説明

情報通信方法および情報通信装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ディジタル・データの伝送に関する。特に、本発明は、テレビ信号を表現するディジタル・データの伝送に関するが、それに制限されるものではない。
【0002】
【従来の技術】通常高品位テレビ(HDTV)と呼ばれている次世代のテレビ(TV)には、何らかの形式のディジタル伝送が要求されることが一般的に認められている。この要求は、アナログ信号処理よりもディジタル信号処理のほうが、ずっと強力な映像圧縮方式を実現可能であるという事実に主によっている。しかし、さまざまな受信地点での信号対ノイズ比(SNR)の小さな変動に対するディジタル伝送の潜在的な感受性のため、完全ディジタル伝送システムに頼ることには懸念がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この現象(時に「しきい値効果」と呼ばれる)は、テレビ放送局からそれぞれ50および63マイルに位置する2つのテレビ受信機の場合を考えることによって例示することができる。放送信号の強度は大体距離の逆2乗に従って変化するので、それらのテレビ受信機によって受信される信号強度の差は約2dBであることが容易に確かめられる。
【0004】いま、ディジタル伝送方式が使用され、50マイル離れた受信機への伝送が10-6のビット誤り率を示すと仮定する。もう一方のテレビに対する2dBの追加信号損失は、受信機の入力でのSNRの2dBの減少となるならば、この受信機は約10-4のビット誤り率で動作することになる。この程度のビット誤り率では、50マイル離れたテレビは非常に良好な受信をするが、もう一方のテレビの受信はおそらく非常に劣悪になる。短距離にわたる性能のこの種の急速な劣化は、放送産業では一般的に受容可能と見なされない。(比較すると、現在使用されているアナログTV伝送方式の性能劣化はずっと小さい。)
【0005】従って、この問題を解決するための、テレビ・アプリケーションにおける使用に適合するディジタル伝送方式が要求される。他のディジタル伝送環境において使用されている解決法、例えば、a)ケーブル・ベースの伝送システムにおける再生中継器の使用や、b)音声バンド・データ・アプリケーションにおける代替データ速度や条件付き電話線の使用は、テレビの自由空間放送環境には明らかに適用できない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の中心には、従来のディジタル伝送システムの特性は、例えばテレビ伝送環境に移行される際に不利であること、および、その特性が問題の核心にあることの認識がある。特に、従来、ディジタル伝送システムは、通信チャネルを伝送されるデータ要素(一般的にはビット)のすべてに、障害に対してほとんど等しい程度の保護を与えるように設計されてきた。
【0007】このような方法は、ディジタル移送機構がユーザのデータに対して透明であり、データの内容の以前の知識が利用可能でない場合(例えば、音声バンド・データまたはディジタル無線アプリケーションの場合)には望ましい。しかし、全ビットが同等に扱われると、それらはまた、チャネル条件を変えることによってすべて同様に影響を受け、その結果は、上記の例に示されるように、破局的になることがある。
【0008】本発明によれば、ディジタルTV信号の無線放送のための標準的なディジタル伝送の欠点が、特殊なソース符号化ステップと、それに続く特殊なチャネル・マッピング・ステップからなる方法によって克服される。後者のステップは、ここでは、破局抵抗性(C−R)マッピングと呼ばれる。
【0009】特に、ソース符号化ステップは、テレビ信号を2個以上のデータ・ストリームで表し、一方チャネル・マッピング・ステップでは、マッピングは、さまざまなデータ・ストリームのデータ要素が受信機で誤って検知される確率が相異なるようなものである。所望される実施例では、前記第1のデータ・ストリームは、最も重要(以下で詳細に説明される)と見なされる全テレビ信号の成分を搬送し、データ・ストリームは、そのデータ要素が最小の誤り確率を有するようにマッピングされる。
【0010】第2のデータ・ストリームは、第1データ・ストリームに比べてあまり重要でないと見なされる全テレビ信号の成分を搬送し、データ・ストリームは、そのデータ要素が第1データ・ストリームほど小さくない誤り確率を有するようにマッピングされる。一般的に、全テレビ信号を任意数のデータ・ストリームで表現し、それぞれさまざまな重要性を有する成分を搬送し、それぞれの誤り確率を有することが可能である。この方法によって、テレビ受信機の地点での受信品質の小さい劣化が実現される。その理由は、受信機のビット誤り率が放送送信機からの距離が増大するとともに増大し始めると、非重要テレビ信号情報を表現するビットが最初に影響を受けるためである。
