感熱記録媒体、画像形成装置およびその方法
【課題】 メインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させず、しかも記録シートの管理を容易にすることができる記録シート等を提供する。
【解決手段】 像形成時には、記録シート10が温度T1で加熱され、且つ圧力P1(>通常圧力P0)が加えられて低温発色層15が発色する。次に、記録シート10が、通常圧力P0で、温度T3(>T1)で加熱され、高温発色層11が発色する。このとき、圧力P1が印加されていないため、低温発色層15は発色しない。また、熱バリア層9があるため、中温発色層7は温度T2以上にはならず、発色しない。
【解決手段】 像形成時には、記録シート10が温度T1で加熱され、且つ圧力P1(>通常圧力P0)が加えられて低温発色層15が発色する。次に、記録シート10が、通常圧力P0で、温度T3(>T1)で加熱され、高温発色層11が発色する。このとき、圧力P1が印加されていないため、低温発色層15は発色しない。また、熱バリア層9があるため、中温発色層7は温度T2以上にはならず、発色しない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録媒体、並びに当該感熱記録媒体に画像を形成する画像形成装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されているプリンタには、インクジェット方式や感熱転写方式、複写機を電子化したレーザ方式等がある。これらは、いずれもインクやインクリボン、トナーなどを紙(シート)に転写している。従って、プリントが終わると、インクやインクリボン、そしてそれらを内包した専用カートリッジ等が廃棄物となる。また、写真画質を実現するには、結局は専用紙を使う必要がある。
一方、専用の記録シートを必要とするが、インクやインクリボン、並びに専用カートリッジを廃棄しないプリンタとして、ファクシミリやバーコード印刷に用いられている感熱方式のプリンタがある。このような感熱方式で写真画質のカラー印刷を実現するためには多くの技術的困難があり、なかなか実用化されていない。
その最大の技術的障壁としては、3色3層の各発色層をサーマルヘッドの熱制御だけで独立に制御して発色させ、しかも発色する各色に濃淡を付けて濃度階調した制御が困難なためにカラー写真の画質の印刷が実現できなかった。このような中で、富士写真フィルム株式会社の特許文献1の技術的思想を基に、1996年に発売を開始した直接感熱記録方式(TA方式)が唯一の実用化例である。
【0003】
このTA方式は、シアン、マゼンダ、イエローの順に感熱発色層を基板上に積層し、最上層には耐熱性保護層を配置している。イエローとマゼンタの発色層は、ジアゾニウム塩化合物とカプラーを発色素材とし、紫外線で画像の定着が可能である。また、シアン発色層は定着の必要がないので、染料前駆体と有機酸を発色素材としている。各層のマイクロカプセルは異なる熱感度と紫外線感度を持っており、異なる熱エネルギと異なる波長の紫外線を、5回のステップに分けて与えることによって発色と定着を繰り返しながら、フルカラーのプリントを作成する。
具体的には、TA方式は、(1)イエロー画像情報で、低熱エネルギでイエロー画像を形成し、(2)波長が419nnmの紫外線を全面照射し、(3)イエロー画像を定着し、(4)マゼンタ画像を中熱エネルギで形成する(このときイエロー発色層は加熱しても発色しないため、影響を受けない)、(4)波長が365nmの紫外線を全面照射し、マゼンタ画像を定着し、(5)シアン画像を高熱エネルギで形成する。
【0004】
また、上記TA方式とは別に、3段階の圧力と3段階の温度とを組み合わせて、カプセル内のジアゾ化合物とカプセル外のカプラーとを化学反応させて発色させるシステムが特許文献2に提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−40192号公報
【特許文献2】特開平11−170692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記TA方式では、感熱発色層が紫外線で定着されるため、記録シートの保管が難しいという問題がある。
また、上述した特許文献2のシステムでは、3段階の圧力を記録シートに適切に加えて発色させる制御が困難であるという問題がある。
さらに、記録シートの薄型化、並びに画像形成工程の簡単化の要請がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するために、画像形成装置のメインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させずに簡単な制御で感熱記録媒体に画像を形成でき、しかも感熱記録媒体を容易に管理することを可能とする感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、感熱記録媒体の薄型化、並びに画像形成工程の簡単化が可能な感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するため、請求項1の発明の感熱記録媒体は、第1の温度で予め決められた圧力を受けたことを条件に発色する第1の発色要素と、前記圧力とは無関係に前記第1の温度より高い第2の温度で発色する第2の発色要素とを有する。
請求項1の発明では、第1の発色要素の発色には圧力を要するため、第1の発色要素を定着せずに、第2の温度で加熱しても第1の発色要素は発色しない。そのため、画像形成工程を簡単化できると共に、定着剤が不要であるためシートを薄型化できる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、M前記第2の温度より高い第3の温度で発色する第3の発色要素をさらに有することを特徴とする。
請求項2の発明では、3色発色でき、カラーによる画像形成が可能である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記第1の発色要素を内包した第1の発色層と、前記第2の発色要素を内包した第2の発色層と、前記第3の発色要素を内包した第3の発色層と、熱バリア層とを有し、基材上に、前記第2の発色層、前記熱バリア層、前記第3の発色層および前記第1の発色層を順に積層したことを特徴とする。
請求項3の発明では、熱バリア層を設けたことで、第3の発色層を第2の発色層に対して加熱側に配置でき、画像形成時のエネルギ効率がよい。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記第1の発色要素を内包した第1の発色層と、前記第2の発色要素を内包した第2の発色層と、前記第3の発色要素を内包した第3の発色層と、を有し、基材上に、前記第2の発色層、前記第1の発色層および前記第3の発色層を順に積層したことを特徴とする。
請求項4の発明では、第2の発色層と第3の発色層との間に第1の発色層を配置したため、第3の発色層の加熱時に、第1の発色層が熱バリアとして機能し、第2の発色層の発色を防止できる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜4の発明において、前記発色要素は、当該発色要素が内包する材料が前記発色要素外に放出し、発色要素外の物質と反応して発色する要素、あるいは前記発色要素内に、当該発色要素外の材料が、当該発色要素内に流入して、当該発色要素内の物質と反応して発色する要素であることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明の画像形成装置は、感熱記録媒体に対して画像を熱記録するサーマルヘッドと、前記感熱記録媒体に圧力を加える加圧手段と、前記サーマルヘッドが前記第1の温度で加熱した状態で前記加圧手段が所定の圧力を加えるように制御する処理と、前記加圧手段が前記圧力を加えない状態で前記サーマルヘッドが前記第1の温度より高い第2の温度で前記感熱記録媒体を加熱するように制御する処理とを行う制御手段とを有する。
請求項6の発明では、制御手段の制御に基づいて、前記サーマルヘッドが前記第1の温度で加熱した状態で前記加圧手段が所定の圧力を加える。また、前記加圧手段が前記圧力を加えない状態で前記サーマルヘッドが前記第1の温度より高い第2の温度で前記感熱記録媒体を加熱する。
【0013】
請求項7の発明の画像形成装置は、請求項6の発明において、前記サーマルヘッドと前記加圧手段とを一体的に構成し、前記感熱記録媒体に接触する前記サーマルヘッドの加熱面によって前記圧力を加えることを特徴とする。
これにより、小規模な構成で1ヘッド1パスで画像形成が可能になる。
【0014】
請求項8の発明の画像形成方法は、第1の温度で加熱した状態で感熱記録媒体に所定の圧力を加える第1の工程と、前記感熱記録媒体に前記圧力を加えないで、前記第1の温度より高い第2の温度で前記感熱記録媒体を加熱する第2の工程とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像形成装置のメインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させずに簡単な制御で感熱記録媒体に画像を形成でき、しかも記録シートを容易に管理することを可能とする感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、感熱記録媒体の薄型化、並びに画像形成工程の簡単化が可能な感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係わる記録シート、並びに当該記録シートに画像を形成するプリンタについて説明する。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
