説明

感熱記録体

【課題】記録画質、耐水性及び耐スティッキング性に優れた感熱記録体を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、ロイコ染料、呈色剤および水性接着剤を含有する感熱記録層、更に感熱記録層上に水性接着剤を含有する保護層を有する感熱記録体において、前記保護層中にグリオキシル酸ナトリウム、ジ(グリオキシル酸)カルシウム、及びグリオキシル酸アンモニウムから選ばれる少なくとも一種と、平均粒子径が0.1〜1.0μmのカオリンを含有し、前記カオリンの含有量が、保護層の全固形分に対して50〜70質量%であることを特徴とする感熱記録体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子供与性化合物と電子受容性化合物との発色反応を利用し、特に熱エネルギーによる発色反応により記録像が得られる感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーにより電子供与性化合物と電子受容性化合物を接触させて記録像を得るようにした感熱記録体はよく知られている。このような感熱記録体は比較的安価であり、記録機器がコンパクトで、その保守も容易なため、ファクシミリや各種計算機などの記録媒体に使用されている。
【0003】
特に近年は、ガス、水道、電気料金等の領収書、金融機関のATMの利用明細書、各種レシート等、財務関係の記録用紙(所謂、ハンディターミナル用)やPOSシステム用の感熱記録ラベル或いは感熱記録タグ等にも感熱記録材料が利用されるようになっている。
【0004】
かかる用途の感熱記録体は、室外で雨天時に使用されたり或いは室内でも水と接触する条件下で使用されたりする可能性があるため、感熱記録体が耐水性に優れ、濡れても破れたり、剥がれたりしないことが求められる。
【0005】
また、かかる用途の感熱記録体では、種々のバーコードを感熱記録印字して用いられる機会が増加しており、バーコード印字適性を有する感熱記録体が求められている。
【0006】
バーコードに含まれる情報量の拡大に伴い、高精細なバーコード印字への要求が高まっている。しかし、高精細なバーコードは、スティッキングなどの印字障害によるバー、またはスペースの幅の僅かな変化や、印字の白抜けによるバーコードの欠落によって、読み取り性が大きく低下するという問題を有している。また、近年の記録機器の小型化、省電力化の影響もあり、熱応答性や感熱記録ヘッドに対する機器マッチング性の向上に関する要求はますます大きくなっている。
【0007】
即ち、高速化及び省電力化により低い印加エネルギーでも従来と同様の発色濃度を示し、更にスティッキングなどの印字障害がない感熱記録体が要求されている。
【0008】
感熱記録体の耐水性を改良する目的で、保護層にアセトアセチル変性PVA、並びに水溶性ポリアミド樹脂を使用する方法(特許文献1参照)、保護層中の水性接着剤がジアセトン変性PVAであり、更に保護層中にポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂を含有する方法と、感熱記録層中の水性接着剤がジアセトン変性PVAであり、更に感熱記録層中にポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂及びカルボン酸ジヒドラジド化合物を含有する方法(特許文献2参照)、保護層にアセトアセチル変性樹脂とポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂を含有し、感熱記録層中に多価カルボン酸ヒドラジド化合物を含有する方法(特許文献3参照)、感熱紙のコート剤として、ジアセトンアクリルアミド共重合変性ポリビニルアルコール、水溶性ヒドラジン化合物及び水溶性有機アミンまたはアンモニアを使用する方法(特許文献4参照)、また保護層の接着剤としてジアセトン変性ポリビニルアルコールを用い、その架橋剤としてカルボン酸ジヒドラジド化合物を感熱記録層中に含有させた感熱記録体(特許文献5を参照)、並びに保護層にアセトアセチル変性PVAとグリオキシル酸塩、グリオキシル酸エステル誘導体を含有された感熱記録体(特許文献6参照)が記載されている。
【0009】
前記スティッキングを抑えるための技術として、保護層中にシリコーンオイルを主成分とする離型剤を含有させることが報告されているが(特許文献7参照)、このようなシリコーンオイルを用いた場合、印字時にヘッドに付着するカスが多くなることが問題であった。
また、保護層の樹脂として塩化ビニルの共重合ポリマーを使用することでスティッキングが改良されることが報告されているが(特許文献8参照)、このような塩化ビニル共重合ポリマーを使用するだけでは、通常の据え置き型プリンタでのスティッキングは改良されても、ハンディターミナルプリンタに代表される低トルクプリンタ用途においては、不充分なものであった。
更に、近年では焼却時にハロゲンガスやダイオキシンの発生が起こらないようにするため、塩素や臭素を含有する原材料を使用しないことが望まれており、こういった観点からも塩化ビニル共重合ポリマーの使用は好ましくない。
【0010】
更に、記録濃度及び記録時の走行性に優れ、長時間連続印字した後のヘッド磨耗が極めて少なく、しかも高エネルギーで印字しても記録部の白化が少ない感熱記録体として、保護層中に平均粒子径が0.5μm以下のカオリンを水性高分子に対して50〜300重量%含有させた感熱記録体(特許文献9参照)、そして耐水性及び耐スティッキング性の双方がバランス良く改善された保護層を有する感熱記録体として、保護層の接着剤が、少なくとも(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル及びエチレン性不飽和カルボン酸を含む単量体を、反応系水相の特定の溶存酸素濃度及びレドックス重合開始剤の酸化剤の特定の使用量の条件下にて乳化重合して得られた重合体エマルジョンである感熱記録体(特許文献10参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−019196号公報
