説明

情報記録媒体及びその製造方法

【課題】偽造、変造が困難な情報記録媒体を得る。
【解決手段】支持体上に、アゾベンゼン構造を有する高分子化合物を含む記録層を形成する工程、記録層に第1の書き込み光を照射し、その表面に凹凸形状を有する第1の光回折構造を形成する工程、記録層表面上に、変形防止層を形成し、凹凸形状を固定する工程及び凹凸形状が固定された記録層に第2の書き込み光を照射し、分子の移動による変形を強制的に抑止することにより、記録層内部に屈折率変化を有する第2の光回折構造を形成する工程を具備する情報記録媒体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免許証、クレジットカード、会員証などの個人認証用媒体として使用可能な情報記録媒体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免許証、クレジットカード、会員証などの個人認証用媒体には、従来から各種偽変造防止手段が図られている。例えば、クレジットカードにおいては、金属反射層を有するレリーフホログラムからなるレインボーホログラムが目視によるカードの真偽判定のための構造としてカードの表面に設けられている。このようなカードに設けられているレインボーホログラムは、光学的に偽造される恐れがあり、偽造防止手段としては、より高度な技術を要請されてきた。
【0003】
このような状況下において、例えば記録されている情報を機械的に読み取り可能な第1の光回折構造が形成されている領域と、記録されている情報を目視で読み取り可能な第2の光回折構造が形成されている領域とが、一つの光回折構造形成層の中で交互に連設され、かつ、重畳していない情報記録媒体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、第1の光回折構造を、コヒーレンス性の高い光でのみ記録されている情報を読み取り可能なホログラムにしておけば、目視では、光学的に読み取り可能な情報が記録されていることがわかりにくく、偽造が困難になる。さらに、第2の光回折構造が、白色光の照明により記録されている情報を目視で読み取り可能なホログラムであれば、目視で認証する際に特別な装置を必要としない。また、第1の回折構造と第2の光回折構造とが重畳していないので、二つの光回折構造の重なりによる白濁化が生じないため、機械で読み取る際の誤動作が発生しにくい。しかしながら、第1、第2の光回折構造ともに固定情報となっており、記録されている情報が何であるかがわかると、複製することが容易であると言う課題があった。
【0004】
一方で、アゾベンゼン構造を含む高分子化合物の薄膜に直線偏光を照射すると、光励起分子再配向現象により、照射光の電場ベクトルに垂直な向きに分子主軸が配向した複屈折性薄膜が得られる。この複屈折は、円偏光の照射によって消去することが可能なため、リライタブルホログラムメモリとして利用できることが注目されている(例えば、非特許文献1、2参照)。アゾベンゼン構造を含む高分子化合物を書き換え可能なホログラムとして偽変造防止手段に応用した場合、記録する情報を固定情報ではなく、可変にすることができるので、複製を困難にし得る。しかし、情報の書き換えが可能であると言うことは、目に見える情報を書き換えれば、見た目には本物と区別が付かないため、変造に弱いと言う課題があった。
【0005】
さらに、アゾベンゼン構造を含む高分子化合物の薄膜に上記複屈折を形成する時よりも強いエネルギーあるいは長い時間、レーザービームを照射すると、レーザーの偏光状態に応じて表面に凹凸パターン(以降、レリーフパターンと称す。)が形成される。このレリーフパターンは、波長の異なる一様な光を照射するか、あるいは加熱によって消去が可能であるため、書き換え可能なホログラムを利用して、高密度光情報記録方法などへの応用が図られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3563774号公報
【特許文献2】特開2002−74665号公報
【非特許文献1】Opt.Commun.,Vol.47,(1983),P123
【非特許文献2】応用物理学会機関紙,応用物理 第75巻 第10号,(2006),第1252頁ないし第1254頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、偽造、変造が困難である情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の情報記録媒体の製造方法は、支持体上に、アゾベンゼン構造を有する高分子化合物を含む記録層を形成する工程、
該記録層に第1の書き込み光を照射し、該アゾベンゼン構造を有する高分子化合物の分子を移動させて、該記録層を変形せしめ、その表面に凹凸形状を有する第1の光回折構造を形成する工程、
該記録層表面上に、変形防止層を形成し、該凹凸形状を固定する工程、及び
