説明

感光性平版印刷版の現像装置

【目的】 感光性平版印刷版を多数枚長期間にわたって現像しても、現像浴のガイドローラ等の部材に現像液成分が析出することがなく、感光性平版印刷版の汚れを防止する構成の感光性平版印刷版の現像装置を提供する。
【構成】 感光性平版印刷版の現像装置において、露光済の感光性平版印刷版1が、現像液中に導入されてから現像後に空中で版面の液がスクイズローラ対14によりスクイズされるまでの間に接触する回転可能なローラ5,7,8,9,10,11,12の全てが、現像液中に半分以上浸漬されて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は露光済の感光性平版印刷版(以下、PS版と言う)を現像処理するPS版の現像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】PS版の自動現像機では、PS版をローラ対で挟持搬送しガイド板や複数のガイドローラで版を現像液面下へ導入して現像を行う。現像された版はガイド板やガイドローラによって現像液面上に導かれ、スクイズローラ対により版上の現像液をスクイズされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】自動現像機を用い、PS版を長期間にわたり多数枚処理する場合は、繰り返し使用する液に補充液を補充することにより現像処理を長期間安定に行う。しかしながら、現像処理により現像液中に溶け込む非画像部の感光層等の成分は現像液の活性を低下させることはなくとも、現像液の揮発により現像液面付近の現像浴のガイドローラ等の構造物に固着し、これが版面に付着すると印刷時に汚れとなる場合がある。
【0004】
【発明の目的】本発明の目的は、感光性平版印刷版を多数枚長期間にわたって現像しても、現像浴のガイドローラ等の部材に現像液成分が析出することがなく、感光性平版印刷版の汚れを防止する構成の感光性平版印刷版の現像装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は下記構成により達成される。
[1] 露光済の感光性平版印刷版を、現像液中に浸漬させて現像する感光性平版印刷版の現像装置であって、該感光性平版印刷版が現像液中に導入されてから現像後に空中で版面の液がスクイズされるまでの間に接触する回転可能なローラの全てが、現像液中に半分以上浸漬されて設けられていることを特徴とする感光性平版印刷版の現像装置。
【0006】[2] 前記感光性平版印刷版が現像液から出る部分に、前記感光性平版印刷版の搬送路に対向する導出板を、下部を現像液に浸漬させてかつ上部を液面上に位置させて設け、前記感光性平版印刷版の後端部が前記導出板に接触しながら現像液中から空中に出ることを特徴とする前記[1]記載の感光性平版印刷版の現像装置。
【0007】
【作用】本発明によれば、感光性平版印刷版が現像液中に導入されてから現像後に空中で版面の液がスクイズされるまでの間に前記感光性平版印刷版に接する回転可能なローラの全て(スクイズローラは含まない)が、現像液中に半分以上浸漬されているので、ローラの空気と接する部分の面積が少ない。したがって、ローラ表面に付着した現像液が表面から蒸発しにくく、ローラ表面での析出物が発生することはなく、ローラの汚れを防止でき、PS版の汚れを防止できる。
【0008】また、PS版の後端が導出板に接しながら現像液から出るので、搬送ローラやガイドローラ等による現像液中での挟持を解除されても、PS版の後端が液中から液上に跳ね上がることがない。したがって、現像浴の上にあるカバー等の部材に現像液が飛び跳ねて付着し現像液成分が析出することがなく、これらの部材の汚れを防止することができる。
【0009】以下本発明について詳述する。本発明のPS版の自動現像機では、PS版が一旦現像液中に浸漬された後、液面上でスクイズローラによりスクイズされるまでの間、部分的にでも接触する回転可能なローラがすべて現像液面下に半分以上浸漬されている。回転可能なローラとしては、PS版の搬送のために版を挟持しながらモータの駆動力により一定の速度で自動的に回転するローラ対や、一旦現像液面下に導入されたPS版の進行方向を現像液面上に案内するためのガイドローラ等がある。該ガイドローラは対をなしてPS版を挟持してもよいし、対をなさずに版面と接触するだけでもよい。また該ガイドローラはモータの駆動力により一定の速度で自動的に回転しても良いし、版面と接触したときの摩擦力により回転するアイドルローラでもよい。
