説明

感光体ドラム、画像形成装置、画像形成方法、及びプロセスカートリッジ

【課題】感光体ドラムの振れを抑制し、画像濃度ムラが少なく、クリーニング手段への負荷が少なく、高耐久性である感光体ドラムの提供。
【解決手段】中空円筒形スリーブ部材と感光層と保護層とフランジ部材とを有し、前記保護層がフィラーを含有し、前記保護層の表面がλc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断しλf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりが0.050μm〜0.400μmでありかつ輪郭曲線要素の平均長さが0.500mm〜1.500mmであり、前記フランジ部材が装着部と軸穴部と連結部とを有し、前記連結部が前記連結部を含みかつ前記スリーブ部材の軸方向に直交する仮想平面に対して前記装着部の外周面を前記軸方向に沿って投影させた仮想投影円の円周上から前記軸穴部まで引いた任意の仮想線分上に少なくとも1つの衝撃吸収穴を備える感光体ドラムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラム、画像形成装置、画像形成方法、及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機感光体(OPC)は、良好な性能及び様々な利点から、無機感光体に代わり、感光体ドラムとして、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、例えば(i)光吸収波長域の広さ、及び吸収量の大きさ等の光学特性、(ii)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(iii)材料の選択範囲の広さ、(iv)製造の容易さ、(v)低コスト、(vi)無毒性などが挙げられる。
更に最近では、電子写真プロセスにおいても、商業印刷、企業内での大量印刷などのプロダクションプリンティングへの展開が進んでおり、オフセット印刷と同等な高品質の画像を、画像形成装置の高速度化、小型化と共に高耐久性を達成する必要が求められるようになってきている。
【0003】
高耐久性の観点からみると、従来の有機感光体は、保護層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システム及びクリーニングシステムによる機械的な負荷により磨耗が発生しやすいという欠点を有している。
加えて、高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を上げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の磨耗を促進する要因となっている。
このような感光体の磨耗は、感度の劣化、帯電性の低下等の電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また磨耗及び局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では感光体の寿命は、この磨耗及び傷が律速となり、交換に至っている。
【0004】
感光体の耐磨耗性を改良する技術としては、(1)保護層に硬化性バインダーを用いること(特許文献1参照)、(2)高分子型電荷輸送物質を用いること(特許文献2参照)、(3)保護層に無機フィラーを分散させること(特許文献3参照)などが提案されている。
しかし、これら(1)、(2)、及び(3)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性を十二分に満足するには至っていない。
【0005】
また、耐磨耗性と耐傷性を改良するために多官能の硬化型アクリレートモノマーを含有させた感光体が提案されている(特許文献4参照)。
しかし、この提案の技術は、相溶性に問題があり、これにより、低分子電荷輸送物質の析出、クラックの発生が起こり、機械強度も低下してしまうことがある。また、相溶性向上のためにポリカーボネート樹脂を含有させる記載もあるが、充分な耐磨耗性を達成できていない。また、保護層に電荷輸送物質を含まない感光体については、露光部電位を低下させるために保護層を薄膜とする記載があるが、膜が薄いために感光体の寿命が短い。また、帯電電位及び露光部電位の環境安定性が悪く、温湿度環境の影響によりその値は大きく変動し、充分な値を維持するには至っていない。
【0006】
これらに代わる感光体の耐磨耗技術として、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質、及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を感光体に設けることが提案されている(特許文献5参照)。このバインダー樹脂には、炭素−炭素二重結合を有し、前記電荷輸送物質に対して反応性を有するものと、前記二重結合を有せず反応性を有しないものが含まれる。
この感光体は、耐磨耗性と良好な電気的特性を両立させており注目されるが、炭素−炭素二重結合を有するモノマー及び炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質の反応により生成した硬化物と、バインダー樹脂との相溶性が悪く、層分離により架橋時に表面凹凸が生じ、クリーニング不良を引き起こす傾向が見られる。また、バインダー樹脂がモノマーの硬化を妨げる他、この感光体において使用される炭素−炭素二重結合を有するモノマーとして具体的に記載されているものは2官能性のものであり、この2官能性モノマーでは官能基数が少なく充分な架橋密度が得られず、耐磨耗性の点では未だ満足するには至らない。また、反応性を有するバインダーを使用した場合においても、炭素−炭素二重結合を有するモノマー及び上記バインダー樹脂に含有される官能基数の低さから、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質の結合量と架橋密度との両立は難しく、電気特性及び耐磨耗性も充分とは言えないものであった。
【0007】
また、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した硬化物を含有する感光層が提案されている(特許文献6参照)。
しかし、この感光層は、嵩高い正孔輸送性化合物が二つ以上の連鎖重合性官能基を有するため硬化物中に歪みが発生し内部応力が高くなり、保護層の荒れ、及び経時におけるクラックが発生しやすい場合があり、充分な耐久性を有していない。
【0008】
更に、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を硬化させた架橋型電荷輸送層が提案されている(特許文献7〜9参照)。この提案の技術では、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を用い、保護層を硬化することで、機械的及び電気的な耐久性と同時に感光層のクラックを抑制している。
また、感光体の保護層にラジカル重合性化合物とフィラーを用いて硬化させた架橋型保護層が提案されている(特許文献10参照)。この提案の技術では、架橋樹脂膜と高硬度のフィラーにより、より耐磨耗性の高い感光体を形成している。
【0009】
これらの技術の確立により、最近の感光体の保護層は、耐磨耗性が非常に優れており、高耐久性が達成されてきているが、電子写真のプロダクションプリンティング分野への展開において要求される、オフセット印刷に対抗する為の耐久性としては、未だ不充分である。
【0010】
また、感光体の表面層を強固にさせることで感光体の寿命はある程度向上するが、この場合、感光体に接触するクリーニングブレードは、従来以上に機械的ハザードを受けることになる。そのため、クリーニングブレードは劣化しやすくなり、ブレードのめくれ及びエッジ部分の欠けが多く発生し、めくれ部分及び欠け部分からトナーがすり抜けする現象が起こる。トナーのすり抜けは、スジ状汚れのような異常画像を発生させるという問題がある。
【0011】
そこで、クリーニング性を向上させる方法も多く提案されており、特に感光体表面を粗面化する方法が多く提案されている。例えば、表面層を形成する際の乾燥条件を制御することにより、感光体ドラムの表面をユズ肌状に粗面化する技術(特許文献11参照)、表面層に粒子を含有させることで、感光体ドラムの表面を粗面化する技術(特許文献12参照)などが提案されている。また、感光体の表面を機械的に粗面化する方法も提案されており、例えば、フィルム状研磨剤を用いて表面層の表面を研磨することによって、感光体表面を粗面化する技術(特許文献13参照)、ブラスト処理により感光体ドラムの周面を粗面化する技術(特許文献14参照)が提案されている。
しかし、これらの粗面化技術は初期的には良好なクリーニング性を示すが、長期の使用により感光体が磨耗し、粗面化によるクリーニング効果が低下する問題がある。
【0012】
この問題を解決する方法として、表面層の微細凹凸とうねり形状により、画像形成プロセス中におけるクリーニング工程で、感光体に当接するクリーニングブレードが感光体表面で微振動を起こし、感光体上の残トナーの拭き取りを向上させる技術(特許文献15参照)が提案されている。
しかし、この提案の技術では、意図的にクリーニング部を感光体表面で微振動をさせていることで、感光体ドラム自体も振動してしまう。また、表面層の微細凹凸とうねりが感光体全体として完全には均一に形成できないために、部分的に感光体ドラムの振動がばらついたり、大きくなったりする。これらのことは、現在までの電子写真においては問題無いレベルであるが、今後大きく展開されるプロダクションプリンティング分野で要求される、オフセット印刷と同等な高品質の画像に対しては、感光体ドラムの振動による画像濃度ムラとして、影響してしまうことが問題となる。
【0013】
したがって、感光体ドラムの振れを抑制し、画像濃度ムラが少なく、クリーニング手段への負荷が少なく、高耐久性である感光体ドラムの提供が求められているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、感光体ドラムの振れを抑制し、画像濃度ムラが少なく、クリーニング手段への負荷が少なく、高耐久性である感光体ドラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明の感光体ドラムは、中空円筒形スリーブ部材と、
前記中空円筒形スリーブ部材の外周面上に順次積層された感光層及び保護層と、
前記中空円筒形スリーブ部材の軸方向の端部の端部開口部に装着されたフランジ部材とを有し、
前記保護層が、フィラーを含有し、
前記保護層の表面が、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.050μm〜0.400μmであり、かつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.500mm〜1.500mmであり、
前記フランジ部材が、前記中空円筒形スリーブ部材の軸方向の端部の端部開口部に装着可能な装着部と、前記装着部が前記端部開口部に装着された状態で前記中空円筒形スリーブ部材の中心軸となる位置に軸部材が挿入される軸穴が設けられた軸穴部と、前記中空円筒形スリーブ部材の円形断面に平行な方向に延在し、前記装着部に前記軸穴部を連結する連結部とを有し、
前記連結部が、前記連結部を含みかつ前記軸方向に直交する仮想平面に対して前記装着部の外周面を前記軸方向に沿って投影させた仮想投影円の円周上から前記軸穴部まで引いた任意の仮想線分上に、少なくとも1つの衝撃吸収穴を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、感光体ドラムの振れを抑制し、画像濃度ムラが少なく、クリーニング手段への負荷が少なく、高耐久性である感光体ドラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、感光体ドラムの一例の側面図である。
【図2】図2は、感光体スリーブからフランジ部材を取外した状態の感光体ドラムの一例の図である。
【図3】図3は、本発明で用いる感光体ドラムの層構成の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明で用いる感光体ドラムの層構成の別形態の一例を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明で用いる感光体ドラムの層構成の別形態の一例を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明で用いる感光体ドラムの層構成の別形態の一例を示す概略図である。
【図7A】図7Aは、フランジ部材の一例の図であって、軸方向に平行な断面図である。
【図7B】図7Bは、フランジ部材の一例の図であって、軸方向に直交する断面図である。
【図8A】図8Aは、駆動伝達ギヤを備えるフランジ部材の側面図である。
【図8B】図8Bは、駆動伝達ギヤを備えるフランジ部材の断面図である。
【図9】図9は、フランジ部材の他の例の図である。
【図10】図10は、フランジ部材の他の例の図である。
【図11】図11は、フランジ部材の他の例の図である。
【図12】図12は、フランジ部材の他の例の図である。
【図13】図13は、フランジ部材の他の例の図である。
【図14】図14は、フランジ部材の他の例の図である。
【図15】図15は、フランジ部材の他の例の図である。
【図16】図16は、フランジ部材の他の例の図である。
【図17】図17は、フランジ部材の他の例の図である。
【図18】図18は、フランジ部材の他の例の図である。
【図19】図19は、フランジ部材の他の例の図である。
【図20】図20は、フランジ部材の他の例の図である。
【図21】図21は、フランジ部材の他の例の図である。
【図22】図22は、フランジ部材の他の例の図である。
【図23】図23は、フランジ部材の他の例の図である。
【図24】図24は、フランジ部材の他の例の図である。
【図25】図25は、フランジ部材の他の例の図である。
【図26】図26は、フランジ部材の他の例の図である。
【図27】図27は、フランジ部材の他の例の図である。
【図28】図28は、フランジ部材の他の例の図である。
【図29】図29は、フランジ部材の他の例の図である。
【図30A】図30Aは、比較例に用いたフランジ部材の図であって、軸方向に平行な断面図である。
【図30B】図30Bは、比較例に用いたフランジ部材の図であって、軸方向に直交する断面図である。
【図31】図31は、本発明の画像形成装置で用いる近接配置型のローラ帯電方式の一例を示す概略図である。
【図32】図32は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図33】図33は、本発明の画像形成装置の別形態の一例を示す概略図である。
【図34】図34は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【図35】図35は、実施例で用いた電荷発生物質のX線回折スペクトル図であり、縦軸は一秒当りのカウント数(cps:counts per second)を表し、横軸は角度(2θ)を表す。
【図36A】図36Aは、感光体ドラムの振れの測定に用いた装置の概略上面図である。
【図36B】図36Bは、感光体ドラムの振れの測定に用いた装置の概略側面図である。
【図37】図37は、保護層をスプレー塗工する際の説明図である。
【図38】図38は、フィラー微粒子が分散された状態の保護層の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(感光体ドラム)
本発明の感光体ドラムは、中空円筒形スリーブ部材と感光層と保護層とフランジ部材とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の層、部材を有する。
【0019】
前記感光層及び前記保護層は、前記中空円筒形スリーブ部材の外周面上に順次積層されている。
前記保護層は、フィラーを含有する。
前記保護層の表面は、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.050μm〜0.400μmであり、かつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.500mm〜1.500mmである。
前記フランジ部材は、前記中空円筒形スリーブ部材の軸方向の端部の端部開口部に装着されている。
前記フランジ部材は、前記中空円筒形スリーブ部材の軸方向の端部の端部開口部に装着可能な装着部と、前記装着部が前記端部開口部に装着された状態で前記中空円筒形スリーブ部材の中心軸となる位置に軸部材が挿入される軸穴が設けられた軸穴部と、前記中空円筒形スリーブ部材の円形断面に平行な方向に延在し、前記装着部に前記軸穴部を連結する連結部とを有する。
前記連結部は、前記連結部を含みかつ前記軸方向に直交する仮想平面に対して前記装着部の外周面を前記軸方向に沿って投影させた仮想投影円の円周上から前記軸穴部まで引いた任意の仮想線分上に、少なくとも1つの衝撃吸収穴を備える。
【0020】
前記フランジ部材は、偏磨耗を抑制できることから、高耐久性を達成できる。
本発明者らの詳細な解析の結果、偏磨耗の原因は、感光体ドラムに対する繰返しの画像形成において、保護層表面のフィラーに起因して微細に繰り返される衝撃(振動等のショック)が発生し、その衝撃(振動等のショック)の為に、感光体ドラムに軸方向の振れが大きい部分と小さい部分とが発生してしまい、その結果として、画像形成における感光体ドラムとの接触部位(クリ−ニングブレード等との接触部位)のハザードに違いが起こり、感光体ドラム表面の削れ量に差が生じることであると、推測できた。
そこで、本発明では、前記フランジ部材を採用した。前記フランジ部材は、当初感光体ドラム作製におけるフランジ部材圧入時に生じる振れに効果があると考えられていたが、前記保護層に起因する画像形成時の衝撃(振動等のショック)も吸収できることが本発明者らの検討により確認された。
前記フランジ部材が画像形成時の衝撃(振動等のショック)を吸収できる詳細なメカニズムは、明確になっていないが、本発明の前記感光体ドラムと、既存のフランジ部材を用いた以外は本発明の前記感光体ドラムと同じ構造の感光体ドラムとについて耐久性評価を行った結果、前記フランジ部材を用いた本発明の前記感光体ドラムでは、偏磨耗の発生がほとんど無いのに対して、既存のフランジ部材を用いた感光体ドラムでは、偏磨耗が発生してしまう結果が確認できた。
【0021】
なお、感光体ドラム作製におけるフランジ部材圧入時に生じる振れは、以下の理由により生じる。
フランジ部材の圧入部(装着部)がスリーブ部材の端部開口部に圧入されたときには、スリーブ部材の端部開口部における内周面に接触する圧入部の外周面が、スリーブ部材の内周面から応力を受ける。この応力が連結部を介して圧入部から軸穴部に伝わり、軸穴部に設けられた軸穴が変形したり移動したりしてしまう。軸穴が変形したり移動したりしてしまうと、スリーブ部材の中心軸に対するフランジ部材の軸穴の位置がずれ、その結果、振れ精度が低下する。
【0022】
図1は、感光体ドラム1の側面図である。感光体ドラム1は、空円筒形の中空円筒形スリーブ部材32の外周面に保護層31を有する感光体スリーブ30と、感光体スリーブ30の軸方向の端部に配置されたフランジ部材35とを有する。
図2は、感光体スリーブ30からフランジ部材35を取外した状態の説明図である。図2中の矢印Cに示すように、感光体スリーブ30の軸方向の端部の端部開口部34にフランジ部材35の装着部が圧入されることで、図1に示す感光体ドラム1となる。
【0023】
<中空円筒形スリーブ部材>
前記中空円筒形スリーブ部材としては、軸方向の端部に端部開口部を有する中空円筒形スリーブ部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
前記中空円筒形スリーブ部材としては、例えば、体積抵抗値が1.0×1010Ω・cm以下の導電性を示すものなどが挙げられる。
前記中空円筒形スリーブ部材としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム、円筒状のプラスチック、又は紙に被覆したもの、或いはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びそれらを、押し出し、引き抜き等の工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩等の表面処理した管などが挙げられる。
【0025】
前記中空円筒形スリーブ部材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、直径が、20mm〜150mmが好ましく、24mm〜100mmがより好ましく、28mm〜70mmが特に好ましい。前記中空円筒形スリーブ部材の直径が、20mm未満であると、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各手段を配置することが物理的に困難となることがあり、150mmを超えると、画像形成装置が大きくなることがある。特に、画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体ドラムを搭載する必要があるため、直径は、70mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましい。
【0026】
<感光層>
前記感光層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電荷発生物質と電荷輸送物質とを混在させた単層型感光層、電荷発生層と電荷輸送層とを積層した積層型感光層が挙げられる。
前記積層型感光層としては、例えば、前記中空円筒形スリーブ部材側から電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に有する積層型感光層、前記中空円筒形スリーブ部材側から電荷輸送層と電荷発生層とをこの順に有する積層型感光層が挙げられる。これらの中でも、前記中空円筒形スリーブ部材側から電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に有する積層型感光層が、耐久性の点から好ましい。
【0027】
−電荷発生層−
前記電荷発生層は、電荷発生物質を少なくとも含有し、更に必要に応じて、樹脂などのその他の成分を含有する。
【0028】
−−電荷発生物質−−
前記電荷発生物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、非対称ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報に記載)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)等のアゾ系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、下記一般式(11)で表される金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料などが挙げられる。
【化1】

