説明

感熱記録体

【課題】 本発明は、ロール側面からの粘着剤成分のはみ出しを抑制することができ、かつ粘着剤層と剥離層との経時剥離力の増大を抑制することができる粘着剤層を備えた感熱記録体を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】 本発明は、基材と、上記基材の一方の表面上に形成された感熱記録層と、上記感熱記録層上に形成された剥離層と、上記基材の他方の表面上に形成された粘着剤層とを備えた感熱記録体であって、上記粘着剤層の150℃における損失正接tanδが、0.05〜0.2であることを特徴とする感熱記録体を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を備えた感熱記録体であって、セパレータを有さない、いわゆるセパレスタイプの感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱により感熱性染料と呈色剤とを反応させ、所望の文字等を得る感熱記録体が広く知られており、このような感熱記録体は比較的安価であることからファクシミリや各種計算機等の記録媒体等に使用されている。また、銀行等のATMで用いられる利用明細書として、非常に膜厚の薄い感熱記録体が使用されている。
【0003】
さらに、上記感熱記録体の基材の片面に粘着剤層を設けることで、貼付可能な感熱記録体とすることができる。このような貼付可能な感熱記録体として、例えば、セパレータを有さない、いわゆるセパレスタイプの感熱記録体を挙げることができる。セパレスタイプの感熱記録体は、通常、粘着剤層を内側にしてロール状に巻き取られ、剥離層と粘着剤層とが接触している。このようなセパレスタイプの感熱記録体は、セパレータ付の感熱記録体に比べてコンパクトにできるという利点を有しており、食品の値札シール等に用いられている。また、このようなセパレスタイプの感熱記録体に関しては、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示されている。
【0004】
しかしながら、セパレスタイプの感熱記録体は、ロールの側面等から粘着剤成分がはみ出すことがあり、周辺機器に付着することによってプリンタの走行性を低下させるという問題点がある。さらに、粘着剤層と剥離層との剥離力が経時的に増大することが知られており、この経時剥離力の増大が、スティッキングを引き起こす等の問題点もあった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−001287
【特許文献2】特開2003−228290
【特許文献3】特開2003−228288
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ロール側面からの粘着剤成分のはみ出しを抑制することができ、かつ粘着剤層と剥離層との経時剥離力の増大を抑制することができる粘着剤層を備えた感熱記録体を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材と、上記基材の一方の表面上に形成された感熱記録層と、上記感熱記録層上に形成された剥離層と、上記基材の他方の表面上に形成された粘着剤層とを備えた感熱記録体であって、上記粘着剤層の150℃における損失正接tanδが、0.05〜0.2であることを特徴とする感熱記録体を提供する。
【0008】
本発明によれば、上記粘着剤層の150℃における損失正接tanδが上記範囲にあることにより、ロールの側面等から粘着剤成分がはみ出すことを抑制することができ、粘着剤成分が周辺機器に付着しプリンタの走行性が低下することを抑制することができる。さらに、粘着剤層と剥離層との経時剥離力の増大を抑制することができ、スティッキングを防止することができる。
【0009】
また、上記発明においては、上記粘着剤層が、アクリル系粘着剤と架橋剤とを含有することが好ましい。上記材料を使用することにより、粘着剤成分のはみ出しや経時剥離力の増大を抑制する効果を充分に発揮することができるからである。
【0010】
また、上記発明においては、上記粘着剤層の膜厚が、5〜30μmであることが好ましい。粘着剤層の膜厚が上記範囲内であれば、粘着剤成分のはみ出しや経時剥離力の増大を抑制する効果を充分に発揮することができるからである。
【0011】
また、上記発明においては、上記粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤層形成用塗工液の固形分塗工量が、5〜30g/mであることが好ましい。粘着剤層形成用塗工液の固形分塗工量が上記範囲内であれば、粘着剤成分のはみ出しや経時剥離力の増大を抑制することができる粘着剤層を得ることができるからである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粘着剤層の損失正接tanδを適当な範囲にすることにより、粘着剤成分のはみ出しを抑制することができ、かつ粘着剤層と剥離層との経時剥離力の増大を抑制することができるといった効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、感熱記録体に関するものである。本発明の感熱記録体は、基材と、上記基材の一方の表面上に形成された感熱記録層と、上記感熱記録層上に形成された剥離層と、上記基材の他方の表面上に形成された粘着剤層とを備えた感熱記録体であって、上記粘着剤層の150℃における損失正接tanδが、0.05〜0.2であることを特徴とするものである。また、本発明の感熱記録体は、通常、粘着剤層を内側にしてロール状に巻き取られ、剥離層と粘着剤層とが接触している。
【0014】
