説明

感圧表示媒体及び筆記表示装置

【課題】押圧力により画像が即時に書き込まれ、時間の経過により画像が消去される感圧表示媒体及びそれを用いた筆記表示装置を提供する。
【解決手段】離間して対向する一対の透明基材2a,2bと、一対の透明基材2a,2b周縁を封止する封止部材4と、多孔質体に流動性材料を浸潤させた組成物が一対の透明基板2a,2b及び封止部材4で囲まれた密閉空間に充填されてなる表示層6と、からなり、透明基材の一方2aの面に外部から部分的な押圧力が作用した際に、押圧力が作用した箇所の表示層における前記流動性材料が前記多孔質体から排出し、かつ、前記押圧力が解除された後に、排出していた前記流動性材料が前記多孔質体へと再流入することを特徴とする感圧表示媒体、及びこれを用いた筆記表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧表示媒体及び筆記表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報機器の多様化の一つとして、ペン等の筆記具(指示部材)を用いて入力パネル上に文字や図形等を書込むとともに、このペン入力の軌跡を表示装置に表示する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この表示装置と組み合わせる入力パネルとしては、電磁誘導方式のものや、静電容量方式のもの、そして、光学式等の様々な方式を用いたものが実用化されている。また、表示装置としては、トナーの回転、電気泳動、サーマルリライタブル、液晶及びエレクトロクロミー等の技術を用いた電子ペーパーや、液晶ディスプレイ、CRT等のディスプレイ等が用いられている。そして、指示部材が入力パネル表面に接触し移動した軌跡は、前記表示装置の表示部に表示されることによって可視化される。
【0004】
特に、透明の入力パネルが前記表示装置の表示部に重ねられて配置され、指示部材が入力パネル表面に接触した状態で表面を移動すると、前記表示装置の表示部に、接触した指示部材の軌跡が表示画像として浮かび上がるように構成された筆記表示装置が知られている(以下、かかる構成の筆記表示装置を「直接筆記型表示装置」という場合がある。)。
【0005】
このような直接筆記型表示装置における指示部材の移動軌跡の可視化の際の移動軌跡を忠実かつ即時的に可視化する技術として、例えば、指示部材としてインクにより書込みを行うインクペンを用いて、表示装置としての電子ペーパー表面に該インクペンによる書込みを行い、表示装置にインクペンによる入力の軌跡が表示された後に該インクペンによる記載を人為的に電子ペーパー表面から消去する特許文献2に記載の技術がある。
【0006】
また、特許文献3には、記憶性表示体(表示装置)の表示面に、該表示面との界面光学状態が筆記圧により変化する感圧性シートを副表示手段として備えた表示装置と、前記副表示手段上での前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、当該位置検出手段で検出した位置情報を保持する保持手段と、前記移動体の移動軌跡に応じた画像を、前記記憶性表示体の表示画像に反映させる表示画像更新手段と、を備える情報入力装置の技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−46792号公報
【特許文献2】特開2004−109402号公報
【特許文献3】特開2006−139643号公報
【特許文献4】特開平10−217618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、押圧力により画像が即時に書き込まれ、時間の経過により画像が消去される感圧表示媒体及びそれを用いた筆記表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の<1>〜<6>に示す本発明により達成される。
【0010】
<1> 離間して対向する一対の透明基材と、該一対の透明基材周縁を封止する封止部材と、多孔質体に流動性材料を浸潤させた組成物が前記一対の透明基材及び前記封止部材で囲まれた密閉空間に充填されてなる表示層と、からなり、
前記透明基材の一方の面に外部から部分的な押圧力が作用した際に、押圧力が作用した箇所の表示層における前記流動性材料が前記多孔質体から排出し、かつ、前記押圧力が解除された後に、排出していた前記流動性材料が前記多孔質体へと再流入することを特徴とする感圧表示媒体。
【0011】
<2> 前記流動性材料の25℃における動粘度が35〜1250mm/sの範囲内であることを特徴とする<1>に記載の感圧表示媒体。
【0012】
<3> 前記多孔質体が、周期構造体であることを特徴とする<1>に記載の感圧表示媒体。
【0013】
<4> 筆記面に対する指示部材の移動軌跡を筆記情報として検出する筆記情報検出装置と、該筆記情報検出装置で検出された筆記情報に応じて、前記移動軌跡の形状の画像を表示部に表示する画像表示装置と、該画像表示装置の表示部に直接または他の層を介して積層されて、積層面と反対側の面が前記指示部材に押圧されながらこれが移動する前記筆記面となる<1>に記載の感圧表示媒体と、からなることを特徴とする筆記表示装置。
【0014】
<5> 前記画像表示装置の表示部と前記の感圧表示媒体との間に、光吸収層を介在させてなることを特徴とする<4>に記載の筆記表示装置。
【0015】
<6> 前記画像表示装置の表示部と前記の感圧表示媒体との間に、透明硬質層を介在させてなることを特徴とする<4>に記載の筆記表示装置。
【発明の効果】
【0016】
<1>にかかる発明によれば、押圧力により画像が即時に書き込まれ、時間の経過により画像が消去される感圧表示媒体を提供することができる。
【0017】
<2>にかかる発明によれば、押圧力により画像が即時に書き込まれ、一定時間の経過により画像が消去される感圧表示媒体を提供することができる。
【0018】
<3>にかかる発明によれば、筆記軌跡のカラー画像表示を実現することができる。