ただし、前記一般式(11)中、Mは、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属フッ化物、金属水酸化物、金属臭化物、及び無金属(水素)のいずれかを表す。
前記Mにおける金属としては、例えば、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、TI、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Amなどが挙げられる。
【0029】
前記フタロシアニン系顔料は、例えば、少なくとも前記一般式(11)で表される基本骨格を有していればよく、2量体、3量体など多量体構造を持つもの、更に高次の高分子構造を持つものでもよい。また、前記基本骨格に様々な置換基があるものでもよい。これらの様々なフタロシアニン系顔料のうち、中心金属にTiを有するチタニルフタロシアニン、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等は、感光体の特性上、特に好ましい。また、これらのフタロシアニン系顔料は、様々な結晶系を持つことが知られており、例えば、チタニルフタロシアニンの場合、α、β、γ、m、Y型等、銅フタロシアニンの場合、α、β、γ等の結晶多系を有している。同じ中心金属を持つフタロシアニンにおいても、結晶系が変わることにより種々の特性も変化する。これらの種々の結晶系を有するフタロシアニン系顔料を用いた感光体ドラムの特性もそれに伴って変化することが報告されている(電子写真学会誌、第29巻、第4号(1990)参照)。
【0030】
これらの電荷発生物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、前記アゾ顔料の中では、下記一般式(10)で表されるアゾ顔料が有効に使用される。特に、アゾ顔料のCpとCpが互いに異なるものである非対称アゾ顔料は、キャリア発生効率が大きく、高速化に対して有効であり、本発明の電荷発生物質として好ましく用いられる。
【化2】

ただし、前記一般式(10)中、Cp、及びCpは、カップラー残基を表す。R201、R202は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びシアノ基のいずれかを表し、同一でも異なっていてもよい。
前記Cp、及びCpとしては、例えば、下記一般式(10a)で表されるカップラー残基などが挙げられる。
【化3】

ただし、前記一般式(10a)中、R203は、水素原子、メチル基、エチル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基を表す。R204、R205、R206、R207、及びR208は、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子;トリフルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基;メチル基、エチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基;ジアルキルアミノ基、水酸基を表す。Zは、置換又は無置換の芳香族炭素環を構成するのに必要な原子群、及び置換又は無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な原子群のいずれかを表す。
【0032】
−−樹脂−−
前記電荷発生層に必要に応じて用いられる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルピリジン、セルロース樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電荷発生層における前記樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電荷発生物質100質量部に対して、500質量部以下が好ましく、10質量部〜300質量部がより好ましい。
【0033】
前記電荷発生層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空薄膜作製法、キャスティング法などが挙げられる。
前記真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法などが挙げられる。
前記キャスティング法としては、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法などが挙げられる。
前記キャスティング法においては、通常、塗工液が用いられる。
前記塗工液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電荷発生物質を必要に応じて前記樹脂と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル、超音波等の公知の分散方法を用いて溶媒中に分散した塗工液が挙げられる。なお、前記樹脂の添加は、前記電荷発生物質の分散前及び分散後のどちらでも構わない。前記塗工液は、電荷発生物質、溶媒及び樹脂を主成分とするが、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の添加剤が含まれていてもよい。場合によっては、電荷発生層に後述の電荷輸送物質を添加することも可能である。
【0034】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロインなどの一般に用いられる有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒を使用することが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記電荷発生層は、前記塗工液を用いて前記中空円筒形スリーブ部材上又は下引き層等の上に塗工し、乾燥することにより形成される。塗工方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビードコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の公知の方法を用いることができる。塗工後にはオーブン等を用いて加熱乾燥してもよい。乾燥温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜160℃が好ましく、80℃〜140℃がより好ましい。
【0036】
前記電荷発生層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜5μmが好ましく、0.1μm〜2μmがより好ましい。電荷発生層の厚みを大きくすると残留電位の低減や高感度化に有利である。一方、帯電電荷の保持性や空間電荷の形成などの帯電性の低下を起こすことがある。前記平均厚みが、前記好ましい範囲であると、これらのバランスがとれる点から有利であり、前記より好ましい範囲であると、前記効果が顕著となる。
【0037】
−電荷輸送層−
前記電荷輸送層は、電荷輸送物質を少なくとも含有し、更に必要に応じて、樹脂などのその他の成分を含有する。
【0038】
−−電荷輸送物質−−
前記電荷輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子輸送物質、正孔輸送物質などが挙げられる。
【0039】
前記電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、縮合多環キノン、ジフェノキノン、ベンゾキノン、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、シアノ基を有する芳香族環、ニトロ基を有する芳香族環などが挙げられる。
【0040】
前記正孔輸送物質としては、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)及びその誘導体、ポリ(γ−カルバゾリルエチルグルタメート)及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、アミノビフェニル誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ジスチリルベンゼン誘導体、エナミン誘導体などが挙げられる。
【0041】
これらの電荷輸送物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
これらの電荷輸送物質の中でも、ジスチリル構造を含む化合物が好ましく、その中でも下記一般式(1)で表される電荷輸送物質がより好ましい。
【化4】

ただし、前記一般式(1)中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及びフェニル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。前記フェニル基は、無置換のものでもよいし、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基などを置換基として有していてもよい。Aは、置換又は無置換のアリーレン基、及び下記一般式(1a)で表される基のいずれかを表す。B、及びB’は、置換又は無置換のアリール基、及び下記一般式(1b)で表される基のいずれかを表す。前記B及びB’は、同一であっても異なっていてもよい。
【化5】

ただし、前記一般式(1a)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及びフェニル基のいずれかを表し、フェニル基の場合は、無置換でもよいし、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基などを置換基として有していてもよい。
【化6】

ただし、前記一般式(1b)中、Arは、アリーレン基を表し、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基などを置換基として有していてもよい。また、Ar及びArは、それぞれアリール基を表し、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基などを置換基として有していてもよい。
【0043】
これらの中でも、下記一般式(2)で表される電荷輸送物質が、好ましい。
【化7】

ただし、前記一般式(2)中、R〜R33は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及び置換又は無置換のフェニル基のいずれかを表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0044】
また、下記一般式(3)で表される電荷輸送物質も、好ましい。
【化8】

ただし、前記一般式(3)中、R34〜R57は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及び置換又は無置換のフェニル基のいずれかを表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0045】
本発明において電荷輸送物質として用いられる化合物の具体例を以下に示す。ただし、これらは一例であって、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【化9】


【化10】

【化11】

【化12】


【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

ただし、前記構造式中、「Me」は、メチル基を表す。
【0046】
前記電荷輸送層における前記電荷輸送物質の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂100質量部に対して、20質量部〜300質量部が好ましく、40質量部〜150質量部がより好ましい。
【0047】
−−−樹脂−−−
前記電荷輸送層に必要に応じて用いられる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、EVA(エチレン・酢酸ビニル・共重合体)樹脂、ACS(アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、エポキシアクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記電荷輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常の場合、電荷輸送物質及び添加剤を樹脂とともに溶媒に分散又は溶解した塗工液を、前記電荷発生層上に塗工し、乾燥させる方法が好ましい。
【0049】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電荷発生層の説明において例示した前記溶媒と同様の溶媒などが挙げられる。
【0050】
前記電荷輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、実用的に有効な表面電位を維持するためには、5μm〜50μmが好ましく、10μm〜30μmがより好ましい。
【0051】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルアミノ基を有する化合物、酸化防止剤、レベリング剤などが挙げられる。
【0052】
−−−アルキルアミノ基を有する化合物−−−
前記アルキルアミノ基を有する化合物は、オゾンやNOxの高濃度雰囲気下で発生する画像流れや帯電低下等を抑制する効果を有しており、前記一般式(1)、(2)及び(3)で表される電荷輸送物質を前記電荷輸送層に用いた場合には、特に有効である。これらの電荷輸送物質とアルキルアミノ基を有する化合物とを混合することにより、酸化性ガス雰囲気下においても画像流れ及び解像度の低下を抑制し、帯電低下等の静電劣化をも抑制し、その結果、高画質化を実現することができる。また、前記アルキルアミノ基を有する化合物は、電荷輸送構造を有しているため、残留電位に及ぼす影響が少なく、比較的多量の添加も可能である。
【0053】
前記アルキルアミノ基を有する化合物としては、分子中にアルキルアミノ基を有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【化22】

ただし、前記一般式(4)中、Arは、置換又は無置換のアリーレン基を表す。Ar及びArは、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアルキル基、及び置換又は無置換のアラルキル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。R58及びR59は、置換又は無置換のアルキル基、及び置換又は無置換のアラルキル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。また、Ar及びR58、Ar及びR59は、互いに結合し、窒素原子を含む置換又は無置換の複素環基を形成してもよい。
【化23】

ただし、前記一般式(5)中、Arは、置換又は無置換のアリーレン基を表す。R60〜R63は、置換又は無置換のアルキル基、及び置換又は無置換のアラルキル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。nは、1又は2の整数を表す。
【0054】
前記アルキルアミノ基を有する化合物の具体例としては、例えば、下記構造式で示される化合物などが挙げられる。ただし、これらの化合物に限定されるものではない。
【化24】

【化25】

【0055】
前記電荷輸送層における前記アルキルアミノ基を有する化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電荷輸送物質100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、1.0質量部〜15質量部がより好ましい。前記含有量が、30質量部を超えると、残留電位上昇が見られる場合がある。また、前記含有量が、1.0質量部未満であると、高濃度の酸化性ガス雰囲気下において解像度が低下したり、皮脂の付着によりクラックが発生したりする場合がある。
【0056】
−−−酸化防止剤−−−
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、ヒンダードアミン類などが挙げられる。
前記酸化防止剤は、繰り返し使用に対する静電特性の安定化に有効である。前記酸化防止剤の中でも、下記構造式(6)〜(9)で表される酸化防止剤が、特に好ましい。
【化26】

