説明

感熱転写シート

【課題】低温通過性が良好であり、かつ最高転写濃度の高い感熱転写シートを提供する。
【解決手段】基材フィルムの一方の面上に熱転写可能な染料とバインダーを含む染料層を有する感熱転写シートであって、該染料として下記一般式(1)で表される染料を少なくとも1種含み、該染料層に含まれるバインダー量の50質量%以上がカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂である感熱転写シート。


(式中、Aはフェニレン基を表し、R1およびR2は各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R3はアミノ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表し、R4はアルキル基またはアリール基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写シートに関し、特に、低温通過性、最高転写濃度に優れた感熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、中でも染料拡散転写記録方式は、銀塩写真の画質に最も近いカラーハードコピーが作製できるプロセスとして注目されている。
染料拡散転写記録方式は、染料を含有する感熱転写シート(一般的にインクシートとも言われることがある)と感熱転写受像シート(以下、受像シートともいう)とを重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッド等によって感熱転写シートを加熱することで感熱転写シート中の染料を感熱転写受像シートに転写して画像情報の記録を行うものであり、シアン、マゼンタ、イエローの3色を重ねて記録することで色の濃淡に連続的な変化を有するカラー画像を記録することができる。
【0003】
染料拡散転写記録方式は銀塩写真のように処理薬品を用いる必要がないため、プリンターの小型化が可能であるという利点があり、店頭端末として利用されている。
染料拡散転写記録方式における技術課題の一つとして、画像の高濃度化が挙げられる。高濃度の画像を得る方法として、特許文献1では特定の染料を含有する方法が記載されており、特許文献2では特定のバインダーを含有する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−230878号公報
【特許文献2】特開2006−69196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、ニーズの多様化により、上記店頭端末を店舗内だけでなく屋外のように温湿度の調整がきかない環境下、例えば冬の低温環境下に設置されることがある。
低温環境下においても、感熱転写シートが問題なく搬送され、印画物が得られること(本明細書において、低温通過性とも言う)が必要であるが、上記特許文献1に記載された特定の染料を用い作製された感熱転写シートは、低温環境下では低温通過性が特異的に悪化するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は低温通過性が良好であり、かつ最高転写濃度の高い感熱転写シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、感熱転写シートの低温通過性の悪化は、上記一般式(1)で表される染料を含有する感熱転写シートが低温低湿環境下で長期経時された場合に、この染料が染料層表面に析出することが原因の1つであることを突き止めた。そこで、さらに鋭意検討を重ねた結果、感熱転写シートの染料層中にカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、上記染料の性質が緩和されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、感熱転写シートの染料層中に一般式(1)で表される染料とカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を組み合わせて含ませる下記手段で、本発明の上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
[1] 基材フィルムの一方の面上に熱転写可能な染料とバインダーを含む染料層を有する感熱転写シートであって、該染料として下記一般式(1)で表される染料を少なくとも1種含み、該染料層に含まれるバインダー量の50質量%以上がカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂である感熱転写シート。
【化1】

(一般式(1)中、Aは置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、R1およびR2は各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R3は置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルコキシ基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、R4は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
[2] 前記カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール構造の50モル%以上がアセトアセタール構造であることを特徴とする[1]に記載の感熱転写シート。
[3] 前記染料の前記バインダーに対する質量比(染料/バインダー比)が1.4〜2.5であることを特徴とする[1]または[2]に記載の感熱転写シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成により、プリントセットが低温環境に曝された場合でも、感熱転写シート中の染料を感熱転写受像シートに転写して画像情報の記録際に実質的に問題がほとんど無くなった感熱転写シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[感熱転写シート]
本発明の感熱転写シートは、基材フィルムの一方の面上に熱転写可能な染料とバインダーを含む染料層(以下、熱転写層、感熱転写層ともいう)を有する感熱転写シートであって、該染料として下記一般式(1)で表される染料を少なくとも1種含み、該染料層に含まれるバインダー量の50質量%以上がカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂である。以下、本発明の感熱転写シートについて説明する。
【0012】
【化2】

(一般式(1)中、Aは置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、R1およびR2は各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R3は置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルコキシ基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、R4は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
【0013】
<感熱転写シートの構成>
感熱転写シートは熱転写画像形成の際に、感熱転写受像シートに重ねて置かれ、感熱転写シート側からサーマルプリンターヘッド等によって加熱することにより染料を感熱転写シートから感熱転写受像シートに転写するために用いられる。
【0014】
さらに、本発明の感熱転写シートは基材フィルムの染料層を含まない側の他方の面に、耐熱滑性層を有することが好ましい。また、基材フィルムと染料層間または基材フィルムと耐熱滑性層間に易接着層(プライマー層)を設けることもできる。
【0015】
<基材フィルム>
本発明の感熱転写シートの基材フィルムは特に限定されず、必要とされる耐熱性と強度を有するものであれば、従来公知のものを使用することができる。例として、グラシン紙、コンデンサー紙、パフィン紙等の薄紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル類、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、アイオノマー等のプラスチックの延伸あるいは未延伸フィルムや、これらの材料を積層したものが好ましい基材フィルムの具体例として挙げられる。ポリエステルフィルムはこれらの中でも特に好ましく、延伸処理されたポリエステルフィルムが最も好ましい。この基材フィルムの厚さは、強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択されるが、1〜30μm程度のものが好ましく用いられる。より好ましくは1〜20μm程度のものであり,さらに好ましくは3〜10μm程度のものが用いられる。
【0016】
<染料層>
本発明の感熱転写シートにおいて基材フィルムの一方の面上に設けられる染料層は、熱転写可能な染料とバインダーを含み、染料として下記一般式(1)で表される染料を少なくとも1種含み、該染料層に含まれるバインダー量の50質量%以上がカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂である。
【0017】
(染料)
以下に、本発明で使用する一般式(1)で表される熱転写可能な染料についてさらに詳細に説明する。
【0018】
【化3】

【0019】
一般式(1)中、Aは置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、R1およびR2は各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R3は置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルコキシ基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、R4は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0020】
前記Aは、置換もしくは無置換のフェニレン基であり、好ましくは無置換のフェニレン基である。
【0021】
前記R1およびR2は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、より好ましくは置換または無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜6)であり、そのなかでもエチル基が最も好ましい。
【0022】
前記R3は置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、好ましくはジアルキルアミノ基(好ましくは炭素数2〜8)、無置換のアミノ基、無置換のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6)であり、さらに好ましくはジアルキルアミノ基(好ましくは炭素数2〜4)、無置換のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4)であり、最も好ましくは無置換のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4)であり、なかでもエトキシ基が好ましい。
【0023】
前記R4は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基であり、好ましくは置換または無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、より好ましくは置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、なかでも置換もしくは無置換のフェニル基が好ましく、最も好ましくは無置換のフェニル基である。
【0024】
以下に、前記一般式(1)で表される染料の具体的化合物例を示すが、本発明は以下の具体例によって限定的に解釈されるものではない。
【0025】
【表1】

