説明

情報記録装置及び記録方法

【課題】記録指令から短時間の間に情報の記録を開始することにより、記録媒体に対する情報の記録を短時間に完了する。
【解決手段】電源が投入されると、まず搬送トレイ42に消去ユニット30によって情報が消去された感熱記録媒体70が載置されているかを判断する。そして、搬送トレイ42に感熱記録媒体70が無い場合には、予め感熱記録媒体70に対する情報の消去を行い、情報の消去が行われた感熱記録媒体70を搬送トレイ42上にセットする。これにより、画像形成装置10が上位装置などからの記録指令を受けてから、消去ヘッド32の昇温動作や情報の消去などを行うことなく、感熱記録媒体70に対する情報の記録を開始することができ、感熱記録媒体70に対する情報の記録を短時間に完了することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録装置及び記録方法に係り、更に詳しくは、記録媒体に予め記録された情報を消去して、新たな情報を前記記録媒体に記録する情報記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護やリサイクルの観点から、サーマルプリンタなどを用いて情報の記録及び消去を繰り返し行うことが可能な可逆性感熱記録媒体(以下、感熱記録媒体と略述する)が注目されている。この感熱記録媒体は、例えば可逆的に発色状態と消色状態をとり得るロイコ染料が塗布された記録層を有する感熱記録媒体などに代表されるように、適当な熱を加えることにより、記録層を相対的に発色させたり消色させたりすることで、情報の記録及び消去が可能な記録媒体である。そして、この種の感熱記録媒体に繰り返し情報の記録を行う場合には、例えば特許文献1に記載されたサーマルプリンタ等が用いられる。
【0003】
【特許文献1】特開2008−65686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーマルプリンタなどを用いて、感熱記録媒体へ情報を記録する場合には、感熱記録媒体への情報の記録に先立って、感熱記録媒体に予め記録された情報の消去が行われるのが一般的である。このため、従来のサーマルプリンタでは、例えばユーザ等からの記録指令を受けてから、感熱記録媒体に対する情報の記録が開始されるまでに、消去ヘッドの温度を消去温度まで上げる時間と、消去温度に達した後に感熱記録媒体を消去するまでの時間とが必要であった。
【0005】
また、感熱記録媒体に対する情報の消去を開始する場合には、サーマルプリンタが備える加熱デバイスを、感熱記録媒体の情報を消去することが可能な温度(消去温度)まで予め加熱しておく必要がある。このため、加熱デバイスが室温と同程度まで冷却されている場合には、当該加熱デバイスを消去温度まで加熱するのにある程度の時間がかかる。したがって、例えば一定の間隔を開けて任意のタイミングで、感熱記録媒体に対する情報の記録を行おうとすると、冷却された加熱デバイスを再度消去温度まで加熱する時間が必要となり、記録指令を受けてから、感熱記録媒体に対する情報の記録が開始されるまでの時間が更に長くなってしまっていた。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、その第1の目的は、記録媒体に記録を開始するための記録指令を受けてから、記録媒体に情報の記録を開始するまでの時間を短縮することで、記録媒体に対する情報の記録を短時間に行うことが可能な記録装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、記録指令を受けてから、記録媒体に情報の記録を開始するまでの時間を短縮することで、記録媒体に対する情報の記録を短時間に行うことが可能な記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の観点からすると、熱可逆的に発色及び消色する記録媒体に予め記録された情報を消去する消去ユニットと;情報が消去された前記記録媒体に情報を記録する記録ユニットと;第1の記録媒体への記録を開始する記録指令に基づいて、前記記録ユニットに、第1の記録媒体に対する情報の記録を開始させるとともに、前記消去ユニットに、第2の記録媒体に予め記録された情報の消去を開始させる制御ユニットと;を備える情報記録装置である。
【0009】