【特許文献2】特開2002−127601号公報
【特許文献3】特開2002−301868号公報
【特許文献4】特開平10−087936号公報
【特許文献5】特開平11−314457号公報
【特許文献6】WO2009/028646号公報
【特許文献7】特開2003−276334号公報
【特許文献8】特開平11−254831号公報
【特許文献9】特開平8−324114号公報
【特許文献10】特開平10−175376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、記録画質、耐水性及び耐スティッキング性に優れた感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を種々検討した結果、支持体上に、ロイコ染料、呈色剤及び水性接着剤を含有する感熱記録層、更に感熱記録層上に水性接着剤を含有する保護層を有する感熱記録体において、前記保護層中にグリオキシル酸ナトリウム、ジ(グリオキシル酸)カルシウム及びグリオキシル酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種と、顔料として平均粒子径が0.1〜1.0μmのカオリンを含有し、前記カオリンの含有量が、保護層の全固形分に対して50〜70質量%とすることにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、本発明は、以下の感熱記録体を提供するものである。
【0015】
項1:支持体上に、ロイコ染料、呈色剤及び水性接着剤を含有する感熱記録層、更に感熱記録層上に水性接着剤を含有する保護層を有する感熱記録体において、前記保護層中にグリオキシル酸ナトリウム、ジ(グリオキシル酸)カルシウム及びグリオキシル酸アンモニウムから選ばれる少なくとも一種と、顔料として平均粒子径が0.1〜1.0μmのカオリンを含有し、前記カオリンの含有量が、保護層の全固形分に対して50〜70質量%であることを特徴とする感熱記録体。
項2:保護層中の水性接着剤が、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール及びカルボキシ変性ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種である、項1に記載の感熱記録体。
項3:前記保護層を形成する保護層用塗液のpHが3.0〜7.0の範囲である、項1または2に記載の感熱記録体。
【発明の効果】
【0016】
本発明の感熱記録体は、記録画質、耐水性に優れ、しかも耐スティッキング性にも優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る感熱記録体について詳細に説明する。本発明では、支持体上に、ロイコ染料、呈色剤及び水性接着剤を含有する感熱記録層、更に感熱記録層上に水性接着剤を含有する保護層を有する感熱記録体において、前記保護層中にグリオキシル酸ナトリウム、ジ(グリオキシル酸)カルシウム及びグリオキシル酸アンモニウムから選ばれる少なくとも一種と、顔料として特定の平均粒子径のカオリンを含有し、前記カオリンの含有量が、保護層の全固形分に対して50〜70質量%とするものである。
【0018】
〔グリオキシル酸塩〕
まず、本発明の保護層中に含有されるグリオキシル酸塩について説明する。
かかるグリオキシル酸塩としては、種々のものが挙げられるが、アルカリ金属とグリオキシル酸の金属塩、アルカリ土類金属とグリオキシル酸の金属塩、アミン類とグリオキシル酸の塩等が挙げられ、好ましくは、アルカリ金属とグリオキシル酸の金属塩及びアルカリ土類金属とグリオキシル酸の金属塩から選ばれる少なくとも1種のグリオキシル酸の金属塩である。アルカリ金属とグリオキシル酸の金属塩として、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属とグリオキシル酸の金属塩、アルカリ土類金属とグリオキシル酸の金属塩として、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属とグリオキシル酸の金属塩、アミン類とグリオキシル酸の金属塩として、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンなどのアミン類とグリオキシル酸の塩などが挙げられる。
【0019】
特に、本発明においては、架橋構造に導入されるカルボン酸塩基の親水性がカルボン酸基と比較して小さいことが架橋高分子の耐水性の向上に寄与しているものと考えており、グリオキシル酸塩としても、より水への溶解度が小さいグリオキシル酸塩が好ましく、具体的には、23℃おける水への溶解度が0.01〜100%、特に0.1〜50%、更に0.5〜20%のものが好ましく用いられる。具体的に、水への溶解度が小さいグリオキシル酸塩としては、例えば、グリオキシル酸ナトリウム(溶解度:約17%)や、ジ(グリオキシル酸)カルシウム(溶解度:約0.7%)、グリオキシル酸アンモニウム(溶解度:14%)を挙げることができる。
【0020】
グリオキシル酸塩の製造法は、公知の方法を用いることができるが、例えば、(1)グリオキシル酸の中和反応による方法、(2)グリオキシル酸と酸解離定数がグリオキシル酸より大きい酸の塩との塩交換反応による方法、(3)グリオキシル酸エステルのアルカリ加水分解による方法(例えば、特開2003−300926号公報参照)などを挙げることができる。特に、グリオキシル酸との中和反応に用いるアルカリ性化合物の水溶性が高い場合は(1)の方法が、また得られるグリオキシル酸塩の水溶性が低く、酸解離定数がグリオキシル酸より大きい酸の塩の水溶性が高い場合は(2)の方法が好ましく用いられる。
【0021】
なお、(1)の方法は通常、水を媒体として行われ、グリオキシル酸とアルカリ性化合物、例えば、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物を水中で反応させ、析出したグリオキシル酸塩を濾別し、乾燥して製造することができる。
