説明

情報記憶装置及びストレージシステム

【課題】ビットパターンド媒体を搭載する磁気ディスク装置において、サーボパターン部の磁化状態を安定に保つようにする。
【解決手段】データ部とサーボパターン部とを有するビットパターンド記憶媒体を搭載する磁気ディスク装置において、この記憶媒体の回転時に、サーボパターン部の半径方向の全域に対向可能な部位に着磁機構を設け、サーボパターン部の再生波形からサーボパターン部の磁性ドットの保持力の低下、或いは磁化反転を検出し、保磁力低下時には着磁機構に弱い電流を供給して磁化の反転を防止し、磁性ドットの反転数が所定値を超えた時にはデータ部のデータを外部のメモリに退避させた後に、強い電流を供給して反転した磁性ドットの磁化の向きを正常な向きに反転させ、外部のメモリに退避させたデータを元に戻すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は情報記憶装置及びストレージシステムに関する。特に、この出願は磁気により情報を記録・再生する磁気ディスク装置であって、サーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターン構造をもつ磁気記憶媒体を用いる情報記憶装置及びストレージシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクなどの磁気ディスク媒体は、粒径10nm以下のグラニュラ状の磁性粒からなる連続膜媒体で構成されており、1ビットは数十個の磁性粒より構成されていた。一方、近年の記録媒体の高記録密度化に伴い磁性粒の更なる微細化が進められている。しかし、微細化により個々の磁性粒の体積が減少すると、磁化状態の安定性が減少するので、熱ゆらぎにより記録媒体が劣化するという問題が生じる。
【0003】
そこで、グラニュラ状の磁性粒ではなく、単磁区磁性膜1ドットで1ビットを構成するパターンド媒体が注目されている。パターンド媒体に使用される垂直磁気記憶媒体は、トラック方向のディスク媒体上に孤立した磁性ドットを形成し、この磁性ドットを情報単位(ビット)とするものであり、ビットパターンド媒体(BPM)と呼ばれている。
【0004】
こうしたパターン加工したBPMを用いる磁気ディスク装置のサーボ信号は、データビットと同様に単磁区形成された領域(サーボパターン部)に予め埋め込まれている。この場合、サーボ信号を与えるサーボパターン部の磁化状態は、通常、磁化の向きが媒体の表面側に向かう上向き、またはその反対の下向きのどちらか一方である。そして、サーボパターン部では、信頼性を確保するためにデータの長さが長いので、データ部において情報単位となるドットの面積(体積)に比べて、サーボパターン部のドットの面積(体積)はかなり大きい。
【0005】
また、サーボパターン部では全てのビット磁化が同じ方向を向いているため、隣接ビットから発生する磁束が互いにぶつかり、磁性的不安定により一部の磁化が反転する現象が生じる。サーボパターンは一般に半径方向に長いパターンを含み、かつ単磁区で形成されているために、一度ビットの磁化が反転すると、数μmに渡ってパターンの反転が伝播してしまい、複数のトラックでサーボ情報の破壊が生じてしまう問題点があった。更に、サーボパターン部では熱ゆらぎによる信号の劣化がデータ部より生じ易い。
【0006】
そして、サーボパターン部のドットに記録されるサーボ信号は、一旦記録されると再記録されることがない。この結果、サーボパターン部のドットの磁化状態に反転が発生したり、磁化状態が熱ゆらぎによって不安定となると、磁気ヘッドのトラック位置決め精度が悪化するという問題があった。このような問題に対して、サーボ信号の再生出力の低下を検出して、サーボパターンの再着磁をすることが、特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−66006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、再生出力の検出においてサーボ信号の低下が生じている状態は、トラックへのヘッドの位置決め精度が劣化している状態であり、再着磁をおこなう領域へのヘッドの位置決め精度が劣化していることである。これを改善するためにサーボ信号低下の判定を厳しくすれば、特許文献1に開示の技術では頻繁に再着磁を行うことになる。すると、ユーザのディスク装置の使用中に再着磁が必要になったり、再着磁処理が長くなって消費電力が増大したりするなどの課題が生じ得る。
【0009】
そこでこの出願は、孤立した磁性ドットをサーボパターン部に備えるBPMを搭載した情報記憶装置において、サーボパターン部のドットの上向き、あるいは下向きの磁化状態が劣化した時には磁化状態を回復させ、磁化状態に反転が多く見られる時にはサーボパターン部に再着磁処理を施すことができる、使い勝手の良い情報記憶装置、並びにストレージシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する情報記憶装置は、記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるピットパターンド型の記憶媒体と、記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、記憶媒体の半径方向に磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、直流電流が供給されることにより、記憶媒体に対して垂直方向の磁場を印加する磁場印加機構と、直流電流の大きさを、サーボ領域の各ビットの磁化状態に応じて制御する制御回路とを備えることを特徴としている。
【0011】
