説明

感冒薬配合成分の分析方法及び分析用泳動液

【課題】多成分が混在する感冒薬配合成分を同一条件で定量することが可能な泳動液及び分析方法を提供すること。
【解決手段】泳動液に、ペンタンを0.7%(w/w)から0.9%(w/w)、ブタノールを6.10%(w/w)から6.90%(w/w)、プロパノールを1.5%(w/w)から2.5%(w/w)、ラウリル硫酸ナトリウムを4.18%(w/w)から4.90%(w/w)及びホウ砂溶液を75%(w/w)から95%(w/w)を含むマイクロエマルション溶液に、シクロデキストリンを2mmol/lから4mmol/l添加させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感冒薬配合成分の分析方法及び分析用泳動液に関し、特に、シクロデキストリン修飾マイクロエマルションによるキャピラリー電気泳動を用いた感冒薬配合成分の分析方法及び分析用泳動液に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製剤分析においてキャピラリー電気泳動法(以下、CEとする)は、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCとする)やガスクロマトグラフィー(GC)と並んで有力な方法の1つとして利用されている。CEでは薄層クロマトグラフィー(TLC)と同様、注入されたすべての成分が移送されることから、適切な検出手段が選択されれば配合全成分の一斉分析が可能である。
【0003】
総合感冒薬中には様々な化学的性質を持つ有効成分が多種配合されており、その定量法として一般にHPLCが汎用されている。配合全成分の一斉定量をするためには複数のHPLC条件を用いるか、もしくはグラジエント溶出を行うこととなる。一方迅速で簡便な定量法としてCEによる分析例も数多くなされており、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)の各モード、例えばミセル動電クロマトグラフィー(以下、MEKCとする)やマイクロエマルション動電クロマトグラフィー(以下、MEEKCとする)を用いて一斉分析を行なった例が報告されている(非特許文献1,2)。CEの高分離能によってより短い分析時間で数多くのピークを検出することが可能となるため、その有用性は既に広く認められている。
【非特許文献1】M.Yururi,H.Nakanishi,K.Taniguchi,Bunseki Kagaku43(1994)575−580.
【非特許文献2】H.Nishi,T.Fukuyama,M.Matsuo and S.Terabe,J.Chromatogr.498(1990)313−323.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、感冒薬中に含有されているビタミンB1、カフェイン、アミノフェンは、従来用いられているHPLCを用いた既存の分析方法では分離が困難である。また、MEEKCやMEKCを用いた場合、マイクロエマルションあるいはミセルに強力に結合した溶質は互いに完全に分離することが困難である。さらに、特許文献1,2に記載の方法では、上記成分の分離は未確認である。
【0005】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、多成分が混在する感冒薬を同一条件で定量することが可能な泳動液及び分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は具体的には以下のようなものを提供する。なお、本発明において%は、%(w/w)を意味する。
【0007】
(1) キャピラリー電気泳動法による感冒薬配合成分の分析用泳動液であって、ペンタンを0.7%から0.9%、ブタノールを6.10%から6.90%、プロパノールを1.8%から2.2%、ラウリル硫酸ナトリウムを4.18%から4.90%及びホウ砂溶液を75%から95%を含むマイクロエマルション溶液に、シクロデキストリンを2.7mmol/lから3.3mmol/l添加させた感冒薬配合成分の分析用泳動液。
【0008】