【0026】
前記一般式(1)で表される染料のうち、市販されていないものに関しては、一般的に行われているピラゾロン誘導体とアミノベンズアルデヒド誘導体との脱水縮合反応により合成することができる。
【0027】
本発明には、前記染料層中に前記一般式(1)で表される染料以外に、その他の染料を併用することも可能である。併用する染料としては熱により拡散し、感熱転写シートに組み込み可能かつ、加熱により感熱転写シートから受像シートに転写するものであれば特に限定されず、熱転写シート用の染料として従来から用いられてきている染料、あるいは公知の染料を用いることができる。
【0028】
前記一般式(1)で表される染料と併用するのに好ましい染料としては、例えば、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン、トリシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジズアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系等が挙げられる。
【0029】
前記一般式(1)で表される染料と併用される染料の具体例を挙げると、イエロー染料としては、ディスパースイエロー231、ディスパースイエロー201、ソルベントイエロー93等が好ましく、このうちソルベントイエロー93が特に好ましい、マゼンタ染料としては、ディスパースバイオレット26、ディスパースレッド60、ソルベントレッド19等が好ましく、このうちさらにディスパースバイオレット26、ディスパースレッド60が特に好ましい、シアン染料としては、ソルベントブルー63、ソルベントブルー36、ディスパースブルー354、ディスパースブルー35等が挙げられ、このうちさらにソルベントブルー63が特に好ましい。これらの例示された染料以外の適切な染料を用いることも、もちろん可能である。
また、上記の各色相の染料を任意に組み合わせることも可能である。例えばブラックの色相も染料の組み合わせで得ることができる。
【0030】
一般式(1)で表される染料が後述するイエロー染料層中に含有される場合には、イエロー染料層中に含まれる染料全体に対して10〜90質量%含有されることが好ましく、20〜80質量%含有されることがより好ましい。
【0031】
前記一般式(1)で表される染料がマゼンタまたはシアン染料層中に含有される場合は0.1〜5質量%含有されることが好ましく、0.5〜2質量%含有されることがより好ましい。マゼンタまたはシアン染料層中に含有する場合は5質量%以下で含有される場合は、色再現性が低下し難い。
【0032】
(染料層のバインダー)
本発明の感熱転写シートにおいて、一般式(1)で表される染料はバインダー(樹脂バインダーとも呼ばれる)に分散された状態で基材フィルム上に染料層として塗設されていることが必要である。以下に本発明で染料層のバインダーとして使用されるカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂についてさらに詳細に説明する。
【0033】
本発明におけるカルボン酸変性ポリビニルアセタールとは、ポリビニルアセタールの−OH基の全部もしくは一部がカルボキシル基を持つ化合物でエステル化されているポリビニルアセタールのことである。また、前記カルボン酸変性ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコール由来の−OH基の内、少なくとも一部の−OH基がアルデヒド等と反応し、アセタール化されている構造を有する化合物でもある。
なお、前記カルボン酸変性ポリビニルアセタールに含まれるアセタール構造は、単一のアルデヒド由来であっても複数のアルデヒド由来でもよい。
【0034】
本発明に好ましく用いられる前記カルボン酸変性ポリビニルアセタールとしては、例えば、下記一般式(2)で表されるものを挙げることができる。
【0035】
【化4】

