説明

情報処理装置及び方法、並びに、プログラム

【課題】3D酔いを防止する。
【解決手段】生体信号検出部17は視聴者の生体信号を検出し、送受信部15を介して検出した生体信号を生体信号処理部22に送信する。生体信号処理部22は、受信した生体信号に基づいて、視聴者が3D酔いの状態であるか否かを判定する。3D再生部13は、視聴者が3D酔いの状態であると判定した場合、3D効果を減衰させる。視聴者が3D酔いの状態ではなくなった(回復した)と判定すると、3D再生部13は、3D効果を標準の状態に戻す。本発明は、3D立体映像装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び方法、並びに、プログラムに関し、特に、3D酔いを防止することを可能にする情報処理装置及び方法、並びに、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3D(3Dimensions)立体映像を鑑賞することが可能なシステムが普及しつつある。
【0003】
しかしながら、3D立体映像を視聴中の視聴者が、気分が悪くなるという症状(以下、3D酔いと称する)を発症することがあった。このような場合、視聴者は、3D酔いの状態となっても、そのまま見続けるか、視聴者自らの判断で視聴を中止していた。
【0004】
特許文献1には、バーチャルリアリティシステム(以下、VRシステムと称する)において、視聴者の生体信号を取得し、その生体信号から視聴者が「酔い」の状態にあるかを確認する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ウエアラブルディスプレイにおいて、画像情報を一旦内部記憶デバイスに取り込み、画像の動きに合わせて画像情報を加工し、加工した画像情報を視聴者に見せることで、「酔い」を軽減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−339490号公報
【特許文献2】特再WO 04/029693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、上述したように、VRシステムに適用される技術であり、視聴者が「酔い」の状態になった場合に、視聴者が座る椅子の移動速度や回転速度を軽減したり、画像の輝度及びコントラストを軽減させる技術である。このため、特許文献1に記載の技術は、移動や回転を伴わない3Dシステムには直接適用できない。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、予め酔いを軽減するための画像情報を提供する技術である。このため、通常の画像を視聴している視聴者が、視聴中に3D酔いの状態になった場合には適用できない。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、3D酔いを防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面の情報処理装置は、3Dコンテンツを再生する再生手段と、前記3Dコンテンツを視聴する視聴者の生体信号を検出する検出手段とを備え、前記再生手段は、前記3Dコンテンツ再生時の前記視聴者の生体信号が閾値を超えた場合、3D効果を減衰する。
【0011】
前記視聴者の生体信号の標準値と、視聴者の特徴を示す視聴者情報を関連付けて記憶する記憶手段をさらに備え、前記再生手段は、前記3Dコンテンツが記憶されている3Dコンテンツ記憶媒体にあらかじめ記憶されている、前記3Dコンテンツの映像信号と音声信号のうちの少なくとも一方の変化のパターンが関連づけられた視聴パターンに基づいて前記閾値を可変することができる。
【0012】
前記視聴者情報は、少なくとも視聴者の年齢を含み、前記再生手段は、前記3Dコンテンツを視聴する視聴者が複数いる場合であって、前記閾値を超えた前記視聴者が、所定の年齢以下であるとき、その視聴者を優先して3D効果を減衰することができる。
【0013】
前記再生手段は、さらに前記閾値を前記3Dコンテンツの再生時間の経過により可変することができる。
【0014】
前記再生手段は、前記視聴者情報、前記視聴者の生体信号、及び前記3Dコンテンツの再生時間を関連付けた情報を、ネットワークを介して送信することができる。
【0015】
本発明の一側面である情報処理装置の情報処理方法とプログラムのそれぞれは、上述した本発明の情報処理装置に対応する方法とプログラムのそれぞれである。
【0016】