【0011】本発明は、テレビ信号に制限されるものではなく、通信されるインテリジェンスの相異なる成分に異なるレベルの誤り保護を与えることが所望されるような、実質的に任意の環境において使用可能である。
【0012】
【実施例】図1および図2の送信機と、図3の受信機の特定の説明に進む前に、まず本発明の理論的基礎を考察することが有用である。
【0013】まず、ここで記述されるさまざまなディジタル・シグナリングの概念(もちろん、本発明の概念自体は除く)はすべて、例えばディジタル無線および音声バンド・データ伝送(モデム)技術分野では周知であり、ここで詳細に説明される必要はない。これらは、N次元信号配置(Nはある整数)を使用した多次元シグナリング、トレリス符号化、スクランブリング、通過バンド形成、等化、ビテルビまたは最尤復号化などの概念を含む。
【0014】これらの概念は、米国特許第3,810,021号(1974年5月7日発行、発明者:I. Kalet他)、米国特許第4,015,222号(1977年3月29日発行、発明者:J. Werner)、米国特許第4,170,764号(1979年10月9日発行、発明者:J. Salz他)、米国特許第4,247,940号(1981年1月27日発行、発明者:K. H. Mueller他)、米国特許第4,304,962号(1981年12月8日発行、発明者:R. D. Fracassi他)、米国特許第4,457,004号(1984年6月26日発行、発明者:A. Gersho他)、米国特許第4,489,418号(1984年12月18日発行、発明者:J. E. Mazo)、米国特許第4,520,490号(1985年5月28日発行、発明者:L. Wei)、および米国特許第4,597,090号(1986年6月24日発行、発明者:G. D. Forney, Jr.)のような米国特許に開示されている。
【0015】図4を参照すると、ディジタル無線および音声バンドデータ伝送システムで通常使用される型の標準的な2次元データ伝送配置が示されている。この標準的な方式(通常、直交振幅変調(QAM)と呼ばれる)では、それぞれ4ビットからなるデータ・ワードは、それぞれ16個の可能な2次元信号ポイントのうちの1つにマッピングされる。各信号ポイントは、水平軸上の同相(I)座標および垂直軸上の直交位相(Q)座標を有する。各軸上では、信号ポイント座標は±1または±3であるため、各ポイントと、それに水平または垂直に隣接する各ポイントとの間の距離が全ポイントに対して等しい(その距離は「2」)。
【0016】(データ・ワードを特定の信号ポイントにマッピングするプロセスはここでは「チャネル・マッピング」と呼ばれ、信号ポイントは「チャネル・シンボル」と呼ばれることがある。)
【0017】図5の16ポイント配置は、本発明の原理を実現している。この配置と図4の配置の差は、相異なる信号ポイント間の相対距離である。
【0018】特に、図4のすべての隣接するポイント間の距離は等しいため、信号ポイントが表現する全ビットに対して本質的に等しい誤り確率が与えられる。(ノイズ、位相ジッタおよびさまざまな他のチャネル現象/障害の結果として、伝送された信号ポイントが、異なる信号ポイントが伝送されたように受信機に現れるほどに配置内のもとの位置から変位した場合に、伝送エラーが起こる。)
【0019】他方、図5の隣接ポイント間の距離は全ポイントに対して同一ではない。特に、図5の個々の象限内のポイント間の最小距離はd=21/2であり、隣接象限内のポイント間の最小距離はその2倍、すなわち、2d=2・21/2である。従って、伝送されたポイントがどの象限に位置していたかを識別する際に受信機でエラーが起こる確率は、その象限内のどのポイントが実際のポイントであったかを識別する際にエラーが起こる確率よりも小さい。
【0020】これは、第1データ・ストリームのデータ要素の相異なる値を表現する信号ポイント間の最小距離(例えば、第1ストリームの双ビット00を表現する第1象限のポイントと、第1ストリームの双ビット01を表現する第2象限のポイントの間の最小距離(2・21/2))が、第2データ・ストリームのデータ要素の相異なる値を表現する信号ポイント間の最小距離(例えば、第2ストリームの双ビット00を表現する第1象限のポイントと、第2ストリームの双ビット01を表現する同じ象限のポイントの間の最小距離(21/2))よりも大きいという事実の結果である。
【0021】ここで、伝送された各データ・ワードの4ビットのうちの2ビットが、他の2ビットよりも重要であるため、他の2ビットよりも高い誤り保護を必要とすると仮定する。これは、本発明によれば、4個の象限(図5で丸で囲まれた双ビットで示す)のうちの1つを選択するためにそれら2個の重要ビットを使用し、各象限内の4個のポイントのうちの1つを選択するために、各ポイントに付けられた双ビットで示されるように、他の2ビットを使用することによって実現される。伝送された信号ポイントの象限を正確に識別しない確率は、信号ポイント自体を正確に識別しない確率よりも小さいため、所望される保護が実現される。