本発明によれば、150℃における損失正接tanδが上記範囲にある粘着剤層を使用することにより、ロールの側面等から粘着剤成分がはみ出すことを抑制することができ、粘着剤成分が周辺機器に付着しプリンタの走行性が低下することを抑制することができる。さらに、粘着剤層と剥離層との経時剥離力の増大を抑制することができ、スティッキングを防止することができる。
【0015】
次に、本発明の感熱記録体について図を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の感熱記録体の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の感熱記録体は、基材1と、上記基材1の一方の表面上に形成された感熱記録層2と、上記感熱記録層2上に形成された剥離層3と、上記基材1の他方の表面上に形成された粘着剤層4とを備えたものである。
以下、このような感熱記録体を構成する、粘着剤層、剥離層、感熱記録層、および基材について説明する。
【0016】
1.粘着剤層
まず、本発明に用いられる粘着剤層について説明する。本発明に用いられる粘着剤層は、150℃における損失正接tanδが、0.05〜0.2であることを特徴とするものである。損失正接tanδが上記範囲にある粘着剤層を使用することにより、ロール側面からの粘着剤成分のはみ出し、および粘着剤層と剥離層との経時剥離力の増大を抑制することができる。
【0017】
なお、損失正接tanδとは、粘弾性体に振動ひずみを加えたときのエネルギー損失の損失係数のことであり、本発明においては、150℃におけるDMA(動的粘弾性)測定によって求められたE´(貯蔵弾性率)をE″(損失弾性率)を用いて、tanδ=E´/E″として与えられる値である。なお、本発明において、150℃における損失正接は、粘着剤層を形成する粘着剤について、動的粘弾性装置(一例としてレオメトリックス社製、固体粘弾性アナライザーRSA−II)を用い、周波数1Hzとし、マイナス50℃から200℃まで昇温させる測定条件の下で動的粘弾性を測定し、この測定により得られた動的粘弾性の温度依存性を示すグラフから読み取ることにより得られる。
【0018】
(1)粘着剤層の膜厚
まず、本発明に用いられる粘着剤層の膜厚について説明する。本発明に用いられる粘着剤層の膜厚は、上記損失正接tanδが上記範囲内である粘着剤層を形成することができれば特に限定されるものではないが、具体的には5〜30μm、中でも7〜25μmであることが好ましい。上記粘着剤層の膜厚が5μm以下であると、粘着力の低化の恐れがあり、30μm以上であると、粘着剤のはみ出し、およびロールの巻数が少ないにもかかわらず巻径が大きくなる等の問題が生じる恐れがあるからである。上記膜厚はSEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察により測定した値を用いる。
【0019】
また、粘着剤層形成用塗工液の固形分塗工量は、上記損失正接tanδが上記範囲内である粘着剤層を形成することができれば特に限定されるものではないが、例えば、5〜30g/m、中でも7〜25g/mであることが好ましい。上記粘着剤層形成用塗工液の固形分塗工量が5g/m以下であると、粘着力の低化の恐れがあり、30g/m以上であると、粘着剤のはみ出し、およびロールの巻数が少ないにもかかわらず巻径が大きくなる等の問題が生じる恐れがあるからである。通常、上記固形分塗工量は重量法により測定される。なお、本明細書における固形分塗工量とは、粘着剤層形成用塗工液の固形分量に相当する塗工量であり、例えば、溶媒を用いた粘着剤層形成用塗工液においては溶媒を除いた重量であり、無溶媒系の粘着剤層形成用塗工液においては粘着剤等そのものの重量である。
【0020】
(2)粘着剤層の構成成分
次に、本発明に用いられる粘着剤層の構成成分について説明する。本発明に用いられる粘着剤層の構成成分は、上記損失正接tanδが上記範囲内である粘着剤層を形成することができる粘着剤を用いれば特に限定されるものではないが、通常、粘着剤と架橋剤等の添加剤とを含有するものである。
以下、本発明の粘着剤層の構成成分である粘着剤について詳細に説明する。
【0021】
通常、粘着剤はゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系、ウレタン系、シリコーン系等のベースとなる樹脂の他、必要に応じて粘着性を発現させる粘着付与樹脂、架橋剤、酸化防止剤、体質顔料、紫外線吸収剤等の添加剤の成分で構成されている。形態としては溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型、エネルギー線硬化型等がある。
【0022】
本発明に用いられる粘着剤は、上記損失正接tanδが上記範囲以内である粘着剤層を形成することができれば特に限定されるものではないが、具体的には、(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体、(メタ)アクリレートと他の単量体等の共重合体のアクリル系粘着剤が、ダイカット性や耐候性の点から好ましい。上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートおよびベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、例えば、本明細書でいう「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートまたはアクリレートを意味するものである。
【0023】
また、上記(メタ)アクリルレートと共重合体を形成するその他のモノマーとしては、アクリル基を含有するビニルモノマー、エポキシ基を有するビニルモノマー、アルコキシル基を有するビニルモノマー、エチレンオキシド基を有するビニルモノマー、アミノ基を有するビニルモノマー、アミド基を有するビニルモノマー、ハロゲン原子を有するビニルモノマー、リン酸基を有するビニルモノマー、スルホン酸基を有するビニルモノマー、シラン基を有するビニルモノマー、フェニル基を有するビニルモノマー、ベンジル基を有するビニルモノマー、テトラヒドロフルフリル基を有するビニルモノマー、その他の共重合可能なモノマー等の含有するものが挙げられる。