【0022】
また、(2)の方法も一般的に水中で行われ、(1)の方法と同様にしてグリオキシル酸塩を得ることができる。なお、(2)の方法において用いられるグリオキシル酸より解離定数が大きい酸の塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属或いはアルカリ土類金属塩が挙げることができる。
【0023】
特に、原料としてグリオキシル酸を用いた場合には、そのグリオキシル酸塩を製造する際の副生成物であるグリオキザールが架橋剤中に含有される可能性があり、かかるグリオキザールの含有量は0質量%であることが最も望ましいが、5質量%以下、特に2質量%以下、更に1質量%以下であることが好ましい。グリオキザールの含有量が多いと、特にアセトアセチル変性ポリビニルアルコールと混合した水溶液の安定性が低下し、ポットライフが短くなったり、得られるアセトアセチル変性ポリビニルアルコールの架橋高分子がその保存条件によっては経時で着色する場合がある。
【0024】
保護層中には架橋剤として、グリオキシル酸ナトリウム、ジ(グリオキシル酸)カルシウム及びグリオキシル酸アンモニウムから選ばれる少なくとも一種が含有されるが、含有量は総計で保護層中に使用される水性接着剤量に対して0.5〜20質量%、好ましくは1〜10質量%程度である。
【0025】
本発明において保護層に使用される水性接着剤としては、従来公知の水溶性高分子及び水溶性高分子エマルジョンの少なくともいずれかを適宜用いることができる。
その具体例としては、完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、イタコン酸変性ポリビニルアルコール、殿粉、酸化澱粉、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド・アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド・アクリル酸エステル・メタクリル酸三元共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、アラビアガム、カゼインなどの水溶性高分子のほか、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのエマルジョンやスチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリル系共重合体などのラテックスなどが挙げられる。
これらの中でも、スティッキング抑制や耐水性に対しては、特に、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール及びカルボキシ変性ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種が好ましく用いられる。
【0026】
保護層中に使用されるアセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコールは、それぞれアセトアセチル基、ジアセトン基、カルボキシル基を持つ単量体とビニルエステルとを共重合して得た樹脂を鹸化することにより製造される。
【0027】
鹸化度については85モル%から完全鹸化の100モル%程度が好ましく、90〜100モル%程度がより好ましい。平均重合度については300〜3000程度が好ましく、400〜2000程度がより好ましい。変性度は0.5〜10モル%程度が好ましく、1〜9モル%程度がより好ましい。重合度、鹸化度が高いほど耐水性が良好になるが、塗料濃度、粘度、塗工性または乾燥性から状況に応じて選択する必要がある。
【0028】
変性度については、0.5〜10モル%程度の範囲であれば、充分な耐水性が得られ、また水への溶解性が低下しないため、溶液濃度が低くなるのを抑えることができる。
【0029】
保護層中に使用されるアセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール及びカルボキシ変性ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種の使用量としては、保護層の全固形量に対して10〜90質量%、好ましくは15〜50質量%程度がより好ましい。
【0030】
保護層に使用される水性接着剤として、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の接着剤を併用することもできる。かかる接着剤としては、例えば完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩、エチレン・アクリル酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、アクリル樹脂系ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックス等が挙げられる。
【0031】
本発明において、保護層の顔料としては、平均粒子径が0.1〜1.0μmのカオリンを保護層の全固形分に対して、50〜70質量%の範囲で使用するものである。平均粒子径については、0.2〜0.8μmがより好ましい。平均粒子径が0.1μm未満では、記録時にサーマルヘッドと感熱記録体の間でスティッキングが発生し、記録走行性が低下し、1.0μmを超えると、記録画質に劣る。また、含有量が50質量%未満では、耐スティッキング性に劣り、70質量%を超えると、耐水性に劣る。使用するカオリンの平均粒子径や含有量が上記の範囲内にあれば、記録画質に優れ、耐水性と耐スティッキング性に優れた感熱記録体が得られる。なお、前記平均粒子径は、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径で表される。なお、測定に供した顔料分散液は、分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム)を対顔料0.05%添加して調製した固形分濃度5質量%の顔料スラリーを、当該測定装置で測定可能な領域まで希釈して得たものである。