[本発明の構成との対応関係]
先ず、本実施形態の構成要素と、本発明の構成要素との対応関係を説明する。
低温発色カプセル25が本発明の第1の発色要素の一例であり、中温発色カプセル21が第2の発色要素の一例であり、高温発色カプセル23が第3の発色要素の一例である。
また、低温発色層15が本発明の第1の発色層の一例であり、中温発色層7が本発明の第2の発色層の一例であり、高温発色層11が本発明の第3の発色層の一例である。
また、熱バリア層9が、請求項3の熱バリア層の一例である。
また、図5に示すサーマルヘッド45が本発明のサーマルヘッドおよび加圧手段の一例である。また、図5に示す制御部51が、本発明の制御手段の一例である。
【0017】
[記録シート10]
先ず、本実施形態で用いられる記録シート10を説明する。
図1は、本実施形態で用いる記録シート10の断面構成図である。
図1に示すように、記録シート10は、例えば、基材5上に、中温発色層7、熱バリア層9、高温発色層11、混防止層13、低温発色層15および保護層19を順に積層している。
【0018】
記録シート10の画像形成時には、温度T1で加熱され、且つ圧力P1(>通常圧力P0)が加えられたことを条件に、低温発色層15が発色する。
次に、記録シート10が通常圧力P0において温度T3(>T1)で加熱され、高温発色層11が発色する。このとき、記録シート10には圧力P1が印加されていないため、低温発色層15は発色しない。また、熱バリア層9があるため、中温発色層7は温度T2以上にはならず、発色しない。
次に、記録シート10が、通常圧力P0において温度T2(T3>T2>T1)で加熱され、中温発色層7が発色する。
【0019】
記録シート10によれば、低温発色層15が通常圧力P0より大きい圧力P1以上でないと発色しないため、耐候性に優れている。
また、記録シート10によれば、中温発色層7を定着する必要がないため、シートを薄くできると共に、画像形成工程を簡単にできる。
なお、記録シート10は、3色発色できるため、カラー画像を形成できる。
【0020】
以下、記録シート10の各構成要素について説明する。
基材5は、例えば、ポリエステルやポリエチレンテレフタレート(PET)等によって構成される。基材5は、白色あるいは透明である。
【0021】
中温発色層7は、中温発色カプセル21、顕色剤、並びに必要に応じて塩基性物質または酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。中温発色カプセル21は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が図2に示す温度T2(例えば、160℃)である。
中温発色層7は、例えば、温度T2以上の中温状態になると、通常圧力P0においても(圧力P1を加圧しなくても)、中温発色カプセル21が内包する発色剤と中温発色層7内の顕色剤とが反応して発色する。すなわち、中温発色層7の発色に圧力条件は無い。
【0022】
中温発色カプセル21は、いわゆるマイクロカプセルであり、その壁が150〜280℃のガラス転移点を持つポリウレアあるいはポリウレタンからなる。中温発色カプセル21は、ガラス転移点前後で物質浸透(透過)性が大きくなる特性を持つ。これにより、図3(A)に示すように、温度T2未満(非中温)においては、中温発色カプセル21内に顕色剤は浸透せず、中温発色カプセル21内の発色剤は発色しない。一方、図3(B)に示すように、温度T2以上(上記中温状態)になると、圧力とは無関係に、中温発色層7内の顕色剤が中温発色カプセル21内に浸透し、当該顕色剤と中温発色カプセル21内の発色剤とが反応して色素が形成されて発色する。
【0023】
中温発色カプセル21等の本実施形態におけるマイクロカプセルの壁は、例えば、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂等の合成樹脂で形成される。具体的には、中温発色カプセル21等の壁として、メラミン−ホルムアルデヒドポリマー、尿素−ホルムアルデヒドポリマー等が用いられる。
また、マイクロカプセルの平均粒径は、例えば約3〜4μmであり、そのガラス転移点は壁の材質によって規定される。マイクロカプセルは、反応する物質を多層構造の状態で隔離しておくだけでなく、マイクロカプセルの壁を隔ててミクロンに分散して共存させることにより、数μの薄い塗布膜の中で、常温では十分に隔離性を保ちながら、加熱時に瞬時に十分な物質浸透性を持たせる機能を持つ。
【0024】
なお、中温発色カプセル21は、上記中温状態になると、その壁が溶けて、カプセル内の発色剤がカプセル外に流出して、カプセル外の顕色剤と反応して発色するように構成してもよい。
本実施形態において、発色剤と、それに反応する顕色剤との組み合わせには、例えば、ジアゾ化合物(発色剤)とカプラー(顕色剤)との組み合わせ、あるいは電子供与性無色染料(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)との組み合わせ等がある。なお、ジアゾ化合物の化学構造とカプラーの化学構造との組み合わせ、あるいは電子供与性無色染料の化学構造と電子受容性化合物の化学構造との組み合わせによって任意の色相を発色できることは公知である。
【0025】
なお、上記ジアゾ化合物は、例えば、リン酸トリクレジル等である。ジアゾ化合物は、電子供与性染色前駆体(染料前駆体)であり、塩基性雰囲気でカプラーと反応して発色する。カプラーは、例えば、レゾルシルやフロログルシンであり、塩基性雰囲気中でジアゾ化合物とカップリングして色素を形成する。塩基性雰囲気は、水難溶性か水不溶性の塩基性物質や加熱によりアルカリを発生する物質(例えば、有機アンモニウム塩)によって作られる。
また、上記電子供与性無色染料は例えばロイコ染料であり、電子受容性化合物は例えばフェノール系酸性物質である。この組み合わせでは、ロイコ染料が酸性物質である顕色剤に吸着して酸化されて発色する。
【0026】
また、上記カプラーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3ナフトエ酸アニリド等が用いられる。
また、上記電子受容性化合物としては、例えば、フェノール化合物、有機酸またはその金属塩、オキシ安息香酸エステル等の酸性物質が用いられる。
【0027】
また、本実施形態では、発色剤をマイクロカプセル内に内包する場合を例示するが、例えば、発色剤と顕色剤とをバインダ内に分散して配置し、加熱によりバインダが溶融して発色剤と顕色剤とが反応するような構成にしてもよい。
【0028】
熱バリア層9は、高温発色カプセル21と中温発色カプセル23とが混ざり合うことを防止すると共に、高温発色層11の発色時の熱によって中温発色層7が発色することを防止する。
熱バリア層9は、例えば、この層が熱溶媒を含む場合などに、加熱の際に相変化を受ける不活性材料を含む任意の材料によって構成される。熱バリア層9の代表的な材料としては、ポリ(ビニルアルコール)のようなポリマー材料が挙げられる。
【0029】
高温発色層11は、高温発色カプセル23、顕色剤、並びに必要に応じて塩基性物質あるいは酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。高温発色カプセル23は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が例えば、300〜350℃の高温である。高温発色層11は、例えば、図2に示す温度T3(例えば、330℃)以上の高温状態となると、通常圧力P0においても、高温発色層11内の顕色剤が高温発色カプセル23内に流入し、高温発色カプセル23が内包する発色剤と反応して発色する。高温発色カプセル23の発色原理は、ガラス転移点を除いて、前述した中温発色カプセル21と同じである。
【0030】
混防止層13は、高温発色カプセル23と低温発色カプセル23とが混ざり合うことを防止する。
【0031】
低温発色層15は、低温発色カプセル25、顕色剤、並びに必要に応じて塩基性物質あるいは酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。低温発色カプセル25は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が例えば、90〜140℃の低温である。
低温発色カプセル25は、例えば、図2に示す温度T1(例えば、110℃)以上の低温状態で、圧力P1以上で加圧されると、低温発色層15内の顕色剤が低温発色カプセル25内に流入し、低温発色カプセル25が内包する発色剤と反応して発色する。
このように、低温発色層15が発色するには、低温状態であることに加えて、圧力P1以上の圧力が加えられていることを要する。低温発色層15の発色条件は、低温発色カプセル25のガラス転移点を規定するカプセル壁の材料と、カプセルの径および壁厚とによって決定される。低温発色カプセル25は、壁厚/径の値が大きくなるに従って、発色に要する圧力P1が大きくなる。また、低温発色カプセル25は、その壁のガラス転移点が低くなるに従って、発色に要する温度T1が低くなる。