【0024】
(架橋剤)
本発明に用いられる架橋剤は、架橋剤は粘着剤の凝集力を向上させるものであり、上記損失正接tanδが上記範囲内である粘着剤層を形成することができれば特に限定されるものではないが、例えば、分子中に少なくとも2つ、通常、2〜6、好ましくは2〜4の官能基を有する脂肪族系または芳香族系の有機化合物であって、官能基にエポキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ有機化合物を挙げることができる。このような架橋剤としては、例えば室温架橋型架橋剤又は加熱架橋型架橋剤を挙げることができる。
上記室温架橋型架橋剤は、室温条件下でのエイジング処理により粘着剤を架橋する架橋剤である。上記室温架橋型架橋剤としては、例えば、イソシアネート系化合物、多官能エポキシ系化合物、アルミニウムやチタン等の金属キレート系化合物等を用いた架橋剤を挙げることができ、なかでもイソシアネート系化合物又は多官能エポキシ系化合物を用いた架橋剤を使用することが好ましい。これらの化合物は、単独でも用いられてもよく、また複数が混合されて用いてもよい。
このようなイソシアネート系化合物として、具体的には、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の3量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、又は、このようなウレタンポリマーの3量体等を挙げることができる。
さらに、上記ポリイソシアネート化合物の具体例としては、特に限定されるものではないが、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等を挙げることができる。
また、上記多官能エポキシ系化合物としては、特に限定されるものではないが、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
一方、上記加熱架橋型架橋剤は、加熱下でのエイジング処理により粘着剤を架橋させる架橋剤である。このような加熱架橋型架橋剤としては、例えば、ホルムアルデヒドと、メラミン、ベンゾグアミン若しくは尿素とを反応させて得られるメチロール基含有化合物、又は、そのメチロール基含有化合物のメチロール基の一部若しくは全部が脂肪族アルコールでエーテル化された化合物等を挙げることができる。
また、上記架橋剤の添加量は、使用される粘着剤や架橋剤の種類に応じて異なり、粘着剤層の150℃における損失正接(tanδ)が上記範囲以内になるように適宜選択される。例えば、アクリル系粘着剤を用いた場合の架橋剤の添加量は、粘着剤100重量部に対して、好ましくは0.005重量部以上50重量部以下、より好ましくは0.01重量部以上30重量部以下、さらに好ましくは0.1重量部以上20重量部以下である。
【0025】
(その他の添加剤)
また、本発明に用いられる粘着剤層は、必要に応じて、上記架橋剤以外の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤は、上記損失正接tanδが上記範囲内である粘着剤層を形成することを阻害しない限りは特に限定されるものではないが、例えば、ロジン等の天然樹脂、変成ロジン、ロジンおよび変成ロジンの誘導体、ポリテルペン系樹脂、テルペン変成体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキル−フェノール−アセチレン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体等の粘着付与剤、老化防止剤、オイル等の軟化剤、充填剤、安定剤、顔料、着色剤、シランカップリング剤等を挙げることができる。
【0026】
(溶媒)
また、粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤層形成用塗工液は、通常、粘着剤と
架橋剤等の添加剤と溶媒とを含むものであるが、上記溶媒としては、粘着剤、および架橋剤等の添加剤を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ベンゼン等が好ましく、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトンがより好ましい。
【0027】
(3)粘着剤層の形成方法
次に、本発明に用いられる粘着剤層の形成方法について説明する。本発明に用いられる粘着剤層の形成方法としては、上記損失正接tanδが上記範囲内である粘着剤層を備えた感熱記録体を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、基材表面に直接塗工する方法および転写方式等を挙げることができ、中でも転写方式が好ましい。
上記転写方式とは、上述した粘着剤、および架橋剤等の添加剤を溶媒に溶解または分散させた粘着剤層形成用塗工液を、セパレータに塗工して塗膜を形成し、その後、この塗膜が基材表面と対向するようにセパレータを配置し、上記塗膜を基材表面に積層(転写)する方法である。上記転写方式は、セパレータ上で塗膜の乾燥や架橋を行なうことができるので、基材やインキ受容層が熱変形を考慮せずに、十分な熱を加えて塗膜の乾燥や架橋を行うことができるという利点を有する。なお、上記転写方式で用いられたセパレータは、本発明の感熱記録体の巻き取り時に剥がされる。
また、上記粘着剤層形成用塗工液の塗工方法としては、均一な塗工量で塗工できる方法であればできれば特に限定されるものではないが、具体的には、コンマコート法、ロールコート法、バーコート法、エアーナイフコート法、グラビアコート法、オフセットグラビアコート法等が挙げられ、中でも、コンマコート法、ロールコート法が好ましい。