これによれば、記録媒体への記録を開始する記録指令に基づいて、情報が消去された第1の記録媒体に対する情報の記録が開始されるとともに、第1の記録媒体とは別の第2の記録媒体に予め記録された情報の消去が開始される。これにより、第1の記録媒体に対しては、記録指令から短時間の間に情報の記録を開始することができ、結果的に記録媒体に対する情報の記録を短時間に完了することが可能となる。また、第1の記録媒体への情報の記録と並行して、第2の記録媒体に対する情報の消去が行われる。これにより、第1の記録媒体に対する情報の記録が完了してから、第2の記録媒体に対する情報の記録が開始されるまでの時間を短縮することが可能となる。
【0010】
また、本発明は第2の観点からすると、前記記録媒体への記録を開始する記録指令に基づいて、第1の記録媒体に対する情報の記録を開始する第1工程と;前記記録指令に基づいて、第2の記録媒体に予め記録された情報を消去する第2工程と;を含む記録方法である。
【0011】
これによれば、記録媒体への記録を開始する記録指令に基づいて、情報が消去された第1の記録媒体に対する情報の記録が開始されるとともに、第1の記録媒体とは別の第2の記録媒体に予め記録された情報の消去が開始される。これにより、第1の記録媒体に対しては、記録指令から短時間の間に情報の記録を開始することができ、結果的に記録媒体に対する情報の記録を短時間に完了することが可能となる。また、第1の記録媒体への情報の記録と並行して、第2の記録媒体に対する情報の消去が行われる。これにより、第1の記録媒体に対する情報の記録が完了してから、第2の記録媒体に対する情報の記録が開始されるまでの時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。図1には一実施形態に係る画像形成装置10の概略構成が示されている。この画像形成装置10は、一例として感熱記録媒体70に対して、情報の消去及び記録行うことが可能なサーマルプリンタであり、消去ユニット30、記録ユニット50、リフター40、給紙カセット21、昇降機構24、紙送りローラ23、排紙トレイ60、主制御装置100(図1には不図示図6参照)、及び上記各部を収容する筐体10aなどを備えている。
【0013】
前記感熱記録媒体70は、図2の平面図に示されるように、長手方向をX軸方向とする記録媒体である。この感熱記録媒体70は、ベースとなる基材と該基材の上面(+Z側の面)に貼り合わされた記録材を含んで構成されている。
【0014】
前記記録材は、サーマルヘッドでの消色及び発色が可能な素材からなり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の相違により相対的に発色した状態を形成し得るものである。図3は、この記録材を含む感熱記録媒体70の発色濃度と温度との関係(温度特性)を示した図である。図3に示されるように、例えば始め消色状態Aにある感熱記録媒体70を加熱すると、感熱記録媒体70の状態は、図中の実線に従って変化する。感熱記録媒体70の温度が温度T1近傍になると、感熱記録媒体70は発色を開始し、感熱記録媒体70の状態は最終的に発色状態Bに至る。この発色状態Bにある感熱記録媒体70を急冷すると、感熱記録媒体70の状態は、図中の実線に従って変化し、常温においても発色した状態が維持されたまま発色状態Cに至る。また、発色状態Bにある感熱記録媒体70を徐冷すると、感熱記録媒体70の状態は、図中の破線に従って変化する。感熱記録媒体70の温度がT2近傍になると、感熱記録媒体70は消色を開始し、感熱記録媒体70の状態は最終的に消色状態Aに至る。一方、発色状態Cにある感熱記録媒体70を加熱すると、感熱記録媒体70の状態は、図中の一点鎖線に従って変化する。感熱記録媒体70の温度がT1よりも低い温度T2近傍になると、感熱記録媒体70は消色を開始し、感熱記録媒体70の状態は消色状態Eに至る。さらに、消色状態Eにある感熱記録媒体70を冷却すると、感熱記録媒体70の状態は、図中の一点鎖線に従って変化し、最終的に消色状態Aに至る。したがって、感熱記録媒体70の上面をサーマルヘッド等で加熱することにより、感熱記録媒体70に対して、情報の消去を行い、また情報の記録を行うことができる。
【0015】
