説明

感熱記録材料

【課題】中間調領域の記録画質及び熱応答性に優れ、且つ表面強度に優れた感熱記録材料を提供する。
【解決手段】支持体上に中間層及び熱により発色する感熱記録層をこの順に有する感熱記録材料において、該中間層が鞴形状を有する中空樹脂および一次平均粒径7〜200nmの無機顔料を含有することを特徴とする感熱記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に中間層及び熱により発色する感熱記録層をこの順に有する感熱記録材料において、中間調領域の記録画質及び熱応答性に優れ、且つ塗層強度に優れた感熱記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、一般に支持体上に電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体、ならびに電子受容性化合物を主成分とする感熱記録層を設けたものであり、熱ヘッド、熱ペン、レーザー光等で加熱することにより、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とが瞬時に反応し記録画像が得られるものである。このような感熱記録材料は、比較的簡単な装置で記録が得られ、保守が容易なこと、騒音の発生がないこと等の利点があり、計測記録計、ファクシミリ、プリンター、コンピューターの端末機、ラベル印字機、乗車券、チケットの発券機等広範囲の分野に利用されている。特に近年は、ガス、水道、電気料金等の領収書、金融機関のATMの利用明細書、各種レシート等、財務関係の記録用紙やPOSシステム用の感熱記録ラベルあるいは感熱記録タグ、等にも感熱記録材料が用いられるようになっている。
【0003】
このように用途が多様化するにつれ、文字情報のみならず、グレースケール画像が印字される機会も増加しており、低印字濃度から高印字濃度までいずれの領域においてもドット再現性が良く、印字欠けや濃度ムラの発生しない記録画質に優れた感熱記録材料が要望されている。また記録機器の高速化に伴い熱応答性に優れた感熱記録材料も要望されている。
【0004】
感熱記録材料の記録画質を向上させる手段として、感熱記録層表面の平滑性を高め、熱ヘッドとの密着性を高める方法が開発されてきている。例えば特許文献1では感熱記録層の表面をベック平滑度で200〜1000秒に表面処理する方法が提案されている。また、支持体と感熱記録層の間に断熱性のある中間層を設け、感熱記録材料の熱応答性を高めることで、記録画質を向上させる方法も提案されてきている。例えば、特許文献2では吸油性顔料を中間層に含有させる方法、特許文献3では微小中空球粒子を中間層に含有させる方法、特許文献4では微小中空を含有し、空隙率が50〜95%の中間層を3〜200μm設ける方法が提案されている。更に、中間層表面の平滑性を高めることで、感熱記録層の塗膜の厚みの均一化を図り、感熱記録層の膜厚ムラに由来する印字濃度ムラを軽減する方法も開発されてきている。例えば特許文献5では特定粘度の中間層用塗液をブレード塗工する方法、特許文献6では中間層に微小中空を含有し、且つ中間層のベック平滑度を2000秒以上とする方法、特許文献7では中間層に中空樹脂粒子を含有し、且つ該中間層を熱カレンダー処理する方法、特許文献8では中間層を2層以上設け、且つ感熱記録層の厚みの標準偏差を一定以下とする方法が提案されている。
【0005】
これら従来の改良方法は、表面の平滑化、熱応答性の向上、塗層厚の均一化、によるアプローチであり、高印字濃度域の記録画質向上には一定の効果は見られるが、特に低〜中印字濃度域における印字欠けについては、未だ満足の得るものが得られていない。
【0006】
更に、中間層に中空粒子を含有した場合、層中に中空粒子が均一に分散しがたいため、中間層の平滑性が低下し、均一な記録画質が得られにくくなる、また、中間層の十分な塗層強度が得がたく、中空粒子を含有する中間層と感熱記録層との界面密着性も低いため、感熱記録材料全体の塗層強度が低くなりやすいという欠点もある。そこで、中空粒子の分散性を高めて記録画質を向上させ、且つ中空粒子間および中間層と感熱記録材料間の密着性を高めて十分な塗層強度を得るために、例えば、特許文献9では表面の少なくとも一部が被覆剤で被覆された中空粒子を中間層に含有させる方法、特許文献10ではナノスケール顔料が表面に吸着した有機中空粒子を中間層に含有させる方法が提案されている。また特許文献11、12では中空粒子を含有する中間層と感熱記録層との間に吸油性顔料を含有する第二中間層を設けることで、中間層の平滑性を高め、且つ中間層と感熱記録層との界面密着性を向上させる方法が提案されている。
【0007】
しかし、これら提案によっても、中間調の高い記録画質および高い熱応答性と、高い塗層強度を両立できる感熱記録材料は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭52−20142号公報
【特許文献2】特開昭59−155097号公報
【特許文献3】特開昭59−5093号公報
【特許文献4】特開昭63−299973号公報
【特許文献5】特開平04−290789号公報
【特許文献6】特開平01−30785号公報
【特許文献7】特開平06−262857号公報
【特許文献8】国際公開第2007/023687号パンフレット
【特許文献9】特開2008−80530号公報
【特許文献10】国際公開第2008/006474号パンフレット
【特許文献11】特開平01−285383号公報
【特許文献12】特開平04−241987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、特に中間調の記録画質及び熱応答性に優れ、且つ塗層強度に優れた感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討した結果、以下の発明により上記課題を解決できることを見出した。
1)支持体上に中間層及び熱により発色する感熱記録層をこの順に有する感熱記録材料において、該中間層が鞴形状を有する中空樹脂及び一次平均粒径7〜200nmの無機顔料を含有することを特徴とする感熱記録材料。
2)該中間層において、無機顔料が中空樹脂に付着して存在していることを特徴とする上記1に記載の感熱記録材料。