【0022】さらに一般的には、配置は信号ポイントのグループに分割され、各グループはサブグループに分割され、各サブグループは1個以上の信号ポイントからなる。マッピングされる各データ・ワードからの少なくとも1つのデータ要素(例えばビット)が、そのデータ・ワードを表現する信号ポイントの属するグループを識別し、他の少なくとも1つのデータ要素が、そのグループ内のサブグループを識別する。
【0023】サブグループが複数の信号ポイントを含む場合、それらの信号点のうちの特定の1つを最終的に識別する(そのために、サブグループはさらにサブサブグループに分割される)ためにさらに多くのデータ要素が使用される。本発明によれば、a)グループおよびサブグループは、伝送された信号ポイントが属するグループを受信機が誤って決定する確率が、それが属するサブグループを受信機が誤って決定する確率よりも小さく、b)グループを識別するデータ要素によって表現される情報が、サブグループを識別するデータ要素によって表現される情報よりも重要であるように配置される。
【0024】図5の配置の一般的なバージョンが図6に示されている。図6では、座標値は、±21/2および±2・21/2ではなく、±αおよび±βである。配置は、特定のサイズ(すなわち、信号ポイント数)に制限されない。例えば、標準的な64QAM配置(その右上象限によって表現される)が図7に示されており、本発明の原理を実現し、3つの相異なる保護レベルを有する一般的な64ポイント配置が図8に示されている。
【0025】さらに進む前に、いくつかの形式的な定義をしておくことが有用である。上記のように、本発明によるチャネル・マッピングはここでは破局抵抗性(C−R)マッピングと呼ばれる。一般的に、(n1,n2,‥‥‥,nk;m)C−Rマッピングは、n1ビットに第1(最高)レベルの保護を与え、n2ビットに第2レベルの保護を与え、などとなるマッピングである。マッピング識別子の最終エントリは、伝送される情報ビットの総数mの残部である(すなわち、m=n1+n2+‥‥‥+nk)。
【0026】この定義では、図5および図6に示された各C−Rマッピングは(2,2;4)マッピングである。図8は(その右上象限によって表現される)64ポイント(2,2,2;6)マッピングの例である。16ポイント(1,2,1;4)マッピングの例が図9に示されている。最後に、図4および図7に示された型の標準的なQAMマッピングは(m;m)C−Rマッピングと見なすことができる。
【0027】次に、C−Rマッピングの設計において可能なトレードオフの種類について説明する。まず、伝送信号におけるパワーは、平均パワー制約条件に従うと仮定する。IおよびQ離散信号ポイント・レベルをそれぞれとaiおよびbiと表し、これらの信号ポイントは無相関であると仮定する。このとき、平均パワー制約条件は、考慮中のすべての信号ポイント・レベル・シナリオに対して、
【数1】


を要求する。ここで、i番目のレベルの保護をもつビットに対してある性能を実現するために要求されるSNRの大きさをSNRniと表す。
【0028】標準的な(m;m)マッピングと比較して、そのレベルの性能を実現するためにこれらのビットによって要求されるSNRの大きさの変化は、
【数2】


で定義される。ただし、SNRmは、同一の性能を実現するために(m;m)マッピングによって要求されるSNRの大きさである。(これは、全ビットに対して等しい大きさの保護を与えるマッピングである。)
【0029】数1および数2の式を使って、図6に示される(2,2;4)マッピングに対する次の関係式が得られる。
【数3】


ただし、SNRの増分はdB単位で表現されている。図6R>6のαを数3のパラメータとして使用すると、まずβの値が決定され、続いてSNRの増分が決定される。いくつかの計算値を表1に示す。
【0030】表1のエントリの意味を見るために、特殊例を考える。例えば、α=21/2の場合であるが、これは図5に示された信号配置に対応する。2個の最高保護ビットに対するSNRの増分が第3列に与えられている。考慮中の場合、これらのビットに対するSNRの増分は−3dBに等しい。従って、与えられた誤り確率に対して、これらのビットは、標準的な16ポイントQAMシステムに要求されるSNRよりも3dB小さいSNRでよい。他方、第4列から分かるように、最低保護ビットは、標準的なQAMシステムと同等の性能を達成するためにはさらに3dB高いSNRを必要とする。
【0031】前記の例で達成されたトレードオフは非常に乱暴なものに見えるかもしれない。一方では、最初の2ビットに対して3dBだけノイズに対する感度を減少させ、他方、他の2人に対してはこの感度を同じ3dBだけ増加させている。表1の他のエントリから明らかなように、このような明瞭なトレードオフが起こることはまれである。例えば、α=1.2の場合、ノイズに対する耐性は、最低保護ビットによって損失されるよりも、最高保護ビットによって獲得されるほうが高くなる。これは、効率的なC−Rマッピングの設計において求められる型のふるまいである。
