説明

感染を検出するためのマルチプレックス方法

本発明は、単一のアッセイレセプタクル中で、各々が少なくとも1つの特異的で検出可能な物理的パラメーターを有し、そして少なくとも2つの異なる群に属し、群の1つが抗IgM捕捉抗体を有し、他の群が微生物に由来する捕捉抗原を有する、粒子の存在下に生物学的サンプルを置くことを含む、微生物感染のインビボでの診断的検出のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染性、特にウイルス、微生物での感染のインビトロでの検出に関する。本発明は、この同じ感染性微生物に対する全免疫グロブリン及び免疫グロブリンMを同時に検出するための方法に関する。本発明は、さらに特には、ヒト肝炎ウイルスに対する全免疫グロブリン及び免疫グロブリンMを同時に検出することに関する。
【0002】
微生物、特に、例えばヒトにおける肝炎ウイルスなどのウイルスを原因とする感染は、一般に、特に輸血及び診断において長い間認識されてきた周知の健康問題を構成する。
【0003】
一般に、感染病原体、特に肝炎ウイルスの無制御な増殖を防ぐために、患者又は輸血のための血液バッグからのサンプルがそのような病原体やウイルスに汚染されているか否かを可能な限り早期に判断することが不可欠である。さらに、患者が回復期に入ったか否かを判断するために、感染の間中、患者の免疫状態を経過観察し、それにより適切な治療工程及び/又は、存在する場合、免疫化を適用できることが同時に重要である。
【0004】
この型の感染のインビトロでの検出方法は、最も一般的には、感染病原体に対する抗体のイムノアッセイ(又は定量的な免疫学的測定)による検出に基づく。免疫グロブリンM(“IgM”)は、早期に一過性で現われ、最近の急性感染又は一次感染の顕著な特徴である。全免疫グロブリンは、様々な免疫グロブリンアイソタイプ(IgM、IgG、及びIgA)をグループ化し、長期間にわたる慢性もしくは持続性感染、あるいは患者の回復期の特徴である。急性感染後の相当な時間、全免疫グロブリンは、長期間の免疫を支持するための主にIgGからなる(Hollinger et al., Fields Virology, p. 735-785, 1996)。このため、感染の間中、患者においてIgMと全免疫グロブリンを区別できることが重要である。これは、インビトロ血清学における非常に一般的な状況である。
【0005】
この型の問題は、特に、ヒトにおける肝炎ウイルスを原因とする感染、HAVと呼ばれるA型肝炎ウイルスでの感染、HBVと呼ばれるB型肝炎ウイルスなどによる感染の場合において見出される。同等の状況は、ヒトにおける他の血液ウイルス:HSV(単純ヘルペスウイルス)、CMV(サイトメガロウイルス)、デングウイルス、他のフラビ・ウイルス(西ナイルウイルスなど)、風疹ウイルス、インフルエンザウイルス、VZV(水痘帯状疱疹ウイルス)など、様々な細菌(梅毒トレポネーマ、ボレリア・ブルグドルフェリなど)、及び様々な単細胞寄生虫(例えば、トキソプラズマ・ゴンディ)で見いだされる。
【0006】
間接的フォーマットによる全グロブリンの検出(標的抗原を有する固相でのサンプルの反応、次に標識した抗ヒト免疫グロブリン抗体での可視化)が長年知られており、とりわけ、1970年代における先駆的なELISA特許である。しかし、このフォーマットは好まれない。なぜなら、とりわけ、試験するサンプル中に潜在的に存在するリウマチ因子との非特異的な干渉を受けるためである。
【0007】
さらに、FX Heinz et al."Comparison of two different enzyme immunoassays for detection of tick-borne encephalitis virus in serum and cerebrospinal fluid" (Journal of Clinical Microbiology, 14: p. 141-146, (1981 ))は、IgMを検出するための間接的EIAアッセイ(免疫酵素アッセイ)における、IgMとIgGの間の競合の存在を指摘しており、それは最終的な検出の感度及び特異性に影響を及ぼす。
【0008】
“二重抗原サンドウイッチ”フォーマット(検出しようとする免疫グロブリンを有するサンプルと抗原を有する固相との反応、次に検出可能に標識した二次抗原での可視化)による全免疫グロブリンの検出が、1978年以来、公知である(Maiolini, R. et al.; Journal of Immunological Methods, 20 (1978) p. 25-34;及び、また、FR 2 383 446で発表された仏国特許出願)。
【0009】
“免疫グロブリン捕捉”フォーマットによるクラス特異的免疫グロブリンの検出も、それ自体が長年にわたり公知である。それは、1979年に、ELISAによる抗HAV IgMの特異的検出のためにDuermeyer W. et al.(Journal of Medical Virology 4 (1979): p. 25-32)により記載された(米国特許第4,292,403号も参照)。アッセイの原理は、抗ヒトIgM抗体でコーティングしたマイクロプレートウェルの使用に基づき、それに、検出しようとするIgMを含む血液サンプルを加える。インキュベーション期間後、マイクロプレートのウェルを洗浄し、既知量のHAV抗原を加えて、次にインキュベートする。最後に、さらなる洗浄後、ウェルに結合した任意の抗原を、次に、HAV抗原に対する、酵素で標識した抗体(F(ab’))の存在下で行う最終インキュベーションを用いて検出する。米国特許第4,273,756号には、同じ方法で、様々な肝炎ウイルス(HAV、HBV)に対するIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMを検出するためのクラス特異的“免疫グロブリン捕捉”フォーマットが記載されている。
【0010】
一般に、及びHAVにのみ関連する診断を超えて、コストと単純化という明らかな理由のために、無論、早期IgM及び後期IgG(一般に全免疫グロブリンの大部分を構成する)を同時に検出するための方法を開発するための試みがなされてきた。
【0011】
Olli Meurman("Detection of antiviral IgM antibodies and its problems - A review", in New Developments in Diagnostic Virology, Peter A. Bachmann editor, Springer-Verlag, Berlin Heidelberg New York 1983)及びW. Duermeyer(<< A new principle for the detection of specific IgM antibodies applied in an ELISA for hepatitis A >>)、(Journal of Medical Virology 4 (1979): p.25-32 - 上記)により報告された通り、なされた試みは多くの時間と労力を要することが判明している。これは、それらに、ゾーンもしくはショ糖密度勾配超遠心分離のいずれかによる、又はゲルろ過による、又はブドウ球菌プロテインAもしくは抗Fcガンマ抗体でのIgGの吸着による、あるいはβ−メルカプトエタノールでのIgMの切断による、様々な免疫グロブリン型を分離する予備工程が含まれるためである。
【0012】
別の選択肢は、2つの異なる可視化を組み合わせることである。Angarano et al.(Journal of Clinical Microbiology, June 1984, p. 905-910)は、抗HBc IgM及び全Ig(本質的にIgG)の同時検出のためのシステムを提案しており、RIELISA(Radio−Immune Enzyme−Linked−ImmunoSorbent Assay)と呼ばれ、全抗HBc免疫グロブリン(Abbott LaboratoriesからのCORABアッセイ)を検出するための競合ラジオイムノアッセイと抗HBc IgMを検出するための間接的ELISAイムノアッセイとを組み合わせる。2つのアッセイにおいて、同じ抗原(組換えHBc抗原)をただ1つの固相(ウェル中に置いたポリスチレンビーズ)上に吸着させ、しかし、他方では、HBc抗原に対する放射能(ヨウ素125)標識した抗体を、全抗HBc免疫グロブリンを検出するために使用し、他方で、(ペルオキシダーゼで)酵素標識した抗IgM抗体を抗HBc IgMを検出するために使用した。Angarano et al.(上記)は、唯一の不可欠な点が、抗原特異的抗体の標識が異なり、免疫グロブリンクラス特異的抗体のそれに干渉しないことであることを明記している。
【0013】
その2つの必須の異なるシグナルシステムを伴う(即ち、2つの検出可能な標識を伴う)Angarano et al.のシステムが全く単純ではないことが明らかである:2つのアッセイについて同時に行う第1の免疫学的工程後、シグナルを別々に、連続的に、複雑な方法で測定する必要がある。実際に、プロセスは、固相に結合した放射活性のある第1シグナルの測定で開始し、これにより、全抗HBc免疫グロブリンの力価を反映し、次に、第2工程において、ペルオキシダーゼ標識抗IgM抗体をビーズに加えて、インキュベーション後、基質(H)+クロモゲン(OPD)の混合物の添加が続く。インキュベーション及び発色後、この最終反応を塩酸で停止させ、抗HBc IgM力価を反映する、得られた最終的な光学密度を測定する。