凹凸形状が固定された記録層に第2の書き込み光を照射し、該記録層内部に屈折率変化を有する第2の光回折構造を形成する工程を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明の情報記録媒体は、支持体、該支持体上に設けられ、その表面に凹凸形状を有する第1の光回折構造が形成され、その内部に屈折率変化による第2の光回折構造が形成された、アゾベンゼン構造を有する高分子化合物を含む記録層、及び該凹凸形状を固定するために該記録層上に設けられた変形防止層を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明を用いると、偽造、変造が困難な情報記録媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の情報記録媒体の製造方法は、支持体上に、アゾベンゼン構造を有する高分子化合物を含む記録層を形成する工程、記録層に第1の書き込み光を照射し、第1の書き込み光に応じてアゾベンゼン構造を有する高分子化合物の分子を移動させ、これにより、記録層を変形させて、記録層表面に凹凸形状を有する第1の光回折構造を形成する工程、及び記録層に第2の書き込み光を照射し、第2の光回折構造を形成する工程、第2の光回折構造を形成する工程を有する情報記録媒体の製造方法において、
記録層に第2の書き込み光を照射する前に、記録層表面上に、変形防止層を形成して、第1の光回折構造となる凹凸形状を固定することにより、第2の書き込み光を照射したときに、該アゾベンゼン構造を有する高分子化合物の分子の移動による変形を抑止して、該記録層内部に屈折率変化を有する第2の光回折構造を形成することができる。
【0011】
本発明では、記録層に下記一般式(1)で表されるアゾベンゼン構造を有する高分子化合物を使用している。また、本発明では、この化合物の持つ特性を利用している。
【化1】

【0012】
(式中、R1は電子供与性基、R3は電子吸引性基、X及びYは単結合若しくは高分子鎖を形成する他の構成単位、m及びnは1以上の整数である。)
アゾベンゼン構造を有する高分子化合物の薄膜は、その表面に、その高分子化合物の吸収帯に相当する波長の光例えばアルゴンレーザーのような515ないし458nmの波長の光を照射すると、アゾベンゼン構造の部分が異性体への転化を繰り返す。すなわち、下記構造式で表されるようなトランス体からシス体へ、シス体からトランス体への構造の変化を繰り返す。これにより、レーザービームの幾何形状と偏光状態に応じて、高分子鎖の移動が起こり、表面に凹凸パターンが形成されるという性質を有する。
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
この現象は、アゾベンゼン構造を含む高分子化合物の薄膜に対し、光のパターンを照射することによって、その表面部分が光の強弱に感応し、光の強い部分から弱い部分へと分子が移動する結果、凹凸が形成されることによる。このようにして形成された表面の凹凸は、さらに波長の異なる光を照射するか、あるいは加熱によって消去が可能であり、また、ビームの形状と偏光状態を正確に記録再生できる。
【0015】
また、第2の光回折構造となる記録層内部の屈折率変化は、移動を強制的に抑止されたアゾベンゼン構造を有する高分子化合物の分子の向きが電場の方向に向くことにより生ずる。
【0016】
本発明の情報記録媒体は、上記製造方法にて形成される情報記録媒体の1つであって、支持体と、支持体上に設けられたアゾベンゼン構造を有する高分子化合物を含む記録層と、記録層上に設けられた変形防止層とを具備する。
【0017】
記録層は、その表面に第1の光回折構造、その内部に第2の光回折構造を有する。その表面とは、支持体側の表面と反対側の表面であって、言い換えれば変形防止層と記録層との界面である。
【0018】
第1の光回折構造は、凹凸形状という形状的特徴を有する。この凹凸形状は、アゾベンゼン構造を有する高分子化合物に第1の書き込み光を照射して化合物中の分子を移動せしめ、これにより記録層を変形させて得られたものである。第1の光回折構造は、変形防止層によって固定されているので、書き換え不可となっている。
【0019】
第2の光回折構造は、屈折率の変化という物性的特徴を有する。この屈折率の変化は、アゾベンゼン構造を有する高分子化合物に第2の書き込み光を照射し、その分子の移動を強制的に抑止することにより、第2の書き込み光に応じて記録層内で分子の向きが変化し、屈折率の変化が生じる。このため、第2の光回折構造は、形状的特徴を伴わない。第2の光回折構造は、さらなる第2の書き込み光を照射することにより書き換え可能である。
【0020】
