説明

感熱記録体

【課題】
本発明は、印字濃度、印字画質、捺印性、擦過性、画像部の耐水性、耐可塑剤性に優れた感熱記録体を提供することを課題とする。
【解決手段】
支持体上に、無色又は淡色の塩基性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する感熱記録体において、該保護層がアクリル系樹脂及び粉末セルロースを含有し、該粉末セルロースが木材パルプまたは非木材パルプを原料として常温での乾式粉砕により製造されることを特徴とする感熱記録体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字濃度、印字画質、捺印性、擦過性、画像部の耐水性、耐可塑剤性に優れた感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱記録体は通常無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料(以下、「ロイコ染料」ともいう)とフェノール性化合物等の電子受容性顕色剤(以下、「顕色剤」ともいう)とを、それぞれ微細な粒子に磨砕分散した後、両者を混合し、バインダー、充填剤、感度向上剤、滑剤及びその他の助剤を添加して得られた塗料を、紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗工したものであり、サーマルヘッド、ホットスタンプ、熱ペン、レーザー光などの加熱による瞬時の化学反応により発色し、記録画像が得られる。この感熱記録方式は、従来実用化された他の記録方式に比べて、記録時に騒音がない、現像定着の必要がない、メンテナンスフリーである、機器が比較的安価である、コンパクトである、得られた発色が非常に鮮明であるといった特徴があり、ファクシミリ、コンピューターの端末プリンター、自動券売機、計測用レコーダーなどに広範囲に使用されている。
【0003】
近年、各種チケット、配送伝票、請求書、領収書、レシート、ラベル、銀行のATM、ガスや電気の検針、車馬券等の金券などにも感熱記録体の用途が拡大してきており、感熱記録体に対する要求品質もより高度なものになってきている。
例えば、感熱記録体が含有する前記ロイコ染料及び顕色剤は各種溶剤に容易に溶解し、またインキ(水性、油性)、接着剤などに含まれる可塑剤とも容易に反応する。これらが感熱記録体に触れると、白紙部の発色、印字画像の消色、発色濃度の低下などの問題が発生する。また雨などの水分や湿気、日光、真夏の車内の高温状態など過酷な環境下に置かれた場合も、同様な問題が発生しやすい。
特にチケット、金券など長期間保存する用途や、ガスや電気の検針用など屋外で使用する用途においては、前記問題が発生しない、すなわち各種保存性(耐溶剤性、耐可塑剤性、耐水性など)が高いことや、擦れによる発色が発生しないこと(耐擦過性)が要求される。さらに、配送伝票、請求書、領収書などでは、前記保存性に加え、捺印性が求められている。
【0004】
これらの要求に対し、一般的に、感熱記録体の各種保存性や耐擦過性を向上させる方法として、感熱記録層の上に保護層を設ける方法が知られている。また、特許文献1および特許文献2には、特定の顕色剤や特定の安定剤を使用して保存性を向上させた感熱記録体、特許文献3には、特定の増感剤と特定の安定剤を組み合わせて使用して保存性を向上させた感熱記録体、特許文献4には、保護層中のポリビニルアルコールや澱粉などの水溶性高分子をグリオキザールなどの架橋剤により架橋して耐水性を向上させた感熱記録体、特許文献5には、アクリルエマルジョンのような疎水性樹脂エマルジョンを保護層に用いて耐水性を向上させた感熱記録体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−154760
【特許文献2】特開2001−347757
【特許文献3】WO2004/002748
【特許文献4】特開平8−230324
【特許文献5】特開平1−196389
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜特許文献5の感熱記録体は、いずれも発色濃度、保存性、耐擦過性ともにその効果は十分ではなく、特に捺印性においてその効果が不十分である。
【0007】
そこで本発明は、印字濃度、印字画質、捺印性、擦過性、画像部の耐水性、耐可塑剤性に優れた感熱記録体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、支持体上に、無色又は淡色の塩基性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する感熱記録体において、該保護層がアクリル系樹脂及び粉末セルロースを含有し、該粉末セルロースが木材パルプまたは非木材パルプを原料として常温での乾式粉砕により製造される感熱記録体によって達成された。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印字濃度、印字画質、捺印性、擦過性、画像部の耐水性、耐可塑剤性に優れた感熱記録体を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
本発明の感熱記録体は、支持体上に、無色又は淡色の塩基性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する感熱記録体において、該保護層がアクリル系樹脂及び粉末セルロースを含有し、該粉末セルロースが木材パルプまたは非木材パルプを原料として常温での乾式粉砕により製造されることを特徴としている。
【0012】
