説明

情報処理装置のHDD支持構造

【課題】筺体全面から着脱が容易で、耐震性を向上させた情報処理装置のHDD支持構造を提供することを目的とする。
【解決手段】筺体1は、その前面にスロット2を備え、基板を固定し、第1のコネクタ8と、第2のコネクタ9及びHDD4aとを一体で筺体1に固定するネジ穴を備えるHDD支持金具1aと、筺体1に固定された案内レール6とを備え、当該HDDを一体で固定するHDDトレイ4bと、HDDトレイ両端部を筐体前面に固定する一対の固定ネジ4cと、HDDトレイ4b上でHDD4aの両側部に固定され、筐体1の前面から挿入してスロット2後部に位置するHDD支持金具1aのネジ穴にネジ込みしてHDDトレイ4bを固定する一対のローレットネジ部4dとを備えるHDDユニット4とを備える。HDDユニット4を挿入方向の両端部を筐体1と一体に固定し、第1のコネクタと第2のコネクタと位置ずれを防止するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置のHDD支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
社会インフラの分野で使用されるコンピュータは、汎用のパソコンに求められる以上の頑健性、信頼性、及び保守の容易性が要求される。このような要求に答えるコンピュータとして産業用コンピュータがある。
【0003】
この産業用コンピュータの記憶装置としては、データの高速転送が可能なSATA(Serial Advanced Technology Attachment)及びSCSI(Small Computer System Interface)に基づいた規格で、さらに、筺体前面パネルから交換が可能なフロント交換タイプのHDD(Hard Disk Drive)ユニットが求められている。
【0004】
このフロント交換タイプのHDDユニットを備える産業用コンピュータの例を図2に示す。この産業用コンピュータ100の筺体1の正面部にはHDDユニット40の入れ替え用のスロット2が設けられている。
【0005】
HDD4aは、HDDトレイ4bに底面にて固定され、HDDトレイ4bと一体固定されたHDDユニット40としてスロット2に差し込まれ、案内レール6にガイドされて、正面ネジ部4cにて筐体1へ固定される。
【0006】
このHDDユニット40の取り付け構造の詳細を図3に示す。図3は、筺体1の側面、A−A’断面から矢印方向に見た側面図である。
【0007】
図3において、筺体1のスロット2の内部にはHDDトレイ4bを案内するための案内レール6がトレイの挿入方向に設置され、さらにスロット2の奥部にはコネクタ8を備えた基板7が、HDD4aの先端部に備えられたコネクタ9をHDDトレイ4に押し込んで嵌め合う位置に固定されている。
【0008】
このような構成においては、HDD4aと筺体1のコネクタ8との電気的な接続が、HDDトレイ4aを筐体1に取り付けることで実現できるようにしている。
【0009】
HDD4aの後端部のコネクタ9と基板7に固定されているコネクタ8とは、HDD4a本体の寸法公差、HDDトレイ4bの製造上の寸法公差、HDD4aをHDDトレイ4bに組み付けた際のHDDユニット40としての寸法公差、などの誤差要因を加味して設計する必要がある。
【0010】
そのため、HDD4aのコネクタ9と基板7のコネクタ8とを公差内で嵌合出来るように、実際の設計ではHDDトレイ4bと案内レール6との間には適度な隙間10を設けている。
【0011】
このような電気的接合部が嵌合しているコネクタ接続においては、HDDユニット40が振動した場合にこの電気的接合部が損傷しないようにするため、コネクタ接点間の相対位置を一定に保つ必要がある。
【0012】
そのため、夫々のコネクタの導体部分を挿脱方向に対して傾斜した傾斜面として成形し、HDDが本体に装着されるときに、相互の傾斜面が面接触状態に圧接するようコネクタを押圧し、HDDを押し込む力により、基板側のコネクタとHDD側のコネクタとが嵌合結合されるように構成した電気接続構造が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0013】
また、HDDとその取り付けフレームを剛体として一体化し、筺体の取り付けアングルとの間に防振ゴムを介して取り付ける構成の磁気ディスク装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3919494号公報
【特許文献2】特許第2511930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したような従来の産業用コンピュータ等の情報処理装置においては、HDDが情報処理装置の筐体と一体の剛体として固定されている場合と異なり、情報処理装置の外部に露出している筺体パネル面のみで固定されるため、筺体内部で隙間10が生じるのは構造上避けられない。