【0019】
<4>にかかる発明によれば、指示部材による筆記に追随して筆記面に即時に画像が表示される筆記表示装置を提供することができる。
【0020】
<5>にかかる発明によれば、本構成を具備しない場合に比べて、前記画像表示装置の表示部の表示状態の影響を受け難い表示画像を形成することができる。
【0021】
<6>にかかる発明によれば、本構成を具備しない場合に比べて、前記画像表示装置の表示部を筆記による押圧の影響を受け難い筆記表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の感圧表示媒体と、それを用いた筆記表示装置とに分け、好ましい実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0023】
[感圧表示媒体]
図1は、本発明の例示的一態様である実施形態の感圧表示媒体の模式断面図である。本実施形態の感圧表示媒体は、離間して対向する一対の透明基板(透明基材)2a,2bと、該一対の透明基板2a,2b周縁を封止する封止部材4と、一対の透明基板2a,2b及び封止部材4で囲まれた密閉空間に、多孔質体に流動性材料(以下の説明においては、「屈折液」と称する。)を浸潤させた組成物が充填されてなる表示層6と、からなる。
【0024】
図2は、図1に示す本実施形態の感圧表示媒体の表示層6を構成する多孔質体6aの模式部分拡大図である。多孔質体6aは多数の空隙6bを有する物であり、図2においては、当該空隙6bに屈折液は浸潤しておらず、空気等の気体が満たされた状態になっている。なお、図2において空隙6bは真円状に描かれているが、これはあくまでも模式的に表されたものであり、実際の多孔質体の空隙は一般に不定形である。
【0025】
図2中の矢印は、光の進行方向を模式的に表すものである(図3、図4及び図6において同様。)。屈折液が存在しない多孔質体6aのみの状態では、空隙6bと気体との界面に当たった光が、図2中の矢印に示されるように散乱乃至乱反射を起こして発色する。本発明に好適な後述するメンブレンフィルターでは、白色に見える。
【0026】
図3は、図2の多孔質体6aに屈折液を浸潤させた状態を模式的に表す模式部分拡大図であり、図1に示す本実施形態の感圧表示媒体における表示層6に相当する。多孔質体6aの空隙6b内に多孔質体6aと同じ屈折率の屈折液が満たされると、気体が追い出されて、多孔質体6a内部全体で屈折率が均一な状態になる。すると、図3中の矢印に示されるように散乱や乱反射が起こらなくなり、そのまま多孔質体6aと屈折液とからなる層(表示層6)を透過して、当該層は透明に見えるようになる。このとき、多孔質体6aと屈折液との屈折率差が小さいほど透明に見える。
【0027】
図4は、図3の状態の多孔質体6aに対して、指示ペン等の指示部材にて押圧力を加えた状態を模式的に表す模式部分拡大図である。当該図4は、図1に示す本実施形態の感圧表示媒体とは異なり、一対の透明基材(透明基板2a,2b)を省略して示しているが、指示ペン(指示部材)10は、実際にはその省略された透明基材の一方(透明基板2a)を介して多孔質体6aを押圧する。
【0028】
指示ペン10により押圧された領域Pにおける多孔質体6aは、押圧部に窪み8が形成されて、空隙6b’と共に押し潰され、空隙6b’内の屈折液が押し出される。このとき、指示ペン10による押圧が解除された後の当該領域Pにおいて、屈折率の状態が変化して発色し、押圧部に画像が形成される。そして、時間の経過と共に画像のコントラストが小さくなって行き、最終的に画像が消失する。この原理は定かでは無いが、以下のように推測することができる。
【0029】
指示ペン10による押圧後、その押圧が解除されると、多孔質体6aよりも前に不図示の透明基板(透明基材)がその復元力により窪み8が修復されて、元の状態に戻り、屈折液が存在しない空間が形成される。このため、屈折率差が発生して多孔質体6aの色が見える状態になる。
【0030】
一方、動粘性の高い屈折液も多孔質体6aの孔に阻まれ、すぐには戻ることができない。そのため、この瞬間何もない空間が生まれる。急激に体積が変化するということは、断熱変化又は等温変化が生じていると考えられる。この時感圧表示媒体の表示層6内部では圧力が急激に下がっている。内部が低真空状態になることで、屈折液中に溶け込んでいる残存気体がこの空間に気体として現れる。
【0031】
次に、多孔質体6aがその復元力により元の形状に戻る。図5は、図4の状態の多孔質体における押圧が解除され、多孔質体6aが元の形状に戻った状態を模式的に表す模式部分拡大図である。図5中の矢印は、屈折液の動きを示すものである。また、図6は、この状態における入射光の進行方向を矢印にて模式的に表す模式部分拡大図である。
【0032】
押し潰されて空隙6b’から押し出された屈折液は、多孔質体6aの復元よりも遅れて、矢印に示されるように復元された箇所の空隙6b”に流れ込む。このとき、屈折液が流れ込むまでの時間、空隙6b”は屈折液で十分には満たされていない状態となる。
【0033】
空隙6b”に屈折液が満たされた状態で透明となっていた多孔質体6aは、折液で十分には満たされていない状態では、図6に示されるように、領域Pで当該空隙6b”に基づく光の散乱乃至乱反射が起こり、発色が起こる。
【0034】
一方、表示層6内に生じた前記空間は、時間が経過するにつれ、屈折液が流れ込むことで消えて行くが、急激に発生した気体はすぐには屈折液の中に溶け込むことが出来ず、気泡として残る。そして時間の経過と共に、発生した気体が再び屈折液の中に溶け込んで消失し、空隙6b”に屈折液が満たされて、再び全体が徐々に透明状態に戻って行き、遂には図3に示す状態になって画像が消失する。
【0035】
以上は、あくまでも事実に基づく推測であり、上記推測は本発明を何ら限定するものではない。
【0036】
このように、本実施形態の感圧表示媒体は、透明基板2aの上から指示部材(指示ペン10)で押圧しつつ移動することによって、当該移動軌跡からなる画像を表示することができる。