【0032】
【表1】


【0033】本発明は2次元配置に制限されるものではなく、実際には、N次元配置(N≧2)とともに実現可能である。実際、次元が大きくなると、効率的なマッピングの設計における柔軟性が増大する。QAMシステムをもつ多次元C−Rマッピングを実現する1つの方法は、相異なる2次元C−Rマッピングを連続する信号ポイント間隔で使用する方法である。例えば、以下で説明されるように、4次元配置は、図5の(2,2;4)マッピングからのすべての可能な2次元信号ポイントを、図9の(1,2,1;4)マッピングからのすべての可能な2次元信号ポイントと連結することによって生成可能である。
【0034】容易に示されるように、このマッピング手続きは(3,2,3;8)4次元C−Rマッピングを与える。特に、図5の配置のポイント間の最大間隔は2・21/2であり、これは、ある象限のポイントと他の象限のポイントの間の最小距離である。この同じ最大間隔は、図9の配置の上半分と下半分を分離する。従って、最高保護レベルが3ビットに対して実現される。2ビットが図5の配置から1つの象限を選択(図5の丸で囲まれた双ビットで図示)し、第3ビットが図9の配置の2つの(上および下)半分のうちの1つを選択する(図9の丸で囲まれたビットで図示)。
【0035】次に大きい間隔は図9の配置の列間の距離であり、その最小距離は2である。従って、第2保護レベルが2ビットに対して実現される。この2ビットは、図9の配置からの4列のうちの1つを選択する(図9の四角で囲まれた双ビットで図示)。最後に、最小間隔は21/2であり、これは、図5の配置では象限内のポイント間の最小距離であり、図9の配置では列内のポイント間の最小距離である。従って、最低保護レベルは再び3ビットに対して実現される。2ビットは図5の配置の選択された象限内のポイントを選択(図5の各ポイントに付けられた双ビットで図示)し、第3ビットは図9の選択された半分および選択された列内に含まれる2ポイントのうちの1つを選択する(図9の各ポイントに付けられた1ビットで図示)。
【0036】従ってこの例によれば、8ビット・ワード01110100は、図5のポイントAと図9のポイントA’からなる4次元の単一のポイントを選択することになる。特に、第1および第2ビット(01)は、図5の左上象限を選択する。第3ビット(1)は、図9の下半分を選択する。第4および第5ビット(10)は、図9R>9の右から2番目の列を選択する。第6および第7ビット(10)は、図5の前に選択された象限からポイントAを選択する。第8ビット(0)は、図9の前に選択された半分および列からポイントA’を選択する。
【0037】このマッピングの場合、第2保護レベルをもつ2ビットに対するSNR条件は、図4の標準的なQAM信号配置に対するSNR条件と同一である。3個の最高保護ビットおよび3個の最低保護ビットは、前のセクションで導出された2次元(2,2;4)マッピングに対するSNR条件を有する。
【0038】次に、図1の送信機の説明に入る。テレビ信号ソース101が、アナログ・テレビ信号を生成し、この信号はソース符号器104に渡される。ソース符号器104は、データ要素のうちの少なくとも1つのサブセットが表現する情報が、データ要素の残部によって表現される情報よりも重要であるようなディジタル信号を生成する。この信号の生成方法の2つの例が以下で説明される。
【0039】ソース符号化された信号は例えばC−Rマッピングされる。このC−Rマッピングは、本発明によれば、各4次元信号ポイントが図5の配置からの2次元信号ポイントと、それに連結された図9の配置からの2次元信号ポイントからなるような、上記の4次元マッピングを使用する。本発明の特徴によれば、4次元マッパ121によって4次元信号ポイントにマッピングされる前に必要なビットの処理にかかわらず、マッピングによって特定の保護レベルが与えられるビットの区別は保存されることが望ましい。この区別が保持されない場合は、もちろん、テレビ信号を表現するさまざまなデータ・ストリームに相異なる保護レベルを割り当てることが不可能になる。
【0040】本実施例では、特に、信号が取る周波数バンドを通じて相対的に一様なエネルギー分布を保証するため、ディジタル信号を構成するビットをスクランブルすることが望ましい。従って、それらのビットは3個の独立のグループでスクランブルされる。最重要情報を含み、従って最高保護レベルが与えられるビットb1,b2およびb3は、第1スクランブラ111でスクランブルされる。