【0057】
ただし、前記構造式(8)中、nは、12〜18の整数を表す。
【0058】
前記一般式(1)、(2)及び(3)で表される電荷輸送物質は、酸化性ガス雰囲気下において安定性が低い傾向があるが、これらの酸化防止剤を添加することによって酸化性ガス雰囲気下においても帯電低下を抑制することが可能となり、また画像流れを抑制する効果も得られ、高画質化に対し有効である。本発明においては、これらの酸化防止剤を少なくとも二種以上混合して用いることによって、より高い効果が得られ、更にこれらの酸化防止剤と前記一般式(4)及び(5)で表される化合物とを混合して用いることにより、より一層高い効果が得られるため、本発明においては特に有効な方法である。それは、これらの材料は、構造が異なることにより発現する効果も異なるためである。帯電器より発生するオゾンに対する酸化防止効果が高いもの、NOxガスに対して有効なもの、静電疲労によって感光層内に蓄積した電荷のリリースによって起こる帯電低下の抑制に有効なもの、更に画像流れ及び解像度低下、更にゴーストの抑制に有効なものなど、材料の種類によって効果は様々である。そのため、これらを混合して用いることにより、多くの効果を得ることができ、その結果如何なる環境でも高画質画像を安定に提供することが可能となる。
【0059】
−−−レベリング剤−−−
前記レベリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、オリゴマーなどが挙げられる。
前記電荷輸送層における前記レベリング剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂100質量部に対して、1質量部以下が好ましく、0.01質量部〜0.5質量部がより好ましい。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、感光層又は電荷輸送層の塗膜欠陥を防止することができ、平滑な膜を形成することができる。
【0060】
−単層感光層−
本発明においては、感光層が単層構成であっても使用可能である。前記単層感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂等を適当な溶媒に溶解乃至分散し、これを前記中空円筒形スリーブ部材上又は下引き層上に塗工及び乾燥することによって形成される。前記電荷発生物質及び前記電荷輸送物質(電子輸送物質及び正孔輸送物質)は、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層で挙げた材料を使用することが可能である。また、前記樹脂としては、前記電荷輸送層で挙げた前記樹脂の他に、前記電荷発生層で挙げた前記樹脂を混合して用いてもよい。また、前記樹脂として高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。
【0061】
前記単層感光層における前記電荷発生物質の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂100質量部に対して、5質量部〜40質量部が好ましく、10質量部〜30質量部がより好ましい。
前記単層感光層における前記電荷輸送物質の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂100質量部に対して、190質量部以下が好ましく、50質量部〜150質量部がより好ましい。
【0062】
前記単層感光層は、前記電荷発生物質、及び前記樹脂を前記電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトンなどの溶媒に溶解乃至分散し、これを浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法などで塗工して形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤、滑剤等の各種添加剤などを溶解液又は分散液に添加することもできる。
【0063】
前記単層感光層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜25μmが好ましい。
【0064】
<保護層>
前記保護層は、少なくともフィラーを含有し、好ましくは硬化樹脂を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記保護層は、前記感光体ドラムの最表面に形成される。
【0065】
−保護層の表面形状−
前記保護層の表面は、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.050μm〜0.400μmであり、かつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.500mm〜1.500mmである。
ここで、λc輪郭曲線フィルタ、λf輪郭曲線フィルタ、算術平均うねりWa、及び輪郭曲線要素の平均長さWSmは、JIS B 0601:2001年規格において定義又は記載の用語と同じ意味である。
なお、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断するのは、保護層の粗さを把握するためであり、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断するのは、保護層のうねりを把握するためである。これらの設定値が最も保護層の粗さとうねりとの関係を明確にできることを確認した。
【0066】
本発明者らは、保護層の表面が、フィラーによる微細凹凸と大きなうねり形状の両方を有することで、クリーニング性を大幅に向上させ、更にクリーニング手段の劣化を抑制し、良好なクリーニング性を長期的に持続させることが可能であることを見出した。保護層の微細凹凸と大きなうねり形状により、画像形成プロセス中におけるクリーニング工程で、感光体に当接するクリーニング手段が感光体表面で微振動を起こし、感光体上の残トナーの拭き取りを向上させる。更に、大きなうねり形状により感光体とクリーニング手段との接触面積を減らし、クリーニング手段の劣化を抑制することができる。また保護層の樹脂とフィラーとにより保護層は非常に強固となり、感光体の磨耗や傷を防ぎ、大きなうねり形状を長期的に持続させることができる。
【0067】
本発明者らは、保護層の表面のうねり形状が、前記算術平均うねりWaが0.050μm〜0.400μm、及び前記輪郭曲線要素の平均長さWSmが0.500mm〜1.500mmであるとき、クリーニング性向上の効果があることを見出した。前記算術平均うねりWaが、0.400μmを超えると、保護層の厚みのばらつきが大きくなるため画像形成プロセスにおいて濃度ムラを発生させる。また、保護層の形成は、多くはスプレー塗工で実施されるが、前記算術平均うねりWaが、0.300μm未満であると、保護層を形成するのに生産タクトがかかる問題がある為、生産性や製造上の安定性からも0.300μm以上が好ましいが、その場合には画像形成での画像形成プロセスにおいて、プロダクションプリンティング分野に要求される画像品質にてクリーニング手段を振動させることによる感光体の振動が大きくなる傾向があり、結果として画像濃度ムラを発生させやすくなる。その為、前記算術平均うねりWaが0.300μm以上の場合は、感光体の振動を抑えることが特に必要である。
【0068】
そこで、前記フランジ部材を使用することで、感光体の振動を抑制できる。その理由は、クリーニング手段の微振動に起因する感光体の振動を、前記衝撃吸収穴を有する前記フランジ部材が吸収するためと考えられる。そのため、感光体の振動を低減させ画像濃度ムラを減少させることができる。
前記算術平均うねりWaが、0.050μm未満であると、保護層のうねりが小さいため、クリーニング手段の振動が少なく、良好なクリーニング性は得られない。前記輪郭曲線要素の平均長さWSmが、1.500mmを超えると、振幅の大きなうねりとなるためブレードの微振動が少なくなり、クリーニング性の効果が低減される。前記輪郭曲線要素の平均長さWSmが、0.500mm未満であると、クリーニング手段の振動が起こらずクリーニング性は低下し、またクリーニング手段のめくれが発生しやすくなる。保護層のうねり形状は、前記算術平均うねりWa(μm)が、0.100μm〜0.300μm、かつ、前記輪郭曲線要素の平均長さWSm(μm)が、0.600mm〜1.300mmが好ましく、前記Waが、0.130μm〜0.270μm、かつ、前記WSmが、0.700mm〜1.200mmがより好ましい。
【0069】
前記算術平均うねりWa及び前記輪郭曲線要素の平均長さWSmは、JIS B 0601:2001年規格に準拠したものであり、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から算出したものである。基準長さ2.5mm、測定長さ12.5mm、測定速度0.6mm/sで測定することができる。
【0070】
前記算術平均うねりWa及び前記輪郭曲線要素の平均長さWSmは、例えば、東京精密社製の表面粗さ計サーフコム1400Dを用いて測定できる。なお、JIS規格に準拠し、これと同等の測定が可能なものであればいかなる測定装置でもよい。
測定位置、及び測定数については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、測定誤差を少なくするため複数点測定するのが好ましい。例えば、円筒状の感光体では、長手方向の上端、中央、下端の3点、周方向90°おきに4点の計12点の測定を行い、12点の平均値を求めることで、測定誤差の少ない値を得ることができる。
なお、測定方向は、前記感光体ドラムの軸方向である。
【0071】
前記保護層を形成する際に表面形状を制御する、即ちうねり形状を制御する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、スプレー塗工法を用いてうねり形状を制御することが好ましい。スプレー塗工時の霧化エア圧、吐出量、スプレーガン−基体間距離、塗工回数などのスプレー塗工条件でうねり形状を制御することができる。また、スプレー塗工後に、乾燥前の保護層に対して、溶剤やエアを吹き付けることでうねり形状を形成することも可能である。塗工液の処方によりうねり形状を制御する場合は、塗工液中にレベリング剤や溶媒を添加すること、また、その種類や添加量、塗工液の固形分濃度を調節することによりうねり形状を制御することができる。塗工液の処方とスプレー塗工法を組み合わせることでもより効果的にうねり形状を制御することが可能である。
【0072】
以下にはうねり形状を制御する方法の一例を示すが、本発明におけるうねり形状の制御方法はこれに限られるものではない。
スプレー塗工法により前記保護層を形成し、うねり形状を制御する場合、スプレー塗工時のスプレーガンはいかなるものでもよいが、塗工液の吐出量、霧化エア流量、霧化エア圧などを制御できるものが好ましい。
前記スプレーガンとしては、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電スプレーなどが挙げられる。また、スプレーは、縦型でも横型でもよい。
前記スプレーガンの市販品としては、例えば、明治機械製作所製のエアスプレーA100などが挙げられる。
【0073】
図37にスプレー塗工法の概略を示す。符号(A)はスプレーガンを示し、符号(B)は塗布される基体(スリーブ)を示す。図37においてスリーブ(B)は、スリーブに感光層を塗工した感光体製造段階品を示し、スリーブ(B)にはドラム状のものを使用している。スリーブ(B)は駆動手段により矢印方向に回転されており、スプレーガン(A)がスリーブ上に保護層用塗工液を霧化しながら塗布している。スプレーガン(A)は、スリーブ(B)の左端から矢印方向にゆっくり移動し、保護層用塗工液をスリーブ(B)全面に塗工する。保護層の塗工回数は任意である。
【0074】
前記スプレーガンの移動速度と前記スリーブの回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塗工ムラ発生を抑制する点から、前記スプレーガンの移動速度は10mm/s以下が好ましく、前記スリーブの回転数は80rpm以上が好ましい。前記スプレーガンと前記スリーブとの距離は20mm〜100mmが好ましく、30mm〜70mmがより好ましい。前記距離が、20mm未満であると、前記スプレーガンと前記スリーブとの距離が近すぎるため塗工ムラが発生しやすくなり、100mmを超えると、前記スプレーガンの種類にもよるが、一般に付着効率が低下することがある。また、前記スプレーガンと前記スリーブとの距離が長くなると、前記スプレーガンから吐出した霧化液滴中の溶剤が蒸発しやすくなり、液滴が小さくなるためうねり形状が形成しにくくなる。
【0075】
前記保護層用塗工液の吐出量としては、0.02mL/s以上が好ましい。前記吐出量が、0.02mL/s未満であると、吐出量が少ないため液滴が細かくなり、うねり形状が形成されにくくなることがある。前記吐出量は、スプレーガンのノズル開度や、ポンプの押し出し量などで制御することができる。
【0076】
また、前記保護層用塗工液を塗膜直後のウェットな状態で、そこへ溶剤やエアを吹き付けることでうねり形状を形成することも可能である。前記溶剤を吹き付ける場合、前記溶剤の種類は任意であるが、吹き付け後、塗膜表面に残らないようにするため沸点の低いものが好ましい。
【0077】
また、前記保護層が硬化樹脂(架橋樹脂)を含有する場合には、スプレー塗工後は塗膜を架橋させる工程が必要となる。スプレー塗工後から架橋させるまでの指触乾燥時間は10分以内が好ましい。指触乾燥時間が長い場合、塗膜がレベリングされてしまい、うねり形状が小さくなり、更には消失してしまう場合がある。
【0078】
前記保護層の表面に前述の特定のうねり形状を持たせることで、クリーニング手段の微振動を引き起こし、良好なクリーニング性を持たせることが可能となるが、このとき保護層に樹脂を用い、更にフィラーを含有することで、感光体の機械的強度が増し、耐磨耗性を飛躍的に向上させ、保護層のうねり形状を持続させることが可能となる。また、フィラーは微細な凹凸を形成するため、クリーニング手段の微振動をより効果的にする。
【0079】
前記フィラーを用いない場合、長期の使用により感光体が削れ、うねり形状が消失するため、徐々にクリーニング性が低下する。一方、前記保護層に前記フィラーを含有させることで、うねり形状を長期的に持続させ、長期に渡り良好なクリーニング性を持たせることが可能となる。
【0080】
−フィラー−
前記フィラーが、前記保護層に含有されることによって、前述の通り、うねり形状を長期的に持続させ、長期に渡り良好なクリーニング性を得ることができる。また、前記感光体ドラムの耐磨耗性及び耐傷性が顕著に高まるとともに、如何なる画像面積率を有する画像を出力しても、また、長期にわたって画像出力を繰り返しても、画質安定性に優れる感光体ドラムを得ることができる。
【0081】
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機フィラー、無機フィラーなどが挙げられる。
【0082】
前記有機フィラーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末などが挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えば、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属;シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物;フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料の粉末が挙げられる。
【0083】
前記有機フィラーは、繰り返し使用による衝撃(振動等のショック)が無機フィラーに対して小さい傾向はあるが、高耐久化の目的に対しては、無機フィラーより効果が小さい。また、前記有機フィラーを用いると、一般に潤滑性物質の塗布性が低下する場合がある。
【0084】
一方、前記無機フィラーは、フィラー硬度及び光散乱性が高く、耐磨耗性及び耐傷性の向上、並びに高画質化に対し有利であり、潤滑性物質の塗布量の安定性も高い。
そのため、前記フィラーとしては、前記無機フィラーが好ましく、金属酸化物がより好ましく、アルミナが特に好ましい。
更に、前記金属酸化物の使用は、保護層の層としての品質に対しても有利となる場合が多い。保護層の品質は、画像品質や耐磨耗性に大きく影響するため、良好な保護層を得ることは、高耐久化及び高画質化に対し有効となる。
【0085】
前記金属酸化物は、材質によって比抵抗が大きく異なる。本発明においては、電気絶縁性又は比抵抗が低い金属酸化物であっても、電気絶縁性又は比抵抗が高い金属酸化物であっても、どちらも有効に使用することができる。
電気絶縁性又は比抵抗が低い金属酸化物としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウムなどが挙げられる。
一方、電気絶縁性又は比抵抗が高い金属酸化物としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、シリカなどが挙げられる。これらは、電気絶縁性又は比抵抗が低い金属酸化物よりも、解像度低下及び画像流れの発生が起こりにくいため好ましい。ただし、保護層における含有量の増加に伴い残留電位上昇の問題が顕在化されることがある。そのため、電気絶縁性又は比抵抗が高い金属酸化物は、前記保護層の樹脂が、電荷輸送性構造を有さない重合性化合物と電荷輸送性構造を有する重合性化合物とを硬化させて得られる硬化樹脂である場合に、フィラーとして特に有効に使用することができる。
【0086】
これらの金属酸化物の中でも、光透過性が高く、熱安定性が高い上に、耐磨耗性に優れた六方細密構造であるα−アルミナは、画像流れの抑制や耐磨耗性及び耐傷性の向上、保護層の塗膜品質、光透過性等の点から特に有効に使用することができる。更に、前記α−アルミナは、更に潤滑性物質を保護層表面に安定に供給させる上で最も適していることを示す結果も得られている。
【0087】
前記保護層にこれらのフィラーを含有しても、フィラーの分散性によって得られる効果(耐久性など)が影響される場合がある。分散液の状態でフィラーの分散性並びに分散安定性を高めると、その効果は、それを塗工して得られる膜においても維持される。フィラーの分散性が低下し、フィラーが凝集した状態になると、フィラーが含有されていてもフィラーが簡単に脱離して、偏磨耗を引き起こしたり、脱離したフィラーが感光体ドラムの表面を傷つけ、耐傷性が低下したり、黒斑点及び黒スジなどの局所的な画像欠陥を引き起こす場合がある。また、潤滑性物質が局所的に大量に供給されたり、又は供給されない部分が発生したりして、潤滑性物質を感光体ドラム表面に均一に供給することができなくなる場合がある。更に、クリーニングブレードに欠けが生じ、クリーニング不良が発生したり、分散液の寿命が短くなったりするといった不具合が生じることがある。したがって、フィラーの分散性を高めることが好ましい。
【0088】
前記フィラーの分散性を高める手段としては、前記保護層を形成するための塗工液に分散剤及び/又は分散助剤を添加することが有効である。
前記分散剤及び前記分散助剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、用いるフィラーに適したものを選択することが好ましい。
例えば、前記フィラーとして前記金属酸化物を用いた場合には、前記分散剤としては、ポリカルボン酸化合物が好ましく、ポリカルボン酸系湿潤分散剤がより好ましい。前記ポリカルボン酸化合物は、親水性基と疎水性基を併せ持っているため、親水性の表面を有する金属酸化物と疎水性の有機バインダー樹脂及び有機溶媒との親和性を保ち、またフィラーの濡れ性が高まるために、分散性及び分散安定性の向上に非常に大きな効果が発揮される。前記ポリカルボン酸化合物の最も大きな特徴は、カルボン酸が複数有するポリカルボン酸構造を有していることである。
前記ポリカルボン酸化合物の中でも、ポリカルボン酸系湿潤分散剤が有効である。前記ポリカルボン酸系湿潤分散剤としては、市販品を用いることができる。前記市販品としては、BYKケミー社製の「BYK−P104」、「BYK−P105」が好ましい。
前記ポリカルボン酸系湿潤分散剤は、カルボキシル基を有するために高い酸価を有している。この高い酸価に起因して、前記ポリカルボン酸系湿潤分散剤が、親水性で電荷のトラップサイトになる金属酸化物表面に吸着することで、残留電位上昇を引き起こすトラップサイトを埋める働きが期待できる。これにより、残留電位の影響が大きい親水性のフィラーを含有させても、残留電位を大幅に低減でき、かつフィラーの分散性も向上できる相乗効果を得ることができる。これらの技術は、特許第3802787号公報に開示されているが、上記公報には硬化樹脂を用いた場合については詳しくは記載されていない。なお、酸価とは、樹脂1g中に含まれるカルボキシル基を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数で定義される。
【0089】
また、前記フィラーの分散性又は分散安定性を高めるためには、分散時の溶媒の影響も非常に大きい。前記フィラーの分散溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの分散溶媒の中でも、分散性並びに分散安定性を向上させるためには、シクロヘキサノン、シクロペンタノンが特に好ましい。これらの溶媒は、比較的層内に残留しやすい傾向があるため、分散溶媒として大量に使用することは好ましくない。また、これらの分散溶媒と、前記ポリカルボン酸系湿潤分散剤とを組み合わせることによって、顕著な分散安定化効果を得ることができ、本発明においては非常に有効である。
【0090】
更に、前記フィラーは、少なくとも一種の表面処理剤で表面処理を施すことが可能であり、分散性又は分散安定性の改善に効果が得られる場合がある。
前記表面処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0091】
前記フィラーの平均一次粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜1.0μmが好ましく、0.2μm〜0.5μmがより好ましい。前記平均一次粒径が、0.1μm未満であると、フィラーの凝集及び耐磨耗性の低下などが起こりやすくなること、潤滑性物質の感光体ドラム表面への供給安定性が低下し、フィルミング及び異物付着の抑制効果、並びにクリーニング手段の劣化の抑制効果が低下することがある。前記平均一次粒径が、1.0μmを超えると、フィラーの沈降性が促進されたり、それに伴い分散液の寿命が大幅に低下したり、潤滑性物質の供給安定性は高まっても全面に均一に供給できなくなる恐れがあり、繰り返し使用によって部分的に画質劣化又は異常画像が発生する恐れがある。更に繰り返し使用による衝撃(振動等のショック)が大きくなり偏磨耗が発生しやすくなることがある。
【0092】
前記平均一次粒径とは、粒子群を代表する平均的な一次粒子の粒子径を意味し、個数平均径として表される。フィラーの平均一次粒径は、フィラーを電子顕微鏡(S−4200、日立製作所製)によって観察し、フィラーの一次粒子径を求め、それらの50個の平均値から求めることができる。
【0093】
前記保護層における前記フィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記保護層に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、保護層の削れ量が多くなることがある。前記含有量が、50質量%を超えると、露光後電位の増加、解像度の低下や画像流れの発生が起こることがある。また、フィラーが脱離しやすくなって、耐磨耗性が大幅に低下する場合がある。更に繰り返し使用による衝撃(振動等のショック)が大きくなり偏磨耗が発生しやすくなる。前記含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、保護層の削れの抑制及び露光後電位の最適化を両立できる点で有利である。
【0094】
図38に、前記フィラーが分散された状態の前記保護層の概略図を示す。
【0095】
−硬化樹脂−
前記保護層が前記硬化樹脂を含有することで、磨耗量が少なく耐久性に優れた感光体ドラムを得ることができる。
前記硬化樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物を硬化させてなることが好ましく、電荷輸送性構造を有する重合性化合物と電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物とを硬化させてなることがより好ましい。前記硬化樹脂は、3次元の網目構造を有する架橋樹脂である。
【0096】
−−電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物−−
前記電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物を硬化した場合、3次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度且つ高弾性な層が得られ、高い耐磨耗性及び耐傷性が達成される。ただし、硬化条件及び用いる材料によっては、硬化反応において瞬時に多数の結合を形成させるため、体積収縮による内部応力が発生し、クラックや膜剥がれが発生しやすくなる場合がある。その場合には、1官能又は2官能の重合性化合物を併用することで改善できる場合がある。
【0097】
前記電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物としては、例えば、電荷輸送性構造を有さず3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物、電荷輸送性構造を有さず3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物などが挙げられる。
前記電荷輸送性構造を有さず3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応又はエステル交換反応させることにより得ることができる。また、前記電荷輸送性構造を有さず3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、化合物中の重合性官能基を3個以上有する単量体中の重合性官能基は、同一でもよいし、異なってもいてもよい。
【0098】
前記電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後「EO変性」と略すことがある)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後「PO変性」と略すことがある)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5、−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。また、これらのメタクリレートなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
前記電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物は、前記保護層中に緻密な架橋結合を形成する点で、前記重合性化合物中の重合性官能基数に対する分子量の割合(分子量/重合性官能基数)が250以下が好ましい。前記割合が250より大きい場合、表面は柔らかく耐磨耗性が幾分低下するため、上記例示した化合物等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有する化合物においては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用するのが困難になることがある。
また、前記電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物の前記保護層における成分割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記保護層全量に対して20質量%以上80質量%未満が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましい。前記成分割合が、20重量%未満であると、前記保護層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐磨耗性向上が達成されない。前記成分割合が、80重量%以上であると、電荷輸送性構造を有する重合化合物の含有量が低下し、残留電位が顕著に上昇する恐れがある。使用されるプロセスによって要求される静電特性及び耐磨耗性が異なり、それに伴い保護層の厚みも異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30重量%以上70重量%以下の範囲がより好ましい。
【0100】
−−電荷輸送性構造を有する重合性化合物−−
前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物としては、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等のホール輸送性構造;縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基を有する電子吸引性芳香族環、ニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送性構造;これらの両方の構造を有しており、かつ重合性官能基を1つ以上有する化合物などが挙げられる。
【0101】
前記重合性官能基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0102】
前記保護層に用いられる電荷輸送性構造を有する重合性化合物としては、電荷輸送性構造を有する重合性官能基数が2以上の重合性化合物も併用可能であるが、前記電荷輸送性構造を有する重合性官能基数が2以上の重合性化合物は、複数の結合で架橋構造中に固定され架橋密度はより高まる一方、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため層構造の歪みが大きくなり、層の内部応力が高まる原因となることがある。また、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が発生しやすくなる恐れがある。
そのため、前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物としては、電荷輸送性構造を有する重合性官能基1の重合性化合物が好ましい。
【0103】
前記電荷輸送性構造としては、電荷輸送機能を付与できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トリアリールアミン構造が、高い電荷輸送機能が得られる点で好ましい。
前記電荷輸送性構造を有する重合性官能基数1の重合性化合物としては、下記一般式(12)で表される化合物、下記一般式(13)で表される化合物が、感度、残留電位、帯電性等の静電特性が改善される点で好ましい。
【化27】

ただし、前記一般式(12)及び(13)中、R232は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR241(R241は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基、及びCONR242243(R242及びR243は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)のいずれかを表し、Ar141、及びAr142は、置換若しくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar143、及びAr144は、置換若しくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは、単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、及びビニレン基のいずれかを表す。Zは、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアルキレンエーテル2価基、及びアルキレンオキシカルボニル2価基のいずれかを表す。m、及びnは、0〜3の整数を表す。
【0104】
前記一般式(12)、及び(13)において、R232におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等;アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等;アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等;アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられる。これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。前記R232としては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0105】
前記Ar143、及び前記Ar144は、置換若しくは未置換のアリール基であり、該アリール基には、縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基、複素環基が含まれる。
【0106】
前記縮合多環式炭化水素基としては、環を形成する炭素数が18個以下のものが好ましく、例えば、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などが挙げられる。
【0107】
前記非縮合環式炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基;ビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基などが挙げられる。
【0108】
前記複素環基としては、例えば、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基などが挙げられる。
【0109】
また、前記Ar143、及び前記Ar144で表されるアリール基は、例えば、以下に示すような置換基を有してもよい。
【0110】
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
【0111】
(2)アルキル基、好ましくはC1〜C12、より好ましくはC1〜C8、特に好ましくは、C1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基には更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基又はC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基などを有していてもよい。前記(2)としては、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基などが挙げられる。
【0112】
(3)アルコキシ基(−OR233)であり、前記R233は、前記(2)で定義したアルキル基を表す。前記(3)としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
【0113】
(4)アリールオキシ基であり、前記アリールオキシ基におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として含有してもよい。前記(4)としては、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基などが挙げられる。
【0114】
(5)アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基などが挙げられる。
【0115】
(6)下記の一般式(14)で表される基
【化28】

