説明

情報記憶装置及び情報記憶装置の調整装置、並びにサーボパターン形成方法

【課題】記録再生ヘッド12の位置制御精度を向上する。
【解決手段】磁気ディスク18上の拡張システム領域74に、第1のサーボパターン34及び第2のサーボパターン36を用いて第3のサーボパターン64を磁気ディスク18上に記録する際(記録する前後)の情報である位置決め情報の測定結果を保持させる。これにより、第3のサーボパターン64を記録した以降において、当該第3のサーボパターン64を用いた記録再生ヘッド12の位置制御を行う場合に、記録時データを参照したり解析したりすることができるので、記録再生ヘッド12の高精度な位置制御の実現に寄与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記憶装置及び情報記憶装置の調整装置、並びにサーボパターン形成方法に関し、特に予め記憶媒体上に形成されているサーボパターンを用いて新たなサーボパターンを形成し、当該新たなサーボパターンに基づいて記録再生を実行する情報記憶装置及びその調整装置、並びに記憶媒体に対して新たなサーボパターンを形成するサーボパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置などの情報記憶装置に搭載される磁気ディスクなどの記録媒体上には、当該記録媒体に対するデータの読み書きを実行する記録再生ヘッドの位置決め制御に使用されるサーボパターンが形成されている。記録再生ヘッドは、このサーボパターンの読み出し結果に基づいて、記録媒体上における目標トラックに位置決めされる。
【0003】
記録媒体上に形成されるサーボパターンは、一般的には、記録媒体の内側から外側に向かって放射状に形成されている。また、他のサーボパターンとして、スパイラル形状(螺旋状)のサーボパターンと、それに接続する同心円状のサーボパターンとを有するものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記記録媒体上へのサーボパターンの形成は、外部STW(Servo Track Writing)設備において実行されている。しかしながら、外部STW設備にて記録媒体全面にサーボパターンを記録することとすると、1枚の記録媒体に対するサーボパターンの記録が長時間となるため、1つの設備を1枚の記録媒体が長期にわたって占有することになる。また、上記理由から、外部STW設備の増設などの必要も生じることから、設備投資コストの増大を招くおそれがある。
【0005】
これに対し、近年においては、外部STW設備での設備投資コストの低減を目的として、記録媒体が実装される情報記憶装置内で、サーボパターンを磁気的に書き込む方法が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。この方法では、情報記憶装置内の記録再生ヘッドによりスパイラル形状(螺旋状)のスパイラルサーボパターンを形成し、このスパイラルサーボパターンを用いて、放射状のサーボパターンの形成を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−59671号公報
【特許文献2】米国特許第5668679号明細書
【特許文献3】米国特許第7145744号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近では、スパイラル形状(螺旋状)のサーボパターンをリファレンスとして、サーボパターンを形成する方法の実用化に関する種々の検討がなされている。この方法は、記録媒体の一部に絶対位置情報を含む第1のサーボパターンを予め形成するとともに、記録媒体の全面に相対位置情報を含む第2のサーボパターンを予め形成しておき、記録媒体を磁気記憶装置内に実装した後に、第1、第2のサーボパターンを用いて、絶対位置情報を含む第3のサーボパターンを磁気ディスクの全面に形成するというものである。
【0008】
しかしながら、本方法の実用化に向けた検討において、精度上の課題や、コスト上の課題など、様々な課題が新たに出現してきている。