本実施形態では、発色条件として、低温発色カプセル25は温度と圧力を条件とし、中温発色カプセル21および高温発色カプセル23は温度のみを条件とする。
【0032】
保護層19は、低温発色層15を保護するための層である。保護層19は、例えば、耐熱機能を有する。
【0033】
本実施形態において、中温発色層7、高温発色層11および低温発色層15の各々の厚みは、例えば1〜4μmである。また、熱バリア層9の厚みは例えば5〜25μmである。
各層への発色の割り当ては、例えば、中温発色層7にイエロー、低温発色抑制層15にマゼンダ、高温発色層7にシアンを割り当てる。但し、これは一例であり、割り当てパターンは任意である。
【0034】
[プリンタ40]
次に、図1に示す記録シート10に画像を形成するプリンタを説明する。
図5は、図1に示す記録シート10に画像を記録(印刷)するプリンタ40の構成図である。
図5に示すように、プリンタ40は、例えば、シート収容ケース41、シート送りローラ43、サーマルヘッド45、プラテンローラ47、シート搬出部50および制御部51を有する。
シート収容ケース41は、複数の記録シート10を収容する。シート収容ケース41に収容された記録シート10は、バネ53等の付勢手段によってシート送りローラ43に向けて押されている。
【0035】
シート送りローラ43は、シート収容ケース41の最上段の記録シート10に接触して位置する。シート送りローラ43は、制御部51からの制御信号に基づいてモータ(図示せず)によって回転駆動される。シート送りローラ43が回転すると、バネ53の付勢力により記録シート10とシート送りローラ43との間に生じた摩擦力によって、シート送りローラ43の回転に連動してシート収容ケース41の最上段の記録シート10がサーマルヘッド45に向けて搬送される。なお、制御部51は、上記制御信号に基づいて、モータ(シート送りローラ43)の回転量を制御することで、記録シート10の位置や送り量を制御する。
【0036】
記録シート10の搬送経路におけるシート送りローラ43の下流側には、サーマルヘッド45が設けられている。
図6は、サーマルヘッド45を説明するための図である。
サーマルヘッド45は、記録シート10の保護層19に接触するサーマルヘッド部545の加熱・加圧面において、記録シート10を加熱すると共に、加圧する。
図6に示すように、サーマルヘッド45は、継ぎ手520の一端にサーマルヘッド545が固定されている。継ぎ手520は、中心軸520aを中心に回転する。継ぎ手520の他端は、バネ541によって、回転軸520aを中心に継ぎ手520を半時計回りに回転する向きに付勢されている。バネ541よる付勢力は、サーマルヘッド部545の加熱面によって記録シート10等を通常圧力P0で押す力として作用する。
【0037】
継ぎ手521は、回転軸520aを中心に回転自在に設置され、一端の先端部521aが継ぎ手520の一辺に接触している。
また、継ぎ手521の他端521bは、カム530の外周に接触している。また、継ぎ手521は、バネ540の一端が固定されている。カム530が回転すると、継ぎ手521が回転軸520aを中心として、カム530の外周の段差に応じた所定の回転角度幅で時計方向および逆時計方向に交互に回転する。
このとき、継ぎ手521が時計方向に最も回転した位置において、先端部521aは継ぎ手520を押圧しない。すなわち、バネ540の付勢力は、サーマルヘッド部545には作用しない。これにより、サーマルヘッド部545の加熱面によって記録シート10に通常圧力P0が加えられる。
【0038】
一方、継ぎ手521が反時計方向に最も回転した位置において、先端部521aは継ぎ手520を押圧し、バネ540の付勢力はサーマルヘッド部545を記録シート10に押し付ける向きに作用する。これにより、サーマルヘッド部545の加熱面によって記録シート10を圧力P1(>P0)で加圧する。
サーマルヘッド45では、図5に示す制御部51が、カム530の回転を制御することで、サーマルヘッド部545の加熱面を介して記録シート10等に加える圧力を制御できる。
【0039】
サーマルヘッド部545は、複数の発熱素子を主走査方向にライン状に並べた発熱素子アレイを備えている。サーマルヘッド部545は、発熱素子アレイを記録シート10に接触した状態で、形成する画像に応じたパターンで各発熱素子を発熱させる。本実施形態では、各発熱素子は、少なくとも、非発熱状態、低温発熱状態、中温発色状態および高温発熱状態の4状態を有し、これら4状態のうち一つが制御部51によって選択される。
各発熱素子の発熱温度は、その発熱素子に接続された抵抗に電流を流す時間によって制御される。制御部51は、加熱時間に応じて、サーマルヘッド部545の各発熱素子に電流を流す時間を規定するストローブ信号のパルス幅を制御する。
なお、サーマルヘッド部545は、低温発色状態、中温発色状態および高温発色状態の各々において、画像データの諧調に応じた複数の発熱温度を調整可能にしてもよい。
【0040】
プリンタ40では、複数の加熱温度と加圧の有無を1ヘッドで実現できるため、記録シート10に1パスで画像を形成できる。すなわち、記録シート10がヘッドと1回接触して通過するだけで画像形成が可能である。これは、サーマルヘッドが高価であることから製造コストの削減に有用であると共に、小型化の要請にも応えられる。
すなわち、ライン型サーマルヘッドを1つで実現する場合には、従来のTA方式では、記録シートをサーマルヘッドに2往復半通過させるため、画像形成時間が長い。また、当該TA方式は、紫外線ランプと2種類のフィルタの切り替え手段も必要とし、プリンタが大型化してしまう。プリンタ40は、このような問題を解決できる。
【0041】
プラテンローラ47は、記録シート10の搬送経路を挟んで反対側には、サーマルヘッド45のサーマルヘッド部545が設けられている。プラテンローラ47は、記録シート10の搬送に応じて回転し、記録シート10とサーマルヘッド部545の発熱素子との接触状態を安定にする。
【0042】
シート搬出部50は、発色を終えた記録シート10を外部に搬出する。
【0043】
制御部51は、例えば、マイクロコンピュータ等の電子回路であり、プリンタ40の動作を統括的に制御する。
【0044】
以下、図5〜図8を参照して、プリンタ40の動作例を説明する。
図8は、図1に示す記録シート10に画像を形成する図5等に示すプリンタ40の動作例を説明ためのフローチャートである。
図8に示す各ステップは、制御部51によって統括的に制御される。
【0045】
ステップST0:
図5に示すプリンタのシート収容ケース41に、複数枚の記録シート10を収容する。シート収容ケース41に収容された記録シート10は、バネ53の付勢力によって紙送りローラ43に向けて押され、最上段の記録シート10と紙送りローラ43との間に摩擦力が生じている。
【0046】
ステップST1:
制御部51からの制御に基づいてシート送りローラ43が回転し、シート収容ケース41の最上段に収容された記録シート10がサーマルヘッド45に向けて搬送される。
【0047】
ステップST2:
制御部51からの制御に基づいて図6に示すカム530が回転し、継ぎ手521が反時計方向に最も回転した位置になる。これにより、サーマルヘッド部545によって圧力P1が記録シート10に加わる。
この状態で、制御部51からの制御に基づいて、サーマルヘッド部545の各発熱素子が、記録シート10に形成する画像の低温発色成分に応じた画素パターンで低温発熱する。これにより、記録シート10の低温発色層15が、画像情報に対応した低温発色成分の画素パターンで、図2に示す温度T1で低温加熱され、低温加熱された位置の低温発色カプセル27内の発色剤とその周囲に顕色剤とが反応して発色(低温発色)する。
【0048】
ステップST3:
ステップST2に続いて、制御部51からの制御に基づいてカム530が回転し、記録シート10に加えられる圧力は通常圧力P0となる。
また、サーマルヘッド45が、記録シート10に形成する画像の高温発色成分に応じた画素パターンでサーマルヘッド部545の各発熱素子を高温に短時間発熱させる。これにより、記録シート10の高温発色層11が、画像情報に対応した高温発色成分の画素パターンで、図2に示す温度T3で短時間高温加熱され、高温加熱された位置の高温発色カプセル21内の発色剤とその周囲に顕色剤とが反応して発色(高温発色)する。
本実施形態では、高温発色層11は、温度T3以上で短時間以上加熱されたことを条件に発色する。
このとき、記録シート10には圧力P1が加えられていないため低温発色層15は発色しない。また、熱バリア層9があるため、中温発色層7は発色しない。
【0049】
ステップST4:
ステップST3に続いて、記録シート10に加えられる圧力を通常圧力P0とした状態で、サーマルヘッド45が、記録シート10に形成する画像の中温発色成分に応じた画素パターンでサーマルヘッド部545の各発熱素子を中温に中時間発熱させる。これにより、記録シート10の中温発色層7が、画像情報に対応した中温発色成分の画素パターンで、図2に示す温度T2で中時間中温加熱され、中温加熱された位置の中温発色カプセル21内の発色剤とその周囲に顕色剤とが反応して発色(中温発色)する。本実施形態において、上記中時間は上記短時間より長い概念である。また、中温発色層7は、温度T2以上で中時間以上加熱されたことを条件で発色する。
