説明

感光性樹脂組成物及びフォトスペーサーの製造方法、並びに、液晶表示装置用基板、液晶表示素子及び液晶表示装置

【課題】形成されるフォトスペーサーが高度の弾性回復性を有し、その高さが均一であり、液晶表示装置における表示ムラを解消し得る感光性樹脂組成物、及びこれを用いたフォトスペーサーの製造方法、並びに、表示ムラの発生を抑制可能な液晶表示装置用基板、液晶表示素子及び液晶表示装置を提供する
【解決手段】重合性化合物と、バインダーと、光重合開始剤とを少なくとも含有する感光性樹脂組成物であって、橋架け環構造を有する基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有し、分子量が2000以下である重合性化合物を含有せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びそれを用いたフォトスペーサーの製造方法、並びに、該フォトスペーサーを備えた液晶表示装置用基板、液晶表示素子及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置は、高画質画像を表示する表示装置に広く利用されている。液晶表示装置は一般に、一対の基板間に所定の配向により画像表示を可能とする液晶層が配置されており、この基板間隔、すなわち液晶層の厚みを均一に維持することが画質を決定する要素の一つであり、そのために液晶層の厚みを一定に保持するためのスペーサーが配設されている。この基板の間の厚みは一般に「セル厚」と称され、セル厚は通常、前記液晶層の厚み、換言すれば、表示領域の液晶に電界をかけている2枚の電極間の距離を示すものである。
【0003】
スペーサーは、従来ビーズ散布により形成されていたが、近年では、感光性組成物を用いてフォトリソグラフィーにより位置精度の高いスペーサーが形成されるようになってきている。このような感光性組成物を用いて形成されたスペーサーは、フォトスペーサーと呼ばれている。
【0004】
感光性組成物を用いてパターニング、アルカリ現像、及びベークを経て作製されたフォトスペーサーは、そのスペーサドットの圧縮強度が弱く、パネル形成時に塑性変形が大きくなる傾向を有している。他方、液晶表示装置における高画質の画像表示には、スペーサドットの塑性変形に起因して液晶層の厚みが設計値より小さくなる等の均一性が保持できない問題や、画像ムラを生ずるといった問題がないことが要求される。また、液晶表示装置の高精度化の点では、感光性組成物のアルカリ現像残渣が生じないことも重要である。
【0005】
上記に関連して、高感度なスペーサー形成用樹脂として、水酸基含有不飽和化合物を含む共重合体に、イソシアネート化合物を反応させた樹脂を用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、セルギャップ精度が高く微細加工が可能なフォトスペーサーを形成可能の感光性組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−84809号公報
【特許文献2】特開2004−12671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の樹脂からなるフォトスペーサーでは弾性回復性及び平坦性の点で十分なものとは言い難かった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、外力が加えられたときに高度の弾性回復性を有しており、例えばフォトスペーサー等の樹脂構造物を形成したときには、その高さのバラツキが少なく、液晶表示装置における表示ムラを解消し得る感光性樹脂組成物、及びこれを用いたフォトスペーサーの製造方法、並びに、表示ムラの発生を抑制可能な液晶表示装置用基板、液晶表示素子及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 橋架け環構造を有する基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有し、分子量が2000以下である重合性化合物と、バインダーと、光重合開始剤とを少なくとも含有する感光性樹脂組成物。
<2> 前記橋架け環構造を有する基は、下記化学式(1)〜化学式(3)のいずれかで表される脂環構造の少なくとも1つを含むことを特徴とする前記<1>に記載の感光性樹脂組成物。
【0008】
【化1】



