説明

感光性樹脂組成物、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器

【課題】 本発明の目的は、材料に起因する光損失を低減できる感光性樹脂組成物を提供することに有り、さらには光損失を低減できる光導波路用感光性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 本発明の感光性樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂と、触媒と、酸発生剤と、カチオン重合可能な第1モノマーと、第1モノマーと異なる第2モノマーとを含む。また本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、上記に記載の感光性樹脂組成物を光導波路形成用の感光性樹脂組成物として用いる。また、本発明の光導波路は、上記に記載の光導波路形成用フィルムに、互いに屈折率の異なるコア部とクラッド部とを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信分野において、石英系の光導波路にかわってフレキシブルなフィルム状の光導波路(光導波路フィルム)が開発されている。
例えば、特許文献1には光硬化性フィルムに対し選択的に光を照射し、モノマーを重合させることで光導波路を形成する技術が開示されている。
【0003】
このような光導波路の他の例としては、2層のクラッド層(上方クラッド層および下方クラッド層)と、その間に設けられ、ポリシランと有機過酸化物を含むポリシラン組成物を用いて形成されたポリシラン層を有するポリマー光導波路が開示されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
しかし、このような光導波路では、材料に起因する光損失が比較的大きく、光通信を行うための光信号の送受信に十分対応できないといった問題が予想されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開91/01505号パンフレット
【特許文献2】特開2004−333883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光の伝播損失が低く、かつ熱特性に優れた感光性樹脂組成物を提供することである。
また前記感光性樹脂組成物を用いることにより、光の伝播損失が低く、かつ熱特性に優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(24)に記載の本発明により達成される。
(1) 環状オレフィン系樹脂と、触媒と、酸発生剤と、カチオン重合可能な第1モノマーと、第1モノマーと異なる第2モノマーとを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
(2) さらに、前記感光性樹脂組成物は、第1モノマーおよび第2モノマーと異なる第3モノマーを含むものである上記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(3) 前記カチオン重合可能な第1モノマーは、前記環状オレフィン系樹脂よりも屈折率が低いものである上記(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物。
(4) 前記カチオン重合可能な第1モノマーは、環状エーテル基を有するモノマーである上記(3)に記載の感光性樹脂組成物。
(5) 前記カチオン重合可能な第1モノマーは、オキセタニル基を有するモノマーである上記(4)に記載の感光性樹脂組成物。
(6) 前記カチオン重合可能な第1モノマーの含有量は、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、5〜100重量部である上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(7) 前記第2モノマーは前記環状オレフィン系樹脂よりも屈折率が低いものである上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(8) 前記第2モノマーは、ノルボルネン系モノマーである上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(9) 前記第2モノマーは、官能基を二つ以上有するモノマーである上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(10) 前記第2モノマーは、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シランである上記(8)に記載の感光性樹脂組成物。
(11) 前記第2モノマーの含有量は、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、5〜100重量部である上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(12) 前記第3モノマーは、第1モノマーの反応性を向上させるものである上記(2)乃至(11)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(13) 前記第3モノマーはエポキシ基を有するモノマーである上記(2)乃至(12)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(14) 前記第3モノマーの含有量は、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、1〜25重量部である上記(2)乃至(13)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(15) 前記第1モノマーと前記第2モノマーとの併用割合(前記第1モノマー/前記第2モノマー)は、90/10〜40/60である上記(1)乃至(14)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(16) 前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系樹脂である上記(1)乃至(15)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(17) さらに、前記感光性樹脂組成物は、増感剤を含むものである上記(1)乃至(16)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
(18) 上記(1)乃至(17)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物は、光導波路形成用の感光性樹脂組成物として用いられることを特徴とする光導波路形成用感光性樹脂組成物。
(19) 上記(18)に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする光導波路形成用フィルム。
(20) 上記(19)に記載の光導波路形成用フィルムに、互いに屈折率の異なるコア部とクラッド部を設けたものである光導波路。
(21) 上記(19)に記載の光導波路形成用フィルムに、光を照射することによりクラッド部を形成したものである光導波路。
(22) 上記(20)または(21)に記載の光導波路を備えたことを特徴とする光配線。
(23) 電気配線と、上記(22)に記載の光配線とを有することを特徴とする光電気混載基板。
(24) 上記(20)または(21)に記載の光導波路を備えたことを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光の伝播損失が低く、かつ熱特性に優れた感光性樹脂組成物を得ることできる。
また、前記感光性樹脂組成物を用いることにより、光の伝播損失が低く、かつ熱特性に優れた光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の光導波路の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の光導波路形成用フィルムの製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、光導波路形成用感光性樹脂組成物、光導波路形成用フィルム、光導波路、光配線、光電気混載基板および電子機器について説明する。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂と、触媒と、酸発生剤と、カチオン重合可能な第1モノマーと、第1モノマーと異なる第2モノマーとを含むことを特徴とする。
また、本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、前記感光性樹脂組成物を光導波路形成用の感光性樹脂組成物として用いることを特徴とする。
また、本発明の光導波路形成用フィルムは、前記光導波路形成用感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする。
また、本発明の光導波路は、前記光導波路形成用フィルムに、互いに屈折率の異なるコア部とクラッド部とを設けたことを特徴とする。
また、本発明の光配線は、前記光導波路を備えたことを特徴とする。
また、本発明の光電気混載基板は、電気配線と、前記光配線とを有することを特徴とする。
また、本発明の電子機器は、前記光導波路を備えたことを特徴とする。
【0012】
(感光性樹脂組成物)
まず、感光性樹脂組成物について説明する。
