説明

感光性平版印刷版

【課題】 初期汚れ、ブランケット汚れ及び停止汚れなどの汚れの少ない感光性平版印刷版を提供する。
【解決手段】 少くとも粗面化及び陽極酸化処理する工程を経て製造された金属支持体面に感光層を有する感光性平版印刷版であって、感光層をアセトンで除去して露出させた金属支持体面の光沢度が、下記式(1)式及び/又は(2)式を満足することを特徴とする感光性平版印刷版。
85/A60=8〜12 …(1)
85/B60=8〜12 …(2)
式中、A及びBはそれぞれ金属支持体の圧延方向に平行又は直角に光を入射したときの光沢度であり、添字の85及び60はそれぞれ光の入射角を示す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、感光性平版印刷版に関するものであり、特に印刷物に汚れの発生の少ない感光性平版印刷版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム板などの金属板上に感光性組成物を薄層状に塗布した感光性平版印刷版、いわゆるPS版が印刷に広く用いられている。感光性平版印刷版は画像露光−現像を経て印刷版とされる。印刷手段としては通常はオフセット印刷法が用いられており、印刷版の画像上にインキを付着させ、このインキをローラに巻いたゴム製のブランケット上に転写し、更にブランケット上のインキを紙に転写することにより、印刷が行われる。この際、印刷版の非画像部、すなわち画像露光及び現像により感光層が除去された部分には、インキが付着しないように湿し水が供給される。また感光性平版印刷版の製造過程においては、感光性組成物を塗布する前に通常は金属板に親水化処理を施し、もって非画像部が水で湿されてインキが付着し難いようにしている。
【0003】この印刷版は支持体の強度に優れ、非画像部の親水性の維持が容易であり、高い印刷性が得られるが、印刷中に印刷物に種々の汚れが発生し易いという問題がある。このような汚れとしては、数百枚印刷したときに生ずるブランケット非画像部分の汚れ(ブランケット汚れ)に起因する地汚れや、印刷版の非画像部の保水性不足による初期汚れが目立つが、場合によっては数千枚印刷したときに非画像部に激しい汚れ(地汚れ)が発生することもある。また、印刷版を印刷機に取り付けたままで印刷機の運転を停止し、次いで運転を再開すると、非画像部分に0.1〜2mm程度の点状の汚れ(停止汚れ)が発生することがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、以前からこの印刷版の各種の汚れに対処する改善策が種々提案されている。例えば、特開平5−24376号公報には、電解粗面化処理したアルミニウム支持体における「ピット径」と「径に垂直な方向の最大深さ」の、一次回帰分析による直線の勾配が0.100以上であるようなピット形状を持つ粗面形状が、特に画像部の中間調部分の汚れ性改善に有効であることが詳細に記述されている。また、特開平8−67078号公報には、平均直径0.5〜10μmのハニカムピットを10,000〜100,000個/mm2 の密度で形成することにより、インキが絡み難く、かつブランケット汚れが発生し難い印刷版用支持体が得られることが記述されている。特開平8−300843号公報、特開平9−290578号公報には、シャドウ部及びブランケット汚れの改善法に関する提案が記述されている。また、特開平10−20506号公報には、粗面化及び陽極酸化したのちポリビニルホスホン酸水溶液で処理し、更にアルカリ金属珪酸塩水溶液で処理したアルミニウム支持体を用いた感光性平版印刷版が、印刷時にクリーナーを使用しても非画像部の汚れ性が悪化せず、かつ耐刷性も良好であることが記述されている。
【0005】しかしながら、これらの手法では、ブランケット汚れや停止汚れの改善には未だ不十分である。殊に近年、Arレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等とコンピュータやデジタル通信システムとを組み合わせたダイレクト製版システムが実用化されてきているので、細線や小点再現性のみならず印刷時の汚れに対してもますます要求が厳しくなっており、前述の手法では十分に対応できない。従って本発明は、印刷時の汚れ、特にブランケット汚れや停止汚れが改善された感光性平版印刷版を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、少なくとも粗面化及び陽極酸化処理する工程を経て製造された金属支持体面に感光層を有する感光性平版印刷版であって、感光層をアセトンで除去して露出させた金属支持体面の光沢度が、下記式(1)及び/又は(2)を満足する感光性平版印刷版を用いることにより、印刷時の種々の汚れを改善することができる。