図1に戻り、前記給紙カセット21は上方が開放されるとともに、底壁に開口21aが設けられた箱状の部材であり、内部にはZ軸方向に移動するトレイ22を備えている。このトレイ22には上述した感熱記録媒体70が長手方向をX軸方向として積載されている。そして、給紙カセット21が筐体10aに挿入されると、トレイ22は、例えば−X側端及び+X側端をそれぞれ中心としてY軸に平行な軸回りに起伏回動可能に設けられた1対の棒状部材25A,25Bを備える昇降機構24により、給紙カセット21の開口21aを介して上方に付勢される。これにより、トレイ22に積載された感熱記録媒体70のうちの最も上にある感熱記録媒体70が、支持部材23aに支持された紙送りローラ23の下面に圧接される。そして、トレイ22に積載された感熱記録媒体70は、紙送りローラ23が回転することにより、挿入口30aを介して消去ユニット30の内部へ順次供給される。
【0016】
前記消去ユニット30は、上下方向に配置された1対のローラにより感熱記録媒体70を+X方向へ搬送する搬送ローラ対31、搬送ローラ対31の+X側に昇降可能に配置された消去ヘッド32、該消去ヘッド32の下方に配置されたプラテンローラ33、及び消去ヘッド32の+X側に、可動部材34aを介して配置された可動ローラ34を備えている。
【0017】
消去ユニット30は感熱記録媒体70が送られてくると、主制御装置100の指示により、該感熱記録媒体70を搬送ローラ対31及びプラテンローラ33を介して+X方向へ移動させつつ、消去ヘッド32を、プラテンローラ33により下方から支持された感熱記録媒体70の上面に当接させる。そして、消去ヘッド32により、感熱記録媒体70の上面を、図3におけるT2以上の温度まで加熱することにより、感熱記録媒体70に記録された情報の消去を行う。また、消去ヘッド32の温度は、不図示の温度センサなどにより検出され、主制御装置100に供給される。
【0018】
情報が消去された感熱記録媒体70は、その+X側端部が搬送トレイ42に設けられた搬送ローラ47の上方を通過した後に、可動部材34aが図1の仮想線で示される位置から実線で示される位置へ回動されることにより、可動ローラ34と搬送トレイ42の搬送ローラ47とによって挟まれた状態となる。そして、この状態から搬送トレイ42の搬送ローラ47が回転されることで、搬送トレイ42の載置部42a上へ搬入される。
【0019】
図4はリフター40の斜視図である。図1及び図4を総合するとわかるように、前記リフター40は、筐体10aの内部で、消去ユニット30の+X側に配置された直方体状の昇降装置41、該昇降装置41に1対のリンクバー44Aと1対のリンクバー44Bとをそれぞれ介して連結された搬送トレイ42、該搬送トレイ42に載置された感熱記録媒体70をクランプするクランパ46、及び搬送トレイ42の−X側端部近傍に長手方向をY軸方向として配置された搬送ローラ47を備えている。
【0020】
前記昇降装置41は、筐体10aの底壁面に不図示の支持部材を介してX軸方向を長手方向として配置され、−Y側の面には、−X側端部から中央部にかけて形成された長手方向をX軸方向とする案内孔41aに沿って移動する移動軸45Aと、+X側端部から中央部にかけて形成された長手方向をX軸方向とする案内孔41bに沿って移動する移動軸45Bとが配置されている。同様に、+Y側の面には、−X側端部から中央部にかけて形成された長手方向をX軸方向とする案内孔41aに沿って移動する移動軸45Aと、+X側端部から中央部にかけて形成された長手方向をX軸方向とする案内孔41bに沿って移動する移動軸45Bとが配置されている。昇降装置41の+Y側及び−Y側に設けられた移動軸45A,45Bそれぞれは、不図示の駆動機構によりX軸方向にそれぞれ同期して移動される。
【0021】
図5(A)は、搬送トレイ42を−X側から見た図であり、図5(B)は搬送トレイ42のXZ断面図である。図5(A)及び図5(B)を総合するとわかるように、搬送トレイ42は、長手方向をX軸方向とする長方形板状の載置部42aと、該載置部42aの−Y側端及び+Y側端に、載置部42aの上面と直交するように設けられた、長手方向をX軸方向とする1対の側壁部42bと、1対の側壁部42bそれぞれの−X側端から−X方向へ延設された1対のローラ支持部42cとを有している。
【0022】
前記搬送ローラ47は、その上面が載置部42aの上面とほぼ同じ高さになるように、+Y側端部及び−Y側端部が、搬送トレイ42に設けられた1対のローラ支持部42cに回動自在に支持されている。また、搬送ローラ47は不図示の駆動機構によりY軸に平行な軸回りに、正転(図1における時計回り)及び逆転(図1における反時計回り)可能となっている。
【0023】