前記目的を達成するストレージシステムの第1の形態は、複数の情報記憶装置を備えるストレージシステムであって、各情報記憶装置が、記憶層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるピットパターンド型の記憶媒体と、記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、記憶媒体の半径方向に磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、直流電流が供給されることにより、記憶媒体に対して垂直方向の磁場を印加する磁場印加機構と、サーボ領域にあるビットの磁化状態の異常数を検出する異常検出部を備え、異常数が所定数を超えた時に、磁場印加機構に記録層の核生成磁界を超える磁界を発生させる直流電流を供給する制御回路とを有することを特徴としている。
【0012】
また、前記目的を達成するストレージシステムの第2の形態は、少なくとも1つの情報記憶装置と、情報記憶装置のデータを一時的に退避させることが可能なメモリを備えるデータ退避装置とを備えるストレージシステムであって、情報記憶装置が、記憶層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるピットパターンド型の記憶媒体と、記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、記憶媒体の半径方向に磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、直流電流が供給されることにより、記憶媒体に対して垂直方向の磁場を印加する磁場印加機構と、サーボ領域にあるビットの磁化状態の異常数を検出する異常検出部を備え、異常数が所定数を超えた時に、磁場印加機構に記録層の飽和磁界を発生させる直流電流を供給する制御回路とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この出願の情報記憶装置、並びにストレージシステムによれば、電流により磁場を発生する磁場印加機構に、サーボパターン部のドットの上向き、あるいは下向きの磁化状態が劣化した時には、弱い電流を流すことによって磁化状態を回復させることができ、磁化状態に反転が多く見られる時には、強い電流を流すことによってサーボパターン部に再着磁処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)はサーボパターン部とデータ部を備えた磁気ディスクを搭載した従来のハードディスク装置の概略構成を示す平面図、(b)は(a)に示したサーボパターン部とデータ部の磁性ドットのパターンの一例を示す部分拡大平面図、(c)は(b)に示したサーボパターン部の部分拡大断面図、(d)は(b)に示したサーボパターン部の磁性ドットのパターンの一部に磁性反転が生じた状態を示す部分拡大平面図、(e)は(d)に示したサーボパターン部の磁性ドットが磁性反転を起こした部分の部分拡大断面図である。
【図2】(a)はサーボパターン部とデータ部を備えた磁気ディスクを搭載したこの出願の一実施例のハードディスク装置の概略構成を示す平面図、(b)は(a)に示した着磁機構を構成する電磁石の第1の実施例を備えたハードディスク装置の縦断面を示す断面図、(c)は(b)に示した第1の実施例の電磁石の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)は図2(a)に示した着磁機構を構成する電磁石の第2の実施例を備えたハードディスク装置の縦断面を示す断面図、(b)は図2(a)に示した着磁機構を構成する電磁石の第3の実施例を備えたハードディスク装置の縦断面を示す断面図、(c)は図2(a)に示した着磁機構を構成する電磁石の第4の実施例を備えたハードディスク装置の平面図、(d)は図2(a)に示した着磁機構を構成する電磁石の第5の実施例を備えたハードディスク装置の平面図である。
【図4】図2(a)に示した制御回路による着磁機構の通電制御の一実施例の手順を示すフローチャートである。
【図5】(a)は図1(e)と同様のサーボパターン部の磁性ドットが磁化反転を起こした部分の部分拡大断面図、(b)は(a)に示すサーボパターン部を再生した時の再生波形を示す波形図、(c)は図1(c)と同様のサーボパターン部において保磁力が劣化した磁性ドットの状態を示す部分拡大断面図、(d)は(c)に示すサーボパターン部を再生した時の再生波形を示す波形図である。
【図6】(a)はストレージシステムにおいてサーボパターン部の磁性ドットが磁化反転を起こしたハードディスク装置のデータを磁化反転を起こしていないハードディスク装置に退避した後に元に戻す様子を示す図、(b)はサーボパターン部の磁性ドットが磁化反転を起こしたハードディスク装置のデータを退避するために再着磁支援装置を接続した構成を示す図である。
【図7】(a)は図2(a)に示した着磁機構に供給する電流と発生磁界の関係を示す特性図、(b)はビットパターン型媒体のサーボパターン部にある磁性ビットの磁化特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を用いてこの出願の記憶装置の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、その前に、図1(a)から図1(e)を用いて、情報記憶装置である従来のハードディスク装置のサーボパターン部における磁化反転について説明する。
【0016】
図1(a)は磁気ディスク4を搭載した従来のハードディスク装置9の概略構成を示すものである。磁気ディスク4は垂直記録用のビットパターンド型の磁気記憶媒体であり、データを記録するデータ部Dと、トラックデータやセクタデータを含むサーボデータが記録されたサーボパターン部Sがある。図1(a)にはこのデータ部Dとサーボパターン部Sの磁気ディスク4の上の位置を示してある。
【0017】
