説明

感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】測定機構を用いることなく、正確な感光体の寿命時期を使用者に通達することができる感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】表面にトナーにより現像される静電潜像が形成される感光体2において、該感光体2の機能層としてCTL層23とUCL層等の第二層を有し、前記CTL層23は経時使用により削られると感光体としての機能が低下してしまう層であって、該CTL層23の第二層との境界付近には印刷画像に、感光体の寿命を認識させる表示をする電荷保持性に優れた微粒子25を含む表示層24が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にトナー画像が形成される感光体と該感光体を用いるプロセスカートリッジ及び電子写真方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子複写機、プリンタ、ファクシミリ或いはその少なくとも2つの機能を備えた複合機などとして構成される上記形式の画像形成装置は周知である。かかる画像形成装置において、基本的なマイナス帯電用の有機感光体ドラム(OPC)の構造は最下層からアルミ素管、UCL(アンダーコート層、Under Coat Layer)と、感光体の機能層であるCGL(電荷発生層、Carrier Generation Layer)、CTL(電荷輸送層、Carrier Transport Layer)となっている。そして、最表層にあるCTL層は画像形成が進むにつれ徐々に削られる特性を有している。
【0003】
感光体は、経時使用で最表層であるCTL層が削られると、感光体としての機能が低下してしまう。そして、感光体としての機能が低下すると、所定の画像品質を維持することができなくなったり、画像形成自体ができなくなったりし、感光体が寿命に達したことになる。このため、感光体の寿命を確実に知ることは機器を使用していくうえで、重要な要件の1つとなっている。
【0004】
従来、有機感光体の寿命は、予め標準的な環境、使用条件にて耐久試験等を行なって感光体が寿命に到達するまでの印刷枚数や感光体の累積回転数等を求め、その結果に基いて設定されていた。しかし、感光体の寿命は画像形成装置の使用環境、使用条件に大きく依存するため、これを正確に予測することは困難である。このため、市場においては予め想定された寿命としての印刷枚数に至る前に、品質上重大な欠陥のある印刷物を出力してしまったり、十分に使用に耐えうるにもかかわらず感光体の交換が行なわれてしまったりする場合があった。
【0005】
そこで、感光体の疲労状態を検出し、その検出結果に基いて感光体寿命を判定する方法が提案されている。例えば、感光体の疲労状態を検出する方法として、感光体の表面電位を検出し、この検出結果に基づき感光体寿命を判定する方法があり、例えば、特許文献1では、検出された飽和電位及び残留電位を予め設定した電位値と比較することで感光体の寿命を判定する方法が開示されている。また、特許文献2では、帯電電位と残留電位との差に応じて感光体の寿命を判定する方法が開示されている。さらにまた、特許文献3には、有機感光体の寿命を判定する目的で、有機感光体と、該有機感光体の残留電位を検出する電位検出手段と、該有機感光体の温度を直接又は間接的に検出する温度検出手段と、該電位検出手段による検出値及び該温度検出手段による検出値に基づき該有機感光体の寿命を判定する寿命判定手段とを備える構成が開示されている。
【0006】
このように構成すると、有機感光体の寿命を検知して使用者に通達することができるが、測定による誤差及び測定機構の追加によるコストやスペースが増加するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来の事情に鑑み、測定機構を用いることなく、正確な感光体の寿命時期を使用者に通達することができる感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、表面にトナーにより現像される静電潜像が形成される感光体において、該感光体の機能層として最表層と第二層を有し、前記最表層は経時使用により削られると感光体としての機能が低下してしまう層であって、該最表層の前記第二層との境界付近には印刷画像に、感光体の寿命を認識させる表示をする電荷保持性に優れた微粒子を含む表示層が設けられていることを特徴とする感光体を提案する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、経時使用により機能層が削られて寿命若しくは寿命に近づくと、電荷保持性に優れた微粒子を含む表示層によって寿命を認識させる表示が印刷物に現れるので、寿命を簡単かつ確実に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態における負帯電特性の感光体の層を示す説明図である。