本発明の感熱記録体が優れた品質を有する理由は、次のように推測される。まず、本発明の保護層はアクリル系樹脂を含有する。アクリル系樹脂は、耐熱性、耐擦過性、耐可塑剤性に優れると共に、疎水性を有するため耐水性に優れる。感熱記録層上にアクリル系樹脂を含有する保護層を設けることにより、耐熱性、耐擦過性、耐可塑剤性、耐水性に優れた感熱記録体が得られる。
一方、感熱記録層上に保護層を設けると、捺印時に使用するインキの吸収速度が低下するため、滲みが発生する、擦れにより印影(文字)がかすれるなど捺印性が劣る傾向が見られる。特にアクリル系樹脂は疎水性を有するため、水性インキを用いた場合に特に捺印性が劣るが、本発明では支持体上に前記アクリル系樹脂を含有する保護層を設けても捺印性が良好である。
【0013】
本発明の保護層は、アクリル系樹脂と共に木材パルプまたは非木材パルプを原料として常温での乾式粉砕により製造される粉末セルロースを含有する。該粉末セルロースは、木材パルプや非木材パルプを酸加水分解した後、濾過、水洗、脱水、乾燥、粉砕、篩別といった工程を経て製造されたものであり、乾燥後に常温で粉砕(即ち、常温での乾式粉砕)されている点を特徴とする。木材パルプとは、針葉樹あるいは広葉樹を原料とした木材繊維由来のパルプのことをいい、非木材パルプとは、楮、三椏、ガンピ、亜麻、大麻、ケナフ、マニラ麻、アバカ、サイザル麻、わら(稲、麦)さとうきびバガス、竹、エスパルト、綿、リンターなどを原料とした木材繊維以外の繊維由来のパルプのことをいう。本発明における乾式粉砕とは、乾燥させたパルプを高圧下で処理し、特に加熱も冷却もせず常温で、ジェットミルを用いて空中でパルプ同士を衝突させ、この衝突の際に発生する摩擦力によってパルプを粉砕する方法である。このジェットミルによる粉砕は温度上昇がほとんど無く、かつこの摩擦力は、一般に行なわれている水中でビーズとパルプを処理(即ち、湿式粉砕)する際に、パルプとビーズとの間で発生する衝突力に比べて小さい。このため、前記常温での乾式粉砕により製造される粉末セルロースは、導管由来のパルプの内部空隙を存在させた状態でパルプが粉砕され、パルプ表面が毛羽立ったものになると考えられる。
【0014】
前記粉末セルロースは、無機顔料と同様に粉末セルロース自身が持つ空隙にインキを吸収、定着させると共に、粉末セルロースを構成しているセルロース繊維間の毛細管現象によりインキを吸収する。本発明の保護層は前記粉末セルロースを含有するため、アクリル系樹脂を含有してもインキ吸収速度が速く、優れた捺印性が発現する。
また、前記粉末セルロースは、上記のような製造上の特徴から、セルロースの中心繊維から外に伸びる、より細い繊維やその表面の毛羽立ちを有する。これらの繊維や毛羽立ちが絡み合うため、アクリル系樹脂と共に前記粉末セルロースを含有する本発明の保護層は、特に層強度が強固となり、耐擦過性がさらに向上するものと推測される。
さらに、前記粉末セルロースは、シリカや炭酸カルシウムなどの無機顔料と比較すると、同じ層に添加されるバインダーなどとの屈折率の差が小さく、内部散乱(内部ヘイズ)が起こりにくい。そのため、前記粉末セルロースを含有する保護層は、無機顔料を含有する保護層と比較して良好な印字濃度、印字画質が得られる。
【0015】
前記常温での乾式粉砕により製造される粉末セルロースの例としては、NPファイバーを冠した粉末セルロース製品(日本製紙ケミカル社製)、具体的には、NPファイバーW−06MG(平均粒子径6μm)、NPファイバーW−10MG2(平均粒子径10μm)、NPファイバーW−300F(平均粒子径28μm)などや、KCフロックを冠した粉末セルロース製品(日本製紙ケミカル社製)、具体的にはKCフロックW−50(平均粒子径45μm)、KCフロックW−100G(平均粒子径37μm)、KCフロックW−200G(平均粒子径32μm)、KCフロックW−250(平均粒子径30μm)、KCフロックW−300G(平均粒子径28μm)、KCフロックW−400G(平均粒子径24μm)などを挙げることが可能である。また、これらの粉末セルロースをさらに常温で乾式粉砕して得られる粉末セルロースであっても良い。
ここで平均粒子径とは、粒子を径により2つに区分した際、大きい側と小さい側の粒子が等量(体積基準)となるメジアン径d50で示され、レーザー回折・散乱法によって測定することができる。
【0016】
前記粉末セルロースの平均粒子径は5μm〜15μmが好ましく、5.5μm〜11.5μmがより好ましい。平均粒子径が5μm未満であると、粉末セルロースを構成しているセルロース繊維間が潰れるため、十分な捺印性が得られないことがある。また、本発明のように乾燥させたパルプを高圧下で処理する場合、平均粒子径を5μm未満にすることは、技術的に困難でもある。一方、平均粒子径が大きくなると捺印性は向上するが、サーマルプリンタで印字したときの印字濃度や印字画質が低下する傾向が見られる。
【0017】
前記粉末セルロースの吸油量は100〜300ml/100gが好ましく、見かけ比容は0.3〜0.6g/cmが好ましい。吸油量および見かけ比容が前記範囲であると、特に捺印性が良好であるため好ましい。なお、吸油量はJIS K5101−13−2(煮あまに油法)に準じて、見かけ比容はJIS K5101−12−2(タンプ法)に準じて、それぞれ測定することができる。
【0018】
本発明の保護層中の前記粉末セルロースの含有率は、保護層の全固形分に対して10重量%以上80重量%未満が好ましく、20重量%以上50重量%未満がより好ましく、30重量%以上45重量%未満が特に好ましい。保護層中の前記粉末セルロースの含有率が10重量%未満であると、捺印性が不十分となることがある。また、含有率が80重量%以上であると、印字濃度や印字画質が低下する可能性がある。
【0019】
