情報処理装置
【課題】シミュレーション時の見通し判定に用いるデータ量を削減し、見通し判定における計算負荷及び計算時間を低減する。
【解決手段】テーブル601には、方位角が所定の刻み幅で示されるとともに、方位角の刻みごとに、観測地点から目標を観測する際に必要となる最低仰角の値が示される。最低仰角の値は、観測地点の周囲の地形に基づきテーブル作成部400により方位角の刻みごとに導出された値である。方位角・仰角算出部301が、観測地点と目標との方位角の値及び仰角の値を計算し、テーブルデータ取得部302が方位角・仰角算出部301により算出された方位角の値に対応する最低仰角値をテーブル601から取得し、見通し判定部303が、方位角・仰角算出部301により算出された仰角値とテーブル601から取得した最低仰角値とを比較し、算出仰角が最低仰角値以上であれば、観測地点から目標が見通せると判定する。
【解決手段】テーブル601には、方位角が所定の刻み幅で示されるとともに、方位角の刻みごとに、観測地点から目標を観測する際に必要となる最低仰角の値が示される。最低仰角の値は、観測地点の周囲の地形に基づきテーブル作成部400により方位角の刻みごとに導出された値である。方位角・仰角算出部301が、観測地点と目標との方位角の値及び仰角の値を計算し、テーブルデータ取得部302が方位角・仰角算出部301により算出された方位角の値に対応する最低仰角値をテーブル601から取得し、見通し判定部303が、方位角・仰角算出部301により算出された仰角値とテーブル601から取得した最低仰角値とを比較し、算出仰角が最低仰角値以上であれば、観測地点から目標が見通せると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション実行時の見通し計算に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、観測地点と目標との間の見通し判定についてはCompact Terrain Database(CTDB: 非特許文献1を参照)が利用されている。
CTDBは地形をメッシュに分け、観測地点のメッシュ位置と目標となるメッシュ位置をキー値とし、そのときの仰角値をデータベースとして持ち、見通し計算の際には、データベースに保持している仰角値を利用するものである。
【0003】
CTDBでは、図15に示すように、地形をメッシュに分け、観測地点から各メッシュに対応する地点を観測する際の仰角値をメッシュごとに保持している。
図15において、メッシュの格子点に示されている円柱の高さが、各格子点に対応する地点と観測地点との高度差に相当し、観測地点と各円柱の上面との仰角値が観測地点から各地点を観測する際の仰角値に相当する。
つまり、CTDBでは、観測地点から各地点を観測する際の仰角値をメッシュごとにデータベースに記録している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Michael D. P. William and William J. G., 2004, JDMS, Vol.1, Issue 1, Page 43−57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CTDBでは、上記のように、シミュレーション対象領域において緯度経度メッシュにて仰角値を持つので大容量のデータを持つ必要があるという課題がある。
また、大容量のデータを用いて見通し計算を行うため、見通し判定における計算負荷及び計算時間が多大であるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決することを主な目的とし、見通し判定に用いるデータ量を削減し、見通し判定における計算負荷及び計算時間を低減することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る情報処理装置は、
特定の観測位置から目標を見通せるか否かを判定する情報処理装置であって、
所定の刻み幅で方位角を示すとともに、前記特定の観測位置の周囲の地形に基づき方位角の刻みごとに導出された目標の見通しに必要な前記特定の観測位置における仰角の値を制限仰角値として方位角の刻みごとに示す制限仰角情報を記憶する制限仰角情報記憶部と、
前記特定の観測位置と特定の目標との方位角の値と、前記特定の観測位置と前記特定の目標との仰角の値を算出する方位角・仰角算出部と、
前記方位角・仰角算出部により算出された方位角の値に対応する制限仰角値と前記方位角・仰角算出部により算出された算出仰角値とを比較して、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せるか否かを判定する見通し判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、観測位置からの見通しに必要とされる仰角値のみを持つことにより保持するデータ量が少量ですみ、記憶領域を有効に利用することができ、また、算出仰角値と制限仰角値との比較で見通し判定が行えるので、見通し判定における計算負荷及び計算時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る情報処理装置の構成例を示す図。
【図2】実施の形態1に係る観測地点と目標の関係を示す図。
【図3】実施の形態1に係る見通し判定処理を示すフローチャート図。
【図4】実施の形態1に係る最低仰角と制限距離を説明する図。
【図5】実施の形態1に係るテーブルの例を示す図。
【図6】実施の形態2に係るテーブル作成処理を示すフローチャート図。
【図7】実施の形態2に係る近距離方式及び遠距離方式を説明する図。
【図8】実施の形態3に係る方位角及び仰角の計算方法を説明する図。
【図9】実施の形態3に係る方位角及び仰角の計算方法を説明する図。
【図10】実施の形態3に係る方位角及び仰角の計算方法を説明する図。
【図11】実施の形態3に係る方位角及び仰角の計算方法を説明する図。
【図12】実施の形態3に係る三角形の余弦定理を説明する図。
【図13】実施の形態3に係る球面三角法の正弦定理及び余弦定理を説明する図。
【図14】実施の形態1〜3に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す図。
【図15】従来技術を説明する図。
【図16】従来技術を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る情報処理装置100の構成例を示す。
情報処理装置100は、シミュレーション実行部200とテーブル作成部400に大別される。
シミュレーション実行部200は、所定のシミュレーションを実行する。シミュレーション実行部200において、見通し計算部300は、シミュレーションに先立ち、観測位置から目標が見通せるか否かの見通し計算を行う。
本明細書において、「見通し可能」とは、観測位置と目標との間に障害物がなく、観測位置から目標を目視又はレーダー等により観測することが可能であることを意味する。
そして、「見通し計算」又は「見通し判定」とは、観測位置から目標が見通せるか否かを計算すること又は判定することである。
例えば、図4に示す地形において、観測位置である観測地点と目標Aとの間には障害物がないので、目標Aは観測地点から見通すことができるが、観測地点と目標Bとの間には山があるので、目標Bは観測地点から見通すことができない。見通し計算部300は、このような、観測位置から目標が見通せるか否かの計算、判定を行う。なお、図4の詳細は後述する。
また、テーブル作成部400は、見通し計算部300の見通し計算に用いられるテーブル601を生成する。テーブル作成部400により生成されたテーブル601はテーブル記憶部600に格納される。
テーブル601は、制限仰角情報の例であり、また、テーブル記憶部600は制限仰角情報記憶部の例である。
