説明

感熱記録体

【課題】十分な発色感度を有し、印字走行性(耐スティック性、耐ヘッドカス付着性)が良好な感熱記録体を提供する。
【解決手段】支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料および電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、最表層にリン酸エステル化合物を含有することを特徴とする感熱記録体。最表層が保護層であり、さらに保護層が特定の構成を有すると、優れた耐水性と耐水ブロッキング性が特異的に発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字走行性(耐スティック性、耐ヘッドカス付着性)、発色感度に優れる感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱記録体は通常無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料とフェノール性化合物等の電子受容性顕色剤を、それぞれ微細な粒子に磨砕分散した後、両者を混合し、バインダー、顔料、感度向上剤(増感剤)、滑剤およびその他の助剤を添加して得られた塗工液を、紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗工したものであり、サーマルヘッド、ホットスタンプ、熱ペン、レーザー光等の加熱による瞬時の化学反応により発色し、記録画像が得られる。
感熱記録体は、ファクシミリ、コンピューターの端末プリンター、自動券売機、計測用レコーダー等に広範囲に使用されており、その用途の多様化に伴い、高いレベルの画像安定性および白紙部の安定性が求められている。しかし、感熱記録層に含まれる電子供与性ロイコ染料および電子受容性顕色剤は、各種溶剤に容易に溶解するため、この感熱記録体は、水性インキペンや油性インキペン等のインキ、接着剤等に触れると白紙部が容易に発色したり、可塑剤などの薬品が記録画像に付着した場合に退色する問題がある。この様な欠点をなくす目的で特許文献1および特許文献2には、顔料及び樹脂を主成分とする保護層を感熱記録層上に設ける技術が開示されている。
また近年においては、記録時に騒音がなく装置も比較的安価でコンパクト、メンテナンス容易であるなどの利点から、屋外計測用のハンディターミナル用紙や配送伝票などの用途が急速に広がっており、優れた印字走行性(耐スティック性(スティック:感熱プリンターヘッドと用紙の融着による印字トビ欠陥)、耐ヘッドカス付着性)が要求されている。感熱記録体にこのような品質を付与する目的で、特許文献3には、脂肪酸金属塩に代表される平均粒子径1〜20μmの滑剤を表層に配合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1:特開昭48−30437号
特許文献2:特開昭48−31958号
特許文献3:特開2005−288850
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら近年、環境に配慮したプリンターの省エネ化、プリンターの性能向上による高速印字化が進んでおり、従来よりも高い発色感度や印字走行性(耐スティック性、耐ヘッドカス付着性)が要求されている。そこで、本発明は、十分な発色感度と、印字走行性を有する感熱記録体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、支持体上に、染料及び顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体の最表層にリン酸エステル化合物を含有させることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、支持体上に、無色又は淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、最表層にリン酸エステル化合物を含有することを特徴とする感熱記録体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の感熱記録体は、印字走行性(耐スティック性、耐ヘッドカス付着性)が良好で、十分な発色感度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の感熱記録体が十分な印字走行性(耐スティック性、耐ヘッドカス付着性)、発色感度を備える理由は明らかではないが、次のように推測される。リン酸エステル化合物は熱が加わり溶解すると表面に配列し、剥離性を発現する。本感熱記録体の最表層に配合されたリン酸エステル化合物は、プリンターヘッドの熱によって記録体表面に配列し、良好な印字走行性が得られる。また、リン酸エステル化合物は脂肪酸金属塩、具体的にはステアリン酸亜鉛やステアリン酸カルシウムに代表される滑剤と異なり、表面の平滑度を低下させないことから、プリンターヘッドとのマッチングが良好になり発色感度が向上する。
本発明で使用されるリン酸エステル化合物は、例えば、モノカプロイルリン酸エステル、モノオクチルリン酸エステル、モノカプリルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノミリスチルリン酸エステル、モノセチルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのモノリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのモノリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのモノリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのモノリン酸エステル、ジカプロイルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、ジカプリルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジミリスチルリン酸エステル、ジセチルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのジリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのジリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのジリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのジリン酸エステルなどを挙げることができ、 例えば、中京油脂製の「セパール328」、「セパール365」、「セパール380」、「セパール440」、「セパール441」、「セパール517」、「セパール521」、「セパールM835」(以上、商品名)などとして入手可能である。