(一般式(2)中、R5は置換または無置換のアルキル基を表し、R6は水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表し、pはアセタール化された−OH基を含むアセタール構造のモル比率を表し、qはビニルアルコール構造のモル比率を表し、rはカルボン酸変性された−OH基を含む構造のモル比率を表す。pおよびrは0%を超えて100%未満であり、qは0%以上100%未満であり、p+q+r=100%である。)
【0036】
前記R5は置換または無置換のアルキル基を表し、炭素数1〜10の無置換のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。
また、各アセタール構造に含まれるそれぞれのR5は同一であっても異なっていてもよいが、前記カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール構造の50モル%以上がアセトアセタール構造であることが、印画濃度および低温通過製性を改善する観点から好ましい。さらに、前記カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール構造の65%以上がアセトアセタール構造であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0037】
前記R6は水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表し、炭素数1〜20の置換炭化水素基であることがより好ましく、カルボキシル基で置換された炭素数1〜20の炭化水素基であることが特に好ましい。
【0038】
前記pは0%を超えて50%以下であることが好ましく、70〜90%であることがより好ましい。
前記qは0%を超えて15%以下であることが好ましく、1〜10%であることがより好ましい。
前記rは5〜30%であることが好ましく、10〜20%であることがより好ましい。
【0039】
前記ポリビニルアセタール樹脂の繰り返し単位の構成は特に制限はなく、ランダム共重合体であっても、ブロック重合体であってもよい。
【0040】
前記ポリビニルアセタール樹脂は前記一般式(2)に含まれる繰り返し単位以外のその他の成分を含む共重合体であってもよいが、前記一般式(2)に含まれる繰り返し単位のみを含むことが好ましい。
【0041】
前記カルボン酸変性ポリビニルアセタールは、例えば、公知の方法に準じて以下のように2段階で合成することができる。
(1)ポリビニルアルコールとカルボキシル基含有化合物を公知の方法に準拠して(たとえば 株式会社 高分子刊行会 発行の 「ポバール」)反応させエステル化する。このとき(2)のアセタール化が次にあるので、反応は原則部分的に行う。
(2)(1)のポリマーとアルデヒド化合物を公知のやり方に準拠して反応させて、所望のカルボン酸変性ポリビニルアセタールを合成する。
(1)の反応において、ポリビニルアルコールと反応させるカルボキシル基含有化合物としては、酢酸、プロピオン酸などの脂式モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸などの脂式ジカルボン酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸などが挙げられるが、好ましくは2価以上のカルボン酸を用いて変性し、少なくとも変性後、エステル結合を形成するカルボン酸以外にカルボキシル基が1つ以上残っていることが好ましく、具体的にはコハク酸、フタル酸が好ましい。
特に(1)のエステル化反応を利用する場合、エステル反応時に水を副生成物として生じないことから、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましく用いられる。
【0042】
(2)の反応において反応させるアルデヒド化合物としてはアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、アンスアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ケイ皮アルデヒド等が挙げられる。これらの中でもブチルアルデヒド、アセトアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドが好ましく、ブチルアルデヒド、アセトアルデヒドがさらに好ましく、アセトアルデヒドが最も好ましい。
上記アルデヒド化合物を2種類以上使用し、2種類以上のアセタール基を有することもできるが、本発明においては、アセタール部分の50モル%以上がアセトアセタール基であることが好ましく、80モル%以上がアセトアセタール基であることがさらに好ましいため、このような比率となるように(2)の反応において反応させるアルデヒド化合物の量を調整することが好ましい。なお、反応前に投入するアルデヒドの量を変化させることで、アセタール化度もコントロールすることができる。
【0043】
本発明においては具体的に以下の手順に従って、カルボン酸変性ポリビニルアセタールを合成できる。
(1)のエステル化反応で合成したカルボン酸変性ポリビニルアルコールとアルデヒド化合物を、酸触媒を用いて、水または有機溶媒中で反応させる。アセタール化に用いられる酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。また、触媒の使用量は、反応に用いられるアルデヒドおよび/またはケトン1モルに対して0.005〜0.2モルが好ましい。アセタール化の反応温度は、20℃〜100℃程度であり、40℃〜90℃が好ましい。この時最初のカルボン酸変性ポリビニルアルコールの合成時に、使用する市販のポリビニルアルコールの重合度を変更することで、最終的に得られるポリビニルアセタールの分子量をコントロールできる。重合度を変更したポリビニルアルコールとしては、たとえば ポバール(商品名 クラレ製) PVA110,PVA117,PVA120,PVA124などが挙げられる。
【0044】
(染料層の構成)
本発明において、前記カルボン酸変性ポリビニルアセタールは、染料層に含まれる全バインダーに対して50質量%以上含有され、80質量%以上含有されることがさらに好ましい。
【0045】
前記染料層中において前記カルボン酸変性ポリビニルアセタールと併用されてもよいその他の樹脂としては、セルロース系樹脂およびポリビニルアセタール系樹脂が好ましく、より好ましくはポリビニルアセタール系樹脂である。その他の樹脂の中でもポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびそれらの共重合体が本発明において好ましく用いられ、ポリビニルアセトアセタール樹脂およびポリビニルアセトアセタールとポリビニルブチラールの共重合体が、印画濃度と低温通過適性を両立する観点から最も好ましい。
本発明の感熱転写シートでは、前記染料層に含まれるバインダー中に、アセトアセタール構造とアセトブチラール構造を含む樹脂が含まれていることも、低温通過性を改善する観点から好ましい。
【0046】
前記染料層中において、前記一般式(1)で表される染料の前記バインダーに対する質量比すなわち、染料/バインダー比としては0.3〜3.0が好ましく、1.0〜2.5がより好ましく、1.4〜2.5が最も好ましい。
【0047】
前記染料層は、イエロー、マゼンタ、シアンの各色の染料層および必要に応じてブラックの染料層が同一の基材フィルム上に面順次で繰り返し塗り分けられているのが好ましい。一例として、イエロー、マゼンタおよびシアンの各色相の染料層が同一の基材フィルム上の長軸方向に、感熱転写受像シートの記録面の面積に対応して面順次に塗り分けられている場合を挙げることができる。この3層に加えて、ブラックの色相の染料層と転写性保護層のどちらか、あるいは双方が塗り分けられたものでもよい。