本発明の一側面においては、3Dコンテンツが再生され、前記3Dコンテンツを視聴する視聴者の生体情報が検出され、前記3Dコンテンツ再生時の前記視聴者の生体信号が閾値を超えた場合、3D効果が減衰される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、3D酔いを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用された情報処理装置の一実施の形態としての3D立体映像装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】3Dコンテンツの再生時間と視聴者の3D酔いとの関係について説明する図である。
【図3】視聴者情報の一例を示す図である。
【図4】視聴パターンと酔い検出閾値との関係について説明する図である。
【図5】酔い検出閾値の設定の一例を示す図である。
【図6】本発明が適用された情報処理方法の一例の動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明が適用された情報処理装置を制御するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[3D立体映像装置の構成例]
図1は、本発明が適用された情報処理装置の一実施の形態としての3D立体映像装置の構成例を示すブロック図である。
【0020】
なお、3D立体映像の方式には、視聴者が偏光メガネや液晶シャッタ式メガネ等の特殊なメガネを装着して、両目に視差をつけた画像を提示する方式がある。また、3D立体映像の方式には、裸眼立体ディスプレイを用いる方式がある。裸眼立体ディスプレイは、両目に視差を与えるディスプレイであり、例えば、左右の目に別々の光線を入射させる視差障壁を利用する方式である。
【0021】
本実施形態では、3D立体映像の方式として任意の方式を採用することができるが、液晶シャッタ式メガネを使用した方式が採用されているものとして、以下、説明する。
【0022】
図1の例の3D立体映像装置1は、3D記憶媒体12、3D再生部13、3D表示部14、送受信部15、3Dメガネ16A乃至16N及び生体信号検出部17A乃至17Nを含むように構成されている。この3D立体映像装置1は、必要に応じて、インターネットに代表されるネットワーク11に接続される。
【0023】
3D記憶媒体12は、例えばBD(Blu-Ray(登録商標) Disc)で構成され、3D立体映像信号と対応する音声信号を含むコンテンツ(以下、3Dコンテンツと称する)を記憶している。
【0024】
3D再生部13は、3D記憶媒体12に記憶されている3Dコンテンツを読み出して再生し、3D表示部14に表示させる。3D再生部13は、記憶部21、生体信号処理部22及び酔い検出閾値設定部23を含むように構成されている。記憶部21、生体信号処理部22及び酔い検出閾値設定部23については後述する。
【0025】
3D表示部14は、3D再生部13により再生された3Dコンテンツを表示する。また、3D表示部14は、送受信部15を介して、3Dコンテンツに応じて3Dメガネ16A乃至16N(Nは1以上の整数)に映像信号に同期した制御信号を送信する。即ち、3D表示部14は、3Dメガネ16A乃至16Nに対して、映像信号に応じて左右の目に映る映像が交互に遮蔽されるように液晶シャッタを駆動する制御信号を送信する。このようにして、視差のある左右の映像が交互に視聴者の左右の目に入射されることにより、視聴者は3D立体映像を視認することができる。
【0026】
送受信部15は、3D表示部14から受信した制御信号を、3Dメガネ16A乃至16Nに送信する。なお、送受信部15には、図示せぬ赤外線発生装置または電波送信装置が組み込まれており、制御信号は赤外線または電波により送信される。
【0027】
また、送受信部15には、赤外線または電波を検出する、図示せぬ検出部が組み込まれている。これにより、送受信部15は、検出部により生体信号検出部17A乃至17N(Nは1以上の整数)から出力された視聴者の生体信号を受信する。さらに、送受信部15は、受信した視聴者の生体信号を、3D再生部13に出力する。
【0028】
これらの生体信号や制御信号の送受信を行うために、例えば、特開2007-235880号公報に開示されているシステムを利用することができる。このシステムでは、情報を伝送する端末間で、固有情報を含む光ビームを空間に照射することでデータ通信が行われる。
【0029】
3Dメガネ16A乃至16Nは、送受信部15から、映像信号に同期した制御信号を受信する。なお、3Dメガネ16A乃至16Nは、3Dコンテンツを視聴している視聴者それぞれに装着されるメガネである。よって、3Dメガネ16A乃至16Nは、3Dコンテンツを同時に視聴する視聴者の数だけ用意される。以下、3Dメガネ16A乃至16Nを個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて、3Dメガネ16と称する。