3)前記無機顔料がシリカであることを特徴とする上記1または2に記載の感熱記録材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、特に中間調の記録画質及び熱応答性に優れ、且つ塗層強度に優れた感熱記録材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】鞴形状を有する中空樹脂を含有する中間層を設けた感熱記録材料の断面図
【図2】鞴形状を有さない中空樹脂粒子を含有する中間層を設けた感熱記録材料の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の内容を更に具体的に説明する。本発明の感熱記録材料は、支持体上に中間層と熱により発色する感熱記録層とを少なくとも各1層ずつ有するものである。
【0014】
本発明に係る鞴形状を有する中空樹脂を含有する中間層を設けた感熱記録材料の断面図の例を図1に示した。本断面図は本発明の感熱記録材料をイオンミリングにより切削処理した後、走査型電子顕微鏡にて撮影した画像である。ここで言う鞴形状とは、図1に示されるように、中空樹脂が中間層内で支持体側を床面、感熱記録層側を天面とするようにセル状構造をとり、セルの側面が蛇腹状の襞を複数段有するものである。この側面の蛇腹構造と内部の広い空隙により、本中空樹脂は加圧下において、支持体に対して垂直方向に容易に伸縮し、感熱記録層に均一なクッション性を与え、効率的にヘッドと感熱記録材料との発色面とを密着させることが可能である。更に、その中空構造から本中間層は高い断熱効果も有している。なお、中間層内において上記セルは垂直方向に複数個重なっていても良く、その場合1〜5個が好ましく、1〜3個がより好ましい。以上のように、本発明の中間層により、加圧下において熱ヘッドと感熱記録材料の発色面とが均一、且つ良好に密着することで、感熱印字の際、中間調においても印字欠けのない、発色濃度の均一な、且つ熱応答性に優れた感熱記録材料が得られる。
【0015】
本発明に係る鞴形状を有する中空樹脂を含有する中間層の形成方法は特に限定しないが、例えば熱膨張性樹脂粒子を含む塗布液を塗工乾燥後、加熱及び加圧成型処理を施す方法によって得られる。この際用いる熱膨張性樹脂粒子は膨張前の状態であっても膨張済みであってもよい。
【0016】
熱膨張性樹脂粒子とは、加熱により粒子径が増大する樹脂粒子のことを指す。例えば、揮発性液体を内包する中空樹脂粒子があり、加熱により樹脂が軟化すると同時に揮発性液体が気化(体積増加)することで粒子が膨張する。より具体的には、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル等のアクリル系モノマー、塩化ビニリデンモノマー、酢酸ビニルモノマー、などの重合体および共重合体を外殻樹脂とし、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の低沸点炭化水素を揮発性液体として内包した中空樹脂粒子である。本発明においては、熱膨張性能、鞴形状の形成の点から、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体または塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体を外殻樹脂とし、イソブタンまたはイソペンタンを揮発性液体とする中空樹脂粒子が特に好ましく用いられる。更に、外殻樹脂を多官能性モノマーで架橋したりしても良い。また、この場合、熱膨張性樹脂粒子の膨張開始温度は80〜130℃の範囲であるのが好ましい。
【0017】
また熱膨張性樹脂粒子の未膨張時の平均粒子径としては、好ましくは1〜25μm、より好ましくは3〜10μmであり、加熱により体積が10〜50倍に膨張し、中空率が80%以上となるものが好ましく用いられる。平均粒子径を1μm以上とすることで膨張後十分な体積及び表面積が得られ鞴形状を形成しやすくなる。また加熱後粒子内に十分な空隙が生じ、断熱効果も得やすくなる。また平均粒子径を25μm以下とすることで加熱成型後の中間層の平坦性が得やすくなる。なお、本発明における平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって得られた粒度分布から算術される体積平均粒子径のことである。また加熱後の中空率を80%以上とすることで膨張後粒子内に十分な空隙が生じ、断熱効果が得やすくなる。また殻が薄膜化しやすくなり、鞴形状形成が容易になる。ここで言う中空率とは、中空樹脂の中空部の体積を、中空粒子の体積で除した値である。
【0018】
本発明においては中間層に更に一次平均粒径7〜200nmの無機顔料を含有し、好ましくは無機顔料が鞴形状の中空樹脂に付着した状態で存在することで、記録画質を更に高め、且つ本発明のもう一つの特徴である良好な塗層強度を得ることが可能となる。適度な硬度を有する微小顔料が樹脂粒子の壁面に存在することで、成型処理の際中空樹脂に襞が形成されやすくなり鞴形状形成が容易となる。また、襞が深くなることで、粒子の高い伸縮性を更に向上させ、記録画質を更に高めることが可能となる。一方で塗層強度が向上する理由は明確ではないが、高い比表面積を有する無機顔料が中空樹脂間でアンカーとして機能し、隣接あるいは垂直方向に重なった中空樹脂が加熱成型の際、無機顔料を介して強固に結着するためと推測される。また疎水性の中空樹脂表面に親水性の無機顔料が付着することで中間層と感熱記録層間の界面密着性も向上するものと推測される。なお、本発明で言う一次平均粒径とは、無機顔料粒子を電子顕微鏡により観察し、一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒子径として、平均粒子径を求めたものである。
【0019】
本発明に係る一次平均粒径7〜200nmの無機顔料として、具体的にはカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ等が挙げられる。特に塗層強度の観点からシリカが好ましく用いられる。本発明におけるシリカとは非晶質合成シリカを指し、本発明の要件を満たすものであれば、沈降法シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、乾式シリカ等のいずれを用いてもよい。本発明に用いる無機顔料は所望のサイズの市販品を用いてもよいし、本発明の要件を満たすよう湿式粉砕等にて粉砕処理を施してから使用してもよい。また、本発明に用いる無機顔料の一次平均粒径はより好ましくは15〜100nmである。一次平均粒径を7nm以上とすることで無機顔料の凝集が抑制され中空樹脂間に無機顔料を均一に分布させることが可能となる。また200nm以下とすることで、本発明に有効な適当数の無機顔料が中空樹脂の周囲に分布可能である。