【0008】
本発明で使用されるリン酸エステル化合物の配合量としては、最表層の塗工層全固形分100重量部に対して、好ましくは0.2〜20重量部(以下、重量部は固形分換算とする)、より好ましくは0.2〜15重量部である。リン酸エステル化合物の配合量が0.2重量部未満であると良好な耐スティック性が得られず、15重量部を超えると、発色感度、耐ヘッドカス付着性が低下することがある。
【0009】
本発明は前記感熱記録層上に保護層を設けることが可能である。本発明における保護層としては、以下に示す保護層1、もしくは保護層2の構成が好ましい。
【0010】
[保護層1]
保護層にカルボキシ変性ポリビニルアルコールと共に、エピクロロヒドリン系樹脂及びポリアミン/アミド系樹脂を含有させる。本発明の保護層が保護層1の構成、すなわちカルボキシ変性ポリビニルアルコールと共に、エピクロロヒドリン系樹脂及びポリアミン/アミド系樹脂を含有させる構成であると、優れた耐水性と耐水ブロッキング性が特異的に発現する。カルボキシ変性ポリビニルアルコールと共にエピクロロヒドリン系樹脂またはポリアミン/アミド系樹脂を各々単独で使用した場合、もしくはカルボキシ変性ポリビニルアルコールと共にエピクロロヒドリン系樹脂またはポリアミン/アミド系樹脂とその他一般的な架橋剤を併用した場合、例えばエピクロロヒドリン系樹脂またはポリアミン/アミド系樹脂とグリオキザールを併用した場合も前記効果は発現するが、保護層1の構成であると前記効果が顕著に発現するため好ましい。
【0011】
保護層1の構成で使用するカルボキシ変性ポリビニルアルコールは、水溶性高分子であるポリビニルアルコールに反応性を高める目的でカルボキシル基を導入したものであり、ポリビニルアルコールとフマル酸、無水フタル酸、無水メリト酸、無水イタコン酸などの多価カルボン酸との反応物、あるいはこれらの反応物のエステル化物、さらに酢酸ビニルとマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸、メタアクリル酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸との共重合物の鹸化物として得られる。具体的な製造方法としては、例えば特開昭53−91995号公報などに例示されている方法が挙げられる。
【0012】
保護層1の構成で使用するエピクロロヒドリン系樹脂は、分子中にエポキシ基を含有していることを特徴とする樹脂である。例えば、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂などを挙げることができ、これらを単独又は併用することができる。また、エピクロロヒドリン系樹脂の主鎖に存在するアミンとしては第1級から第4級までのものを使用することができ、特に制限はない。さらに、耐水性が良好なことから、カチオン化度および分子量はカチオン化度5meq/g・Solid以下(pH7での測定値)、分子量50万以上が好ましい。エピクロロヒドリン系樹脂の具体例としては、スミレーズレジン650(30)(住友化学社製)、スミレーズレジン675A(住友化学社製)、スミレーズレジン6615(住友化学社製)、WS4002(星光PMC社製)、WS4020(星光PMC社製)、WS4024(星光PMC社製)、WS4030(星光PMC社製)、WS4046(星光PMC社製)、WS4010(星光PMC社製)、CP8970(星光PMC社製)などが挙げられる。
【0013】
保護層1の構成で使用するポリアミン/アミド系樹脂は、分子中にエポキシ基を有していないことを特徴とする樹脂である。例えば、ポリアミド尿素系樹脂、ポリアルキレンポリアミン樹脂、ポリアルキレンポリアミド樹脂、ポリアミンポリ尿素系樹脂、変性ポリアミン樹脂、変性ポリアミド樹脂、ポリアルキレンポリアミン尿素ホルマリン樹脂、ポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹脂などを挙げることができ、これらを単独又は併用することができる。ポリアミン/アミド系樹脂の具体例としては、スミレーズレジン302(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素樹脂)、スミレーズレジン712(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素樹脂)、スミレーズレジン703(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素系樹脂)、スミレーズレジン636(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素系樹脂)、スミレーズレジンSPI−100(住友化学社製:変性ポリアミン樹脂)、スミレーズレジンSPI−102A(住友化学社製:変性ポリアミン樹脂)、スミレーズレジンSPI−106N(住友化学社製:変性ポリアミド樹脂)、スミレーズレジンSPI−203(50)(住友化学社製)、スミレーズレジンSPI−198(住友化学社製)、プリンティブA−700(旭化成社製)、プリンティブA−600(旭化成社製)、PA6500、PA6504、PA6634、PA6638、PA6640、PA6644、PA6646、PA6654、PA6702、PA6704(以上、星光PMC社製:ポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹脂)、CP8994(星光PMC社製:ポリエチレンイミン樹脂)などが挙げられる。特に制限はないが、印字濃度が良好なことから、ポリアミン系樹脂(ポリアルキレンポリアミン樹脂、ポリアミンポリ尿素系樹脂、変性ポリアミン樹脂、ポリアルキレンポリアミン尿素ホルマリン樹脂、ポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹)を使用することが好ましい。
【0014】