【0050】
上記ステップST2〜ST4の動作は、図7(A)に示すように、図5の構成のプリンタのサーマルヘッド45において1ヘッドで温度と時間を制御することにより、連続して行うことができる。
【0051】
ステップST5:
制御部51からの制御に基づいてプラテンローラ47が回転し、図7(B)に示すように、記録シート10が図5中右側のシート搬出部50に向けて搬送される。
【0052】
以上説明したように、記録シート10を用いることで、プリンタ40は、カートリッジ等の廃棄物を発生させずに簡単な制御で記録シート10に画像を形成できる。そのため、プリンタ40のメインテナンスが容易になる。
また、記録シート10の低温発色層15は、温度T1で加熱され、且つ圧力P1(>通常圧力P0)が加えられたことを条件に発色する。そのため、低温発色層15は、耐候性に優れている。また、低温発色層15は定着が不要であるため、記録シート10内に定着層を設ける必要が無くシートの薄型化が図れる。さらに、画像形成時に低温発色層15の定着工程が不要であるため、画像形成を簡単なプリンタ構成で、且つ短時間で行うことができる。すなわち、記録シート10によれば、3層うち1層を圧力で発色させ、2層を時間と熱とで制御して発色させるので、3層全てを熱と時間で制御するよりも制御が容易である。
【0053】
また、本実施形態のプリンタ40によれば、図5および図6に示すサーマルヘッド45を用いることで、1ヘッドで温度、圧力および時間を制御することで連続して画像を形成できる。
【0054】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態の図5および図6等で説明したプリンタ40は、サーマルヘッド部545の記録シート10への接触面が、加熱面と加圧面を兼ねる場合を例示したが、本実施形態では、加熱機構と加圧機構とを個別に設ける。
図9は、本実施形態に係わるプリンタの部分構成図である。
図9に示すように、本プリンタは、回転軸204を中心に回転するプラテンローラ202を有する。
プラテンローラ202は、記録シート10の基材5の表面と接触ながら、回転軸204を中心に回転する。
加圧部206は、プラテンローラ202を図9中矢印の向きに移動し、記録シート10の記録面の加圧状態を切り換える。具体的には、第1実施形態の場合には、加圧部206は、図2に示す通常圧力P0と圧力P1とのいずれかの状態で記録シート10を加圧する。
【0055】
プラテンローラ202に対して、記録シート10と反対側には、複数の発熱素子210がライン状に配置されている。
図9に示すプリンタでは、例えば、記録シート10の保護層19側が発熱素子210に接触し、基材5がプラテンローラ202に接触するように、記録シート10を搬送する。
図9に示すプリンタでは、図8に示すステップST2において加圧部206によって記録シート10に圧力P1を加え、ステップST3,ST4では記録シート10に通常圧力P0を加えるように制御する。
また、発熱素子210は、図8に示すステップST2において低温発熱し、ステップST3において高温発熱し、ステップST4において中温発熱する。
図9に示すプリンタによっても、記録シート10にカラー画像を形成できる。
【0056】
<第3実施形態>
上述した第1実施形態では、図1に示すように低温発色層15を保護層19側に配置した場合を例示したが、本実施形態の記録シート110では、図10に示すように、基材5上に中温発色層7、低温発色層15および高温発色層11を順に積層する。
ここで、基材5、中温発色層7、低温発色層15および高温発色層11は、第1実施形態で説明したものと同じである。
図10に示す記録シート110によれば、高温発色層11の高温発色時に、低温発色層15が熱バリアとして機能するため、第1実施形態で必要だった熱バリア層を個別に設ける必要がない。そのため、記録シート110は、薄型化が可能である。
【0057】
<変形例>
上述した第1実施形態では、図8に示すように、低温発色層15を低温発色した後に、高温発色層11を高温発色させ、その後、中温発色層7を中温発色させたが、高温発色層11に先立って中温発色層7を発色させてもよい。
また、低温発色層15の発色処理を、高温発色層11あるいは中温発色層7の発色処理の後に行ってもよい。
【0058】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
例えば、上述した実施形態では、記録シートを3色に発色させて記録を行う場合を例示したが、記録シートに4色以上に発色させて記録を行ってもよい。例えば、イエロー、シアンおよびマゼンダの3色に、ブラックを加えて4色で記録シートを発色させてもよいし、ライトシアンおよびライトマゼンダを加えて5色で記録シートを発色させてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、本発明の感熱記録媒体として記録シートを例示したが、本発明の感熱記録媒体の形状はシート状以外でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、感熱記録媒体に記録を行うシステムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の記録シートの構成図である。
【図2】図2は、図1に示す記録シート内の高温発色カプセル、低温発色カプセルおよび中温発色カプセルの特性を説明ための図である。
【図3】図3は、図1に示す中温発色カプセルおよび高温発色カプセルの発色原理を説明ための図である。
【図4】図4は、図1に示す低温発色カプセルの発色原理を説明ための図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態のプリンタを説明ための図である。
【図6】図6は、図5に示すプリンタのサーマルヘッドを説明ための図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態のプリンタの画像形成動作を説明ための図5の続きの図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態のプリンタの画像形成動作を説明ためのフローチャートである。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態のプリンタの部分構成図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態に係わる記録シートの構成図である。
【符号の説明】
【0062】
10,110‥記録シート、5‥基材、7‥中温発色層、9‥熱バリア層、11‥高温発色層、13‥混防止層、15‥低温発色層、19‥保護層、21‥中温発色カプセル、23‥高温発色カプセル、25‥低温発色カプセル、41‥シート収容ケース、43‥シート送りローラ、45‥サーマルヘッド、47‥プラテンローラ、204‥プラテンローラ、206‥加圧部、210‥発熱素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録媒体、並びに当該感熱記録媒体に画像を形成する画像形成装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されているプリンタには、インクジェット方式や感熱転写方式、複写機を電子化したレーザ方式等がある。これらは、いずれもインクやインクリボン、トナーなどを紙(シート)に転写している。従って、プリントが終わると、インクやインクリボン、そしてそれらを内包した専用カートリッジ等が廃棄物となる。また、写真画質を実現するには、結局は専用紙を使う必要がある。
一方、専用の記録シートを必要とするが、インクやインクリボン、並びに専用カートリッジを廃棄しないプリンタとして、ファクシミリやバーコード印刷に用いられている感熱方式のプリンタがある。このような感熱方式で写真画質のカラー印刷を実現するためには多くの技術的困難があり、なかなか実用化されていない。
その最大の技術的障壁としては、3色3層の各発色層をサーマルヘッドの熱制御だけで独立に制御して発色させ、しかも発色する各色に濃淡を付けて濃度階調した制御が困難なためにカラー写真の画質の印刷が実現できなかった。このような中で、富士写真フィルム株式会社の特許文献1の技術的思想を基に、1996年に発売を開始した直接感熱記録方式(TA方式)が唯一の実用化例である。
【0003】
このTA方式は、シアン、マゼンダ、イエローの順に感熱発色層を基板上に積層し、最上層には耐熱性保護層を配置している。イエローとマゼンタの発色層は、ジアゾニウム塩化合物とカプラーを発色素材とし、紫外線で画像の定着が可能である。また、シアン発色層は定着の必要がないので、染料前駆体と有機酸を発色素材としている。各層のマイクロカプセルは異なる熱感度と紫外線感度を持っており、異なる熱エネルギと異なる波長の紫外線を、5回のステップに分けて与えることによって発色と定着を繰り返しながら、フルカラーのプリントを作成する。
具体的には、TA方式は、(1)イエロー画像情報で、低熱エネルギでイエロー画像を形成し、(2)波長が419nnmの紫外線を全面照射し、(3)イエロー画像を定着し、(4)マゼンタ画像を中熱エネルギで形成する(このときイエロー発色層は加熱しても発色しないため、影響を受けない)、(4)波長が365nmの紫外線を全面照射し、マゼンタ画像を定着し、(5)シアン画像を高熱エネルギで形成する。