【0032】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の顔料を併用することもできる。かかる顔料としては、例えば炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、非晶性シリカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、焼成カオリン等の無機顔料、ナイロン樹脂フィラー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー、生デンプン粒子等の有機顔料が挙げられる。なかでも、水酸化アルミニウムは可塑剤、油等の薬品に対するバリア性の低下が少なく、しかも記録濃度の低下も小さいため好ましく用いられる。
【0033】
更に、保護層中に水溶性の酸性化合物を含有させることにより、保護層用塗液の安定性がより高められる。保護層用塗液に添加される水溶性の酸性化合物としては特に限定されないが、硼酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、安息香酸、フタル酸、ベンゼントリカルボン酸等のカルボキシル基を有する水溶性の有機酸が好ましい。
【0034】
前記水溶性の酸性化合物の添加量としては特に限定されないが、保護層用塗液のpHが3.0〜7.0となるように添加するのが好ましく、4.0〜6.0の範囲がより好ましい。pHが3.0〜7.0の範囲であれば、塗液の粘度が経時的に高くなることを抑えられる。
【0035】
その他、保護層用塗液中に添加し得る助剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等の滑剤、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、スルホン変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム等の界面活性剤、ジアルデヒドデンプン、メチロール尿素、エポキシ系化合物、ヒドラジン系化合物等の耐水化剤、及び紫外線吸収剤、蛍光染料、着色染料、離型剤、酸化防止剤等の助剤を添加することもできる。
【0036】
保護層用塗液については、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール及びカルボキシ変性ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種が溶解された水溶液、カオリン、グリオキシル酸ナトリウム、ジ(グリオキシル酸)カルシウム及びグリオキシル酸アンモニウムから選ばれる少なくとも一種、及び必要によりその他の顔料、水溶性の酸性化合物や各種助剤とを混合撹拌して調製される。
【0037】
次に感熱記録層について、述べる。
【0038】
電子供与性化合物と電子受容性化合物を有する感熱記録方式としては、例えばロイコ染料と呈色剤との組合せ、ジアゾニウム塩とカプラーとの組合せ、鉄、コバルト、銅など遷移元素とキレート化合物との組合せ、芳香族イソシアネート化合物とイミノ化合物との組合せ等が挙げられるが、ロイコ染料と呈色剤との組合せが発色濃度に優れるため、好ましく用いられる。以下、ロイコ染料と呈色剤との組合せからなる感熱記録層について詳細に述べる。
【0039】
ロイコ染料及び呈色剤としては、各種公知のものが使用できる。ロイコ染料の具体例としては、例えば3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−7−N−メチルアニリノフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(nブチル)アミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−p−(p−クロロアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等が挙げられる。
【0040】
勿論、これらに限定されるものではなく、また2種以上を併用することもできる。また、ロイコ染料の使用量は、使用する呈色剤により異なるため限定できないが、感熱記録層の全固形分に対して3〜50質量%程度、特に5〜40質量%程度とするのが好ましい。
【0041】
呈色剤としては、例えば4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2’−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、N−p−トルエンスルホニル−N’−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、N,N’−ジ−m−クロロフェニルチオ尿素、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス(p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−{3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛、下記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物等が挙げられる。
【0042】
【化1】

(式中、nは1〜7の整数を表す。)
【0043】
呈色剤の使用量は、使用するロイコ染料により異なるため限定できないが、感熱記録層の全固形分に対して10〜70質量%程度、特に12〜50質量%程度とするのが好ましい。
【0044】