磁気ディスク4は、ハードディスク装置9のベース部2の上の中央部から一方の側にオフセットして設けられたスピンドルモータ3に取り付けられており、スピンドルモータ3によって回転する。磁気ディスク4はスピンドルモータ3に複数枚設けられることもある。ハードディスク装置9のベース部2の上の中央部から他方の側にオフセットした位置には、磁気ディスク4のトラックにアクセスしてデータの読み書きを行うヘッド(図示せず)を備えるスイングアーム5がある。ヘッドはスライダ8に設けられており、スライダ8はスイングアーム5の先端部に取り付けられている。スイングアーム5は回転軸6を中心にして磁気ディスク4の上をスイングするように構成されている。
【0018】
回転軸6に対してスイングアーム5と反対側には、スイングアーム5をスイングさせるボイスコイルモータ(VCM)7がある。ボイスコイルモータ7によるスイングアーム5の回転駆動(位置決め制御)、並びにスライダ8に設けられたヘッドによるデータの磁気ディスク4への読み書き制御は、制御回路10によって行われる。また、制御回路10には外部の機器と情報を遣り取りする入出力端子(図示せず)がある。
【0019】
図1(b)は図1(a)に示したサーボパターン部Sとデータ部Dを部分的に拡大して示すものである。サーボパターン部Sとデータ部Dにはそれぞれ孤立した磁性ドット41,42がある。サーボパターン部Sの磁性ドット41はパターンを形成しており、その磁化方向(垂直方向の磁化の向き)は全て同じである。また、データ部Dの磁性ドット42はデータを記録するものであり、各磁性ドット42の磁化方向はデータによって異なる。また、サーボパターン部Sの磁性ドット41の面積(体積)の方が、データ部Dの磁性ドット42の面積(体積)よりも大きい。例えば、サーボパターン部Sにある磁性ドット41には、磁気ディスクの半径方向の一辺の方が、データ部Dにある磁性ドット42の一辺の4〜5倍大きく形成されているものがある。
【0020】
図1(c)は図1(b)に示したサーボパターン部Sの磁性ドット41を部分的に拡大して示す断面図である。サーボパターン部Sの磁性ドット41はディスクベース40の上に形成されており、磁気ディスク4の製造時に予め外部磁界によって同じ面内では全て同じ向きに磁化されている。図1(c)の各磁性ドット41に示される矢印は、磁性ドット41の磁化の向きを示している。サーボパターン部Sの磁性ドット41の磁化の向きは、磁気ディスク4が正常な状態では、磁気ディスク装置9の動作中に変わることはない。
【0021】
図1(d)も図1(a)に示したサーボパターン部Sとデータ部Dを部分的に拡大して示すものであるが、この図では、サーボパターン部Sの磁性ドット41の一部が磁化反転を起こした状態を示している。磁化反転した磁性ドット41には網点を付してある。図1(e)は図1(c)に示した磁性ドット41と同じ部位を示しており、一部の磁性ドット41が磁化反転した場合を示している。図1(d)の各磁性ドット41に示される矢印は磁性ドット41の磁化の向きを示している。磁化反転した磁性ドット41には網点を付してある。
【0022】
サーボパターン部Sでは、同一面内の全ての磁性ドット41の磁化の向きが同じであるので、図1(c)に示すように、磁束がぶつかってビット磁化が不安定になる。この結果、図1(e)に示すように、磁性ドット41では磁束がループを形成するよう自発的に一部に磁化反転してしまうことがあった。また、熱ゆらぎによって磁性ドット41の磁化が不安定になり、磁性ドット41の保持力が弱まることもあった。そして、サーボパターン部Sの磁性ドット41の一部が磁化反転したり、磁性ドットの保持力が弱まると、ヘッドのトラックへの位置決め精度が劣化してしまう。
【0023】
この出願はこのような課題を解消するためになされたものであり、この出願の一実施例の情報記憶装置としてのハードディスク装置1の構成を図2(a)に示す。この実施例のハードディスク装置1の基本構成は、図1(a)で説明した従来のハードディスク装置9の構成と同じである。よって、この実施例のハードディスク装置1において、従来のハードディスク装置9の構成と同じ構成部材には同じ符号を付し、同じ構成部材の詳細な説明は省略する。
【0024】
ハードディスク装置1にはそのベース部2に、スピンドルモータ3に取り付けられた磁気ディスク4、回転軸6に軸支されてボイスコイルモータ7によって駆動されるスイングアーム5、及び制御回路10がある。磁気ディスク4にデータ部Dとサーボパターン部Sがある点、及びスイングアーム5の先端部にヘッドが設けられたスライダ8が取り付けられている点も同様である。
【0025】
以上の構成に加えて、この実施例では、磁気ディスク4を上下方向に挟む着磁機構20と、着磁機構の電源回路19を設けた。着磁機構の電源回路19は、弱電流供給源12、強電流供給源13、及び切換スイッチ14を設けて構成した。弱電流供給源12と強電流供給源13とはハードディスク装置1の外部にある電流発生装置11に接続した。また、弱電流供給源12から出力される弱い電流(例えば数十ミリアンペア)と強電流供給源13から出力される強い電流(例えば数アンペア)は、切換スイッチ14によってどちらか一方を選択して着磁機構20に供給されるようにした。切換スイッチ14の切り換えは制御回路10が行っても良いが、手動で切り換えられるようにしても良いものである。
【0026】
この実施例の着磁機構20は電磁石20Aであり、図2(b)、(c)に電磁石20Aの第1の実施例の構成を示す。第1の実施例の電磁石20Aは、図2(c)に示すように、扇状の金属プレート21の周囲にコイル22を複数回巻いたものである。電磁石20Aは2つあり、図2(b)に示すように、一方はハードディスク装置1の上側の筐体2Aに取り付け、他方はベース部2に取り付けて、磁気ディスク4を挟むようにした。電磁石20Aの磁気ディスク4の半径方向の長さは、サーボパターン部Sが存在する磁気ディスク4の内周部から外周部を全て覆うような長さである。電磁石20Aの円周方向の長さは得に規定されるものではない。
【0027】
2つの電磁石20Aは切換スイッチ14に接続し、弱電流供給源12と強電流供給源13の何れかから同じ向きの電流を流すと、図2(b)に示すように、一方の電磁石20Aから他方の電磁石20Aに向かう磁場が形成される。この磁場の向きは、磁気ディスク4のサーボパターン部にある磁性ドット41(図1参照)の磁化の向きと同じになるように、弱電流供給源12又は強電流供給源13から電磁石20Aに電流が供給されるようにした。