【0004】
また、上記TA方式とは別に、3段階の圧力と3段階の温度とを組み合わせて、カプセル内のジアゾ化合物とカプセル外のカプラーとを化学反応させて発色させるシステムが特許文献2に提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−40192号公報
【特許文献2】特開平11−170692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記TA方式では、感熱発色層が紫外線で定着されるため、記録シートの保管が難しいという問題がある。
また、上述した特許文献2のシステムでは、3段階の圧力を記録シートに適切に加えて発色させる制御が困難であるという問題がある。
さらに、記録シートの薄型化、並びに画像形成工程の簡単化の要請がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するために、画像形成装置のメインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させずに簡単な制御で感熱記録媒体に画像を形成でき、しかも感熱記録媒体を容易に管理することを可能とする感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、感熱記録媒体の薄型化、並びに画像形成工程の簡単化が可能な感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するため、請求項1の発明の感熱記録媒体は、第1の温度で予め決められた圧力を受けたことを条件に発色する第1の発色要素と、前記圧力とは無関係に前記第1の温度より高い第2の温度で発色する第2の発色要素とを有する。
請求項1の発明では、第1の発色要素の発色には圧力を要するため、第1の発色要素を定着せずに、第2の温度で加熱しても第1の発色要素は発色しない。そのため、画像形成工程を簡単化できると共に、定着剤が不要であるためシートを薄型化できる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、M前記第2の温度より高い第3の温度で発色する第3の発色要素をさらに有することを特徴とする。
請求項2の発明では、3色発色でき、カラーによる画像形成が可能である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記第1の発色要素を内包した第1の発色層と、前記第2の発色要素を内包した第2の発色層と、前記第3の発色要素を内包した第3の発色層と、熱バリア層とを有し、基材上に、前記第2の発色層、前記熱バリア層、前記第3の発色層および前記第1の発色層を順に積層したことを特徴とする。
請求項3の発明では、熱バリア層を設けたことで、第3の発色層を第2の発色層に対して加熱側に配置でき、画像形成時のエネルギ効率がよい。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記第1の発色要素を内包した第1の発色層と、前記第2の発色要素を内包した第2の発色層と、前記第3の発色要素を内包した第3の発色層と、を有し、基材上に、前記第2の発色層、前記第1の発色層および前記第3の発色層を順に積層したことを特徴とする。
請求項4の発明では、第2の発色層と第3の発色層との間に第1の発色層を配置したため、第3の発色層の加熱時に、第1の発色層が熱バリアとして機能し、第2の発色層の発色を防止できる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜4の発明において、前記発色要素は、当該発色要素が内包する材料が前記発色要素外に放出し、発色要素外の物質と反応して発色する要素、あるいは前記発色要素内に、当該発色要素外の材料が、当該発色要素内に流入して、当該発色要素内の物質と反応して発色する要素であることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明の画像形成装置は、感熱記録媒体に対して画像を熱記録するサーマルヘッドと、前記感熱記録媒体に圧力を加える加圧手段と、前記サーマルヘッドが前記第1の温度で加熱した状態で前記加圧手段が所定の圧力を加えるように制御する処理と、前記加圧手段が前記圧力を加えない状態で前記サーマルヘッドが前記第1の温度より高い第2の温度で前記感熱記録媒体を加熱するように制御する処理とを行う制御手段とを有する。
請求項6の発明では、制御手段の制御に基づいて、前記サーマルヘッドが前記第1の温度で加熱した状態で前記加圧手段が所定の圧力を加える。また、前記加圧手段が前記圧力を加えない状態で前記サーマルヘッドが前記第1の温度より高い第2の温度で前記感熱記録媒体を加熱する。
【0013】
請求項7の発明の画像形成装置は、請求項6の発明において、前記サーマルヘッドと前記加圧手段とを一体的に構成し、前記感熱記録媒体に接触する前記サーマルヘッドの加熱面によって前記圧力を加えることを特徴とする。
これにより、小規模な構成で1ヘッド1パスで画像形成が可能になる。
【0014】
請求項8の発明の画像形成方法は、第1の温度で加熱した状態で感熱記録媒体に所定の圧力を加える第1の工程と、前記感熱記録媒体に前記圧力を加えないで、前記第1の温度より高い第2の温度で前記感熱記録媒体を加熱する第2の工程とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像形成装置のメインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させずに簡単な制御で感熱記録媒体に画像を形成でき、しかも記録シートを容易に管理することを可能とする感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、感熱記録媒体の薄型化、並びに画像形成工程の簡単化が可能な感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係わる記録シート、並びに当該記録シートに画像を形成するプリンタについて説明する。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
[本発明の構成との対応関係]
先ず、本実施形態の構成要素と、本発明の構成要素との対応関係を説明する。
低温発色カプセル25が本発明の第1の発色要素の一例であり、中温発色カプセル21が第2の発色要素の一例であり、高温発色カプセル23が第3の発色要素の一例である。
また、低温発色層15が本発明の第1の発色層の一例であり、中温発色層7が本発明の第2の発色層の一例であり、高温発色層11が本発明の第3の発色層の一例である。
また、熱バリア層9が、請求項3の熱バリア層の一例である。
また、図5に示すサーマルヘッド45が本発明のサーマルヘッドおよび加圧手段の一例である。また、図5に示す制御部51が、本発明の制御手段の一例である。
【0017】
[記録シート10]
先ず、本実施形態で用いられる記録シート10を説明する。
図1は、本実施形態で用いる記録シート10の断面構成図である。
図1に示すように、記録シート10は、例えば、基材5上に、中温発色層7、熱バリア層9、高温発色層11、混防止層13、低温発色層15および保護層19を順に積層している。
【0018】
記録シート10の画像形成時には、温度T1で加熱され、且つ圧力P1(>通常圧力P0)が加えられたことを条件に、低温発色層15が発色する。
次に、記録シート10が通常圧力P0において温度T3(>T1)で加熱され、高温発色層11が発色する。このとき、記録シート10には圧力P1が印加されていないため、低温発色層15は発色しない。また、熱バリア層9があるため、中温発色層7は温度T2以上にはならず、発色しない。
次に、記録シート10が、通常圧力P0において温度T2(T3>T2>T1)で加熱され、中温発色層7が発色する。
【0019】
記録シート10によれば、低温発色層15が通常圧力P0より大きい圧力P1以上でないと発色しないため、耐候性に優れている。
また、記録シート10によれば、中温発色層7を定着する必要がないため、シートを薄くできると共に、画像形成工程を簡単にできる。
なお、記録シート10は、3色発色できるため、カラー画像を形成できる。
【0020】
以下、記録シート10の各構成要素について説明する。
基材5は、例えば、ポリエステルやポリエチレンテレフタレート(PET)等によって構成される。基材5は、白色あるいは透明である。
【0021】
中温発色層7は、中温発色カプセル21、顕色剤、並びに必要に応じて塩基性物質または酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。中温発色カプセル21は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が図2に示す温度T2(例えば、160℃)である。
中温発色層7は、例えば、温度T2以上の中温状態になると、通常圧力P0においても(圧力P1を加圧しなくても)、中温発色カプセル21が内包する発色剤と中温発色層7内の顕色剤とが反応して発色する。すなわち、中温発色層7の発色に圧力条件は無い。
【0022】