【0041】第2重要情報を含み、従って第2保護レベルが与えられるビットb4およびb5は、第2スクランブラ112でスクランブルされる。非重要情報を含み、従って最低保護レベルが与えられるビットb6,b7およびb8は、第3スクランブラ113でスクランブルされる。(スクランブルは、通常、直列ビット・ストリーム上で実行される。従って、図1に明示しないが、スクランブラ111、112および113は、スクランブルの前に各入力ビットに並列−直列変換を実行し、スクランブル後に直列−並列変換を実行すると仮定される。)
【0042】スクランブルされた8ビットは、上記のように、並列に4次元マッパ121に送られ、4次元マッパ121は、例えば上記のビット割当方式を使用して生成される4次元信号ポイントを識別する。マッパ121は、例えば、表参照を使用して実現される。続いて、従来の通過バンド形成およびテレビ変調がそれぞれ通過バンド形成器141およびテレビ変調器151によって実行される。続いて、生じたアナログ・テレビ信号は、アンテナ152を介して放送される。
【0043】図2の受信機を参照すると、アナログ・テレビ信号がアンテナ301によって受信され、例えば処理装置311での復調を含む従来のテレビ・フロントエンド処理を受け、A/D変換器312によってディジタル形式に変換される。次に、信号は通過バンド・チャネル等化器321によって等化され、検波器331へ渡される。検波器331は、マッピングに関する情報(特に、配置の信号ポイントの位置と、それらがグループおよびサブグループに分割されている方法に関する情報)を格納し、等化された信号に対していわゆる「スライシング」動作を実行して、格納された情報に対応する伝送された信号ポイントが何であるかを決定する。図5および図9の配置が本発明に従って配置される方法に関する知識を有することを除いては、この検波器は標準的なものである。
【0044】検波器331出力される8ビット・ワードは、デスクランブラ341、342および343によってデスクランブルされる。これらのデスクランブラはそれぞれ、送信機内のスクランブラ111、112および113と反対の機能を実行する。次に、例えばCRTディスプレイに表示可能なようにフォーマットされたテレビ信号が、画像信号生成器353によってデスクランブラ出力から生成される。その後、その信号がCRTディスプレイ360に送られる。
【0045】効率的なC−Rマッピングの設計における高度化のもう1つのステップが、信号配置に冗長性を付加することによって達成される。冗長性を付加することによって、トレリス符号化のような前進誤り訂正符号化の使用が可能になる。トレリス符号化の問題点の1つは、個々のビットの誤り率への影響があまり理解されていないことである。発表されている研究は、誤り事象の確率に集中しているようであり、これはトレリス符号化されたシステムのビット誤り率に容易には関連づけられない。それにもかかわらず、単純な例でも、さらに強力なC−Rマッピングがトレリス符号化の使用によっていかに獲得されるかを示すことができる。
【0046】信号ポイントあたり3ビットを伝送し、そのうちの1ビットが他の2ビットよりも高い保護を要求すると仮定する。非トレリス符号化システムでは、これは、図10に示される信号配置を有する(1,2;3)C−Rマッピングを使用することによって実行される。最重要ビットは上または下半平面を定義し、他の2ビットは各半平面内の可能な4ポイントのうちの1つを定義する。
【0047】最重要ビットは、ノイズに対して、他の2ビットよりも7dB大きいマージンを有することが容易に確認される。ここで、図10の各軸に沿って独立な1次元トレリス符号が使用され、それによって実質的に、行間の距離および、独立に、行内のポイント間の距離を増大させると仮定する。これによって、図11に示される信号配置が得られる。特に、3ビットのうちの1つがトレリス符号化されて、図11の4行のうちの1つを選択する2個のビットとなり、他の2ビットは第1ビットとは独立にトレリス符号化されて、図11の8列のうちの1つを選択する3個のビットとなる。
【0048】図2は、図11の配置を利用する送信機のブロック図を示す。テレビ信号ソース201はアナログ・テレビ信号を生成し、この信号はソース符号器204に渡される。ソース符号器204は、3ビットに2進データ・ワードc1,c2,c3からなるディジタル信号を生成する。ビットc1は他の2ビットc2およびc3よりも重要であると仮定される。ビットc1は第1スクランブラ211でスクランブルされ、ビットc2およびc3は第2スクランブラ212でスクランブルされる。
【0049】スクランブラ211の出力は直交位相トレリス符号器215によってトレリス符号化され、スクランブラ212の出力は同相トレリス符号器216によってトレリス符号化される。トレリス符号器215の2ビット出力は、上記のように、図11の配置の4行のうちの1つを識別する。それらの2ビットは直交位相1次元マッパ221に送られ、これは4個のy軸座標±1、±3のうちの1つを識別する出力を生成する。