【0028】
この出願における着磁機構20としては、前述の第1の実施例の電磁石20Aの構成の他にも種々の構成が可能である。これを図3(a)〜(d)を用いて説明する。
図3(a)は着磁機構20の第2の実施例の電磁石20Bの構成を示すものであり、図2(b)と同様にハードディスク装置1の縦断面を用いて説明する。なお、着磁機構20にある電磁石20Bの構成以外のハードディスク装置1の構成は、図2(b)と同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0029】
第1の実施例の電磁石20Aは、扇状の金属プレート21の外周部にコイル22が巻回されていた。一方、第2の実施例の電磁石20Bは、ハードディスク装置1の上側の筐体2Aに取り付けた金属プレート21とベース部2に取り付けた金属プレート21を、ヨーク23で結合したものであり、このヨーク23にコイル24を巻いて構成した。電磁石20Bは切換スイッチ14に接続し、弱電流供給源12と強電流供給源13の何れかから電流を流すと、一方の金属プレート21から他方の金属プレート21に向かう磁場が形成されるようにした。この磁場の向きは、磁気ディスク4のサーボパターン部にある磁性ドット41(図1参照)の磁化の向きと同じになるように、弱電流供給源12又は強電流供給源13から電磁石20Bに電流が供給されるようにした。
【0030】
図3(b)は着磁機構20の第3の実施例の電磁石20Cの構成を示すものであり、図2(b)と同様にハードディスク装置1の縦断面を用いて説明する。なお、着磁機構20にある電磁石20Cの構成以外のハードディスク装置1の構成は、図2(b)と同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0031】
第2の実施例の電磁石20Bは、ハードディスク装置1の上側の筐体2Aに取り付けた金属プレート21とベース部2に取り付けた金属プレート21をヨーク23で結合し、このヨーク23にコイル24を巻いて構成したものでる。一方、第3の実施例の電磁石20Cは、ハードディスク装置1の上側の筐体2Aとベース部2にそれぞれ金属プレート21を取り付けてヨーク23で結合した点は同じである。相違点は、2枚の磁気ディスク4の間の空間に、金属プレート21に平行な中間金属プレート25を設けた点と、この中間金属プレート25の基部をヨーク23に取り付けた点である。
【0032】
そして、中間金属プレート25より上側のヨーク23Aと、下側のヨーク23Bとにはそれぞれ、別々にコイル24Aと24Bを巻き付けた。コイル24Aと24Bはそれぞれ逆向きに巻いて、それぞれ切換スイッチ14に接続した。従って、弱電流供給源12と強電流供給源13の何れかから電磁石20Bに電流を流すと、上側のヨーク23Aと、下側のヨーク23Bに流れる磁力線の向きは逆になるが、中間金属プレート25に流れる磁力線の向きは同じになる。
【0033】
図3(c)は着磁機構20の第4の実施例の電磁石20Dの構成を示すものであり、図2(a)と同様にハードディスク装置1の平面図を用いて説明する。なお、着磁機構20にある電磁石20Dの構成以外のハードディスク装置1の構成は、図2(a)と同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。また、図3(c)には着磁機構の電源回路の図示は省略してある。
【0034】
第4の実施例の電磁石20Dは、第1〜第3の実施例の電磁石20A〜20Cと異なり、スイングアーム5に取り付けたものである。即ち、第1〜第3の実施例では電磁石20A〜20Cが固定されていたのに対して、第4の実施例の電磁石20Dは、スイングアーム5によって磁気ディスク4上を移動することができる。電磁石20Dのスイングアーム5への取付位置は、スイングアーム5のスイングによって電磁石20Dが磁気ディスク4の半径方向を全てカバーする位置ならどこでも良い。
【0035】
電磁石20Dとしては、図示は省略するが第1の実施例の電磁石20Aと同様に、矩形の金属プレートの外周部にコイルを巻いて形成することができる。この場合、電磁石20Dの移動軌跡に対向するベース部2の部分には、ヨークを設けて磁路を形成するか、或いは大きな電磁石を設けることができる。また、最下部のスイングアーム5に最上部のスイングアーム5に取り付けた電磁石20Dと同型の電磁石を設けることもできる。なお、電磁石20Dに通電するのは、スイングアーム5に設けられたヘッドが、磁気ディスク4に対してデータの読み書きを行っていない時であるので、電磁石20Dがスイングアーム5に取り付けられていても、ヘッドの読み書き動作に影響は与えない。
【0036】
図3(d)は着磁機構20の第5の実施例の電磁石20Eの構成を示すものであり、図2(a)と同様にハードディスク装置1の平面図を用いて説明する。なお、着磁機構20にある電磁石20Eの構成以外のハードディスク装置1の構成は、図2(a)と同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。また、図3(c)には着磁機構の電源回路の図示は省略してある。
【0037】
第5の実施例の電磁石20Eは、第1〜第3の実施例の電磁石20A〜20Cと異なり、スイングアーム5とは別の第2のスイングアーム15に取り付けられている。第2のスイングアーム15は回転軸16に取り付けられており、第4の実施例の電磁石20Dと同様に磁気ディスク4上を移動することができる。第2のスイングアーム15は最上部の磁気ディスク4の上側と最下部の磁気ディスク4の下側に最低2つ設ければ良い。上下2つの第2のスイングアーム15への電磁石20Eの取付位置は同じとし、2つの電磁石20Eは対向させて第2のスイングアーム15に取り付けた。
【0038】