【0009】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、高精度な情報の記録再生が可能な情報記憶装置及びその調整装置を提供することを目的とする。また、本発明は、高精度な情報の記録再生に寄与することが可能なサーボパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載の情報記憶装置は、記録面上における絶対位置情報を有する第1のサーボパターンと、前記記録面上における相対位置情報を有する第2のサーボパターンとが形成された記録媒体と、前記記録媒体に対する情報の記録・再生を行う記録再生ヘッドと、前記第1、第2のサーボパターンを用いて前記記録再生ヘッドを前記記録媒体上に位置決めしつつ、前記記録面上における絶対位置情報を有する第3のサーボパターンを、前記記録再生ヘッドに記録させるための制御信号を生成する記録信号生成部と、前記第3のサーボパターンを前記記録媒体上に記録する際の情報である記録時データを保持するデータ保持部と、を備える情報記憶装置である。
【0011】
これによれば、データ保持部が、第1のサーボパターン及び第2のサーボパターンを用いて第3のサーボパターンを記録媒体上に記録する際の情報である記録時データを保持していることから、第3のサーボパターンを記録した以降の当該第3のサーボパターンを用いた記録再生ヘッドの位置制御において、記録時データを参照したり解析したりすることにより、高精度な記録再生ヘッドの位置制御の実現に寄与することが可能となる。
【0012】
本明細書に記載の情報記憶装置の調整装置は、一時保持領域と格納領域を有する情報記憶装置の前記一時保持領域に格納されている前記記録時データを、前記記録再生ヘッドを用いて読み出させる読み出し部と、前記読み出した記録時データを、前記記録再生ヘッドを用いて前記格納領域に格納させる格納部と、を備える情報記憶装置の調整装置である。
【0013】
これによれば、一時保持領域に保持されていた記録時データを格納領域に格納し直すので、例えば、一時保持領域が後で試験データやユーザデータなどのデータにより上書きされてしまう場合であっても、記録時データを記憶媒体上で保持し続けることが可能となる。
【0014】
本明細書に記載のサーボパターン形成方法は、記録面上における絶対位置情報を有する第1のサーボパターンと、前記記録面上における相対位置情報を有する第2のサーボパターンとが形成された記録媒体に対し、前記第1、第2のサーボパターンを用いて記録再生ヘッドを位置決めしつつ、前記記録媒体上に、前記記録面上における絶対位置情報を有する第3のサーボパターンを形成する工程と、前記第3のサーボパターンを前記記録媒体上に記録する際の情報である記録時データを保持する工程と、を含むサーボパターン形成方法である。
【0015】
これによれば、第1のサーボパターン及び第2のサーボパターンを用いて第3のサーボパターンを記録媒体上に記録する際の情報である記録時データを保持することから、第3のサーボパターンを記録した以降の当該第3のサーボパターンを用いた記録再生ヘッドの位置制御において問題があった場合に、記録時データを提供することができる。これにより、記録再生ヘッドの高精度な位置制御の実現に寄与することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に記載の情報記憶装置は、高精度な情報の記録再生ができるという効果を奏する。また、本明細書に記載の情報記憶装置の調整装置は、記録媒体の格納領域に記録時データを格納することができるという効果を奏する。また、本明細書に記載のサーボパターン形成方法は、高精度な情報の記録再生に寄与することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る磁気ディスク装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の磁気ディスク(磁気ディスク装置への実装前又は直後の磁気ディスク)を示す平面図である。
【図3】図2の磁気ディスクの外周側の領域を拡大して示す図である。
【図4】磁気ディスクに対する第1、第2のサーボパターンの形成から磁気ディスク装置の試験完了までの流れを示す図である。
【図5】第3のサーボパターンのリライト形成処理を示すフローチャートである。
【図6】第3のサーボパターンの形成方法について説明するための図である。
【図7】装置調整設備150における処理を示すフローチャートである。
【図8】図7のステップS68の処理を説明するための図である。
【図9】SRT設備における処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の情報記憶装置、その調整装置及びサーボパターン形成方法の一実施形態について、図1〜図9に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1には、本実施形態に係る情報記憶装置としての磁気ディスク装置100のブロック図が示されている。この図1に示すように、磁気ディスク装置100は、ディスクエンクロージャ80と、制御ボード90と、を備える。