この様な態様を取る場合、各色の開始点をプリンターに伝達する目的で、感熱転写シート上に目印を付与することも好ましい態様である。このように面順次で繰り返し塗り分けることによって、染料の転写による画像の形成、さらには画像上への保護層の積層を一つの感熱転写シートで行なうことが可能となる。
しかしながら、本発明は前記のような染料層の設け方に限定されるものではない。昇華型熱転写インク層と熱溶融転写インク層を併設することも可能であり、また、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック以外の色相の染料層を設ける等の変更をすることも可能である。また、形態としては長尺であっても良いし、枚葉の熱転写シートであっても良いし、特に使用前の感熱転写シートが重なった状態で保管される態様に好ましく用いることができる。
【0048】
前記染料層は単層構成であっても複層構成であってもよく、複層構成の場合、染料層を構成する各層の組成は同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
(染料層の塗設方法)
本発明の感熱転写シートを製造するとき、前記染料層の塗設はロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法で行われることが好ましい。また染料層の塗設量は、0.1〜2.0g/m2(固形分換算、以下本発明における塗布量は特に断りのない限り、固形分換算の数値である)が好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.2g/m2である。染料層の膜厚は0.1〜2.0μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.2μmである。
【0050】
染料層の塗設に用いられる染料層塗工液は、少なくとも前記熱転写可能な染料と、前記バインダーを含有するものであるが、必要に応じて、有機微粉末もしくは無機微粉末、ワックス類、シリコーン樹脂、含フッ素有機化合物等を含有することも本発明の好ましい態様である。
【0051】
<耐熱滑性層>
本発明の感熱転写シートは、基材フィルム上の染料層を塗設した面とは反対の面(裏面)、すなわちサーマルヘッド等に接する側に耐熱滑性層(滑剤とバインダーを含むことが好ましい)を設けることが好ましい。また、保護層転写シートの場合にも、基材上の転写性保護層を塗設した面とは反対の面(裏面)、すなわちサーマルヘッド等に接する側に耐熱滑性層を設けることが好ましい。
感熱転写シートの基材シートの裏面とサーマルヘッド等の加熱デバイスとが直接接触した状態で加熱されると、熱融着が起こりやすい。また、両者の間の摩擦が大きく、感熱転写シートを印画時に滑らかに搬送することが難しい。
耐熱滑性層は、感熱転写シートがサーマルヘッドからの熱エネルギーに耐え得るように設けられるものであって、熱融着を防止し、滑らかな走行を可能にする。近年、プリンターの高速化に伴いサーマルヘッドの熱エネルギーが増加しているため、必要性は大きくなっている。
耐熱滑性層は、バインダーに滑剤、離型剤、界面活性剤、無機粒子、有機粒子、顔料等を添加したものを塗布することによって形成されることが好ましい。また、耐熱滑性層と基材シートとの間に中間層を設けてもよく、無機微粒子と水溶性樹脂またはエマルジョン化可能な親水性樹脂からなる層が開示されている。
【0052】
上記耐熱滑性層に用いられるバインダーとしては、耐熱性の高い公知の樹脂を用いることができる。例として、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセトアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性またはフッ素変性ウレタン等の天然または合成樹脂の単体または混合物を挙げることができる。
【0053】
耐熱滑性層の耐熱性を高めるため、紫外線または電子ビームを照射して樹脂を架橋する技術が知られている。また、架橋剤を用い、加熱により架橋させることも可能である。この際、触媒が添加されることもある。架橋剤としては、ポリイソシアネート等が知られており、このためには、水酸基系の官能基を有する樹脂が適している。特開昭62−259889号公報には、ポリビニルブチラールとイソシアネート化合物との反応生成物にリン酸エステルのアルカリ金属塩またはアルカリ土類塩および炭酸カルシウム等の充填剤を添加することにより耐熱滑性層を形成することが開示されている。また、特開平6−99671号公報には、耐熱滑性層を形成する高分子化合物を、アミノ基を有するシリコーン化合物と1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を反応させることにより得ることが開示されている。本発明においては、これらを使用することが好ましい。
【0054】
耐熱滑性層には、滑剤、可塑剤、安定剤、充填剤、ヘッド付着物除去のためのフィラー等の添加剤が配合されていても良い。
滑剤としては、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化黒鉛等のフッ化物、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、硫化鉄等の硫化物、酸化鉛、アルミナ、酸化モリブデン等の酸化物、グラファイト、雲母、窒化ホウ素、粘土類(滑石、酸性白度等)等の無機化合物からなる固体滑剤、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂、シリコーンオイル、ステアリン酸金属塩等の金属セッケン類、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。
またアルキルリン酸モノエステル、アルキルリン酸ジエステルの亜鉛塩などのリン酸エステル系界面活性剤や中和した燐酸エステル系界面活性剤を用いる方法、水酸化マグネシウムなどの中和剤を用いる方法等が知られており、本発明においてはこれらのリン酸エステルを含有することが好ましい。
その他の添加剤としては高級脂肪酸アルコール、オルガノポリシロキサン、有機カルボン酸およびその誘導体、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を挙げることができる。
【0055】
これらの中でも無機粒子を用いることが特に好ましい。
さらにこれらの無機粒子について詳しく述べると、無機粒子の硬度としてはいわゆるモース硬度で3〜7であることが好ましく、3〜6がより好ましく、3.5〜5.5がさらに好ましい。モース硬度が3より小さい場合には高速プリント時の感熱転写シートの変形を抑制できず、またモース硬度が7より大きい場合にはサーマルプリンターヘッドに傷を発生する。
モース硬度が3〜7の無機粒子としては公知のものを用いることができ、例えば炭酸カルシウム(モース硬度3)、ドロマイト(MgCa(CO32)(モース硬度3.5〜4)、酸化マグネシウム(モース硬度4)、炭酸マグネシウム(モース硬度3.5〜4.5)およびシリカ(モース硬度7)が挙げられる。これらの中では酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムがより好ましく、酸化マグネシウムがさらに好ましい
【0056】
またこれら耐熱滑性層に含まれる無機粒子の平均粒子径は0.3μm〜5μmであることが好ましい。
本発明においては平均粒子径が0.3μmより小さい場合には高速プリント時の感熱転写シートの変形を抑制できず、またサーマルプリンターヘッドへの付着物を低減することもでず、平均粒子径が5.0μmより大きい場合には高速プリント時の感熱転写シートの変形はむしろ悪化し、同時にサーマルプリンターヘッドの削れと傷が大きくなってしまう。サーマルプリンターヘッドの傷および削れは、サーマルプリンターヘッド表面の電極発熱部を保護する絶縁層が傷付き、削れることでありサーマルプリンターヘッドの寿命が短くなる。平均粒子径としては0.3μm〜4.5μmがより好ましく、0.4μm〜4μmがさらに好ましい。ここで平均粒子径はレーザー回折散乱法により求めた値である。粒子に光を照射して得られる回折散乱光強度の空間分布は粒子サイズによって各々異なるため、回折散乱光強度の空間分布を測定して解析することで粒子サイズ分布を求めることができレーザー解析散乱法として確立している。測定装置は(株)島津製作所製SALDシリーズや(株)堀場製作所製 LAシリーズ等の市販のものを使用することができる。
