説明

情報処理装置および顕微鏡

【課題】顕微鏡の利便性を向上させる。
【解決手段】倒立顕微鏡12のアドレス検出部31は、アドレス基板21から状態検出レボルバ11に固定された対物レンズの物理アドレスを読み出す。物理アドレスは、状態検出レボルバ11の取り付け面を基準とする、対物レンズの配置位置を示している。また、接続検出部32は、アドレス基板21から状態検出レボルバ11の種別を示す種別情報を読み出す。デコード処理部33は、種別情報により示される種別が正立顕微鏡用である場合、予め用意されたアドレス変換テーブルを用いて、物理アドレスを、使用者の視点から見た対物レンズの配置を示す表示アドレスに変換し、表示部23に表示させる。本発明は、顕微鏡に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば状態検出レボルバ等の光学素子の回転保持部材を装着して標本を観察する場合に用いて好適な情報処理装置および顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば顕微鏡の観察光路上に配置された対物レンズが取り付けられているレボルバ中の位置を示すアドレス(以下、物理アドレスとも称する)を検出し、その物理アドレスを出力する状態検出レボルバが知られている(例えば、特許文献1参照)。顕微鏡では、状態検出レボルバから供給された物理アドレスが表示されるため、使用者は、表示された物理アドレスを見て、標本の観察にどの対物レンズが用いられているかを知ることができる。
【0003】
このような状態検出レボルバにおける対物レンズの取り付け面には、複数の対物レンズの取り付け穴が円形状に並べられて設けられている。そして、それらの取り付け穴、つまり取り付け穴に固定される対物レンズの物理アドレスは、顕微鏡の使用者の視点を基準として定められている。
【0004】
すなわち、状態検出レボルバが正立顕微鏡用のものである場合、物理アドレスとして、状態検出レボルバにおける対物レンズの取り付け面を基準として、この取り付け面を正面として状態検出レボルバを見たとき、時計回りに連続した番号が昇順に付される。例えば、使用者が対物レンズの取り付け面を正面から見ている状態で、所定の基準となる取り付け穴に固定される対物レンズの物理アドレスを「1」とする。この場合、円形状に配置されている各対物レンズに対して、基準となる対物レンズから時計回りの方向に順番に「1」、「2」、「3」、・・・と対物レンズ(取り付け穴)の数だけ順番に物理アドレスが付されていく。
【0005】
一方、状態検出レボルバが倒立顕微鏡用のものである場合、各取り付け穴(対物レンズ)に対して、物理アドレスとして状態検出レボルバにおける対物レンズの取り付け面を基準とし、この取り付け面を正面として状態検出レボルバを見たとき、反時計回りの方向に連続した番号が昇順に付される。
【0006】
したがって、正立顕微鏡用の状態検出レボルバを正立顕微鏡に取り付け、使用者が状態検出レボルバを、使用者から見て時計回りの方向に回転させて対物レンズを切り換えると、正立顕微鏡に表示される物理アドレスは、「1」、「2」、「3」、・・・と順番に切り換わる。そして、状態検出レボルバが回転されて一周すると、表示される物理アドレスも元に戻り、「1」となる。同様に、倒立顕微鏡用の状態検出レボルバを倒立顕微鏡に取り付けて、使用者が、状態検出レボルバを使用者から見て時計回りの方向に回転させた場合も、倒立顕微鏡に表示される物理アドレスは、「1」、「2」、「3」、・・・と順番に切り換わる。
【0007】
【特許文献1】特開2008−40158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、顕微鏡本体に対する装着部の構造等、状態検出レボルバの機械的な機構および構造は、正立顕微鏡用や倒立顕微鏡用といった状態検出レボルバの種別によらず同じであるため、例えば、正立顕微鏡用の状態検出レボルバを倒立顕微鏡に取り付けて標本の観察に用いることも可能である。
【0009】
しかしながら、そのような場合、使用者が、正立顕微鏡用の状態検出レボルバを使用者から見て時計回りに回転させると、倒立顕微鏡に表示される対物レンズの物理アドレスは、「1」、「5」、「4」、「3」、・・・と順番に切り換わることになる。すなわち、使用者が、時計回りに状態検出レボルバを回転させれば昇順で切り換わると思っていたはずの物理アドレスの表示が、降順で切り換わることになり、混同を生じる恐れがあった。
【0010】