実施の形態1では、テーブル601を用いた見通し計算部300の見通し判定について説明し、テーブル作成部400によるテーブル601の生成手順については、実施の形態2において説明する。このため、テーブル作成部400の構成の詳細についても実施の形態2で説明する。
なお、図1では、シミュレーション実行部200とテーブル作成部400が同じ情報処理装置100に配置されている例を示しているが、シミュレーション実行部200とテーブル作成部400は、それぞれ別の情報処理装置100に配置されていてもよい。
また、以降の説明では、地上のある位置を観測位置とする例を説明するため、観測位置を観測地点とも表記するが、観測位置は海上であってもよい。また、目標は、地上に限らず、海上、上空であってもよい。
【0011】
次に、見通し計算部300の構成例を説明する。
方位角・仰角算出部301は、特定の観測位置と特定の目標との方位角の値と、当該特定の観測位置と当該特定の目標との仰角の値を算出する。目標は、例えば、情報処理装置100のユーザにより指定される。
テーブルデータ取得部302は、方位角・仰角算出部301により算出された方位角に対応する最低仰角の値(制限仰角値)をテーブル記憶部600のテーブル601から取得する。最低仰角の値は、観測地点から目標を観測する際に最低限必要となる仰角の値である。
見通し判定部303は、テーブルデータ取得部302により取得された最低仰角の値(方位角・仰角算出部301により算出された方位角の値に対応する最低仰角の値)と方位角・仰角算出部301により算出された仰角の値(算出仰角値)とを比較して、特定の観測位置から特定の目標が見通せるか否かを判定する。
【0012】
図2は、観測地点と目標との位置関係を示す。
上記のように、方位角・仰角算出部301は、観測地点と目標との方位角と仰角の値を示す。
方位角は、北を基準とする水平方向の角度である。
仰角は、水平を基準とする上向きの角度である。
【0013】
図5は、テーブル記憶部600に格納されているテーブル601の例を示す。
テーブル601は、方位角602、最低仰角603及び制限距離604のカラムにより構成される。
方位角602のカラムには、方位角が任意の刻み幅による離散値として示される。
最低仰角603のカラムには、方位角の刻みごとに、観測位置における最低仰角の値が示される。最低仰角の値は、観測位置の周囲の地形に基づきテーブル作成部400により方位角の刻みごとに導出された値である。
制限距離604のカラムには、方位角の刻みごとに、最低仰角の値の導出の元となった位置と観測位置との間の距離が制限距離として示される。
上述のCTDBでは、すべてのメッシュの仰角値が保存されているが、テーブル601では、方位角の刻みごとに、最低仰角の値のみが保存されており、データ量を大幅に削減している。
【0014】
図4を参照して、最低仰角と制限距離について説明する。
図4では、観測地点から、方位角Nの方向を遠方まで観測した際に方位角Nの線上にある各点との仰角を示している。
つまり、図4の例において、目標Aと記している地点、目標Bと記している地点及び最低仰角点と記している地点はすべて、観測地点から見て方位角Nの線上にある地点である。
最低仰角は、観測地点から方位角Nの線上の各点に対する仰角のうち最も値が大きな仰角の値である。
方位角・仰角算出部301において算出された観測地点と目標との仰角の値が最低仰角よりも大きければ見通し可能である。
また、最低仰角点と観測地点との間の水平方向における距離が制限距離である。
【0015】
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施の形態に係る見通し計算部300の動作例を説明する。
まず、方位角・仰角算出部301が、観測地点と目標との間の方位角の値と仰角の値を計算する(S301)。
観測地点と目標との間の方位角の値と仰角の値の計算は既存の方法でよい。後述の実施の形態3において方位角と仰角の計算方法の一例を説明する。
【0016】
次に、テーブルデータ取得部302が、テーブル601から、方位角・仰角算出部301が算出した方位角に対応する最低仰角の値を取得する(S302)。
次に、見通し判定部303が、方位角・仰角算出部301が算出した仰角値(算出仰角値)とS302で取得した最低仰角の値を比較し(S303)、算出仰角値が最低仰角値以上の場合に観測地点から目標が見通し可能と判定する(S304)。例えば、図4の例において、目標C(例えば飛行機)は算出仰角値が最低仰角値以上であるので見通し可能である。
一方、算出仰角が最低仰角未満である場合には、見通し判定部303はいったん見通し不可能と判定するが(S305)、見通し判定部303は、観測地点と目標との間の距離である目標間距離を計算し(S306)、また、テーブルデータ取得部302が、S301において方位角・仰角算出部301が算出した方位角に対応する制限距離をテーブル601から取得する(S307)。
そして、見通し判定部303が、S306で算出した目標間距離とS307においてテーブルデータ取得部302が取得した制限距離を比較し(S308)、目標間距離が制限距離以下である場合に、見通し判定部303は観測地点から目標が見通し可能と判定する(S309)。一方、目標間距離が制限距離を超える場合は、見通し判定部303は再度見通し不可能と判定する(S310)。
【0017】
例えば、図4に示す例において、目標A(例えば地上施設、地上移動体)に対する算出仰角値は最低仰角値未満である(S303でNO)が、目標Aとの目標間距離は制限距離以下であるので(S308でYES)、観測地点から目標Aは見通し可能であると判定する(S309)。実際に、観測地点と目標Aの間には、障害物がないので見通し可能である。
一方、目標B(例えば地上施設、地上移動体)に対する算出仰値角は最低仰角値未満であり(S303でNO)、また、目標Bとの目標間距離は制限距離を超えるので(S308でNO)、観測地点から目標Aは見通し不可能であると判定する。実際に、観測地点と目標Bの間には山があるので見通し不可能である。
【0018】
以上の見通し判定の結果を用いて、シミュレーション実行部200は所定のシミュレーションを実施する。
例えば、図4の目標A及び目標Cは見通し可能であり、目標Bは見通し不可能との前提にてシミュレーションを行う。
【0019】
このように、本実施の形態によれば、観測位置の全周囲における最低仰角のみを持つことにより保持するデータ量が少量ですみ、この結果、記憶領域を有効に利用することができる。
【0020】
また、本実施の形態によれば、算出仰角と最低仰角を比較することで見通し判定が行えるので、見通し判定における計算負荷及び計算時間を低減することができる。
【0021】
また、本実施の形態によれば、算出仰角と最低仰角との比較において見通し不可能と判定された場合に、目標間距離と制限距離との比較により再度見通し判定を行うので、精度よく見通し判定を行うことができる。
【0022】
また、本実施の形態では、データの補完処理をシミュレーション実行前に行うのでシミュレーション実行速度が向上する。
CTDBでは、メッシュの格子点上にない点における仰角を求める場合にはシミュレーションにおいて補完処理が発生するため、シミュレーション実行速度が落ちる。
図16に、CTDBを用いる場合の補完処理の例を示す。
図16の例において、地点1601に対する仰角値を補完処理により求める例を説明する。
補完処理では、メッシュ頂点における仰角の値から三角形の平面を作り、平面上の値を用いて目標地点における仰角の値を計算する。
図16の例では、メッシュ頂点1602、1603、1604に対する仰角値から三角形の平面を作り、地点1601に対する仰角値を求める。
そして、地点1601に対する仰角値に基づいて見通し計算を行う。
本実施の形態では、データの補完処理をシミュレーション実行前に行うのでシミュレーション実行速度が向上する。
【0023】
実施の形態2.