【0016】
この隙間10が存在する状態で外部から筺体全体に衝撃、振動が加えられると、案内レール6とHDDトレイ4bとの間で衝突現象が起こり、時には外部から与えられる加速度以上の衝撃力が発生する場合がある。
【0017】
HDD4aにとっては、衝撃力により内部のディスク及び読み取りヘッドの損傷や、HDD4a側のコネクタ9と筐体側のコネクタ8との相対変位が大きくなり、コネクタ導体(ピン)間の接触不良を引き起こしたりし、故障のなる可能性がある。
【0018】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された構成には、HDDが着脱可能な構成においてHDDの防振を行う技術は開示されていない。
【0019】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、筺体全面から着脱可能なHDDを備える情報処理装置において、取り付け、取り外しが容易で、さらに、耐震性を向上させた情報処理装置のHDD支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本実施例による情報処理装置のHDD支持構造は、情報処理装置の筺体内の基板に固定される第1のコネクタと、HDDに備える第2コネクタとを接続し、当該HDDを着脱可能に設けられる情報処理装置0のHDD支持構造であって、前記筺体は、その前面に前記HDDを挿入するスロットを備え、さらに、前記基板を固定し、前記第1のコネクタと、前記第2のコネクタ及びHDDとを一体で前記筺体に固定するネジ穴を備えるHDD支持金具と、前記スロットから前記HDDの着脱位置を案内する前記筺体に固定された案内レールと、を備え、前記HDDと、当該HDDを一体で固定するHDDトレイと、当該HDDトレイ両端部を前記筐体前面に固定する一対の固定ネジと、当該HDDトレイ上で前記HDDの両側部に固定され、前記筐体の前面から挿入して前記スロット後部に位置する前記HDD支持金具のネジ穴にネジ込みして当該HDDトレイを固定する一対のローレットネジ部と、を備えるHDDユニットと、を備え、前記HDDユニットを前記筐体前面に固定するとともに、ローレットネジ部の先端部を前記HDD支持金具のネジ穴にネジ込んで、当該HDDユニットを挿入方向の両端部を当該筐体と一体に固定し、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタと位置ずれを防止するように固定したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の情報処理装置のHDD支持構造図。
【図2】従来の情報処理装置の着脱構造の説明図。
【図3】従来の情報処理装置の支持構造の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施例の情報処理装置のHDD支持構造について図面を参照して説明する。図1は本実施例1の情報処理装置100のHDD支持構造を示し、図1の各部について図2及び図3のHDD支持構造と同じ部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0023】
図1に示すHDD支持構造が従来の支持構造と異なる点は、筐体1と一体に固定コネクタ8を備える基板7と、筐体1と一体に固定されるHDDユニット4とを長尺のローレットネジ部4dで一体に固定する構造を付加したことにある。
【0024】
図1は、HDDユニット4を筐体1内部に取り付けるとき、その挿入方向に対し図2に示す側面A−A’から見た部分断面図を示し、図1(b)は図1(a)のその部分平面図を示す。また、図1(a)の断面図は、図1(b)Z−Z’矢印方向から見た断面図に対応する。
【0025】
先ず、情報処理装置100のHDD支持構造の構成について説明する。本実施例のHDD支持構造は、筺体1内の基板7に固定される第1のコネクタ8と、HDD4aに備える第2コネクタ9とを接続し、当該HDD4aを着脱可能に設けられる。
【0026】
筺体1は、その前面にHDD4aを挿入するスロット2を備え、さらに、基板を固定し、第1のコネクタ8と、第2のコネクタ9及びHDD4aとを一体で筺体1に固定するネジ穴Msを備えるHDD支持金具1aと、スロット2からHDD4aの着脱位置を案内する筺体1に固定された案内レール6と、を備える。
【0027】
また、スロット2から着脱するHDDユニットは、HDD4aと、当該HDDを一体で固定するHDDトレイ4bと、当該HDDトレイ両端部を筐体1前面に固定する一対の固定ネジ4cとを備える。
【0028】
さらに、当該HDDトレイ4b上でHDD4aの両側部に固定され、筐体1の前面から挿入してスロット2後部に位置するHDD支持金具1aのネジ穴Msにネジ込みして当該HDDトレイ4bを固定する一対のローレットネジ部4dと、を備える。