【0009】
<3> 前記橋架け環構造を有する基は、ケイ素原子と酸素原子との化学結合を6つ以上含む基であることを特徴とする前記<1>に記載の感光性樹脂組成物。
<4> 前記バインダーは、分岐及び/又は脂環構造と、酸性基と、エチレン性不飽和結合とをそれぞれ側鎖に有することを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<5> フォトスペーサー作製用であることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【0010】
<6> 2枚の支持体と、前記支持体間に設けられた液晶と、前記液晶に電界を印加する2枚の電極と、前記支持体間のセル厚を規制するためのフォトスペーサーとを少なくとも備えた液晶表示装置における前記フォトスペーサーの製造方法であって、前記2枚の支持体における互いに対向する面の一方の上に、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を形成する層形成工程と、前記感光性樹脂層を露光及びアルカリ現像してパターン形成するパターニング工程と、を有するフォトスペーサーの製造方法。
<7> 前記層形成工程は、仮支持体上に前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物で構成された感光性樹脂層を有する感光性転写材料を用い、前記感光性樹脂層を前記2枚の支持体における互いに対向する面の一方に接するように転写して感光性樹脂層を形成する転写工程を含む前記<6>に記載のフォトスペーサーの製造方法。
<8> 前記層形成工程は、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含む溶液を前記2枚の支持体における互いに対向する面の一方の上に塗布し、乾燥して感光性樹脂層を形成する工程を含む前記<6>に記載のフォトスペーサーの製造方法。
【0011】
<9> 前記<6>〜<8>のいずれか1項に記載のフォトスペーサーの製造方法により製造されたフォトスペーサーを備えた液晶表示装置用基板。
<10> 前記<9>に記載の液晶表示装置用基板を備えた液晶表示素子。
<11> 前記<10>に記載の液晶表示素子を備えた液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外力が加えられたときに高度の弾性回復性を有しており、例えばフォトスペーサー等の樹脂構造物を形成したときには、その高さのバラツキが少なく、液晶表示装置における表示ムラを解消し得る感光性樹脂組成物、及びこれを用いたフォトスペーサーの製造方法、並びに、表示ムラの発生を抑制可能な液晶表示装置用基板、液晶表示素子及び液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<感光性樹脂組成物及びフォトスペーサーの製造方法>
本発明の感光性樹脂組成物は、橋架け環構造を有する基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有し、分子量が2000以下である重合性化合物の少なくとも1種と、バインダーの少なくとも1種と、光重合開始剤の少なくとも1種とを少なくとも含有する。本発明の感光性樹脂組成物により製造される例えばフォトスペーサー等の樹脂構造物は、外力を受けた場合に高度の弾性回復性を有する。そのため、例えばフォトスペーサーを作製して表示装置とした場合には、表示装置における表示ムラの発生を抑制することができる。
【0014】
また、本発明のフォトスペーサーの製造方法は、2枚の支持体と、前記支持体間に設けられた液晶と、前記液晶に電界を印加する2枚の電極と、前記支持体間のセル厚を規制するためのフォトスペーサーとを少なくとも備えた液晶表示装置における前記フォトスペーサーを製造する方法であり、前記2枚の支持体における互いに対向する面の一方の上に、本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を形成する層形成工程を有する。
【0015】
本発明のフォトスペーサーの製造方法によれば、高度の弾性回復性を有するフォトスペーサーを容易に製造できる。
以下、本発明のフォトスペーサーの製造方法について説明し、該説明を通じて本発明の感光性組成物の詳細についても述べる。
【0016】
[層形成工程]
本発明における層形成工程は、支持体上に本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(以下、単に「感光性樹脂層」とも言う。)を形成する工程である。
この感光性樹脂層は、後述する製造工程を経て、弾性回復性が良好でセル厚を均一に保持し得るフォトスペーサーを構成する。該フォトスペーサーを用いることにより特にセル厚の変動で表示ムラが生じやすい表示装置における画像中の表示ムラが効果的に解消される。
【0017】
支持体上に感光性樹脂層を形成する方法としては、(a)本発明の感光性組成物を含む溶液を公知の塗布法により塗布する方法、及び(b)感光性樹脂転写材料を用いた転写法によりラミネートする方法が好適に挙げられる。以下、各々について述べる。
【0018】
(a)塗布法
感光性組成物の塗布は、公知の塗布法、例えば、スピンコート法、カーテンコート法、スリットコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、あるいは米国特許第2681294号明細書に記載のポッパーを使用するエクストルージョンコート法等により行なうことができる。中でも、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリットノズルあるいはスリットコーターによる方法が好適である。
【0019】
(b)転写法
転写による場合、感光性樹脂転写材料を用いて、仮支持体上に膜状に形成された感光性樹脂層を支持体面に加熱及び/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着することによって貼り合せた後、仮支持体の剥離により感光性樹脂層を支持体上に転写する。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネーター及びラミネート方法が挙げられ、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
【0020】
仮支持体上に感光性樹脂層を形成する場合、感光性樹脂層と仮支持体間には更に酸素遮断層(以下、「酸素遮断膜」または「中間層」とも言う。)を設けることができる。これにより露光感度をアップすることができる。また、転写性を向上させるためにクッション性を有する熱可塑性樹脂層を設けてもよい。
該感光性転写フイルムを構成する仮支持体、酸素遮断層、熱可塑性樹脂層、その他の層や該感光性転写フイルムの作製方法については、特開2006−23696号公報の段落番号[0024]〜[0030]に記載の構成、作製方法と同様である。
【0021】
(a)塗布法、(b)転写法共に感光性樹脂層を塗布形成する場合、その層厚は0.5〜10.0μmが好ましく、1〜6μmがより好ましい。層厚が前記範囲であると、製造時における塗布形成の際のピンホールの発生が防止され、未露光部の現像除去を長時間を要することなく行なうことができる。
【0022】
感光性樹脂層を形成する支持体としては、例えば、透明基板(例えばガラス基板やプラスチックス基板)、透明導電膜(例えばITO膜)付基板、カラーフィルタ付きの基板(カラーフィルタ基板ともいう。)、駆動素子(例えば薄膜トランジスタ[TFT])付駆動基板、などが挙げられる。支持体の厚みとしては、700〜1200μmが一般に好ましい。
【0023】
〜感光性樹脂組成物〜
次に、感光性樹脂組成物について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、橋架け環構造を有する基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有し、分子量が2000以下である重合性化合物(以下、「重合性化合物(B)」ということがある)と、バインダーと、光重合開始剤とを少なくとも含有する。また、必要に応じて、着色剤や界面活性剤等のその他の成分を用いて構成することができる。
前記感光性樹脂組成物は、フォトスペーサー作製用に特に好ましく用いられる。
【0024】
−重合性化合物−
本発明における重合性化合物は、橋架け環構造を有する基の少なくとも1種を含む。前記橋架け環構造としては特に制限はなく、環構造を構成する隣り合わない2つの原子が別の原子を介して互いに結合した構造を有していればよく、炭化水素からなる脂環構造を有するものであっても、ケイ素原子と酸素原子との化学結合(シロキサン結合)を含む環構造を有するものであってもよい。
【0025】
脂環構造を有する橋架け環構造の具体例としては、例えば、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、トリシクロペンタニル基、トリシクロペンタジエン基、及びジシクロペンタジエン基等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、弾性回復性の観点から、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロデシル基、トリシクロペンテニル基、トリシクロペンタニル基、トリシクロペンタジエン基、及びジシクロペンタジエン基等が好ましく、更にイソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンタジエン基、及びジシクロペンタジエン基等がより好ましく、下記化学式(1)〜化学式(3)のいずれかで表される脂環構造の少なくとも1つであることが特に好ましい。
【0027】
【化2】



【0028】
ここで、上記化学式(1)〜化学式(3)のいずれかで表される脂環構造を有する基とは、化学式(1)〜化学式(3)のいずれかで表される脂環式化合物から少なくとも1つの水素原子を取り除いて形成される基を意味する。
【0029】
また本発明においては前記橋架け環構造を有する基は、ケイ素原子と酸素原子との化学結合(シロキサン結合)を6つ以上含む環構造を有する基であることもまた好ましい。ケイ素原子と酸素原子との化学結合を6つ以上含む環構造を有する基とエチレン性不飽和結合を有する基とを含む重合性化合物としては、例えば、下記化学式(A)で表されるカゴ状構造を有する重合性化合物を挙げることができる。
【0030】
【化3】