【0028】
2.剥離層
次に、本発明に用いられる剥離層について説明する。本発明に用いられる剥離層は、基材の最表面に形成されるものであり、感熱記録体をロール状に巻き取った際に、上述した粘着剤層と接する層である。上記剥離層は、感熱記録体とサーマルヘッド等の熱源との張り付きによる走行性不良、いわゆるスティッキングを防止する機能、表面光沢性を向上させ商品価値を向上させる機能等を有している。
【0029】
本発明に用いられる剥離層は、粘着剤層の剥離が容易に行われるように、通常、剥離層形成用樹脂および添加剤を含まれているのが好ましい。
【0030】
(1)剥離層形成樹脂
本発明に用いられる剥離層形成用樹脂は、上述した機能を有する剥離層を形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂を使用するのが好ましく、中でも硬化性シリコーン樹脂を使用することが好ましい。このような硬化性シリコーン樹脂としては、例えば付加反応系のもの、縮合反応系のもの、紫外線もしくは電子線硬化系のもの等いずれの反応系のもの等を用いることができる。
このような付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを白金触媒を用いて反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
また、上記縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端−OH基をもつポリジメチルシロキサンと末端に−H基をもつポリジメチルシロキサンとを有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
また、上記紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が挙げられる。また、紫外線硬化系のシリコーン樹脂の場合のように開始剤を用いなくてもラジカルによる架橋反応が進行する電子線硬化系ものも挙げられる。
【0031】
また、上記以外の剥離層形成用樹脂としては、例えば、アクリル酸エチル、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、トリロキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、1、3−ジオキソランアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、グリシジルアクリレート、カルビトールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等を挙げることができる。
【0032】
さらに、ポリエステル(ポリ)アクリレートやウレタン(ポリ)アクリレート、エポキシ(ポリ)アクリレート、ポリオール(ポリ)アクリレート等。更に、2−クロロエチルビニルエ−テル、2−ヒドロキシエチルビニルエ−テル、4−ヒドロキシブチルビニルエ−テル、トリエチレングリコールジビニルエ−テル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等のカチオン重合性モノマー等も使用することができる。なお、カチオン重合性モノマー等を配合する場合には、カチオン重合開始剤が必要である。このようなカチオン重合開始剤とは、電子線照射により、カチオン重合を開始させる物質であれば特に限定するものでないが、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。
【0033】
(2)その他の添加剤
また、本発明においては、上記剥離層形成用樹脂の他に、必要に応じて、滑剤、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、無定形シリカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、クレー、焼成クレー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー、ベンゾグアナミン樹脂フィラー等の顔料、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜添加することができる。
上記滑剤の含有量としては、上記剥離層形成用樹脂の特性を損なわない限り、特に限定されるものではないが、例えば剥離層形成用樹脂100重量部に対して、0.1〜30重量部、中でも1〜25重量部であることが好ましい。
【0034】
(3)剥離層の膜厚
次に、本発明に用いられる剥離層の膜厚について説明する。本発明に用いられる剥離層の膜厚としては、上述した剥離層の機能を有するものであれば、特に限定されるものではないが、具体的には、0.01〜15μm、中でも0.1〜10μmであることが好ましい。上記膜厚が0.01μm未満であると、剥離層が必要な機能を充分に確保できない可能性があり、逆に、上記膜厚が15μmを超えると、印字感度に著しく影響を与えたり、コスト的に不利になったりするからである。
【0035】
(4)剥離層の形成方法
次に、本発明に用いられる剥離膜の形成方法について説明する。本発明に用いられる剥離膜の形成方法は、上述した機能を有する剥離層を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、剥離層形成用塗工液を作製し、感熱記録層上に塗工し、形成した塗膜に電子線を照射することによって硬化させる方法を挙げることができる。
【0036】