【0030】
生体信号検出部17A乃至17Nは、3Dコンテンツを視聴している視聴者それぞれの生体信号を検出する。生体信号検出部17A乃至17Nには、送受信部15と同様に、図示せぬ赤外線発生装置または電波送信装置が組み込まれている。生体信号検出部17A乃至17Nは、検出した生体信号を、赤外線または電波により送受信部15に送信する。
【0031】
生体信号検出部17A乃至17Nは、3Dコンテンツを視聴している視聴者それぞれに装着される。よって、3Dメガネ16と同様に、生体信号検出部17A乃至17Nは、3Dコンテンツを同時に視聴する視聴者の数だけ用意される。以下、生体信号検出部17A乃至17Nを個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて、生体信号検出部17と称する。
【0032】
また、3Dメガネ16と生体信号検出部17は、一人の視聴者に関連付けられている。即ち、例えばある視聴者Aは、3Dメガネ16Aと生体信号検出部17Aを装着している。またある視聴者Bは、3Dメガネ16Bと生体信号検出部17Bを装着している。このように、1つの3Dメガネ16と、1つの生体信号検出部17が、1セットとして1人の視聴者に装着される。
【0033】
生体信号検出部17は、例えば、特許文献1に記載されている生体信号を検出する。
【0034】
即ち、生体信号検出部17が検出する信号の第1の例としては、視聴者の呼吸を計測することによる、視聴者の呼吸数、呼吸の大きさ、呼吸の不規則性が挙げられる。
【0035】
生体信号検出部17が検出する信号の第2の例としては、視聴者の重心を計測することにより得られる、重心動揺の大きさが挙げられる。
【0036】
生体信号検出部17が検出する信号の第3の例としては、視聴者の心拍を計測することにより得られる、瞬時心拍数の平均値、心拍変動中の呼吸成分、及び心拍変動中のマイヤーウエーブ性成分の大きさが挙げられる。
【0037】
生体信号検出部17が検出する信号の第4の例としては、視聴者の心電図を計測することにより得られる、基線変動の特定周波数成分の大きさが挙げられる。
【0038】
なお、3Dメガネ16と、生体信号検出部17は、視聴者にそれぞれ別個に装着される構成とされてもよいし、生体信号検出部17を内蔵した3Dメガネ16として、一体的構成とされてもよい。生体信号検出部17を内蔵した3Dメガネ16とした場合、容易に取得可能な生体信号としては、例えば、視聴者の血流量の変化や発汗の状態、加速度センサーによる、頭部運動(頭部の重心動揺)が挙げられる。
【0039】
記憶部21は、3Dメガネ16及び生体信号検出部17を装着する、各視聴者の特徴を示す情報を記憶している。以下、記憶部21が記憶している各視聴者の情報を、視聴者情報と称する。視聴者情報の具体的な例については、図3を参照して後述する。
【0040】
なお、視聴者情報は、例えば3D再生部13の図示せぬリモートコントローラ等の入力手段により、あらかじめ入力されている。
【0041】
また、記憶部21は、生体信号検出部17から送受信部15を介して受信した、視聴者の標準の生体信号を記憶する。ここでいう標準の生体信号とは、視聴者が3Dコンテンツを視聴していない状態における生体信号をいう。即ち、記憶部21は、3Dコンテンツが再生される前に、あらかじめ3Dメガネ16及び生体信号検出部17を装着する視聴者の視聴者情報と、標準の生体信号を関連付けて記憶している。
【0042】
生体信号処理部22は、生体信号検出部17から、視聴者の生体信号を送受信部15を介して受信する。そして、生体信号処理部22は、受信した視聴者の生体信号を解析することにより、各視聴者が3D酔いの状態であるか否かを判定する。具体的には例えば、生体信号として頭部運動を採用した場合、生体信号処理部22は、生体信号検出部17から得られる頭部運動の情報を常時監視する。そして、単位時間当たりの頭部運動の大きさが所定の閾値を超えると、生体信号処理部22は、視聴者が3D酔いの状態であると判定する。
【0043】
酔い検出閾値設定部23は、視聴者が3D酔いの状態であることを検出するために、生体信号と比較する閾値を設定する。即ち、3Dコンテンツを視聴していない場合の視聴者の生体信号を標準値として、標準値より所定の値だけ大きい値が、閾値として設定される。以下、この閾値を、酔い検出閾値と称する。上述したように、生体信号処理部22は、酔い検出閾値設定部23が設定した酔い検出閾値に基づいて、視聴者が3D酔いの状態であるか否かを判定する。
【0044】