【0029】
このように構成された情報処理装置のHDD支持構造に拠れば、HDDユニット4を筐体1前面に固定するとともに、ローレットネジ部4dの先端部をHDD支持金具1aのネジ穴にネジ込んで、当該HDDユニット4を挿入方向の両端部を当該筐体1と一体に固定する。
【0030】
ローレットネジ部4dは、詳細には、ローレットネジ本体4d1と、当該ローレットネジ本体4d1をHDD支持金具1aのネジ穴Mpにガイドするローレットガイドレール4d2と、を備え、ローレットネジ本体4d1は、頭部首部にバネ部Mhと、その先端部にネジ部Msを備える。
【0031】
また、ローレットガイドレール4d2は、パイプ材で成形したものが望ましい。
【0032】
このように構成された本実施例に拠れば、第1のコネクタと前記第2のコネクタと位置ずれを防止することができ、筐体1の全体に衝撃や振動が加わっても、案内レール6とHDDトレイ4bとの間での衝突が起きず、外部から与えられる加速度以上の衝撃力が発生する恐れが無い。
【0033】
また、特許文献2に開示されたような防振ゴムによる振動防止構成では、長期に使用した場合、弾性力の経時変化による防振特性の変化が予想されるが、本実施例に拠ればそのような恐れもない。
【0034】
さらに、防振ゴムの場合、その粘着力により着脱が容易でなくなる場合も予想されるが、本実施例に拠れば、ネジ固定であるので着脱が容易に行える効果もある。
【0035】
以上説明したように、本実施例に拠れば、筺体全面からの着脱が容易で、さらに、耐震性を向上させた情報処理装置のHDD支持構造を提供することができる。
【0036】
本発明の実施例を説明したが、これらの実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で,種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これらの実施例やその変形は、発明の要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明と均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 筺体
1a HDD支持金具
2 スロット
4、40 HDDユニット
4a HDD
4b HDDトレイ
4c 固定ネジ
4d ローレットネジ部
4d1 ローレットネジ本体
4d2 ローレットガイドレール
6 案内レール
7 基板
8 第1のコネクタ
9 第2のコネクタ
10 HDDトレイと案内レールとの間の隙間
100 情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置の筺体内の基板に固定される第1のコネクタと、HDDに備える第2コネクタとを接続し、当該HDDを着脱可能に設けられる情報処理装置のHDD支持構造であって、
前記筺体は、その前面に前記HDDを挿入するスロットを備え、さらに、前記基板を固定し、前記第1のコネクタと、前記第2のコネクタ及びHDDとを一体で前記筺体に固定するネジ穴を備えるHDD支持金具と、前記スロットから前記HDDの着脱位置を案内する前記筺体1に固定された案内レールと、
を備え、
前記HDDと、当該HDDを一体で固定するHDDトレイと、当該HDDトレイ両端部を前記筐体前面に固定する一対の固定ネジと、
当該HDDトレイ上で前記HDDの両側部に固定され、前記筐体の前面から挿入して前記スロット後部に位置する前記HDD支持金具のネジ穴にネジ込みして当該HDDトレイを固定する一対のローレットネジ部と、
を備えるHDDユニットと、
を備え、
前記HDDユニットを前記筐体前面に固定するとともに、ローレットネジ部の先端部を前記HDD支持金具のネジ穴にネジ込んで、当該HDDユニットを挿入方向の両端部を当該筐体と一体に固定し、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタと位置ずれを防止するように固定したことを特徴とする情報処理装置のHDD支持構造。
【請求項2】
前記ローレットネジ部は、ローレットネジ本体と、当該ローレットネジ本体を前記HDD支持金具のネジ穴にガイドするローレットガイドレールと、
を備え、
前記ローレットネジ本体は、頭部首部にバネ部と、その先端部にネジ部を備える請求項1に記載の情報処理装置のHDD支持構造。
【請求項3】
前記ローレットガイドレールは、パイプ材で成形したものである請求項1に記載の情報処理装置のHDD支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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