感熱記録層には、記録部の保存安定性を高めるために保存性改良剤、及び記録感度を高めるために増感剤を含有させることもできる。かかる保存性改良剤の具体例としては、例えば2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、4,4’−ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、ビス(4−エチレンイミノカルボニルアミノフェニル)メタン等が挙げられる。
【0045】
保存性改良剤を使用する場合、その使用量は、保存性改良のために有効な量とすればよいが、通常は、感熱記録層の全固形分に対して1〜30質量%程度、特に5〜20質量%程度の範囲で配合されるのが好ましい。
【0046】
増感剤の具体例としては、例えばステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2−ナフチルベンジルエーテル、m−ターフェニル、p−ベンジルビフェニル、p−トリルビフェニルエーテル、ジ(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メトキシフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−クロロフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(3−メチルフェノキシ)エタン、p−メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4−ジ(フェニルチオ)ブタン、p−アセトトルイジド、p−アセトフェネチジド、N−アセトアセチル−p−トルイジン、ジ(β−ビフェニルエトキシ)ベンゼン、シュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル等が例示される。
【0047】
増感剤を使用する場合、その使用量は、増感のために有効な量とすればよいが、通常は、感熱記録層の全固形分に対して2〜40質量%程度、特に5〜25質量%程度の範囲で配合されるのが好ましい。
【0048】
感熱記録層は、水を分散媒体とし、ロイコ染料、呈色剤、必要により増感剤、保存性改良剤などを共に、或いは別々にボールミル、アトライター、サンドミルなどの撹拌・粉砕機により平均粒子径が2μm以下となるように微分散した後、水性接着剤等を添加して調製された感熱記録層用塗液を支持体の一方の面に塗布乾燥して形成される。なお、感熱記録層中の水性接着剤としても、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール及びカルボキシ変性ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種を含有させることが好ましい。
【0049】
更に、感熱記録層用塗液中には必要に応じて各種の助剤を添加することができ、例えばカオリン、軽質(重質)炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、無定形シリカ、尿素・ホルマリン樹脂フィラー等の顔料、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の分散剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、ヒドラジン系化合物、グリオキザール、硼酸、ジアルデヒドデンプン、メチロール尿素、エポキシ系化合物等の耐水化剤、消泡剤、着色染料及び蛍光染料等が挙げられる。
【0050】
本発明の感熱記録体に用いられる支持体としては、特に限定しないが、例えば、中性または酸性の上質紙、合成紙、透明または半透明のプラスチックフィルム、白色のプラスチックフィルム等が挙げられる。なお、支持体の厚みは特に限定しないが、通常、20〜200μm程度である。
【0051】
本発明では、必要であれば、支持体と感熱記録層との間に、記録感度及び記録走行性をより高めるために、下塗り層を設けることもできる。下塗り層は、吸油量が70ml/100g以上、特に80〜150ml/100g程度の吸油性顔料及び/または有機中空粒子及び/または熱膨張性粒子、並びに接着剤を主成分とする下塗り層用塗液を支持体上に塗布乾燥して形成される。ここで、上記吸油量はJIS K5101の方法に従い、求められる値である。
【0052】
上記吸油性顔料としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、焼成カオリン、無定形シリカ、軽質炭酸カルシウム、タルク等の無機顔料が挙げられる。これら吸油性顔料の一次粒子の平均粒子径は0.01〜5μm程度、特に0.02〜3μm程度であるのが好ましい。吸油性顔料の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層の全固形分に対して2〜95質量%程度、特に5〜90質量%程度であるのが好ましい。
【0053】
なお、必要に応じて感熱記録体の支持体の裏面側にも保護層、印刷層、磁気記録層、或いはインクジェット記録層を設けたり、各層塗抹後にスーパーカレンダー掛け等の平滑化処理を施すことなども可能である。また、感熱記録体の支持体の裏面側に粘着剤層を設けるなどの感熱記録体製造分野における各種の公知技術が必要に応じて付加し得るものである。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。
【0055】
実施例1
・下塗り層用塗液の調製
焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、エンゲルハード社製)60部を水80部に分散して得られた分散物に、微小中空粒子(商品名:ローペイクSN−1055、ローム&ハース社製、固形分濃度26.5%)75部、スチレン・ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1571、旭化成ケミカルズ社製、固形分濃度48%)31部と、カルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲン7A、第一工業製薬社製)2.5部、同じくカルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンAGガム、第一工業製薬社製)1部、及び水15.5部を混合攪拌して、下塗り層用塗液を得た。