【0020】
このうち、ディスクエンクロージャ80は、ヘッドアンプ10、記録再生ヘッド12、ボイスコイルモータ14、スピンドルモータ16、及び記録媒体としての磁気ディスク18を有している。
【0021】
ヘッドアンプ10は、リードチャネル28から入力されるデータを、記録再生ヘッド12(記録素子)に送信するとともに、記録再生ヘッド12(再生素子)によって読み取られたデータをリードチャネル28に送信する。
【0022】
記録再生ヘッド12は、セラミックなどからなる本体と、当該本体に組み込まれた、磁気ディスク18に情報(データ)を書き込むための記録素子、及び書き込まれたデータを読み取るための再生素子と、を有する。
【0023】
ボイスコイルモータ14は、サーボコントローラ26の制御の下、記録再生ヘッド12を保持するヘッド・スタック・アッセンブリ(HSA)を駆動し、磁気ディスク18上の所望の位置に記録再生ヘッド12を位置決めする。スピンドルモータ16は、サーボコントローラ26の制御の下、磁気ディスク18を、例えば4200〜15000rpmなどの適切な回転速度で回転させる。
【0024】
磁気ディスク18は、磁性体の磁化状態を変化させることにより、データを記録する記録媒体である。磁気ディスク18上には、ユーザデータを格納する領域のほか、記録再生ヘッド12の位置決め制御に用いられるサーボパターンが形成される。ここで、ディスクエンクロージャ80に搭載される前及び搭載された直後の磁気ディスク18は、図2に示すようなサーボパターンを有している。具体的には、磁気ディスク18は、記憶媒体本体としてのディスク基板190の外周部近傍の領域において、周方向に沿って所定間隔で設けられた第1のサーボパターン34と、ディスク基板190の全面に設けられたスパイラル形状(螺旋状)の第2のサーボパターン36と、を有している。
【0025】
本実施形態では、磁気ディスク18が磁気ディスク装置100に搭載された後、磁気ディスク18の全面に絶対位置情報を含む第3のサーボパターンを記録するが、上記第1、第2のサーボパターン34、36は、この記録における記録再生ヘッド12の位置決め用として用いられる。これら第1のサーボパターン34と第2のサーボパターン36は、外部STW(Servo Track Writing)設備110(図4参照)において、予め形成されたものである。
【0026】
図3には、磁気ディスク18の外周部近傍の領域の一部を拡大した状態が示されている。第1のサーボパターン34は、図3に示すように、磁気ディスク18の半径方向に延在している。すなわち、第1のサーボパターン34は、磁気ディスク18の外側から放射状に設けられている。
【0027】
第1のサーボパターン34は、実際には、プリアンブル、サーボシンクマーク、セクタデータ、グレイコード、及び位相バーストを含んでいる。このように、本実施形態では、第1のサーボパターン34がグレイコード等を含んでいることから、記録再生ヘッド12が第1のサーボパターン34を読み取ることにより、磁気ディスク18上での絶対位置を特定することができる。すなわち、第1のサーボパターン34は、磁気ディスク18上における絶対位置情報を含んでいるといえる。
【0028】
一方、第2のサーボパターン36は、スパイラル形状(螺旋状)をしたパターンであり、第1のサーボパターン34と交差した状態となっている。この第2のサーボパターン36は、シンクマークと、バーストと、を含んでいる。このうち、シンクマークは、円周方向における基準タイミング情報として使用される。また、バーストは、その振幅ピーク位置タイミングにより、第2のサーボパターン36の位置を示す。このように、本実施形態では、第2のサーボパターン36がグレイコード等を含んでいないことから、第2のサーボパターン36を読み取っても、磁気ディスク18上の絶対位置を特定することはできず、相対位置のみ特定することができる。すなわち、第2のサーボパターン36は、磁気ディスク18上における相対位置情報を含んでいるといえる。
【0029】
第1のサーボパターン34に隣接した位置には、図2、図3に示すように、一時保持領域としてのシステム領域62が設けられている。このシステム領域62には、後述する第3のサーボパターンを記録する際の基準位置の情報や、スケジュールデータなどが格納される。
【0030】