前記感光性樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂を含む。
前記環状オレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、シクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体モノマーの重合体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体モノマーの重合体等が挙げられる。これらの中でも多環体モノマーの重合体の中から選ばれる1種以上の環状オレフィン系樹脂が好ましい。これにより、樹脂の耐熱性を向上することができる。
【0013】
なお、重合形態としては、ランダム重合、ブロック重合等の公知の形態を適用することができる。例えばノルボルネン系モノマーの重合体の具体例としては、ノルボルネン系モノマーの(共)重合体、ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマ−との共重合体、ノルボルネン系モノマーと非共役ジエンまたは必要に応じて他のモノマーとの共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン樹脂は、付加重合法、開環重合法、ラジカルまたはカチオンによる重合法等、公知のすべての重合法により製造することが可能であり、前述の中でも付加重合法で得られる環状オレフィン系樹脂が好ましい。なかでも、透明性、耐熱性および可撓性に優れることから、ノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
【0014】
前記ノルボルネン系樹脂は、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、脱離性基を有するノルボルネンの繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0015】
前記重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位のうち少なくとも1種が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから、反応工程を短縮することができるため、好ましい。
【0016】
一方、アリール基は疎水性が極めて高いため、前記ノルボルネン樹脂は、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を有することにより、吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。
【0017】
一方、脱離性基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、特に限定されないが、例えば酸の作用、ラジカルの作用(ラジカル解離)、イオンの作用(イオン解離)等により分子の一部が切断されて離脱するものが好ましい。具体的には分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうち少なくとも一つを有するものが分子の一部が切断されやすく、屈折率を制御しやすいため特に好ましい。
【0018】
脱離性基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系樹脂は、脱離基の切断により屈折率が変化するため、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にする。
【0019】
さらに、ノルボルネン系樹脂は、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
【0020】
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系樹脂は、柔軟性が高くなるため、高い可撓性を付与することができる。
【0021】
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、特定の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
【0022】
このような環状オレフィン樹脂としては、式(1)および/または式(2)で示される繰り返し単位を有するものが好ましい。これにより、樹脂の屈折率差を高くすることができる。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
前記感光性樹脂組成物は、カチオン重合可能な第1モノマーを含む。
前記カチオン重合可能な第1モノマーは、光(例えば紫外線)の照射により、光の照射領域において後述する酸発生剤の作用により反応して反応物を形成することができる。これにより、光導波路形成用フィルムにおいて光の照射領域と、光の未照射領域とにおいて、屈折率差を生じさせ得る。
【0026】
前記カチオン重合可能な第1モノマーとしては、例えば、ビニルエーテル基を有するモノマー、環状エーテル基を有するモノマーが挙げられるが、環状エーテル基を有するモノマーが求核性に優れるため、反応性が高く、反応時間を短縮できるという点で好ましい。
ビニルエーテル基を有するモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0027】
環状エーテル基を有するモノマーとしては、例えば、エポキシ基を有するモノマーおよびオキセタニル基を有するモノマー、テトラヒドロフラニル基を有するモノマー、テトラヒドロピラニル基を有するモノマー等が挙げられる。なかでも、酸により開環しやすい点から、エポキシ基を有するモノマーおよびオキセタニル基を有するモノマーが好ましい。
エポキシ基を有するモノマーとして、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド、などが挙げられる。
オキセタニル基を有するモノマーとして、例えば、3‐エチル‐3‐ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ‐〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3−(シクロヘキシルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタンおよび3,3´−(オキシビスメチレン)ビス(3−エチルオキセタン)等が挙げられる。
なかでも、屈折率が低いこと、前記環状オレフィン系樹脂との相溶性が高いこと、UV照射下で重合可能であること等から、3−(シクロヘキシルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタンおよび3,3´−(オキシビスメチレン)ビス(3−エチルオキセタン)が好ましい。
【0028】
前記カチオン重合可能な第1モノマーの含有量は、特に限定されないが、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、5〜100重量部であることが好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、かつ、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。さらに、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、10〜60重量部であることがより好ましい。これにより、上記可撓性と耐熱性の両立が図れることに加えて、光導波路の屈曲時に生じる光損失を低減することもできる。最も好ましい前記カチオン重合可能な第1モノマーの含有量は、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、15〜30重量部である。これにより、上記効果に加えて、光導波路をドライフィルムとして得ることが容易となり、光導波路形成に係る作業性にも優れる。
【0029】
前記感光性樹脂組成物は前記カチオン重合可能な第1モノマーと異なる第2モノマーとを含む。なお、前記カチオン重合可能な第1モノマーと異なる第2モノマーとは、構造が異なっていても良いし、分子量が異なっていても良い。
前記第2モノマーは、光の照射により反応を開始して反応物を形成し、この反応物の存在により、光導波路形成用フィルムにおいて光の照射領域と、光の未照射領域とにおいて、屈折率差を生じさせ得るようなモノマーである。
【0030】
前記第2モノマーは、重合可能な部位を有するモノマーが好ましく、特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、スチレン系モノマーが挙げられ、これらのうち1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ノルボルネン系モノマーを用いることが好ましい。これにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層が得られる。
【0031】
ノルボルネン系モノマーとしては、連続多環環系(fused multicyclic ring systems)のモノマーと、連結多環環系(linked multicyclic ring systems)のモノマーとがある。どちらのモノマーであっても、特に限定されないが、官能基を二つ以上有するモノマーが好ましい。これにより、前記感光性樹脂組成物の架橋密度を向上させ、耐熱性が向上する。
【0032】
連続多環環系のモノマー(連続多環環系の架橋性ノルボルネン系モノマー)としては、式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【化3】