電磁石20Eの第2のスイングアーム15への取付位置は、第2のスイングアーム15のスイングによって電磁石20Eが磁気ディスク4の半径方向を全てカバーする位置ならどこでも良い。この実施例では。第2のスイングアーム15の先端部に電磁石20Eを取り付けた。電磁石20Eとしては、図示は省略するが第1の実施例の電磁石20Aと同様に、矩形の金属プレートの外周部にコイルを巻いて形成することができる。また、第2のスイングアーム15は、磁気ディスク4に対して正確な位置決めは必要がないので、簡単な駆動機構でスイングさせれば良い。
【0039】
以上、この出願の着磁機構20の構成について幾つかの実施例を説明したが、ここで、着磁機構20への通電制御について説明する。着磁機構20に通電する場合は、(1)磁気ディスク4のサーボパターン部Sの磁性ドット41に基準値を超える磁化反転があった場合と、(2)磁気ディスク4のサーボパターン部Sの磁性ドット41の保持力が熱ゆらぎの影響で弱まった時に磁化の方向を元の状態に維持して磁化反転を防ぐ場合、の2通りの場合である。(1)の場合は着磁機構20にデータ部の磁性ドット42の磁化特性を一方向に着磁することができる強い電流を流し、(2)の場合は着磁機構に弱い電流を流す。従って、(1)の場合は、着磁機構20に通電する前にデータ部Dのデータを別の場所に退避させ、着磁機構20への通電が終了した後に、データを元に戻す必要がある。
【0040】
図4は、図2(a)に示した制御回路10による着磁機構20への通電制御の一実施例の手順を示すものである。ステップ401では、サーボパターンの読み込みを行う。そして、この読み込み時にサーボパターン部の磁性ドットの磁化反転数を計数する。図5(a)に示すように、サーボパターン部の磁性ドット41に磁化反転があると、図5(b)に示すように、磁化反転した磁性ドット41の再生波形が、反転発生検出閾値Tを下回る。制御回路10は磁化反転した磁性ドット41の再生波形が、反転発生検出閾値Tを下回った数を計数することによって、磁化反転数Rを検出することができる。
【0041】
図4のステップ402では磁化反転が有るかどうかを判定する。磁化反転がない場合(NO)はステップ411に進み、磁化反転がある場合(YES)はステップ403に進む。まず、磁化反転がある場合について説明する。ステップ403では磁化反転数Rが基準値Kを超えたか否かを判定する。ここでは先に、磁化反転数Rが基準値Kを超えた場合について説明する。磁化反転数Rが基準値K(例えば3より大きな整数)を超えるとステップ402の判定がYESになり、ステップ404に進む。これは前述の(1)の場合である。従って、この場合はステップ404において、サーボパターン部の磁化反転数が多いハードディスクからデータ部のデータを退避させる。ステップ405はデータの退避が完了したか否かを判定するものであり、データの退避が完了していない場合(NO)はステップ404に戻ってデータの退避を継続し、データの退避が完了した場合(YES)はステップ406に進む。
【0042】
ここで、データの退避について図6を用いて説明する。まず、サーボパターン部の磁化反転数が多いハードディスク1Aが、図6(a)に示すように、ハードディスクが何台も備えられたストレージシステムYで使用されている場合について説明する。この場合は、ストレージシステムYの中にサーボパターン部が磁化反転を起こしていない正常なハードディスク(図には反転非発生ドライブ群と記載)1B〜1Eがあるので、サーボパターン部の磁化反転数が多いハードディスク(図には反転発生ドライブ群と記載)1Aからデータを正常なハードディスク1B〜1Eの空き容量の大きい何れかのハードディスクか、或いは、複数のハードディスク1B〜1Eに分散して退避させる。
【0043】
次に、サーボパターン部の磁化反転数が多いハードディスク1Aが、図6(b)に示すように単独で使用されている場合について説明する。この場合は、例えば、ハードディスク1Aに電流発生回路31と大容量メモリ32とを備えた再着磁支援装置30が接続されている場合は、この再着磁支援装置30の大容量メモリ32に、ハードディスク1Aのデータ部のデータをそっくり退避させる。大容量メモリ32としては、ハードディスク装置や、複数個のフラッシュメモリを備えたSSD(ソリッドステートドライブ)を使用することができる。
【0044】
一方、ステップ403の判定でYESとなったのに、ハードディスク1に再着磁支援装置30が接続されていない場合は、ハードディスク1の制御回路10は、外部に対してこの再着磁支援装置30のハードディスク1への接続を要求する。そして、再着磁支援装置30が接続された時点で、再着磁支援装置30の大容量メモリ32に、ハードディスク1のデータ部のデータをそっくり退避させる。
【0045】
このようにしてサーボパターン部の磁化反転数が多いハードディスク1、1Aからのデータの退避が終了すると、図4のステップ406において図2(a)で説明した切換スイッチ14を強電流供給源13側に切り換える。そして、続くステップ407で強い電流を着磁機構20に流す。このとき、制御回路10はスピンドルモータ3に通電して磁気ディスク4を回転させる。次のステップ408では、着磁機構20によって磁気ディスクの全領域に磁界が印加されたか否かを判定する。磁気ディスク4の全領域に磁界が印加されていない場合(NO)はステップ407に戻って強い電流を着磁機構20に流し続け、磁気ディスク4の全領域に磁界が印加された場合(YES)はステップ409に進む。
【0046】
ステップ409ではデータをサーボパターン部の磁化反転が無くなったハードディスク1Aにデータを戻す処理を行う。ステップ410ではハードディスク1Aの全データが復帰したか否かを判定し、復帰していない場合(NO)はステップ409に戻ってデータを戻す処理を引き続き行い、全データが復帰した場合(YES)はこのルーチンを終了する。データを戻す処理は、ハードディスク1Aが、図6(a)に示すように、ハードディスクが何台も備えられたストレージシステムYで使用されている場合は、データがハードディスク1B〜1Eからハードディスク1Aに戻される。