【0020】
上記無機顔料は熱膨張性樹脂粒子とともに塗布液に混合して用いても、あらかじめ熱膨張性樹脂粒子表面に付着させて用いてもよい。特に、無機顔料をあらかじめ熱膨張性樹脂粒子表面に付着させて用いた場合、鞴形状形成後、無機顔料を中空樹脂間に均一に分布させることができるためより好ましい。無機顔料を熱膨張性樹脂粒子表面にあらかじめ付着させる方法は特に限定しないが、例えば、熱膨張性樹脂粒子の重合時に分散安定剤として所望の無機顔料を使用することで得ることができる。また、熱膨張性樹脂粒子および所望の無機顔料を混合し、リボン型混合機、垂直スクリュー方混合機等の粉体混合機にて攪拌もしくは揺動攪拌したり、あるいは熱膨張性樹脂粒子および所望の無機顔料の分散液を混合しホモミキサー、アジテーター等で攪拌してもよい。この場合、熱膨張性樹脂粒子が発泡しない温度まで分散液を加温することも可能である。無機顔料を塗布液に混合して用いた場合は、塗工・乾燥後の加熱処理の際、軟化した樹脂表面に無機顔料が付着することで、本発明に係る、鞴形状を有する中空樹脂及び平均粒子径7〜200nmの無機顔料を含有し、好ましくは無機顔料が鞴形状の中空樹脂に付着して存在する中間層が形成される。
【0021】
用いる無機顔料の量はその粒径、比重から効率的に中空樹脂表面により多く存在するよう適宜調整される。未膨張時の中空樹脂表面を無機顔料で被覆できる程度の量までが適当であり、概ね中空樹脂に対し0.2〜20質量%となるのが好ましく、更に好ましくは0.5〜10質量%である。0.2質量%未満では十分な塗層強度が得られず、20質量%を超えると鞴形状の形成を阻害する場合がある。
【0022】
本発明においては、中空樹脂の形状は感熱記録材料の断面を走査型電子顕微鏡、あるいは光学顕微鏡等により1000〜3000倍の倍率にて観察することで確認できる。本発明において鞴形状は、中空樹脂の床面から天面までの長さの平均値に対し、側面の襞の深さの平均値、即ち交互に位置する襞の、支持面に対し平行方向における頂点間距離の1/2の長さの平均値が、1/15以上であることが好ましい。各々の長さは感熱記録材料断面図の任意の5箇所を測定し、その平均値として算出する。断面処理法は任意により選択されるが、ミクロトーム処理、イオンミリング処理等が挙げられる。特に処理時に断面のつぶれが起こりにくいイオンミリング処理が好ましい。また、無機顔料の付着についても、同様の方法で断面処理した感熱記録材料断面の元素分布をエネルギー分散型X線分析にて観察することで確認できる。
【0023】
本発明において、熱膨張性樹脂粒子および一次平均粒径7〜200nmの無機顔料を含有する中間層の塗工量は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で適宜設定されるが、2〜30g/mが好ましく、3〜15g/mが特に好ましい。また中間層における熱膨張性樹脂粒子の含有量は中間層の総固形量に対して20質量%以上とすることが好ましく、更に60質量%以上とすることがより好ましい。
【0024】
熱膨張性樹脂粒子の加熱成型処理法は任意により選択されるが、例えば、スキャッフドライヤー、IRドライヤー、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱カレンダー、メタルベルトカレンダー、熱プレス等による加熱後にチルドニップカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー等にて加圧成型処理を行う、を挙げることができる。未膨張状態の熱膨張性樹脂粒子を用いる場合は、粒子を十分に膨張させるため、膨張開始温度より10〜100℃程度高温で、概ね熱膨張性樹脂粒子を塗設した表面が80〜250℃の範囲となるような温度にて、0.5秒以上加熱処理を行うことが好ましい。また、膨張済みの熱膨張性粒子を用いる場合は熱膨張性樹脂粒子を塗設した表面が樹脂の殻のガラス転移温度以上の温度となるような温度で0.5秒以上加熱処理を行うのが好ましい。
【0025】
本発明の支持体としては、透明、半透明、及び不透明のいずれであってもよく、紙、各種不織布、織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、セラミック紙、ガラス板など、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができる。特に紙支持体を使用する場合は、密度0.9〜1.3g/cm、坪量30〜100g/mの紙が好ましく用いられる。
【0026】
中間層にはバインダーとして、通常の塗工で用いられる種々の水溶性高分子化合物、または水分散性樹脂を用いることができる。その具体例としては、例えば澱粉類、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、ポリアクリル酸のアルカリ塩、ポリマレイン酸のアルカリ塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性樹脂、及びスチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン等の水分散性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダーは単独、もしくは2種以上混合して用いることができる。バインダーの使用量は熱膨張性樹脂粒子に対して10〜400質量%とすることが好ましい。
【0027】
また、中間層の塗液中には、本発明の効果を損ねない範囲において、他の添加剤、例えば、顔料分散剤、蛍光染料、着色染顔料、紫外線吸収剤、導電性物質、滑剤、耐水化剤、消泡剤、腐敗防止剤等を含有することができる。
【0028】