視聴者が3D酔いの状態であると判定された場合、3D再生部13は、3D表示部14に表示する3Dコンテンツの3D効果(3D映像の飛び出し量)を減衰させる。または、視聴者が3D酔いの状態であると判定された場合、3D再生部13は、3Dコンテンツの映像信号を2D(2Dimensions)映像信号に切り替えたり、3D映像の表示を一時停止する。このような、3D効果の減衰や、3Dコンテンツの映像信号の2D映像信号への切り替え、及び3D映像の表示の一時停止等の措置を、以下、3D酔い軽減措置と称する。
【0045】
また、3D再生部13は、ネットワーク11と接続されている。これにより、3D再生部13は、例えば、ネットワーク11を介して、3Dコンテンツの制作者に視聴者情報や、視聴者情報に関連付けられた3Dコンテンツ視聴時の生体信号、及び3D酔いの状態等の情報を送信することができる。
【0046】
以上、図1を参照して、本発明が適用された情報処理装置の一実施の形態としての3D立体映像装置1の構成例について説明した。
【0047】
[3D酔い検出の例]
図2は、3Dコンテンツの映像信号及び音声信号の変化と、視聴者の生体信号の変化について説明する図である。
【0048】
図2には、横軸として3Dコンテンツの再生時間が示されている。即ち、ある3Dコンテンツが再生される場合、時刻tSから3Dコンテンツの再生がスタートし、時刻tFに3Dコンテンツの再生が終了する。
【0049】
図2の上段のグラフは、3Dコンテンツの再生時間と、3Dコンテンツの映像信号の単位時間当たりの明るさのレベル差(変化率)との関係を示している。なお、図2の上段のグラフの縦軸は、映像信号の輝度の変化率としてもよい。
【0050】
図2の中段のグラフは、3Dコンテンツの再生時間と、3Dコンテンツの音声信号の変化率との関係を示している。
【0051】
図2の下段のグラフは、3Dコンテンツの再生時間と、視聴者の生体信号の変化との関係を示している。なお、視聴者の生体信号の変化は、図2の下段のグラフにおいては、縦軸方向の高さが大きくなる程、視聴者が酔っている状態であることを意味する。
【0052】
図2の下段のグラフにはさらに、3Dコンテンツを視聴している複数の視聴者についての生体信号が示されている。
【0053】
以下、図3を参照して、図2の下段のグラフに示されている視聴者A乃至Dの視聴者情報について説明する。
【0054】
なお、上述したように、図3に示された視聴者情報は、記憶部21に記憶されている。
【0055】
図3において、視聴者Aは、3Dメガネ16A及び生体信号検出部17Aを装着している視聴者であり、視聴者Aは、45歳の男性である。
【0056】
視聴者Bは、3Dメガネ16B及び生体信号検出部17Bを装着している視聴者であり、視聴者Bは、43歳の女性である。
【0057】
視聴者Cは、3Dメガネ16C及び生体信号検出部17Cを装着している視聴者であり、視聴者Cは、5歳の男性である。
【0058】
視聴者Dは、3Dメガネ16D及び生体信号検出部17Dを装着している視聴者であり、視聴者Dは、14歳の女性である。
【0059】
図2の時刻t1及び時刻t3付近において、視聴者A乃至Dはそれぞれ、生体信号の値が大きい状態である。しかしながら、時刻t1及び時刻t3付近においては、映像信号の変化率、音声信号の変化率も大きい。即ち、時刻t1及び時刻t3付近は、例えば、爆発シーンなど、この3Dコンテンツの盛り上がりシーンであると推察される。
【0060】
このようなシーンにおいては、3Dコンテンツの3D効果が高くなる傾向がある。また、このようなシーンにおいては、視聴者は興奮状態になる傾向がある。従って、このようなシーンにおいては、酔い検出閾値設定部23は、酔い検出閾値をより大きい値に設定する。即ち、生体信号処理部22は、他のシーンより各視聴者の生体信号の値が大きい状態でも、3D酔いの状態ではないと判定する。よって、3D再生部13は、3D酔い軽減措置をとり難くなる。
【0061】
時刻t2及び時刻t4付近において、映像信号の変化率、音声信号の変化率は小さい状態となっている。つまり、時刻t2及び時刻t4付近においては、3Dコンテンツは、特に盛り上がりシーンではないと推察される。しかしながら、視聴者A,Bの生体信号の値は小さいが、視聴者C,Dの生体信号の値は大きい状態となっている。上述したように、視聴者Aは45歳男性、視聴者Bは43歳女性、視聴者Cは5歳男性、視聴者Dは14歳女性である。換言すると、時刻t2付近においては、成年である視聴者A,Bは3D酔いの状態でなく、未成年者である視聴者C,Dは3D酔いの状態である。また、時刻t4付近においては、視聴者Cのみが、3D酔いの状態である。このような場合、3D再生部13は、例えば未成年者である視聴者C,Dの生体信号の値を優先して、3D酔い軽減措置をとることもできる。