【0047】
また、ハードディスク1Aが、図6(b)に示すように単独で使用されている場合は、再着磁支援装置30の大容量メモリ32から退避データがハードディスク1に戻される。そして、ステップ410の判定でYESとなった時点で、ハードディスク1の制御回路10は、外部に対してこの再着磁支援装置30のハードディスク1Aからの取り外しを要求すれば良い。
【0048】
次に、図4のステップ402で磁化反転がなかった場合(NO)と、ステップ403で磁化反転数Rが基準値Kを超えなかった場合(NO)について説明する。この場合はステップ411に進み、サーボパターン部の磁性ドットの磁化が劣化したか否かを判定する。サーボパターン部の磁性ドットの磁化が劣化していない場合(NO)はこのままこのルーチンを終了する。
【0049】
一方、図5(c)に示すように、サーボパターン部の磁性ドット41の保持力が低下すると、図5(d)に示すように、保持力の劣化した磁性ドット41の再生波形(実線で示す)が、磁性ドット41が正常な時の再生波形(破線で示す)よりも小さくなる。制御回路10が磁性ドット41の再生波形のレベルの低下によって磁性ドット41の保持力が低下したことを検出すると、ステップ412に進んで図2(a)で説明した切換スイッチ14を弱電流供給源12側に切り換える。
【0050】
そして、続くステップ413で弱い電流を着磁機構20に流す。このとき、制御回路10はスピンドルモータ3に通電して磁気ディスク4を回転させる。次のステップ414では、着磁機構20によって磁気ディスクの全領域に磁界が印加されたか否かを判定する。磁気ディスク4の全領域に磁界が印加されていない場合(NO)はステップ413に戻って弱い電流を着磁機構20に流し続け、磁気ディスク4の全領域に磁界が印加された場合(YES)はこのままこのルーチンを終了する。この手順は磁化が容易に反転しないようにするものであり、定常的又は定期的に行えば良い。
【0051】
ここで、図2(a)で説明した弱電流供給源12と強電流供給源13から着磁機構20に供給す電流について説明する。図7(a)は着磁機構20に供給する電流Iと、着磁機構20のコイルが発生する磁界Hの関係を示している。例えば、着磁機構20のコイルに弱い電流Iw(例えば数十ミリアンペア)を流すとコイルから弱い磁界H2が発生し、強い電流Is(例えば数アンペア)を流すとコイルから強い磁界H1が発生するとする。
【0052】
図7(b)は磁気ディスクのサーボパターン部及びデータ部にある磁性ビットの磁化特性を示す特性図であり、横軸が外部磁界H,縦軸が磁化Mを示している。磁界H2は、データ部の磁性ドットの正の磁化の向きが負に反転しないような大きさの磁界であり、かつ負の磁化の向きが正に反転しないような大きさの磁界であって、核生成磁界Hn未満の磁界である。一方、磁界H2は、サーボパターン部の磁性ドットの磁化の向きを、元の方向に維持するのを助長する。ここで、磁界Hcは磁化が0になる点を示している。
【0053】
この結果、着磁機構20に弱電流供給源12から弱い電流Iwを供給して、着磁機構20に弱い磁界H2を発生させた状態で磁気ディスクを回転させると、着磁機構20の発生する弱い磁界H2により、データ部の磁性ドットの磁化の向きは反転せず、サーボパターン部の磁性ドットの磁化の向きが強化されるので、サーボパターン部の磁性ドットの磁化の安定度を高めることができる。
【0054】
一方、サーボパターン部の磁性ドットの正常な磁化の向きが正方向であった場合、磁界H1は、サーボパターン部の負に反転した磁化の向きを反転させて正方向に戻すような大きさの磁界である。このため、着磁機構20に強電流供給源13から強い電流Isを供給して、着磁機構20に強い磁界H1を発生させた状態で磁気ディスクを回転させると、着磁機構20の発生する強い磁界H1により、サーボパターン部の磁性ドットの磁化の向きが全て正常な方向に再着磁され、データ部の磁性ドットの磁化の向きもサーボパターン部の磁性ドットの磁化の向きと同じになり、データが消滅してしまう。
【0055】
この理由により、着磁機構20に強電流供給源13から強い電流Isを供給する前にデータ部のデータを外部のメモリに退避させ、着磁機構20への強い電流Isの供給終了後に退避させたデータをデータ部に戻すのである。データを戻す時には、サーボパターン部の磁性ドットに反転はないので、データは全て正しく元の位置に戻すことができる。尚、着磁機構20に供給する弱い電流Iwと強い電流Isの値は、着磁機構20の電磁石の大きさ、コイルの巻き数によって異なることは言うまでもない。
【0056】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本発明の容易な理解のために、本発明の具体的な形態を以下に付記する。
【0057】
(付記1) 記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるピットパターンド型の記憶媒体と、
前記記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、前記記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、
直流電流が供給されることにより、前記記憶媒体に対して垂直方向の磁場を印加する磁場印加機構と、
前記直流電流の大きさを、前記サーボ領域の各ビットの磁化状態に応じて制御する制御回路と、を備えることを特徴とする情報記憶装置。
(付記2) 前記磁場印加機構は、前記記憶媒体の回転時に、前記記憶媒体の半径方向の全域に対して対向可能な部位に固定設置されることを特徴とする付記1に記載の情報記憶装置。
(付記3) 前記磁場印加機構は、前記記憶媒体の回転時に、スイングさせることによって前記記憶媒体の半径方向の全域に対して対向可能なアームに設置されることを特徴とする付記1に記載の情報記憶装置。
(付記4) 前記アームが前記アクチュエータであることを特徴とする付記3に記載の情報記憶装置。