【0056】
・ロイコ染料分散液(A液)調製
3−ジ−(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部及び水15部からなる組成物をサンドミルでレーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.5μmになるまで粉砕してロイコ染料分散液(A液)を得た。
【0057】
・呈色剤分散液(B液)調製
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部及び水15部からなる組成物をサンドミルでレーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.5μmになるまで粉砕して呈色剤分散液(B液)を得た。
【0058】
・呈色剤分散液(C液)調製
ジフェニルスルホン架橋型化合物(商品名:D−90、日本曹達社製)10部、メチルセルロースの5%水溶液5部及び水15部からなる組成物をサンドミルでレーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して呈色剤分散液(C液)を得た。
【0059】
・増感剤分散液(D液)調製
シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル10部、メチルセルロースの5%水溶液5部及び水15部からなる組成物をサンドミルでレーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して増感剤分散液(D液)を得た。
【0060】
・感熱記録層用塗液の調製
A液33.5部、B液68部、C液5部、D液10.5部、完全鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA110、ケン化度:99モル%、平均重合度:1000、クラレ社製)の10%水溶液30部、部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA205、ケン化度:88モル%、平均重合度:500、クラレ社製)の20%水溶液5部、ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:P−OY72、日本A&L社製、固形分濃度48%)16.5部、軽質炭酸カルシウム(商品名:Brilliant−15、白石工業社製)42部、パラフィンワックスエマルジョン(商品名:ハイドリンL−700、中京油脂社製、固形分濃度30%)10部、及び水90.5部を混合撹拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0061】
・保護層用塗液の調製
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:Z−200、ケン化度:99.4モル%、平均重合度:1000、変性度:5モル%、日本合成化学工業社製)の10%水溶液210部、同じくアセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:Z−100、ケン化度:99.4モル%、平均重合度:500、変性度:5モル%、日本合成化学工業社製)の20%水溶液80部、カオリン(商品名:HYDRAGLOSS90、平均粒子径:0.56μm、KaMin LLC社製)56.5部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH−42M、平均粒子径:1.5μm、昭和電工社製)4部、ステアリン酸亜鉛の水分散物(商品名:ハイドリンZ−8−36、中京油脂社製、固形分濃度36%)4.5部、ポリエチレンワックスエマルジョン(商品名:ケミパールW400、三井化学社製、固形分濃度40%)2.3部、グルオキシル酸ナトリウム(商品名:SPM−01、日本合成化学工業製)の10%水溶液5部及び水53部からなる組成物を混合撹拌し、10%酢酸水溶液でpH5となるように調整して保護層用塗液を得た。なお、カオリン、水酸化アルミニウムの平均粒子径は、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径である。
【0062】
・感熱記録体の作製
坪量60g/mの上質紙の片面上に、下塗り層用塗液、感熱記録層用塗液、及び保護層用塗液を乾燥後の塗布量がそれぞれ6.0g/m、4.5g/m、及び2.0g/mとなるように塗布・乾燥して、下塗り層、感熱記録層、及び保護層を順次形成した後、スーパーカレンダーで表面を平滑化して感熱記録体を得た。
【0063】
実施例2
実施例1の保護層用塗液の調製において、グルオキシル酸ナトリウム(商品名:SPM−01、前出)の10%水溶液5部の代わりに、ジ(グルオキシル酸)カルシウム(商品名:SPM−02、日本合成化学工業製)0.5部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0064】
実施例3
実施例1の保護層用塗液の調製において、グルオキシル酸ナトリウム(商品名:SPM−01、前出)の10%水溶液代わりにグルオキシル酸アンモニウム10%水溶液を5部使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0065】
実施例4