上記剥離層形成用塗工液は、溶媒を用いるものと、用いないものに大別することができるが、本発明においては、溶媒を用いない無溶媒系の塗工液を使用することが好ましい。無溶媒系の塗工液は乾燥工程を必要としないことから、加熱による感熱記録層の発色、溶媒の含浸による感熱紙の汚染、基材のカールが生じないという利点があるからである。上記無溶剤系の塗工液としてはエネルギー線硬化型が挙げられ、代表的なものとして、シリコーン樹脂系のプレポリマーが挙げられる。シリコーン樹脂系のプレポリマーとしては、ラジカル硬化型、カチオン硬化型が用いられ、ラジカル硬化型のプレポリマーとしては、シリコーン(メタ)アクリレートが挙げられる。(なお、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する)。具体的には、分子中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を3〜30個有する、数平均分子量が500〜5000のシリコーン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0037】
また、本発明においては、上記シリコーン(メタ)アクリレートに、離型性、架橋密度、可とう性、硬化速度等を調整する為に、必要に応じて、各種の分子中にラジカル重合不飽和基を有するプレポリマー、モノマー、或いはプレポリマーとモノマーとの両方を混合することができる。このようなプレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
一方、カチオン硬化型シリコーン樹脂としては、例えばビニルエーテル基又はエポキシ基が導入されたシリコーン系オリゴマー及び/又はモノマーと光カチオン重合触媒との混合物などが挙げられる。光カチオン重合触媒としては、特に限定されるものではないが、従来光カチオン重合触媒として公知の化合物、例えばトリアリールスルホニウム塩,トリアリールヨードニウム塩,ビス(ドデシルフェニル)ヘキサフルオロアンチモネートなどが挙げられる。
また、エネルギー線として紫外線(乃至は可視光線)を用いる場合は光反応開始剤を添加する。この光反応開始剤としては、ラジカル重合型のプレポリマー、モノマーの場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、チオキサントン類等が用いられる。これらの光開始剤は、エネルギー線硬化樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度添加する。
【0038】
また、エネルギー線としては、これらのプレポリマー及びモノマーを架橋、重合し得るものであれば特に限定されるものではないが、通常は紫外線或いは電子線が用いられる。
なお、電子線源としては、コッククロフワルトン型、バンデクラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いる。また、紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用される。
【0039】
このような無溶媒系の塗工液において、塗工液の粘度としては10〜10000cps、中でも10〜10000cps、中でも100〜5000cpsが好ましい。上記粘度が10cpsより低いと、剥離層形成用塗工液が感熱記録層等に含浸したり、また塗工時の際にはじきが生じ、作製した塗膜にピンホールができ、得られた剥離層が剥離機能を有さない箇所ができる恐れがあるからである。逆に10000cpsより高いと、塗膜面が不均一になり発色感度に斑が生じる恐れがある。
【0040】
また、無溶媒系の塗工液の塗工量は特に限定されるものではないが、例えば、乾燥重量で0.1〜15g/m、中でも0.5〜10g/mの範囲にあることが好ましい。0.1g/m未満では所望の効果を充分に得ることができず、また、15g/mを超すと感熱記録体の記録感度を低下させる可能性があるからである。
【0041】
一方、溶媒を使用する塗工液においては、溶媒を使用する塗工液の塗工量は、特に限定されるものではないが、無溶剤系の塗工液と同様に乾燥重量で0.1〜15g/m、中でも0.5〜10g/mであることが好ましい。
【0042】
また、上記塗工液に使用される溶媒としては、剥離層形成用樹脂を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ベンゼン等の汎用溶媒を挙げることができ、中でも沸点が100℃以下の溶媒が感熱記録体を発色防止の観点から好ましい。
【0043】
また、上記剥離層形成用塗工液を塗工する方法としては、特に限定されるものではないが、具体的にはバーコート法、ロールコート法、エアーナイフコート法、グラビアコート法、オフセットグラビアコート法等が挙げられ、中でも、グラビアコート法、ロールコート法、オフセットグラビアコート法が大量生産可能である観点から好ましい。
【0044】
3.感熱記録層
次に、本発明に用いられる感熱記録層について説明する。上記感熱記録層は、通常、基材上に形成され、感熱性染料および呈色剤を含有する層である。感熱記録層中に含まれる感熱性染料が熱によって呈色剤と接触することにより、呈色反応を起こし所望の文字等を得ることができる。
【0045】
本発明に用いられる感熱記録層の膜厚としては、感熱記録層の機能を充分に発揮しえるのであれば特に限定されるものではないが、具体的には2〜12μm、中でも3〜10μmであることが好ましい。
【0046】
また、本発明に用いられる感熱記録層を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、感熱性染料および呈色剤を溶媒等に溶解させ感熱記録層形成用塗工液を作製し、基材に対してその塗工液を塗工する湿式塗工法を挙げることができる。より具体的には、バーコート法、エアーナイフコート法、ロッドブレードコート法、ピュアーブレードコート法、ショートドゥエルコート法等が挙げられる。
【0047】