ただし、前記一般式(14)中、R233及びR234は、各々独立に、水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、これらは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R233及びR234は共同で環を形成してもよい。
前記一般式(14)で表される基としては、例えば、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N、N−ジフェニルアミノ基、N、N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基などが挙げられる。
【0116】
(7)メチレンジオキシ基等のアルキレンジオキシ基、メチレンジチオ基等のアルキレンジチオ基など。
【0117】
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基など。
【0118】
前記Ar141、及び前記Ar142で表されるアリーレン基としては、前記Ar143、及び前記Ar144で表されるアリール基から誘導される2価基などが挙げられる。
【0119】
前記Xは、単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基のいずれかを表す。
【0120】
前記置換若しくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、更に好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基には更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基若しくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。前記置換若しくは無置換のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基などが挙げられる。
【0121】
前記置換若しくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基が挙げられ、これらの環状アルキレン基には、フッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していてもよい。前記置換若しくは無置換のシクロアルキレン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3、3−ジメチルシクロヘキシリデン基などが挙げられる。
【0122】
前記置換若しくは無置換のアルキレンエーテル基としては、例えば、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられ、前記アルキレンエーテル基は、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
【0123】
前記ビニレン基としては、例えば、下記一般式(15)で表される基などが挙げられる。
【化29】

ただし、前記一般式(15)中、R235は水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar143、Ar144で表されるアリール基と同じ)のいずれかを表す。aは、1又は2を表す。bは、1〜3を表す。
【0124】
前記一般式(12)、及び(13)において、Zは、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基のいずれかを表す。
前記置換若しくは無置換のアルキレン基としては、例えば、前記Xのアルキレン基と同様のものなどが挙げられる。
前記置換若しくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、例えば、前記Xのアルキレンエーテル基の2価基と同様のものなど挙げられる。
前記アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン変性2価基などが挙げられる。
【0125】
前記電荷輸送性構造を有する重合性官能基数1の重合性化合物としては、下記一般式(16)で表される構造の化合物が更に好ましい。
【化30】

前記一般式(16)中、o、p、及びqは、それぞれ、0又は1の整数を表す。Raは、水素原子、及びメチル基のいずれかを表す。Rb、及びRcは、炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s、及びtは、それぞれ、0〜3の整数を表す。
Zaは、単結合、メチレン基、エチレン基、及び下記構造式(17)で表される基のいずれかを表す。
【化31】

【0126】
前記一般式(16)で表される化合物としては、前記Rb、及び前記Rcがメチル基、及びエチル基のいずれかである化合物が好ましい。
【0127】
前記一般式(12)及び(13)、特に前記一般式(16)で表される1官能性の電荷輸送構造を有する重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上の重合性化合物との重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合した化合物由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は、重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、感光体ドラムの保護層に含有された場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
【0128】
下記一般式(20)で表される特定のアクリル酸エステル化合物も電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物として良好に用いることができる。
−Ar−CH=CH−Ar−B 一般式(20)
ただし、前記一般式(20)中、Arは、置換又は無置換の芳香族炭化水素骨格からなる一価基、又は二価基を表す。前記芳香族炭化水素骨格としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニルなどが挙げられる。置換基としては、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ベンジル基、ハロゲン原子などが挙げられる。また、上記アルキル基、アルコキシ基は、更にハロゲン原子、フェニル基を置換基として有していてもよい。
【0129】
前記Arは、少なくとも1個の3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格からなる一価基又は二価基、少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格からなる一価基又は二価基のいずれかを表すが、ここで、3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格とは下記一般式(21)で表される骨格である。
【化32】

ただし、前記一般式(21)中、R13、及びR14は、アシル基、置換若しくは無置換のアルキル基、及び置換若しくは無置換のアリール基のいずれかを表す。Arは、アリール基を表す。wは、1〜3の整数を表す。
【0130】
前記R13、及び前記R14のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
前記R13、及び前記R14の置換若しくは無置換のアルキル基は、Arの置換基で述べたアルキル基と同様である。
前記R13、及び前記R14の置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基に加えて下記一般式(22)で表される基などが挙げられる。
【化33】

ただし、前記一般式(22)中、Bは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−及び以下の二価基から選ばれる。
【化34】

ただし、R21は、水素原子、前記Arで定義された置換若しくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、前記R13で定義された置換若しくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、R22は、水素原子、前記Arで定義された置換若しくは無置換のアルキル基、前記R13で定義された置換若しくは無置換のアリール基を表し、iは、1〜12の整数、jは、1〜3の整数を表す。
【0131】
前記R21のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
前記R21のハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
前記R21のアミノ基としては、例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジベンジルアミノ基、4−メチルベンジル基などが挙げられる。
前記Arのアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基などが挙げられる。
【0132】
前記Ar、前記R13、及び前記R14は、前記Arで定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
【0133】
前記3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格としては、例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環化合物に由来する骨格などが挙げられる。これらは、前記Arで定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
【0134】
前記B、及び前記Bは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルキル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルコキシ基を表す。前記アルキル基、及び前記アルコキシ基は、前記Arで述べたものが同様に適用される。これらB、Bはどちらか一方のみが存在し、両方の存在は除外される。
【0135】
前記一般式(20)で表されるアクリル酸エステル化合物と同様に、下記一般式(23)で表されるアクリル酸エステル化合物も良好に用いることができる。
【化35】