【0050】同時に、トレリス符号器216の3ビット出力は、図11の配置の8列のうちの1つを識別する。それらの3ビットは同相1次元マッパ222に送られ、これは8個のx軸座標±0.5,±1.5,±2.5および±3.5のうちの1つを識別する出力を生成する。次に、従来の通過バンド形成が、直交位相通過バンド形成器241および同相通過バンド形成器242によって実行され、それらの出力は加算器243で結合される。生じた結合信号は次にテレビ変調器251に送られ、その出力アナログ信号はアンテナ252を介して放送される。
【0051】図2の送信機によって生成された信号に対する特別の受信機は図示しない。しかし、当業者はただちに、図3で使用されたのと同様の標準的な構成ブロックを使用してこのような受信機を設計することが可能である。ただし、この場合、トレリス符号によって得られる符号化利得を利用するため、検波器段階は最尤またはビテルビ復号器を含むことが望ましい。
【0052】この種のトレリス符号化法によって、ノイズに対する感度を全ビットに対して3dB減少させることができる。10-6の誤り確率の場合、最重要ビットは約11dBのSNRを要求し、他の2ビットは約18dBのSNRを要求する。(簡単のため、ここではチャネルは平坦振幅応答を有すると仮定する。)代わりに、標準的な8ポイント非符号化信号配置および16ポイント・トレリス符号化信号配置が使用された場合、同一の誤り率に対して、それぞれ18dBおよび15dBのSNRが要求される。多次元空間で直接実行されるトレリス符号化C−Rマッピングはさらに強力である。
【0053】ここまでは、本発明の原理の単なる説明である。例えば、本発明はここではディジタルTV伝送システムに関して例示された。しかし、本発明は他の型のディジタル伝送システムにも同様に適用可能である。さらに、ここでは特定の配置が示されたが、任意の所望される次元の多くの他の配置が使用可能である。例えば、多次元(例えば4次元)マッピングを与えるために使用されるさまざまな構成2次元C−Rマッピングが、さまざまな割合で使用可能である。また、相異なる数のポイントをもつ信号配置もまた、連続する信号ポイント間隔で使用可能である。すべてのこれらの可能性は、効率的な多次元C−Rマッピングの設計に大きな柔軟性を与える。
【0054】さらに、4次元は、水平および垂直極性を同時に使用する可能性のため、HDTVアプリケーションで自然に利用可能である。理論的には、これによって2個の独立なQAM信号の同時伝送が可能となる。従って、このアプリケーションでは、多次元C−Rマッピングを時間(相異なる信号ポイント期間にわたって)においても空間(極性間)においても実現する機会がある。
【0055】さらに、本実施例では特定の型のソース符号化法が使用されたが、テレビ信号のディジタル表現(すなわち、他の型のソース符号化法)のさまざまな他の方法が、伝送されるビットのいくつかにより高い保護を与えるために使用可能である。このような方法は、例えば、トレリス/重畳符号、BCH符号、リード=ソロモン符号またはそれらの組合せの使用を含む。
【0056】残念ながら、あるチャネル・マッピング方式は伝送信号のバンド幅を拡大し、または、潜在的な同期の問題点を有し、効率的とは見積もられないことがある。これらの方法はビット・ストリームに作用するので、どんな場合でも、これらの問題点が解決可能であれば、本発明は常にこれらの任意の方法と組み合わせることができる。また、ソース符号化法は他の型の処理(例えば、さまざまな形式のテレビ信号圧縮法のうちのいずれか)を含むことも可能である。
【0057】また、本発明はここでは、離散的機能構成ブロック(例えば、ソース符号器、スクランブラなど)で実現されたが、それらの構成ブロックのいくつかの機能は、いくつかの適当なプログラムされたプロセッサ、ディジタル信号処理(DSP)チップなどを使用して実行されることが可能である。
【0058】
【発明の効果】以上述べたごとく、本発明によれば、テレビ受信機の地点での受信品質の小さい劣化が実現される。その理由は、受信機のビット誤り率が放送送信機からの距離が増大するとともに増大すると、非重要テレビ信号情報を表現するビットが最初に影響を受けるためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】例えばHDTVに対する4次元チャネル・マッピング方式において、本発明の原理を実現する送信機のブロック図である。
【図2】HDTVに対する2次元チャネル・マッピング方式において、本発明の原理を実現するもう1つの送信機のブロック図であり、この方式はトレリス符号化法を包含する。
【図3】図1の送信機によって伝送された伝送信号に対する受信機のブロック図である。
【図4】本発明の原理を説明する際に有用な信号配置マップである。
【図5】本発明の原理を説明する際に有用な信号配置マップである。
【図6】本発明の原理を説明する際に有用な信号配置マップである。