(1)の発明によれば、泳動液に上記の配合のマイクロエマルション溶液にシクロデキストリンを添加したものを用いたことによって、多成分が混在する感冒薬を完全に分離することが可能となる。泳動液に用いられるマイクロエマルションの組成としては一般に、0.81%オクタン、6.61%1−ブタノール、3.31%SDS及び89.27%を含む緩衝液が用いられているが、ビタミンB1(VB1)とビタミンB2(VB2)などの分離は困難である。そこで、シクロデキストリン(CD)を添加することによって、第2の擬似固定相として新たな分離選択性を与えることが可能となった。シクロデキストリンには、シクロヘキサアミロース(α)、シクロヘプタアミロース(β)、シクロオクタアミロース(γ)、シクロノナアミロース(δ)等があるが、シクロヘプタアミロースを用いることが好ましく、中でも2,6−ジ−ο−メチル−β−シクロデキストリン(以下DM−β−CDとする)を用いることがより好ましい。また、2−プロパノールを添加することによって、溶質とマイクロエマルション(ミセル)の相互作用を弱めることができる。
【0009】
また、泳動液であるマイクロエマルション溶液中の各成分の好ましい範囲は下記の通りである。
ペンタン:0.7〜0.9%、更に好ましくは0.75〜0.85%
ブタノール:6.1〜6.9%、更に好ましくは6.4〜6.6%
プロパノール:1.8〜2.2%、更に好ましくは1.9〜2.1%
ラウリル硫酸ナトリウム:4.18〜4.9%、更に好ましくは4.3〜4.6%
ホウ砂溶液:75%〜95%、更に好ましくは80〜90%
【0010】
(2) キャピラリー電気泳動法による感冒薬配合成分の分析方法であって、ペンタンを0.7%から0.9%、ブタノールを6.10%から6.90%、プロパノールを1.8%から2.2%、ラウリル硫酸ナトリウムを4.18%から4.90%及びホウ砂溶液を75%から95%を含むマイクロエマルション溶液に、シクロデキストリンが2.7mmol/lから3.3mmol/l添加された泳動液を電気泳動用キャピラリーに導入する泳動液導入工程と、前記電気泳動用キャピラリーに、マイクロエマルション溶液で抽出した試料溶液を導入する試料導入工程と、前記マイクロエマルション泳動液及び前記試料を前記電気泳動用キャピラリー中で電気泳動する泳動工程と、を備えた感冒薬配合成分の分析方法。
【0011】
(2)の発明によれば、泳動液にシクロデキストリンを添加し、CEの分離モードをMEEKCやMEKCにした所謂「シクロデキストリン修飾マイクロエマルション動電クロマトグラフィー(CD−MEEKC:cyclodextrin−modified microemulsion electrokinetic chromatography)」としたことによって、多成分が混在する感冒薬を完全に分離する方法を提供することが可能となる。また、試料をマイクロエマルションで抽出したことにより全成分を一斉に抽出することが可能となった。
【0012】
ここで、「ミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)」及び「マイクロエマルション動電クロマトグラフィー(MEEKC)」とは、緩衝液に界面活性剤を添加して電気泳動を行い、中性物質を分離する手法である。界面活性剤が負に荷電したミセルの集合体を形成し、親和性を有する試料中の成分を捉える。電気泳動において各ミセルは、プラス極側に移動しようとするが、電気浸透流に逆らいきれず、マイナス極側に移動していく。そのため、試料成分はミセルへの親和性(分配係数)が低いものから高いものへと、順番に分離されて検出されることになる。界面活性剤には通常、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)が用いられている。また「シクロデキストリン修飾マイクロエマルション動電クロマトグラフィー(CD−MEEKC)」とは、ミセルの代わりに、油相を核として形成させたマイクロエマルジョンを用い、さらに、シクロデキストリンを添加することで選択性を変化させる方法をいう。
【0013】
