説明

感光性樹脂組成物及び基材

【課題】遮光剤として銀錫合金を主成分とする微粒子を使用しながらも感度が高く、硬化樹脂パターンの剥がれや直進性の低下といった問題が生じない感光性樹脂組成物、及びこの感光性樹脂組成物を用いて形成された遮光膜を有する基材を提供する。
【解決手段】本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)光重合性化合物、(B)オキシム系光重合開始剤、及び(C)遮光剤を含有し、特に(C)遮光剤が銀錫合金を主成分とする微粒子である。また、本発明に係る基材は、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて形成された遮光膜を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックマトリクス等の遮光膜を形成する際に好適に用いられる感光性樹脂組成物、及びこの感光性樹脂組成物を用いて形成された遮光膜を有する基材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示ディスプレイ等の表示体は、互いに対向して対となる電極が形成された2枚の基板の間に、液晶層を挟みこむ構造となっている。そして、一方の基板の内側には、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の各色の画素領域からなるカラーフィルターが形成されている。このカラーフィルターにおいては、通常、赤色、緑色、及び青色の各画素領域を区画するように、ブラックマトリクスが形成されている。
【0003】
一般に、カラーフィルターはリソグラフィ法により製造される。すなわち、まず、基板上に黒色の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させた後、露光、現像し、ブラックマトリクスを形成する。次いで、赤色、緑色、及び青色の各色の感光性樹脂組成物毎に、塗布、乾燥、露光、及び現像を繰り返し、各色の画素領域を特定の位置に形成してカラーフィルターを製造する。
【0004】
近年、液晶表示ディスプレイの製造にあたっては、ブラックマトリクスによる遮光性を向上させて、液晶表示ディスプレイに表示される画像のコントラストを向上させる試みがなされている。さらに、ポリッシュ工程を削減するためにブラックマトリクスの薄膜化が進んでいる。したがって、ブラックマトリクスにはより高い遮光性が要求されている。
【0005】
ブラックマトリクスの遮光性を向上するためには、黒色度の高い遮光剤を用いることが必要である。従来、このような遮光剤としてはカーボンブラックが一般的であったが、最近になり、より黒色度の高い遮光剤として、銀錫合金を主成分とする微粒子が提案されている(特許文献1参照)。また、この特許文献1には、このような遮光剤を含有する感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−225503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に開示されている感光性樹脂組成物は感度が低く、しかも、現像中に硬化樹脂パターンが基材から剥がれ落ちてしまったり、硬化樹脂パターンの直進性が低下したりする問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、遮光剤として銀錫合金を主成分とする微粒子を使用しながらも感度が高く、硬化樹脂パターンの剥がれや直進性の低下といった問題が生じない感光性樹脂組成物、及びこの感光性樹脂組成物を用いて形成された遮光膜を有する基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、銀錫合金を主成分とする微粒子である遮光剤に特定の光重合開始剤を組み合わせることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0010】
本発明の第一の態様は、(A)光重合性化合物、(B)オキシム系光重合開始剤、及び(C)遮光剤を含有し、前記(C)遮光剤が、銀錫合金を主成分とする微粒子である感光性樹脂組成物である。
【0011】
本発明の第二の態様は、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて形成された遮光膜を有する基材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遮光剤として銀錫合金を主成分とする微粒子を使用しながらも感度が高く、硬化樹脂パターンの剥がれや直進性の低下といった問題が生じない感光性樹脂組成物、及びこの感光性樹脂組成物を用いて形成された遮光膜を有する基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪感光性樹脂組成物≫
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)光重合性化合物、(B)オキシム系光重合開始剤、及び(C)遮光剤を少なくとも含有するものである。以下、感光性樹脂組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0014】
<(A)光重合性化合物>
本発明に係る感光性樹脂組成物に含有される(A)光重合性化合物としては、特に限定されず、従来公知の光重合性化合物を用いることができる。その中でも、エチレン性不飽和基を有する樹脂又はモノマーが好ましく、これらを組み合わせることがより好ましい。エチレン性不飽和基を有する樹脂とエチレン性不飽和基を有するモノマーとを組み合わせることにより、硬化性を向上させ、パターン形成を容易にすることができる。
【0015】
[エチレン性不飽和基を有する樹脂]
エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、カルドエポキシジアクリレート等が重合したオリゴマー類;多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。さらに、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に多塩基酸無水物を反応させた樹脂を好適に用いることができる。
【0016】
また、エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、エポキシ化合物と不飽和基含有カルボン酸化合物との反応物を、さらに多塩基酸無水物と反応させることにより得られる樹脂を好適に用いることができる。
【0017】
その中でも、下記式(a1)で表される化合物が好ましい。この式(a1)で表される化合物は、それ自体が、光硬化性が高い点で好ましい。
【化1】