このように、本発明によれば、記録層にアゾベンゼン構造を有する高分子化合物を使用し、第1の書き込み光を照射し、アゾベンゼン構造を有する高分子化合物の物性を利用して記録層表面に凹凸パターンを形成し、さらに凹凸パターン上に変形防止層を形成して形状を固定した後、第2の書き込み光を照射して分子の移動及びそれによる変形を強制的に抑制せしめ、分子の向きのみを変化させて、記録層内に第2の書き込み光に応じた屈折率変化を発生させることが出来る。
【0021】
ここでは、凹凸パターンを、目視確認可能でかつ書き換え不可な情報とし、屈折率変化を機械でのみ読取可能でかつ書き換え可能な情報にすることができる。このようにして得られた情報記録媒体は、偽造、変造が困難である。
【0022】
第1の書き込み光として、干渉性の高い光を使用することができる。
【0023】
干渉光を使用することにより、記録層にホログラム記録を行うことが出来る。
【0024】
第1の光回折構造は、白色光を照射することにより目視で読み取り可能なホログラムまたは回折格子にすることが出来る。
【0025】
第2の書き込み光として、干渉性の高い光を使用することが出来る。
【0026】
干渉光を使用することにより、記録層にホログラム記録を行うことが出来る
第2の光回折構造は、干渉性の高い光により読み取り可能なホログラムまたは回折格子にすることが出来る。
【0027】
以下、図面を参照し、本発明をより詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る情報記録媒体を適用可能な個人認証媒体の一例を表すIDカードの正面図を示す。
【0029】
図示するように、IDカード50のカード基材1には、IDカードの所持人のカラー顔画像2、所持人の氏名、生年月日、ID番号などの文字情報3が印刷されており、カラー顔画像2及び文字情報3が記録された領域以外の領域の一部に、本発明に係る情報記録媒体4が貼付されている。なお、ここでは、情報記録媒体4はシールとしてカード基材1に貼り付けたが、カード基材を支持体として、本発明に用いられる記録層、変形防止層等をを直接形成することができる。情報記録媒体4には、目視可能なホログラム5として、所持人の顔画像を縮小した画像が形成されている。目視可能なホログラム5はレリーフパターンからなるホログラムにより構成されている。カラー顔画像2は、例えば昇華型熱転写記録方式で形成されている。カラー顔画像2は、インクジェット記録方式等の種々の記録方式でも形成可能である。文字情報3は、例えば溶融型熱転写記録方式で形成することができる。文字情報3はまた、インクジェット記録方式など種々の記録方式で形成可能である。
【0030】
図2は、本発明の情報記録媒体の一例を表す概略的な断面図を示す。
【0031】
図示するように、この情報記録媒体は、基材6上に、アゾベンゼン構造を含む高分子化合物を含む記録層8、変形防止層11の順に形成されている。アゾベンゼン構造を含む高分子化合物を含む記録層8には、目視可能な凹凸のレリーフパターンからなるホログラム10が形成されている。さらに、記録層8には目視では読み取れないけれども機械読取が可能な屈折率変化パターンからなるホログラム9も形成されている。
【0032】
レリーフパターンのホログラム10は、変形防止膜11により固定されて、光を照射してもアゾベンゼン分子が移動することができないため、書き換え不可になっている。このため、変造するのは困難である。
【0033】
一方、屈折率変化パターンからなるホログラム9は記録層8内部に形成されているため、その形成を阻害するものがなく、書き換え可能になっている。例えば、所持人の氏名が変わった場合やIDカードの有効期限が変わった場合は、屈折率変化パターンからなるホログラム9の情報を書き換えることが可能となる。IDカードに磁気メモリやICメモリなどが形成されていれば、そこに保持された情報とホログラム9に記録された情報とを照合することにより、IDカードの真偽を判断することが可能となる。
【0034】
第2の書き込み光は、レリーフパターンからなるホログラム10側からのみならず、基材6側から照射することもできる。このため、基材6は、第2の書き込み光を十分に透過するために、透明性を有し得る。
【0035】
この情報記録媒体4をIDカード50上に設けるためには、例えば基材6表面に接着剤等を適用し、カード基材1上に貼付することが出来る。あるいは、基材6としてカード基材1を使用して情報記録媒体4を作成することができる。
【0036】
ここで、変形防止層11に用いられる材料は、レリーフパターン上に塗布が可能で、アゾベンゼン高分子化合物の分子の移動を十分に抑止できる硬さを持つことが要求される。また、記録層8表面のレリーフパターンを目視で十分に認識し得る透明性を有し得る。レリーフパターン上に塗布するためには、液体状の材料を選択することができる。液体状の材料であって塗布後、容易に硬化可能な材料として、例えば光硬化性樹脂、及び熱硬化性樹脂を使用することが出来る。
【0037】