本実施の形態では、テーブル作成部400でのテーブル生成手法を説明する。
まず、本実施の形態におけるテーブル生成手法を概説する。
【0024】
本実施の形態に係るテーブルの作成には、数値地図データ(地図データ)を用いる。
数値地図データは、地形をメッシュに分け、メッシュごとに、各メッシュが対応する対応エリアにおける緯度、経度、高度の離散データが格納されている。
テーブル作成にあたり、観測地点周囲の離散データを用いる。
ここで、観測地点から十分遠方にあるエリアの離散データはテーブル作成に用いない。
次に、数値地図データから、該当メッシュの高度、緯度、経度の離散データを取得し、それらを用いて方位角、仰角を計算する。
また、該当メッシュと観測地点との間の距離によって、仰角の計算方法を分ける。
該当メッシュと観測地点との距離が所定の閾値未満のときは近距離方式(第1の算出方法)によって仰角を計算し、閾値以上のときは遠距離方式(第2の算出方法)にて仰角を計算する。
そして、計算した方位角、仰角からその方位における最低仰角を更新し、該当範囲の全ての離散データに対して以上の処理を行う。
【0025】
次に、図1を参照してテーブル作成部400の構成を説明する。
遠方エリア判定部401は、地図データ記憶部500に記憶されている数値地図データ(地図データ)のうち、観測地点から遠方にある遠方エリアに対応するメッシュの離散データを収集の対象から除外する。
ここで、遠方エリアとは、観測位置から観測する場合に地球の丸みの影響を受ける程度に遠方のエリアである。このような遠方エリアは、目視又はレーダー等により観測することができないので見通し判定から除外する。
地図データ取得部402は、遠方エリア判定部401により除外された遠方エリア以外のエリアに対応するメッシュの地図データを地図データ記憶部500から取得する。
【0026】
メッシュ別角度算出部403は、地図データ取得部402により取得された数値地図データを用いて、方位角の値及び仰角の値を算出する。
具体的には、メッシュ別角度算出部403は、各メッシュの対応エリアの緯度、経度及び高度と観測位置の緯度、経度及び高度に基づいて、観測位置から各メッシュの対応エリアを観測する場合の観測位置と対応エリアとの方位角の値及び仰角の値をメッシュごとに算出する。
また、メッシュ別角度算出部403は、各メッシュの対応エリアと観測位置との間の距離を算出し、対応エリアと観測位置との間の距離が所定の閾値(基準距離)未満のメッシュに対しては近距離方式(第1の算出方法)により方位角の値及び仰角の値を算出し、対応エリアと観測位置との間の距離が閾値(基準距離)以上のメッシュに対しては近距離方式と異なる遠距離方式(第2の算出方法)により方位角の値及び仰角の値を算出する。
本実施の形態では、メッシュ別角度算出部403は、方位角の刻み幅内にメッシュ幅が収まる距離を閾値(基準距離)としている。
【0027】
制限仰角決定部404は、観測位置を中心とする方位角を所定の刻み幅により区分するとともに、各メッシュを刻み幅に従って観測位置との方位角により分類し、同じ方位角の刻みに分類された2以上のメッシュの仰角値の中から最も高い仰角値を最低仰角値(制限仰角値)として選択して、方位角の刻みごとに最低仰角値を決定する。
【0028】
次に、図6のフローチャートを参照して、本実施の形態に係るテーブル作成部400の動作例を説明する。
まず、遠方エリア判定部401が遠方エリアのメッシュを地図データ取得部402の取得対象から除外するため、メッシュごとに、メッシュの対応エリアと観測地点からの距離と所定の閾値αとを比較し(S601)、観測地点からの距離が閾値αを超える範囲(S601でNO)の数値地図データは、見通し判定に地形の影響を及ぼさないのでテーブル作成に用いない。
観測地点からの距離が閾値α以内の場合(S601でYES)は、地図データ取得部402が、地図データ記憶部500から当該メッシュの高度、緯度、経度のデータを取得する(S602)。
【0029】
ここで、距離の閾値αは、観測地点の高度h0、観測地点周辺の最大高度地点の高度htを用いて以下の(1)式のように計算できる。
ただし、(1)式中のθは(2)式から、(2)式中のRは(3)式から求める。
【0030】
【数1】
【0031】
次に、メッシュ別角度算出部403が、地図データ取得部402により高度、緯度、経度のデータが取得されたメッシュごとに、メッシュの対応エリアと観測地点からの距離を算出するとともに算出した距離と所定の閾値βとを比較し(S603)、観測地点からの距離が閾値βを超える場合(S603でNO)は、メッシュ別角度算出部403は遠距離方式により当該メッシュの対応エリアと観測地点との方位角及び仰角の値を求め(S604)、観測地点からの距離が閾値β以内の場合(S603でYES)は、メッシュ別角度算出部403は近距離方式により当該メッシュの対応エリアと観測地点との方位角及び仰角の値を求める(S605)。
【0032】
距離の閾値βは、方位角の刻み幅内に数値地図データのメッシュが収まるときのメッシュの対応エリアと観測地点との距離である。
距離の閾値βは以下のように計算できる。
【0033】
【数2】
【0034】
観測地点から該当メッシュを見たとき該当メッシュと観測地点との距離が距離の閾値βを超えるときは、遠距離方式により該当メッシュを正方形とみなして方位角と仰角の計算を行う。一方、閾値β以内のときは近距離方式により該当メッシュを点とみなして方位角と仰角の計算を行う。
【0035】
図7(a−1)に近距離方式における計算の概略を示す。
近距離方式では、該当メッシュ中心に相当する対応エリアの位置と観測地点との間の方位角、仰角を数値地図データの高度、緯度、経度のデータを用いて計算する。また、左右の仰角値を使って補完処理を行う。
また、図7(a−2)に遠距離方式における計算の概略を示す。
遠距離方式では、該当メッシュを見通せる範囲の仰角を観測地点と該当メッシュの中心を用いて計算する。
つまり、遠距離方式では、数値地図データの高度、緯度、経度のデータを用いて、メッシュの中心に相当する対応エリア内の位置と観測地点との方位角の値を算出するとともに、対応エリアの全域を対象として複数の仰角の値を算出し、算出した複数の仰角の値の中から最低の値を選択する。
なお、方位角と仰角の具体的な算出手順は実施の形態3に示す。
【0036】
次に、制限仰角決定部404が、各メッシュを方位角の刻み幅に基づいて区分する(S606)。
より具体的には、メッシュ別角度算出部403により算出された各メッシュの方位角に従ってテーブル601の方位角の刻みごとにメッシュを分類する。
【0037】
次に、制限仰角決定部404は、メッシュごとに、当該メッシュの仰角値が、同じ方位角の刻みに分類されたメッシュの仰角値の中で最高値であれば、当該メッシュの仰角値を最低仰角の値として更新する(S607)。
つまり、制限仰角決定部404は、方位角の刻みごとに、同じ方位角の刻みに分類された2以上のメッシュの仰角値の中から最も高い仰角値を最低仰角値として選択して、方位角の刻みごとに最低仰角値を決定し、テーブル601の最低仰角603の欄に書き込む。また、このとき、最低仰角値のメッシュの対応エリアと観測地点との距離をテーブル601の制限距離604の欄に書き込む。
【0038】
最後に、制限仰角決定部404は、数値地図データの全てのメッシュに対して処理を行ったか否かを判断し(S608)、全てのメッシュに対して処理を行っていれば、処理を終了する。処理を行っていないメッシュが存在する場合は、処理をS601に戻す。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、方位角の刻みごとに最低仰角が示されるテーブルを作成するので、当該テーブルを用いて見通し計算を行うことで、見通し計算における計算負荷及び計算時間を低減することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、十分遠方にあり地球の丸みにより見通し計算に影響を及ぼさない数値データはテーブル作成に用いない。このように本実施の形態では使用するデータ量を絞ることによりテーブル作成速度を向上させている。
【0041】
また、観測地点から計算対象のメッシュを見たときに、方位角の刻み幅内に計算対象メッシュを見渡せる場合は遠距離方式にて、そうでないときは近距離方式にて計算することにより、計算速度を向上させている。
【0042】
実施の形態3.
本実施の形態では、仰角、方位角の計算方法を説明する。
ここでは、図8及び図9を用いて、センサ位置PA点(北緯φA、東経λA、高度hA)から観測点PB(北緯φB、東経λB、高度hB)を見たときの方位角θaziと仰角θeleを求める方法を以下に述べる。
なお、ここでは電波を用いたセンサから見た観測点までの方位角の計算方法例を述べている。目視による仰角、方位角の計算には、後に述べる等価地球半径比K=1とする。
図8及び図9は、センサ位置と観測点との関係を示す。
図8及び図9より仰角を求めるには図10のような手順を踏めばよいことがわかる。
方位角は角距離θを計算する際に求めることができる。
【0043】
まず、方位角を求める。図11に示す2点(センサ位置(PA)と観測点(PB))を元に、地球を真球とみなし、各点を球面に投影した2点(センサ位置を球面上に投影した位置(PA’)と観測点を球面上に投影した位置(Pn))に対し球面三角形を考える。
このとき、球面三角法の公式(図13)に対し、式(5)から式(6)〜(9)が求められる。
【0044】
【数3】
【0045】
式(5)〜(9)を整理すると、以下の式(10)〜(13)のようになる。
【0046】
【数4】
【0047】
よって、以下の式(14)及び(15)に示すとおりとなり、方位角が求まる。
【数5】
【0048】
次に角距離θ’を求める。
図9より、地球半径による球面上の2点(PA、Pn)について、等価地球半径による球面上へ投影した2点(PA’、Pn’)を考える。
式(14)で求まる角距離θより、2点(PA、Pn)間の距離は、式(16)で表わされる。
【0049】
【数6】
【0050】
2点(PA、Pn)を、等価地球半径による球面上へ投影した2点(PA’、Pn’)とする場合、2点(PA’、Pn’)間の距離はlと同等ゆえ、角距離θ’は、式(17)で表わされる。
【0051】
【数7】
【0052】
図9より、等価地球半径による仮想地球上の2点(PA’、Pn’)を含む平面状の3点(PB’、PA、O’)からなる三角形について、余弦定理(第二余弦定理)(図12)より次式が成り立つ。
【0053】
【数8】
【0054】
次に、式(18)からRを求める。
【0055】
【数9】
【0056】
また、式(19)へ式(20)で求めたRを代入することにより、観測点への仰角θeleが求まる。
【0057】
【数10】
【0058】
実施の形態4.