また、上記感熱記録層形成用塗工液の塗工量は特に限定されるものではないが、例えば、乾燥重量で2〜20g/m、中でも3〜15g/mの範囲にあることが好ましい。
また、上記感熱記録層形成用塗工液中における感熱性染料と呈色剤の割合は、感熱性染料と呈色剤の組合せを考慮して適宜選択されるものであるが、具体的には感熱性染料1重量部に対して、呈色剤1〜10重量部、中でも1〜5重量部であることが好ましい。
以下、感熱記録層に用いられる部材について説明する。
【0048】
(1)感熱性染料
本発明に用いられる感熱性染料は、熱によって後述する呈色剤と呈色反応を起こすものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノ−ベンゾ〔a〕フルオラン等の青発色性染料、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−7−N−メチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン等の緑発色性染料、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、ローダミン(o−クロロアニリノ)ラクタム、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン等の赤発色性染料、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(o−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等の黒発色性染料、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−p−(p−クロロアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等の近赤外領域に吸収波長を有する染料等を挙げることができる。
【0049】
(2)呈色剤
また、本発明に用いられる呈色剤は、熱によって上記感熱性染料と呈色反応を起こすものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、2,2’−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン等のフェノール性化合物、N−(p−トリルスルホニル)カルバモイル酸−p−クミルフェニルエステル、N−(p−トリルスルホニル)カルバモイル酸−p−ベンジルオキシフェニルエステル、N−(o−トリル)−p−トリルスルホアミド、4,4’−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカボニルアミノ)ジフェニルメタン等の分子内に−SO2NH−結合を有するもの、p−クロロ安息香酸亜鉛、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩等を挙げることができる。
【0050】
(3)添加剤
また、本発明においては、上記材料の他にも必要に応じて、感熱記録層の保存安定性をより高める保存性改良剤、および記録感度をより高める増感剤等の添加剤等を含有させることもできる。
上記保存性改良剤の具体例としては、例えば2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、4,4’−ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物等を挙げることができる。上記保存改良剤の使用量は特に限定されないが、一般に感熱性染料1重量部に対して4重量部以下が好ましい。
【0051】
また、上記増感剤の具体例としては、例えばステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2−ナフチルベンジルエーテル、m−ターフェニル、p−ベンジルビフェニル、p−トリルビフェニルエーテル、ジ(4−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メトキシフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−クロロフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(3−メチルフェノキシ)エタン、p−メチルチオフェニルベンジルエーテル、ジ(β−ビフェニルエトキシ)ベンゼン、シュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル等を挙げることができる。上記増感剤の使用量は特に限定されないが、一般に感熱性染料1重量部に対して4重量部以下が好ましい。
【0052】
また、上述した感熱記録層形成用塗工液に加える添加剤として、例えば接着剤を挙げることができる。上記接着剤としては、例えば酸化デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、完全(部分)ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩、エチレン・アクリル酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩、ポリウレタン系ラテックス、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス等をあげることができる。
【0053】