【0037】
次に、本発明の感圧表示媒体における各構成部材について説明する。
【0038】
(多孔質体)
本発明において多孔質体(6a)としては、特に制限は無いが、屈折液の浸潤/押し出しが可逆的かつスムーズに生じる程度の適度の多孔性を有するものを適宜選択する。ユーザーの筆記圧力に相当する応力に対して機械的な強度を有するものであれば、いかなる方法で作られたものでもよい。通常、成人の各種ペンによる筆記圧力はおおよそ0.49N〜4.9N(≒50gf〜500gf)の範囲に入っているので、それに耐える機械的強度のものが望ましい。
【0039】
前記多孔質体は、通常成形の容易さ等の観点から、有機樹脂素材で構成されるものが用いられる。有機樹脂を用いて多孔質体を形成する方法としては、例えば、相転換法、延伸法、フィラー充填法等が挙げられる。それぞれの方法について説明する。
【0040】
相転換法は、有機樹脂を溶媒に溶解させ、平板上に流延・展開して製膜する方法であり、溶媒の一部を蒸発させ、浴中に浸漬して凝固させて多孔質体を製膜する方法である。
【0041】
フィラー充填法は有機樹脂をバインダーとして、これに支持基板とバインダーとは反応及び溶解しない溶液に可溶であるフィラーを分散させ、この溶液を支持基板上に塗布し、フィラーのみを溶媒除去して多孔質体を製膜する方法である。
【0042】
また、延伸法は結晶性の有機樹脂を製膜した後に、熱を加えたり可塑剤を添加して可塑化状態にして、1軸あるいは2軸に延伸し、フィルムに歪みを与えることにより孔を開けて多孔質体を製膜する方法である。
【0043】
前記多孔質体に要求される特性を満足する具体的な材料として、相転換法やフィラー充填法で製膜される有機樹脂としては、例えば、セルロース、アセチルセルロース(酢酸セルロース)、ニトロセルロース(硝酸セルロース)、セルロース混合エステル、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。また、延伸法で製膜される有機樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
【0044】
多孔質体の厚みが5μm〜50μmである場合は、多孔質体内の空隙の容積が20〜80%(この条件に加え、さらに好ましくは、多孔質体内の空隙の平均ポア径が0.01μm〜10μmの範囲内)であることが、白濁度の点で好ましい。空隙率が20%未満であると白濁度が低下し、高コントラストの表示が困難となる場合がある。また空隙率が80%を超えると、白濁度は大きくなるものの、表示層の強度が低下し、安定な画像記録や、画像の維持が困難になる場合がある。
【0045】
多孔質体内の空隙の平均ポア径は画像の表示維持時間に影響を与える因子であり、また、小さ過ぎても、10μmより大き過ぎても白濁度が低下し、高コントラスト表示が困難となる。発明者らの実験の結果によれば、当該平均ポア径としては、0.01μm〜10μmの範囲が好ましく、0.1μm〜5μmの範囲がより好ましい。なお、前記多孔質体の厚みとポア径が前記好ましい範囲内にあっても、両者の関係は、空隙の平均ポア径が多孔質体の厚みよりも小さいものであることを要する。これは、空隙の平均ポア径が多孔質体の厚みよりも大きいと、光散乱層である多孔質体は少なくともその一部に光の直進透過が可能な貫通孔を有することになり、表示された画像の濃度、鮮鋭度が低下するためである。
【0046】
以上の好適な条件を満たす、本発明に適した多孔質体としては、具体的にはメンブレンフィルターを挙げることができる。
【0047】
メンブレンフィルターは、東洋濾紙株式会社より商品名「ADVANTEC」として、いくつかの物が市場から入手することができる。具体的には、以下のものが挙げられる。
【0048】
・セルアセテートタイプメンブレンフィルタ(屈折率:1.47)
・PTFEタイプメンブレンフィルタ
・親水性PTFEタイプメンブレンフィルタ
・ポリカーボネートタイプメンブレンフィルタ
・セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルタ(酢酸セルロースと硝酸セルロースの混合物)(屈折率:1.50)
【0049】
なお、上記の内、屈折率を表記しなかった物は、メーカーが屈折率を保証していない商品であるが、実測して使用することに何ら差し支えない。
【0050】
前記多孔質体として、有する孔が周期的に配列してなる周期構造体を用いることもできる。周期構造体を前記多孔質体として用いることで、特定波長のみ反射するカラー筆記表示にすることができる。
【0051】
周期構造体については、特開2003−2687号公報、特開2004−170447号公報、特開2005−326596号公報に詳しい。これら文献に記載された周期構造体及びその製造方法等は、その具体例や変形例を含め、いずれも本発明において適用することができる。
【0052】
(流動性材料)
本発明において多孔質体(6a)に浸潤する流動性材料(屈折液)としては、上記多孔質体を構成する材料と屈折率が近いものが好ましく、常温で液状のものであれば特に制限は無い。
【0053】
この流動性材料の屈折率と多孔質体との屈折率が近いことが好ましい。湿潤時の透明度の観点からは、勿論屈折率の差が0に近いことが望まれるが、実際には0.1以内であれば近似の範疇とみなされて好ましく、0.05以内であることがより好ましい。
【0054】
多孔質体を構成する材料と流動性材料の屈折率差が0.1より大きいと、流動性材料を多孔質体中に浸潤させても、両者の界面において、光の屈折、反射が起こり透明性に影響を及ぼす場合がある。
【0055】
当該流動性材料としては、透明性が良好で、多孔質内に毛管力によって自然に浸透する濡れ性を有するものであれば、特に極性の有無やその他の電気的特性にかかわらず用いることができる。
【0056】