【0018】
上記式(a1)中、Xは、下記式(a2)で表される基を表す。
【化2】

【0019】
上記式(a2)中、R1aは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、R2aは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Wは、単結合又は下記式(a3)で表される基を表す。
【化3】

【0020】
また、上記式(a1)中、Yは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基を表す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0021】
また、上記式(a1)中、Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を表す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、上記式(a1)中、mは、0〜20の整数を表す。
【0022】
エチレン性不飽和基を有する樹脂の酸価は、樹脂固形分で、10〜150mgKOH/gであることが好ましく、70〜110mgKOH/gであることがより好ましい。酸価を10mgKOH/g以上とすることにより、現像液に対する十分な溶解性が得られる。また、酸価を150mgKOH/g以下とすることにより、十分な硬化性を得ることができ、表面性を良好にすることができる。
【0023】
また、エチレン性不飽和基を有する樹脂の質量平均分子量は、1000〜40000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましい。質量平均分子量を1000以上とすることにより、耐熱性、膜強度を向上させることができる。また、質量平均分子量を40000以下とすることにより、現像液に対する十分な溶解性を得ることができる。
【0024】
[エチレン性不飽和基を有するモノマー]
エチレン性不飽和基を有するモノマーには、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(A)光重合性化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して50〜99.9質量部であることが好ましい。含有量を固形分100質量部に対して50質量部以上とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性が期待できる。
【0027】
<(B)オキシム系光重合開始剤>
本発明に係る感光性樹脂組成物に含有されるオキシム系光重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知のオキシム系光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としてオキシム系の光重合開始剤を用いることにより、(C)遮光剤として銀錫合金を主成分とする微粒子を用いた場合であっても十分な感度を保つことができ、硬化樹脂パターンの剥がれや直進性の低下といった問題が生じない。
【0028】
オキシム系光重合開始剤の中でも、下記式(b1)で表されるものが好ましい。
【化4】