熱硬化性樹脂としては、アルキド樹脂、アミノ・アルキド樹脂、エポキシ樹脂・脂肪酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン系、アクリル樹脂系、アクリル・ウレタン樹脂、ビニル樹脂系、フッ素樹脂系、ポリシロキサン系、アクリル・シロキサン系樹脂が好ましく用いられる。
【0038】
光硬化性樹脂としては、光硬化性オリゴマー、モノマー、光反応開始剤、体質顔料、その他添加剤よりなり、光硬化により光硬化製オリゴマー、モノマーが反応を起こし、3次元網目構造を形成されるものを使用することができる。光硬化性樹脂としては、例えば紫外線硬化性樹脂を用いることができる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば3官能以上のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。このような(メタ)アクリル酸エステルとして、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールポリアクリレート、及びジペンタエリスリトールポリアクリレート等が挙げられる。
【0039】
紫外線硬化性樹脂には光反応開始剤を添加することができる。
【0040】
光反応開始剤としては、例えばベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、チオキサントン類、アゾ化合物類、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド等が挙げられる。
【0041】
図3は、図2に示す情報記録媒体が未記録である状態を表すための概略的な断面図である。
【0042】
未記録の情報記録媒体4’は、樹脂シートである基材6と、その上に形成されたアゾベンゼン構造を含む有機化合物記録層8とを有する。
【0043】
基材6は、IDカード基材1であっても良いし、別の樹脂シートであっても良い。後述する屈折率変化パターン時には、レリーフパターンのホログラムを形成した面からではなく、その反対面から書き込み光を照射することができる。このため、基材6は透明性を有し得る。基材6としては、例えばポリ塩化ビニル、及びポリエチレンテレフタレート樹脂などの樹脂シート等を使うことができる。ここでは、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを使用した。
【0044】
記録層7としては、アゾベンゼン構造を含む高分子化合物をクロロホルム、ジクロロメタンなどの溶媒に、1〜30%質量%の濃度で溶解し、グラビア印刷、ロール印刷、インクジェット記録方式などで薄膜状に形成できる。記録層7の厚みは、レリーフパターンに応じて適宜変化し得、例えば1〜5μmにすることができる。
【0045】
また、図2では、レリーフパターンからなるホログラム10の凹凸ピッチを1μmとしており、屈折率変化パターンをその内部に形成する必要があることから、記録層7は、ピッチの3倍の厚みすなわち3μmに設定し得る。
【0046】
本発明に使用可能なアゾベンゼン構造を含む高分子化合物として例えば下記式(2)で表される化合物、及びメチルオレンジを分散させたPVA(ポリビニルアルコール)などがあげられる。
【化4】

【0047】
図4に、本発明を適用し得る情報記録装置の一例の概略図を示す。
【0048】
また、図5は、図4の情報記録装置を用いた情報記録方法の一例の概略図を示す。
【0049】
図示するように、この情報記録装置60は、例えば図2に示すような情報記録媒体4’を各手段まで搬送するローラ15aないし15d、レリーフパターンからなるホログラムを形成するレリーフ形成機構12、レリーフパターンのホログラム形成面上に樹脂膜を形成する樹脂膜形成機構13、及び、屈折率変化パターンからなるホログラムを形成する屈折率変化形成機構14を有する。
【0050】
この装置では、まず、情報記録媒体4’を図示しないトレイに挿入し、搬送ローラ15aによりレリーフ形成機構12へと搬送する。レリーフ形成機構12では、例えばレリーフパターンからなるホログラムを形成する(S1)。その後、搬送ローラ15bにより変形防止層形成機構13へと搬送する。変形防止層形成機構13で、レリーフパターンのホログラム形成面上に例えば光硬化性樹脂からなる変形防止層を塗布する(S2)。その後、光照射を行うことにより変形防止層を硬化させる(S3)。続いて、搬送ローラ15cにより屈折率変化形成機構14へと搬送する。屈折率変化形成機構14で、屈折率変化パターンからなるホログラムを形成する(S4)。その後、搬送ローラ15dにより図示しないトレイへと排出される。このようにして、書き換え不可なレリーフパターンからなるホログラム10と、書き換え可能な屈折率変化パターンからなるホログラム9が情報記録媒体4に形成される。
【0051】
次に、上記各機構に関してさらに詳細に説明する。
【0052】
図6は、図4のレリーフパターン形成機構の一例を表す概略図を示す。
【0053】