前記流動性材料の粘度としては、動粘性が0に近いほど表示画像の維持時間が短くなるが、粘性が高過ぎても指示部材で筆記した際の押圧で液体が流動しにくくなるため、画像を書き込むことが困難になる。そのため、前記流動性材料の常温(25℃)における動粘度が35〜1250mm/s(cSt)の範囲であることが好ましく、150〜1250mm/s(cSt)の範囲であることがより好ましい。
【0057】
以上の特性に加え、さらに、安全性の観点からは食品に添加されるような材料が特に好ましく、このような材料としては、食用植物油脂などが挙げられる。具体的には、サフラワー油、大豆油、ひまわり油、ニガー油、コーン油、綿実油、ごま油、なたね油、こめ油、カポック油、落花生油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、やし油、つばき油等が挙げられる。また、エチレングリコール、グリセリン、流動パラフィン等の化粧品にも用い得る材料も安全で、適度な粘度、屈折率を有する常温で無色透明の液体であり好ましく使用できる。
【0058】
その他、屈折液、イマージョンオイル(イマージョンリキッド、マッチングリキッド等と称される場合もある。)等として用いられる従来公知の液体を用いることもできる。例えば、カーギル社製の屈折液(屈折率1.300から2.31までの範囲で数種類の物がある。)やイマージョンオイル(屈折率1.4790と1.515の2種類、粘度の異なるタイプがある。)を挙げることができる。
【0059】
また、これらの材料を屈折率がほぼ等しい適当な溶媒を用いて粘度を調整して用いることもできる。
【0060】
さらに、複数種類の液体を混合したり、他の液体、固体及び気体を溶解させたりすることで、屈折率を調整して用いても構わない。
【0061】
(透明基材)
本発明において一対の透明基材(透明基板2a,2b)としては、筆記による押圧力が表示層(6)に伝わる程度の柔軟性を有しつつ、感圧表示媒体としての形状保持性、表示層6の密閉性や保護性等を備える材料が好ましい。具体的には、透明性を有する樹脂材料、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフレタート(PEN)などの各種有機樹脂フィルム乃至シート(以下、両者を明確な概念分けをせずに単に「フィルム」と表現する。)などが用いられる。
【0062】
より具体的には、PETとして、東レ(株)製商品名「ルミラー」、東洋紡(株)製商品名「コスモシャイン」や、PENとして、帝人デュポンフィルム(株)製商品名「テオネックス」等を挙げることができる。
【0063】
これら樹脂材料を用いた場合に、成人の筆圧が既述の如くおおよそ0.49N〜4.9N(≒50gf〜500gf)の範囲で筆記されることを考慮に入れると、透明基材の厚さとしては25〜200μmの範囲が好ましく、50〜125μmの範囲がより好ましい。透明基材の厚さが大き過ぎると指示部材の荷重(ペン先の筆圧)が内部の表示層に伝わり難く、薄過ぎると表示層の多孔質体や透明基材自身の耐久性が低下するため、それぞれ好ましくない。
【0064】
ただし、筆記面とは反対側の透明基板(透明基材)2bについては、上記のような厚さの制限は無く、むしろ感圧表示媒体自身の自立性、剛性、耐久性を確保するために、より厚みを有していた方が好ましい場合もある。さらに、本発明の感圧表示媒体を後述する本発明の筆記表示装置に適用する場合には、筆記面とは反対側の透明基板2bに電子ペーパー等の画像表示装置の表示部が接触する場合があるため、指示部材の押圧力からその表示部を保護するために、当該透明基板2bにより剛性を持たせた方が好ましい場合がある。
【0065】
一対の透明基材間の間隙としては、密閉空間に充填される多孔質体の厚さと同程度になるようにすることが好ましく、実際には、封止部材の厚さを適宜規定して作製することが望ましい。
【0066】
(封止部材)
本発明において、封止部材(4)は、一対の(透明基板2a,2b)の周縁を封止して、表示層(6)を構成する多孔質体及び流動性材料が充填される密閉空間を形成し得る構成であれば、特にその材料や形状は制限されない。図1に示される本実施形態の感圧表示媒体においては、一対の透明基板2a,2b間の間隙を保つスペーサとしての役割を兼ねた部材としての封止部材4が両者間に挟み込まれ接着固定されている。スペーサを別途設けて、封止部材には専ら封止の役割を担わせるべく、例えばシール等により封止しても構わない。
【0067】
封止のための接着方法としては、接着剤や粘着剤を用いる方法でも融着による方法であっても構わない。
【0068】
スペーサとしての役割を兼ねた封止部材としては、前記透明基材と同一の材料を用いることもできるし、それ以外の各種樹脂材料や無機材料、金属材料をいずれも問題なく用いることができる。密閉空間に充填される流動性材料が漏れ出すことが無く封止することができ、また該流動性材料ににより腐食することの無い材料であれば、いずれの材料を用いても構わない。例えば、封止部材として両面テープを使用することにより、当該両面テープにスペーサの機能を持たせつつ、簡便に両基板間を密着・封止することができる。
【0069】
なお、封止部材としての役割を兼ねないスペーサそのものについても同様の材料を用いることができる。
【0070】
[筆記表示装置]
図7は、本発明の例示的一態様である実施形態の筆記表示装置を斜視図にて示す模式構成図である。本実施形態の筆記表示装置は、電磁誘導方式の筆記情報検出機能を具備し装置本体を構成する筆記情報検出装置14と、そのカバーを兼ねる感圧表示シート(感圧表示媒体)12と、筆記情報検出装置14及び感圧表示シート12間に挿入される電子ペーパー(画像表示装置)16と、筆記情報検出装置14が位置検出し得る電磁誘導波を発生すると共に感圧表示シート12上面(電子ペーパー16に接する面(積層面)の反対面(筆記面)。以下同様。)を筆記圧により押圧する電磁誘導ペン(指示部材)20と、を具備してなる。
【0071】
本実施形態では、図7に示されるように、筆記情報検出装置14及び感圧表示シート12が一体化して装置本体を構成し、電子ペーパー16が別体となって差し替え可能になっている。