最後に、実施の形態1〜3に示した情報処理装置100のハードウェア構成例について説明する。
図14は、実施の形態1〜3に示す情報処理装置100のハードウェア資源の一例を示す図である。
なお、図14の構成は、あくまでも情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示すものであり、情報処理装置100のハードウェア構成は図14に記載の構成に限らず、他の構成であってもよい。
【0059】
図14において、情報処理装置100は、プログラムを実行するCPU911(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。
CPU911は、バス912を介して、例えば、ROM(Read Only Memory)913、RAM(Random Access Memory)914、通信ボード915、表示装置901、キーボード902、マウス903、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。
更に、CPU911は、FDD904(Flexible Disk Drive)、コンパクトディスク装置905(CDD)、プリンタ装置906、スキャナ装置907と接続していてもよい。また、磁気ディスク装置920の代わりに、光ディスク装置、メモリカード(登録商標)読み書き装置などの記憶装置でもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置の一例である。
通信ボード915、キーボード902、マウス903、スキャナ装置907、FDD904などは、入力装置の一例である。
また、通信ボード915、表示装置901、プリンタ装置906などは、出力部、出力装置の一例である。
【0060】
通信ボード915は、ネットワークに接続される。例えば、通信ボード915は、LAN(ローカルエリアネットワーク)、インターネット、WAN(ワイドエリアネットワーク)、SAN(ストレージエリアネットワーク)などに接続されていても構わない。
【0061】
磁気ディスク装置920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。
プログラム群923のプログラムは、CPU911がオペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922を利用しながら実行する。
【0062】
また、RAM914には、CPU911に実行させるオペレーティングシステム921のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。
また、RAM914には、CPU911による処理に必要な各種データが格納される。
【0063】
また、ROM913には、BIOS(Basic Input Output System)プログラムが格納され、磁気ディスク装置920にはブートプログラムが格納されている。
情報処理装置100の起動時には、ROM913のBIOSプログラム及び磁気ディスク装置920のブートプログラムが実行され、BIOSプログラム及びブートプログラムによりオペレーティングシステム921が起動される。
【0064】
上記プログラム群923には、実施の形態1〜3の説明において「〜部」として説明している機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0065】
ファイル群924には、実施の形態1〜3の説明において、「〜の判断」、「〜の計算」、「〜の算出」、「〜の比較」、「〜の取得」、「〜の更新」、「〜の設定」、「〜の登録」、「〜の選択」等として説明している処理の結果を示す情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。
抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリ、レジスタ、キャッシュメモリ、バッファメモリ等に一時的に記憶される。
また、実施の形態1〜3で説明しているフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク、CDD905のコンパクトディスク、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0066】
また、実施の形態1〜3の説明において「〜部」として説明しているものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明しているものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、実施の形態1〜3の「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、実施の形態1〜3の「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0067】
このように、実施の形態1〜3に示す情報処理装置100は、処理装置たるCPU、記憶装置たるメモリ、磁気ディスク等、入力装置たるキーボード、マウス、通信ボード等、出力装置たる表示装置、通信ボード等を備えるコンピュータであり、上記したように「〜部」として示された機能をこれら処理装置、記憶装置、入力装置、出力装置を用いて実現するものである。
【符号の説明】
【0068】
100 情報処理装置、200 シミュレーション実行部、300 見通し計算部、301 方位角・仰角算出部、302 テーブルデータ取得部、303 見通し判定部、400 テーブル作成部、401 遠方エリア判定部、402 地図データ取得部、403 メッシュ別角度算出部、404 制限仰角決定部、500 地図データ記憶部、600 テーブル記憶部、601 テーブル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション実行時の見通し計算に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、観測地点と目標との間の見通し判定についてはCompact Terrain Database(CTDB: 非特許文献1を参照)が利用されている。
CTDBは地形をメッシュに分け、観測地点のメッシュ位置と目標となるメッシュ位置をキー値とし、そのときの仰角値をデータベースとして持ち、見通し計算の際には、データベースに保持している仰角値を利用するものである。
【0003】
CTDBでは、図15に示すように、地形をメッシュに分け、観測地点から各メッシュに対応する地点を観測する際の仰角値をメッシュごとに保持している。
図15において、メッシュの格子点に示されている円柱の高さが、各格子点に対応する地点と観測地点との高度差に相当し、観測地点と各円柱の上面との仰角値が観測地点から各地点を観測する際の仰角値に相当する。
つまり、CTDBでは、観測地点から各地点を観測する際の仰角値をメッシュごとにデータベースに記録している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Michael D. P. William and William J. G., 2004, JDMS, Vol.1, Issue 1, Page 43−57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CTDBでは、上記のように、シミュレーション対象領域において緯度経度メッシュにて仰角値を持つので大容量のデータを持つ必要があるという課題がある。
また、大容量のデータを用いて見通し計算を行うため、見通し判定における計算負荷及び計算時間が多大であるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決することを主な目的とし、見通し判定に用いるデータ量を削減し、見通し判定における計算負荷及び計算時間を低減することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る情報処理装置は、
特定の観測位置から目標を見通せるか否かを判定する情報処理装置であって、
所定の刻み幅で方位角を示すとともに、前記特定の観測位置の周囲の地形に基づき方位角の刻みごとに導出された目標の見通しに必要な前記特定の観測位置における仰角の値を制限仰角値として方位角の刻みごとに示す制限仰角情報を記憶する制限仰角情報記憶部と、
前記特定の観測位置と特定の目標との方位角の値と、前記特定の観測位置と前記特定の目標との仰角の値を算出する方位角・仰角算出部と、
前記方位角・仰角算出部により算出された方位角の値に対応する制限仰角値と前記方位角・仰角算出部により算出された算出仰角値とを比較して、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せるか否かを判定する見通し判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、観測位置からの見通しに必要とされる仰角値のみを持つことにより保持するデータ量が少量ですみ、記憶領域を有効に利用することができ、また、算出仰角値と制限仰角値との比較で見通し判定が行えるので、見通し判定における計算負荷及び計算時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る情報処理装置の構成例を示す図。
【図2】実施の形態1に係る観測地点と目標の関係を示す図。
【図3】実施の形態1に係る見通し判定処理を示すフローチャート図。
【図4】実施の形態1に係る最低仰角と制限距離を説明する図。
【図5】実施の形態1に係るテーブルの例を示す図。
【図6】実施の形態2に係るテーブル作成処理を示すフローチャート図。
【図7】実施の形態2に係る近距離方式及び遠距離方式を説明する図。
【図8】実施の形態3に係る方位角及び仰角の計算方法を説明する図。