ただし、前記一般式(23)中、R、及びRは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、及びハロゲン原子のいずれかを表し、Ar、及びArは、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアリーレン基、及び置換又は無置換のベンジル基のいずれかを表す。前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子は、前記Arで述べたものが同様に適用される。
【0136】
前記アリール基は、前記一般式(21)における前記R13、及び前記R14で定義されたアリール基と同様である。前記アリーレン基は、そのアリール基から誘導される二価基である。
【0137】
〜Bは、前記一般式(20)における前記B、及び前記Bと同様の基を表し、いずれか1つのみが存在し、2つ以上の存在は除外される。
【0138】
uは0〜5の整数、vは0〜4の整数を表す。
【0139】
特定のアクリル酸エステル化合物、例えば、前記一般式(20)で表されるアクリル酸エステル、及び前記一般式(23)で表されるアクリル酸エステル化合物は、次のような特徴を有する。前記特定のアクリル酸エステルは、スチルベン型共役構造を有した三級アミン化合物であり、発達した共役系を有している。こういった共役系の発達した電荷輸送性化合物を用いることで、保護層界面部分での電荷注入性が非常に良好となり、更に架橋結合間に固定化された場合でも、分子間相互作用が阻害されにくく、電荷移動度に関しても良好な特性を有する。また、ラジカル重合性の高いアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を分子中に有しており、ラジカル重合時に速やかにゲル化するとともに過度な架橋歪を生じない。分子中のスチルベン構造部の二重結合が部分的に重合に参加し、しかもアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基よりも重合性が低いために架橋反応に時間差が生じることで歪みを最大に大きくすることがなく、しかも分子中の二重結合を使用するために分子量当りの架橋反応数を上げることができるために、架橋密度を高めることができ、耐磨耗性の更なる向上が実現可能となる。また、この二重結合は、架橋条件により重合度を調整することができ、容易に最適架橋膜を作製できる。このようなラジカル重合への架橋参加は、アクリル酸エステル化合物の特異的な特徴であり、α−フェニルスチルベン型の構造では起こらない。
【0140】
以上のことから、前記一般式(20)、特に前記一般式(23)で表されるアクリル酸エステルを、前記電荷輸送性構造を有する重合性官能基数1の重合性化合物として用いることで良好な電気特性を維持しつつ、かつ、クラック等の発生を起さずに架橋密度の極めて高い膜を形成することができ、それにより感光体の諸特性を満足し、かつトナーに含有されるシリカ微粒子等が感光体に刺さることを防止し、白斑点等の画像欠陥を減らすことができる。
【0141】
前記電荷輸送性構造を有する重合性官能基数1の重合性化合物は、前記保護層の電荷輸送性能を付与するために重要で、それの前記保護層における成分割合としては、前記保護層に対して20質量%以上80質量%未満が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましい。前記成分割合が、20質量%未満であると、保護層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの静電特性の劣化が見られる場合がある。前記成分割合が、80質量%以上であると、電荷輸送構造を有しない重合性化合物の含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐磨耗性及び耐傷性が発揮されない場合がある。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐磨耗性が異なり、それに伴い前記感光体ドラムの保護層の厚みも異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると前記成分割合は、30質量%以上70質量%以下の範囲がより好ましい。なお、これらの電荷輸送性構造を有する重合性化合物は、硬化していることにより単離することはできないが、FT−IR等の方法を用いれば、電荷輸送性構造として定量化できるため、FT−IR等の方法を用いれば、前記保護層における前記電荷輸送性構造を有する重合性官能基数1の重合性化合物の成分割合を定量化できる。
【0142】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、例えば、硬化樹脂とは異なる樹脂などが挙げられる。
【0143】
−−樹脂−−
前記樹脂としては、硬化樹脂とは異なる樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0144】
−保護層の形成方法−
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物と、前記電荷輸送性構造を有する重合性官能基数1の重合性化合物と、前記フィラーとを少なくとも含有し、更に必要に応じて、重合開始剤、溶媒などのその他の成分を含有する保護層用塗工液を前記感光層上に塗布し、乾燥及び硬化(架橋)させる方法などが挙げられる。
【0145】
−−重合開始剤−−
前記重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
前記熱重合開始剤としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3,ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤などが挙げられる。
【0146】
前記光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1、2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。
また、光重合促進効果を有する化合物を単独又は前記光重合開始剤と併用して用いることもできる。前記光重合促進効果を有する化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0147】
これらの重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0148】
前記保護層用塗工液における前記重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重合性を有する総含有物100質量部に対して、0.5質量部〜40質量部が好ましく、1質量部〜20質量部がより好ましい。
【0149】
−−溶媒−−
前記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒などが挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0150】
前記溶媒は、保護層用塗工液の大半を占めることになるため、層内に残留しにくい揮発性の高い溶媒を使用し、残留しやすい溶媒は極力少量に留めておくことが好ましい。残留しやすい溶媒は、残留電位上昇を引き起こしたり、硬化の妨げとなり、不均一硬化及び硬化密度低下をもたらす場合がある。
【0151】
前記溶媒としては、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アルコール系溶媒が好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。
【0152】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、可塑剤、レベリング剤、アルキルアミノ基を有する化合物、酸化防止剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などが挙げられる。
【0153】
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどが挙げられる。
前記可塑剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記保護層用塗工液の総固形分に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0154】
前記レベリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマー;重合するための官能基を有するレベリング剤などが挙げられる。
前記レベリング剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記保護層用塗工液の総固形分に対して、1質量%以下が好ましい。前記含有量が、1質量%を超えると、感光体ドラム表面の摩擦係数が低減しすぎて、潤滑性物質の供給量が不安定になる恐れがある。
【0155】
前記アルキルアミノ基を有する化合物としては、前記電荷輸送層において挙げられた前記アルキルアミノ基を有する化合物が有効に使用できる。前記アルキルアミノ基を有する化合物を、感光体ドラムの最表面に位置する前記保護層に添加することによって、高い効果が得られる場合がある。ただし、多量に添加すると、硬化阻害を引き起こす恐れがあるため、必要最小量に留めておく必要がある。
前記アルキルアミノ基を有する化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記保護層用塗工液の総固形分に対して、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0156】
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、ヒンダードアミン類が好ましい。特に前記電荷輸送層において挙げられた前記構造式(6)〜(9)で表される酸化防止剤が好ましい。
前記酸化防止剤は、前記保護層に含有させることによって高い効果が得られる場合があるが、多量添加は硬化阻害を引き起こしたり、顕著な残留電位上昇を引き起こす恐れがある。
前記酸化防止剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記保護層用塗工液の総固形分に対して、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0157】
前記保護層用塗工液の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレー塗工法などが挙げられる。
前記保護層用塗工液の処方、及び塗工条件を適切に制御することにより前記保護層を形成することができる。前記スプレー塗工法では、スプレー塗工時の霧化エア圧、及び吐出量、スプレーガン−スリーブ間距離、塗工回数などのスプレー塗布条件で塗膜状態、及び表面の形状を制御することができる。詳細は前述のとおりである。
【0158】
前記保護層用塗工液を塗工後、例えば、重合性化合物を硬化させるため、外部からエネルギーを与えることが好ましい。
前記エネルギーとしては、例えば、熱、光、放射線などが挙げられる。
【0159】
前記熱のエネルギーを加える方法としては、例えば、空気、窒素等の気体;蒸気、各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側又はスリーブ側から加熱する方法などが挙げられる。
前記加熱温度としては、100℃〜170℃が好ましい。前記加熱温度が、100℃未満であると、反応速度が遅く、硬化樹脂を形成する場合に完全に硬化反応が終了しないことがある。前記加熱温度が、170℃を超えると、硬化樹脂を形成する場合に硬化反応が不均一に進行し保護層中に大きな歪みや多数の未反応残基、反応停止末端が発生することがある。硬化樹脂を形成する場合の硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。
【0160】
前記光のエネルギーとしては、主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯、メタルハライドランプ等のUV照射光源が利用できるが、重合性化合物、光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量としては、50mW/cm〜1,000mW/cm以下が好ましい。前記照射光量が、50mW/cm未満であると、硬化反応に時間を要することがある。前記照射光量が、1,000mW/cmを超えると、反応の進行が不均一となり、保護層表面に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生ずることがある。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラック、膜剥がれの原因となることがある。
【0161】
前記放射線のエネルギーとしては、電子線を用いるものが挙げられる。
【0162】
これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱のエネルギー、光のエネルギーを用いたものが有用である。
前記光エネルギー又は前記放射線エネルギーにより保護層を硬化した場合は、硬化後に残留溶媒を除去するため、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の温度及び時間は、保護層の塗工液に用いられた溶媒の沸点により任意に選択できるが、概ね100℃〜150℃、10分間〜30分間程度が好ましい。
【0163】
前記保護層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0μm〜8.0μmが好ましく、2.0μm〜4.0μmがより好ましい。前記平均厚みが、1.0μm未満であると、塗膜欠陥が発生しやすくなる恐れがある。また、表面粗さの下限領域において保護層に充分に覆われない領域が出てくる可能性があり、高耐久である本発明の効果が得られなくなる恐れがある。また、前記平均厚みが、8.0μmを超えると、クラック及び膜剥がれが発生しやすくなったり、残留電位上昇が顕著に発生したり、塗膜欠陥の発生により表面形状が制御しにくくなり、本発明の効果が充分に発揮できなくなる恐れがある。また、フィラーによる繰り返しの画像形成時での衝撃(振動等のショック)の影響を受けやすくなる。
【0164】
本発明は、最表面の前記保護層に含有されるバインダー樹脂が硬化樹脂であることが好ましい。前記硬化樹脂を含有する前記保護層は、有機溶媒に対し不溶性である。この有機溶媒に対する溶解性を試験する方法としては、感光体ドラム表面に溶解性の高い有機溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等を1滴滴下し、自然乾燥後に感光体ドラム表面形状の変化を実体顕微鏡で観察することで判定できる。溶解性を示す場合には、液滴の中心部分が凹状になり周囲が逆に盛り上がる現象、電荷輸送物質が析出し結晶化による白濁やくもり生ずる現象、表面が膨潤しその後収縮することで皺が発生する現象などの変化が見られる。それに対して、不溶性を示す場合には、上記のような現象が見られず、滴下前と全く変化が現れない。
【0165】
本発明の構成において、前記保護層を有機溶媒に対し不溶性にするには、(1)保護層用塗工液の組成物、それらの含有割合の調整、(2)保護層用塗工液の希釈溶媒、固形分濃度の調整、(3)保護層の塗工方法の選択、(4)保護層の硬化条件の制御など、これらをコントロールすることが重要であるが、一つの因子で達成される訳ではない。
【0166】
<その他の層>
前記その他の層としては、例えば、下引き層、中間層などが挙げられる。
【0167】
−下引き層−
本発明の感光体ドラムにおいては、前記中空円筒形スリーブ部材と前記感光層との間に下引き層を設けることができる。
前記下引き層は、一般には樹脂を主成分とするが、この樹脂は、その上に感光層を溶媒で塗布することを考えると、一般の有機溶媒に対して耐溶剤性の高い樹脂であるものを使用することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂;共重合ポリアミド(共重合ナイロン)、メトキシメチル化ポリアミド(ナイロン)等のアルコール可溶性樹脂;ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
【0168】
前記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために金属酸化物を含有させることも可能であり有効である。モアレとは、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込みを行う際に感光層内部での光干渉によってモアレと呼ばれる干渉縞が画像に形成される画像欠陥の一種である。基本的に、入射されたレーザー光をこの下引き層によって光散乱させることによりモアレ発生を防止するため、屈折率の大きな材料を含有させる必要がある。モアレを防止する上では、前記樹脂に無機顔料を分散させた構成が最も有効である。使用される無機顔料としては、白色の顔料が有効に使用され、金属酸化物、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化インジウムなど挙げられる。
【0169】
前記下引き層には、感光体ドラム表面に帯電される電荷と同極性の電荷を、感光層から前記中空円筒形スリーブ部材側へ移動できる機能を有することが残留電位の低減上好ましく、前記無機顔料はその役割をも果たしている。例えば、負帯電型の感光体ドラムの場合、前記下引き層は、電子伝導性を有することによって残留電位を低減できる。前記無機顔料としては、前記金属酸化物が有効に用いられるが、抵抗の低い無機顔料を用いたり、前記樹脂に対する無機顔料の添加比率を増加させたりすることによって残留電位を低減させる効果が高くなる反面、地汚れ抑制効果が低下する恐れもある。したがって、前記感光体ドラムにおける前記下引き層の層構成や厚みによってそれらを使い分けたり、添加量を調整したりすることによって、地汚れ抑制と残留電位低減の両立を図ることが必要である。モアレ防止、残留電位上昇及び地汚れの抑制と一周目帯電低下の抑制効果を考慮すると、前記金属酸化物の中でもとりわけ酸化チタンが最も好ましい。
【0170】
前記下引き層は、前記樹脂、前記無機顔料(金属酸化物)を主成分とし、溶媒を含めた状態で湿式分散を行って得た下引き層用塗工液を塗工することにより得ることができる。
使用される溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ブタノール、シクロヘキサノン、ジオキサン、及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。
前記無機顔料は、前記溶媒及び前記樹脂と共に従来公知の方法、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライラーなどにより分散することができる。
前記樹脂は、分散前に前記下引き層用塗工液に添加してもよいし、分散後に樹脂溶液として前記下引き層用塗工液に添加してもよい。
また、必要に応じて、硬化(架橋)に必要な薬剤、添加剤、硬化促進剤等、及び無機顔料の分散性を高める目的での分散剤を加えることも可能である。
前記下引き層は、前記下引き層用塗工液を用い、従来公知の方法、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート、リングコート、ビートコート、ノズルコート法などを用いて前記中空円筒形スリーブ部材上に形成される。
【0171】
塗工後は、乾燥、加熱、必要に応じて光照射などの硬化処理が行われる。
前記下引き層の平均厚みとしては、含有させる無機顔料の種類によって異なるが、20μm以下が好ましく、2μm〜10μmがより好ましい。
【0172】
−中間層−
前記感光体ドラムは、前記中空円筒形スリーブ部材と前記下引き層の間、又は前記下引き層と前記感光層との間に、更に中間層を設けることも可能である。
前記中間層は、前記中空円筒形スリーブ部材からのホールの注入を抑制するために加えられるもので、主目的は地汚れの抑制にある。
前記中間層は、樹脂を主成分とする。前記樹脂としては、例えば、ポリアミド、アルコール可溶性ポリアミド(可溶性ナイロン)、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
前記中間層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記中間層の平均厚みとしては、0.05μm〜2μmが好ましい。
前記中間層と前記下引き層の2層構成とすることにより、地汚れ抑制効果は飛躍的に高まるが、残留電位上昇の影響が増加する傾向にある。また、前記中間層と前記下引き層の積層によって一周目帯電低下の影響が増加する場合もあるため、前記中間層及び前記下引き層の組成や厚みを充分考慮して決める必要がある。
【0173】
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位上昇、帯電低下等を防止する目的で、前記電荷発生層、前記電荷輸送層、前記単層感光層、前記下引き層、前記中間層、及び前記保護層の少なくとも1層に、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、及びレベリング剤の少なくともいずれかを添加することが好ましい。これらの化合物の代表的な材料を以下に示す。
【0174】
前記各層に添加できる酸化防止剤としては、例えば、下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)フェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェロール類など。
(b)パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(c)ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(d)有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(e)有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0175】
前記各層に添加できる可塑剤としては、例えば、下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
【0176】
前記各層に添加できる滑剤としては、例えば、下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
(f)金属石けん
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
(g)天然ワックス
カルナウバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物など。
【0177】
前記各層に添加できる紫外線吸収剤としては、例えば、下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンなど。
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2、4ジ−t−ブチルフェニル3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシベンゾエートなど。
(c)ベンゾトリアゾール系
(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾールなど。
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル2−カルボメトキシ3(パラメトキシ)アクリレートなど。
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル(2,2’チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4、5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
【0178】
前記感光体ドラムの積層構造としては、例えば、図3に一例を示すように、中空円筒形スリーブ部材1001上に感光層1002及び最表面層(保護層)1003が順次積層された構造である。また、例えば、図4に一例を示すように、感光層1022と中空円筒形スリーブ部材1021との間に下引き層1024を設けた構造であってもよい。なお図4において感光層1022上には、最表面層(保護層)1023が設けられている。また、図示しないが、下引き層は2層構成であってもよい。更に、図5に一例を示すように、中空円筒形スリーブ部材1011上に電荷発生層1015、電荷輸送層1016及び最表面層(保護層)1013を順次積層した構造であってもよく、図6に一例を示すように、中空円筒形スリーブ部材1031上に下引き層1034、電荷発生層1035、電荷輸送層1036、最表面層(保護層)1033を順次積層した構造であってもよい。
【0179】
<フランジ部材>
前記フランジ部材は、前記中空円筒形スリーブ部材の軸方向の端部の端部開口部に装着可能な装着部と、前記装着部が前記端部開口部に装着された状態で前記中空円筒形スリーブ部材の中心軸となる位置に軸部材が挿入される軸穴が設けられた軸穴部と、前記中空円筒形スリーブ部材の円形断面に平行な方向に延在し、前記装着部に前記軸穴部を連結する連結部とを有する。
前記連結部は、前記連結部を含みかつ前記軸方向に直交する仮想平面に対して前記装着部の外周面を前記軸方向に沿って投影させた仮想投影円の円周上から前記軸穴部まで引いた任意の仮想線分上に、少なくとも1つの衝撃吸収穴を備える。
【0180】
前記フランジ部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホンなどが挙げられる。
【0181】
前記フランジ部材について、図を用いて説明する。
図7A及び図7Bは、フランジ部材35の説明図である。図7Aは、図2に示すフランジ部材35のA−A断面図であり、図7Bは、図2に示すフランジ部材35のB−B断面図である。
フランジ部材35は、装着部312、軸穴部314、連結部315及び外縁部319を備える。装着部312は、感光体スリーブ30の端部開口部34に圧入することで、装着部312の外周面である圧入外周面312fが感光体スリーブ30の中空円筒形スリーブ部材32の内周面と接触する。軸穴部314は、不図示の軸部材が挿入される軸穴313が設けられ、軸穴313を形成する部分である。外縁部319は、フランジ部材35の半径方向の最外周部である外縁319fを形成する。連結部315は、軸穴部314と装着部312及び外縁部319とを連結する部分である。
【0182】
そして、連結部315には、図7B中の316a〜316cで示す複数の衝撃吸収穴(以下、「衝撃吸収穴316」と称することがある)を備える。また、軸穴部314とは、軸中心から一番近い第一衝撃吸収穴316aとの距離を半径とする円317の内側であって、軸穴313以外の部分のことである。
【0183】
連結部315は軸穴部314から外縁部319に向かってに引いた任意の仮想線分上に少なくとも一つの衝撃吸収穴316を有することを特徴とする。任意の仮想線分の例として318a、318b及び318cを図7B中に示した(以下、「仮想線分318」と称することがある)。仮想線分318a上には衝撃吸収穴316を3つ、仮想線分318b上には衝撃吸収穴316を2つ、仮想線分318c上には衝撃吸収穴316を1つ、備える。仮想線分318は、連結部315を含む軸方向に直交する仮想平面315fに対して装着部312の圧入外周面312fを軸方向(図7A中の左右方向)に沿って投影させた仮想投影円312cの円周上から軸穴部314まで引いた任意の仮想線分である。
【0184】
図7A及び図7Bに示すフランジ部材35では、圧入外周面312fが軸方向に平行に形成されているが、圧入外周面312fが軸方向に対して傾斜している場合は、装着部312の根元における圧入外周面312fの位置(図7A中の「312a」)を基準に仮想投影円312cの円周の位置が決まる。
【0185】
このような本発明のフランジ部材35であれば、装着部312を感光体スリーブ30に圧入したときに、装着部312が感光体スリーブ30の中空円筒形スリーブ部材32からの応力を受けても、衝撃吸収穴316が圧入による応力を吸収し、衝撃吸収穴316を備えない構成に比べて、軸穴313が変形したり移動したりすることを抑制することができる。
【0186】
また、連結部315は軸穴部314から外縁部319に向かってに引いた任意の仮想線分318上に少なくとも一つの衝撃吸収穴316を有する。このため、装着部312が中空円筒形スリーブ部材32から何れの方向の応力を受けても、いずれかの衝撃吸収穴316が圧入による応力が吸収する作用が働く。これにより、装着部312の圧入外周面312fが受けた応力が直接、軸穴部314に伝わることを防止し、軸穴313が変形したり移動したりすることが抑制できる。
【0187】
感光体ドラム1の軸方向の端部のうち、一方の端部は装置本体から駆動が入力される駆動伝達側端部であり、他方の端部は、装置本体に対して感光体ドラム1が回転可能に支持される従動側端部である。そして、駆動伝達側端部に配置されるフランジ部材35には駆動伝達ギヤが設けられている。
【0188】
図8A及び図8Bは、駆動伝達側端部に配置されるフランジ部材35が備える駆動伝達ギヤの説明図である。
図8Aは、フランジ部材35の側面図であり、図8Bは、フランジ部材35の断面図である。図8Aに示すように、フランジ部材35の外縁部319の外縁319fには、外縁ギヤ319gが設けられており、軸穴部314の軸穴313には、駆動入力ギヤ319hが設けられている。なお、図8Aにおける符号11は、ギヤ部である。
【0189】
画像形成装置本体側に設けられた不図示の駆動モータからの回転駆動を伝達する不図示の軸部材に設けられた不図示の駆動入力ギヤが駆動入力ギヤ319hと係合する。また、外縁319fは、作像装置の不図示の作像部ギヤ列と係合する構成である。
このような構成により、画像形成装置本体側に設けられた駆動モータからの回転駆動が、駆動入力ギヤ319hからフランジ部材35に入力され、感光体ドラム1が回転駆動する。更に、感光体ドラム1が回転することで、外縁ギヤ319gから作像部ギヤ列に駆動が伝達され、現像手段等の作像手段を構成する他のユニットに回転駆動が伝達される。
このような駆動を繰り返していると、保護層中にフィラーがあることで発生する衝撃(振動等のショック)が発生するが、フランジ部材35は、衝撃吸収穴316を有することによって、その衝撃を抑制できる。
また、フランジ部材35により、感光体の振動を抑制できる。その理由は、クリーニング手段の微振動に起因する感光体の振動を、衝撃吸収穴316を有する連結部315が吸収するためと考えられる。そのため、感光体の振動を低減させ画像濃度ムラを減少させることができる。