【0031】
化学式(A)中、R〜Rはアルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルアルキル基、又は(メタ)アクリロイルアリール基であって、少なくとも1つは(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルアルキル基、又は(メタ)アクリロイルアリール基を表し、R〜Rは同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0032】
また、前記重合性化合物はエチレン性不飽和結合を有する基の少なくとも1種を含む。エチレン性不飽和結合を有する基としては特に制限はなく、具体的には例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を挙げることができる。中でもアクリロイル基、メタクリロイル基であることが好ましい。
特に、橋架け環構造を有する基がシロキサン結合を6つ以上含む環構造を有する基である場合には、弾性回復性の観点から、エチレン性不飽和結合を有する基が4つ以上含まれることが好ましく、6つ以上含まれることがより好ましい。
【0033】
本発明における橋架け環構造を有する基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する重合性化合物の分子量は2000以下である。感光性樹脂組成物によって形成される樹脂膜の平坦性の観点から、分子量が100〜2000であることが好ましく、200〜1500であることがより好ましい。分子量が2000を超えると感光性樹脂組成物によって形成される樹脂膜の平坦性が低下する傾向があり、フォトスペーサーを形成した場合にフォトスペーサーの高さが不揃いになることがある。
【0034】
前記橋架け環構造を有する基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有し、分子量が2000以下の重合性化合物としては、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
橋掛け環構造が脂環構造を有する重合性化合物の市販品としては、例えば、日立化成工業(株)製:FA−511A、FA−512A(S)、FA−512M、FA−513A、FA−513M、ADMA等が挙げられる。これらの中でもフォトスペーサーの高さ分布と変形回復率に優れる点で、FA-512A、FA-513A、ADMAが好ましい。
【0035】
また、橋架け環構造がシロキサン結合を含む重合性化合物の市販品としては、ハイブリッドプラスチックス社製のPOSSシリーズを挙げることができ、具体的にはAcrylIsobutyl POSS MA0701、Acrylo POSS Cage Mixture MA0736が挙げられる。
【0036】
本発明における前記重合性化合物としては、橋架け環構造として前記化学式(1)〜化学式(3)のいずれかで表される脂環構造と、エチレン性不飽和結合を有する基として(メタ)アクリロイル基とを有し、分子量が100〜2000である重合性化合物、又は橋架け環構造として前記化学式(A)で表されるシロキサン結合を含む環構造と、エチレン性不飽和結合を有する基として(メタ)アクリロイル基とを有し、分子量が200〜2000である重合性化合物であることが特に好ましい。
【0037】
本発明における重合性化合物は、橋架け環構造を有する基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有し、分子量が2000以下の重合性化合物であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合性化合物を併用してもよい。他の重合性化合物としては、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号[0011]に記載のモノマー又はオリゴマーを挙げることができる。
また、本発明における重合性化合物は、1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物において、重合性化合物(B)と他の重合性化合物との合計の含有率としては、全固形分に対して5〜80質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。重合性化合物の含有率が前記範囲内であることにより、良好な弾性回復性を得ることができ、良好な面状の感光性樹脂層を形成することができる。
また、全重合性化合物中の重合性化合物(B)の含有比率(重合性化合物(B)/全重合性化合物)としては、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
【0039】
−バインダー−
本発明の感光性樹脂組成物は、バインダー(高分子樹脂)の少なくとも1種を含有する。本発明におけるバインダーとしては、側鎖にカルボキシ基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマー、それ自体が重合性を有する特開2003−131379の段落番号[0031]〜[0054]に記載の光により重合可能なアリル基を有する高分子樹脂が好ましい例として挙げられる。
中でも、弾性回復性の観点から、分岐及び/又は脂環構造と、酸性基と、エチレン性不飽和結合とをそれぞれ側鎖に有する高分子樹脂(以下、「樹脂(A)」ということがある)であることが好ましい。
【0040】
バインダーは、目的に応じて適宜選択した単量体の単独重合体、複数の単量体からなる共重合体のいずれであってもよく、1種単独で用いる以外に、2種以上を併用するようにしてもよい。
側鎖にカルボキシ基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーの例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また、側鎖にカルボキシ基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、また、この他にも水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく用いることができる。また、特に好ましい例としては、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や,ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。
【0041】
アリル基を有する高分子樹脂を構成する単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニル化合物、アリル基含有(メタ)アクリレート、等が挙げられる。尚、本明細書中において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを表す。
これら単量体は、1種単独で用いる以外に2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、トリルアクリレート、ナフチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、等が好適に挙げられる。
【0043】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも特に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシn−プロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシn−ブチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0044】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、等が好適に挙げられる。
【0045】
前記アリル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、2−メチルアリルアクリレート、クロチルアクリレート、クロルアリルアクリレート、フェニルアリルアクリレート、シアノアリルアクリレート、等が挙げられ、中でもアリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0046】
上記したバインダーの中でも、アリル基含有(メタ)アクリレートをモノマーユニットとして少なくとも有する樹脂が好ましく、アリル基含有(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸及びアリル基非含有(メタ)アクリレートから選択されるモノマーとをモノマーユニットとして有する樹脂がより好ましい。
【0047】
前記バインダーの好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸(M)とアリル(メタ)アクリレート(M)との二元共重合樹脂〔好適な共重合比[モル比]はM:M=2〜90:10〜98〕や、(メタ)アクリル酸(M)とアリル(メタ)アクリレート(M)とベンジル(メタ)アクリレート(M)との三元共重合樹脂〔好適な共重合比[モル比]はM:M:M=5〜40:20〜90:5〜70〕などが挙げられる。
【0048】
前記バインダーがアリル基を有する場合のアリル基含有モノマーの含有率としては、10モル%以上が好ましく、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは15〜90モル%、更に好ましくは20〜85モル%である。
【0049】
本発明におけるバインダーとしては、分岐及び/又は脂環構造と、酸性基と、エチレン性不飽和結合とをそれぞれ側鎖に有する高分子樹脂(「樹脂(A)」)であることが好ましい。また、前記樹脂(A)は必要に応じてその他の基を側鎖に更に有していてもよい。
【0050】
(分岐及び/又は脂環構造)
本発明におけるバインダーは、樹脂の主鎖に結合する側鎖に、分岐及び/又は脂環構造の少なくとも1種を含むことが好ましい。分岐及び/又は脂環構造は、バインダーの側鎖中に複数含まれていてもよい。また、分岐及び/又は脂環構造は、バインダーの側鎖中に、酸性基及び/又はエチレン性不飽和結合とともに含まれていてもよい。
また、分岐及び/又は脂環構造は、バインダーの主鎖に直接結合して分岐及び/又は脂環構造のみでバインダーの側鎖を構成されていてもよいし、バインダーの主鎖に2価の有機連結基を介して結合し、分岐及び/又は脂環構造を有する基としてバインダーの側鎖を構成されていてもよい。
【0051】
前記2価の有機連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、エステル基、アミド基、及びエーテル基から選ばれる一つ又は組み合わせが好ましい。前記アルキレン基としては、総炭素数1〜20のアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは1〜10が好ましい。具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、オクチレン、ドデシレン、オクタデシレンなどが挙げられ、これらは分岐/環状構造、官能基を有していてもよく、さらに好ましくは、メチレン基、エチレン基、オクチレン基が好ましい。前記アリーレン基としては、総炭総数6〜20のアリーレン基が好ましく、さらに好ましくは6〜12が好ましい。具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基などが挙げられ、これらは分岐、官能基を有していてもよく、さらに好ましくは、フェニレン基、ビフェニレン基が好ましい。
【0052】
分岐及び/又は脂環構造は、合成の容易さの点から、少なくともエステル基(−COO−)を介してバインダーの主鎖に結合されている形態が好ましい。この形態は、分岐及び/又は脂環構造がエステル基(−COO−)のみを介してバインダーの主鎖に結合されている形態に限られず、分岐及び/又は脂環構造がエステル基(−COO−)を含む2価の連結基を介してバインダーの主鎖に結合されている形態であってもよい。すなわち、分岐及び/又は脂環構造とエステル鎖との間、及び/又は、エステル鎖とバインダーの主鎖との間に、他の原子や他の連結基が含まれていてもよい。
【0053】
前記分岐構造としては、炭素原子数3〜12個の分岐状のアルキル基が挙げられ、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、i−アミル基、t−アミル基、3−オクチル、t−オクチル等が好ましい。これらの中でも、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基等がより好ましく、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が特に好ましい。
【0054】
前記脂環構造としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基が挙げられ、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、及びトリシクロペンタニル基等並びにこれらを有する基が好ましい。これらの中でも、ジシクロペンテニル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、トリシクロペンテニル基、トリシクロペンタニル基等がより好ましく、ジシクロペンテニル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロペンテニル基等が更に好ましく、ジシクロペンテニル基が特に好ましい。
【0055】
更には、分岐及び/又は脂環構造を有する基として、下記一般式(1)で表される基を有して構成された形態が好ましい。
【化4】