【図9】実施の形態3に係る方位角及び仰角の計算方法を説明する図。
【図10】実施の形態3に係る方位角及び仰角の計算方法を説明する図。
【図11】実施の形態3に係る方位角及び仰角の計算方法を説明する図。
【図12】実施の形態3に係る三角形の余弦定理を説明する図。
【図13】実施の形態3に係る球面三角法の正弦定理及び余弦定理を説明する図。
【図14】実施の形態1〜3に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す図。
【図15】従来技術を説明する図。
【図16】従来技術を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る情報処理装置100の構成例を示す。
情報処理装置100は、シミュレーション実行部200とテーブル作成部400に大別される。
シミュレーション実行部200は、所定のシミュレーションを実行する。シミュレーション実行部200において、見通し計算部300は、シミュレーションに先立ち、観測位置から目標が見通せるか否かの見通し計算を行う。
本明細書において、「見通し可能」とは、観測位置と目標との間に障害物がなく、観測位置から目標を目視又はレーダー等により観測することが可能であることを意味する。
そして、「見通し計算」又は「見通し判定」とは、観測位置から目標が見通せるか否かを計算すること又は判定することである。
例えば、図4に示す地形において、観測位置である観測地点と目標Aとの間には障害物がないので、目標Aは観測地点から見通すことができるが、観測地点と目標Bとの間には山があるので、目標Bは観測地点から見通すことができない。見通し計算部300は、このような、観測位置から目標が見通せるか否かの計算、判定を行う。なお、図4の詳細は後述する。
また、テーブル作成部400は、見通し計算部300の見通し計算に用いられるテーブル601を生成する。テーブル作成部400により生成されたテーブル601はテーブル記憶部600に格納される。
テーブル601は、制限仰角情報の例であり、また、テーブル記憶部600は制限仰角情報記憶部の例である。
実施の形態1では、テーブル601を用いた見通し計算部300の見通し判定について説明し、テーブル作成部400によるテーブル601の生成手順については、実施の形態2において説明する。このため、テーブル作成部400の構成の詳細についても実施の形態2で説明する。
なお、図1では、シミュレーション実行部200とテーブル作成部400が同じ情報処理装置100に配置されている例を示しているが、シミュレーション実行部200とテーブル作成部400は、それぞれ別の情報処理装置100に配置されていてもよい。
また、以降の説明では、地上のある位置を観測位置とする例を説明するため、観測位置を観測地点とも表記するが、観測位置は海上であってもよい。また、目標は、地上に限らず、海上、上空であってもよい。
【0011】
次に、見通し計算部300の構成例を説明する。
方位角・仰角算出部301は、特定の観測位置と特定の目標との方位角の値と、当該特定の観測位置と当該特定の目標との仰角の値を算出する。目標は、例えば、情報処理装置100のユーザにより指定される。
テーブルデータ取得部302は、方位角・仰角算出部301により算出された方位角に対応する最低仰角の値(制限仰角値)をテーブル記憶部600のテーブル601から取得する。最低仰角の値は、観測地点から目標を観測する際に最低限必要となる仰角の値である。
見通し判定部303は、テーブルデータ取得部302により取得された最低仰角の値(方位角・仰角算出部301により算出された方位角の値に対応する最低仰角の値)と方位角・仰角算出部301により算出された仰角の値(算出仰角値)とを比較して、特定の観測位置から特定の目標が見通せるか否かを判定する。
【0012】
図2は、観測地点と目標との位置関係を示す。
上記のように、方位角・仰角算出部301は、観測地点と目標との方位角と仰角の値を示す。
方位角は、北を基準とする水平方向の角度である。
仰角は、水平を基準とする上向きの角度である。
【0013】
図5は、テーブル記憶部600に格納されているテーブル601の例を示す。
テーブル601は、方位角602、最低仰角603及び制限距離604のカラムにより構成される。
方位角602のカラムには、方位角が任意の刻み幅による離散値として示される。
最低仰角603のカラムには、方位角の刻みごとに、観測位置における最低仰角の値が示される。最低仰角の値は、観測位置の周囲の地形に基づきテーブル作成部400により方位角の刻みごとに導出された値である。
制限距離604のカラムには、方位角の刻みごとに、最低仰角の値の導出の元となった位置と観測位置との間の距離が制限距離として示される。
上述のCTDBでは、すべてのメッシュの仰角値が保存されているが、テーブル601では、方位角の刻みごとに、最低仰角の値のみが保存されており、データ量を大幅に削減している。
【0014】
図4を参照して、最低仰角と制限距離について説明する。
図4では、観測地点から、方位角Nの方向を遠方まで観測した際に方位角Nの線上にある各点との仰角を示している。
つまり、図4の例において、目標Aと記している地点、目標Bと記している地点及び最低仰角点と記している地点はすべて、観測地点から見て方位角Nの線上にある地点である。
最低仰角は、観測地点から方位角Nの線上の各点に対する仰角のうち最も値が大きな仰角の値である。
方位角・仰角算出部301において算出された観測地点と目標との仰角の値が最低仰角よりも大きければ見通し可能である。
また、最低仰角点と観測地点との間の水平方向における距離が制限距離である。
【0015】
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施の形態に係る見通し計算部300の動作例を説明する。
まず、方位角・仰角算出部301が、観測地点と目標との間の方位角の値と仰角の値を計算する(S301)。
観測地点と目標との間の方位角の値と仰角の値の計算は既存の方法でよい。後述の実施の形態3において方位角と仰角の計算方法の一例を説明する。
【0016】
次に、テーブルデータ取得部302が、テーブル601から、方位角・仰角算出部301が算出した方位角に対応する最低仰角の値を取得する(S302)。
次に、見通し判定部303が、方位角・仰角算出部301が算出した仰角値(算出仰角値)とS302で取得した最低仰角の値を比較し(S303)、算出仰角値が最低仰角値以上の場合に観測地点から目標が見通し可能と判定する(S304)。例えば、図4の例において、目標C(例えば飛行機)は算出仰角値が最低仰角値以上であるので見通し可能である。
一方、算出仰角が最低仰角未満である場合には、見通し判定部303はいったん見通し不可能と判定するが(S305)、見通し判定部303は、観測地点と目標との間の距離である目標間距離を計算し(S306)、また、テーブルデータ取得部302が、S301において方位角・仰角算出部301が算出した方位角に対応する制限距離をテーブル601から取得する(S307)。
そして、見通し判定部303が、S306で算出した目標間距離とS307においてテーブルデータ取得部302が取得した制限距離を比較し(S308)、目標間距離が制限距離以下である場合に、見通し判定部303は観測地点から目標が見通し可能と判定する(S309)。一方、目標間距離が制限距離を超える場合は、見通し判定部303は再度見通し不可能と判定する(S310)。
【0017】
例えば、図4に示す例において、目標A(例えば地上施設、地上移動体)に対する算出仰角値は最低仰角値未満である(S303でNO)が、目標Aとの目標間距離は制限距離以下であるので(S308でYES)、観測地点から目標Aは見通し可能であると判定する(S309)。実際に、観測地点と目標Aの間には、障害物がないので見通し可能である。
一方、目標B(例えば地上施設、地上移動体)に対する算出仰値角は最低仰角値未満であり(S303でNO)、また、目標Bとの目標間距離は制限距離を超えるので(S308でNO)、観測地点から目標Aは見通し不可能であると判定する。実際に、観測地点と目標Bの間には山があるので見通し不可能である。
【0018】
以上の見通し判定の結果を用いて、シミュレーション実行部200は所定のシミュレーションを実施する。
例えば、図4の目標A及び目標Cは見通し可能であり、目標Bは見通し不可能との前提にてシミュレーションを行う。
【0019】
このように、本実施の形態によれば、観測位置の全周囲における最低仰角のみを持つことにより保持するデータ量が少量ですみ、この結果、記憶領域を有効に利用することができる。
【0020】
また、本実施の形態によれば、算出仰角と最低仰角を比較することで見通し判定が行えるので、見通し判定における計算負荷及び計算時間を低減することができる。
【0021】
また、本実施の形態によれば、算出仰角と最低仰角との比較において見通し不可能と判定された場合に、目標間距離と制限距離との比較により再度見通し判定を行うので、精度よく見通し判定を行うことができる。
【0022】
また、本実施の形態では、データの補完処理をシミュレーション実行前に行うのでシミュレーション実行速度が向上する。
CTDBでは、メッシュの格子点上にない点における仰角を求める場合にはシミュレーションにおいて補完処理が発生するため、シミュレーション実行速度が落ちる。
図16に、CTDBを用いる場合の補完処理の例を示す。
図16の例において、地点1601に対する仰角値を補完処理により求める例を説明する。
補完処理では、メッシュ頂点における仰角の値から三角形の平面を作り、平面上の値を用いて目標地点における仰角の値を計算する。
図16の例では、メッシュ頂点1602、1603、1604に対する仰角値から三角形の平面を作り、地点1601に対する仰角値を求める。
そして、地点1601に対する仰角値に基づいて見通し計算を行う。
本実施の形態では、データの補完処理をシミュレーション実行前に行うのでシミュレーション実行速度が向上する。
【0023】
実施の形態2.