【0014】
加えて、指摘できる通り、Angarano et al.の複雑なシステムは、それ自体で、全抗HBc免疫グロブリン力価と抗HBc IgM力価の間で明確に区別し、しかしながら、放射性化合物(即ち、ヨウ素125)の取り扱いに関連するリスクのために、特別な注意を払うべきであるだろう。最後に、Angarano et al.の方法論は、依然として、希釈緩衝液中に熱凝集免疫グロブリンGを加えることにより、(IgMを検出するために使用する間接的イムノアッセイシステムに固有の)リウマチ因子による干渉の事前の除去を講じる必要がある。これら全てによってAngarano et al.の方法論は比較的不利になる。
【0015】
従来、同じウイルスに対するIgM及びIgGの検出は、主に、別々の側面相で2つのイムノアッセイを実施することにより行い、2つのアッセイ間で起こりうる干渉を回避し、明確に区別されるIgM及びIgGシグナルを得る。
【0016】
このように、2つの異なる固相の従来の“免疫グロブリン捕捉”フォーマット、例えば、Duermeyer W.et al.(上記)の2つのマイクロプレートウェル又はVenture Technologies Malaisie(Medecines et maladies infectieuses [Medicines and infectious diseases], 33, 2003, p. 396-412)の技術の2つのニトロセルロースストリップにおいて使用されてきた。1つは抗IgM抗体で、他方を抗IgG抗体でコーティングし、サンプルをアッセイの各々に加えた。これらの技術は、従って、2つの異なる試験を行うことを必要とし、従って、比較的不利である。
【0017】
さらに、イムノアッセイにより免疫グロブリンを検出するために複数の型の技術を使用することが可能である:上記のELISA及びラジオイムノアッセイに加えて、不均一相又は均一相などにおける免疫蛍光、免疫発光などによる技術が存在する。粒子免疫凝集に基づく技術も存在し、その最終工程は、目視で検出でき、又は、検出機器を使用して、とりわけ、フローサイトメトリーによる検出のための機器を使用して定量できる。フローサイトメトリーによる測定の周知の利点の1つは、それが分析物を検出するための迅速かつ高感度な手段を構成することである。
【0018】
フローサイトメトリーは、流動形態での、光線前での微粒子の懸濁液の通過に基づく。電子光学センサーによって、1回に1個の粒子が光線前を通過することが確実となる。粒子が通過する際に光線の撹乱により起こるシグナルを次に検出し、記録する。
【0019】
米国特許第6,872,578 B2号には、特に、マルチプレックス・イムノアッセイ・システム(即ち、1サンプル中でのいくつかの分析物の同時検出を伴うイムノアッセイシステム)について記載されている。このシステムによって、異種イムノアッセイにおいて、フローサイトメトリーといくつかの群の固形粒子の使用を組み合わせる。これらの粒子は磁性があり、各々が特定の検出可能なパラメーター(即ち、例えば、サイズ、独自色、あるいは特定の蛍光などの物理的特徴)を有する。各群の微粒子が、問題のパラメーターに適した自動検出方法により区別可能ないくつかの非重複群に粒子を区別するための広範な値を含む。
【0020】
これらの粒子は、各々が、表面に結合し、互いに異なるアッセイ試薬を有する。同じ群の全ての粒子が同じ試薬を有する。これらの粒子の磁気特性によって、固相と液相の分離を洗浄中に自動化できる。
【0021】
米国特許第6,872,578 B2号には、とりわけ、風疹ウイルス抗原に対する様々な免疫グロブリンクラス(IgG及びIgM)の抗体の同時検出の実施例が記載されている。この実施例において、IgG及びIgMは、検出しようとするIgG及びIgMに特異的な抗原で感作した第1磁性粒子を使用して免疫精製する。この第1インキュベーション後、非特異的免疫グロブリンを洗浄中に除去する。特異的免疫グロブリンを、粒子上に吸着した抗原により捕捉し、次に酢酸を加えることにより上清中に放出する。この上清を次に別のチューブに移し、IgG及びIgMを、固相及び抗ヒトIgM及び抗ヒトIgG抗体からなる抱合体を使用したサンドウイッチフォーマットを用いてアッセイする。この技術には多くの労力を要する。なぜなら、抗原特異的Igのみを保存するためにサンプルの前処置が必要になるからである。
【0022】
Multimetrix GmbH社(Heidelberg, Germany)からの"Multimetrix Borrelia IgG又はIgMアッセイ"システムの場合と同様に、各々を異なる組換えボレリア抗原でコーティングした粒子の混合物、ならびに、蛍光標識(フィコエリトリン)で標識した抗IgG抗体及び抗IgM抗体を使用した間接的フォーマットによるIgM及びIgGの分別検出を使用することも可能である。各ビーズの最終的な複合体の蛍光は、Luminex Corporation社からの分析器を使用してフローサイトメトリーにより測定する。洗浄工程は必要なく、それにより単純化したイムノアッセイとする。しかし、プロトコールには、様々なキットレファレンス下で販売されるいくつかの反応チューブといくつかの試薬が必要になる。このシステムは、得られる市販パンフレットによると、高感度で信頼できるものとして示される。Bioplex 2200(登録商標)での抗EBV IgG及びIgM抗体の検出のための原理は、Klutts et al.(Journal of Clinical Microbiology, November 2004, p. 4996-5000)による論文において記載され、同じである。上の通り、それには2つの異なる試薬が必要となり、免疫反応は2つの異なる反応チューブ中で実施される。これらの2つのEBVアッセイでは、各々を異なるEBV抗原でコーティングした粒子の混合物、ならびに、2つの異なるキットを使用して蛍光標識(フィコエリトリン)で標識した抗IgG抗体及び抗IgM抗体を使用した間接的フォーマットによるIgM及びIgGの分別検出を使用する。各粒子の最終混合物の蛍光を、Luminex Corporation社からの検出器を使用したフローサイトメトリーにより測定する。
【0023】
従って、完全に同時に、即ち、ただ1つの、非前処置サンプルを使用して、ただ1つのアッセイレセプタクル中で、同じインキュベーション回数で、単一のシグナルシステムを使用して、そしてただ1つのシグナル読取時間で、IgM及び全免疫グロブリン(全Ig)を検出し、区別するために、感染の全持続時間にわたり、及び、免疫化前後の追跡調査においてもスクリーニングする目的で、簡単に行え、迅速で、高感度で、特異的で、定量的又は半定量的で、及び再現性があり、自動化できる方法を有する真の必要性が存在する。
【0024】
発明の概要:
本発明の著者らは、従って、上記の問題を解決し、ただ1つのレセプタクル中で、好ましくは未処置の、ただ1つの生物学的サンプルを使用して、1及び同じ抗原に対するIgM及び全免疫グロブリンを同時に検出するための代替法を開発しようと努めてきた。
【0025】
本発明の課題は、このように、微生物での感染のインビトロでの診断的検出のための方法であって、生物学的サンプル中に存在する微生物に対する免疫グロブリンG又は全免疫グロブリン及び免疫グロブリンMの同時検出を含み、方法には以下の工程が含まれる:
a)単一のアッセイレセプタクル中で、各々が少なくとも1つの特異的で検出可能な物理的パラメーターを有し、及び、少なくとも2つの異なる群に属し、群の1つが抗IgM捕捉抗体を有し、他の群が微生物に由来する捕捉抗原を有する、粒子の存在下に生物学的サンプルを置くこと、
b)各群の粒子上で免疫複合体の形成を可能にする条件下で混合物をインキュベートすること、
c)粒子に結合しなかった免疫グロブリンを除去すること、
d)少なくとも1つの抱合体が専ら微生物に由来する検出抗原からなる、少なくとも1つの標識抱合体を工程b)の混合物とインキュベートすること、
e)工程b)の免疫複合体に結合しなかった検出抗原を除去すること、
f)微生物に対する免疫グロブリンG又は全免疫グロブリン及び/又は免疫グロブリンMの有無を明らかにする、上記の2つの群の粒子を区別できる検出器を用いて、各粒子上の工程d)の免疫複合体を同時に検出すること。
【0026】
特定の実施態様によると、粒子の群は、適した検出器により検出可能な蛍光色素により互いに異なる。
【0027】
有利なことは、適した検出器はフローサイトメーターに結合させる。
【0028】
検出抗原の標識は直接的又は間接的でありうる。例えば、検出抗原はビオチンを有することができ、標識アビジン又はストレプトアビジンの添加により明らかにされる。
【0029】
好ましくは、微生物は、ヒトウイルス、特にヒト肝炎ウイルスである。
【0030】
本発明の課題は、また、特に各々が少なくとも1つの特異的で検出可能な物理的パラメーターを有し、少なくとも2つの異なる群に属し、群の1つが抗IgM捕捉抗体を有し、他の群が検出しようとする微生物に由来する捕捉抗原を有する粒子を含む、検出方法を行うための診断キット又は試薬セットである。
【0031】
発明の詳細な説明:
記載した問題を解決するために、本発明者らは、第一に、単一のレセプタクル中で、サンプル(血清又は血漿)中の抗HAV IgG及びIgMの同時検出のためのマルチプレックスアッセイを行い、免疫捕捉(実験のセクション、比較実施例1、及び図1のアッセイフォーマットのプロトコール及び結果の詳細を参照)により2つのフォーマットを組み合わせた:
− 第1に、抗ヒトIgG抗体を有する超常磁性粒子、
− 第2に、抗ヒトIgM抗体を有する超常磁性粒子。
【0032】
インキュベーション(サンプルのIgG及びIgMの捕捉ならびに第1の免疫複合体の形成)及び第1の洗浄後、HAV抗原を加えた。第2のインキュベーション後、HAV抗原(Ag HAV)を、形成した2つの型の複合体に結合させた。
【0033】
第2の洗浄後、2つの反応物は、蛍光色素(フィコエリトリン、PEの記号で表す)に共役させた抗HAVモノクローナル抗体(Mab)を加えることにより明らかにした。この抱合体のインキュベーション及び第3の洗浄後、各々の粒子についてシグナルをフローサイトメトリーにより読み出した。IgM及びIgGの結果が、フローサイトメトリーの2つの適切なレーザービームによるシグナルの読み出しを通じて別々に得られた。
【0034】
IgM検出は、低濃度でさえ、許容可能な感度に達し、それはHAV感染後の一般的な状況を表す。
【0035】
IgG検出の感度は、他方で、この設定において、サンプル中での多量の天然IgG(全ての抗原特異性を含む)のために明らかに不十分であった。実際に、抗IgG超常磁性粒子は、サンプル中に存在する、HAVに特異的ではないIgGで非常に迅速に飽和され、特に低濃度の抗HAV IgGで十分な抗HAV IgGをもはや捕捉しなかった。これは、不十分な分析感度をもたらした。
【0036】
これは、免疫化後保護の追跡調査に関連する抗HAV抗体の検出のために必須の臨床的感度の閾値が存在する全抗HAV免疫グロブリンの検出の場合に正確に当てはまる。この保護閾値は、WHO抗HAV基準(97/646)に関連して、合意により20mUl/mlで確定されている。この値未満では、個人は保護されず;この値以上では、IgG力価は、個人がウイルスに対して保護されることを保証するのに十分である。
【0037】
本発明者らは、従って、上のアッセイにおいて記載する“IgG感度”の欠如の問題を解決するために、他のアッセイフォーマットを設計した。
【0038】
全く驚くべきことに、本発明者らは、後に実施例2で記載する2つのフォーマットを組み合わせたマルチプレックス(プロトコールの詳細及び実施例のセクション、実施例2における結果、及び図2におけるアッセイフォーマットを参照)によって、単一のレセプタクル中で、IgM検出を減感することなく低IgG濃度を同時に検出でき、さらに、完全に高感度で特異的な方法で、抗HAV IgM抗体と全抗HAV免疫グロブリンの間を区別できることを示した。
【0039】
このように、単一のレセプタクル中で、サンプル(血清又は血漿)中の抗HAV IgG及びIgMを同時に検出するためのこの方法[この方法は、従って、本発明の方法である]では、2つのアッセイフォーマット(Duermeyer W.et al.のIgMのための“免疫グロブリン捕捉”アッセイフォーマット及びMaiolini R.et al.のIgGのための“二重抗原サンドウイッチ”アッセイフォーマット)を組み合わせる:
− 第1に、抗ヒトIgM抗体を有する超常磁性粒子、
− 第2に、HAV捕捉抗原を有する超常磁性粒子。
【0040】
インキュベーション(サンプルのIgG及びIgMの捕捉ならびに第1の免疫複合体の形成)及び第1の洗浄後、ビオチン化HAV抗原を加える。第2のインキュベーション後、HAV抗原を、形成した2つの型の複合体に結合させる。
【0041】
第2の洗浄後、2つの反応を、蛍光色素(フィコエリトリン)に共役させたストレプトアビジンを加えることにより明らかにする。インキュベーション及び洗浄後、シグナルを各々の粒子上でフローサイトメトリーにより読み出す。IgM及びIgGの結果は、フローサイトメトリーの2つの適切なレーザービームによるシグナルの読み出しを通じて別々に得られる。
【0042】
本発明は、抗HAV IgM及び全Igの高感度な分別検出をもたらし、全く驚くべきことである:これは、単一のレセプタクル中での、本発明の方法の2つのフォーマットの組み合わせには高リスクが存在し、固定化HAV抗原と固定化抗IgM抗体の間でのサンプルの抗HAV IgMについての競合が存在しうるからである。換言すると、上に記載する2つのフォーマットの同時実施のため、1つの同じレセプタクル中では、サンプルの抗HAV IgMの一部が、IgGを捕捉するために正確に使用されるHAV抗原を有する超常磁性粒子により捕捉され(図2において破線矢印により示す)、IgMとしてもはや検出されないリスクが存在した。そのような競合は、必然的にIgM反応の完全に不十分な検出(感度不足)をもたらし、従って、それにおいて、早期にIgMを検出することが不可能になる。当業者は、このリスクの大きさを完全に理解していたであろう。従って、本発明のこの組み合わせ(マルチプレックス)の採用を明らかに断念していた。
【0043】
本発明者は、B型肝炎ウイルスのカプシドに対するIgG及びIgM抗体を同時に検出するための本発明のマルチプレックス方法を同様に使用した(HBコアIgG及びIgM抗体の検出)。この効果については、実施例のセクション、実施例3、及び図3中のアッセイフォーマットを参照のこと。
【0044】
これに基づき、本発明者らは、マルチプレックスフォーマットにおける、IgG及びIgMの一般的検出のための方法を提案し、それは、IgG及びIgMを検出するために、診断の観点から重要である多くの微生物に適用できる。
【0045】
以下のセクションにおいて、本発明を理解するために有用な一定数の定義を提供する。
【0046】
定義
本発明に関連して、“生物学的サンプル”は、好ましくは、血液、血漿、血清、尿、脳脊髄液、唾液などの生体液からなる。好ましくは、サンプルは血漿又は血清である。試験サンプルは好ましくはヒト由来であるが、しかし、微生物感染の検出を必要とする動物にも由来しうる。
【0047】
“マルチプレックス検出”という用語は、本発明と関連して、同じ又はいくつかの感染性微生物に対する、血液中の免疫グロブリンM、G、A、D、及びEならびに全免疫グロブリンからなる群より選択される、少なくとも2つの型の抗体の同時検出を指す。
【0048】
“抗体”という用語は、任意の全抗体、又は、少なくとも1つの抗原組み合わせ部位を含む、もしくは、それから成り、抗体が抗原化合物の少なくとも1つの抗原決定基に結合できるようにする抗体の機能的断片を指す。抗体断片の例として、Fab、Fab’、及びF(ab’)断片、ならびに、また、scFv鎖(一本鎖可変断片)、dsFv鎖(二本鎖可変断片)などに言及できる。これらの機能的断片は、特に、遺伝子操作により得ることができる。
【0049】
“抗原断片”又は“抗原”という用語は、感染患者又は免疫化動物において抗体合成を誘発できる、A型肝炎ウイルスなどの感染性微生物の天然又は組換えタンパク質の全て又は一部を意味することを意図する。
【0050】
特に、“微生物に由来する抗原”という表現は、それが捕捉のためであるか、又は検出のためであるかを問わず、微生物のライセート、半精製又は精製したその天然抗原の1つ、組換えタンパク質、その断片、及び合成ペプチドからなる群より選択される任意の抗原を意味することを意図する。
【0051】
“捕捉抗原”という用語は、固相に付着した抗原断片を意味し、それは抗HAV抗体など、微生物に対する抗体により認識でき、後者との親和性結合を可能にする。
【0052】
“捕捉抗体”という用語は、固相に付着した抗体又は抗体の一部を意味し、それは生物学的サンプル中に存在する抗原化合物の少なくとも1つの抗原決定基に、親和性結合により保持できる。
【0053】
抗IgM捕捉抗体及び捕捉抗原は、任意の適した技術により粒子に付着できる。それらは、直接の共有原子価により、又は、非共有結合的に、特には親和性により付着できる。直接的な共有結合は、粒子上に存在するカルボン酸基の活性化を用いて行うことができ、例えば、ヒドロキシコハク酸イミド又はカルボジイミドを介した結合を含む。
【0054】
“検出抗原”という用語は、免疫捕捉方法によりIgM抗体を検出する、又は、従来の抗原−抗体−抗原サンドウイッチ方法、別名“二重抗原サンドウイッチ”方法(Maiolini et al.(1978))によりIgG抗体を検出することを可能にする標識抗原を意味する。検出抗原は、捕捉抗原と同じでありうる、又は、異なりうる。
【0055】
“標識”という用語は、直接的な標識(蛍光色素、発光化合物などを用いて)及び間接的な標識(例えば、それ自体を直接的に標識した抗体又は抗原を用いて、又は、限定はされないが、標識アビジン−ビオチン対などの標識“親和性対”の試薬を使用する)のいずれも指す。
【0056】
本発明に関連して使用できるモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体の産生は、従来の技術の結果である。
【0057】
モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein(Nature, 256, p. 495-497(1975))により記載されるリンパ球融合及びハイブリドーマ培養の従来の方法により得ることができる。モノクローナル抗体を調製するための他の方法も公知である(Harlow et al. editors, Antibodies A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988))。モノクローナル抗体は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、さらにヒトなど)を免疫化し、ハイブリドーマを産生するリンパ球融合技術を使用することにより調製できる(Kohler and Milstein, 1975、上記)。