【0190】
前記フランジ部の他の例としては、例えば、図9〜図29示すフランジ部材などが挙げられる。これらの図中の符号は、図7A、図7Bの符号と同じである。
【0191】
前記衝撃吸収穴は、前記中空円筒形スリーブ部に圧入された状態で前記円形断面の径方向に延在する前記仮想線分と垂直に交わる実質的に直線状の一辺を有することが好ましい。このような形状により、前記仮想線分に沿う方向に応力が加わったときに、衝撃吸収穴の近傍の前記連結部が変形しやすく、より確実に、応力が軸穴部に伝わることを抑制できる。
【0192】
フランジ部材35では、衝撃吸収穴316が半径329と交わる一辺を有することにより、効率よく圧入時の応力を吸収することができるため、更に軸穴313の変形及び移動が小さくなる。更に、クリーニング手段の微振動に起因する感光体の振動を、衝撃吸収穴316を有する連結部315が吸収することで、感光体ドラムの振動を低減させ画像濃度ムラを減少させることができる。
【0193】
前記連結部は、前記仮想平面において前記軸穴の中心位置からの距離が同じ位置となる同一円周上に配置された前記衝撃吸収穴を2以上有することが好ましく、4以上有することがより好ましい。上限としては180以下有することが好ましい。
前記衝撃吸収穴の円周方向の最大数は2以上であれば、更に前記軸穴の変形及び移動が小さくなる。ここで円周とは、言い換えれば、前記軸穴の中心から距離が等しい点の集合でできる円の線上をいい、図(例えば、図7B)中では仮想円327として示している。
また、前記連結部は、前記仮想平面において前記軸穴の中心位置から前記仮想投影円の円周上に引いた任意の仮想線分上に衝撃吸収穴を2以上有することが好ましい。
【0194】
感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が40mm未満の場合、衝撃吸収穴316の円周方向の最大数は2以上30以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより3以上12以下がより好ましい。
【0195】
また、感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が40mm以上150mm以下の場合、衝撃吸収穴316の円周方向の最大数は、2以上100以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより12以上24以下がより好ましい。
【0196】
更に、感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が150mmより大きいの場合、衝撃吸収穴316の円周方向の最大数は、2以上180以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより24以上48以下がより好ましい。
【0197】
任意の半径329上の衝撃吸収穴316の最大数が2以上33以下であれば、更に軸穴の変形及び移動が小さくなる。ここで、半径329とは中心から円周上の1点を結んだ線分をいう。連結部315は、軸穴部314から仮想投影円312cに任意の仮想線分318上に少なくとも一つの衝撃吸収穴316を有する構造であるため、半径方向の衝撃吸収穴316の数は必ず1以上になる。
【0198】
感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が40mm未満の場合、衝撃吸収穴316の半径方向の最大数は2以上5以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより3以上5以下がより好ましい。
【0199】
また、感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が40mm以上150mm以下の場合、衝撃吸収穴316の半径方向の最大数は、2以上20以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより4以上10以下がより好ましい。
【0200】
更に、感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が150mmより大きいの場合、衝撃吸収穴316の半径方向の最大数は、2以上33以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより6以上20以下がより好ましい。
【0201】
円周方向に隣接する衝撃吸収穴316の間隔が1mm以上280mm以下であれば、更に軸穴313の変形及び移動が小さくなる。円周方向に隣接する衝撃吸収穴316同士の間隔とは、図7B及び図9〜図29で示す円周方向間隔W1の値であり円周方向に隣接する複数の衝撃吸収穴316同士の最短距離をいう。図28で示すフランジ部材35では、円周方向間隔は存在しないこととなる。
【0202】
感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が40mm未満の場合、円周方向間隔W1は、1mm以上30mm以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより、1mm以上10mm以下がより好ましい。
【0203】
また、感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が40mm以上150mm以下の場合、円周方向間隔W1は、1mm以上50mm以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより、1mm以上30mm以下がより好ましい。
【0204】
更に、感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が150mmより大きいの場合、円周方向間隔W1は、1mm以上280mm以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより、1mm以上50mm以下がより好ましい。
【0205】
半径方向に隣接する衝撃吸収穴316の間隔が1mm以上130mm以下であれば、更に軸穴313の変形及び移動が小さくなる。半径方向に隣接する衝撃吸収穴316同士の間隔とは図7B及び図9〜図29で示す半径方向間隔W2の値であり半径方向に隣接する衝撃吸収穴316の最短距離をいう。
【0206】
感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が40mm未満の場合、半径方向間隔W2は、1mm以上10mm以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより、1mm以上5mm以下がより好ましい。
【0207】
また、感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が40mm以上150mm以下の場合、半径方向間隔W2は、1mm以上70mm以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより、1mm以上30mm以下がより好ましい。
【0208】
更に、感光体ドラム1用の中空円筒形スリーブ部材32の内径が150mmより大きいの場合、半径方向間隔W2は、1mm以上130mm以下が好ましい。軸穴313の変形及び移動防止と作製困難性のバランスより、1mm以上80mm以下がより好ましい。
【0209】
前記フランジ部材は、前記中空円筒形スリーブ部材の端部の端部開口部に装着される。装着は、前記中空円筒形スリーブ部材に、前記感光層、及び前記保護層を設ける前であってもよいし、後でもよい。装着の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、装着しやすい点から圧入による装着が好ましい。装着後の感光体ドラムの振れ精度は、高画質を達成する点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0210】
前記フランジ部材と、前記硬化樹脂を含有する前記保護層とを組合せて前記感光体ドラムに用いることにより、前記フランジ部材は、圧入時の振れを抑制できるだけでなく、更に大きな効果を奏することが、本発明者らにより確認された。
従来、前記硬化樹脂を含有する前記保護層は、削れがほとんど無く、高耐久性を達成できると考えられていた。しかし、詳細の解析の結果、前記硬化樹脂を含有する前記保護層のみでは、偏磨耗が発生してしまい、その為に予想よりも高耐久性を達成できていないことが確認された。
ところが、前記感光体ドラムに、前記フランジ部材と、前記硬化樹脂を含有する前記保護層とを併用することにより、更なる高耐久性が達成できることを、本発明者らは見出した。
更なる高耐久性を達成できる理由として、偏磨耗の低減が大きく寄与している。本発明者らの詳細な解析の結果、前記保護層の偏磨耗の原因は、感光体ドラムに対する繰返しの画像形成において、保護層表面のフィラーに起因して微細に繰り返される衝撃(振動等のショック)の発生であると推測できた。そして、衝撃(振動等のショック)が発生すると、感光体ドラムの軸方向の振れが大きい部分と小さい部分とが発生してしまい、その結果、画像形成における感光体ドラムとの接触部位(クリ−ニングブレード等との接触部位)のハザードに違いが起こり膜の削れ量に差が生じて、結果として偏磨耗が発生すると推測できた。この課題を解決するために、前記フランジ部材を用いることにより、繰返しの画像形成における感光体ドラムの振れを吸収して偏磨耗を低減することができた。
【0211】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、感光体ドラムと、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、クリーニング手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明の画像形成方法は、帯電工程と、露光工程と、現像工程と、転写工程と、クリーニング工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記感光体ドラムは、本発明の前記感光体ドラムである。
【0212】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記帯電工程は前記帯電手段により行うことができ、前記露光工程は前記露光手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記クリーニング工程は前記クリーニング手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0213】
<帯電手段及び帯電工程>
前記帯電手段としては、前記感光体ドラム表面を帯電させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器などが挙げられる。
前記帯電工程としては、前記感光体ドラム表面を帯電させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記帯電手段により行うことができる。
前記感光体ドラムの帯電方式は、接触帯電方式であってもよいし、近接帯電方式であってもよい。前記近接帯電方式としては、例えば、前記近接配置型ローラ帯電方式が挙げられる。
【0214】
前記近接配置型ローラ帯電方式の一例を図31に示す。
図31に示す近接配置型ローラ帯電方式では、感光体ドラム1と対向して配置する帯電ローラ223の回転軸である金属シャフト221の軸方向についての帯電ローラ223の両端に、ギャップ形成部材222が設けられている。このギャップ形成部材222が、感光体ドラム1の軸方向両端の非画像形成領域225と接触することで、感光体ドラム1の画像形成領域224と帯電ローラ223の表面との距離を一定に保ことができる。
【0215】
<露光手段及び露光工程>
前記露光手段としては、帯電された前記感光体ドラム表面を露光して前記感光体ドラムに静電潜像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光器などが挙げられる。
前記露光工程としては、帯電された前記感光体ドラム表面を露光して前記感光体ドラムに静電潜像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記露光手段により行うことができる。
なお、前記感光体ドラムの裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0216】
<現像手段及び現像工程>
前記現像手段としては、前記感光体ドラムに形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものなどが挙げられる。
前記現像工程としては、前記感光体ドラムに形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記現像手段により行うことができる。
【0217】
前記現像手段は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるものなどが好ましい。
【0218】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記感光体ドラム近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該感光体ドラムの表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該感光体ドラムの表面に該トナーによるトナー像が形成される。
【0219】
−トナー−
前記トナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記トナーの製法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉砕分級法、懸濁重合法、乳化重合法、ポリマー懸濁法などが挙げられる。
前記トナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂を主成分とするバインダー樹脂と、着色剤と、微粒子とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、帯電制御剤、離型剤などのその他の成分を含有するトナーなどが挙げられる。このトナーは、重合法、造粒法などの各種のトナー製法によって作製された不定形又は球形のトナーである。
前記トナーとしては、磁性トナーであってもよいし、非磁性トナーであってもよい。
【0220】
前記トナーの体積平均粒径(Dv)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm〜8μmが好ましく、4μm〜7μmがより好ましく、5μm〜6μmが特に好ましい。ここで、体積平均粒径は、Dv=(Σ(nD)/Σn)1/3(式中、nは粒子個数、Dは粒子径である)と定義される。前記体積平均粒径が、3μm未満であると、二成分現像剤では現像器における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
前記体積平均粒径は、例えば、ベックマン・コールター社製の粒度測定器「マルチサイザーII」を用いて測定することができる。
【0221】
<転写手段及び転写工程>
前記転写手段としては、前記トナー像を記録媒体(転写媒体)に転写する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する転写手段などが挙げられる。
前記転写工程としては、前記トナー像を記録媒体に転写する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、中間転写体を用い、該中間転写体上にトナー像を一次転写した後、該トナー像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、トナー像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
【0222】
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが挙げられる。
【0223】
前記感光体ドラムは、感光体ドラム上に形成されたトナー像を一次転写して色重ねを行い、更に記録媒体へ転写を行う、いわゆる中間転写方式による画像形成を行う際に使用する、中間転写体であってもよい。
【0224】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記感光体ドラム上に形成された前記トナー像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、等が挙げられる。
【0225】
なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0226】
<クリーニング手段及びクリーニング工程>
前記クリーニング手段としては、前記感光体ドラム上に残留する前記トナーを除去する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが挙げられる。
【0227】
前記クリーニング工程としては、前記感光体ドラム上に残留する前記トナーを除去する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記クリーニング手段により行うことができる。
前記クリーニング手段は、転写手段より前記感光体ドラムの回転方向の下流側かつ保護膜形成手段より上流側に設けられることが好ましい。
【0228】
転写後の感光体は、残トナーの他に現像剤や紙粉なども付着しており、これらは次工程の画像形成プロセスで異常画像を引き起こす可能性があるため、前記クリーニング手段の前記クリーニング工程は重要である。残トナーを主とする感光体付着物を良好に除去するには、感光体に当接するクリーニングブレードが有効であり、更に本発明の感光体を用いることによりクリーニング性能はより効果的となる。感光体ドラム表面には、残存トナーの他に、現像剤成分や紙粉、放電生成物等、多くの異物が付着することで汚染され、それが画質に大きく影響する。前記クリーニング手段及び前記クリーニング工程は、それらを除去する役割をも有する。その点では、クリーニングブレードが優れていると考えられる。
【0229】
前記感光体ドラムに前記フランジ部材及び前記保護層を用いることにより、前記クリーニング手段への負荷が低減されて、前記クリーニング手段のめくれ及びエッジ部分の欠けが低減され、これにより、トナーのすり抜けを防止することができる。
【0230】
−クリーニングブレード−
前記クリーニングブレードとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬度(JIS−A硬度/JIS K6253硬さ試験で規定)が70°〜80°が好ましく、72°〜76°がより好ましい。前記硬度が、70°未満であると、軟らかくクリーニングブレード自体が磨耗しやすいために、磨耗により生じる隙間のためにトナーすり抜けが発生し経時でクリーニング性能が劣化することがある。前記硬度が、硬度が80°を超えると、硬いためクリーニングブレードの欠けが生じやすく、経時でクリーニング性能が劣化することがある。
【0231】
前記クリーニングブレードの反発弾性(JIS K6255反発弾性試験で規定)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃において10%〜35%が好ましい。前記反発弾性が、10%未満であると、クリーニングブレードは充分にトナーをせき止められずにすり抜けやすくなってしまうことがある。前記反発弾性が、35%を超えると、ブレードエッジが微小に振動するスティックスリップ運動が激しくなり、ブレードエッジが経時でカケやすくなり、カケた部分からトナーがすり抜けクリーニング性能が劣化することがある。
【0232】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、例えば、保護膜形成手段、除電手段などが挙げられる。
前記その他の工程としては、例えば、保護膜形成工程、除電工程などが挙げられる。
【0233】
−保護膜形成手段及び保護膜形成工程−
前記保護膜形成手段は、前記感光体ドラム表面に保護剤を付与して保護膜を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護剤塗布用ブレードなどが挙げられる。
前記保護膜形成工程は、前記感光体ドラム表面に保護剤を付与して保護膜を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記保護膜形成手段により行うことができる。
【0234】
前記保護剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属石鹸を少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する保護剤などが挙げられる。
前記金属石鹸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
前記その他の成分としては、例えば、窒化ホウ素などが挙げられる。
【0235】
前記保護剤を前記感光体ドラムに塗布する方法としては、例えば、図32に示すように行う。図32に示す画像形成装置において、符号1は、感光体ドラムであり、ドラム形状である。符号2は、帯電手段であり、ローラー帯電方式で示されているが、これに限られるものではなく、例えばコロナ帯電方式等如何なる方式のものでもよい。符号3は、露光手段である。また、符号4は、現像手段、符号5は、転写手段、符号6は、定着手段であり、従来公知の如何なる方式のものでも有効に使用できる。符号8は、クリーニング手段であり、クリーニングブレードを示しているが、これに限定されるものではない。符号9は、除電手段、符号20は、保護膜形成手段である。図32には、保護膜形成工程の一例として、固形の保護剤21を加圧バネ23で加圧し、ファーブラシ22を介して感光体ドラム1表面に保護剤21を塗布する方式が記載されている。
保護剤21は、バー状に成形し固形化したものであり、加圧バネ(押圧力付与機構)23に所定の圧力で押圧され、ファーブラシ22が回転することによって保護剤21が掻き取られ、感光体ドラム1の表面に塗布される。加圧バネ23は、保護剤21が経時で減少しても、ファーブラシ22によって常に同じ量の保護剤21が掻き取られ、感光体ドラム1の表面に供給する点で有利である。
【0236】
−除電手段及び除電工程−
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記感光体ドラムに対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
前記除電工程は、前記感光体ドラムに対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
【0237】
前記感光体ドラムは、振れが小さく高精度であり、耐磨耗性及び耐傷性が高く、クリーニング性の向上が実現されることから、画像面積の大きい画像出力により高い効果を得ることが可能となる。その点では、文字主体ではなく画像主体の原稿、即ちフルカラー画像の印刷に適している。特に、前記感光体ドラムの振れが小さく高精度であり、耐磨耗性及び耐傷性が顕著に高まったことにより、前記感光体ドラム間の差が低減したことにより、複数の感光体ドラムによってフルカラー画像出力を行うタンデム方式の画像形成装置及び画像形成方法に有効に用いられる。即ち、前記画像形成装置は、タンデム方式の画像形成装置として有効に用いることができ、前記画像形成方法は、タンデム方式の画像形成方法として有効に用いることができる。
タンデム方式の画像形成装置は、複数色のトナーを各々独立して保持する現像部に対応してそれと同じ本数の感光体ドラムを具備し、それによって各色の現像を各々独立に平行して処理し、その後各色のトナー像を重ね合わせてフルカラー画像を形成する装置である。具体的には、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色の現像部及び感光体ドラムが具備されており、4回のプロセスを繰り返して出力される従来のシングルドラム方式に比べて、極めて高速なフルカラー印刷を実現している。
【0238】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選択される少なくとも1つの手段と、感光体ドラムとを有し、画像形成装置に着脱可能なものである。
前記感光体ドラムは、本発明の前記感光体ドラムである。
【0239】
図33は、タンデム方式の本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。図33において、符号1C、1M、1Y、1Kはドラム状の感光体ドラムを示している。感光体ドラム1C、1M、1Y、1Kは図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電手段2C、2M、2Y、2K、現像手段4C、4M、4Y、4K、クリーニング手段5C、5M、5Y、5Kが配置されている。
【0240】
帯電手段2C、2M、2Y、2Kと現像手段4C、4M、4Y、4Kの間の感光体ドラム裏面側より、図示しない露光手段からのレーザー光3C、3M、3Y、3Kが照射され、感光体ドラム1C、1M、1Y、1Kに静電潜像が形成される。そして、このような感光体ドラム1C、1M、1Y、1Kを中心とした4つの画像形成要素6C、6M、6Y、6Kが、転写材搬送手段である転写搬送ベルト111に沿って並置されている。転写搬送ベルト111は各画像形成ユニット6C、6M、6Y、6Kの現像手段4C、4M、4Y、4Kとクリーニング手段5C、5M、5Y、5Kの間で感光体ドラム1C、1M、1Y、1Kに当接しており、転写搬送ベルト111の感光体ドラム側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ11C、11M、11Y、11Kが配置されている。各画像形成要素6C、6M、6Y、6Kは現像装置内部のトナーの色が異なっており、その他は全て同様の構成となっている。
【0241】
図33に示す構成の画像形成装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素6C、6M、6Y、6Kにおいて、感光体ドラム1C、1M、1Y、1Kが矢印方向(感光体ドラムと連れ周り方向)に回転する帯電手段2C、2M、2Y、2Kにより帯電され、次に感光体ドラムの外側に配置された露光部(図示しない)でレーザー光3C、3M、3Y、3Kにより、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。次に現像手段4C、4M、4Y、4Kにより静電潜像を現像してトナー像が形成される。現像手段4C、4M、4Y、4Kは、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のトナーで現像を行う現像手段で、4つの感光体ドラム1C、1M、1Y、1K上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙7は給紙コロ112によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ113で一旦停止し、上記感光体ドラム上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト111に送られる。転写搬送ベルト111上に保持された転写紙7は搬送されて、各感光体ドラム1C、1M、1Y、1Kとの当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行なわれる。
【0242】
感光体ドラム上のトナー像は、転写ブラシ11C、11M、11Y、11Kに印加された転写バイアスと感光体ドラム1C、1M、1Y、1Kとの電位差から形成される電界により、転写紙7上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙7は定着手段6に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各感光体ドラム1C、1M、1Y、1K上に残った残留トナーは、クリーニング装置5C、5M、5Y、5Kで回収される。
【0243】
なお、図33の例で1は画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素6C、6M、6Yが停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
【0244】
ここで、前記プロセスカートリッジとしては、図34に示すように、感光体ドラム101を内蔵し、その他として帯電手段102、現像手段104、転写手段106、クリーニング手段107、除電手段(不図示)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
ここで、図34に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、感光体ドラム101は、回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による像露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段104でトナー現像され、該トナー現像は転写手段106により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【実施例】
【0245】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。なお、部はすべて質量部である。
【0246】
(実施例A−1)
<感光体ドラムA−1の作製>
直径60mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、平均厚み3.0μmの下引き層、平均厚み0.2μmの電荷発生層、平均厚み20μmの電荷輸送層を形成した。
【0247】
[下引き層用塗工液]
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、DIC社製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、DIC社製)
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40部
メチルエチルケトン 50部
【0248】
[電荷発生層用塗工液]
下記構造式(I)のチタニルフタロシアニン顔料 1.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1.0部
メチルエチルケトン 80部
【化36】