図1に戻り、制御ボード90は、ハードディスクコントローラ20、データバッファ22、記録部としてのメモリ24、サーボコントローラ26、リードチャネル28、及びMPU(Micro Processing Unit)30を有する。これらのうち、ハードディスクコントローラ20、メモリ24、サーボコントローラ26、リードチャネル28、及びMPU30は、システムバス32を介して互いに接続した状態となっている。
【0031】
ハードディスクコントローラ20は、磁気ディスク装置100のホストであるコンピュータなどのホストシステムとの間で各種命令・データの授受を行う。データバッファ22は、ホストシステムからのデータなどを一時的に記憶する。
【0032】
メモリ24は、例えばRAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリと、フラッシュROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリとを含んでいる。RAMは、MPU30が制御処理を実行するときに使用するワークメモリである。フラッシュROMは、MPU30によって実行される制御プログラムが予め格納されている。なお、フラッシュROMは、上述した磁気ディスク18上のシステム領域62の代わりに、第3のサーボパターンを記録する際の基準位置に関する情報やスケジュールデータなどを記録する場合もある。
【0033】
サーボコントローラ26は、MPU30からの指示に基づき、ボイスコイルモータ14やスピンドルモータ16の駆動を制御する。
【0034】
リードチャネル28は、ライト変調部及びリード復調部として機能する。
【0035】
MPU30は、磁気ディスク装置100全体を統括的に制御する。このMPU30は、図1に示すように、基準位置検出部52、ヘッド位置制御部54、及び記録信号生成部56を有する。基準位置検出部52は、記録再生ヘッド12で読み取られ、復調された第1のサーボパターン34と第2のサーボパターン36との位置関係から、第2のサーボパターン36の基準位置を求める。ヘッド位置制御部54は、磁気ディスク18上の所望の位置に記録再生ヘッド12を位置決め制御する。記録信号生成部56は、対象位置に位置決め制御された記録再生ヘッド12により、対象位置における磁気ディスク18に、絶対位置情報を有する第3のサーボパターンを記録させるための記録信号を生成する。
【0036】
次に、図4に沿って、磁気ディスク18に対する第1、第2のサーボパターン34,36の形成から、磁気ディスク18を組み込んだ磁気ディスク装置100の試験完了までの工程について、説明する。
【0037】
まず、STW設備110では、磁気ディスク18の一部(外周部)に第1のサーボパターン34を形成するとともに、磁気ディスク18の全面に第2のサーボパターン36を形成する。このサーボパターンの形成処理を経た磁気ディスク18は、装置組立設備120に送られる。
【0038】
次いで、装置組立設備120では、STW設備110にてパターンが形成された磁気ディスク18を磁気ディスク装置100内に組み込む処理を実行する。この処理を経た磁気ディスク装置100は、装置調整設備130に送られる。
【0039】
次いで、装置調整設備130では、磁気ディスク18に第3のサーボパターンを書き込む(形成する)ための調整(基準位置の検出)を行ったり、スケジュールデータをシステム領域62に格納したりする。この処理が完了した磁気ディスク装置100は、セルフSTW設備140に送られる。
【0040】
次いで、セルフSTW設備140では、図5に示す手順で、磁気ディスク18上に、絶対位置情報を有する第3のサーボパターンを形成(リライト形成)する。
【0041】
図5の処理が実行される前提として、MPU30(基準位置検出部52)は、予め基準位置(第3のサーボパターンの形成を開始する位置、図3参照)についての検出を行っており、当該検出結果(基準位置に関する情報)は、システム領域62に格納されている。また、システム領域62には、第3のサーボパターンを形成するために実行する必要のあるリライト回数、各リライトにおけるシリンダ位置などの情報(スケジュールデータ)が格納されている。なお、本実施形態では、1回のリライト形成により、第3のサーボパターン64(図6参照)を形成する場合を例に採り説明する。
【0042】
MPU30(ヘッド位置制御部54)は、図5のステップS30において、サーボコントローラ26を介してスピンドルモータ16やボイスコイルモータ14の駆動を制御し、記録再生ヘッド12を第1のサーボパターン34内の目標トラックに位置決めする。この場合、第1のサーボパターン34のグレイコードや位相バーストなどの情報を用いることで、記録再生ヘッド12を目標トラックに位置決めすることが可能である。