【0029】
上記式(b1)中、R1bは、−NO又は−COR5bを表す。また、R5bは、置換基を有していてもよい、複素環基、縮合環式芳香族基、又は芳香族基を表す。R2b〜R4bはそれぞれ独立して一価の有機基を表す。
【0030】
5bで表される複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5員環又は6員環の複素環基が挙げられる。複素環基の例としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の含窒素5員環基;ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基等の含窒素6員環基;チアゾリル基、イソチアゾリル基等の含窒素含硫黄基;オキサゾリル基、イソオキサゾリル基等の含窒素含酸素基;チエニル基、チオピラニル基等の含硫黄基;フリル基、ピラニル基等の含酸素基;等が挙げられる。この中でも、窒素原子又は硫黄原子を1つ含むものが好ましい。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。縮合環が含まれる複素環基の例としてはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0031】
5bで表される縮合環式芳香族基としては、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。また、R1bで表される芳香族基としては、フェニル基が挙げられる。
【0032】
複素環基、縮合環式芳香族基、又は芳香族基は、置換基を有していてもよい。特にR5bが芳香族基である場合には、置換基を有していることが好ましい。このような置換基としては、−NO、−CN、−SO6b、−COR6b、−NR7b8b、−R9b、−OR9b、−O−R10b−O−R11b等が挙げられる。
【0033】
6bは、それぞれ独立にアルキル基を表し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。R6bにおけるアルキル基は、炭素数1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0034】
7b、R8bは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアルコキシ基のアルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、又はエステル結合により中断されていてもよい。また、R7bとR8bとが結合して環構造を形成していてもよい。R7b、R8bにおけるアルキル基又はアルコキシ基は、炭素数1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0035】
7bとR8bとが結合して形成し得る環構造としては、複素環が挙げられる。この複素環としては、少なくとも窒素原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環が挙げられる。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。複素環の例としては、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられる。これらの中でも、モルホリン環が好ましい。
【0036】
9bは、水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基を表す。R9bにおけるアルキル基は、炭素数1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0037】
10b、R11bは、それぞれ独立にアルキル基を表し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。好ましい炭素数やその具体例は、上記R6bの説明と同様である。
【0038】
これらの中でも、R5bとしては、ピロリル基、ピリジル基、チエニル基、チオピラリル基、ベンゾチエニル基、ナフチル基、置換基を有するフェニル基が好ましい例として挙げられる。
【0039】
上記式(b1)中、R2bは、一価の有機基を表す。この有機基としては、−R12b、−OR12b、−COR12b、−SR12b、−NR12b13bで表される基が好ましい。R12b、R13bは、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基を表し、これらはハロゲン原子、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。また、R12bとR13bとが結合して窒素原子とともに環構造を形成していてもよい。
【0040】
12b、R13bで表されるアルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜5のものがより好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。また、このアルキル基は置換基を有していてもよい。置換基を有するものの例としては、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピロキシエトキシエチル基、メトキシプロピル基等が挙げられる。
【0041】
12b、R13bで表されるアルケニル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜5のものがより好ましい。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エテニル基、プロピニル基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。また、このアルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基を有するものの例としては、2−(ベンゾオキサゾール−2−イル)エテニル基等が挙げられる。
【0042】
12b、R13bで表されるアリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、炭素数6〜10のものがより好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0043】
12b、R13bで表されるアラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、炭素数7〜12のものがより好ましい。アラルキル基の例としては、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。
【0044】
12b、R13bで表される複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられる。この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。複素環基の例としては、ピロリル基、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。
【0045】
これらのR12b、R13bのうち、アルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0046】
また、R12bとR13bとが結合して形成し得る環構造としては、複素環が挙げられる。この複素環としては、少なくとも窒素原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環が挙げられる。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。複素環の例としては、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、R2bとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基であることが最も好ましい。
【0048】
上記式(b1)中、R3bは、一価の有機基を表す。この有機基としては、炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、下記式(b2)で表される基、又は置換基を有していてもよい複素環基が好ましい。置換基としては、上記R5bの場合と同様の基が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【化5】

【0049】
上記式(b2)中、R14bは、酸素原子で中断されていてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を表す。このようなアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、sec−ペンチレン基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。これらの中でも、R14bはイソプロピレン基であることが最も好ましい。
【0050】
上記式(b2)中、R15bは、−NR16b17bで表される一価の有機基を表す(R16b、R17bは、それぞれ独立に一価の有機基を表す)。そのような有機基の中でも、R15bの構造が下記式(b3)で表されるものであれば、オキシム系光重合開始剤の溶解性を向上することができる点で好ましい。
【化6】