【0010】また、本発明の自動現像機では、PS版の後端が現像液中から液上に出る際に、自動現像機に固定して取り付けられた導出板に該後端が接触しながら液面を通過する。ここで該導出板は、正常な処理動作中位置が移動しないように取り付けられており、現像浴の壁に取り付けられていてもよいし、取り外し可能な上蓋等に取り付けられていてもよい。
【0011】本発明のPS版の自動現像機は、現像直後のスクイズローラ対を自動的に洗浄する機構が付与されていることが好ましい。スクイズローラ対を自動的に洗浄する機構とは具体的には一定時間毎にもしくは常にスクイズローラ対に洗浄液をスプレーしながら回転させることにより洗浄する方法、スクイズローラ対の下側のローラが常に洗浄液に浸るようにしておき一定時間毎にもしくは常にローラを回転させることにより洗浄する方法等がある。このとき洗浄液としては、PS版を水洗するための水や現像液であってもよい。
【0012】本発明のPS版の自動現像機は、現像直後のスクイズローラ対を長時間使用しないとき相互に接触しないようにすることが好ましく、通常知られる方法によって容易に接触、圧解除(非接触)の切り替えができる機構を付与することが望ましい。
【0013】本発明の自動現像機により処理される感光性平版印刷版としては、o−キノンジアジド化合物からなる感光層を有するポジ型PS版、ジアゾ化合物を感光成分とする感光層を有するネガ型PS版、およびエチレン性不飽和基を有するモノマーと光重合開始剤からなる感光層を有するネガ型PS版を挙げることができる。これらのPS版の中で特に本発明の自動現像機が好ましく適用されるものは、感光層上に酸素遮断性の現像液可溶性層を有するネガ型PS版である。酸素遮断性の現像液可溶性層としては、ポリビニルアルコールを主体としたものが優れており、ホモポリマーや他の構造単位とのコポリマー、もしくは他の水溶性ポリマーとのポリマーブレンドが好ましく用いられる。
【0014】このように本発明のPS版自動現像機では、PS版が現像液中に導入されてから現像後に空中で版面の液がスクイズされるまでの間に前記感光性平版印刷版に接触する回転可能なローラの全てが、現像液中に半分以上浸漬されるように設置されているので、現像液面付近で現像液に溶解している成分がローラ表面に析出して固着し蓄積されることがきわめて少ない。したがって、この固着物が版面に転写して印刷汚れを引き起こすことがきわめて少ない。
【0015】
【実施例】以下実施例により、本発明を具体的に説明する。図1に本発明の実施例が適用された現像装置が示されている。図1において、第1区域は現像処理部、第2区域は水洗処理部、第3区域はフィニッシャー部(ガム液塗布部)、第4区域は乾燥部である。
【0016】この現像装置ではPS版1が潜像形成後に矢印A方向に送られて現像処理が行われるようになっている。PS版1は一対の搬送ローラ対2で挟持搬送されて第1区域に導入され現像処理される。
【0017】第1区域において、PS版1は回転可能なガイドローラ4によって現像面液下へ案内される。この後、PS版1はガイド板23に沿って現像液中を進み搬送ローラ対5に挟持され、120rpmで搬送方向に対して正回転するブラシローラ7に現像面が接するように案内される。更に、PS版1は回転可能なガイドローラ8,9,10,11,12により現像液面上に案内されて一対のスクイズローラ14に挟持され第2区域へ搬送される。
【0018】現像処理部には、ヒータ24と冷却水流通パイプ25が設けられており、現像液を加熱・冷却することにより、現像液の温度が適温に調節されている。また、現像処理部には、補充ポンプP1及びノズル15により補充液が適宜補充され、余分な液はオーバーフローして排出されるようになっている。また、水補充ポンプP2により、蒸発した水分を補うための水が補充される。
【0019】第1区域における現像液と接する搬送ローラ対5と、ブラシローラ7と、ガイドローラ8,9,10,11,12のそれぞれは、周面の半分以上が現像液に浸漬されて設けられている。本例の場合、ブラシローラ7とガイドローラ10の周面の一部が空中に露出しているだけで、現像液と接する他のローラ5,8,9,11,12は、完全に現像液中に没した状態にある。
【0020】このように、第1区域において現像液と接するローラ5,7,8,9,10,11,12の全てが、半分以上現像液に浸漬されていることから、これらのローラ5,7,8,9,10,11,12の周面での現像液成分の析出が防止され、これらのローラ5,7,8,9,10,11,12の汚れを防止できる。この結果、ローラ5,7,8,9,10,11,12の汚れに起因するPS版1の汚れを防止することができる。
