した線L3と、多重運筆動作で指定された軌跡を構成する複数の座標の全座標との距離が閾値以下であるか否かを判断する。ここでは、全座標が線分L3から閾値以下の距離にあるものとし、制御部101が「YES」と判断し補正処理を終了する。制御部101は、補正処理により得られた線と、軌跡を構成する複数点のすべての点との距離が閾値以下となるまで補正処理を行うので、その前に補正処理を終了する場合に比べて、媒体20上で指定された位置に近い形態の軌跡となる。
【0041】
制御部101は、以上の補正処理により得た線を補正後の軌跡とする。制御部101は、軌跡を構成する複数座標を、その各座標の位置の検出順と対応付けた軌跡を示す軌跡情報を生成する。ここでは、制御部101は、座標P1,P3,P16,P6,P21という5点の座標を、図10(b)で設定した配列順と対応付けた軌跡情報を生成する。この軌跡情報は、座標P1,P3,P16,P6,P21という順で結ぶ線で軌跡を表す画像を表現することを意味する。これにより、図7(a)に示すような筆記内容は、図11に示すような筆記内容の軌跡情報に補正される。
制御部101は、一の軌跡ごとに上述した処理ステップを実行する。
【0042】
電子ペン10では、以上のようにして得られた軌跡情報により特定される筆記内容で文字認識処理が行われるように、軌跡情報を含む文字認識処理に必要な情報を、PC30に送信する。PC30では、補正後の軌跡情報を含む情報に基づいて文字認識処理を行って、テキストデータを生成する。電子ペン10が軌跡情報を生成した後の処理は、従来の手法と同じ方法が用いられればよい。PC30が座標の検出順(つまり、筆記順)を用いずに文字の形だけで文字認識処理を行う場合、電子ペン10は検出順を含まず座標のみを含む軌跡情報をPC30に送信してもよい。
【0043】
以上説明したように、電子ペン10は、検出順が隣接し同一軌跡を構成する座標に含まれる第1座標までの距離よりも、検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さいことを示す近接条件を満たす座標が閾値以上の割合で含まれる軌跡を、多重運筆動作が行われたものとして特定する。そして、電子ペン10は、多重運筆動作が行われた軌跡を構成する座標を間引くことにより、軌跡を補正する。これにより、軌跡を表す情報の情報量が減じられるので、電子ペン10が軌跡の補正を行わない場合に比べて、この情報が簡素化される。図4(c)に示す多重運筆動作に対応する複雑な形態の軌跡は、図4(a)に近い形態の軌跡に補正されるので、軌跡が補正されない場合に比べて、軌跡情報を用いて行われる文字認識処理の精度が高まると考えられる。また、運筆動作中に一時的に電子ペン10の移動が停止させられた場合、この停止位置での座標の数が増大するが、上記補正処理によってこの座標が減じられるので、この点でも軌跡を表す情報の情報量の削減の効果を奏する。
【0044】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態と異なる形態で実施してもよい。また、以下に示す変形例は、各々を組み合わせてもよい。
[変形例1]
上述した実施形態では、電子ペン10は、軌跡を構成する座標の各点について近接条件を満たすか否かを判断していたが、上記近接条件を満たす座標の割合が閾値以上である軌跡の特定の仕方は、この手順に限定されない。
ところで、多重運筆動作が行われた場合、図7(a)に示すように運筆動作を継続したまま狭い範囲を何往復もする運筆動作が行われることもあるが、図12(a)に示すように、複数の軌跡に分離されて、同じような運筆方向の運筆動作を何度も行って多重運筆動作が行われる場合もある。この場合、軌跡を構成する座標は、図12(b)に示すように表される。この場合、3つの軌跡に分離されているが、この場合であっても、近接条件を満たす座標の量で多重運筆動作の有無を判別する多重運筆特定処理により、多重運筆動作が行われた軌跡を電子ペン10は特定する。この場合、3つの軌跡が1つの軌跡に補正されるので、軌跡の数が減じられることによる情報の簡素化の効果も奏する。
【0045】
また、この場合において、電子ペン10は、複数の軌跡同士の距離に基づいて多重運筆動作が行われたか否かを判断してもよい。複数の軌跡で多重運筆動作が行われた場合であっても、これらの軌跡間の距離は小さくなるはずだからである。よって、電子ペン10は、取得した座標に基づいて軌跡を各々抽出し、抽出した複数の軌跡間の距離が決められた距離以下である場合、複数の軌跡を多重運筆動作が行われた軌跡として特定の対象とする。ここでは、電子ペン10は、各軌跡について、両端からの距離が等しい点(中央点)を求め、この中央点間の距離が決められた距離以下である複数の軌跡を特定する。ここでは、電子ペン10は、中央点O1,O2,O3が決められた距離範囲内(図12に破線で図示した距離範囲内)に含まれるとして複数の軌跡を特定すると、各軌跡の姿勢を比較し、軌跡の姿勢が決められた範囲内で一致しているものを、多重運筆動作が行われたものとして特定の対象とする。例えば、電子ペン10は、各座標の位置での運筆方向を求めて、複数軌跡で運筆方向の類似度が一定値以上であれば、それらの姿勢が決められた範囲内で一致すると判断してもよい。
なお、軌跡間の距離は中央点以外の位置を用いて求められてもよい。
【0046】
また、多重運筆動作が行われた軌跡では、1の軌跡内又は複数軌跡で軌跡が交差する点の量が多くなると考えられる。そこで、電子ペン10は、姿勢に関する条件に代えて、この交差の数を数えて、この数が閾値以上であれば多重運筆動作が行われた軌跡として特定してもよい。このように、電子ペン10は、抽出した複数の軌跡間の距離が決められた距離以下であり、且つ、当該複数の軌跡の相互の関係が決められた条件を満たす場合、これら複数の軌跡を多重運筆動作が行われたものとして特定するとよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、電子ペン10は、軌跡を構成する全座標について近接条件を満たすか否かを判別していたが、一部の座標についてこの判別をしてもよい。この場合、電子ペン10は、軌跡を構成する座標の一部を抽出して近接条件を満たすか否かの判別を行う。そして、電子ペン10は、抽出した座標の数に占める近接条件を満たすものの割合が閾値以上であれば、多重運筆動作が行われた軌跡として特定してもよい。
要するに、電子ペン10は、軌跡のうち、複数座標に含まれ且つ検出順が隣接する第1座標までの距離よりも、検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を閾値以上の割合で含んでいるとみなした軌跡を、多重運筆動作が行われた軌跡として特定するものであれば、その処理の内容や手順について特に問わない。
【0048】
[変形例2]
ユーザが筆記を行った場合に、一の軌跡に対応する筆記内容の一部分が擦れてしまうことがある。例えば、図13(a)に示すように、軌跡全体に対応する「X」で示す運筆動作が行われた後、この軌跡のうち擦れた部分に対応する「Y」で示す運筆動作が行われる場合がある。この場合において、「Y」で示す運筆動作が行われた軌跡のみが、多重運筆動作が行われた軌跡として特定されたとする。その際、補正処理の仕方によっては、補正後の軌跡が図12(b)に示す軌跡となり、多重運筆動作が行われていない部分の軌跡La,Lbと、多重運筆動作が行われて補正された部分の軌跡Lcとの端部同士が離れることがある。そこで、制御部101は、補正処理後の軌跡の端部と、多重運筆動作が行われたものとして特定されなかった軌跡の端部との距離が決められた距離以下である場合、両軌跡の端部同士を連結するように軌跡を補正する。図12(c)に示すように、軌跡Lcの一端と軌跡Laの一端との距離は近接しており、決められた距離以下である。また、軌跡Lcの他端と軌跡Lbの一端との距離は近接しており、決められた距離以下である。この場合、制御部101は、軌跡La,Lb,Lcの端部同士を連結して全体として1つの軌跡に補正し、軌跡情報もそれに応じた内容とする。これにより、電子ペン10は、媒体20上に連続して指定された位置の一部分が多重に指定された場合であっても、全体が連続する軌跡となるように補正する。