(付記5) 前記制御回路は、前記記録層の核生成磁界未満の磁場を発生させる直流電流を、定常的又は定期的に供給することを特徴とする付記1から4の何れかに記載の情報記憶装置。
【0058】
(付記6) 前記磁気ヘッドによって再生された信号により、前記サーボ領域の各ビットの磁化状態が劣化したことが検出された時に、前記制御回路は前記磁場印加機構に、前記記憶媒体の記録層の核生成磁界未満の磁場を発生させる直流電流を供給することを特徴とする付記1から4の何れかに記載の情報記憶装置。
(付記7) 前記磁場印加機構は前記記憶媒体を挟んで設けられた2つの電磁石から構成され、
前記電磁石は、金属プレートと、この金属プレートの周囲に巻回されたコイルとから構成されることを特徴とする付記2に記載の情報記憶装置。
(付記8) 前記磁場印加機構は、前記記憶媒体を挟んで設けられた2つの金属プレートと、この金属プレートを前記記憶媒体の外部で接続するヨークと、このヨークの周囲に巻回されたコイルとを備える電磁石から構成されることを特徴とする付記2に記載の情報記憶装置。
(付記9) 前記磁場印加機構は、前記各記憶媒体の記録面にそれぞれ対向して設けられた、前記記憶媒体の個数よりも1つ多い金属プレートと、前記各金属プレートを前記記憶媒体の外部でそれぞれ接続するヨークと、前記各ヨークの周囲に巻回されたコイルとを備える電磁石から構成されることを特徴とする付記2に記載の情報記憶装置。
(付記10) 前記アームは前記アクチュエータとは独立した回転軸に、前記記憶媒体を挟むように取り付けられ、前記アクチュエータとは別の駆動機構で必要時にのみ駆動されることを特徴とする付記3に記載の情報記憶装置。
【0059】
(付記11) 前記磁場印加機構は、前記アクチュエータの最上部のアームに設置されており、前記情報記憶装置の筐体の底面には前記磁場印加機構の移動軌跡に対応するヨークが設置されていることを特徴とする付記4に記載の情報記憶装置。
(付記12) 前記磁場印加機構は、前記アクチュエータの最上部のアームと最下部のアームの対向する位置に設置されていることを特徴とする付記4に記載の情報記憶装置。
(付記13) 前記直流電流は、前記情報記憶装置に接続した電流発生装置から供給されることを特徴とする付記1から12の何れかに記載の情報記憶装置。
(付記14) 前記情報記憶装置内には、前記電流発生源から供給される直流電流を処理して、弱電流を出力する弱電流供給源と、強電流を出力する強電流供給源、及び前記弱電流と強電流の何れかを前記磁場印加機構に出力するスイッチとが設けられており、
前記スイッチの切り換えは前記制御回路によって実行されることを特徴とする付記13に記載の情報記憶装置。
(付記15) 前記弱電流の値は数十ミリアンペア、前記強電流の値は数アンペアであることを特徴とする付記14に記載の情報記憶装置。
【0060】
(付記16) 複数の情報記憶装置を備えるストレージシステムであって、前記各情報記憶装置が、
記憶層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるピットパターンド型の記憶媒体と、
前記記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、前記記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、
直流電流が供給されることにより、前記記憶媒体に対して垂直方向の磁場を印加する磁場印加機構と、
前記サーボ領域にあるビットの磁化状態の異常数を検出する異常検出部を備え、前記異常数が所定数を超えた時に、前記磁場印加機構に前記記録層の飽和磁界を発生させる直流電流を供給する制御回路と、を有することを特徴とするストレージシステム。
(付記17) ある情報記憶装置の前記異常検出部が記憶媒体における前記サーボ領域のビットの磁化状態の異常数が所定数を超えたことを検出した場合、前記異常検出部を備える前記制御回路は、前記直流電流を前記磁場検出機構に供給する前に、自己の記憶媒体のデータを他の情報記憶装置の記憶媒体に一時的に退避させると共に、前記直流電流を前記磁場印加機構に供給し終えた後に、前記他の情報記憶装置から前記退避させたデータを自己の記憶媒体の同じ場所に戻すことを特徴とする付記16に記載のストレージシステム。
(付記18) 少なくとも1つの情報記憶装置と、前記情報記憶装置のデータを一時的に退避させることが可能なメモリを備えるデータ退避装置とを備えるストレージシステムであって、前記情報記憶装置が、
記憶層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるピットパターンド型の記憶媒体と、
前記記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、前記記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、
直流電流が供給されることにより、前記記憶媒体に対して垂直方向の磁場を印加する磁場印加機構と、
前記サーボ領域にあるビットの磁化状態の異常数を検出する異常検出部を備え、前記異常数が所定数を超えた時に、前記磁場印加機構に前記記録層の飽和磁界を発生させる直流電流を供給する制御回路と、を有することを特徴とするストレージシステム。
(付記19) 前記異常検出部が記憶媒体における前記サーボ領域のビットの磁化状態の異常数が所定数を超えたことを検出した場合、前記制御回路は前記データ退避装置の接続を要求し、前記データ退避装置の接続後、前記直流電流を前記磁場検出機構に供給する前に、記憶媒体のデータを前記データ退避装置に一時的に退避させると共に、前記直流電流を前記磁場印加機構に供給し終えた後に、前記データ退避装置から前記退避させたデータを記憶媒体の同じ場所に戻すことを特徴とする付記18に記載のストレージシステム。
(付記20) 前記メモリがフラッシュメモリであることを特徴とする付記18又は19に記載のストレージシステム。
【符号の説明】
【0061】