本実施の形態では、テーブル作成部400でのテーブル生成手法を説明する。
まず、本実施の形態におけるテーブル生成手法を概説する。
【0024】
本実施の形態に係るテーブルの作成には、数値地図データ(地図データ)を用いる。
数値地図データは、地形をメッシュに分け、メッシュごとに、各メッシュが対応する対応エリアにおける緯度、経度、高度の離散データが格納されている。
テーブル作成にあたり、観測地点周囲の離散データを用いる。
ここで、観測地点から十分遠方にあるエリアの離散データはテーブル作成に用いない。
次に、数値地図データから、該当メッシュの高度、緯度、経度の離散データを取得し、それらを用いて方位角、仰角を計算する。
また、該当メッシュと観測地点との間の距離によって、仰角の計算方法を分ける。
該当メッシュと観測地点との距離が所定の閾値未満のときは近距離方式(第1の算出方法)によって仰角を計算し、閾値以上のときは遠距離方式(第2の算出方法)にて仰角を計算する。
そして、計算した方位角、仰角からその方位における最低仰角を更新し、該当範囲の全ての離散データに対して以上の処理を行う。
【0025】
次に、図1を参照してテーブル作成部400の構成を説明する。
遠方エリア判定部401は、地図データ記憶部500に記憶されている数値地図データ(地図データ)のうち、観測地点から遠方にある遠方エリアに対応するメッシュの離散データを収集の対象から除外する。
ここで、遠方エリアとは、観測位置から観測する場合に地球の丸みの影響を受ける程度に遠方のエリアである。このような遠方エリアは、目視又はレーダー等により観測することができないので見通し判定から除外する。
地図データ取得部402は、遠方エリア判定部401により除外された遠方エリア以外のエリアに対応するメッシュの地図データを地図データ記憶部500から取得する。
【0026】
メッシュ別角度算出部403は、地図データ取得部402により取得された数値地図データを用いて、方位角の値及び仰角の値を算出する。
具体的には、メッシュ別角度算出部403は、各メッシュの対応エリアの緯度、経度及び高度と観測位置の緯度、経度及び高度に基づいて、観測位置から各メッシュの対応エリアを観測する場合の観測位置と対応エリアとの方位角の値及び仰角の値をメッシュごとに算出する。
また、メッシュ別角度算出部403は、各メッシュの対応エリアと観測位置との間の距離を算出し、対応エリアと観測位置との間の距離が所定の閾値(基準距離)未満のメッシュに対しては近距離方式(第1の算出方法)により方位角の値及び仰角の値を算出し、対応エリアと観測位置との間の距離が閾値(基準距離)以上のメッシュに対しては近距離方式と異なる遠距離方式(第2の算出方法)により方位角の値及び仰角の値を算出する。
本実施の形態では、メッシュ別角度算出部403は、方位角の刻み幅内にメッシュ幅が収まる距離を閾値(基準距離)としている。
【0027】
制限仰角決定部404は、観測位置を中心とする方位角を所定の刻み幅により区分するとともに、各メッシュを刻み幅に従って観測位置との方位角により分類し、同じ方位角の刻みに分類された2以上のメッシュの仰角値の中から最も高い仰角値を最低仰角値(制限仰角値)として選択して、方位角の刻みごとに最低仰角値を決定する。
【0028】
次に、図6のフローチャートを参照して、本実施の形態に係るテーブル作成部400の動作例を説明する。
まず、遠方エリア判定部401が遠方エリアのメッシュを地図データ取得部402の取得対象から除外するため、メッシュごとに、メッシュの対応エリアと観測地点からの距離と所定の閾値αとを比較し(S601)、観測地点からの距離が閾値αを超える範囲(S601でNO)の数値地図データは、見通し判定に地形の影響を及ぼさないのでテーブル作成に用いない。
観測地点からの距離が閾値α以内の場合(S601でYES)は、地図データ取得部402が、地図データ記憶部500から当該メッシュの高度、緯度、経度のデータを取得する(S602)。
【0029】
ここで、距離の閾値αは、観測地点の高度h0、観測地点周辺の最大高度地点の高度htを用いて以下の(1)式のように計算できる。
ただし、(1)式中のθは(2)式から、(2)式中のRは(3)式から求める。
【0030】
【数1】
【0031】
次に、メッシュ別角度算出部403が、地図データ取得部402により高度、緯度、経度のデータが取得されたメッシュごとに、メッシュの対応エリアと観測地点からの距離を算出するとともに算出した距離と所定の閾値βとを比較し(S603)、観測地点からの距離が閾値βを超える場合(S603でNO)は、メッシュ別角度算出部403は遠距離方式により当該メッシュの対応エリアと観測地点との方位角及び仰角の値を求め(S604)、観測地点からの距離が閾値β以内の場合(S603でYES)は、メッシュ別角度算出部403は近距離方式により当該メッシュの対応エリアと観測地点との方位角及び仰角の値を求める(S605)。
【0032】
距離の閾値βは、方位角の刻み幅内に数値地図データのメッシュが収まるときのメッシュの対応エリアと観測地点との距離である。
距離の閾値βは以下のように計算できる。
【0033】
【数2】
【0034】
観測地点から該当メッシュを見たとき該当メッシュと観測地点との距離が距離の閾値βを超えるときは、遠距離方式により該当メッシュを正方形とみなして方位角と仰角の計算を行う。一方、閾値β以内のときは近距離方式により該当メッシュを点とみなして方位角と仰角の計算を行う。
【0035】
図7(a−1)に近距離方式における計算の概略を示す。
近距離方式では、該当メッシュ中心に相当する対応エリアの位置と観測地点との間の方位角、仰角を数値地図データの高度、緯度、経度のデータを用いて計算する。また、左右の仰角値を使って補完処理を行う。
また、図7(a−2)に遠距離方式における計算の概略を示す。
遠距離方式では、該当メッシュを見通せる範囲の仰角を観測地点と該当メッシュの中心を用いて計算する。
つまり、遠距離方式では、数値地図データの高度、緯度、経度のデータを用いて、メッシュの中心に相当する対応エリア内の位置と観測地点との方位角の値を算出するとともに、対応エリアの全域を対象として複数の仰角の値を算出し、算出した複数の仰角の値の中から最低の値を選択する。
なお、方位角と仰角の具体的な算出手順は実施の形態3に示す。
【0036】
次に、制限仰角決定部404が、各メッシュを方位角の刻み幅に基づいて区分する(S606)。
より具体的には、メッシュ別角度算出部403により算出された各メッシュの方位角に従ってテーブル601の方位角の刻みごとにメッシュを分類する。
【0037】
次に、制限仰角決定部404は、メッシュごとに、当該メッシュの仰角値が、同じ方位角の刻みに分類されたメッシュの仰角値の中で最高値であれば、当該メッシュの仰角値を最低仰角の値として更新する(S607)。
つまり、制限仰角決定部404は、方位角の刻みごとに、同じ方位角の刻みに分類された2以上のメッシュの仰角値の中から最も高い仰角値を最低仰角値として選択して、方位角の刻みごとに最低仰角値を決定し、テーブル601の最低仰角603の欄に書き込む。また、このとき、最低仰角値のメッシュの対応エリアと観測地点との距離をテーブル601の制限距離604の欄に書き込む。
【0038】
最後に、制限仰角決定部404は、数値地図データの全てのメッシュに対して処理を行ったか否かを判断し(S608)、全てのメッシュに対して処理を行っていれば、処理を終了する。処理を行っていないメッシュが存在する場合は、処理をS601に戻す。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、方位角の刻みごとに最低仰角が示されるテーブルを作成するので、当該テーブルを用いて見通し計算を行うことで、見通し計算における計算負荷及び計算時間を低減することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、十分遠方にあり地球の丸みにより見通し計算に影響を及ぼさない数値データはテーブル作成に用いない。このように本実施の形態では使用するデータ量を絞ることによりテーブル作成速度を向上させている。
【0041】
また、観測地点から計算対象のメッシュを見たときに、方位角の刻み幅内に計算対象メッシュを見渡せる場合は遠距離方式にて、そうでないときは近距離方式にて計算することにより、計算速度を向上させている。
【0042】
実施の形態3.