【0049】
[変形例3]
上述した実施形態では、電子ペン10は、補正処理により得られた線と、軌跡を構成する複数点のすべての点との距離が閾値以下となるまで補正処理を行っていた。これに代えて、電子ペン10は、例えば2回又は3回のように決められた回数だけ補正処理を行うものであってもよい。発明者らは、2回又は3回程度補正処理が行われれば、多くの場合に、補正後の軌跡を実際の筆記内容にある程度近い形態の軌跡に補正されることを発見したからである。
また、制御部101は、軌跡を構成する座標のうち近接条件を満たす座標の量として、割合以外の量を採用してもよい。例えば、筆記内容のサイズがある程度限定され、軌跡を構成する座標の数がある範囲に収まる場合等に、制御部101は、近接条件を満たす座標数が閾値以上である場合、多重運筆動作が行われたと特定してもよい。
また、上記補正処理では、電子ペン10は、座標同士を線分で結んでいたが、曲線で結んでもよい。例えば、軌跡を構成する座標の分布から筆記内容がある程度推定されるので、この分布を近似する形態の線が用いられてもよい。また、本発明は、補正後の軌跡が必ず検出順が最初と最後の座標を通過するものに限定されない。
【0050】
[変形例4]
電子ペン10が実行する補正処理は実施形態の方法に限定されない。例えば、電子ペン10は、座標の配列順に、決められた数おきに座標を間引いてもよいし、座標の密度が軌跡全体としてより均一に近づくように、座標を間引いてもよい。要するに、電子ペン10が軌跡を構成する座標のいずれかを間引く補正を行うことで、軌跡を表す情報が簡素化される。
【0051】
[変形例5]
上述した実施形態では、制御部101が近接条件を満たす座標を判別する際、検出順が後である後続座標との距離を用いていたが、検出順が前で検出順が隣接する座標との距離を用いてもよい。
【0052】
[変形例6]
上述した実施形態では、各領域の点状画像の有無に応じた情報を表す符号化方式の符号化画像を用いていたが、本発明の符号化方式は他の符号化方式であってもよい。例えば、特開2003−511763号公報に開示されている符号化方式の符号化画像を、本発明に適用してもよい。
【0053】
[変形例7]
本発明は、電子ペン10のような、符号化画像が形成された媒体を撮像する撮像装置以外の情報処理装置にも適用しうるものである。例えば、タッチパネルを備える電子ペーパやPDA(Personal Digital Assistant)等の表示装置では、表示面たる媒体上を指やスタイラスペンでなぞることで表示面上の位置が指定される。この場合、表示装置が指定位置を決められたサンプリングレートで決められた期間毎に検出し、検出した位置の座標を取得する。この構成であっても、上述した実施形態と同じ手順で多重に指定された軌跡を特定し、座標を間引くことで、上述した実施形態と同等の効果を奏する。
【0054】
また、表示面に重ねて配置されたタッチパネルに代えて、ペンタブレットと呼ばれるものを用いてもよい。すなわち、ユーザが板状のタブレット上でペン型装置やマウス等を用いて軌跡を指定すると、装置がその位置を表す座標を読み取ってディスプレイ上のポインタを移動させ、軌跡を表す画像を表示するというものである。この場合、表示される軌跡を表す画像の情報が簡素化される。
また、本発明を例えばペン型の撮像装置に適用する場合、この撮像装置は媒体上にインク等の色材を供給する機能を有していなくてもよい。本発明は、媒体上への筆記の有無については問わず、座標を取得してから軌跡の補正を行うまでの一連の処理を少なくとも行う情報処理装置に適用してよい。
【0055】
[変形例8]
上述した実施形態の電子ペン10が軌跡情報に基づいて文字認識処理を行ってもよい。
また、上述した電子ペン10の制御部101が実現する各機能は、複数のプログラムの組み合わせによって実現され、又は、複数のハードウェア資源の協働によって実現されてよい。
【符号の説明】
【0056】
10…電子ペン、101…制御部、1011…取得部、1012…特定部、1013…補正部、102…圧力センサ、103…照射部、104…撮像部、105…情報メモリ、106…通信部、107…バッテリ、108…ペンIDメモリ、109…ペン軸、109a…ペン先、110…撮像ユニット、111…スイッチ、20…媒体、30…PC
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、撮像装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペンや感圧式デバイスを用いて筆記された内容を電子化するシステムにおいて、紙とペンを用いた筆記行為に似た感覚で、記入内容の削除や追加、置換、強調等の変更作業を計算機上で行うための技術が、特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−152040号公報
【特許文献2】特開2009−48655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、媒体上で多重に指定された位置の軌跡を表す情報を簡素化することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る情報処理装置は、媒体上において指定された位置であって決められた期間毎に検出された位置の座標を取得する取得手段と、前記媒体上に連続して指定された位置に対応して前記取得手段が取得した複数座標を当該各座標の位置の検出順と対応付けた当該指定された位置の軌跡のうち、前記検出順が隣接し当該複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、前記検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を閾値以上含む軌跡を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された軌跡を構成する座標を間引いて、当該軌跡を補正する補正手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る情報処理装置は、請求項1に記載の構成において、前記特定手段は、前記複数座標において、前記第1座標までの距離よりも前記第2座標までの距離が小さい座標の占める割合が閾値以上である前記軌跡を特定することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る情報処理装置は、請求項1又は2に記載の構成において、前記特定手段は、前記複数座標の各座標について、前記第1座標までの距離よりも前記第2座標までの距離が小さいか否かを判別することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る情報処理装置は、請求項1に記載の構成において、前記特定手段は、前記取得手段が取得した座標に基づいて前記軌跡を各々抽出し、抽出した複数の軌跡間の距離が決められた距離以下であり、且つ、当該複数の軌跡の相互の関係が決められた条件を満たす場合、当該複数の軌跡を特定することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る情報処理装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