85/A60=8〜12 …(1)
85/B60=8〜12 …(2)
式(1)において、A85は金属支持体面にその圧延方向に対して平行に入射角85度で光を入射させたときの光沢度であり、A60は同じく入射角60度で光を入射させたときの光沢度である。式(2)において、B85は金属支持体面にその圧延方向に対して直角に入射角85度で光を入射させたときの光沢度であり、B60は同じく入射角60度で光を入射させたときの光沢度である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明するに、本発明に係る感光性平版印刷版の金属支持体としては、通常はアルミニウム板が用いられるが、非アルミニウム基材の表面にアルミニウム板を積層したものを用いることもできる。アルミニウムとしては純アルミニウム又はアルミニウムに10重量%以下の他の元素、例えば珪素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどから選ばれた合金元素を含むアルミニウム合金を用いるのが好ましい。通常はJIS A1050、1100、1200、3003、3103、3005材などが用いられる。アルミニウム板の厚さは任意であるが、通常は0.1〜0.5mm程度である。アルミニウム板は表面に付着している圧延油などを除去するため、溶剤、界面活性剤やアルカリ性水溶液などで洗浄する脱脂処理を行ったのち、粗面化及び陽極酸化する。
【0008】粗面化処理には、周知のように、ボール研磨、ブラシ研磨、ブラスト研磨、バフ研磨などの機械的手段による粗面化、塩酸、硝酸などの電解質を含む水溶液中で商用交流、高周波交流、三角波交流、などの種々の波形の交流や直流により電解する電気化学的粗面化、強アルカリ性水溶液を用いる化学的粗面化、更にはパルス化したレーザー光線、電子銃、プラズマ等の量子力学的手法による粗面化など種々の方法が知られている。これらのうち本発明に係る感光性平版印刷版の製造に際しては、電解研磨法によるのが好ましい。なかでも好ましいのは塩酸水溶液で三相交流で電解する電解研磨法である。電解液は塩酸濃度5〜35g/l、アルミニウム濃度0.1〜10g/l、液温10〜60℃であるのが好ましく、電解電流としては10〜200Hz、特に50又は60Hzの商用の三相交流を20〜200A/dm2 の電流密度で用いるのが好ましい。本発明に係る感光性平版印刷版は、アセトンで感光層を除去して露出させた金属支持体面の表面平均粗さRaが0.4〜1.0、特に0.48〜0.75μmであるのが好ましいが、この金属支持体面の表面平均粗さは、基本的にこの粗面化工程での粗面化の程度により決定されるので、粗面化後の表面平均粗さが上記の範囲となるように粗面化を行うのが好ましい。
【0009】粗面化したアルミニウム板は、所望によりアルカリエッチングしたのち、次の陽極酸化処理に供される。陽極酸化は、周知のように、硫酸、燐酸、蓚酸、クロム酸などから選ばれた酸の水溶液中で、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間5秒〜50分の条件で行われている。本発明に係る感光性平版印刷版の製造に際しては200〜300g/l濃度の硫酸水溶液中で陽極酸化するのが好ましく、その電解条件は形成される陽極酸化皮膜のセル径が30〜60nm、特に40〜55nmとなるように選択するのが好ましい。また形成される陽極酸化皮膜の重量は5〜50mg/dm2 であるのが好ましい。
【0010】陽極酸化を経たアルミニウム板には、通常は親水化処理が施される。親水化処理は通常は酢酸アンモニウムや酢酸ニッケルなどの酢酸塩、燐酸、マロン酸、乳酸、珪酸ナトリウム、界面活性剤、クロム酸塩、フッ化ジルコニウムカリウム、カルシウム塩、燐酸塩などの水溶液を用いて行われているが、本発明では酢酸アンモニウム塩の水溶液を用いて行うのが好ましい。好ましくは0.01〜20重量%、特に0.05〜1重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%の酢酸アンモニウム水溶液を30〜100℃、特に50〜100℃に保持し、これに陽極酸化処理を経たアルミニウム板を浸漬し、いったん引上げて水洗したのち再び酢酸アンモニウム水溶液に浸漬するというように、親水化処理を反復する。1回の浸漬時間は10秒程度でよい。理由は不明であるが、数十秒間連続して浸漬するよりも、途中で水洗をはさんで浸漬を反復する方が、本発明に係る感光性平版印刷版の製造に際しての、金属支持体の処理法としては適している。酢酸アンモニウム水溶液で親水化処理したならば、引続いてカルボキシセルロース、でんぷん、ポリビニルアルコール等の希薄水溶液に浸漬する親水化処理を施すのが好ましい。水溶液の濃度は1重量%以下が好ましく、液温30〜120℃で0.5〜90秒程度浸漬するのが好ましい。