【0072】
電子ペーパー16は、矢印Aの如く筆記情報検出装置14−感圧表示シート12間に挿入され、感圧表示シート12が矢印B方向に閉じて挟み込まれる。図8に、電子ペーパー16が筆記情報検出装置14−感圧表示シート12間に挟み込まれた状態の本実施形態の筆記表示装置の模式断面図を示す。
【0073】
電磁誘導ペン20は、ペン先端部(図7及び図8における下方先端部)の磁界の変化に基づいて誘導電流を生じさせる誘導電流発生装置(不図示)を内蔵している。
【0074】
筆記情報検出装置14は、電磁誘導方式の筆記情報検出機能として、感圧表示シート12側に所定の磁界を生じさせると共に、電磁誘導ペン20の移動に応じて発生する前記誘導電流発生装置からの誘導電流情報を検出して、上面(電子ペーパー16側の面。以下同様。)における座標軸を特定し、電磁誘導ペン20の移動軌跡をセンシング回路で位置計測して筆記情報として検出する。
【0075】
この電磁誘導方式の筆記情報検出機能は公知の構成であり、例えば、特開2007−206846号公報の0015段落〜0022段落に具体的な構成例が開示されている。当該従来例は勿論のこと、その他従来公知の電磁誘導方式の筆記情報検出装置乃至方法を、本発明においては問題なく適用することができる。
【0076】
一方、感圧表示シート12は、図1に示した実施形態の感圧表示媒体と等価のものであり、その上面を電磁誘導ペン20が筆圧によって押圧することで、一時的な表示画像が直接書き込まれる。
【0077】
電子ペーパー16は、例えば液晶表示媒体であり、筆記情報検出装置14で検出された筆記情報に応じて、前記移動軌跡の形状の画像を表示部に表示する。この表示部は、電子ペーパー16の上面側(感圧表示シート12側の面。以下同様。)全面であり、電磁誘導ペン20の前記移動軌跡と略一致するように予め位置決めされている。
【0078】
なお、筆記情報検出装置14で検出された筆記情報は、不図示の画像処理装置によって画像情報に変換・生成された後に電子ペーパー16の表示部に画像として表示される。この画像処理装置は、筆記情報検出装置14や電子ペーパー16に内蔵されていてもよいし、これらとは別に外付けされていても構わない。内蔵される場合には画像処理用のCPUのように専用回路として組み込まれてもよいし、他の情報処理をも担うマイクロコンピュータとして組み込まれてもよい。外付けの場合も同様であるが、さらに汎用的なパーソナルコンピュータを前記画像処理装置として用いても構わない。
【0079】
以上の構成の実施形態の筆記表示装置を用いて、筆記により画像を書き込む様子について説明する。
【0080】
図9は、本実施形態の筆記表示装置を用いて、筆記により画像を書き込んでいる様子を示す斜視図である。
【0081】
筆記情報検出装置14及び感圧表示シート12間に電子ペーパー16が挿入されて挟み込まれると、感圧表示シート12の上面が最上面になり、これが筆記により電磁誘導ペン20のペン先に押圧されながらこれが移動する筆記面となる。図8に示すように、当該筆記面に電磁誘導ペン20を用いて筆記を行うと、その動きを移動軌跡として認識し、筆記情報検出装置が筆記情報として検出する。
【0082】
さらに、筆記情報検出装置14で検出された筆記情報は、不図示の画像処理装置によって画像情報に変換された後に電子ペーパー16の位置決めされた表示部に画像として表示される。
【0083】
こうした情報の検出、情報の伝送及び処理には、必然的に相応の時間を要し、筆記から画像の表示までにある程度のタイムラグが生じてしまう。本実施形態で言えば、筆記情報検出装置14による筆記情報の検出(センシング)、該筆記情報の画像処理装置への伝送、画像処理装置による画像データの生成、電子ペーパー16の液晶を駆動させるための表示コントローラの起動、液晶の相状態の変化、の各段階でそれぞれ時間がかかるため、筆記から画像の表示までのタイムラグは必然的なものといえる。
【0084】
そのため、筆記による電磁誘導ペン20の動きに画像の表示が間に合わずに、タイミングが遅れて前記表示部に画像が表示される状態になり易く、通常の筆記具で直接筆記する感覚とは異なるため、違和感が拭えない。
【0085】
しかし、本実施形態では、電子ペーパー16の上面に感圧表示シート12が積層配置されており、当該感圧表示シート12の上面に接触し、電磁誘導ペン20のペン先に押圧されながらこれが移動する。そのため、電子ペーパー16の表示とは別に、感圧表示シート12に画像が直接書き込まれる。
【0086】
したがって、筆記による電磁誘導ペン20の動きと共に感圧表示シート12に画像が直接書き込まれ、筆記者は違和感を軽減させて筆記を行うことができる。そして、本発明の感圧表示媒体である感圧表示シート12は、経時と共に表示画像のコントラストが低下し遂には表示画像そのものが消失してしまうが、それまでには電子ペーパー16の表示部に画像が形成されており、当該表示部への画像形成までの繋ぎの役目を十分に果たしている。しかも、経時によって感圧表示シート12の表示画像が消滅するので、書き込みが終わった電子ペーパー16を筆記情報検出装置14及び感圧表示シート12からなる装置本体から取り除き、新たな電子ペーパーに差し替えることで、繰り返し電子ペーパーに筆記することができる。
【0087】
また、電子ペーパー16の表示部を筆記面とすることなく、感圧表示シート12が電磁誘導ペン20との間に介在しているため、筆圧による前記表示部のダメージを緩和することができるといった付随的な効果も奏される。
【0088】
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を詳細に説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、当業者は従来公知の構成や本発明のために考案された各種構成を付加乃至差し替えることが可能であり、いずれにおいても、本発明の構成を具備する限り本願発明の範疇に含まれる。
【0089】
以下に本実施形態の変形例をいくつか挙げる。勿論、本発明は以下の変形例にも限定されるものではない。