このように使用者は、1つの状態検出レボルバを、正立および倒立顕微鏡に対し交換して兼用し、観察を行う場合には、表示される物理アドレスと、自分が思っている対物レンズの配置とが一致しないという不便な状況で観察を行わなければならなかった。また、不便さを感じることなく観察を行うためには、使用者は、観察に用いる顕微鏡ごとに、その顕微鏡の種別に応じた専用の状態検出レボルバを用意する必要があった。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、顕微鏡の利便性を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の情報処理装置は、固定された複数の光学部材を保持し回転させることで、前記光学部材のうちの何れかを顕微鏡の観察光路上に配置する回転保持部材から、前記観察光路上に配置された前記光学部材の、前記光学部材の前記回転保持部材上の配置位置を示す物理アドレスを取得するアドレス取得手段と、前記回転保持部材の種別として、正立型顕微鏡用または倒立型顕微鏡用の何れかを示す種別情報を、前記回転保持部材から取得する種別情報取得手段と、前記種別情報により示される回転保持部材の種別に応じて、前記アドレス取得手段により取得された前記物理アドレスを、表示アドレスに変換するアドレス変換手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なるタイプの顕微鏡に対して、1つのタイプのレボルバを設置し、使用しても利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用した顕微鏡観察システムの一実施の形態の構成例を示す図である。この顕微鏡観察システムは、状態検出レボルバ11および倒立顕微鏡12から構成され、倒立顕微鏡12に状態検出レボルバ11が取り付けられて、標本の観察が行われる。
【0016】
状態検出レボルバ11は、その取り付け面に複数の対物レンズが固定される、正立顕微鏡用または倒立顕微鏡用の状態検出レボルバであり、アドレス基板21を有している。アドレス基板21は、状態検出レボルバ11の取り付け面を基準とする、対物レンズの取り付け面における配置位置を示す物理アドレスと、状態検出レボルバ11の種別を示す種別情報とを記録しており、それらの情報を倒立顕微鏡12に供給する。
【0017】
ここで、対物レンズの物理アドレス、より詳細には、状態検出レボルバ11の取り付け面に設けられた、対物レンズを固定するための取り付け穴の物理アドレスは、取り付け面に対して正面から見たときの取り付け面上における対物レンズの配置位置を示す情報である。この物理アドレスは、番地とも呼ばれている。
【0018】
倒立顕微鏡12は、アドレス基板21から物理アドレスおよび種別情報を読み出し、種別情報に応じてデコード処理を行い、物理アドレスを、使用者の視点を基準とする表示アドレスに変換する。ここで、表示アドレスとは、倒立顕微鏡12の使用者から見た、状態検出レボルバ11の取り付け面における対物レンズの配置位置を示す情報である。なお、表示アドレスの基準となる使用者の視点の位置は、倒立顕微鏡12近傍の空間内であり、かつ倒立顕微鏡12に設けられたステージに対して、倒立顕微鏡12の設置面側とは反対側にあるものとする。
【0019】
このように物理アドレスを表示アドレスに変換する処理は、倒立顕微鏡12全体の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)22により行われ、その結果得られた表示アドレスは表示部23により表示される。
【0020】
CPU22は、例えば、所定のプログラムを読み込んで実行することにより、アドレス検出部31、接続検出部32、およびデコード処理部33を実現する。アドレス検出部31は、アドレス基板21から、倒立顕微鏡12の観察光路上に配置された対物レンズの物理アドレスを取得してデコード処理部33に供給する。ここでいう観察光路とは、倒立顕微鏡12の図示せぬステージ上の標本を観察するために、標本からの光を接眼部や撮像装置に導く光路である。
【0021】
接続検出部32は、アドレス基板21から種別情報を読み出してデコード処理部33に供給する。この種別情報には、状態検出レボルバ11が正立顕微鏡用または倒立顕微鏡用の何れの状態検出レボルバであるかといった、状態検出レボルバ11の種別を示す情報の他に、状態検出レボルバ11に固定可能な対物レンズの数を示す個数情報が含まれている。つまり、個数情報は、状態検出レボルバ11の取り付け面に設けられた対物レンズの取り付け穴の個数を示している。