中間層の塗工方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の技術に従って塗工することができる。具体的な例としては、エアナイフ塗工、ロッドブレード塗工、バー塗工、ブレード塗工、グラビア塗工、カーテン塗工、Eバー塗工などが挙げられる。本発明においては、熱膨張性樹脂粒子の安定性の点から、エアナイフ塗工、カーテン塗工が特に好ましい。
【0029】
本発明における熱により発色する感熱記録層は、熱により発色する感熱記録成分を中間層上に塗工することにより得られる。感熱記録成分は特に限定されるものではなく、感熱ヘッドによる印加エネルギーで呈色反応を生じるような組み合わせならいずれも使用可能である。例えば、無色あるいは淡色の電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の組み合わせ、芳香族イソシアナート化合物とイミノ化合物の組み合わせ、無色あるいは淡色の電子供与性染料前駆体とイソシアナート化合物の組み合わせ、金属化合物と配位化合物の組み合わせ、ジアゾニウム塩とカプラーの組み合わせなどが挙げられる。発色濃度、発色しやすさ、発色の制御のしやすさなどの点で、通常無色あるいは淡色の電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の組み合わせ、芳香族イソシアナート化合物とイミノ化合物の組み合わせ、通常無色あるいは淡色の電子供与性染料前駆体とイソシアナート化合物の組み合わせが好ましく用いられる。
【0030】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱記録層に用いられる染料前駆体としては、一般に感圧記録材料、または感熱記録材料に用いられているものに代表されるが、これらに制限されることはない。
【0031】
具体的な例を挙げれば、次のとおりである。
(1)トリアリールメタン系化合物:3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドなど、
【0032】
(2)ジフェニルメタン系化合物:4,4−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミンなど、
【0033】
(3)キサンテン系化合物:ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェノキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなど、
【0034】
(4)チアジン系化合物:ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなど、
【0035】
(5)スピロ系化合物:3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピランなどを挙げることができるが、これに限定されるものではなく、また必要に応じて単独、もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0036】
電子受容性化合物としては、例えば粘土物質、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体、N,N′−ジアリルチオ尿素誘導体、N−スルホニル尿素などの尿素誘導体、またはそれらの金属塩などが使用される。具体的な例としては、酸性白土、活性白土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン等の粘土物質、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−n−プロポキシジフェニルスルホン、3−フェニルスルホニル−4−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,3−ビス〔2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス[4−(4−トルエンスルホニル)アミノカルボニルアミノフェニル]メタン、N−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジアリル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−アリルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、N−p−トルエンスルホニル−N′−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、N−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)アニリン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4′−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸クロロベンジル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、ノボラックフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−t−ノニルサリチル酸、3,5−ジドデシルサリチル酸、3−メチル−5−t−ドデシルサリチル酸、5−シクロヘキシルサリチル酸、3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−メチル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、4−n−オクチルオキシカルボニルアミノサリチル酸等、及びこれらの亜鉛、ニッケル、アルミニウム、カルシウム等の金属塩等が挙げることができるが、これに限定されるものではなく、必要に応じて2種類以上併用して使用することもできる。
【0037】