【0090】
(装置構成の組み合わせ)
本実施形態では、図7に示されるように、筆記情報検出装置14及び感圧表示シート(感圧表示媒体)12が一体化して装置本体を構成し、電子ペーパー(画像表示装置)16が別体となって差し替え可能になっているが、本発明において一体化する組み合わせはこれに限定されるものではない。
【0091】
例えば、筆記情報検出装置、感圧表示媒体及び画像表示装置の全てを別体として、それぞれを使用時に組み合わせて1つの筆記表示装置としてもよい。それぞれを分離することで、初期コストの高い筆記情報検出装置を分離することができる。また、画像表示装置の表示部を保護する役割をも担う感圧表示媒体を、筆記による劣化に応じて交換することが容易になる。
【0092】
また例えば、感圧表示媒体及び画像表示装置を一体化して、筆記情報検出装置のみを別体としてもよい。筆記情報検出装置のみを別体とすることで、初期コストの高い筆記情報検出装置を分離することができる。
【0093】
さらに、筆記情報検出装及び画像表示装置を一体化して、感圧表示媒体のみを別体としてもよい。感圧表示媒体のみを別体とすることで、画像表示装置の表示部を保護する役割をも担う感圧表示媒体を、筆記による劣化に応じて交換することが容易になる。
【0094】
一方、筆記情報検出装置、感圧表示媒体及び画像表示装置の全てを一体化して、書き込みから表示までの機能を全て集約させた筆記表示装置としてもよい。この場合、一体型のため、いつでも筆記することが可能である。
【0095】
(画像表示装置の種類)
本実施形態では、画像表示装置として、液晶表示媒体である電子ペーパー16を用いているが、本発明において画像表示装置はこれに限定されない。筆記情報検出装置で検出された筆記情報に応じて、前記移動軌跡の形状の画像を表示部に表示する機能を有するものであれば、電子ペーパー16に代えて如何なる画像表示装置を採用しても構わない。
【0096】
採用することができる画像表示装置としては、本実施形態で用いた液晶表示装置のほか、トナーの回転を利用する装置、電気泳動を利用する装置、サーマルリライタブル装置、エレクトロクロミック装置等のいわゆる電子ペーパーを好適な物として挙げることができる。その他、CRT(陰極線管)や有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置なども適用可能である。
【0097】
(筆記情報検出装置の種類)
本実施形態では、筆記情報検出装置として、電磁誘導方式の筆記情報検出装置14を用いているが、本発明において筆記情報検出装置はこれに限定されない。筆記面に対する指示部材の移動軌跡を筆記情報として検出する機能を有するものであれば、筆記情報検出装置14に代えて如何なる筆記情報検出装置を採用しても構わない。
【0098】
採用することができる筆記情報検出装置としては、本実施形態で用いた電磁誘導方式のほか、赤外線と超音波とを組み合わせてそれぞれの送受信間の時間差から電子ペン(指示部材)の位置を筆記情報として検出する手書き筆跡入力システム(特開2007−206907号公報参照)、抵抗膜方式の装置、光学撮像方式(特開2006−277492号公報参照)なども適用可能である。
【0099】
(光吸収フィルタの配置)
本実施形態では、筆記情報検出装置14と感圧表示シート(感圧表示媒体)12とが接するように積層されているが、両者の間に光吸収フィルタ(光吸収層)を介在させても構わない。
【0100】
図10は、本実施形態に対して光吸収フィルタを追加配置した変形例の筆記表示装置を示す模式断面図である。図10に示される筆記表示装置は、図8に示される筆記表示装置における感圧表示シート12と電子ペーパー16との間に光吸収フィルタ18が挟み込まれてなるものである。
【0101】
感圧表示シート12の表示画像は反射光により観者に認識されるため、光吸収フィルタ18が配されていない場合(本実施形態の場合)に、下層に位置する電子ペーパー16の表示状態により見易さが変わる。例えば、電子ペーパー16が白色表示されると、入射光Rの内のすべての波長成分(Rb)が観者の方に戻ってきてしまうため、感圧表示シート12の表示色(Ra)と加法混色の効果により見え難くなる。そこで、本変形例では、感圧表示シート12と電子ペーパー16との間に光吸収フィルタ18を挿入することで、感圧表示シート12の発色を見やすくしている。
【0102】
電子ペーパー16と感圧表示シート12とが分離できる場合(完全に別体である必要は無い。)、挟み込む光吸収フィルタ18も脱着可能とすることができる。画像表示時等の平時は光吸収フィルタ18を配してしまうと電子ペーパー16の表示画像が暗くなってしまうため、書き込みの時のみ光吸収フィルタ18を挿入することで、平時に表示画像を見易くすることができる。
【0103】
なお、本変形例では、この光吸収フィルタ18と感圧表示シート12とが別体になった態様を例に挙げているが、両者を接合して一体化させても構わない。さらに、感圧表示シート12の透明基板2b(図1参照)に光吸収フィルタの機能を併せ持たせても構わない。
【0104】
光吸収フィルタは、感圧表示媒体(感圧表示シート12)と画像表示装置(電子ペーパー16)の表示部との間に挿入して使用する。当該光吸収フィルターは、感圧表示媒体に表示される表示色を見やすくするために挿入するものである。その観点からは、光吸収シートの光の透過率は低い方がよいが、透過率があまりに低くなると画像表示装置の表示が見え難くなってしまう。そのため、光吸収シートの光の透過率は0.1〜1.0の範囲が好ましく、0.1〜0.4がより好ましい。
【0105】
光吸収フィルタとして、具体的には、富士フイルム株式会社製、光量調整用フィルター(NDフィルター)等を好適なものとして例示することができる。
【0106】
(透明硬質ボードの配置)
筆記情報検出装置14と感圧表示シート(感圧表示媒体)12との間には、透明硬質ボード(透明硬質層)を介在させても構わない。
【0107】