前記常温での乾式粉砕により得られる粉末セルロース以外の粉末セルロースとしては、例えば、セルロースを凍結乾燥させて粉砕する(特開昭54−128349等)、セルロースの弾性を極力小さくした状態で機械式粉砕機により粉砕するなどの方法により得られる粉末セルロースを挙げることが可能であるが、これらは単にセルロースが微小化されるだけで、前記粉末セルロースのような形状にはならない。また、ビスコース等を炭酸ガスで発泡させた多孔性セルロース(特開平5−139033、特開2001−323095等)は、気泡を内包したフォーム状であり、前記粉末セルロースのような形状にはならない。そのため、これらの粉末セルロースや多孔性セルロースを前記アクリル系樹脂と共に保護層に含有させても、捺印性が劣ると共に、擦過性のさらなる向上は見られない。
【0020】
本発明の保護層は、前記粉末セルロースと共にアクリル系樹脂を含有する。該アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分を含み、(メタ)アクリル酸がアクリル系樹脂100重量部中1〜10重量部であることが好ましい。(メタ)アクリル酸は、アルカリ可溶性であり、中和剤の添加によりアクリル系樹脂を水溶性樹脂にする特性を有している。アクリル系樹脂を水溶性樹脂に変化させることによって、特に保護層中に顔料を含有する場合、顔料への結合性が著しく向上し、多量の顔料含有下でも優れた強度を有する保護層を形成することができる。(メタ)アクリル酸と共重合可能な成分としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどのアクリル酸アルキル樹脂及びエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、スチレン又はその誘導体によって変性された上記アクリル酸アルキル樹脂などの変性アクリル酸アルキル樹脂、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキルアクリル酸エステルを例示できるが、特に(メタ)アクリロニトリル及び/又はメタクリル酸メチルを配合することが好ましい。(メタ)アクリロニトリルはアクリル系樹脂100部中15〜70部配合することが好ましい。また、メタクリル酸メチルはアクリル系樹脂100部中20〜80部含むことが好ましい。(メタ)アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルを含む場合、(メタ)アクリロニトリルをアクリル系樹脂100部中15〜18部、メタクリル酸メチルをアクリル系樹脂100部中20〜80部配合することが好ましい。
【0021】
本発明において、前記アクリル系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が30℃より高く130℃以下であることが好ましく、Tgが50℃より高く95℃以下であることがより好ましい。Tgが30℃以下であると、耐水性は十分であるが、耐熱性が十分でないおそれがある。一方、Tgが高いと耐熱性、耐擦過性は向上する傾向が見られるが、Tgが130℃より高いと保護層が脆くなり、耐水性、耐可塑剤性や耐溶剤性が十分ではなくなるなど、目的とする効果が得られない場合がある。なお、アクリル系樹脂のTgは示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。
【0022】
本発明において、前記アクリル系樹脂は、非コアシェル型であることが好ましい。一般に、コアシェル型アクリル系樹脂は、非コアシェル型アクリル系樹脂に比べて、耐熱性が優れるため多用されている。しかし、コアシェル型アクリル系樹脂のシェル部は通常熱伝導性が低いため、印字濃度が低いという欠点も併せ持っている。一方、通常の非コアシェル型アクリル系樹脂は耐熱性が劣る欠点を持っていたが、本願発明で使用するTgが30℃より高く130℃以下である非コアシェル型アクリル系樹脂は、印字濃度、耐熱性共に良好であるので好ましい。
【0023】
本発明の保護層中の前記アクリル系樹脂の含有率は、保護層の全固形分に対して20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上が特に好ましい。保護層中の前記アクリル系樹脂の含有率が20重量%未満であると、耐熱性、耐擦過性、耐可塑剤性、耐水性が不十分となることがある。
【0024】
本発明の保護層は、前記粉末セルロースおよび前記アクリル系樹脂と共に、上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、公知の各種顔料を含有することが可能である。また、上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、公知の各種バインダーを含有することも可能である。
【0025】
本発明の保護層が含有する前記顔料の例としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウムなどの無機または有機充填剤を挙げることが可能である。サーマルヘッドの摩耗性などを考慮した場合、カオリン、焼成カオリン、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0026】
本発明の保護層が含有する前記バインダーの例としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体並びにエチルセルロース、アセチルセルロースのようなセルロース誘導体、カゼイン、アラビヤゴム、酸化澱粉、エーテル化澱粉、ジアルデヒド澱粉、エステル化澱粉、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロースおよびそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂などをを挙げることが可能である。これらのバインダーは、水、アルコール、ケトン類、エステル類、炭化水素などの溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することも出来る。