【0022】
デコード処理部33は、接続検出部32からの種別情報に応じてデコード処理を行い、アドレス検出部31からの物理アドレスを表示アドレスに変換して表示部23に供給する。表示部23は、例えば複数のLED(Light Emitting Diode)から構成され、それらのLEDを点灯または消灯させることにより、表示アドレスを表示する。
【0023】
ところで、対物レンズの物理アドレスは、状態検出レボルバ11の取り付け面に対して正面から見た状態で、基準となる対物レンズから時計回りまたは反時計回りの方向に、各対物レンズに対して順番に連続した番号が昇順で付される。
【0024】
例えば、状態検出レボルバ11が正立顕微鏡用であり、図2に示すように、その取り付け面61に、5つの取り付け穴62−1乃至取り付け穴62−5が設けられている場合、取り付け穴62−1乃至取り付け穴62−5の物理アドレスは、それぞれ「1」乃至「5」とされる。
【0025】
図2では、取り付け穴62−1乃至取り付け穴62−5は、同一円周上に等間隔に配置され、それらの取り付け穴62−1乃至取り付け穴62−5には、対物レンズが取り付け面61の図中、手前側に配置されて固定される。なお、以下、取り付け穴62−1乃至取り付け穴62−5を個々に区別する必要のない場合、単に取り付け穴62とも称する。
【0026】
また、仮に、図2に示した状態検出レボルバ11が、倒立顕微鏡用の状態検出レボルバであるとすると、各取り付け穴62(対物レンズ)の物理アドレスは、基準となる取り付け穴62−1から反時計回りの方向に、順番に連続した番号が昇順で付される。つまり、取り付け穴62−1乃至取り付け穴62−5の物理アドレスは、それぞれ「1」、「5」、「4」、「3」、「2」とされる。
【0027】
これに対して表示アドレスは、使用者の視点、つまり倒立顕微鏡12を鉛直方向の上側から見た状態で、基準となる対物レンズ(取り付け穴)から時計回りの方向に順番に、「1」乃至「5」とされる。
【0028】
したがって、倒立顕微鏡用の状態検出レボルバ11が倒立顕微鏡12に取り付けられた場合、使用者の視点から見える対物レンズの物理アドレスの配置は、表示アドレスと一致する。この場合、状態検出レボルバ11は、その取り付け面が使用者に向くように倒立顕微鏡12に取り付けられるため、使用者から見て、状態検出レボルバ11を時計回りの方向に回転させると、観察光路上に配置される対物レンズの物理アドレスは昇順に変化していく。
【0029】
ところが、正立顕微鏡用の状態検出レボルバ11を倒立顕微鏡12に取り付けた場合には、使用者の視点から見える対物レンズの物理アドレスの配置は、表示アドレスとは一致しない。この場合、使用者から見て、状態検出レボルバ11を時計回りの方向に回転させると、観察光路上に配置される対物レンズの物理アドレスは降順に変化していく。
【0030】
そこで、倒立顕微鏡12は、正立顕微鏡用の状態検出レボルバ11が接続された場合には、アドレス基板21から読み出した物理アドレスに対してデコード処理を行う。デコード処理には、例えば、図3乃至図5に示すアドレス変換テーブルが用いられる。
【0031】
図3は、状態検出レボルバ11が正立顕微鏡用であり、その取り付け面に5つの取り付け穴が設けられている場合に用いられるアドレス変換テーブルを示す図である。図3では、「アドレス 入力信号」の欄には物理アドレスが示されており、「デコード アドレス信号」の欄には表示アドレスが示されている。
【0032】
すなわち、物理アドレス「1」は、表示アドレス「1」に変換され、物理アドレス「2」は、表示アドレス「5」に変換される。また、物理アドレス「3」乃至「5」のそれぞれは、表示アドレス「4」乃至「2」のそれぞれに変換される。
【0033】
また、図4は、状態検出レボルバ11が正立顕微鏡用であり、その取り付け面に6つの取り付け穴が設けられている場合に用いられるアドレス変換テーブルを示す図である。図4では、「アドレス 入力信号」の欄には物理アドレスが示されており、「デコード アドレス信号」の欄には表示アドレスが示されている。
【0034】
すなわち、物理アドレス「1」は、表示アドレス「1」に変換され、物理アドレス「2」は、表示アドレス「6」に変換される。また、物理アドレス「3」乃至「6」のそれぞれは、表示アドレス「5」乃至「2」のそれぞれに変換される。
【0035】