【0011】金属支持体上に形成する感光層のための感光性組成物としては、常用の露光の前後で現像液に対する溶解性又は膨潤性が変化する任意のものを用いることができる。例えば特開平10−20506号公報に記載のものを用いればよい。上記で得た金属支持体上に感光性組成物を適宜の溶剤に溶解して塗布し乾燥することにより、本発明に係る感光性平版印刷版を製造することができる。
【0012】本発明に係る感光性平版印刷版の特徴は、アセトンで感光層を除去して金属支持体面を露出させたときに、その金属支持体面の光沢度が下記式の少なくとも一方、好ましくは双方を満足することである。アセトンによる感光層の除去は、約20℃の大量のアセトン中に感光性平版印刷版を浸漬して30秒間以上振盪し、肉眼で観察して感光層が完全に除去されるまで行う。
【0013】
85/A60=8〜12、好ましくは8.5〜11.5B85/B60=8〜12、好ましくは8.5〜11.5上記式においてAは金属支持体面にその圧延方向に対して平行に光を入射させたときの光沢度、Bは金属支持体面にその圧延方向に対して直角に光を入射させたときの光沢度であり、添字の85及び60はそれぞれ光の入射角を示す。A85/A60又はB85/B60が上記の範囲外であると印刷開始時(通常は最初の200枚)に初期汚れが発生し易く、かつブランケット汚れに起因する地汚れも発生し易い。また印刷機の運転を一時停止した場合の停止汚れも発生し易い。この金属支持体面の光沢度は、前記した一連の処理の条件により決定され、処理条件を適切に選択することにより、光沢度比を上記の範囲内とすることができる。
【0014】本発明に係る感光性平版印刷版は、常法により画像露光したのち現像することにより印刷版とされる。露光は通常はハロゲンランプを用いて行い、黄色光で感光しない常用の感光層を有する場合には50mJ/cm2 、特に100mJ/cm2 以上の露光量で露光処理するのが好ましい。現像は露光処理した印刷版を現像液中に浸漬し、所望によりスポンジ等で感光層をこする手現像によることもできるが、現像から水洗、乾燥までを自動的に行う自動現像機を使用するのが好ましい。現像液としてはリチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等の水酸化物や珪酸塩などを水に溶解したアルカリ性水溶液が用いられる。従って現像に際しては非画像部の金属支持体面が多少とも侵される傾向にあるので、現像後の非画像部の金属支持体面の光沢度が下記式を満足するように現像するのが好ましい。
【0015】
85/A60=7〜12、好ましくは7.5〜11.5B85/B60=7〜12、好ましくは7.5〜11.5A及びBは、前記したごとく、金属支持体面の圧延方向に平行又は直角に光を入射したときの光沢度であり、添字の85及び60はそれぞれ光の入射角度である。現像後の印刷版の非画像部の金属支持体面のA85/A60及び/又はB85/B60が上記の範囲外であると、印刷開始時に初期汚れが発生し易く、ブランケット汚れに起因する地汚れも発生し易い。また印刷機の運転を一時停止した場合の停止汚れも発生し易い。さらにこれらの汚れの発生に加えて耐刷性も低下し易い。なお、金属支持体面の光沢度の測定は、現像液で現像したのち直ちに水洗・乾燥したものについて行うものとする。
【0016】
【実施例】以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中の%及び部は、重量%及び重量部である。