載の構成において、前記補正手段は、前記特定手段により特定された一の軌跡を構成する複数座標のうち、前記検出順が最先の座標と最後の座標とを結んだ線を、当該複数座標のうち当該線から最も遠い座標を通過する線に補正する補正処理を実行し、補正処理により得た線を補正後の軌跡とすることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る情報処理装置は、請求項5に記載の構成において、前記補正手段は、前記補正処理により得た線と、前記一の軌跡を構成する複数座標の全座標との距離が閾値以下となるまで、前記補正処理を実行することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7に係る情報処理装置は、請求項5又は6に記載の構成において、前記補正手段は、前記補正処理後の軌跡の端部と、前記特定手段により特定されなかった前記軌跡の端部との距離が決められた距離以下である場合、両軌跡の当該端部同士を連結するよう補正することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項8に係る撮像装置は、請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置と、前記媒体上の位置の座標を符号化した符号化画像が形成された当該媒体に光を照射する照射手段と、前記照射手段により照射された光の反射光を撮像する撮像手段とを備え、前記取得手段は、前記撮像手段による前記期間毎の撮像により得られた撮像画像に含まれる前記符号化画像に基づいて、前記媒体上で指定された位置の座標を取得することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項9に係るプログラムは、コンピュータを、媒体上において指定された位置であって決められた期間毎に検出された位置の座標を取得する取得手段と、前記媒体上に連続して指定された位置に対応して前記取得手段が取得した複数座標を当該各座標の位置の検出順と対応付けた当該指定された位置の軌跡のうち、前記検出順が隣接し当該複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、前記検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を閾値以上含む軌跡を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された軌跡を構成する座標を間引いて、当該軌跡を補正する補正手段として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,9に係る発明によれば、多重に指定された位置の軌跡を構成する座標を間引く補正をしない場合に比べて、媒体上で多重に指定された位置の軌跡を表す情報を簡素化することができる。
請求項2に係る発明によれば、第1座標までの距離よりも第2座標までの距離が小さい座標の占める割合に基づいて軌跡を特定しない場合に比べて、多重に指定された位置の軌跡の特定の精度が、媒体上の指定位置に依存して変動することを抑えることができる。
請求項3に係る発明によれば、軌跡を構成する複数座標の各座標について第1座標までの距離よりも第2座標までの距離が小さいか否かを判別しない場合に比べて、多重に指定された位置の軌跡を正確に特定することができる。
請求項4に係る発明によれば、軌跡間の距離を条件に含めない場合に比べて、複数の軌跡により多重に位置が指定されたときに、その軌跡を正確に特定することができる。
請求項5に係る発明によれば、別の方法で軌跡を補正する場合に比べて、媒体上で指定された位置に近い形態の軌跡に補正することができる。
請求項6に係る発明によれば、補正処理により得られた線と、軌跡を構成する複数座標のすべての座標との距離が閾値以下となる前に補正処理を終了する場合に比べて、媒体上で指定された位置に近い形態の軌跡に補正することができる。
請求項7に係る発明によれば、媒体上を移動するように指定された位置のうちの一部が多重に指定された場合であっても、全体が連続するように軌跡を補正することができる。
請求項8に係る発明によれば、符号化画像が形成された媒体の撮像画像から媒体上で指定された位置の座標を取得する構成において、軌跡を構成する座標を間引く補正をしない場合に比べて、媒体上で多重に指定された位置の軌跡を表す情報を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】システムの全体構成を示す図。
【図2】符号化画像の構成を説明する図。
【図3】電子ペンの構成を示すブロック図。
【図4】筆記内容を説明する図。
【図5】制御部が実現する機能構成を示す機能ブロック図。
【図6】電子ペンの制御部の動作手順を示すフローチャート。
【図7】筆記内容と手書き内容に応じて特定される軌跡の関係を示す図。
【図8】近接条件を説明する図。
【図9】多重運筆特定処理を実行する際の動作手順を示すフローチャート。
【図10】軌跡の補正の手順を説明する図。
【図11】補正後の軌跡を説明する図。
【図12】変形例1に係る多重運筆特定処理を説明する図。
【図13】変形例2に係る補正後の軌跡を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るシステムの全体構成を示す図である。
本実施形態に係るシステムの構成は、電子ペン10と、媒体20と、PC(Personal computer)30とに大別される。電子ペン10は、本発明の撮像装置の一例であり、媒体20にインクを供給して筆記する機能と、媒体20上に形成された符号化画像に基づいて媒体20上の位置を決められた期間毎に検出する機能とを実現する。媒体20上に形成される符号化画像は、決められた符号化方式に従って情報を符号化し画像化したものである。媒体20は、紙やOHPシート等のプラスチック、その他の材質のものでもよいし、表示内容が電気的に書き換えられる電子ペーパでもよい。PC30は、電子ペン10によって指定された位置の符号化画像から復号された情報に基づいて、処理を実行する。PC30は、例えば、電子ペン10を用いた筆記内容を電子化して電子文書を生成し、電子文書に含まれる文字をテキストデータに変換する文字認識処理を実行する。
【0017】
図2は、符号化画像の構成を説明する図である。
符号化画像は、図2に示す複数の点状画像からなるパターンの集合で構成される。図2において、黒で示した矩形の領域A1,A2が点状画像が配置された領域に対応し、斜線の領域A3からA9が点状画像が配置されていない領域に対応する。符号化画像は、媒体20を識別する識別情報や媒体20上の位置の座標を、点状画像の配置パターンにより表すものである。以上の符号化画像は、特開2008−9833号公報等に開示されたものと同じである。
【0018】
図3は、電子ペン10の構成を示すブロック図である。