芳香族イソシアナート化合物は、常温で固体の無色または淡色の芳香族イソシアナート化合物、あるいは複素環イソシアナート化合物であり、具体的には、2,6−ジクロロフェニルイソシアナート、p−クロロフェニルイソシアナート、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、1,3−ジメチルベンゼン−4,6−ジイソシアナート、1,4−ジメチルベンゼン−2,5−ジイソシアナート、1−エトキシベンゼン−2,4−ジイソシアナート、2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、2,5−ジエトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、2,5−ジブトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、アゾベンゼン−4,4′−ジイソシアナート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアナート、ナフタリン−1,4−ジイソシアナート、ナフタリン−1,5−ジイソシアナート、ナフタリン−2,6−ジイソシアナート、ナフタリン−2,7−ジイソシアナート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアナート、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアナート、ジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアナート、ベンゾフェノン−3,3′−ジイソシアナート、フルオレン−2,7−ジイソシアナート、アンスラキノン−2,6−ジイソシアナート、9−エチルカルバゾール−3,6−ジイソシアナート、ピレン−3,8−ジイソシアナート、ナフタレン−1,3,7−トリイソシアナート、ビフェニル−2,4,4′−トリイソシアナート、4,4′,4″−トリイソシアナート−2,5−ジメトキシトリフェニルアミン、p−ジメチルアミノフェニルイソシアナート、トリス(4−フェニルイソシアナート)チオフォスフェートなどの物質が挙げられるが、本発明に係る芳香族イソシアナート化合物は、これらに限定されるものではなく、また必要に応じて単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0038】
これらの芳香族イソシアナート化合物は、必要に応じて、フェノール類、ラクタム類、オキシム類などとの付加化合物である、所謂ブロックイソシアナートの形で用いてもよく、ジイソシアナートの2量体、例えば、1−メチルベンゼン−2,4−ジイソシアナートの2量体、及び3量体であるイソシアヌレートの形で用いてもよく、また、各種のポリオールなどで付加したポリイソシアナートとして用いることも可能である。
【0039】
イミノ化合物とは、常温で固体の無色または淡色の化合物であり、具体的には、3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン−1−オン、1,3−ジイミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1,3−ジイミノイソインドリン、1,3−ジイミノベンズ(f)イソインドリン、1,3−ジイミノナフト(2,3−f)イソインドリン、1,3−ジイミノ−5−ニトロイソインドリン、1,3−ジイミノ−5−フェニルイソインドリン、1,3−ジイミノ−5−メトキシイソインドリン、1,3−ジイミノ−5−クロロイソインドリン、5−シアノ−1,3−ジイミノイソインドリン、5−アセトアミド−1,3−ジイミノイソインドリン、1,3−ジイミノ−5−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−イソインドリン、5−(p−t−ブチルフェノキシ)−1,3−ジイミノイソインドリン、5−(p−クミルフェノキシ)−1,3−ジイミノイソインドリン、5−イソブトキシ−1,3−ジイミノイソインドリン、1,3−ジイミノ−4,7−ジメトキシイソインドリン、4,7−ジエトキシ−1,3−ジイミノイソインドリン、4,5,6,7−テトラブロモ−1,3−ジイミノイソインドリン、4,5,6,7−テトラフルオロ−1,3−ジイミノイソインドリン、4,5,7−トリクロロ−1,3−ジイミノ−6−メチルメルカプトイソインドリン、1−イミノジフェン酸イミド、1−(シアノ−p−ニトロフェニルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノベンゾチアゾリル−(2′)−カルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2′)メチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2′)−メチレン〕−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2′)−メチレン〕−3−イミノ−5−メトキシイソインドリン、1−〔(1′−フェニル−3′−メチル−5−オキソ)−ピラゾリデン−4′〕−3−イミノイソインドリン、3−イミノ−1−スルホ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,6,7−テトラクロロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,7−トリクロロ−6−メチルメルカプト安息香酸イミド、3−イミノ−2−メチル−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン−1−オンなどの物質が挙げられるが、本発明に係るイミノ化合物はこれらに限定されるものではなく、また必要に応じて単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0040】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱記録層は、その熱応答性を向上させるために熱可融性化合物を含有させることもできる。この場合、60〜180℃の融点を有するものが好ましく、特に、80〜140℃の融点を持つものがより好ましい。
【0041】