【0027】
本発明の保護層の塗工量は特に限定されないが、固形分で0.5〜5.0g/mの範囲、より好ましくは0.5〜3.0g/mの範囲とすると、特に良好な印字濃度、印字画質が得られるため好ましい。
【0028】
次に、本発明の感熱記録体の感熱記録層で使用される各種材料を例示するが、バインダー、架橋剤、顔料などは上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて設けられた各塗工層にも使用することができる。
【0029】
本発明の感熱記録体に使用可能なロイコ染料としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙分野で公知のものは全て使用可能であり、特に制限されるものではないが、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系、ジビニル系化合物等が好ましい。以下に代表的な無色ないし淡色の染料(染料前駆体)の具体例を示す。また、これらの染料前駆体は単独または2種以上混合して使用してもよい。
<トリフェニルメタン系ロイコ染料>
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド〔別名クリスタルバイオレットラクトン〕、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド〔別名マラカイトグリーンラクトン〕
<フルオラン系ロイコ染料>
3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−メチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−p−メチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−ベンゾ〔a〕フルオラン、3−ジエチルアミノ−ベンゾ〔c〕フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−p−メチルアニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−キシルアミノ)−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイディノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−エトキシプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、2−(4−オキサヘキシル)−3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(4−オキサヘキシル)−3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(4−オキサヘキシル)−3−ジプロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2−メトキシ−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2−クロロ−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2−ニトロ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2−アミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2−フェニル−6−メチル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2−ベンジル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2−ヒドロキシ−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2,4−ジメチル−6−〔(4−ジメチルアミノ)アニリノ〕−フルオラン
<フルオレン系ロイコ染料>
3,6,6'−トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3'−フタリド〕、3,6,6'−トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3'−フタリド〕、
<ジビニル系ロイコ染料>
3,3−ビス−〔2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3,3−ビス−〔2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス−〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3,3−ビス−〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド
<その他>
3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−シクロヘキシルエチルアミノ−2−メトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(3'−ニトロ)アニリノラクタム、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオ
ラン−γ−(4'−ニトロ)アニリノラクタム、1,1−ビス−〔2',2',2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2,2−ジニトリルエタン、1,1−ビス−〔2',2',2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2−β−ナフトイルエタン、1,1−ビス−〔2',2',2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2,2−ジアセチルエタン、ビス−〔2,2,2',2'−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−メチルマロン酸ジメチルエステル
【0030】
本発明の感熱記録体で使用可能な顕色剤としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙の分野で公知のものがすべて使用可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウムなどの無機酸性物質、4,4'−イソプロピリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−n−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−4'−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシフェニル−4'−ベンジルオキシフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−4'−メチルフェニルスルホン、特開平8−59603号公報記載のアミノベンゼンスルホンアミド誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3−ビス[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、2,2'−チオビス(3−tert−オクチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−tert−オクチルフェノール)、WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物等のフェノール性化合物、WO02/081229号あるいは特開2002−301873号公報記載の化合物、またN,N'−ジ−m−クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、p−クロロ安息香酸、没食子酸ステアリル、ビス[4−(n−オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]2水和物、4−[2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、4−[3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸、5−[p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸の芳香族カルボン酸、およびこれらの芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属塩との塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等が挙げられる。WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物は、日本曹達(株)製商品名D−90として入手可能である。また、WO02/081229号等に記載の化合物は、日本曹達(株)製商品名NKK−395、D−100として入手可能である。この他、特開平10−258577号公報記載の高級脂肪酸金属複塩や多価ヒドロキシ芳香族化合物などの金属キレート型発色成分を含有することもできる。これらの顕色剤は、単独または2種以上混合して使用することもできる。
【0031】
本発明の感熱記録体で使用可能な増感剤としては、従来公知の増感剤を使用することができる。かかる増感剤としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アマイド、エチレンビスアミド、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、β−ベンジルオキシナフタレン、4−ビフェニル−p−トリルエーテル、m−ターフェニル、1,2−ジフェノキシエタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(p−クロロベンジル)、シュウ酸ジ(p−メチルベンジル)、テレフタル酸ジベンジル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−α−ナフチルカーボネート、1,4−ジエトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、o−キシレン−ビス−(フェニルエーテル)、4−(m−メチルフェノキシメチル)ビフェニル、4,4'−エチレンジオキシ−ビス−安息香酸ジベンジルエステル、ジベンゾイルオキシメタン、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エチレン、ビス[2−(4−メトキシ−フェノキシ)エチル]エーテル、p−ニトロ安息香酸メチル、p−トルエンスルホン酸フェニルなどを例示することができるが、特にこれらに制限されるものではない。これらの増感剤は、単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0032】