前記クランパ46は、図4に示されるように、Y軸に平行な回動部と該回動部の両端部から−X方向に延設された1対のクランプ部を有する平面視U字状の部材である。このクランパ46は、搬送トレイ42に設けられた載置部42a上面の+X側端部に、回動部がY軸に平行な軸回りに回動可能に取り付けられている。
【0024】
前記1対のリンクバー44Aそれぞれは、上方に凸となるように湾曲した形状を有し、昇降装置41及び搬送トレイ42それぞれの+Y側及び−Y側に配置されている。そして、+X側端が、搬送トレイ42に設けられた1対の側壁部42bの+X側端部上方に、Y軸に平行な軸回りに回動可能に取り付けられ、−X側端が昇降装置41に設けられた移動軸45Aに、Y軸に平行な軸回りに回動可能に取り付けられている。また、前記1対のリンクバー44Bそれぞれも、リンクバー44Aと同等の構成を有し、−X側端が、搬送トレイ42に設けられた1対の側壁部42bの−X側端部上方に、Y軸に平行な軸回りに回動可能に取り付けられ、+X側端が昇降装置41に設けられた移動軸45Bに、Y軸に平行な軸回りに回動可能に取り付けられている。
【0025】
上述したリフター40では、主制御装置100の指示の下、昇降装置41により移動軸45Aが−X方向に移動されるとともに、移動軸45Bが+X方向に移動されることで、搬送トレイ42が下降し、図1に実線で示される位置(以下、搬入位置という)に位置決めされる。そして、昇降装置41により移動軸45Aが+X方向に移動されるとともに、移動軸45Bが−X方向に移動されることで、搬送トレイ42が上昇し、図1に仮想線で示される位置(以下、搬出位置という)に位置決めされる。また、主制御装置100は、搬送トレイ42が移動しているときには、不図示の駆動機構を介して、クランパ46を回動することで、載置部42aに載置された感熱記録媒体70をクランパ46に設けられた1対のクランプ部と載置部42aの上面とで挟持する。
【0026】
前記記録ユニット50は消去ユニット30の上方(+Z側)に配置され、上下動する支持部材51aに支持された引き込みローラ51、引き込みローラ51の−X側に昇降可能に配置された記録ヘッド52、記録ヘッド52の下方に配置されたプラテンローラ53、及び記録ヘッド52の−X側に、上下動する支持部材54aに支持された第1排出ローラ54、及び第1排出ローラ54の下方に配置された第2排出ローラ55を備えている。
【0027】
記録ユニット50は、搬送トレイ42が搬出位置に位置決めされると、主制御装置100の指示により、支持部材51aを駆動して、感熱記録媒体70を引き込みローラ51と搬送トレイ42の搬送ローラ47とによって挟み込む。感熱記録媒体70は、この状態から搬送トレイ42の搬送ローラ47が回転されることで、感熱記録媒体70の−X側端が記録ヘッド52とプラテンローラ53との間へ引き込まれる。記録ユニット50は、感熱記録媒体70の−X側端が、記録ヘッド52とプラテンローラ53との間に引き込まれると、主制御装置100の指示の下、プラテンローラ33により下方から支持された感熱記録媒体70の上面に記録ヘッド52を当接させる。そして、この状態でプラテンローラ53を回転させて、感熱記録媒体70を−X方向へ送りながら、感熱記録媒体70の上面を記録ヘッド52でT1以上の温度に加熱することで情報の記録を行う。なお、感熱記録媒体70に対する情報の記録中は、支持部材51a,54aそれぞれが上方に駆動され、引き込みローラ51及び第1排出ローラ54は感熱記録媒体70に干渉しない位置に退避する。
【0028】
感熱記録媒体70に対する情報の記録が完了すると、記録ユニット50は、主制御装置100の指示の下、支持部材54aを下方に駆動して、感熱記録媒体70の上面に第1排出ローラ54を当接させることにより、感熱記録媒体70を第1排出ローラ54と第2排出ローラ55とで挟む。そして、この状態から第2排出ローラ55を回転させて、感熱記録媒体70を、筐体10aに形成された排出口50aを介して、排紙トレイ60へ順次排出する。
【0029】
図6は、本実施形態にかかる画像形成装置10のブロック図である。主制御装置100は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含んで構成され、消去ユニット30、記録ユニット50、及びリフター40を統括して制御する。
【0030】
次に、画像形成装置10の動作について説明する。前提として、搬送トレイ42は図1に実線で示される位置に位置決めされているものとする。
【0031】
画像形成装置10では、電源が投入されると、主制御装置100が、図7のフローチャート(メインフロー)に従って、画像形成装置10を構成する各ユニットの制御を行う。