【0058】
この通常の技術への代替技術が存在する。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマからクローン化した核酸の発現により産生できる。抗体は、また、ファージディスプレイ技術により、典型的には線状ファージであるベクター中に抗体cDNAを導入することにより産生できる(例えば、大腸菌のためのFuse5、Scott et al.(Science, 249, pp.386-390 (1990))。後者はライブラリーを構成し、それらの表面にscFv断片を提示する。これらの抗体ライブラリーを構築するためのプロトコールは、Marks et al.(1991) (J. Mol.Biol., 222, pp.581-597, (1991))において記載される。
【0059】
ポリクローナル抗体は、通常のプロトコールに従い、ペプチド性の抗原に対して免疫化した動物の血清から得ることができる。
【0060】
一般的に、ポリペプチド、特に組換えポリペプチド、又はオリゴペプチドは、例えば免疫原として使用できる。従来のプロトコールに従って、ウサギを、Benoit et al.[PNAS USA, 79, pp.917-921 (1982)]により記載される手順に従って、1mg等量のペプチド免疫原で免疫化する。
【0061】
動物に、4週間間隔で200μgの抗原注射を与え、10〜14日後に放血させる。3回目の注射後、クロラミンT法により調製した、ヨウ素放射性標識した抗原性ペプチドへの抗血清の結合能を評価する。それを、次に、カルボキシメチルセルロース(CMC)からなるイオン交換カラム上でのクロマトグラフィーにより精製する。溶出により回収した抗体分子は、次に、当業者に周知の方法により、例えば、IgG分画を得るためのDEAE Sephadexを使用して、所望の濃度に調整する。
【0062】
“粒子”という用語は、好ましくは、直径0.3μmと100μmの間、好ましくは0.5μmと40μmの間でありうるサイズを有する、ほぼ球形状の任意の粒子(それらは次に、一般的にビーズと呼ばれる)を意味することを意図する。そのような粒子は、例えば、Luminex社、Merck社、又はDynal社により製造される。
【0063】
粒子は、好ましくは、生物学的サンプルの成分に関して不活性である重合体からなる;それらはサンプル中で、固形で、不溶性である。使用する重合体は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリサッカライド、ポリウレタン、又はセルロースでありうる。結合剤を使用して、粒子に完全性及び構造を与えることもできる。
【0064】
官能基をこれらの重合体と共に取り込ませて、生物学的対象の高分子(タンパク質、脂質、炭水化物、核酸)の付着又は共役を可能にできる。これらの官能基は、当業者に公知であり、アミン基(−NH)又はアンモニウム基(−NH3+又は−NR3+)、アルコール基(−OH)、カルボン酸基(−COOH)又はイソシアネート基(−NCO)でありうる。ポリオレフィン中にCOOH基を導入するために最も一般的に使用するモノマーは、アクリル酸又はメタクリル酸である。
【0065】
粒子表面への試薬の付着は、静電気引力、親和性相互作用、疎水性相互作用、又は共有結合により行うことができる。共有結合が好まれる。
【0066】
本明細書で使用する粒子は、それらが特異的で検出可能な物理的パラメーター、即ち、フローサイトメトリーにより互いに区別するための分別マーカーを有する点で区別できる。好ましくは、少なくとも2つの型の異なる標識又はパラメーターを使用する。例えば、粒子は、適宜、様々な濃度で、1つ又は複数の染料(例えば、蛍光、発光など)を、又は、ラジオアイソトープ、酵素などの型の標識を含浸できる(Venkatasubbarao S. "Microarrays-Status and prospects" Trends in Biotechnology Dec 2004, 22(12): 630-637; Morgan et al., "Cytometric bead array: a multiplexed assay platform with applications in various areas of biology", Clin. Immunol. (2004) 100: 252-266)。あるいは、様々なサイズの粒子を使用できる。
【0067】
好ましい実施態様において、区別可能な粒子は、発光又は蛍光シグナルを放出する。Luminexからの超常磁性蛍光ビーズを、例えば、使用できる。
【0068】
これらの物理化学的特性によって、また、生物学的サンプルとの反応中、これらの微粒子により捕捉される分画を、結合しない分画から分離することが可能になりうる。この分離は、とりわけ、遠心分離、ろ過、又は磁化により行ってよい。磁化による分離が好ましく、このために、常磁性体、強磁性体、フェリ磁性体、及びメタ磁性体成分を含むビーズを使用できる。常磁性体成分、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、又はMn、CrO、又はFeなどの金属酸化物が好ましい。磁性体成分の量は、2%と50%(重量パーセント)の間、好ましくは3%と25%の間でよい。
【0069】
好ましい実施態様において、本発明は、フローサイトメトリーと、固相として、粒子の、好ましくは超常磁性の支持の使用を組み合わせたイムノアッセイ方法を使用する(1つの同じレセプタクル中で、いくつかのカテゴリー又は群の異なる粒子を使用する)。
【0070】
各群の粒子は免疫反応に特異的であり、物理化学的特性(サイズ、粒径分布、蛍光、及び/又は光学密度)により他の粒子から区別できる。超常磁性粒子の特性によって、洗浄工程における固相と液相の間の分離が促進され、アッセイを自動化できる。しかし、使用するビーズが超常磁性であることは必須ではない。使用できる超常磁性ビーズとして、特に、米国特許第6,872,578号に記載のビーズに言及できる。本発明の方法の最終検出相は、一般的に、以下を含む:
i)上記の2群の粒子のシグナルを区別できる検出器を用いて、各粒子上の工程c)の標識免疫複合体を同時に読み出すこと、
ii)各群の粒子について別々に結果を得ること、及び
iii)微生物に対する全免疫グロブリン(全Ig)及び/又は免疫グロブリンMの有無の指標として結果を解釈すること。
【0071】
粒子は、好ましくは、例えば、Luminexの特許出願国際公開第97/14028号において記載するフローサイトメトリーによる測定にかける。このように、試薬(抗体又は抗原)を有する粒子のサブグループを生物学的サンプルに暴露させ、各サブグループが1つ又は複数の分類パラメーターを有し、それによって1サブグループの粒子を別のサブグループに関して区別することが可能になる。サンプルにこのように暴露させた粒子を、次に、試験ゾーン(即ち、サイトメーター)中に通過させ、ここで分類パラメーター(例えば、蛍光発光強度)に関するデータ、及び、好ましくは、試薬と目的の分析物の間に形成される複合体の有無に関するデータも収集される。
【0072】
このように、例えば、粒子が蛍光シグナルを放出する場合、アッセイしようとするサンプル及び(例えば、蛍光標識で標識した)特異的な抱合体の添加後、各粒子上で形成した免疫複合体により放出される蛍光シグナルを(例えば、Luminex(商標)機器型の)レーザーリーダーを伴う粒子フローサイトメーターを使用して測定する。
【0073】
各粒子に特異的な蛍光を別々に、しかし、全ての粒子について同時に記録する。各群の粒子について、全く別々の異なるシグナルを最終的に得る。
【0074】
本発明によって、このように、簡単で自動化可能なプロトコールを用いて、2つの別々の高感度な測定値、同じ感染性微生物に対する、1つはIgM、他方は全免疫グロブリンを得ることが可能になる。
【0075】
本発明を、さらに特には、A型肝炎ウイルス及びB型肝炎ウイルスについてIgM及びIgG(又は全Ig)の同時検出を目的として、ならびに、梅毒に関与する感染性細菌物質である梅毒トレポネーマについてのIgM及びIgG(又は全Ig)の同時検出のために、以下に記載する。
【0076】
しかしながら、本発明は、同じアッセイレセプタクル中で、感度を喪失することなく、IgM及びIgG(又は全免疫グロブリン)を同時に検出する必要が同様に存在する、全てのウイルス(HSV、デングウイルス、ウエスト・ナイル・ウイルスなどの他のフラビ・ウイルス:風疹ウイルス及びインフルエンザウイルス、VZV、CMVなど)、全ての細菌(梅毒トレポネーマ、ボレリア・ブルグドルフェリなど)及び/又は全ての寄生虫(トキソプラズマ・ゴンディなど)に広く適用することは言うまでもない。
【0077】
本発明の方法において、サンプルは、酵素反応、消化、もしくは修飾など、又は、化学反応もしくは修飾などの(例えば、ゾーナル又はショ糖密度勾配超遠心分離法、ゲルろ過、ブドウ球菌プロテインA又は抗ガンマFc抗体を介したIgG吸着、あるいはβ−メルカプトエタノールでのIgMの切断による)前処置を受ける必要はない。しかし、そのような前処置を受けたサンプルで本発明の方法を行うことは可能である。