(3) 前記感冒薬配合成分は、アセトアミノフェン、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸ブロムヘキシン、塩酸メチルエフェドリン、メキタジン、無水カフェイン、ノスカピン、マレイン酸カルビノキサミン、ビタミンB1硝酸塩、イブプロフェン、エテンザミド、グアイフェネシン、アスコルビン酸、ビタミンB2、塩酸アンブロキソール、ブロムワレリル尿素、塩酸プソイドエフェドリン及びフマル酸ケトチフェンからなる群から選ばれる2種以上である(2)に記載の感冒薬配合成分の分析方法。
【0014】
(4) 前記シクロデキストリンは、2,6−ジ−O−メチル−β−シクロデキストリンである(2)又は(3)に記載の感冒薬配合成分の分析方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る感冒薬配合成分の分析用泳動液及び感冒薬配合成分の分析方法によれば、多成分からなる感冒薬を一斉に定量することができる。また、試料のマイクロエマルション抽出を行うことにより、全成分を一斉に抽出することが可能となるため、迅速に試料を分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る感冒薬配合成分の分析用泳動液は、ペンタンを0.7%から0.9%、ブタノールを6.10%から6.90%、プロパノールを1.8%から2.2%、ラウリル硫酸ナトリウムを4.18%から4.90%及びホウ砂溶液を75%から95%を含むマイクロエマルション溶液である。この泳動液の調整方法としては公知の調整方法を用いることができる。
【0017】
また、本発明に係る感冒薬配合成分の分析方法は、上記の泳動液を電気泳動用キャピラリーに導入する泳動液導入工程を有する。「キャピラリー」とは毛細管のことをいい、直径2〜100μm、好ましくは直径10〜80μm、更に好ましくは直径50μmの毛細管が用いられる。本発明では、キャピラリー電気泳動の原理を応用している。キャピラリー電気泳動とは、このキャピラリーの両端に高電圧をかけることにより、溶液である泳動液中の各種イオンや有機酸等の荷電粒子が分離、移動する原理を応用した極めて分解能が高い分析方法をいう。
【0018】
更に本発明に係る感冒薬配合成分の分析方法は、マイクロエマルション溶液で抽出した試料溶液を導入する試料導入工程を有する。「試料溶液」の抽出は、上記の泳動液と同一の組成のものであってもよいが、ホウ砂溶液の代わりにメタリン酸溶液を添加してもよい。また、試料をキャピラリーに導入した後に、所定の電流・電圧で電気泳動する泳動工程を有する。
【0019】
更にまた、本発明に係る感冒薬配合成分の分析方法は、前記電気泳動用キャピラリーから流出した泳動液を検出する検出工程を有していてもよい。検出手段は限定されるものではなく、好ましくは公知の検出手段が用いられる。例えば紫外可視吸収検出器、フォトダイオードアレイ検出器を用いることができる。
【実施例】
【0020】
〔実施例1〕
<感冒薬の調製>
分析対象となる感冒薬配合成分の種々の構造式を図1に示す。アセトアミノフェン、カフェイン、塩酸チアミン、アスコルビン酸、リボフラビンは日本公定書協会より、リン酸ジヒドロコデイン及びノスカピンは武田薬品工業、塩酸ブロムヘキシン及びグアイフェネシンは山本化学工業、dl−塩酸メチルエフェドリン及び塩酸プソイドエフェドリンはアルプス薬品工業、メキタジンは住化ファインケム、マレイン酸カルビノキサミンは金剛化学、イブプロフェンはBASF、エテンザミドは静岡カフェイン工業所、塩酸アンブロキソールはワイ・アイ・シー、ブロムワレリル尿素は、住友精化フマル酸ケトチフェンは、Sifavitor、パラオキシ安息香酸エチルはエーピーアイコーポレーションのものを使用した。
【0021】
<泳動液の調製>
ペンタン、1−ブタノール、SDS、ホウ砂、四ホウ酸ナトリウム十水和物、メタリン酸は和光純薬工業を用いた。2−プロパノールは国産化学製を用いた。これに5種のシクロデキストリンを添加し、それぞれ試料1〜5とした。試料中のシクロデキストリンの種類は以下の通りである。
α−シクロデキストリン(α−CD)・・・・(泳動液1)
β−シクロデキストリン(β−CD)・・・・(泳動液2)
γ−シクロデキストリン(γ−CD)・・・・(泳動液3)
2,6−ジ−ο−メチル−β−シクロデキストリン(DM−β−CD)・・・(泳動液4)
2,3,6−トリ−ο−メチル−β−シクロデキストリン(TM−β−CD)・・・(泳動液5)
【0022】