同様に、図5は、状態検出レボルバ11が正立顕微鏡用であり、その取り付け面に7つの取り付け穴が設けられている場合に用いられるアドレス変換テーブルを示す図である。図5では、「アドレス 入力信号」の欄には物理アドレスが示されており、「デコード アドレス信号」の欄には表示アドレスが示されている。
【0036】
すなわち、物理アドレス「1」は、表示アドレス「1」に変換され、物理アドレス「2」は、表示アドレス「7」に変換される。また、物理アドレス「3」乃至「7」のそれぞれは、表示アドレス「6」乃至「2」のそれぞれに変換される。
【0037】
倒立顕微鏡12のデコード処理部33は、状態検出レボルバに取り付け可能な対物レンズの個数ごとに、例えば図3乃至図5に示したアドレス変換テーブルを予め記録しており、このアドレス変換テーブルを用いてデコード処理を行う。
【0038】
次に、図6のフローチャートを参照して、倒立顕微鏡12が状態検出レボルバ11の接続を検出して表示アドレスを表示する処理である、アドレス表示処理について説明する。このアドレス表示処理は、倒立顕微鏡12の電源が投入されると開始される。
【0039】
ステップS11において、接続検出部32は、倒立顕微鏡12に状態検出レボルバ11が接続されたか否かを判定する。すなわち、接続検出部32は、倒立顕微鏡12に状態検出レボルバ11が接続されて、アドレス基板21から種別情報が供給された場合、状態検出レボルバ11が接続されたと判定する。
【0040】
ステップS11において、状態検出レボルバ11が接続されていないと判定された場合、接続検出部32は、状態検出レボルバ11が接続されていない旨の情報をデコード処理部33に供給する。すると、デコード処理部33は、接続検出部32から供給された情報に基づいて、状態検出レボルバ11が接続されていない旨の表示を表示部23に指示し、その後、処理はステップS16に進む。
【0041】
一方、ステップS11において、状態検出レボルバ11が接続されたと判定された場合、接続検出部32は、アドレス基板21から読み出した種別情報をデコード処理部33に供給し、処理はステップS12に進む。
【0042】
ステップS12において、アドレス検出部31は、倒立顕微鏡12の観察光路上に配置された対物レンズの物理アドレスを検出する。すなわち、アドレス基板21は、倒立顕微鏡12の観察光路上に配置された対物レンズの物理アドレスを検出してアドレス検出部31に供給し、アドレス検出部31は、アドレス基板21からの物理アドレスをデコード処理部33に供給する。
【0043】
ステップS13において、デコード処理部33は、接続検出部32から供給された種別情報に基づいて、接続された状態検出レボルバ11が正立顕微鏡用であるか否かを判定する。例えば、種別情報により示される状態検出レボルバ11の種別が、正立顕微鏡用である場合に、正立顕微鏡用であると判定される。
【0044】
ステップS13において、正立顕微鏡用でない、つまり状態検出レボルバ11が倒立顕微鏡用であると判定された場合、物理アドレスに対するデコード処理は必要ないので、デコード処理部33は、アドレス検出部31から供給された物理アドレスを、そのまま表示アドレスとして表示部23に供給する。そして、その後、処理はステップS16に進む。
【0045】
これに対して、ステップS13において、正立顕微鏡用であると判定された場合、ステップS14において、デコード処理部33は、デコード処理に必要なアドレス変換テーブルを読み出す。すなわち、デコード処理部33は、接続検出部32から供給された種別情報に含まれる個数情報に基づいて、個数情報により示される数により特定されるアドレス変換テーブルを選択し、読み出す。
【0046】
例えば、個数情報により示される対物レンズの固定可能な個数、つまり取り付け面に設けられた取り付け穴の個数が「5」である場合、図3に示したアドレス変換テーブルが読み出される。
【0047】
ステップS15において、デコード処理部33は読み出したアドレス変換テーブルと、アドレス検出部31から供給された物理アドレスとを用いてデコード処理を行う。そして、デコード処理部33は、デコード処理により得られた表示アドレスを表示部23に供給する。例えば、図3のアドレス変換テーブルが読み出され、物理アドレスとして「2」が供給された場合、デコード処理部33は、物理アドレス「2」を表示アドレス「5」に変換して表示部23に供給する。
【0048】
ステップS15においてデコード処理が行われた場合、ステップS13において正立顕微鏡用でないと判定された場合、またはステップS11において状態検出レボルバ11が接続されていないと判定された場合、ステップS16において、表示部23は、表示アドレスを表示する。