【0043】
次いで、MPU30は、ステップS32において、システム領域62に記録されている基準位置の情報(シリンダ位置の情報など)を読み出す。また、MPU30は、ステップS34において、システム領域62に記録されているリライト形成のスケジュールデータを読み出す。
【0044】
次に、MPU30は、ステップS36において、リライト形成スケジュールが全て終了したかを判断する。ここでは、まだリライト形成を行っていないので判断は否定され、ステップS38に移行する。次いで、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS38において、サーボコントローラ26を介してスピンドルモータ16やボイスコイルモータ14を制御し、システム領域62から読み出した基準位置(図3参照)に、記録再生ヘッド12を移動する。この移動において、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、第1のサーボパターン34のグレイコードや位相バーストなどの情報を用いる。
【0045】
次に、MPU30は、ステップS40において、記録再生ヘッド12の位置決め制御を、第1のサーボパターン34を用いた位置決め制御から第2のサーボパターン36を用いた位置決め制御に乗り換える。そして、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS42において、システム領域62から読み出したスケジュールデータに基づき、リライト形成開始位置に記録再生ヘッド12を移動させる。なお、本実施形態では1回のリライト形成を行うのみであり、リライト形成開始位置は前述した基準位置であることから、ステップS42における記録再生ヘッド12の移動は行われない。ただし、リライト形成を複数回に分けて行う場合の2回目以降の処理におけるステップS42では、その前に行われたリライト形成における終了位置近傍をリライト形成開始位置とする。
【0046】
次に、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS44において、リライト形成前の、第2のサーボパターン36を用いた位置決め情報(記録時データ)を測定し、その結果をメモリ24に格納する。ここで、位置決め情報の測定では、MPU30は、第2のサーボパターン36を用いて記録再生ヘッド12の位置決め制御を実行する。そして、MPU30は、目標シリンダへの位置決めが完了したところで、目標シリンダ位置と、第2のサーボパターン36復調結果から得られる現在位置と、の差分から位置決め情報(位置誤差情報)を取得する。MPU30は、この位置決め情報を、第2のサーボパターン36毎に磁気ディスク装置100のメモリ24に一時的に保存する。例えば、磁気ディスク18の円周上に第2のサーボパターン36が200個あれば、1周分(200個)の位置決め情報をメモリ24に保存する。
【0047】
なお、位置決め情報の測定は、理想的には、全シリンダに対して実行することが好ましいが、シリンダ本数は10万本というようなオーダーであるため、記録サイズの観点から現実的ではない。したがって、例えば、MPU30は、リライト形成スケジュールにて指定する位置決め情報選択モードに従い、リライト形成開始前、リライト形成開始後、あるいはリライト形成開始前及び開始後という条件に応じた測定を実行する。例えば、全面を数ゾーンごとに分割し、リライト開始前には、10シリンダ分の位置決め情報を記録するようにし、リライト開始後には、他の10シリンダ分の位置決め情報を記録するようにする。
【0048】
次いで、MPU30は、ヘッド位置制御部54において第2のサーボパターン36を用いて記録再生ヘッド12を位置決めしつつ、記録信号生成部56において、第3のサーボパターン64を形成するための記録信号を生成する(ステップS46)。この場合、第3のサーボパターン64は、図6に示すように、第1のサーボパターン34及びシステム領域62に対して、円周方向にずれた位置に形成される。なお、磁気ディスク18上に第3のサーボパターン64を形成する際には、回転する磁気ディスク18に対して、記録再生ヘッド12を半径方向に移動させながら、セクタごとに順次形成する。
【0049】
ここで、第2のサーボパターン36は、前述したように、磁気ディスク18上における相対位置情報を有し、第2のサーボパターン36の基準位置は、絶対位置情報を有する。したがって、記録再生ヘッド12の位置決め制御を、第2のサーボパターン36の基準位置から実行し、その後は、第2のサーボパターン36を用いることで、磁気ディスク18上での絶対位置を特定しつつ、記録再生ヘッド12の位置決め制御を行うことできる。