泳動液に用いたマイクロエマルションは4.47%SDS:86.11g、10mmol/L四ホウ酸ナトリウム十水和物溶液、ペンタン:0.81g、1−ブタノール:6.61g、2−プロパノール:2.00gの順に容器に量り込み、超音波を照射して溶解させた後、種々のシクロデキストリンを3mmol/Lとなるように加えて調製した。調製した泳動液は0.45μmメンブランフィルターにてろ過後使用した。また抽出溶媒として用いたマイクロエマルションは、泳動液組成のうち10mmol/L四ホウ酸ナトリウム十水和物溶液の代わりに2%メタリン酸溶液を用いて調製した。
【0023】
<測定装置>
フォトダイオードアレイ検出器(検出波長:200nm及び270nm)を接続したキャピラリー電気泳動装置(AgilentCE,アジレントテクノロジー社製)を用いた。キャピラリー温度は32℃、印加電圧は18kv、試料注入はすべて加圧注入法(30mbar×2sec)を用いた。フューズドシリカキャピラリー(50μmI.D.;375μmO.D.;有効長40cm;全長48.5cm)はアジレントテクノロジー社製のものを用い、検出感度向上のためバブルセルキャピラリーを用いた。キャピラリーコンディショニングは、毎日分析開始時に水、メタノール、1mol/L NaOH、0.1mol/L NaOH、水、泳動液の順にフラッシングをそれぞれ10分間行った。また毎分析前にリンスとして水(3分間)、メタノール(3分間)、0.1mol/L NaOH(2分間)、水(1分間)、泳動液(3分間)の順にフラッシングを行った。すべてのデータはケムステーョン ソフトウェア(アジレントテクノロジー社製)にて、解析を行った。
【0024】
<CD―MEEKCによる感冒薬配合成の分析>
表1に示すモデル製剤を均一に粉砕し、0.3gを秤量し、抽出溶媒40mLを加えた後、10分間超音波を照射して、さらに10分間振り混ぜた。そこに内標準溶液2mLを加え、抽出溶媒を加えて50mLとした。これを毎分3500回転で10分間遠心分離を行なった後、上澄み液を孔径0.45μmメンブランフィルターにてろ過し、試料溶液とした。標準品のそれぞれの対応量を秤量し、内標準溶液2mLと抽出溶媒を加えて50mLとした。これを孔径0.45μmメンブランフィルターにてろ過し、標準溶液とした。内標準溶液はパラオキシ安息香酸エチル0.12gを、水とメタノールを4:1の割合で溶かして100mLとしたものを用いた。泳動液1〜5を用いて電気泳動を行なった。
【0025】
【表1】

【0026】
得られたエレクトロフェログラムを図2〜5に示す。検討の結果、マイクロエマルション形成にペンタンを用いた場合、泳動液4では全成分を完全分離することが可能となった。また他の泳動液における各配合成分の分離への影響を調べたところ、図3,4に示されるように、全成分の分離には至らなかった。これは、シクロデキストリンの空洞の大きさあるいは円環の修飾基の差異によるものと考えられる。また、図5,6は、シクロデキストリンを添加しない泳動液を用いて電気泳動を行なったときのエレクトロフェログラムを示す。移動時間の遅い成分に関し、シクロデキストリンを添加しない泳動液はSDSと強い相互作用を示したが、泳動液4及び5中のDM−β−CD及びTM−β−CD添加によって相互作用が弱まり、シクロデキストリン内へ包接されることがわかった。また各配合成分の挙動に及ぼす油相の影響については、図5,6に示すように油種によってほとんど差は見られないが、アルカンの炭素数を小さくするとビタミンB1(VB1)とカフェイン(CAF)のピークの逆転が見られた。しかしながら両者を完全に分離することはできなかった。
【0027】
またイブプロフェン(IBU)がβ−CDに、リン酸ジヒドロコデイン(DCP)がγ−CDに包接されることが示された。またα−CDにほとんど影響されないのは、その大きさがいずれの成分とも合致しなかったためと思われる。シクロデキストリン内部への包接は、主として空洞の大きさに依存すると考えられているが、その他に水素結合力、疎水性相互作用、双極子相互作用及びロンドン分散力などの影響を受けることが知られており、それらの作用が各配合成分への分離選択性を与えていることが考えられる。
【0028】
〔比較例1〕