中温発色カプセル21は、いわゆるマイクロカプセルであり、その壁が150〜280℃のガラス転移点を持つポリウレアあるいはポリウレタンからなる。中温発色カプセル21は、ガラス転移点前後で物質浸透(透過)性が大きくなる特性を持つ。これにより、図3(A)に示すように、温度T2未満(非中温)においては、中温発色カプセル21内に顕色剤は浸透せず、中温発色カプセル21内の発色剤は発色しない。一方、図3(B)に示すように、温度T2以上(上記中温状態)になると、圧力とは無関係に、中温発色層7内の顕色剤が中温発色カプセル21内に浸透し、当該顕色剤と中温発色カプセル21内の発色剤とが反応して色素が形成されて発色する。
【0023】
中温発色カプセル21等の本実施形態におけるマイクロカプセルの壁は、例えば、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂等の合成樹脂で形成される。具体的には、中温発色カプセル21等の壁として、メラミン−ホルムアルデヒドポリマー、尿素−ホルムアルデヒドポリマー等が用いられる。
また、マイクロカプセルの平均粒径は、例えば約3〜4μmであり、そのガラス転移点は壁の材質によって規定される。マイクロカプセルは、反応する物質を多層構造の状態で隔離しておくだけでなく、マイクロカプセルの壁を隔ててミクロンに分散して共存させることにより、数μの薄い塗布膜の中で、常温では十分に隔離性を保ちながら、加熱時に瞬時に十分な物質浸透性を持たせる機能を持つ。
【0024】
なお、中温発色カプセル21は、上記中温状態になると、その壁が溶けて、カプセル内の発色剤がカプセル外に流出して、カプセル外の顕色剤と反応して発色するように構成してもよい。
本実施形態において、発色剤と、それに反応する顕色剤との組み合わせには、例えば、ジアゾ化合物(発色剤)とカプラー(顕色剤)との組み合わせ、あるいは電子供与性無色染料(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)との組み合わせ等がある。なお、ジアゾ化合物の化学構造とカプラーの化学構造との組み合わせ、あるいは電子供与性無色染料の化学構造と電子受容性化合物の化学構造との組み合わせによって任意の色相を発色できることは公知である。
【0025】
なお、上記ジアゾ化合物は、例えば、リン酸トリクレジル等である。ジアゾ化合物は、電子供与性染色前駆体(染料前駆体)であり、塩基性雰囲気でカプラーと反応して発色する。カプラーは、例えば、レゾルシルやフロログルシンであり、塩基性雰囲気中でジアゾ化合物とカップリングして色素を形成する。塩基性雰囲気は、水難溶性か水不溶性の塩基性物質や加熱によりアルカリを発生する物質(例えば、有機アンモニウム塩)によって作られる。
また、上記電子供与性無色染料は例えばロイコ染料であり、電子受容性化合物は例えばフェノール系酸性物質である。この組み合わせでは、ロイコ染料が酸性物質である顕色剤に吸着して酸化されて発色する。
【0026】
また、上記カプラーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3ナフトエ酸アニリド等が用いられる。
また、上記電子受容性化合物としては、例えば、フェノール化合物、有機酸またはその金属塩、オキシ安息香酸エステル等の酸性物質が用いられる。
【0027】
また、本実施形態では、発色剤をマイクロカプセル内に内包する場合を例示するが、例えば、発色剤と顕色剤とをバインダ内に分散して配置し、加熱によりバインダが溶融して発色剤と顕色剤とが反応するような構成にしてもよい。
【0028】
熱バリア層9は、高温発色カプセル21と中温発色カプセル23とが混ざり合うことを防止すると共に、高温発色層11の発色時の熱によって中温発色層7が発色することを防止する。
熱バリア層9は、例えば、この層が熱溶媒を含む場合などに、加熱の際に相変化を受ける不活性材料を含む任意の材料によって構成される。熱バリア層9の代表的な材料としては、ポリ(ビニルアルコール)のようなポリマー材料が挙げられる。
【0029】
高温発色層11は、高温発色カプセル23、顕色剤、並びに必要に応じて塩基性物質あるいは酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。高温発色カプセル23は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が例えば、300〜350℃の高温である。高温発色層11は、例えば、図2に示す温度T3(例えば、330℃)以上の高温状態となると、通常圧力P0においても、高温発色層11内の顕色剤が高温発色カプセル23内に流入し、高温発色カプセル23が内包する発色剤と反応して発色する。高温発色カプセル23の発色原理は、ガラス転移点を除いて、前述した中温発色カプセル21と同じである。
【0030】
混防止層13は、高温発色カプセル23と低温発色カプセル23とが混ざり合うことを防止する。
【0031】
低温発色層15は、低温発色カプセル25、顕色剤、並びに必要に応じて塩基性物質あるいは酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。低温発色カプセル25は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が例えば、90〜140℃の低温である。
低温発色カプセル25は、例えば、図2に示す温度T1(例えば、110℃)以上の低温状態で、圧力P1以上で加圧されると、低温発色層15内の顕色剤が低温発色カプセル25内に流入し、低温発色カプセル25が内包する発色剤と反応して発色する。
このように、低温発色層15が発色するには、低温状態であることに加えて、圧力P1以上の圧力が加えられていることを要する。低温発色層15の発色条件は、低温発色カプセル25のガラス転移点を規定するカプセル壁の材料と、カプセルの径および壁厚とによって決定される。低温発色カプセル25は、壁厚/径の値が大きくなるに従って、発色に要する圧力P1が大きくなる。また、低温発色カプセル25は、その壁のガラス転移点が低くなるに従って、発色に要する温度T1が低くなる。
本実施形態では、発色条件として、低温発色カプセル25は温度と圧力を条件とし、中温発色カプセル21および高温発色カプセル23は温度のみを条件とする。
【0032】
保護層19は、低温発色層15を保護するための層である。保護層19は、例えば、耐熱機能を有する。
【0033】
本実施形態において、中温発色層7、高温発色層11および低温発色層15の各々の厚みは、例えば1〜4μmである。また、熱バリア層9の厚みは例えば5〜25μmである。
各層への発色の割り当ては、例えば、中温発色層7にイエロー、低温発色抑制層15にマゼンダ、高温発色層7にシアンを割り当てる。但し、これは一例であり、割り当てパターンは任意である。
【0034】
[プリンタ40]
次に、図1に示す記録シート10に画像を形成するプリンタを説明する。
図5は、図1に示す記録シート10に画像を記録(印刷)するプリンタ40の構成図である。
図5に示すように、プリンタ40は、例えば、シート収容ケース41、シート送りローラ43、サーマルヘッド45、プラテンローラ47、シート搬出部50および制御部51を有する。
シート収容ケース41は、複数の記録シート10を収容する。シート収容ケース41に収容された記録シート10は、バネ53等の付勢手段によってシート送りローラ43に向けて押されている。
【0035】
シート送りローラ43は、シート収容ケース41の最上段の記録シート10に接触して位置する。シート送りローラ43は、制御部51からの制御信号に基づいてモータ(図示せず)によって回転駆動される。シート送りローラ43が回転すると、バネ53の付勢力により記録シート10とシート送りローラ43との間に生じた摩擦力によって、シート送りローラ43の回転に連動してシート収容ケース41の最上段の記録シート10がサーマルヘッド45に向けて搬送される。なお、制御部51は、上記制御信号に基づいて、モータ(シート送りローラ43)の回転量を制御することで、記録シート10の位置や送り量を制御する。
【0036】
記録シート10の搬送経路におけるシート送りローラ43の下流側には、サーマルヘッド45が設けられている。
図6は、サーマルヘッド45を説明するための図である。
サーマルヘッド45は、記録シート10の保護層19に接触するサーマルヘッド部545の加熱・加圧面において、記録シート10を加熱すると共に、加圧する。
図6に示すように、サーマルヘッド45は、継ぎ手520の一端にサーマルヘッド545が固定されている。継ぎ手520は、中心軸520aを中心に回転する。継ぎ手520の他端は、バネ541によって、回転軸520aを中心に継ぎ手520を半時計回りに回転する向きに付勢されている。バネ541よる付勢力は、サーマルヘッド部545の加熱面によって記録シート10等を通常圧力P0で押す力として作用する。
【0037】
継ぎ手521は、回転軸520aを中心に回転自在に設置され、一端の先端部521aが継ぎ手520の一辺に接触している。
また、継ぎ手521の他端521bは、カム530の外周に接触している。また、継ぎ手521は、バネ540の一端が固定されている。カム530が回転すると、継ぎ手521が回転軸520aを中心として、カム530の外周の段差に応じた所定の回転角度幅で時計方向および逆時計方向に交互に回転する。
このとき、継ぎ手521が時計方向に最も回転した位置において、先端部521aは継ぎ手520を押圧しない。すなわち、バネ540の付勢力は、サーマルヘッド部545には作用しない。これにより、サーマルヘッド部545の加熱面によって記録シート10に通常圧力P0が加えられる。