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)やメモリを含むマイクロコンピュータを有し、電子ペン10の各部を制御する。制御部101は、例えば、媒体20を撮像した撮像画像を解析して、符号化画像から情報を復号して、媒体20を識別する識別情報や媒体20上の位置の座標を取得する。圧力センサ102は、ペン軸109に作用する圧力(つまり、筆圧)によって検出するものであり、運筆動作の有無を制御部101が特定する際にこの検出結果が参照される。撮像ユニット110は、照射部103と撮像部104とを備える。照射部103は、本発明の照射手段の一例であり、例えばLED(Light Emitting Diode)である。照射部103は、ここでは媒体20上に赤外光を照射する。照射部103は、ユーザによって電子ペン10を用いた運筆動作がなされる際に、媒体20上の撮像範囲Rに光を照射する。撮像部104は、本発明の撮像手段の一例であり、照射部103から照射された赤外光に応じた媒体20からの反射光を撮像する。電子ペン10では、決められた期間毎(例えば、60フレーム毎秒)に撮像ユニット110により撮像し、媒体20の撮像画像を表す撮像データを生成する。情報メモリ105は、制御部101で符号化画像から抽出された情報を記憶する。通信部106は、電子ペン10とPC30との無線通信に関する制御を行う。バッテリ107は、例えば充電池であり、電子ペン10を駆動するための電力を電子ペン10の各部に供給する。ペンIDメモリ108は、電子ペン10の識別情報を記憶する。ペン軸109は、先端部にペン先109aを有している。ペン先109aは、電子ペン10を用いた運筆動作がなされる際に、ペン軸109内に納められたインクを媒体20に供給し、媒体20への筆記を実現させる。スイッチ111は、電子ペン10の各種設定の切り替え等に用いられるものである。
【0019】
ところで、用紙等の媒体にインクを供給する筆記具(例えば、ボールペンや万年筆)を用いて、ユーザが媒体上に筆記する場合、インクの減少や運筆動作の仕方等を原因として、筆記内容が擦(かす)れることがある。例えば、ユーザが図4(a)に示す平仮名の「か」という文字を筆記しようとした場合であっても、図4(b)に示す筆記内容となることがある。この例では、I部で文字が擦れている。この場合、ユーザは、「か」という文字がしっかりと記されるように、この擦れた部分を複数回にわたってなぞるように筆記することがある。このような多重に行われる運筆動作のことを、以下では「多重運筆動作」という。多重運筆動作が行われた結果、媒体には「か」という文字が記されるが、電子ペン10でこの多重運筆動作が行われた場合、媒体20上の位置の座標の取得結果は、以下に説明するものとなる。
【0020】
電子ペン10では、運筆動作中に決められた期間毎(ここでは、フレームレートの周期)に電子ペン10で指定された位置を検出し、その検出結果たる座標を取得する。よって、多重運筆動作に対応して電子ペン10で取得される座標によれば、図4(c)に示すような筆記内容が特定され、電子文書上の筆記内容はこの内容となる。この例では、多重運筆動作が行われた部分であるII部に、狭い範囲で何往復もする線が含まれており、本来の「か」という文字とはやや異なった筆記内容となっている。これでは、PC30が電子文書文字認識処理を行った場合、多重運筆動作が行われなかったときに比べて、「か」という文字が正しく認識される可能性が低くなる。
以上の多重運筆動作に関する問題点に対し、電子ペン10は、多重運筆動作が行われた軌跡を特定し、更に、この軌跡を補正する機能を有している。
【0021】
図5は、制御部101が実現する機能構成を示す機能ブロック図である。
制御部101は、取得部1011と、特定部1012と、補正部1013とに相当する各機能を実現する。
取得部1011は、本発明の取得手段の一例であり、媒体20上で指定された位置であって決められた期間毎に検出された位置の座標を取得する。取得部1011は、撮像ユニット110での撮像により得られた撮像画像に含まれる符号化画像に基づいてフレームレートの周期で位置が検出されると、検出された位置の座標を取得する。
【0022】
特定部1012は、本発明の特定手段の一例であり、媒体20上に連続して指定された位置(すなわち、電子ペン10で運筆動作が行われた位置)に対応して取得部1011が取得した複数座標を各座標の位置の検出順と対応付けた軌跡のうち、多重運筆動作が行われた軌跡を特定する。軌跡は、電子ペン10で指定された位置の軌跡である。一の軌跡は、電子ペン10で一回の運筆動作で指定された媒体20上の位置を表し、要するに、一筆書きされた筆記内容に対応している。運筆動作の始点は、電子ペン10の圧力センサ102で筆圧の検知が開始されたタイミングで判断され、運筆動作の終点は、電子ペン10の圧力センサ102で筆圧の検知がされなくなったタイミングで判断される。多重運筆動作が行われた軌跡を特定するべく、特定部1012は、検出順が隣接しこの軌跡を構成する複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標が閾値以上である軌跡を特定する。すなわち、近接する2つの座標があった場合、これら2つの座標に対応する位置の検出順は隣り合う(連続する)ことが多いと考えられるが、これら以外の座標が近接し、さらに、このような座標が多い場合には、狭い範囲内で運筆動作が繰り返し行われたと推測される。特定部1012は、この観点から定められた条件を満たす軌跡を、多重運筆動作が行われた軌跡として特定する。
【0023】
補正部1013は、本発明の補正手段の一例であり、特定部1012により特定された軌跡を構成する座標を間引いて、軌跡を補正する。すなわち、補正部1013は、多重運筆動作が行われたと特定された軌跡を、多重運筆動作が行われなかった場合の軌跡の形態に近づけるための補正処理を実行する。
次に、電子ペン10の動作を説明する。
【0024】
図6は、電子ペン10の制御部101の動作手順を示すフローチャートである。図7は、ユーザにより手書きされた筆記内容と(図7(a))、電子ペン10でこの手書き時の運筆動作により特定される軌跡の一例を示す図である(図7(b))。
制御部101は、撮像部104により生成された撮像データが示す複数フレームの撮影画像に基づいて、媒体20上で指定された位置であってフレームレートの周期で検出された位置の座標を取得する(ステップS1)。ここでは、ユーザが、図7(a)に示す運筆方向に運筆動作をした場合を想定する。
次に、制御部101は、ステップS1で取得した座標に基づいて軌跡を抽出する(ステップS2)。ここでは、制御部101は、図7(b)に示すように、この運筆動作に対応する軌跡を構成する座標として、座標P1から座標P21までの計21個の座標を取得する。以下の説明でも、一の軌跡を構成する座標において検出順がi番目である座標の座標を、「Pi」と表す。
【0025】
次に、制御部101は、軌跡ごとに多重運筆特定処理を実行する。多重運筆特定処理は、多重運筆動作が行われた軌跡を特定する処理である。制御部101は、一の軌跡を構成する計21個の各座標について、検出順が隣接しこの軌跡を構成する座標に含まれる第1座標までの距離よりも、検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さいことを示す条件(以下、「近接条件」という。)を満たすか否かを判別する。
なお、第2座標は、本発明では、同一軌跡を構成する座標に限らず、他の軌跡を構成する座標であってもよく、媒体20上の指定位置の座標であればよい。
【0026】
ここで、多重運筆特定処理の詳細な内容を説明する。図8は、近接条件を説明する図である。図8(a)は、座標P1周辺を拡大した様子を表し、図8(b)は、座標P2周辺を拡大した様子を表す。図9は、多重運筆特定処理の手順を示すフローチャートである。
まず、制御部101は、最初に変数i=1にセットし、注目座標Piを設定する(ステップS31)。ステップS31では、制御部101は、軌跡を構成する座標であって近接条件を満たすか否かが未判別の座標のうち、検出順が最先の座標に注目する。ここでは、制御部101は、座標P1に注目し、これを注目座標P1とする。
【0027】
次に、制御部101は、設定した注目座標Piに検出順が隣接する座標(本実施形態では、検出順が後続するもの。)である、後続座標Pi+1(第1座標)を特定する(ステップS32)。ここでは、制御部101は、後続座標P2を特定することになる。