【0049】
例えば、表示部23は、デコード処理部33から供給された表示アドレスに基づいて、表示部23を構成する複数のLEDのそれぞれを点灯させたり、消灯させたりして、表示アドレスを表示する。
【0050】
また、表示部23は、デコード処理部33から状態検出レボルバ11が接続されていない旨の表示の指示を受けた場合、その指示に従って、状態検出レボルバ11が接続されていない旨を表示する。例えば、表示部23は、表示部23を構成する全てのLEDを消灯させて、倒立顕微鏡12に状態検出レボルバ11が接続されていない旨を、使用者に対して通知する。
【0051】
このようにして、表示部23により表示アドレスの表示が行われると、処理はステップS11に戻り、上述した処理が繰り返される。したがって、状態検出レボルバ11が回転されて、観察光路上に新たな対物レンズが配置されると、その新たな対物レンズの表示アドレスが表示されることになる。なお、アドレス表示処理は、倒立顕微鏡12の電源がオフされると終了する。
【0052】
このようにして、倒立顕微鏡12は、接続された状態検出レボルバ11から物理アドレスおよび種別情報を読み出して、種別情報に示される状態検出レボルバ11の種別に応じてデコード処理を行い、表示アドレスを表示する。
【0053】
このように、種別情報に応じて物理アドレスを表示アドレスに変換して表示することで、接続される状態検出レボルバ11の種別によって、倒立顕微鏡12に表示される、対物レンズの配置位置を示すアドレスと、使用者が思っている対物レンズの配置(表示アドレス)とが一致しなくなることを防止することができる。これにより、使用中である対物レンズの混同の発生を予防でき、倒立顕微鏡12の利便性を向上させることができる。
【0054】
しかも、種別情報に含まれる個数情報に応じたアドレス変換テーブルが用いられて、デコード処理が行われるので、簡単かつ迅速に物理アドレスの表示アドレスへの変換を行うことができる。
【0055】
このような倒立顕微鏡12によれば、使用者は、状態検出レボルバ11の種別を特に気にせずに標本を観察することができるので、顕微鏡の種別ごとに専用の状態検出レボルバ11を用意する必要がなくなり、出費を抑えることができる。また、状態検出レボルバ11を提供する側においても、顕微鏡の種別ごとに専用の状態検出レボルバ11を製造する必要がなくなるので、状態検出レボルバ11の製造コスト削減を図ることができる。
【0056】
なお、以上においては、倒立顕微鏡12を例に説明したが、正立顕微鏡に対しても勿論、適用することが可能である。すなわち、正立顕微鏡に本発明が適用される場合には、正立顕微鏡は、状態検出レボルバ11の種別が倒立顕微鏡である場合に、個数情報に応じて予め用意されたアドレス変換テーブルを用いたデコード処理を行う。
【0057】
また、状態検出レボルバ11は、使用者が状態検出レボルバ11を回転させる手動式のもの限らず、電動で駆動する電動レボルバとされてもよい。さらに、アドレス検出部31乃至デコード処理部33や表示部23の機能の一部または全部は、倒立顕微鏡12に限らず、倒立顕微鏡12に接続されたパーソナルコンピュータなどの他の装置に設けられていてもよい。そのような場合、倒立顕微鏡12に接続された他の装置と、倒立顕微鏡12とからなる情報処理装置により、図6のアドレス表示処理が行われる。
【0058】
さらに、アドレス検出部31乃至デコード処理部33が状態検出レボルバ11内部に設けられ、状態検出レボルバ11が、倒立顕微鏡12から、倒立顕微鏡12の種別を示す種別情報を取得して、物理アドレスを表示アドレスに変換する処理を行うようにしてもよい。
【0059】
なお、以上においては、倒立顕微鏡12の観察光路上に配置される光学部材と、複数の光学部材を回転させて、それらのうちの1つを観察光路上に配置させる回転保持部材との例として、対物レンズおよび状態検出レボルバ11について説明したが、光学部材は、観察光路上に配置されるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0060】
例えば、倒立顕微鏡12において、標本が蛍光観察される場合であれば、フィルタキューブを光学部材とすることができる。フィルタキューブとは、例えば蛍光観察で用いるダイクロイックミラー、バリアフィルタ、および励起フィルタ等の光学素子であり、蛍光観察時には、標本に照射される励起光の波長に応じたフィルタキューブが観察光路上に配置される。