【0032】
《メインフロー》
まず、ステップ201では、電源が投入された時点で、画像形成装置10の搬送トレイ42に、消去ユニット30によって情報が消去された感熱記録媒体70が載置されているか否かを判断する。画像形成装置10では、消去ユニット30を通過した感熱記録媒体70は、情報が消去された状態で、搬送トレイ42に排出される。本実施形態では、主制御装置100は、例えば、不図示の検出器などで搬送トレイ42に載置された感熱記録媒体70の有無を検出する。搬送トレイ42に感熱記録媒体70が無い場合には、ステップ201での判断が否定されステップ202へ移行する。一方、搬送トレイ42に感熱記録媒体70が有る場合には、ステップ201での判断が肯定されステップ206へ移行する。
【0033】
次のステップ202では、消去ユニット30の消去ヘッド32に対する電力の供給を開始する。
【0034】
上述したように感熱記録媒体70に記録された情報は、感熱記録媒体70を温度T1以上に加熱した後に除冷すること、あるいはT2以上T1以下の温度に加熱することで消去することができる。そこで、ステップ203では、消去ヘッド32がT2以上になったか否かを判断する。そして、ステップ203での判断が肯定された場合には次のステップ204へ移行する。一方、ステップ203での判断が否定された場合には、ステップ202に戻り、以降ステップ203での判断が肯定されるまで、ステップ202、ステップ203の処理を繰り返す。
【0035】
次のステップ204では、紙送りローラ23を回転させて、給紙カセット21に収容された感熱記録媒体70を+X方向へ送ることで、感熱記録媒体70を消去ユニット30の搬送ローラ対31の1対のローラ間へ搬送する。
【0036】
次のステップ205では、感熱記録媒体70を+X方向へ移動させつつ、消去ヘッド32を、プラテンローラ33により下方から支持された感熱記録媒体70の上面に当接させる。そして、消去ヘッド32により、感熱記録媒体70の上面を、図3におけるT2以上の温度まで加熱することにより、感熱記録媒体70に記録された情報の消去を行う。
【0037】
情報の消去が行われた感熱記録媒体70は、可動部材34aが回動されることにより可動ローラ34と搬送ローラ47とによって挟まれた状態となる。そして、この状態から搬送ローラ47が回転されることで、感熱記録媒体70は搬送トレイ42の載置部42a上へ搬入される。これにより感熱記録媒体70は、図4に破線で示されるように、−X側端部が搬送ローラ47の上方に位置した状態で、搬送トレイ42に載置される。
【0038】
次のステップ206では、パソコンなどの上位装置から記録指令があるか否かを判断する。そして、ここでの判断が肯定された場合には、次のステップ207へ移行する。
【0039】
次のステップ207では、上位装置から印刷枚数Nに関する情報を取得する。
【0040】
次のステップ208では、印刷枚数を示すカウンタm及びカウンタnを0にセットする。
【0041】
次のステップ209では、主制御装置100は、図8及び図9に示されるフロー1及びフロー2を同時に実行する。
【0042】
《フロー1》
フロー1のステップ301では、画像形成装置10の搬送トレイ42に、消去ユニット30によって情報が消去された感熱記録媒体70が載置されているか否かを判断する。搬送トレイ42に情報が消去された感熱記録媒体70が無い場合には、ここでの判断が否定される。そして、後述するフロー2の処理が実行されることによって、情報が消去された感熱記録媒体70が搬送トレイ42に搬入されるまでフロー1の動作が中断される。一方、搬送トレイ42に感熱記録媒体70が有る場合には、ステップ201での判断が肯定されステップ302へ移行する。
【0043】
次のステップ302では、情報が消去された感熱記録媒体70を載置する搬送トレイ42を、リフター40を駆動することにより搬出位置まで移動する。次に、支持部材51aを駆動して引き込みローラ51を感熱記録媒体70の上面に当接させ、この状態から搬送ローラ47を回転させることにより、感熱記録媒体70を、記録ユニット50の記録ヘッド52とプラテンローラ53との間へ搬送する。また、主制御装置100は、感熱記録媒体70の−X側端が、記録ユニット50の記録ヘッド52とプラテンローラ53との間へ搬送された後に、搬送トレイ42を搬入位置まで移動する。
【0044】