【0034】
なお、簡略化のため、ノルボルナジエン(norbornadiene)は、連続多環環系に含まれ、重合性ノルボルネン系二重結合を含むものと考えることとする。
【0035】
この連続多環環系のモノマーの具体例としては、式(4)で表されるモノマーが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0036】
【化4】

【0037】
一方、連結多環環系のモノマー(連結多環環系の架橋性ノルボルネン系モノマー)としては、式(5)で表されるモノマーが挙げられる。
【0038】
【化5】

【0039】
ここで、二価の置換基とは、端部にノルボルネン構造に結合し得る結合手を二つ有する基のことを言う。
【0040】
二価の炭化水素基(ハイドロカルビル基)の具体例としては、一般式:−(C2d)−で表されるアルキレン基(dは、好ましくは1〜10の整数を表す。)と、二価の芳香族基(アリール基)とが挙げられる。
【0041】
二価のアルキレン基としては、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C〜C10)のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が挙げられる。
【0042】
なお、分岐アルキレン基は、主鎖の水素原子が、直鎖状または分岐状のアルキル基で置換されたものである。
一方、二価の芳香族基としては、二価のフェニル基、二価のナフチル基が好ましい。
【0043】
また、二価のエーテル基は、−R−O−R−で表される基である。
ここで、Rは、それぞれ独立して、Rと同じものを表す。
【0044】
この連結多環環系の化合物の具体例としては、下記式(6)〜式(10)で表される化合物の他、式(11)、式(12)で表されるフッ素含有化合物(フッ素含有架橋性ノルボルネン系モノマー)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