また、感熱記録層形成用塗工液に添加される助剤としては、例えばカオリン、軽質(重質)炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、無定形シリカ、尿素・ホルマリン樹脂フィラー等の顔料類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の界面活性剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、および紫外線吸収剤、消泡剤、蛍光染料、着色染料等を挙げることができる。
【0054】
4.基材
本工程で使用される基材は、上述した感熱記録層を形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には上質紙(酸性紙、中性紙)、合成紙、コート紙、含浸紙、紙間強化紙等の紙、およびフィルム等が挙げられる。これらの基材は、用途に応じて適宜選択して使用することが好ましい。
【0055】
5.その他の層
本発明においては、上述した層の他に、必要に応じて中間層または保護層を設けても良い。中間層を設けることにより、未硬化の剥離層形成用樹脂が感熱記録層と反応して着色することを防ぐことができ、また、保護層を設けることにより、感熱記録体の強度をより高めることが可能だからである。
【0056】
(1)中間層
本発明において、必要に応じて設けられる中間層は、通常、上記感熱記録層上に形成されるものである。
上記中間層の膜厚としては、中間層の機能を充分に発揮しえるのであれば特に限定されるものではないが、具体的には0.1〜20μm、中でも0.1〜10μmであることが好ましい。
また、上記中間層を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば中間層形成用樹脂を溶媒に溶解させ中間層形成用塗工液を作製し、その塗工液を塗工する湿式塗工法を挙げることができる。より具体的には、バーコート法、エアーナイフコート法、ロッドブレードコート法、ピュアーブレードコート法、ショートドゥエルコート法等を挙げることができる。
上記塗工液の塗工量は特に限定されるものではないが、例えば、乾燥重量で0.1〜20g/mの範囲にあることが好ましい。
次に上記中間層に用いられる部材について説明する。
【0057】
(中間層形成用樹脂)
上記中間層を形成する中間層形成用樹脂としては、一般的に使用されているものを使用することができるが、具体的には、酸化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、完全(又は不完全)鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、珪素変成ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド・アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド・アクリル酸エステル・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート、スチレン・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリル系共重合体等のラテックスを挙げることができる。これらの内でも、完全(又は不完全)鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール,珪素変成ポリビニルアルコールが好ましい。とりわけ、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0058】
(添加剤)
さらに、上記中間層には必要に応じてカオリン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、微粒子シリカ等の顔料を添加することができる。このような添加剤は、上記中間層形成用樹脂に対して0〜250重量%程度の範囲で添加することが好ましい。また、上記中間層用塗工液には、必要に応じて分散剤、消泡剤、着色染料、蛍光染料、硬化剤、紫外線吸収剤等の助剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、カルナバロウ,パラフィンワックス、エステルワックス等の滑剤等を加えることができる。
【0059】
(2)保護層
本発明において、必要に応じて設けられる保護層は、通常、上記中間層上に形成されるものである。このような保護層を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、保護層シートと中間層とを張り合わせ、適当な圧力をかけた2本のロール(ニップルロール)を通す方法等が挙げられる。また、このような保護層シートとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が好適に用いられる。また、上記保護層の膜厚としては、0.1〜10μmであることが好ましい。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0062】
[実施例1]
市販の感熱紙(商品名:130LHB、リコー社製)に、オフセットグラビアコーターを用いてエネルギー線硬化型無溶剤シリコーン樹脂(BY24−551A、東レ・ダウコーニングシリコーン製)100部およびエネルギー線硬化型無溶剤シリコーン樹脂(BY24−551B、東レ・ダウコーニングシリコーン製)30部からなる組成物を混合攪拌し、平均粒子径2.0μmのシリコーンレジン微粒子(KMP590、信越化学工業製)10部からなる組成物を混合攪拌し、塗工量が乾燥重量で2.0g/mとなるように塗工し、電子線照射装置を用い、照射量が3Mradとなるように電子線を照射して硬化を行い、剥離剤層を形成した。
続いて、上記基材の裏面に、主剤としてアクリル系粘着剤(RE−339、綜研化学(株)製)と、架橋剤(E−5C、綜研化学(株))とからなる組成物(架橋剤添加量、52g/主剤1kg)を、コンマコート法により固形分塗工量24g/mで塗工して塗膜を形成させた。さらに、この塗膜を乾燥し粘着剤層を形成させ、感熱記録体を得た。