保護層1の構成で使用するエピクロロヒドリン系樹脂及びポリアミン/アミド系樹脂の含有量は、カルボキシ変性ポリビニルアルコール100重量部に対してそれぞれ1〜100重量部であることが好ましく、5〜50重量部であることがより好ましい。それぞれ1重量部以上、より好ましくはそれぞれ5重量部以上含有させると良好な耐水性と耐水ブロッキング性が得られる。また、それぞれ100重量部以下、より好ましくはそれぞれ50重量部以下含有させると、塗液の粘度増加やゲル化が起こりにくく操業性が良好である。
【0015】
[保護層2]
保護層にガラス転移点(Tg)が50℃より高い非コアシェル型アクリル系樹脂を含有させる。本発明の保護層が保護層2の構成、すなわちガラス転移点(Tg)が50℃より高い非コアシェル型アクリル系樹脂を含有させる構成であると、優れた耐水性と耐水ブロッキング性が特異的に発現する。本発明で使用するアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸及び、(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分を含む。(メタ)アクリル酸は、アクリル系樹脂100部中1〜10部配合することが好ましい。(メタ)アクリル酸は、アルカリ可溶性であり、中和剤の添加によりアクリル系樹脂を水溶性樹脂にする特性を有している。アクリル系樹脂を水溶性樹脂に変化させることによって、特に保護層中に顔料を含有する場合、顔料への結合性が著しく向上し、多量の顔料含有下でも優れた強度を有する保護層を形成することができる。(メタ)アクリル酸と共重合可能な成分としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどのアクリル酸アルキル樹脂及びエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、スチレン又はその誘導体によって変性された上記アクリル酸アルキル樹脂などの変性アクリル酸アルキル樹脂、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキルアクリル酸エステルを例示できるが、特に(メタ)アクリロニトリル及び/又はメタクリル酸メチルを配合することが好ましい。(メタ)アクリロニトリルはアクリル系樹脂100部中15〜70部配合することが好ましい。また、メタクリル酸メチルはアクリル系樹脂100部中20〜80部含むことが好ましい。(メタ)アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルを含む場合、(メタ)アクリロニトリルをアクリル系樹脂100部中15〜18部、メタクリル酸メチルをアクリル系樹脂100部中20〜80部配合することが好ましい。
本発明で使用するアクリル系樹脂のガラス転移点(Tg)は50℃より高い。Tgが50℃以下であると、耐水性は向上するが十分な耐熱性が得られないため、スティックを生じやすくなる。一方、Tgが高いと耐スティック性や耐擦過性は向上する傾向であるが、保護層が脆くなり、耐水性、耐可塑剤性や耐溶剤性が十分ではなくなるなど、目的とする効果が得られない場合があるため、Tgが95℃以下であることが好ましい。アクリル系樹脂のTgは示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。
【0016】
本発明で使用するアクリル系樹脂は、非コアシェル型アクリル系樹脂である。一般に、コアシェル型アクリル系樹脂は、非コアシェル型アクリル系樹脂に比べて耐熱性が優れており、塗工層に用いた場合に耐スティック性に優れるため多用されている。しかし、コアシェル型アクリル系樹脂のシェル部は通常熱伝導性が低いため、発色感度が悪いという欠点も併せ持っている。一方、通常の非コアシェル型アクリル系樹脂は耐熱性が低く、スティックやヘッドカスなどが発生しやすい欠点を持っていたが、本願発明で使用する非コアシェル型アクリル系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が50℃より高く耐熱性に優れているため、発色感度が良好であるとともに、耐スティック性や耐ヘッドカス性が良好であるという利点がある。
【0017】
本発明の保護層が保護層1の構成、もしくは保護層2の構成である場合、該保護層には必要に応じて所望の効果を阻害しない範囲で完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、カゼイン、アラビヤゴム、酸化澱粉、エーテル化澱粉、ジアルデヒド澱粉、エステル化澱粉、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロースおよびそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロ樹脂などのバインダーを含有することが可能である。これらの高分子物質は水、アルコール、ケトン類、エステル類、炭化水素などの溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することもできる。
【0018】
次に、本発明で使用されるその他の各種材料を例示するが、これらは前記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、感熱記録層、保護層、及び前記感熱記録層、保護層以外の必要に応じて設けられた各塗工層に使用することができる。
【0019】