次のステップ303では、プラテンローラ33により下方から支持された感熱記録媒体70の上面に記録ヘッド52を当接させた状態でプラテンローラ53を回転させることで、感熱記録媒体70を−X方向へ送りながら、感熱記録媒体70の上面をT1以上の温度まで加熱する。これにより感熱記録媒体70に対する情報の記録が行われる。
【0045】
次のステップ304では、感熱記録媒体70を第1排出ローラ54と第2排出ローラ55とで挟み、この状態から第2排出ローラ55を回転させることで、感熱記録媒体70を、筐体10aに形成された排出口50aを介して、排紙トレイ60へ排出する。
【0046】
次のステップ305では、カウンタmの値を1インクリメントする。
【0047】
次のステップ306では、カウンタmの値が、印刷枚数Nの値と等しいか否かを判断する。ここでの判断が肯定された場合には、フロー1の処理を終了し、否定された場合には、ステップ301に戻り、以降ステップ306での判断が肯定されるまで、ステップ301〜306までの処理を繰り返す。
【0048】
《フロー2》
フロー2のステップ401では、給紙カセット21に感熱記録媒体70が有るか否かを判断する。そして、ステップ401での判断が否定された場合には、ステップ409へ移行し、上位装置又は外部などにエラー情報を送信し、フロー2の処理を終了する。一方、ステップ401での判断が肯定された場合には、次のステップ402へ移行する。
【0049】
次のステップ402では、消去ユニット30の消去ヘッド32に対する電力の供給を開始する。
【0050】
次のステップ403では、消去ヘッド32がT2以上になったか否かを判断する。そして、ステップ403での判断が肯定された場合には次のステップ404へ移行する。一方、ステップ403での判断が否定された場合には、ステップ402に戻り、以降ステップ403での判断が肯定されるまで、ステップ402、ステップ403の処理を繰り返す。
【0051】
次のステップ404では、紙送りローラ23を回転させて、給紙カセット21に収容された感熱記録媒体70を+X方向へ送ることで、感熱記録媒体70を消去ユニット30の搬送ローラ対31の1対のローラ間へ搬送する。
【0052】
次のステップ405では、感熱記録媒体70を+X方向へ移動させつつ、消去ヘッド32を、プラテンローラ33により下方から支持された感熱記録媒体70の上面に当接させる。そして、消去ヘッド32により、感熱記録媒体70の上面を、図3におけるT2以上の温度まで加熱することにより、感熱記録媒体70に記録された情報の消去を行う。
【0053】
情報の消去が行われた感熱記録媒体70は、可動部材34aが回動されることにより可動ローラ34と搬送ローラ47とによって挟まれた状態となる。そして、この状態から搬送ローラ47が回転されることで、感熱記録媒体70は搬送トレイ42の載置部42a上へ搬入される。これにより感熱記録媒体70は、図4に破線で示されるように、−X側端部が搬送ローラ47の上方に位置した状態で、搬送トレイ42に載置される。
【0054】
次のステップ406では、カウンタnの値を1インクリメントする。
【0055】
次のステップ407では、カウンタnの値が、印刷枚数Nの値と等しいか否かを判断する。ここでの判断が肯定された場合には、フロー2の処理を終了し、否定された場合には、ステップ402に戻り、以降ステップ407での判断が肯定されるまで、ステップ402〜407までの処理を繰り返す。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、電源が投入されると、搬送トレイ42に消去ユニット30によって情報が消去された感熱記録媒体70が載置されているかが判断される。そして、搬送トレイ42に感熱記録媒体70が無い場合には、予め感熱記録媒体70に対する情報の消去が行われ(ステップ205)、情報の消去が行われた感熱記録媒体70が搬送トレイ42上にセット(待機)される。これにより、搬送トレイ42に感熱記録媒体が載置されている場合には、画像形成装置10が上位装置などからの記録指令を受けた際に、消去ヘッド32の昇温動作や情報の消去などを行うことなく、感熱記録媒体70に対する情報の記録を開始することができ、感熱記録媒体70に対する情報の記録を短時間に完了することが可能となる。
【0057】