【0038】
一方、継ぎ手521が反時計方向に最も回転した位置において、先端部521aは継ぎ手520を押圧し、バネ540の付勢力はサーマルヘッド部545を記録シート10に押し付ける向きに作用する。これにより、サーマルヘッド部545の加熱面によって記録シート10を圧力P1(>P0)で加圧する。
サーマルヘッド45では、図5に示す制御部51が、カム530の回転を制御することで、サーマルヘッド部545の加熱面を介して記録シート10等に加える圧力を制御できる。
【0039】
サーマルヘッド部545は、複数の発熱素子を主走査方向にライン状に並べた発熱素子アレイを備えている。サーマルヘッド部545は、発熱素子アレイを記録シート10に接触した状態で、形成する画像に応じたパターンで各発熱素子を発熱させる。本実施形態では、各発熱素子は、少なくとも、非発熱状態、低温発熱状態、中温発色状態および高温発熱状態の4状態を有し、これら4状態のうち一つが制御部51によって選択される。
各発熱素子の発熱温度は、その発熱素子に接続された抵抗に電流を流す時間によって制御される。制御部51は、加熱時間に応じて、サーマルヘッド部545の各発熱素子に電流を流す時間を規定するストローブ信号のパルス幅を制御する。
なお、サーマルヘッド部545は、低温発色状態、中温発色状態および高温発色状態の各々において、画像データの諧調に応じた複数の発熱温度を調整可能にしてもよい。
【0040】
プリンタ40では、複数の加熱温度と加圧の有無を1ヘッドで実現できるため、記録シート10に1パスで画像を形成できる。すなわち、記録シート10がヘッドと1回接触して通過するだけで画像形成が可能である。これは、サーマルヘッドが高価であることから製造コストの削減に有用であると共に、小型化の要請にも応えられる。
すなわち、ライン型サーマルヘッドを1つで実現する場合には、従来のTA方式では、記録シートをサーマルヘッドに2往復半通過させるため、画像形成時間が長い。また、当該TA方式は、紫外線ランプと2種類のフィルタの切り替え手段も必要とし、プリンタが大型化してしまう。プリンタ40は、このような問題を解決できる。
【0041】
プラテンローラ47は、記録シート10の搬送経路を挟んで反対側には、サーマルヘッド45のサーマルヘッド部545が設けられている。プラテンローラ47は、記録シート10の搬送に応じて回転し、記録シート10とサーマルヘッド部545の発熱素子との接触状態を安定にする。
【0042】
シート搬出部50は、発色を終えた記録シート10を外部に搬出する。
【0043】
制御部51は、例えば、マイクロコンピュータ等の電子回路であり、プリンタ40の動作を統括的に制御する。
【0044】
以下、図5〜図8を参照して、プリンタ40の動作例を説明する。
図8は、図1に示す記録シート10に画像を形成する図5等に示すプリンタ40の動作例を説明ためのフローチャートである。
図8に示す各ステップは、制御部51によって統括的に制御される。
【0045】
ステップST0:
図5に示すプリンタのシート収容ケース41に、複数枚の記録シート10を収容する。シート収容ケース41に収容された記録シート10は、バネ53の付勢力によって紙送りローラ43に向けて押され、最上段の記録シート10と紙送りローラ43との間に摩擦力が生じている。
【0046】
ステップST1:
制御部51からの制御に基づいてシート送りローラ43が回転し、シート収容ケース41の最上段に収容された記録シート10がサーマルヘッド45に向けて搬送される。
【0047】
ステップST2:
制御部51からの制御に基づいて図6に示すカム530が回転し、継ぎ手521が反時計方向に最も回転した位置になる。これにより、サーマルヘッド部545によって圧力P1が記録シート10に加わる。
この状態で、制御部51からの制御に基づいて、サーマルヘッド部545の各発熱素子が、記録シート10に形成する画像の低温発色成分に応じた画素パターンで低温発熱する。これにより、記録シート10の低温発色層15が、画像情報に対応した低温発色成分の画素パターンで、図2に示す温度T1で低温加熱され、低温加熱された位置の低温発色カプセル27内の発色剤とその周囲に顕色剤とが反応して発色(低温発色)する。
【0048】
ステップST3:
ステップST2に続いて、制御部51からの制御に基づいてカム530が回転し、記録シート10に加えられる圧力は通常圧力P0となる。
また、サーマルヘッド45が、記録シート10に形成する画像の高温発色成分に応じた画素パターンでサーマルヘッド部545の各発熱素子を高温に短時間発熱させる。これにより、記録シート10の高温発色層11が、画像情報に対応した高温発色成分の画素パターンで、図2に示す温度T3で短時間高温加熱され、高温加熱された位置の高温発色カプセル21内の発色剤とその周囲に顕色剤とが反応して発色(高温発色)する。
本実施形態では、高温発色層11は、温度T3以上で短時間以上加熱されたことを条件に発色する。
このとき、記録シート10には圧力P1が加えられていないため低温発色層15は発色しない。また、熱バリア層9があるため、中温発色層7は発色しない。
【0049】
ステップST4:
ステップST3に続いて、記録シート10に加えられる圧力を通常圧力P0とした状態で、サーマルヘッド45が、記録シート10に形成する画像の中温発色成分に応じた画素パターンでサーマルヘッド部545の各発熱素子を中温に中時間発熱させる。これにより、記録シート10の中温発色層7が、画像情報に対応した中温発色成分の画素パターンで、図2に示す温度T2で中時間中温加熱され、中温加熱された位置の中温発色カプセル21内の発色剤とその周囲に顕色剤とが反応して発色(中温発色)する。本実施形態において、上記中時間は上記短時間より長い概念である。また、中温発色層7は、温度T2以上で中時間以上加熱されたことを条件で発色する。
【0050】
上記ステップST2〜ST4の動作は、図7(A)に示すように、図5の構成のプリンタのサーマルヘッド45において1ヘッドで温度と時間を制御することにより、連続して行うことができる。
【0051】
ステップST5:
制御部51からの制御に基づいてプラテンローラ47が回転し、図7(B)に示すように、記録シート10が図5中右側のシート搬出部50に向けて搬送される。
【0052】
以上説明したように、記録シート10を用いることで、プリンタ40は、カートリッジ等の廃棄物を発生させずに簡単な制御で記録シート10に画像を形成できる。そのため、プリンタ40のメインテナンスが容易になる。
また、記録シート10の低温発色層15は、温度T1で加熱され、且つ圧力P1(>通常圧力P0)が加えられたことを条件に発色する。そのため、低温発色層15は、耐候性に優れている。また、低温発色層15は定着が不要であるため、記録シート10内に定着層を設ける必要が無くシートの薄型化が図れる。さらに、画像形成時に低温発色層15の定着工程が不要であるため、画像形成を簡単なプリンタ構成で、且つ短時間で行うことができる。すなわち、記録シート10によれば、3層うち1層を圧力で発色させ、2層を時間と熱とで制御して発色させるので、3層全てを熱と時間で制御するよりも制御が容易である。
【0053】
また、本実施形態のプリンタ40によれば、図5および図6に示すサーマルヘッド45を用いることで、1ヘッドで温度、圧力および時間を制御することで連続して画像を形成できる。
【0054】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態の図5および図6等で説明したプリンタ40は、サーマルヘッド部545の記録シート10への接触面が、加熱面と加圧面を兼ねる場合を例示したが、本実施形態では、加熱機構と加圧機構とを個別に設ける。
図9は、本実施形態に係わるプリンタの部分構成図である。
図9に示すように、本プリンタは、回転軸204を中心に回転するプラテンローラ202を有する。
プラテンローラ202は、記録シート10の基材5の表面と接触ながら、回転軸204を中心に回転する。
加圧部206は、プラテンローラ202を図9中矢印の向きに移動し、記録シート10の記録面の加圧状態を切り換える。具体的には、第1実施形態の場合には、加圧部206は、図2に示す通常圧力P0と圧力P1とのいずれかの状態で記録シート10を加圧する。
【0055】
プラテンローラ202に対して、記録シート10と反対側には、複数の発熱素子210がライン状に配置されている。
図9に示すプリンタでは、例えば、記録シート10の保護層19側が発熱素子210に接触し、基材5がプラテンローラ202に接触するように、記録シート10を搬送する。
図9に示すプリンタでは、図8に示すステップST2において加圧部206によって記録シート10に圧力P1を加え、ステップST3,ST4では記録シート10に通常圧力P0を加えるように制御する。
また、発熱素子210は、図8に示すステップST2において低温発熱し、ステップST3において高温発熱し、ステップST4において中温発熱する。
図9に示すプリンタによっても、記録シート10にカラー画像を形成できる。
【0056】
<第3実施形態>
上述した第1実施形態では、図1に示すように低温発色層15を保護層19側に配置した場合を例示したが、本実施形態の記録シート110では、図10に示すように、基材5上に中温発色層7、低温発色層15および高温発色層11を順に積層する。