具体的には、ステアリン酸アミド、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−ステアリル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、4−アセチルビフェニル、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α,α′−ジフェノキシキシレン、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、アジピン酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4−メチルベンジル)、シュウ酸ビス(4−クロロベンジル)エステル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド類、脂肪酸アニリド類、等公知の熱可融性物質が挙げられる。これらの化合物は単独もしくは2種以上併用して使用することもできる。
【0042】
また、熱可融性化合物の含有量は上記電子受容性化合物に対し質量比で30〜200質量%が好ましい範囲であり、更に好ましい範囲は50〜150質量%である。この範囲とすることで、熱応答性、発色画像の飽和濃度、ならびに地肌の白色度など基本特性も良好な感熱記録材料が得られる。
【0043】
その他、感熱記録層には、顔料として、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ等の無機顔料、メラミン樹脂フィラー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー等の有機顔料を含有することができる。
【0044】
その他の添加剤としては、加熱印字ヘッドの摩耗防止、またはスティッキング防止などの目的でステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、カスタードワックスなどのワックス類、また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどの分散剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、更に界面活性剤、蛍光染料などを必要に応じて含有することができる。
【0045】
感熱記録層のバインダーとしては、通常の塗工で用いられる種々の水溶性高分子化合物、または水分散性樹脂を用いることができる。その具体例として、中間層に用いられるバインダーの具体例として記述したバインダーが挙げられる。バインダーは単独、もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0046】
感熱記録層の塗工量は、通常染料前駆体の塗工量で0.1〜2.0g/mの範囲が十分な熱応答性を得るために適当であり、更に好ましい範囲は0.15〜1.5g/mである。
【0047】
本発明の感熱記録材料は、耐水性、耐薬品性、耐可塑剤性の向上、引っ掻き等の擦れによる発色(擦れカブリ)を防止することを目的として、感熱記録層の上に1種、あるいは数種のバインダー、及び/または顔料からなる保護層を1層以上設けることができる。
【0048】
保護層に用いられるバインダーとしては、通常の塗工に用いられる種々の水溶性高分子化合物、ならびに水分散性樹脂を挙げることができる。その具体例として、中間層に用いられるバインダーの具体例として記述したバインダーが挙げられる。バインダーは単独、もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0049】
本発明の感熱記録材料の感熱記録層上に設ける保護層には、必要な場合はエポキシ基を持つ化合物やジルコニウム塩類などの硬膜剤、架橋剤を含有することもできる。更に、筆記性、ならびに走行性をより向上させるため、顔料などを含有することもできる。
【0050】
保護層に用いられる顔料として、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカなどの無機顔料、メラミン樹脂フィラー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダーなどの有機顔料が挙げられるが、これに制限されるものではない。なお、顔料は単独、もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0051】
その他の添加物としては、ヘッド摩耗防止、スティッキング防止などの目的でステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、カスタードワックスなどのワックス類を、また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどの分散剤、更に界面活性剤、蛍光染料などを含有することもできる。
【0052】
保護層の塗工量は、0.2〜10g/m、好ましくは1〜5g/mの範囲であり、必要に応じて、2層以上の多層構造にすることもできる。
【0053】
感熱記録層、または保護層の形成方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の技術に従って形成することができる。具体的な例としては、エアナイフ塗工、ロッドブレード塗工、バー塗工、ブレード塗工、グラビア塗工、カーテン塗工、Eバー塗工などの方法により塗液を塗工し、乾燥により感熱記録層を形成させることができる。また本発明においては、中間層の鞴形状を保護するため、エアナイフ塗工およびカーテン塗工が特に好ましく用いられる。
【0054】
また、平版、凸版、フレキソ、グラビア、スクリーンなどの方式による各種印刷機などによって各層を形成しても良い。
【0055】
なお、本発明の感熱記録材料においては、必要に応じて裏面側にも保護層(バリヤー)を設けたり、粘着剤層を設けたり、磁気記録層、インクジェット記録層等の任意の情報記録層を設けたり、あるいは各層の塗工後にカレンダー処理等の平滑化処理を施すこともできる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において、%及び部は全て質量基準である。また塗工量は絶乾塗工量である。
【0057】
実施例1
(1)中間層を有する支持体の作製
<中間層用塗液>
次の配合の熱膨張性樹脂粒子及び無機顔料を含む中間層用塗液を作製した。なお、熱膨張性樹脂粒子は、揮発性液体としてイソブタンを内包し、塩化ビニリデン−アクリロニトリルを外殻樹脂とする平均粒子径7μmの樹脂粒子であり、膨張開始温度は約100℃である。
未膨張状態の熱膨張性樹脂粒子20%水分散液 500部