また、このようにして得られた感熱記録体の膜厚は、SEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察により測定した。さらに、上記感熱記録体の150℃における損失正接(tanδ)は、粘着剤層を形成する粘着剤について、動的粘弾性装置(レオメトリックス社製、固体粘弾性アナライザーRSA−II)を用い、周波数1Hzとし、マイナス50℃から200℃まで昇温させる測定条件の下で動的粘弾性(DMA)を測定し、この測定により得られた動的粘弾性の温度依存性を示すグラフから読み取ることにより得た。
【0063】
[比較例1、2]
粘着剤層を形成する際に、添加する架橋剤の量および固形分塗工量を変化させたこと以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0064】
[実施例2]
粘着剤層を形成する際に、アクリル系粘着剤として1717DT(綜研化学(株)製)を使用したこと、架橋剤としてL−45E(綜研化学(株))を使用したこと、および固形分塗工量を変化させたこと以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0065】
[比較例3、4]
粘着剤層を形成する際に、架橋剤添加量および固形分塗工量を変化させたこと以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0066】
[実施例3]
粘着剤層を形成する際に、アクリル系粘着剤としてHV−C9300(東亞合成(株)製)を使用したこと、架橋剤を使用しなかったこと、および固形分塗工量を変化させたこと以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0067】
[比較例5]
粘着剤層を形成する際に、アクリル系粘着剤としてHV−C9400(東亞合成(株)製)を使用したこと、および固形分塗工量を変化させた以外は、実施例3と同様にして感熱記録体を得た。
【0068】
[評価]
上記実施例および比較例によって得られた感熱記録体に対して試験1(粘着剤成分のはみ出し試験)、試験2(粘着強度試験)、試験3(経時変化促進試験)、および試験4(プリンタ打出し試験)を行った。
試験1の粘着剤成分のはみ出し試験は、感熱記録体を40℃、80%RHの雰囲気下におき、10kg荷重を負荷した時の粘着剤成分のはみ出しを測定することによって行った。具体的には、感熱記録体の長さ方向MD(Machine Direction)および巾方向TD(Tensil Direction)の粘着剤成分のはみ出しを測定した。
試験2の粘着強度試験は、JIS−Z−0237−2000に準拠し、貼付面積が巾25mm×50mmとなるように、感熱記録体を2kgのローラーを2往復させて被着体であるSUSに貼着させ、貼着直後に180°剥離試験を行った。剥離試験はINSTRON社製、型番:5565の万能引張試験機を使用した。
試験3の経時変化促進試験は、感熱記録体を40℃、80%RHの雰囲気下におき、ブロッキングテスターを用いて2kg/cm圧促進試験行い、0時間後と72時間後との剥離力を測定した。
試験4のプリンタ打出し試験は、上記感熱記録体のロールサンプルを作製し、1週間室温雰囲気下に保管した後、プリンタで打出し、プリンタ適性(走行性)およびラベル適性を調べた。
これらの試験により得られた結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1から明らかなように、損失正接tanδが、0.05〜0.2の範囲内ある場合は、粘着剤成分のはみ出し試験、粘着強度試験、経時変化促進試験、およびプリンタ打出し試験のいずれの場合においても良好な結果が得られた。これに対して、経時剥離力が高くなる比較例1、3、5は打ち出し時にスティッキングが生じ良好なプリンタ適性を示さなかった。また、比較例2、4においては、スティッキングは生じなかったものの、粘着剤の粘着強度が低く、良好なラベル適性を示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の感熱記録体の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 … 基材
2 … 感熱記録層
3 … 剥離層
4 … 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の表面上に形成された感熱記録層と、前記感熱記録層上に形成された剥離層と、前記基材の他方の表面上に形成された粘着剤層とを備えた感熱記録体であって、
前記粘着剤層の150℃における損失正接tanδが、0.05〜0.2であることを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤と架橋剤とを含有することを特徴とする請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記粘着剤層の膜厚が、5〜30μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤層形成用塗工液の固形分塗工量が、5〜30g/mであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の感熱記録体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−95842(P2006−95842A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284138(P2004−284138)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】