【0047】
この式(7)で表される化合物は、ジメチルビス[ビシクロ[2.2.1]へプト−2−エン−5−メトキシ]シランであり、またの命名では、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シラン(「SiX」と略される。)と呼ばれる。
【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
各種のノルボルネン系モノマーの中でも、特に、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シラン(SiX)が好ましい。SiXは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位および/またはアラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーに対して十分に低い屈折率を有する。このため、後述する光を照射する照射領域の屈折率を確実に低くして、クラッド部とすることができる。また、後述するコア部と後述するクラッド部との間における屈折率差を大きくすることができ、コア層の特性(光伝送性能)の向上を図ることができる。
【0054】
なお、以上のようなモノマーは、単独または任意に組み合わせて用いるようにしてもよい。このようなノルボルネン系モノマーを用いることにより、次のような利点がある。すなわち、ノルボルネン系モノマーは、より速く重合するので、コア層の形成に要する時間を短縮することができる。また、ノルボルネン系モノマーは、加熱しても蒸発し難くいので、蒸気圧の上昇を抑えることができる。さらに、ノルボルネン系モノマーは、耐熱性に優れるため、コア層の耐熱性を向上させることができる。
【0055】
前記第2モノマーの含有量は、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、5〜100重量部であることが好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。さらに好ましくは、前記第2モノマーの含有量は、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、15〜60重量部であり、より好ましくは15〜30重量部である。これにより、上記可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果に加えて、光導波路をドライフィルムとして得ることが容易となり、光導波路形成に係る作業性にも優れる。
【0056】
また前記第2モノマーと前記第1モノマーとの併用割合も特に限定されないが、重量比(前記第1モノマー/前記第2モノマー)で90/10〜10/90が好ましく、より好ましくは80/20〜50/50である。併用割合を前記範囲内とすることにより、モノマーの反応速度が高いことと未反応モノマーの残存率が低いこととを両立し、生産効率の高い反応条件とすることが期待できる。
【0057】
前記感光性樹脂組成物は、特に限定されないが、必要に応じて、前記カチオン重合可能な第1モノマーおよび前記第2モノマーと異なる第3モノマーを含んでも良い。なお、前記カチオン重合可能な第1モノマーおよび前記第2モノマーと異なる第3モノマーとは、構造が異なっていても良いし、分子量が異なっていても良い。
【0058】
前記第3モノマーとしては、特に限定されないが、第1モノマーと併用することにより、反応速度を向上させるものが好ましい。例えば、第1モノマーが環状エーテル基を有するモノマーである場合は、前記第3モノマーとして、エポキシ基を有するモノマーが好ましい。これにより、前記カチオン重合可能な第1モノマーと前記環状オレフィン樹脂との反応速度を向上させることができ、それによって透明性を保持しつつ、導波路の耐熱性を向上させることができる。
【0059】
前記第3モノマーの含有量としては、特に限定されないが、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して1〜25重量部であることが好ましい。これにより、前記第1モノマーとの反応性を向上し、反応工程を短縮することができる。さらに好ましくは、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して前記第3モノマー5〜10重量部であり、これにより、上記反応工程を短縮できることに加えて、架橋密度が向上し耐熱性を向上させることもできる。
【0060】
前記カチオン重合可能な第1モノマー、前記第2モノマーおよび前記第3モノマーの組み合わせとしては、特に限定されないが、3−(シクロヘキシルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、SiXおよび3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3´、4´−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートの組み合わせ、3,3´−(オキシビスメチレン)ビス(3−エチルオキセタン)、1,3−ビス[2−(ノルボルナ−2−エン−5−イル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルプロパンジシロキサン(SiX)および1,2:8,9ジエポキシリモネンの組み合わせ等が挙げられる。
【0061】
前記感光性樹脂組成物は、酸発生剤を含む。これにより、光の照射等により酸を発生させてカチオン重合可能な第1モノマーの重合を促進させることができる。
前記酸発生剤としては、特に限定されないが、光により酸を発生する光酸発生剤、熱により酸を発生する熱酸発生剤等が挙げられる。これらの中でも光照射によりパターニングする光導波路用の感光性樹脂組成物には、光酸発生剤が好ましい。
【0062】
前記光酸発生剤としては、光のエネルギーを吸収してブレンステッド酸あるいはルイス酸を生成するものであれば良く、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類などの化合物を挙げることができる。これらの光酸発生剤は、単独、または複数を組み合わせて使用することができる。
【0063】
光酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して0.01〜0.3重量部であることが好ましく、特に0.02〜0.2重量部が好ましい。含有量が前記範囲内であると、高反応性と光導波路フィルムの透明性を両立することができる。
【0064】
前記感光性樹脂組成物は触媒を含む。前記触媒は、前記環状オレフィン樹脂および前記第2モノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を促進させ得る物質であれば、特に限定されないが、後述する光の照射により、活性化温度が変化する物質であることが好ましい。なかでも、光の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層2を形成することができ、他の層に不要な熱にさらされ、光導波路形成用フィルム2aの特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