【図4】本発明における正帯電特性の感光体の層を示す説明図である。
【図5】表示層の一例を示す斜視説明図である。
【図6】表示層の他の例を示す斜視説明図である。
【図7】段階的の表示層を示す断面説明図である。
【図8】印刷物に現れる表示の一例を示す説明図である。
【図9】印刷物に現れる表示の他の例を示す説明図である。
【図10】感光体の除電イメージを示す説明図である。
【図11】感光体の他の除電イメージを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明に係る感光体を備えるプロセスカートリッジを示す断面図である。
【0012】
図1において、ここに示したプロセスカートリッジ1は感光体ドラム2、帯電部材、現像手段4及びクリーニング手段5を一体に結合した構成のカートリッジである。
【0013】
感光体ドラム2は、時計方向に回転駆動され、帯電部材としての帯電ローラ3は感光体ドラム2に圧接されて反時計方向に従動回転される、帯電ローラ3には、図示していない高圧電源より所定のバイアスが印加され、感光体ドラム2の表面を帯電している。
【0014】
現像装置4は、現像剤を収容する現像剤収容室40と、該現像剤収容室40の下方に設けられた現像剤供給室41とから構成されている。現像剤供給室41の下部には、現像ローラ42と、現像ローラ42に当接して設けられた層規制部材43および供給ローラ44が設けられる。現像ローラ42は感光体ドラム2に接触して配置され、図示しない高圧電源から所定の現像バイアスが印加される。現像剤収容室40内には現像剤攪拌部材45が設けられている。現像剤収容室40と該現像剤供給室41との間には現像剤の供給口46が形成されており、現像剤収容室40から該現像剤供給室41へ現像剤を供給するとともに現像剤が該現像剤供給室41へ過剰に供給されるのを防止している。該現像剤収容室40内の中央部には、現像剤の凝集を防止するためのアジテータ47が回転自在に設けられ、図上において反時計回りの方向に回転している。
【0015】
供給ローラ44の表面には空孔(セル)を有した構造の発泡材料が被覆されており、現像剤供給室41内に運ばれてきた現像剤を効率よく付着させて取り込むと共に、現像ローラ42との当接部での圧力集中による現像剤劣化を防止している。なお、上記発泡材料は10乃至1014Ωの電気抵抗値に設定される。供給ローラ44には、現像ローラ42の電位に対して現像剤の帯電極性と同極性にオフセット電圧を供給バイアスとして印加される。この供給バイアスは、現像ローラ42との当接部で予備帯電された現像剤を現像ローラ42に押し付ける方向に作用する。ただし、供給ローラ44に印加する電圧の極性はこれに限ったものではなく、現像剤の種類によっては現像ローラと同電位もしくは極性を反転させてもよい。供給ローラ44は反時計回りの方向に回転し、表面に付着させた現像剤を現像ローラ42の表面に塗布供給する。
【0016】
現像ローラ42には、弾性ゴム層を被覆したローラが用いられ、さらに表面には現像剤と逆の極性に帯電し易い材料からなる表面コート層が設けられる。弾性ゴム層は、感光体ドラム2との接触状態を均一に保つ為に、JIS−Aで50度以下の硬度に設定され、さらに現像バイアスを作用させるために10乃至1010Ωの電気抵抗値に設定される。表面粗さはRaで0.2乃至2.0μmに設定され、必要量の現像剤が表面に保持される。現像ローラ42は反時計回りの方向に回転し、表面に保持した現像剤を層規制部材43および感光体ドラム2との対向位置へと搬送する。
【0017】
層規制部材43は、SUS304CSPやSUS301CSPまたはリン青銅等の金属板バネ材料を用い、自由端側を現像ローラ42表面に10乃至100N/mの押圧力で当接させたもので、その押圧力下を通過した現像剤を薄層化すると共に摩擦帯電によって電荷を付与する。さらに層規制部材43には、摩擦帯電を補助する為に、現像ローラ42に印加した電位に対して現像剤の帯電極性と同極性にオフセットさせた電圧を規制バイアスとして印加される。
【0018】
感光体ドラム2は時計回りの方向に回転しており、従って現像ローラ42表面は感光体ドラム2との対向位置において感光体ドラム2の進行方向と同方向に移動する。該現像ローラ42上の薄層化された現像剤は、現像ローラ42の回転によって感光体ドラム2との対向位置へ搬送され、現像ローラ42に印加された現像バイアスと感光体ドラム2上の静電潜像によって形成される潜像電界に応じて感光体ドラム2表面に移動し、これによって感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像が現像される。