【0056】
一般式(1)において、xは1又は2を表し、m及びnは各々独立に0〜15の整数を表す。
【0057】
バインダーの側鎖に分岐及び/又は脂環構造を導入するための単量体としては、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、(メタ)アクリレート類がより好ましい。
【0058】
バインダーの側鎖に分岐構造を導入するための具体的な単量体としては、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸sec−iso−アミル、(メタ)アクリル酸2−オクチル、(メタ)アクリル酸3−オクチル、(メタ)アクリル酸t−オクチル等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等が好ましく、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸t−ブチル等がより好ましい。
【0059】
バインダーの側鎖に脂環構造を導入するための単量体としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1]ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸2,2,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンテニル等が挙げられる。
【0060】
これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、圧縮弾性率、弾性回復性が良好になる点で、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンテニルなどが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンテニルが特に好ましい。
【0061】
また、バインダーの側鎖に脂環構造を導入するための単量体としては、下記一般式(2)又は(3)で表される化合物が挙げられる。ここで、一般式(2)、(3)において、xは1又は2を表し、Rは水素又はメチル基を表す。m及びnはそれぞれ独立に0〜15を表す。一般式(2)、(3)の中でも、x=1又は2、m=0〜8、n=0〜4が好ましく、m=1〜4、n=0〜2がより好ましい。一般式(2)又は(3)で表される化合物の好ましい具体例として、下記化合物D−1〜D−5、T−1〜T−8が挙げられる。
【0062】
【化5】



【0063】
【化6】



【0064】
【化7】



【0065】
バインダーの側鎖に脂環構造を導入するための単量体としては、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、日立化成工業(株)製:FA−511A、FA−512A(S)、FA−512M、FA−513A、FA−513M、TCPD−A、TCPD−M、H−TCPD−A、H−TCPD−M、TOE−A、TOE−M、H−TOE−A、H−TOE−M等が挙げられる。これらの中でも現像性に優れ、変形回復率に優れる点で、FA−512A(S)、512Mが好ましい。
【0066】
(酸性基)
バインダーは、主鎖に連結する側鎖に、酸性基の少なくとも1種を含むことが好ましい。酸性基は、側鎖中に複数含まれていてもよい。また、酸性基は、バインダーの側鎖中に、前記分岐及び/又は脂環構造、並びにエチレン性不飽和結合とともに含まれていてもよい。
また、酸性基は、バインダーの主鎖に直接結合し酸性基のみでバインダーの側鎖を構成してもよいし、バインダーの主鎖に2価の有機連結基を介して結合し、酸性基を有する基としてバインダーの側鎖を構成してもよい。ここで、2価の有機連結基については前記分岐及び/又は脂環構造における説明で例示した2価の有機連結基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0067】
前記酸性基としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホンアミド基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。これらの中でも、現像性、及び硬化膜の耐水性が優れる点から、カルボキシ基、フェノール性水酸基であることが好ましい。
【0068】
前記酸性基をバインダーに導入するための単量体としては、特に制限はなく、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。
【0069】
前記酸性基をバインダーに導入するための単量体の具体例としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、α−シアノ桂皮酸、アクリル酸ダイマー、水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0070】
前記水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物に用いられる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記環状酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0071】
前記酸性基をバインダーに導入するための単量体の市販品としては、東亜合成化学工業(株)製:アロニックスM−5300、アロニックスM−5400、アロニックスM−5500、アロニックスM−5600、新中村化学工業(株)製:NKエステルCB−1、NKエステルCBX−1、共栄社油脂化学工業(株)製:HOA−MP、HOA−MS、大阪有機化学工業(株)製:ビスコート#2100等が挙げられる。これらの中でも現像性に優れ、低コストである点で(メタ)アクリル酸等が好ましい。
【0072】
(エチレン性不飽和基)
本発明におけるバインダーは、主鎖に連結する側鎖に、エチレン性不飽和結合の少なくとも1種を含むことが好ましい。このエチレン性不飽和結合は、側鎖中に複数含まれていてもよい。また、エチレン性不飽和結合は、バインダーの側鎖中に、前記分岐及び/又は脂環構造、並びに/又は前記酸性基とともに含まれていてもよい。
【0073】
また、エチレン性不飽和結合は、バインダーの主鎖との間に少なくとも1つのエステル基(−COO−)を介して結合し、エチレン性不飽和結合とエステル基のみでバインダーの側鎖を構成していてもよい。また、バインダーの主鎖とエステル基との間、及び/又は、エステル基とエチレン性不飽和結合との間に、さらに2価の有機連結基を有してもよく、エチレン性不飽和結合は「エチレン性不飽和結合を有する基」としてバインダーの側鎖を構成していてもよい。ここで、2価の有機連結基については、分岐及び/又は脂環構造における説明で例示した2価の有機連結基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0074】
エチレン性不飽和結合としては、(メタ)アクリロイル基を導入して配されることが好ましい。
バインダーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法は、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、ヒドロキシル基を持つ繰り返し単位にイソシアネート基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、イソシアネート基を持つ繰り返し単位にヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法などが挙げられる。
その中でも、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法が最も製造が容易であり、低コストである点で好ましい。
【0075】
前記エチレン性不飽和結合及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、これらを有すれば特に制限はないが、例えば、下記構造式(1)で表される化合物及び下記構造式(2)で表される化合物が好ましい。
【0076】
【化8】



【0077】
ただし、前記構造式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは有機基を表す。
【0078】
【化9】



【0079】
ただし、前記構造式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは有機基を表す。Wは4〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。
【0080】
前記構造式(1)で表される化合物及び構造式(2)で表される化合物の中でも、構造式(1)で表される化合物が構造式(2)よりも好ましい。前記構造式(1)及び(2)においては、L及びLがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基のものがより好ましい。
【0081】
前記構造式(1)で表される化合物又は構造式(2)で表される化合物としては、特に制限はないが、例えば、以下の例示化合物(1)〜(10)が挙げられる。
【0082】
【化10】



【0083】
前記その他の基を有する単量体としては、特に制限はなく、例えば分岐及び/又は脂環構造を持たない(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルエーテル、二塩基酸無水物基、ビニルエステル基、炭化水素アルケニル基等を有する単量体などが挙げられる。
【0084】
前記ビニルエーテル基としては、特に制限はなく、例えば、ブチルビニルエーテル基などが挙げられる。
前記二塩基酸無水物基としては、特に制限はなく、例えば、無水マレイン酸基、無水イタコン酸基などが挙げられる。
前記ビニルエステル基としては、特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル基などが挙げられる。
前記炭化水素アルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン基、イソプレン基などが挙げられる。
【0085】
バインダーの具体例としては、例えば、下記構造で表される化合物(例示化合物P−1〜P−35)が挙げられる。
また、例示化合物中のx、y、及びzは、各繰り返し単位の組成比(質量比)を表し、後述の好ましい範囲で構成する形態が好適である。また、各例示化合物の重量平均分子量も、後述の好ましい範囲で構成する形態が好適である。
【0086】
【化11】