【0017】実施例1JIS 1050材のアルミニウムシート(厚さ0.24mm)を、3%水酸化ナトリウム水溶液中に80℃で7秒間浸漬して脱脂した後、30%硫酸水溶液にて15秒間中和処理し、よく水洗した。次に20℃の1%塩酸水溶液(溶存アルミニウムイオン濃度1.0g/1)中で、50Hzの三相交流を用いて、電流密度100A/dm2 で10秒間電解研磨処理を行い、水洗した。次いで70℃の1%水酸化ナトリウム水溶液中に3秒間浸漬してエッチング処理を行った。更に35℃の30%硫酸水溶液中で、25mg/dm2 の陽極酸化皮膜を形成させるべく200クーロン/dm2 の電気量にて陽極酸化処理を行い、処理後よく水洗した。これを80℃の0.2%酢酸アンモニウム水溶液(PH=6.0)に9秒間浸漬したのち水洗し、更に70℃の0.2%酢酸アンモニウム水溶液(PH=9.0)に5秒間浸漬した。その後、90℃の0.005%CMC(カルボキシルメチルセルロース)水溶液(PH=6.5)に7秒間浸漬したのち、50℃で数分間乾燥させて支持体を作製した。この支持体上に下記組成の感光性組成物塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃で4分間乾燥し、感光層膜厚が25mg/dm2 のポジ型感光層を持つ感光性平版印刷版を得た。
【0018】
感光性組成物塗布液・ナフトキノン(1,2)−ジアジド−(2)−5−スルホニルクロリドとピロガロール−アセトン樹脂(Mw(重量平均分子量)=2,500)との反応生成物(水酸基の反応率20%) …20部・フェノールとm−,p−混合クレゾール(フェノール:m−クレゾール:p−クレゾール=5:57:38(モル比))とホルムアルデヒドとの共重縮合樹脂(Mw=5,500) …80部・p−tert−オクチルフェノールとホルムアルデヒドとから合成されたノボラック樹脂(Mw=1,800)とナフトキノン−(1,2)−ジアジド−(2)−5−スルホニルクロリドとの反応生成物(水酸基の反応率50%)…1部・3,4−ジメトキシ安息香酸 …5部・2−トリクロロメチル−5−[β−(2−ベンゾフリル)ビニル]−1,3,4−オキサジアゾール …1部・ビクトリアピュアブルー−BOH(保土谷化学社製品) …1部・メチルセルソルブ …800部
【0019】得られた感光性平版印刷版を20℃のアセトン中に入れ、30秒間流動させて感光層を剥離したのち乾燥した。この試料の光沢度を、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の2方向について光の入射角60度及び85度で測定した。測定結果を表−1に示す。
【0020】また、上記で得られた感光性平版印刷版に2kWメタルハライドランプを使用して300mJ/cm2 で露光し、自動現像機スタブロン900NP(富士フィルム社製品)を使用して現像処理した。現像液はDP−4W(富士フィルム社製品)の9倍希釈液を用い、現像条件は、上記自動現像機の標準条件である現像液浴温30℃、現像時間12秒で行った。なお、本来リンス液やガム液を入れる自動現像機の槽には常温の上水を入れ、リンス及びガム処理せずに水洗、乾燥した。こうして得られた試料の光沢度を、圧延方向に対して平行方向及び直角方向の2方向について光の入射角60度及び85度で測定した。測定結果を表−1に示す。なお、光沢度の測定にはGardnerを用いた。
【0021】更に上記で得られた感光性平版印刷版に、ベタ部、平網及びUGRAチャート(コーハン社製品)を含む画像フィルムを重ねて2kWメタルハライドランプを用いて300mJ/cm2 で露光し、次いでスタブロン900NPで標準条件で現像した。なお、自動現像機の乾燥直前の槽にはFP−2Wガム液(富士フィルム社製品)を入れた。
【0022】枚葉印刷機DAIYA 1F−2型(三菱重工社製品)に上記で得られた印刷版を取付け、インキとしてはプロセスインキHYECOO 紅(東洋インキ製造社製品)を用い、印刷用ブランケットにはS7000(金陽社製品)を用い、湿し水にはアストロNO.1マークII(日研化学社製品)の100倍希釈液(10℃、PH5.0)を用いて印刷した。結果を表−1に示す。
【0023】実施例2実施例1におけるアルミニウムシートの処理において、2度目の酢酸アンモニウム水溶液による処理を60℃で行い、かつ次のCMC水溶液による処理に0.001%CMC水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして金属支持体を作製し、かつこの金属支持体を用いて実施例1と同様にして感光性平版印刷版を製造した。この感光性平版印刷版について実施例1と同様にして、光沢度の測定及び印刷性能の試験を行った。結果を表−1に示す。