【0065】
このような前記触媒としては、下記式(A)および(B)で表される化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
【0066】
(E(R)Pd(Q) (A)
[(E(R) Pd(Q)(LB)][WCA] (B)
式(A)、(B)中、それぞれ、E(R)は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式(B)中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
【0067】
式(A)に従う典型的な触媒としては、Pd(OAc)(P(i−Pr)、Pd(OAc)(P(Cy)、Pd(OCCMe(P(Cy)、Pd(OAc)(P(Cp)、Pd(OCCF(P(Cy)、Pd(OCC(P(Cy)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
【0068】
また、式(B)で表される触媒としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
【0069】
このような式(B)に従う典型的な触媒としては、Pd(OAc)(P(Cy)が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
【0070】
これらの触媒は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
【0071】
また、活性化温度が低下した状態(活性潜在状態)において、触媒としては、その活性化温度が本来の活性化温度よりも10〜80℃程度低くなるものが好ましく、10〜50℃程度低くなるものが特に好ましい。これにより、コア部21とクラッド部22との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
【0072】
このような触媒としては、Pd(OAc)(P(i−Pr)およびPd(OAc)(P(Cy)のうちの少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適である。
【0073】
なお、以下では、Pd(OAc)(P(i−Pr)を「Pd545」と、また、Pd(OAc)(P(Cy)を「Pd785」と略すことがある。
【0074】
また、前記感光性樹脂組成物には、必要に応じて、増感剤を添加するようにしてもよい。
【0075】
前記増感剤は、光に対する光酸発生剤の感度を増大して、光酸発生剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、光酸発生剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
【0076】
このような増感剤としては、光酸発生剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、例えば、9,10−ジブトキシアントラセンのようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いられる。
【0077】
増感剤の具体例としては、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジンが挙げられ、これらを単独または混合物として用いられる。
【0078】
前記感光性樹脂組成物は、上述した環状オレフィン系樹脂、触媒、酸発生剤、第1モノマー、第2モノマー、第3モノマーおよび増感剤以外に、硬化触媒、酸化防止剤等を含んでいても良い。
【0079】
前記感光性樹脂組成物に照射する光としては、紫外線(UV光)が好適に用いられ、紫外線の照射手段としては、水銀灯(高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。これにより、コア層2に対して、300nm未満の十分なエネルギーの光を供給することができ、光酸発生剤を効率よく分解して、環状オレフィン樹脂の脱離基を切断したり、カチオン重合可能な第1モノマー、第2モノマーおよび第3モノマーの重合を促進したりすることができ、屈折率の変調を制御することができる。
【0080】
(光導波路形成用感光性樹脂組成物)
本発明の光導波路形成用感光性樹脂組成物は、上述したような感光性樹脂組成物を光導波路形成用として用いるものである。
そして、この光導波路形成用感光性樹脂組成物を、トルエン、キシレン、メシチレン等の溶媒に溶解して樹脂ワニスを得て、この樹脂ワニスを基板上に塗布・乾燥して光導波路形成用フィルムを得ることができる。
【0081】
(光導波路)
次に、光導波路について説明する。
図1は、光導波路の一例を示す断面図である。 図1に示すように、光導波路10は、第1クラッド層1と、第1クラッド層よりも屈折率の高いコア層2と、コア層2よりも屈折率の低い第2クラッド層3とが積層されている。
コア層2は、コア部21と、コア部21よりも屈折率が低いクラッド部22とで構成されている。なお、コア部21の屈折率は、第1クラッド層1および第2クラッド層3よりも高くなっている。
このような構成を有することにより、コア部21の一端側に入射された光信号は、コア部21と第1クラッド層1、第2クラッド層3およびクラッド部22との界面で全反射し、他端側に伝達され、光通信が可能となる。
本発明の光導波路は、第1クラッド層1、コア層2および第2クラッド層3の構成材料が可撓性に富むこと、また、コア部21に対し、第1クラッド層1、第2クラッド層3およびクラッド部22の屈折率が十分に低いことにより、光損失が少ない。特にコア部21およびクラッド部22間の屈折率差が大きくなることから、曲線状の光導波路を形成した場合にその効果は顕著となる。また、第1クラッド層1、コア層2および第2クラッド層3の構成材料の耐熱性が高いため、260℃の半田リフローに対して高い耐性を有している。
【0082】
(光導波路形成用フィルム)
本発明の光導波路形成用フィルムは、上述した光導波路10のコア層2に好適に用いることができるものである。
例えば、図2に示すような上述の光導波路形成用フィルム2aに、マスク4を用いて光5を照射する。これにより、光導波路形成用フィルム2aに選択的に光5を照射する部分と、未照射部分とを形成することができる。
光5が照射された部分22では、光導波路形成用フィルムを構成している感光性樹脂組成物中の酸発生剤が光照射により酸を発生し、これにより第1モノマーが開環してカチオン重合を開始する。これにより、マトリクス中の未反応モノマーの濃度勾配を解消する力が働き、未照射領域から前記環状オレフィン樹脂より屈折率の低い第1モノマーが一部照射領域へ拡散して重合するために、光が照射された部分22の屈折率が相対的に未照射領域よりも低くなる。
【0083】