光源16は、アゾベンゼン構造を含む有機化合物に感度のある波長の干渉光を発するものであれば良い。ここでは、高い干渉性を有する光として、アルゴンイオンレーザーの発振線515nmを用いた。光源16からのレーザー光を、ハーフミラー17を透過させ、ミラー18で反射させ、レンズ19で平行光にして、空間光変調器20に入射させる。空間光変調器20としては、電圧アドレス方式の液晶パネルなどを用いることができる。空間光変調器は、液晶層により、入射光の振幅ないし強度を変調することができる。レリーフホログラムに記録すべき情報は、コンピュータ23で、白黒のドットで構成された2値画像とし、コンピュータ23から空間光変調器20に出力して、表示し、記録すべき情報に応じて、空間光変調器20に入射する光の強度を2次元に変調する。ここでは、記録すべき情報をIDカードの所持人の顔画像を縮小した画像とした。ついで、記録すべき情報に応じて強度が2次元に変調された光を信号光として情報記録媒体4に照射する。
【0054】
一方、光源16からのレーザー光を、ハーフミラー17およびミラー21で反射させ、レンズ22で平行光にして、参照光として情報記録媒体4に入射させる。
【0055】
これによって、信号光と参照光とが干渉し、顔画像データを保持する信号光がレリーフパターンのホログラム10として記録される。なお、ここでは、画像情報を空間光変調器に表示し、その情報を使ってホログラムを形成したが、これに限定されるものではない。 例えば、計算機合成ホログラムのように、光の干渉縞を計算機により計算し、その縞パターンを直接レーザービームで書き込んで行く方式も使用することができる。
【0056】
図7は、図4の屈折率変化形成機構の一例を表す概略図を示す。
【0057】
光源24は、アゾベンゼン構造を含む有機化合物に感度のある波長のコヒーレント光を発するものであれば良い。ここでも、アルゴンイオンレーザーの発振線515nmを用いた。光源24からのレーザー光は、ハーフミラー25を透過し、ミラー26で反射され、レンズ27で平行光になって、空間光変調器28に入射する。空間光変調器28としては、図6と同様に電圧アドレス方式の液晶パネルを用いた。屈折率変化パターンのホログラムに記録すべき情報は、コンピュータ23で、白黒のドットで構成された2値画像とし、コンピュータ23から空間光変調器28に出力して、表示し、記録すべき情報に応じて、空間光変調器23に入射する光の強度を2次元に変調する。ここでは、記録すべき情報をIDカードの所持人情報の氏名、生年月日、ID番号をコード情報に変換した2次元バーコードであるQRコード画像とした。ついで、記録すべき情報に応じて強度が2次元に変調された光をフーリエ変換レンズ29によってフーリエ変換して、信号光として情報記録媒体4に照射する。
【0058】
一方、光源24からのレーザー光を、ハーフミラー25およびミラー30で反射させ、レンズ31で平行光にして、参照光としてフーリエ変換レンズ32によってフーリエ変換して、情報記録媒体4に入射させる。
【0059】
これによって、信号光と参照光とが干渉し、QRコードデータを保持する信号光が屈折率変化パターンのホログラム9として記録される。本実施例では、画像情報を空間光変調器に表示し、その情報を使ってホログラムを形成したが、これに限定されるものではない。例えば、計算機合成ホログラムのように、光の干渉縞を計算機により計算し、その縞パターンを直接レーザービームで書き込んで行く方式も使用することができる。
【0060】
ここで、屈折率変化パターンからなるホログラムを形成する際、上記信号光と参照光の照射は、レリーフパターンからなるホログラム形成面とは反対側の面から照射することができる。レリーフパターンからなるホログラム形成面からでも良いが、この場合、レリーフパターンが光を回折してし、情報記録の効率が低下する傾向がある。
【0061】
図8は、図4の変形防止層形成機構の一例を表す概略図を示す。
【0062】
レリーフパターンのホログラム10面上に形成された変形防止層の形成方法として、平版印刷、インクジェット印刷方式、ゴムローラによる印刷などが挙げられる。本実施例では、インクジェット印刷方式を用いた。
【0063】
図8は、図4に用いられる変形防止層形成機構の一例の概略図である。
【0064】
インクジェット記録ヘッド33には、インクタンク34が接続されていて、インクタンク34中には紫外線硬化性樹脂を溶媒中に分散した液体が入れられている。情報記録媒体のレリーフパターンのホログラム10形成面に、紫外線硬化性樹脂からなる液滴をインクジェット記録ヘッドにより噴射し、変形防止層を形成する。この時、変形防止層の厚みは、レリーフパターンを完全に埋めるほどの厚み以上あれば良い。ここでは、2μmとした。紫外線硬化性樹脂液の塗布層を形成した面に紫外線ランプ35により紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂液を硬化させる。このようにして、レリーフパターンのホログラム10を変形防止層11により固めることが可能となり、レリーフパターンのホログラム10を書き換え不可にできる。