本発明の感熱記録体で使用可能なバインダーとしては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体並びにエチルセルロース、アセチルセルロースのようなセルロース誘導体、カゼイン、アラビヤゴム、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロースおよびそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂などを例示することができる。これらの高分子物質は水、アルコール、ケトン類、エステル類、炭化水素などの溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することも出来る。
【0033】
本発明の感熱記録体で使用可能な架橋剤としては、グリオキザール、メチロールメラミン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、ホウ砂、ホウ酸、ミョウバン、塩化アンモニウムなどを例示することができる。
【0034】
本発明の感熱記録体で使用可能な顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウムなどの無機または有機充填剤などが挙げられる。
【0035】
本発明の感熱記録体で使用可能な滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ワックス類、シリコーン樹脂類などが挙げられる。
【0036】
また、本発明においては、上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、記録画像の耐油性効果などを示す画像安定剤として、4,4'−ブチリデン(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチル−4,4'−スルホニルジフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4−ベンジルオキシ−4'−(2,3−エポキシ−2−メチルプロポキシ)ジフェニルスルホン等を添加することもできる。
その他、ベンゾフェノン系やトリアゾール系の紫外線吸収剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料等を使用することができる。
【0037】
本発明の感熱記録体の感熱記録層に使用するロイコ染料、顕色剤、増感剤並びに必要に応じて添加する材料は、ボールミル、アトライター、サンドグライダーなどの粉砕機あるいは適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒子径になるまで微粒化し、バインダーおよび目的に応じて各種の添加材料を加えて塗工液とする。前記材料の量は、要求される性能および記録適性に従って決定され特に限定されるものではないが、ロイコ染料1重量部に対し顕色剤0.5〜10重量部、増感剤0.5〜10重量部程度であることが好ましい。
【0038】
本発明においては、紙、再生紙、合成紙、フィルム、プラスチックフィルム、発泡プラスチックフィルム、不織布、およびこれらを組み合わせた複合シート等の任意の支持体に、上記組成からなる感熱記録層、前記保護層を順次塗工、乾燥することにより、目的とする感熱記録体が得られる。前記感熱記録層の塗工量は特に限定されないが、固形分で2.0〜12.0g/mの範囲とすることが好ましい。
【0039】
本発明の感熱記録体は、印字濃度を高めるなどを目的として、感熱記録層の下に前記顔料及びバインダーなどを含有する下塗層を設けることもできる。また、支持体の感熱記録層とは反対の面にバックコート層を設け、カールの矯正を図ることも可能である。
前記下塗層の塗工量は特に限定されないが、固形分で2.0〜20.0g/mの範囲とすることが好ましい。
下塗層、バックコート層等、前記必要に応じて設ける各塗工層の塗工方法は特に限定されるものではなく、周知慣用技術に従って塗工することができる。前記必要に応じて設ける各塗工層の塗工方法としては、エアーナイフ法、ロッドブレード法、ベントブレード法、ベベルブレード法、ロール法、スロット型カーテン法、スライド型カーテン法、スライドホッパー型カーテン法、ビード型カーテン法、スプレー法、ダイ法などを例示することが可能であり、これらの塗工方法から適宜選択され使用される。
また、各層の塗工後にスーパーカレンダー掛けなどの平滑化処理を施すなど、感熱記録体分野における各種公知の技術を必要適宜付加することができる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の感熱記録体を実施例および比較例によって説明する。なお説明中、部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。平均粒子径はレーザー回折・散乱法(Malvern社製、Mastersizer S使用)により測定した。吸油量はJIS K5101−13−2(煮あまに油法)に準じて、見かけ比容はJIS K5101−12−2(タンプ法)に準じて、それぞれ測定した。各種分散液、あるいは塗工液を以下のように調製した。
【0041】
[実施例1]
下記配合からなる配合物を攪拌分散して、下塗層塗工液を調製した。
<下塗層塗工液>
焼成カオリン(エンゲルハード社製:アンシレックス90) 100部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(日本ゼオン社製:ST5526、
固形分48%) 40部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:PVA117、
固形分10%) 30部
水 160部
【0042】