さらに、前記環状オレフィン樹脂として、脱離性基を有する環状オレフィン樹脂を使用している場合には、以下の作用が生じる。
光を照射した部分では、光酸発生剤から発生した酸により、環状オレフィン樹脂の脱離性基が脱離することとなる。−Si−アリール構造、−Si−ジフェニル構造、−O−Si−ジフェニル構造および−O−Si−構造等の脱離性基の場合、離脱により樹脂の屈折率が低下することとなる。そのため、照射部分の屈折率は低下することとなる。
【0084】
このように本実施形態の感光性樹脂組成物を使用した場合には、光酸発生剤から発生する酸により、カチオン重合可能な第1モノマーおよび第3モノマーの重合を開始させることが可能である。
【0085】
第1クラッド層1および第2クラッド層3の構成材料は、コア層2より屈折率が低い材料であれば、特に限定されない。これにより、第1クラッド層1および第2クラッド層3とコア部21の界面で、コア部の一端側から入射された光信号は全反射され、光損失を小さくすることができる。
【0086】
第1クラッド層1および第2クラッド層3の構成材料として、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、複合体(積層体)など)用いることができる。
【0087】
これらのうち、特に耐熱性に優れるという点で、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、またはそれらを含むもの(主とするもの)を用いるのが好ましい。
【0088】
特に、第1クラッド層1および第2クラッド層3の構成材料として、環状オレフィン系樹脂、特にノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を含む樹脂材料を用いた場合には、コア層2の構成材料として好適に用いられる材料と同種となるため、コア層2との密着性がさらに高いものとなり、第1クラッド層1および第2クラッド層3とコア層2との間での層間剥離を防止することができる。このようなことから、耐久性に優れた光導波路が得られる。
なお、第1クラッド層1、第2クラッド層3およびクラッド部22の構成材料は、それぞれ、同一(同種)のものでも、異なるものでもよいが、これらは、屈折率が同じかまたは近似しているものであるのが好ましい。
【0089】
第1クラッド層1および第2クラッド層3の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用材料)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法を用いてもよい。
【0090】
第1クラッド層1および第2クラッド層3を塗布法で形成する場合、例えば、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
支持基板は、クラッド層形成後、クラッド層を剥離しやすいものであれば、特に限定されない。例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が好適に用いられる。
【0091】
このようにしてコア部21とクラッド部22とが形成されたコア層2の上下に、第1クラッド層1、第2クラッド層3をラミネートすることで光導波路10を得ることができる。
また、第1クラッド層1に光導波路形成用の感光性樹脂組成物の樹脂ワニスを塗布・乾燥して光導波路用フィルムを形成した後、光を選択的に照射してコア部21、クラッド部22とを有するコア層2を形成し、コア層2に密着するように第2クラッド層3を配置して光導波路10を得ることもできる。
【0092】
このようにして得られた光導波路10は、第1クラッド層1、第2クラッド層3より屈折率の高い材料を用いてコア層2を形成したり、光の照射によりクラッド部22の屈折率を低下させたりすることにより、コア部21と、第1クラッド層1、第2クラッド層3およびクラッド部22との屈折率差を大きくすることができるので光損失を低減することができるものであり、それによって性能に優れる光導波路10を得ることができる。
本発明で得られた光導波路10は、特に半田耐リフロー性に優れる。さらに、光導波路10を水平方向に曲げた場合であっても光損失を少なくすることができる。また、コア部21と、第1クラッド層1、第2クラッド層3およびクラッド部22の屈曲率差が十分に大きいため、垂直方向に曲げた場合であっても耐久性に優れる。
【0093】
以上の光導波路の実施形態では、光を照射した部分の屈折率が低下しクラッド部となる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、光を照射した部分の屈折率が高くなりコア部を形成する場合であっても良い。
【0094】
(光配線および光電気混載基板)
次に、光配線、光電気混載基板について簡単に説明する。
本発明の光配線は、上述したような光導波路10を有している。これにより、導波路製造プロセスにおいて現像やRIE(リアクティブイオンエッチング)などを経る必要がないために加工の自由度を向上することができる。
また、本発明の光電気混載基板は、電気配線と、上述したような光導波路10を有する光配線とを有している。これにより、従来の電気配線で問題となっていたEMI(電磁波障害)の改善が可能となり、従来よりも信号伝達速度を大幅に向上することができる。
【0095】
(電子機器)
また、本発明の電子機器は、上述したような光導波路10を有している。これにより、省スペース化を図ることができる。このような電子機器としては、特に限定されないが、例えば、コンピューター、サーバー、携帯電話、ゲーム機器、メモリーテスター、外観検査ロボット等を挙げることができる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
(1)環状オレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記式(13)で表わされるNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
この下記式(13)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次に、この水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液100mLを加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層に分離した後、水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、下記式(14)で表されるポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量は、GPC測定によりMw=10万、Mn=4万、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。また屈折率はプリズムカプラープリズムカプラー(品番:モデル2010、米国メトリコン社製)により1.55(測定波長;633nm)であった。
【0098】
【化13】