【0087】
【化12】



【0088】
【化13】



【0089】
【化14】



【0090】
【化15】



【0091】
【化16】



【0092】
【化17】



【0093】
<合成法>
本発明における樹脂(A)は、モノマーの(共)重合反応の工程とエチレン性不飽和基を導入する工程の二段階の工程から合成することができる。
まず、(共)重合反応は種々のモノマーの(共)重合反応によって作られ、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、重合の活性種については、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などを適宜選択することができる。これらの中でも合成が容易であり、低コストである点からラジカル重合であることが好ましい。また、重合方法についても特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、バルク重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などを適宜選択することができる。これらの中でも、溶液重合法であることがより望ましい。
【0094】
本発明における樹脂(A)の総炭素数としては、弾性係数(硬さ)の点で、10以上が好ましい。中でも、総炭素数は、10〜30がより好ましく、特に好ましくは10〜15である。
【0095】
<分子量>
本発明における樹脂(A)の分子量は、重量平均分子量で10,000〜10万が好ましく、12,000〜60,000が更に好ましく、15,000〜45,000が特に好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、樹脂(好ましくは共重合体)の製造適性、現像性の点で望ましい。また、溶融粘度の低下により形成された形状が潰れ難い点で、また、架橋不良となり難い点、現像でのスペーサー形状の残渣がない点で好ましい。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定される。GPCについては、後記する実施例の項で詳細に示す。
【0096】
<ガラス転移温度>
本発明における樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、40〜180℃であることが好ましく、45〜140℃であることはより好ましく、50〜130℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するスペーサーが得られる。
【0097】
<酸価>
本発明における特定樹脂の酸価は、とりうる分子構造により好ましい範囲が変動するが、一般には20mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることはより好ましく、70〜130mgKOH/gであることが特に好ましい。酸価が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するスペーサーが得られる。
【0098】
前記本発明における樹脂(A)は、良好な現像性、力学強度を有するスペーサーが得られる点で、ガラス転移温度(Tg)が40〜180℃であり、かつ重量平均分子量が10,000〜100,000であることが好ましい。
更に、前記本発明における樹脂(A)の好ましい例は、好ましい前記分子量、ガラス転移温度(Tg)、及び酸価のそれぞれの組合せがより好ましい。
【0099】
本発明における樹脂(A)は、分岐及び/又は脂環構造と、酸性基と、エチレン性不飽和結合と、をそれぞれ別の繰り返し単位(共重合単位)に有する3元共重合以上の共重合体であることが、パターン構造物(例えばカラーフィルタ用のスペーサー)を形成したときの変形回復率、現像残渣、レチキュレーションの観点から好ましい。
具体的には、本発明における樹脂(A)は、分岐及び/又は脂環構造を有する繰り返し単位:X(xモル%)と、酸性基を有する繰り返し単位:Y(yモル%)と、エチレン性不飽和結合を有する繰り返し単位:Z(zモル%)と、を少なくとも有する3元共重合以上の共重合体であることが好ましい。さらに、必要に応じて、その他の繰り返し単位:L(lモル%)を有していてもよい。
このような共重合体は、例えば、分岐及び/又は脂環構造を有する単量体と、酸性基を有する単量体と、エチレン性不飽和結合を有する単量体と、必要に応じて他の単量体と、を共重合させて得ることができる。
【0100】
前記本発明における樹脂(A)が共重合体である場合の共重合組成比については、ガラス転移温度と酸価を勘案して決定される。一概に言えないが、下記の範囲とすることができる。
本発明における樹脂(A)における、分岐及び/又は脂環構造を有する繰り返し単位の組成比(x)は、10〜70モル%が好ましく、15〜65モル%が更に好ましく、20〜60モル%が特に好ましい。組成比(x)が前記範囲内であると、良好な現像性が得られると共に、画像部の現像液耐性も良好である。
本発明における樹脂(A)における、酸性基を有する繰り返し単位の組成比(y)は、5〜70モル%が好ましく、10〜60モル%が更に好ましく、20〜50モル%が特に好ましい。組成比(y)が前記範囲内であると、良好な硬化性、現像性が得られる。
本発明における樹脂(A)における、エチレン性不飽和結合を有する繰り返し単位の組成比(z)は、10〜70モル%が好ましく、20〜70モル%が更に好ましく、30〜70モル%が特に好ましい。組成比(z)が前記範囲内であると、顔料分散性に優れると共に、現像性及び硬化性も良好である。
更には、本発明における特定樹脂としては、組成比(x)が10〜70モル%(更には15〜65モル%、特には20〜50モル%)であって、組成比(y)が5〜70モル%(更には10〜60モル%、特には30〜70モル%)であって、組成比(z)が10〜70モル%(更には20〜70モル%、特には30〜70モル%)である場合が好ましい。
【0101】
前記本発明における樹脂(A)の含有量としては、重合性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
本発明における樹脂(A)は、前述したその他の樹脂と併用できるが、前記本発明における樹脂(A)のみで構成される場合が好ましい。
また、前記樹脂(A)に対する、重合性化合物(B)と他の重合性化合物との総量(M)の比率(M/A)としては、0.5〜2.0であることが好ましく、0.7〜1.7であることがより好ましい。
【0102】
−光重合開始剤−
光重合開始剤としては、およそ300nm〜500nmの波長領域に約50以上の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有しているものが好ましく、例えば、特開平2−48664号公報、特開平1−152449号公報、及び特開平2−153353号公報に記載の芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類、ハロゲン化炭化水素誘導体、ケトン化合物、ケトオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、などが挙げられる。
【0103】
上記の中でも、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体との組合せ、2,4−ビス−(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノ)−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジンなどが好ましい。
【0104】
上記の光重合開始剤は、1種単独で用いる以外に、2種以上を併用するようにしてもよい。本発明の感光性樹脂組成物中における光重合開始剤の含有率としては、前記重合性化合物の固形分量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0105】
本発明に係る感光性樹脂層には、上記した高分子物質、重合性モノマー、及び光重合開始剤の他、染料、顔料等の着色剤を含有してもよい。好ましい顔料の種類、サイズ等については、例えば特開平11−149008号公報の記載から適宜選択することができる。顔料等の着色剤を含有させた場合は、着色画素を形成することができる。また、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を添加することもできる。
【0106】
[パターニング工程]
本発明におけるパターニング工程は、支持体上に形成された感光性樹脂層を露光及び現像してパターニングする。パターニング工程の具体例としては、特開2006−64921号公報の段落番号[0071]〜[0077]に記載の形成例や、特開2006−23696号公報の段落番号[0040]〜[0051]に記載の工程などが、本発明においても好適な例として挙げられる。
【0107】
本発明のフォトスペーサーは、ブラックマトリクス等の黒色遮蔽部及び着色画素等の着色部を含むカラーフィルタを形成した後に形成することができる。
前記黒色遮蔽部及び着色部とフォトスペーサーとは、感光性組成物を塗布する塗布法と感光性組成物からなる感光性樹脂層を有する転写材料を用いる転写法と、を任意に組合せて形成することが可能である。
前記黒色遮蔽部及び着色部並びに前記フォトスペーサーはそれぞれ感光性組成物から形成でき、具体的には、例えば、基板に液体の前記感光性組成物を直接塗布することにより感光性樹脂層を形成した後に、露光・現像を行い、前記黒色遮蔽部及び着色部をパターン状に形成し、その後、別の液体の前記感光性組成物を前記基板とは異なる別の基板(仮支持体)上に設置して感光性樹脂層を形成することにより作製された転写材料を用い、この転写材料を前記黒色遮蔽部及び着色部が形成された前記基板に密着させて感光性樹脂層を転写した後に、露光・現像を行うことによりフォトスペーサーをパターン状に形成することができる。このようにして、フォトスペーサーが設けられたカラーフィルタを作製することができる。
【0108】
<液晶表示装置用基板>
本発明の液晶表示装置用基板は、前記本発明のフォトスペーサーの製造方法により得られたフォトスペーサーを備えたものである。フォトスペーサーは、支持体上に形成されたブラックマトリクス等の表示用遮光部の上やTFT等の駆動素子上に形成されることが好ましい。また、ブラックマトリクス等の表示用遮光部やTFT等の駆動素子とフォトスペーサーとの間にITO等の透明導電層(透明電極)やポリイミド等の液晶配向膜が存在していてもよい。
【0109】
例えば、フォトスペーサーが表示用遮光部や駆動素子の上に設けられる場合、該支持体に予め配設された表示用遮光部(ブラックマトリクスなど)や駆動素子を覆うようにして、例えば感光性樹脂転写フイルムの感光性樹脂層を支持体面にラミネートし、剥離転写して感光性樹脂層を形成した後、これに露光、現像、加熱処理等を施してフォトスペーサーを形成することによって、本発明の液晶表示装置用基板を作製することができる。
本発明の液晶表示装置用基板には更に、必要に応じて赤色(R)、青色(B)、緑色(G)3色等の着色画素が設けられていてもよい。