【0051】
上記式(b3)中、R18b、R19bは、それぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基である。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、R18b、R19bはメチル基であることが最も好ましい。
【0052】
3bで表される複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5員環又は6員環の複素環基が挙げられる。複素環基の例としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の含窒素5員環基;ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基等の含窒素6員環基;チアゾリル基、イソチアゾリル基等の含窒素含硫黄基;オキサゾリル基、イソオキサゾリル基等の含窒素含酸素基;チエニル基、チオピラニル基等の含硫黄基;フリル基、ピラニル基等の含酸素基;等が挙げられる。この中でも、窒素原子又は硫黄原子を1つ含むものが好ましい。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。縮合環が含まれる複素環基の例としてはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0053】
また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上記R5bの場合と同様の基が挙げられる。
【0054】
上記式(b1)中、R4bは、一価の有機基を表す。この中でも、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、R4bはメチル基であることが最も好ましい。
【0055】
(B)オキシム系光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して0.1〜50質量%が好ましく、1〜45質量%がより好ましい。上記範囲内とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得るとともに、塗膜形成能を向上させ、光硬化不良を抑制することができる。
【0056】
<(C)遮光剤>
本発明に係る感光性樹脂組成物に含有される(C)遮光剤としては、銀錫(AgSn)合金を主成分とする微粒子(以下、「AgSn合金微粒子」という。)が用いられる。このAgSn合金微粒子は、AgSn合金が主成分であればよく、他の金属成分として、例えば、Ni、Pd、Au等が含まれていてもよい。
このAgSn合金微粒子の平均粒子径は、1〜300nmが好ましい。
【0057】
このAgSn合金は、化学式AgSnにて表した場合、化学的に安定したAgSn合金が得られるxの範囲は1≦x≦10であり、化学的安定性と黒色度とが同時に得られるxの範囲は3≦x≦4である。
ここで、上記xの範囲でAgSn合金中のAgの質量比を求めると、
x=1の場合、 Ag/AgSn=0.4762
x=3の場合、 3・Ag/AgSn=0.7317
x=4の場合、 4・Ag/AgSn=0.7843
x=10の場合、10・Ag/Ag10Sn=0.9008
となる。したがって、このAgSn合金は、Agを47.6〜90質量%含有した場合に化学的に安定なものとなり、Agを73.17〜78.43重量%含有した場合にAg量に対し効果的に化学的安定性と黒色度とを得ることができる。
【0058】
このAgSn合金微粒子は、通常の微粒子合成法を用いて作製することができる。微粒子合成法としては、気相反応法、噴霧熱分解法、アトマイズ法、液相反応法、凍結乾燥法、水熱合成法等が挙げられる。
【0059】
このAgSn合金微粒子は絶縁性の高いものであるが、感光性樹脂組成物の用途によっては、さらに絶縁性を高めるため、表面を絶縁膜で覆うようにしても構わない。このような絶縁膜の材料としては、金属酸化物又は有機高分子化合物が好適である。
金属酸化物としては、絶縁性を有する金属酸化物、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化イットリウム(イットリア)、酸化チタン(チタニア)等が好適に用いられる。
また、有機高分子化合物としては、絶縁性を有する樹脂、例えば、ポリイミド、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリアミン化合物等が好適に用いられる。
【0060】
絶縁膜の膜厚は、AgSn合金微粒子の表面の絶縁性を十分に高めるためには1〜100nmの厚みが好ましく、より好ましくは5〜50nmである。
この絶縁膜は、表面改質技術あるいは表面のコーティング技術により容易に形成することができる。特に、テトラエトキシシラン、アルミニウムトリエトキシド等のアルコキシドを用いれば、比較的低温で膜厚の均一な絶縁膜を形成することができるので好ましい。
【0061】
(C)遮光剤の含有量は、感光性樹脂組成物の(C)遮光剤以外の固形分に対して4〜400質量%が好ましく、20〜200質量%が好ましい。上記範囲内とすることにより、十分な遮光性を得るとともに、光硬化不良を抑制することができる。
【0062】
<(S)有機溶剤>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、希釈のための有機溶剤を含有することが好ましい。この有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、3−メトキシブチルアセテートは、上述の(A)光重合性化合物及び(B)オキシム系光重合開始剤に対して優れた溶解性を示すとともに、(C)遮光剤等の不溶性成分の分散性を良好にすることができるため好ましく、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンを用いることが特に好ましい。
【0064】
(S)有機溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物に含まれる固形分の合計100質量部に対して50〜500質量部の範囲で用いることができる。
【0065】
<その他の成分>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。具体的には、増感剤、硬化促進剤、架橋剤、分散助剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0066】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記各成分を全て撹拌機で混合することにより得られる。なお、得られた混合物が均一なものとなるようフィルタを用いて濾過してもよい。
【0067】
≪基材≫
本発明に係る基材は、感光性樹脂組成物を用いて形成された遮光膜を有するものである。基材としては、特に限定されるものではないが、例えばガラス基材が挙げられる。
【0068】
本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて所定パターンの遮光膜を形成するには、まず、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いて、基材上に感光性樹脂組成物を塗布する。
【0069】
次いで、塗布された感光性樹脂組成物を乾燥させて塗膜を形成する。乾燥方法は特に限定されず、例えば(1)ホットプレートにて80〜120℃、好ましくは90〜100℃の温度にて60〜120秒間乾燥する方法、(2)室温にて数時間〜数日放置する方法、(3)温風ヒータや赤外線ヒータ中に数十分〜数時間入れて溶剤を除去する方法、のいずれの方法を用いてもよい。
【0070】
次いで、この塗膜に、ネガ型のマスクを介して紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して部分的に露光する。照射量は、感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば30〜2000mJ/cm程度が好ましい。
【0071】
次いで、露光後の塗膜を、現像液により現像することによって所望の形状にパターニングする。現像方法は特に限定されず、例えば浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
【0072】
次いで、現像後の塗膜に対して200℃程度でポストベークを行う。この際、形成された硬化樹脂パターン(遮光膜)を全面露光することが好ましい。
【0073】
このようにして形成された遮光膜は、遮光性、絶縁性に優れるため、液晶表示ディスプレイにおけるブラックマトリクス等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
<実施例1>
光重合性化合物としては、以下の樹脂(A−1)及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを準備した。
【0076】
[樹脂(A−1)の合成法]
まず、500ml四つ口フラスコ中に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量235)235g、テトラメチルアンモニウムクロライド110mg、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール100mg、及びアクリル酸72.0gを仕込み、これに25ml/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全溶解させた。この際、溶液は次第に透明粘稠になったが、そのまま撹拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱撹拌を続けた。酸価が目標値に達するまで12時間を要した。そして室温まで冷却し、無色透明で固体状の下記式(a4)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
【化7】