【0024】実施例3実施例1におけるアルミニウムシートの処理において、電解研磨処理後の1%水酸化ナトリウム水溶液によるエッチングを80℃で行い、酢酸アンモニウム水溶液による親水化処理を、1回目は80℃の0.2%酢酸アンモニウム水溶液(PH=7.0)で、2回目も80℃の0.2%酢酸アンモニウム水溶液(PH=7.0)で行い、かつCMC水溶液の代わりに脱塩水(PH=6.5)を用いた以外は、実施例1と同様にして金属支持体を作製し、かつこの金属支持体を用いて実施例1と同様にして感光性平版印刷版を製造した。この感光性平版印刷版について実施例1と同様にして、光沢度の測定及び印刷性能の試験を行った。結果を表−1に示す。
【0025】比較例1実施例1におけるアルミニウムシートの処理において、電解研磨処理を2%硝酸水溶液(溶存アルミニウム濃度1.0g/l)中で行い、陽極酸化処理を20mg/dm2 の陽極酸化皮膜を形成させるべく160クーロン/dm2 の電気量で行い、陽極酸化後はよく水洗したのち、90℃の熱水(PH=6.0)に9秒間浸漬したのち水洗し、更に90℃の0.2%酢酸アンモニウム水溶液(PH=9.0)に5秒間浸漬し、次いで90℃の0.01%CMC水溶液(PH=6.5)に7秒間浸漬したのち50℃で数分間乾燥する以外は、実施例1と同様にして金属支持体を作成し、かつこの金属支持体を用いて実施例1と同様にして感光性平版印刷版を製造した。この感光性平版印刷版について実施例1と同様にして、光沢度の測定及び印刷性能の試験を行った。結果を表−1に示す。
【0026】比較例2市販の感光性平版印刷版について、実施例1と同様にして光沢度の測定及び印刷性能の試験を行った。結果を表−1に示す。なお、表−1において、ブランケット汚れ、初期汚れ及び停止汚れの測定は下記により行った。
【0027】ブランケット汚れ;マクベス反射濃度計を用いて、印刷前のよく洗浄されたブランケット上で各印刷版の非画像部に相当する部分を測定する。次いで500枚印刷する毎にブランケットの同一部分を洗浄せずに測定する。測定結果は絶対反射値で表示してある。
初期汚れ;印刷開始後の200枚までについて、非画像部にインキが付着する汚れの有無を目視で判定した。
停止汚れ;1000枚印刷したのち、5分間印刷を停止する。次いで100枚印刷する。また5分間印刷を停止したのち、再度100枚印刷し、最後の印刷物について非画像部(3dm2 )に発生した点状の汚れの数を目視でかぞえた。
【0028】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも粗面化及び陽極酸化処理する工程を経て製造された金属支持体面に感光層を有する感光性平版印刷版であって、感光層をアセトンで除去して露出させた金属支持体面の光沢度が、下記式(1)及び/又は(2)を満足することを特徴とする感光性平版印刷版。
85/A60=8〜12 …(1)
85/B60=8〜12 …(2)
式(1)において、A85は金属支持体面にその圧延方向に対して平行に入射角85度で光を入射させたときの光沢度であり、A60は同じく入射角60度で光を入射させたときの光沢度である。式(2)において、B85は金属支持体面にその圧延方向に対して直角に入射角85度で光を入射させたときの光沢度であり、B60は同じく入射角60度で光を入射させたときの光沢度である。
【請求項2】 式(1)及び(2)を同時に満足することを特徴とする請求項1記載の感光性平版印刷版。
【請求項3】 金属支持体がアルミニウム板又は非アルミニウム基材の表面にアルミニウム板が積層されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の感光性平版印刷版。
【請求項4】 感光層をアセトンで除去して露出させた金属支持体面の表面平均粗さRaが0.4〜1.0μmであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の感光性平版印刷版。
【請求項5】 感光層をアセトンで除去して露出させた金属支持体面のセル径が30〜60nmであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の感光性平版印刷版。

【公開番号】特開2000−47376(P2000−47376A)
【公開日】平成12年2月18日(2000.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−143130
【出願日】平成11年5月24日(1999.5.24)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)