【図7】本発明の原理を説明する際に有用な信号配置マップである。
【図8】本発明の原理を説明する際に有用な信号配置マップである。
【図9】本発明の原理を説明する際に有用な信号配置マップである。
【図10】本発明の原理を説明する際に有用な信号配置マップである。
【図11】本発明の原理を説明する際に有用な信号配置マップである。
【符号の説明】
101 テレビ信号ソース
104 ソース符号器
111 第1スクランブラ
112 第2スクランブラ
113 第3スクランブラ
121 4次元マッパ
141 通過バンド形成器
151 テレビ変調器
152 アンテナ
201 テレビ信号ソース
204 ソース符号器
211 第1スクランブラ
212 第2スクランブラ
215 直交位相トレリス符号器
216 同相トレリス符号器
221 直交位相1次元マッパ
222 同相1次元マッパ
241 直交位相通過バンド形成器
242 同相通過バンド形成器
243 加算器
251 テレビ変調器
252 アンテナ
301 アンテナ
311 テレビ・フロントエンド処理装置
312 A/D変換器
321 通過バンド・チャネル等化器
331 検波器
341 デスクランブラ
342 デスクランブラ
343 デスクランブラ
353 画像信号生成器
360 CRTディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 情報を表現するデータ要素からなる第1データストリームおよび第2データストリームを少なくとも含むディジタル信号を生成するステップと、前記ディジタル信号をチャネルマッピングするステップと、チャネルマッピングした信号を通信チャネル上に伝送するステップとからなる情報通信方法において、前記チャネルマッピングするステップは、前記第1データストリーム中の少なくとも1つのデータ要素の相異なる値を表現する信号点間の最小距離が前記第2データストリーム中の少なくとも1つのデータ要素の相異なる値を表現する信号点間の最小距離よりも大きいような信号点配置から一連の信号点を選択するステップを含むことにより、前記第1データストリームのデータ要素に対するチャネル誘導性誤りの確率が前記第2データストリームのデータ要素に対するチャネル誘導性誤りの確率よりも小さいようにしたことを特徴とする情報通信方法。
【請求項2】 前記情報がテレビ信号情報であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】 前記チャネルマッピングするステップが、前記ディジタル信号をトレリス符号化するステップを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項4】 前記生成するステップが、前記情報を受信するステップと、所定のソース符号を使用して前記情報をソース符号化するステップを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項5】 前記信号点配置が、N≧2として、N次元信号点配置であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項6】 前記生成するステップが、少なくとも1つの第1の所定の処理アルゴリズムを使用して前記ソース符号化された情報を処理するステップを含み、前記処理するステップは、前記第2データストリームのデータ要素に対して実行される処理とは独立に前記第1データストリームのデータ要素に対して実行されることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項7】 それぞれ少なくとも1つのデータ要素からなるデータワードを表現する信号点からなる信号点配置を用いて送信機から通信チャネルを通じて受信機へ情報を伝送するような型のディジタル伝送方式で使用される情報通信装置において、前記信号点配置は信号点のグループに分割され、各グループは信号点のサブグループに分割され、グループおよびサブグループは、伝送される信号点がどのグループからのものであるかを前記受信機が誤って決定する確率が、その信号点がどのサブグループからのものであるかを前記受信機が誤って決定する確率よりも小さいように配置され、各データワードの少なくとも1つのデータ要素に応じて、前記グループのいずれが当該データワードを表現する信号点を含むかを識別し、当該データワードのデータ要素のうちの他の少なくとも1つに応じて、識別したグループ内のいずれのサブグループが当該データワードを表現する信号点を含むかを識別する手段と、識別したサブグループからの信号点を表現する信号を生成し、その信号を前記通信チャネルに送る手段とからなることを特徴とする情報通信装置。
【請求項8】 前記グループを識別するデータ要素が、前記サブグループを識別するデータ要素よりも重要な情報を表現することを特徴とする請求項7の装置。