【0099】
【化14】

【0100】
(2)感光性樹脂組成物の調製
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、第一モノマーとして下記式(15)で表されるシクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)1.2g、第二モノマーとしてSiX1.2g、触媒Pd785(プロメラス社製)1.63E−3g(酢酸エチル0.1mL中)、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製)1.3E−2g(酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスV1を調製した。
【0101】
【化15】

【0102】
(3)光導波路の製造
(下層クラッドの作製)
シリコンウエハ上に感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)をドクターブレードにより均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を100mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下層クラッドを形成させた。形成された下層クラッドは、厚みが20μmであり、無色透明であり、屈折率は1.52(測定波長;633nm)であった。
【0103】
(コア領域、クラッド領域の作製)
上記下層クラッド上に、調製して得られた上述の感光性樹脂組成物ワニスV1をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJで選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分間、85℃で30分間、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れたコア層が確認された。
【0104】
(上層クラッドの作製)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるように感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)を積層して上層クラッド用フィルムを得た。
【0105】
(光導波路の作製)
下層クラッド層上に形成したコア層と、上述の上層クラッド用フィルムとを、貼り合わせて、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pワニスを硬化させて、上層クラッドを形成させ、光導波路を得た。このとき、上層クラッドは、無色透明であり、屈折率は1.52であった。
【0106】
(4)評価
(光導波路の損失評価)
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して、得られた光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。尚、測定にはカットバック法を採用した。導波路長を横軸にとり、挿入損失を縦軸にプロットしていったところ、測定値はきれいに直線上に並び、その傾きから伝搬損失は0.03dB/cmと算出することができた。
【0107】
(実施例2)
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、第一モノマーとして下記式(15)で表わされるシクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)1.2g、第二モノマーとしてSiX1.2g、第三モノマーとして下記式(16)で表わされる3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3´、4´−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(セロキサイド2021 ダイセル化学工業株式会社製)0.5g、触媒Pd785(プロメラス社製)1.63E−3g(酢酸エチル0.1mL中)、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製)1.3E−2g(酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスV2を調製した。上記のワニスV2を用いる以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0108】
【化16】

【0109】
(実施例3)
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、第一モノマーとして下記式(17)で表わされる二官能オキセタンモノマー(東亜合成製 DOX、分子量214、沸点119℃/0.67kPa)1.2g、第二モノマーとしてSiX1.2g、触媒Pd785(プロメラス社製)1.63E−3g(酢酸エチル0.1mL中)、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製)1.3E−2g(酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスV3を調製した。
上記のワニスV3を用いる以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0110】
【化17】

【0111】
(実施例4)
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、第一モノマーとして下記式(18)で表わされるエポキシノルボルネンモノマー(分子量180、沸点119℃/0.67kPa)1.2g、第二モノマーとしてSiX1.2g、触媒Pd785(プロメラス社製)1.63E−3g(酢酸エチル0.1mL中)、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製)1.3E−2g(酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスV4を調製した。
上記のワニスV4を用いる以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0112】
【化18】

【0113】
(実施例5)
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、第一モノマーとして式(15)で表わされるシクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)1.2g、第二モノマーとして下記式(19)で表わされるSiX1.2g、触媒Pd785(プロメラス社製)1.63E−3g(酢酸エチル0.1mL中)、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製)1.3E−2g(酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスV5を調製した。上記のワニスV5を用いる以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0114】
【化19】

【0115】
(実施例6)
公知の手法(例えば特開2003−252963号公報)を用いてフェニルエチルノルボルネン(PENB)モノマーの開環メタセシス重合を行い、化学式(20)で表されるノルボルネン系ポリマー#2を得た。
精製した上記ポリマー#2 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、第一モノマーとして式(15)で表わされるシクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)1.2g、第二モノマーとしてSiX1.2g、触媒Pd785(プロメラス社製)1.63E−3g(酢酸エチル0.1mL中)、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製)1.3E−2g(酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスV6を調製した。上記のワニスV6を用いる以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0116】
【化20】