【0019】
感光体ドラム2上に現像されずに現像ローラ42上に残された現像剤が再び現像剤供給室41内へと戻る部分には、封止シール48が現像ローラ42に当接して設けられ、現像剤が現像装置外部に漏れ出ないように封止される。
【0020】
なお、プロセスカートリッジ1には粉砕法もしくは重合法により製造されたトナーが充填されている。そのトナーは、外添剤としてシリコンオイルを含有したシリカを用いることもできる。外添剤としてシリコンオイル含有シリカを用いる効果は、プロセスカートリッジ1の長寿命化やクリーニング性の向上や転写効率の向上があげられる。
【0021】
図2は、上記プロセスカートリッジを用いるカラー画像形成装置の全体外略図である。
図2において、上記構成のイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各プロセスカートリッジ1Y、1C、1M、1Bkは、装置本体10に装着すると、図示していないストッパーによって感光体ドラム2が無端ベルトより成る中間転写ベルト11の上部走行辺に接触する位置に固定され、そのストッパーを解除することにより各プロセスカートリッジが交換できる構成になっている。
【0022】
画像形成装置による画像形成工程について説明する。感光体ドラム2が時計回りに回転駆動されると、感光体ドラム表面は帯電部材3によって所定の極性に一様に帯電される。この帯電面に、装置本体10内の上部に配置された露光装置6から出射する光変調されたレーザ光が照射され、感光体ドラム2Yの表面に書き込み情報に対応した静電潜像が形成される。図1及び2に示した例では帯電部材3として帯電ローラが用いられているが、コロナ放電器や帯電ブレードなどから成る帯電部材3を用いることもできる。同様に図1に示した画像形成装置においてはレーザ光を出射するレーザ書き込み装置より成る露光装置6が用いられているが、LEDアレイと結像手段を有する露光装置などを用いることもできる。
【0023】
各プロセスカートリッジ1に形成された静電潜像は、これが現像手段4を通るとき、それぞれの色のトナー像として可視像化される。ここに示した現像手段4は一成分接触現像であり、感光体ドラム2上の静電潜像をトナー像として顕像化する。現像手段4には図示しない高圧電源から所定の現像バイアスが供給される。
【0024】
一方、無端ベルトである中間転写ベルト11の内側には、その中間転写ベルト11を挟んで感光体ドラム2に対向して位置する一次転写手段としての転写ローラ7が配置されている。この転写ローラ7には、感光体ドラム2上に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加される。これにより、感光体ドラム2と中間転写ベルト11との間に転写電界が形成され、感光体ドラム2上のトナー像が、その感光体ドラム2と同期して回転駆動される中間転写ベルト11上に静電的に転写される。
【0025】
トナー像を中間転写ベルト11に転写したあとの感光体ドラム2表面に付着する転写残トナーは、クリーニング手段5によって除去され、感光体ドラム2の表面が清掃される。
【0026】
かくして、各プロセスカートリッジ1Y、1C、1M、1Bkの感光体ドラム2にはイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びブラックトナー像がそれぞれ形成される。これら各色のトナー像は、転写ローラ6により構成された転写手段によって、中間転写ベルト11上に順次重ねて静電転写される。このようにして複数の像担持体のそれぞれに形成された互いに色の異なるトナー像が中間転写ベルト11に重ねて静電転写されることでフルカラー画像を形成される。形成されたフルカラー画像は、二次転写ローラ8と該中間転写ベルト11との間に所定の電圧を印加することにより転写材である用紙9に転写され、定着装置12にて用紙9の上に転写された現像剤の画像が熱と圧力により定着され出力される。二次転写ローラ8で転写されずに中間転写ベルト11上に残留した現像剤は転写ベルトクリーニング手段13に除去されて回収される。
【0027】