【0078】
レセプタクルは任意の固形容器、例えば、ポリプロピレンでできた試験管、マイクロプレートウェル、又は反応キュベットでよい。
【0079】
未結合の試薬の除去は、繰り返し遠心分離工程を用いた洗浄又は磁気を使用することによるビーズの超常磁性の利用など、当業者に公知の任意の技術により行うことができる。
【0080】
本発明の方法の特定の実施態様において、微生物は、ヒトのウイルス、細菌及び寄生虫、好ましくは単細胞の寄生虫からなる群より選択される。本発明の方法の好ましい実施態様において、微生物は、ヒトのウイルスからなる群より選択される。本発明の方法の特に好ましい実施態様において、微生物は、HAV及びHBVウイルスなどのヒト肝炎ウイルスからなる群より選択される。
【0081】
好ましい実施態様において、微生物はヒトA型肝炎ウイルス(HAV)であり、これについて、次に、約20mIU/mlの全抗HAV免疫グロブリンについての検出下限を得ることが可能である。
【0082】
本発明の課題は、また、本発明の方法を行うための試薬セットである。
【0083】
本発明の課題は、また、本発明の方法を行うための試薬のキットである。
【0084】
感染性微生物に対するIgM、及び、この同じ感染性微生物に対するIgG抗体又は全Igの同時及び組み合わせ検出の型は、本発明に関連して、“シンプレックス検出”(ここで、IgM及びIgG又は全Igの検出は独立して行う、即ち、組み合わせない)の対語として“マルチプレックス検出”と呼ぶ。
【0085】
本発明は、また、同時検出方法の全ての変形を目的とし、そしてこれを包含し、その変形はそれ自体公知である方法により得ることができるか、又は本発明の精神から逸脱することなく当業者が推測できる。
【0086】
本発明を、ここで、以下の実施例と共により詳細に説明する。
【0087】
以下の図及び実施例は本発明を説明し、その範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、二重免疫捕捉フォーマット(先行技術)による抗HAV IgG及びIgMの検出を示す模式図である。
【図2】図2は、サンドイッチフォーマットにおいて全抗HAV Igを、及び、免疫捕捉により抗HAV IgMを検出するための本発明の方法を示す模式図である。
【図3】図3は、サンドイッチフォーマットにおいて全抗HBc Igを、及び、免疫捕捉により抗HBc IgMを検出するための本発明の方法を示す模式図である。
【図4】図4は、IgGユニットフォーマット(免疫捕捉)により、及び、全Igユニットサンドイッチフォーマットによりアッセイした全抗HAV Igについての基準範囲の比較を示すグラフである。
【図5】図5は、ユニットサンドイッチフォーマットにより、及び、マルチプレックスによりアッセイした全抗HAV Igについての基準範囲の比較を示すグラフである。
【図6】図6は、サンドイッチフォーマットにおいて全抗梅毒トレポネーマIgを、及び、免疫捕捉により抗梅毒トレポネーマIgMを検出するための本発明の方法を示す模式図である。
【0089】
実施例のセクション
実施例1:先行技術による方法
先行技術によるこのアッセイの原理を図1において説明する。
【0090】
材料及び方法:
材料:
1.分析システム:
使用説明書に従ってBioPlex 2200(登録商標)分析器(Bio-Rad, Marnes la Coquette, France)を使用した。この自動免疫分析デバイスには、フローサイトメーター及びLuminex 100(商標)検出器(Luminex Corp., Austin, Texas, United States)が含まれ、異種セットの超常磁性粒子が使用される。各群の粒子は、ポリスチレンとメタクリル酸(COOH基)で構成され、直径8μmのサイズを有し、様々なパーセンテージの蛍光色素(CL1及びCL2)で製造され、各群の粒子に割り当てられ、Luminex 100(商標)検出器(Luminex Corp., Austin, Texas, United States)のレーザーにより検出可能な固有の識別コードを産生する。免疫反応後、ビーズは、液体マトリクスの中央で、1個ずつフローセルを通過し、同時に励起され、2つの別々のレーザーにより読み出される。各ビーズが通過する際に測定を行う。
【0091】
638nmの赤色レーザーは、各粒子の表面に埋め込まれた識別蛍光色素(CL1及びCL2)を励起し、複合シグナルを解釈して、粒子の分析物を同定する。粒子のカテゴリーを同定することにより、このレーザーは、従って、進行中のアッセイを同定するために有用である。532nmの緑色レーザーは、蛍光プローブ(フィコエリトリン(PE)で標識した抱合体)を励起し、放出される蛍光は粒子に付着した抱合体と比例する。このレーザーは、従って、粒子上に固定した分析物の反応を測定するために有用である。
【0092】
システムソフトウェアにより、抱合体のシグナルが、相対蛍光強度(RFI)値に変換される。シグナルを次にアッセイに特異的な標準曲線と比較し、分析物の濃度を決定する。比率も算出し、結果を陽性又は陰性として定性的に分類する。
【0093】
2.固相:
2つの異なる群のLuminex(商標)超常磁性粒子(Luminex Corp., Austin, Texas, United States)を使用した。各群の粒子を、特定のアッセイに特異的なリガンドでコーティングする。各リガンドを、ヘテロ二官能性試薬を使用して共役する。
− 群1:10μg/mgの粒子で固定化した抗ヒトIgMマウスモノクローナル抗体(Hytest, Finland)
− 群2:20μg/mgの粒子で固定化した抗ヒトIgGマウスモノクローナル抗体(Fcガンマ;Jackson Immuno Research, United States)
【0094】
3.HAV抗原:
Viral Antigen, Memphis, Tennessee, United StatesからのHAV抗原。
【0095】
4.蛍光色素:
Cyanotech, Hawaii, United Statesからのフィコエリトリン。
【0096】
5.抱合体:
それ自体当業者に公知のヘテロ二官能性試薬を使用したフィコエリトリン(PE)に共役した抗HAVマウスモノクローナル抗体(Bio-Rad, Marnes la Coquette, France)。
【0097】
6.希釈剤:
6.1.超常磁性粒子希釈剤:
116mM NaCl、5.6mM EDTA、2% Triton、10%ヒツジ血清、0.5g/lマウスIgG、0.5% Proclin 300(商標)(Supelco社の商標)、25%牛乳(100%脱脂)、0.13% IgG BS3を含む20mMクエン酸緩衝液(pH 5.6)溶液。
【0098】
6.2.HAV抗原及び抱合体のための希釈剤:
150mM NaCl、0.1% NaN、1% BSA、2.75% PEG 6000、0.1% Tween 20(商標)(Sigma社の商標)、1%ヒツジ血清、1g/lマウスIgGを含む50mMリン酸緩衝液(pH 7.1)溶液。
【0099】
6.3.工程1又は洗浄溶液のための希釈剤:
150mM NaCl、0.1% Tween 20(商標)(Sigma社の商標)、0.034% Proclin 300(商標)(Supelco社の商標)、0.095% NaN3を含むリン酸緩衝液(pH 7.4)。
【0100】
7.反応キュベット:
免疫反応は、容積1mlのポリプロピレン反応キュベット中で行った。
【0101】
8.基準:
WHO全抗HAV免疫グロブリン基準(コード97/646)を推奨事項に従って再構成し、以下の基準点:0、20、80、160、320、及び640mIU/mlを与えるように希釈した。
【0102】
方法:
アッセイプロトコール:
工程1:
1.以下を各反応キュベットへ連続的に分配する:5μlのサンプル又はスタンダード+250μlの工程1用希釈剤、10μlの免疫反応粒子(群1及び2の粒子の50:50混合物)+250μlの工程1用希釈剤。
2.均質化後、混合物を37℃で40分間インキュベートする。
3.洗浄工程を次に行う:磁化による固相と液相の分離及び少なくとも300μl洗浄溶液での3回の連続洗浄。最終洗浄後、粒子を再懸濁する。
工程2:
4.50μlのHAV抗原(Ag HAV)溶液を各反応キュベット中へ分配する。
5.均質化後、混合物を37℃で15分間インキュベートする。
6.洗浄工程を次に行う(同上ポイント3)。
工程3:
7.50μlの抱合体(抗HAV抗体−フィコエリトリン、即ち、Mab−PE)を各反応キュベット中へ分配する。
8.均質化後、混合物を37℃で15分間インキュベートする。
9.洗浄工程を次に行う(同上ポイント3)。
10.各ウェルの粒子を、撹拌しながら35μlの洗浄溶液をそれらに加えることにより再懸濁する。
11.各ウェルの粒子懸濁液をフローサイトメーターにより出した。
12.各キュベットの粒子懸濁液を2つのレーザー光線を使用して読み出す。
13.読み出しの結果をフローサイトメーターにより直接処理し、相対蛍光強度ユニット(RFIユニット)として記録する。
14.結果を解釈するために、各基準点(又はサンプル)について、比率をカットオフ値と比べて算出する。全抗HAV Igの観点から、カットオフ値は、保護カットオフと見なされる20mIU/mlでの基準点のRFI値に一致する。