【0062】
時刻t5において、映像信号の変化率、音声信号の変化率は小さい状態となっている。よって、時刻t5においては、3Dコンテンツは、特に盛り上がりシーンではないと推察される。しかしながら、視聴者A乃至Dはそれぞれ、生体信号の値が大きい状態である。このような場合、3D再生部13は、3D酔い軽減措置をとる。
【0063】
このように、酔い検出閾値の制御を的確に行うためには、3D記憶媒体12に、あらかじめ3Dコンテンツの再生時間と盛り上がりシーン等の情報を関連付けて記憶させておくことが好適である。3Dコンテンツの盛り上がりシーンの再生位置を表す情報を、以下、視聴パターンと称する。
【0064】
[視聴パターンを利用した3D酔い検出の例]
次に、図4を参照して、視聴パターンを利用した酔い検出閾値の制御について説明する。
【0065】
図2と同様に、図4には、横軸として3Dコンテンツの再生時間が示されている。即ち、ある3Dコンテンツが再生される場合、時刻tSから3Dコンテンツの再生がスタートし、時刻tFに3Dコンテンツの再生が終了する。
【0066】
図4の上段のグラフには、3Dコンテンツの再生時間と視聴者の生体信号との関係が示されている。ここでは、一例として、図2及び図3で説明した視聴者Aの生体信号が、線Aとして示されている。
【0067】
また、図4の上段のグラフには、視聴者Aの生体信号の標準値が線Bとして示されている。さらに、図4の上段のグラフには、視聴者Aの生体信号の標準値より所定の値だけ大きい値となるように設定された酔い検出閾値が、線Cとして示されている。
【0068】
視聴者Aの生体信号の値(線A)は、時刻t1、時刻t3及び時刻t5付近において、酔い検出閾値(線C)を超えている。
【0069】
図4の中段のグラフには、3Dコンテンツの再生時間と3Dコンテンツの視聴パターンとの関係が示されている。なお、図4の中段のグラフにおいては、線Dの縦軸方向の高さが大きくなっている範囲が盛り上がりシーンを表している。即ち、線Dは、映像信号の明るさ(または輝度)の変化率と音声信号の変化率のうちの少なくとも一方が、所定の値より大きい区間を表している。
【0070】
図4の下段のグラフには、3Dコンテンツの再生時間と、視聴パターンに基づき修正した酔い検出閾値との関係が示されている。
【0071】
図4の下段のグラフの線Eは、酔い検出閾値(線C)を、視聴パターン(線D)に基づき修正した結果得られた酔い検出閾値を表している。以下、この視聴パターンに基づき修正した酔い検出閾値を、修正酔い検出閾値と称する。
【0072】
具体的には例えば、時刻t1及び時刻t3付近において、図4の上段のグラフにおいては、視聴者Aの生体信号(線A)は、酔い検出閾値(線C)を超えている。しかしながら修正酔い検出閾値(線E)と比較すると、視聴者Aの生体信号(線A)は修正酔い検出閾値(線E)以下である。よって、時刻t1及び時刻t3付近においては、生体信号検出部22は、視聴者Aは3D酔いの状態ではないと判定する。
【0073】
時刻t5付近において、視聴者Aの生体信号(線A)は修正酔い検出閾値(線E)を超えている。よって、時刻t5付近においては、生体信号検出部22は、視聴者Aが3D酔いの状態であると判定する。
【0074】
このようにして、視聴パターンに基づき修正した修正酔い検出閾値を用いることにより、本実施形態は、3Dコンテンツの内容に適合した3D酔い防止策を視聴者に提供することが可能となる。
【0075】
[3D酔い軽減措置の判断の例]
生体信号処理部22が3D酔いの状態となった視聴者を検出した場合、3D酔い軽減措置をとるか否かの判断は、例えば、次のようにすることができる。
【0076】
第1の例として、3D再生部13は、上述したように、複数の視聴者のうち、所定の年齢以下(例えば、未成年者)の視聴者の3D酔いの状態を優先して、3D酔い軽減措置をとる。これにより、視神経や脳が未発達な子供への、3D立体映像視聴による悪影響を低減することができる。
【0077】
第2の例として、3D再生部13は、複数の視聴者のうち、一人でも3D酔いの状態となれば、3D酔い軽減措置をとる。
【0078】
第3の例として、3D再生部13は、複数の視聴者のうち、視聴者全体の所定の割合(例えば、50%)の視聴者が3D酔いの状態となれば、3D酔い軽減措置をとる。なお、この所定の割合については、視聴者が任意に設定可能な値とすることができる。
【0079】
第4の例として、3D再生部13は、複数の視聴者のうち、特定の視聴者が3D酔いの状態となれば、3D酔い軽減措置をとる。この場合、特定の視聴者を、あらかじめ視聴者情報として記憶部21に記憶しておく。このようにして、例えば持病のある視聴者や、3D酔いを生じやすい体質の視聴者に対して配慮した3Dコンテンツを提供することができる。