図11は、本実施形態に対して光吸収フィルタを追加配置した変形例の筆記表示装置を示す模式断面図である。図11に示される筆記表示装置は、図8に示される筆記表示装置における感圧表示シート12と電子ペーパー16との間に透明硬質ボード22が挟み込まれてなるものである。
【0108】
透明硬質ボード22が配されていない場合(本実施形態の場合)に、下層に位置する電子ペーパー16の表示部が感圧表示シート12と直接接した状態になる。感圧表示シート12はその機能上、電磁誘導ペン20等の指示部材の筆記圧による押圧力で自身が変形しながら画像が書き込まれるので、それに電子ペーパー16の表示部が接触した状態では、当該表示部に指示部材の押圧力による負荷がかかる懸念がある。そこで、感圧表示シート12と電子ペーパー16との間に光透過性の透明硬質ボード22を挿入することで、指示部材の押圧力から電子ペーパー16の表示部を保護している。
【0109】
この透明硬質ボード22は、上記光吸収フィルタ18と同様、電子ペーパー16と感圧表示シート12とが分離できる場合(完全に別体である必要は無い。)、脱着可能とすることができる。
【0110】
なお、本変形例では、この透明硬質ボード22と感圧表示シート12とが別体になった態様を例に挙げているが、両者を接合して一体化させても構わない。さらに、感圧表示シート12の透明基板2b(図1参照)を硬質にして、これに透明硬質ボードの機能を併せ持たせても構わない。
【0111】
また、この透明硬質ボードに上記光吸収フィルタ18の機能を併せ持たせても構わない。
【0112】
使用可能な透明硬質ボードとしては、下層の画像表示装置(電子ペーパー16)の表示画像を視認できる透明性が求められる。また、画像表示装置の表示部を指示部材の押圧力による負荷から保護し得る硬度が望まれるが、硬度が十分でなくても感圧表示シート12と電子ペーパー16との間に介在するだけで、無いよりは保護の効果が期待できる。好適な材質としては、ガラスやプラスチックなどを具体例として挙げることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0114】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(60mm×90mm×100μm)を2枚用意した。一方、両面粘着シート(商品名:Neo Fix、日栄化成(株)製、膜厚100μm)を60mm×90mmの大きさに切り取り、さらに外周から5mm幅を残して内側をくり抜き、額縁状の両面粘着シートを用意した。該両面粘着シートの片面の剥離紙を剥がして、前記PETフィルムの1枚の外縁部に隙間無く貼り付けた。
【0115】
一方、多孔質体としてのセルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター(商品名:A500A047A、ADVANTEC東洋(株)製、寸法:47mmφ、孔径5μm、屈折率:1.50)に、屈折液としてのカーギール社製イマージョンオイル タイプ300(屈折率:1.5150、動粘度:300mm/s(cSt))を染み込ませた。これを上記両面粘着シートを外縁部に貼り付けたPETフィルムの中央に置き、当該両面粘着シートのもう一方の剥離紙を剥がした後に、用意したもう1枚のPETフィルムを重ね合わせて貼り付けた。
【0116】
長方形の前記PETフィルム2枚間に挟み込まれるメンブレンフィルターが円形であるため、両PETフィルムと額縁状の前記両面粘着シートとで囲まれた密閉空間にはメンブレンフィルターが存在しない空間が生じてしまうが、当該余剰の空間には前記屈折液を満たすことで、気泡が入り込まないように注意して封止した。
【0117】
以上のようにして、PETフィルムを透明基板2a,2b、両面テープをスペーサを兼ねた封止部材4とする、図1と略同構成の実施例1の感圧表示媒体を製造した。
【0118】
(実施例2)
実施例1において、屈折液としてカーギール社製スタンダードシリーズ シリーズA(屈折率:1.510、動粘度:35mm/s(cSt))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、図1と略同構成の実施例2の感圧表示媒体を製造した。
【0119】
(実施例3)
実施例1において、屈折液としてカーギール社製イマージョンオイル タイプB(屈折率:1.510、動粘度:1250mm/s(cSt))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、図1と略同構成の実施例3の感圧表示媒体を製造した。
【0120】
(実施例4)
実施例1において、多孔質体として親水性PTFEタイプのメンブレンフィルタ(商品名:H100A047A、ADVANTEC東洋(株)製、寸法:φ47mm、孔径:1μm、屈折率:1.35)を、屈折液として純水(屈折率:1.33、動粘度:13mm/s(cSt))を、それぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、図1と略同構成の実施例4の感圧表示媒体を製造した。得られた実施例4の感圧表示媒体は、外部から部分的な押圧力が作用して屈折液が多孔質体から排出しても、押圧力が解除されるとすぐに多孔質体へと再流入してしまう物である。
【0121】
(比較例1)
実施例1において、屈折液としてカーギール社製イマージョンオイル タイプNVH(屈折率:1.510、動粘度:21000mm/s(cSt))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、図1と略同構成の比較例1の感圧表示媒体を製造した。得られた比較例1の感圧表示媒体は、成人の各種ペンによる筆記圧力の最大値である5000N程度では、外部から部分的な押圧力が作用しても屈折液が多孔質体から排出し得ない物である。
【0122】
(筆記試験)