次に、制御部101は、注目座標Piと後続座標Pi+1との距離D(i,i+1)を算出する(ステップS33)。ここでは、制御部101は、注目座標P1と後続座標P2との距離D(1,2)を算出する。距離D(i,i+1)は、例えば、媒体20上の位置の座標を表す座標平面における直線距離である。
【0028】
次に、制御部101は、注目座標Piから距離D(i,i+1)の範囲内に、注目座標Piとは検出順が隣接しない座標(第2座標)があるか否かを判断する(ステップS34)。ここでは、制御部101は、注目座標P1から距離D(1,2)の距離範囲内に後続座標P2以外の座標があるか否かを判断する。図8(a)に示すように、ここでは、制御部101は、注目座標P1から距離D(1,2)よりも近い距離範囲に、注目座標P1とは検出順が隣接しない座標P14があると判断する(つまり、ステップS34の処理で「YES」)。
【0029】
制御部101は、ステップS34で「YES」と判断すると、注目座標Piが近接条件を満たすと判別する(ステップS35)。よって、制御部101は、注目座標P1が近接条件を満たすと判別して、その判別結果をメモリに記憶する。
そして、制御部101は、軌跡を構成する全座標について近接条件の判別をしたか否かを判断する(ステップS36)。ここでは、制御部101は、未だ座標P1について判別しただけであるから、ステップS31の処理に戻る。そして、制御部101は、変数iを「1」だけインクリメントして、注目座標Piを設定する。ここでは、制御部101は、近接条件について未判別である軌跡を構成する座標のうち、検出順が最先の座標である注目座標P2を設定する。
【0030】
次に、制御部101は、注目座標P2に検出順が隣接する後続座標P3(第1座標)を特定する(ステップS32)。次に、制御部101は、注目座標P2と後続座標P3との距離D(2,3)を算出する(ステップS33)。次に、制御部101は、注目座標P2から距離D(2,3)の範囲内に、注目座標P2とは検出順が隣接しない座標(第2座標)があるか否かを判断する(ステップS34)。ここでは、制御部101は、注目座標P2からの距離D(2,3)の距離範囲内に、注目座標P2と検出順が隣接する座標として、後続座標P3、及び検出順が1つ前である座標P1以外の座標があるか否かを判断する。図8(b)に示すように、ここでは、制御部101は、注目座標P2から距離D(2,3)よりも近い距離に、注目座標P2とは検出順が隣接しない座標P13及びP15があるとして、ステップS34で「YES」と判断する。
【0031】
次に、制御部101は、ステップS34で「YES」と判断すると、注目座標P2が近接条件を満たすと判別し、その判別結果をメモリに記憶する(ステップS35)。そして、制御部101は、軌跡を構成する全座標について近接条件についての判別をしたか否かを判断する(ステップS36)。ここでは、制御部101は、座標P2について判別した段階であるから、ステップS31の処理に戻る。
制御部101は、以上の処理ステップを、変数iを1ずつインクリメントしながら繰り返し実行する。そして、制御部101は、注目座標P21について近接条件について判別し終えると、ステップS36で「YES」と判断し、ステップS37の処理に進む。
【0032】
次に、制御部101は、軌跡を構成する複数座標において、近接条件を満たす座標が閾値以上(ここでは、7割以上)の割合で含まれているか否かを判断する(ステップS37)。ここでは、制御部101は、メモリに記憶しておいた判別結果に基づいて、21個の7割以上である15個以上の近接条件を満たす座標があるか否かを判断する。ここで割合を採用しているのは、以下の理由に基づく。ユーザの運筆動作には様々な態様が考えられ、筆記される文字の大きさや線の長さも様々であるが、これに応じて軌跡を構成する座標の数も大きく変化する。よって、軌跡を構成する座標に占める近接条件を満たす座標が相対的に多いことの指標として、全座標に占める近接条件を満たす座標の割合を採用すれば、多重運筆動作の特定の精度が筆記内容に依存して変動することが抑制される。
【0033】
制御部101は、近接条件を満たす座標が閾値以上の割合で軌跡に含まれると判断すると(ステップS37;YES)、この軌跡を多重運筆動作が行われた軌跡として特定する(ステップS38)。一方、近接条件を満たす座標が閾値以上の割合で軌跡に含まれていないと判断すると(ステップS37;NO)、この軌跡を多重運筆動作が行われた軌跡でない特定する(ステップS39)。
【0034】
図7(b)を参照して分かるように、多重運筆動作が行われた部分では、同じような運筆動作が狭い範囲内で何度も行われる。よって、一の軌跡において、検出順が隣り合う2つの座標間の距離よりも、検出順が隣り合わない2つの座標間の距離が小さい箇所が多くなり、近接条件を満たす座標の割合が相対的に大きくなる。図7(b)の例においても、軌跡を構成するほとんどの座標が近接条件を満たしている。このように、多重運筆動作が行われた軌跡では、近接する座標の組の中に、検出順が隣り合わない座標の組が多数存在する。このような発明者らの知見に基づいて、多重運筆特定処理の上記手順が定められている。また、運筆動作の速度やフレームレートに応じて検出順が隣り合う2座標の距離は変化するが、通常の運筆速度や電子ペンで通常採り得るフレームレートであれば、この近接条件を満たす座標の量に基づいて多重運筆動作が行われた軌跡が特定される。例えば、フレームレートが大きいほど、検出順が隣り合う2つの座標間の距離は小さくなるが、この場合には、例えば閾値が小さく設定されればよいと考えられる。多重運筆動作が行われた軌跡は狭い範囲内で多重に指定された位置に対応しているので、フレームレートに関わらず、一の軌跡において、検出順が隣り合う2つの座標間の距離よりも、検出順が隣り合わない2つの座標間の距離が小さい箇所が高確率で含まれるからである。
多重運筆特定処理の説明は以上である。
【0035】
図6に戻って説明する。
制御部101は、多重運筆特定処理の結果に応じて、多重運筆動作が行われた軌跡であるか否かを判断する(ステップS4)。ここで、制御部101は、多重運筆動作が行われた軌跡であると判断すると(ステップS4;YES)、この軌跡を補正する(ステップS5)。具体的には、制御部101は、多重運筆動作が行われた軌跡を構成する座標を間引くとことにより、当該軌跡を補正する。一方で、制御部101は、多重運筆動作が行われた軌跡でないと判断すると(ステップS4;NO)、軌跡を補正しないで処理を終了する。
【0036】
図10は、制御部101がステップS5で実行する軌跡の補正の内容を説明する図である。図10(a)は、図7(b)と同じ内容であり、図7(a)の運筆動作に対応した軌跡を表している。
制御部101は、図10(a)に示す多重運筆動作が行われた軌跡を特定すると、これら複数座標のうち、検出順が最初のものと最後のものとをそれぞれ特定する。ここでは、制御部101は、検出順が最初の座標P1と、検出順が最後の座標P21とをそれぞれ特定する。そして、制御部101は、検出順が最初の座標P1からの距離が近い順となるように、座標P1からP21までの配列順を設定する。ここでは、図10(b)に矢印順で示す配列順に設定される。具体的には、制御部101は、座標P1→P14→P2→P15→P13→P3→P16→P4→P12→P5→P17→P11→P6→P18→P10→P7→P19→P9→P20→P8→P21という配列順を設定する。
【0037】
次に、制御部101は、図10(c)に示すように、検出順が最初の座標P1と、検出順が最後の座標P21とを結ぶ線分L1を引く。そして、制御部101は、線分L1から最も遠い座標を通過する線となるように、線分L1を補正する補正処理を実行する。ここでは、線分L1から最も遠い座標はP16である。よって、制御部101は、図10(d)に示すように、座標P1と座標P21とを結ぶ線分L1を、座標P16を通過する線L2に補正する。線L2は、座標P1と座標P16を結ぶ線分L21と、座標P16と座標P21とを結ぶ線分L22とにより構成される。