【0050】
以上のようにして、リライト形成が終了した後、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS48において、リライト形成後の、第2のサーボパターン36を用いた位置決め情報を測定し、その結果をメモリ24に格納する。
【0051】
次いで、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS50において、第2のサーボパターン36を用いた位置決め制御を停止して、記録再生ヘッド12を磁気ディスク18の外部にアンロードする。
【0052】
次いで、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS52において、再度、第1のサーボパターン34のグレイコードや位相バーストなどの情報を用い、記録再生ヘッド12を第1のサーボパターン34内の目標トラックに位置決めする。なお、前述したステップS50において、記録再生ヘッド12を磁気ディスク18の外部に一旦アンロードさせるのは、記録再生ヘッド12の位置決め制御を、第2のサーボパターン36から第1のサーボパターン34に切り替える必要があるからである。
【0053】
次いで、MPU30は、ステップS54において、システム領域62にリライト形成が終了したことを記録する。
【0054】
そして、MPU30は、ステップS56において、リライト形成前後にメモリ24に記憶した位置決め情報の測定結果(ステップS44、S48)をシステム領域62に記録する。
【0055】
次に、MPU30は、システム領域62から、リライト形成のスケジュールデータとリライト形成が終了した情報とを読み出し(ステップS34)、リライト形成スケジュールが全て終了したかを判断する(ステップS36)。MPU30は、システム領域62から読み出したリライト形成のスケジュールデータとリライト形成が終了した情報とに基づき、リライト形成スケジュールが全て終了したと判断すると、ステップS36の判断が肯定されて、ステップS58に移行する。
【0056】
その後、MPU30は、ステップS58において、システム領域62に全てのリライト形成が完了したことを記録し、図5の全処理を終了する。
【0057】
図4に戻り、図5の処理が完了した磁気ディスク装置100は、情報記憶装置の調整装置としての、装置調整設備150に送られる。この装置調整設備150内では、装置調整設備150の制御装置152が、図7のフローチャートに示す処理を実行する。なお装置調整設備150の制御装置152は、読み出し部152aと書き込み部152bとを有しており、各部はメモリ154に接続されている。
【0058】
装置調整設備150の制御装置152は、図7のステップS60において、調整対象の磁気ディスク装置が、リライト形成を行った磁気ディスク装置か否かを判断する。ここでの判断が肯定された場合、制御装置152(読み出し部152a)は、ステップS62において、システム領域62に格納されているリライト形成前後の情報(位置決め情報の測定結果)を記録再生ヘッド12を用いて抽出し、メモリ154に一時的に保管(格納)する。なお、ここでは、システム領域62に格納されている他の情報(例えば、リライト形成時の最外周(最内周)に位置するシリンダの情報、リライト形成時におけるライト電流の設定値、DFH(Dynamic Flying Height)設定値など)も抽出し、メモリ154に保管しても良い。この情報の抽出、保管処理が終了した段階で、ステップS64に移行する。
【0059】
一方、ステップS60の判断が否定された場合には、ステップS62をジャンプして、ステップS64に移行する。
【0060】
次いで、制御装置152は、ステップS64において、SRT(self running test)のための装置調整工程を実行する。この装置調整工程では、制御装置152が、SRTスケジュールなどを設定し、その情報を、図8に示すような、磁気ディスク18上に予め設定されている所定幅の円形領域(製品システム領域)72に格納する。
【0061】
次いで、制御装置152は、ステップS66において、調整対象の磁気ディスク装置が、リライト形成を行った磁気ディスク装置か否かを判断する。ここでの判断が肯定された場合には、ステップS68に移行する。ステップS68では、制御装置152(書き込み部152b)が、メモリ154に一時的に保管(格納)してあるリライト形成前後の位置決め情報の測定結果などを、格納領域としての、磁気ディスク18上の所定幅の円形領域(拡張システム領域)74に、記録再生ヘッド12を用いて記録(格納)し、図7の全処理を終了する。一方、ステップS66の判断が否定された場合には、そのまま図7の全処理を終了する。