調製した感冒薬を従来の泳動液を用いて分析を行った。従来の泳動液に用いられているマイクロエマルションの組成として、オクタン:0.81%、1−ブタノール:6.61%、SDS:3.31%及び緩衝液:89.27%を用いた。緩衝液は調製が容易でかつ安定した電気浸透を得るためにホウ砂溶液を用いた。この泳動液を用いて感冒薬の分析を行ったところ、図7に示すような良好なピーク形状のエレクトロフェログラムが得られた。しかしながらビタミンB1(VB1)とビタミンB2(VB2)、プソイドエフェドリン(PEP)とブロムワレリル尿素(BRV)、さらにカルビノキサミン(CXM)、ケトチフェン(KET)、アンブロキソール(AMB)の各ピークが分離できなかった。
【0029】
また、感冒薬中の各配合成分の挙動に及ぼすSDS濃度の影響について調べたところ、図8に示すように濃度に依存してアスコルビン酸(VC)を除く各配合成分の移動時間が長くなる様子が観察された。マイクロエマルションに作用しないアスコルビン酸(VC)は、SDS濃度にほとんど影響されなかった。
【0030】
〔実施例2〕
<製剤中の配合成分分析・分析法バリデーション>
本発明に係る感冒薬配合成分の分析方法を用いて、モデル総合感冒剤配合10成分定量法への適用の可能性を検討した。なお、18成分全てを配合する製剤は存在しないため、モデルとして10成分配合製剤を用いた。
【0031】
溶液中でのアスコルビン酸の安定性を考慮して、泳動液4にメタリン酸を添加した抽出溶媒を調製し、感冒薬配合成分の一斉抽出を行なった。得られたエレクトロフェログラムを図9に示す。フォトダイオードアレイ検出器により特異性を確認したところ、各配合成分及び内標準物質の移動時間には妨害となるピークは認められなかった。
【0032】
頑健性の確認のために、分析条件の各パラメータを変化させたときの分離度を求めた。分離に影響がみられたピークについての結果を表2に示す。これより、キャピラリー温度を低くしたとき、あるいは1−ブタノール含量を少なくしたときにビタミンB1(VB1)とカフェイン(CAF)のピークが近接する傾向が確認された。またSDS濃度を低くしたとき、あるいは1−ブタノール含量を多くしたときにアスコルビン酸(VC)とメチルエフェドリン(MEP)のピークが近接する傾向が確認された。他に2−プロパノール含量及びDM−β−CD濃度についても検討を行ったが±10%の範囲では影響はなかった。以上の結果、いずれも通常の範囲で頑健性が保持されることがわかった。
【0033】
【表2】

【0034】
泳動液中の各配合成分の安定性を確認したところ、遮光容器中で室温25時間まではピーク面積の低下は確認されず、安定性が確保されることがわかった。また、S/N=3より求めた検出限界を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
これより、各配合成分の濃度の50〜150%の範囲での直線性を確認したところ、全ての配合成分についてほぼ原点を通り、かつ相関係数0.999以上の良好な直線が得られた。また、配合成分抜き試料に定量濃度の80,100,120%になるように各成分標準溶液を添加し、回収率及び精度を確認した。その結果、マイクロエマルションを用いた抽出法により回収率は全ての成分で99.1〜100.7%と良好な値が得られることが示された。また、精度に関しても、0.5〜2.8%RSDであり良好な結果であるといえる。
【0037】
〔比較例2〕
<HPLCによる分析>
比較として、HPLCを用いて上記の感冒薬の分析を行なった。HPLC装置はアライアンスHPLCシステム(ウォーターズ社製)を用いた。アスコルビン酸以外の分析に用いたアイソクラティックHPLC条件はイトウらの方法を基に行った。またアスコルビン酸の分析はYMCアプリケーションデータ(YMC社製)を用いた。
【0038】
<モデル製剤の定量>
モデル製剤の定量をCD−MEEKC法で行うと同時に、HPLC法との比較を行った。なおHPLC法では、アセトアミノフェン、無水カフェイン及びビタミンB2の同時分析、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸ブロムヘキシン、dl−塩酸メチルエフェドリン、ノスカピン、マレイン酸カルビノキサミン及びビタミンB1硝酸塩の同時分析、アスコルビン酸単独分析の3条件で分析を行った。その結果、表4に示すようにいずれの成分の定量値も同等な値が得られた。