【0110】
<液晶表示素子>
前記本発明の液晶表示装置用基板を設けて液晶表示素子を構成することができる。液晶表示素子の1つとして、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む。)を少なくとも備えたものが挙げられる。
【0111】
この場合、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されているカラーフィルタ基板として構成できる。このカラーフィルタ基板には、高さ均一で弾性回復性に優れたフォトスペーサーが設けられるため、該カラーフィルタ基板を備えた液晶表示素子は、カラーフィルタ基板と対向基板との間にセルギャップムラ(セル厚変動)の発生が抑えられ、色ムラ等の表示ムラの発生を効果的に防止することができる。これにより、作製された液晶表示素子は鮮やかな画像を表示できる。
【0112】
また、液晶表示素子の別の態様として、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段とを少なくとも備え、前記液晶駆動手段がアクティブ素子(例えばTFT)を有し、かつ一対の基板間が高さ均一で弾性回復性に優れたフォトスペーサーにより所定幅に規制して構成されたものである。
この場合も、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されたカラーフィルタ基板として構成されている。
【0113】
本発明において使用可能な液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、強誘電液晶が挙げられる。
また、前記カラーフィルタ基板の前記画素群は、互いに異なる色を呈する2色の画素からなるものでも、3色の画素、4色以上の画素からなるものであってもよい。例えば3色の場合、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3つの色相で構成される。RGB3色の画素群を配置する場合には、モザイク型、トライアングル型等の配置が好ましく、4色以上の画素群を配置する場合にはどのような配置であってもよい。カラーフィルタ基板の作製は、例えば2色以上の画素群を形成した後既述のようにブラックマトリックスを形成してもよいし、逆にブラックマトリックスを形成した後に画素群を形成するようにしてもよい。RGB画素の形成については、特開2004−347831号公報等を参考にすることができる。
【0114】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示装置用基板を設けて構成されたものである。また、本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示素子を設けて構成されたものである。すなわち、互いに向き合うように対向配置された一対の基板間を既述のように、本発明のフォトスペーサーの製造方法により作製されたフォトスペーサーで所定幅に規制し、規制された間隙に液晶材料を封入(封入部位を液晶層と称する。)して構成されており、液晶層の厚さ(セル厚)が所望の均一厚に保持されるようになっている。
【0115】
液晶表示装置における液晶表示モードとしては、STN型、TN型、GH型、ECB型、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、VA型、IPS型、OCB型、ASM型、その他種々のものが好適に挙げられる。中でも、本発明の液晶表示装置においては、最も効果的に本発明の効果を奏する観点から、液晶セルのセル厚の変動により表示ムラを起こし易い表示モードが望ましく、セル厚が2〜4μmであるVA型表示モード、IPS型表示モード、OCB型表示モードに構成されるのが好ましい。
【0116】
本発明の液晶表示装置の基本的な構成態様としては、(a)薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、(b)駆動基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサーを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、等が挙げられ、本発明の液晶表示装置は、各種液晶表示機器に好適に適用することができる。
【0117】
液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、側工業調査会、1994年発行)」に記載がある。本発明の液晶表示装置には、本発明の液晶表示素子を備える以外に特に制限はなく、例えば前記「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載された種々の方式の液晶表示装置に構成することができる。中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置を構成するのに有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)、1996年発行)」に記載がある。
【0118】
本発明の液晶表示装置は、既述の本発明の液晶表示素子を備える以外は、電極基板、偏光フイルム、位相差フイルム、バックライト、スペーサー.視野角補償フイルム、反射防止フイルム、光拡散フイルム、防眩フイルムなどの様々な部材を用いて一般的に構成できる。これら部材については、例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉、(株)富士キメラ総研、2003等発行)」に記載されている。
【実施例】
【0119】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0120】
本発明に用いることができるバインダーの一例として、前記例示化合物P−1及びP−29として構造を示した樹脂P−1及び樹脂P−29、並びに樹脂PH−1及び樹脂MH−1〜MH−3の合成を合成例1〜合成例3に示す。
(合成例1)
−樹脂P−1の合成−
反応容器中に1−メトキシ−2−プロパノール(MMPGAC、ダイセル化学工業(株)製) 8.57部をあらかじめ加え90℃に昇温し、モノマーとしてイソプロピルメタクリレート 6.27部及びメタクリル酸 5.15部、アゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−601) 1部、及び1−メトキシ−2−プロパノール8.57部からなる混合溶液を窒素ガス雰囲気下、90℃の反応容器中に2時間かけて滴下した。滴下後4時間反応させて、アクリル樹脂溶液を得た。
次いで、前記アクリル樹脂溶液に、ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.025部、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド 0.084部を加えた後、グリシジルメタクリレート 5.41部を2時間かけて滴下した。滴下後、空気を吹き込みながら90℃で4時間反応させ後、固形分濃度が45%になるように溶媒を添加することにより調製し、不飽和基を有する樹脂P−1の溶液(固形分酸価;73mgKOH/g、Mw;10,000、1−メトキシ−2−プロパノール 45%溶液)を得た。
なお、樹脂P−1の分子量Mwは、重量平均分子量のことを示し、前記分子量の測定方法としては、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて測定した。
【0121】
(合成例2)
−樹脂P−29の合成−
合成例1において、モノマーとしてイソプロピルメタクリレート及びメタクリル酸の代わりに、ジシクロペンタニルメタクリレート(FA−513M、日立化成工業(株)製)及びメタクリル酸を用い、前記例示化合物に示したように樹脂P−29におけるモノマー構成比が40:25:35の質量比となるようにモノマーの添加量を変更した以外は、合成例1と同様の方法により合成し、例示化合物P−29で表される樹脂P−29の溶液(固形分濃度=45%)を得た。
樹脂P−29は酸価;73.9mgKOH/g、Mw;15,000であった。
【0122】
(合成例3)
−樹脂PH−1の合成−
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 4部およびジエチレングリコールエチルメチルエーテル 200部を仕込み、引き続き1,3−ブタジエン 5部、メタクリル酸 18部、メタクリル酸ベンジル 40部およびメタクリル酸n−ブチル 37部を仕込んで窒素置換したのち、ゆるやかに撹拌して、反応溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を5時間保持し、その後100℃に昇温してさらに1時間反応させた。次いで、反応溶液の温度を室温まで下げて、樹脂PH−1の溶液(固形分濃度=45%)を得た。この樹脂PH−1のMwは27,000であった。
【0123】
(合成例4)
−樹脂MH−1の合成−
合成例2において、アゾ系重合開始剤の使用量を2部としたこと以外は、合成例2と同様の方法により合成し、樹脂MH−1の溶液(固形分濃度=45%)を得た。
この樹脂MH−1のMwは3500であった。
【0124】
(合成例5)
−樹脂MH−2の合成−
合成例2において、アゾ系重合開始剤の使用量を3部としたこと以外は、合成例2と同様の方法により合成し、樹脂MH−2の溶液(固形分濃度=45%)を得た。
この樹脂MH−2のMwは3000であった。
【0125】
(合成例6)
−樹脂MH−3の合成−
合成例2において、アゾ系重合開始剤の使用量を5部としたこと以外は、合成例2と同様の方法により合成し、樹脂MH−3の溶液(固形分濃度=45%)を得た。
この樹脂MH−3のMwは2500であった。
【0126】
(実施例1)
−フォトスペーサー用感光性樹脂転写材料の作製−
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体(PET仮支持体)上に、下記処方Aからなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させ、乾燥層厚6.0μmの熱可塑性樹脂層を形成した。
【0127】
〔熱可塑性樹脂層用塗布液の処方A〕
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 … 25.0部
(=55/11.7/4.5/28.8[モル比]、重量平均分子量90,000)
・スチレン/アクリル酸共重合体 … 58.4部
(=63/37[モル比]、重量平均分子量8,000)
・2,2−ビス〔4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン
… 39.0部
・界面活性剤1(下記構造物1) … 10.0部
・メタノール … 90.0部
・1−メトキシ−2−プロパノール … 51.0部
・メチルエチルケトン … 700部
【0128】
*界面活性剤1
・下記構造物1 ・・・30%
・メチルエチルケトン ・・・70%
【0129】
【化18】