前記構造式(I)のチタニルフタロシアニン顔料のX線回折結果を図35に示す。測定条件は、以下のとおりである。
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧 :50kV
電流 :30mA
走査速度:2°/分間
走査範囲:3°〜40°
時定数 :2秒間
【0249】
[電荷輸送層用塗工液]
ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成社製)
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質 10部
テトラヒドロフラン 100部
1質量%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業社製)
【化37】

【0250】
[保護層用塗工液]
ビスフェノールZ型ポリカーボネート 4部
(パンライトTS2050、帝人化成社製)
アルミナ 3部
(スミコランダムAA03、平均一次粒径:0.3μm、住友化学工業社製)
テトラヒドロフラン 170部
シクロヘキサノン 50部
上記の処方で調製した保護層用塗工液をスプレーにて電荷輸送層上に塗工した。スプレーガンには明治機械製作所製A100を用いて塗工した。下記にスプレー塗布の条件を示す。
ノズル−スリーブ間距離:50mm
霧化エア圧 :1.0kg/cm
エアー流量 :17.0L/min
吐出量 :0.06mL/s
スプレーガンの移動速度:3.5mm/s
ドラム回転数 :180rpm
指触乾燥時間 :3分間
なお、本明細書において、1kg/cmは、98.07kPaである。
保護層用塗工液を塗工後、130℃20分間の乾燥を加え、平均厚み3μmの保護層を設けた。
【0251】
上記で感光層及び保護層を設けたスリーブに、図7A及び図7B(以下「図7」と称す。)に示されるフランジ部材を、圧入(圧入時間:5秒間)によりアルミニウムドラムの開口部に装着して感光体ドラムA−1を作製した。フランジの材質としては、ポリカーボネートを使用した。
【0252】
(実施例A−2)
<感光体ドラムA−2の作製>
実施例A−1において、保護層形成時のスプレーの霧化エア圧を0.9kg/cmに変えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−2を作製した。
【0253】
(実施例A−3)
<感光体ドラムA−3の作製>
実施例A−1において、保護層形成時のスプレーの霧化エア圧を0.8kg/cmに変えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−3を作製した。
【0254】
(実施例A−4)
<感光体ドラムA−4の作製>
実施例A−1において、保護層形成時のスプレーの霧化エア圧を0.7kg/cmに変えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−4を作製した。
【0255】
(実施例A−5)
<感光体ドラムA−5の作製>
実施例A−1において、保護層形成時のスプレーの霧化エア圧を0.6kg/cmに変えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−5を作製した。
【0256】
(実施例A−6)
<感光体ドラムA−6の作製>
実施例A−1において、保護層用塗工液の溶媒量を54部(テトラヒドロフラン36部、シクロヘキサノン18部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を7.0mm/sとした以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−6を作製した。
【0257】
(実施例A−7)
<感光体ドラムA−7の作製>
実施例A−6において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.9kg/cmに変えた以外は、実施例A−6と同様にして、感光体ドラムA−7を作製した。
【0258】
(実施例A−8)
<感光体ドラムA−8の作製>
実施例A−6において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.8kg/cmに変えた以外は、実施例A−6と同様にして、感光体ドラムA−8を作製した。
【0259】
(実施例A−9)
<感光体ドラムA−9の作製>
実施例A−3において、保護層用塗工液のフィラーをシリカ微粒子(KMPX−100、平均一次粒径:0.1μm、信越化学工業社製)に代えた以外は、実施例A−3と同様にして、感光体ドラムA−9を作製した。
【0260】
(実施例A−10)
<感光体ドラムA−10の作製>
実施例A−3において、保護層用塗工液に下記材料を添加した以外は、実施例A−3と同様にして、感光体ドラムA−10を作製した。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー: 10部
ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬製、分子量:1,947、官能基数:6官能)
【0261】
(実施例A−11)
<感光体ドラムA−11の作製>
実施例A−3において、保護層用塗工液のフィラーをアルミナ微粒子(スミコランダムAA07、平均一次粒径:0.7μm、住友化学社製)に代えた以外は、実施例A−3と同様にして、感光体ドラムA−11を作製した。
【0262】
(実施例A−12)
<感光体ドラムA−12の作製>
実施例A−3において、保護層用塗工液のフィラーをエポスターS6(メラミン・ホルムアルデヒド縮合有機微粒子、平均一次粒径:0.6μm、日本触媒社製)に代えた以外は、実施例A−3と同様にして、感光体ドラムA−12を作製した。
【0263】
(実施例A−13)
<感光体ドラムA−13の作製>
実施例A−3において、保護層用塗工液の光重合開始剤を以下の熱重合開始剤に代え、保護層用塗工液の溶媒量を34部(テトラヒドロフラン20部、シクロペンタノン14部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を1.0kg/cm、霧化エア流量を15.0L/minに変え、スプレー塗工後は紫外線照射を行わずに130℃30分の乾燥を行った以外は、実施例A−3と同様にして、感光体ドラムA−13を作製した。
熱重合開始剤
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン
(パーカドックス 12−EB20、化薬アクゾ社製)
【0264】
(実施例A−14)
<感光体ドラムA−14の作製>
実施例A−3において、保護層用塗工液の溶媒の量をそれぞれ半分にし、代わりにアセトンを混合した以外は、実施例A−3と同様にして、感光体ドラムA−14を作製した。
【0265】
(実施例A−15)
<感光体ドラムA−15の作製>
実施例A−1において、保護層用塗工液の溶媒量を54部(テトラヒドロフラン36部、シクロヘキサノン18部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を10.0mm/sとした以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−15を作製した。
【0266】
(実施例A−16)
<感光体ドラムA−16の作製>
実施例A−1において、フランジ部材を、図9で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−16を作製した。
【0267】
(実施例A−17)
<感光体ドラムA−17の作製>
実施例A−1において、フランジ部材を、図10で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−17を作製した。
【0268】
(実施例A−18)
<感光体ドラムA−18の作製>
実施例A−1において、フランジ部材を、図16で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−18を作製した。
【0269】
(実施例A−19)
<感光体ドラムA−19の作製>
実施例A−1において、フランジ部材を、図14で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−19を作製した。
【0270】
(実施例A−20)
<感光体ドラムA−20の作製>
実施例A−1において、フランジ部材を、図18で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムA−20を作製した。
【0271】
(実施例B−1)
<感光体ドラムB−1の作製>
実施例A−1において、保護層の形成の際に下記保護層用塗工液を下記塗工条件で塗工した以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムB−1を作製した。
[保護層用塗工液]
70ccのガラスポットに直径5mmのアルミナボールを入れ、更に下記のフィラー、ポリカルボン酸化合物及びシクロペンタノンを入れ、ボールミルにより24時間分散(150rpm)してフィラーを分散させた。その後、テトラヒドロフランを添加して撹拌することによって得られたミルベース(下記配合)と、その他の材料を予め混合した溶液とを混合することによって保護層用塗工液を作製した。
(ミルベース)
アルミナ 8部
(スミコランダムAA03、平均一次粒径:0.3μm、住友化学工業社製)
ポリカルボン酸化合物 0.2部
(低分子量不飽和ポリカルボン酸ポリマー溶液、
BYK−P104、不揮発分 50質量%、BYKケミー社製)
シクロペンタノン 8部
テトラヒドロフラン 12部
(保護層用塗工液)
ミルベース 6.5部
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製、分子量:296、官能基数:3官能)
光重合開始剤 1部
(イルガキュア184、日本化薬社製、分子量:204)
レベリング剤 0.2部
(BYK−UV3570、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 115部
上記の処方で調製した保護層用塗工液をスプレーにて電荷輸送層上に塗工した。スプレーガンには明治機械製作所製A100を用いて塗工した。下記にスプレー塗布の条件を示す。
ノズル−スリーブ間距離:50mm
霧化エア圧 :1.0kg/cm
エアー流量 :17.0L/min
吐出量 :0.06mL/s
スプレーガンの移動速度:3.5mm/s
ドラム回転数 :180rpm
指触乾燥時間 :3分間
保護層用塗工液を塗工後、紫外線照射装置(Fusion社製、UVランプシステム)を用い、スリーブを30rpmで回転させながら紫外線照射を行い、硬化させた。紫外線照射のランプにはVバルブを使用し、紫外線ランプと感光体表面の距離を53mm、照射強度を500mW/cmとし、60秒間の紫外線照射を行い、塗布膜を硬化させた。紫外線照射後は、130℃20分間の乾燥を加え、平均厚み3μmの保護層を設けた。
【0272】
(実施例B−2)
<感光体ドラムB−2の作製>
実施例B−1において、保護層形成時のスプレーの霧化エア圧を0.9kg/cmに変えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−2を作製した。
【0273】
(実施例B−3)
<感光体ドラムB−3の作製>
実施例B−1において、保護層形成時のスプレーの霧化エア圧を0.8kg/cmに変えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−3を作製した。
【0274】
(実施例B−4)
<感光体ドラムB−4の作製>
実施例B−1において、保護層形成時のスプレーの霧化エア圧を0.7kg/cmに変えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−4を作製した。
【0275】
(実施例B−5)
<感光体ドラムB−5の作製>
実施例B−1において、保護層形成時のスプレーの霧化エア圧を0.6kg/cmに変えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−5を作製した。
【0276】
(実施例B−6)
<感光体ドラムB−6の作製>
実施例B−1において、保護層用塗工液の溶媒量を54部(テトラヒドロフラン36部、シクロペンタノン18部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を7.0mm/sとした以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−6を作製した。
【0277】
(実施例B−7)
<感光体ドラムB−7の作製>
実施例B−6において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.9kg/cmに変えた以外は、実施例B−6と同様にして、感光体ドラムB−7を作製した。
【0278】
(実施例B−8)
<感光体ドラムB−8の作製>
実施例B−6において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.8kg/cmに変えた以外は、実施例B−6と同様にして、感光体ドラムB−8を作製した。
【0279】
(実施例B−9)
<感光体ドラムB−9の作製>
実施例B−3において、保護層用塗工液のフィラーをシリカ微粒子(KMPX−100、平均一次粒径:0.1μm、信越化学工業社製)に代えた以外は、実施例B−3と同様にして、感光体ドラムB−9を作製した。
【0280】
(実施例B−10)
<感光体ドラムB−10の作製>
実施例B−3において、保護層用塗工液の電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記材料に代えた以外は、実施例B−3と同様にして、感光体ドラムB−10を作製した。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー
ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製、分子量:1,947、官能基数:6官能)
【0281】
(実施例B−11)
<感光体ドラムB−11の作製>
実施例B−3において、保護層用塗工液のフィラーをアルミナ微粒子(スミコランダムAA07、平均一次粒径:0.7μm、住友化学社製)に代えた以外は、実施例B−3と同様にして、感光体ドラムB−11を作製した。
【0282】
(実施例B−12)
<感光体ドラムB−12の作製>
実施例B−3において、保護層用塗工液のフィラーをエポスターS6(メラミン・ホルムアルデヒド縮合有機微粒子、平均一次粒径:0.6μm、日本触媒社製)に代えた以外は、実施例B−3と同様にして、感光体ドラムB−12を作製した。
【0283】
(実施例B−13)
<感光体ドラムB−13の作製>
実施例B−3において、保護層用塗工液の光重合開始剤を以下の熱重合開始剤に代え、保護層用塗工液の溶媒量を34部(テトラヒドロフラン20部、シクロペンタノン14部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を1.0kg/cm、霧化エア流量を15.0L/minに変え、スプレー塗工後は紫外線照射を行わずに130℃30分間の乾燥を行った以外は、実施例B−3と同様にして、感光体ドラムB−13を作製した。
熱重合開始剤
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン
(パーカドックス 12−EB20、化薬アクゾ社製)
【0284】
(実施例B−14)
<感光体ドラムB−14の作製>
実施例B−3において、保護層用塗工液の溶媒の量をそれぞれ半分にし、代わりにアセトンを混合した以外は、実施例B−3と同様にして、感光体ドラムB−14を作製した。
【0285】
(実施例B−15)
<感光体ドラムB−15の作製>
実施例B−1において、保護層用塗工液の溶媒量を54部(テトラヒドロフラン36部、シクロペンタノン18部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を10.0mm/sとした以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−15を作製した。
【0286】
(実施例B−16)
<感光体ドラムB−16の作製>
実施例B−1において、フランジ部材を、図9で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−16を作製した。
【0287】
(実施例B−17)
<感光体ドラムB−17の作製>
実施例B−1において、フランジ部材を、図10で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−17を作製した。
【0288】
(実施例B−18)
<感光体ドラムB−18の作製>
実施例B−1において、フランジ部材を、図16で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−18を作製した。
【0289】
(実施例B−19)
<感光体ドラムB−19の作製>
実施例B−1において、フランジ部材を、図14で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−19を作製した。
【0290】
(実施例B−20)
<感光体ドラムB−20の作製>
実施例B−1において、フランジ部材を、図18で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムB−20を作製した。
【0291】
(実施例C−1)
<感光体ドラムC−1の作製>
実施例A−1において、保護層の形成の際に下記保護層用塗工液を下記塗工条件で塗工した以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムC−1を作製した。
[保護層用塗工液]
70ccのガラスポットに直径5mmのアルミナボールを入れ、更に下記のフィラー、ポリカルボン酸化合物及びシクロペンタノンを入れ、ボールミルにより24時間分散(150rpm)してフィラーを分散させた。その後、テトラヒドロフランを添加して撹拌することによって得られたミルベース(下記配合)と、その他の材料を予め混合した溶液とを混合することによって保護層用塗工液を作製した。
(ミルベース)
アルミナ 8部
(スミコランダムAA03、平均一次粒径:0.3μm、住友化学工業社製)
ポリカルボン酸化合物 0.2部
(低分子量不飽和ポリカルボン酸ポリマー溶液、
BYK−P104、不揮発分 50質量%、BYKケミー社製)
シクロペンタノン 8部
テトラヒドロフラン 12部
(保護層用塗工液)
ミルベース 6.5部
下記構造式の、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
【化38】

電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製、分子量:296、官能基数:3官能)
光重合開始剤 1部
(イルガキュア184、日本化薬社製、分子量:204)
レベリング剤 0.2部
(BYK−UV3570、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 115部
上記の処方で調製した保護層用塗工液をスプレーにて電荷輸送層上に塗工した。スプレーガンには明治機械製作所製A100を用いて塗工した。下記にスプレー塗布の条件を示す。
ノズル−スリーブ間距離:50mm
霧化エア圧 :1.0kg/cm
エアー流量 :17.0L/min
吐出量 :0.06mL/s
スプレーガンの移動速度:3.5mm/s
ドラム回転数 :180rpm
指触乾燥時間 :3分間
保護層用塗工液を塗工後、紫外線照射装置(Fusion社製、UVランプシステム)を用い、スリーブを30rpmで回転させながら紫外線照射を行い、硬化させた。紫外線照射のランプにはVバルブを使用し、紫外線ランプと感光体表面の距離を53mm、照射強度を500mW/cmとし、60秒間の紫外線照射を行い、塗布膜を硬化させた。紫外線照射後は、130℃20分間の乾燥を加え、平均厚み3μmの保護層を設けた。
(実施例C−2)
<感光体ドラムC−2の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.9kg/cmに変えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−2を作製した。
【0292】
(実施例C−3)
<感光体ドラムC−3の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.8kg/cmに変えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−3を作製した。
【0293】
(実施例C−4)
<感光体ドラムC−4の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.7kg/cmに変えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−4を作製した。
【0294】
(実施例C−5)
<感光体ドラムC−5の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.6kg/cmに変えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−5を作製した。
【0295】
(実施例C−6)
<感光体ドラムC−6の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液の溶媒量を54部(テトラヒドロフラン36部、シクロペンタノン18部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を7.0mm/sとした以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−6を作製した。
【0296】
(実施例C−7)
<感光体ドラムC−7の作製>
実施例C−6において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.9kg/cmに変えた以外は、実施例C−6と同様にして、感光体ドラムC−7を作製した。
【0297】
(実施例C−8)
<感光体ドラムC−8の作製>
実施例C−6において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.8kg/cmに変えた以外は、実施例C−6と同様にして、感光体ドラムC−8を作製した。
【0298】
(実施例C−9)
<感光体ドラムC−9の作製>
実施例C−3において、保護層用塗工液のフィラーをシリカ微粒子(KMPX−100、平均一次粒径:0.1μm、信越化学工業社製)に代えた以外は、実施例C−3と同様にして、感光体ドラムC−9を作製した。
【0299】
(実施例C−10)
<感光体ドラムC−10の作製>
実施例C−3において、保護層用塗工液の電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記材料に代えた以外は、実施例C−3と同様にして、感光体ドラムC−10を作製した。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー
ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製、分子量:1,947、官能基数:6官能)
【0300】
(実施例C−11)
<感光体ドラムC−11の作製>
実施例C−3において、保護層用塗工液のフィラーをアルミナ微粒子(スミコランダムAA07、平均一次粒径:0.7μm、住友化学社製)に代えた以外は、実施例C−3と同様にして、感光体ドラムC−11を作製した。
【0301】
(実施例C−12)
<感光体ドラムC−12の作製>
実施例C−3において、保護層用塗工液のフィラーをエポスターS6(メラミン・ホルムアルデヒド縮合有機微粒子、平均一次粒径:0.6μm、日本触媒社製)に代えた以外は、実施例C−3と同様にして、感光体ドラムC−12を作製した。
【0302】
(実施例C−13)
<感光体ドラムC−13の作製>
実施例C−3において、保護層用塗工液の光重合開始剤を以下の熱重合開始剤に代え、保護層用塗工液の溶媒を34部(テトラヒドロフラン20部、シクロペンタノン14部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を1.0kg/cm、霧化エア流量を15.0L/minに変え、スプレー塗工後は紫外線照射を行わずに130℃30分間の乾燥を行った以外は、実施例C−3と同様にして、感光体ドラムC−13を作製した。
熱重合開始剤
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン
(パーカドックス 12−EB20、化薬アクゾ社製)
【0303】
(実施例C−14)
<感光体ドラムC−14の作製>
実施例C−3において、保護層用塗工液の溶媒の量をそれぞれ半分にし、代わりにアセトンを混合した以外は、実施例C−3と同様にして、感光体ドラムC−14を作製した。
【0304】
(実施例C−15)
<感光体ドラムC−15の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液の溶媒量を54部(テトラヒドロフラン36部、シクロペンタノン18部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を10.0mm/sとした以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−15を作製した。
【0305】
(実施例C−16)
<感光体ドラムC−16の作製>
実施例C−1において、フランジ部材を、図9で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−16を作製した。
【0306】
(実施例C−17)
<感光体ドラムC−17の作製>
実施例C−1において、フランジ部材を、図10で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−17を作製した。
【0307】
(実施例C−18)
<感光体ドラムC−18の作製>
実施例C−1において、フランジ部材を、図16で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−18を作製した。
【0308】
(実施例C−19)
<感光体ドラムC−19の作製>
実施例C−1において、フランジ部材を、図14で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−19を作製した。
【0309】
(実施例C−20)
<感光体ドラムC−20の作製>
実施例C−1において、フランジ部材を、図18で示されるフランジ部材に代えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムC−20を作製した。
【0310】
(比較例D−1〜D−14)
<感光体ドラムD−1〜D−14の作製>
実施例A−1〜A−14において、フランジ部材を図30A及び図30B(以下「図30」と称することがある)のフランジ部材に代えた以外は、実施例A−1〜A−14とそれぞれ同様にして、感光体ドラムD−1〜D−14を作製した。
【0311】
(比較例D−15)
<感光体ドラムD−15の作製>
実施例A−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を1.1kg/cmに変えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムD−15を作製した。
【0312】
(比較例D−16)
<感光体ドラムD−16の作製>
実施例A−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を1.3kg/cmに変えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムD−16を作製した。
【0313】
(比較例D−17)
<感光体ドラムD−17の作製>
実施例A−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.5kg/cmに変えた以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムD−17を作製した。
【0314】
(比較例D−18)
<感光体ドラムD−18の作製>
実施例A−1において、保護層用塗工液の溶媒量を54部(テトラヒドロフラン36部、シクロヘキサノン18部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を7.0mm/s、霧化エア圧を0.6kg/cmとした以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムD−18を作製した。
【0315】
(比較例D−19)
<感光体ドラムD−19の作製>
実施例A−1において、保護層用塗工液の溶媒量を208部(テトラヒドロフラン120部、シクロヘキサノン88部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を2.3mm/s、霧化エア圧を0.5kg/cmとした以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムD−19を作製した。
【0316】
(比較例D−20)
<感光体ドラムD−20の作製>
実施例A−1において、保護層用塗工液の溶媒量を208部(テトラヒドロフラン120部、シクロヘキサノン88部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を2.3mm/s、霧化エア圧を1.3kg/cmとした以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムD−20を作製した。
【0317】
(比較例D−21)
<感光体ドラムD−21の作製>
実施例A−1において、保護層用塗工液にフィラーを配合しなかった以外は、実施例A−1と同様にして、感光体ドラムD−21を作製した。
【0318】
(比較例D−22)
<感光体ドラムD−22の作製>
実施例A−2において、保護層用塗工液にフィラーを配合しなかった以外は、実施例A−2と同様にして、感光体ドラムD−22を作製した。
【0319】
(比較例E−1〜E−14)
<感光体ドラムE−1〜E−14の作製>
実施例B−1〜B−14において、フランジ部材を図30A及び図30Bのフランジ部材に代えた以外は、実施例B−1〜B−14とそれぞれ同様にして、感光体ドラムE−1〜E−14を作製した。
【0320】
(比較例E−15)
<感光体ドラムE−15の作製>
実施例B−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を1.1kg/cmに変えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムE−15を作製した。
【0321】
(比較例E−16)
<感光体ドラムE−16の作製>
実施例B−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を1.3kg/cmに変えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムE−16を作製した。
【0322】
(比較例E−17)
<感光体ドラムE−17の作製>
実施例B−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.5kg/cmに変えた以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムE−17を作製した。
【0323】
(比較例E−18)
<感光体ドラムE−18の作製>
実施例B−1において、保護層用塗工液の溶媒量を54部(テトラヒドロフラン36部、シクロペンタノン18部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を7.0mm/s、霧化エア圧を0.6kg/cmとした以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムE−18を作製した。
【0324】
(比較例E−19)
<感光体ドラムE−19の作製>
実施例B−1において、保護層用塗工液の溶媒量を208部(テトラヒドロフラン120部、シクロペンタノン88部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を2.3mm/s、霧化エア圧を0.5kg/cmとした以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムE−19を作製した。
【0325】
(比較例E−20)
<感光体ドラムE−20の作製>
実施例B−1において、保護層用塗工液の溶媒量を208部(テトラヒドロフラン120部、シクロペンタノン88部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を2.3mm/s、霧化エア圧を1.3kg/cmとした以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムE−20を作製した。
【0326】
(比較例E−21)
<感光体ドラムE−21の作製>
実施例B−1において、保護層用塗工液にフィラーを配合しなかった以外は、実施例B−1と同様にして、感光体ドラムE−21を作製した。
【0327】
(比較例E−22)
<感光体ドラムE−22の作製>
実施例B−2において、保護層用塗工液にフィラーを配合しなかった以外は、実施例B−2と同様にして、感光体ドラムE−22を作製した。
【0328】
(比較例F−1〜F−14)
<感光体ドラムF−1〜F−14の作製>
実施例C−1〜C−14において、フランジ部材を図30A及び図30Bのフランジ部材に代えた以外は、実施例C−1〜C−14とそれぞれ同様にして、感光体ドラムF−1〜F−14を作製した。
【0329】
(比較例F−15)
<感光体ドラムF−15の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を1.1kg/cmに変えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムF−15を作製した。
【0330】
(比較例F−16)
<感光体ドラムF−16の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を1.3kg/cmに変えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムF−16を作製した。
【0331】
(比較例F−17)
<感光体ドラムF−17の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液をスプレー塗工する時の霧化エア圧を0.5kg/cmに変えた以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムF−17を作製した。
【0332】
(比較例F−18)
<感光体ドラムF−18の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液の溶媒量を54部(テトラヒドロフラン36部、シクロペンタノン18部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を7.0mm/s、霧化エア圧を0.6kg/cmとした以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムF−18を作製した。
【0333】
(比較例F−19)
<感光体ドラムF−19の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液の溶媒量を208部(テトラヒドロフラン120部、シクロペンタノン88部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を2.3mm/s、霧化エア圧を0.5kg/cmとした以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムF−19を作製した。
【0334】
(比較例F−20)
<感光体ドラムF−20の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液の溶媒量を208部(テトラヒドロフラン120部、シクロペンタノン88部)とし、保護層用塗工液をスプレー塗工する時のオシレート速度(スプレーガンの移動速度)を2.3mm/s、霧化エア圧を1.3kg/cmとした以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムF−20を作製した。
【0335】
(比較例F−21)
<感光体ドラムF−21の作製>
実施例C−1において、保護層用塗工液にフィラーを配合しなかった以外は、実施例C−1と同様にして、感光体ドラムF−21を作製した。
【0336】
(比較例F−22)
<感光体ドラムF−22の作製>
実施例C−2において、保護層用塗工液にフィラーを配合しなかった以外は、実施例C−2と同様にして、感光体ドラムF−22を作製した。
【0337】
<評価>
作製した感光体ドラムについて、以下の評価を行った。
【0338】
<<算術平均うねりWa及び輪郭曲線要素の平均長さWSmの測定>>
保護層の算術平均うねりWa及び輪郭曲線要素の平均長さWSmは、東京精密社製の表面粗さ計サーフコム1400Dを用い、ろ波中心線うねり測定、測定長さ12.5mm、カットオフ波長0.25mm〜2.5mm、測定速度0.6mm/sで断面曲線を測定し、カットオフ種別は、ガウシアン補正、傾斜補正は最小二乗法直線近似を選択した。測定点は感光体の長手方向の上端、中央、下端の3点、周方向90°おきに4点の計12点の測定を行い、12点の平均値を値とした。なお、測定方向は、前記感光体ドラムの軸方向である。
結果を表1−1〜表1−3に示す。
【0339】
【表1−1】