本発明の感熱記録体で用いられる電子受容性顕色剤(以下、「顕色剤」ともいう)としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙の分野で公知のものはすべて使用可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、4,4'−イソプロピリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−n−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−4'−アリルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシフェニル−4'−ベンジルオキシフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−4'−メチルフェニルスルホン、特開平8−59603号公報記載のアミノベンゼンスルホンアミド誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3−ビス[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、2,2'−チオビス(3−tert−オクチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−tert−オクチルフェノール)、国際公開WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物等のフェノール性化合物、国際公開WO02/098674号に記載の顕色剤組成物、国際公開WO02/081229号あるいは特開2002−301873号に記載の化合物、4,4'−ビス3−(フェノキシカルボニルアミノ)メチルフェニルウレイド)ジフェニルスルホン(旭化成社製商品名:UU)、N,N'−ジ−m−クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、p−クロロ安息香酸、没食子酸ステアリル、ビス[4−(n−オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]2水和物、4−[2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、4−[3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸、5−[p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸の芳香族カルボン酸、およびこれらの芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属塩との塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等が挙げられる。国際公開WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物等のフェノール性化合物は、日本曹達社製商品名D−90として入手可能である。また、国際公開WO02/081229号あるいは特開2002−301873号に記載の化合物は、日本曹達社製商品名D−102、D−100として入手可能である。これらの顕色剤は、単独または2種以上混合して使用することもできる。中でも、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホンは、特に発色感度に優れ好ましい。この他、特開平10−258577号公報記載の高級脂肪酸金属複塩や多価ヒドロキシ芳香族化合物などの金属キレート型発色成分を含有することもできる。
【0020】
本発明で使用する電子供与性ロイコ染料(以下、「ロイコ染料」ともいう)としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙分野で公知のものは全て使用可能であり、特に制限されるものではないが、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系、ジビニル系化合物等が好ましい。以下に代表的な無色ないし淡色の染料(染料前駆体)の具体例を示す。また、これらの染料前駆体は単独または2種以上混合して使用してもよい。
<トリフェニルメタン系ロイコ染料>
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド〔別名クリスタルバイオレットラクトン〕; 3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド〔別名マラカイトグリーンラクトン〕
【0021】
<フルオラン系ロイコ染料>
3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−メチルアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアミノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ベンジルアミノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−p−メチルアニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−ベンゾ〔a〕フルオラン; 3−ジエチルアミノ−ベンゾ〔c〕フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−クロロフルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−p−メチルアニリノフルオラン; 3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン; 3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)ルオラン; 3−ジ−n−ペンチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン; 3−ジ−n−ペンチルアミノ−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−キシルアミノ)−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−(N−エチル−p−トルイディノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−クロロ−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−エトキシプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン; 2−(4−オキサヘキシル)−3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 2−(4−オキサヘキシル)−3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 