【0057】
また無機粒子の形状は最大巾の球相当径に対する比が1.5〜50であることが好ましい。1.5より小さい場合にはサーマルプリンターヘッドへの付着物を低減する効果がほとんどなく、またサーマルプリンターヘッドに傷を生ずる場合もある。この比の値が50より大きい場合、例えば針状の無機粒子において針の直径が0.12μmで針の長さが88μmの場合にこの比は約70であるが、外部応力により折れ易くこの形状を保ったまま耐熱滑性層に含有させることが困難である。
ここで無機粒子の最大巾の球相当径に対する比は無機粒子の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope 略称「SEM」)による観察から求めることができる。具体的な手順は以下の通りである。
【0058】
無機粒子をSEMで観察角度を変えて測定し、形状と長さ、厚みを測定する。
測定した形状と大きさから粒子体積を計算し、球相当径を求める。球相当径とは計算した粒子体積と等しい体積となる球の直径のことである。また、測定した長さ、厚みから粒子の最大巾を求める。粒子の最大巾とは粒子表面の2点を結んだ長さの中で最大のもののことであり、無機粒子が柱状の場合は柱の高さに相当し、無機粒子が針状の場合は針の長さに相当し、無機粒子が平板状の場合には主平面の最大巾に相当する。
個々の粒子について求めた最大巾を球相当径で除することで比の値を求めることができる。粒子形状が球の場合には、最大巾と球相当径は等しく比は1となり、粒子形状が立方体の場合には比の値は約1.4となり、粒子形状の球からのずれが大きくなるほど比の値は大きくなる。
粒子内に空隙がある場合には、粒子体積を正確に計算できないが、この場合には空隙が無い形状として計算して比を求めることとする。
【0059】
耐熱滑性層に含有される個々の無機粒子の最大巾の球相当径に対する比の値は個々の粒子でその値に変動があるが、個々の粒子の比の平均が耐熱滑性層中のモース硬度が3〜7の無機粒子全質量に対する50質量%以上がこの比の値が1.5〜50の範囲にあることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。
また、この比は1.8〜45がより好ましく、2〜40がさらに好ましい。
【0060】
耐熱滑性層は、先に例示したようなバインダーに添加剤を加えた材料を溶剤中に溶解または分散させた塗工液を、グラビアコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、ワイヤーバーなどの従来から公知の方法で塗布することによって形成される。0.1〜10μm程度の膜厚が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5μm程度の膜厚である。
【0061】
<染料バリア層>
本発明の感熱転写シートは、染料層と基材フィルムの間に染料バリア層を設けることができる。
【0062】
<易接着層>
本発明の感熱転写シートは、基材フィルムに塗布によって易接着層を形成することもできる。易接着層に用いられる樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等を例示することができる。
また、易接着層を設けない場合は、基材フィルムの表面に、塗布液の濡れ性および接着性の向上を目的として、易接着処理を行なってもよい。処理方法として、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等公知の樹脂表面改質技術を例示することができる。
基材フィルムに用いられるフィルムを溶融押出し形成する時に、未延伸フィルムに塗工処理を施し、その後に延伸処理して行なうことも可能である。
また、上記の処理は、二種類以上を併用することもできる。
【0063】
<転写性保護層積層体>
本発明では、感熱転写シートに転写性保護層積層体を面順次で設けることも好ましい。転写性保護層積層体は、熱転写された画像の上に透明樹脂からなる保護層を熱転写で形成し、画像を覆い保護するためのものであり、耐擦過性、耐光性、耐候性等の耐久性向上を目的とする。転写された染料が受像シート表面に曝されたままでは、耐光性、耐擦過性、耐薬品性等の画像耐久性が不十分な場合に有効である。
転写性保護層積層体は、基材フィルム上に、基材フィルム側から離型層、保護層、接着剤層の順に形成することができる。保護層を複数の層で形成することも可能である。保護層が他の層の機能を兼ね備えている場合には、離型層、接着剤層を省くことも可能である。基材フィルムとしては、易接着層の設けられたものを用いることも可能である。
【0064】
(転写性保護層)
前記転写性保護層を形成する樹脂としては、耐擦過性、耐薬品性、透明性、硬度に優れた樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、これら各樹脂のシリコーン変性樹脂、紫外線遮断性樹脂、これら各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。なかでも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
また、各種架橋剤によって架橋することも可能である。
【0065】
(転写性保護層樹脂)
アクリル樹脂としては、従来公知のアクリレートモノマー、メタクリレートモノマーの中から選ばれた少なくとも1つ以上のモノマーからなる重合体で、アクリル系モノマー以外にスチレン、アクリロニトリル等を共重合させても良い。好ましいモノマーとしてメチルメタクリレートを仕込み質量比で50質量%以上含有していることが挙げられる。
本発明のアクリル樹脂は、分子量が20,000〜100,000であることが好ましい。
【0066】
本発明のポリエステル樹脂としては、従来公知の飽和ポリエステル樹脂を使用できる。上記ポリエステル樹脂を使用する場合は、ガラス転移温度は50〜120℃が好ましく、又、分子量は2,000〜40,000の範囲が好ましく、さらに4,000〜20,000の範囲が保護層転写時に箔切れ性が良くなり、より好ましい。
【0067】
(紫外線吸収剤)
本発明において、保護層および/または接着層に、紫外線吸収剤を含有することが好ましく、紫外線吸収剤としては、従来公知の無機系紫外線吸収剤、有機系紫外線吸収剤が使用できる。有機系紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、置換アクリロニトリル系、ヒンダートアミン系等の非反応性紫外線吸収剤や、これらの非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいは、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入し、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂に共重合若しくは、グラフトしたものを使用することができる。また、樹脂のモノマーまたはオリゴマーに紫外線吸収剤を溶解させた後、このモノマーまたはオリゴマーを重合させる方法が開示されており(特開2006−21333号公報)、こうして得られた紫外線遮断性樹脂を用いることもできる。この場合には紫外線吸収剤は非反応性のもので良い。
これら紫外線吸収剤に中でも、特にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系が好ましい。これら紫外線吸収剤は画像形成に使用する染料の特性に応じて、有効な紫外線吸収波長域をカバーするように組み合わせて使用することが好ましく、また、非反応性紫外線吸収剤の場合には紫外線吸収剤が析出しないように構造が異なるものを複数混合して用いることが好ましい。