一次平均粒径200nmの炭酸カルシウム20%水分散液 50部
完全鹸化ポリビニルアルコール10%水溶液 300部
【0058】
上記で作製した中間層用塗液を、密度1.1g/cm、坪量60g/mの紙支持体に、塗工量5g/mとなるように塗工し、その後紙面温度80℃以下を保って乾燥した。更にその後、160℃に加熱されたシリンダードライヤーに30秒間接触させて熱膨張性樹脂粒子を熱膨張させた。続いて、線圧500N/cmにてスーパーカレンダー処理し、中間層を有する支持体を作製した。
【0059】
(2)感熱記録層用塗液の作製
<電子供与性染料前駆体分散液>
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30部をポリビニルアルコール2.5%水溶液70部に分散し、ビーズミルで平均粒子径が0.8μmになるまで湿式粉砕し、電子供与性染料前駆体分散液を調製した。
【0060】
<電子受容性化合物分散液>
4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30部をポリビニルアルコール2.5%水溶液70部に分散し、ビーズミルで平均粒子径が0.8μmになるまで粉砕し、電子受容性化合物分散液を調製した。
【0061】
<熱可融性化合物分散液>
ベンジル−2−ナフチルエーテル30部をポリビニルアルコール2.5%水溶液70部に分散し、ビーズミルで平均粒子径が0.8μmになるまで粉砕し、熱可融性化合物分散液を調製した。
【0062】
上記で調製した分散液を使用して、次の配合の感熱記録層用塗液を作製した。
電子供与性染料前駆体分散液 100部
電子受容性化合物分散液 100部
熱可融性化合物分散液 100部
ポリビニルアルコール10%水溶液 200部
水酸化アルミニウム30%水分散液 100部
ステアリン酸亜鉛40%水分散液 25部
水 60部
【0063】
(3)保護層用塗液の作製
次の配合の保護層用塗液を作製した。
平均粒子径2μmのカオリン25%水分散液 20部
ステアリン酸亜鉛40%水分散液 1部
ジアセトン変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
アジピン酸ジヒドラジド8%水溶液 12.5部
水 70部
【0064】
(4)感熱記録材料の作製
(1)の中間層を有する支持体上に、(2)の感熱記録層用塗液を、染料前駆体の塗工量が0.5g/mとなるように塗工乾燥し、感熱記録層を形成した。その後、感熱記録層上に(3)の保護層用塗液を塗工量が2g/mとなるように塗工乾燥した後、カレンダー処理を行って感熱記録材料を作製した。
【0065】
実施例2
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製の<中間層用塗液の作製>において、一次平均粒径200nmの炭酸カルシウム20%水分散液50部の代わりに一次平均粒径50nmの炭酸カルシウム20%水分散液12.5部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0066】
実施例3
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製の<中間層用塗液の作製>において、一次平均粒径200nmの炭酸カルシウム20%水分散液50部の代わりに一次平均粒径30nmのコロイダルシリカ20%水分散液12.5部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0067】
実施例4
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製の<中間層用塗液の作製>において、一次平均粒径200nmの炭酸カルシウム20%水分散液50部の代わりに一次平均粒径10nmのコロイダルシリカ20%水分散液12.5部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0068】
実施例5
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製の<中間層用塗液の作製>において、一次平均粒径200nmの炭酸カルシウム20%水分散液50部の代わりに一次平均粒径7nmの乾式シリカ20%水分散液12.5部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0069】
実施例6
<コロイダルシリカが付着した熱膨張性樹脂粒子水分散液>
次の配合の分散液を調整した。
未膨張状態の熱膨張性樹脂粒子20%水分散液 500部
一次平均粒径30nmのコロイダルシリカ20%水分散液 12.5部
この分散液を加熱し、水温80度を保持した状態で1時間強攪拌し、熱膨張性樹脂粒子の表面にコロイダルシリカが付着した熱膨張性樹脂粒子の水分散液を作製した。なお本温度では熱膨張性樹脂粒子は熱膨張しない。
【0070】
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製の<中間層用塗液>として以下の配合の塗液を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
<中間層用塗液>
上記コロイダルシリカが付着した熱膨張性樹脂粒子20%水分散液 512.5部
完全鹸化ポリビニルアルコール10%水溶液 300部
【0071】
実施例7
<コロイダルシリカが付着した膨張済みの熱膨張性樹脂粒子水分散液>
実施例6で用いたコロイダルシリカが付着した熱膨張性樹脂粒子水分散液を密封した状態で加熱し、沸騰状態を保持した上で5分間強攪拌しコロイダルシリカが付着した熱膨張性樹脂粒子を熱膨張させ、コロイダルシリカが付着した膨張済みの熱膨張性樹脂粒子水分散液を作製した。
【0072】
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製の<中間層用塗液>として以下の配合の塗液を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
<中間層用塗液>
上記コロイダルシリカが付着した膨張済みの熱膨張性樹脂粒子20%水分散液
512.5部
完全鹸化ポリビニルアルコール10%水溶液 300部
【0073】
比較例1