【0103】
サンプルの比率は、このように、以下の方法で算出する:
サンプル比率=サンプルのRFIシグナルの平均値/カットオフ値
【0104】
比率が1より大きいサンプルは陽性と判定し、比率が1未満であるサンプルは陰性と判定する。
【0105】
ヒトのサンプルでの全てのアッセイを2回(2回繰り返し)行い、使用するRFIの結果は2回繰り返しでの平均値から出す。
【0106】
基準範囲で行ったアッセイの結果
免疫捕捉によるIgMの検出は何ら問題を起こさなかった。
分析感度20mIU/mlを達成するために、特に、抗HAV IgG免疫捕捉フォーマットに注意が払われていた。
しかし、行ったアッセイにおいて、抗HAV IgGを検出するための免疫捕捉フォーマットは明らかな感度の欠如を示す(表1及びグラフ1を参照)。これは、0と80mIU/mlの間での基準について算出した比率が、互いに有意に異ならず、それらが、信頼して選択すべき20mIU/ml基準の比率(比率=1.0)に近すぎるためである。比率が増加し始めるだけで、従って、160と640mIU/mlの間の基準についての全Ig検出の反映となる。
【0107】
【表1】

【0108】
感度のこの欠如は、使用する固相(抗ヒトIgG粒子)によって分析物に対するIgGを特異的に捕捉することが可能にならないとの事実による。固相は、従って、血清中の全ての他のIgGにより飽和される。
【0109】
この現象は、IgMのための免疫捕捉フォーマットにおいては見られない。なぜなら、同時にいくつかの感染を有し、血清中において、急性感染中に様々な感染病原体に対するIgMを有することは稀だからである。
【0110】
この免疫捕捉フォーマットは、従って、IgM検出のために保存されたが、しかし、IgG検出のために放棄され、サンドイッチフォーマットと置換された。後者のフォーマットについて得られた結果を以下に記載する。
【0111】
実施例2:抗HAV全Ig及びIgMの検出に適用する、本発明の検出方法
本発明のマルチプレックス検出方法を以下及び図2において記載する。
【0112】
材料及び方法:
材料:
材料は、以下に示す例外以外は、実施例1において使用するものと本質的に同じである。
【0113】
1.分析システム:実施例1の説明を参照のこと。
【0114】
2.固相:
2つの異なる群のLuminex(商標)超常磁性粒子(Luminex Corp., Austin, Texas, United States)を使用する:
− 群1:10μg/mgの粒子で固定化した抗ヒトIgMマウスモノクローナル抗体(Hytest, Finland)
− 群2:2.5μg/mgの粒子で固定化したHAV抗原(Viral Ag, Memphis, Tennessee, United States)
【0115】
3.抱合体1:
ビオチン(Pierce, Rockford, IL, United States)で標識したHAV抗原(Viral Ag, Memphis, Tennessee, USA)。
【0116】
4.抱合体2:
Cyanotech(Hawaii, United States)からのフィコエリトリン(略称“PE”)に共役したストレプトアビジン(略称“Strepta”、Roche Mannheim, Germany)。
【0117】
5.希釈剤:
ビーズならびに抱合体1及び2のための希釈剤、工程1のための希釈剤、洗浄溶液は、実施例1のものと同じである。
【0118】
6.基準:
WHO全抗HAV免疫グロブリン基準(コード97/646)は、実施例1において使用するものと同じである。
【0119】
7.サンプル:
アッセイするヒトサンプルは、抗HAV全免疫グロブリン及び/又はIgMについて陽性又は陰性である血漿又は血清サンプルである。これらのサンプルは、試料バッグからできている内部サンプルライブラリー、及び、以下の企業により販売されるサンプルに由来する:
ABO Pharmaceuticals - 7930 Arjons Drive, Suite A, San Diego, CA 92126, United States,
Teragenix - 5440 NW 33rd Avenue, Suite 108, Ft. Lauderdale, FL 33309, United States,
PromedDx - 10 Commerce Way, Norton, MA 02766, United States,
Zeptometrix Corporation - 872 Main St., Buffalo, NY 14202, United States,
BBI Diagnostoc - 375 West Street, West Bridgewater, MA 02379, United States,
Life Sera - 780 Park North Blvd, Suite 100, Clarkston, GA 30021, United States
【0120】
アッセイするヒトサンプルは以下に分けることができる:
− 抗HAV全免疫グロブリン及びIgMについて陰性(二重陰性)の30サンプル
− 全抗HAV免疫グロブリンについて陽性、及び、抗HAV IgMについて陰性の26サンプル
− 抗HAV IgMについて陽性、及び、全抗HAV免疫グロブリンについて陰性の15サンプル。
【0121】
方法:
アッセイプロトコール:
以下に記載するアッセイにおいて、3つのアッセイプロトコールを実施する:本発明のマルチプレックスプロトコール(即ち、全Igプロトコール+IgMプロトコール)及び2ユニットのプロトコール(全Igプロトコール及びIgMプロトコール)。これらの3つのプロトコールは、使用する免疫反応性の超常磁性粒子を加える工程を除いて、同じである。マルチプレックスプロトコールでは2群のビーズを使用し、各ユニットプロトコールでは単一群のビーズを使用する。IgMユニットプロトコール及びマルチプレックスプロトコールにおいて使用する群1の粒子(抗IgM抗体を有する)の量は依然として同じである。同様に、全Igユニットプロトコール及びマルチプレックスプロトコールにおいて使用する群2の粒子(HAV抗原を有する)の量は依然として同じである。
【0122】
A.全抗HAV Igを検出するためのユニットプロトコール
工程1:
1.以下を各反応キュベットへ連続的に分配する:25μlのサンプル又はスタンダード+225μlの工程1用希釈剤、10μlの群2の免疫反応粒子(HAV抗原)+250μlの工程1用希釈剤。
2.均質化後、混合物を37℃で40分間インキュベートする。
3.洗浄工程を次に行う:実施例1の同上ポイント3
工程2:
4.50μlの抱合体1溶液(ビオチン化HAV抗原、即ち、“Ag HAVビオチン”)を各反応キュベット中へ分配する。
5.均質化後、混合物を37℃で15分間インキュベートする。
6.洗浄工程を次に行う:同上ポイント3。
工程3:
7.50μlの抱合体2(ストレプトアビジン−フィコエリトリン、即ち、“Strepta−PE”)を各反応キュベット中へ分配する。
8.均質化後、混合物を37℃で15分間インキュベートする。
9.洗浄工程を次に行う:同上ポイント3。
10.各反応キュベットの粒子を、撹拌しながら35μlの洗浄溶液をそれに加えることにより再懸濁する。
11.各反応キュベットの粒子懸濁液をフローサイトメーターにより出す。
12.各キュベットの粒子懸濁液を2つのレーザー光線を使用して読み出す。
13.読み出しの結果をフローサイトメーターにより直接処理し、相対蛍光強度ユニット(RFIユニット)として記録する。
14.結果を解釈するために、各基準点又はサンプルについて、比率をカットオフ値と比べて算出する。全抗HAV Igの観点から、カットオフ値は、保護カットオフと見なされる20mIU/mlでの基準点のRFI値に一致する。
【0123】
サンプルの比率は、このように、以下の方法で算出する:
サンプル比率=サンプルのRFIシグナルの平均値/カットオフ値
【0124】
比率が1より大きいサンプルは陽性と判定し、比率が1未満であるサンプルは陰性と判定する。
【0125】
ヒトのサンプルでの全てのアッセイを2回(2回繰り返し)行い、使用するRFIの結果は2回繰り返しでの平均値から出す。
【0126】
B.抗HAV IgMを検出するためのユニットプロトコール
工程1:
1.以下を各反応キュベットへ連続的に分配する:
25μlのサンプル又はスタンダード+225μlの工程1用希釈剤、
10μlの群1の免疫反応粒子(抗IgM抗体)+250μlの工程1用希釈剤。
IgMユニットプロトコールの全ての他の工程(2−13)は、全Igユニットプロトコールの工程2−13と厳密に同じである。
14.サンプル比率の算出のために、HAV IgMの観点から、カットオフ値は陰性サンプル+12標準偏差のRFIの平均値である。
【0127】
算出したサンプル比率は、このように、以下である:
サンプル比率=サンプルのRFIシグナルの平均値/カットオフ値
【0128】
比率が1より大きいサンプルは陽性と判定し、比率が1未満であるサンプルは陰性と判定する。
【0129】
ヒトのサンプルでの全てのアッセイを2回(2回繰り返し)行い、使用するRFIの結果は2回繰り返しでの平均値から出す。
【0130】
C.本発明のマルチプレックスプロトコール(抗HAV全Ig及びIgMの同時検出):
工程1:
1.以下を各反応キュベット中へ分配することに成功する:25μlのサンプル又はスタンダード+225μlの工程1用希釈剤、