1、1A〜1E ハードディスク装置
2 ベース部
4 磁気ディスク
10 制御回路
11 電流発生装置
12 弱電流供給源
13 強電流供給源
14 切換スイッチ
15 第2のスイングアーム
19 着磁機構の電源回路
20 着磁機構
21 金属プレート
22、24、24A,24B コイル
23 ヨーク
25 中間金属プレート
30 再着磁支援装置
41,42 磁性ドット
D データ部
S サーボパターン部
Y ストレージシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるピットパターンド型の記憶媒体と、
前記記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、前記記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、
直流電流が供給されることにより、前記記憶媒体に対して垂直方向の磁場を印加する磁場印加機構と、
前記直流電流の大きさを、前記サーボ領域の各ビットの磁化状態に応じて制御する制御回路と、を備えることを特徴とする情報記憶装置。
【請求項2】
前記磁場印加機構は、前記記憶媒体の回転時に、前記記憶媒体の半径方向の全域に対して対向可能な部位に固定設置されることを特徴とする請求項1に記載の情報記憶装置。
【請求項3】
前記磁場印加機構は、前記記憶媒体の回転時に、スイングさせることによって前記記憶媒体の半径方向の全域に対して対向可能なアームに設置されることを特徴とする請求項1に記載の情報記憶装置。
【請求項4】
前記アームが前記アクチュエータであることを特徴とする請求項3に記載の情報記憶装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記記録層の核生成磁界未満の磁場を発生させる直流電流を、定常的又は定期的に供給することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の情報記憶装置。
【請求項6】
前記磁気ヘッドによって再生された信号により、前記サーボ領域の各ビットの磁化状態が劣化したことが検出された時に、前記制御回路は前記磁場印加機構に、前記記憶媒体の記録層の核生成磁界未満の磁場を発生させる直流電流を供給することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の情報記憶装置。
【請求項7】
複数の情報記憶装置を備えるストレージシステムであって、前記各情報記憶装置が、
記憶層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるピットパターンド型の記憶媒体と、
前記記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、前記記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、
直流電流が供給されることにより、前記記憶媒体に対して垂直方向の磁場を印加する磁場印加機構と、
前記サーボ領域にあるビットの磁化状態の異常数を検出する異常検出部を備え、前記異常数が所定数を超えた時に、前記磁場印加機構に前記記録層の飽和磁界を発生させる直流電流を供給する制御回路と、を有することを特徴とするストレージシステム。
【請求項8】
ある情報記憶装置の前記異常検出部が記憶媒体における前記サーボ領域のビットの磁化状態の異常数が所定数を超えたことを検出した場合、前記異常検出部を備える前記制御回路は、前記直流電流を前記磁場検出機構に供給する前に、自己の記憶媒体のデータを他の情報記憶装置の記憶媒体に一時的に退避させると共に、前記直流電流を前記磁場印加機構に供給し終えた後に、前記他の情報記憶装置から前記退避させたデータを自己の記憶媒体の同じ場所に戻すことを特徴とする請求項7に記載のストレージシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの情報記憶装置と、前記情報記憶装置のデータを一時的に退避させることが可能なメモリを備えるデータ退避装置とを備えるストレージシステムであって、前記情報記憶装置が、
記憶層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるピットパターンド型の記憶媒体と、
前記記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、前記記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、
直流電流が供給されることにより、前記記憶媒体に対して垂直方向の磁場を印加する磁場印加機構と、
前記サーボ領域にあるビットの磁化状態の異常数を検出する異常検出部を備え、前記異常数が所定数を超えた時に、前記磁場印加機構に前記記録層の飽和磁界を発生させる直流電流を供給する制御回路と、を有することを特徴とするストレージシステム。
【請求項10】
前記異常検出部が記憶媒体における前記サーボ領域のビットの磁化状態の異常数が所定数を超えたことを検出した場合、前記制御回路は前記データ退避装置の接続を要求し、前記データ退避装置の接続後、前記直流電流を前記磁場検出機構に供給する前に、記憶媒体のデータを前記データ退避装置に一時的に退避させると共に、前記直流電流を前記磁場印加機構に供給し終えた後に、前記データ退避装置から前記退避させたデータを記憶媒体の同じ場所に戻すことを特徴とする請求項9に記載のストレージシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−205364(P2010−205364A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52304(P2009−52304)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】