【0039】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】分析対象となるモデル感冒薬の配合成分の化学式を示した図である。
【図2】実施例1において、本発明に係る感冒薬配合成分の分析用泳動液により得られたエレクトロフェログラムを示す図である。
【図3】実施例1において、本発明に係る感冒薬配合成分の分析用泳動液により得られたエレクトロフェログラムを示す図である。
【図4】実施例1において、本発明に係る感冒薬配合成分の分析用泳動液により得られたエレクトロフェログラムを示す図である。
【図5】実施例1において、通常の泳動液により得られたエレクトロフェログラムを示す図である。
【図6】実施例1において、シクロデキストリンを添加しない泳動液を用いて電気泳動を行なった場合において得られたエレクトロフェログラムを示す図である。
【図7】比較例1において、通常の泳動液を用いて電気泳動を行なった場合において得られたエレクトロフェログラムを示す図である。
【図8】比較例1において、各配合成分におけるSDS濃度と移動時間の関係を示した図である。
【図9】実施例2において、本発明に係る感冒薬配合成分の分析用泳動液により得られたエレクトロフェログラムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリー電気泳動法による感冒薬配合成分の分析用泳動液であって、
ペンタンを0.7%(w/w)から0.9%(w/w)、ブタノールを6.10%(w/w)から6.90%(w/w)、プロパノールを1.8%(w/w)から2.2%(w/w)、ラウリル硫酸ナトリウムを4.18%(w/w)から4.90%(w/w)及びホウ砂溶液を75%(w/w)から95%(w/w)を含むマイクロエマルション溶液に、シクロデキストリンを2.7mmol/lから3.3mmol/l添加させた感冒薬配合成分の分析用泳動液。
【請求項2】
キャピラリー電気泳動法による感冒薬配合成分の分析方法であって、
ペンタンを0.7%(w/w)から0.9%(w/w)、ブタノールを6.10%(w/w)から6.90%(w/w)、プロパノールを1.8%(w/w)から2.2%(w/w)、ラウリル硫酸ナトリウムを4.18%(w/w)から4.90%(w/w)及びホウ砂溶液を75%(w/w)から95%(w/w)を含むマイクロエマルション溶液に、シクロデキストリンが2.7mmol/lから3.3mmol/l添加された泳動液を電気泳動用キャピラリーに導入する泳動液導入工程と、
前記電気泳動用キャピラリーに、マイクロエマルション溶液で抽出した試料溶液を導入する試料導入工程と、
前記マイクロエマルション泳動液及び前記試料を前記電気泳動用キャピラリー中で電気泳動する泳動工程と、
を備えた感冒薬配合成分の分析方法。
【請求項3】
前記感冒薬配合成分は、アセトアミノフェン、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸ブロムヘキシン、塩酸メチルエフェドリン、メキタジン、無水カフェイン、ノスカピン、マレイン酸カルビノキサミン、ビタミンB1硝酸塩、イブプロフェン、エテンザミド、グアイフェネシン、アスコルビン酸、ビタミンB2、塩酸アンブロキソール、ブロムワレリル尿素、塩酸プソイドエフェドリン及びフマル酸ケトチフェンからなる群から選ばれる2種以上である請求項2に記載の感冒薬配合成分の分析方法。
【請求項4】
前記シクロデキストリンは、2,6−ジ−O−メチル−β−シクロデキストリンである請求項2又は3に記載の感冒薬配合成分の分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−29981(P2006−29981A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209201(P2004−209201)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【復代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之