【0062】
図4に戻り、装置調整設備150を経た磁気ディスク装置100は、SRT設備160に送られる。このSRT設備160では、記録再生ヘッド12を用いて、図9に示すように、試験データ78の記録を実際に行い、当該記録された試験データ78を読み出すことにより、エラーが発生したか否かを確認する。
【0063】
ここで、SRT設備160において、記録再生ヘッド12の位置決め等に何らかの問題が発生した場合には、MPU30は、拡張システム領域74に記録されている位置決め情報の測定結果を読み出して解析することができる。この解析により、発生した問題が、リライト形成時の影響によるものであるか否かを判断することができる。具体的には、例えば、位置決め情報をスペクトラム解析することで、リライト形成時において設備から印加される振動成分を特定し、問題となる周波数成分を特定する。この解析の結果、リライト形成精度に問題があると判断された場合には、設備振動特性の改善、サーボコントローラ26等の特性の改善、磁気ディスク装置100の設計変更など、リライト形成時の環境の改善ポイントを特定することが可能である。なお、この解析は、磁気ディスク装置100を出荷した以降に問題があった場合にも、実行することが可能である。
【0064】
このようにして、SRT設備での試験が完了すると、図4に示す次テスト工程に移行するようになっている。
【0065】
これまでの説明から分かるように、本実施形態では、記録再生ヘッド12、ヘッドアンプ10、リードチャネル28及びMPU30により、データ取得部が構成されている。
【0066】
以上詳細に説明したように、本実施形態によると、磁気ディスク18上の拡張システム領域74が、第1のサーボパターン34及び第2のサーボパターン36を用いて第3のサーボパターン64を磁気ディスク18上に記録する際(記録する前後)の情報である位置決め情報の測定結果を保持するようにしている。ここで、本実施形態のように、磁気ディスク装置100内で磁気ディスク18に第3のサーボパターン64をリライト形成する場合、そのリライト形成精度は、様々な要因の組み合わせによって影響を受けることが分かってきている。その要因としては、例えば、磁気ディスク装置100自身の剛性や重量等の装置メカ特性、STW設備110で事前に形成した第2のサーボパターン36の品質、サーボコントローラ26のサーボ特性、リライト形成時に磁気ディスク装置100を設置する設備の剛性や重量等の設備メカ特性等の様々な要因の組み合わせなどが挙げられる。これに対し、本実施形態では、上述したように第3のサーボパターン64を磁気ディスク18上に記録する際(記録する前後)の情報である位置決め情報の測定結果を保持しておくので、第3のサーボパターン64を記録した以降、当該第3のサーボパターン64を用いた記録再生ヘッド12の位置制御を行う場合において、記録時データを参照したり解析したりすることにより、記録再生ヘッド12の位置制御を高精度に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態によると、システム領域62に保持されていた位置決め情報の測定結果を拡張システム領域74に格納し直すこととしているので、システム領域62が、SRT設備160において、試験データ78により上書き(消去)されても(図9参照)、位置決め情報の測定結果を磁気ディスク18上で保持し続けることができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、位置決め情報の測定結果を、磁気ディスク18の拡張システム領域74に格納する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、磁気ディスク18のその他の領域に格納しておいても良い。また、磁気ディスク18以外、例えば図1のメモリ24に格納しておいても良い。要は、記録再生ヘッドの位置制御において問題が生じた場合に、すぐに読み出せるような場所に、位置決め情報の測定結果を格納しておけば良い。
【0069】
なお、上記実施形態では、位置決め情報の測定結果を、システム領域62に一旦記録した後に、拡張システム領域74に格納し直す場合について説明したが、これに限らず、初めから拡張システム領域74に測定結果を格納しても良い。