2−(4−オキサヘキシル)−3−ジプロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 2−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−メトキシ−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−クロロ−3−メチル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−クロロ−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−ニトロ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−アミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−フェニル−6−メチル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−ベンジル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−ヒドロキシ−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 3−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2,4−ジメチル−6−〔(4−ジメチルアミノ)アニリノ〕−フルオラン
【0022】
<フルオレン系ロイコ染料>
3,6,6'−トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3'−フタリド〕; 3,6,6'−トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3'−フタリド〕
【0023】
<ジビニル系ロイコ染料>
3,3−ビス−〔2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド; 3,3−ビス−〔2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド; 3,3−ビス−〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド; 3,3−ビス−〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド
【0024】
<その他>
3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド; 3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド; 3−(4−シクロヘキシルエチルアミノ−2−メトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド; 3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド; 3,6−ビス(ジエチルアミノ
)フルオラン−γ−(3'−ニトロ)アニリノラクタム; 3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4'−ニトロ)アニリノラクタム; 1,1−ビス−〔2',2',2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2,2−ジニトリルエタン; 1,1−ビス−〔2',2',2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2−β−ナフトイルエタン; 1,1−ビス−〔2',2',2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2,2−ジアセチルエタン; ビス−〔2,2,2',2'−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−メチルマロン酸ジメチルエステル等があげられる。
【0025】
また本発明においては、従来公知の増感剤を使用することができる。かかる増感剤としては、エチレンビスアミド,モンタン酸ワックス,ポリエチレンワックス,1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタン,p−ベンジルビフェニル,β−ベンジルオキシナフタレン,4−ビフェニル−p−トリルエーテル,m−ターフェニル,1,2−ジフェノキシエタン,4,4'−エチレンジオキシ−ビス−安息香酸ジベンジルエステル,ジベンゾイルオキシメタン,1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エチレン,1,2−ジフェノキシエチレン,ビス〔2−(4−メトキシ−フェノキシ)エチル〕エーテル,p−ニトロ安息香酸メチル,シュウ酸ジベンジル,シュウ酸ジ(p−クロロベンジル),シュウ酸ジ(p−メチルベンジル),テレフタル酸ジベンジル,p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル,ジ−p−トリルカーボネート,フェニル−α−ナフチルカーボネート,1,4−ジエトキシナフタレン,1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル,4−(m−メチルフェノキシメチル)ビフェニル、オルトトルエンスルホンアミド、パラトルエンスルホンアミドを例示することができるが,特にこれらに制限されるものではない。これらの増感剤は,単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0026】