本実施の形態では、仰角、方位角の計算方法を説明する。
ここでは、図8及び図9を用いて、センサ位置PA点(北緯φA、東経λA、高度hA)から観測点PB(北緯φB、東経λB、高度hB)を見たときの方位角θaziと仰角θeleを求める方法を以下に述べる。
なお、ここでは電波を用いたセンサから見た観測点までの方位角の計算方法例を述べている。目視による仰角、方位角の計算には、後に述べる等価地球半径比K=1とする。
図8及び図9は、センサ位置と観測点との関係を示す。
図8及び図9より仰角を求めるには図10のような手順を踏めばよいことがわかる。
方位角は角距離θを計算する際に求めることができる。
【0043】
まず、方位角を求める。図11に示す2点(センサ位置(PA)と観測点(PB))を元に、地球を真球とみなし、各点を球面に投影した2点(センサ位置を球面上に投影した位置(PA’)と観測点を球面上に投影した位置(Pn))に対し球面三角形を考える。
このとき、球面三角法の公式(図13)に対し、式(5)から式(6)〜(9)が求められる。
【0044】
【数3】
【0045】
式(5)〜(9)を整理すると、以下の式(10)〜(13)のようになる。
【0046】
【数4】
【0047】
よって、以下の式(14)及び(15)に示すとおりとなり、方位角が求まる。
【数5】
【0048】
次に角距離θ’を求める。
図9より、地球半径による球面上の2点(PA、Pn)について、等価地球半径による球面上へ投影した2点(PA’、Pn’)を考える。
式(14)で求まる角距離θより、2点(PA、Pn)間の距離は、式(16)で表わされる。
【0049】
【数6】
【0050】
2点(PA、Pn)を、等価地球半径による球面上へ投影した2点(PA’、Pn’)とする場合、2点(PA’、Pn’)間の距離はlと同等ゆえ、角距離θ’は、式(17)で表わされる。
【0051】
【数7】
【0052】
図9より、等価地球半径による仮想地球上の2点(PA’、Pn’)を含む平面状の3点(PB’、PA、O’)からなる三角形について、余弦定理(第二余弦定理)(図12)より次式が成り立つ。
【0053】
【数8】
【0054】
次に、式(18)からRを求める。
【0055】
【数9】
【0056】
また、式(19)へ式(20)で求めたRを代入することにより、観測点への仰角θeleが求まる。
【0057】
【数10】
【0058】
実施の形態4.
最後に、実施の形態1〜3に示した情報処理装置100のハードウェア構成例について説明する。
図14は、実施の形態1〜3に示す情報処理装置100のハードウェア資源の一例を示す図である。
なお、図14の構成は、あくまでも情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示すものであり、情報処理装置100のハードウェア構成は図14に記載の構成に限らず、他の構成であってもよい。
【0059】
図14において、情報処理装置100は、プログラムを実行するCPU911(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。
CPU911は、バス912を介して、例えば、ROM(Read Only Memory)913、RAM(Random Access Memory)914、通信ボード915、表示装置901、キーボード902、マウス903、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。
更に、CPU911は、FDD904(Flexible Disk Drive)、コンパクトディスク装置905(CDD)、プリンタ装置906、スキャナ装置907と接続していてもよい。また、磁気ディスク装置920の代わりに、光ディスク装置、メモリカード(登録商標)読み書き装置などの記憶装置でもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置の一例である。
通信ボード915、キーボード902、マウス903、スキャナ装置907、FDD904などは、入力装置の一例である。
また、通信ボード915、表示装置901、プリンタ装置906などは、出力部、出力装置の一例である。
【0060】
通信ボード915は、ネットワークに接続される。例えば、通信ボード915は、LAN(ローカルエリアネットワーク)、インターネット、WAN(ワイドエリアネットワーク)、SAN(ストレージエリアネットワーク)などに接続されていても構わない。
【0061】
磁気ディスク装置920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。
プログラム群923のプログラムは、CPU911がオペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922を利用しながら実行する。
【0062】
また、RAM914には、CPU911に実行させるオペレーティングシステム921のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。
また、RAM914には、CPU911による処理に必要な各種データが格納される。
【0063】
また、ROM913には、BIOS(Basic Input Output System)プログラムが格納され、磁気ディスク装置920にはブートプログラムが格納されている。
情報処理装置100の起動時には、ROM913のBIOSプログラム及び磁気ディスク装置920のブートプログラムが実行され、BIOSプログラム及びブートプログラムによりオペレーティングシステム921が起動される。
【0064】
上記プログラム群923には、実施の形態1〜3の説明において「〜部」として説明している機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0065】
ファイル群924には、実施の形態1〜3の説明において、「〜の判断」、「〜の計算」、「〜の算出」、「〜の比較」、「〜の取得」、「〜の更新」、「〜の設定」、「〜の登録」、「〜の選択」等として説明している処理の結果を示す情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。
抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリ、レジスタ、キャッシュメモリ、バッファメモリ等に一時的に記憶される。
また、実施の形態1〜3で説明しているフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク、CDD905のコンパクトディスク、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0066】
また、実施の形態1〜3の説明において「〜部」として説明しているものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明しているものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、実施の形態1〜3の「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、実施の形態1〜3の「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0067】
このように、実施の形態1〜3に示す情報処理装置100は、処理装置たるCPU、記憶装置たるメモリ、磁気ディスク等、入力装置たるキーボード、マウス、通信ボード等、出力装置たる表示装置、通信ボード等を備えるコンピュータであり、上記したように「〜部」として示された機能をこれら処理装置、記憶装置、入力装置、出力装置を用いて実現するものである。
【符号の説明】
【0068】
100 情報処理装置、200 シミュレーション実行部、300 見通し計算部、301 方位角・仰角算出部、302 テーブルデータ取得部、303 見通し判定部、400 テーブル作成部、401 遠方エリア判定部、402 地図データ取得部、403 メッシュ別角度算出部、404 制限仰角決定部、500 地図データ記憶部、600 テーブル記憶部、601 テーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の観測位置から目標を見通せるか否かを判定する情報処理装置であって、
所定の刻み幅で方位角を示すとともに、前記特定の観測位置の周囲の地形に基づき方位角の刻みごとに導出された目標の見通しに必要な前記特定の観測位置における仰角の値を制限仰角値として方位角の刻みごとに示す制限仰角情報を記憶する制限仰角情報記憶部と、
前記特定の観測位置と特定の目標との方位角の値と、前記特定の観測位置と前記特定の目標との仰角の値を算出する方位角・仰角算出部と、
前記方位角・仰角算出部により算出された方位角の値に対応する制限仰角値と前記方位角・仰角算出部により算出された算出仰角値とを比較して、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せるか否かを判定する見通し判定部とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記制限仰角情報記憶部は、
方位角の刻みごとに、目標の見通しに必要な最低仰角の値を制限仰角値として示す制限仰角情報を記憶することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記見通し判定部は、
算出仰角値が制限仰角値以上である場合に、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せると判定し、算出仰角値が制限仰角値未満である場合に、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せないと判定することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制限仰角情報記憶部は、
方位角の刻みごとに、制限仰角値の導出の元となった位置と前記特定の観測位置との間の距離を制限距離として示す制限仰角情報を記憶しており、
前記見通し判定部は、
前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せないと判定した場合に、前記方位角・仰角算出部により算出された方位角の値に対応する制限距離と、前記特定の観測位置と前記特定の目標との間の目標間距離とを比較して、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せるか否かを再度判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記見通し判定部は、
目標間距離が制限距離以下である場合に、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せると判定し、目標間距離が制限距離を超える場合に、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せないと判定することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記情報処理装置は、更に、