次いで、下塗層塗工液を支持体(坪量60g/mの基紙)の片面に、固形分で塗工量10.0g/mとなるようにベントブレード法で塗工した後、乾燥を行ない、下塗層塗工紙を得た。
【0043】
下記配合の顕色剤分散液(A液)、ロイコ染料分散液(B液)、および増感剤分散液(C液)を、それぞれ別々にサンドグラインダーで平均粒子径0.5ミクロンになるまで湿式磨砕を行った。
顕色剤分散液(A液)
2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:PVA117、
固形分10%) 18.8部
水 11.2部
ロイコ染料分散液(B液)
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山田化学社製:
ODB−2) 3.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:PVA117、
固形分10%) 6.9部
水 3.9部
増感剤分散液(C液)
ジフェニルスルホン 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:PVA117、
固形分10%) 18.8部
水 11.2部
【0044】
次いで、下記の割合で分散液を混合して感熱記録層塗工液を調製した。
<感熱記録層塗工液>
顕色剤分散液(A液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 13.8部
増感剤分散液(C液) 36.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:PVA117、
固形分10%) 10.0部
水 25.0部
【0045】
次いで、感熱記録層塗工液を前記下塗層塗工紙の下塗層上に、固形分で塗工量5.0g/mとなるようにロッドブレード法で塗工した後、乾燥を行い、感熱記録層塗工紙を得た。
【0046】
下記製造方法により粉末セルロース1を製造した。
<製造例1>
木材パルプ(針葉樹クラフトパルプ)10gを、1N硫酸500mlと混合し、60分間100℃のウオーターバスにて加熱して加水分解した。このパルプスラリーを300メッシュのろ布でろ過し、残渣を0.1Nアンモニア水500mlで洗浄後、水道水で十分洗浄した。得られた酸加水分解セルロースを120℃に保った送風乾燥機で12時間乾燥した。これを、常温下で乾式粉砕機(アイシンナノテクノロジーズ社製、ナノジェットマイザーNJ−300)で粉砕し、粉末セルロース1を得た。粉末セルロース1の各物性は下記のとおりであった。
<粉末セルロース1>
・平均粒子径:5.5μm
・吸油量:170ml/100g
・見かけ比容:0.50g/cm
【0047】
次いで、下記割合からなる配合物を混合して保護層塗工液1とした。
<保護層塗工液1>
非コアシェル型アクリル系樹脂(三井化学社製:ASN1004K、Tg55℃、
固形分18%) 17.8部
ステアリン酸亜鉛(中京油脂社製:ハイドリンL536、固形分40%)5.0部
界面活性剤(日信化学社製:サーフィノール104P、固形分50%) 0.1部
粉末セルロース1(10%分散液) 30.0部
水 20.0部
【0048】
次いで、保護層塗工液1を前記感熱記録層塗工紙の感熱記録層上に、固形分で塗工量2.5g/mとなるようにロッドブレード法で塗工した後、乾燥を行ない、スーパーカレンダーで保護層表面の平滑度が1000〜2000秒になるように処理して感熱記録体を作製した。
【0049】
[実施例2]
製造例1で得た粉末セルロース1に替え、下記の粉末セルロース2を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
<粉末セルロース2>
・日本製紙ケミカル社製:KCフロックW100G
・平均粒子径:37μm
・吸油量:200ml/100g
・見かけ比容:0.25g/cm
【0050】
[実施例3]
製造例1で得た粉末セルロース1に替え、下記の粉末セルロース3を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
<粉末セルロース3>
・日本製紙ケミカル社製:NPファイバーW−10MG2
・平均粒子径:10.0μm
【0051】
[実施例4]
製造例1で得た粉末セルロース1に替え、下記の粉末セルロース4を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
<粉末セルロース4>
・日本製紙ケミカル社製:NPファイバーW−06MG
・平均粒子径:6.0μm
【0052】
[比較例1]
保護層塗工液1に替え、下記の保護層塗工液2を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
<保護層塗工液2>
非コアシェル型アクリル系樹脂(三井化学社製:ASN1004K、Tg55℃、
固形分18%) 17.8部
ステアリン酸亜鉛(中京油脂社製:ハイドリンL536、固形分40%)5.0部
界面活性剤(日信化学社製:サーフィノール104P、固形分50%) 0.1部
水 23.6部
【0053】
<製造例2>
粉末セルロース(日本製紙ケミカル社製、KCフロックW100G、平均粒子径:37μm)を水に分散させ10%スラリーとした。このスラリー200ccを、容量500mLのサンドグラインダー(アシザワファインテック社製、サンドグラインダー)を使用し、粒径0.5μmの磨砕用ガラスビーズ、充填率50%の条件で、常温で2時間湿式粉砕した。その後、120℃の送風乾燥機で12時間乾燥し、粉末セルロース5を得た。粉末セルロース5の各物性は下記のとおりであった。
<粉末セルロース5>
・平均粒子径:6.0μm
・吸油量:90ml/100g
・見かけ比容:0.20g/cm
[比較例2]