ここで、基材5、中温発色層7、低温発色層15および高温発色層11は、第1実施形態で説明したものと同じである。
図10に示す記録シート110によれば、高温発色層11の高温発色時に、低温発色層15が熱バリアとして機能するため、第1実施形態で必要だった熱バリア層を個別に設ける必要がない。そのため、記録シート110は、薄型化が可能である。
【0057】
<変形例>
上述した第1実施形態では、図8に示すように、低温発色層15を低温発色した後に、高温発色層11を高温発色させ、その後、中温発色層7を中温発色させたが、高温発色層11に先立って中温発色層7を発色させてもよい。
また、低温発色層15の発色処理を、高温発色層11あるいは中温発色層7の発色処理の後に行ってもよい。
【0058】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
例えば、上述した実施形態では、記録シートを3色に発色させて記録を行う場合を例示したが、記録シートに4色以上に発色させて記録を行ってもよい。例えば、イエロー、シアンおよびマゼンダの3色に、ブラックを加えて4色で記録シートを発色させてもよいし、ライトシアンおよびライトマゼンダを加えて5色で記録シートを発色させてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、本発明の感熱記録媒体として記録シートを例示したが、本発明の感熱記録媒体の形状はシート状以外でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、感熱記録媒体に記録を行うシステムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の記録シートの構成図である。
【図2】図2は、図1に示す記録シート内の高温発色カプセル、低温発色カプセルおよび中温発色カプセルの特性を説明ための図である。
【図3】図3は、図1に示す中温発色カプセルおよび高温発色カプセルの発色原理を説明ための図である。
【図4】図4は、図1に示す低温発色カプセルの発色原理を説明ための図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態のプリンタを説明ための図である。
【図6】図6は、図5に示すプリンタのサーマルヘッドを説明ための図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態のプリンタの画像形成動作を説明ための図5の続きの図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態のプリンタの画像形成動作を説明ためのフローチャートである。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態のプリンタの部分構成図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態に係わる記録シートの構成図である。
【符号の説明】
【0062】
10,110‥記録シート、5‥基材、7‥中温発色層、9‥熱バリア層、11‥高温発色層、13‥混防止層、15‥低温発色層、19‥保護層、21‥中温発色カプセル、23‥高温発色カプセル、25‥低温発色カプセル、41‥シート収容ケース、43‥シート送りローラ、45‥サーマルヘッド、47‥プラテンローラ、204‥プラテンローラ、206‥加圧部、210‥発熱素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の温度で予め決められた圧力を受けたことを条件に発色する第1の発色要素と、
前記圧力とは無関係に前記第1の温度より高い第2の温度で発色する第2の発色要素と
を有する感熱記録媒体。
【請求項2】
前記第2の温度より高い第3の温度で発色する第3の発色要素
をさらに有する
請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項3】
前記第1の発色要素を内包した第1の発色層と、
前記第2の発色要素を内包した第2の発色層と、
前記第3の発色要素を内包した第3の発色層と、
熱バリア層と
を有し、
基材上に、前記第2の発色層、前記熱バリア層、前記第3の発色層および前記第1の発色層を順に積層した
請求項2に記載の感熱記録媒体。
【請求項4】
前記第1の発色要素を内包した第1の発色層と、
前記第2の発色要素を内包した第2の発色層と、
前記第3の発色要素を内包した第3の発色層と、
を有し、
基材上に、前記第2の発色層、前記第1の発色層および前記第3の発色層を順に積層した
請求項2に記載の感熱記録媒体。
【請求項5】
前記発色要素は、当該発色要素が内包する材料が前記発色要素外に放出し、発色要素外の物質と反応して発色する要素、あるいは
前記発色要素内に、当該発色要素外の材料が、当該発色要素内に流入して、当該発色要素内の物質と反応して発色する要素
である請求項1〜4のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項6】
感熱記録媒体に対して画像を熱記録するサーマルヘッドと、
前記感熱記録媒体に圧力を加える加圧手段と、
前記サーマルヘッドが前記第1の温度で加熱した状態で前記加圧手段が所定の圧力を加えるように制御する処理と、前記加圧手段が前記圧力を加えない状態で前記サーマルヘッドが前記第1の温度より高い第2の温度で前記感熱記録媒体を加熱するように制御する処理とを行う制御手段と
を有する画像形成装置。
【請求項7】
前記サーマルヘッドと前記加圧手段とを一体的に構成し、前記感熱記録媒体に接触する前記サーマルヘッドの加熱面によって前記圧力を加える
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
第1の温度で加熱した状態で感熱記録媒体に所定の圧力を加える第1の工程と、
前記感熱記録媒体に前記圧力を加えないで、前記第1の温度より高い第2の温度で前記感熱記録媒体を加熱する第2の工程と
を有する画像形成方法。
【請求項1】
第1の温度で予め決められた圧力を受けたことを条件に発色する第1の発色要素と、
前記圧力とは無関係に前記第1の温度より高い第2の温度で発色する第2の発色要素と
を有する感熱記録媒体。
【請求項2】
前記第2の温度より高い第3の温度で発色する第3の発色要素
をさらに有する
請求項1に記載の感熱記録媒体。
【請求項3】
前記第1の発色要素を内包した第1の発色層と、
前記第2の発色要素を内包した第2の発色層と、
前記第3の発色要素を内包した第3の発色層と、
熱バリア層と
を有し、
基材上に、前記第2の発色層、前記熱バリア層、前記第3の発色層および前記第1の発色層を順に積層した
請求項2に記載の感熱記録媒体。
【請求項4】
前記第1の発色要素を内包した第1の発色層と、
前記第2の発色要素を内包した第2の発色層と、
前記第3の発色要素を内包した第3の発色層と、
を有し、
基材上に、前記第2の発色層、前記第1の発色層および前記第3の発色層を順に積層した
請求項2に記載の感熱記録媒体。
【請求項5】
前記発色要素は、当該発色要素が内包する材料が前記発色要素外に放出し、発色要素外の物質と反応して発色する要素、あるいは
前記発色要素内に、当該発色要素外の材料が、当該発色要素内に流入して、当該発色要素内の物質と反応して発色する要素
である請求項1〜4のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項6】
感熱記録媒体に対して画像を熱記録するサーマルヘッドと、
前記感熱記録媒体に圧力を加える加圧手段と、
前記サーマルヘッドが前記第1の温度で加熱した状態で前記加圧手段が所定の圧力を加えるように制御する処理と、前記加圧手段が前記圧力を加えない状態で前記サーマルヘッドが前記第1の温度より高い第2の温度で前記感熱記録媒体を加熱するように制御する処理とを行う制御手段と
を有する画像形成装置。
【請求項7】
前記サーマルヘッドと前記加圧手段とを一体的に構成し、前記感熱記録媒体に接触する前記サーマルヘッドの加熱面によって前記圧力を加える
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
第1の温度で加熱した状態で感熱記録媒体に所定の圧力を加える第1の工程と、
前記感熱記録媒体に前記圧力を加えないで、前記第1の温度より高い第2の温度で前記感熱記録媒体を加熱する第2の工程と
を有する画像形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−296716(P2007−296716A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125918(P2006−125918)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(503118332)IPトレーディング・ジャパン株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(503118332)IPトレーディング・ジャパン株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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