【0077】
次いで、このようにして得られた上記のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート307.0gに3−メトキシブチルアセテート600gを加えて溶解した後、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80.5g及び臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、徐々に昇温して110〜115℃で4時間反応させた。酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38.0gを混合し、90℃で6時間反応させ、樹脂(A−1)を得た。酸無水物基の消失はIRスペクトルにより確認した。
この樹脂(A−1)は、上記式(a1)で表される化合物に相当する。なお、この樹脂(A−1)は、3−メトキシブチルアセテートにて固形分濃度50質量%に調整した。
【0078】
また、光重合開始剤としては、IRGACURE OXE−02(チバスペシャリティーケミカルズ社製;後述のオキシム1)を準備した。
【0079】
また、遮光剤としては、AgSn合金微粒子分散液(平均粒子径200〜300nmのAgSn合金微粒子25質量%、分散剤:DPK−164(ビックケミー社製)3.7質量%、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエテールアセテート)を準備した。このAgSn合金微粒子は、特許文献1の段落[0033],[0034]の記載を参考に調製した。
【0080】
これらの各成分と、有機溶剤(3−メトキシブチルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/シクロヘキサノン=50/45/5)とを表1の割合で配合し、撹拌機で2時間混合した後、5μmメンブレンフィルターで濾過して、固形分濃度22質量%の感光性樹脂組成物を調製した。なお、表1中の数値は質量部を表す。
【0081】
<実施例2〜12>
光重合開始剤として後述のオキシム1〜10のいずれかを使用し、遮光剤の含有量を表1のように代えたほかは、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
【0082】
<比較例1〜4>
遮光剤として、比較例1では低抵抗カーボンブラック分散液(カーボンブラック55質量%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート、御国色素社製)を準備し、比較例2では高抵抗カーボンブラック分散液(カーボンブラック55質量%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート、御国色素社製)を準備し、比較例3ではTi微粒子分散液(Ti微粒子55質量%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート、御国色素社製)を準備し、比較例4では有機顔料分散液(RGB混合55質量%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート、御国色素社製)を準備し、それぞれ表1に示す割合で使用したほかは、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
【0083】
<比較例5>
光重合開始剤としてアミノケトン系のトリアジンPMS(PANCHIM社製;後述のアミノケトン1)とベンゾフェノン系のEAB−F(保土谷化学社製;後述のベンゾフェノン1)とをそれぞれ表1に示す割合で使用したほかは、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
【0084】
【表1】

【0085】
なお、実施例1〜12及び比較例1〜5で使用した光重合開始剤の構造は下記のとおりである。化学式中の−Acはアセチル基、−OAcはアセトキシ基をそれぞれ表す。
【0086】
【化8】