【0080】
勿論、各視聴者の視聴状態を個別に制御できる場合には、3D酔いが検出された視聴者のみに対して3D酔い軽減措置がとられる。
【0081】
[酔い検出閾値の設定の例]
次に、図5を参照して、酔い検出閾値の設定の一例について説明する。
【0082】
図5は3Dコンテンツの再生時間と酔い検出閾値との関係を示す図である。
【0083】
図5において、横軸は3Dコンテンツの再生時間を示している。即ち、ある3Dコンテンツを再生する場合、時刻tSから3Dコンテンツの再生がスタートし、時刻tFに3Dコンテンツの再生が終了する。また、縦軸は、酔い検出閾値を示している。
【0084】
例えば、酔い検出閾値は、図5中に線Fとして示されるように、3Dコンテンツが再生されてから終了するまで、一定の値としてもよい。
【0085】
しかしながら、例えば視聴者は、特に小さい子供などは、長時間の視聴により疲労を感じる場合がある。従って、このような場合には、例えば図5中に線Gとして示されるように、3Dコンテンツが再生されてから終了するまで、徐々に酔い検出閾値をあげていく、という制御も可能である。
【0086】
また、3Dコンテンツを記憶する3D記憶媒体12に、視聴年齢制限(パレンタル制限)の情報が含まれている場合がある。この場合、本実施形態においては、その視聴年齢制限を利用して酔い検出閾値を制御することも可能である。
【0087】
[3D立体映像装置の処理の説明]
次に、図1の3D立体映像装置1において、視聴者の3D酔いの状態を監視し、3D酔いの状態に応じて3D軽減措置をとる処理について説明する。以下、このような処理を、3D酔い監視処理と称する。
【0088】
図6は、3D酔い監視処理の一例を説明するフローチャートである。
【0089】
なお、3D酔い監視処理の前処理として、3Dメガネ16及び生体信号検出部17を装着するそれぞれの視聴者の視聴者情報が記憶部21に記憶されている。
【0090】
ステップS1において、3D再生部13は、視聴者の生体信号の標準値を、記憶部21に記憶する。即ち、生体信号処理部22が生体信号検出部17から送受信部15を介して取得した非3D映像部分おける視聴者の生体信号を標準値として、3D再生部13が記憶部21に記憶する。なお、非3D映像部分とは、例えば、3D表示部14のスタートアップ画面とすることができる。
【0091】
ステップS2において、酔い検出閾値設定部23は、視聴者の酔い検出閾値を設定する。具体的には、視聴者の生体信号の標準値より所定の値だけ大きい値が、酔い検出閾値として設定される。
【0092】
ステップS3において、3D再生部13は、視聴者の生体信号を収集する。即ち、生体信号検出部17が生体信号をポーリングにより常時検出し、その結果を生体信号処理部22に送受信部15を介して送信する。このようにして、生体信号処理部22は、各視聴者の生体信号を収集する。
【0093】
ステップS4において、3D再生部13は、3Dコンテンツが再生中であるか否かを判定する。
【0094】
3Dコンテンツが再生中でない場合、ステップS4においてNOであると判定されて、3D酔い監視処理は終了する。
【0095】
これに対して、3Dコンテンツが再生中である場合、ステップS4においてYESであると判定されて、処理はステップS5に進む。
【0096】
即ち、3D再生部13が、3Dコンテンツが再生中でないと判定するまで、換言すると、3Dコンテンツの再生が終了するまで、ステップS3乃至S8のループ処理が繰り返される。
【0097】
ステップS5において、生体信号処理部22は、視聴者の生体信号が、修正酔い検出閾値以下であるか否かを判定する。生体信号処理部22が、視聴者の生体信号が修正酔い検出閾値以下であると判定した場合、ステップS5においてYESであると判定されて、処理はステップS3に戻る。即ち、生体信号処理部22が、視聴者が3D酔いの状態であると判定するまで、ステップS3乃至S5のループ処理が繰り返される。
【0098】
これに対して、生体信号処理部22が、視聴者の生体信号が修正酔い検出閾値以下でないと判定した場合、ステップS5においてNOであると判定されて、処理はステップS6に進む。
【0099】
ステップS6において、3D再生部13は、3D酔い軽減措置をとる。具体的には例えば、3D表示部14に表示する3D効果を減衰させるか、3D表示部14の表示を2Dに切り替えるか、あるいは、再生中の3D映像の表示を一時停止する措置がとられる。
【0100】