特定の観測位置の周囲を表す地図データであって、複数のメッシュに区分され、メッシュごとに、各メッシュが対応する対応エリアの緯度、経度及び高度が示される地図データを取得する地図データ取得部と、
各メッシュの対応エリアの緯度、経度及び高度と前記特定の観測位置の緯度、経度及び高度に基づいて、前記特定の観測位置から各メッシュの対応エリアを観測する場合の前記特定の観測位置と対応エリアとの方位角の値及び仰角の値をメッシュごとに算出するメッシュ別角度算出部と、
前記特定の観測位置を中心とする方位角を所定の刻み幅により区分するとともに、各メッシュを前記刻み幅に従って前記特定の観測位置との方位角により分類し、同じ方位角の刻みに分類された2以上のメッシュの仰角値の中から最も高い仰角値を制限仰角値として選択して、方位角の刻みごとに制限仰角値を決定する制限仰角決定部とを有し、
前記制限仰角情報記憶部は、
前記制限角度抽出部により決定された方位角の刻みごとの制限仰角値が示されている制限仰角情報を記憶していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記特定の観測位置の周囲を表す地図データであって、複数のメッシュに区分され、メッシュごとに、各メッシュが対応する対応エリアの緯度、経度及び高度が示される地図データを取得する地図データ取得部と、
各メッシュの対応エリアの緯度、経度及び高度と前記特定の観測位置の緯度、経度及び高度に基づいて、前記特定の観測位置から各メッシュの対応エリアを観測する場合の前記特定の観測位置と対応エリアとの方位角の値及び仰角の値をメッシュごとに算出するメッシュ別角度算出部と、
前記特定の観測位置を中心とする方位角を所定の刻み幅により区分するとともに、各メッシュを前記刻み幅に従って前記特定の観測位置との方位角により分類し、同じ方位角の刻みに分類された2以上のメッシュの仰角値の中から最も高い仰角値を制限仰角値として選択して、方位角の刻みごとに制限仰角値を決定する制限仰角決定部と、
前記制限角度抽出部により決定された方位角の刻みごとの制限仰角値が示されている制限仰角情報を記憶する制限仰角情報記憶部とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
前記地図データ取得部は、
前記特定の観測位置から観測する場合に地球の丸みの影響を受ける遠方エリアのメッシュを除外した地図データを取得することを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記メッシュ別角度算出部は、
各メッシュの対応エリアと前記特定の観測位置との間の距離を算出し、
対応エリアと前記特定の観測位置との間の距離が所定の基準距離未満のメッシュに対しては第1の算出方法により方位角の値及び仰角の値を算出し、対応エリアと前記特定の観測位置との間の距離が所定の基準距離以上のメッシュに対しては前記第1の算出方法と異なる第2の算出方法により方位角の値及び仰角の値を算出することを特徴とする請求項7又は8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記メッシュ別角度算出部は、
前記第1の算出方法として、メッシュの中心に相当する対応エリア内の位置と前記特定の観測位置との方位角の値及び仰角の値を算出し、
前記第2の算出方法として、メッシュの中心に相当する対応エリア内の位置と前記特定の観測位置との方位角の値を算出するとともに、対応エリアの全域を対象として複数の仰角の値を算出し、算出した複数の仰角の値の中から最低の値を選択することを特徴とする請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記メッシュ別角度算出部は、
方位角の刻み幅内にメッシュ幅が収まる距離を前記基準距離とすることを特徴とする請求項9又は10に記載の情報処理装置。
【請求項1】
特定の観測位置から目標を見通せるか否かを判定する情報処理装置であって、
所定の刻み幅で方位角を示すとともに、前記特定の観測位置の周囲の地形に基づき方位角の刻みごとに導出された目標の見通しに必要な前記特定の観測位置における仰角の値を制限仰角値として方位角の刻みごとに示す制限仰角情報を記憶する制限仰角情報記憶部と、
前記特定の観測位置と特定の目標との方位角の値と、前記特定の観測位置と前記特定の目標との仰角の値を算出する方位角・仰角算出部と、
前記方位角・仰角算出部により算出された方位角の値に対応する制限仰角値と前記方位角・仰角算出部により算出された算出仰角値とを比較して、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せるか否かを判定する見通し判定部とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記制限仰角情報記憶部は、
方位角の刻みごとに、目標の見通しに必要な最低仰角の値を制限仰角値として示す制限仰角情報を記憶することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記見通し判定部は、
算出仰角値が制限仰角値以上である場合に、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せると判定し、算出仰角値が制限仰角値未満である場合に、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せないと判定することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制限仰角情報記憶部は、
方位角の刻みごとに、制限仰角値の導出の元となった位置と前記特定の観測位置との間の距離を制限距離として示す制限仰角情報を記憶しており、
前記見通し判定部は、
前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せないと判定した場合に、前記方位角・仰角算出部により算出された方位角の値に対応する制限距離と、前記特定の観測位置と前記特定の目標との間の目標間距離とを比較して、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せるか否かを再度判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記見通し判定部は、
目標間距離が制限距離以下である場合に、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せると判定し、目標間距離が制限距離を超える場合に、前記特定の観測位置から前記特定の目標が見通せないと判定することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記情報処理装置は、更に、
特定の観測位置の周囲を表す地図データであって、複数のメッシュに区分され、メッシュごとに、各メッシュが対応する対応エリアの緯度、経度及び高度が示される地図データを取得する地図データ取得部と、
各メッシュの対応エリアの緯度、経度及び高度と前記特定の観測位置の緯度、経度及び高度に基づいて、前記特定の観測位置から各メッシュの対応エリアを観測する場合の前記特定の観測位置と対応エリアとの方位角の値及び仰角の値をメッシュごとに算出するメッシュ別角度算出部と、
前記特定の観測位置を中心とする方位角を所定の刻み幅により区分するとともに、各メッシュを前記刻み幅に従って前記特定の観測位置との方位角により分類し、同じ方位角の刻みに分類された2以上のメッシュの仰角値の中から最も高い仰角値を制限仰角値として選択して、方位角の刻みごとに制限仰角値を決定する制限仰角決定部とを有し、
前記制限仰角情報記憶部は、
前記制限角度抽出部により決定された方位角の刻みごとの制限仰角値が示されている制限仰角情報を記憶していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記特定の観測位置の周囲を表す地図データであって、複数のメッシュに区分され、メッシュごとに、各メッシュが対応する対応エリアの緯度、経度及び高度が示される地図データを取得する地図データ取得部と、
各メッシュの対応エリアの緯度、経度及び高度と前記特定の観測位置の緯度、経度及び高度に基づいて、前記特定の観測位置から各メッシュの対応エリアを観測する場合の前記特定の観測位置と対応エリアとの方位角の値及び仰角の値をメッシュごとに算出するメッシュ別角度算出部と、
前記特定の観測位置を中心とする方位角を所定の刻み幅により区分するとともに、各メッシュを前記刻み幅に従って前記特定の観測位置との方位角により分類し、同じ方位角の刻みに分類された2以上のメッシュの仰角値の中から最も高い仰角値を制限仰角値として選択して、方位角の刻みごとに制限仰角値を決定する制限仰角決定部と、
前記制限角度抽出部により決定された方位角の刻みごとの制限仰角値が示されている制限仰角情報を記憶する制限仰角情報記憶部とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
前記地図データ取得部は、
前記特定の観測位置から観測する場合に地球の丸みの影響を受ける遠方エリアのメッシュを除外した地図データを取得することを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記メッシュ別角度算出部は、
各メッシュの対応エリアと前記特定の観測位置との間の距離を算出し、
対応エリアと前記特定の観測位置との間の距離が所定の基準距離未満のメッシュに対しては第1の算出方法により方位角の値及び仰角の値を算出し、対応エリアと前記特定の観測位置との間の距離が所定の基準距離以上のメッシュに対しては前記第1の算出方法と異なる第2の算出方法により方位角の値及び仰角の値を算出することを特徴とする請求項7又は8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記メッシュ別角度算出部は、
前記第1の算出方法として、メッシュの中心に相当する対応エリア内の位置と前記特定の観測位置との方位角の値及び仰角の値を算出し、
前記第2の算出方法として、メッシュの中心に相当する対応エリア内の位置と前記特定の観測位置との方位角の値を算出するとともに、対応エリアの全域を対象として複数の仰角の値を算出し、算出した複数の仰角の値の中から最低の値を選択することを特徴とする請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記メッシュ別角度算出部は、
方位角の刻み幅内にメッシュ幅が収まる距離を前記基準距離とすることを特徴とする請求項9又は10に記載の情報処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−224198(P2010−224198A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71129(P2009−71129)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]