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製において、塗液の乾燥時、紙面温度を130度として熱膨張性樹脂粒子を膨張させ、その後のシリンダードライヤーおよびスーパーカレンダー処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0074】
比較例2
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製の<中間層用塗液>において、未膨張状態の熱膨張性樹脂粒子の代わりに平均粒子径1μm、中空率50%の非膨張性の中空樹脂粒子を用い、シリンダードライヤーおよびスーパーカレンダー処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0075】
比較例3
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製の<中間層用塗液>において、一次平均粒径200nmの炭酸カルシウム20%水分散液50部を用いなかった以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0076】
比較例4
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製の<中間層用塗液>において、一次平均粒径200nmの軽質炭酸カルシウム20%水分散液50部の代わりに一次平均粒径300nmの炭酸カルシウム20%水分散液50部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0077】
比較例5
実施例1の(1)中間層を有する支持体の作製の<中間層用塗液>において、一次平均粒径200nmの炭酸カルシウム20%水分散液50部の代わりに一次平均粒径5nmのコロイダルシリカ20%水分散液12.5部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0078】
以上の実施例1〜7及び比較例1〜5で作製した感熱記録材料について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
[鞴形状]
実施例1〜7及び比較例1〜5の感熱記録材料を、イオンミリングにて断面処理し、日立製走査電子顕微鏡S−2300を用い倍率1000倍にて観察し、中間層における鞴形状の有無の確認を行った。また鞴形状を有する場合は、セルの床面から天面の長さの平均値に対する襞の深さの平均値を算出した。なお参考として比較例2の、非膨張性中空樹脂粒子を含有する中間層を設けた感熱記録材料の断面図を図2に示した。なお、実施例1〜7について同様の方法で断面処理した感熱記録材料断面の元素分布をエネルギー分散型X船分析にて観察したところ、全ての中間層において、無機顔料は中空樹脂に付着して存在していたが、実施例6及び7ではより多くの無機顔料が中空樹脂間に均一に分散した状態で付着して存在していた。
【0080】
[記録画質]
実施例1〜7及び比較例1〜5の感熱記録材料を、大倉エンジニアリング(株)製印字試験機TH−PMDを用いて印字した。ドット密度8ドット/mm、ヘッド抵抗1685Ωのサーマルヘッドを使用し、印可電圧21ボルトで、印加パルス幅0.2msec、0.4msec、及び0.6msecで印字した文字の画質を目視にて評価した。評価基準は以下の指標に従った。
◎:印字欠け・印字ムラがほとんど存在せず、記録濃度が均一である。
○:わずかに印字欠け・印字ムラが見られるものの実使用上問題ない。
△:印字欠け・印字ムラが存在し、印字濃度にバラつきが見られる。
×:印字欠け・印字ムラが多く存在し、実使用上問題がある。
【0081】
[熱応答性]
実施例1〜7及び比較例1〜5の感熱記録材料を、大倉エンジニアリング(株)製印字試験機TH−PMDを用いて印字した。ドット密度8ドット/mm、ヘッド抵抗1685Ωのサーマルヘッドを使用し、印可電圧21ボルトで、印加パルス幅0.6msec及び1.0msecでベタ画像を印字した。印字画像をグレタグマクベスRD−19型反射濃度計にて測定した。評価基準は以下の指標に従った。印字濃度は、1.0以上であれば実使用上問題ない。
◎:印字濃度が1.2以上
○:印字濃度が1.0以上1.2未満
△:印字濃度が0.5以上1.0未満
×:印字濃度が0.5未満
【0082】
[塗層強度]
実施例1〜7及び比較例1〜5の感熱記録材料を、石川島産業機械(株)製RI−1型印刷適性試験機にて、DIC(株)社製のタックバリュー値20のインキを0.4ml用い、回転数50rpmの条件で塗層強度を評価した。評価基準は以下の指標に従った。
◎:塗層ムケがほとんど認められない。
○:塗層ムケが少し認められるが、実用上問題がない。
△:塗層ムケが認められる。
×:大きく塗層ムケが発生する。
【0083】
【表1】

【0084】
表1から明らかなように、中間層が鞴形状を有する中空樹脂および一次平均粒径7〜200nmの無機顔料を含有している実施例1〜7の感熱記録材料は、中間層が鞴形状の中空樹脂を含有しない比較例1〜2の感熱記録材料に比べ、記録画質及び熱応答性に優れる。また鞴形状の中空樹脂を含有するものの一次平均粒径7〜200nmの無機顔料を含有しない比較例3〜5の感熱記録材料に比べ記録画質および塗層強度に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に中間層及び熱により発色する感熱記録層をこの順に有する感熱記録材料において、該中間層が鞴形状を有する中空樹脂および一次平均粒径7〜200nmの無機顔料を含有することを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
該中間層において、無機顔料が中空樹脂に付着して存在していることを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記無機顔料がシリカであることを特徴とする請求項1または2に記載の感熱記録材料。

【図1】
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【図2】
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