製造例1で得た粉末セルロース1に替え、製造例2で得た粉末セルロース5を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0054】
[比較例3]
保護層塗工液1に替え、下記の保護層塗工液3を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
<保護層塗工液3>
非コアシェル型アクリル系樹脂(三井化学社製:ASN1004K、Tg55℃、
固形分18%) 17.8部
ステアリン酸亜鉛(中京油脂社製:ハイドリンL536、固形分40%)5.0部
界面活性剤(日信化学社製:サーフィノール104P、固形分50%) 0.1部
水酸化アルミニウム(マーティンスベルグ社製:マーティフィンOL)
50%分散液 6.0部
水 44.0部
【0055】
[比較例4]
保護層塗工液1に替え、下記の保護層塗工液4を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
<保護層塗工液4>
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:PVA117、
固形分10%) 14.0部
グリオキザール(日本合成社製:固形分40%) 4.5部
ステアリン酸亜鉛(中京油脂社製:ハイドリンL536、固形分40%)5.0部
界面活性剤(日信化学社製:サーフィノール104P、固形分50%) 0.1部
粉末セルロース1(10%分散液) 30.0部
水 19.3部
【0056】
上記の実施例及び比較例で得られた感熱記録体について次のような評価試験を行った。
<印字濃度>
作製した感熱記録体について、印字試験機(大倉電機社製:TH−PMD、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.35mJ/dotでベタ印字した。記録部の記録濃度をマクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルター使用)で測定し、印字濃度を評価した。
【0057】
<印字画質>
作製した感熱記録体について、印字試験機(大倉電機社製:TH−PMD、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.27mJ/dotでベタ印字した。印字後の画質を目視にて下記の基準で評価した。
○:全くムラが見られない。
△:僅かにムラが見られる。
×:ムラが見られる。
【0058】
<捺印性>
作製した感熱記録体に、シャチハタ印で捺印し5秒後にティシュペーパーで拭き取り、目視にて下記の基準で評価した。
◎:かすれが発生せず、印章の文字がはっきり残る。
○:かすれが若干発生するが、印章の文字の読み取りに支障はない。
△:かすれが発生するが、印章の文字を読み取ることは可能。
×:かすれが著しく発生し、印章の文字が読み取れない。
【0059】
<耐擦過性>
作製した感熱記録体について、保護層表面を1000gf/cmの荷重を加えたスチールウールで擦り、線発色を目視にて下記の基準で評価した。
○:ほとんど発色しない。
△:薄く発色する。
×:濃く発色する。
【0060】
<耐水ブロッキング性>
作製した感熱記録体について、保護層表面の上に水を10μl滴下し、保護層表面が内側になるように二つ折りにして、10gf/cmの荷重を加えて40℃、90%Rhの環境下で24時間処理した。ブロッキング(張り付き)について目視にて下記の基準で評価した。
○:ブロッキングがなく、保護層表面の剥離もない。
△:ブロッキングがわずかに発生しているが、保護層表面の剥離はない。
×:ブロッキングが発生し、保護層表面の剥離がある。
【0061】
<耐水性>
作製した感熱記録体について、印字試験機(大倉電機社製:TH−PMD、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.35mJ/dotでベタ印字した。23℃、50%Rhの環境下で24時間水浸漬処理した後、印字部の記録濃度をマクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルター使用)で測定し、処理前後の値から残存率を算出し、耐水性を評価した。
残存率(%)=(処理後の記録濃度/処理前の記録濃度)×100
【0062】
<耐可塑剤性>
作製した感熱記録体について、印字試験機(大倉電機社製:TH−PMD、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.35mJ/dotでベタ印字した。紙管に塩化ビニルラップ(三井東圧社製:ハイラップKMA)を1重に巻き付け、その上に印字部が外面となるように前記感熱記録体を置き、更にその上に前記塩化ビニルラップ塩ビラップを3重に巻き付けて固定した。23℃、50%RHの環境下で24時間処理した後、印字部の記録濃度をマクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルター使用)で測定し、処理前後の値から残存率を算出した。
残存率(%)=(処理後の記録濃度/処理前の記録濃度)×100
【0063】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、無色又は淡色の塩基性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する感熱記録体において、該保護層がアクリル系樹脂及び粉末セルロースを含有し、該粉末セルロースが木材パルプまたは非木材パルプを原料として常温での乾式粉砕により製造されることを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記粉末セルロースの平均粒子径が5μm〜15μmである請求項1に記載の感熱記録体。