紫外線吸収剤の市販品としては、チヌビン−P(チバガイギー製)、JF−77(城北化学製)、シーソープ701(白石カルシウム製)、スミソープ200(住友化学製)、バイオソープ520(共同薬品製)、アデカスタブLA−32(旭電化製)等が挙げられる。
【0068】
(転写性保護層の形成)
保護層の形成法は、用いられる樹脂の種類に依存するが、前記染料層の形成方法と同様の方法で形成すことができ、0.5〜10μmの厚さが好ましい。
【0069】
(離型層)
前記転写性保護層が熱転写時に基材フィルムから剥離しにくい場合には、基材フィルムと保護層との間に離型層を形成することができる。転写性保護層と離型層の間にさらに剥離層を形成しても良い。離型層は、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース誘導体樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸系ビニル樹脂、アクリルビニルエーテル系樹脂、無水マレイン酸樹脂、およびこれらの樹脂群の共重合体を少なくとも1種以上含有する塗工液を、従来公知のグラビアコート、グラビアリバースコート等の方法で塗設、乾燥することにより形成することができる。上記の樹脂の中でも、アクリル樹脂として、アクリル酸やメタクリル酸等の単体、または他のモノマー等と共重合させた樹脂、あるいはセルロース誘導体樹脂が好ましく、基材フィルムとの密着性、保護層との離型性において優れている。
各種架橋剤によって架橋することも可能であり、また、電離放射線硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂も用いることができる。
【0070】
離型層は、熱転写時に被転写体に移行するもの、あるいは基材フィルム側に残るもの、あるいは凝集破壊するもの等を、適宜選択することができるが、熱転写により離型層が基材フィルム側に残存し、離型層と転写性保護層との界面が熱転写された後の保護層表面になるようにすることが、表面光沢性、保護層の転写安定性等の点で優れており、好ましい態様である。離型層の形成方法は、従来公知の塗設方法で形成でき、その厚みは乾燥状態で0.5〜5μm程度が好ましい。
【0071】
(接着層)
転写性保護層積層体の最上層として、保護層の最表面に接着層を設けることができる。これによって保護層の被転写体への接着性を良好にすることができる。
【0072】
[感熱転写受像シート]
次に感熱転写プリントを形成するために本発明の感熱転写シートと組み合わせて使用できる感熱転写受像シート(以下、単に受像シートともいう。)に関して詳細に説明する。
感熱転写受像シートは、染料を受容する熱可塑性の受容ポリマーを含有する少なくとも1層の受容層を支持体上に有する。受容層には、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、その他の添加物を含有させることができる。支持体と受容層との間に、例えば断熱層(多孔質層)、光沢制御層、白地調整層、帯電調節層、接着層、プライマー層などの中間層が形成されていてもよい。支持体と受容層との間に少なくとも1層の断熱層を有することが好ましい。
受容層およびこれらの中間層は同時重層塗布により形成されることが好ましく、中間層は、必要に応じて複数設けることができる。
支持体の裏面側にはカール調整層、筆記層、帯電調整層が形成されていてもよい。支持体裏面各層を塗布するためには、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法を用いることができる。
【0073】
感熱転写受像シートは、受容層に染料染着可能なポリマーラテックスを使用することが好ましい。またポリマーラテックスとしては単独でも複数のポリマーラテックスを混合使用してもよい。
【0074】
ポリマーラテックスとは一般に熱可塑性樹脂が微粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。本発明のポリマーラテックスに用いられる熱可塑性樹脂の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
このうちポリカーボネート、ポリエステル、塩化ビニル共重合体が好ましく、ポリエステル、塩化ビニル共重合体が特に好ましい。
【0075】
ポリエステルはジカルボン酸誘導体とジオール化合物との縮合により得られ、芳香環や飽和炭化環を含有してもよく、分散性を付与するための水溶性基を含有してもよい。
【0076】
塩化ビニル共重合体としては、塩化ビニルと酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルとアクリルレートの共重合体、塩化ビニルとメタクリレートの共重合体、塩化ビニルと酢酸ビニルとアクリレートの共重合体、塩化ビニルとアクリレートとエチレンの共重合体等が挙げられる。このように2元共重合体でも3元以上の共重合体でもよく、モノマーが不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。
該共重合体にはビニルアルコール誘導体やマレイン酸誘導体、ビニルエーテル誘導体などの補助的なモノマー成分を添加してもよい。共重合体において塩化ビニル成分は50質量%以上含有されていることが好ましく、またマレイン酸誘導体、ビニルエーテル誘導体等の補助的なモノマー成分は10質量%以下であることが好ましい。
ポリマーラテックスは単独でも混合物として使用してもよい。ポリマーラテックスは、均一構造であってもコア/シェル型であってもよく、このときコアとシェルをそれぞれ形成する樹脂のガラス転移温度が異なっても良い。
【0077】
この様なポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は、20℃〜90℃であることが好ましく、より好ましくは25℃〜80℃である。
【0078】
商業的に入手可能なアクリレートラテックスとしては、日本ゼオン株式会社製、NipolLX814(Tg25℃)、NipolLX857X2(Tg43℃)等(いずれも商品名)が挙げられる。
商業的に入手可能なポリエステルラテックスとしては、東洋紡株式会社製 バイロナールMD−1100(Tg40℃)、バイロナールMD−1400(Tg20℃)、バイロナールMD−1480(Tg20℃)、MD−1985(Tg20℃)等(いずれも製品名)が挙げられる。
商業的に入手可能な塩化ビニル共重合体としては、日信化学工業株式会社製 ビニブラン276(Tg33℃)、ビニブラン609(Tg48℃)、住化ケムテックス株式会社製スミエリート1320(Tg30℃)、スミエリート1210(Tg20℃)等(いずれも商品名)が挙げられる。
【0079】
ポリマーラテックスの添加量は、ポリマーラテックスの固形分が受容層中の全ポリマーの50〜98質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。またポリマーラテックスの平均粒子サイズは、好ましくは1〜50000nmであり、より好ましくは5〜1000nmである。
【0080】
断熱層に中空ポリマーを含有することが好ましい。
本発明において中空ポリマーとは粒子内部に空隙を有するポリマー粒子であり、好ましくは水分散物であり、例えば、1)ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂等により形成された隔壁内部に水などの分散媒が入っており、塗布乾燥後、粒子内の水が粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空ポリマー粒子、2)ブタン、ペンタンなどの低沸点液体を、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステルのいずれかまたはそれらの混合物もしくは重合物よりなる樹脂で覆っており、塗工後、加熱により粒子内部の低沸点液体が膨張することにより内部が中空となる発泡型マイクロバルーン、3)上記の2)をあらかじめ加熱発泡させて中空ポリマーとしたマイクロバルーンなどが挙げられる。