【0065】
図9は、図4に用いられる変形防止層形成機構の他の一例の概略図である。
【0066】
この変形防止層形成機構では、熱硬化性樹脂を用いる。インクジェット記録ヘッド33には、インクタンク34が接続されていて、インクタンク34中には熱硬化性樹脂を溶媒中に分散した液体が入れられている。情報記録媒体のレリーフパターンのホログラム10形成面に、熱硬化性樹脂からなる液滴をインクジェット記録ヘッド33により噴射し、変形防止層を形成する。この時、変形防止層の厚さは、レリーフパターン10を完全に埋めるほどの厚み以上あれば良い。ここでは、2μmとした。熱硬化性樹脂塗布層を形成した面にヒートローラ36が接するように対向ローラ37とヒートローラ36とで情報記録媒体4を挟み、熱硬化性樹脂塗布層に熱を与えて硬化させる。このようにして、レリーフパターンのホログラム10を変形防止層11により固めることが可能となり、レリーフパターンのホログラム10を書き換え不可にできる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る情報記録媒体を適用可能な個人認証媒体の一例を表すIDカードの正面図
【図2】本発明の情報記録媒体の一例を表す概略的な断面図
【図3】図2の情報記録媒体が未記録である状態を表す概略的な断面図
【図4】本発明を適用し得る情報記録装置の一例の概略図
【図5】図4の情報記録装置を用いた情報記録方法の一例の概略図
【図6】図4のレリーフパターン形成機構の一例を表す概略図
【図7】図4の屈折率変化形成機構の一例を表す概略図
【図8】図4の変形防止層形成機構の一例を表す概略図
【図9】図4に用いられる変形防止層形成機構の他の一例の概略図
【符号の説明】
【0068】
4,4’…情報記録媒体、7,8…記録層、9…第2の光回折構造、10…第1の光回折構造、11…変形防止層、12…レリーフ形成機構、13…変形防止層形成機構、14…屈折率変化形成機構、15a,15b,15c,15d…搬送ローラ、16,24…アルゴンレーザー光、17,25…ハーフミラー、50…IDカード、60…情報記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、アゾベンゼン構造を有する高分子化合物を含む記録層を形成する工程、
該記録層に第1の書き込み光を照射し、該アゾベンゼン構造を有する高分子化合物の分子を移動させて、該記録層を変形せしめ、その表面に凹凸形状を有する第1の光回折構造を形成する工程、
該記録層表面上に、変形防止層を形成し、該凹凸形状を固定する工程、及び
凹凸形状が固定された記録層に第2の書き込み光を照射し、該記録層内部に屈折率変化を有する第2の光回折構造を形成する工程を具備することを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の光回折構造は目視で読み取り可能であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の光回折構造は機械で読み取り可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の情報記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記変形防止層は光硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の情報記録媒体の製造方法。
【請求項5】
支持体、該支持体上に設けられ、その表面に凹凸形状を有する第1の光回折構造が形成され、その内部に屈折率変化による第2の光回折構造が形成された、アゾベンゼン構造を有する高分子化合物を含む記録層、及び該凹凸形状を固定するために該記録層上に設けられた変形防止層を具備することを特徴とする情報記録媒体。
【請求項6】
前記第1の光回折構造は目視で読み取り可能であることを特徴とする請求項5に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記第2の光回折構造は機械で読み取り可能であることを特徴とする請求項5または6に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記変形防止層は光硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−223211(P2009−223211A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70047(P2008−70047)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】