【0021】各ローラ5,7,8,9,10,11,12の現像液中への浸漬割合は、50%以上であればよいが、好ましくは、70%以上、特に好ましくは、100%である。
【0022】PS版1の後端部はガイドローラ対10,11による挟持を解除されたところで自身の剛性により上方に上がり、内蓋27の尾部に取り付けられた導出板26に接触する。導出板26は、下部が現像液中に浸漬され上部が空中に位置して設けられている。したがって、PS版1の後端はガイドローラ10,11による挟持を解除されても、液中から空中に跳ね上がることがなく、導出板26に接触しながら現像液面を通過し現像液面上で導出板26と離れる。この結果、現像処理部の上にあるカバー等の部材に現像液が飛び跳ねて付着することがなく、これらの部材の汚れを防止することができる。
【0023】導出板26は、PS版1の幅方向にわたる長手形状であってもよく、また幅方向に分割した形状であってもよい。また、導出板26を水平方向に対して傾斜させて設けることにより、PS版1の後端から導出板26に現像液が付着しても、導出板26に付着した現像液は導出板26に沿って浴中に流れ落ちる。したがって、導出板26上で現像液成分が析出することがない。
【0024】PS版1は第2区域で搬送ローラ対20により搬送されながら、循環用ポンプP5及びノズル28により水洗水を吹き付けられて水洗される。水洗部には、水補充ポンプP4により水が適宜補充される。余分な水洗水はオーバーフローして排出される。水洗されたPS版1はスクイズローラ対30により水洗水をスクイズされた後、フィニッシャー部に搬送される。
【0025】第3区域において、PS版1は搬送ローラ対32により搬送されながら、循環用ポンプP7及びノズル34により表面保護用のガム液が吹き付け塗布される。ガム液は補充用ポンプP6により適宜補充され、余分なガム液はオーバーフローして排出される。
【0026】次いで、PS版1は第4区域でブロワ36により熱風を吹き付けられて、搬送ローラ対38により搬送されながら乾燥される。以上の工程で、PS版の現像処理が終了する。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、感光性平版印刷版が現像液中に導入されてから現像後に空中で版面の液がスクイズされるまでの間に前記感光性平版印刷版に接する回転可能なローラの全てが、現像液中に半分以上浸漬されているので、ローラの空気と接する部分の面積が少なく、ローラ表面での現像液成分の析出を防止することができる。また、PS版の後端が導出板に接しながら現像液から空中に出るので、PS版の後端が現像液中から空中に跳ね上がることがなく、現像浴の上にあるカバー等の部材に現像液が飛び跳ねて付着することがない。したがって、これらの部材の汚れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明によるPS版自動現像装置の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 PS版
2 搬送ローラ対
4 ガイドローラ
5 搬送ローラ対
7 ブラシローラ
8 ガイドローラ
9 ガイドローラ
10 ガイドローラ
11 ガイドローラ
12 ガイドローラ
14 スクイズローラ対
20 搬送ローラ対
24 ヒータ
25 冷却水用パイプ
26 導出板
27 内蓋
28 ノズル
30 スクイズローラ対
32 搬送ローラ対
34 ノズル
36 ブロワ
38 搬送ローラ対
P1 補充液補充ポンプ
P2 水補充ポンプ
P3 現像液循環ポンプ
P4 水補充ポンプ
P5 水洗水循環ポンプ
P6 ガム液補充ポンプ
P7 ガム液循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 露光済の感光性平版印刷版を、現像液中に浸漬させて現像する感光性平版印刷版の現像装置であって、該感光性平版印刷版が現像液中に導入されてから現像後に空中で版面の液がスクイズされるまでの間に接触する回転可能なローラの全てが、現像液中に半分以上浸漬されて設けられていることを特徴とする感光性平版印刷版の現像装置。
【請求項2】 前記感光性平版印刷版が現像液から出る部分に、前記感光性平版印刷版の搬送路に対向する導出板を、下部を現像液に浸漬させてかつ上部を液面上に位置させて設け、前記感光性平版印刷版の後端部が前記導出板に接触しながら現像液中から空中に出ることを特徴とする請求項1記載の感光性平版印刷版の現像装置。

【図1】
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