上記感光体ドラム2は、マイナス帯電用の有機感光体とすると、その構造は図3に示すように、最下層からアルミ素管20に、UCL層21(アンダーコート層、Under Coat Layer)と、CGL層22(電荷発生層、Carrier Generation Layer)からなる層に、機能層であるCTL層23(電荷輸送層、Carrier Transport Layer)が被覆されている。そして、最表層にあるCTL層23は画像形成が進むにつれ徐々に削られる特性を有しており、この層が殆どなくなる、もしくはある程度以上薄くなると(現行機種では10μm程度)と感光体としての機能が得られなくなる。すなわち、帯電させても感光体上に電荷が帯電しなくなってしまう。
【0028】
そこで、本発明は感光体の適正な寿命を簡単、かつ、確実にユーザーに知らせるべく、次のように構成している。
最表層にあるCTL層23の中のCTL層23との界面付近に電荷保持性に優れた微粒子25が分散された表示層24が設けられている。この電荷保持性に優れた微粒子25が分散された表示層24の大きさは図5に示すようにCTL層23の全域に渡る大きさでも良いし、図6に示すように部分的な大きさにしても良いが、このときは最大印刷サイズの印刷領域内に設ける必要がある。
【0029】
この電荷保持性に優れた微粒子25としては、光の透過性に優れたほぼ透明な粒子とし、その粒子の大きさは、25μm以下であることが好ましい。特に0.7μm以下の透明微粒子であると、使用する露光装置の波長よりも短いため、露光における影響がより少なく、通常の露光に対して何ら影響を与えなくてすむ。実際には、感光体の膜厚に合わせて粒子径を小さくする必要がある。
【0030】
これらの条件を満たした電荷保持性に優れた微粒子25の材料としては、アクリル樹脂などが上げられる。製造方法としては、ディップ方式やスプレー方式やインクジェット方式を用いることで成型させることができる。ディップ方式は、感光体を塗布液中に沈めて、引き上げることで、塗布する方式である。スプレー方式は、感光体を回転させつつ、スプレーを用いて表面に塗布する方式である。例えば、CGL層22まで通常の製造工程(ディップ方式などの既存プロセス)で製作し、感光体に電荷保持性に優れた微粒子25を分散したCTL層の塗布液(CTL塗布液A)が塗布する部分以外をマスキングした上で、CTL塗布液Aをディップ方式もしくはスプレー方式などの既存の製膜プロセスを用いて塗布する。塗布後、予備乾燥させた上で本来のCTL層23を形成する塗布液(CTL塗布液B)をディップ方式もしくはスプレー方式を用いて塗布する。CTL塗布液Aを塗布する別の方法として、インクジェットを用いて塗布する方法もある。さらにまた、別の方法として、CGL層22まで製造した感光体に塗布液Bを用いて本来の最終膜厚よりも薄くCTL層を形成し、薄く形成したCTL層に対して荷電保持性に優れた微粒子をエアガンなどで打ち込み、最後に最終膜厚まで塗布液Bを用いてCTL層23を製造する方法などがある。
【0031】
このように構成される感光体ドラム2は、最表層にあるCTL層23が経時使用により削られて感光体が寿命に近づき表示層24が現れると、その部分において帯電しなくなるもしくは帯電しにくくなるため、その部分にトナーが載らず白抜きもしくは濃度が薄くなって印刷される。表示部24が用紙に白抜きもしくは淡い画像として現れることで、ユーザーは機能層である最表層のCTL層23が経時使用により削られて感光体が寿命に近づいたもしくは寿命になったことを知ることができる。そして、かかる通達は、感光体の機能層が削られたという感光体の寿命の適正なものであり、ユーザーは感光体の適正な寿命を確実に知ることができる。
【0032】
図4は、感光体ドラム2がプラス帯電用の有機感光体としたときの構造の一例を示し、図3と異なる点はアルミ素管20上の第二層としてのUCL層21に機能層であるCGL層22とCTL層23を一体化した単層である電荷発生・輸送層26が設けられている。そして、この感光体ドラム2においても最表層にある電荷発生・輸送層26の中のUCL層21との界面付近に電荷保持性に優れた微粒子25が分散された表示層24が設けられている。
【0033】
このように構成される感光体ドラム2においても上記したマイナス帯電用の有機感光体と同様に、ユーザーは機能層である最表層の電荷発生・輸送層26が経時使用により削られて感光体が寿命に近づいたもしくは寿命になったことを確実に知ることができる。
【0034】
図5は、印刷を続けて、図3の感光体表面のCTL層23もしくは図4の電荷発生・輸送層26が削られて電荷保持性の高い微粒子が分散された表示層24が露出した場合の構成図である。表示層24は、少なくとも印刷領域内に分布されている。この印刷領域は、画像形成装置で使用可能な用紙の中で最大幅のものを基準としている。なお、表示層24の形状は、図示する例では長方形のパッチパターンで表しているが、形状は任意に変えることができる。例えば、表示層24は丸、三角、帯状などのマーク、もしくは例えば、「NearEmpty」、「Empty」、「NearEnd」、「End」などのメッセージ性のある文言にすることもできる。