【請求項9】 前記情報がテレビ信号情報であることを特徴とする請求項7の装置。
【請求項10】 前記データワードがトレリス符号化データワードであることを特徴とする請求項7の装置。
【請求項11】 前記信号点配置が、N≧2として、N次元信号点配置であることを特徴とする請求項7の装置。
【請求項12】 送信機によって伝送される情報を受信する受信機において使用される情報通信装置において、前記送信機は、情報を表現するデータ要素からなる第1データストリームおよび第2データストリームを少なくとも含むディジタル信号を生成し、そのディジタル信号をチャネルマッピングし、チャネルマッピングした信号を通信チャネルを通じて前記受信機へ伝送し、このチャネルマッピングは、前記第1データストリームのデータ要素に対するチャネル誘導性誤りの確率が前記第2データストリームのデータ要素に対するチャネル誘導性誤りの確率よりも小さいようにしたものであり、前記情報通信装置は、伝送された信号を受信する手段と、前記信号点配置に関する情報を格納しておき、その格納情報に応じて受信した信号から前記情報を復元する手段とからなることを特徴とする情報通信装置。
【請求項13】 前記情報がテレビ信号情報であることを特徴とする請求項12の装置。
【請求項14】 前記チャネルマッピングが前記ディジタル信号をトレリス符号化することを含み、前記復元する手段が最尤復号器を含むことを特徴とする請求項13の装置。
【請求項15】 前記格納情報が前記信号点配置の信号点の位置を示すことを特徴とする請求項12の装置。
【請求項16】 前記信号点配置が、N≧2として、N次元信号点配置であることを特徴とする請求項12の装置。
【請求項17】 前記チャネルマッピングは、前記第1データストリーム中の少なくとも1つのデータ要素の相異なる値を表現する信号点間の最小距離が前記第2データストリーム中の少なくとも1つのデータ要素の相異なる値を表現する信号点間の最小距離よりも大きいような信号点配置から一連の信号点を選択することにより行われることを特徴とする請求項15の装置。
【請求項18】 それぞれ少なくとも1つのデータ要素からなるデータワードを表現する信号点からなる信号点配置を用いて送信機から通信チャネルを通じて受信機へ情報を伝送するような型のディジタル伝送方式の受信機で使用される情報通信方法において、前記信号点配置は信号点のグループに分割され、各グループは信号点のサブグループに分割され、グループおよびサブグループは、伝送される信号点がどのグループからのものであるかを前記受信機が誤って決定する確率が、その信号点がどのサブグループからのものであるかを前記受信機が誤って決定する確率よりも小さいように配置され、前記送信機において、各データワードの少なくとも1つのデータ要素に応じて、前記グループのいずれが当該データワードを表現する信号点を含むかを識別し、当該データワードのデータ要素のうちの他の少なくとも1つに応じて、識別したグループ内のいずれのサブグループが当該データワードを表現する信号点を含むかを識別し、識別したサブグループからの信号点を表現する信号を生成し、その信号を前記通信チャネルに送り、前記情報通信方法は、伝送された信号点を受信するステップと、前記受信機内に格納されている、前記信号点配置およびそれが前記グループおよび前記サブグループにどのように分割されているかに関する情報に応じて、受信した信号点からそれによって表現されるデータワードを復元するステップとからなることを特徴とする情報通信方法。
【請求項19】 前記グループを識別するデータ要素が、前記サブグループを識別するデータ要素よりも重要な情報を表現することを特徴とする請求項18の方法。
【請求項20】 前記情報がテレビ信号情報であることを特徴とする請求項18の方法。
【請求項21】 前記データワードがトレリス符号化データワードであることを特徴とする請求項18の方法。
【請求項22】 前記信号点配置が、N≧2として、N次元信号点配置であることを特徴とする請求項18の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【特許番号】第2665092号
【登録日】平成9年(1997)6月20日
【発行日】平成9年(1997)10月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−302629
【出願日】平成3年(1991)10月23日
【公開番号】特開平4−313983
【公開日】平成4年(1992)11月5日
【出願人】(390035493)エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション (130)
【氏名又は名称原語表記】AT&T CORP.
【参考文献】
【文献】特開 昭63−240154(JP,A)
【文献】電子通信学会論文誌、J72−B1−11! (1989) P.1103−1111