本発明で使用するバインダーとしては、一般に公知のものが用いられ、具体的には、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系バインダー、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロール、アセチルセルロースなどのセルロース系バインダー、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチルラール、ポリスチレン及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂が挙げられ、更に、スチレン−ブタジエン系樹脂、アクリル系樹脂などの疎水性樹脂にポリビニルアルコールをグラフト重合させたバインダー、乳化剤にポリビニルアルコールを使用したスチレン−ブタジエン系樹脂、アクリル系樹脂などの疎水性樹脂エマルジョンバインダーが挙げられる。これらの中で、水酸基を有するバインダーとしてポリビニルアルコール系バインダーやセルロース系バインダーが好ましく、ケン化度90mol%以下及び/又は無変性のポリビニルアルコールは、発色感度、耐水性、表面強度の点からより好ましい。これらのバインダーは水、アルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化あるいはペースト状に分散した状態で使用し、要求される品質に応じて併用することも可能である。
バインダーの配合量としては、感熱記録層全固形分に対して2.0〜15.0重量部が好ましく、4.0〜10.0重量部がより好ましい。すなわち、バインダーの配合量が4.0重量部以下のときは表面強度が低く、15.0重量部以上のときは高い発色感度、耐水性が得られにくい。
【0027】
本発明で使用する顔料としては、一般に公知のものが用いられ、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、コロイダルシリカなどの無機顔料や有機顔料などが挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上組み合わせて使用することができる。このほかにワックス類、金属石鹸類などの滑剤、ベンゾフェノン系やトリアゾール系の紫外線吸収剤、グリオキザールなどの耐水化剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料等を使用することができる。
【0028】
また、本発明においては、所望の効果を阻害しない範囲で、記録画像の耐油性等を付与する安定剤として、4,4'−ブチリデン(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチル−4,4'−スルホニルジフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニルブタン、4−ベンジルオキシ−4'−(2,3−エポキシ−2−メチルプロポキシ)ジフェニルスルホン、エポキシレジン等を添加することもできる。
本発明の感熱記録体に使用するロイコ染料、顕色剤、その他の各種成分の種類及び量は要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ染料1部に対して顕色剤0.5〜10部、増感剤0.5〜10部、顔料0.5〜10部程度が使用される。
【0029】
ロイコ染料、顕色剤並びに必要に応じて添加する材料は、ボールミル、アトライター、サンドグライダーなどの粉砕機あるいは適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒子径になるまで微粒化し、バインダーおよび目的に応じて各種の添加材料を加えて塗液とする。
【0030】
上記組成から成る塗液を紙、再生紙、合成紙、フィルム、プラスチックフィルム、発泡プラスチックフィルム、不織布等任意の支持体に塗布することによって目的とする感熱記録体が得られる。またこれらを組み合わせた複合シートを支持体として使用してもよい。
【0031】
塗液を支持体に塗布する手段は特に限定されるものではなく、周知慣用技術に従って塗布することができ、例えばエアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、ビルブレードコーター、ロールコーターなど各種コーターを備えたオフマシン塗工機やオンマシン塗工機が適宜選択され使用される。感熱記録層の塗布量は特に限定されず、通常乾燥重量で2〜12g/mの範囲である。また、感熱記録層上に設ける保護層の塗工量は特に限定されないが、固形分で0.5〜3g/mの範囲とすると、特に良好な印字濃度、画質が得られるため好ましい。
【0032】
本発明の感熱記録体は、さらに発色感度を高める目的で填料を含有した高分子物質等の下塗り層を感熱記録層の下に設けたりすることもできる。支持体の感熱記録層とは反対面にバックコート層を設け、カールの矯正を図ることも可能である。また、各層の塗工後にスーパーカレンダーがけ等の平滑化処理を施すなど、感熱記録体分野における各種公知の技術を必適宜付加することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。なお、各実施例中、特に明記しない限り「部」は「重量部」を示す。
[実施例1]
下記配合からなる配合物を攪拌分散して、下塗り層塗液を調整した。
<下塗り層塗液>
焼成カオリン(エンゲルハード社製、アンシレックス90) 100部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(固形分48%) 40部
完全鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)10%水溶液 30部
水 160部
次いで、下塗り層塗液を支持体(坪量50g/mの上質紙)の片面に塗布量が8.0g/mとなるように塗布した後、乾燥を行い、下塗り層塗工紙を得た。
【0034】
染料、顕色剤、増感剤の各材料は、あらかじめ以下の配合の分散液をつくり、それぞれサンドグラインダーで平均粒径が0.5μmになるまで湿式磨砕を行った。
<顕色剤分散液>
4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン(エーピーアイ コーポレーション社製) 6.0部
ポリビニルアルコール10%水溶液
(日本合成化学社製、GL−03、重合度:300、ケン化度:88mol%) 18.8部
水 11.2部
<染料分散液>
3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(山田化学社製、ODB−2) 3.0部
ポリビニルアルコール10%水溶液(GL−03) 6.9部
水 3.9部
<増感剤分散液>
1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタン(三光社製、KS232) 6.0部
ポリビニルアルコール10%水溶液(GL−03) 18.8部
水 11.2部
【0035】