得られた実施例1〜4及び比較例1の各感圧表示媒体について、JIS K5600の引掻き硬度を評価する手法を参考に、定圧で荷重を負荷し、さらに定速で引掻き試験を実施できる評価系を作製し、評価を実施した。鉛筆ではなく、直径0.75mmのポリアセタール製の芯を持つ部材を指示部材として使用し、感圧表示媒体の一方の面に2.9N(300gf)の荷重がかかる状態でセットし、50mm/secの等速度で移動させて筆記試験を行った。筆記直後の画像の状態を以下の評価基準で評価した。また、筆記からその後の状態をビデオカメラで撮影し、発色状態と表示維持時間を確認し、同様に以下の評価基準で評価した。結果を下記表1に示す。
【0123】
◎:明瞭な筆記線画像が視認できる。
○:断線した筆記線画像が視認できる。
△:荷重が加わっていた初期位置のみ筆記画像が視認できる。
×:筆記画像が視認できない。
【0124】
【表1】

【0125】
上記表1の結果からわかるとおり、外部から部分的な押圧力が作用すると屈折液が多孔質体から排出し、押圧力が解除されると多孔質体へと再流入する実施例1〜4の感圧表示媒体は、筆記直後には筆記画像が表示されていることがわかる。
【0126】
また、実施例2や3においては、時間の経過と共に筆記画像が徐々に消去される傾向が確認できる。さらに実施例4では、筆記直後に表示された筆記画像の消去が早いことがわかる。一方、実施例1では、明瞭な筆記線画像が筆記1秒後にも維持されており、表示画像の維持性が高いことがわかる。
【0127】
なお、上記表1では、筆記1秒後の表示画像の状態しか明示されていないが、実施例1の感圧表示媒体は、5秒後には表示画像が消去していることが確認されている。
【0128】
これに対して、成人の各種ペンによる筆記圧力の最大値である5000N程度では、外部から部分的な押圧力が作用しても屈折液が多孔質体から排出し得ない比較例1の感圧表示媒体においては、筆記直後であっても筆記画像が表示されないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の例示的一態様である実施形態の感圧表示媒体の模式断面図である。
【図2】図1に示す感圧表示媒体の表示層を構成する多孔質体の模式部分拡大図である。
【図3】図2の多孔質体に屈折液を浸潤させた状態を模式的に表す模式部分拡大図である。
【図4】図3の状態の多孔質体に対して、指示部材にて押圧力を加えた状態を模式的に表す模式部分拡大図である。
【図5】図4の状態の多孔質体における押圧が解除され、多孔質体が元の形状に戻った状態を模式的に表す模式部分拡大図であり、流動性材料の動きが矢印にて模式的に示されている。
【図6】図4の状態の多孔質体における押圧が解除され、多孔質体が元の形状に戻った状態を模式的に表す模式部分拡大図であり、流動性材料の動きが矢印にて模式的に示されている。
【図7】本発明の例示的一態様である実施形態の筆記表示装置を斜視図にて示す模式構成図である。
【図8】図7の筆記表示装置における、筆記情報検出装置−感圧表示媒体間に画像表示装置が挟み込まれた状態の模式断面図である。
【図9】図7の筆記表示装置を用いて、筆記により画像を書き込んでいる様子を示す斜視図である。
【図10】図7の筆記表示装置の変形例であって、光吸収層を追加配置した筆記表示装置を示す模式断面図である。
【図11】図7の筆記表示装置の変形例であって、透明硬質層を追加配置した筆記表示装置を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0130】
2a,2b:透明基板(透明基材)、 4:封止部材、 6:表示層、 6a:多孔質体、 6b:空隙、 8:窪み、 10:指示ペン(指示部材)、 12:感圧表示シート(感圧表示媒体)、 14:筆記情報検出装置、 16:電子ペーパー(画像表示装置)、 18:光吸収フィルタ(光吸収層)、 20:電磁誘導ペン(指示部材)、 22:透明硬質ボード(透明硬質層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間して対向する一対の透明基材と、該一対の透明基材周縁を封止する封止部材と、多孔質体に流動性材料を浸潤させた組成物が前記一対の透明基材及び前記封止部材で囲まれた密閉空間に充填されてなる表示層と、からなり、
前記透明基材の一方の面に外部から部分的な押圧力が作用した際に、該押圧力が作用した箇所の表示層における前記流動性材料が前記多孔質体から排出し、かつ、前記押圧力が解除された後に、排出していた前記流動性材料が前記多孔質体へと再流入することを特徴とする感圧表示媒体。
【請求項2】
前記流動性材料の25℃における動粘度が35〜1250mm/sの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の感圧表示媒体。
【請求項3】
前記多孔質体が、周期構造体であることを特徴とする請求項1に記載の感圧表示媒体。
【請求項4】
筆記面に対する指示部材の移動軌跡を筆記情報として検出する筆記情報検出装置と、該筆記情報検出装置で検出された筆記情報に応じて、前記移動軌跡の形状の画像を表示部に表示する画像表示装置と、該画像表示装置の表示部に直接または他の層を介して積層されて、積層面と反対側の面が前記指示部材に押圧されながらこれが移動する前記筆記面となる請求項1に記載の感圧表示媒体と、からなることを特徴とする筆記表示装置。
【請求項5】
前記画像表示装置の表示部と前記の感圧表示媒体との間に、光吸収層を介在させてなることを特徴とする請求項4に記載の筆記表示装置。
【請求項6】
前記画像表示装置の表示部と前記の感圧表示媒体との間に、透明硬質層を介在させてなることを特徴とする請求項4に記載の筆記表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−162706(P2010−162706A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4759(P2009−4759)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】