【0038】
次に、制御部101は、補正処理により得た線L2と、多重運筆動作が行われた軌跡を構成する複数の座標の全座標との距離が閾値以下であるか否かを判断する。ここでは、制御部101は、図10(b)に示すように設定した配列順に従って、比較対象の座標と線分との関係を決定する。具体的には、制御部101は、座標P1と座標P16との間の配列順の座標については、線分L21との距離に基づいて判断をするし、座標P16と座標P21との間の配列順の座標については、線分L22との距離に基づいて判断をする。なお、座標と線分との距離は、座標から線分に下ろした垂線の長さにより特定される。
ここでは、座標P5,P6,P7が線分L22から遠いので、制御部101が多重運筆動作が行われた軌跡の全座標が線L2からの距離が閾値以下である、という条件を満たさないと判断する。
【0039】
次に、制御部101は、線L2に基づいて上記手順で補正処理を実行することで、図11に示す線L3を得る。具体的には、制御部101は、線L2のうち、座標P1と座標P16を結ぶ線分L21を、L21からの距離が最も遠い座標を通過する線に補正する。よって、制御部101は、線分L21を、座標P1と座標P3とを結ぶ線分L31と、座標P3と座標P16とを結ぶ線分L32とに補正する。また、制御部101は、線L2のうち、座標P16とP21とを結ぶ線分L22を、L22からの距離が最も遠い座標を通過する線に補正する。よって、制御部101は、線分L22を、座標P16と座標P6とを結ぶ線分L33と、座標P6と座標P21とを結ぶ線分L34とに補正する。
以上の補正処理により、電子ペン10は、線分L31,L32,L33,L34からなる線L3を得る。
【0040】
次に、制御部101は、補正処理で補正した線L3と、多重運筆動作で指定された軌跡を構成する複数の座標の全座標との距離が閾値以下であるか否かを判断する。ここでは、全座標が線分L3から閾値以下の距離にあるものとし、制御部101が「YES」と判断し補正処理を終了する。制御部101は、補正処理により得られた線と、軌跡を構成する複数点のすべての点との距離が閾値以下となるまで補正処理を行うので、その前に補正処理を終了する場合に比べて、媒体20上で指定された位置に近い形態の軌跡となる。
【0041】
制御部101は、以上の補正処理により得た線を補正後の軌跡とする。制御部101は、軌跡を構成する複数座標を、その各座標の位置の検出順と対応付けた軌跡を示す軌跡情報を生成する。ここでは、制御部101は、座標P1,P3,P16,P6,P21という5点の座標を、図10(b)で設定した配列順と対応付けた軌跡情報を生成する。この軌跡情報は、座標P1,P3,P16,P6,P21という順で結ぶ線で軌跡を表す画像を表現することを意味する。これにより、図7(a)に示すような筆記内容は、図11に示すような筆記内容の軌跡情報に補正される。
制御部101は、一の軌跡ごとに上述した処理ステップを実行する。
【0042】
電子ペン10では、以上のようにして得られた軌跡情報により特定される筆記内容で文字認識処理が行われるように、軌跡情報を含む文字認識処理に必要な情報を、PC30に送信する。PC30では、補正後の軌跡情報を含む情報に基づいて文字認識処理を行って、テキストデータを生成する。電子ペン10が軌跡情報を生成した後の処理は、従来の手法と同じ方法が用いられればよい。PC30が座標の検出順(つまり、筆記順)を用いずに文字の形だけで文字認識処理を行う場合、電子ペン10は検出順を含まず座標のみを含む軌跡情報をPC30に送信してもよい。
【0043】
以上説明したように、電子ペン10は、検出順が隣接し同一軌跡を構成する座標に含まれる第1座標までの距離よりも、検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さいことを示す近接条件を満たす座標が閾値以上の割合で含まれる軌跡を、多重運筆動作が行われたものとして特定する。そして、電子ペン10は、多重運筆動作が行われた軌跡を構成する座標を間引くことにより、軌跡を補正する。これにより、軌跡を表す情報の情報量が減じられるので、電子ペン10が軌跡の補正を行わない場合に比べて、この情報が簡素化される。図4(c)に示す多重運筆動作に対応する複雑な形態の軌跡は、図4(a)に近い形態の軌跡に補正されるので、軌跡が補正されない場合に比べて、軌跡情報を用いて行われる文字認識処理の精度が高まると考えられる。また、運筆動作中に一時的に電子ペン10の移動が停止させられた場合、この停止位置での座標の数が増大するが、上記補正処理によってこの座標が減じられるので、この点でも軌跡を表す情報の情報量の削減の効果を奏する。
【0044】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態と異なる形態で実施してもよい。また、以下に示す変形例は、各々を組み合わせてもよい。
[変形例1]
上述した実施形態では、電子ペン10は、軌跡を構成する座標の各点について近接条件を満たすか否かを判断していたが、上記近接条件を満たす座標の割合が閾値以上である軌跡の特定の仕方は、この手順に限定されない。
ところで、多重運筆動作が行われた場合、図7(a)に示すように運筆動作を継続したまま狭い範囲を何往復もする運筆動作が行われることもあるが、図12(a)に示すように、複数の軌跡に分離されて、同じような運筆方向の運筆動作を何度も行って多重運筆動作が行われる場合もある。この場合、軌跡を構成する座標は、図12(b)に示すように表される。この場合、3つの軌跡に分離されているが、この場合であっても、近接条件を満たす座標の量で多重運筆動作の有無を判別する多重運筆特定処理により、多重運筆動作が行われた軌跡を電子ペン10は特定する。この場合、3つの軌跡が1つの軌跡に補正されるので、軌跡の数が減じられることによる情報の簡素化の効果も奏する。
【0045】
また、この場合において、電子ペン10は、複数の軌跡同士の距離に基づいて多重運筆動作が行われたか否かを判断してもよい。複数の軌跡で多重運筆動作が行われた場合であっても、これらの軌跡間の距離は小さくなるはずだからである。よって、電子ペン10は、取得した座標に基づいて軌跡を各々抽出し、抽出した複数の軌跡間の距離が決められた距離以下である場合、複数の軌跡を多重運筆動作が行われた軌跡として特定の対象とする。ここでは、電子ペン10は、各軌跡について、両端からの距離が等しい点(中央点)を求め、この中央点間の距離が決められた距離以下である複数の軌跡を特定する。ここでは、電子ペン10は、中央点O1,O2,O3が決められた距離範囲内(図12に破線で図示した距離範囲内)に含まれるとして複数の軌跡を特定すると、各軌跡の姿勢を比較し、軌跡の姿勢が決められた範囲内で一致しているものを、多重運筆動作が行われたものとして特定の対象とする。例えば、電子ペン10は、各座標の位置での運筆方向を求めて、複数軌跡で運筆方向の類似度が一定値以上であれば、それらの姿勢が決められた範囲内で一致すると判断してもよい。
なお、軌跡間の距離は中央点以外の位置を用いて求められてもよい。
【0046】