【0035】
図6は、感光体のほぼ全域に分散させた表示層24を示している。
印刷を続けて、感光体表面のCTL層23もしくは電荷発生・輸送層26が削られて表示層24が露出した場合、その表示層24が少なくとも印刷領域内の全域に分布している。したがって、感光体ドラム2が寿命に達すると、感光体全域で表面に電荷が乗らなくなり、白紙か非常に薄い像になるので、トナーの不必要な消費を防止することができる。なお、図6の表示層24の領域は、画像形成装置で印刷することができる最大幅のものを基準としている。
【0036】
図7は、本発明の他の実施形態を示す説明図で、本例の場合層異なる場所に表示層24a,24bが設けられている。表示層24aと表示層24bとは下部がともにCTL層23もしくは電荷発生・輸送層26の下端に接しているが、表示層24aの厚さd1と表示層24bの厚さd2が異なり、最表層が削られると、層厚が厚い表示層24aが先に露出する。厚さd1は、電荷保持性の高い微粒子を分散させた層を厚目に設け、厚さd2は、電荷保持性の高い微粒子を分散させた層を薄目に設け、d1>d2の関係を持つ表示層24を感光体上に少なくとも一組以上設けている。
【0037】
かくして、表示層24の厚みを2段階以上で設けることで、最表層のCTL層23もしくは電荷発生・輸送層26の膜厚が削られて減少してきた際の警告を段階的に示すことが可能になる。したがって、例えば、膜厚が半分になったところで、「NearEmpty」と印刷され、膜厚が感光体の機能を維持する限界の領域になったところで「Empty」と印刷されるように設定することもできる。さらには膜厚が感光体の機能を維持する限界になる数μmの厚みのところで、寿命間近の警告パッチパターンが印刷されるようになり、膜厚が感光体の機能を維持できなくなる領域になった際には全面に電荷保持性の優れた粒子が露出するようにして白紙もしくは薄いベタ画像しか印刷できないように設定することも可能である。この場合、感光体の機能がなくなるという現象が、感光体が帯電しなくなるという場合に特に有効となり、感光体が寿命となり感光体表面に電荷が載らなくなり常にベタ画像を印刷してトナーを不必要に消費するようになることを防ぐ効果も得られる。なお、感光体が削られて現れる表示層24において、それを形成する電荷保持性に優れた微粒子が多いほど白紙になり、微粒子の数が少ないと濃度の薄い画像となる。
【0038】
図8は、複数段表示の別の例を示し、実際に感光体膜が削れた際にパッチパターンによる警告の印刷画像について説明する図である。
図8においては、画像形成装置で印刷を続けた場合の印刷されるベタ画像の状態を表し、新品から印刷を続けるごとに感光体表層のCTL層23もしくは電荷発生・輸送層26が削られて耐久1さらに耐久2へと印刷画像が変化していく様子を示している。
【0039】
(a)の新品時は、印刷領域全体に良好なベタ画像が印刷される。印刷を続けて感光体の使用状態が進むと(b)に示す最初の表示層24による耐久1のパターンが印刷されるようになる。パターンは、基本的にはベタ中に対しての白抜きとして印刷されるが、電荷保持性の高い微粒子の分散量や密度により濃度が薄いパターンとして印刷される場合もある。印刷されるパターンは、図のようなパッチパターンの他に「NearEmpty」「NearEnd」「終了間近」などのメッセージや意匠性のあるマークが印刷されても良い。
【0040】
更に印刷を続けて感光体の表面膜厚が寿命間近になった場合、(c)に示す表示層24による耐久2のパターンが印刷されるようになる。
このような二段階以上で警告メッセージを印刷できるようにすることで、ユーザーの交換用感光体の準備を施したり画質が劣化する前に感光体を交換したりすることが容易になる。
【0041】
図9は、画像形成装置で印刷を続けた場合の印刷されるベタ画像の状態を表しており、図8と異なる点は実際に感光体膜が削れた際に帯パターンによる警告の印刷画像を表示する点である。したがって、図9(a)の新品時は、印刷領域全体に良好なベタ画像が印刷され、印刷を続けて感光体の使用状態が進むと(b)のパターンが印刷され、さらに印刷を続けて感光体の表面膜厚が寿命間近になると(c)に示す耐久2のパターンが印刷されるようになる。
【0042】