【0130】
次に、形成した熱可塑性樹脂層上に、下記処方Bからなる中間層用塗布液を塗布、乾燥させて、乾燥層厚1.5μmの中間層を積層した。
【0131】
〔中間層用塗布液の処方B〕
・ポリビニルアルコール … 3.22部
(PVA−205、鹸化率80%、(株)クラレ製)
・ポリビニルピロリドン … 1.49部
(PVP K−30、アイエスピー・ジャパン株式会社製)
・メタノール … 42.3部
・蒸留水 … 524部
【0132】
次に、形成した中間層上に更に、下記表1に示す処方1からなる感光性樹脂層形成用塗布液を塗布、乾燥させて、乾燥層厚4.1μmの感光性樹脂層を積層した。
【0133】
【表1】



【0134】
以上のようにして、PET仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層の積層構造(3層の合計層厚は11.6μm)に構成した後、感光性樹脂層の表面に更に、カバーフィルムとして厚み12μmのポリプロピレン製フィルムを加熱・加圧して貼り付け、フォトスペーサー用感光性樹脂転写材料(1)を得た。
【0135】
−カラーフィルタ基板の作製−
特開2005−3861号公報の段落番号[0084]〜[0095]に記載の方法でブラックマトリクス、R画素、G画素、B画素を有するカラーフィルタを作製した。次いで、カラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素並びにブラックマトリクスの上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0136】
−フォトスペーサーの作製−
得られたフォトスペーサー用感光性樹脂転写材料(1)のカバーフィルムを剥離し、露出した感光性樹脂層の表面を、上記で作製したITO膜がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板のITO膜上に重ね合わせ、ラミネーターLamicII型〔(株)日立インダストリイズ製〕を用いて、線圧100N/cm、130℃の加圧・加熱条件下で搬送速度2m/分にて貼り合わせた。その後、PET仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥離除去し、感光性樹脂層を熱可塑性樹脂層及び中間層と共に転写した(層形成工程)。
【0137】
次に、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)と、該マスクと熱可塑性樹脂層とが向き合うように配置したカラーフィルタ基板とを略平行に垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層の中間層に接する側の表面との間の距離を40μmとし、マスクを介して熱可塑性樹脂層側から露光量60mJ/cmにてプロキシミティー露光した。
【0138】
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30%含有、商品名:T−PD2(富士フイルム(株)製)を純水で12倍(T−PD2を1部と純水11部の割合で混合)に希釈した液)を30℃で50秒間、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し、熱可塑性樹脂層と中間層とを除去した。引き続き、このガラス基板の上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水をシャワーにより10秒間吹き付け、純水シャワー洗浄し、エアを吹きかけて基板上の液だまりを減らした。
引き続き、炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有;商品名:T−CD1(富士フイルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて29℃で30秒間、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し、スペーサーのパターン像を得た。
引き続き、洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有;商品名:T−SD3(富士フイルム(株)製))を純水で10倍に希釈した液を用いて33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaにてシャワーで吹きかけ、形成されたパターン像の周辺の残渣除去を行ない、所望のスペーサーパターンを得た。
【0139】
次に、スペーサーパターンが設けられたカラーフィルタ基板を、230℃下で30分間加熱処理を行ない(熱処理工程)、フォトスペーサーを作製した。
得られたスペーサーパターンは、直径24μm、平均高さ3.6μmの円柱状であった。尚、平均高さは、得られたフォトスペーサー1000個を三次元表面構造解析顕微鏡(メーカー:ZYGO Corporation、型式:New View 5022)を用い、ITOの透明電極形成面から各フォトスペーサーの最も高い位置を測定(n=20)して算出した。
【0140】
<液晶表示装置の作製>
次に、別途、対向基板としてTFT基板を用意した。このTFT基板の一方の表面は、スパッタリングによりITO膜が形成されている。続いて、カラーフィルタ基板のITO膜(透明電極)及びTFT基板のITO膜にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
【0141】
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられているブラックマトリックスの外枠に相当する幅0.5mm、高さ40μmのシール部に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、カラーフィルタ基板とTFT基板とを貼り合わせた。その後、常圧に戻し、荷重をかけてセル厚が4μmになるように制御した。この状態で、メタルハライドランプを使用して、340nm未満の紫外線をフィルターカットし、340〜390nmの積算光量として3,000mJ/cm相当の光量になるように、窒素雰囲気下で露光してシール剤を光硬化させた後、熱処理してシール剤を硬化させ、液晶セルを得た。このようにして得た液晶セルの両面に、偏光板(HLC2−2518、(株)サンリッツ製)を貼り付けた。次に、CCFLのバックライトを構成し、偏光板が取り付けられた液晶セルの背面側に設置し、本発明のPVAモード液晶表示装置を作製した。
【0142】
(実施例2〜14、比較例1〜6)、
実施例1において、樹脂P−1(バインダー)と重合性化合物FA−513Aの代わりに、下記表2に示したバインダーと重合性化合物を用いた以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物、フォトスペーサー及びPVAモード液晶表示装置を作製した。
【0143】
【表2】