【0070】
また、上記実施形態では、システム領域62から拡張システム領域74に測定結果を格納し直す場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、SRT設備160において、システム領域62が試験データ78により消去されないような場合には、測定結果をシステム領域62に格納し続けても良い。
【0071】
なお、上記実施形態では、第1のサーボパターン34が磁気ディスク18の外周部近傍に設けられた場合について説明したが、これに限らず、内周部近傍に設けられても良いし、内周部及び外周部の両方に設けられても良い。また、システム領域62についても、磁気ディスク18の内周部近傍に設けられても良いし、内周部及び外周部の両方に設けられても良い。
【0072】
なお、上記実施形態では、1回のリライト形成により、第3のサーボパターン64を形成する場合について説明したが、これに限らず、複数回のリライト形成により、第3のサーボパターン64を形成することとしても良い。
【0073】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 ヘッドアンプ(データ取得部の一部)
12 記録再生ヘッド(データ取得部の一部)
18 磁気ディスク(記録媒体)
28 リードチャネル(データ取得部の一部)
30 MPU(データ取得部の一部)
34 第1のサーボパターン
36 第2のサーボパターン
56 記録信号生成部
62 システム領域(一時保持領域)
64 第3のサーボパターン
74 拡張システム領域(格納領域)
100 磁気ディスク装置(情報記憶装置)
150 装置調整設備(情報記憶装置の調整装置)
152a 読み出し部
152b 書き込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録面上における絶対位置情報を有する第1のサーボパターンと、前記記録面上における相対位置情報を有する第2のサーボパターンとが形成された記録媒体と、
前記記録媒体に対する情報の記録・再生を行う記録再生ヘッドと、
前記第1、第2のサーボパターンを用いて前記記録再生ヘッドを前記記録媒体上に位置決めしつつ、前記記録面上における絶対位置情報を有する第3のサーボパターンを、前記記録再生ヘッドに記録させるための制御信号を生成する記録信号生成部と、
前記第3のサーボパターンを前記記録媒体上に記録する際の情報である記録時データを保持するデータ保持部と、を備える情報記憶装置。
【請求項2】
前記記録時データを取得するデータ取得部を更に備える請求項1に記載の情報記憶装置。
【請求項3】
前記データ保持部は、前記記録媒体上の格納領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記憶装置。
【請求項4】
前記記録媒体には、前記記録時データを一時的に保持する一時保持領域と、前記記録時データを保持し続ける前記格納領域と、が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の情報記憶装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報記憶装置の前記一時保持領域に格納されている記録時データを、前記記録再生ヘッドを用いて読み出させる読み出し部と、
前記読み出した記録時データを、前記記録再生ヘッドを用いて前記格納領域に書き込む書き込み部と、を備える情報記憶装置の調整装置。
【請求項6】
記録面上における絶対位置情報を有する第1のサーボパターンと、前記記録面上における相対位置情報を有する第2のサーボパターンとが形成された記録媒体に対し、前記第1、第2のサーボパターンを用いて記録再生ヘッドを位置決めしつつ、前記記録媒体上に、前記記録面上における絶対位置情報を有する第3のサーボパターンを形成する工程と、
前記第3のサーボパターンを前記記録媒体上に記録する際の情報である記録時データを保持する工程と、を含むサーボパターン形成方法。
【請求項7】
前記記録時データを取得する工程を更に含む請求項6に記載のサーボパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−165414(P2010−165414A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6860(P2009−6860)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】