また、多重運筆動作が行われた軌跡では、1の軌跡内又は複数軌跡で軌跡が交差する点の量が多くなると考えられる。そこで、電子ペン10は、姿勢に関する条件に代えて、この交差の数を数えて、この数が閾値以上であれば多重運筆動作が行われた軌跡として特定してもよい。このように、電子ペン10は、抽出した複数の軌跡間の距離が決められた距離以下であり、且つ、当該複数の軌跡の相互の関係が決められた条件を満たす場合、これら複数の軌跡を多重運筆動作が行われたものとして特定するとよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、電子ペン10は、軌跡を構成する全座標について近接条件を満たすか否かを判別していたが、一部の座標についてこの判別をしてもよい。この場合、電子ペン10は、軌跡を構成する座標の一部を抽出して近接条件を満たすか否かの判別を行う。そして、電子ペン10は、抽出した座標の数に占める近接条件を満たすものの割合が閾値以上であれば、多重運筆動作が行われた軌跡として特定してもよい。
要するに、電子ペン10は、軌跡のうち、複数座標に含まれ且つ検出順が隣接する第1座標までの距離よりも、検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を閾値以上の割合で含んでいるとみなした軌跡を、多重運筆動作が行われた軌跡として特定するものであれば、その処理の内容や手順について特に問わない。
【0048】
[変形例2]
ユーザが筆記を行った場合に、一の軌跡に対応する筆記内容の一部分が擦れてしまうことがある。例えば、図13(a)に示すように、軌跡全体に対応する「X」で示す運筆動作が行われた後、この軌跡のうち擦れた部分に対応する「Y」で示す運筆動作が行われる場合がある。この場合において、「Y」で示す運筆動作が行われた軌跡のみが、多重運筆動作が行われた軌跡として特定されたとする。その際、補正処理の仕方によっては、補正後の軌跡が図12(b)に示す軌跡となり、多重運筆動作が行われていない部分の軌跡La,Lbと、多重運筆動作が行われて補正された部分の軌跡Lcとの端部同士が離れることがある。そこで、制御部101は、補正処理後の軌跡の端部と、多重運筆動作が行われたものとして特定されなかった軌跡の端部との距離が決められた距離以下である場合、両軌跡の端部同士を連結するように軌跡を補正する。図12(c)に示すように、軌跡Lcの一端と軌跡Laの一端との距離は近接しており、決められた距離以下である。また、軌跡Lcの他端と軌跡Lbの一端との距離は近接しており、決められた距離以下である。この場合、制御部101は、軌跡La,Lb,Lcの端部同士を連結して全体として1つの軌跡に補正し、軌跡情報もそれに応じた内容とする。これにより、電子ペン10は、媒体20上に連続して指定された位置の一部分が多重に指定された場合であっても、全体が連続する軌跡となるように補正する。
【0049】
[変形例3]
上述した実施形態では、電子ペン10は、補正処理により得られた線と、軌跡を構成する複数点のすべての点との距離が閾値以下となるまで補正処理を行っていた。これに代えて、電子ペン10は、例えば2回又は3回のように決められた回数だけ補正処理を行うものであってもよい。発明者らは、2回又は3回程度補正処理が行われれば、多くの場合に、補正後の軌跡を実際の筆記内容にある程度近い形態の軌跡に補正されることを発見したからである。
また、制御部101は、軌跡を構成する座標のうち近接条件を満たす座標の量として、割合以外の量を採用してもよい。例えば、筆記内容のサイズがある程度限定され、軌跡を構成する座標の数がある範囲に収まる場合等に、制御部101は、近接条件を満たす座標数が閾値以上である場合、多重運筆動作が行われたと特定してもよい。
また、上記補正処理では、電子ペン10は、座標同士を線分で結んでいたが、曲線で結んでもよい。例えば、軌跡を構成する座標の分布から筆記内容がある程度推定されるので、この分布を近似する形態の線が用いられてもよい。また、本発明は、補正後の軌跡が必ず検出順が最初と最後の座標を通過するものに限定されない。
【0050】
[変形例4]
電子ペン10が実行する補正処理は実施形態の方法に限定されない。例えば、電子ペン10は、座標の配列順に、決められた数おきに座標を間引いてもよいし、座標の密度が軌跡全体としてより均一に近づくように、座標を間引いてもよい。要するに、電子ペン10が軌跡を構成する座標のいずれかを間引く補正を行うことで、軌跡を表す情報が簡素化される。
【0051】
[変形例5]
上述した実施形態では、制御部101が近接条件を満たす座標を判別する際、検出順が後である後続座標との距離を用いていたが、検出順が前で検出順が隣接する座標との距離を用いてもよい。
【0052】
[変形例6]
上述した実施形態では、各領域の点状画像の有無に応じた情報を表す符号化方式の符号化画像を用いていたが、本発明の符号化方式は他の符号化方式であってもよい。例えば、特開2003−511763号公報に開示されている符号化方式の符号化画像を、本発明に適用してもよい。
【0053】
[変形例7]
本発明は、電子ペン10のような、符号化画像が形成された媒体を撮像する撮像装置以外の情報処理装置にも適用しうるものである。例えば、タッチパネルを備える電子ペーパやPDA(Personal Digital Assistant)等の表示装置では、表示面たる媒体上を指やスタイラスペンでなぞることで表示面上の位置が指定される。この場合、表示装置が指定位置を決められたサンプリングレートで決められた期間毎に検出し、検出した位置の座標を取得する。この構成であっても、上述した実施形態と同じ手順で多重に指定された軌跡を特定し、座標を間引くことで、上述した実施形態と同等の効果を奏する。
【0054】
また、表示面に重ねて配置されたタッチパネルに代えて、ペンタブレットと呼ばれるものを用いてもよい。すなわち、ユーザが板状のタブレット上でペン型装置やマウス等を用いて軌跡を指定すると、装置がその位置を表す座標を読み取ってディスプレイ上のポインタを移動させ、軌跡を表す画像を表示するというものである。この場合、表示される軌跡を表す画像の情報が簡素化される。
また、本発明を例えばペン型の撮像装置に適用する場合、この撮像装置は媒体上にインク等の色材を供給する機能を有していなくてもよい。本発明は、媒体上への筆記の有無については問わず、座標を取得してから軌跡の補正を行うまでの一連の処理を少なくとも行う情報処理装置に適用してよい。
【0055】
[変形例8]
上述した実施形態の電子ペン10が軌跡情報に基づいて文字認識処理を行ってもよい。
また、上述した電子ペン10の制御部101が実現する各機能は、複数のプログラムの組み合わせによって実現され、又は、複数のハードウェア資源の協働によって実現されてよい。
【符号の説明】
【0056】
10…電子ペン、101…制御部、1011…取得部、1012…特定部、1013…補正部、102…圧力センサ、103…照射部、104…撮像部、105…情報メモリ、106…通信部、107…バッテリ、108…ペンIDメモリ、109…ペン軸、109a…ペン先、110…撮像ユニット、111…スイッチ、20…媒体、30…PC
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体上において指定された位置であって決められた期間毎に検出された位置の座標を取得する取得手段と、
前記媒体上に連続して指定された位置に対応して前記取得手段が取得した複数座標を当該各座標の位置の検出順と対応付けた当該指定された位置の軌跡のうち、前記検出順が隣接し当該複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、前記検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を閾値以上含む軌跡を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された軌跡を構成する座標を間引いて、当該軌跡を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記特定手段は、