【0144】
(実施例15)
−フォトスペーサーの作製(液レジ法)−
実施例1と同様にして作製したITO膜がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板上のITO膜上に、スリット状ノズルを有するガラス基板用コーターMH−1600(エフ・エー・エス・ジャパン社製)にて前記表1に示す処方1からなる感光性樹脂組成物層用塗布液を塗布した。引き続き、真空乾燥機VCD(東京応化社製)を用いて30秒間溶媒の一部を乾燥させて塗布膜の流動性をなくした後、EBR(エッジ・ビード・リムーバー)にて基板周囲の不要な塗布液を除去し、120℃で3分間プリベークして膜厚2.4μmの感光性樹脂組成物層を形成した(層形成工程)。
続いて、実施例1と同様のパターニング工程及び熱処理工程により、カラーフィルタ基板上にフォトスペーサーを作製した。但し、露光量は300mJ/cm、炭酸Na系現像液による現像は23℃、60秒間とした。
【0145】
フォトスペーサーの作製後、このカラーフィルタ基板を用い、実施例1と同様にして、本発明のMVAモード液晶表示装置を作製した。
【0146】
(比較例7)
実施例15において、処方1からなる感光性樹脂組成物層用塗布液の代わりに、前記表2に示した処方15からなる感光性樹脂組成物層用塗布液を用いた以外は実施例15と同様にして、フォトスペーサー及び液晶表示装置を作製した。
【0147】
上記実施例1〜15及び比較例1〜7で得られたフォトスペーサー及び液晶表示装置について、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0148】
[評価]
−1.フォトスペーサーの高さ分布測定−
フォトスペーサーを形成したカラーフィルタ基板の面内において20個のフォトスペーサーの最も高い位置を測定し、その標準偏差と高さの平均値を求めた。高さ分布の標準偏差を高さの平均値で除した値(標準偏差/平均値)を算出した。尚、高さは表面粗さ計P−10(TENCOR社製)を用いて測定した。
【0149】
−2.変形回復率−
フォトスペーサーの各々について、微小硬度計(DUH−W201、(株)島津製作所製)により次のようにして測定を行ない、評価した。測定は、50μmφの円錘台圧子を採用し、最大荷重50mN、保持時間5秒として、負荷−除荷試験法により行なった。この測定値から下記式により変形回復率〔%〕を求め、下記基準にしたがって評価した。
変形回復率(%)=(加重開放後の回復量[μm]/加重による変形量[μm])×100
【0150】
−3.表示ムラ−
液晶表示装置の各々について、24時間バックライトを点灯した後、グレイのテスト信号を入力させたときのグレイ表示を目視及びルーペにて観察し、表示ムラの発生の有無を下記評価基準にしたがって評価した。
〈評価基準〉
○:表示ムラは全く認められなかった。
△:表示ムラが僅かに認められた。
×:表示ムラが顕著に認められた。
【0151】
−4.低温発泡−
液晶表示装置を、−30℃の恒温層に6、12時間放置した後に取り出し、気泡の発生の有無を目視により、下記評価基準に従って評価した。
〈評価基準〉
○:12時間放置しても発泡が認められなかった。
△:6時間放置しても発泡が認められなかった。
×:6時間放置したときに発泡が見られた。
【0152】
【表3】



【0153】
表3から、本発明の感光性樹脂組成物によって形成された感光性樹脂層は層厚の均一性が高いことがわかる。また、本発明の感光性樹脂組成物によって形成されたフォトスペーサーは高度の弾性回復性を有していることが分かる。更に該フォトスペーサーを備えた液晶表示装置は、表示ムラの発生及び低温発泡の発生が抑制されていることわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋架け環構造を有する基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有し、分子量が2000以下である重合性化合物と、バインダーと、光重合開始剤とを少なくとも含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記橋架け環構造を有する基は、下記化学式(1)〜化学式(3)のいずれかで表される脂環構造の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】



【請求項3】
前記橋架け環構造を有する基は、ケイ素原子と酸素原子との化学結合を6つ以上含む基であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記バインダーは、分岐及び/又は脂環構造と、酸性基と、エチレン性不飽和結合とをそれぞれ側鎖に有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
フォトスペーサー作製用であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
2枚の支持体と、前記支持体間に設けられた液晶と、前記液晶に電界を印加する2枚の電極と、前記支持体間のセル厚を規制するためのフォトスペーサーとを少なくとも備えた液晶表示装置における前記フォトスペーサーの製造方法であって、
前記2枚の支持体における互いに対向する面の一方の上に、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を形成する層形成工程と、
前記感光性樹脂層を露光及びアルカリ現像してパターン形成するパターニング工程と、
を有するフォトスペーサーの製造方法。
【請求項7】
前記層形成工程は、仮支持体上に請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物で構成された感光性樹脂層を有する感光性樹脂転写材料を用い、前記感光性樹脂層を前記2枚の支持体における互いに対向する面の一方に接するように転写して感光性樹脂層を形成する転写工程を含む請求項6に記載のフォトスペーサーの製造方法。
【請求項8】
前記層形成工程は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含む溶液を前記2枚の支持体における互いに対向する面の一方の上に塗布し、乾燥して感光性樹脂層を形成する工程を含む請求項6に記載のフォトスペーサーの製造方法。
【請求項9】
請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載のフォトスペーサーの製造方法により製造されたフォトスペーサーを備えた液晶表示装置用基板。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶表示装置用基板を備えた液晶表示素子。
【請求項11】
請求項10に記載の液晶表示素子を備えた液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−128487(P2009−128487A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301613(P2007−301613)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】