これらの中でも、上記1)の非発泡型の中空ポリマー粒子が好ましく、必要に応じて2種以上混合して使用することができる。具体例としてはロームアンドハース社製 ローペイク HP−1055、JSR社製 SX866(B)、日本ゼオン社製 Nipol MH5055 (いずれも商品名)などが挙げられる。
【0081】
これらの中空ポリマーの平均粒子径は0.1〜5.0μmであることが好ましく、0.2〜3.0μmであることがさらに好ましく、0.4〜1.4μmであることが特に好ましい。
また、中空ポリマーは、空隙率が20〜70%のものが好ましく、30〜60%のものがより好ましい。
【0082】
中空ポリマー粒子のサイズは、透過型電子顕微鏡を用いて、その外径の円相当換算直径を測定し算出する。平均粒径は、中空ポリマー粒子を少なくとも300個透過電子顕微鏡を用いて観察し、その外形の円相当径を算出し、平均して求める。また中空ポリマーの空隙率とは、粒子体積に対する空隙部分の体積の割合から求める。
【0083】
中空ポリマーのポリマー特性として、ガラス転移温度(Tg)が70℃〜200℃であることが好ましく、90℃〜180℃である中空ポリマーがさらに好ましい。中空ポリマーとしては、中空ポリマーラッテックスが特に好ましい。
【0084】
感熱転写受像シートの受容層および/または断熱層には水溶性ポリマーを含有させることができる。ここで水溶性ポリマーとは、20℃において水100gに対し0.05g以上の溶解度を有し、より好ましくは0.1g以上、さらに好ましくは0.5g以上の溶解度を有する。
【0085】
感熱転写受像シートに用いることのできる水溶性ポリマーとして、カラギナン類、ペクチン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水溶性ポリエステル等を挙げることができる。このうちゼラチンとポリビニルアルコールが好ましい。
【0086】
ゼラチンは分子量10,000から1,000,000までのものを用いることができ、ゼラチン中にCl-、SO42-等の陰イオンを含んでいてもよいし、Fe2+、Ca2+、Mg2+、Sn2+、Zn2+などの陽イオンを含んでいても良い。ゼラチンは水に溶かして添加することが好ましい。
またゼラチンには アルデヒド型架橋剤、N−メチロール型架橋剤、ビニルスルホン型架橋剤、クロロトリアジン型架橋剤等の公知の架橋剤を添加することができる。このうちビニルスルホン型架橋剤、クロロトリアジン型架橋剤が好ましく、具体的例としては、ビスビニルスルホニルメチルエーテル、N,N’−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン、4,6−ジクロロ−2−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンまたはそのナトリウム塩を挙げることができる。
【0087】
ポリビニルアルコールとしては、完全けん化物、部分けん化物、変性ポリビニルアルコール等の各種ポリビニルアルコールを用いることができる。これらポリビニルアルコールについては、長野浩一ら共著,「ポバール」(高分子刊行会発行)に記載のものが用いられる。ポリビニルアルコールは、その水溶液に添加する微量の溶剤あるいは無機塩類によって粘度調整をしたり粘度安定化させたりすることが可能であって、詳しくは上記文献144〜154頁記載のものを使用することができる。その代表例としてホウ酸を含有させることで塗布面質を向上させることができ、好ましい。ホウ酸の添加量は、ポリビニルアルコールに対し0.01〜40質量%であることが好ましい。
【0088】
ポリビニルアルコールの具体例として、完全けん化物としてはPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117Hなど、部分けん化物としてはPVA−203、PVA−205、PVA−210、PVA−220など、変性ポリビニルアルコールとしてはC−118、HL−12E、KL−118、MP−203が挙げられる。(いずれも商品名、株式会社クラレ製)
【0089】
感熱転写受像シートの受容層に、フッ素原子が置換した脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物を含有させることができる。この場合、感熱転写シートが含有するフッ素原子が置換した脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物と同一の高分子化合物を含有しても同じ範疇の異なる高分子化合物を含有してもよく、好ましい態様である。また、離型剤として公知のポリエチレンワックス、アミドワックス等の固形ワックス類、シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を含有してもよい。
【0090】
フッ素原子が置換した脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物の含有量は、受容層の全固形分(質量)に対して0.01%〜20%であり、好ましくは0.1%〜10%であり、さらに好ましくは1%〜5%である。
【0091】
[画像形成方法]
次に本発明の感熱転写シートを用いて行うことのできる画像形成方法について説明する。
画像形成方法では、感熱転写受像シートの受容層と感熱転写シートの染料層などの熱転写層とが接するように重ね合わせ、サーマルヘッドからの画像信号に応じた熱エネルギーを感熱転写シートの耐熱性滑性層側から付与することにより画像を形成する。
具体的な画像形成は、例えば特開2005−88545号公報などに記載された方法と同様にして行うことができる。本発明では、消費者にプリント物を提供するまでの時間を短縮するという観点から、プリント時間は15秒未満が好ましく、3〜12秒がより好ましく、さらに好ましくは、3〜7秒である。
【0092】
上記プリント時間を満たすために、プリント時のライン速度は0.73msec/line以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.65msec/line以下である。また、高速化条件における転写効率向上の観点から、プリント時のサーマルヘッド最高到達温度は、180℃〜450℃が好ましく、さらに好ましくは200℃〜450℃である。さらには350℃〜450℃が好ましい。
【0093】
本発明は、感熱転写記録方式を利用したプリンター、複写機などに利用することができる。熱転写時の熱エネルギーの付与手段は、従来公知の付与手段のいずれも使用することができ、例えば、サーマルプリンター(例えば、日立製作所製、商品名、ビデオプリンターVY−100)等の記録装置によって記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm2程度の熱エネルギーを付与することによって所期の目的を十分に達成することができる。また、前記感熱転写受像シートは、支持体を適宜選択することにより、熱転写記録可能な枚葉またはロール状の感熱転写受像シート、カード類、透過型原稿作成用シート等の各種用途に適用することもできる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、実施例中で、部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0095】
[実施例1]
(カルボン酸変性ポリビニルアルコールの合成)
ポバール PVA110(商品名 クラレ製)と無水コハク酸を、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中で、4−ジメチルアミノピリジンを加えて反応させ、下記表2に記載のカルボン酸変性ポリビニルアルコール(PVA−1)を合成した。
【0096】
【表2】