感光体ドラム2は、帯電工程で帯電ローラなどを用いて感光体表面に電荷を帯電させる。感光体としての機能が損なわれていない場合の感光体には、図10(a)や図11(a)に示すように、レーザー光もしくはLEDなどの光を照射した箇所の帯電された電荷を除電する機能がある。そして、印刷を続けて感光体表面にあるCTL層23もしくは電荷発生・輸送層26が削られて無くなった場合、図10(b)に示すように電荷保持性の高い微粒子が分散された表示層24が露出する。表示層24が露出すると、その表示層24に設けた電荷保持性の高い微粒子は一度帯電した電荷を逃がさない特性を有しているので、感光体にレーザー光もしくはLEDなどの光りを照射しても除電されずに感光体に保持し続ける。したがって、図10(b)に示すように、ほぼ全面に電荷保持性の高い微粒子が設けられているほぼ全面の一度帯電した電荷が残る。また、図11(b)に示すように表面に露出した電荷保持性の高い微粒子25がまばらであれば、光が当たった部分は除電され、表面に露出した電荷保持性の高い微粒子25の部分は帯電した電荷が逃がされずに保持される。
【0043】
このように、感光体表面に帯電された電荷で除電されない電荷量は感光体表面に露出している電荷保持性の高い微粒子25の量に依存し、帯電している全ての電荷が除電されないわけではない。よって、電荷保持性の高い微粒子25の量によってベタ画像が白紙になったり、濃度が薄くして表示されたりする。なお、表示層24の微粒子25は基本的に透明な小径粒子であるので、通常の露光に対してはなんら影響を与えることがない。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態のみに限定されず、各種改変することができるものである。
例えば、上記実施形態では感光体として感光体ドラムで説明したが、感光体はドラム状のものに限らずベルト状、例えばエンドレスベルトであってもよい。さらに、本発明は現像手段も一成分方式の装置に限らず、二成分方式の現像装置にも適用できる。さらにまた、本発明は現像手段が反転現像を採用する装置であっても適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 プロセスカートリッジ
2 感光体ドラム
4 現像手段
11 中間転写ベルト
23 CTL層
24 表示層
25 電荷保持性に優れた微粒子
26 電荷発生・輸送層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開平9−190120号公報
【特許文献2】特開2010−128012号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトナーにより現像される静電潜像が形成される感光体において、
該感光体の機能層として最表層と第二層を有し、
前記最表層は経時使用により削られると感光体としての機能が低下してしまう層であって、
該最表層の前記第二層との境界付近には印刷画像に、感光体の寿命を認識させる表示をする電荷保持性に優れた微粒子を含む表示層が設けられていることを特徴とする感光体。
【請求項2】
請求項1に記載の感光体において、前記表示層は前記機能層内の一部に電荷保持性に優れた微粒子を分散して形成した層であることを特徴とする感光体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の感光体において、前記電荷保持性に優れた微粒子が、透明な粒子でできていることを特徴とする感光体。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の感光体において、前記電荷保持性に優れた微粒子の粒径が25μm以下であることを特徴とする感光体。
【請求項5】
請求項1または2に記載の感光体において、前記表示層は厚みが異なる2段階以上に設けられていることを特徴とする感光体。
【請求項6】
請求項1、2または5の何れかに記載の感光体において、前記表示層がメッセージ性を有した意匠を形成していることを特徴とする感光体。
【請求項7】
請求項1、2または5の何れかに記載の感光体において、前記表示層が印刷領域の端部に帯状に形成されていることを特徴とする感光体。
【請求項8】
請求項1、2または5の何れかに記載の感光体において、前記表示層が印刷領域の全域に形成されていることを特徴とする感光体。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載の感光体を用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れかに記載の感光体を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−105006(P2013−105006A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248564(P2011−248564)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】