具体的には、図10のタイムチャートに示されるように、時刻tに開始指令を受けてから、消去ユニット30へ感熱記録媒体70を搬送する給紙工程、及び感熱記録媒体70に記録された情報を消去する消去工程と、感熱記録媒体70に情報を記録する記録工程とを並行して行うことができ、結果的に感熱記録媒体70に対する情報の記録を短時間に完了することが可能となる。具体的には、従来は、時刻tから時刻tまでの時間を経てから印字工程が開始されるため、本実施形態では、時刻tから時刻tまでの時間分だけ印刷開始までの時間が短縮される。
【0058】
また、本実施形態では、メインフローで、搬送トレイ42に感熱記録媒体70が無い場合には、記録指令に先だって記録媒体に対する情報の消去が行われ、フロー1とフロー2とでは、同数の記録媒体に対する情報の記録及び消去が行われる。これにより、画像形成装置10が、開始指令を受け付けている間は、常時搬送トレイ42に感熱記録媒体70が載置された状態となる。したがって、この状態から記録指令を受けた際には、消去ヘッド32の昇温動作や情報の消去などを行うことなく、感熱記録媒体70に対する情報の記録を開始することができ、感熱記録媒体70に対する情報の記録を短時間に完了することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、画像形成装置10が記録指令を受けると、感熱記録媒体70に対する情報の記録処理(ステップ302からステップ304)と、次に情報の記録が行われる感熱記録媒体70に対する情報の消去を行うための、消去ヘッド32の昇温処理(ステップ402)とがほぼ同時に開始される。これにより、最初の感熱記録媒体70に対する情報の記録が行われてから、次の感熱記録媒体70に対する情報の記録を行うまでの時間を短縮することができる。
【0060】
また、本実施形態では、感熱記録媒体70に対する記録指令の受け付け中に、消去ヘッド32への電源の供給を停止しても、感熱記録媒体70に対する情報の記録処理と並行して、消去ヘッド32の昇温処理を行うことができる。したがって、消去ヘッド32を消去温度、又はそれに近い温度に維持しておくことなく、記録指令を受けてから短時間の間に感熱記録媒体70に対する情報の記録を開始することが可能である。このため、画像形成装置10が待機している間の消費電力を低減することができる。
【0061】
上述のように構成された画像形成装置10では、情報の消去が行われた感熱記録媒体70が一定温度以下に冷却される前に、情報の記録が行われると、情報が記録された部分が徐冷された状態となるため、十分な発色濃度が得られないことがある。このため、本実施形態にかかる画像形成装置10では、記録処理がなされた直後の感熱記録媒体70を強制冷却することが好ましい。その方法としては、例えば、搬送トレイ42の素材として熱伝導率の高い素材を用いるか、搬送トレイ42の載置部に別途熱伝導率の高い放熱部材を配置することなどが考えられる。
【0062】
また、本実施形態では、ステップ201からステップ205までの間に、1枚の感熱記録媒体70に対する情報の消去を予め行い、情報が消去された感熱記録媒体70を搬送トレイ42に待機させることとしている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、搬送トレイ42に感熱記録媒体70を複数枚収容可能な格納機構を設けておき、予め複数枚の感熱記録媒体70に対する情報の消去を行い、これらの感熱記録媒体70を搬送トレイ42の格納機構にそれぞれ待機させておいてもよい。
【0063】
また、図3に示される感熱記録媒体70の温度特性は一例であり、これ以外の温度特性を有していてもよい。その場合には、消去ユニット30や記録ユニット50での加熱温度を適切に設定することで対応することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明の記録装置及び記録方法は、感熱記録媒体に対する情報の記録に適している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置10の概略構成を示す図である。
【図2】感熱記録媒体70を示す図である。
【図3】感熱記録媒体70の温度特性を示す図である。
【図4】リフター40の斜視図である。
【図5】図5(A)は搬送トレイ42を−X側から見た図であり、図5(B)は搬送トレイ42を−Y側から見た図である。
【図6】画像形成装置10の制御系を示すブロック図である。
【図7】画像形成装置10の動作を説明するためのフローチャート(メインフロー)である。
【図8】画像形成装置10の動作を説明するためのフローチャート(フロー1)である。