【0340】
【表1−2】

【0341】
【表1−3】

【0342】
<<感光体ドラムの振れ>>
感光体ドラムの振れを評価した。
感光体ドラムの振れとは、感光体ドラムの回転軸を中心に感光体ドラムを回転させたときの、感光体ドラムの表面に対向する固定された基準位置から感光体ドラム表面までの距離の変位幅であり、感光体ドラムが一回転する間の前記基準位置から感光体ドラム表面までの距離の最大値から最小値を引いた値である。
この「振れ」の値は、感光体ドラムの両端部の軸中心を合わせ、把持し、回転させる機構を備えた設備と、レーザー測定器(KEYENCE社製、型番:LS−7030)とを使用して測定した。具体的には、図36A及び図36Bに示す装置を用いて測定した。図36A及び図36Bは、感光体ドラムの振れの測定に用いた装置の概略説明図であり、図36Aは上面図、図36Bは側面図である。
図36Bに示すように、レーザー測定器は、感光体ドラムの下端と基準位置との間の隙間に対して上下方向の幅が充分に広い照射光Laを投光側から照射する。この照射光Laのうち、感光体ドラムの下端と基準位置との間の隙間を通過した通過光Lbが受光側で受光され、この通過光Lbの上下方向の幅(以下、上下幅Gと呼ぶ)を測定することで感光体ドラム表面までの距離の値を検出することができる。更に、上下幅Gの感光体ドラム一周分の値を、感光体ドラムの軸方向に等間隔(約50mm間隔)で配置した7台のレーザー測定器でそれぞれ測定し、全ての上下幅Gの値のうちの最大値と最小値との差を「振れ」の値とした。結果を表2−1〜表2−3に示す。
なお、振れの測定は、ランニング試験による初期、及び100万枚印刷後の感光体ドラムについて行った。ランニング試験は、以下の画像評価の試験で行ったランニング試験である。
【0343】
<<磨耗量、及び画像評価>>
感光体ドラムについて、磨耗量の評価、及び画像評価を行った。
画像評価及び通紙ランニングは、上記感光体ドラムをプロセスカートリッジに装着した、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段、クリーニング手段、潤滑性物質塗布手段、及び除電手段を搭載した株式会社リコー製デジタルフルカラー複写機(タンデム方式、imagio MP C7501)の改造機を用いた。
帯電手段は、ブラックステーションにスコロトロンチャージャーを用い、マゼンダ、シアン、イエローの各ステーションには、近接配置型の帯電ローラーを用いた。帯電ローラーには直径10mmの硬質樹脂ローラーを用い、感光体ドラムとのギャップを50μmに調整した。帯電条件としては、−600VのDC成分に、AC成分としてVppが3kV、周波数が1.5kHzの正弦波を重畳した交番電界を印加した。
露光手段には波長が655nmの半導体レーザーを用いた。
現像手段に充填されるトナーには、株式会社リコー製のimagio MP PトナーC7501を用いた。
転写手段には中間転写ベルトを用いた。
クリーニング手段にはブレードを用い、かつブレードは感光体ドラムの回転方向に対してカウンター方向に当接した。
潤滑性物質としては、ステアリン酸亜鉛をバー状に固化したものを用い、図32の如く加圧バネ及びファーブラシを取り付け、ステアリン酸亜鉛がファーブラシで掻き取られ、感光体ドラム表面に供給する構成とした。更に、ステアリン酸亜鉛が感光体ドラム表面に付着した後、ステアリン酸亜鉛が過剰に付着しないように、また感光体ドラム表面に均一に塗布されるように塗布ブレードを設けた。塗布ブレードは、感光体ドラムの回転方向に対してトレーリング方向に当接した。
【0344】
初期、50万枚印刷後、及び100万枚印刷後に画像評価を実施した。
また、50万枚印刷後、及び100万枚印刷後に磨耗量と偏磨耗を評価した。
【0345】
磨耗量とは、初期の感光体ドラムの厚みと各画像評価における印刷後の感光体ドラムの厚みとの差である。磨耗量は、感光体ドラムの長手方向(軸方向)に等間隔(約8mm間隔)で40ヶ所、周方向に等間隔で4ヶ所(合計160ヶ所)の磨耗量を測定した結果の平均値として求めた。また、偏磨耗は、各測定位置による測定結果の最大磨耗量と最少磨耗量との差から求めた。結果を表2−1〜表2−3に示す。
【0346】
評価画像にはISO/JIS−SCID画像N1(ポートレート)を用い、濃度ムラを下記評価基準で評価した。結果を表2−1〜表2−3に示す。
5:濃度ムラ無し
4:濃度ムラはあるが、特に画像として影響無し
3:画像ムラが全ての画像で許容できる限界
2:濃度ムラが許容できる場合とできない場合が画像によって分かれる
1:濃度ムラが全ての画像で許容できない
ただし、今回の評価は、オフセット印刷画像を基準としている。そのため、通常の電子写真画像の評価よりも厳しい評価となっている。
【0347】
<<クリーニングブレード傷評価>>
クリーニング不良の起こりやすい10℃15%RH環境下において画像濃度100%の画像で100万枚の通紙を行い、画像形成を行った。画像形成装置には、前記画像評価において用いた画像形成装置を用い、転写紙は、NBSリコー製MyPaperA4を使用し、トナー及びクリーニングブレードは純正のものを使用した。また、プロセスカートリッジからクリーニングブレードを取り出し、ブレードのエッジ部分を顕微鏡で観察し、エッジ部分の傷の評価を行い、下記の評価基準で評価した。結果を表2−1〜表2−3に示す。
◎:傷なし
○:小さな傷あり(画像に影響なし)
△:傷あり(画像に影響あり)
×:大きな傷あり(画像に影響あり)
【0348】
【表2−1】

【0349】
【表2−2】

【0350】
【表2−3】

【0351】
以上の結果より、実施例と比較例とを比べると、保護層が、少なくともフィラーを含有し、該保護層の表面が、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.050μm〜0.400μmでかつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.500mm〜1.500mmであり、連結部に衝撃吸収穴を有するフランジ部材を用いた実施例は、10℃15%RH環境での通紙試験においてもクリーニングブレードにほとんど傷は見られず、オフセット印刷画像を基準とした濃度ムラの異常画像の発生も認められなかった。また、実施例A−15、B−15、及びC−15では、オシレ−ト速度を速くすることで生産性の向上も達成できることが確認された。
【0352】
一方、連結部に衝撃吸収穴を有しないフランジ部材を使用した比較例D1〜D14、E−1〜E−14、及びF−1〜F−14は、初期の評価において、振れが大きくかつ画像ムラの点で劣ることが確認された。
【0353】
以上のことから、本発明の感光体ドラムは、今後展開されていくプロダクションプリンティング分野での要求画像レベルであるオフセット印刷画像品質にも対応できることが確認された。
【0354】
また、算術平均うねりWa、及び輪郭曲線要素の平均長さWSmの一方又はその両方が、特定の範囲を満たさない比較例D15〜D21、E−15〜E−21、及びF−15〜F−21は、クリーニングブレードの傷が発生するものや、画像濃度ムラが発生していた。
また、フィラーを含有していないものでは、画像濃度ムラが初期から発生しており、また通紙後においてクリーニングブレードの劣化が見られた。
【0355】
また、フランジ部材の連結部の衝撃吸収穴の数の効果を実施例A1と実施例A16〜A20、実施例B−1と実施例B−16〜B−20、実施例C−1と実施例C−16〜C−20で比較検討を実施した。前記連結部が、前記仮想平面において前記軸穴の中心位置からの距離が同じ位置となる同一円周上に配置された前記衝撃吸収穴を4以上有することは、更に画像濃度ムラに効果があることが確認された。前記連結部が、前記仮想平面において前記軸穴の中心位置から前記仮想投影円の円周上に引いた任意の仮想線分上に前記衝撃吸収穴を2以上有することについても、更に画像濃度ムラに効果があることが確認された。
【0356】
実施例A−1〜A−20、実施例B−1〜B−20及び実施例C−1〜C−20の比較により、前記保護層が前記硬化樹脂を含有することや、前記硬化樹脂が、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物とを硬化させてなることで膜の削れや偏磨耗に大きな効果があることも確認された。
また、フィラーの種類による効果も明確になった。
【0357】
以上の検討結果をまとめると、本発明の感光体ドラム、並びに前記感光体ドラムを用いた画像形成装置、画像形成方法、及びプロセスカートリッジにより、プロダクションプリンティング分野において要求されるオフセット印刷と同等な高品質の画像を提供できることがわかった。
【0358】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
<1> 中空円筒形スリーブ部材と、
前記中空円筒形スリーブ部材の外周面上に順次積層された感光層及び保護層と、
前記中空円筒形スリーブ部材の軸方向の端部の端部開口部に装着されたフランジ部材とを有し、
前記保護層が、フィラーを含有し、
前記保護層の表面が、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.050μm〜0.400μmであり、かつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.500mm〜1.500mmであり、
前記フランジ部材が、前記中空円筒形スリーブ部材の軸方向の端部の端部開口部に装着可能な装着部と、前記装着部が前記端部開口部に装着された状態で前記中空円筒形スリーブ部材の中心軸となる位置に軸部材が挿入される軸穴が設けられた軸穴部と、前記中空円筒形スリーブ部材の円形断面に平行な方向に延在し、前記装着部に前記軸穴部を連結する連結部とを有し、
前記連結部が、前記連結部を含みかつ前記軸方向に直交する仮想平面に対して前記装着部の外周面を前記軸方向に沿って投影させた仮想投影円の円周上から前記軸穴部まで引いた任意の仮想線分上に、少なくとも1つの衝撃吸収穴を備えることを特徴とする感光体ドラムである。
<2> 保護層が、硬化樹脂を含有する前記<1>に記載の感光体ドラムである。
<3> 硬化樹脂が、電荷輸送性構造を有する重合性化合物と、電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物とを硬化させてなる前記<2>に記載の感光体ドラム。
<4> フィラーが、無機フィラーである前記<1>から<3>のいずれかに記載の感光体ドラム。
<5> 無機フィラーが、アルミナである前記<4>に記載の感光体ドラムである。
<6> 連結部が、仮想平面において軸穴の中心位置からの距離が同じ位置となる同一円周上に配置された衝撃吸収穴を4以上有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の感光体ドラムである。
<7> 連結部が、仮想平面において軸穴の中心位置から仮想投影円の円周上に引いた任意の仮想線分上に衝撃吸収穴を2以上有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の感光体ドラムである。
<8> 感光体ドラムと、前記感光体ドラム表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体ドラム表面を露光して前記感光体ドラムに静電潜像を形成する露光手段と、前記感光体ドラムに形成された前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記感光体ドラム表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段とを有し、
前記感光体ドラムが、前記<1>から<7>のいずれかに記載の感光体ドラムであることを特徴とする画像形成装置である。
<9> 感光体ドラム表面を帯電させる帯電工程と、帯電された前記感光体ドラム表面を露光して前記感光体ドラムに静電潜像を形成する露光工程と、前記感光体ドラムに形成された前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記感光体ドラム表面に残留するトナーを除去するクリーニング工程とを含み、
前記感光体ドラムが、前記<1>から<7>のいずれかに記載の感光体ドラムであることを特徴とする画像形成方法である。
<10> 帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選択される少なくとも1つの手段と、感光体ドラムとを有し、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
前記感光体ドラムが、前記<1>から<7>のいずれかに記載の感光体ドラムであることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【符号の説明】
【0359】
1 感光体ドラム
1C、1M、1Y、1K 感光体ドラム
2C、2M、2Y、2K 帯電手段
4C、4M、4Y、4K 現像手段
5C、5M、5Y、5K クリーニング手段
2 帯電手段
3 露光手段
4 現像手段
5 転写手段
8 クリーニング手段
31 保護層
32 中空円筒形スリーブ部材
35 フランジ部材
101 感光体ドラム
102 帯電手段
104 現像手段
106 転写手段
107 クリーニング手段
312 装着部
312c 仮想投影円
313 軸穴
314 軸穴部
315 連結部
315f 仮想平面
316a、b、c 衝撃吸収穴
318a、b、c 仮想線分
327 仮想円
1001 中空円筒形スリーブ部材
1002 感光層
1003 最表面層(保護層)
1011 中空円筒形スリーブ部材
1013 最表面層(保護層)
1021 中空円筒形スリーブ部材
1022 感光層
1023 最表面層(保護層)
1031 中空円筒形スリーブ部材
1033 最表面層(保護層)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0360】
【特許文献1】特開昭56−48637号公報
【特許文献2】特開昭64−1728号公報
【特許文献3】特開平4−281461号公報
【特許文献4】特許第3262488号公報
【特許文献5】特許第3194392号公報
【特許文献6】特開2000−66425号公報
【特許文献7】特開2004−302450号公報
【特許文献8】特開2004−302451号公報
【特許文献9】特開2004−302452号公報
【特許文献10】特開2005−99688号公報
【特許文献11】特開昭53−092133号公報
【特許文献12】特開昭52−026226号公報
【特許文献13】特開平02−139566号公報
【特許文献14】特開平02−150850号公報
【特許文献15】特開2011−7969号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒形スリーブ部材と、
前記中空円筒形スリーブ部材の外周面上に順次積層された感光層及び保護層と、
前記中空円筒形スリーブ部材の軸方向の端部の端部開口部に装着されたフランジ部材とを有し、
前記保護層が、フィラーを含有し、
前記保護層の表面が、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.050μm〜0.400μmであり、かつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.500mm〜1.500mmであり、
前記フランジ部材が、前記中空円筒形スリーブ部材の軸方向の端部の端部開口部に装着可能な装着部と、前記装着部が前記端部開口部に装着された状態で前記中空円筒形スリーブ部材の中心軸となる位置に軸部材が挿入される軸穴が設けられた軸穴部と、前記中空円筒形スリーブ部材の円形断面に平行な方向に延在し、前記装着部に前記軸穴部を連結する連結部とを有し、
前記連結部が、前記連結部を含みかつ前記軸方向に直交する仮想平面に対して前記装着部の外周面を前記軸方向に沿って投影させた仮想投影円の円周上から前記軸穴部まで引いた任意の仮想線分上に、少なくとも1つの衝撃吸収穴を備えることを特徴とする感光体ドラム。
【請求項2】
保護層が、硬化樹脂を含有する請求項1に記載の感光体ドラム。
【請求項3】
硬化樹脂が、電荷輸送性構造を有する重合性化合物と、電荷輸送性構造を有さない重合性官能基数3以上の重合性化合物とを硬化させてなる請求項2に記載の感光体ドラム。
【請求項4】
フィラーが、無機フィラーである請求項1から3のいずれかに記載の感光体ドラム。
【請求項5】
無機フィラーが、アルミナである請求項4に記載の感光体ドラム。
【請求項6】
連結部が、仮想平面において軸穴の中心位置からの距離が同じ位置となる同一円周上に配置された衝撃吸収穴を4以上有する請求項1から5のいずれかに記載の感光体ドラム。
【請求項7】
連結部が、仮想平面において軸穴の中心位置から仮想投影円の円周上に引いた任意の仮想線分上に衝撃吸収穴を2以上有する請求項1から6のいずれかに記載の感光体ドラム。
【請求項8】
感光体ドラムと、前記感光体ドラム表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体ドラム表面を露光して前記感光体ドラムに静電潜像を形成する露光手段と、前記感光体ドラムに形成された前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記感光体ドラム表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段とを有し、
前記感光体ドラムが、請求項1から7のいずれかに記載の感光体ドラムであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
感光体ドラム表面を帯電させる帯電工程と、帯電された前記感光体ドラム表面を露光して前記感光体ドラムに静電潜像を形成する露光工程と、前記感光体ドラムに形成された前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記感光体ドラム表面に残留するトナーを除去するクリーニング工程とを含み、
前記感光体ドラムが、請求項1から7のいずれかに記載の感光体ドラムであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選択される少なくとも1つの手段と、感光体ドラムとを有し、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
前記感光体ドラムが、請求項1から7のいずれかに記載の感光体ドラムであることを特徴とするプロセスカートリッジ。


【図33】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図32】
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【図34】
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【図35】
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【図36A】
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【図36B】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2013−20228(P2013−20228A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96270(P2012−96270)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】