実施例1の保護層用塗液の調製において、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:Z−200、前出)の10%水溶液210部及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:Z−100、前出)の20%水溶液80部の代わりに、ジアセトン変性ポリビルアルコール(商品名:DF−10、ケン化度:98.5モル%、平均重合度:1000、変性度:6モル%、日本酢ビ・ポバール社製)の10%水溶液210部及びジアセトン変性ポリビルアルコール(商品名:DF−05、ケン化度:98.5モル%、平均重合度:500、変性度:5モル%、日本酢ビ・ポバール社製)の20%水溶液80部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0066】
実施例5
実施例1の保護層用塗液の調製において、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:Z−200、前出)の10%水溶液210部及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:Z−100、前出)の20%水溶液80部の代わりに、カルボキシ変性ポリビルアルコール(商品名:T−215、ケン化度:97モル%、平均重合度:1100、変性度:4モル%、日本合成化学工業社製)の10%水溶液を370部用い、水を0部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0067】
実施例6
実施例1の保護層用塗液の調製において、酢酸0.5部を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。保護層用塗液のpHは7.3であった。
【0068】
比較例1
実施例1の保護層用塗液の調製において、グルオキシル酸ナトリウム(商品名:SPM−01、前出)10%水溶液5部を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0069】
比較例2
実施例1の保護層用塗液の調製において、カオリン(商品名:HYDRAGLOSS90、前出)56.5部及び水58.2部の代わりに、カオリン(商品名:HYDRAGLOSS90、前出)38部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0070】
比較例3
実施例1の保護層用塗液の調製において、カオリン(商品名:HYDRAGLOSS90、前出)56.5部及び水58.2部の代わりに、カオリン(商品名:HYDRAGLOSS90、前出)178部及び水442.7部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0071】
比較例4
実施例1の保護層用塗液の調製において、グルオキシル酸ナトリウム(商品名:SPM−01、前出)の10%水溶液5部の代わりに、グリオキザールの10%水溶液5部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0072】
比較例5
実施例1の保護層用塗液の調製において、カオリン(商品名:HYDRAGLOSS90、前出)56.5部の代わりに、カオリン(商品名:UW−90、平均粒子径:2.3μm、エンゲルハート社製)56.5部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。なお、カオリンの平均粒子径は、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径である。
【0073】
・感熱記録体の評価
かくして得られた感熱記録体を40℃の条件下で24時間放置後、下記の項目について評価し、その結果を表1に示した。
【0074】
〔記録画質〕
感熱記録評価機(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー:0.35mJ/dotにて各感熱記録体を記録し、得られた記録像の画質を下記のように目視判定した。
◎:記録像が極めて鮮明である。
○:記録像が鮮明である。
×:記録像が少し不鮮明である。
【0075】
〔耐水性〕
感熱記録体の保護層面を、水で濡らしたガーゼで3往復擦り、その1分後に擦った箇所を黄色のマジックインキ[登録商標]で塗り潰して、表面の発色具合を目視で観察し、下記のごとく評価した。
(評価基準)
◎:全く発色していない。
○:僅かに発色しているように見えるが、実用上の問題はない。
×:発色している部分があり、実用上問題である。
【0076】
〔耐スティッキング性〕
感熱プリンター(Lesprit、サトー社製)を用いて、バーコードを印字し、印字飛びの具合を目視で観察し、下記のごとく評価した。
(評価基準)
◎:印字飛びが全く見えない。
○:かすかに印字飛びが見えるが、実用上の問題はない。
×:印字飛びがはっきりと判り、実用上問題である。
【0077】
〔保護層用塗液:粘度の経時変化〕
調製した保護層用塗液について、調製直後と48時間放置後のB型粘度mPa・s(60rpm)を測定した。
【0078】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、ロイコ染料、呈色剤および水性接着剤を含有する感熱記録層、更に感熱記録層上に水性接着剤を含有する保護層を有する感熱記録体において、前記保護層中にグリオキシル酸ナトリウム、ジ(グリオキシル酸)カルシウム、及びグリオキシル酸アンモニウムから選ばれる少なくとも一種と、平均粒子径が0.1〜1.0μmのカオリンを含有し、前記カオリンの含有量が、保護層の全固形分に対して50〜70質量%であることを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記保護層中の水性接着剤が、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール及びカルボキシ変性ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記保護層を形成する保護層用塗液のpHが3.0〜7.0の範囲である、請求項1または2に記載の感熱記録体。