ステップS7において、生体信号処理部22は、視聴者の生体信号が修正酔い検出閾値以下に戻ったか否かを判定する。視聴者の生体信号が修正酔い検出閾値以下に戻っていない場合、ステップS7においてNOであると判定されて、処理はステップS6に戻る。即ち、生体信号処理部22が、視聴者の生体信号が修正酔い検出閾値以下に戻ったと判定するまで、ステップS6,S7のループ処理が繰り返される。
【0101】
これに対して、視聴者の生体信号が修正酔い検出閾値以下に戻った場合、ステップS7においてYESであると判定されて、処理はステップS8に進む。
【0102】
ステップS8において、3D再生部13は、3D軽減措置を解除し、処理はステップS3に戻る。
【0103】
このようにして、再度視聴者の生体信号を常時収集する処理に戻り、ステップS4において、3Dコンテンツが再生中でないと判定されるまで、3D酔い監視処理が継続される。
【0104】
以上、図6を参照して、図1の3D立体映像装置1における3D酔い監視処理について説明した。
【0105】
上述したように、本実施形態においては、3D立体映像の方式として液晶シャッタ式メガネを使用した方式を例として説明した。しかしながら、本発明は、液晶シャッタ式メガネを使用した3D立体映像の方式に限るものでない。即ち、本発明は、視聴者の生体信号を検出するシステムがあればよく、偏光メガネ等の特殊なメガネを使用する方式は勿論、裸眼立体ディスプレイを使用する方式にも適用可能である。
【0106】
また、本実施形態においては、3Dコンテンツは、3D記憶媒体12に記憶されているものとして説明した。しかしながら、本発明は、3Dコンテンツが、放送やネットワークを介して配信される場合にも適用可能である。
【0107】
以上説明した本発明が適用された情報処理装置によれば、以下の効果を奏することが可能となる。
【0108】
本発明が適用された情報処理装置によれば、視聴者の生体信号を検出することによって、視聴者が3D酔いの状態となった場合に、速やかに3D酔いを軽減する措置をとることができる。これにより、視聴者が3D酔いを自覚していない場合にも、3D酔いを軽減する措置をとることができる。また、本発明が適用された情報処理装置によれば、視聴者が3D酔いの状態から標準の状態に回復した場合は、速やかに3D酔いを軽減する措置を解除することができる。
【0109】
また、本発明が適用された情報処理装置によれば、3Dコンテンツの視聴パターンと視聴者情報、視聴者の生体信号を関連付けた情報を、ネットワーク11を介してコンテンツ制作者が収集することも可能である。このようにして、3Dコンテンツ制作者は、3Dコンテンツの各シーンにおける視聴者の状態を知ることができ、今後の3Dコンテンツ制作に活用することができる。
【0110】
また、本発明が適用された情報処理装置によれば、複数の視聴者が同時に3Dコンテンツを視聴している場合、例えば、子供からの3D酔いの状態を優先し、3D酔い軽減措置をとることができる。これにより、3D立体映像の視聴による、子供の脳や視神経の発達に対する悪影響を低減させることができる。
【0111】
また、本発明が適用された情報処理装置によれば、3Dコンテンツの再生時間の経過に伴い、酔い検出閾値を可変させることができる。これにより、長時間の視聴により疲労を感じる視聴者に対しても、快適な3Dコンテンツ視聴環境を提供することができる。
【0112】
なお、本明細書において、システムとは、複数の装置や処理部により構成される装置全体を表すものである。
【0113】
また、本発明は、BDに限定されるものではなく、光ディスク、光磁気ディスク、テープメディア、フラッシュメモリメディア等の記憶媒体のコンテンツを再生する機能を有する各種の情報処理装置に適用可能である。
【0114】
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0115】
図7は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0116】
コンピュータにおいて、CPU201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
【0117】
バス204には、さらに、入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、入力部206、出力部207、記憶部208、通信部209、及びドライブ210、及びリムーバブルメディア211が接続されている。
【0118】