上記の各分散液を下記に示す割合で混合し、感熱記録層塗液を得た。
<感熱記録層塗液>
顕色剤分散液 36.0部
染料分散液 13.8部
増感剤分散液 36.0部
シリカ(デグサジャパン社製、カープレックス101)50%分散液 13.0部
炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、ツネックスE)50%分散液 13.0部
完全鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)10%水溶液 20.0部
リン酸エステル化合物(中京油脂社製、セパールM835、固形分20%) 4.0部
次いで、感熱記録層塗液を前記下塗り層塗工紙の下塗り層上に塗布量が3.0g/mとなるように塗布した後、乾燥を行い、感熱記録体を得た。
【0036】
[実施例2]
感熱記録層にリン酸エステル化合物を配合しない以外は実施例1と同様に感熱記録体を作製した。次いで、下記割合からなる配合物を混合して保護層塗液とした。
<保護層塗液>
水酸化アルミニウム(マーティンスベルグ社製、マーティフィン)50%分散液 12.0部
完全鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)10%水溶液 25.0部
グリオキザール(日本合成社製)40%水溶液 5.0部
リン酸エステル化合物(中京油脂社製、セパールM835、固形分20%) 7.6部
上記の保護層塗液を前記感熱記録体の感熱記録層上に塗布量が2.0g/mとなるように塗布した後、乾燥を行い、感熱記録体を得た。
[実施例3]
保護層塗液の処方を下記の保護層塗液2に変更した以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
<保護層塗液2>
水酸化アルミニウム(マーティンスベルグ社製、マーティフィン)50%分散液 12.0部
カルボキシ変性ポリビニルアルコール(クラレ社製、KL118)12%水溶液 26.7部
ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC社製、WS4030、固形分25%) 3.8部
変性ポリアミド樹脂(住友化学社製、スミレッズレジンSPI102、固形分45%) 2.1部
リン酸エステル化合物(中京油脂社製、セパールM835、固形分20%) 7.6部
[実施例4]
保護層塗液の処方を下記の保護層塗液3に変更した以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
<保護層塗液3>
水酸化アルミニウム(マーティンスベルグ社製、マーティフィン)50%分散液 12.0部
非コアシェル型アクリル系樹脂(三井化学社製、ASN1004K、Tg55℃、固形分18%) 30.0部
リン酸エステル化合物(中京油脂社製、セパールM835、固形分20%) 7.6部
【0037】
[比較例1]
実施例1において、感熱記録層にリン酸エステル化合物を配合しない以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
[比較例2]
実施例2において、保護層にリン酸エステル化合物を配合しない以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
[比較例3]
実施例1において、感熱記録層にリン酸エステル化合物を配合せず、ステアリン酸カルシウムを2.1部配合した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
[比較例4]
実施例2において、保護層にリン酸エステル化合物を配合せず、ステアリン酸カルシウムを1.5部配合した以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0038】
上記の実施例及び比較例で得られた感熱記録体について次のような評価を行った。
[発色感度]
大倉電機社製のTH−PMDを使用し、作成した感熱記録体に印加エネルギー0.34mJ/dotで印字を行った。印字後及び品質試験後の画像濃度はマクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルター使用)で測定した。
[耐スティック性]
大倉電機社製のTH−PMDを使用し、感熱記録体に印加エネルギー0.34mJ/dot、印字速度50mm/sec、−10℃の環境下で印字を行なった際の、スティックの具合及び記録時の騒音について次の基準で評価した。
○:白飛びの発生がなく、騒音もほとんどない
△:若干の白飛びはするが、騒音はほとんどない
×:白飛びが頻発し、騒音も大きい
[耐ヘッドカス付着性]
サトー社製ラベルプリンタ(プリンタ名:レスプリR−8)にて長さ30cmの格子印字を行い、印字後のサーマルヘッドに付着したヘッドカス及び印字サンプルを目視観察した。
○:サーマルヘッドにヘッドカスの付着がない
△:サーマルヘッドにヘッドカスが付着しているが、印字部はかすれない
×:サーマルヘッドにヘッドカスが付着し、印字部がかすれる

評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料および電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、最表層にリン酸エステル化合物を含有することを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
最表層が保護層であることを特徴とする請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記保護層が、カルボキシ変性ポリビニルアルコールと共に、エピクロロヒドリン系樹脂及びポリアミン/アミド系樹脂を含有することを特徴とする請求項2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記保護層が、ガラス転移点(Tg)が50℃よりも高い非コアシェル型アクリル系樹脂を含有することを特徴とする請求項2に記載の感熱記録体。

【公開番号】特開2012−56184(P2012−56184A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201149(P2010−201149)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】