前記複数座標において、前記第1座標までの距離よりも前記第2座標までの距離が小さい座標の占める割合が閾値以上である前記軌跡を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記複数座標の各座標について、前記第1座標までの距離よりも前記第2座標までの距離が小さいか否かを判別する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定手段は、
前記取得手段が取得した座標に基づいて前記軌跡を各々抽出し、抽出した複数の軌跡間の距離が決められた距離以下であり、且つ、当該複数の軌跡の相互の関係が決められた条件を満たす場合、当該複数の軌跡を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記補正手段は、
前記特定手段により特定された一の軌跡を構成する複数座標のうち、前記検出順が最先の座標と最後の座標とを結んだ線を、当該複数座標のうち当該線から最も遠い座標を通過する線に補正する補正処理を実行し、補正処理により得た線を補正後の軌跡とする
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記補正手段は、
前記補正処理により得た線と、前記一の軌跡を構成する複数座標の全座標との距離が閾値以下となるまで、前記補正処理を実行する
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記補正手段は、
前記補正処理後の軌跡の端部と、前記特定手段により特定されなかった前記軌跡の端部との距離が決められた距離以下である場合、両軌跡の当該端部同士を連結するよう補正する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記媒体上の位置の座標を符号化した符号化画像が形成された当該媒体に光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射された光の反射光を撮像する撮像手段と
を備え、
前記取得手段は、
前記撮像手段による前記期間毎の撮像により得られた撮像画像に含まれる前記符号化画像に基づいて、前記媒体上で指定された位置の座標を取得する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
コンピュータを、
媒体上において指定された位置であって決められた期間毎に検出された位置の座標を取得する取得手段と、
前記媒体上に連続して指定された位置に対応して前記取得手段が取得した複数座標を当該各座標の位置の検出順と対応付けた当該指定された位置の軌跡のうち、前記検出順が隣接し当該複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、前記検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を閾値以上含む軌跡を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された軌跡を構成する座標を間引いて、当該軌跡を補正する補正手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
媒体上において指定された位置であって決められた期間毎に検出された位置の座標を取得する取得手段と、
前記媒体上に連続して指定された位置に対応して前記取得手段が取得した複数座標を当該各座標の位置の検出順と対応付けた当該指定された位置の軌跡のうち、前記検出順が隣接し当該複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、前記検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を閾値以上含む軌跡を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された軌跡を構成する座標を間引いて、当該軌跡を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記特定手段は、
前記複数座標において、前記第1座標までの距離よりも前記第2座標までの距離が小さい座標の占める割合が閾値以上である前記軌跡を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記複数座標の各座標について、前記第1座標までの距離よりも前記第2座標までの距離が小さいか否かを判別する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定手段は、
前記取得手段が取得した座標に基づいて前記軌跡を各々抽出し、抽出した複数の軌跡間の距離が決められた距離以下であり、且つ、当該複数の軌跡の相互の関係が決められた条件を満たす場合、当該複数の軌跡を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記補正手段は、
前記特定手段により特定された一の軌跡を構成する複数座標のうち、前記検出順が最先の座標と最後の座標とを結んだ線を、当該複数座標のうち当該線から最も遠い座標を通過する線に補正する補正処理を実行し、補正処理により得た線を補正後の軌跡とする
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記補正手段は、
前記補正処理により得た線と、前記一の軌跡を構成する複数座標の全座標との距離が閾値以下となるまで、前記補正処理を実行する
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記補正手段は、
前記補正処理後の軌跡の端部と、前記特定手段により特定されなかった前記軌跡の端部との距離が決められた距離以下である場合、両軌跡の当該端部同士を連結するよう補正する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記媒体上の位置の座標を符号化した符号化画像が形成された当該媒体に光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射された光の反射光を撮像する撮像手段と
を備え、
前記取得手段は、
前記撮像手段による前記期間毎の撮像により得られた撮像画像に含まれる前記符号化画像に基づいて、前記媒体上で指定された位置の座標を取得する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
コンピュータを、
媒体上において指定された位置であって決められた期間毎に検出された位置の座標を取得する取得手段と、
前記媒体上に連続して指定された位置に対応して前記取得手段が取得した複数座標を当該各座標の位置の検出順と対応付けた当該指定された位置の軌跡のうち、前記検出順が隣接し当該複数座標に含まれる第1座標までの距離よりも、前記検出順が隣接しない第2座標までの距離が小さい座標を閾値以上含む軌跡を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された軌跡を構成する座標を間引いて、当該軌跡を補正する補正手段
として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−50785(P2013−50785A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187353(P2011−187353)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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