【0097】
上記表2に記載のカルボン酸変性ポリビニルアルコール(PVA−1)と、アルデヒド化合物(アセトアルデヒドおよび/またはブチルアルデヒド)と、酸触媒(35%塩酸)を用いて、水中で反応させ、下記表3に記載の組成のカルボン酸変性ポリビニルアセタールPOL−1〜POL−4を合成した。前記カルボン酸変性ポリビニルアセタールPOL−1〜POL−4の構造を下記一般式(3)に記載する。なお、一般式(3)におけるa〜dの各繰り返し単位の割合は、POL−1ではa:b:c:d=0:33.5:8:15であり、POL−2ではa:b:c:d=19:19:9:15であり、POL−3ではa:b:c:d=31:7.5:8:15であり、POL−4ではa:b:c:d=39:0:7:15であった。
【0098】
【表3】

【0099】
【化5】

(一般式(3)中、aはアセトアセタール化−OH基を含むアセタール構造のモル比率を表し、bはブチラール化−OH基を含むアセタール構造のモル比率を表し、cはビニルアルコール構造のモル比率を表し、dはコハク酸変性−OH基を含む構造のモル比率を表す。)
【0100】
なお、前記カルボン酸変性ポリビニルアセタールPOL−1〜POL−4において、アセタール構造全体に対するアセトアセタール構造の割合(モル%比)は、(アセトアセタール化−OH基のモル%)/{(アセトアセタール化−OH基のモル%)+(ブチラール化−OH基のモル%)}×100%で求めることができる。すなわち、各カルボン酸変性ポリビニルアセタールにおけるアセタール構造全体に対するアセトアセタール構造の割合は、POL−1では0%であり、POL−2では50%であり、POL−3では80.5%であり、POL−4では100%であった。
【0101】
(感熱転写シートの作製)
基材フィルムとして片面に易接着層が形成された後に延伸して製造された厚さ4.5μmのポリエステルフィルムの易接着層とは反対面に、乾燥後の固形分塗布量が1g/m2となるように後述の耐熱滑性層塗工液を塗布した。このようにして作製した耐熱滑性層形成ポリエステルフィルムの易接着層塗布側に後述の塗工液により、染料層および転写性保護層積層体(離型層、保護層および接着層からなる)を面順次となるように塗布した感熱転写シート101を作製した。染料層の固形分塗布量は、0.8g/m2とした。また、転写性保護層積層体の乾膜時の塗布量は離型層0.2g/m2、保護層0.4g/m2、接着層2.0g/m2とした。
これら塗布直後に100℃オーブンで1分間乾燥させた。
【0102】
耐熱滑性層塗工液:
アクリル系ポリオール樹脂
(アクリディックA−801、
商品名、大日本インキ化学工業(株)製) 17.3質量部
ステアリン酸亜鉛
(SZ−2000、商品名、堺化学工業(株)製) 0.26質量部
リン酸エステル
(Phoslex A18、商品名、堺化学工業(株)製) 0.52質量部
リン酸エステル
(プライサーフA217、商品名、第一工業製薬(株)製) 3.59質量部
タルク
(ミクロエースL−1、商品名、日本タルク(株)製)) 0.52質量部
酸化マグネシウム
(スターマグPSF、商品名、神島化学(株)製) 0.07質量部
ポリイソシアネート
(バーノックD−750、商品名、
大日本インキ化学工業(株)製) 7.77質量部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 70質量部
【0103】
染料層塗工液:
染料化合物A(例示化合物 1−1) 8.0質量部
染料化合物B(下記) 1.0質量部
ポリビニルブチラール樹脂 6.0質量部
(デンカブチラール#3000−1、商品名、電気化学工業(株)製)
含フッ素高分子化合物 0.25質量部
(メガファックF−472SF、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
マット剤 0.15質量部
(フローセンUF、商品名、住友精工(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒 85質量部
【0104】
離型層塗工液:
変性セルロース樹脂 5.0質量部
(L−30、商品名、ダイセル化学)
メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒 95.0質量部
保護層塗工液:
アクリル樹脂溶液(固形分40%) 90質量部
(UNO−1、商品名、岐阜セラミック(有)製)
メタノール/イソプロパノール混合溶媒 10質量部
接着層塗工液:
アクリル樹脂 25質量部
(ダイアナールBR−77、商品名、三菱レイヨン(株)製)
下記紫外線吸収剤UV−1 0.5質量部
下記紫外線吸収剤UV−2 2質量部
下記紫外線吸収剤UV−3 0.5質量部
下記紫外線吸収剤UV−4 0.5質量部
PMMA微粒子(ポリメチルメタクリレート微粒子) 0.4質量部
メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒 70質量部
【0105】
【化6】

【0106】
(感熱転写受像シートの作製)
ポリエチレンで両面ラミネートした紙支持体表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設けた。この上に、下記組成の下引き層、断熱層、受容層下層、受容層上層を支持体側からこの順に積層させた状態で、米国特許第2,761,791号明細書に記載の第9図に例示された方法により、同時重層塗布を行った。それぞれの乾燥時の塗布量が下引き層:6.2g/m2、断熱層:8.0g/m2、受容層下層:2.8g/m2、受容層上層:2.3g/m2となるように塗布を行った。また、下記の組成は、固形分としての質量部を表す。
【0107】
受容層上層:
塩化ビニル系ラテックス 19.0質量部
(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製)
塩化ビニル系ラテックス 3.6質量部
(ビニブラン276、商品名、日信化学工業(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 2.4質量部
下記エステル系ワックスEW−1 1.9質量部
下記界面活性剤F−1 0.12質量部
下記界面活性剤F−2 0.33質量部
受容層下層:
塩化ビニル系ラテックス 12.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製)
塩化ビニル系ラテックス 12.0質量部
(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 7.0質量部
下記界面活性剤F−1 0.04質量部
断熱層:
中空ポリマー粒子ラテックス 60.0質量部
(MH5055、商品名、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 22.0質量部
下引き層:
ポリビニルアルコール 7.7質量部
(ポバールPVA205、商品名、(株)クラレ製)
スチレンブタジエンゴムラテックス 60.0質量部
(SN−307、商品名、日本エイ アンド エル(株)製)
下記界面活性剤F−1 0.03質量部
【0108】
【化7】

【0109】
用いた染料およびバインダーを下記表5のように変更した以外は感熱転写シート101と同様にして、感熱転写シート102から110を作製した。感熱転写シート101〜110における染料のバインダーに対する質量比(染料/バインダー比)は、いずれも1.5とした。なお、染料BおよびDisperse Yellow系染料は、一般式(1)に含まれない染料である。
【0110】
【表4】

【0111】
(低温通過性評価前処理)
上記表4に記載の感熱転写シートと感熱転写受像シートを用いて、15℃20%環境下12時間の調湿を行い、続いて30℃40%12時間環境下での調湿を行い、これを順次12セットずつ行った。これを評価用サンプルの前処理とした。
【0112】
(低温印画濃度評価)
印画濃度の測定はX−rite社製X−rite530LPを用いて、15℃20%の環境下で30点測定しイエロー濃度を平均した。得られた結果を下記表5に示す。
【0113】
(低温通過性評価)
前処理を行った感熱転写シートと感熱転写受像シートを用いて、15℃20%の環境下および30℃40%の環境下で、富士フイルム(株)製フジフイルムサーマルフォトプリンターASK2000(商品名)を用いてイエローベタ画像のプリントを50枚ずつ行い、プリントエラー発生頻度を数えた。1枚プリントする毎に5分間のインターバルを設けた。
【0114】
前記低温通過性は以下の判定基準にしたがって評価した。
5:プリントエラー発生頻度0回、非常に優れた低温通過性を有する。
4:プリントエラー発生頻度1回〜2回で、優れた低温通過性を有する。
3:プリントエラー発生頻度3回〜5回で、低温通過性を有する。
2:プリントエラー発生頻度6回〜10回で、低温通過適正を有さない。
1:プリントエラー発生頻度10回以上で低温通過適正を有さない。
評価結果を表5に示す。
【0115】
【表5】

【0116】
表5より、本発明の感熱転写シートは印画濃度が高く、低温通過性が良化していることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面上に熱転写可能な染料とバインダーを含む染料層を有する感熱転写シートであって、該染料として下記一般式(1)で表される染料を少なくとも1種含み、該染料層に含まれるバインダー量の50質量%以上がカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂である感熱転写シート。
【化1】

(一般式(1)中、Aは置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、R1およびR2は各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R3は置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルコキシ基または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、R4は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
【請求項2】
前記カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール構造の50モル%以上がアセトアセタール構造であることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写シート。
【請求項3】
前記染料の前記バインダーに対する質量比(染料/バインダー比)が1.4〜2.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の感熱転写シート。

【公開番号】特開2010−228415(P2010−228415A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81138(P2009−81138)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】