【0117】
(実施例7)
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、第一モノマーとして式(15)で表わされるシクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)1.8g、第二モノマーとしてSiX0.2g、触媒Pd785(プロメラス社製)1.63E−3g(酢酸エチル0.1mL中)、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製)1.3E−2g(酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスV7を調製した。上記のワニスV7を用いる以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0118】
(実施例8)
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、第一モノマーとして式(15)で表わされるシクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)0.8g、第二モノマーとしてSiX1.2g、触媒Pd785(プロメラス社製)1.63E−3g(酢酸エチル0.1mL中)、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製)1.3E−2g(酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスV8を調製した。上記のワニスV8を用いる以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0119】
(比較例1)
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、第二モノマーとしてSiX1.2g、触媒Pd785(プロメラス社製)1.63E−3g(酢酸エチル0.1mL中)、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製)1.3E−2g(酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスV10を調製した。上記のワニスV10を用いる以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0120】
各実施例および比較例で得られた光導波路について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
【0121】
1.光損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して上記光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。尚、測定にはカットバック法を採用し、導波路長を横軸、挿入損失を縦軸にプロットしていったところ、測定値はきれいに直線上に並び、その傾きから伝搬損失を算出した。
【0122】
2.耐熱性
上記光導波路を高温高湿槽(85℃、85%RH)に投入し、湿熱処理500時間後の伝搬損失を評価した。また、リフロー処理(N雰囲気下、最大温度260℃/60秒)による伝搬損失の劣化の有無も並行して確認した。
【0123】
3.光導波路の曲げ損失
10mmの曲率半径を有する光導波路の光強度の曲げ損失を評価した。850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して上記光導波路の端面に導入し、200μmφの光ファイバーで他端から受光を行って光の強度を測定した(下記式参照)。長さの等しい光導波路を曲げたときに生じる損失の増分を「曲げ損失」と定義し、それを曲線部の挿入損失と直線部の挿入損失の差で表した。
挿入損失[dB]= −10log(出射光強度/入射光強度)
曲げ損失=(曲線での挿入損失)−(直線での挿入損失)
【0124】
【表1】

【0125】
表1から明らかなように、実施例1〜8は光損失が低く、光導波路の性能が優れていることが示された。
また、実施例1〜8は、高温高湿処理後およびリフロー処理後の光損失も小さく、耐熱性にも優れていることが示された。
比較例1について、直線の伝搬損失では実施例1〜8と同等に光損失が小さいが、曲げ損失において実施例1〜8の方が優れていることが示された。
【0126】
このような光導波路を使用した光配線、光電気子混載基板および電子機器は優れた性能を有していることが期待される。
【符号の説明】
【0127】
1 第1クラッド層
2 コア層
2a 光導波路形成用フィルム
21 コア部
21a コア部
22 クラッド部
3 第2クラッド層
4 マスク
5 光
10 光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂と、触媒と、酸発生剤と、カチオン重合可能な第1モノマーと、第1モノマーと異なる第2モノマーとを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、前記感光性樹脂組成物は、第1モノマーおよび第2モノマーと異なる第3モノマーを含むものである請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カチオン重合可能な第1モノマーは、前記環状オレフィン系樹脂よりも屈折率が低いものである請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記カチオン重合可能な第1モノマーは、環状エーテル基を有するモノマーである請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記カチオン重合可能な第1モノマーは、オキセタニル基を有するモノマーである請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記カチオン重合可能な第1モノマーの含有量は、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、5〜100重量部である請求項1乃至5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記第2モノマーは前記環状オレフィン系樹脂よりも屈折率が低いものである請求項1乃至6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記第2モノマーは、ノルボルネン系モノマーである請求項1乃至7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記第2モノマーは、官能基を二つ以上有するモノマーである請求項1乃至8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記第2モノマーは、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シランである請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記第2モノマーの含有量は、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、5〜100重量部である請求項1乃至10のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記第3モノマーは、第1モノマーの反応性を向上させるものである請求項2乃至11のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記第3モノマーはエポキシ基を有するモノマーである請求項2乃至12のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記第3モノマーの含有量は、前記環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、1〜25重量部である請求項2乃至13のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
前記第1モノマーと前記第2モノマーとの併用割合(前記第1モノマー/前記第2モノマー)は、90/10〜40/60である請求項1乃至14のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項16】
前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系樹脂である請求項1乃至15のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項17】
さらに、前記感光性樹脂組成物は、増感剤を含むものである請求項1乃至16のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれかに記載の感光性樹脂組成物は、光導波路形成用の感光性樹脂組成物として用いられることを特徴とする光導波路形成用感光性樹脂組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の光導波路形成用感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする光導波路形成用フィルム。
【請求項20】
請求項19に記載の光導波路形成用フィルムに、互いに屈折率の異なるコア部とクラッド部を設けたものである光導波路。
【請求項21】
請求項19に記載の光導波路形成用フィルムに、光を照射することによりクラッド部を形成したものである光導波路。
【請求項22】
請求項20または21に記載の光導波路を備えたことを特徴とする光配線。
【請求項23】
電気配線と、請求項22に記載の光配線とを有することを特徴とする光電気混載基板。
【請求項24】
請求項20または21に記載の光導波路を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−286505(P2010−286505A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137793(P2009−137793)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】