【0061】
この場合、回転保持部材としてのターレットに複数のフィルタキューブが固定され、ターレットが回転されて、1つのフィルタキューブが観察光路上に配置される。そして、フィルタキューブの励起フィルタを透過した励起光はダイクロイックミラーを介して標本に照射され、これにより発現した標本からの蛍光は、ダイクロイックミラーで反射され、さらにバリアフィルタを透過して、接眼レンズ等に入射する。また、この場合、倒立顕微鏡12は、ターレットからフィルタキューブの物理アドレスと、種別情報とを読み出してデコード処理を行い、その結果得られた表示アドレスを表示する。さらに、明視野観察で用いられるフィルタキューブでは、その中にハーフミラーを収納したものもあり、このようなものにも適用できる。
【0062】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明を適用した顕微鏡観察システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】物理アドレスの配置について説明する図である。
【図3】アドレス変換テーブルの一例を示す図である。
【図4】アドレス変換テーブルの一例を示す図である。
【図5】アドレス変換テーブルの一例を示す図である。
【図6】アドレス表示処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
11 状態検出レボルバ, 12 倒立顕微鏡, 21 アドレス基板, 23 表示部, 31 アドレス検出部, 32 接続検出部, 33 デコード処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された複数の光学部材を保持し回転させることで、前記光学部材のうちの何れかを顕微鏡の観察光路上に配置する回転保持部材から、前記観察光路上に配置された前記光学部材の、前記光学部材の前記回転保持部材上の配置位置を示す物理アドレスを取得するアドレス取得手段と、
前記回転保持部材の種別として、正立型顕微鏡用または倒立型顕微鏡用の何れかを示す種別情報を、前記回転保持部材から取得する種別情報取得手段と、
前記種別情報により示される回転保持部材の種別に応じて、前記アドレス取得手段により取得された前記物理アドレスを、表示アドレスに変換するアドレス変換手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
変換により得られた前記表示アドレスを表示する表示手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記種別情報には、前記回転保持部材に固定可能な光学部材の数を示す個数情報が含まれ、
前記アドレス変換手段は、前記種別情報により示される種別に応じて、前記個数情報により示される数に基づいて前記物理アドレスの前記表示アドレスへの変換を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記アドレス変換手段は、前記種別情報により示される種別が、正立型顕微鏡用または倒立型顕微鏡用のうちの予め定められた一方である場合、前記個数情報により示される数ごとに、前記物理アドレスと前記表示アドレスとが予め対応付けて記録されている変換テーブルを用いて、取得された前記物理アドレスの前記表示アドレスへの変換を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記アドレス変換手段は、前記種別情報により示される種別が、正立型顕微鏡用または倒立型顕微鏡用のうちの他方である場合、取得された前記物理アドレスをそのまま前記表示アドレスとする
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記光学部材は対物レンズである
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理装置が設けられている
ことを特徴とする顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−79114(P2010−79114A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249397(P2008−249397)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】