【図9】画像形成装置10の動作を説明するためのフローチャート(フロー2)である。
【図10】画像形成装置10のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0066】
10…画像形成装置、10a…筐体、21…給紙カセット、21a…開口、22…トレイ、24…昇降機構、25A,25B…棒状部材、23…紙送りローラ、23a…支持部材、30…消去ユニット、31…搬送ローラ対、32…消去ヘッド、33…プラテンローラ、34…可動ローラ、34a…可動部材、40…リフター、41…昇降装置、41a,41b…案内孔、42…搬送トレイ、42a…載置部、42b…側壁部、42c…ローラ支持部、44A,44B…リンクバー、45A,45B…移動軸、46…クランパ、47…搬送ローラ、50…記録ユニット、51…引き込みローラ、51a…支持部材、52…記録ヘッド、53…プラテンローラ、54…第1排出ローラ、54a…支持部材、55…第2排出ローラ、60…排紙トレイ、70…感熱記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可逆的に発色及び消色する記録媒体に予め記録された情報を消去する消去ユニットと;
情報が消去された前記記録媒体に情報を記録する記録ユニットと;
第1の記録媒体への記録を開始する記録指令に基づいて、前記記録ユニットに、第1の記録媒体に対する情報の記録を開始させるとともに、
前記消去ユニットに、第2の記録媒体に予め記録された情報の消去を開始させる制御ユニットと;を備える情報記録装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記記録指令に先だって、前記消去ユニットに、前記第1の記録媒体に記録された情報の消去を行わせる請求項1に記載の情報記録装置。
【請求項3】
前記消去ユニットは、前記記録媒体を加熱する加熱デバイスを備え、
前記制御ユニットは、前記記録指令に基づいて、前記消去ユニットに前記加熱デバイスの加熱を開始させる請求項1又は2に記載の情報記録装置。
【請求項4】
前記情報が消去された記録媒体を冷却する冷却機構を更に備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報記録装置。
【請求項5】
前記記録媒体を、前記消去ユニットから前記記録ユニットへ搬送する搬送機構を更に備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報記録装置。
【請求項6】
前記情報が消去された記録媒体を、前記記録指令に先立って待機させる待機機構を更に備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の情報記録装置。
【請求項7】
前記待機機構は、情報が消去された複数の記録媒体を収容する請求項6に記載の情報記録装置。
【請求項8】
前記記録媒体への記録を開始する記録指令に基づいて、第1の記録媒体に対する情報の記録を開始する第1工程と;
前記記録指令に基づいて、第2の記録媒体に予め記録された情報を消去する第2工程と;を含む記録方法。
【請求項9】
前記第2工程では、前記記録指令に基づいて、前記第2の記録媒体に予め記録された情報を消去する加熱部材の加熱を開始する請求項8に記載の記録方法。
【請求項10】
前記第1工程と前記第2工程とは、ほぼ同時に開始される請求項8又は9に記載の記録方法。
【請求項11】
前記記録指令に先立って、前記第1の記録媒体に予め記録された情報を消去する消去工程を更に含む請求項8〜10のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項12】
前記情報が消去された記録媒体を冷却する工程を更に含む請求項8〜11のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項13】
前記消去工程では、前記記録指令に先立って、複数枚の前記記録媒体を消去する請求項8〜12のいずれか一項に記載の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−46957(P2010−46957A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214479(P2008−214479)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】