入力部206は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部207は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部208は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部209は、ネットワークインターフェースなどよりなる。ドライブ210は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア211を駆動する。
【0119】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記憶部208に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0120】
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア211に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0121】
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア210をドライブ210に装着することにより、入出力インタフェース205を介して、記憶部208にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記憶部208にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記憶部208に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0122】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【符号の説明】
【0123】
1 3D立体映像装置, 11 ネットワーク, 12 3D記憶媒体, 13 3D再生部, 14 3D表示部, 15 送受信部, 16A乃至16N 3Dメガネ, 17A乃至17N 生体信号検出部, 21 記憶部, 22 生体信号処理部, 23 酔い検出閾値設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dコンテンツを再生する再生手段と、
前記3Dコンテンツを視聴する視聴者の生体信号を検出する検出手段と
を備え、
前記再生手段は、前記3Dコンテンツ再生時の前記視聴者の生体信号が閾値を超えた場合、3D効果を減衰する
情報処理装置。
【請求項2】
前記視聴者の生体信号の標準値と、視聴者の特徴を示す視聴者情報を関連付けて記憶する記憶手段をさらに備え、
前記再生手段は、前記3Dコンテンツが記憶されている3Dコンテンツ記憶媒体にあらかじめ記憶されている、前記3Dコンテンツの映像信号と音声信号のうちの少なくとも一方の変化のパターンが関連づけられた視聴パターンに基づいて前記閾値を可変する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記視聴者情報は、少なくとも視聴者の年齢を含み、
前記再生手段は、前記3Dコンテンツを視聴する視聴者が複数いる場合であって、前記閾値を超えた前記視聴者が、所定の年齢以下であるとき、その視聴者を優先して3D効果を減衰する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記再生手段は、さらに前記閾値を前記3Dコンテンツの再生時間の経過により可変する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記再生手段は、前記視聴者情報、前記視聴者の生体信号、及び前記3Dコンテンツの再生時間を関連付けた情報を、ネットワークを介して送信する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
再生手段と、
検出手段と
を備える情報処理装置の情報処理方法であって、
前記再生手段は、3Dコンテンツを再生し、
前記検出手段は、前記3Dコンテンツを視聴する視聴者の生体信号を検出し、
前記再生手段は、前記3Dコンテンツ再生時の前記視聴者の生体信号が閾値を超えた場合、3D効果を減衰する
情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
3Dコンテンツを再生する再生手段と、
前記3Dコンテンツを視聴する視聴者の生体信号を検出する検出手段として機能させるとともに、
前記再生手段は、前記3Dコンテンツ再生時の前記視聴者の生体信号が閾値を超えた場合、3D効果を減衰する機能を実行させる
ためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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