【0087】
【化9】

【0088】
<評価>
[抵抗値の評価]
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて低抵抗シリコンウェーハ上に塗布し、100℃で120秒間乾燥して塗布膜を形成した。次いで、この塗布膜に100mJ/cmの照射量でghi線を照射した。そして、230℃で20分間、循環式オーブンにてポストベークを行った。形成された遮光膜の膜厚は1.0μmであった。この遮光膜について、ハイレスター MCP−HT450(三菱化学社製)を用いて抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
【0089】
[シュリンク率の評価]
上記の[抵抗値の評価]と同様にして遮光膜を形成し、ポストベーク前後における膜厚の比をシュリンク率として算出した。結果を表2に示す。
【0090】
[OD値の評価]
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて1737ガラス(コーニング社製)上に塗布し、100℃で120秒間乾燥して塗布膜を形成した。次いで、この塗布膜に100mJ/cmの照射量でghi線を照射した。そして、230℃で20分間、循環式オーブンにてポストベークを行った。形成された遮光膜の膜厚は0.8μm、1.0μm、1.2μmの3水準であった。この遮光膜について、D200−II(Macbeth社製)を用いて各膜厚におけるOD値を測定し、近似曲線にて1μmあたりのOD値を算出した。結果を表2に示す。
【0091】
[感度、現像マージンの評価]
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて1737ガラス(コーニング社製)上に塗布し、100℃で120秒間乾燥して塗布膜を形成した。次いで、この塗布膜にネガマスクを介して、20〜100mJ/cmまで10mJずつ照射量を増やしながら、ghi線を選択的に照射した。そして、0.5質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、26℃で50〜100秒間、10秒間ずつ時間を増やしながらスプレー現像することにより、線幅20μmのラインパターンを含む遮光膜を形成した。その後、230℃で20分間、循環式オーブンにてポストベークを行った。形成された遮光膜の膜厚は1.0μmであった。この遮光膜について、感度は線幅20μmのラインパターンが形成された露光量、現像マージンは60秒間で現像できたか否かで評価した。結果を表2に示す。
【0092】
[パターン直進性、パターン剥がれ、現像残渣の評価]
上記の[感度の評価]で得られた遮光膜(硬化樹脂パターン)について、パターン直進性、パターン剥がれ、現像残渣を評価した。パターンの直進性は、20μmラインのエッジのガタツキがあるか否か、パターン剥がれは5μmラインでの剥がれや欠けが発生していないか、現像残渣はガラス上に遮光剤の残渣が残っているか否か、で評価した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
表2から分かるように、AgSn合金微粒子とともにオキシム系光重合開始剤を使用した実施例1〜12の感光性樹脂組成物では、得られる遮光膜の抵抗値が高く、AgSn合金微粒子の配合量に応じたOD値が得られた。しかも、現像マージンが広く、パターン直進性、パターン剥がれ、現像残渣についての評価も良好であった。
一方、AgSn合金微粒子の代わりに低抵抗カーボンブラック、高抵抗カーボンブラック、Ti微粒子、又は顔料分散液を用いた比較例1〜4の感光性樹脂組成物では、実施例1と同程度の量の遮光剤を用いたものの、実施例1よりもOD値が低い結果となった。また、パターン形成も不良であった。
また、オキシム系光重合開始剤の代わりに、アミノケトン系光重合開始剤及びベンゾフェノン系光重合開始剤を使用した比較例5の感光性樹脂組成物では、パターン直進性が悪く、パターン剥がれも生じていた。
この結果から、AgSn合金微粒子とオキシム系光重合開始剤とを組み合わせることにより、感度が高くなり、硬化樹脂パターンの剥がれや直進性の低下といった問題も生じないことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光重合性化合物、(B)オキシム系光重合開始剤、及び(C)遮光剤を含有し、
前記(C)遮光剤が、銀錫合金を主成分とする微粒子である感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)遮光剤の平均粒子径が1〜300nmである請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)遮光剤の表面が絶縁膜により被覆されている請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記絶縁膜が、金属酸化物又は有機高分子化合物からなる請求項3記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)遮光剤の含有量が、該感光性樹脂組成物の該(C)遮光剤以外の固形分に対して4〜400質量%である請求項1から4のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された遮光膜を有する基材。

【公開番号】特開2010−134453(P2010−134453A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251711(P2009−251711)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】