10μlの免疫反応粒子(群1及び2の粒子の50:50混合物)+250μlの工程1用希釈剤。
マルチプレックスプロトコールの全ての他の工程(2−14)は、全Ig及びIgMユニットプロトコールの工程2−14と厳密に同じである。
【0131】
得られた結果:
1.較正範囲:
1.1.ユニットサンドイッチによりアッセイした全抗HAV Ig基準範囲:
ユニットサンドイッチにより行った基準範囲(0〜640mIU/ml)で得られた結果は、全Igサンドイッチフォーマットが、実施例1についてのIgG免疫捕捉フォーマットよりもずっと高感度であることを示す(表2及び図4を参照)。
【0132】
【表2】

【0133】
1.2.マルチプレックスによりアッセイした全抗HAV Ig基準範囲
本発明のマルチプレックスプロトコールに従ったサンドイッチにより行った基準範囲で得られた結果を表3及び図5において報告する。
【0134】
【表3】

【0135】
マルチプレックス全Igサンドイッチフォーマットの感度は、ユニットサンドイッチフォーマットにより得られる感度と比べ、依然として不変であることを指摘する。
【0136】
2.サンプル:
2.1.ユニットサンドイッチによる、及び、マルチプレックスサンドイッチによる全抗HAV Igについてのサンプルのアッセイ:
全抗HAV Igについてヒトサンプルで得られた結果を表4において報告する。
【0137】
【表4】



【0138】
ユニットフォーマットにより行うか、又は、本発明のマルチプレックスにより行うかにかかわらず、全抗HAV Igサンドイッチアッセイにおける陰性サンプル(n=30)と陽性サンプル(n=26)の間での非常に良好な識別が指摘される。
【0139】
これらの結果は、従って、全抗HAV Igの検出が本発明のマルチプレックス法において減感されないことを示す。全ての陽性サンプルは、実際に、本発明の方法により陽性であることが見出され、このように良好な臨床感度を得ることも可能になる。
【0140】
2.2.ユニット及びマルチプレックス免疫捕捉フォーマットによる抗HAV IgMについてのサンプルのアッセイ:
抗HAV IgMについてヒトのサンプルで得られた結果を表5において報告する。
【0141】
【表5】

【0142】
ユニットフォーマットにより行うか、又は、本発明のマルチプレックスにより行うかにかかわらず、免疫捕捉による抗HAV IgMアッセイにおける、抗HAV IgMについて陰性のサンプル(n=30+26)と抗HAV IgMについて陽性のサンプル(n=15)の間での非常に良好な識別が指摘される。
【0143】
これらの結果は、このように、免疫捕捉によるIgMの検出が本発明のマルチプレックス法におけるサンドイッチアッセイとの組み合わせにより減感されないことを示す。
全ての陽性サンプルが、実際に、本発明の方法により陽性であることが見出され、このように良好な臨床感度も得ることが可能になる。
【0144】
実施例3:抗HBc全Ig及びIgMの検出に適用する、本発明の検出方法
本発明のマルチプレックス検出方法は、抗HBc全Ig及びIgMをアッセイするためにも使用した。この方法を図3において説明し、以下に記載する。
【0145】
材料及び方法:
材料:
使用する材料は、ビオチン化抱合体1及び試験するサンプルの粒子を例外とし、実施例2の材料と同等である。
【0146】
1.固相:
2つの異なる群のLuminex(商標)超常磁性粒子(Luminex Corp., Austin, Texas, United States)を使用する。
− 群1:10μg/mgの粒子で固定化した抗ヒトIgMヤギポリクローナル抗体(Bio-Rad, Marnes la Coquette)
− 群2:10μg/mgの粒子で固定化した組換えHB抗原(Virogen, Watertown, MA, United States)
【0147】
2.抱合体1:
ビオチン(Pierce, Rockford, IL, United States)で標識した組換えHBc抗原(Biokit, Barcelona, Spain)。
【0148】
3.サンプル:
アッセイしたヒトのサンプルは、全HBc免疫グロブリン及び/又は抗HBc IgMについて陽性又は陰性である血漿又は血清である。これらのサンプルは、国内のサンプルライブラリー、即ち、企業により販売されるサンプルからである:
ABO Pharmaceuticals - 7930 Arjons Drive, Suite A, San Diego, CA 92126, United States,
PromedDx -10 Commerce Way, Norton, MA 02766, United States,
Zeptometrix Corporation - 872 Main St., Buffalo, NY 14202, United States
【0149】
アッセイするヒトのサンプルは以下に分けることができる:
− 全抗HBc免疫グロブリン及び抗HBc IgMについて陰性の10サンプル(二重陰性)
− 全抗HBc免疫グロブリンについて陽性、及び、抗HBc IgMについて陰性の10サンプル
− 抗HBc IgMについて陽性、及び、全抗HBc免疫グロブリンについて陰性の10サンプル
【0150】
方法:
アッセイプロトコール:
使用したプロトコールは、工程1において5μl+250μlの希釈剤である、工程1において使用したサンプル容積を例外とし、上の実施例2に記載のプロトコールA、B、及びCと同じである。
他の工程は、解釈の工程を含め、同じである。全抗HBc Ig及び抗HBc IgMのアッセイについて、カットオフ値は、陰性サンプル+12標準偏差のRFIの平均値である。
【0151】
カットオフ値と比べて算出したサンプル比率は、このように、以下である:
サンプル比率=サンプルのRFIシグナルの平均値/カットオフ値
【0152】
比率が1より大きいサンプルは陽性と判定し、比率が1未満であるサンプルは陰性と判定する。
【0153】
ヒトのサンプルでの全てのアッセイを2回(2回繰り返し)行い、使用するRFIの結果は2回繰り返しでの平均値から出す。
【0154】
得られた結果:
【0155】
【表6】

【0156】
ユニットフォーマットにより行うか、又は、本発明のマルチプレックスにより行うかにかかわらず、全抗HBc Igサンドイッチアッセイにおける、陰性サンプル(n=10)と陽性サンプル(n=20)の間での非常に良好な識別が指摘される。
【0157】
これらの結果は、このように、全抗HBc Igの検出が本発明のマルチプレックス法において減感されないことを示す。
全ての陽性サンプルが、実際に、本発明の方法により陽性であることが見出され、このように良好な臨床感度も得ることが可能になる。
【0158】
【表7】

【0159】
ユニットフォーマットにより行うか、又は、本発明のマルチプレックスにより行うかにかかわらず、抗HBc IgM免疫捕捉アッセイにおける、抗HBc IgMについて陰性のサンプル(n=10+10)と抗HBc IgMについて陽性のサンプル(n=10)の間での非常に良好な識別が指摘される。
【0160】
これらの結果は、このように、免疫捕捉によるIgMの検出が本発明のマルチプレックス法におけるサンドイッチアッセイとの組み合わせにより減感されないことを示す。
全ての陽性サンプルが、実際に、本発明の方法により陽性であることが見出され、このように良好な臨床感度も得ることが可能になる。
【0161】
実施例4:抗梅毒全Ig及びIgMの検出に適用する本発明の検出方法
本発明のマルチプレックス検出方法は、全抗梅毒トレポネーマIg及び抗梅毒トレポネーマIgMをアッセイするためにも使用でき、梅毒トレポネーマは梅毒に関与する感染性の細菌因子である。この方法を図6において説明し、以下に記載する。
【0162】
材料及び方法:
材料:
使用する材料は、ビオチン化抱合体1及び試験するサンプルの粒子を例外とし、実施例2及び3のものと同等である。
【0163】
1.固相:
2つの異なる群のLuminex(商標)超常磁性粒子(Luminex Corp., Austin, Texas, United States)を使用する。
− 群1:2.5μg/mgの粒子で固定化した抗ヒトIgMマウスモノクローナル抗体(Hytest, Finland);
− 群2:5μg/mg及び1.25μg/mgの粒子でそれぞれ固定化した梅毒トレポネーマの組換え抗原TpN17及びTpN47(New Market Laboratories Ltd, Kentford, England)
【0164】
2.抱合体1:
ビオチン(Pierce, Rockford, IL, United States)で標識した組換え抗原TpN17及びTpN47(New Market Laboratories Ltd, Kentford, England)
【0165】
3.サンプル:
アッセイするヒトのサンプルは、全抗梅毒トレポネーマ免疫グロブリン及び/又は抗梅毒トレポネーマIgMについて陽性又は陰性である血漿又は血清である。これらのサンプルは国内のサンプルライブラリーからである:
Etablissement Francais du Sang (EFS) [French blood bank] - 83 rue des Alpes, 94150 Rungis, France,
又は、企業により販売されるサンプルからである:
PromedDx - 10 Commerce Way, Norton, MA 02766, United States,
SeraCare Life Science - 375 West Street, West Bridgewater, MA 02379, United States
【0166】
アッセイするヒトのサンプルは以下に分けることができる:
− 全抗梅毒トレポネーマ免疫グロブリン及び抗梅毒トレポネーマIgMについて陰性(二重陰性)の35サンプル
− 全抗梅毒トレポネーマ免疫グロブリンについて陽性、及び、抗梅毒トレポネーマIgMについて陰性の3サンプル(サンプル1、2、3)
− 抗梅毒トレポネーマIgMについて陽性、及び、全抗梅毒トレポネーマ免疫グロブリンについて陰性の4サンプル(サンプル4、5、6、7)
【0167】
方法:
アッセイプロトコール:
使用するプロトコールは、サンプルについて100μlであり、ビーズについて100μlである工程1、及び、抱合体1(ビオチン化梅毒トレポネーマ抗原)溶液の100μlである工程2における容積を例外とし、実施例2において上で記載するプロトコールA、B、及びCと同じである。解釈の工程を含む他の工程は同じである。
【0168】
結果の解釈:
全抗梅毒トレポネーマIg及び抗梅毒トレポネーマIgMのアッセイにおいて、カットオフ値は、0.3で割った陰性サンプルのRFIの平均値である。
【0169】
カットオフ値と比べて算出したサンプル比率は、このように、以下である:
サンプル比率=サンプルのRFIシグナルの平均値/カットオフ値
【0170】
比率が1より大きい、又は、等しいサンプルは陽性と判定し、比率が1未満であるサンプルは陰性と判定する。
【0171】
ヒトのサンプルでの全てのアッセイを3回行い、使用するRFIの結果は3回繰り返しでの平均値から出す。
【0172】
得られた結果:
【0173】
【表8】

【0174】
ユニットフォーマットにより行うか、又は、本発明のマルチプレックスにより行うかにかかわらず、全抗梅毒トレポネーマIgサンドイッチアッセイにおける、陰性サンプル(n=35)と陽性サンプル(n=3)の間での非常に良好な識別が指摘される。
【0175】
これらの結果は、このように、全抗梅毒トレポネーマIgの検出が本発明のマルチプレックス法において減感されないことを示す。全ての陽性サンプルが、実際に、本発明の方法により陽性であることが見出され、このように良好な臨床感度も得ることが可能になる。
【0176】
【表9】

【0177】
ユニットフォーマットにより行うか、又は、本発明のマルチプレックスにより行うかにかかわらず、免疫捕捉による抗梅毒トレポネーマIgMアッセイにおける、抗梅毒トレポネーマIgMについて陰性のサンプル(n=35+3)と抗梅毒トレポネーマIgMについて陽性のサンプル(n=3)の間での非常に良好な識別が指摘される。
【0178】
これらの結果は、このように、免疫捕捉によるIgMの検出が本発明のマルチプレックス法におけるサンドイッチアッセイとの組み合わせにより減感されないことを示す。
全ての陽性サンプルが、実際に、本発明の方法により陽性であることが見出され、このように良好な臨床感度を得ることが可能になる。
【0179】
結論として、本発明のマルチプレックス方法を使用した実施例2、3及び4において得られる結果は、免疫捕捉によるIgM検出及びサンドイッチによる全Ig検出を組み合わせ、本発明の方法が、同じ微生物に対する全Igクラス抗体又はIgG又はIgMの高感度な検出及び区別を可能にすることを明確に示す。当業者は、そこから容易に、本発明のIgG及びIgMのマルチプレックス検出のための方法が、実際に、診断の観点から、全Ig及びIgMを検出するために重要である多くの微生物に適用できる一般的範囲の方法であるとの結論を下すであろう。
【0180】
さらに、本発明の方法は、例えば、Bio-Rad社からのBioPlex 2200などの自動デバイスの使用を通じて容易に自動化でき、これらによって、アッセイプロトコールを同時に迅速に、単一のレセプタクル中で行い、単一工程においてシグナルを読み出すことが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物での感染のインビトロでの診断的検出のための方法であって、生物学的サンプル中に存在する微生物に対する免疫グロブリンG又は全免疫グロブリン及び免疫グロブリンMの同時検出を含み、以下の工程:
a)単一のアッセイレセプタクル中で、各々が少なくとも1つの特異的で検出可能な物理的パラメーターを有し、そして少なくとも2つの異なる群に属し、群の1つが抗IgM捕捉抗体を有し、他の群が微生物に由来する捕捉抗原を有する粒子の存在下に生物学的サンプルを置くこと、
b)各群の粒子上で免疫複合体の形成を可能にする条件下で混合物をインキュベートすること、
c)粒子に結合しなかった免疫グロブリンを除去すること、
d)少なくとも1つの抱合体が専ら微生物に由来する検出抗原からなる、少なくとも1つの標識抱合体と工程b)の混合物をインキュベートすること、
e)工程b)の免疫複合体に結合しなかった検出抗原を除去すること、
f)微生物に対する免疫グロブリンG又は全免疫グロブリン及び/又は免疫グロブリンMの有無を明らかにする、上記の2つの群の粒子を区別できる検出器を用いて、各粒子上の工程d)の免疫複合体を同時に検出すること
を含む方法。
【請求項2】
微生物に由来する抗原は、微生物のライセート、半精製又は精製したその天然抗原の1つ、組換えタンパク質、その断片、及び合成ペプチドからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
粒子の群が、適切な検出器により検出可能な蛍光色素により互いに異なることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
適切な検出器が、フローサイトメーターである、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
検出抗原が、標識アビジン又は標識ストレプトアビジンを加えることにより明らかにされるビオチンを有する、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
生物学的サンプルが、血漿又は血清である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
生物学的サンプルが、ヒト由来である、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
微生物が、ウイルス、細菌及び単細胞性寄生虫からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
微生物が、ヒト肝炎ウイルスからなる群より選択されることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
微生物が、ヒトA型肝炎ウイルス(HAV)及びヒトB型肝炎ウイルス(HBV)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
微生物が、ヒトA型肝炎ウイルス(HAV)であること、及び、約20mIU/mlの全抗HAV免疫グロブリンについての検出下限が得られることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
微生物が、梅毒トレポネーマであることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項13】
粒子が、超常磁性粒子である、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
各々が少なくとも1つの特異的で検出可能な物理的パラメーターを有し、そして少なくとも2つの異なる群に属し、群の1つが抗IgM捕捉抗体を有し、他の群が検出しようとする微生物に由来する捕捉抗原を有する粒子を含む、請求項1〜13のいずれか一項記載の検出方法を行うための試薬セット。
【請求項15】
微生物が、ウイルス、細菌及び単細胞性寄生虫からなる群より選択されることを特徴とする、請求項14記載のセット。
【請求項16】
微生物が、ヒト肝炎ウイルスからなる群より選択されることを特徴とする、請求項15記載のセット。
【請求項17】
微生物が、ヒトA型肝炎ウイルス(HAV)及びヒトB型肝炎ウイルス(HBV)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項16記載のセット。
【請求項18】
微生物が、梅毒トレポネーマであることを特徴とする、請求項15記載のセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−529443(P2010−529443A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510823(P2010−510823)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057111
【国際公開番号】WO2008/148883
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(506215582)
【氏名又は名称原語表記】BIO−RAD PASTEUR
【Fターム(参考)】